本発明のナノカーボン分離装置、ナノカーボンの分離方法、電極管の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
[第1の実施形態]
(ナノカーボン分離装置、電極管)
図1は、本実施形態のナノカーボン分離装置を示す斜視図である。図2Aは、本実施形態のナノカーボン分離装置を構成する電極管を示す斜視図である。図2Bは、本実施形態のナノカーボン分離装置を構成する電極管を示す断面図である。
本実施形態のナノカーボン分離装置10は、分離槽(電気泳動槽)20と、分離槽20内の上部に設けられた第1の電極30と、分離槽20内の下部に設けられた第2の電極40と、分離槽20内にて、分離槽20の高さ方向に沿って延在する複数の電極管50と、を備える。
本実施形態のナノカーボン分離装置10では、第2の電極40が、電極管50の下端部に配置される。なお、電極管50の下端部とは、電極管50における分離槽20の内底面20a側に配置される端部である。
第1の電極30は、分離槽20内にて、その高さ方向の上方(分離槽20内にて、その高さの半分より上の領域、分離槽20の内底面20aとは反対側の領域)に配置されている。
第2の電極40は、分離槽20内にて、その高さ方向の下方(分離槽20内にて、その高さの半分より下の領域、分離槽20の内底面20a側の領域)に配置されている。
本実施形態のナノカーボン分離装置10において、例えば、第1の電極30が陰極、第2の電極40が陽極である。この場合、第1の電極30と第2の電極40に直流電圧を印加すると、電界の向きが分離槽20の下方から上方へ向かう。
分離槽20は、高さ方向の上方から見た場合(以下、この方向から見た場合を「平面視」とする。)に長方形状をなしている。分離槽20は、ナノカーボンを含む分散液(以下、「ナノカーボンの分散液」という。)80を収容可能な空間を有する。分離槽20は、分離対象であるナノカーボンの分散液80を収容し、無担体電気泳動法により、ナノカーボンの混合物の分離を行うためのものである。分離槽20は、ナノカーボンの分散液80を収容できるものであれば、その形状や大きさは特に限定されない。
分離槽20の材質は、ナノカーボンの分散液80に対して安定であり、かつ絶縁性の材質であれば特に限定されない。分離槽20の材質としては、例えば、ガラス、石英、アクリル樹脂等が挙げられる。
第1の電極30および第2の電極40としては、無担体電気泳動法に用いることができ、ナノカーボンの分散液80に対して安定なものであれば特に限定されない。第1の電極30および第2の電極40としては、例えば、白金電極等が挙げられる。
第1の電極30は、複数の電極管50の間に配置されている。本実施形態のナノカーボン分離装置10では、第1の電極30の構造は、分離槽20内の上部において、それぞれの電極管50の近傍に設けられていれば特に限定されない。第1の電極30の構造は、複数の電極管50の上部に配置され、かつ分離槽20内において、複数の電極管50の外側の領域に配置されるものであれば特に限定されない。第1の電極30および第2の電極40の構造としては、例えば、分離槽20の平面視において、円環状、円板状、棒状等が挙げられる。また、第1の電極30および第2の電極40の構造としては、多数の微細孔が均質に設けられた多孔板状が挙げられる。
電極管50は、分離槽20の平面視において等間隔に配置される。
電極管50は、絶縁性の筒状部材41と、筒状部材41内に挿入される絶縁性の柱状部材42と、を備える。第2の電極40は、筒状部材41内で柱状部材42に外接している。
図2Aにおいて、柱状部材42は、筒状部材41内に延在する軸部材43と、軸部材43の一端部、すなわち、軸部材43における分離槽20の内底面20a側の端部に一体化して形成された先端部材44とを有する。言い換えれば、先端部材44は、軸部材43の先端に突設されている。
また、柱状部材42は、筒状部材41内に挿入された状態で、筒状部材41の長さ方向に沿って移動可能である。
従って、柱状部材42を、筒状部材41の上部側(分離槽20の上部側)に引き上げる(移動させる)ことにより、筒状部材41の下端部41Aに、柱状部材42の先端部材44が内接し、嵌合することができる。一方、柱状部材42を筒状部材41の下部側(分離槽20の下部側)に押し下げる(移動させる)ことにより、図2Bにおいて、二点鎖線で示すように、筒状部材41の下端部41Aと柱状部材42の先端部材44の間に隙間47を設けることができる。
先端部材44の側面44aには、少なくとも柱状部材42側の領域に、シリコンゴム等の弾性体からなるOリング45を設けることが好ましい。これにより、柱状部材42を、筒状部材41の上部側に引き上げた場合に、筒状部材41の下端部41Aの内側面41aに対する、先端部材44の側面44aの密着度を向上することができる。
第2の電極40は、柱状部材42における先端部材44の近傍に配置されている。詳細には、第2の電極40は、軸部材43における先端部材44の近傍に巻き付けられた白金等の金属線からなる。すなわち、金属線の一端部が先端部材44の近傍にて第2の電極40を形成している。また、金属線における第2の電極40以外の部分が軸部材43に外接して配置され、筒状部材41外へ導出されている。
筒状部材41および柱状部材42の材質は、ナノカーボンの分散液80に対して安定であり、かつ絶縁性の材質であれば特に限定されない。筒状部材41および柱状部材42の材質としては、例えば、ガラス、石英、アクリル樹脂等が挙げられる。
本実施形態のナノカーボン分離装置10では、図1に示すように、複数の電極管50が、例えば、保持部材70によって保持されていることが好ましい。ここでは、保持部材70は、例えば、平面視において長方形の板状をなしている。これにより、分離槽20内に、第2の電極40を有する電極管50が安定に配置される。また、保持部材70には、複数の貫通穴(図示略)が、保持部材70の平面視において等間隔に形成されている。保持部材70の貫通穴に電極管50を挿通することにより、複数の電極管50は、保持部材70の平面視において等間隔に配置される。
なお、保持部材70の構造は、分離槽20内において、複数の電極管50を保持することができれば特に限定されない。保持部材70の構造は、複数の電極管50の上部に配置され、かつ分離槽20内において、複数の電極管50の外側の領域に配置されるものであれば特に限定されない。
保持部材70の材質は、ナノカーボンの分散液80に対して安定であり、かつ絶縁性の材質であれば特に限定されない。保持部材70の材質としては、例えば、ガラス、石英、アクリル樹脂等が挙げられる。
本実施形態のナノカーボン分離装置10は、分離槽20内にナノカーボンの分散液80を注入する注入口(図示略)を備えていてもよい。注入口は、分離槽20にて、その高さ方向の上方(分離槽20にて、その高さの半分より上の領域、分離槽20の内底面20aとは反対側の領域)に設けられていてもよい。分離槽20の上端を開口部20bとした場合、その開口部20bが、分離槽20内にナノカーボンの分散液80を注入する注入口であってもよい。
本実施形態のナノカーボン分離装置10は、分離槽20内のナノカーボンの分散液80を回収する回収口(図示略)を備えていてもよい。回収口は、第2の電極40の近傍に設けられていてもよい。すなわち、回収口は、分離槽20にて、その高さ方向の下方(分離槽20にて、その高さの半分より下の領域、分離槽20の内底面20a側の領域)に設けられていてもよい。
また、後述するナノカーボン分離装置10を用いた、ナノカーボンの分離方法において、分離槽20内に温度勾配が生じると、分離槽20内にてナノカーボンの分散液80の対流現象が生じることがある。その結果、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを安定に分離することができなくなる。そこで、ナノカーボン分離装置10は、分離槽20内のナノカーボンの分散液80の温度を一定に保つための温度調節手段を備えることが好ましい。温度調節手段としては、特に限定されず、容器内に収容された液体の温度を一定に保つことができるものであれば、例えば、水冷ジャケットの装着等、いかなる手段でも用いることができる。
本実施形態のナノカーボン分離装置10では、第1の電極30が陰極、第2の電極40が陽極である場合を例示したが、本実施形態のナノカーボン分離装置10はこれに限定されない。本実施形態のナノカーボン分離装置10にあっては、第1の電極30が陽極、第2の電極40が陰極であってもよい。
本実施形態のナノカーボン分離装置10によれば、分離槽20内にて、分離槽20の高さ方向に沿って延在する複数の電極管50を設けることにより、例えば、後述するナノカーボンの分離方法を実施する、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、分離中に第2の電極40で発生した酸素の気泡によって、ナノカーボンの分散液80の対流現象が生じることを防止できる。すなわち、ナノカーボンの分離において、分離効率を著しく妨げる、第2の電極40で発生する気泡を、電極管50を通して分離槽20外へ除去することができる。その結果、分離槽20内で電極管50の外にあるナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを迅速かつ効率的に分離することができる。
また、本実施形態のナノカーボン分離装置10によれば、分離槽20内にて、分離槽20の高さ方向に沿って延在する複数の電極管50を設けることにより、例えば、後述するナノカーボンの分離方法を実施する、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、複数の電極管50で水平方向の流れを遮ることにより、ナノカーボンの分散液80に水平方向の流れが生じるのを抑制することもできるため、金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを迅速かつ効率的に分離することができる。
また、本実施形態のナノカーボン分離装置10によれば、分離槽20内の上部に第1の電極30(陰極)を設け、分離槽20内の下部に第2の電極40(陽極)を設けることにより、例えば、後述するナノカーボンの分離方法を実施する、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、第1の電極30の近傍にて、金属型ナノカーボンの含有量が多くなり、第2の電極40の近傍にて、半導体型ナノカーボンの含有量が多くなるため、金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを安定に分離することができる。
なお、第1の電極30が陽極、第2の電極40が陰極の場合には、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、第1の電極30の近傍にて、半導体型ナノカーボンの含有量が多くなり、第2の電極40の近傍にて、金属型ナノカーボンの含有量が多くなるため、金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを安定に分離することができる。
(ナノカーボンの分離方法)
図1、図2A、図2Bおよび図3を用いて、ナノカーボン分離装置10を用いた、ナノカーボンの分離方法を説明するとともに、ナノカーボン分離装置10の作用を説明する。
図3は、本実施形態のナノカーボンの分離方法を示すフローチャートである。
本実施形態のナノカーボンの分離方法は、分離槽20にナノカーボンの分散液80を注入する工程(以下、「注入工程」という。)と、第1の電極30と第2の電極40に直流電圧を印加し、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程(以下、「分離工程」という。)と、を有する。
本実施形態のナノカーボンの分離方法では、分離槽20内に、第1の電極30と第2の電極40が内在する電極管50を設置する際に、筒状部材41の下端部41Aに、柱状部材42の先端部材44を嵌合させる。この状態で、筒状部材41内に電極液を注入する。電極液は、例えば、ナノカーボンの分散液80に含まれる、界面活性剤と分散媒からなる溶液である。電極液を注入する量は、分離槽20内に電極管50を設置した場合に、筒状部材41内の電極液の液面が、分離槽20内のナノカーボンの分散液80の液面と同じ高さかそれ以上となる量とする。これにより、後述する分離工程において、筒状部材41の下端部41Aと柱状部材42の先端部材44の間に隙間47を設けても、筒状部材41内にナノカーボンの分散液80が浸入することを防止できる。
本実施形態のナノカーボンの分離方法において、ナノカーボンとは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノツイス卜、グラフェン、フラーレン等の主に炭素から構成される炭素材料を意味する。本実施形態のナノカーボンの分離方法では、ナノカーボンとして単層カーボンナノチューブが分散した分散液から、半導体型単層カーボンナノチューブと、金属型単層カーボンナノチューブと、を分離する場合について詳述する。
単層カーボンナノチューブは、チューブの直径、巻き方によって金属型と半導体型という2つの異なる性質に分かれることが知られている。従来の製造方法を用いて単層カーボンナノチューブを合成すると、金属的な性質を有する金属型単層カーボンナノチューブと半導体的な性質を有する半導体型単層カーボンナノチューブが統計的に1:2の割合で含まれる単層カーボンナノチューブの混合物が得られる。
