以下の実施形態は、パネル取付方法に関し、詳しくは、建物の柱状の下地材に上下方向に距離をあけて固定された2枚のパネルの間において、下地材にさらに2枚のパネルを取り付ける方法に関する。
(1)概要
図1〜図5には、一実施形態のパネル取付方法が示されている。パネル取付方法は、建物の柱状の下地材1に上下方向に距離をあけて固定された上パネル2と下パネル3の間において、下地材1に中間上パネル4と中間下パネル5を取り付ける方法である。このパネル取付方法は、例えば、建物の外壁を構成する上下に並んだ複数のパネルのうちの一部を、新しいパネルに取り換える場合に、用いられる。
パネル取付方法では、吊り装置6と、吊り装置6に接続されるパネル支持具7と、吊り装置6に接続されるパネル吊り具8と、パネル4,5の取り付けのための取付具9と、中間下パネル5の保持のための引っ掛け具10とが用いられる。
以下では、図5に示す取付状態を基準として、下地材1に対してパネル2,3,4,5が位置する側を前方とし、その反対側を後方とし、この前後方向に対して直交する水平な方向を左右方向として、各構成について説明する。
(2)各構成についての説明
(2−1)下地材
下地材1は、建物の躯体を構成する柱や、縦胴縁等の、上下方向を長手方向とする柱状の部材である。パネル2,3,4,5のそれぞれは、横方向(左右方向)に間隔をあけて一列に並んだ複数の下地材1のそれぞれに対して取り付けられる。複数の下地材1は、複数の柱、または複数の縦胴縁、または少なくとも1つの柱と少なくとも1つの縦胴縁の組み合わせのいずれかである。
(2−2)パネル
パネル2,3,4,5は、外装材、内装材等として用いられる、サンドイッチパネルである。本実施形態では、パネル2,3,4,5の形状、寸法、及び材質は、互いに同じである。パネル2,3,4,5のそれぞれは、左右方向を長手方向とし、上下方向を短手方向とし、前後方向を厚み方向とする略矩形板状のパネルである(図7参照)。パネル2,3,4,5のそれぞれの左右方向の長さは、例えば、3〜7mである。
図5等に示すように、パネル2,3,4,5のそれぞれは、その下端部の表側の部分(前端部)に、下方に突出した覆い部11を有する。パネル2,3,4,5のそれぞれは、その下端部の前後方向の中央部分に、下方に突出した凸部12を有する。覆い部11の下端は、凸部12の下端よりも下方に位置する。パネル2,3,4,5のそれぞれは、その下端部の裏側の部分(後端部)に、下方に突出した第二覆い部13を有する。
パネル2,3,4,5のそれぞれは、その上端部の表側の部分(前端部)に、上方及び前方に向けて開放された凹段部14を有する。パネル2,3,4,5のそれぞれは、その上端部の前後方向の中央部分に、上方に開口した凹部15を有する。
凹段部14は、凹部15の前側に位置し、凹部15よりも下方まで延びている。凹段部14のうち、凹部15よりも下方の部分に、下地材1に向けて(つまり後方に)凹んだ凹条部16が設けられている。言い換えると、パネル2,3,4,5のそれぞれは、その上端部の表側の部分(前端部)に、凹条部16を有する。
パネル2,3,4,5は、上下に隣接するパネルのうち、上側のパネルの凸部12が下側のパネルの凹部15に嵌合し、上側のパネルの覆い部11が下側のパネルの凹段部14に収まり、上側のパネルの第二覆い部13が下側のパネルの凹部15の後側のスペースに収まることで、互いに接続される。
パネル2,3,4,5のそれぞれは、2枚の金属外皮17,18の間に芯材19を挟んだサンドイッチパネルである。金属外皮17,18のそれぞれは、フラットな金属板にロール加工やプレス加工をすることによって、所望の形状に形成されている。フラットな金属板は、厚みが0.27〜1.6mm程度であって、塗装鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板、ガルバリウム鋼板(登録商標)、エスジーエル(登録商標)鋼板等であるが、これに限定されない。
芯材19は、樹脂発泡体または繊維状無機材またはその組み合わせであり、断熱性や耐火性を有する。樹脂発泡体は、例えば、ポリイソシアヌレートフォームやウレタンフォームやフェノールフォームなどである。繊維状無機材は、例えば、ロックウールやグラスウールなどをバインダー等で固めたブロック体を複数並べて1枚の板状に配置したものである。芯材19のうちパネル外周部に位置する芯材は、例えば、石膏や珪酸カルシウムなどの耐火性の高い無機材である。
