JP6960170B2 - 燃料デブリの処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は原子炉格納容器(PCV)内に残留する燃料デブリを回収した後、回収した燃料デブリを固化して保管収納する燃料デブリの処理方法に関する。
水素爆発事故を起こした福島第一原子力発電所1号機から3号機におけるデブリ回収作業は、上部アクセス方法、下部横アクセス方法の各方法について具体的な取り出し方法が検討されている。その取り出し手順についても、1.高放射線遮蔽方法(作業被爆の防止)、2.α各種飛散防止、3.原子炉圧力容器(RPV)内及び原子炉圧力容器内の何れのデブリから回収するか、等の様々な課題があり、これらについて検討が重ねられている。
その中で、強度を有する材料で一時的に原子炉格納容器(PCV)内を埋め立て、原子炉圧力容器内のデブリを回収後に原子炉格納容器内のデブリを回収する案が検討されている。具体的には固化材としてジオポリマーを用いて埋め立てて燃料デブリを回収する方法等が検討されている。
特許文献1には、例えば燃料デブリを氷内に密封し、回収する技術が開示されている。
燃料デブリ等放射性物質を取り出す際には放射性物質を飛散しないような工法が極めて重要であるが、ジオポリマーを用いた場合、コンクリートと同様高比重2.5程度で流動性に富み、充填が良く、硬化し強固な塊になり、遮蔽効果があるものの、デブリ取出し時にはコンクリートガラとなり廃棄物が多くなってしまうため、燃料デブリ取出し作業時には斫片飛散が顕著であり、遮蔽効果も限定的となるという欠点があった。
また、燃料デブリを回収した後についても、この回収した燃料デブリを固化し安全に隔離する方法についても検討が重ねられている。
この燃料デブリ回収後の固化方法については、コンクリートやジオポリマーを用いて燃料デブリを固化し、隔離する方法が知られている。
しかしながら、コンクリートや高比重のジオポリマー(比重2.5程度)は流動性に富み、充填が良く、硬化し強固な塊になり、遮蔽効果がありデブリと接触し固化することが可能であるが、固化内コンクリート中の水分は800〜1,000℃の高温であっても絶乾状態にならず、高線量下ではこの残置された水分が水素に変化しキャスク等に収納して処分する場合、キャスク内の発生水素を、水素爆発限界内に抑制する必要があるという問題があった。
特開2017−9568号公報
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、放射線を遮蔽することができ、かつ、α核種の飛散の問題を生じずに燃料デブリの取り出すことができるとともに、燃料デブリを含有する遮蔽物を絶乾することができ、水素ガスの発生を防止することができる燃料デブリの処理方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の燃料デブリの処理方法は、バライトを含有する超高比重泥水を原子炉格納容器内で沈降させ、前記原子炉格納容器内の燃料デブリをバライト沈降層で覆い、前記バライト沈降層に覆われた前記燃料デブリを回収する燃料デブリ回収工程と、該燃料デブリ回収工程で回収された前記燃料デブリを覆っているバライト沈降層を、前記燃料デブリを覆った状態で上水とバライトに分離するバライト分離工程と、該バライト分離工程で前記上水を除去したバライトの含有水分を除去するために所定時間乾燥させる絶乾工程とで構成されることを特徴とする。
請求項2に記載の燃料デブリの処理方法の絶乾工程は、前記上水を除去したバライトの含有水分を乾燥温度110℃で、かつ、乾燥時間が3時間30分を含む温度及び時間の条件で乾燥させるものであることを特徴とする。
請求項3に記載の燃料デブリの処理方法の前記バライト沈降層は、比重が3.0以上であることを特徴とする。
請求項4に記載の燃料デブリの処理方法の前記絶乾工程では、バライト及びこのバライトに覆われた前記燃料デブリを絶乾する前に、所定の形状に成形することを特徴とする。
請求項5に記載の燃料デブリの処理方法は、前記絶乾工程で乾燥させたバライトに覆われた燃料デブリを処理容器に収納する収納工程を更に行うことを特徴とする。
