以下、実施形態について説明する。
なお、添付図面は、理解を容易にするために構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、又は別の図面中のものと異なる場合がある。また、断面図では、理解を容易にするため、一部の構成要素のハッチングを省略している場合がある。
図1及び図2に示すように、コイル部品1は、コア10と、コア10に巻回されたコイル30とを備える。コイル部品1は、例えば表面実装型のコイル部品である。またコイル部品1は、例えば信号用トランスとして用いられる。なお、コイル部品1は、信号用トランスに限られず、コモンモードチョークコイル、バラン(平衡−不平衡変換器)、インダクタアレイであってもよい。
コア10は、非導電性材料、具体的には、アルミナのような非磁性体、ニッケル(Ni)−亜鉛(Zn)系フェライトのような磁性体などから構成される。コア10は、例えば非導電性材料を圧縮した成形体を焼成して形成される。なお、コア10は、非導電性材料を圧縮した成形体を焼成して形成されるものに限られず、例えば、金属粉、フェライト粉などの磁性粉を含有する樹脂、シリカ粉などの非磁性粉を含有する樹脂、又はフィラーを含有しない樹脂を熱硬化させて形成してもよい。
図3に示すように、コア10は、所定方向に延びる巻芯部11と、所定方向における巻芯部11の第1端部に設けられた第1鍔部12と、所定方向における巻芯部11の第1端部とは反対側の端部である第2端部に設けられた第2鍔部13とを有する。本実施形態では、巻芯部11、第1鍔部12、及び第2鍔部13は一体に形成されている。以下の説明において、巻芯部11が延びる所定方向を「長さ方向Ld」と称し、コア10の平面視において長さ方向Ldと直交する方向を「幅方向Wd」と称し、長さ方向Ld及び幅方向Wdに直交する方向を「高さ方向Td」と称する。長さ方向Ldは、第1鍔部12及び第2鍔部13の配列方向と言い換えることもできる。また、幅方向Wdは、長さ方向Ldに垂直な方向のうち、コイル部品1が回路基板に実装された状態で回路基板の主面と平行な方向と言い換えることができる。高さ方向Tdは、長さ方向Ldに垂直な方向のうち、コイル部品1が回路基板に実装された状態で回路基板の主面に垂直な方向と言い換えることができる。
図3及び図4に示すように、巻芯部11の長さ方向Ldの寸法L11は、巻芯部11の幅方向Wdの寸法W11及び高さ方向Tdの寸法T11よりも大きい。巻芯部11の幅方向Wdの寸法W11は、巻芯部11の高さ方向Tdの寸法T11よりも大きい。ここで、巻芯部11の高さ方向Tdの寸法T11は、高さ方向Tdにおける巻芯部11のうちの最大寸法を示す。
図4に示すように、巻芯部11は、巻芯部11の延びる方向と直交する平面で切った断面形状、すなわち巻芯部11を高さ方向Td及び幅方向Wdに平行な平面で切った断面形状(以下、単に巻芯部11の断面形状と称する)が多角形状であることが好ましい。本実施形態では、巻芯部11の断面形状は、六角形状である。なお、本明細書において、「多角形状」には、角部が面取りされたもの、角部が丸められたもの、各辺の一部が曲線状のもの、などを含む。
巻芯部11は、幅方向Wdに面する2面である一対の側面11a,11bと、高さ方向Tdに面する4面である一対の第1面11c,11d及び一対の第2面11e,11fとを有する。側面11a及び側面11bは、幅方向Wdに間隔をあけて互いに平行となるように形成されている。第1面11c,11d及び第2面11e,11fは、高さ方向Tdに間隔をあけて形成されている。側面11aと第1面11cとが成す角度、側面11aと第2面11eとが成す角度、側面11bと第1面11dとが成す角度、及び側面11bと第2面11fとが成す角度は、互いに等しく、例えば約100度である。第1面11cと第1面11dとが成す角度、及び第2面11eと第2面11fとが成す角度は、互いに等しく、例えば約160度である。なお、側面11aと第1面11cとが成す角度、側面11aと第2面11eとが成す角度、側面11bと第1面11dとが成す角度、及び側面11bと第2面11fとが成す角度はそれぞれ、任意に変更可能である。例えば、側面11aと第1面11cとが成す角度、側面11aと第2面11eとが成す角度、側面11bと第1面11dとが成す角度、及び側面11bと第2面11fとが成す角度は、互いに異なってもよい。また、第1面11cと第1面11dとが成す角度、及び第2面11eと第2面11fとが成す角度はそれぞれ任意に変更可能である。例えば、第1面11cと第1面11dとが成す角度、及び第2面11eと第2面11fとが成す角度は互いに異なってもよい。
図1〜図3に示すように、第1鍔部12の形状は、第2鍔部13の形状と概ね同一である。図3に示すように、第1鍔部12及び第2鍔部13の幅方向Wdの寸法W12,W13は、第1鍔部12及び第2鍔部13の高さ方向Tdの寸法T12,T13よりも大きい。第1鍔部12及び第2鍔部13の高さ方向Tdの寸法T12,T13は、第1鍔部12及び第2鍔部13の長さ方向Ldの寸法L12,L13よりも大きい。第1鍔部12及び第2鍔部13の幅方向Wdの寸法W12,W13は巻芯部11の幅方向Wdの寸法W11よりも大きく、第1鍔部12及び第2鍔部13の高さ方向Tdの寸法T12,T13は巻芯部11の高さ方向Tdの寸法T11(図4参照)よりも大きい。なお、第1鍔部12の高さ方向Tdの寸法T12は、第1鍔部12から後述する突起12e,12f,12g,12h、第1端子電極21、第2端子電極22、第3端子電極23、及び第4端子電極24を除いた部分の高さ方向Tdの寸法である。また第2鍔部13の高さ方向Tdの寸法T13は、第2鍔部13から後述する突起13e,13f,13g,13h、第5端子電極25、第6端子電極26、第7端子電極27、及び第8端子電極28を除いた部分の高さ方向Tdの寸法である。
図1〜図3に示すように、第1鍔部12は、高さ方向Tdに面する第1面12a及び第2面12bと、幅方向Wdに面する一対の側面12c,12dとを有する。第1鍔部12には、第2面12bから高さ方向Tdに突出する4つの突起12e,12f,12g,12hが設けられている。4つの突起12e,12f,12g,12hは、幅方向Wdに間隔をあけて配置されている。突起12eの先端部には第1端子電極21が設けられ、突起12fの先端部には第2端子電極22が設けられ、突起12gの先端部には第3端子電極23が設けられ、突起12hの先端部には第4端子電極24が設けられている。各端子電極21〜24の平面視における形状は、長さ方向Ldの寸法が幅方向Wdの寸法よりも大きい矩形状である。各端子電極21〜24は、側面12cから側面12dに向けて第1端子電極21、第2端子電極22、第3端子電極23、及び第4端子電極24の順に配置されている。第1端子電極21及び第4端子電極24は、第1鍔部12の幅方向Wdの端部に設けられている。第1端子電極21及び第4端子電極24は、幅方向Wdにおいて巻芯部11よりも外側に位置している。第2端子電極22と第3端子電極23との幅方向Wdの間の距離は、第1端子電極21と第2端子電極22との幅方向Wdの間の距離、及び第3端子電極23と第4端子電極24との幅方向Wdの間の距離のそれぞれよりも大きい。
第2鍔部13は、高さ方向Tdに面する第1面13a及び第2面13bと、幅方向Wdに面する一対の側面13c,13dとを有する。第2鍔部13には、第2面13bから高さ方向Tdに突出する4つの突起13e,13f,13g,13hが設けられている。4つの突起13e,13f,13g,13hは、幅方向Wdに間隔をあけて配置されている。突起13eの先端部には第5端子電極25が設けられ、突起13fの先端部には第6端子電極26が設けられ、突起13gの先端部には第7端子電極27が設けられ、突起13hの先端部には第8端子電極28が設けられている。各端子電極25〜28の平面視における形状は、長さ方向Ldの寸法が幅方向Wdの寸法よりも大きい矩形状である。各端子電極25〜28は、側面13cから側面13dに向けて第5端子電極25、第6端子電極26、第7端子電極27、及び第8端子電極28の順に配置されている。第5端子電極25及び第8端子電極28は、第2鍔部13の幅方向Wdの端部に設けられている。第5端子電極25及び第8端子電極28は、幅方向Wdにおいて巻芯部11よりも外側に位置している。第6端子電極26と第7端子電極27との幅方向Wdの間の距離は、第5端子電極25と第6端子電極26との幅方向Wdの間の距離、及び第7端子電極27と第8端子電極28との幅方向Wdの間の距離のそれぞれよりも大きい。
