<第1実施形態>
図1は、温度測定器(以下「測定器200」と称される)に取り付けられた第1実施形態のセンサ素子100の概略的な斜視図である。図1を参照して、測定器200及びセンサ素子100が説明される。
図1には、「前」、「奥」、「左」及び「右」といった方向を表す用語が示されている。これらの用語は、測定器200に相対した使用者を基準に用いられている。「前」との用語は、使用者に近い方向を表している。「奥」との用語は、使用者から遠い方向を表している。「右」との用語は、使用者にとって右側の方向を表している。「左」との用語は、使用者にとって左側の方向を表している。これらの用語に加えて、「上」及び「下」との用語が用いられる。「上」及び「下」との用語は、使用時における測定器200及びセンサ素子100を基準に用いられる。
測定器200は、筐体210と、筐体210の上で構築されたインターフェース部220と、筐体210の上面から上方に突出した取付部位231,232,233と、筐体210内に配置された内部部品(図示せず)とを備えている。筐体210は、内部部品を保護する部位である。インターフェース部220は、使用者によって操作されたり、使用者が測定対象物(たとえば、半田ごてやツイーザといった半田を溶融する加熱工具)の温度を確認するために用いられたりする部位である。取付部位231,232,233は、センサ素子100を筐体210上で保持する部位である。内部部品は、センサ素子100から出力された電圧信号に基づいて測定対象物の温度を演算したり、センサ素子100の保持を補助したりする部位である。
筐体210は、奥方に配置された第1筐体部211と、第1筐体部211の前面から前方に突出するように形成された第2筐体部212とを含んでいる。第2筐体部212は、第1筐体部211よりも薄く形成されている。
取付部位231,232,233は、互いに離間した位置で第2筐体部212の上面から突出している。取付部位231,232,233は、左右方向において互いに異なる位置に配置されている。取付部位231,232,233は、これらの上端を結ぶ線分が略正三角形を描くように配置されている。これらの取付部位231,232,233は、以下の説明において「取付部位230」と総称される。
取付部位230は2段円筒形状を有している。取付部位230の下部は、取付部位230の上部よりも太い。したがって、取付部位230の下部の上面は、取付部位230の上部の下端から径方向に張り出している。取付部位230の下部の上面は、センサ素子100を取付部位230の下部の上端の高さ位置で保持するために利用される。取付部位230の下部の上面は、以下の説明において「保持面234」と称される。
奥側に配置された取付部位231は、前方及び前方とは反対の奥方へスライド移動する可動部位である。取付部位231の前方に配置された左右の取付部位232,233は、取付部位231とは異なり変位しない不動部位である。取付部位232,233は、センサ素子100から出力された電圧信号を受信する測定端子として機能する。一方、取付部位231はセンサ素子を保持するための保持部位として用いられている。
筐体210内に配置された上述の内部部品は、奥側の取付部位231を奥方へ付勢するように構成された付勢機構(図示せず)と、左右の取付部位232,233からの電圧信号から測定対象物の温度を演算するように構成された演算回路(図示せず)とを含んでいる。演算回路は、演算処理の結果得られた測定対象物の温度を表す温度データに変換するとともに、温度データをインターフェース部220へ出力するように構成されている。すなわち、演算回路は、取付部位232,233間に生じた電位差を測定する電圧計としての機能と、測定された電位差から温度データを生成する機能と、生成された温度データを出力する機能とを有している。電圧計として機能する演算回路の電圧測定端子として、左右の取付部位232,233が利用されている。
インターフェース部220は、演算回路から温度データを受け取るように構成されている。インターフェース部220は、第1筐体部211の上面に形成されている。インターフェース部220は、温度データが表す温度をデジタル表示するディスプレイ221と、ディスプレイ221の前方に配置された電源ボタン222及び保持ボタン223とを含んでいる。電源ボタン222は、測定器200への電力供給及び電力供給の停止のために操作される。保持ボタン223は、測定された温度の最大値をディスプレイ221が表示し続けることを要求するために操作される。
センサ素子100が、図1乃至図3を参照して説明される。図2は、センサ素子100の概略的な底面図である。図3は、図2に示されているx軸上でのセンサ素子100の概略的な断面図である。図2のx軸の延設方向は、図1の「左」及び「右」に対応している。図2のy軸の延設方向は、図1の「前」及び「奥」に対応している。
センサ素子100は、取付部位231,232,233に取り付けられるように構成された熱電対110と、熱電対110上に配置された円形の被覆部材120とを含んでいる。
熱電対110は、互いに交差するように延設された2つの導体線111,112と、測定対象物の温度の測定に用いられる熱電対110の接点(すなわち、導体線111,112の交差部位)上に配置された接点部材113とを含んでいる。
導体線111,112は、測定対象物の温度に応じた電位差が得られるように一般的な熱電対に利用される異種金属から形成されている。本実施形態に関して、導体線111,112のうち一方はアルメル線であり、これらのうち他方はクロメル線である。
導体線111は、導体線111の両端部の略中間位置で屈曲されている。同様に、導体線112は、導体線112の両端部の略中間位置で屈曲されている。
導体線111は、屈曲部位から左側の取付部位232に向けて略直線的に延設された信号線部132と、屈曲部位から奥側の取付部位231に向けて略直線的に延設された保持線部131とを含んでいる。導体線112は、屈曲部位から右側の取付部位233に向けて略直線的に延設された信号線部134と、屈曲部位から奥側の取付部位231に向けて略直線的に延設された保持線部133とを含んでいる。
導体線111の信号線部132の端部は、左側の取付部位232が挿入される取付環115を形成している。導体線112の信号線部134は、右側の取付部位233が挿入される取付環116を形成している。導体線111,112の保持線部131,133は、奥側の取付部位231が挿入される取付環114を形成している。これらの取付環114,115,116は、導体線111,112の端部を構成している。
