JP6958074B2 - 1,2−アルカンジオール組成物及び水性混合物 - Google Patents

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Description

本発明は、pH及び電気伝導度の経時変化が少ない1,2−アルカンジオール組成物と、この1,2−アルカンジオール組成物及び水を含む水性混合物に関する。
本発明の水性混合物は、インクや水性塗料などのコーティング組成物や水性接着剤として好適に使用することができる。
コーティング組成物である水性インクを用いるインクジェットプリンターは、フルカラー化が容易であること、騒音が少ないこと、高解像度の画像が低価格で得られること、高速印字ができること、などの理由から、パーソナルユース、ビジネスユースの両面から急速に普及しつつある。現在、インクジェットプリンターに用いる記録液としては水性の記録液が主流であり、解像度の高い印刷物が得られるようになってきている。
この水性記録液としては、従来、水溶性染料と液媒体を主成分とするものが主流であった。しかし、この水性記録液によって得られる印刷物は、水性記録液が水溶性染料を含むために、耐水性、耐光性、耐オゾン性等が不十分であった。そこで、このような染料に代えて、顔料を水性媒体中に分散させた顔料分散型の水性記録液(以下、「インク組成物」と言うことがある。)が開発されている。
インクジェット記録に用いられるインク組成物には、印字の乾燥性が良いこと、印字の滲みがないこと、種々の被記録体表面に均一に印字できること、多色の場合色が混じり合わないこと、などの種々の性能が要求される。このため、インクの乾燥性の向上、インク間の混合防止、記録物への浸透性の向上を目的に、浸透剤として1,2−アルカンジオールを配合したものがあり、例えば、特許文献1には、浸透性に優れるとともに、安定したインク吐出を実現できるインク組成物として、1,2−アルカンジオールと、主溶媒としての水とを含み、蟻酸、酢酸、ペンタン酸、またはエステル体といった不純物を実質的に含まないインク組成物が提案されている。
この特許文献1では、これらの不純物の存在で、経時的にインクの表面張力、粘度、pHが変化することで吐出安定性が損なわれるとして、これらの不純物を実質的に含まないインク組成物を提案している。特許文献1には、このように不純物を含まないインク組成物とするために、蒸留等で精製してこれらの不純物を除去した1,2−アルカンジオールをインク組成物に用いることが記載されている。
特許文献2には、インクジェット用液体組成物により形成される画像の光学濃度と吐出時の目詰り防止の観点から、組成物の導電率(電気伝導度)や、pH、表面張力が所定の範囲内にあることが望ましいことが記載されている。
特開2006−232992号公報 特開2007−217472号公報
本発明者らの検討により、浸透剤として1,2−アルカンジオールを用いた従来のインク組成物では、pH及び電気伝導度の経時的な変化が大きいことが確認された。特許文献1の実施例では、1,2−アルカンジオールとして、1,2−ヘキサンジオールを用い、精製品と未精製品とでpH、表面張力及び粘度の経時的な変化を評価しているが、電気伝導度の経時的な変化については全く言及されていない。
特許文献2には、pHや電気伝導度の好適範囲の記載があるのみで、その経時安定性についての検討はなされていない。
インクジェット記録においては、近年、印刷物の解像度の向上に伴い、インク吐出ノズルからの1回のインク吐出量が著しく少なくなっているため、インク組成物には、pHや電気伝導度の経時保存安定性に優れること、即ち、pH及び電気伝導度の経時変化の少ないインク組成物が求められている。
従って、本発明は、pH及び電気伝導度の経時変化が少ない1,2−アルカンジオール組成物と、この1,2−アルカンジオール組成物を用いた水性混合物を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、1,2−アルカンジオールに所定の割合でエステル基を有する化合物を共存させることで、pH及び電気伝導度の経時変化を抑えることができることを見出した。
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
[1] エステル基を有する化合物を含有する1,2−アルカンジオール組成物であって、該エステル基を有する化合物の含有量が、該組成物中の1,2−アルカンジオールに対する該エステル基を有する化合物のエステル基の割合で、0.2〜4.0モル%である1,2−アルカンジオール組成物。
[2] 前記1,2−アルカンジオールが1,2−ブタンジオールである[1]に記載の1,2−アルカンジオール組成物。
[3] 前記エステル基を有する化合物の炭素数が3〜12の範囲内である[1]又は[2]に記載の1,2−アルカンジオール組成物。
[4] 前記エステル基を有する化合物が、ラクトンを含む[1]乃至[3]のいずれかに記載の1,2−アルカンジオール組成物。
[5] 前記エステル基を有する化合物の該エステル基を構成するカルボン酸の炭素数が1〜6の範囲内である[1]乃至[4]のいずれかに記載の1,2−アルカンジオール組成物。
[6] [1]乃至[5]のいずれかに記載の1,2−アルカンジオール組成物及び水を含有する水性混合物。
[7] 前記水性混合物中の1,2−アルカンジオール濃度が1〜20重量%である[6]に記載の水性混合物。
[8] [6]又は[7]に記載の水性混合物を含む水性インク。
[9] [8]に記載の水性インクを基材上に印刷した印刷物。
本発明の1,2−アルカンジオール組成物は、pH及び電気伝導度の経時変化が少ないため、この1,2−アルカンジオール組成物を用いた水性混合物もpH及び電気伝導度の経時変化が少ない。
本発明の水性混合物は、インク組成物、特にインクジェット記録用インク組成物として有用であり、そのpH及び電気伝導度の経時安定性により、長期保存後も吐出性や印刷画質の品質等に優れたインク組成物を提供することができる。
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容には特定されない。
[1,2−アルカンジオール組成物]
本発明の1,2−アルカンジオール組成物は、エステル基を有する化合物を含む1,2−アルカンジオール組成物であって、該エステル基を有する化合物の含有量が、該組成物中の1,2−アルカンジオールに対する該エステル基を有する化合物のエステル基の割合で、0.2〜4.0モル%であることを特徴とする。
<1,2−アルカンジオール>
本発明の1,2−アルカンジオール組成物に含まれる1,2−アルカンジオールとしては特に制限はないが、本発明の効果をより有効に発揮し易いことから、従来、インク組成物の浸透剤として用いられている1,2−アルカンジオールが好ましく、具体的には1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール等の炭素数2〜7の1,2−アルカンジオールが好ましい。1,2−アルカンジオールは1種のみが1,2−アルカンジオール組成物に含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。これらの1,2−アルカンジオールのうち、沸点と、親水性と疎水性のバランスの観点から、1,2−ブタンジオールが好ましい。
<エステル基を有する化合物>
本発明の1,2−アルカンジオール組成物に含まれるエステル基を有する化合物としては特に制限はないが、エステル基を有する化合物に含まれるエステル基を構成するカルボン酸としては、炭素数が1〜6のカルボン酸であることが、1,2−アルカンジオール組成物、又は該1,2−アルカンジオール組成物を含有する水性混合物との相溶性の観点から好ましい。エステル基を構成するカルボン酸はモノカルボン酸でも、ジカルボン酸でも、トリカルボン酸でもよい。すなわち、エステル基がエステル基を有する化合物中に複数個あってもよい。また、エステル基を構成するカルボン酸は、飽和脂肪族カルボン酸、不飽和脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸のいずれであってもよい。このようなカルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸といった飽和脂肪族モノカルボン酸や、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、3−ブテン酸、メタクリル酸等の不飽和脂肪族モノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
これらのうち、エステル基を構成するカルボン酸がギ酸、酢酸、プロピオン酸等の飽和脂肪族モノカルボン酸であるエステル基を有する化合物が、水への溶解性の観点から好ましい。
また、エステル基を有する化合物には、アルキル基、アルキレン基、アリル基、ヒドロキシ基、カルボニル基等の置換基を有してもよい。
エステル基を有する化合物の炭素数は3〜12であることが好ましく、3〜9であることがより好ましい。炭素数が前記範囲であることにより1,2−アルカンジオール組成物、又は該1,2−アルカンジオール組成物を含有する水性混合物との相溶性が良好となる。
特に、エステル基を有する化合物としては、前述のエステル基を構成する好適なカルボン酸と、1,2−アルカンジオール組成物に含まれる化合物との反応で得られる1−ヒドロキシ2−アセトキシアルカン、2−ヒドロキシ1−アセトキシアルカン、1−ヒドロキシ2−アセトキシアルカン、1−アセトキシ2−ヒドロキシアルカン、プロピオン酸2−ヒドロキシアルキル、1−ヒドロキシ2−プロピオン酸アルキル等が、1,2−アルカンジオール組成物、又は該1,2−アルカンジオールを含有する水性混合物との相溶性の観点から好ましい。例えば、1,2−アルカンジオール組成物の1,2−アルカンジオールが1,2−ブタンジオールの場合、エステル基を有する化合物は1−アセトキシ2−ヒドロキシブタン、1−ヒドロキシ2−アセトキシブタン、プロピオン酸2−ヒドロキシブチル、1−ヒドロキシ2−プロピオン酸ブチル等であることが好ましい。
なお、エステル基を有する化合物中のエステル基の数は3以下が好ましく、2以下がより好ましく、1であることが最も好ましい。
また、本発明の1,2−アルカンジオール組成物に含まれるエステル基を有する化合物としては、α−アセトラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、エチル−γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等の環状化合物であるラクトンも挙げられる。
上記、ラクトンの中でも、γ−ブチロラクトン、エチル−γ−ブチロラクトンが1,2−アルカンジオール組成物、又は該1,2−アルカンジオールを含有する水性混合物との相溶性の観点から好ましい。