各端子電極21〜28は、銀(Ag)を導電成分とする導電性ペーストを塗布し、焼き付けることによって形成されたり、ニッケル(Ni)−クロム(Cr)、ニッケル(Ni)−銅(Cu)をスパッタリングすることによって形成されたりする。また、必要に応じてめっき膜がさらに形成されてもよい。めっき膜の材料としては、例えば錫(Sn)、Cu、Ni等の金属や、Ni−Sn等の合金を用いることができる。なお、めっき膜を多層構造としてもよい。
図1及び図2に示すように、本実施形態のコア10には、直方体状の板状部材40が取り付けられる。板状部材40は、第1鍔部12の第1面12aと第2鍔部13の第1面13aとを連結するように設けられる。なお、板状部材40は省略されてもよい。板状部材40は、非導電性材料、具体的には、アルミナのような非磁性体、ニッケル(Ni)−亜鉛(Zn)系フェライトのような磁性体などから構成される。コア10は、例えば非導電性材料を圧縮した成形体を焼成して形成される。なお、板状部材40は、非導電性材料を圧縮した成形体を焼成して形成されるものに限られず、例えば、金属粉、フェライト粉などの磁性粉を含有する樹脂、シリカ粉などの非磁性粉を含有する樹脂、又はフィラーを含有しない樹脂を熱硬化させて形成してもよい。
直方体状の板状部材40の外表面は、コイル部品1を移動させるときの吸着面となる。このため、例えばコイル部品1が回路基板に実装されるときにコイル部品1を吸着搬送装置によって回路基板の上に移動させやすくなる。板状部材40は、コア10と同様に、磁性体で構成されてもよく、板状部材40が磁性体で構成された場合、コア10が板状部材40と協働して閉磁路を構成することができるため、インダクタンスの取得効率が向上する。
図1及び図2に示すように、コイル30は、第1ワイヤ31、第2ワイヤ32、第3ワイヤ33、及び第4ワイヤ34を含む。第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32は、コア10の巻芯部11に巻回されている。本実施形態では、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34は、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32における巻芯部11に巻回された部分の外側に巻回されている。第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34の巻回方向は、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32の巻回方向とは反対方向となる。
コイル30は、巻芯部11に巻回された巻回部30aと、巻回部30aの長さ方向Ldの両側の接続部30b,30cとを有する。巻回部30aは、各ワイヤ31〜34が巻芯部11に巻回されている部分である。巻回部30aを構成する第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34は、巻芯部11又は第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32に巻き付けられている部分である。接続部30b,30cは、各ワイヤ31〜34において、第1鍔部12の各端子電極21〜24及び第2鍔部13の各端子電極25〜28に接続される端部及びその近傍を含む。また、巻回部30aにおいて、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32の巻回数(ターン数)は、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34の巻回数(ターン数)と同じである。
図5及び図6に示すように、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32における巻芯部11に巻回された部分は、少なくとも一部に、互いに撚り合わせられた第1の撚線部35を有する。本実施形態では、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32における巻芯部11に巻回された部分の全てが第1の撚線部35を形成している。第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32は、互いに撚り合わせられた撚線状態で巻芯部11の周りにおいて実質的に同じ巻回数(ターン数)をもって螺旋状に巻回されている。なお、第1の撚線部35が形成される範囲は、巻芯部11に第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32が巻回される全ての部分に限られず、任意に変更可能である。一例では、巻芯部11に巻回される第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32の一部がバイファイラ巻きであってもよい。要するに、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32における巻芯部11に巻回される部分の少なくとも一部によって第1の撚線部35を形成していればよい。
図8(a)及び図8(b)は、第1の撚線部35を示している。なお、図8(a)及び図8(b)において、第1ワイヤ31についてハッチングを付して示すとともに第2ワイヤ32を白抜きで示し、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32の撚線状態を分かり易くしている。
図8(a)は、第1の撚線部35の撚線状態がS撚りとなる構成を示し、図8(b)は、第1の撚線部35の撚線状態がZ撚りとなる構成を示している。Z撚り及びS撚りは、第1ワイヤ31と第2ワイヤ32との撚り方向が互いに逆方向である。本実施形態では、第1の撚線部35の撚線状態は、S撚りである。なお、第1の撚線部35の撚線状態をZ撚りとしてもよい。
図8(a)及び図8(b)では、紙面の向こう側に巻芯部11の表面を構成する周面が存在していることが意図されている。図8(a)に示すように、巻芯部11の周面に対して垂直方向から見た第1の撚線部35の撚線状態において、長さLXの範囲で第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32に360度の撚りが付与されている。言い換えれば、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32の撚り数は、長さLXの範囲で「1」となる。この場合、長さLXを第1の撚線部35のねじりピッチと称する。
また、巻芯部11の周面に対して垂直方向から見て、第1ワイヤ31と第2ワイヤ32とが重なり合う状態の箇所を第1の撚線部35の節部37Aとする。節部37Aは、巻芯部11の周面に対して垂直方向において、第1ワイヤ31と第2ワイヤ32とが並んだ状態の箇所である。巻芯部11の周面に対して垂直方向から見て、第1ワイヤ31と第2ワイヤ32とが並んだ状態の箇所を第1の撚線部35の腹部38Aとする。腹部38Aは、巻芯部11の周面の面方向と平行な方向において、第1ワイヤ31と第2ワイヤ32とが重なり合っている箇所である。
図7は、コイル部品1の巻芯部11を長さ方向Ldと直交する平面で切った断面図であって、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32が巻芯部11に巻回された状態かつ第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34が巻回されていない状態を示している。図7では、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32が1ターンの部分が示されている。
図7に示すように、本実施形態の第1の撚線部35は、1ターンにおいて、巻芯部11の周面を構成する側面11a,11b、第1面11c,11d、及び第2面11e,11fのそれぞれに1つの節部37Aが配置されるように構成されている。また第1の撚線部35は、1ターンにおいて、巻芯部11の側面11a,11b、第1面11c,11d、及び第2面11e,11fの各面の間の稜線部分に腹部38Aが配置されるように構成されている。腹部38Aでは、巻芯部11の各周面に対して、第1ワイヤ31と第2ワイヤ32とがともに巻芯部11に接触している。このため、第1ワイヤ31と第2ワイヤ32とが安定して巻芯部11に巻回されており、巻き崩れが生じない。
