JP6955251B2 - 細胞解離剤、細胞解離方法および細胞シートの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、細胞解離剤、細胞解離方法および細胞シートの製造方法に関する。
細胞培養用の基材上で細胞を培養すると、細胞の表面上に存在するタンパク質(例えば、インテグリンなど)を介して、細胞は該基材の表面に接着し、当該接着を維持した状態で、細胞は増殖する。細胞が該基材上において高密度にまで増殖した時、継代のために、細胞を基材から解離させて、当該細胞を回収する必要がある。細胞を回収する時、従来から、公知の細胞解離剤を用いて、細胞を上記基材の表面から解離している。一般的に用いられる細胞解離剤として、タンパク質分解酵素であるトリプシンが挙げられる。トリプシンは、細胞の表面上に存在するタンパク質および細胞外マトリックスを構成するタンパク質を分解することにより、細胞を基材表面から解離させる。
J. G. Edwards and Janice A. Campbell,Journal of Cell Science,vol.8,p.53-71,1954年
しかしながら、トリプシンは、タンパク質分解能力が非常に高いため、細胞の表面上に存在するタンパク質を過剰に分解してしまう。そのため、従来の細胞解離剤は、細胞へ与えるダメージが大きいという問題を有していた。
細胞へ与えるダメージが大きいと、(i)細胞の増殖能を低下させてしまう虞、(ii)細胞の分化能を低下させてしまう虞、(iii)細胞表面上に存在するタンパク質を研究対象としている場合、トリプシンを用いて基材の表面から細胞を解離すると、所望のタンパク質の収率が低下する虞、がある。それ故に、細胞にダメージを与えることなく、基材から細胞を解離する手段(より具体的に、細胞の表面上に存在するタンパク質を分解することなく、該タンパク質を残存させたまま基材から細胞を解離する手段)が求められている。
本発明の一態様は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、細胞へ与えるダメージが小さい細胞解離剤、および、当該細胞解離剤の用途を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明者は、特定のアミノ酸単体を有効成分として含有する細胞解離剤が、細胞の表面上に存在するタンパク質を分解することなく細胞を基材から解離させることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の細胞解離剤は、アルギニン、リシン、ヒスチジン、アスパラギン、グルタミン酸、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンからなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸、または、当該アミノ酸の誘導体を有効成分として含有しているものであることを特徴としている。
本発明の細胞溶解剤に含有される上記アミノ酸の誘導体は、アグマチン、カダベリン、ヒスタミン、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、メタナミン、エタナミン、イソブチルアミン、イソアミルアミン、2−メチルブチルアミン、エタノールアミン、1−アミノ−2−プロパノール、シスタミン、3−メチルチオプロピルアミン、γ−アミノ酪酸、γ−アミノブチルアミド、ピロリジン、フェネチルアミン、トリプタミン、または、チラミンであることが好ましい。
本発明の細胞解離方法は、基材に接着している細胞と、細胞解離剤とを接触させる工程を有し、上記細胞解離剤は、アルギニン、リシン、ヒスチジン、アスパラギン、グルタミン酸、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンからなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸、または、当該アミノ酸の誘導体を有効成分として含有しているものであることを特徴としている。
本発明の細胞シートの製造方法は、基材にシート状に接着している細胞と、細胞解離剤とを接触させる工程を有し、上記細胞解離剤は、アルギニン、リシン、ヒスチジン、アスパラギン、グルタミン酸、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンからなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸、または、当該アミノ酸の誘導体を有効成分として含有しているものであることを特徴としている。
本発明の細胞解離剤および細胞解離方法は、細胞の表面上に存在するタンパク質を分解することなく、基材の表面から細胞を解離することができる。
本発明の細胞シート製造方法は、細胞の表面上に存在するタンパク質を分解することなく細胞シートを作製することができるのみならず、高価な機器を必要とせず、容易に細胞シートを作製することができる。
