JP6958037B2 - 高強度めっき鋼板とその製造方法 - Google Patents
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Description
(1)鋼板1、鋼板2と、これら鋼板1、2の突き合わせ溶接部からなる範囲における硬度と板厚の積HTの分布において、溶接部およびHAZにかけてのHTと鋼板1および鋼板2におけるHTとの比を1に近づけ、かつ、当該範囲における最大硬度と上記鋼板1、鋼板2のより硬い側の硬度との硬度差を小さくすること;
(2)さらに、鋼板1、鋼板2と、これら鋼板1、2の突き合わせ溶接部からなる範囲の有効結晶粒径の分布において、溶接部およびHAZにかけての有効結晶粒径の最大値と、上記鋼板1、鋼板2の有効結晶粒径の平均値のうち粗大な方の有効結晶粒径の平均値との比を小さくすること。
前記異なる鋼板のうち少なくとも1種の鋼板の最大引張強度が780MPa以上であり、
前記突き合わせ溶接部及び溶接熱影響部を含む鋼板全体において、表面にめっき層を有することを特徴とする高強度めっき鋼板。
(2)前記突き合わせ溶接部及び溶接熱影響部を含む領域の硬度と板厚の積HTの分布における最小値HTminが、前記異なる鋼板のうち1つの鋼板における平均値HT1と前記異なる鋼板のうち他の鋼板における平均値HT2のうち小さい方の値の0.80倍以上であり、
前記HTの分布における最大値HTmaxが前記HT1とHT2のうち大きい方の値の1.50倍以下であり、
前記突き合わせ溶接部及び溶接熱影響部を含む領域の硬度の最大値Hmaxと前記1つの鋼板における硬度H1と前記他の鋼板における硬度H2のうち大きい方の値との差ΔHが100Hv以下であることを特徴とする、(1)に記載の高強度めっき鋼板。
(3)前記突き合わせ溶接部及び溶接熱影響部を含む領域の有効結晶粒径の分布において、前記1つの鋼板の有効結晶粒径の平均値と前記他の鋼板の有効結晶粒径の平均値のうち大きい方の有効結晶粒径dと、前記有効結晶粒径の最大値dmaxとの比が5.0以下であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の高強度めっき鋼板。
(4)突き合わせ溶接部及び溶接熱影響部を含む領域の残留オーステナイトの体積率の分布において残留オーステナイトの多い側の鋼板における残留オーステナイト体積率Vと前記1つの鋼板から前記他の鋼板にかけての最大残留オーステナイト体積率Vmaxの差が5.0%以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の高強度めっき鋼板。
(5)溶接部および溶接熱影響部を含む鋼板表面全体に亜鉛めっき層を有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の高強度めっき鋼板。
(6)前記亜鉛めっき層が合金化亜鉛めっき層であることを特徴とする(5)に記載の高強度めっき鋼板。
(7)質量%で、
C:0.020%以上0.800%以下、
Si:0.001%以上3.00%以下、
Mn:0.01%以上25.00%以下、
P:0.100%以下、
S:0.0100%以下、
Al:0.001%〜2.500%、
N:0.0150%以下、
O:0.0050%以下、
を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなる1つの鋼板と、
前記鋼板とは化学組成および/または板厚の異なる他の鋼板とを、溶接部における板厚比を3.0以下として突き合わせ溶接し、
溶接後にめっき処理を施すことを特徴とする高強度めっき鋼板の製造方法。
(8)前記1つの鋼板の化学組成が、
Feの一部に替えて、更に質量%で、
Cr 0.03〜5.00%
Mo 0.03〜5.00%
Ni 0.03〜5.00%
Cu 0.03〜5.00%
W 0.03〜5.00%
B 0.0004〜0.0100%
Nb 0.005〜0.200%
Ti 0.010〜0.500%
V 0.05〜2.00%
Sb 0.003〜1.000%