また、巻芯部11を長さ方向Ldと直交する平面で切った断面において、巻芯部11の断面を構成する各辺の長さは互いに等しい。巻芯部11の側面11a,11b、第1面11c,11d、及び第2面11e,11fに第1の撚線部35の節部37Aが配置されるため、コイル30の1ターンにおいて、コイル30の巻回方向において、隣り合う節部37Aの間隔(ピッチ)は同じである。
図5に示すように、本実施形態の巻芯部11の側面11aでは、長さ方向Ldにおいて第1の撚線部35のうちの隣り合う節部37A同士が長さ方向Ldに沿って配列されている。また、図6に示すように、巻芯部11の第2面11e,11fのそれぞれでは、第1の撚線部35のうちの長さ方向Ldに隣り合う節部37A同士が長さ方向Ldに沿って配列されている。なお、図示しないが、第1面11c,11d及び側面11bについても同様に、長さ方向Ldにおいて第1の撚線部35のうちの隣り合う節部37A同士が長さ方向Ldに沿って配列されている。
図7に示すように、本実施形態では、第1の撚線部35における巻芯部11の側面11aに形成される第1側面部35aは、巻芯部11の側面11bに形成される第2側面部35bと同一形状である。ここで、同一形状とは、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32にかかわらず、節部37Aと腹部38Aとの位置関係が同じ場合をいう。第1ワイヤ31と第2ワイヤ32とが入れ替わったとしても、第1の撚線部35のコア10に対する傾きが異なってもよい。このとき、第1側面部35aの節部37A及び腹部38Aの数は、第2側面部35bの節部37A及び腹部38Aの数と等しい。本実施形態の第1側面部35aは1つの節部37Aを含み、第2側面部35bは1つの節部37Aを含む。第1の撚線部35が延びる方向において節部37Aの両側の腹部38Aが、巻芯部11の側面11aと第1面11c及び第2面11eとの間の稜線部分に配置されている。また第1の撚線部35が延びる方向において節部37Aの両側の腹部38Aが、巻芯部11の側面11bと第1面11d及び第2面11fとの間の稜線部分に配置されている。
第1ワイヤ31は、一方の端部31a及び他方の端部31bを有する。第1ワイヤ31の一方の端部31aは接続部30bに含まれ、他方の端部31bは接続部30cに含まれる。本実施形態では、第1ワイヤ31の一方の端部31aは第1ワイヤ31の巻き始めの端部を構成し、第1ワイヤ31の他方の端部31bは第1ワイヤ31の巻き終わりの端部を構成している。第1ワイヤ31の一方の端部31aは、第1鍔部12の第3端子電極23に接続されている。第1ワイヤ31の他方の端部31bは、第2鍔部13の第8端子電極28に接続されている。
第2ワイヤ32は、一方の端部32a及び他方の端部32bを有する。第2ワイヤ32の一方の端部32aは接続部30bに含まれ、他方の端部32bは接続部30cに含まれる。本実施形態では、第2ワイヤ32の一方の端部32aは第2ワイヤ32の巻き始めの端部を構成し、第2ワイヤ32の他方の端部32bは第2ワイヤ32の巻き終わりの端部を構成している。第2ワイヤ32の一方の端部32aは、第1鍔部12の第1端子電極21に接続されている。第2ワイヤ32の他方の端部32bは、第2鍔部13の第6端子電極26に接続されている。
第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32は、例えば、熱圧着、ろう付け、溶接等によって、第1端子電極21、第3端子電極23、第5端子電極25、及び第8端子電極28に接続されている。
第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34において第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32における巻芯部11に巻回された部分の外側に巻回された部分は、少なくとも一部に、互いに撚り合わせられた第2の撚線部36を有する。本実施形態では、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34において第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32における巻芯部11に巻回された部分の外側に巻回された部分の全てが第2の撚線部36を形成している。第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34は、互いに撚り合わせられた撚線状態で巻芯部11の周りにおいて実質的に同じ巻回数(ターン数)をもって螺旋状に巻回されている。本実施形態では、第2の撚線部36の撚線状態は、Z撚りである。なお、第2の撚線部36の撚線状態をS撚りとしてもよい。また第2の撚線部36が形成される範囲は、巻芯部11に第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32が巻回される部分のうちの全ての部分に限られず、任意に変更可能である。一例では、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32における巻芯部11に巻回される部分の外側に巻回される第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34の一部がバイファイラ巻きであってもよい。要するに、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34において第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32における巻芯部11に巻回される部分の外側に巻回される部分の少なくとも一部によって第2の撚線部36を形成していればよい。
図9(b)では、紙面の向こう側に巻芯部11の表面を構成する周面が存在していることが意図されている。図9(b)において、第3ワイヤ33についてハッチングを付して示すとともに第4ワイヤ34を白抜きで示し、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34の撚線状態を分かり易くしている。図9(b)に示すように、巻芯部11の各周面に対して垂直方向から見た第2の撚線部36の撚線状態において、長さLYの範囲で第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34に360度の撚りが付与されている。言い換えれば、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34の撚り数は、長さLYの範囲で「1」となる。この場合、長さLYを第2の撚線部36のねじりピッチと称する。
また、巻芯部11の周面に対して垂直方向から見て、第3ワイヤ33と第4ワイヤ34とが重なり合う状態の箇所を第2の撚線部36の節部37Bとする。節部37Bは、巻芯部11の周面に対して垂直方向において、第3ワイヤ33と第4ワイヤ34とが並んだ状態の箇所である。巻芯部11の周面に対して垂直方向から見て、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34が並んだ状態の箇所を腹部38Bとする。腹部38Bは、巻芯部11の周面の面方向と平行な方向において、第3ワイヤ33と第4ワイヤ34とが重なり合っている箇所である。