請求項6に記載の燃料デブリの処理方法の燃料デブリ回収工程は、バライトを含有するとともに増粘剤として使用する高分子ポリマーを含み、前記バライトが沈降しない粘性で、かつ、ポンプで圧送可能な流動性を確保した配合組成である第1の超高比重泥水を製造する超高比重泥水製造工程と、該超高比重泥水製造工程で製造した前記第1の超高比重泥水に前記高分子ポリマーの直鎖及び側鎖部分を切断できる粘性破壊剤を添加して第2の超高比重泥水とし、燃料デブリを内部に有する原子炉格納容器内に前記第2の超高比重泥水を充填した後、所定時間放置して前記第2の超高比重泥水のバライトを前記原子炉格納容器内で沈降させ、前記原子炉格納容器内の燃料デブリをバライト沈降層で覆うバライト沈降工程と、前記バライト沈降層に覆われた前記燃料デブリを回収する燃料デブリ回収工程とで構成されていることを特徴とする。
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1に記載された発明においては、超高比重泥水のバライトを原子炉格納容器内で沈降させ、原子炉格納容器内の燃料デブリをバライト沈降層で覆うので、燃料デブリから放出される放射線(γ線等)は大幅に減衰し、遮蔽されることになる。
また、燃料デブリ回収工程において燃料デブリの回収を行う際に、バライト沈降層が常に掘削・デブリ回収装置部分を隙間なく覆い隠すことができ、放射線遮蔽、α核種の飛散の問題を生じずに回収作業ができる。
(2)燃料デブリを含有するバライトを絶乾状態とすることができるので、高線量下における水分を起因とした水素発生を確実に防止することができる。
(3)燃料デブリを覆った状態で上水とバライトに分離することで、バライトに含有する余剰な水分を排除でき、このバライト及びバライトに覆われた前記燃料デブリを乾燥させることで、燃料デブリを含有するバライト内含水がゼロ(絶乾状態)の固化体にすることができる。
(4)請求項2に記載された発明も、前記(1)〜(3)と同様な効果が得られるとともに、乾燥温度110℃で、かつ、乾燥時間が3時間30分を含む温度及び時間の条件で乾燥させるので、より確実に燃料デブリを含有するバライト内含水をゼロにすることができる。
(5)請求項3に記載された発明も、前記(1)〜(3)と同様な効果が得られるとともに、バライト比重3.0以上であるため、より遮蔽、隔離効果がある固化体とすることができる。
(6)請求項4に記載された発明も、前記(1)〜(5)と同様な効果が得られるとともに、型枠などを適用し様々な形状にすることができ、自由度の高い固化体にすることができる。
(7)請求項5に記載された発明も、前記(1)〜(6)と同様な効果が得られるとともに、燃料デブリを含有するバライトの内部に含まれている自由水が取り去られた状態である絶乾状態となることで、高線量下における水分を起因とした水素発生がなく永久的に安定状態でキャスク等の収納容器に収納し、処分できる。
(8)請求項6に記載された発明も、前記(1)〜(7)と同様な効果が得られるとともに、より確実に燃料デブリの放射線を遮蔽した状態で燃料デブリを回収することができる。
図1乃至図9は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
第1実施形態の燃料デブリの回収方法の工程図。 超高比重泥水の組成を示す表。 図2の組成の超高比重泥水において、時間の経過とバライトの沈降深さの実験結果を示す表。 図2の組成の超高比重泥水において、時間の経過とバライトの沈降容量の実験結果を示す表。 図2の組成の超高比重泥水において、時間の経過とバライトの対容積沈降率の実験結果を示す表。 図2の組成の超高比重泥水において、沈降したバライト沈降層の密度を示す表。 図2の実施例1の組成の超高比重泥水で作成したバライト沈降層のコーン貫入試験時の各種測定値を示す表。 燃料デブリ回収ステップの概略説明図。 絶乾工程におけるバライト沈降層の乾燥温度と時間の関係を示す表。
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