凹部15は、図8Aに示すように、金属外皮17の上端部を所定形状に折り曲げて形成した第一側壁150と、金属外皮18の上端部を所定形状に折り曲げて形成した第二側壁151とを含む。側壁150,151のそれぞれの内部は、中空であり、芯材19が充填されていない。凹条部16の底面(前方を向く面)は、第一側壁150の前面よりも後方に位置する。
凸部12は、金属外皮17の下側の先端部と、金属外皮18の下側の先端部と、この間に位置する芯材19とで構成される。覆い部11は、金属外皮17の一部をU字状に折り曲げて形成され、その内部が中空であり、芯材19が充填されていない。凹条部16は、金属外皮17の一部を折り曲げて形成され、第一側壁150と連続する。
図8A、図8Bに示すように、パネル2,3,4,5のそれぞれには、凹条部16から下地材1(後側)に向けて貫通する貫通孔20が設けられる。パネル2,3,4,5のそれぞれに形成される貫通孔20の数は、パネル2,3,4,5が取り付けられる下地材1の数に対応しており、本実施形態では、下地材1の数の2倍である。貫通孔20の形成は、例えば、施工現場で行われる。なお、貫通孔20の形成は、パネル2,3,4,5の製造工場で行われてもよい。
なお、上パネル2と下パネル3には、貫通孔20が設けられなくてもよい。上パネル2と下パネル3のそれぞれは、例えばドリルねじ等で、下地材1に対して固定される。下地材1へのパネル2,3の取り付けは、取付具9を用いて行ってもよい。
(2−3)吊り装置
吊り装置6は、クレーン等である。吊り装置6は、ロープ、ワイヤー、ベルト、チェーン等の吊り部材60を有する。吊り装置6は、吊り部材60を介して、パネル支持具7またはパネル吊り具8に接続される。なお、パネル支持具7に接続される吊り装置6と、パネル吊り具8に接続される吊り装置6とは、同じ吊り装置であってもよいし、別々の吊り装置であってもよい。
(2−4)パネル支持具
パネル支持具7は、図1A、図1B、図6、図7に示すように、支持するパネル(中間上パネル4)を、その上端部が露出するように下から支持する部材である。
図1Aに示すように、パネル支持具7は、パネルを下から支える底部材70と、パネルの厚み方向の両側(つまりパネルの前後)に位置するように、底部材70から上方に起立した第一起立部材71及び第二起立部材72を備える。さらにパネル支持具7は、第一起立部材71の上端部に設けられた接続部73と、第二起立部材72の上端部に設けられた第二接続部74と、パネルの上端部を支えるように、第二接続部74に着脱自在に取り付けられた上支持部材75を備える。さらにパネル支持具7は、底部材70に設けられた第三接続部76と、第三接続部76に着脱自在に取り付けられる引っ張り部材77(図1B参照)を備える。
図1A、図6に示すように、底部材70は、矩形板状のベース部700と、ベース部700上に設けられた受け部701とを備える。受け部701は、ベース部700のうち前後方向の中央部上に設けられている。受け部701は、左右方向を長手方向とするブロック状である。受け部701は、パネルの凸部12を受けて、パネルの覆い部11がベース部700に当たることを防ぐように構成されている。受け部701には、パネルの凸部12と第二覆い部13の間に挿入されるように、上方に突出した突出部702が設けられている。ベース部700の左右方向外側の面に、第三接続部76が設けられている。
ベース部700の前端部から、一対の第一起立部材71が左右方向に間隔をあけて、上方に突出している。ベース部700の後端部から、一対の第二起立部材72が左右方向に間隔をあけて、上方に突出している。本実施形態では、一対の第一起立部材71と一対の第二起立部材72は、上端の位置が互いに同じであり、受け部701上に支持されたパネルよりも上端の位置が低い。なお、一対の第二起立部材72と一対の第一起立部材71とは、上端の位置が互いに異なってもよい。
一対の第一起立部材71のそれぞれの上端部に、接続部73が設けられている。一対の第二起立部材72のそれぞれの上端部に、第二接続部74が設けられている。接続部73,74,76のそれぞれは、本実施形態では、アイボルトである。
底部材70と、一対の第一起立部材71と、一対の第二起立部材72とで囲まれる空間が、上方及び左右方向に開放されたパネル収容空間S1(図1A参照)である。