第1ワイヤ31と第2ワイヤ32との総撚り数(第1の撚線部35の撚り合わせの合計回数)が第3ワイヤ33と第4ワイヤ34との総撚り数(第2の撚線部36の撚り合わせの合計回数)よりも多い。これにより、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32において第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32が隣り合うように巻芯部11に巻回された部分の長さは、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34において第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32における巻芯部11に巻回された部分の外側で第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34が隣り合うように巻回された部分の長さと等しくなるように構成されている。ここで、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32が隣り合うとは、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32が接触した状態で隣り合う状態、及び、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32が僅かな隙間が形成された状態で隣り合う状態を含む。また、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34が隣り合うとは、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34が隣接する状態、及び、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34が僅かに離隔して隣り合う状態を含む。
第1の撚線部35が形成される第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32が接触した状態で隣り合う部分は、節部37Aを含む。巻回部30aにおける第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32がバイファイラ巻きされる部分が存在する場合では、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32が接触した状態で隣り合う部分は、長さ方向Ldにおいて第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32が接触する部分である。
第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32が僅かな隙間が形成された状態で隣り合う状態とは、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32が接触していない状態を含む。第1の撚線部35が形成される第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32における僅かな隙間が形成された状態で隣り合う部分は、腹部38Aを含む。巻回部30aにおける第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32がバイファイラ巻きされる部分が存在する場合では、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32が僅かな隙間が形成された状態で隣り合う部分は、例えば、長さ方向Ldにおいて第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32がワイヤ径以下の距離の隙間が形成された状態で隣り合う部分である。ワイヤ径は、各ワイヤ31〜34の直径である。
第2の撚線部36が形成される第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34が接触した状態で隣り合う部分は、節部37Bを含む。巻回部30aにおける第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34がバイファイラ巻きされる部分が存在する場合では、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34が接触した状態で隣り合う部分は、長さ方向Ldにおいて第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34が接触する部分である。
第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34が僅かな隙間が形成された状態で隣り合う状態とは、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34が接触していない状態を含む。第2の撚線部36が形成される第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34における僅かな隙間が形成された状態で隣り合う部分は、腹部38Bを含む。巻回部30aにおける第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34がバイファイラ巻きされる部分が存在する場合では、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34が僅かな隙間が形成された状態で隣り合う部分は、例えば、長さ方向Ldにおいて第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34がワイヤ径以下の距離の隙間が形成された状態で隣り合う部分である。
本実施形態では、図9(a)及び図9(b)に示すように、第1の撚線部35のねじりピッチ(長さLX)が第2の撚線部36のねじりピッチ(長さLY)よりも小さくなる。ここで、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32において第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32が隣り合うように巻芯部11に巻回された部分の長さが、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34において第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32における巻芯部11に巻回された部分の外側に、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34が隣り合うように巻回された部分の長さが等しいとは、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32において第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32が隣り合うように巻芯部11に巻回された部分の長さ、又は、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34において第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32における巻芯部11に巻回された部分の外側に、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34が隣り合うように巻回された部分の長さの3%以内の誤差を含む。
本実施形態では、図5及び図6に示すように、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32において巻芯部11に巻回された部分の全てにおいて第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32が隣り合っている。このため、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32において第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32が隣り合うように巻芯部11に巻回された部分の長さは、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32において巻芯部11に巻回された部分の長さと実質的に等しい。また本実施形態では、図1及び図2に示すように、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34において第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32における巻芯部11に巻回された部分の外側に巻回された部分の全てにおいて第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34が隣り合っている。このため、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34において第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32における巻芯部11に巻回された部分の外側に第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34が隣り合うように巻回された部分の長さは、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34において第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32における巻芯部11に巻回された部分の外側に巻回された部分の長さと実質的に等しい。