図1乃至図9に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は図8に示す原子炉格納容器(PCV)2内から燃料デブリ3を回収し、回収した燃料デブリ3を遮蔽状態で固化する燃料デブリの処理方法である。
この燃料デブリの処理方法1は、図1に示すように、バライトを含有する超高比重泥水を原子炉格納容器2内で沈降させ、前記原子炉格納容器2内の燃料デブリ3をバライト沈降層4で覆い、前記バライト沈降層4に覆われた前記燃料デブリ3を回収する燃料デブリ回収工程5と、該燃料デブリ回収工程5で回収された前記燃料デブリ3を覆っているバライト沈降層4を、前記燃料デブリ3を覆った状態で上水とバライトに分離するバライト分離工程6と、該バライト分離工程6で前記上水を除去したバライト及びこのバライトに覆われた前記燃料デブリ3を乾燥温度100℃〜110℃でで、かつ、乾燥時間が3時間30分を含む温度及び時間の条件で乾燥させる絶乾工程7とで構成される。
この温度及び時間の条件により乾燥させることで、前記バライト沈降層4の含有水分を絶乾することができる。
燃料デブリ回収工程5は、本実施形態においては、所要の比重、例えば、比重2.00(g/cc)以上で、硫酸バリウム(以下バライトと言う)を含有するとともに増粘剤として使用する高分子ポリマーを含む超高比重泥水(以下、「第1の超高比重泥水」という)を製造する超高比重泥水製造ステップ8と、該超高比重泥水製造ステップ8で製造した前記第1の超高比重泥水に粘性破壊剤を添加し、燃料デブリ3を内部に有する原子炉格納容器2内に前記高分子ポリマーの直鎖及び側鎖部分を切断できる粘性破壊剤を添加した超高比重泥水(以下「第2の超高比重泥水という」)を充填して、前記第2の超高比重泥水のバライトを原子炉格納容器2内で沈降させ、原子炉格納容器2内の燃料デブリ3をバライト沈降層4で覆うバライト沈降ステップ9と、バライト沈降層4に覆われた燃料デブリ3を回収する燃料デブリ回収ステップ10とで構成されている。
超高比重泥水製造ステップ8は、水道水等の水に加重材及び増粘剤を添加し、第1の超高比重泥水を製造する工程である。
第1の超高比重泥水を組成する増粘剤の種類及び添加量と粘性破壊剤の添加量によるバライト沈降試験を実施した。試験に使用した材料および配合組成並びに試験手順を以下に示す。
この超高比重泥水製造ステップ8で添加される加重材は、市販の天然バライトの粉末を使用しても良いが、バライトの真比重が4.0(g/cc)以上で粒度分布が最大粒子径:96μm以下、中位径:10〜20μmの範囲がより好ましい。
また、増粘剤として使用する高分子ポリマーは、高分子ポリマーの直鎖及び側鎖部分を粘性破壊剤で切断できるものであれば良く、特に指定されるものではないが、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、グアーガム、ヒドロキシプロピル化グアーガム、スターチ、デキストリン等の半合成高分子化合物が適している。このような市販の材料であれば特に指定されるものではないが、分解臭が少なく、分解速度も調整できることからCMCの使用が好ましい。
なお、デンプンを増粘剤として用いることもできる。
CMCの添加量は、流体の粘性がフロー値で150(mm)〜350(mm)の範囲、好ましくは200(mm)±50(mm)の範囲で調整される添加量で使用する。このようなフロー値(例えば225(mm)〜320(mm))に調整することにより、充填性の極めてよい流体として燃料デブリ3を被覆するように充填することができる。
市販のCMCの粘性は、CMCのグレードによって異なるため、目的のフロー値が得られる添加量を採用して差し支えなく特に限定されるものではない。
好ましくは高粘性グレードのCMCを使用して添加量0.3%〜1.0%、より好ましくは0.5%〜0.8%の範囲で使用する。0.5%以下の添加量であれば、製造後にバライトの沈降が生じてしまい、また、0.8%以上であればフロー値が150(mm)以下になり粘性が高く流動性が悪化する。