上支持部材75は、ロープ等である。図1A、図7に示すように、上支持部材75は、接続部73に接続された吊り部材60と第二接続部74に架け渡されるように取り付けられ、これにより、パネル収容空間S1に収容されたパネルの上端部を支持する。上支持部材75は、吊り部材60及び第二接続部74に対して、着脱自在である。
図6、図7に示すように、パネル支持具7は、底部材70、起立部材71,72、接続部73,74,76、上支持部材75、及び引っ張り部材77で構成される支持パーツ107を左右一対に備え、さらに、左右一対の支持パーツ107を一体に連結する連結部材78を備える。一対の支持パーツ107は、左右方向に間隔をあけて位置する。
連結部材78は、本実施形態では、上下一対の連結バー780で構成される。一対の支持パーツ107は、一方の支持パーツ107の一対の第一起立部材71のそれぞれと、他方の支持パーツ107の一対の第一起立部材71のそれぞれに対して、上下一対の連結バー780のそれぞれが固定されることで、一体化されている。一対の支持パーツ107間の間隔は、パネルを安定的に支持することができるように、パネルの左右長さに対応して適宜設定される。パネル支持具7は、パネルの左右方向の中央部に装着される。
(2−5)パネル吊り具
図3A、図3Bに示すように、パネル吊り具8は、パネル(中間下パネル5)の上端部の凹部15を挟み込むように取り付けられる。詳しくは、パネル吊り具8は、パネルの第一側壁150の前側に位置する前支持部80と、第二側壁151の後側に位置する後支持部81と、第一側壁150と第二側壁151の間に位置する中間支持部82を備える。
中間支持部82は、幅狭姿勢と幅広姿勢との間で回転可能である。幅狭姿勢にあるときの中間支持部82の前後長さは、第一側壁150と第二側壁151の間の距離と同じか、それよりも若干短く、幅広姿勢にあるときの中間支持部82の前後長さは、第一側壁150と第二側壁151の間の距離よりも長い。
パネル吊り具8は、前支持部80と幅広姿勢にあるときの中間支持部82によって、第一側壁150を挟み込み、かつ後支持部81と幅広姿勢にあるときの中間支持部82によって、第二側壁151を挟み込むことによって、パネルの上端部を支持する。パネル吊り具8は、中間支持部82を幅広姿勢から幅狭姿勢へと回転させることで、パネルの上端部の支持を解除して、パネルから取り外すことができる。
(2−6)取付具
図5に示すように、取付具9は、パネル(中間上パネル4または中間下パネル5)に貫通するように取り付けられる第一取付部材21と、下地材1に取り付けられる第二取付部材22と、第一取付部材21と第二取付部材22を固定する固定部材23を備える。取付具9はさらに、下地材1に第二取付部材22を固着するための固着具24を備える。
図8A、図8B、図9に示すように、第一取付部材21は、凹条部16に収まるように構成された長板部210と、長板部210の一部から突出し、パネルを貫通するように構成されたボルト211とを含む。本実施形態では、長板部210からは、一対のボルト211が突出している。長板部210は、その左右方向の長さが、下地材1の左右方向の長さよりも長い。一対のボルト211は、左右方向に間隔をあけて位置する。一対のボルト211の間の間隔は、パネル4,5に設けられた隣接する一対の貫通孔20の間の間隔と同じである。
第二取付部材22は、下地材1に引っ掛けられる引っ掛け部220と、引っ掛け部220から延長され、ボルト211が挿通される挿通部221とを含む。本実施形態では、引っ掛け部220は、下地材1を囲むように平面視コ字状に設けられている。コ字状の引っ掛け部220からは、一対の挿通部221が互いに逆方向(右方と左方)に突出している。
引っ掛け部220は、下地材1の後面に沿う後板部222と、後板部222の左右両端部から前方に突出し、下地材1の左右の側面に沿う一対の側板部223とを有する。後板部222、及び一対の側板部223のそれぞれは、矩形板状である。右側の側板部223の前端部から右方に向けて挿通部221が突出し、左側の側板部223の前端部から左方に向けて挿通部221が突出している。
一対の挿通部221のそれぞれは、本実施形態では、矩形板状であり、ボルト211が挿通される挿通孔224が厚み方向(前後方向)に貫通している。挿通孔224は、左右方向に長い長孔である。挿通孔224の上下方向の長さは、ボルト211よりも少し大きい。