単層カーボンナノチューブの混合物は、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブとを含むものであれば特に制限されない。また、本実施形態における単層カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ単体であってもよいし、一部の炭素が任意の官能基で置換された単層カーボンナノチューブや、任意の官能基で修飾された単層カーボンナノチューブであってもよい。
まず、単層カーボンナノチューブの混合物が、界面活性剤とともに分散媒に分散した単層カーボンナノチューブ分散液を調製する。
分散媒としては、単層カーボンナノチューブの混合物を分散させることができるものであれば特に限定されない。分散媒としては、例えば、水、重水、有機溶媒、イオン液体等が挙げられる。これらの分散媒の中でも、単層カーボンナノチューブが変質しないことから、水または重水が好適に用いられる。
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤等が用いられる。単層カーボンナノチューブにナトリウムイオン等のイオン性の不純物が混入することを防ぐためには、非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、イオン化しない親水性部位とアルキル鎖等の疎水性部位とを有する非イオン性界面活性剤が用いられる。このような非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系に代表されるポリエチレングリコール構造を有する非イオン性界面活性剤が挙げられる。
このような非イオン性界面活性剤としては、下記式(1)で表わされるポリオキシエチレンアルキルエーテルが好適に用いられる。
CnH2n(OCH2CH2)mOH (1)
(但し、n=12〜18、m=20〜100である。)
上記式(1)で表わされるポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(商品名:Brij L23、シグマアルドリッチ社製)、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(商品名:Brij C20、シグマアルドリッチ社製)、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル(商品名:Brij S20、シグマアルドリッチ社製)、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル(商品名:Brij O20、シグマアルドリッチ社製)、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル(商品名:Brij S100、シグマアルドリッチ社製)等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアラート(分子式:C64H126O26、商品名:Tween 60、シグマアルドリッチ社製)、ポリオキシエチレンソルビタントリオレアート(分子式:C24H44O6、商品名:Tween 85、シグマアルドリッチ社製)、オクチルフェノールエトキシレート(分子式:C14H22O(C2H4O)n、n=1〜10、商品名:Triton X−100、シグマアルドリッチ社製)、ポリオキシエチレン(40)イソオクチルフェニルエーテル(分子式:C8H17C6H40(CH2CH20)40H、商品名:Triton X−405、シグマアルドリッチ社製)、ポロキサマー(分子式:C5H10O2、商品名:Pluronic、シグマアルドリッチ社製)、ポリビニルピロリドン(分子式:(C6H9NO)n、n=5〜100、シグマアルドリッチ社製)等を用いることもできる。
単層カーボンナノチューブ分散液における非イオン性界面活性剤の含有量は、0.1wt%以上5wt%以下であることが好ましく、0.5wt%以上2wt%以下であることがより好ましい。
非イオン性界面活性剤の含有量が0.1wt%以上であれば、無担体電気泳動法によって、分離槽20内にて、単層カーボンナノチューブ分散液のpH勾配を形成することができる。一方、非イオン性界面活性剤の含有量が5wt%以下であれば、単層カーボンナノチューブ分散液の粘度が高くなり過ぎることがなく、無担体電気泳動法によって容易に、単層カーボンナノチューブ分散液に含まれる金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを分離することができる。
単層カーボンナノチューブ分散液における単層カーボンナノチューブの含有量は、1μg/mL以上100μg/mL以下であることが好ましく、5μg/mL以上40μg/mL以下であることがより好ましい。
単層カーボンナノチューブの含有量が上記の範囲であれば、無担体電気泳動法によって容易に、単層カーボンナノチューブ分散液に含まれる金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを分離することができる。
単層カーボンナノチューブ分散液を調製する方法としては、特に限定されず、公知の方法が用いられる。例えば、単層カーボンナノチューブの混合物と界面活性剤を含む分散媒の混合液を超音波処理して、分散媒に、単層カーボンナノチューブの混合物を分散させる方法が挙げられる。この超音波処理により、凝集していた金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブが充分に分離し、単層カーボンナノチューブ分散液は、分散媒に金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブが均一に分散したものとなる。したがって、後述する無担体電気泳動法により、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを分離し易くなる。なお、超音波処理により分散しなかった金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブは、超遠心分離により分離、除去することが好ましい。
次いで、注入工程にて、上述のように調製した単層カーボンナノチューブ分散液を、分離槽20に注入する(ST1)。
また、分離槽20に単層カーボンナノチューブ分散液を注入することにより、単層カーボンナノチューブ分散液に第1の電極30と第2の電極40が接する。本実施形態では、単層カーボンナノチューブ分散液に第1の電極30と第2の電極40を浸漬した。
次いで、分離工程にて、無担体電気泳動法により、単層カーボンナノチューブ分散液に含まれる金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを分離する(ST2)。
分離工程にて、柱状部材42を筒状部材41の下部側に移動することにより、筒状部材41の下端部41Aと柱状部材42の先端部材44の間に隙間47を設ける。この状態で、無担体電気泳動法により、単層カーボンナノチューブ分散液に含まれる金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを分離する。なお、筒状部材41の下端部41Aと柱状部材42の先端部材44の間に隙間47を設けるように先端部材44を筒状部材41の下方に配置したとしても、第2の電極40が筒状部材41内にあるように、第2の電極40を設けることが好ましい。
第1の電極30と第2の電極40に、所定時間(例えば、1時間〜24時間)、直流電圧を印加することにより、分離槽20内にて、電界を形成する。具体的には、電界の向きが分離槽20の下方から上方へ向かうように電界を形成する。この電界と、単層カーボンナノチューブの電荷とにより生じる電気泳動力により、単層カーボンナノチューブ分散液に含まれる単層カーボンナノチューブの混合物が、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブとに分離される。
非イオン性界面活性剤を含む単層カーボンナノチューブ分散液中では、金属型単層カーボンナノチューブが正電荷を有し、半導体型単層カーボンナノチューブが極めて弱い負電荷を有する。
したがって、第1の電極30と第2の電極40に直流電圧を印加すると、単層カーボンナノチューブ分散液に含まれる単層カーボンナノチューブの混合物のうち、金属型単層カーボンナノチューブが第1の電極30(陰極)側に移動し、半導体型単層カーボンナノチューブが第2の電極40(陽極)側に移動する。その結果として、単層カーボンナノチューブ分散液は、相対的に金属型単層カーボンナノチューブの含有量が多い分散液相(以下、「分散液相A」という。)と、相対的に半導体型単層カーボンナノチューブの含有量が多い分散液相(以下、「分散液相B」という。)と、分散液相Aと分散液相Bの間に形成され、相対的に金属型単層カーボンナノチューブおよび半導体型単層カーボンナノチューブの含有量が少ない分散液相(以下、「分散液相C」という。)との3相に相分離する。
本実施形態では、第1の電極30側に分散液相Aが形成され、第2の電極40側に分散液相Bが形成される。
第1の電極30と第2の電極40に印加する直流電圧は、特に限定されず、第1の電極30と第2の電極40との間の距離や単層カーボンナノチューブ分散液における単層カーボンナノチューブの混合物の含有量等に応じて適宜調整される。
単層カーボンナノチューブ分散液の分散媒として、水または重水を用いた場合、第1の電極30と第2の電極40に印加する直流電圧を、0Vより大きく、1000V以下の間の任意の値とする。
例えば、第1の電極30と第2の電極40の距離(電極間距離)が30cmである場合、第1の電極30と第2の電極40に印加する直流電圧は、15V以上450V以下であることが好ましく、30V以上300V以下であることがより好ましい。
第1の電極30と第2の電極40に印加する直流電圧が15V以上であれば、分離槽20内にて、単層カーボンナノチューブ分散液のpH勾配を形成して、単層カーボンナノチューブ分散液に含まれる金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを分離することができる。一方、第1の電極30と第2の電極40に印加する直流電圧が450V以下であれば、水または重水の電気分解による影響を抑えられる。
また、第1の電極30と第2の電極40に直流電圧を印加したとき、第1の電極30と第2の電極40の間の電界は、0.5V/cm以上15V/cm以下であることが好ましく、1V/cm以上10V/cm以下であることがより好ましい。
第1の電極30と第2の電極40の間の電界が0.5V/cm以上であれば、分離槽20内にて、単層カーボンナノチューブ分散液のpH勾配を形成して、単層カーボンナノチューブ分散液に含まれる金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを分離することができる。一方、第1の電極30と第2の電極40の間の電界が15V/cm以下であれば、水または重水の電気分解による影響を抑えられる。
また、第1の電極30と第2の電極40に直流電圧を印加すると、水または重水が電気分解して、第1の電極30では水素または重水素が発生し、第2の電極40では酸素が発生する。従来の分離方法では、第2の電極40で発生した酸素が、気泡となって分離槽20の上部に移動すると、分離中の単層カーボンナノチューブ分散液の対流現象が生じることがある。そこで、本実施形態のナノカーボンの分離方法では、筒状部材41の下端部41Aと柱状部材42の先端部材44の間に隙間47を設けた状態で、第1の電極30と第2の電極40に直流電圧を印加して、無担体電気泳動法により、単層カーボンナノチューブ分散液に含まれる金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを分離する。すると、第2の電極40で発生した酸素は電極管50の筒状部材41内を上昇して、筒状部材41の上端から分離槽20外に出る。また、筒状部材41内の電極液と第1の電極30は、接していない。従って、筒状部材41内の電極液において、第1の電極30と第2の電極40の間で電位差が生じない。一方、筒状部材41外部にある単層カーボンナノチューブ分散液において、第1の電極30と第2の電極40の間で電位差が生じる。これにより、本実施形態のナノカーボンの分離方法では、単層カーボンナノチューブ分散液に含まれる金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブの分離が分離槽20内かつ電極管50外に収容されている単層カーボンナノチューブ分散液において進行する。また、第2の電極40で発生した気泡は単層カーボンナノチューブ分散液を通過しないため、第2の電極40で発生した酸素の気泡によって分離中の単層カーボンナノチューブ分散液の対流現象が生じることを防止できる。
また、無担体電気泳動法により、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブの分離を開始すると、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブが、分離槽20の高さ方向に沿って移動するとともに、分離槽20の高さ方向と垂直な方向にも移動する。これにより、単層カーボンナノチューブ分散液に、分離槽20の高さ方向と垂直な方向(水平方向)に流れが生じる。単層カーボンナノチューブ分散液に水平方向の流れが生じると、単層カーボンナノチューブ分散液を分散液相Aと分散液相Bに相分離するための時間が長くなる。特に、分離槽20の容積が大きくなるに伴って、分離槽20の内径が拡大した場合、相分離に要する時間が長くなる。本実施形態では、分離槽20内に、複数の電極管50を設けて、分離槽20内を複数の領域に区画している。これにより、分離工程において、無担体電気泳動法によって、分離槽20内にて、単層カーボンナノチューブ分散液を相分離する際、複数の電極管50により、単層カーボンナノチューブ分散液に水平方向の流れが生じるのを抑制することもできる。その結果、内径が大きな分離槽20を用いた場合にも、迅速かつ効率的に、単層カーボンナノチューブ分散液を分散液相Aと分散液相Bに相分離することができる。