本発明の1,2−アルカンジオール組成物には、上記のエステル基を有する化合物は1種のみが含まれていてもよく、エステル基を構成するカルボン酸の種類等が異なる2種以上のエステル基を有する化合物が含まれていてもよい。
本発明の1,2−アルカンジオール組成物は、上記のようなエステル基を有する化合物を、そのエステル基の含有量として1,2−アルカンジオールに対するモル比で0.2〜4.0モル%含むものである。エステル基を有する化合物の含有量が上記下限より少なくても上記上限より多くても、エステル基を有する化合物を含有することによるpH及び電気伝導度の経時安定性を十分に得ることができず、経時的にpH及び電気伝導度が変動するものとなる。
pH及び電気伝導度の経時安定性の観点から、本発明の1,2−アルカンジオール組成物は、エステル基を有する化合物をそのエステル基の含有量として、1,2−アルカンジオールに対するモル比で0.2〜4.0モル%含むことが好ましく、特に0.3〜2.5モル%含むことが好ましい。
なお、1,2−アルカンジオール組成物中のエステル基を有する化合物のエステル基量は、ガスクロマトグラフィーにより測定することができる。また、その化合物を構成するカルボン酸エステルからエステル基量を算出する事ができる。
<不純物>
本発明の1,2−アルカンジオール組成物は、エステル基を有する化合物に含まれるエステル基量を上記の割合で含むものであり、少なくとも1,2−アルカンジオールとエステル基を有する化合物を含むものであるが、1,2−アルカンジオールとエステル基を有する化合物以外のその他の不純物成分は少ないことが好ましく、1,2−アルカンジオール組成物中の1,2−アルカンジオール及びエステル基を有する化合物以外の成分の含有量は3重量%以下、特に1重量%以下、とりわけ0.5重量%以下であることが好ましい。ここで、1,2−アルカンジオール組成物中の他の成分の含有量は、ガスクロマトグラフィーにより測定することができる。
<1,2−アルカンジオール組成物の製造方法>
上述の割合でエステル基を有する化合物を含む本発明の1,2−アルカンジオール組成物は、例えば、エステル基を有する化合物を含まない精製1,2−アルカンジオールに所定量のエステル基を有する化合物を添加することで製造することができる。
また、本発明の1,2−アルカンジオール組成物は、アルケンのカルボキシ化および水添やエステル交換により製造され、カルボキシ化反応に由来する副生成物としてのエステル基を有する化合物を含む1,2−アルカンジオールのエステル基量を調整することにより製造することもできる。
即ち、1,2−アルカンジオールの製造工程から得られた1,2−アルカンジオールに含まれるエステル基を有する化合物の含有量が少ない場合には、これに更にエステル基を有する化合物を添加する。逆に、エステル基を有する化合物の含有量が多過ぎる場合には、蒸留、加水分解やアルコリシス等のエステル交換反応により、エステル基を有する化合物の一部を除去してエステル基を有する化合物の含有量を調整することで、本発明の1,2−アルカンジオール組成物を得ることができる。
[水性混合物]
本発明の水性混合物は、上記の本発明の1,2−アルカンジオール組成物と水を含有するものであり、本発明の1,2−アルカンジオール組成物に水を添加混合して製造される。
本発明の水性混合物中の1,2−アルカンジオール濃度には特に制限はないが、本発明の水性混合物をインクジェット用インク組成物等のインク組成物の水性媒体として用いる場合、水性混合物中の1,2−アルカンジオール濃度は1〜20重量%、特に5〜15重量%であることが好ましい。1,2−アルカンジオール濃度が上記下限よりも低いと、浸透剤としての1,2−アルカンジオール濃度が不足し、吐出性や濡れ性等が不十分となり、印刷性に劣るものとなる傾向がある。一方、1,2−アルカンジオール濃度が上記上限よりも高いと、インクの乾燥不良、インクの滲みや、顔料の分散安定性の低下を引き起こす可能性がある。
なお、本発明の水性混合物は、1,2−アルカンジオール以外の他の有機溶媒を含んでいてもよい。
1,2−アルカンジオール以外の他の有機溶媒としては、インク組成物等の用途に一般的に用いられるものであれば特に限定されないが、具体的には、水よりも蒸気圧の小さいものであり、次のようなものが挙げられる。
ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、ブチレングリコール、イソブチレングリコール、チオジグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、グリセリン等の多価アルコール類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピレンエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等の多価アルコールエーテル類;
アセトニルアセトン等のケトン類;
γ−ブチロラクトン、ジアセチン、リン酸トリエチル等のエステル類;
2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等の低級アルコキシアルコール類;
エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタメチルジエチレントリアミン等のアミン類;
ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;
2−ピロリドン、N−エチルピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、モルホリン、N−エチルモルホリン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、イミダゾール、メチルイミダゾール、ヒドロキシイミダゾール、ジメチルアミノピリジン、1,3−プロパンスルトン、ヒドロキシエチルピペラジン、ピペラジン等の複素環類;
ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;
スルホラン等のスルホン類:
これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
本発明の水性混合物が、1,2−アルカンジオール以外の他の有機溶媒を含む場合、他の有機溶媒は、1,2−アルカンジオールとの合計で、前述の1,2−アルカンジオール濃度となるように含まれることが好ましいが、本発明の1,2−アルカンジオール組成物の効果を有効に得る上で、本発明の水性混合物中の1,2−アルカンジオールを含む全有機溶媒中の1,2−アルカンジオールの割合が、10重量%以上、特に30〜100重量%であることが好ましい。
[水性顔料分散液]
本発明の水性混合物は、更に顔料を含む水性顔料分散液として、本発明の水性インクであるインク組成物、特にインクジェット記録用インク組成物に好適に用いることができる。即ち、本発明の水性混合物は、水性顔料分散液又はインク組成物の水性媒体として好適に用いられる。
以下に、本発明の水性混合物を用いた水性顔料分散液(以下、「本発明の水性顔料分散液」と称す場合がある。)について説明する。
本発明の水性顔料分散液は、顔料と更に顔料の分散安定性のための分散剤及び界面活性剤を含むことが好ましい。
本発明の水性顔料分散液は、水性媒体としての本発明の水性混合物に更に、顔料、分散剤、界面活性剤等を添加混合することで、水の含有量が20〜80重量%、特に25〜75重量%であることが、取り扱い性、分散安定性等の観点から好ましい。
<顔料>
本発明の水性顔料分散液に用いられる顔料としては、各用途において一般的なものを適宜選択すればよく、特に限定されない。以下に顔料の代表的なものを例示する。
炭酸カルシウム、カオリンクレー、タルク、ベントナイト、マイカなどを代表とする体質顔料;
酸化チタン、酸化亜鉛、ゲーサイト、マグネタイト、酸化クロムなどを代表とする金属酸化物系顔料;
チタンイエロー、チタンバフ、アンチモンイエロー、バナジウムスズイエロー、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、マンガングリーン、コバルトブルー、セルリアンブルー、マンガンブルー、タングステンブルー、エジプトブルー、コバルトブラックなどを代表とする複合酸化物系顔料;
リトボン、カドミウムレッドイエロー、カドミウムレッドなどを代表とする硫化物系顔料;
ミネラルバイオレット、コバルトバイオレット、リン酸コバルトリチウム、リン酸コバルトナトリウム、リン酸コバルトカリウム、リン酸コバルトアンモニウム、リン酸ニッケル、リン酸銅を代表とするリン酸塩系顔料;
黄鉛、モリブデートオレンジを代表とするクロム酸塩系顔料;
群青、プルシアンブルーを代表とする金属錯塩系顔料;
アルミニウムペースト、ブロンズ粉、亜鉛末、ステンレスフレーク、ニッケルフレークを代表とする金属粉系顔料;
カーボンブラック、オキシ塩化ビスマス、塩基性炭酸塩、二酸化チタン、被覆雲母、ITO(インジウムスズ酸化物)、ATO(アンチモンスズ酸化物)を代表とする真珠光沢顔料・真珠顔導電性顔料等の無機顔料;
キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、金属錯体系顔料、アゾメチン系顔料またはアゾ系顔料などの有機顔料:
上記顔料の具体例としては下記に示すピグメントナンバーの顔料及び一般に色材分野で用いられている公知のカーボンブラックを挙げることができる。なお、以下に挙げる「C.I.ピグメントレッド2」等の用語は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。
赤色色剤:C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、37、38、41、47、48、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53、53:1、53:2、53:3、54、57、57:1、57:2、58、58:4、60、63、63:1、63:2、64、64:1、68、69、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、88、90:1、101、101:1、104、108、108:1、109、112、113、114、122、123、144、146、147、149、151、166、168、169、170、172、173、174、175、176、177、178、179、181、184、185、187、188、190、193、194、200、202、206、207、208、209、210、214、216、220、221、224、230、231、232、233、235、236、237、238、239、242、243、245、247、249、250、251、253、254、255、256、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276;