引っ掛け部220の後板部222には、固着具24が挿通される貫通孔225が設けられている。本実施形態では、後板部222には、左右一対の貫通孔225が設けられている。
固定部材23は、挿通部221に挿通されたボルト211に取り付けられるナット230を含む。本実施形態では、第一取付部材21が一対のボルト211を有するため、固定部材23は、一対のナット230を含む。一対のナット230は、一対の挿通部221に挿通された一対のボルト211のそれぞれに取り付けられる。固定部材23はさらに、一対のワッシャー231と一対のスプリングワッシャー232を含む。
固着具24は、タッピンねじ等である。本実施形態では、取付具9は、一対の固着具24を備える。
上述した第一取付部材21は、中間上パネル4に対して、凹条部16に長板部210が収められ、一対のボルト211が一対の貫通孔20にそれぞれ挿通され、一対のボルト211のそれぞれの先端部が中間上パネル4から後側に突出するように、取り付けられる。
第二取付部材22は、引っ掛け部220が下地材1を囲むように配されて、下地材1に引っ掛けられ、一対の挿通部221の挿通孔224に、第一取付部材21の一対のボルト211のうち中間上パネル4から後側に突出した部分がそれぞれ挿通される。引っ掛け部220の一対の貫通孔225には、一対の固着具24がそれぞれ挿通され、これにより、第二取付部材22は下地材1に固着される。第二取付部材22が下地材1に固着された状態で、第二取付部材22の一対の挿通部221の前面と下地材1の前面とは、略面一となる。
固定部材23の一対のナット230は、一対の挿通部221に挿通された一対のボルト211のそれぞれに締結することで、長板部210と一対の挿通部221とが中間上パネル4を挟み込む状態で、第一取付部材21と第二取付部材22とを固定する。一対のボルト211には、一対のワッシャー231と一対のスプリングワッシャー232もそれぞれ挿通される。取付部材21、22を固定するとき、一対のナット230は、長板部210との間で中間上パネル4を挟み込む一対の挿通部221に、スプリングワッシャー232及びワッシャー231を介して接する締結位置に位置する。
一対のナット230を、締結位置よりも後側の仮止め位置に配することで、第一取付部材21は、第二取付部材22に対して回転可能に取り付けられる(仮止めされる)。この状態のとき、第一取付部材21は、一対のボルト211のうち、第二取付部材22の挿通孔224に挿通された部分を中心にして、左右方向に平行な軸回りに回転可能である。
なお、取付具9は、中間下パネル5に対しても同様の方法で取り付けることができる。
(2−7)引っ掛け具
引っ掛け具10は、図3Bに示すように、中間下パネル5の上端部に取り付けられ、下地材1に対して引っ掛けられる。引っ掛け具10は、中間下パネル5に対して着脱自在である。
本実施形態では、引っ掛け具10は、取付具9の第一取付部材21のボルト211に着脱自在に取り付けられるナット部100と、ナット部100と一体のリング部101と、リング部101に接続されたワイヤー等の引っ掛け部102を有する。ナット部100とリング部101は、例えば、アイナットで構成される。
本実施形態では、引っ掛け具10は、一対のナット部100と一対のリング部101とを有する。一対のナット部100は、中間下パネル5の上端部に取り付けた第一取付部材21の一対のボルト211の先端部にそれぞれ取り付けられ、一対のリング部101には、引っ掛け部102が環状をなすように接続される。環状の引っ掛け部102は、下地材1に引っ掛けられる。
(3)パネル取付方法
続いて、図1〜図5に示すパネル取付方法について説明する。パネル取付方法は、下地材1に上下方向に距離をあけて固定された上パネル2と下パネル3の間において、下地材1に中間上パネル4と中間下パネル5を取り付ける方法である。パネル取付方法は、第一乃至第六工程を備える。以下、第一乃至第六工程のそれぞれについて詳しく説明する。
(3−1)第一工程
第一工程では、中間上パネル4を、その上端部が上パネル2の下端部に接続される接続位置に配置する。
詳しくは、まず、パネル支持具7によって下から支持した中間上パネル4を、パネル支持具7及び吊り部材60を介して吊り装置6で吊り支持する。このとき、中間上パネル4の上端部は、パネル支持具7に取り付けた上支持部材75によって支え、これにより、中間上パネル4を鉛直方向に対して略平行な姿勢で吊り支持する(図7参照)。