本発明の一実施例における、L−アルギニンを含有する細胞解離剤を用いた場合の、処理前後の細胞の形状を示す像である。 本発明の一実施例における、D−アルギニンを含有する細胞解離剤を用いた場合の、処理前後の細胞の形状を示す像である。 本発明の一実施例における、各アミノ酸の細胞解離効果を示す表である。 本発明の一実施例における処理前後の細胞の形状を示す像である。 本発明の一実施例における細胞解離剤の成分および濃度毎の細胞解離効果を示すグラフである。 本発明の一実施例における基材の表面から解離された各細胞の生存率を示すグラフである。 本発明の一実施例における洗浄前および洗浄後のHEK293のディッシュへの接着状態を示す像である。 本発明の一実施例における洗浄前および洗浄後のPC−12のディッシュへの接着状態を示す像である。 本発明の一実施例における洗浄前および洗浄後のNIH/3T3のディッシュへの接着状態を示す像である。 本発明の一実施例における各細胞解離処理後における細胞接着性の高さを示すグラフである。 本発明の一実施例における細胞解離剤による処理後、培養3日間後に観察される神経突起の像である。 本発明の一実施例における細胞シートの像である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態および実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上、B以下」を意味する。
<1.発明の概要説明>
細胞外マトリックスを構成するタンパク質(例えば、フィブロネクチンなど)が、細胞の表面上に存在する受容体(例えば、インテグリンなど)に結合することで、細胞と細胞外マトリックスとの間で接着が生じる。このとき、上記細胞外マトリックスを構成するタンパク質の部分配列としてRGD(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸)配列が存在し、当該RGD配列に対して上記受容体が結合することが知られている。
本発明者は、まず、細胞の表面上に存在する受容体へ3アミノ酸(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸)からなるオリゴペプチドを競合的に結合させることで、当該受容体と細胞外マトリックスを構成するタンパク質との間の結合を阻害し、その結果、細胞を基材の表面から解離できるのではないかと考えた。そこで、本発明者は、RGD配列からなるオリゴペプチドを含有する溶液を細胞へ接触させたが、細胞を基材の表面から解離させることが出来なかった(後述する実施例を参照)。
RGD配列は受容体に結合する最小単位のアミノ酸配列であると考えられていることから、当業者であれば、RGD配列自体は変化させず、当該RGD配列の両端に更にアミノ酸を結合させてアミノ酸数を増やすことにより、細胞外マトリックスを構成するタンパク質と細胞の表面上に存在する受容体との間の結合を阻害するポリペプチドを設計しようとするのが一般的である。
しかし、本発明者は、このような技術常識にとらわれることなく、アミノ酸単体を含有する溶液を細胞へ接触させることによって細胞を基材から解離できるのではないかとの独自の仮説の下で、実験を行った。その結果、本発明者は、アミノ酸単体によって細胞を基材から解離することに成功し、本発明を完成させるに至った(後述する実施例を参照)。
<2.細胞解離剤>
本発明の一実施形態にかかる細胞解離剤は、「細胞が接着している基材から当該細胞を解離させるための薬剤」を意図する。また、「細胞を細胞培養用基材の表面(培養液と接触する面)から解離する効果」を、以下「細胞解離効果」と称する。
上記細胞は、上記基材への接着性を有する細胞であれば、特に限定されない。本発明においては、例えば、軟骨細胞、骨芽細胞、線維芽細胞、表皮細胞、上皮細胞、脂肪細胞、肝細胞、膵細胞、筋細胞又はこれらの前駆細胞が挙げられる。また、細胞が由来する動物種も特に限定されず、動物種は、非ヒト哺乳類またはヒトであっても良い。非ヒト哺乳動物の例としては、霊長類(サル、類人猿など)、偶蹄類(ウシ、イノシシ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、奇蹄類(ウマなど)、齧歯類(マウス、ラット、ハムスター、リスなど)、ウサギ目(ウサギなど)、食肉類(イヌ、ネコ、フェレットなど)などが挙げられる。上述の非ヒト哺乳動物は、家畜またはコンパニオンアニマルであってもよく、野生動物であってもよい。
上記細胞は、株化された細胞であってもよいし、人工的に作製された細胞(例えば、iPS:induced pluripotent stem cells)であってもよい。iPS細胞は、生体移植に用いられる細胞である。それ故に、後述する「細胞シートの製造方法」においてiPS細胞をもちいれば、生体移植用の細胞シートを容易に作製することができる。