青色色剤:C.I.ピグメントブルー1、1:2、9、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、19、25、27、28、29、33、35、36、56、56:1、60、61、61:1、62、63、66、67、68、71、72、73、74、75、76、78、79;
緑色色剤:C.I.ピグメントグリーン1、2、4、7、8、10、13、14、15、17、18、19、26、36、45、48、50、51、54、55;
黄色色剤:C.I.ピグメントイエロー1、1:1、2、3、4、5、6、9、10、12、13、14、16、17、23、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、53、55、61、62、62:1、63、65、73、74、75,81、83、87、93、94、95、97、100、101、104、105、108、109、110、111、116、119、120、126、127、127:1、128、129、133、134、136、138、139、142、147、148、150、151、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207、208、215;
オレンジ色剤:C.I.ピグメントオレンジ1、2、5、13、16、17、19、20、21、22、23、24、34、36、38、39、43、46、48、49、61、62、64、65、67、68、69、70、71、72、73、74、75、77、78、79;
バイオレット色剤:C.I.ピグメントバイオレット1、1:1、2、2:2、3、3:1、3:3、5、5:1、14、15、16、19、23、25、27、29、31、32、37、39、42、44、47、49、50
ブラウン色剤:C.I.ピグメントブラウン1、6、11、22、23、24、25、27、29、30、31、33、34、35、37、39、40、41、42、43、44、45
黒色色剤:C.I.ピグメントブラック1、31、32
上記顔料のうち、赤色顔料として好ましくは、キナクリドン系顔料、キサンテン系顔料、ペリレン系顔料、アンタントロン系顔料及びモノアゾ系顔料が挙げられ、その具体例としては、C.I.ピグメントレッド−5、−7、−12、−112、−81、−122、−123、146、−147、−168、−173、−202、−206、−207、−209、C.I.ピグメントバイオレット−19等が挙げられる。このうち、顔料の安定性や色合いの面から、キナクリドン系顔料、及び、2種類以上のキナクリドン系顔料からなる固溶体がより好ましい。
上記顔料のうち、黄色顔料としてモノアゾ系顔料及びジスアゾ系顔料が印刷物としての発色が他の顔料に対して良好である事から好ましい。その中でも、C.I.ピグメント−1、−3、−16,−17、−74、−95、−120、−128、−151、−155、−175、−215は、その色合いの面から特に好ましく、更にその中でもC.I.ピグメントイエロー−74、−155がノンハロゲン化合物であり環境に与える影響が小さいことや色合いの面から特に好ましい。
先述の顔料のうち、青色顔料として好ましくは、銅フタロシアニン顔料が印刷物としての発色が他の顔料に対して良好である事から好ましい。その中でも、C.I.ピグメントブルー−15:3が、安定性や色合いの面から好ましい。
また、本発明において用いられるカーボンブラックとしては、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等の各種のカーボンブラックが使用できる。これらの中では、チャンネルブラックまたはファーネスブラックが好ましく、特にファーネスブラックが好ましい。
上記のカーボンブラックのDBP吸油量は、写真専用紙での光沢性の観点から、30ml/100g以上が好ましく、且つ250ml/100g以下が好ましく、100ml/100g以下がより好ましく、70ml/100g以下が更に好ましい。
揮発分は、8重量%以下が好ましく、特に4重量%以下が好ましい。
pHは記録液の保存安定性の観点から3以上、中でも6以上であることが好ましく、その上限は11以下、特に9以下が好ましい。
BET比表面積は、通常100m/g以上であるが、中でも150m/g以上であることが好ましく、その上限は700m/g以下、特に600m/g以下が好ましい。
ここで、DBP吸油量はJISK6221A法で測定した値、揮発分はJISK6221の方法で測定した値、pHはカーボンブラックと蒸留水の混合液をガラス電極メーターで測定した値、BET比表面積はJISK6217の方法で測定した値である。
また、安全性の観点から、600〜1500℃での焼成や、水、温水、溶剤等で洗浄することにより、多環芳香族成分を低減させたカーボンブラックを使用することが好ましい。特に高温での焼成処理は、カーボンブラック表面の官能基が除去されることにより、分散剤がカーボンブラック表面により効率よく、より堅固に吸着されるため、より好ましい。
上記カーボンブラックの具体例としては、次の(1)〜(4)に示す商品が挙げられる。
(1)#2700B,#2650,#2650B,#2600,#2600B,2450B,2400B,#2350,#2300,#2300B,#2200B,#1000,#1000B,#990,#990B,#980,#980B,#970,#960,#960B,#950,#950B,#900,#900B,#850,#850B,MCF88,MCF88B,MA600,MA600B,#750B,#650B,#52,#52B,#50,#47,#47B,#45,#45B,#45L,#44,#44B,#40,#40B,#33,#33B,#32,#32B,#30,#30B,#25,#25B,#20,#20B,#10,#10B,#5,#5B,CF9,CF9B,#95,#260,MA77,MA77B,MA7,MA7B,MA8,MA8B,MA11,MA11B,MA100,MA100B,MA100R,MA100RB,MA100S,MA230,MA220,MA200RB,MA14,#3030B,#3040B,#3050B,#3230B,#3350B(以上、三菱ケミカル社製品)。
(2)Monarch 1400,Black Pearls 1400,Monarch 1300,Black Pearls 1300,Monarch 1100,Black Pearls 1100,Monarch 1000,Black Pearls 1000,Monarch 900,Black Pearls 900,Monarch 880,Black Pearls 880,Monarch 800,Black Pearls 800,Monarch 700,Black Pearls 700,Black Pearls 2000,VulcanXC72R,Vulcan XC72,Vulcan PA90,Vulcan 9A32,Mogul L,Black Pearls L,Regal 660R,Regal 660,Black Pearls 570,Black Pearls 520,Regal 400R,Regal 400,Regal 330R,Regal 330,Regal 300R,Black Pearls 490,Black Pearls 480,Black Pearls 470,Black Pearls 460,Black Pearls 450,Black Pearls 430,Black Pearls 420,Black Pearls 410,Regal 350R,Regal 350,Regal250R,Regal 250,Regal 99R,Regal 99I,Elftex Pellets 115,Elftex 8, Elftex 5,Elftex 12,Monarch 280,Black Pearls 280,Black Pearls 170,Black Pearls 160,Black Pearls 130,Monarch 120,Black Pearls 120(以上、キャボット社製品)。
(3)Color Black FW1,Color Black FW2,Color Black FW2V,Color Black FW18,Color Black FW200,Special Black 4,Special Black 4A,Special Black5,Special Black 6,Color Black S160,Color Black S170,Printex U,Printex V,Printex 150T,Printex 140U,Printex 140V,Printex 95,Printex 90,Printex 85,Printex 80,Printex 75,Printex 55,Printex 45,Printex 40,Printex P,Printex 60,Printex XE,Printex L6,Printex L,Printex 300,Printex 30,Printex 3,Printex 35,Printex 25,Printex 200,Printex A,Printex G,Special Black 550,Special Black 350,Special Black 250,Special Black 100(以上、デグッサ製品)。
(4)Raven 7000,Raven 5750,Raven 5250,Raven 5000 ULTRA,Raven 3500,Raven 2000,Raven 1500,Raven 1255,Raven 1250,Raven 1200,Raven 1170,Raven 1060 ULTRA,Raven 1040,Raven 1035,Raven 1020,Raven 1000,Raven890H,Raven 890,Raven 850,Raven 790 ULTRA,Raven 760 ULTRA,Raven 520,Raven 500,Raven 450,Raven 430,Raven 420,Raven 410,CONDUCTEX 975 ULTRA,CONDUCTEX SC ULTRA,Raven H2O,Raven C ULTRA(以上、コロンビア社製品)。
これら顔料の1次粒子の大きさは、目的に応じて任意に設定すればよいが、通常、10nm以上であり、且つ、800nm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下、さらに好ましくは200nm以下、特に好ましくは100nm以下である。
ここで顔料の一次粒子径は電子顕微鏡による算術平均径(数平均)である。
また、本発明の水性顔料分散液中の顔料の平均分散粒径は、通常500nm以下、好ましくは200nm以下である。また下限としては、通常20nm以上である。