導体線111,112の信号線部132,134は交差している。信号線部132,134の交差部位は、熱電対110の接点として機能する。接点は、取付環115,116よりも導体線111,112の屈曲部位の近くで形成されている。
接点部材113は、信号線部132,134によって形成された接点上に配置されている。接点部材113は、高い熱伝導率を有している円板状の部材で形成されている。接点部材113は、略円形の上面142と、上面142の下方に位置している略円形の下面141と、上面142の外縁と下面141の外縁とを繋ぐ細い環状帯領域を形成している外周縁部143とを含んでいる。接点部材113の下面141に対して、導体線111,112の交差部位(すなわち熱電対110の接点)が圧接されている。
接点部材113は、接点部材113の外周縁部143が導体線111,112の屈曲部位上若しくは屈曲部位の外側を通過するように配置されている。接点部材113は、導体線111,112の信号線部132,134の交差部位を全体的に覆っている。
接点部材113の上面142には、半田の濡れ性を向上させるための表面処理(たとえば、錫鍍金)が施与されている一方で、接点部材113の外周縁部143には、上述の表面処理は施与されていない。すなわち、接点部材113の外周縁部143は、接点部材113の上面142よりも半田に対して低い濡れ性を有している。接点部材113の下面141には、上述の表面処理が施されていてもよいし施されていなくてもよい。接点部材113の下面141には、導体線111,112の圧着力を向上させるための表面処理が施与されていてもよい。
被覆部材120は、保持線部131,133及び信号線部132,134を、熱電対110の接点の周囲で覆うように配置されている。被覆部材120は、非導電性の材料から形成されたシート部材として形成されている。本実施形態に関して、被覆部材120として略円形のポリイミドフィルムが用いられている。
被覆部材120は、熱電対110の接点部材113の下方且つ2つの導体線111,112の上方の高さ位置で2つの導体線111,112を覆うように拡がっている円形領域を形成している。したがって、接点部材113の下面141は、被覆部材120に対向している。被覆部材120の下面は、2つの導体線111,112に対向している。被覆部材120は、熱電対110の接点部材113と略同心に配置されている。被覆部材120は、接点部材113から保持線部131,133及び信号線部132,134の約半分の長さを覆っている。すなわち、被覆部材120は、被覆部材120の外周縁が測定器200の取付部位231,232,233に届くほどには大きくない。一方、保持線部131,133及び信号線部132,134の端部(すなわち、取付環114,115,116)は、被覆部材120の外周縁の外側に位置し、取付部位231,232,233に取り付けられる。
被覆部材120は、被覆部材120上の接点部材113が重ねられた重畳部位と、接点部材113の外側で保持線部131,133及び信号線部132,134の上側を覆っている外側部位とを有している。被覆部材120の外側部位は、取付部位231,232,233から離れている。
被覆部材120の重畳部位の略中心には、略円形の開口121が形成されている。すなわち、被覆部材120の重畳部位は、開口121の円形形状を定めている内周縁部122を含んでいる。開口121は、接点部材113と略同心である。開口121は、直径において接点部材113よりも小さい。したがって、開口121は、被覆部材120上に配置された接点部材113によって全体的に覆われている。
開口121は、接点部材113の下面141及び信号線部132,134の交差部位の接続を許容するために形成されている。すなわち、信号線部132,134の交差部位は、開口121内で接点部材113の下面141に圧接されている。開口121を通じて、信号線部132,134及び保持線部131,133が下方に引き出されている。
被覆部材120の重畳部位は、接点部材113と導体線111,112との間に介在している。すなわち、重畳部位は、信号線部132,134及び保持線部131,133の上方且つ接点部材113の下面141の下方の位置にある。重畳部位は、導体線111,112が接点部材113の下面141に圧接されることにより、接点部材113の下面141と導体線111,112とによって挟まれる。この結果、被覆部材120は、熱電対110に固定されている。
測定器200へのセンサ素子100の取付が、以下に説明される。
センサ素子100は、図1に示されるように測定器200に取り付けられる。センサ素子100が測定器200に取り付けられるとき、センサ素子100は、熱電対110の取付環114,115,116が測定器200の取付部位231,232,233上に位置するように、使用者によって保持される。奥側の取付部位231が前方に変位可能であるので、熱電対110を測定器200に取り付けようとする使用者は、取付部位231を前方に移動させる。奥側の取付部位231と左右の取付部位232,233との間の距離が小さくなるので、使用者は、センサ素子100を強く引っ張ることなく、取付部位231,232,233を熱電対110の取付環114,115,116に挿入することができる。取付部位231,232,233が熱電対110の取付環114,115,116に挿入された後、測定器200の筐体210内の付勢機構は、取付部位231を奥方に戻すので、適度な大きさの張力が熱電対110に作用する。
取付部位231,232,233が取付環114,115,116にそれぞれ挿入されると、取付環114,115,116は、取付部位231,232,233の保持面234に引っ掛かる。したがって、熱電対110は、保持面234によって所定の高さ位置で保持される。このとき、熱電対110の下方(すなわち、熱電対110と測定器200の第2筐体部212の上面との間)には空間が形成される。熱電対110の下方の空間(すなわち、空気層)は、熱電対110の接点から測定器200への熱伝達を妨げるので、熱電対110の熱は測定器200へ逃げない。したがって、熱電対110に押し付けられた測定対象物の温度が精度よく測定される。
熱電対110が測定器200に取り付けられた後、熱電対110の接点に測定対象物が押し当てられる。熱電対110に適度な張力が作用するように、熱電対110が測定器200に取り付けられているので、測定対象物が熱電対110の接点に押し当てられても、熱電対110は過度に大きく撓まない。