上記細胞解離剤は、アルギニン、リシン、ヒスチジン、アスパラギン、グルタミン酸、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンからなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸、または、当該アミノ酸の誘導体を有効成分として含有している。
なお、上記細胞解離剤は、上述したアミノ酸のうち1つを含有していても良いし、複数を含有していても良い。また、上記細胞解離剤は、上記アミノ酸の誘導体のうち1つを含有していても良いし、複数を含有していても良い。さらに、上記細胞解離剤は、上記アミノ酸および当該アミノ酸の誘導体を組み合わせて含有しているものであっても良い。
上記構成によれば、細胞表面に存在するタンパク質を分解することなく、細胞へのダメージを低減させて、細胞を基材の表面から解離することができる。また、従来から用いられてきたトリプシン等と比較して、アミノ酸、および、アミノ酸の誘導体は、安価な物質である。それ故に、上記構成によれば、安価な細胞解離剤を実現できる。また、従来から用いられてきたトリプシン等と比較して、アミノ酸、および、アミノ酸の誘導体は、安定な物質である(例えば、熱によって変性し難い)。それ故に、上記構成によれば、安定な細胞解離剤(例えば、長期保存できる細胞解離剤)を実現できる。また、上記構成によれば、特別な装置を用いることなく、容易に細胞を基材の表面から解離することができる。また、アミノ酸、および、アミノ酸の誘導体は、細胞と細胞との間に形成される接着を解離させること無く、細胞と基材との間に形成される接着を、特異的に解離させることができる。それ故に、上記構成によれば、細胞と細胞との間に接着が形成された状態の細胞シートを、当該シート状を保ったままで、基材の表面から解離することができる。
上記細胞解離剤は、突出して高い細胞解離効果が得られる細胞が存在するという観点から(後述する実施例を参照)、(i)アルギニン、および/または、当該アミノ酸の誘導体を含有していることが最も好ましく、(ii)リシン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、イソロイシン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、および/または、当該アミノ酸の誘導体を含有していることが2番目に好ましく、(iii)アラニン、バリン、ロイシン、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、トリプトファン、チロシン、および/または、当該アミノ酸の誘導体を含有していることが3番目に好ましい。
上記細胞解離剤に含有させるアミノ酸を、解離させたい細胞の種類に応じて適宜選択しても良い。例えば、解離させたい細胞がヒト(より具体的に、ヒト胎児腎)由来の細胞であれば、上記細胞解離剤は、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、イソロイシン、システインのうちいずれかを含んでいることが好ましい。上記構成によれば、ヒト(より具体的に、ヒト胎児腎)由来の細胞に上記細胞解離剤を用いた場合に、より高い細胞解離効果が得られる。
上記アミノ酸の構造は、特に限定されず、D−アミノ酸またはL−アミノ酸のいずれであっても良い。また、上記アミノ酸は天然に存在するアミノ酸であっても良いし、合成されたものであっても良く、さらに生体内に存在するアミノ酸であっても良い。より効率良く細胞を基材の表面から解離するという観点からは、D−アミノ酸よりもL−アミノ酸の方が好ましいといえる。
上記細胞解離剤に含有されるアミノ酸の誘導体としては、例えば、上述のアミノ酸が脱炭酸化されたアミンが挙げられる。ここで、「アミノ酸が脱炭酸化されたアミン」とは、アミノ酸における、主鎖の「−COOH」、または、側鎖の「−COOH」が除かれた結果生じるアミンを意図する。なお、アミノ酸は、「HOOC−C(−R)−NH」との一般式にて示すことができる。主鎖の「−COOH」とは、一般式における「HOOC−」を意図し、側鎖の「−COOH」とは、一般式における「−R」に含まれている「−COOH」を意図する。より効率良く細胞を基材の表面から解離するという観点からは、「アミノ酸が脱炭酸化されたアミン」は、アミノ酸における主鎖の「−COOH」が除かれた結果生じるアミンが好ましく、例えば「H−C(−R)−NH」の一般式にて示されるアミンが好ましい。
上記脱炭酸化されたアミンとしては、例えば、アグマチン、カダベリン、ヒスタミン、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、メタナミン、エタナミン、イソブチルアミン、イソアミルアミン、2−メチルブチルアミン、エタノールアミン、1−アミノ−2−プロパノール、シスタミン、3−メチルチオプロピルアミン、γ−アミノ酪酸、γ−アミノブチルアミド、ピロリジン、フェネチルアミン、トリプタミン、または、チラミンを挙げることができる。