上記平均分散粒径は、SEMやTEM等の電子顕微鏡を用いて測定するか、市販の動的光散乱測定装置を使用して測定することができる。
なお、上記顔料としては、化学修飾がされておらず、また、顔料の小粒径化を促進するための結晶化抑止剤等の、顔料以外の不純物を含まないものが、後述の分散剤として用いるポリマーの顔料への吸着を阻害しないことから好ましい。また、顔料に自己分散性を持たせるために、予め公知の化学修飾を行った自己分散性を有する顔料も使用できる。即ち、本発明の水性顔料分散液において用いる顔料は、先述したような、未処理の顔料でも、また表面を化学修飾した顔料でもよく、任意の顔料を使用できる。中でもポリマーとの親和性の観点から、自己分散性を有さない顔料を用いることが好ましい。
これらの顔料は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
本発明の水性顔料分散液中のカーボンブラック等の顔料の含有量は、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。水性顔料分散液中の顔料の含有量が多過ぎると顔料が分散不良となり、また、水性顔料分散液の粘度が増大し、水性顔料分散液がゲル化したり、また、分散破壊により水性顔料分散液が使用できなくなる場合がある。一方、水性顔料分散液中の顔料の含有量が少なすぎるとインク組成物とした際に十分な印字濃度が出ないため、水性顔料分散液中の顔料の含有量は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。
<分散剤>
本発明の水性顔料分散液には、顔料と共に分散剤を含むことが好ましい。この分散剤としては公知のものが使用されるが、中でも分散性の観点から少なくとも1種類以上の疎水性モノマーと、1種類以上の親水性モノマーとを構成単位とするポリマーであることが好ましい。
ここでいう構成単位とは、ポリマーの基本構造の構成単位であり、合成高分子の場合には、重合又は共重合による当該ポリマーの製造に用いられたモノマー分子に由来する単位、もしくはそれらが変性などにより修飾された単位である。また、天然高分子の場合には、繰り返し単位もしくはそれが変性等により修飾された単位である。
また、以下において「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート及び/又はメタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。
(疎水性モノマー)
ポリマーの構成単位である疎水性モノマーとしては、特に限定されるものではなく、従来公知の疎水性モノマーが使用できるが、特に、疎水性モノマーの少なくとも1つが以下に記載するような芳香環含有モノマー及び/又は脂肪族炭化水素基を含有するモノマーであることが好ましい。
芳香環含有モノマーとは、芳香族複素環含有モノマー又は芳香族炭化水素環含有モノマーであり、例えばベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、9−アントラセニル(メタ)アクリレート、1−ピレニルメチル(メタ)アクリレートスチレン、ビニルナフタレン、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、p−メチルスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−t−ブトキシスチレン、m−t−ブトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン、o−クロロメチルスチレン、m−クロロメチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、4−ビニルビフェニル、1,1−ジフェニルエチレン、ビニルフェノール、安息香酸ビニル、ビニルナフタレン、ベンジルビニルエーテルなどが挙げられる。
これらの中で、顔料、特にカーボンブラックとの親和性の観点から、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレンのような無置換のフェニル基を有するモノマー構造が好ましく、中でもスチレン、ベンジルメタクリレートがより好ましく、スチレンが最も好ましい。
脂肪族炭化水素基含有モノマーに含まれる脂肪族炭化水素基は、直鎖状、環状、分岐状のいずれであってもよい。
直鎖状又は分岐状の脂肪族炭化水素基を有するモノマーとしては、例えば、次のようなものが挙げられる。
エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、i−アミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、i−デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、i−ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、i−ステアリル(メタ)アクリレート、ベへニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートエステル類;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;
酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;
マレイン酸エステル、イタコン酸エステル等のジカルボン酸エステル誘導体;
ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;
酢酸ビニル、酢酸イソプロペニル等のビニルエステル類:
環状の脂肪族炭化水素基を有するモノマーとしては、例えばシクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロノニル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートエステル類、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロドデセン、1,5−シクロオクタジエン、シクロペンタジエン、1,5,9−シクロドデカトリエン、1−クロロ−1,5−シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸ジメチル等の環状オレフィン類などが挙げられる。
これらの中でも、カーボンブラック等の顔料との親和性の観点から直鎖状又は分岐状の脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリレートエステル類が好ましい。中でも、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートがより好ましく、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートが最も好ましい。
これらの疎水性モノマーは、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
(親水性モノマー)
ポリマーの構成単位である親水性モノマーとしては、特に限定されるものではなく、従来公知の親水性モノマーが使用できるが、中でもアニオン性モノマー、カチオン性モノマー、ノニオン性モノマーが好ましい。その中でも分散性の観点からアニオン性モノマーが最も好ましい。
<アニオン性モノマー>
アニオン性モノマーとしては以下に例示されるものを用いることができるが、これらに限定されるものではなく、従来公知のものが使用できる。
アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、或いはこれらの塩等のカルボン酸系モノマー;
ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタクリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミドエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミドエタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4−アクリロイルオキシブタンスルホン酸、2−メタクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−メタクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4−メタクリロイルオキシブタンスルホン酸、或いはこれらの塩等のスルホン酸系モノマー;
ビニルホスホン酸、メタアクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート或いはこれらの塩等のリン酸系モノマー:
アニオン性モノマーとしては、印字濃度やにじみが少ないといった印字品位の観点から、カルボキシル基を有するモノマー或いはその塩が好ましく、メタクリル酸、アクリル酸或いはその塩、中でもアクリル酸或いはその塩がより好ましい。
また、アニオン性モノマーは塩であることが好ましい。中でもアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩であることがより好ましく、ナトリウム塩であることが特に好ましい。
<カチオン性モノマー>
カチオン性モノマーとしては以下に例示されるものを用いることができるが、これらに限定されるものではなく、従来公知のものが使用できる。
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレートなどのN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクレート;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドのような3級アミノ基含有重合性不飽和モノマー;