測定対象物として、半田ごてのこて先が図3に概略的に示されている。半田ごてのこて先が接点部材113の上面142に押し当てられるとき、半田がこて先に供給される。この結果、こて先の先端の周囲は溶融した半田によって満たされる。したがって、こて先の温度は、空気層を介することなく、接点部材113及び導体線111,112の交差部位に伝達される。こて先の温度が導体線111,112の交差部位に伝達されると、伝達された温度に対応する電位差が導体線111,112の信号線部132,134の間に生ずる。電位差は、測定器200の筐体210内の演算回路によって測定される。演算回路は、測定された電位差を、こて先の温度を表す温度データに変換する。温度データは、演算回路から測定器200のディスプレイ221へ出力される。ディスプレイ221は、温度データが表す温度をデジタル表示する。ディスプレイ221に表示された温度を見た使用者は、こて先の温度が適切であるか否かを判断することができる。
こて先の周囲で溶融された半田は、高い濡れ性を有している接点部材113の上面142上で広がるけれども、低い濡れ性を有する接点部材113の外周縁部143には流下しにくい。すなわち、上面142上で溶融された半田の拡がりは、外周縁部143によって留められる。
しかしながら、半田が過度に供給されたとき或いはこて先が上面142に沿って外方に移動されたとき、上面142上で溶融した半田の一部が、上面142から溢れ出ることがある。このとき、上面142の下方で拡がる円形領域を形成している被覆部材120は、上面142から溢れ出た溶融半田を受け止める。したがって、溶融半田は、被覆部材120の下方で配線された導体線111,112に付着しない。
溶融半田が、被覆部材120に形成された開口121を通じて、導体線111,112に付着するリスクは、以下の理由から低くなる。被覆部材120の開口121は、接点部材113よりも直径において小さいので、被覆部材120の上面と接点部材113の下面141との間に境界が形成される。被覆部材120の内周縁部122の周辺部位(すなわち、上述の重畳部位)は、接点部材113の下面141と導体線111,112とによって強く挟まれているので、被覆部材120の上面と接点部材113の下面141との間に境界には、強い圧着力が作用している。したがって、境界を通じて被覆部材120の開口121に向かう溶融半田は微量である。
被覆部材120が、接点部材113に圧着されているので、こて先の熱は、接点部材113を通じて被覆部材120へ伝達される。したがって、被覆部材120の材質は、こて先の最大温度を考慮して決定される。しかしながら、被覆部材120の材質の決定に被覆部材120の物理的な強度は、以下の理由からあまり考慮されなくてもよい。被覆部材120の外周縁が、上述の如く、取付部位231,232,233から離れているので、熱電対110が取付部位231,232,233に取り付けられても、測定器200は被覆部材120を引っ張らない。それゆえ、被覆部材120の材質は、高温環境下で作用する張力を考慮することなく決定されてもよい。
被覆部材120には張力が作用しない一方で、熱電対110の導体線111,112には、測定器200への熱電対110の取付時において張力が作用する。導体線111,112の屈曲部位は、導体線111,112の中で脆弱な部位である。したがって、熱電対110に作用する張力によって破断するリスクを考慮して、導体線111,112の屈曲部位の位置が定められている。導体線111,112の屈曲部位は、信号線部132,134の交差部位と取付環114との間で形成されている。信号線部132,134の交差部位と取付環114との間の区間において、2つの保持線部131,133が延設されているので、熱電対110に作用した張力は、これらの保持線部131,133によって分担される。導体線111,112の屈曲部位に作用する力が小さくなるので、導体線111,112が屈曲部位において破断するリスクは小さい。
導体線111,112の交差部位は、接点部材113の下面141に圧接されているので、圧接部位及びその周囲において導体線111,112内には残留応力が生じている。圧接部位は、導体線111,112の中で脆弱であるけれども、圧接部位が形成された信号線部132,134は、真っ直ぐに延設されているので、圧接加工に伴う残留応力以外の残留応力は、信号線部132,134にはほとんど生じていない。したがって、信号線部132,134は、センサ素子100の取付時及び使用時に作用する張力に耐えるのに十分な引張強度を有している。
上述の実施形態に関して、接点部材113の上面142から溢れ出た溶融半田を受け止める被覆部材120は樹脂製である。しかしながら、被覆部材は、非導電性のセラミックや非導電性の金属であってもよい。非導電性の材料から被覆部材が形成される結果、被覆部材は、信号線部132,134間の電位差に影響せず、センサ素子は、測定対象物の温度を高い精度で測定することに貢献する。好ましくは、被覆部材は、低い熱伝導率及び低い熱伝達率を有する材料から形成される。この場合、被覆部材に逃げる熱が少なくなり、測定対象物の温度が精度よく測定される。
上述の実施形態に関して被覆部材120は円形である。しかしながら、被覆部材は三角形であってもよいし、矩形であってもよいし、熱電対の信号線部(及び保持線部)を溶融半田から離隔することができる他の形状を有してもよい。
上述の実施形態に関して熱電対110はY字形状を有している。しかしながら、熱電対は他の形状を有してもよい。例えば、X字状に交差した2つの導体線を有する熱電対が、所定の矩形状の角隅部に対応する位置に配置された4つの取付部位を有する温度測定器に好適に取り付けられてもよい。したがって、熱電対の形状は熱電対が取り付けられる温度測定器の構造に合わせて決定されてもよい。
上述の実施形態に関して熱電対110の接点部材113は円板である。しかしながら、接点部材は他の形状(たとえば、多角形や楕円形)を有してもよい。
<第2実施形態>
図4は、測定器200に取り付けられた熱電対110の概略的な斜視図である。図4に示されるように、被覆部材120なしに熱電対110のみが測定器200に取り付けられてもよい。接点部材113の外周縁部143は、上述の如く、接点部材113の上面142よりも低い濡れ性を有している。
測定器200によって温度を測定される測定対象物が非常に細いならば、測定対象物に供給される半田は少量である。したがって、供給された半田は、接点部材113の上面142上に留まりやすい。半田が多く供給されたとしても、低い濡れ性を有する接点部材113の外周縁部143が、半田を上面142上に留めることができる。
<第3実施形態>
図5は、第3実施形態のセンサ素子100Aの概略的な底面図である。図1及び図5を参照して、センサ素子100Aが説明される。