上記細胞解離剤中に含まれる上記アミノ酸および/または上記アミノ酸の誘導体の含有量としては、特に限定されないが、終濃度にて1mM〜500mMであることが好ましく、25mM〜100mMであることがより好ましい。上記アミノ酸および/または上記アミノ酸の誘導体の含有量は、溶媒への溶解のし易さ、および/または、アミノ酸の種類に応じて、適宜変更され得る。
また、上記細胞解離剤中に含まれる上記アミノ酸および/または上記アミノ酸の誘導体の含有量としては、特に限定されないが、細胞解離剤を100重量%とした場合に、0.001重量%〜100重量%であってもよく、0.01重量%〜100重量%であってもよく、0.1重量%〜100重量%であってもよく、0.1重量%〜95重量%であってもよく、0.1重量%〜90重量%であってもよく、0.1重量%〜80重量%であってもよく、0.1重量%〜70重量%であってもよく、0.1重量%〜60重量%であってもよく、0.1重量%〜50重量%であってもよく、0.1重量%〜40重量%であってもよく、0.1重量%〜30重量%であってもよく、0.1重量%〜20重量%であってもよく、0.1重量%〜10重量%であってもよい。
上記細胞解離剤のpHについては、上記アミノ酸および上記細胞へ影響を及ぼすことのないpHであれば、特に限定されない。例えば、上記細胞解離剤は、pH7.0〜pH8.0に調製されてもよいし、pH7.2〜pH7.6に調製されてもよい。
上記細胞解離剤は、上記アミノ酸または上記アミノ酸の誘導体と異なる他の成分が含有されていても良い。該成分として、例えば、pHを調節するための緩衝剤が挙げられる。当該緩衝剤としては、特に限定されないが、例えば、HEPES(4−(2−hydroxyethyl)−1−piperazineethanesulfonic acid)が挙げられる。また、当該緩衝剤としては、リン酸またはリン酸塩、ホウ酸またはホウ酸塩、クエン酸またはクエン酸塩、酢酸または酢酸塩、炭酸または炭酸塩、酒石酸または酒石酸塩、ε−アミノカプロン酸、トロメタモール等が挙げられる。上記リン酸塩としては、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム等が挙げられる。上記ホウ酸塩としては、ホウ砂、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム等が挙げられる。上記クエン酸塩としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム等が挙げられる。上記酢酸塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等が挙げられる。上記炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。上記酒石酸塩としては、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム等が挙げられる。
上記基材は、該基材の表面上に、細胞培養に適したコーティングまたは親水化等の表面への処理がなされているものであれば、特に限定されない。上記基材の形状も特に限定されず、例えばプレート、シャーレ、ディッシュ、T−フラスコ等が挙げられる。上記基材の材質としては、細胞培養に使用できるものであれば特に限定されず、例えばプラスチック、ガラス等が挙げられる。また、該材質は天然由来材料であっても良いし、無機材料であっても良い。
<3.細胞解離方法>
本実施形態の一態様に係る細胞解離方法は、基材に接着している細胞と、細胞解離剤とを接触させる工程(以下、接触工程1と称する)を有し、上記細胞解離剤は、アルギニン、リシン、ヒスチジン、アスパラギン、グルタミン酸、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンからなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸、または、当該アミノ酸の誘導体を有効成分として含有しているものである。
上記構成によれば、細胞表面上に存在するタンパク質を分解することなく、細胞基材から細胞を解離させることができる。なお、解離して回収した細胞は、例えば、継代、または、保存等の目的に使用することができる。
上記接触工程1は、基材(例えば、細胞培養用のシャーレ等)内に貯留されている培地を吸引して基材から除去した後、適宜リン酸緩衝溶液(phosphate−buffered saline、PBS)等を用いて基材および当該基材に接着している細胞を洗浄した後に、上記細胞解離剤を基材の表面上に接着している細胞へ接触させる工程であっても良い。
上記接触工程1において、上記細胞解離剤を上記細胞へ接触させるための手段としては、例えば電動ピペッター等公知の機器が用いられる。
上記接触工程の後、細胞解離剤と接触した培養細胞は、例えばCOインキュベータ等下にて37℃環境下にて静置されても良い。
上記細胞解離剤は、上述の<2.細胞解離剤>中で説明したものと同様のものであるため、ここでは説明を省略する。同様に、上記細胞解離方法に用いられる基材および細胞についても、<2.細胞解離剤>中で説明したものと同様のものであるため、ここでは説明を省略する。