次いで、分離した分散液相Aと分散液相Bとをそれぞれ回収(分取)する。
回収の方法は、特に限定されず、分散液相Aと分散液相Bが拡散混合しない方法であればいかなる方法であってもよい。
回収の方法としては、例えば、第1の電極30と第2の電極40への直流電圧の印加を止め、それぞれの相から、ピペットにより静かに少量ずつ吸い出す方法が挙げられる。
また、回収の方法としては、第1の電極30と第2の電極40に直流電圧を印加したまま、分離槽20の下方に設けた回収口から分散液相Aの単層カーボンナノチューブ分散液を連続的に吸い出し、その回収口から分散液相Bの単層カーボンナノチューブ分散液を連続的に吸い出す方法が挙げられる。
回収した分散液を、再び、分離槽20に収容し、上述と同様にして、無担体電気泳動法により、単層カーボンナノチューブ分散液に含まれる金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを分離する操作を繰り返し実施することにより、純度が高い金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを得ることができる。
回収した分散液の分離効率は、顕微Raman分光分析法(Radial Breathing Mode(RBM)領域のRamanスペクトルの変化、Breit−Wigner−Fano(BWF)領域のRamanスペクトル形状の変化)、および紫外可視近赤外吸光光度分析法(吸収スペクトルのピーク形状の変化)等の手法により評価することができる。また、単層カーボンナノチューブの電気的特性について評価することによっても、分散液の分離効率を評価することができる。例えば、電界効果トランジスタを作製して、そのトランジスタ特性を測定することによって、分散液の分離効率を評価することができる。
本実施形態のナノカーボンの分離方法によれば、第2の電極40で発生した酸素の気泡を、電極管50の筒状部材41内を上昇させて、分離槽20外に放出することにより、第2の電極40で発生した、分離効率を著しく妨げる酸素の気泡によって分離中の単層カーボンナノチューブ分散液の対流現象が生じることを防止できる。結果として、純度が高い金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを得ることができる。
また、本実施形態のナノカーボンの分離方法によれば、分離槽20内にて、複数の電極管50により、単層カーボンナノチューブ分散液に水平方向の流れが生じるのを抑制することもできるため、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを迅速かつ効率的に分離することができる。
また、本実施形態のナノカーボンの分離方法によれば、第1の電極30の近傍にて、金属型単層カーボンナノチューブの含有量が多くなり、第2の電極40の近傍にて、半導体型単層カーボンナノチューブの含有量が多くなるため、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを安定に分離することができる。
なお、本実施形態のナノカーボンの分離方法では、単層カーボンナノチューブの混合物を、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブに分離する場合を例示したが、本実施形態のナノカーボンの分離方法はこれに限定されない。本実施形態のナノカーボンの分離方法は、例えば、分離槽20内にて、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブに分離した後、目的の性質を有する単層カーボンナノチューブのみを回収する、単層カーボンナノチューブの精製方法として行ってもよい。
また、第1の電極30を陽極、第2の電極40を陰極とした場合、第2の電極40で発生した水素の気泡を、電極管50の筒状部材41内を上昇させて、分離槽20外に放出することにより、第2の電極40で発生した水素の気泡によって分離中の単層カーボンナノチューブ分散液の対流現象が生じることを防止できる。
[第2の実施形態]
(ナノカーボン分離装置)
図4は、本実施形態のナノカーボン分離装置を示す斜視図である。
なお、図4において、図1に示した第1の実施形態のナノカーボン分離装置と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態のナノカーボン分離装置100は、分離槽(電気泳動槽)20と、分離槽20内の上部に設けられた第1の電極30と、分離槽20内の下部に設けられた第2の電極40と、分離槽20内にて、分離槽20の高さ方向に沿って延在する複数の電極管50と、を備える。
本実施形態のナノカーボン分離装置100が、第1の実施形態のナノカーボン分離装置10と異なる点は、第1の電極30と保持部材70が一体化されている点である。
すなわち、第1の電極30(保持部材70)は、複数の電極管50の間に配置され、電極管50を保持している。本実施形態のナノカーボン分離装置100では、図4に示すように、第1の電極30は、平面視において長方形状をなす、板状の電極である。また、第1の電極30は、その厚さ方向に貫通する多数の貫通穴31を有する。多数の貫通穴31は、第1の電極30の平面視において等間隔に配置されていることが好ましい。第1の電極30の貫通穴31には、電極管50が挿通され嵌合されている。これにより、分離槽20内に、第2の電極40を有する電極管50が配置される。また、多数の貫通穴31が、第1の電極30の平面視において等間隔に配置されている場合、電極管50は、第1の電極30の平面視において等間隔に配置される。
本実施形態のナノカーボン分離装置100は、第1の実施形態と同様に、分離槽20内にナノカーボンの分散液80を注入する注入口(図示略)を備えていてもよい。
また、本実施形態のナノカーボン分離装置100は、第1の実施形態と同様に、分離槽20内のナノカーボンの分散液80を回収する回収口(図示略)を備えていてもよい。
本実施形態のナノカーボン分離装置100は、第1の実施形態と同様に、分離槽20内のナノカーボンの分散液80の温度を一定に保つための温度調節手段を備えることが好ましい。
本実施形態のナノカーボン分離装置100では、第1の電極30が陰極、第2の電極40が陽極である場合を例示したが、本実施形態のナノカーボン分離装置100はこれに限定されない。本実施形態のナノカーボン分離装置100にあっては、第1の電極30が陽極、第2の電極40が陰極であってもよい。
本実施形態のナノカーボン分離装置100によれば、第1の電極30と保持部材70が一体化されているため、分離槽20内において、第1の電極30と保持部材70の構造を簡略化することができる。これにより、分離槽20内において、ナノカーボンの分散液80を収容する空間を充分に確保することができる。
本実施形態のナノカーボン分離装置100によれば、分離槽20内にて、分離槽20の高さ方向に沿って延在する複数の電極管50を設けることにより、例えば、後述するナノカーボンの分離方法を実施する、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、分離中に第2の電極40で発生した酸素の気泡によって、ナノカーボンの分散液80の対流現象が生じることを防止できる。すなわち、ナノカーボンの分離において、分離効率を著しく妨げる、第2の電極40で発生する気泡を、電極管50を通して分離槽20外へ除去することができる。その結果、分離槽20内で電極管50の外にある金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを迅速かつ効率的に分離することができる。
また、本実施形態のナノカーボン分離装置100によれば、分離槽20内にて、分離槽20の高さ方向に沿って延在する複数の電極管50を設けることにより、例えば、後述するナノカーボンの分離方法を実施する、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、複数の電極管50で水平方向の流れを遮ることにより、ナノカーボンの分散液80に水平方向の流れが生じるのを抑制することもできるため、金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを迅速かつ効率的に分離することができる。
また、本実施形態のナノカーボン分離装置100によれば、分離槽20内の上部に第1の電極30(陰極)を設け、分離槽20内の下部に第2の電極40(陽極)を設けることにより、例えば、後述するナノカーボンの分離方法を実施する、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、第1の電極30の近傍にて、金属型ナノカーボンの含有量が多くなり、第2の電極40の近傍にて、半導体型ナノカーボンの含有量が多くなるため、金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを安定に分離することができる。
なお、第1の電極30が陽極、第2の電極40が陰極の場合には、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、第1の電極30の近傍にて、半導体型ナノカーボンの含有量が多くなり、第2の電極40の近傍にて、金属型ナノカーボンの含有量が多くなるため、金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを安定に分離することができる。
(ナノカーボンの分離方法)
図4を用いて、ナノカーボン分離装置100を用いた、ナノカーボンの分離方法を説明するとともに、ナノカーボン分離装置100の作用を説明する。
本実施形態のナノカーボンの分離方法は、第1の実施形態と同様に、分離槽20にナノカーボンの分散液80を注入する工程(注入工程)と、第1の電極30と第2の電極40に直流電圧を印加し、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程(分離工程)と、を有する。
注入工程にて、分離槽20にナノカーボンの分散液80を注入することにより、ナノカーボンの分散液80に第1の電極30と第2の電極40が接する。本実施形態では、ナノカーボンの分散液80に第1の電極30と第2の電極40を浸漬した。
本実施形態のナノカーボンの分離方法によれば、第2の電極40で発生した酸素の気泡を、電極管50の筒状部材41内を上昇させて、分離槽20外に放出することにより、第2の電極40で発生した、分離効率を著しく妨げる酸素の気泡によって分離中の単層カーボンナノチューブ分散液の対流現象が生じることを防止できる。結果として、純度が高い金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを得ることができる。
また、本実施形態のナノカーボンの分離方法によれば、分離槽20内にて、複数の電極管50により、単層カーボンナノチューブ分散液に水平方向の流れが生じるのを抑制することもできるため、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを迅速かつ効率的に分離することができる。
また、本実施形態のナノカーボンの分離方法によれば、第1の電極30の近傍にて、金属型単層カーボンナノチューブの含有量が多くなり、第2の電極40の近傍にて、半導体型単層カーボンナノチューブの含有量が多くなるため、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを安定に分離することができる。
なお、本実施形態のナノカーボンの分離方法では、単層カーボンナノチューブの混合物を、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブに分離する場合を例示したが、本実施形態のナノカーボンの分離方法はこれに限定されない。本実施形態のナノカーボンの分離方法は、例えば、分離槽20内にて、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブに分離した後、目的の性質を有する単層カーボンナノチューブのみを回収する、単層カーボンナノチューブの精製方法として行ってもよい。
また、第1の電極30を陽極、第2の電極40を陰極とした場合、第2の電極40で発生した水素の気泡を、電極管50の筒状部材41内を上昇させて、分離槽20外に放出することにより、第2の電極40で発生した水素の気泡によって分離中の単層カーボンナノチューブ分散液の対流現象が生じることを防止できる。
[第3の実施形態]
(ナノカーボン分離装置)
図5は、本実施形態のナノカーボン分離装置を示す斜視図である。
なお、図5において、図1に示した第1の実施形態のナノカーボン分離装置と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態のナノカーボン分離装置200は、分離槽(電気泳動槽)20と、分離槽20内の上部に設けられた第1の電極30と、分離槽20内の下部に設けられた第2の電極40と、分離槽20内にて、分離槽20の高さ方向に沿って延在する複数の電極管50と、を備える。