デンプンを増粘剤として用いる場合、デンプンの増粘性は高粘性CMCと比較して非常に低い為、添加量を1.5%まで増加することが望ましい。
増粘剤をこのような添加量にすることにより、第1の超高比重泥水は、バライトが沈降しない粘性で、かつ、ポンプ等により圧送可能な流動性を確保することができる。
バライト沈降ステップ9は、まず第1の超高比重泥水に粘性破壊剤を添加して第2の超高比重泥水とし、その第2の超高比重泥水を原子炉格納容器2内に充填して、バライト沈降層4を形成する工程である。
ここで、高分子ポリマーの直鎖及び側鎖部分を破壊する粘性破壊剤としては分解酵素の使用が好ましい。分解酵素の種類は上述した半合成高分子化合物の種類によって決定されるが、次に示す食品添加物として使用されている酵素が好ましい。
食品添加材酵素としては、例えば、でんぷん分解酵素のアミラーゼ(α−アミラーゼ (α−amylase)、β−アミラーゼ (β−amylase)、およびグルコアミラーゼ (glucoamylase) )や植物組織破壊酵素で綿、紙などの天然セルロースによく作用するTrichoderma reesei起源のセルラーゼ、化学修飾して水溶性にしたセルロース (CMCなど) によく作用するAspergillus niger起源のセルラーゼ、また、Aspergillus niger起源のキシラナーゼ、Trichoderma reesei起源のキシラナーゼ、Aspergillus niger起源でグアーガム、ローカストビーンガムやコーヒー中に含まれるガラクトマンナンに作用し、ガム類の粘度低下作用があるマンナナーゼ等が考えられる。
本発明では、高分子ポリマーとしてカルボキシセルロース(CMC)と分解酵素セルラーゼの組合せが最も好ましい。分解酵素の添加量は、粘性が破壊されるまでに必要な時間によって異なるが、第2の超高比重泥水の充填作業に必要な時間を考慮すると最低2時間以上が必要と考えられることから第1の超高比重泥水の100重量部に対し0.0001重量部〜0.02重量部「1.0(ppm)〜200(ppm)」の範囲で使用することができる。
ところで、この酵素の添加量は上記の範囲内で添加することができるが、通常は0.0001重量部〜0.0001重量部「1.0(ppm)〜100(ppm)」の範囲で使用し、好ましくは0.0001重量部〜0.001重量部「1.0(ppm)〜10(ppm)」の範囲、より好ましくは0.0003重量部〜0.0005重量部「3.0(ppm)〜5.0(ppm)」で使用することが望ましい。
この分解酵素が最も適している温度35℃〜40℃で最適pHは、7.0±0.5である。この温度以外でも分解しない事はないが、分解速度が遅くなり、また、基質(酵素が分解する対象物質の事、「CMC、デンプン等」を指す。)の濃度が高くなると完全に分解するまでに必要な時間は長くなるため酵素の添加量を多く添加する必要がある。
ここで、実際にバライト沈降層4を形成する第2の超高比重泥水を作成し、この第2の超高比重泥水を用いてバライト沈降層4を形成する実験を行った。この実験においては、図2の組成の第2の超高比重泥水を用いた。ここでは、高分子ポリマーを加えずにベントナイトを用いたもの(比較例1)及び粘性破壊剤を用いないもの(比較例2)を比較例として用いている。
なお、この組成の第2の超高比重泥水の流体密度は2.56(g/cc)で、フロー値は、実施例−1〜6が320(mm)、実施例−9、10が220(mm)、実施例−7、8が225(mm)である。
試験結果は図3乃至図5に示すように、沈降試験の結果より、粘性破壊剤を添加した第2の超高比重泥水は、所定時間(例えば数十分から数日の間)を含む時間放置され、第2の超高比重泥水に含まれるバライトのほとんどが沈降する事がわかる。
また、比較例1からもわかるように分解酵素はベントナイトなどの無機増粘剤に対しては効果がない。また、分解酵素を添加しない高分子ポリマーを用いた第2の超高比重泥水(比較例2)も同じくバライトの沈殿は生じなかった。