(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルオクチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルオクチルアンモニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルドデシルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルドデシルアンモニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルヘキサデシルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルヘキサデシルアンモニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジエチルオクチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジエチルオクチルアンモニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジエチルドデシルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジエチルドデシルアンモニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジエチルヘキサデシルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジエチルヘキサデシルアンモニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルオクチルアンモニムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルオクチルアンモニムブロマイド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルドデシルアンモニムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルドデシルアンモニムブロマイド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルヘキサデシルアンモニムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルヘキサデシルアンモニムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルエチルアンモニウムエチルスルフェー卜、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムp−トルエンスルホネート、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルエチルアンモニウムエチルスルフェー卜、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムp−トルエンスルホネートのような4級アンモニウム塩基含有重合性不飽和モノマー;
その他、ジメチルアミノスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン等のジアルキルアミノ基を有するスチレン類;4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン等のビニルピリジン類;又はこれらをハロゲン化アルキル、ハロゲン化ベンジル、アルキル若しくはアリールスルホン酸又は硫酸ジアルキル等の公知の四級化剤を用いて四級化したもの、重合後に加水分解することによってアミノ基を生成するN−ビニルホルムアミド及びN−ビニルアセトアミド、アリルアミン塩酸塩など:
中でも、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の3級アミノ基含有重合性不飽和モノマー、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルエチルアンモニウムエチルスルフェー卜等の4級アンモニウム塩基含有重合性不飽和モノマーが好ましく、その中でも4級アンモニウム塩基含有重合性不飽和モノマーが更に好ましい。その中でも、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドが最も好ましい。
4級アンモニウム塩基含有重合性不飽和モノマーを構成単位とするポリマーは、3級アミノ基含有重合性不飽和モノマーを重合した後、塩化メチルなどのハロゲン化アルキル、ベンジルクロライドなどのベンジルハライド、エピクロロヒドリン、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸などのアルキル化剤を用いて4級化反応により合成してもよいし、モノマーの状態で4級化したものを重合して合成してもよい。中でも、モノマーの状態で4級化したものを重合して得られるポリマーが好ましい。
<ノニオン性モノマー>
ノニオン性モノマーとしては、以下のものが挙げられるが、以下の例示に限定されるものではなく、従来公知のものを用いることができる。
(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピルなどの第1級アミノ基を有するモノマー;
(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸エチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸エチルアミノプロピル、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどの第2級アミノ基を有するモノマー;
(メタ)アクリルアミド、アルキル基の炭素数が1〜6のN−アルキル(メタ)アクリルアミド、アルキル基の炭素数が1〜3のN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエタノール(メタ)アクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルホルムアミド、N−(2−(ポリエチレングリコール)エチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−(2,2’−(ポリエチレングリコール)ジエチル)(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;
2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、1−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、2−ビニル−2−オキサゾリン、5−メチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、N−ビニルオキサゾリドン、2−N−ピロリドンエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルカプロラクタム、9−ビニルカルバゾール、N−ビニルフタルイミド、グリシジル(メタ)アクリレート、アジリジン環含有モノマーなどのヘテロ環を有するモノマー;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステル、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリル酸エステル、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルなどの水酸基を含有するモノマー;
ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)(メタ)アクリレート、プロピレングリコールポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)(メタ)アクリレートなどの含オキシアルキレン鎖モノマー;
グルコース、マンノース、ガラクトース、グルコサミン、マンノサミン、ガラクトサミン等の六炭糖類、アラビノース、キシロース、リボース等の五炭糖類、マルトース、ラクトース、トレハロース、セロビオース、イソマルトース、ゲンチオビオース、メリビオース、ラミナリビオース、キトビオース、キシロビオース、マンノビオース、ソホロース等の二糖類、その他、マルトトリオース、イソマルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マンノトリオース、マンニノトリオース等のオリゴ糖、セルロース、変性セルロース等の多糖類に由来するような構造を持ちグリコシル基を有するモノマー、例えばグルコシルエチルメタクリレート等のようなモノマー;
ポリビニルアルコール構造を側鎖に有するマクロモノマー:
ノニオン性モノマーとしては、これらのうち、分散性、保存安定性の観点から、アミド基含有モノマー、ヘテロ環を有するモノマー、水酸基を含有するモノマー、含オキシアルキレン鎖モノマー、ポリビニルアルコール構造を側鎖に有するマクロモノマーが好ましく、写真専用紙用の記録液として使用する場合は、印字物の光沢性の観点から、アミド基含有モノマー、水酸基を含有するモノマー、含オキシアルキレン鎖モノマーが好ましく、その中でも含オキシアルキレン鎖モノマーが特に好ましい。
これらの親水性モノマーは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
(モノマー組成)
分散剤としてのポリマーは少なくとも1種類以上の疎水性モノマーと、1種類以上の親水性モノマーを構成単位とするポリマーであることが好ましいが、モノマー組成は以下の通りであることが好ましい。
疎水性モノマー構成単位の含有量は、ポリマーの全構成単位に対して10モル%以上が好ましく、より好ましくは20モル%以上である。上限としては90モル%以下が好ましく、88モル%以下が更に好ましい。この下限より少ないとポリマーがカーボンブラック等の顔料に吸着しにくくなり遊離したポリマーが増大するため水性顔料分散液の粘度が高くなり、この水性顔料分散液をインク組成物に使用したとき吐出性が低下したり、インク組成物の保存安定性が低下する場合がある。この上限より多い場合、水性顔料分散液の分散性が低下する場合がある。
親水性モノマー構造単位の含有量は、ポリマーの全構成単位に対して10モル%以上が好ましく、12モル%以上がより好ましい。上限としては、90モル%以下が好ましく、80モル%以下がより好ましく、70モル%以下が最も好ましい。この下限より少ないと水性顔料分散液の水分散性が極端に低下し、この上限より多いとポリマーがカーボンブラック等の顔料に吸着しにくくなり遊離したポリマーが増大するため水性顔料分散液の粘度が高くなり、この水性顔料分散液をインク組成物に使用したとき吐出性が低下したり、インク組成物の保存安定性が低下する場合がある。
(ポリマー構造)
疎水性/親水性ポリマーのポリマー構造は、ランダムコポリマー、ジブロックコポリマー、トリブロック以上のマルチブロックコポリマー、グラジエントコポリマー、グラフトコポリマー、スターコポリマー等いずれでもよいが、中でもランダムコポリマー、ブロックポリマーであることが好ましく、ランダムコポリマーであることが最も好ましい。
(酸価)