センサ素子100Aは、耐熱性塗料を用いて形成された被覆部材123,124を有している点においてのみ、第1実施形態のセンサ素子100とは相違している。被覆部材123,124は、第1実施形態の被覆部材120と機能において共通している。被覆部材123,124は非導電性であり、例えば200℃以上の耐熱性能を有している。被覆部材123,124は、半田に対して優れた耐食性能を有している。
被覆部材123,124は、熱電対110の接点の周囲において、信号線部132,134を部分的に被覆している。被覆部材123は、導体線111,112の交差部位と接点部材113の外周縁部143との間の位置から取付環115に向けて延びる区間において信号線部132の表面を覆っている。被覆部材124は、導体線111,112の交差部位と接点部材113の外周縁部143との間の位置から取付環116に向けて延びる区間において信号線部134の表面を覆っている。
被覆部材123,124の被覆領域の端部が、上述の区間において信号線部132,134の表面を被覆しているので、接点部材113から溢れた半田は、被覆部材123,124に付着する。被覆部材123,124は耐食性に優れているので、被覆部材123,124によって覆われた信号線部132,134は、半田から保護される。
被覆部材123,124の形成に利用される塗料が導体線111,112及び接点部材113の圧接を妨げないならば、塗料は取付環115,116を除いて、導体線111,112の外表面全体に塗られてもよい。
塗料から形成された被覆部材123,124に代えて、非導電性の管状部材が用いられてもよい。この場合、信号線部132,134が管状部材に挿通される。
<第4実施形態>
図6は、第4実施形態のセンサ素子100Bの概略的な底面図である。図1、図5及び図6を参照して、センサ素子100Bが説明される。
センサ素子100Bは、熱電対110Bと、被覆部材120Bとを有している。熱電対110Bは、導体線111B,112Bと、接点部材113Bとを有している。接点部材113Bは、矩形状の外周輪郭を有している点においてのみ、図1を参照して説明された接点部材113とは相違している。
導体線111B,112Bは、第1実施形態に関連して説明された保持線部131,133に相当する部位を有しておらず、信号線部132,134に相当する部位のみを有している。
導体線111B,112Bは、一線上に整列されている。導体線111B,112Bの端部は、接点部材113Bの矩形状の下面141Bの略中心位置で当接されている。当接部位は、熱電対110Bの接点として機能する。
導体線111Bの他方の端部には、第1実施形態に関連して説明された取付環115が形成されていない。導体線112Bの他方の端部にも、第1実施形態に関連して説明された取付環116が形成されていない。これらの端部は、測定器(図示せず)の測定端子に巻き付けられてもよい。
被覆部材120Bは、導体線111B,112Bの延設方向に細長い矩形状のシート部材を用いて形成されている。被覆部材120Bの中心には、第1実施形態に関連して説明された開口121が形成されている。被覆部材120Bは、熱電対110Bの接点の周囲において、導体線111B,112Bを覆っている。
被覆部材120Bは、高さ方向において、導体線111B,112Bと接点部材113との間に配置されている。被覆部材120Bの開口121内で熱電対110Bの接点が接点部材113Bの下面141Bに圧接されるとき、被覆部材120Bは、導体線111B,112Bと接点部材113Bとによって挟まれ、熱電対110Bに固定されている。
センサ素子100Bは、取付部位231に相当する部位を有していない測定器に取付可能である。
<第5実施形態>
図7は、第5実施形態のセンサ素子100Cの概略的な底面図である。図2及び図7を参照して、センサ素子100Cが説明される。
センサ素子100Cは、熱電対110Cと被覆部材120Cとを備えている。熱電対110C及び被覆部材120Cの機能は、第1実施形態の熱電対110及び被覆部材120と共通している。
熱電対110Cは、第1実施形態の熱電対110と同様に、3つの取付環114,115,116を含んでいる。熱電対110Cは、2つの導体線111C,112Cと管状の接点部材113Cとを更に含んでいる。導体線111C,112Cは、第1実施形態の導体線111,112に対応する部位である。接点部材113Cは、第1実施形態の接点部材113に対応する部位である。接点部材113Cは、第1実施形態の接点部材113の機能(伝熱機能及び接点の保護機能)に加えて、導体線111C,112Cを互いに圧接させ、熱電対110Cの接点を形成する機能を有している。すなわち、熱電対110Cの接点は、接点部材113Cの配設位置において形成されている。
導体線111Cは、図2を参照して説明された保持線部131と対応している保持線部131Cと、図2を参照して説明された信号線部132に対応している信号線部132Cとを含んでいる。導体線112Cは、図2を参照して説明された保持線部133と対応している保持線部133Cと、図2を参照して説明された信号線部134に対応している信号線部134Cとを含んでいる。導体線111C,112Cは、信号線部132C,134Cが交差構造を形成していない点においてのみ、第1実施形態の導体線111,112とは相違している。信号線部132C,134Cが交差構造を形成していないので、保持線部133Cは全体的に、保持線部131Cに隣接するように配線されている。すなわち、保持線部133C全体は、保持線部131Cに対して略平行に延設されている。
接点部材113Cは、第1実施形態の接点部材113とは異なり、管状である。接点部材113Cは、導体線111C,112Cの屈曲部位の近くで保持線部131C,133Cを外嵌している。接点部材113Cは、接点部材113Cの両端部(すなわち、保持線部131C,133Cの延設方向における端部)を除いて圧縮変形されている。圧縮変形の結果、導体線111C,112Cが互いに圧接され、接点部材113C内で熱電対110の接点を形成している。
接点部材113Cの中央部位(すなわち、接点部材113Cの両端部を除く部位)の圧縮の結果、接点部材113Cは、保持線部131C,133Cに対して固定されている。加えて、接点部材113Cへの圧縮加工の結果、接点部材113Cの両端部は、接点部材113Cの中央部位から隆起した形状を有している。
接点部材113Cは、第1実施形態の接点部材113と同様に、半田に対して高い濡れ性を有している部位と低い濡れ性を有している部位とを有している。接点部材113Cの外周面は、半田に対して高い濡れ性を有している一方で、接点部材113Cの両端面(すなわち、保持線部131C,133Cの延設方向における端面)は、半田に対して低い濡れ性を有している。