原子炉格納容器への充填時間を2時間程度と考慮すると、水道水100g、 高粘性タイプポリマー(F1400MC)0.5〜0.8g、 バライト400g、酵素(GM5) 対ベース流体3〜10ppmの配合組成の範囲が適していると考えられる。
なお、充填時間を長時間に設定することにより、他のいずれの実施例の配合でも、適切なバライト沈降層4を形成することができる。
バライト沈降ステップ9では、第2の超高比重泥水を充填した後、数時間から数日間放置してバライト粒子が沈降させ、原子炉格納容器2内に飛散している燃料デブリをバライト沈降層4で被覆する。
第2の超高比重泥水を用いてバライト沈降層4を形成する実験により沈降したバライト沈降層4の密度を図6に示す。
この図からわかるように、バライト沈降層4の密度は3.0(g/cc)以上で、バライトの容積沈降率も70%を超えており第2の超高比重泥水中に含まれるバライト粒子の殆どが沈降している事がわかる。このように前記適切な配合の第2の超高比重泥水を用いたバライト沈降層5の密度は密度3.0(g/cc)以上であるから、このバライト(約4.3(g/cc))を主体とするバライト沈降層4により、燃料デブリ3はで覆い隠され、燃料デブリ3から放出される放射線(γ線等)は大幅に減衰し、遮蔽されることになる。
なお、実施例−1、実施例−7、実施例−8は上澄み液の比重が高い値を示しているがこれは沈降時間が15時間と短い為であり時間を48時間等、長く測定すれば十分なバライトの沈降を得ることができると考えられる。
このバライト沈降層4は、図7に示すように、コーン指数(qc)が500(kN /m)以上の強度を持つ非常に緻密な沈降層を形成する為、小型の重機などを原子炉格納容器2内に投入して作業することも可能になる。例えばコーン指数1,200(kN /m)以上の反力を有したバライト沈降層5は、作業基盤や上部にある圧力容器破損部の落下などの緩衝層、自走キャタピラ作業装置などの重機が走行可能な作業基盤として適用する。
本実施形態においては、後述する掘削装置11によって燃料デブリ3を回収するが、このような小型の重機等を用いて燃料デブリ回収ステップ10を行ってもよい。
燃料デブリ回収ステップ10は、図7に示すように、ボーリングマシンやガイド付き掘削機等の掘削装置11を用いてバライト沈降層4を掘削し、燃料デブリ3を回収する工程である。
燃料デブリ回収ステップ10で、燃料デブリ3に到達するまでバライト沈降層4(遮蔽層)を掘削することになるが、バライト沈降層は、高せん断速度では高いせん断応力を示すが、低せん断速度では低いせん断応力となるダイラタンシー流体に近い特性を示すことから、例えば図8に示すように、燃料デブリ3回収作業で掘削装置11の掘削具12を備えるロッド13等を振動させながら掘削することで容易にバライト沈降層4を掘削し燃料デブリ3方向に掘削具12を向かわせる事ができる。
具体的には、掘削装置11のロッド13等に水平振動を与えることで、チクソトロピーによりコーン指数がほぼ0(kN /m)まで低減されるため、掘削抵抗が低減され容易に燃料デブリ3まで到達することが出来る。
取り出し過程においてはコンクリートなどで固めてしまう方法では、コンクリート等を破壊して燃料デブリ3を取り出さなければならず、燃料デブリ3からの放射線再放出、α核種の飛散などの二次的問題が発生するのに対し、本発明では、バライト沈降層4は、燃料デブリ3を回収する際に掘削具12等に密着し空隙がないため、作業中において放射線を遮蔽でき、また、掘削具12を抜き出した後の穴については自己修復性があるフロー値を保っているため、即時的に塞ぐことで燃料デブリ3からの高線量放射線を遮蔽することができる。
また、燃料デブリ3を回収する時に飛散する細かい破片等は、バライト沈降層4が燃料デブリ3を覆った状態での作業のため、バライト沈降層4を越えての飛散は全くなく、これらの破片はバライト沈降層4へ取り込まれ、バライト沈降層4を吸引すれば安全に回収できる。
なお、この燃料デブリ回収ステップ10において、燃料デブリ3を被覆するためのバライト沈降層4をさらに回収してもよい。このような目的で回収するバライト沈降層4や燃料デブリ3を回収する時に飛散する細かい破片等を含有するバライト沈降層4は、水を加えて流動化した状態で回収することができるので、原子炉格納容器2から容易に回収することができる。