ポリマーの酸価の上限としては、240mg−KOH/g以下が好ましく、220mg−KOH/g以下がより好ましく、200以下が更に好ましい。一方、ポリマーの酸価の下限としては、20mg−KOH/g以上が好ましく、30mg−KOH/g以上がより好ましい。
ポリマーの酸価が上記下限より少ないと水性顔料分散液の分散性が低下する傾向があり、上記上限より多いとポリマーがカーボンブラック等の顔料に吸着しにくくなり遊離したポリマーが増大するため、水性顔料分散液の粘度が高くなり、この水性顔料分散液をインク組成物に使用したとき吐出性が低下したり、インク組成物の保存安定性が低下する傾向がある。
(分子量)
ここでいう数平均分子量及び重量平均分子量の値は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定されるポリスチレン換算の値である
本発明に係るポリマーの数平均分子量(Mn)は、上限としては150,000以下であることが好ましく、100,000以下がより好ましく、50,000以下であることが特に好ましい。一方、下限としては1,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、7,000以上であることが特に好ましい。この範囲よりも分子量が大きいと水性顔料分散液、インク組成物の粘度が高くなり吐出性が低下し、小さいと水性顔料分散液を調製した際にカーボンブラック等の顔料からポリマーがはがれて分散性が低下する場合がある。
ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、上限としては300,000以下であることが好ましく、200,000以下であることがより好ましく、100,000以下であることが特に好ましい。一方、下限としては2,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましく、15,000以上であることが特に好ましい。この範囲よりも分子量が大きいと水性顔料分散液、インク組成物の粘度が高くなり吐出性が低下する場合があり、小さいと水性顔料分散液を調製した際にカーボンブラック等の顔料からポリマーがはがれて分散性が低下する場合がある。
また、本発明に係るポリマーの重量平均分子量4,000以下の低分子量成分の存在量は、20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。この低分子量成分の割合は、分散性、分散安定性、保存安定性を左右するパラメーターの一つと考えられるが、低分子量成分が上記上限よりも多い場合、分散性を確保するのは容易であるが、分散安定性や保存安定性を確保するのが困難となる場合がある。また、サーマルタイプの印字ヘッドでは、長期の吐出安定性も悪化する傾向にある。
ポリマー中の重量平均分子量4,000以下の低分子量成分の含有量は、ポリマーのゲルパーミエーショングロマトグラフィー(GPC)で得られるクロマトグラフにおける、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)4,000以下の成分の面積から、未反応モノマー及び重合溶媒のピーク面積を除いた面積の全面積に対する比率を計算することにより求めることができる。
なお、ポリマー中のこれらの低分子量成分は、限外濾過膜や透析膜などを用いたり、低分子量成分が溶解する溶媒中でポリマーを再沈殿させる方法により低減することができる。
(水溶性)
分散剤としてのポリマーは、ポリマー中に存在しているイオン性基の90モル%を中和した状態において、そのポリマーの2重量%の濃度の水分散液において沈殿を生じない「水分散性」のものが好ましく、中でもポリマーの25℃の水に対する溶解度が2重量%以上である「水溶性」のものが特に好ましい。通常は25℃で20重量%以下の濃度の水分散液において沈殿が生じないものが使用される。沈殿が生じるか否かはポリマー水分散液を調製した直後に目視で確認するものとする。
上述の「イオン性基」とは、水中でイオンに解離し得る基をいい、例えばアミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、又はこれらの塩等が挙げられる。上述の「ポリマー中に存在しているイオン性基の90モル%を中和した状態において」とは、ポリマー中に含まれるイオン性基の90モル%が中和剤によって塩になっている状態を指す。上記定義範囲にポリマーが入っていることを確認する手順としては、例えば、ポリマー中のイオン性基全体のうち中和されて塩になっている割合(イオン性基の中和度)を測定し、イオン性基の中和度を90モル%に調整し、これを25℃、2重量%濃度で水に溶解又は分散させて、その外観を目視観測する。イオン性基の中和度は、例えばH−NMRでポリマー全体に対するイオン性基の組成比を測定し、また、塩を形成しているポリマーのカウンターイオン、例えばカルボキシル基がNaと塩を形成している場合はNa電荷を測定し、実際にNa塩となっている量を、組成比より計算される全部がNa塩になっていると仮定した場合の電荷量で割ることによって、求めることができる。測定の結果、中和度がイオン性基の中和度が90%に満たない場合は、アルカリを添加することで中和度を調整する。また別の方法としては、アルカリを添加することによってポリマー中のイオン性基と重合しないで残ったモノマーのイオン性基が同じ割合で中和されると仮定し、ポリマーの合成からインクの調製までの一連の工程において添加したアルカリのモル数をポリマー合成時の仕込モノマーのイオン性基全体のモル数で割ることによって、ポリマー中のイオン性基の中和度を見積もって確認することもできる。
(ポリマーの合成方法)
本発明に係るポリマーの合成法は特に限定されず、例えばラジカル重合、イオン重合、重付加、重縮合などの公知の重合方法を選択でき、またポリマーは、これらの公知の方法で合成したポリマーの誘導体や変性体であってもよい。また、水や有機溶媒中にカーボンブラック等の顔料とモノマー、重合開始剤、必要に応じて界面活性剤、反応性界面活性剤、ポリマーを同時に混合し、重合しても良い。更に、カーボンブラック等の顔料表面にモノマーを直接反応させ重合しても良い。中でも、合成手法が簡便であることから、ラジカル重合を用いて合成されるポリマーが好ましい。
以下に本発明に係るポリマーとして好適なランダムコポリマーの好ましい合成法であるラジカル重合によるポリマーの合成方法について説明する。
<重合反応溶媒>
本発明に係るポリマーはランダムコポリマーであることが特に好ましい。その好ましい合成法であるラジカル重合反応は、無溶媒又は溶媒の存在下に行なうことができるが、溶媒存在下で重合反応を行うことが好ましい。
重合反応溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカルボニル化合物、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソアミルアルコール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類が挙げられるが、中でも、重合反応溶媒としては水性溶媒が好ましい。
水性溶媒とは、水100%もしくは水と極性有機溶媒とを任意の比率で混合した溶媒を指す。ここで用いる極性有機溶媒は、水と任意の比率で混合可能なものであれば良く、具体的にはメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジチルスルホキシド、テトラヒドロフラン等が例示される。これらの中で、特にテトラヒドロフラン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールが好ましい。
また、重合反応溶媒は1種類のみからなる単一溶媒でも良いし、2種類以上からなる混合溶媒でも良い。
<重合開始剤>
ポリマーを合成する際のラジカル重合反応には公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。
重合開始剤としては、水溶性の重合開始剤でも油溶性の重合開始剤でも使用できる。
水溶性の重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン}ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6,−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]二塩酸塩等のアゾ化合物系開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸ソーダ、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の酸化剤単独;或いはこれらの酸化剤と亜硫酸ソーダ、次亜硫酸ソーダ、硫酸第1鉄、硝酸第1鉄、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、チオ尿素等の水溶性還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤が挙げられる。
これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
油溶性の重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビスシクロヘキサン1−カーボニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物系開始剤;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノニルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、プロピオニトリルパーオキサイド、サクシニックアシッドパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジベンゾイルパーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジイソブチルジパーオキシフタレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジt−ブチルパーオキシヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジt−ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、パラメンタンヒドロパーオキサイド、ピナンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド及びクメンパーオキサイド等のパーオキサイド重合開始剤;さらにヒドロペルオキサイド(tret−ブチルヒドロキシペルオキサイド、クメンヒドロキシペルオキサイド等)、過酸化ジアルキル(過酸化ラウロイル等)及び過酸化ジアシル(過酸化ベンゾイル等)等の油溶性過酸化物と、第三アミン(トリエチルアミン、トリブチルアミン等)、ナフテン酸塩、メルカプタン(メルカプトエタノール、ラウリルメルカプタン等)、有機金属化合物(トリエチルアルミニウム、トリエチルホウ素及びジエチル亜鉛等)等の油溶性還元剤とを併用する油溶性レドックス重合開始剤が挙げられる。
これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
<その他の添加剤>
ラジカル重合反応には、上記の重合開始剤に加え、得られる重合体を好ましい分子量に調節するために、連鎖移動剤、連鎖停止剤、重合促進剤等、公知のものを添加使用することができる。
<重合条件>
ラジカル重合反応を行う際、モノマー、重合反応溶媒、ラジカル開始剤等の添加順序等は任意であるが、例えば、モノマー、重合反応溶媒、ラジカル重合開始剤を反応容器に一括で仕込んだ後に温度を上昇させて重合反応を行う方法が挙げられる。この場合、モノマーあるいはラジカル重合開始剤をそのままの状態あるいは溶液にして追加添加してもよい。また、別の方法としては、重合性モノマー、重合反応溶媒を反応容器に仕込んで温度を上昇させた後に、ラジカル重合開始剤を含有するモノマー溶液、重合反応溶媒、又はこれらの混合物を、連続的に又は分割して添加し、重合反応を行う方法等が挙げられる。
中でも操作の簡便性から、原料を一括で仕込んだ後に温度を上昇させて重合反応を行う方法が好ましい。
重合反応溶媒の使用量は特に限定されないが、モノマー100重量部に対し、通常1重量部以上、通常2000重量部以下、好ましくは1000重量部以下である。
重合開始剤の使用量は、用いる重合開始剤の種類によっても異なり、特に限定されないが、モノマー100重量部に対して、通常0.5重量部以上、15重量部以下である。
重合温度は特に限定されないが、通常0℃以上、好ましくは20℃以上であり、その上限は通常200℃以下、好ましくは150℃以下である。
重合により得られたポリマーは未精製のまま使用しても特に問題はないが、常法に従って精製し、次の顔料分散工程へ供されるのが好ましい。精製方法としては、ポリマーが不溶でモノマーと重合開始剤が可溶な溶媒へポリマー溶液を滴下し、ポリマーの沈澱、濾別を繰り返す再沈精製、ポリマー溶液にポリマーが不溶でモノマーと重合開始剤が可溶な溶媒を滴下し、ポリマーの沈澱、濾別を繰り返す分別沈澱精製、加熱蒸留や、減圧蒸留等によって未反応モノマーや反応溶媒を除去した後に、溶媒を水及び/又は水性溶媒に置換する方法、さらには限外濾過膜や透析膜などを用いて低分子不純物や低分子量オリゴマー成分を除去する方法などが挙げられる。
水性顔料分散液中に含まれる分散剤としての上記ポリマーは、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。上述の通り、ポリマーは少なくとも1種類以上の疎水性モノマーと、1種類以上の親水性モノマーとを構成単位とするポリマーであることが好ましいが、親水性モノマーとしてアニオン性モノマーを使用したアニオンポリマーや、カチオン性モノマーを使用したカチオンポリマーや、ノニオン性モノマーを使用したノニオンポリマーをそれぞれ単独で用い、カーボンブラック等の顔料をポリマーで分散した水性顔料分散液を調製してもよいし、これらを併用してもよい。併用した例としては、例えば、アニオンポリマーとカチオンポリマーの静電相互作用を利用し、カーボンブラック等の顔料をポリマーで被覆した複合ポリマーカプセルなどが挙げられる。
本発明の水性顔料分散液における分散剤の含有量は、適宜選択し決定すればよいが、一般的には顔料1重量部に対してポリマー(2種以上のポリマーを含む場合はその合計)が0.001重量部以上、中でも0.01重量部以上、特に0.05重量部以上、とりわけ0.08重量%以上であることが好ましく、その上限は2重量部以下、中でも1.5重量部以下であることが好ましい。この範囲よりもポリマーが少ないと分散安定性が低下し、多いと水性顔料分散液の粘度が高くなって吐出性が低下してしまう。
<界面活性剤>
本発明の水性顔料分散液は、浸透促進剤として界面活性剤を含むことが好ましい。
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ポリマー系界面活性剤等、任意のものの1種又は2種以上を使用できる。中でも非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤及びポリマー系界面活性剤が好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレン誘導体類、オキシエチレン/オキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン類、アセチレングリコール類、アセチレンアルコール類等が挙げられる。
陰イオン性界面活性剤としては、例えば脂肪酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルスルホコハク酸塩類、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類、アルキルリン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸エステル塩類、アルカンスルホン酸塩類、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物類 、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル類、α−オレフィンスルホン酸塩等が挙げられる。
また、ポリマー系界面活性剤としては、ポリアクリル酸、スチレン/アクリル酸コポリマー、スチレン/アクリル酸/アクリル酸エステルコポリマー、スチレン/マレイン酸コポリマー、スチレン/マレイン酸/アクリル酸エステルコポリマー、スチレン/メタクリル酸コポリマー、スチレン/メタクリル酸/アクリル酸エステルコポリマー、スチレン/マレイン酸ハーフエステルコポリマー、スチレン/スチレンスルホン酸コポリマー、ビニルナフタレン/マレイン酸コポリマー、ビニルナフタレン/アクリル酸コポリマーあるいはこれらの塩等が挙げられる。
陽イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられる。
その他、ポリシロキサンオキシエチレン付加物等のシリコーン系界面活性剤や、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル等のフッ素系界面活性剤、ラムノリピド、リゾレシチン等のバイオサーファクタント等の界面活性剤も使用することができる。
なお、浸透促進剤としては、上記界面活性剤の他、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール等の低級アルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルグリコールエーテル等のカルビトール類を用いることもできる。
本発明の水性顔料分散液の界面活性剤の含有量は、適宜選択し決定すればよい。通常は水性顔料分散液に対して0.001重量%以上5重量%以下の範囲で添加することによって、印刷物の速乾性及び印字品位をより一層改良することができる。
<その他の成分>
本発明の水性顔料分散液には、本発明の1,2−アルカンジオール組成物、水、顔料、分散剤及び界面活性剤の他、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて各種添加剤を含んでいても良い。
このような添加剤としては例えば、表面張力調整剤、ヒドロトロピー剤、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、粘度調整剤、保湿剤、防黴剤、防錆剤等のインク組成物用添加剤として公知のものが挙げられる。
本発明の水性顔料分散液における、これら添加剤の含有量は、水性顔料分散液の全量に対して、通常その合計で30重量%以下、中でも15重量%以下であることが好ましい。
表面張力調整剤としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、グリセリン、ジエチレングリコール等のアルコール類、ノニオン、カチオン、アニオン、あるいは両性界面活性剤の1種又は2種以上を挙げることができる。
ヒドロトロピー剤としては、尿素、アルキル尿素、エチレン尿素、プロピレン尿素、チオ尿素、グアニジン酸塩、ハロゲン価テトラアルキルアンモニウム等の1種又は2種以上が好ましい。
保湿剤としては、グリセリン、ジエチレングリコール等の1種又は2種以上を水溶性有機溶媒と兼ねるものとして添加することもできる。
更に、固体保湿剤(保水機能を有する25℃で固体の水溶性物質)を添加することもできる。好ましい固体保湿剤としては、糖類、糖アルコール類、ヒアルロン酸塩、トリメチロールプロパン、1,2,6−トリオール等が挙げられる。糖類としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類及び四糖類を含む)及び多糖類が挙げられ、具体的には、グルコース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、ソルビット、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース等が挙げられる。糖アルコール類としては、マルチトール、ソルビトール、キシリトール等が挙げられ、これらの固体保湿剤の1種又は2種以上を添加することもできる。
キレート剤としては、特に限定されるものではないが、エチレンジアミンテトラアセティックアシッドのナトリウム塩、エチレンジアミンテトラアセティックアシッドのジアンモニウム塩等の1種又は2種以上が用いられる。これらは、水性顔料分散液に対して0.005重量%以上0.5重量%以下の範囲で用いられることが好ましい。
防黴剤としては、特に限定されるものではないが、デヒドロ酢酸ナトリウム、ジクロロフェン、ソルビン酸、安息香酸ナトリウム、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(製品名:プロキセルGXL(アーチ・ケミカルズ社製))等が用いられる。これらは、水性顔料分散液に対して0.05重量%以上1重量%以下の範囲で含まれることが好ましい。
また、水性顔料分散液のpHを調整し、水性顔料分散液の安定性を得るため、特に限定されるものではないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、硝酸、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のpH調整剤、リン酸等の緩衝液を用いることができる。