次いで、図1Aに示すように、吊り装置6によって、中間上パネル4を吊りつつ、引っ張り部材77を、下地材1よりも後側から引っ張って、中間上パネル4を下地材1の前面に沿わせる。
次いで、図1Bに示すように、中間上パネル4の上端部の凹条部16に第一取付部材21を貫通させて取り付け、第一取付部材21の一対のボルト211のうち、中間上パネル4から下地材1側(後側)に突出した部分を、第二取付部材22の一対の挿通部221に挿通させ、第二取付部材22の引っ掛け部220を下地材1に引っ掛ける。次いで、第一取付部材21の一対のボルト211に、一対のワッシャー231、一対のスプリングワッシャー232、及び一対のナット230をこの順にそれぞれ取り付ける。このとき、一対のナット230のそれぞれは、一対の挿通部221に一対のワッシャー231及び一対のスプリングワッシャー232を介して接する締結位置よりも手前(後側)の仮止め位置で止める。
次いで、パネル支持具7から上支持部材75を取り外し、中間上パネル4を吊り装置6によって上方に移動させる。このように中間上パネル4を下地材1の前面に沿って上方に移動させることによって、中間上パネル4は、図2Aに示すように、その上端部が上パネル2の下端部に接続される接続位置に配置される。
接続位置にあるとき、上パネル2の凸部12が中間上パネル4の凹部15に嵌まり、上パネル2の覆い部11が中間上パネル4の凹段部14に収まり、上パネル2の第二覆い部13が中間上パネル4の凹部15の後側のスペースに収まる。このとき、第一取付部材21の長板部210の前側には、上パネル2の覆い部11が位置して、長板部210が覆い隠される。
(3−2)第二工程
第二工程では、接続位置にある中間上パネル4の上端部を、下地材1に回転可能に取り付ける。
詳しくは、まず、図2Bに示すように、第二取付部材22の引っ掛け部220を、一対の固着具24によって下地材1に固着する。これにより、中間上パネル4は、その上端部が下地材1に回転可能に取り付けられ、下地材1によって支持される。このとき、中間上パネル4は、その上端部に取り付けられた第一取付部材21の一対のボルト211のうち、第二取付部材22の挿通孔224に挿通された部分を中心にして、左右方向に平行な軸回りに回転可能である。
次いで、中間上パネル4からパネル支持具7を取り外す。パネル支持具7が取り外された後、中間上パネル4は、下地材1だけで支持される。
(3−3)第三工程
第三工程では、中間下パネル5を、その上側の部分ほど下地材1から離れて位置するように傾いた傾斜姿勢で下パネル3の上に載せ、中間下パネル5を引っ掛け具10を介して下地材1に引っ掛けることで、傾斜姿勢で中間下パネル5を保持する。
詳しくは、まず、図3Aに示すように、パネル吊り具8によって上端部を支持した中間下パネル5を、パネル吊り具8に接続された吊り部材60を介して吊り装置6で吊り支持する。
次いで、図3Bに示すように、中間下パネル5の下端部を後側へと動かして、中間下パネル5の下端部を、下パネル3の上に載せる。このとき、中間下パネル5は、例えば、中間下パネル5の凸部12の一部が、下パネル3の凹部15の底面に当たるように、下パネル3の上に載せられる。下パネル3の第一側壁150は、中間下パネル5の凸部12に押されることで変形可能であり、これにより、中間下パネル5は、その上側の部分ほど下地材1から離れて位置するように傾いた傾斜姿勢で、下パネル3の上に載せられる。
次いで、傾斜姿勢の中間下パネル5の上端部に引っ掛け具10を取り付け、引っ掛け具10を下地材1に引っ掛ける。本実施形態では、中間下パネル5の上端部に第一取付部材21を取り付け、第一取付部材21の一対のボルト211のうち、中間下パネル5よりも下地材1側(後側)に突出した部分に、引っ掛け具10の一対のナット部100を取り付ける。このとき、引っ掛け具10の引っ掛け部102が下地材1に引っ掛かるように、一対のボルト211への一対のナット部100の取り付けを行う。
次いで、傾斜姿勢の中間下パネル5の上端部から、パネル吊り具8を取り外す。傾斜姿勢の中間下パネル5の下端部は、下パネル3によって支えられ、傾斜姿勢の中間下パネル5の上端部は、引っ掛け具10を介して下地材1によって支持される。
(3−4)第四工程