本実施形態のナノカーボン分離装置200が、第1の実施形態のナノカーボン分離装置10と異なる点は、複数の電極管50を保持する保持部材201が、図5に示すように、分離槽20の水平方向に沿って並べられた複数の平板状の第1の部材202からなる第1の部材群203と、第1の部材群203に垂直に交わり、分離槽20の水平方向に沿って並べられた複数の平板状の第2の部材204からなる第2の部材群205とを有する点である。保持部材201によって、分離槽20内が複数の領域に区画されている。言い換えれば、分離槽20は、保持部材201によって、平面視した場合に格子状をなす空間に区画されている。また、第1の部材202および第2の部材204は、分離槽20の上下方向に延在する。
電極管50は、第1の部材202と第2の部材204が交差する部分に設けられている。これにより、電極管50は、分離槽20の平面視において等間隔に配置される。
なお、本実施形態のナノカーボン分離装置200において、第1の部材202と第2の部材204の構造は平板状に限定されない。第1の部材202と第2の部材204の構造は、多数の微細孔が均質に設けられた多孔板状であってもよい。
本実施形態のナノカーボン分離装置200は、第1の実施形態と同様に、分離槽20内にナノカーボンの分散液80を注入する注入口(図示略)を備えていてもよい。
また、本実施形態のナノカーボン分離装置200は、第1の実施形態と同様に、分離槽20内のナノカーボンの分散液80を回収する回収口(図示略)を備えていてもよい。
本実施形態のナノカーボン分離装置200は、第1の実施形態と同様に、分離槽20内のナノカーボンの分散液80の温度を一定に保つための温度調節手段を備えることが好ましい。
本実施形態のナノカーボン分離装置200では、第1の電極30が陰極、第2の電極40が陽極である場合を例示したが、本実施形態のナノカーボン分離装置200はこれに限定されない。本実施形態のナノカーボン分離装置200にあっては、第1の電極30が陽極、第2の電極40が陰極であってもよい。
本実施形態のナノカーボン分離装置200によれば、分離槽20内にて、分離槽20の高さ方向に沿って延在する複数の電極管50を設けることにより、例えば、後述するナノカーボンの分離方法を実施する、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、分離中に第2の電極40で発生した酸素の気泡によって、ナノカーボンの分散液80の対流現象が生じることを防止できる。すなわち、ナノカーボンの分離において、分離効率を著しく妨げる、第2の電極40で発生する気泡を、電極管50を通して分離槽20外へ除去することができる。その結果、分離槽20内で電極管50の外にある金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを迅速かつ効率的に分離することができる。
また、本実施形態のナノカーボン分離装置200によれば、分離槽20の水平方向に沿って並べられた複数の平板状の第1の部材202からなる第1の部材群203と、第1の部材群203に垂直に交わり、分離槽20の水平方向に沿って並べられた複数の平板状の第2の部材204からなる第2の部材群205とを有する保持部材201を設け、第1の部材202と第2の部材204が交差する部分に電極管50を設けることにより、例えば、後述するナノカーボンの分離方法を実施する、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、複数の電極管50で水平方向の流れを遮ることにより、ナノカーボンの分散液80に水平方向の流れが生じるのを抑制することもできるため、金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを迅速かつ効率的に分離することができる。複数の平板状の第1の部材群203と第2の部材群205は、水平方向の流れを遮ることができれば高さ方向の長さは特に限定されず、分離槽20の底面に接触していてもよい。
また、本実施形態のナノカーボン分離装置200によれば、分離槽20内の上部に第1の電極30(陰極)を設け、分離槽20内の下部に第2の電極40(陽極)を設けることにより、例えば、後述するナノカーボンの分離方法を実施する、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、第1の電極30の近傍にて、金属型ナノカーボンの含有量が多くなり、第2の電極40の近傍にて、半導体型ナノカーボンの含有量が多くなるため、金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを安定に分離することができる。
なお、第1の電極30が陽極、第2の電極40が陰極の場合には、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、第1の電極30の近傍にて、半導体型ナノカーボンの含有量が多くなり、第2の電極40の近傍にて、金属型ナノカーボンの含有量が多くなるため、金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを安定に分離することができる。
(ナノカーボンの分離方法)
図5を用いて、ナノカーボン分離装置200を用いた、ナノカーボンの分離方法を説明するとともに、ナノカーボン分離装置200の作用を説明する。
本実施形態のナノカーボンの分離方法は、第1の実施形態と同様に、分離槽20にナノカーボンの分散液80を注入する工程(注入工程)と、第1の電極30と第2の電極40に直流電圧を印加し、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程(分離工程)と、を有する。
注入工程にて、分離槽20にナノカーボンの分散液80を注入することにより、ナノカーボンの分散液80に第1の電極30と第2の電極40が接する。本実施形態では、ナノカーボンの分散液80に第1の電極30と第2の電極40を浸漬した。
本実施形態のナノカーボンの分離方法によれば、第2の電極40で発生した酸素の気泡を、電極管50の筒状部材41内を上昇させて、分離槽20外に放出することにより、第2の電極40で発生した、分離効率を著しく妨げる酸素の気泡によって分離中の単層カーボンナノチューブ分散液の対流現象が生じることを防止できる。結果として、純度が高い金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを得ることができる。
本実施形態のナノカーボンの分離方法によれば、第1の電極12と第2の電極13の間に、分離槽20の水平方向に沿って並べられた複数の平板状の第1の部材202からなる第1の部材群203と、第1の部材群203に垂直に交わり、分離槽20の水平方向に沿って並べられた複数の平板状の第2の部材204からなる第2の部材群205とを有する保持部材201を設け、第1の部材202と第2の部材204が交差する部分に電極管50を設けることにより、単層カーボンナノチューブ分散液に水平方向の流れが生じるのを抑制することもできるため、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを迅速かつ効率的に分離することができる。
また、本実施形態のナノカーボンの分離方法によれば、第1の電極30の近傍にて、金属型単層カーボンナノチューブの含有量が多くなり、第2の電極40の近傍にて、半導体型単層カーボンナノチューブの含有量が多くなるため、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを安定に分離することができる。
なお、本実施形態のナノカーボンの分離方法では、単層カーボンナノチューブの混合物を、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブに分離する場合を例示したが、本実施形態のナノカーボンの分離方法はこれに限定されない。本実施形態のナノカーボンの分離方法は、例えば、分離槽20内にて、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブに分離した後、目的の性質を有する単層カーボンナノチューブのみを回収する、単層カーボンナノチューブの精製方法として行ってもよい。
また、第1の電極30を陽極、第2の電極40を陰極とした場合、第2の電極40で発生した水素の気泡を、電極管50の筒状部材41内を上昇させて、分離槽20外に放出することにより、第2の電極40で発生した水素の気泡によって分離中の単層カーボンナノチューブ分散液の対流現象が生じることを防止できる。
[第4の実施形態]
(ナノカーボン分離装置)
図6は、本実施形態のナノカーボン分離装置を示す斜視図である。
なお、図6において、図1に示した第1の実施形態のナノカーボン分離装置と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態のナノカーボン分離装置300は、平面視にて長方形状の分離槽(電気泳動槽)20と、分離槽20内の上部に設けられた第1の電極310と、分離槽20内にて、分離槽20の高さ方向に沿って延在する複数の電極管50と、を備える。
第1の電極310は、電極管50間を連結する第1の導線320と第2の導線340からなる。詳細には、第1の電極310は、等間隔に配置された複数の第1の導線320からなる第1の導線群330と、第1の導線群330に垂直に交わり、等間隔に配置された複数の第2の導線340からなる第2の導線群350とからなる。
第1の電極310は、分離槽20内にて、その高さ方向の上方(分離槽20内にて、その高さの半分より上の領域、分離槽20の内底面20aとは反対側の領域)に配置されている。
本実施形態のナノカーボン分離装置300において、第1の電極310が陰極、第2の電極40が陽極である。
第1の電極310は、平面視において格子状をなす、線状の電極である。第1の電極310における格子は、平面視において正方形状または長方形状をなしている。また、第1の電極310は、電極管50の筒状部材41の外周に沿って設けられている。言い換えれば、第1の電極310は、第1の導線320と第2の導線340の交点において、第1の導線320または第2の導線340からなる多数の環状部360を有し、その環状部160に電極管50が挿通されている。多数の環状部360は、第1の電極310の平面視において等間隔に配置されていることが好ましい。多数の環状部360が、第1の電極310の平面視において等間隔に配置されている場合、電極管50は、第1の電極310の平面視において等間隔に配置される。
第1の導線320および第2の導線340としては、無担体電気泳動法に用いることができ、ナノカーボンの分散液80に対して安定なものであれば特に限定されない。第1の導線320および第2の導線340としては、例えば、白金電極等が挙げられる。
本実施形態のナノカーボン分離装置300は、第1の実施形態と同様に、分離槽20内にナノカーボンの分散液80を注入する注入口(図示略)を備えていてもよい。
また、本実施形態のナノカーボン分離装置300は、第1の実施形態と同様に、分離槽20内のナノカーボンの分散液80を回収する回収口(図示略)を備えていてもよい。
本実施形態のナノカーボン分離装置300は、第1の実施形態と同様に、分離槽20内のナノカーボンの分散液80の温度を一定に保つための温度調節手段を備えることが好ましい。
本実施形態のナノカーボン分離装置300では、第1の電極310が陰極、第2の電極40が陽極である場合を例示したが、本実施形態のナノカーボン分離装置300はこれに限定されない。本実施形態のナノカーボン分離装置300にあっては、第1の電極310が陽極、第2の電極40が陰極であってもよい。
本実施形態のナノカーボン分離装置300によれば、第1の導線320と第2の導線340からなる第1の電極310が、第1の導線320と第2の導線340の交点において、電極管50の筒状部材41の外周に沿って設けられているため、分離槽20内において、第1の電極310が電極管50の保持部材としても機能し、分離槽20内の構造を簡略化することができる。これにより、分離槽20内において、ナノカーボンの分散液80を収容する空間を充分に確保することができる。
また、本実施形態のナノカーボン分離装置300によれば、分離槽20内にて、分離槽20の高さ方向に沿って延在する複数の電極管50を設けることにより、例えば、後述するナノカーボンの分離方法を実施する、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、分離中に第2の電極40で発生した酸素の気泡によって、ナノカーボンの分散液80の対流現象が生じることを防止できる。すなわち、ナノカーボンの分離において、分離効率を著しく妨げる、第2の電極40で発生する気泡を、電極管50を通して分離槽20外へ除去することができる。その結果、分離槽20内で電極管50の外にあるナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを迅速かつ効率的に分離することができる。
また、本実施形態のナノカーボン分離装置300によれば、分離槽20内にて、分離槽20の高さ方向に沿って延在する複数の電極管50を設けることにより、例えば、後述するナノカーボンの分離方法を実施する、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、複数の電極管50で水平方向の流れを遮ることにより、ナノカーボンの分散液80に水平方向の流れが生じるのを抑制することもできるため、金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを迅速かつ効率的に分離することができる。