本実施形態の第2の撚線部36は、巻芯部11の第1面11c,11dにおいて1つの節部37Bが配置され、第2面11e,11fにおいて1つの節部37Bが配置されている。また第2の撚線部36は、巻芯部11の側面11aにおいて1つの節部37Bが配置され、側面11bにおいて1つの節部37Bが配置されている。
本実施形態の巻芯部11の第1面11c,11dでは、長さ方向Ldにおいて第2の撚線部36のうちの隣り合う節部37B同士が長さ方向Ldに沿って配列されている。本実施形態では、巻芯部11の第1面11c,11dにおける第2の撚線部36の節部37Bは、第1の撚線部35の腹部38Aの上に位置している。また巻芯部11の側面11aでは、長さ方向Ldにおいて第2の撚線部36のうちの隣り合う節部37B同士が長さ方向Ldに沿って配列されている。巻芯部11の側面11aにおける第2の撚線部36の節部37Bは、第1の撚線部35の節部37Aの上に位置している。なお、図示しないが、第2面11e,11f及び側面11bについても同様に、長さ方向Ldにおいて第2の撚線部36のうちの隣り合う節部37B同士が長さ方向Ldに沿って配列されている。本実施形態では、巻芯部11の第2面11e,11fにおける第2の撚線部36の節部37Bは、第1の撚線部35の腹部38Aの上に位置している。巻芯部11の側面11bにおける第2の撚線部36の節部37Bは、第1の撚線部35の節部37Aの上に位置している。
第3ワイヤ33は、一方の端部33a及び他方の端部33bを有する。第3ワイヤ33の一方の端部33aは接続部30bに含まれ、他方の端部33bは接続部30cに含まれる。本実施形態では、第3ワイヤ33の一方の端部33aは第3ワイヤ33の巻き始めの端部を構成し、第3ワイヤ33の他方の端部33bは第3ワイヤ33の巻き終わりの端部を構成している。第3ワイヤ33の一方の端部33aは、第2鍔部13の第7端子電極27に接続されている。第3ワイヤ33の他方の端部33bは、第1鍔部12の第4端子電極24に接続されている。
第4ワイヤ34は、一方の端部34a及び他方の端部34bを有する。第4ワイヤ34の一方の端部34aは接続部30bに含まれ、他方の端部34bは接続部30cに含まれる。本実施形態では、第4ワイヤ34の一方の端部34aは第4ワイヤ34の巻き始めの端部を構成し、第4ワイヤ34の他方の端部34bは第4ワイヤ34の巻き終わりの端部を構成している。第4ワイヤ34の一方の端部34aは、第2鍔部13の第5端子電極25に接続されている。第4ワイヤ34の他方の端部34bは、第1鍔部12の第2端子電極22に接続されている。
第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34は、例えば、熱圧着、ろう付け、溶接等によって、第2端子電極22、第4端子電極24、第5端子電極25、及び第7端子電極27に接続されている。
各ワイヤ31〜34は、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)等の良導体の導体線と、導体線を被覆するポリウレタン、ポリアミドイミド、フッ素系樹脂等の絶縁被膜とから構成されている。このため、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32における巻芯部11に巻回された部分において、第1ワイヤ31と第2ワイヤ32とは互いに電気的に絶縁されている。第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34における第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32の外側で巻回された部分において、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34とは互いに電気的に絶縁されている。
コイル部品1が回路基板PXに実装されたときに、各端子電極21〜28は、回路基板PXの主面と対向する。このとき、巻芯部11が回路基板PXの主面と平行となる。すなわち、本実施形態のコイル30は、第1ワイヤ31、第2ワイヤ32、第3ワイヤ33、及び第4ワイヤ34の巻回軸が回路基板PXの主面と平行となる横巻構造(横型)のコイルである。
図10に示すように、回路基板PXは、第1配線パターンP1、第2配線パターンP2、第3配線パターンP3、第4配線パターンP4、第5配線パターンP5、及び第6配線パターンP6を有する。第1配線パターンP1、第2配線パターンP2、及び第3配線パターンP3は、長さ方向Ldにおいて互いに同じ位置に配置され、幅方向Wdにおいて間隔をあけて配置されている。第4配線パターンP4、第5配線パターンP5、及び第6配線パターンP6は、長さ方向Ldにおいて互いに同じ位置に配置され、幅方向Wdにおいて間隔をあけて配置されている。第1配線パターンP1、第2配線パターンP2、及び第3配線パターンP3は、長さ方向Ldにおいて第4配線パターンP4、第5配線パターンP5、及び第6配線パターンP6と間隔をあけて配置されている。第1配線パターンP1の幅方向Wdの寸法は、第2配線パターンP2及び第3配線パターンP3のそれぞれの幅方向Wdの寸法よりも大きい。第6配線パターンP6の幅方向Wdの寸法は、第4配線パターンP4及び第5配線パターンP5のそれぞれの幅方向Wdの寸法よりも大きい。
本実施形態のコイル部品1は、回路基板PXに実装されたときに、第1ワイヤ31の他方の端部31bと、第3ワイヤ33の一方の端部33aとが電気的に接続され、第2ワイヤ32の一方の端部32aと、第4ワイヤ34の他方の端部34bとが電気的に接続されている。具体的には、図10に示すように、回路基板PXの第1配線パターンP1は、第2ワイヤ32の一方の端部32a(第1端子電極21)と、第4ワイヤ34の他方の端部34b(第2端子電極22)とを電気的に接続する。回路基板PXの第6配線パターンP6は、第1ワイヤ31の他方の端部31b(第8端子電極28)と、第3ワイヤ33の一方の端部33a(第7端子電極27)とを電気的に接続する。また、回路基板PXの第2配線パターンP2は、第1ワイヤ31の一方の端部31a(第3端子電極23)と電気的に接続されている。回路基板PXの第3配線パターンP3は、第3ワイヤ33の他方の端部33b(第4端子電極24)と電気的に接続されている。回路基板PXの第4配線パターンP4は、第4ワイヤ34の一方の端部34a(第5端子電極25)と電気的に接続されている。回路基板PXの第5配線パターンP5は、第2ワイヤ32の他方の端部32b(第6端子電極26)と電気的に接続されている。
このように、本実施形態では、回路基板PXにコイル部品1が実装されることによって、図11に示すような信号用トランスとして用いられるコイル部品1の等価回路が構成される。
第1鍔部12の第3端子電極23は平衡回路の入力プラス側端子を構成し、第4端子電極24は平衡回路の入力マイナス側端子を構成している。第5端子電極25は平衡回路の出力プラス側端子を構成し、第6端子電極26は平衡回路の出力マイナス側端子を構成している。第1ワイヤ31及び第3ワイヤ33は、信号用トランスの1次側巻線を構成し、第2ワイヤ32及び第4ワイヤ34は、信号用トランスの2次側巻線を構成している。第7端子電極27及び第8端子電極28によって第1センタータップが構成され、第1端子電極21及び第2端子電極22によって第2センタータップが構成されている。
次に、各ワイヤ31〜34の巻回方法について説明する。