本実施形態の一態様に係る細胞解離方法は、上記接触工程1の前に、基材の表面に細胞を接着させ、細胞を培養する工程(以下、培養工程1と称する)を含んでいても良い。
上記培養工程1においては、目的の細胞を、培地中にて培養する。培養のために用いる培地としては、特に限定されず、例えば、公知の血清培地または無血清培地、もしくは上記培地へ増殖因子を添加した増殖用培地等が挙げられる。
細胞の培養方法に関しては特に限定されず、公知の培養方法を用いて培養することができる。
本実施形態の一態様に係る細胞解離方法は、上記接触工程1の後に、基材から解離させて回収した細胞を継代培養する工程(以下、継代培養工程と称する)を含んでいても良い。細胞の継代方法に関しては特に限定されず、公知の継代方法を用いて継代することができる。
上記接触工程1では、基材に接着している細胞の数(換言すれば、基材の表面積と、当該基材の表面積のうち、細胞によって覆われている部分の面積との比)は、特に限定されない。上記細胞解離剤は、細胞と細胞との間に形成される接着を解離させること無く、細胞と基材との間に形成される接着を、特異的に解離させることができる。それ故に、基材に接着している細胞の数が、細胞と細胞との間に接着が形成されない程度の細胞の数であれば、本細胞解離方法によって、個々に分離した細胞群を得ることができる。一方、基材に接着している細胞の数が、細胞と細胞との間に接着が形成される程度の細胞の数であれば、本細胞解離方法によって、細胞同士が接着した状態の細胞シートを得ることができる。
例えば、基材の表面積をA[cm]とし、当該基材の表面積のうち、細胞によって覆われている部分の面積をB[cm]とした場合、「B/A」の値は、例えば、0.1〜1、0.2〜1、0.3〜1、0.4〜1、0.5〜1、0.6〜1、0.7〜1、0.8〜1、または、0.9〜1であってもよい。
<4.細胞シートの製造方法>
本発明の細胞シートの製造方法は、基材にシート状に接着している細胞(換言すれば、細胞と細胞との間の接着が形成されている細胞)と、細胞解離剤とを接触させる工程(以下、接触工程2と称する)を有し、上記細胞解離剤は、アルギニン、リシン、ヒスチジン、アスパラギン、グルタミン酸、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンからなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸、または、当該アミノ酸の誘導体を有効成分として含有しているものである。
上記構成によれば、高価な機器を必要せず、より容易に細胞シート(例えば、移植用の細胞シート)を得ることができる。
上記細胞シートとは、平面状に細胞同士が結合して形成されるシートのことを意図する。
上記細胞シート製造方法において用いられる基材は、該基材の表面上に、細胞培養に適したコーティングまたは親水化等の表面への処理がなされており、かつ細胞シートを基材から解離する際に所望の面積の細胞シートが得られるほどの十分な面積を有する基材であれば、特に限定されない。
上記細胞シートの製造方法において用いられる細胞については、上述の<2.細胞解離剤>中で説明した種類の細胞のうち、細胞シートの移植先に応じて適宜選択することができる。例えば得られた細胞シートを心筋組織へ移植する場合は骨格筋芽細胞を、角膜上皮組織へ移植する場合は口腔粘膜細胞を用いてもよい。
上記細胞シートの製造方法において用いられる細胞は、例えばiPS細胞、または、ES細胞であっても良い。
上記接触工程2において、上記細胞解離剤を上記細胞へ接触させるための手段としては、例えば電動ピペッター等公知の機器が用いられる。
上記細胞解離剤は、上述の<2.細胞解離剤>中で説明したものと同様のものであるため、ここでは説明を省略する。
本実施形態の一態様に係る細胞シート製造方法は、上記接触工程2の前に、基材の表面に細胞をシート状に接着させ、細胞を培養する工程(以下、培養工程2と称する)を含んでいても良い。
上記培養工程2においては、目的の細胞を、培地中にて培養する。培養する日数としては、所望の面積および厚さを有する細胞シートが得られる日数であれば特に限定されない。培養のために用いる培地としては、特に限定されず、例えば、公知の血清培地または無血清培地、もしくは上記培地へ増殖因子を添加した増殖用培地等が挙げられる。
本実施形態の一態様に係る細胞シート製造方法において、上記接触工程の後に、基材から解離した細胞シートを回収する工程(以下、回収工程と称する)を含んでいても良い。
上記回収工程における細胞シートの回収方法としては特に限定されず、例えば、得られた細胞シートを支持膜に付着させて引き上げても良い。
上記支持膜としては、基材から解離された細胞シートを損なうことなく上記支持膜へ懸架できるものであれば、特に限定されない。上記支持膜は、たとえば、滅菌ガーゼ、滅菌和紙、滅菌濾紙、滅菌不織布などで形成されるものであっても良いし、親水性膜、高分子材料、生分解性ポリマー、寒天培地、ハイドロゲルなどをシート状にしたものであっても良い。