また、本実施形態のナノカーボン分離装置300によれば、分離槽20内の上部に第1の電極310(陰極)を設け、分離槽20内の下部に第2の電極40(陽極)を設けることにより、例えば、後述するナノカーボンの分離方法を実施する、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、第1の電極310の近傍にて、金属型ナノカーボンの含有量が多くなり、第2の電極40の近傍にて、半導体型ナノカーボンの含有量が多くなるため、金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを安定に分離することができる。
なお、第1の電極310が陽極、第2の電極40が陰極の場合には、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、第1の電極310の近傍にて、半導体型ナノカーボンの含有量が多くなり、第2の電極40の近傍にて、金属型ナノカーボンの含有量が多くなるため、金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを安定に分離することができる。
(ナノカーボンの分離方法)
図6を用いて、ナノカーボン分離装置300を用いた、ナノカーボンの分離方法を説明するとともに、ナノカーボン分離装置300の作用を説明する。
本実施形態のナノカーボンの分離方法は、第1の実施形態と同様に、分離槽20にナノカーボンの分散液80を注入する工程(注入工程)と、第1の電極310と第2の電極40に直流電圧を印加し、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程(分離工程)と、を有する。
注入工程にて、分離槽20にナノカーボンの分散液80を注入することにより、ナノカーボンの分散液80に第1の電極310と第2の電極40が接する。本実施形態では、ナノカーボンの分散液80に第1の電極310と第2の電極40を浸漬した。
本実施形態のナノカーボンの分離方法によれば、第2の電極40で発生した酸素の気泡を、電極管50の筒状部材41内を上昇させて、分離槽20外に放出することにより、第2の電極40で発生した酸素の気泡によって分離中の単層カーボンナノチューブ分散液の対流現象が生じることを防止できる。結果として、純度が高い金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを得ることができる。
また、本実施形態のナノカーボンの分離方法によれば、分離槽20内にて、複数の電極管50により、単層カーボンナノチューブ分散液に水平方向の流れが生じるのを抑制することもできるため、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを迅速かつ効率的に分離することができる。
また、本実施形態のナノカーボンの分離方法によれば、第1の電極310の近傍にて、金属型単層カーボンナノチューブの含有量が多くなり、第2の電極40の近傍にて、半導体型単層カーボンナノチューブの含有量が多くなるため、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを安定に分離することができる。
なお、本実施形態のナノカーボンの分離方法では、単層カーボンナノチューブの混合物を、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブに分離する場合を例示したが、本実施形態のナノカーボンの分離方法はこれに限定されない。本実施形態のナノカーボンの分離方法は、例えば、分離槽20内にて、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブに分離した後、目的の性質を有する単層カーボンナノチューブのみを回収する、単層カーボンナノチューブの精製方法として行ってもよい。
また、第1の電極310を陽極、第2の電極40を陰極とした場合、第2の電極40で発生した水素の気泡を、電極管50の筒状部材41内を上昇させて、分離槽20外に放出することにより、第2の電極40で発生した水素の気泡によって分離中の単層カーボンナノチューブ分散液の対流現象が生じることを防止できる。
[第5の実施形態]
(ナノカーボン分離装置)
図7は、本実施形態のナノカーボン分離装置を示す斜視図である。
なお、図7において、図1に示した第1の実施形態のナノカーボン分離装置と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態のナノカーボン分離装置400は、平面視にて長方形状の分離槽(電気泳動槽)20と、分離槽20内の上部に設けられた第1の電極410と、分離槽20内にて、分離槽20の高さ方向に沿って延在する複数の電極管50と、を備える。
第1の電極410は、電極管50間を連結する第1の金属板420と第2の金属板440からなる。詳細には、第1の電極410は、等間隔に配置された複数の第1の金属板420からなる第1の金属板群430と、第1の金属板群430に垂直に交わり、等間隔に配置された複数の第2の金属板440からなる第2の金属板群450とからなる。
また、第1の金属板420の下部(分離槽20の内底面20a側)には、絶縁板460が設けられている。第2の金属板440の下部(分離槽20の内底面20a側)には、絶縁板470が連設されている。絶縁板460と絶縁板470も垂直に交わっている。
第1の電極410は、分離槽20内にて、その高さ方向の上方(分離槽20内にて、その高さの半分より上の領域、分離槽20の内底面20aとは反対側の領域)に配置されている。
絶縁板460と絶縁板470は、分離槽20内にて、水平方向の流れを遮ることができれば、設置位置や高さ方向の長さは特に限定されず、分離槽20の底面に接触していてもよい。
本実施形態のナノカーボン分離装置400において、例えば、第1の電極410が陰極、第2の電極40が陽極である。
第1の電極410は、平面視において格子状をなす、板状の電極である。第1の電極410における格子は、平面視において正方形状または長方形状をなしている。また、第1の電極410は、電極管50の筒状部材41の外周に沿って設けられている。言い換えれば、第1の電極410は、第1の金属板420と第2の金属板440の交点において、第1の金属板420または第2の金属板440からなる多数の環状部480と、絶縁板460または絶縁板470からなる多数の環状部490とを有する。環状部480と環状部490は連通しており、環状部480および環状部490に電極管50が挿通されている。多数の環状部480および環状部490は、第1の電極410の平面視において等間隔に配置されていることが好ましい。多数の環状部480および環状部490が、第1の電極410の平面視において等間隔に配置されている場合、電極管50は、第1の電極410の平面視において等間隔に配置される。
第1の金属板420および第2の金属板440としては、無担体電気泳動法に用いることができ、ナノカーボンの分散液80に対して安定なものであれば特に限定されない。第1の金属板420および第2の金属板440としては、例えば、白金電極等が挙げられる。
絶縁板460および絶縁板470の材質は、ナノカーボンの分散液80に対して安定であり、かつ絶縁性の材質であれば特に限定されない。絶縁板460および絶縁板470の材質としては、例えば、ガラス、石英、アクリル樹脂等が挙げられる。
本実施形態のナノカーボン分離装置400は、第1の実施形態と同様に、分離槽20内にナノカーボンの分散液80を注入する注入口(図示略)を備えていてもよい。
また、本実施形態のナノカーボン分離装置400は、第1の実施形態と同様に、分離槽20内のナノカーボンの分散液80を回収する回収口(図示略)を備えていてもよい。
本実施形態のナノカーボン分離装置400は、第1の実施形態と同様に、分離槽20内のナノカーボンの分散液80の温度を一定に保つための温度調節手段を備えることが好ましい。
本実施形態のナノカーボン分離装置400では、第1の電極410が陰極、第2の電極40が陽極である場合を例示したが、本実施形態のナノカーボン分離装置400はこれに限定されない。本実施形態のナノカーボン分離装置400にあっては、第1の電極410が陽極、第2の電極40が陰極であってもよい。
本実施形態のナノカーボン分離装置400によれば、分離槽20内にて、分離槽20の高さ方向に沿って延在する複数の電極管50を設けることにより、例えば、後述するナノカーボンの分離方法を実施する、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、分離中に第2の電極40で発生した酸素の気泡によって、ナノカーボンの分散液80の対流現象が生じることを防止できる。すなわち、ナノカーボンの分離において、分離効率を著しく妨げる、第2の電極40で発生する気泡を、電極管50を通して分離槽20外へ除去することができる。その結果、分離槽20内で電極管50の外にあるナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを迅速かつ効率的に分離することができる。
本実施形態のナノカーボン分離装置400によれば、分離槽20内にて、複数の電極管50と、第1の電極410を構成する第1の金属板420、第2の金属板440、絶縁板460および絶縁板270とを設けることにより、例えば、後述するナノカーボンの分離方法を実施する、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、複数の電極管50と、第1の電極410を構成する第1の金属板420、第2の金属板440、絶縁板460および絶縁板270とで水平方向の流れを遮ることにより、ナノカーボンの分散液80に水平方向の流れが生じるのを抑制することもできるため、金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを迅速かつ効率的に分離することができる。
また、本実施形態のナノカーボン分離装置400によれば、分離槽20内の上部に第1の電極410(陰極)を設け、分離槽20内の下部に第2の電極40(陽極)を設けることにより、例えば、後述するナノカーボンの分離方法を実施する、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、第1の電極410の近傍にて、金属型ナノカーボンの含有量が多くなり、第2の電極40の近傍にて、半導体型ナノカーボンの含有量が多くなるため、金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを安定に分離することができる。
なお、第1の電極410が陽極、第2の電極40が陰極の場合には、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、第1の電極410の近傍にて、半導体型ナノカーボンの含有量が多くなり、第2の電極40の近傍にて、金属型ナノカーボンの含有量が多くなるため、金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを安定に分離することができる。
(ナノカーボンの分離方法)
図7を用いて、ナノカーボン分離装置400を用いた、ナノカーボンの分離方法を説明するとともに、ナノカーボン分離装置400の作用を説明する。
本実施形態のナノカーボンの分離方法は、第1の実施形態と同様に、分離槽20にナノカーボンの分散液80を注入する工程(注入工程)と、第1の電極410と第2の電極40に直流電圧を印加し、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程(分離工程)と、を有する。
注入工程にて、分離槽20にナノカーボンの分散液80を注入することにより、ナノカーボンの分散液80に第1の電極410と第2の電極40が接する。本実施形態では、ナノカーボンの分散液80に第1の電極410と第2の電極40を浸漬した。
本実施形態のナノカーボンの分離方法によれば、第2の電極40で発生した酸素の気泡を、電極管50の筒状部材41内を上昇させて、分離槽20外に放出することにより、第2の電極40で発生した、分離効率を著しく妨げる酸素の気泡によって分離中の単層カーボンナノチューブ分散液の対流現象が生じることを防止できる。結果として、純度が高い金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを得ることができる。
また、本実施形態のナノカーボンの分離方法によれば、分離槽20内にて、複数の電極管50と、第1の電極410を構成する第1の金属板420、第2の金属板440、絶縁板460および絶縁板470とにより、単層カーボンナノチューブ分散液に水平方向の流れが生じるのを抑制することもできるため、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを迅速かつ効率的に分離することができる。
また、本実施形態のナノカーボンの分離方法によれば、第1の電極410の近傍にて、金属型単層カーボンナノチューブの含有量が多くなり、第2の電極40の近傍にて、半導体型単層カーボンナノチューブの含有量が多くなるため、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを安定に分離することができる。
なお、本実施形態のナノカーボンの分離方法では、単層カーボンナノチューブの混合物を、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブに分離する場合を例示したが、本実施形態のナノカーボンの分離方法はこれに限定されない。本実施形態のナノカーボンの分離方法は、例えば、分離槽20内にて、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブに分離した後、目的の性質を有する単層カーボンナノチューブのみを回収する、単層カーボンナノチューブの精製方法として行ってもよい。