Sn 0.005〜1.000%
Ca 0.0010〜0.0100%
Ce 0.0010〜0.0100%
Mg 0.0010〜0.0100%
Zr 0.0010〜0.0100%
La 0.0010〜0.0100%
Hf 0.0010〜0.0100%
REM 0.0010〜0.0100%
のいずれか1種以上を含むことを特徴とする(7)に記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
(9)前記鋼板の溶接後、めっき処理の前に、前記鋼板のうち少なくとも1つの鋼板のAc1温度を上回る温度まで加熱する熱処理を行い、
前記熱処理は、加熱開始から冷却開始までの温度履歴が式(1)を満たすことを特徴とする、(7)または(8)に記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
(10)前記鋼板の溶接後、めっき処理の前に、前記鋼板のうち少なくとも1つの鋼板の(Ac1+40)℃を上回る温度まで加熱する熱処理を行い、
前記熱処理は、加熱開始から冷却開始までの温度履歴が式(3)を満たすことを特徴とする、(7)〜(9)のいずれかに記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
(11)前記熱処理のうち、加熱を開始してから冷却を開始するまでの加熱工程において、予熱バーナーに用いる空気と燃料ガスの混合ガスにおいて、単位体積の混合ガスに含まれる空気の体積と、単位体積の混合ガスに含まれる燃料ガスを完全燃焼させるために理論上必要となる空気の体積との比である空気比:0.7〜1.2とされた条件の酸化帯において加熱し、次いで、水蒸気(H2O)と水素(H2)との分圧比P(H2O)/P(H2):0.0001〜2.0とされた還元帯において最高加熱温度まで加熱することを特徴とする、(9)または(10)に記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
(12)突き合わせ溶接後、めっき処理の前に、溶接部を研削することを特徴とする(7)〜(11)のうちいずれかに記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
(13)前記熱処理前に、前記1つの鋼板及び他の鋼板のうち少なくともいずれかのAc1温度以上に加熱する予備熱処理を1回以上施すことを特徴とする(9)〜(12)のうちいずれかに記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
(14)前記1つの鋼板及び他の鋼板のうち1種以上が下記式(4)を満たす化学組成を有することを特徴とする(7)〜(13)のうちいずれかに記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
(15)前記1つの鋼板及び他の鋼板のうち少なくともいずれかの鋼板が、熱延鋼板に0.01〜85%の冷間圧延を施した冷延鋼板であることを特徴とする(7)〜(14)のうちいずれかに記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
(16)前記1つの鋼板及び他の鋼板のうち少なくともいずれかの鋼板が、Ac3以上の温度まで加熱した後に1.0℃/秒以上の速度で冷却する予備熱処理を施した鋼板であることを特徴とする(9)〜(15)のうちのいずれかに記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
(17)めっき処理が溶融亜鉛めっき処理であることを特徴とする(7)〜(16)のいずれかに記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
(18)めっき処理の後に合金化処理を施すことを特徴とする(17)に記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