第四工程では、中間上パネル4を、その下側の部分ほど下地材1から離れて位置するように傾いた傾斜姿勢にし、傾斜姿勢の中間上パネル4の下端部の位置(前後位置)と、傾斜姿勢の中間下パネル5の上端部の位置(前後位置)とを、上下に合わせる。
詳しくは、図4に示すように、中間上パネル4は、その下端部を前側に引っ張って、下側の部分ほど前側に位置するように傾斜した傾斜姿勢にし、中間下パネル5は、その上端部を後側に動かして、中間下パネル5の上端部を、傾斜姿勢の中間上パネル4の下端部の真下に配置する。このとき、例えば、中間上パネル4の覆い部11が、中間下パネル5の第一側壁150よりも前側に位置し、中間下パネル5の凹部15内に中間上パネル4の凸部12の先端部(下端部)が入り込むように、中間上パネル4と中間下パネル5とを配置する。中間下パネル5の移動は、中間下パネル5の上端部を前側から後側へと押すか、中間下パネル5の後側から引っ掛け具10を引っ張るか、またはその両方によって行われる。
ここで、パネル4,5のそれぞれは、姿勢を変えるときに、隣接する他のパネルと接触する部分(第一側壁150、第二側壁151、及び覆い部11)が変形可能である。そのため、パネル4,5のそれぞれは、相手側のパネルに一部接触しながら、姿勢を変えることも可能である。
(3−5)第五工程
第五工程では、中間上パネル4と中間下パネル5を、共に傾斜姿勢から下地材1に対して平行な姿勢へと移動させる。
詳しくは、傾斜姿勢の中間上パネル4の下端部と傾斜姿勢の中間下パネル5の上端部とを、下地材1に向けて(後側)に移動させることで、パネル4,5を下地材1に対して平行な姿勢へと移動させる。
中間下パネル5の移動は、中間下パネル5の上端部を前側から後側へと押すか、中間下パネル5の後側から引っ掛け具10を引っ張るか、またはその両方によって行われる。また、中間上パネル4の移動は、中間上パネル4の下端部を前側から後側へと押すことによって行われる。なお、中間上パネル4の移動は、中間上パネル4の下端部の凸部12が中間下パネル5の上端部の凹部15内に一部入り込んだ状態にある場合には、中間下パネル5の上端部を後側に移動させ、中間下パネル5の第一側壁150によって中間上パネル4の凸部12を後側へと押すことによって、行うことも可能である。
パネル4,5が下地材1に対して平行な姿勢に移動したとき、パネル4,5は、面一に並ぶ。このとき、中間下パネル5の上端部に取り付けられている第一取付部材21の長板部210は、中間上パネル4の覆い部11によって前側(表側)から覆われる。またこのとき、上パネル2、中間上パネル4、中間下パネル5、及び下パネル3は、面一に並び、上下に隣接するパネル同士が、凸部12と凹部15との嵌合によって接続される。
(3−6)第六工程
第六工程では、中間上パネル4の上端部と中間下パネル5の上端部のそれぞれを、下地材1に固定する。
詳しくは、中間下パネル5の上端部は、下記のようにして、下地材1に対して固定される。まず、中間下パネル5の上端部を貫通する第一取付部材21の一対のボルト211から、引っ掛け具10の一対のナット部100を取り外し、その後、一対のボルト211に、第二取付部材22の一対の挿通部221を挿通させる。次いで、一対の挿通部221に挿通された一対のボルト211に、一対のナット230をそれぞれ取り付けて締結し、第一取付部材21と第二取付部材22とを固定する。第二取付部材22は、一対の固着具24を用いて、下地材1に固着する。
また、中間上パネル4の上端部は、下記のようにして、下地材1に対して固定される。すなわち、中間上パネル4の上端部を貫通する一対のボルト211に取り付けられた一対のナット230をそれぞれ仮止め位置から締結位置まで回し進めて、第一取付部材21と第二取付部材22とを固定する。
(4)作用効果
以上説明した本実施形態のパネル取付方法では、施工者がパネル4,5の姿勢を切り替える作業を行う際(つまり、第四工程と第五工程を行う際)に、中間上パネル4は取付具9を介して下地材1に支持され、かつ中間下パネル5は引っ掛け具10を介して下地材1に支持された状態とすることができる。
そのため、本実施形態のパネル取付方法では、パネル4,5の姿勢の切り替えの作業のときに、パネル4,5の荷重全てを人力で支える必要がなくて、施工者にかかる負担を抑制することができる。また、本実施形態のパネル取付方法では、この作業の際に、パネル4,5が下地材1によって支持されるため、パネル4,5の落下を防いで、安全性の向上を図ることができる。