図12は、コア10に第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32を巻回する巻線装置50の要部を示している。
先ず、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32を、テンショナ52,53とノズル51とに順に通し、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32の先端をコア10に接続する。第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32は、コイルボビン(図示略)から引き出される。テンショナ52は第1ワイヤ31に張力を加え、テンショナ53は第2ワイヤ32に張力を加える。
次に、巻線装置50は、ノズル51をコア10の周囲に公転させて、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32を撚りながらコア10の巻芯部11に巻き付ける。これにより、第1の撚線部35が形成される。ノズル51の公転方向によって、図8(a)に示すS撚りと、図8(b)に示すZ撚りとに、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32を撚り合わせることができる。
そして、巻線装置50は、ノズル51をコア10の周囲に公転させながら、コア10をノズル51の公転方向と同じ方向に自転させる。巻線装置50がコア10を自転させない場合、ノズル51の公転によって、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32は、撚り数が「1」、言い換えれば、2つの節部37Aを形成してコア10の巻芯部11に巻回される。したがって、巻線装置50がノズル51の公転速度とコア10の自転速度とを調整することによって、第1ワイヤ31と第2ワイヤ32との単位ターンあたりの撚り数とねじりピッチとをそれぞれ設定できる。
第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34についても同様に、巻線装置50によって、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32における巻芯部11に巻回された部分の外側に巻回される。
巻線装置50は、ノズル51を第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32が巻回されたコア10の周囲に公転させて、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34を撚りながら第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32における巻芯部11に巻回された部分の上に巻き付ける。これにより、第2の撚線部36が形成される。本実施形態では、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34を第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32における巻芯部11に巻回される部分の外側で巻回するときのノズル51の公転方向は、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32が巻芯部11を巻回するときのノズル51の公転方向とは反対方向である。ノズル51の公転方向によって、S撚りとZ撚りとに、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34を撚り合わせることができる。
そして、巻線装置50は、ノズル51をコア10の周囲に公転させながら、コア10をノズルの公転方向と同じ方向に自転させる。言い換えれば、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34を第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32における巻芯部11に巻回される部分の外側で巻回するときのコア10の自転方向は、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32が巻芯部11を巻回するときのコア10の自転方向とは反対方向である。巻線装置50がノズル51の公転速度とコア10の自転速度とを調整することによって、第3ワイヤ33と第4ワイヤ34との単位ターンあたりの撚り数とねじりピッチとをそれぞれ設定できる。
本実施形態では、第1ワイヤ31と第2ワイヤ32との総撚り数(第1の撚線部35の撚り合わせの合計回数)が第3ワイヤ33と第4ワイヤ34との総撚り数(第2の撚線部36の撚り合わせの合計回数)よりも多くなるようにノズル51の公転速度及びコア10の自転速度が調整される。
本実施形態の作用について説明する。
本願発明者は、コイル部品の挿入損失について研究を進めた結果、コイルが1次側のワイヤ及び2次側のワイヤの2本を2組用いて構成される場合、特定の1次側のワイヤと2次側のワイヤとの間の浮遊容量と、残りの1次側のワイヤと2次側のワイヤとの間の浮遊容量との差が増大するにつれてコイル部品の挿入損失が増大することを知見した。また本願発明者は、上述の浮遊容量の差が、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32において第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32が隣り合うように巻芯部11に巻回される部分の長さ(以下、「第1の長さ」という)と、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34において第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32の外側で第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34が隣り合うように巻回される部分の長さ(以下、「第2の長さ」という)との差が大きいほど、挿入損失が増大することを知見した。
例えばバイファイラ巻によってコイルが構成されると仮定すると、第3ワイヤ及び第4ワイヤは、第1ワイヤ及び第2ワイヤの外側に巻回されるため、第3ワイヤ及び第4ワイヤが隣り合うように巻回される1ターン分の長さは、第1ワイヤ及び第2ワイヤが隣り合うように巻芯部11に巻回される1ターン分の長さよりも長くなる。このため、第1の長さと第2の長さとを等しくするためには、第3ワイヤ及び第4ワイヤにおいて第1ワイヤ及び第2ワイヤにおける巻芯部11に巻回される部分の外側に第3ワイヤ及び第4ワイヤが隣り合うように巻回される部分のターン数(以下、「第2のターン数」という)を、第1ワイヤ及び第2ワイヤにおいて第1ワイヤ及び第2ワイヤが隣り合うように巻芯部11に巻回される部分のターン数(以下、「第1のターン数」という)よりも少なくする必要がある。しかし、第2のターン数を第1のターン数よりも少なくすると、コイル部品の2つのセンタータップにおいて電位差が生じる状態となり、コイル部品のノイズの抑制の能力が低下してしまう。