本発明鋼板は、降伏強度および/または板厚の異なる2種以上の鋼板およびそれらの突き合わせ溶接部からなり、当該鋼板の少なくとも1種以上の最大引張強度が780MPa以上であり、溶接部および溶接熱影響部を含む鋼板全体において、表面がめっき層を有することを特徴とする。
成形時の割れにはひずみ集中による割れと靭性不足による割れがあり、溶接部およびHAZにおいて、ひずみ集中による割れの発生しやすさは、当該箇所における硬度と板厚の積HTによって整理できる。HTは当該箇所における耐荷重に相当するので、鋼板に変形を加えると、周辺と比べてHTの低い箇所、すなわち耐荷重の低い箇所には変形が集中しやすい。そのため、溶接影響を受けない鋼板部分に比べて溶接部あるいはHAZにおけるHTが著しく小さい場合、プレス成形時にHTの小さい箇所にひずみが集中し、割れる場合がある。
一方、靭性不足による成形時の割れの発生しやすさは、硬度によって整理できる。溶接部およびHAZにおける硬度が周辺の鋼板と比べて極端に高い場合、当該箇所は鋼板に比べて大きく脆化している危険性が有り、成形時に割れる場合がある。具体的には、図1に示される突き合わせ溶接のような場合、突き合わせ溶接部及びHAZを含む領域の鋼板1から鋼板2にかけての硬度の最大値Hmaxと鋼板1における硬度H1と鋼板2における硬度H2のうち大きい方の値との差ΔHが100[Hv]を超えると、プレス成形時に割れが発生する場合があるため、ΔHの上限を100[Hv]とすることが好ましい。ΔHは小さいほど好ましく、50[Hv]以下とすることがより好ましく、30[Hv]以下とすることが更に好ましい。成形時に割れた部位ではめっきを有さない表面が暴露され、成形後耐食性が著しく劣化するため、耐食性の観点からも上記を満たすことが好ましい。
成形した部品の耐衝撃性を高めるには、破壊の発生に寄与する硬さを上記の通り制御するとともに、破壊の伝播を抑制するために結晶粒径を細かくする必要がある。特にHAZでは、溶接時にミクロ組織が粗大化し、有効結晶粒径が周辺の鋼材と比べて著しく大きくなる場合があり、耐衝撃性が劣化しやすい。具体的には、図1に示される突き合わせ溶接のような場合、突き合わせ溶接部及びHAZを含む領域における有効結晶粒径の最大値dmaxと鋼板1における有効結晶粒径の平均値d1と鋼板2における有効結晶粒径の平均値d2のうち大きい方の値dとの成す比を5.0以下とすることで、耐衝撃特性は改善する。この比は4.0以下とすることが好ましく、3.0以下とすることが更に好ましく、両者が等しいことが最も好ましい。尚、鋼板1における有効結晶粒径の平均値d1と鋼板2における有効結晶粒径の平均値d2は、溶接部及びHAZを含まないそれぞれの鋼板領域における有効結晶粒径の平均値である。以下、「有効結晶粒径の平均値」を単に「平均有効結晶粒径」という。
ミクロ組織に含まれる残留オーステナイトは、成形性を改善するため、鋼板、HAZおよび溶接部に含まれていても構わない。しかしながら、残留オーステナイトは成形によって硬質なマルテンサイトとなり、衝撃時に破壊の基点として働くため、特にHAZおよび溶接部において鋼板よりも多量に残留オーステナイトが存在する場合、耐衝撃性が著しく劣化する。
本発明のめっき鋼板を構成する母材としての鋼板(以下、「母材鋼板」ともいう。)の少なくとも1種以上の母材鋼板は、本発明の鋼板の強度を780MPa以上とするため、下記の化学組成を有する鋼板を用いることが好ましい。なお、化学組成に関して%は質量%を表わす。
Cは、強度の向上に寄与する元素である。C含有量が0.020%未満であると、添加効果が十分に得られないので、含有量は0.020%以上とすることが好ましい。Cは0.050%以上含有することが好ましく、0.100%以上含有することがより好ましい。一方、C含有量が0.800%を超えると、鋳造スラブが脆化して割れやすくなるため、含有量は0.800%以下とすることが好ましい。また、突き合わせ溶接における溶接性が劣化するため、Cの含有量は0.600%以下とすることが好ましい。部材の溶接性を確保するため、Cの含有量は0.300%以下とすることがより一層好ましい。