また、第1の電極410を陽極、第2の電極40を陰極とした場合、第2の電極40で発生した水素の気泡を、電極管50の筒状部材41内を上昇させて、分離槽20外に放出することにより、第2の電極40で発生した水素の気泡によって分離中の単層カーボンナノチューブ分散液の対流現象が生じることを防止できる。
[第6の実施形態]
(ナノカーボン分離装置)
図8は、本実施形態のナノカーボン分離装置を示す平面図である。
なお、図8において、図1に示した第1の実施形態のナノカーボン分離装置と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態のナノカーボン分離装置500は、平面視において長方形状の分離槽(電気泳動槽)20と、分離槽20内の上部に設けられた第1の電極510と、分離槽20内にて、分離槽20の高さ方向に沿って延在する複数の電極管50と、を備える。
第1の電極510は、電極管50間を連結する第1の導電体520と第2の導電体540からなる。詳細には、第1の電極510は、等間隔に配置された複数の第1の導電体520からなる第1の導電体群530と、第1の導電体群530に斜めに交わり、等間隔に配置された複数の第2の導電体540からなる第2の導電体群550とからなる。
第1の導電体520としては、第4の実施形態における第1の導線320と同様の構成、または、第5の実施形態における第1の金属板420と同様の構成のものが用いられる。
第2の導電体540としては、第4の実施形態における第2の導線340と同様の構成、または、第5の実施形態における第2の金属板440と同様の構成のものが用いられる。
第1の電極510は、分離槽20内にて、その高さ方向の上方(分離槽20内にて、その高さの半分より上の領域、分離槽20の内底面20aとは反対側の領域)に配置されている。
本実施形態のナノカーボン分離装置500において、第1の電極510が陰極、第2の電極40が陽極である。
第1の電極510は、平面視において格子状をなす、線状または板状の電極である。第1の電極510における格子は、平面視において菱形状をなしている。また、第1の電極510は、電極管50の筒状部材41の外周に沿って設けられている。言い換えれば、第1の電極510は、第1の導電体520と第2の導電体540の交点において、第1の導電体520または第2の導電体540からなる多数の環状部560を有し、その環状部560に電極管50が挿通されている。多数の環状部560は、第1の電極510の平面視において等間隔に配置されていることが好ましい。多数の環状部560が、第1の電極510の平面視において等間隔に配置されている場合、電極管50は、第1の電極510の平面視において等間隔に配置される。
本実施形態のナノカーボン分離装置500は、第1の実施形態と同様に、分離槽20内にナノカーボンの分散液を注入する注入口(図示略)を備えていてもよい。
また、本実施形態のナノカーボン分離装置500は、第1の実施形態と同様に、分離槽20内のナノカーボンの分散液を回収する回収口(図示略)を備えていてもよい。
本実施形態のナノカーボン分離装置500は、第1の実施形態と同様に、分離槽20内の単層カーボンナノチューブ分散液の温度を一定に保つための温度調節手段を備えることが好ましい。
本実施形態のナノカーボン分離装置500では、第1の電極510が陰極、第2の電極40が陽極である場合を例示したが、本実施形態のナノカーボン分離装置500はこれに限定されない。本実施形態のナノカーボン分離装置500にあっては、第1の電極510が陽極、第2の電極40が陰極であってもよい。
本実施形態のナノカーボン分離装置500によれば、第1の電極510が、電極管50間を連結する第1の導電体520と第2の導電体540からなるため、分離槽20内において、第1の電極510が電極管50の保持部材としても機能し、分離槽20内の構造を簡略化することができる。これにより、分離槽20内において、ナノカーボンの分散液を収容する空間を充分に確保することができる。
本実施形態のナノカーボン分離装置500によれば、分離槽20内にて、分離槽20の高さ方向に沿って延在する複数の電極管50を設けることにより、例えば、後述するナノカーボンの分離方法を実施する、ナノカーボンの分散液に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、分離中に第2の電極40で発生した酸素の気泡によって、ナノカーボンの分散液の対流現象が生じることを防止できる。すなわち、ナノカーボンの分離において、分離効率を著しく妨げる、第2の電極40で発生する気泡を、電極管50を通して分離槽20外へ除去することができる。その結果、分離槽20内で電極管50の外にあるナノカーボンの分散液に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを迅速かつ効率的に分離することができる。
また、本実施形態のナノカーボン分離装置500によれば、分離槽20内にて、複数の電極管50と、第1の導電体520および第2の導電体540とにより、例えば、後述するナノカーボンの分離方法を実施する、ナノカーボンの分散液に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、複数の電極管50と、第1の導電体520および第2の導電体540とで水平方向の流れを遮ることにより、ナノカーボンの分散液に水平方向の流れが生じるのを抑制することもできるため、金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを迅速かつ効率的に分離することができる。
また、本実施形態のナノカーボン分離装置500によれば、分離槽20内の上部に第1の電極30(陰極)を設け、分離槽20内の下部に第2の電極40(陽極)を設けることにより、例えば、後述するナノカーボンの分離方法を実施する、ナノカーボンの分散液に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、第1の電極510の近傍にて、金属型ナノカーボンの含有量が多くなり、第2の電極40の近傍にて、半導体型ナノカーボンの含有量が多くなるため、金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを安定に分離することができる。
なお、第1の電極510が陽極、第2の電極40が陰極の場合には、ナノカーボンの分散液に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、第1の電極510の近傍にて、半導体型ナノカーボンの含有量が多くなり、第2の電極40の近傍にて、金属型ナノカーボンの含有量が多くなるため、金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを安定に分離することができる。
(ナノカーボンの分離方法)
図8を用いて、ナノカーボン分離装置500を用いた、ナノカーボンの分離方法を説明するとともに、ナノカーボン分離装置500の作用を説明する。
本実施形態のナノカーボンの分離方法は、第1の実施形態と同様に、分離槽20に単層カーボンナノチューブ分散液を注入する工程(注入工程)と、第1の電極510と第2の電極40に直流電圧を印加し、単層カーボンナノチューブ分散液に含まれる金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを分離する工程(分離工程)と、を有する。
注入工程にて、分離槽20に単層カーボンナノチューブ分散液を注入することにより、単層カーボンナノチューブ分散液に第1の電極510と第2の電極40が接する。本実施形態では、単層カーボンナノチューブ分散液に第1の電極510と第2の電極40を浸漬した。
本実施形態のナノカーボンの分離方法によれば、第2の電極40で発生した酸素の気泡を、電極管50の筒状部材41内を上昇させて、分離槽20外に放出することにより、第2の電極40で発生した酸素の気泡によって分離中の単層カーボンナノチューブ分散液の対流現象が生じることを防止できる。結果として、純度が高い金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを得ることができる。
また、本実施形態のナノカーボンの分離方法によれば、分離槽20内にて、複数の電極管50と、第1の導電体520および第2の導電体540とにより、単層カーボンナノチューブ分散液に水平方向の流れが生じるのを抑制することもできるため、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを迅速かつ効率的に分離することができる。
また、本実施形態のナノカーボンの分離方法によれば、第1の電極510の近傍にて、金属型単層カーボンナノチューブの含有量が多くなり、第2の電極40の近傍にて、半導体型単層カーボンナノチューブの含有量が多くなるため、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを安定に分離することができる。
なお、本実施形態のナノカーボンの分離方法では、単層カーボンナノチューブの混合物を、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブに分離する場合を例示したが、本実施形態のナノカーボンの分離方法はこれに限定されない。本実施形態のナノカーボンの分離方法は、例えば、分離槽20内にて、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブに分離した後、目的の性質を有する単層カーボンナノチューブのみを回収する、単層カーボンナノチューブの精製方法として行ってもよい。
また、第1の電極510を陽極、第2の電極40を陰極とした場合、第2の電極40で発生した水素の気泡を、電極管50の筒状部材41内を上昇させて、分離槽20外に放出することにより、第2の電極40で発生した水素の気泡によって分離中の単層カーボンナノチューブ分散液の対流現象が生じることを防止できる。
[第7の実施形態]
(ナノカーボン分離装置)
図9は、本実施形態のナノカーボン分離装置を示す平面図である。
なお、図9において、図1に示した第1の実施形態のナノカーボン分離装置と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態のナノカーボン分離装置600は、平面視にて円形状の分離槽(電気泳動槽)20と、分離槽20内の上部に設けられた第1の電極610と、分離槽20内にて、分離槽20の高さ方向に沿って延在する複数の電極管50と、を備える。
第1の電極610は、電極管50間を連結する第1の導電体620と第2の導電体640からなる。詳細には、第1の電極610は、同心円状に配置された複数の平面視円形状の第1の導電体620からなる第1の導電体群630と、第1の導電体群630に直交し、等間隔に配置された複数の平面視直線状の第2の導電体640からなる第2の導電体群650とからなる。
本実施形態のナノカーボン分離装置600では、第1の導電体620からなる円が、4本の第2の導電体640によって等間隔に、8個の領域に区画されている。
第1の導電体620としては、第2の実施形態における第4の導線320と同様の構成、または、第5の実施形態における第1の金属板420と同様の構成のものが用いられる。
第2の導電体640としては、第4の実施形態における第2の導線340と同様の構成、または、第5の実施形態における第2の金属板440と同様の構成のものが用いられる。
第1の電極610は、分離槽20内にて、その高さ方向の上方(分離槽20内にて、その高さの半分より上の領域、分離槽20の内底面20aとは反対側の領域)に配置されている。
本実施形態のナノカーボン分離装置600において、第1の電極610が陰極、第2の電極40が陽極である。
第1の電極610は、平面視において格子状をなす、線状または板状の電極である。第1の電極610における格子は、平面視において扇状をなしている。また、第1の電極610は、電極管50の筒状部材41の外周に沿って設けられている。言い換えれば、第1の電極610は、第1の導電体620と第2の導電体640の交点において、第1の導電体620または第2の導電体640からなる多数の環状部660を有し、その環状部660に電極管50が挿通されている。多数の環状部660は、第1の電極510の平面視において等間隔に配置されていることが好ましい。多数の環状部660が、第1の電極510の平面視において等間隔に配置されている場合、電極管50は、第1の電極510の平面視において等間隔に配置される。
本実施形態のナノカーボン分離装置600は、第1の実施形態と同様に、分離槽20内にナノカーボンの分散液を注入する注入口(図示略)を備えていてもよい。
また、本実施形態のナノカーボン分離装置600は、第1の実施形態と同様に、分離槽20内のナノカーボンの分散液を回収する回収口(図示略)を備えていてもよい。
本実施形態のナノカーボン分離装置600は、第1の実施形態と同様に、分離槽20内のナノカーボンの分散液の温度を一定に保つための温度調節手段を備えることが好ましい。
本実施形態のナノカーボン分離装置600では、第1の電極610が陰極、第2の電極40が陽極である場合を例示したが、本実施形態のナノカーボン分離装置600はこれに限定されない。本実施形態のナノカーボン分離装置600にあっては、第1の電極610が陽極、第2の電極40が陰極であってもよい。
本実施形態のナノカーボン分離装置600によれば、第1の電極610が平面視において格子状をなし、電極管50の外周に沿って設けられているため、分離槽20内において、第1の電極610が電極管50の保持部材としても機能し、分離槽20内の構造を簡略化することができる。これにより、分離槽20内において、ナノカーボンの分散液を収容する空間を充分に確保することができる。