被覆部材120Cは、矩形状の開口121Cが形成されている点において、第1実施形態に関連して説明された被覆部材120とは相違している。開口121Cの形状は、接点部材113Cの底面視(及び平面視)における形状(すなわち、矩形状)に合わせられている。開口121C内に接点部材113Cが配置されている。したがって、被覆部材120Cは、接点部材113C内で形成された熱電対110Cの接点の周囲において、接点から延びる導体線111C,112Cの延設部位を覆っている。被覆部材120Cは、第1実施形態の被覆部材120とは異なり、接着剤や他の適切な固定技術によって導体線111C,112Cに固定されている。
センサ素子100Cを用いた温度測定が以下に説明される。
半田ごてのこて先の温度が測定されるとき、接点部材113Cの外周面に半田ごてのこて先の先端が押し当てられる。このとき、半田がこて先に供給され、接点部材113Cの外周面上で溶融する。接点部材113Cの両端部(すなわち、保持線部131C,133Cの延設方向における端部)は、隆起した形状を有しており且つ接点部材113Cの両端面(すなわち、保持線部131C,133Cの延設方向における端面)が、半田に対して低い濡れ性を有しているので、溶融した半田は、前方及び奥方に流れず、左方及び右方に流れる。したがって、溶融した半田は、接点部材113Cの端部と被覆部材120Cとの間の境界に僅かに露出した導体線111C,112Cには付着することなく左右に流れ、被覆部材120Cによって受け止められる。
被覆部材120Cが、接点部材113Cの周囲において導体線111C,112Cを覆っているので、接点部材113Cに押し付けられたこて先が誤って導体線111C,112Cに接触するリスクは低い。したがって、導体線111C,112Cへの半田の付着に起因する不都合(すなわち、導体線111C,112Cの破断やこて先の温度の測定精度の悪化)は生じにくい。
上述の実施形態に関して、接点部材113Cの両端部は、隆起した形状を有している。しかしながら、接点部材の両端面における半田に対する低い濡れ性によって溶融半田が十分に押し留められるならば、接点部材は、全長に亘って圧縮され隆起部を有していなくてもよい。
上述の実施形態に関して、接点部材113Cの両端部は、接点部材113Cの外周面よりも低い濡れ性を有している。しかしながら、接点部材の両端部の隆起形状によって溶融半田が押し留められるならば、接点部材の外表面は全体的に、半田に対して高い濡れ性を有してもよい。
<第6実施形態>
図8は、第6実施形態のセンサ素子100Dの概略的な断面図である。図1及び図8を参照して、センサ素子100Dが説明される。
センサ素子100Dは、第1実施形態に関連して説明された被覆部材120を有している。加えて、センサ素子100Dは、熱電対110Dを有している。熱電対110Dは、保護部150を追加的に有している点においてのみ、第1実施形態に関連して説明された熱電対110とは相違している。保護部150は、熱電対110Dの接点及び接点部材113の下側の導体線111,112の延設部位を、接点部材113の下面141へ流れる溶融半田から保護するために設けられている。
保護部150は、非導電性の耐熱塗料(たとえば、200℃以上の耐熱性を有する塗料)を用いて形成されている。保護部150は、開口121全体に亘って導体線111,112を被覆している。この結果、開口121内の導体線111,112の延設部位及び交差部位は、全体的に、保護部150によって被覆されている。保護部150の形成に用いられる塗料は、図8に示されるように、接点部材113の下面141から下方に隆起した層を形成している。
保護部150による溶融半田からの保護が以下に説明される。
接点部材113の上面142で溶融した半田は、第1実施形態に関連して説明されたように、被覆部材120によって受け止められる。被覆部材120上の半田の一部が、接点部材113の下面141と被覆部材120の上面との間の境界を通じて流れることもある。
境界に流入した半田は、熱電対110の接点(すなわち、導体線111,112の交差部位)及び接点部材113の下方において交差部位から延設された導体線111,112の延設部位に到達する前に、保護部150に接触する。保護部150は、開口121全体に亘って導体線111,112を被覆しているので、半田は、導体線111,112に接触することなく、保護部150の表面に沿って流れる。保護部150は、接点部材113の下面141から下方に隆起した形状を有しているので、半田の流れは、開口121内の導体線111,112に向かわず、導体線111,112から下方に逸らされる。したがって、導体線111,112は半田と接触しない。すなわち、導体線111,112は、保護部150によって半田から保護される。
<第7実施形態>
図9は、第7実施形態のセンサ素子100Eの概略的な断面図である。図8及び図9を参照して、センサ素子100Eが説明される。
センサ素子100Eは、保護部150Eを有している。センサ素子100Eは、保護部150Eにおいてのみ、センサ素子100Dとは相違している。
保護部150Eは、図8を参照して説明された保護部150とは異なり、接点部材113の下面141と被覆部材120の上面との間の隙間に形成されている。保護部150Eは、接点部材113が被覆部材120に重なる環状領域(すなわち、図3を参照して説明された重畳領域)に沿って形成されている。すなわち、保護部150Eは、環状の層構造を形成し、接点部材113の下面141と被覆部材120の上面との間の隙間を塞いでいる。
保護部150Eは、保護部150の形成に用いられた塗料を用いて形成されてもよいし、接点部材113の下面141と被覆部材120の上面とを接着する非導電性の接着剤を用いて形成されてもよい。保護部150Eの形成に用いられる接着剤は、たとえば200℃以上の耐熱性能を有していることが好ましい。
保護部150Eが、接点部材113の下面141と被覆部材120の上面との間の隙間を塞いでいるので、被覆部材120の上面によって受け止められた半田は、被覆部材120の開口121へは向かわず外方に流れる。すなわち、保護部150Eは、半田の流れを導体線111,112から外方に逸らしている。したがって、開口121内の導体線111,112は、保護部150Eによって半田から保護される。
<第8実施形態>
図10は、第8実施形態のセンサ素子100Fの概略的な断面図である。図8乃至図10を参照して、センサ素子100Fが説明される。