Siは、鉄系炭化物を微細化し、強度と成形性の向上に寄与する元素であるが、鋼を脆化する元素でもある。Si含有量が3.00%を超えると、鋳造スラブが脆化して割れ易くなり、また、溶接性が低下するので、Si含有量は3.00%以下とすることが好ましい。耐衝撃性を確保する点で、2.50%以下が好ましく、2.00%以下がより好ましい。一方、Siの含有量を0.001%未満に低減するには特別な処理が必要となるため、Si含有量は0.001%以上とすることが好ましい。鋼を強化するには、Siの含有量は0.010%以上が好ましく、0.030%以上とすることがより好ましい。
Mnは、焼入れ性を高めて、強度の向上に寄与する元素であるが、鋼を脆化する元素でもある。Mnの含有量が25.00%を超えると、鋳造スラブが脆化して割れ易くなり、また、溶接性が劣化するため、Mnは25.00%以下とすることが好ましい。鋳造スラブの脆化を防ぐには、Mn含有量は12.00%以下とすることが好ましく、7.00%以下とすることが更に好ましい。一方、Mnの含有量を0.01%未満とするには特殊な処理が必要となるため、Mnの含有量は0.01%以上とすることが好ましい。鋼を強化するには、Mnは0.10%以上含有することが好ましく、0.50%以上添加することが更に好ましい。
Alは、脱酸材として機能するが、一方で、鋼を脆化する元素でもある。Al含有量が0.001%未満であると、脱酸効果が十分に得られないので、Al含有量は0.001%以上とすることが好ましい。一方、Alの含有量が2.500%を超えると、粗大な酸化物が生成し、鋳造スラブが割れ易くなるため、Al含有量は2.500%以下とすることが好ましい。良好なスポット溶接性を確保する点で、Alの含有量は2.000%以下が好ましい。
Crは、焼入れ性を高め、鋼板強度の向上に寄与する元素であり、C及び/又はMnの一部に替わり得る元素である。Cr含有量が5.00%を超えると、熱間加工性が低下して生産性が低下するので、Cr含有量は5.00%以下が好ましい。下限は0%を含むが、Crの強度向上効果を十分に得るには、0.03%以上含有することが好ましい。
Moは、高温での相変態を抑制し、鋼板強度の向上に寄与する元素であり、C及び/又はMnの一部に替わり得る元素である。Mo含有量が5.00%を超えると、熱間加工性が低下して生産性が低下するので、Mo含有量は5.00%以下が好ましい。下限は0%を含むが、Moの強度向上効果を十分に得るたには、0.03%以上含有することが好ましい。
Niは、高温での相変態を抑制し、鋼板強度の向上に寄与する元素であり、C及び/又はMnの一部に替わり得る元素である。Niが5.00%を超えると、溶接性が低下するので、Ni含有量は5.00%以下が好ましい。下限は0%を含むが、Niの強度向上効果を十分に得るには、0.03%以上含有することが好ましい。
Cuは、微細な粒子で鋼中に存在し、鋼板強度の向上に寄与する元素であり、C及び/又はMnの一部に替わり得る元素である。Cuが5.00%を超えると、溶接性が低下するので、Cu含有量は5.00%以下が好ましい。下限は0%を含むが、Cuの強度向上効果を十分に得るには、0.03%以上含有することが好ましい。
Wは、高温での相変態を抑制し、鋼板強度の向上に寄与する元素であり、C及び/又はMnの一部に替わり得る元素である。Wが5.00%を超えると、熱間加工性が低下して生産性が低下するので、W含有量は5.00%以下が好ましい。下限は0%を含むが、Wの強度向上効果を十分に得るには、0.03%以上含有することが好ましい。
Bは、高温での相変態を抑制し、鋼板強度の向上に寄与する元素であり、C及び/又はMnの一部に替わり得る元素である。B含有量が0.0100%を超えると、熱間加工性が低下して生産性が低下するので、B含有量は0.0100%以下が好ましい。下限は0%を含むが、Bの強度向上効果を十分に得るには、0.0004%以上含有することが好ましい。
Nbは、析出物による強化と結晶粒の成長抑制による靭性の向上に寄与する元素であり、0.200%を上限として含有しても構わない。Nbの含有量が0.200%を超えると、炭窒化物が多量に析出して、成形性が低下するため、好ましくない。下限は0%を含むが、HAZにおける有効結晶粒の微細化効果を得るには、0.005%以上含有することが好ましい。