上記接触工程2では、基材に接着している細胞の数(換言すれば、基材の表面積と、当該基材の表面積のうち、細胞によって覆われている部分の面積との比)は、特に限定されない。上記細胞解離剤は、細胞と細胞との間に形成される接着を解離させること無く、細胞と基材との間に形成される接着を、特異的に解離させることができる。それ故に、基材に接着している細胞の数が、細胞と細胞との間に接着が形成される程度の細胞の数であれば、本細胞解離方法によって、細胞同士が接着した状態の細胞シートを得ることができる。
例えば、基材の表面積をA[cm]とし、当該基材の表面積のうち、細胞によって覆われている部分の面積をB[cm]とした場合、「B/A」の値は、例えば、0.5〜1、0.6〜1、0.7〜1、0.8〜1、または、0.9〜1であってもよい。
<1.細胞の培養方法>
以下の実験を行うために、予め細胞を培養した。本実施例においては、ヒト胎児腎細胞HEK293、ラット副腎褐色細胞腫PC−12、マウス胎児線維芽細胞NIH/3T3を用いた。
HEK293は、Dulbecco’s Modufied Eagle Medium(DMEM;gibco社、11885−084)へ、10%Fetal Bovine Serum(FBS)および1%抗生物質(ペニシリン-ストレプトマイシン混合溶液、ナカライテスク社 26252−94)を添加したものを用いて培養した。
PC−12は、DMEMへ、5%FBS、5% Horse Serum(HS)および1%抗生物質(ペニシリン-ストレプトマイシン混合溶液;ナカライテスク社 26252−94)を添加したものを用いて培養した。
NIH/3T3用は、DMEM(High Glucose)(gibco社 11965−092)へ、10%FBSおよび1%抗生物質(ペニシリン-ストレプトマイシン混合溶液、ナカライテスク社 26252−94)を添加したものを用いて培養した。
培養用基材として、35mm径のNunc細胞培養ディッシュ(Thermo Fisher Scientific社、153066)を使用した。細胞培養は、いずれもCO インキュベータを用いて、37℃、5%CO雰囲気下にて行った。
<2.アミノ酸またはアミノ酸の誘導体を含有するHEPES緩衝液の調製>
アミノ酸またはアミノ酸の誘導体が有する細胞解離効果を検証した。
HEPES緩衝液に、アミノ酸またはアミノ酸の誘導体を、終濃度25mM、または100mMになるように加えて、溶液を調製した。なお、チロシンは水に難溶性であるため、HEPES緩衝液にチロシンを終濃度2mMになるように加えて、溶液を調製した。いずれの溶液もpHを7.4に調製した後、各溶液を孔径0.2μmのフィルターを用いて濾過滅菌した。
<3.細胞解離効果の検証>
HEK293、PC−12またはNIH/3T3と、細胞解離剤とを接触させて、細胞解離効果を検証した。
まず、細胞解離剤として0.1MのL−アルギニン溶液および0.1MのD−アルギニン溶液を用いた場合の細胞解離効果を検証した。
細胞を培養しているディッシュから培地を除去し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)にてディッシュを二回洗浄した。洗浄後、0.1Mのアルギニン溶液を1mLディッシュへ添加し、37℃下にて5分間インキュベートした。その後ディッシュへ1mLの培地を加え、ピペッティングを3回行った。
顕微鏡を用いて、細胞の処理前および処理後における細胞の形状をそれぞれ観察し、細胞が基材から解離したかを判定した。ここで、細胞の解離における判定基準として、細胞が仮足状の形状を有している場合に、細胞がディッシュ表面に接着していると判定した。一方、細胞が丸い形状を有している場合に、細胞がディッシュ表面から解離していると判定した。
図1および図2に試験結果を示す。図1は、L−アルギニンを含有する細胞解離剤を用いた場合の、処理前後の細胞の形状を示す像である。図2は、D−アルギニンを含有する細胞解離剤を用いた場合の、処理前後の細胞の形状を示す像である。各像について、細胞解離剤を添加する前(上段)、添加した後(下段)の細胞を示す。図1および図2に示す通り、いずれの細胞においても細胞が基材の表面から解離した。
次に、細胞解離剤として終濃度が25mMであるアルギニン、リシン、ヒスチジン、アスパラギン、グルタミン酸、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、または終濃度が2mMであるチロシンの中から1種類のみを含む溶液を用いて、細胞解離効果を調べた。
結果を図3に示す。図3は、各アミノ酸の細胞解離効果を示す表である。ここで、目視観察下にて、「◎」は全細胞のうち70%以上、「○」は10%以上70%未満、「△」は1%以上10%未満、「×」は1%未満の細胞が基材から解離した状態であることを示す。