センサ素子100Fは、保護部150Fを有している。センサ素子100Fは、保護部150Fにおいてのみ、図8を参照して説明されたセンサ素子100Dとは相違している。
保護部150Fは、図8を参照して説明された保護部150とは異なり、接点部材113の外周縁部143に沿って形成されている。すなわち、保護部150Fは、接点部材113の外周縁部143と被覆部材120の上面とによって形成された環状の角隅部を埋めている。この結果、接点部材113と被覆部材120との間の境界への経路が、保護部150Fによって遮断される。したがって、保護部150Fは、図9を参照して説明された保護部150Eと同様に、接点部材113の下面141と被覆部材120の上面との間の隙間を塞いでいるので、半田の流れを外方に逸らすことができる。
<第9実施形態>
図11は、第9実施形態の熱電対110Eの概略的な断面図である。図4、図8及び図11を参照して、熱電対110Eが説明される。
保護部150は、接点部材113の下面141に形成されているので、被覆部材120が存在しなくとも、半田の流れを下方に逸らし、導体111,112及び熱電対110Eの接点を溶融半田から保護するために利用可能である。すなわち、図4を参照して説明されたように熱電対110Eが単独で利用されるときにおいても、保護部150は、導体線111,112及び熱電対110Eの接点を半田から保護することができる。
被覆部材120の不存在下では、半田は、接点部材113の外周縁部143を通過し、接点部材113の下面141に回り込む。半田は、接点部材113の下面141に圧接された導体線111,112に到達する前に、保護部150に接触する。保護部150は、半田の流れを下方に逸らし、導体線111,112を半田から保護する。
<第10実施形態>
図12A及び図12Bは、第10実施形態のセンサ素子100Gの概略的な斜視図である。図1、図12A及び図12Bを参照して、センサ素子100Gが説明される。
センサ素子100Gは、第1実施形態に関連して説明された被覆部材120を備えている。加えて、センサ素子100Gは、取付部材160と、熱電対110Gと、2つの被覆部材123G,124Gと、を備えている。取付部材160は、熱電対110Gを測定器200に取り付けるために用いられる。
取付部材160は、硬質の樹脂材料から成型されている。取付部材160は、図1を参照して説明された3つの取付部位230に対応して設けられた2つの第1接続部163,164及び1つの第2接続部165と、第1接続部163,164及び第2接続部165と一体的に形成された接続アーム162とを含んでいる。第1接続部163,164及び第2接続部165は、以下の説明において「接続部161」と総称される。これらの接続部161は、取付部位230に対応して、互いに離間した位置に形成されている。
接続アーム162は、全体的に、C型に湾曲して延びる薄板状の部位である。接続アーム162は、接続アーム162の延設区間の中間位置に形成された中央部171と、中央部171から左前方に延設された左アーム172と、中央部171から右前方に延設された右アーム173とを含んでいる。左アーム172及び右アーム173は、中央部171よりも薄い板状の部位である。中央部171には、奥方に向けて開口した溝部175が形成されている。溝部175は、2つの導体線111G,112Gを撚り合わせた端部を折り返して収めるために形成されている。
接続アーム162によって囲まれた領域に向く方向は、以下の説明において「内方」と称される。反対の方向は、以下の説明において「外方」と称される。
接続部161には、内方に向いた半円状の凹空間166が形成されている。凹空間166は、取付部位230の上部の略半周面と相補的である。
第1接続部163は、左側の取付部位232に対応している。他のもう1つの第1接続部164は、右側の取付部位233に対応している。第2接続部165は、奥側の取付部位231に対応している。
第1接続部163は、左アーム172の端部と一体的に形成されている。第1接続部164は、右アーム173の端部と一体的に形成されている。
第1接続部163,164それぞれは、略扇状の接続板181と、接続板181の下面から突出した棒状の巻付部182と、接続板181の上面から突出した一対の固定爪187とを含んでいる。接続板181には、上述の凹空間166が形成されている。凹空間166を形成している接続板181の凹縁面は、以下の説明において「内縁面183」と称される。内縁面183とは反対側の縁面は、以下の説明において「外縁面184」と称される。外縁面184には、外方に開口した2つの溝部が形成されている。これらの溝部は、以下の説明において「位置決め部167」及び「位置決め部168」と称される。これらの位置決め部167,168は、熱電対110G及び第1接続部163,164の接続部位の位置決めのために形成されている。
位置決め部167は、位置決め部168よりも左アーム172及び右アーム173の端部から離れた位置に形成されている。巻付部182は、位置決め部167よりも左アーム172及び右アーム173の端部から離れた位置に形成されている。
一対の固定爪187は、位置決め部168よりも凹空間166の近くで形成されている。これらの固定爪187は若干離間している。これらの固定爪187の位置は、これらの固定爪187の間の空間と被覆部材120の中心とを結ぶ直線が内縁面183(略半円状の凹空間166を形成している部位)の曲率中心を通過しないように設定されている。固定爪187の位置は、凹空間166の中心に対して奥方にずらされている。
第2接続部165は、接続アーム162の中央部171から前方(内方)に突出したΩ型の板状部位である。凹空間166が形成された第2接続部165の凹縁面は、以下の説明において「内縁面185」と称される。内縁面185とは反対側の面は、「外縁面186」と称される。外縁面186は弧状に湾曲している。
熱電対110Gは、第1実施形態に関連して説明された接点部材113を有している。加えて、熱電対110Gは、一対の導体線111G,112Gとを有している。
導体線111G,112Gは、第1実施形態に関連して説明された導体線111,112と同様の交差構造及び屈曲構造を形成している。導体線111Gの屈曲部位から第2接続部165に向けて延びる部位は、以下の説明において「保持線部131G」と称される。導体線112Gの屈曲部位から第2接続部165に向けて延びる部位は、以下の説明において「保持線部133G」と称される。導体線111Gの屈曲部位から第1接続部163に向けて延びる部位は、以下の説明において「信号線部132G」と称される。導体線112Gの屈曲部位から第1接続部164に向けて延びる部位は、以下の説明において「信号線部134G」と称される。