ところで、本実施形態においては、前述のような燃料デブリ回収工程5を行ったが、バライトを含有する超高比重泥水を原子炉格納容器内で沈降させ、前記原子炉格納容器内の燃料デブリをバライト沈降層で覆い、放射線を遮蔽しつつバライト沈降層に覆われた燃料デブリを回収できるものであればよく、前述のようなステップを経ずに燃料デブリ3を回収する燃料デブリ回収工程5としてもよい。
次に燃料デブリ3をバライト沈降層4で被覆した状態で、このバライト沈降層4を上水(原子炉格納容器2内部のバライト沈降層4の上部に存在する水分)とバライトに分離するバライト分離工程6を行う。本実施形態においては、バライト沈降層4は、比重が3.0(g/cc)以上、本実施形態においては、4.3(g/cc)であるので、燃料デブリ回収ステップ10において燃料デブリ3を含有するバライト沈降層4を引き上げた際に、容易に上水とバライト(上水が除去されたバライト沈降層4)を分離することができる(バライト沈降層4を回収すると同時にバライト分離工程6が完了する)が、必要に応じて原子炉格納容器2から回収した燃料デブリ3を含有するバライト沈降層4を所定時間放置する等して上水と分離させて、上水を除去してもよい。
ところで、バライト沈降層4を回収すると同時にバライト分離工程6が完了する場合も、バライト沈降層4回収後、所定時間容器等に放置して上水を分離させる場合においても燃料デブリ3はバライト沈降層4に被覆され、燃料デブリ3から放出される放射線は遮蔽状態となっている。
この回収した燃料デブリ3含有バライト沈降層4は、流体なので様々な形状に型枠などを適用し自由度の高い固化体にでき、例えば、キャスク等の収納容器に収納しやすい形状等に成型することができる。
絶乾工程7は、バライト分離工程6において分離した燃料デブリ3を含有する(被覆している)バライトを乾燥させる工程である。約120g〜150gの略円筒形状の試料を乾燥させた場合の実験結果を図9に示す。
なお、この燃料デブリ3を含有するバライトとは、塊状の燃料デブリ3の周囲を被覆するバライトや、粉砕された細かい燃料デブリ3が内部に混在しているバライトが含まれるものである。
この実験結果によれば、乾燥温度110℃で加熱することにより、3時間が経過した段階でほとんどの水分が除去され、3時間30分(3.5時間)が経過した段階では、バライトの水分を完全に除去することができた。なお、ここから更に昇温し、200℃まで温度を上げた状態で経過観察を行ったが、バライトの重量に変化がなかった。そのため、前述のように3時間30分が経過した段階において、バライトの水分を完全に除去することができたといえる。
ところで、燃料デブリ3を含有するバライトの量によって、その乾燥時間は前後する。好ましい実施形態においては、例えば、乾燥温度110℃で、かつ、3時間30分以上乾燥させることにより、バライトを絶乾させることができた。すなわち、本実施形態のバライトと同等の量、形状であれば3時間30分程度で絶乾可能であり、バライトの量が増加した場合等においては、3時間30分以上の時間が必要となる。
従来は燃料デブリ3をコンクートで被覆し固化しており、コンクリート内の水分は800℃以上にしても絶乾状態になりにくく水素ガスが発生するものであったが、本願発明においては、このように110℃で所定時間乾燥することによって、バライトを絶乾状態とすることができ、燃料デブリ3による放射線で水素ガスが発生することを確実に防止することができる。
なお、バライトが本実施形態よりも少量である場合には、3時間30分よりも少ない時間で絶乾することが可能であるが、燃料デブリ3の放射線をある程度遮蔽できる量のバライトが必要であることを考慮すると、本実施形態と同等以上の量のバライトが必要であると考えられ、絶乾工程7においては、3時間30分以上乾燥させることが望ましい。