Tiは、析出物による強化と結晶粒の成長抑制による靭性の向上に寄与する元素であり、0.500%を上限として含有しても構わない。Tiの含有量が0.500%を超えると、炭窒化物が多量に析出して、成形性が低下するため、好ましくない。下限は0%を含むが、HAZにおける有効結晶粒の微細化効果を得るには、0.010%以上含有することが好ましい。
Vは、析出物による強化と結晶粒の成長抑制による靭性の向上に寄与する元素であり、2.00%を上限として含有しても構わない。Vの含有量が2.00%を超えると、炭窒化物が多量に析出して、成形性が低下するため、好ましくない。下限は0%を含むが、HAZにおける有効結晶粒の微細化効果を得るには、0.05%以上含有することが好ましい。
Sbは、結晶粒の粗大化を抑制し、鋼板強度の向上に寄与する元素である。Sb含有量が1.000%を超えると、鋼板が脆化し、圧延時に破断することがあるので、Sb含有量は1.000%以下が好ましい。下限は0%を含むが、Sbの添加効果を十分に得るには、0.003%以上含有することが好ましい。
Snは、結晶粒の粗大化を抑制し、鋼板強度の向上に寄与する元素である。Sn含有量が1.000%を超えると、鋼板が脆化し、圧延時に破断することがあるので、Sn含有量は1.000%以下が好ましい。下限は0.000%を含むが、Snの添加効果を十分に得るには、Sn含有量は0.005%以上が好ましい。
本発明鋼板の成分組成において、上記元素を除く残部は、Fe及び不可避的不純物である。不可避的不純物は、鋼原料から及び/又は製鋼過程で不可避的に混入する元素である。本発明において、不可避的不純物のうち、P、S、N及びOの含有量は、下記のように規定される。
Pは、鋼を脆化する元素である。Pが0.100%を超えると、鋳造スラブが脆化して割れ易くなるので、Pは0.100%以下とする。下限は0%を含むが、Pを0.0001%未満に低減すると、製造コストが大幅に上昇するので、実用鋼板上、0.0001%が実質的な下限である。
Sは、MnSを形成し、延性、穴拡げ性、伸びフランジ性、及び、曲げ性などの成形性を損なう元素である。S含有量が0.0100%を超えると、溶接部およびHAZの成形性が著しく低下するため、S含有量は0.0100%以下とする。
下限は0%を含むが、0.0001%未満に低減すると、製造コストが大幅に上昇するので、実用鋼板上、0.0001%が実質的な下限である。
Nは、窒化物を形成し、延性、穴拡げ性、伸びフランジ性、及び、曲げ性などの成形性を阻害する元素であり、また、溶接時、ブローホール発生の原因になり、溶接性を阻害する元素である。N含有量が0.0150%を超えると、成形性と溶接性が低下するので、N含有量は0.0150%以下とする。N含有量は0.0100%以下とすることが好ましく、0.0075%以下とすることがより好ましい。N含有量の下限は0%を含むが、0.0001%未満に低減すると、製造コストが大幅に上昇するので、実用鋼板上、0.0001%が実質的な下限である。
Oは、酸化物を形成し、延性、穴拡げ性、伸びフランジ性、及び、曲げ性などの成形性を阻害する元素である。O含有量が0.0050%を超えると、成形性が著しく低下するので、O含有量は0.0050%以下とする。下限は0%を含むが、Oを0.0001%未満に低減すると、製造コストが大幅に上昇するので、実用鋼板上、0.0001%が実質的な下限である。
母材鋼板の製造方法については特に規定しないが、生産コストの観点からは、鋳造スラブを熱間圧延し、必要に応じて冷間圧延して製造することが好ましい。熱間圧延に供するスラブは、連続鋳造スラブや薄スラブキャスターなどで製造したものを用いることができる。鋳造後のスラブは、一旦常温まで冷却しても構わないが、高温のまま直接熱間圧延に供することが、加熱に必要なエネルギーを削減できるため、より好ましい。