保持線部131G,133G及び信号線部132G,134Gは、端部の構造において、第1実施形態に関連して説明された保持線部131,133及び信号線部132,134とは相違している。
保持線部131G,133Gは、測定器200の取付部位231に取り付けられる端部を形成している。保持線部131G,133Gはともに、第2接続部165に向けて延設されている。保持線部131G,133Gは、第2接続部165の外縁面186に沿って更に延設されている。保持線部131G,133Gが第2接続部165の外縁面186上で合わされる位置(外縁面186の略中間位置)から、これらの保持線部131G,133Gが撚り合わされている。保持線部131G,133Gの末端部位は、第2接続部165の溝部175に収容されるように折り曲げられている。
信号線部132G,134Gは、測定器200の取付部位232,233に取り付けられる端部をそれぞれ形成している。信号線部132G,134Gは、第1接続部163,164に向けてそれぞれ延設されている。信号線部132G,134Gは、第1接続部163,164の接続板181の位置決め部168に挿通されるように下方に折り曲げられている。信号線部132G,134Gは、位置決め部168の下端において内方に更に折り曲げられ、接続板181の下面に沿って凹空間166に向けて延設されている。信号線部132G,134Gは、凹空間166と他のもう1つの位置決め部167との間で接続板181に巻回されている。この結果、信号線部132G,134Gは、接続板181に巻回された略鉛直なループ構造を形成している。すなわち、第1接続部163,164は、信号線部132G,134Gが固定される固定位置になる。信号線部132G,134Gの末端部位は、巻付部182に巻き付けられている。
被覆部材123G,124Gは、被覆位置において、図5を参照して説明された被覆部材123,124とは相違している。被覆部材123G,124Gは、熱電対110Gの周囲において、信号線部134G,132Gをそれぞれ部分的に被覆している。被覆部材123G,124Gは、シート状の被覆部材120の外縁から接続板181の位置決め部168の上端に至る区間に亘って、信号線部134G,132Gを被覆している。被覆部材123G,124Gは、一対の固定爪187によって挟持されている。
図13は、測定器200に取り付けられたセンサ素子100Gの概略的な斜視図である。図12A乃至図13を参照して、測定器200へのセンサ素子100Gの取付が説明される。
センサ素子100Gが測定器200に取り付けられるとき、奥側の取付部位231が前方に使用者によって変位される。その後、残りの取付部位232,233が左右の第1接続部163,164の凹空間166に差し込まれる。上述の如く、固定爪187の位置が凹空間166の中心に対して奥方にずらされているので、被覆部材123G,124Gによって被覆された導体線111G,112Gは、取付部位232,233に強く干渉することなく差し込まれる。したがって、取付部位232,233は、被覆部材123G,124Gによって被覆された導体線111G,112Gに強い張力を生じさせない。
第1実施形態に関連して説明されたように、測定器200の筐体210内の付勢機構は、取付部位231を奥方に付勢しているので、使用者が奥側の取付部位231から手を離すと、取付部位231が第2接続部165の凹空間166に嵌り込む。このとき、測定器200の付勢機構の付勢力は、取付部位231,232,233の外周面を凹空間166を形成している接続部161の内縁面183,185に強く押し付ける。この結果、センサ素子100Gは、取付部位231,232,233によって、筐体210上で保持される。
導体線111G,112Gは、上述の如く、第1接続部163,164に巻かれている。これらの導体線111G,112Gの一部は、第1接続部163,164の凹空間166を形成している内縁面183上に現れる。取付部位232,233がこれらの凹空間166に嵌め込まれると、導体線111G,112Gは、取付部位232,233の外周面と内縁面183とによって挟まれる。取付部位232,233の外周面は、上述の付勢力を受けて、内縁面183に押し当てられているので、内縁面183上に現れた導体線111G,112Gの部位は、取付部位232,233の外周面にしっかりと接触する。第1実施形態に関連して説明されたように、取付部位232,233は、測定器200の測定端子として機能する。測定器200は、取付部位232,233と導体線111G,112Gとの接触の下で、導体線111G,112G間の電位差を精度よく検出することができる。
導体線111G,112Gは、位置決め部167に挿通されて第1接続部163,164に巻き付けられているので、導体線111G,112Gの巻回位置はずれにくい。取付部位232,233が第1接続部163,164の凹空間166に挿通されるときに、凹空間166の周方向に作用する力が導体線111G,112Gの巻回部位に作用しても、巻回位置は大きくずれない。したがって、導体線111G,112Gは、導体線111G,112Gが取付部位232,233の外周面と内縁面183とによって挟まれる位置に巻回位置を保つことができる。
位置決め部168は、位置決め部167と同様に、第1接続部163,164上の導体線111G,112Gの配線経路の位置を略一定の位置に保つことに貢献する。したがって、第1接続部163,164上で巻回された導体線111G,112Gが緩んだり、第1接続部163,164上において導体線111G,112Gが破断したりするリスクは小さい。
加熱工具の温度が測定されるときに、加熱工具が接点部材113の上面に押し当てられる。すなわち、外力が接点部材113に加わる。外力は、導体線111G,112Gを通じて取付部材160へ伝達される。外力の作用が、第1実施形態の構造と比較して以下に説明される。
第1実施形態に関して、導体線111,112は、測定器200の取付部位231,232,233に直接的に取り付けられている。この場合、取付部位231は、保持線部131,132に作用する張力によって前方に引っ張られる。取付部材231が前方に移動するので、導体線111,112は大きく撓む。
一方、本実施形態のように取付部材160が用いられる場合、外力は、上述の如く、取付部材160によって受け止められる。取付部材160は、この外力に対してほとんど変形しないので、導体線111G,112Gは、第1実施形態の導体線111,112ほどは大きく撓まない。したがって、導体線111G,112Gの曲げ変形に起因する損傷が抑制される。したがって、導体線111G,112Gは、外力を繰り返し受けても長期間に亘って破断しない。