細胞解離剤としてアルギニンを含む場合、3種類全ての細胞において、高い細胞解離効果を示した。また、HEK細胞においては、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、イソロイシンまたはシステインを含有している細胞解離剤を用いた場合に、より高い細胞解離効果が認められた。一方、PC−12においては、アルギニン酸を、NIH/3T3細胞においては、アルギニン酸、リシン、ヒスチジン、メチオニンまたはフェニルアラニンを含有している細胞解離剤を用いた場合に、より高い細胞解離効果が認められた。
さらに、アミノ酸誘導体であるアグマチンを含有する細胞解離剤の細胞解離効果を調べた。図4に試験結果を示す。図4に示す通り、アグマチンにおいても細胞解離効果が認められた。
最後に、L−アルギニンを含む溶液と、D−アルギニンを含む溶液(D−Arg)との細胞解離剤としての効果を比較検証した。各アルギニン溶液としては、アルギニンの濃度が25mMまたは100mMのものを用いた。
図5に試験結果を示す。アルギニンの濃度が100mMの場合は、L−アルギニンおよびD−アルギニンを含有する細胞解離剤は、いずれも同程度の細胞解離効果を示した。一方、アルギニンの濃度が25mMの場合は、L−アルギニンを含有する細胞解離剤の方が、D−アルギニンを含有する細胞解離剤に比べ、細胞を解離する効果が高かった。
<4.細胞解離後の生存率の測定>
細胞解離後の細胞の生存率を算出するべく、細胞解離剤を用いてディッシュ表面から細胞を解離させ、当該細胞を含む懸濁液を作製した。該懸濁液に対して、410gにて5分間遠心分離処理を行った。遠心分離処理の後、該懸濁液から上清を除去し、沈殿している細胞に対して培地を1mL加えて、細胞を含む懸濁液を作製した。該懸濁液のうち、20μLを同量のトリパンブルー染色液(SIGMA社 T6146−5Gを終濃度0.5%になるようPBSで希釈したもの)と混合した後、室温下で1分間静置した。血球計算版を用いて、顕微鏡下にて全細胞の数と、染色された細胞(死細胞)の数とをそれぞれ計数し、得られた値より生存率を算出した。
本実施例では、比較例1として、トリプシンを用いて細胞を解離させた場合の細胞の生存率も算出した。培養から生存率の測定までの工程を、以下に簡潔に述べる。まず、細胞を培養しているディッシュから培地を除去し、PBSを用いてディッシュを2回洗浄した後、該ディッシュにトリプシン−EDTA溶液(0.25% Trypsin−EDTA (1X)、gibco社 25200−056)を0.5mL添加して、37℃にて52分間インキュベートした。次に、1mLの培地をディッシュに添加してトリプシンの活性を失わせ、ピペッティングを3回行って、ディッシュから細胞を解離させた。こうして得られた細胞懸濁液を、上述と同様に処理し、細胞の生存率を算出した。
また、比較例2として、スクレーパーを用いて細胞を解離させた場合の細胞の生存率も算出した。培養から生存率の測定までの工程を、以下に簡潔に述べる。まず、細胞を培養しているディッシュから培地を除去し、PBSを用いてディッシュを2回洗浄した後、該ディッシュにPBSを1mL添加した。次にディッシュの底をスクレーパーを用いて拭い、ディッシュから細胞を解離させた。その後、該ディッシュへ1mLの培地を加え、ピペッティングを3回行った。こうして得られた細胞懸濁液を、上述と同様に処理し、細胞の生存率を算出した。
なお、本実施例および比較例では、HEK293、PC−12およびNIH/3T3それぞれについて生存率を算出した。
図6に試験結果を示す。図6は、基材の表面から解離された各細胞の生存率を示すグラフである。図6に示す通り、いずれの細胞種においても、細胞をスクレーパーを用いて解離させた場合に比べ、本実施例の細胞解離剤を用いた場合に、細胞の生存率が高かった。一方、本実施例の細胞解離剤を用いた場合、HEK293については、トリプシン処理後の細胞と同程度の生存率であった。一方、本実施例の細胞解離剤を用いた場合、PC−12およびNIH/3T3については、トリプシン処理後の細胞と比べて生存率が高かった。
<5.細胞解離後の細胞の接着性の比較>
細胞解離後の細胞の接着性を確認するべく、細胞解離剤を用いてディッシュ表面から細胞を解離させ、当該細胞を含む懸濁液を作製した。該懸濁液に対して、410gにて5分間遠心分離処理を行った。遠心分離処理の後、該懸濁液から上清を除き、沈殿している細胞に対して培地4mLを加えて、細胞を含む懸濁液を作製した。該懸濁液のうち、2mLを新しいディッシュに添加し、37℃にて10分間インキュベートした。ディッシュから培地を除去し、PBSにてディッシュを一回洗浄した後、ディッシュ上に残存している細胞数を計数した。
また、比較例1(トリプシンを用いた細胞の解離)および比較例2(スクレーパーを用いた細胞の解離)についても、同様に実験した。比較例1および比較例2について、上述の実施例と同様の手順を行った後、ディッシュから培地を除去し、PBSにてディッシュを一回洗浄した後、ディッシュ上に残存している細胞数を計測した。