また、本実施形態のパネル取付方法では、パネル4,5が下地材1によって支持される前の段階において、中間上パネル4はパネル支持具7を介して吊り装置6によって吊り支持され、かつ中間下パネル5はパネル吊り具8を介して吊り装置6によって吊り支持される。そのため、本実施形態のパネル取付方法では、パネル4,5が下地材1によって支持される前の段階においても、パネル4,5の荷重を人力で支える必要がなくて、施工者にかかる負担を抑えることができる。
また、本実施形態のパネル取付方法では、引っ張り部材77や引っ掛け具10を利用して室内側(後側)からパネル4,5の姿勢をコントロールすることができる。そのため、本実施形態のパネル取付方法では、外部(パネル4,5の前側)に仮設足場を設けなくてもよく、また、高所作業用の業者を手配しなくてもよいため、コスト削減が図れ、また、仮設足場の設置が困難な狭小地等でも施工が可能である。
(5)変形例
続いて、上述したパネル取付方法の変形例について説明する。
パネル取付方法は、外壁の改修に限らず、新規の外壁の施工に用いてもよいし、また、内壁の改修や、新規の内壁の施工に用いてもよい。
取付具9は、上述の構造に限らず、適宜変更可能である。例えば、第一取付部材21は、長板部210を有さず、一対のボルト211だけで構成されてもよい。また、取付具9は、図10に示す変形例のように、第一取付部材21が、ボルト211を1つだけ有し、第二取付部材22が、平面視L字状の引っ掛け部220と、1つの挿通部221を有してもよい。
引っ掛け具10は、第一取付部材21のボルト211に取り付けるのではなく、中間下パネル5の上端部に着脱可能に直接取り付けてもよい。
パネル2,3,4,5は、形状、寸法、及び材質が、互いに同じでなくてもよい。例えば、上パネル2は、その上方に他のパネルが接続されない場合、上パネル2の上端部に、接続のための構造(凹段部14、凹部15、及び凹条部16)を備えなくてもよい。また、下パネル3は、その下方に他のパネルが接続されない場合、下パネル3の下端部に、接続のための構造(覆い部11、凸部12、及び第二覆い部13)を備えなくてもよい。また、パネル2,3,4,5は、上下方向の長さが互いに異なってもよい。
接続位置にある中間上パネル4の上端部を、下地材1に回転可能に取り付ける方法としては、上述の取付具9を用いた方法に限らず、その他の方法であってもよい。例えば、下地材1に後側からドリルビスを打ち込み、このドリルビスによって中間上パネル4の上端部を下地材1に回転可能に取り付けてもよい。
(6)まとめ
以上説明した実施形態及びその変更例のパネル取付方法のように、第一の態様のパネル取付方法は、下記の特徴を備える。
すなわち、第一の態様のパネル取付方法は、建物の柱状の下地材1に上下方向に距離をあけて固定された上パネル2と下パネル3の間において、下地材1に中間上パネル4と中間下パネル5を取り付けるパネル取付方法である。第一の態様のパネル取付方法は、第一乃至第六工程を備える。
第一工程では、中間上パネル4を、その上端部が上パネル2の下端部に接続される接続位置に配置する。第二工程では、接続位置にある中間上パネル4の上端部を、下地材1に取り付ける。
第三工程では、中間下パネル5を、その上側の部分ほど下地材1から離れて位置するように傾いた傾斜姿勢で下パネル3の上に載せ、中間下パネル5を引っ掛け具10を介して下地材1に引っ掛けることで、傾斜姿勢で中間下パネル5を保持する。
第四工程では、中間上パネル4を、その下側の部分ほど下地材1から離れて位置するように傾いた傾斜姿勢にし、傾斜姿勢の中間上パネル4の下端部の位置と、傾斜姿勢の中間下パネル5の上端部の位置とを上下に合わせる。
第五工程では、中間上パネル4と中間下パネル5を、共に傾斜姿勢から下地材1に対して平行な姿勢へと移動させる。第六工程では、中間上パネル4の上端部と中間下パネル5の上端部のそれぞれを、下地材1に固定する。
上記の特徴を備えることで、第一の態様のパネル取付方法では、中間上パネル4の上端部が下地材1に取り付けられた状態(つまり下地材1によって支持された状態)で、中間上パネル4の姿勢を切り替える作業を施工者は行うことができる。
加えて、第一の態様のパネル取付方法では、中間下パネル5の下端部が下パネル3の上に載せられ、かつ中間下パネル5が引っ掛け具10を介して下地材1に引っ掛けられることで、傾斜姿勢の中間下パネル5を下地材1によって支持することができる。