このような実情に鑑み、本願発明者は、挿入損失の低減策として、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32によって第1の撚線部35を形成し、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34によって第2の撚線部36を形成する構成を採用した。より詳細には、第1の撚線部35及び第2の撚線部36によって、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32において第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32が隣り合うようにコア10の巻芯部11に巻回される部分の長さが、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34において第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32における巻芯部11に巻回される部分の外側に第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34が隣り合うように巻回される部分の長さと等しくなる構成を採用した。具体的には、本願発明者は、第1の撚線部35の撚り数の合計回数を、第2の撚線部36の撚り数の合計回数よりも多くなる構成を採用した。これにより、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32のターン数及び第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34のターン数を変更することなく、撚り数によって巻芯部11に巻回される第1ワイヤ31の長さ及び第2ワイヤ32の長さと、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32における巻芯部11に巻回される部分の外側に巻回される第3ワイヤ33の長さ及び第4ワイヤ34の長さとをそれぞれ調整できる。このため、第1のターン数を第2のターン数と等しくできるため、2つのセンタータップにおける電位差を0又は0に近づけることができる。したがって、2つのセンタータップをグランドに接続した場合、コモンモード電流がグランドに流れるため、コイル部品1のノイズを低減できる。その結果、コイル部品1の挿入損失及びノイズの両方を低減できる。
さらに、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32が撚り合わせられることによって、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32を巻芯部11にバイファイラ巻きした場合と比較して、より高い周波数帯までインピーダンスを低減できるので、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32の漏れインダクタンスを低減できる。第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34も第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32と同様に、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34をバイファイラ巻きした場合と比較して、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34の漏れインダクタンスを低減できる。その結果、コイル部品1の挿入損失を一層低減できる。
本実施形態の効果について説明する。
(1)第1の撚線部35によって、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32において第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32が隣り合うようにコア10の巻芯部11に巻回された部分の長さが、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34において巻芯部11に巻回された第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32の外側に第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34が隣り合うように巻回された部分の長さと等しくなるように構成されている。これにより、第1ワイヤ31と第2ワイヤ32との間の浮遊容量と、第3ワイヤ33と第4ワイヤ34との間の浮遊容量との差が0になる又は0に近づく。加えて、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32によって第1の撚線部35が形成されることによって、第1ワイヤ31と第2ワイヤ32との間の漏れインダクタンスが小さくなる。このように浮遊容量の差及び漏れインダクタンスが小さくなることによって、コイル部品1の全周波数帯域における挿入損失が低減される。したがって、コイル部品1の通信帯域に対する汎用性を高めることができる。
(2)第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34において第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32における巻芯部11に巻回された部分の外側に巻回された部分は、互いに撚り合わせられた第2の撚線部36を形成している。この構成によれば、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34との間の漏れインダクタンスが小さくなるため、コイル部品1の挿入損失を一層低減できる。
(3)第1の撚線部35の撚り合わせの合計回数は、第2の撚線部36の撚り合わせの合計回数よりも多い。この構成によれば、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32のターン数及び第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34のターン数を変更せずに、巻芯部11に巻回される第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32の長さ、及び、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32における巻芯部11に巻回された部分の外側に巻回される第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34の長さを調整できる。
(4)第1の撚線部35の所定長さあたりの撚り合わせの回数は、第2の撚線部36の所定長さあたりの撚り合わせの回数よりも多い。言い換えれば、第1の撚線部35のねじりピッチは、第2の撚線部36のねじりピッチよりも短い。この構成によれば、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32のターン数及び第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34のターン数を変更せずに、巻芯部11に巻回される第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32の長さ、及び、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32における巻芯部11に巻回された部分の外側に巻回される第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34の長さを調整できる。
(5)コア10の巻芯部11の周面から直交する方向から見て、第1の撚線部35における第1ワイヤ31と第2ワイヤ32との腹部38Aは、巻芯部11の角部(稜線部分)に配置されている。この構成によれば、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32の巻崩れを抑制できる。
(6)第3ワイヤ33と第4ワイヤ34との節部37Bは、第1ワイヤ31と第2ワイヤ32との腹部38Aの上に配置されている。この構成によれば、第1ワイヤ31と第2ワイヤ32との節部37Aの上に第3ワイヤ33と第4ワイヤ34との節部37Aが配置される場合と比較して、コイル30の大型化を抑制できる。
(7)第2端子電極22と第3端子電極23との幅方向Wdの間の距離は、第1端子電極21と第2端子電極22との幅方向Wdの間の距離、及び第3端子電極23と第4端子電極24との幅方向Wdの間の距離のそれぞれよりも大きい。第6端子電極26と第7端子電極27との幅方向Wdの間の距離は、第5端子電極25と第6端子電極26との幅方向Wdの間の距離、及び第7端子電極27と第8端子電極28との幅方向Wdの間の距離のそれぞれよりも大きい。この構成によれば、第2ワイヤ32の一方の端部32aと第3ワイヤ33の他方の端部33bとの幅方向Wdの間の距離が大きくなり、第1ワイヤ31の他方の端部31bと第4ワイヤ34の一方の端部34aとの間の距離が大きくなるため、コイル部品1の1次側巻線と2次側巻線との間の絶縁距離を確保できる。
(変更例)