本発明の高強度めっき鋼板を製造するにあたり、突き合わせ溶接部およびHAZを含めた鋼板の全面において、溶接後にめっき処理を施し、めっき鋼板とする。溶接後に電気めっき処理を施すことで、Zn、Znを主体とする合金のいずれかを鋼板表面に付着した、電気めっき鋼板が得られる。
溶接後、めっき処理に先だって、熱処理を施し、鋼板、HAZおよび溶接部のミクロ組織を作り込み、本発明の鋼板を製造することが好ましい。熱処理は、後述する条件が達成できる任意の熱処理装置において施せばよい。例えば、十分に加熱した還元雰囲気の炉に鋼板を挿入して熱処理を施せばよい。あるいは誘導加熱法、通電加熱法により熱処理を施しても構わない。
rは前記2種の鋼板のうち板厚の薄い鋼板の板厚に対する板厚の厚い鋼板の比率であり、板厚の薄い鋼板を鋼1とし、板厚の厚い鋼板を鋼2とした場合、鋼2の板厚を鋼1の板厚で除した値とする。α、β、γはそれぞれ定数項であり、それぞれ2.25×106、2.20×100、2.41×104とする。なお、加熱温度がT*よりも低い場合、左辺の値を0とし、式(1)は満たされないものとする。
なお、滞留時間とは当該温度域に滞在する時間の合計を指し、当該温度域であれば適宜冷却および/または加熱を行っても構わない。また、冷却終点温度が100℃以上あるいは加熱終点温度が600℃以下であれば、滞留の途中で当該温度域450〜300℃から一度逸脱してから再び当該温度域に戻って滞留しても構わない。
塗装後耐食性の評価は、曲げ曲げ戻し加工後の試験片において行う。溶接部を中央に配置した150×60mmの試験材を切出し、溶接部が曲げ稜線と垂直になるようにJIS Z 2248に従って曲げ角度60度の曲げ加工を施し、プレス加工によって平坦に戻して曲げ曲げ戻し加工後の試験片とし、日本パーカライジング(株)社製化成処理液(PB−SX35)で化成処理後、日本ペイント(株)社製電着塗料(パワーニクス110)を、厚みが20μmとなるように塗装し、170℃で焼付け、塗装後耐食性試験材とした。なお、前記曲げ加工における内側半径は、溶接部を構成する鋼板の厚い方の板厚の3.0〜5.0倍とする。
Claims (17)
- 異なる鋼板およびそれらの突き合わせ溶接部からなり、
前記異なる鋼板のうち少なくとも1種の鋼板の最大引張強度が780MPa以上であり、
前記突き合わせ溶接部及び溶接熱影響部を含む鋼板全体において、表面にめっき層を有することを特徴とする高強度めっき鋼板。 - 前記突き合わせ溶接部及び溶接熱影響部を含む領域の硬度と板厚の積HTの分布における最小値HTminが、前記異なる鋼板のうち1つの鋼板における平均値HT1と前記異なる鋼板のうち他の鋼板における平均値HT2のうち小さい方の値の0.80倍以上であり、
前記HTの分布における最大値HTmaxが前記HT1とHT2のうち大きい方の値の1.50倍以下であり、
前記突き合わせ溶接部及び溶接熱影響部を含む領域の硬度の最大値Hmaxと前記1つの鋼板における硬度H1と前記他の鋼板における硬度H2のうち大きい方の値との差ΔHが100Hv以下であることを特徴とする、請求項1に記載の高強度めっき鋼板。 - 前記突き合わせ溶接部及び溶接熱影響部を含む領域の有効結晶粒径の分布において、前記1つの鋼板の有効結晶粒径の平均値と前記他の鋼板の有効結晶粒径の平均値のうち大きい方の有効結晶粒径dと、前記有効結晶粒径の最大値dmaxとの比が5.0以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の高強度めっき鋼板。
- 前記突き合わせ溶接部及び溶接熱影響部を含む領域の残留オーステナイトの体積率の分布において残留オーステナイトの多い側の鋼板における残留オーステナイト体積率Vと前記1つの鋼板から前記他の鋼板にかけての最大残留オーステナイト体積率Vmaxの差が5.0%以下であることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の高強度めっき鋼板。
- 溶接部および溶接熱影響部を含む鋼板表面全体に亜鉛めっき層を有することを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の高強度めっき鋼板。