したがって、第一の態様のパネル取付方法では、パネル4,5が下地材1によって支持された状態で、施工者はパネル4,5の取付作業が行えるため、施工者にかかる負担を抑制でき、かつ安全性を向上させることができる。
また、上述した実施形態のパネル取付方法のように、第二の態様のパネル取付方法は、第一の態様のパネル取付方法の特徴に加えて、さらに下記の特徴を備える。
すなわち、第二の態様のパネル取付方法では、第一工程と第二工程は、吊り装置6に接続されたパネル支持具7によって、中間上パネル4を上端部が露出するように下から支持した状態で行われる。
上記の特徴を備えることで、第二の態様のパネル取付方法では、中間上パネル4を吊り装置6によって吊った状態で、中間上パネル4の接続位置への移動と、中間上パネル4の下地材1への取付を行うことができる。そのため、第二の態様のパネル取付方法では、下地材1によって中間上パネル4が支持される前の段階においても、施工者にかかる負担を抑制することができる。
また、第二の態様のパネル取付方法では、パネル支持具7によって、中間上パネル4を上端部が露出するように下から支持することで、中間上パネル4を接続位置へ移動させる際に、パネル支持具7が邪魔にならない。
また、上述した実施形態のパネル取付方法のように、第三の態様のパネル取付方法は、第一または第二の態様のパネル取付方法の特徴に加えて、下記の特徴を備える。
すなわち、第三の態様のパネル取付方法では、第三工程は、吊り装置6に接続されたパネル吊り具8によって中間下パネル5の上端部を支持した状態で行われる。
上記の特徴を備えることで、第三の態様のパネル取付方法では、中間下パネル5を吊り装置6によって吊った状態で、中間下パネル5の移動と、中間下パネル5を引っ掛け具10を介して下地材1に引っ掛ける作業とを行うことができる。そのため、第三の態様のパネル取付方法では、下地材1によって中間下パネル5が支持される前の段階においても、施工者にかかる負担を抑制することができる。
また、第三の態様のパネル取付方法では、パネル吊り具8によって、中間下パネル5の上端部を支持したことで、中間下パネル5を下パネル3の上に載せる際に、パネル吊り具8が邪魔にならない。
また、上述した実施形態のパネル取付方法のように、第四の態様のパネル取付方法は、第一乃至第三のいずれかの態様のパネル取付方法の特徴に加えて、下記の特徴を備える。
すなわち、第四の態様のパネル取付方法においては、第三工程では、中間下パネル5の上端部に取り付けられた取付部材(第一取付部材21)に対して、引っ掛け具10を取り付ける。第六工程では、取付部材から引っ掛け具10を取り外し、取付部材を下地材1に固定する。
上記の特徴を備えることで、第四の態様のパネル取付方法では、中間下パネル5に取り付けられる取付部材(第一取付部材21)を利用して、中間下パネル5への引っ掛け具10の取り付けと、下地材1への中間下パネル5の固定の両方を行うことができ、部品点数を抑えることができる。
また、上述した実施形態のパネル取付方法のように、第五の態様のパネル取付方法は、第一乃至第四のいずれかの態様のパネル取付方法の特徴に加えて、下記の特徴を備える。
すなわち、第五の態様のパネル取付方法では、上パネル2は、その下端部の表側の部分に、下方に突出した覆い部11を有し、中間上パネル4は、その上端部の表側の部分に、下地材1に向けて凹んだ凹条部16を有する。
第二工程では、中間上パネル4を凹条部16から下地材1に向けて貫通した取付部材(第一取付部材21)を用いて、中間上パネル4の上端部が下地材1に取り付けられ、取付部材は、中間上パネル4が接続位置にあるときに、覆い部11によって覆われる。
上記の特徴を備えることで、第五の態様のパネル取付方法では、中間上パネル4の上端部を貫通して、中間上パネル4の上端部を下地材1に取り付ける取付部材を、上パネル2の覆い部11によって覆うことができる。これにより、第五の態様のパネル取付方法では、中間上パネル4のうち、取付部材が貫通した部分の防水性の向上が図れ、また、取付部材がパネル表側に目立つことを抑制することができる。
以上、本発明を添付図面に示す形態に基づいて説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更が可能である。