上記実施形態は本開示に関するコイル部品が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本開示に関するコイル部品は上記実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、上記実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、又は上記実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下の変更例において、上記実施形態の形態と共通する部分については、上記実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
・上記実施形態及び上記変形例において、第1の撚線部35の節部37Aの数は任意に変更可能である。
例えば、コイル30の1ターンにおいて巻芯部11の側面11a,11bに第1の撚線部35の節部37Aが複数形成されてもよい。また例えば、コイル30の1ターンにおいて巻芯部11の側面11aにおける第1の撚線部35の節部37Aの数が側面11bにおける節部37Aの数と異なってもよい。また例えば、コイル30の1ターンにおいて巻芯部11の側面11a及び側面11bの少なくとも一方に第1の撚線部35の節部37Aが形成されなくてもよい。
例えば、コイル30の1ターンにおいて巻芯部11の第1面11c,11dに第1の撚線部35の節部37Aが1個又は3個以上形成されてもよい。また例えば、コイル30の1ターンにおいて巻芯部11の第2面11e,11fに第1の撚線部35の節部37Aが1個又は3個以上形成されてもよい。また例えば、コイル30の1ターンにおいて巻芯部11の第1面11c,11dにおける第1の撚線部35の節部37Aの数が第2面11e,11fにおける節部37Aの数と異なってもよい。また例えば、巻芯部11の第1面11c,11dに第1の撚線部35の節部37Aが形成されなくてもよい。また例えば、巻芯部11の第2面11e,11fに第1の撚線部35の節部37Aが形成されなくてもよい。
・上記実施形態及び上記変形例において、第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32の長さ方向における第1の撚線部35の節部37Aの形成位置は、等間隔に限られず、不等間隔であってもよい。
・上記実施形態及び上記変形例において、第1の撚線部35の節部37Aの少なくとも1つは、巻芯部11の稜線部分に配置されてもよい。
・上記実施形態及び上記変形例において、第2の撚線部36の節部37Bの数は任意に変更可能である。
例えば、コイル30の1ターンにおいて巻芯部11の側面11a,11bに第2の撚線部36の節部37Bが複数形成されてもよい。また例えば、コイル30の1ターンにおいて巻芯部11の側面11aに対応する第2の撚線部36の節部37Bの数が側面11bに対応する節部37Bの数と異なってもよい。また例えば、コイル30の1ターンにおいて巻芯部11の側面11a及び側面11bの少なくとも一方に対応する第2の撚線部36の節部37Bが形成されなくてもよい。また例えば、コイル30の1ターンにおいて巻芯部11の側面11a,11bに対応する第2の撚線部36の節部37Bの数が、巻芯部11の側面11a,11bにおける第1の撚線部35の節部37Aの数よりも多くてもよい。この場合、第2の撚線部36の撚り数の合計回数は、第1の撚線部35の撚り数の合計回数よりも少なくなるように他の部分で第2の撚線部36の撚り数が調整される。
例えば、コイル30の1ターンにおいて巻芯部11の第1面11c,11dに第2の撚線部36の節部37Bが複数形成されてもよい。また例えば、コイル30の1ターンにおいて巻芯部11の第1面11c,11dに対応する第2の撚線部36の節部37Bの数が第1面11c,11dに対応する節部37Bの数と等しくてもよい。また例えば、コイル30の1ターンにおいて巻芯部11の第2面11e,11fに第2の撚線部36の節部37Bが複数形成されてもよい。また例えば、コイル30の1ターンにおいて巻芯部11の第2面11e,11fに対応する第2の撚線部36の節部37Bの数が第2面11e,11fに対応する節部37Bの数と等しくてもよい。また例えば、コイル30の1ターンにおいて巻芯部11の第1面11c,11dにおける第2の撚線部36の節部37Bの数が第2面11e,11fにおける節部37Bの数と異なってもよい。また例えば、巻芯部11の第1面11c,11dに第2の撚線部36の節部37Bが形成されなくてもよい。また例えば、巻芯部11の第2面11e,11fに第2の撚線部36の節部37Bが形成されなくてもよい。
・上記実施形態及び上記変形例において、第3ワイヤ33及び第4ワイヤ34の長さ方向における第2の撚線部36の節部37Bの形成位置は、等間隔に限られず、不等間隔であってもよい。
・上記実施形態において、コア10の巻芯部11の断面形状は、六角形状に限られず、任意に変更可能である。例えば、巻芯部11の断面形状は、四角形状、五角形状、又は八角形状であってもよい。例えば図13(a)に示すように、巻芯部11は、四角形状の断面形状を有し、巻芯部11の周面を構成する互いに平行な側面61,62と、第1面63と第2面64とを有する。巻芯部11に巻回された第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32からなる第1の撚線部35は、コイル30の1ターンにおいて6つの節部37Aを有する。図13(a)に示すとおり、第1の撚線部35では、側面61,62において1つの節部37Aが配置され、第1面63及び第2面64において2つの節部37Aが配置されている。なお、第1の撚線部35の個数は任意に変更可能である。第1の撚線部35では、例えば第1面63及び第2面64において1つの節部37Aが配置されてもよい。また例えば第1面63に配置される第1の撚線部35の節部37Aの数が第2面64に配置される節部37Aの数と異なってもよい。
例えば図13(b)に示すように、巻芯部11は、五角形状の断面形状を有し、5つの周面65を有する。巻芯部11に巻回された第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32からなる第1の撚線部35は、コイル30の1ターンにおいて5つの節部37Aを有する。図13(b)に示すとおり、第1の撚線部35では、各周面65において1つの節部37Aが配置されている。なお、第1の撚線部35の節部37Aの個数は任意に変更可能である。例えば各周面65において複数の節部37Aが配置される面や節部37Aが配置されない面が形成されてもよい。
例えば図13(c)に示すように、巻芯部11は、八角形状の断面形状を有し、8つの周面66を有する。巻芯部11に巻回された第1ワイヤ31及び第2ワイヤ32からなる第1の撚線部35は、コイル30の1ターンにおいて8つの節部37Aを有する。図13(c)に示すとおり、第1の撚線部35では、各周面66において1つの節部37Aが配置されている。なお、第1の撚線部35の節部37Aの個数は任意に変更可能である。例えば各周面66において複数の節部37Aが配置される面や節部37Aが配置されない面が形成されてもよい。
・上記実施形態において、コイル部品1の端子電極の数は8極に限られず、6極であってもよい。より詳細には、図14に示すように、コア10の第1鍔部12は、第1端子電極71、第2端子電極72、及び第3端子電極73を有する。第2鍔部13は、第4端子電極74、第5端子電極75、及び第6端子電極76を有する。第1ワイヤ31の一方の端部31aは、第2端子電極72に接続されている。第1ワイヤ31の他方の端部31bは、第6端子電極76に接続されている。第2ワイヤ32の一方の端部32aは、第1端子電極71に接続されている。第2ワイヤ32の他方の端部32bは、第5端子電極75に接続されている。第3ワイヤ33の一方の端部33aは、第6端子電極76に接続されている。第3ワイヤ33の他方の端部33bは、第3端子電極73に接続されている。第4ワイヤ34の一方の端部34aは、第4端子電極74に接続されている。第4ワイヤ34の他方の端部34bは、第1端子電極71に接続されている。これにより、コイル部品1を回路基板PXに実装しなくても、第1ワイヤ31の他方の端部31bと、第3ワイヤ33の一方の端部33aとが電気的に接続され、第2ワイヤ32の一方の端部32aと、第4ワイヤ34の他方の端部34bとが電気的に接続される。