- 前記亜鉛めっき層は合金化亜鉛めっき層であることを特徴とする請求項5に記載の高強度めっき鋼板。
- 質量%で、
C:0.020%以上0.800%以下、
Si:0.001%以上3.00%以下、
Mn:0.01%以上25.00%以下、
P:0.100%以下、
S:0.0100%以下、
Al:0.001%〜2.500%、
N:0.0150%以下、
O:0.0050%以下、
を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなる1つの鋼板と、
前記鋼板とは化学組成および/または板厚の異なる他の鋼板とを、溶接部における板厚比を3.0以下として突き合わせ溶接し、
溶接後にめっき処理を施すことを特徴とする高強度めっき鋼板の製造方法。 - 前記1つの鋼板の化学組成が、
Feの一部に替えて、更に質量%で、
Cr 0.03〜5.00%
Mo 0.03〜5.00%
Ni 0.03〜5.00%
Cu 0.03〜5.00%
W 0.03〜5.00%
B 0.0004〜0.0100%
Nb 0.005〜0.200%
Ti 0.010〜0.500%
V 0.05〜2.00%
Sb 0.003〜1.000%
Sn 0.005〜1.000%
Ca 0.0010〜0.0100%
Ce 0.0010〜0.0100%
Mg 0.0010〜0.0100%
Zr 0.0010〜0.0100%
La 0.0010〜0.0100%
Hf 0.0010〜0.0100%
REM 0.0010〜0.0100%
のいずれか1種以上を含むことを特徴とする請求項7に記載の高強度めっき鋼板の製造方法。 - 前記鋼板の溶接後、めっき処理の前に、前記鋼板のうち少なくとも1つの鋼板のAc1温度を上回る温度まで加熱する熱処理を行い、
前記熱処理は、加熱開始から冷却開始までの温度履歴が式(1)を満たすことを特徴とする、請求項7又は8に記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
- 前記熱処理は、予熱バーナーに用いる空気と燃料ガスの混合ガスにおいて、単位体積の混合ガスに含まれる空気の体積と、単位体積の混合ガスに含まれる燃料ガスを完全燃焼させるために理論上必要となる空気の体積との比である空気比:0.7〜1.2とされた条件の酸化帯において加熱し、次いで、水蒸気(H2O)と水素(H2)との分圧比P(H2O)/P(H2):0.0001〜2.0とされた還元帯において最高加熱温度まで加熱することを特徴とする、請求項9又は10に記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
- 突き合わせ溶接後、めっき処理の前に、溶接部を研削することを特徴とする請求項7〜11のうちいずれか1項に記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
- 前記1つの鋼板及び他の鋼板のうち少なくともいずれかの鋼板が、熱延鋼板に0.01〜85%の冷間圧延を施した冷延鋼板であることを特徴とする請求項7〜13のうちいずれか1項に記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
- 1つの鋼板及び他の鋼板のうち少なくともいずれかの鋼板が、Ac3以上の温度まで加熱した後に1.0℃/秒以上の速度で冷却する予備熱処理を施した鋼板であることを特徴とする請求項9〜14のうちいずれか1項に記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
- めっき処理が溶融亜鉛めっき処理であることを特徴とする請求項7〜15のうちいずれか1項に記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
- めっき処理の後に合金化処理を施すことを特徴とする請求項16に記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
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