図7〜10に試験結果を示す。図7は、洗浄前および洗浄後のHEK293のディッシュへの接着を示す像である。図8は、洗浄前および洗浄後のPC−12のディッシュへの接着を示す像である。図9は、洗浄前および洗浄後のNIH/3T3のディッシュへの接着を示す像である。図10は、各細胞解離処理における細胞接着性の高さを示すグラフである。
図7〜10に示す通り、いずれの細胞においても、トリプシン処理後はディッシュへの接着性が低かったことが確認された。この結果から、トリプシン処理によって細胞接着に関与するタンパク質が分解されたことが示唆された。一方、0.1Mアルギニン溶液を用いて解離された細胞は、スクレーパーを用いて物理的に細胞を解離させた細胞とほぼ同程度の接着性を示した。この結果から、本実施例における細胞解離剤により解離された細胞は、細胞接着に関与するタンパク質が残存していることが示唆された。
<6.細胞解離後の細胞の分化能の確認>
本実施例において用いられた細胞解離剤により、基材の表面から解離されたPC−12が、解離後正常に分化(具体的には、神経突起の成長)するかを調べた。上述の培地へ、神経成長因子であるNerve Growth Factor (NGF)を終濃度50ng/mLとなるように添加した。該培地中にてPC−12を3日間培養した後、顕微鏡を用いて細胞の形状を確認した。
比較例として、前述同様に細胞を培養後、細胞解離剤としてトリプシンを用いた場合についても細胞の形状を確認した。
図11に試験結果を示す。なお、図11中の各像中の細胞解離手段および培地成分として、(a)はトリプシン処理、NGFが含まれない培地、(b)はトリプシン処理、NGFを含む培地、(c)は25mMアルギニン溶液処理、NGFが含まれる培地、(d)は0.1Mアルギニン溶液処理、NGFが含まれる培地を示している。図11の(c)および(d)では、図11の(b)と同様に、神経突起の成長が確認できる。この結果から、本実施例における細胞解離剤により基材の表面から解離された細胞は、解離後も正常に分化(具体的には、神経突起の成長)できることが示された。
<7.細胞シートの作製>
100%コンフルエントの状態に培養したNIH/3T3細胞の培養ディッシュに、100mMのD−アルギニンまたはL−アルギニンを含有するHEPES緩衝液を添加し、37℃下にて5分間インキュベートした。
図12に試験結果を示す。図12は、本実施例において得られた細胞シートの像である。ディッシュの中央に認められる白色の物体が、細胞シートである。図12に示す通り、L−型アミノ酸またはD−型アミノ酸を含む細胞解離剤を用いた場合のいずれにおいても、ディッシュからシート状に細胞が解離された。
本発明は、細胞培養および再生医療の分野において利用することができる。

Claims (4)

  1. 細胞が接着している基材から当該細胞を解離させるための細胞解離剤であって、
    上記細胞解離剤は、アルギニン、リシン、ヒスチジン、アスパラギン、グルタミン酸、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンからなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸、または、当該アミノ酸の誘導体、を有効成分として含有しているものであることを特徴とする、細胞解離剤。
  2. 上記誘導体は、アグマチン、カダベリン、ヒスタミン、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、メタナミン、エタナミン、イソブチルアミン、イソアミルアミン、2−メチルブチルアミン、エタノールアミン、1−アミノ−2−プロパノール、シスタミン、3−メチルチオプロピルアミン、γ−アミノ酪酸、γ−アミノブチルアミド、ピロリジン、フェネチルアミン、トリプタミン、または、チラミンであることを特徴とする、請求項1に記載の細胞解離剤。
  3. 基材に接着している細胞と、細胞解離剤とを接触させる工程を有し、
    上記細胞解離剤は、アルギニン、リシン、ヒスチジン、アスパラギン、グルタミン酸、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンからなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸、または、当該アミノ酸の誘導体、を有効成分として含有しているものであることを特徴とする、細胞解離方法。
  4. 基材にシート状に接着している細胞と、細胞解離剤とを接触させる工程を有し、
    上記細胞解離剤は、アルギニン、リシン、ヒスチジン、アスパラギン、グルタミン酸、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンからなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸、または、当該アミノ酸の誘導体、を有効成分として含有しているものであることを特徴とする、細胞シートの製造方法。
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