このように絶乾した燃料デブリ3を内包するバライトは、必要に応じてキャスク等の処理容器に収納されて保管(最終処分)する収納工程14を行う。この収納工程14は、放射線廃棄物を収納(最終処分)するための公知の収納方法を適宜用いることができる。例えば前述したように、キャスクに燃料デブリ3を内包するバライト7を収納し、永久的に安定状態で処理する。
収納工程14で使用されるキャスクは、例えば、公知のドライキャスク等が用いられる。公知のドライキャスクとしては、例えば、有底円筒状の収納容器本体と、該収納容器本体に収納され、その内部に前述の燃料デブリ3を含有する絶乾したバライトを収納する収納具と、前記収納容器本体を密閉する一次蓋及び二次蓋と、収納容器本体を支持する支持構造物とで構成されている。なお、前記収納具は臨界防止機能を有し、仕切板によって複数個の収納室を備えており、この仕切板によって仕切られた空間(収納室)に燃料デブリ3を内包するバライトが収納される。
前記一次蓋及び二次蓋には、それぞれ金属シールが設けられており、完全に密閉することができるとともに、一次蓋及び二次蓋にはそれぞれ圧力センサーも設けられている。
本発明は原子炉格納容器(PCV)内に残留する燃料デブリを回収し、処分する産業で利用される。
1:燃料デブリの回収方法、 2:原子炉格納容器、
3:燃料デブリ、 4:バライト沈降層、
5:燃料デブリ回収工程、 6:バライト分離工程、
7:絶乾工程、 8:超高比重泥水製造ステップ、
9:バライト沈降ステップ、 10:燃料デブリ回収ステップ、
11:掘削装置、 12:掘削具、
13:ロッド、 14:収納工程。

Claims (6)

  1. バライトを含有する超高比重泥水を原子炉格納容器内で沈降させ、前記原子炉格納容器内の燃料デブリをバライト沈降層で覆い、前記バライト沈降層に覆われた前記燃料デブリを回収する燃料デブリ回収工程と、該燃料デブリ回収工程で回収された前記燃料デブリを覆っているバライト沈降層を、前記燃料デブリを覆った状態で上水とバライトに分離するバライト分離工程と、該バライト分離工程で前記上水を除去したバライトの含有水分を除去するために所定時間乾燥させる絶乾工程とで構成される燃料デブリの処理方法。
  2. 前記絶乾工程は、前記上水を除去したバライトの含有水分を乾燥温度110℃で、かつ、乾燥時間が3時間30分を含む温度及び時間の条件で乾燥させるものであることを特徴とする請求項1に記載の燃料デブリの処理方法。
  3. 前記バライト沈降層は、比重が3.0以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の燃料デブリの処理方法。
  4. 前記絶乾工程では、バライトを絶乾する前に、所定の形状に成型することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の燃料デブリの処理方法。
  5. 前記絶乾工程で乾燥させたバライトに覆われた燃料デブリを処理容器に収納する収納工程を更に行うことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の燃料デブリの処理方法。
  6. 前記燃料デブリ回収工程は、バライトを含有するとともに増粘剤として使用する高分子ポリマーを含み、前記バライトが沈降しない粘性で、かつ、ポンプで圧送可能な流動性を確保した配合組成である第1の超高比重泥水を製造する超高比重泥水製造工程と、該超高比重泥水製造工程で製造した前記第1の超高比重泥水に前記高分子ポリマーの直鎖及び側鎖部分を切断できる粘性破壊剤を添加して第2の超高比重泥水とし、燃料デブリを内部に有する原子炉格納容器内に前記第2の超高比重泥水を充填した後、所定時間放置して前記第2の超高比重泥水のバライトを前記原子炉格納容器内で沈降させ、前記原子炉格納容器内の燃料デブリをバライト沈降層で覆うバライト沈降工程と、前記バライト沈降層に覆われた前記燃料デブリを回収する燃料デブリ回収工程とで構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の燃料デブリの処理方法。
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