本実施形態のナノカーボン分離装置600によれば、分離槽20内にて、分離槽20の高さ方向に沿って延在する複数の電極管50を設けることにより、例えば、後述するナノカーボンの分離方法を実施する、ナノカーボンの分散液に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、分離中に第2の電極40で発生した酸素の気泡によって、ナノカーボンの分散液の対流現象が生じることを防止できる。すなわち、ナノカーボンの分離において、分離効率を著しく妨げる、第2の電極40で発生する気泡を、電極管50を通して分離槽20外へ除去することができる。その結果、分離槽20内で電極管50の外にあるナノカーボンの分散液に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを迅速かつ効率的に分離することができる。
また、本実施形態のナノカーボン分離装置600によれば、分離槽20内にて、複数の電極管50と、第1の導電体620および第2の導電体640とにより、例えば、後述するナノカーボンの分離方法を実施する、ナノカーボンの分散液に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、複数の電極管50と、第1の導電体620および第2の導電体640とで水平方向の流れを遮ることにより、ナノカーボンの分散液に水平方向の流れが生じるのを抑制することもできるため、金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを迅速かつ効率的に分離することができる。
また、本実施形態のナノカーボン分離装置600によれば、分離槽20内の上部に第1の電極610(陰極)を設け、分離槽20内の下部に第2の電極40(陽極)を設けることにより、例えば、後述するナノカーボンの分離方法を実施する、ナノカーボンの分散液に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、第1の電極610の近傍にて、金属型ナノカーボンの含有量が多くなり、第2の電極40の近傍にて、半導体型ナノカーボンの含有量が多くなるため、金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを安定に分離することができる。
なお、第1の電極610が陽極、第2の電極40が陰極の場合には、ナノカーボンの分散液に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、第1の電極610の近傍にて、半導体型ナノカーボンの含有量が多くなり、第2の電極40の近傍にて、金属型ナノカーボンの含有量が多くなるため、金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを安定に分離することができる。
(ナノカーボンの分離方法)
図9を用いて、ナノカーボン分離装置600を用いた、ナノカーボンの分離方法を説明するとともに、ナノカーボン分離装置600の作用を説明する。
本実施形態のナノカーボンの分離方法は、第1の実施形態と同様に、分離槽20に単層カーボンナノチューブ分散液を注入する工程(注入工程)と、第1の電極610と第2の電極40に直流電圧を印加し、単層カーボンナノチューブ分散液に含まれる金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを分離する工程(分離工程)と、を有する。
注入工程にて、分離槽20に単層カーボンナノチューブ分散液を注入することにより、単層カーボンナノチューブ分散液に第1の電極610と第2の電極40が接する。本実施形態では、単層カーボンナノチューブ分散液に第1の電極610と第2の電極40を浸漬した。
本実施形態のナノカーボンの分離方法によれば、第2の電極40で発生した酸素の気泡を、電極管50の筒状部材41内を上昇させて、分離槽20外に放出することにより、第2の電極40で発生した、分離効率を著しく妨げる酸素の気泡によって分離中の単層カーボンナノチューブ分散液の対流現象が生じることを防止できる。結果として、純度が高い金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを得ることができる。
また、本実施形態のナノカーボンの分離方法によれば、分離槽20内にて、複数の電極管50と、第1の導電体620および第2の導電体640とにより、単層カーボンナノチューブ分散液に水平方向の流れが生じるのを抑制することもできるため、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを迅速かつ効率的に分離することができる。
また、本実施形態のナノカーボンの分離方法によれば、第1の電極610の近傍にて、金属型単層カーボンナノチューブの含有量が多くなり、第2の電極40の近傍にて、半導体型単層カーボンナノチューブの含有量が多くなるため、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを安定に分離することができる。
なお、本実施形態のナノカーボンの分離方法では、単層カーボンナノチューブの混合物を、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブに分離する場合を例示したが、本実施形態のナノカーボンの分離方法はこれに限定されない。本実施形態のナノカーボンの分離方法は、例えば、分離槽20内にて、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブに分離した後、目的の性質を有する単層カーボンナノチューブのみを回収する、単層カーボンナノチューブの精製方法として行ってもよい。
また、第1の電極610を陽極、第2の電極40を陰極とした場合、第2の電極40で発生した水素の気泡を、電極管50の筒状部材41内を上昇させて、分離槽20外に放出することにより、第2の電極40で発生した水素の気泡によって分離中の単層カーボンナノチューブ分散液の対流現象が生じることを防止できる。
[第8の実施形態]
(ナノカーボン分離装置)
図10は、本実施形態のナノカーボン分離装置を示す平面図である。
なお、図10において、図1に示した第1の実施形態のナノカーボン分離装置と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態のナノカーボン分離装置700は、平面視長方形状の分離槽(電気泳動槽)20と、分離槽20内の上部に設けられた第1の電極710と、分離槽20内にて、分離槽20の高さ方向に沿って延在する複数の電極管50と、を備える。
第1の電極710は、複数の電極管50の間に配置され、電極管50を保持している。本実施形態のナノカーボン分離装置700では、第1の電極710は、平面視において長方形状をなす、網目状の電極である。また、第1の電極710は、その厚さ方向に貫通する多数の貫通穴720を有する。多数の貫通穴720は、第1の電極710の平面視において等間隔に配置されていることが好ましい。第1の電極710の貫通穴720には、電極管50が挿通されている。これにより、分離槽20内に、第2の電極40を有する電極管50が配置される。また、多数の貫通穴720が、第1の電極710の平面視において等間隔に配置されている場合、電極管50は、第1の電極710の平面視において等間隔に配置される。
第1の電極710は、分離槽20内にて、その高さ方向の上方(分離槽20内にて、その高さの半分より上の領域、分離槽20の内底面20aとは反対側の領域)に配置されている。
本実施形態のナノカーボン分離装置700において、第1の電極710が陰極、第2の電極40が陽極である。
第1の電極710としては、無担体電気泳動法に用いることができ、ナノカーボンの分散液に対して安定なものであれば特に限定されない。第1の電極710としては、例えば、白金電極等が挙げられる。
本実施形態のナノカーボン分離装置700は、第1の実施形態と同様に、分離槽20内にナノカーボンの分散液を注入する注入口(図示略)を備えていてもよい。
また、本実施形態のナノカーボン分離装置700は、第1の実施形態と同様に、分離槽20内のナノカーボンの分散液を回収する回収口(図示略)を備えていてもよい。
本実施形態のナノカーボン分離装置700は、第1の実施形態と同様に、分離槽20内のナノカーボンの分散液の温度を一定に保つための温度調節手段を備えることが好ましい。
本実施形態のナノカーボン分離装置700では、第1の電極710が陰極、第2の電極40が陽極である場合を例示したが、本実施形態のナノカーボン分離装置700はこれに限定されない。本実施形態のナノカーボン分離装置700にあっては、第1の電極710が陽極、第2の電極40が陰極であってもよい。
本実施形態のナノカーボン分離装置700によれば、第1の電極710が網目状の電極をなし、電極管50の外周に沿って設けられているため、分離槽20内において、第1の電極710が電極管50の保持部材としても機能し、分離槽20内の構造を簡略化することができる。これにより、分離槽20内において、ナノカーボンの分散液を収容する空間を充分に確保することができる。
また、本実施形態のナノカーボン分離装置700によれば、分離槽20内にて、分離槽20の高さ方向に沿って延在する複数の電極管50を設けることにより、例えば、後述するナノカーボンの分離方法を実施する、ナノカーボンの分散液に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、分離中に第2の電極40で発生した酸素の気泡によって、ナノカーボンの分散液の対流現象が生じることを防止できる。すなわち、ナノカーボンの分離において、分離効率を著しく妨げる、第2の電極40で発生する気泡を、電極管50を通して分離槽20外へ除去することができる。その結果、分離槽20内で電極管50の外にあるナノカーボンの分散液に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを迅速かつ効率的に分離することができる。
また、本実施形態のナノカーボン分離装置700によれば、分離槽20内にて、分離槽20の高さ方向に沿って延在する複数の電極管50を設けることにより、例えば、後述するナノカーボンの分離方法を実施する、ナノカーボンの分散液に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、複数の電極管50で水平方向の流れを遮ることにより、ナノカーボンの分散液に水平方向の流れが生じるのを抑制することもできるため、金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを迅速かつ効率的に分離することができる。
また、本実施形態のナノカーボン分離装置700によれば、分離槽20内の上部に第1の電極710(陰極)を設け、分離槽20内の下部に第2の電極40(陽極)を設けることにより、例えば、後述するナノカーボンの分離方法を実施する、ナノカーボンの分散液に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、第1の電極710の近傍にて、金属型ナノカーボンの含有量が多くなり、第2の電極40の近傍にて、半導体型ナノカーボンの含有量が多くなるため、金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを安定に分離することができる。
なお、第1の電極710が陽極、第2の電極40が陰極の場合には、ナノカーボンの分散液に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、第1の電極710の近傍にて、半導体型ナノカーボンの含有量が多くなり、第2の電極40の近傍にて、金属型ナノカーボンの含有量が多くなるため、金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを安定に分離することができる。
(ナノカーボンの分離方法)
図10を用いて、ナノカーボン分離装置700を用いた、ナノカーボンの分離方法を説明するとともに、ナノカーボン分離装置700の作用を説明する。
本実施形態のナノカーボンの分離方法は、第1の実施形態と同様に、分離槽20に単層カーボンナノチューブ分散液を注入する工程(注入工程)と、第1の電極710と第2の電極40に直流電圧を印加し、単層カーボンナノチューブ分散液に含まれる金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを分離する工程(分離工程)と、を有する。
注入工程にて、分離槽20に単層カーボンナノチューブ分散液を注入することにより、単層カーボンナノチューブ分散液に第1の電極710と第2の電極40が接する。本実施形態では、単層カーボンナノチューブ分散液に第1の電極710と第2の電極40を浸漬した。
本実施形態のナノカーボンの分離方法によれば、第2の電極40で発生した酸素の気泡を、電極管50の筒状部材41内を上昇させて、分離槽20外に放出することにより、第2の電極40で発生した、分離効率を著しく妨げる酸素の気泡によって分離中の単層カーボンナノチューブ分散液の対流現象が生じることを防止できる。結果として、純度が高い金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを得ることができる。
また、本実施形態のナノカーボンの分離方法によれば、分離槽20内にて、複数の電極管50により、単層カーボンナノチューブ分散液に水平方向の流れが生じるのを抑制することもできるため、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを迅速かつ効率的に分離することができる。