取付部材160には、測定器200の付勢機構の付勢力も作用する。取付部材160は、上述の如く、硬質の樹脂材料から形成されているので、付勢機構がもたらす付勢力に対して高い剛性を有している。したがって、取付部材160は、付勢機構の付勢力に抗して変形しない。取付部材160が変形しないので、3つの接続部161間の位置関係は変化しない。したがって、これらの接続部161間で張設された導体線111G,112Gに作用している張力は、測定器200の付勢機構の付勢力が作用してもほとんど増加しない。すなわち、導体線111G,112Gは、取付部材160によって、測定器200の付勢機構の付勢力からも保護されている。
取付部材160は、測定器200からの付勢力及び加熱工具からの外力以外の外力からも導体線111G,112Gを保護することができる。たとえば、使用者が測定器200にセンサ素子100Gを取り付けるときに、2つの接続部161が離れる方向に取付部材160を引っ張ることがある。このときも、取付部材160は、高い剛性を有しているので、変形しにくく、導体線111G,112Gが過度に引っ張られるリスクが低減される。
上述の実施形態に関して、導体線111G,112Gは、被覆部材123G,124Gによって部分的に被覆されている。しかしながら、被覆部材123G,124Gは、必ずしも被覆部材123G,124Gによって被覆されなくてもよい。すなわち、被覆部材120の外側において、導体線111G,112Gは、露出していてもよい。
<第11実施形態>
図14は、第11実施形態のセンサ素子100Hの概略的な斜視図である。図12A乃至図14を参照して、センサ素子100Hが説明される。
センサ素子100Hは、被覆部材120を有していない点及び導体線111G,112Gの端部を除いて、塗料が塗布されている点においてのみ、図12A乃至図13を参照して説明されたセンサ素子100Gとは相違している。導体線111G,112Gに塗布された塗料は、導体線111G,112Gを半田から保護する被覆部材123H,124Hを形成している。被覆部材120の不存在下においても、被覆部材123H,124Hが、取付部材160によって囲まれた領域において、導体線111G,112Gを全体的に覆っているので、導体線111G,112Gは、被覆部材123H,124Hによって半田から保護される。
<第12実施形態>
図15は、第12実施形態のセンサ素子100Iの概略的な斜視図である。図12A乃至図13及び図15を参照して、センサ素子100Iが説明される。
センサ素子100Iは、4つの貫通孔が形成された取付部材160Iを有している点においてのみ、図12A乃至図13を参照して説明されたセンサ素子100Gとは相違している。4つの貫通孔のうち2つは、センサ素子100Gの位置決め部167に対応する位置決め部167Iである。残りの2つの貫通孔は、センサ素子100Gの位置決め部168に対応する位置決め部168Iである。導体線111G,112Gは、貫通孔として形成されたこれらの位置決め部167I,168Iに挿通され、取付部材160Iに巻回された端部を形成している。位置決め部167I,168Iは、位置決め部167,168と同様に、取付部材160I上での導体線111G,112Gの巻回位置を略一定に保つことに貢献する。
<第13実施形態>
図16は、第13実施形態のセンサ素子100Jの概略的な底面図である。図6、図12A、図12B及び図16を参照して、センサ素子100Jが説明される。
センサ素子100Jは、2つの測定端子232J,233Jを有する測定器に取り付けられている。これらの測定端子232J,233Jは、互いに離間した位置に配置されている。右側の測定端子233Jは、左右にスライド移動可能に構成されている。測定器は、測定端子233Jを右方に付勢するように構成されている。一方、測定端子232Jは、測定端子233Jとは異なり、変位しない。
センサ素子100Jは、図6を参照して説明されたセンサ素子100Bが略C型に形成された取付部材160Jに取り付けられた構造を有している。取付部材160Jは、図12A及び図12Bを参照して説明された取付部材160と同様に、硬質の樹脂から成型されている。取付部材160Jは、測定端子232J,233Jに対応して配置された2つの接続部161Jと、これらの接続部161Jを繋ぐ接続アーム162Jとを含んでいる。
これらの接続部161Jそれぞれには、図12A及び図12Bを参照して説明された凹空間166及び位置決め部167,168にそれぞれ対応する凹空間166J及び位置決め部167J,168Jが形成されている。これらの接続部161Jの凹空間166Jは、互いに対向する方向に開口している。一方、位置決め部167J,168Jは、互いに反対向きに開口している。凹空間166J及び位置決め部167J,168Jは、導体線111B,112Bの巻回に利用される。図12A及び図12Bを参照して説明された導体線111G,112Gの巻回構造に関する説明は、接続部161J上での導体線111B,112Bの巻回構造に援用される。
以下の説明において、固定式の測定端子232Jに対応して配置された接続部161Jは、「第1接続部163J」と称される。可動式の測定端子233Jに対応して配置された接続部161Jは、「第2接続部165J」と称される。
センサ素子100Jが測定器に取り付けられるとき、測定端子233Jが使用者によって変位され、測定端子232J,233J間の距離が縮められる。この結果、センサ素子100Jは、第1接続部163J及び第2接続部165Jが測定端子232J,233Jに強く接触することなく、測定器に取り付けられる。
その後、使用者が測定端子233Jから手を離すと、測定端子232J,233Jは、第1接続部163J及び第2接続部165Jの凹空間166に嵌め込まれる。このとき、取付部材160Jは、測定端子233Jを通じて測定器の付勢力を受ける。取付部材160Jは、上述の如く硬質であるので、付勢力の作用下においても、第1接続部163Jと第2接続部165Jとの間の距離は変動しない。したがって、これらの接続部161Jに接続された導体線111B,112Bに過度に大きな張力は生じない。
導体線111B,112Bは、測定端子232J,233Jではなく、取付部材160Jに取り付けられているので、図15A乃至図16を参照して説明された導体線111J,112Jと同様に、接点部材141Bに加熱工具が押し当てられても大きく撓まない。したがって、取付部材160Jによって、導体線111B,112Bの曲げ変形に起因する導体線111B,112Bの損傷が抑制される。