なお、水性顔料分散液、特にインク組成物のpHとしては、通常、中性からアルカリ性の範囲であり、中でもpH6〜11程度に調整することが好ましい。
<水性顔料分散液の製造方法>
本発明の水性顔料分散液は、水性媒体としての本発明の水性混合物、顔料、分散剤(ポリマー)、界面活性剤を混合することで製造される。その際の各成分の混合方法や添加順序は任意であるが、例えば、これらを一度に混合し、この混合液に対して一般的な分散機を用いて分散処理を施せばよい。前述のその他の成分を添加する場合、その他の成分は、これらと同時に添加混合してもよく、予め混合、分散処理された分散液に添加してもよい。
分散処理に用いる分散機としては、通常、顔料分散に使用される各種分散機が使用できる。
分散機としては、特に限定されるものではないが、ニーダー、ソルトミリング、ロールミル、プラネタリーミキサー、ペイントシェーカー、ボールミル、サンドミル、アトライター、パールミル、コボールミル、ホモミキサー、ホモジナイザー、湿式ジェットミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等を用いることができる。分散機としてメディアを使うものには、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、磁性ビーズ、スチレンビーズを用いることができる。このうち、好ましい分散処理方法は、超音波ホモジナイザーで分散する方法である。
超音波ホモジナイザーで分散処理を行う際は、予め上記のニーダー、ソルトミリング、ロールミル、プラネタリーミキサー、ホモミキサー、ホモジナイザー、湿式ジェットミル、高圧ホモジナイザー、ビーズミルなどの各種方法でカーボンブラック等の顔料、ポリマー、及び水性媒体を予備分散した後に行うのがよい。
超音波ホモジナイザーによる分散処理時の顔料濃度は、通常3〜30重量%であり、好ましくは5〜20重量%、より好ましくは6〜16重量%である。この範囲よりも顔料濃度が低い場合は、顔料粒子が希薄なために分散効率が悪く、更には長時間超音波を照射しても顔料の粒子径が小さくならない場合がある。逆に、分散処理時の顔料濃度がこの範囲よりも高い場合は、顔料粒子の濃度が高すぎることに加え、分散液粘度が高くなるので攪拌効率が下がるため、超音波が均一に顔料粒子当りにくくなり、分散が不均一となる場合がある。
従って、目的とする水性顔料分散液の顔料濃度が、上記の超音波ホモジナイザーによる分散処理に好適な顔料濃度と異なる場合は、水を加えて希釈したり加熱して濃縮したりして好適な濃度に合わせる。
また、超音波ホモジナイザーによる分散処理時は、超音波の照射により著しく発熱するので、氷水などで冷却しながら分散処理を行うのが好ましく、その際、分散液温度が60℃以下、例えば0〜50℃となるように冷却を行うのが好ましい。分散液の温度が上がりすぎると、分散の進行よりも顔料同士の凝集の方が起こりやすくなるために分散は進まず、更には壁面で凝集した顔料が分散液に混入し、粗大粒子混入の原因となり、吐出性を悪化させる結果となる。
超音波ホモジナイザーの出力は、顔料の粒子径が目標とする大きさになれば特に限定しないが、通常50W以上1200W以下である。出力が小さすぎると目標の粒子径まで小粒径化できなかったり、分散処理に長時間を要し、出力が大きすぎると顔料やポリマー構造が破壊されたり、あるいは振動素子(金属チップ)から微小の金属片が多量に剥離し、不純物として分散液中に混入し、その結果、吐出性や保存安定性、あるいは、濾過性を悪化させる原因となるので注意が必要である。
分散処理時間は、顔料の粒子径が目標とする大きさになればよく、特に限定しないが、通常1分/分散液1kg以上800分/分散液1kg以下であり、好ましくは10分/分散液1kg以上である。分散処理時間が短すぎると、粗大粒子が多く残ったり、分散剤であるポリマーの顔料表面への吸着が不十分となり、分散安定性や保存安定性が悪くなるので好ましくない。一方で、分散処理時間が長すぎると、数ナノから数十ナノメートルレベルの顔料微粒子が多く発生し、それらが分散安定性、保存安定性、更には吐出安定性を悪化させ、更には印字濃度を低下させる原因となるので好ましくない。
[記録方法]
本発明の水性顔料分散液をインク組成物として用いる記録方法としては、このインク組成物の液滴をインクジェットヘッドから吐出させ、該液滴を記録媒体に付着させてインクジェット記録する方法が好ましく、本発明の水性顔料分散液をインク組成物として用いたインクジェット記録により、本発明の印刷物である高品質のインクジェット記録物を得ることができる。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下において、1,2−ブタンジオール組成物中の1,2−ブタンジオール(12BG)に対するエステル基を含有する化合物のエステル基の含有モル量(モル%)を単に「エステル基量」と称す。
[調製例1]
2Lの撹拌翼と留去缶を備えたセパラブルフラスコを用いて、エステル基量が11.0モル%の三菱ケミカル社製粗1,2−ブタンジオールを500g、東京化成社製のメタノールを250g、東京化成工業社製ナトリウムメトキシド5モル/Lメタノール溶液を2g加え、60℃で3時間加熱した。得られた反応液に和光純薬社製85重量%リン酸を1.1g加えた後、729gを原料として、棚段20段のオルダーショウを用いて精密蒸留を実施した。還流比は0.1とし、常圧で275gのメタノール含有留分を取り除いた後、80torrの減圧条件で451gの1,2−ブタンジオール含有液を留出させて回収した。ここで回収された1,2−ブタンジオール含有液には、1−アセトキシ2−ヒドロキシブタン(21HAB)が1.85重量%、1−ヒドロキシ2−アセトキシブタン(12HAB)が0.76重量%、エチル−γ−ブチロラクトン(エチルGBL)が0.013重量%含まれ、エステル基量は2.0モル%であった。また、この1,2−ブタンジオール含有液(1,2−ブタンジオール組成物)にジアセトキシブタン(DAB)は含まれていなかった。
[調製例2]
2Lの撹拌翼と留去缶を備えたセパラブルフラスコを用いて、エステル基量が11.0モル%の三菱ケミカル社製粗1,2−ブタンジオールを500g、東京化成社製のメタノールを250g、東京化成工業社製ナトリウムメトキシド5モル/Lメタノール溶液を2g加え、60℃で3時間加熱した。その後、メタノール含有液を250g留去し、再度メタノールを250g加えて3時間加熱した。得られた反応液に和光純薬社製85重量%リン酸を1.1g加えた後、729gを原料として、棚段20段のオルダーショウを用いて精密蒸留を実施した。還流比は0.1とし、常圧で324gのメタノール含有留分を取り除いた後、80torrの減圧条件で371gの1,2−ブタンジオール含有液を留出させて回収した。ここで回収された1,2−ブタンジオール含有液には、1−アセトキシ2−ヒドロキシブタン(21HAB)が0.16重量%、1−ヒドロキシ2−アセトキシブタン(12HAB)が0.43重量%、エチル−γ−ブチロラクトン(エチルGBL)が0.013重量%含まれ、エステル基量は0.4モル%であった。また、この1,2−ブタンジオール含有液(1,2−ブタンジオール組成物)にジアセトキシブタン(DAB)は含まれていなかった。
[実施例1]
調製例1で得られた1,2−ブタンジオール組成物を水と混合して水性混合物とした。水性混合物中の1,2−ブタンジオール濃度は9.7重量%であった。
この水性混合物を80℃の環境下に24時間保持し、その前後でのpH及び電気伝導度を測定し、測定値及び変化率を表1に示した。なお、pHは株式会社堀場製作所製pH計(LAQUA:F−72)で測定し、電気伝導度は株式会社堀場製作所製電気伝導度計(LAQUA:DS−71)で測定した。
[実施例2]
調製例2で得られた1,2−ブタンジオール組成物を水と混合して水性混合物とした。この水性混合物中の1,2−ブタンジオール濃度は9.9重量%であった。
この水性混合物について、実施例1と同様に保持前後のpH及び電気伝導度を測定すると共に、これらの変化率を求め、結果を表1に示した。
[比較例1]
ジアセトキシブタン(DAB)を6.01重量%含み、1−アセトキシ2−ヒドロキシブタン(21HAB)を4.02重量%、1−ヒドロキシ2−アセトキシブタン(12HAB)を2.10重量%、エチル−γ−ブチロラクトン(エチルGBL)を0.017重量%含み、エステル基量が11.0モル%の1,2−アルカンジオール組成物を水と混合して水性混合物とした。この水性混合物中の1,2−ブタンジオール濃度は8.7重量%であった。
この水性混合物について、実施例1と同様に保持前後のpH及び電気伝導度を測定すると共に、これらの変化率を求め、結果を表1に示した。
[比較例2]
1−アセトキシ2−ヒドロキシブタン(21HAB)を0.09重量%、1−ヒドロキシ2−アセトキシブタン(12HAB)を0.15重量%、エチル−γ−ブチロラクトン(エチルGBL)を0.018重量%含み、ジアセトキシブタン(DAB)を含まず、エステル基量が0.1モル%の1,2−ブタンジオール組成物を水と混合して水性混合物とした。この水性混合物中の1,2−ブタンジオール濃度は10.0重量%であった。
この水性混合物について、実施例1と同様に保持前後のpH及び電気伝導度を測定すると共に、これらの変化率を求め、結果を表1に示した。
Figure 0006958074
表1より、エステル基量が0.2〜4.0モル%となるようにエステル基を含有する化合物を含む本発明の1,2−アルカンジオール組成物を用いた実施例1,2の水性混合物は、pH及び電気伝導度の経時変化が抑制されていることが分かる。
これに対して、エステル基量が本発明の範囲外の1,2−アルカンジオール組成物を用いた比較例1,2の水性混合物は、pH及び電気伝導度の経時変化が大きく、保存安定性に劣る。

Claims (6)

  1. エステル基を有する化合物を含有する1,2−アルカンジオール組成物であって、
    該エステル基を有する化合物の含有量が、該組成物中の1,2−アルカンジオールに対する該エステル基を有する化合物のエステル基の割合で、0.2〜4.0モル%であり、
    前記エステル基を有する化合物が、γ−ブチロラクトン及び/又はエチル−γ−ブチロラクトンを含む1,2−アルカンジオール組成物。
  2. 前記1,2−アルカンジオールが1,2−ブタンジオールである請求項1に記載の1,2−アルカンジオール組成物。
  3. 請求項1又は2に記載の1,2−アルカンジオール組成物及び水を含有する水性混合物。
  4. 前記水性混合物中の1,2−アルカンジオール濃度が1〜20重量%である請求項に記載の水性混合物。
  5. 請求項又はに記載の水性混合物を含む水性インク。
  6. 請求項に記載の水性インクを基材上に印刷した印刷物。
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