また、本実施形態のナノカーボンの分離方法によれば、第1の電極710の近傍にて、金属型単層カーボンナノチューブの含有量が多くなり、第2の電極40の近傍にて、半導体型単層カーボンナノチューブの含有量が多くなるため、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを安定に分離することができる。
なお、本実施形態のナノカーボンの分離方法では、単層カーボンナノチューブの混合物を、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブに分離する場合を例示したが、本実施形態のナノカーボンの分離方法はこれに限定されない。本実施形態のナノカーボンの分離方法は、例えば、分離槽20内にて、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブに分離した後、目的の性質を有する単層カーボンナノチューブのみを回収する、単層カーボンナノチューブの精製方法として行ってもよい。
また、第1の電極710を陽極、第2の電極40を陰極とした場合、第2の電極40で発生した水素の気泡を、電極管50の筒状部材41内を上昇させて、分離槽20外に放出することにより、第2の電極40で発生した水素の気泡によって分離中の単層カーボンナノチューブ分散液の対流現象が生じることを防止できる。
[第9の実施形態]
(ナノカーボン分離装置、電極管)
図11は、本実施形態のナノカーボン分離装置を示す斜視図である。図12Aは、本実施形態のナノカーボン分離装置を構成する電極管を示す斜視図である。図12Bは、本実施形態のナノカーボン分離装置を構成する電極管を示す断面図である。
なお、図11において、図1に示した第1の実施形態のナノカーボン分離装置と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図12Aおよび図12Bにおいて、図2Aおよび図2Bに示した第1の実施形態のナノカーボン分離装置における電極管と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態のナノカーボン分離装置800は、分離槽(電気泳動槽)20と、分離槽20内の上部に設けられた第1の電極30と、分離槽20内の下部に設けられた第2の電極40と、分離槽20内にて、分離槽20の高さ方向に沿って延在する複数の電極管50と、を備える。
本実施形態のナノカーボン分離装置800において、例えば、第1の電極30が陰極、第2の電極40が陽極である。この場合、第1の電極30と第2の電極40に直流電圧を印加すると、電界の向きが分離槽20の下方から上方へ向かう。
第1の電極30は、第2の実施形態と同様の構造を有する。
図12Aおよび図12Bに示すように、筒状部材41の一端部、すなわち、筒状部材41の分離槽20の内底面20a側に配置される端部(下端部)41Aが、先端(分離槽20の内底面20a側)に向かって次第に径が拡がるテーパ形状をなしている。筒状部材41およびその下端部41Aの形状は角が少ない構造になっており、第2の電極である40から発生する気泡が滞留し難い。
柱状部材42における、筒状部材41の一端部側、すなわち、筒状部材41の下端部41Aに配置される、先端部材44は、先端(分離槽20の内底面20a側)に向かって次第に径が拡がるテーパ形状をなしている。
先端部材44の先端(分離槽20の内底面20aと対向する部分)44bは、図12Bに示すように、円錐状をなしていることが好ましい。このようにすれば、第2の電極40で気泡が発生したとしても、先端部材44の先端44bに気泡が滞留することなく筒状部材41内へ移動する。これにより、気泡を、電極管50の筒状部材41内を通じて、分離槽20外へ排出することができる。
本実施形態のナノカーボン分離装置800は、第1の実施形態と同様に、分離槽20内にナノカーボンの分散液80を注入する注入口(図示略)を備えていてもよい。
また、本実施形態のナノカーボン分離装置800は、第1の実施形態と同様に、分離槽20内のナノカーボンの分散液80を回収する回収口(図示略)を備えていてもよい。
本実施形態のナノカーボン分離装置800は、第1の実施形態と同様に、分離槽20内のナノカーボンの分散液80の温度を一定に保つための温度調節手段を備えることが好ましい。
本実施形態のナノカーボン分離装置800では、第1の電極30が陰極、第2の電極40が陽極である場合を例示したが、本実施形態のナノカーボン分離装置800はこれに限定されない。本実施形態のナノカーボン分離装置800にあっては、第1の電極30が陽極、第2の電極40が陰極であってもよい。
本実施形態のナノカーボン分離装置800によれば、分離槽20内にて、分離槽20の高さ方向に沿って延在する複数の電極管50を設けることにより、例えば、後述するナノカーボンの分離方法を実施する、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、分離中に第2の電極40で発生した酸素の気泡によって、ナノカーボンの分散液80の対流現象が生じることを防止できる。すなわち、ナノカーボンの分離において、分離効率を著しく妨げる、第2の電極40で発生する気泡を、電極管50を通して分離槽20外へ除去することができる。その結果、分離槽20内で電極管50の外にあるナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを迅速かつ効率的に分離することができる。
また、本実施形態のナノカーボン分離装置800によれば、分離槽20内にて、分離槽20の高さ方向に沿って延在する複数の電極管50を設けることにより、例えば、後述するナノカーボンの分離方法を実施する、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、複数の電極管50で水平方向の流れを遮ることにより、ナノカーボンの分散液80に水平方向の流れが生じるのを抑制することもできるため、金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを迅速かつ効率的に分離することができる。
また、本実施形態のナノカーボン分離装置800によれば、分離槽20内の上部に第1の電極30(陰極)を設け、分離槽20内の下部に第2の電極40(陽極)を設けることにより、例えば、後述するナノカーボンの分離方法を実施する、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、第1の電極30の近傍にて、金属型ナノカーボンの含有量が多くなり、第2の電極40の近傍にて、半導体型ナノカーボンの含有量が多くなるため、金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを安定に分離することができる。
なお、第1の電極30が陽極、第2の電極40が陰極の場合には、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程において、第1の電極30の近傍にて、半導体型ナノカーボンの含有量が多くなり、第2の電極40の近傍にて、金属型ナノカーボンの含有量が多くなるため、金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを安定に分離することができる。
なお、本実形態における電極管50は、上述の第1の実施形態〜第8の実施形態および後述する第11の実施形態にも適用することができる。
(ナノカーボンの分離方法)
図11、図12Aおよび図12Bを用いて、ナノカーボン分離装置800を用いた、ナノカーボンの分離方法を説明するとともに、ナノカーボン分離装置800の作用を説明する。
本実施形態のナノカーボンの分離方法は、第1の実施形態と同様に、分離槽20にナノカーボンの分散液80を注入する工程(注入工程)と、第1の電極30と第2の電極40に直流電圧を印加し、ナノカーボンの分散液80に含まれる金属型ナノカーボンと半導体型ナノカーボンを分離する工程(分離工程)と、を有する。
注入工程にて、分離槽20にナノカーボンの分散液80を注入することにより、ナノカーボンの分散液80に第1の電極710と第2の電極40が接する。本実施形態では、ナノカーボンの分散液80に第1の電極710と第2の電極40を浸漬した。
本実施形態のナノカーボンの分離方法によれば、第2の電極40で発生した酸素の気泡を、電極管50の筒状部材41内を上昇させて、分離槽20外に放出することにより、第2の電極40で発生した酸素の気泡によって分離中の単層カーボンナノチューブ分散液の対流現象が生じることを防止できる。結果として、純度が高い金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを得ることができる。
また、本実施形態のナノカーボンの分離方法によれば、分離槽20内にて、複数の電極管50により、単層カーボンナノチューブ分散液80に水平方向の流れが生じるのを抑制することもできるため、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを迅速かつ効率的に分離することができる。
また、本実施形態のナノカーボンの分離方法によれば、第1の電極30の近傍にて、金属型単層カーボンナノチューブの含有量が多くなり、第2の電極40の近傍にて、半導体型単層カーボンナノチューブの含有量が多くなるため、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブを安定に分離することができる。
なお、本実施形態のナノカーボンの分離方法では、単層カーボンナノチューブの混合物を、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブに分離する場合を例示したが、本実施形態のナノカーボンの分離方法はこれに限定されない。本実施形態のナノカーボンの分離方法は、例えば、分離槽20内にて、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブに分離した後、目的の性質を有する単層カーボンナノチューブのみを回収する、単層カーボンナノチューブの精製方法として行ってもよい。
また、第1の電極30を陽極、第2の電極40を陰極とした場合、第2の電極40で発生した水素の気泡を、電極管50の筒状部材41内を上昇させて、分離槽20外に放出することにより、第2の電極40で発生した水素の気泡によって分離中の単層カーボンナノチューブ分散液80の対流現象が生じることを防止できる。
[第10の実施形態]
(電極管の変形例)
図13Aは、本実施形態の電極管を示す斜視図である。図13Bは、本実施形態の電極管を示す断面図である。
なお、図13Aおよび図13Bにおいて、図2Aおよび図2Bに示した第1の実施形態のナノカーボン分離装置における電極管と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図12Aおよび図12Bに示すように、筒状部材41の下端部41Aの内側面41aが、先端に向かって次第に径が拡がるテーパ形状をなしている。筒状部材41およびその下端部41Aの形状は角が少ない構造になっており、第2の電極である40から発生する気泡が滞留し難い。
本実施形態の電極管50は、筒状部材41の下端部41Aの内側面41aのみがテーパ形状をなしているため、第9の実施形態における電極管50のように筒状部材41の下端部41A全体をテーパ形状とするよりも容易に作製することができる。
本実形態における電極管50は、上述の第1の実施形態〜第8の実施形態および後述する第11の実施形態にも適用することができる。
[第11の実施形態]
(ナノカーボンの分離方法)
図14を用いて、ナノカーボン分離装置10を用いた、ナノカーボンの分離方法を説明する。
まず、水と、非イオン性界面活性剤を溶解した水溶液に単層カーボンナノチューブの混合物を分散させた単層カーボンナノチューブ分散液と、非イオン性界面活性剤の含有量が2wt%の水溶液を調製する。
次いで、例えば、分離槽20の下端に設けられた注入/回収口(図示略)から分離槽20内へ、ペリスタポンプ等を用いて水を静かに注入する。
次いで、同様に、分離槽20内へ、単層カーボンナノチューブ分散液を注入する。
次いで、同様に、分離槽20内へ、非イオン性界面活性剤の含有量が2wt%の水溶液を注入する。
これにより、図14に示すように、第1の電極30に接する領域は水、第2の電極40に接する領域は2wt%の水溶液、中間の領域は単層カーボンナノチューブ分散液である、3層の溶液の積層構造を形成した。
このとき、第1の電極30は水のみに接し、第2の電極40は2wt%の水溶液のみに接している。また、第1の電極30および第2の電極40は単層カーボンナノチューブ分散液に接していない。
以下、第1の実施形態と同様にして、単層カーボンナノチューブ分散液に含まれる単層カーボンナノチューブの混合物を、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブに分離する。
本実施形態のナノカーボンの分離方法によれば、分離槽20内において界面活性剤の移動を少なくでき、分離効率の向上に効果がある。
本実施形態のナノカーボンの分離方法は、上述の第1〜第10の実施形態にも適用できる。
以上、単層カーボンナノチューブの混合物を、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブに分離する場合に適用することができる実施形態を説明したが、多層カーボンナノチューブの混合物、二層カーボンナノチューブの混合物、グラフェンの混合物等を分離する場合にも、本発明を適用することができる。