JP6954062B2 - 電動車両の制御方法、及び、制御装置 - Google Patents

電動車両の制御方法、及び、制御装置 Download PDF

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Description

本発明は、電動車両の制御方法、及び、制御装置に関する。
従来、フィードフォワード(F/F)補償器とフィードバック(F/B)補償器とを用いたフィードフォワード、フィードバック制御系によりモータトルク指令値を算出することで、ドライブシャフトのねじりに起因した振動を除去する機能を有する電動車両の制振制御装置が知られている。
特開2003−9566号公報
ここで、特許文献1に開示された制振制御装置のフィードバック制御系では、モータトルクから制御対象のモータ回転角速度への伝達特性をモデル化した車両モデルを用いてモータ回転角速度を推定し、モータ回転角速度の推定値と検出値の偏差に基づいてフィードバックトルクを算出している。
しかしながら、上記車両モデルは、一つのモータで2輪駆する車両を前提として設計されているため、左右駆動輪においてそれぞれ独立したモータを駆動源として有している場合に左右のモータからの制駆動力(制駆動力)が別個に入力されると、上記車両モデルにより算出されたモータ回転角速度推定値と実際のモータ回転角速度とが乖離してしまう。このため、当該乖離を補償するために、上述のF/B補償器から必要以上の振動抑制補償値が出力されてしまい、ドライバの意図した加減速(アクセル操作、ブレーキ操作(回生協調等を含む))を得ることができない場合がある。
本発明は、左右の駆動輪がそれぞれ備えるモータから制駆動力が別個に入力された場合でも、モータ回転角速度推定値と実際のモータ回転角速度とを一致させて、F/B補償器から余分な振動抑制補償値が出力されるのを抑制することを目的とする。
本発明の一態様における車両の制御方法は、車両情報に基づいてモータトルク指令値を設定し、駆動輪につながるモータのトルクを制御する電動車両の制御方法である。この電動車両の制御方法は、左右の駆動輪がモータをそれぞれ別個に備え、モータトルク指令値に基づいて複数の前記モータそれぞれに対する目標トルク指令値算出し、モータの回転角速度を検出する。そして、目標トルク指令値を入力とし、電動車両の駆動力伝達系の捻り振動を抑制する制振制御を施した最終トルク指令値を算出する制振制御をモータのそれぞれに実行する。制振制御では、目標トルク指令値に基づくフィードフォワード演算により第1のトルク指令値を算出し、第1のトルク指令値に基づいて、モータに対するトルク指令値の入力からモータの回転角速度までの伝達特性を模擬した車両モデルを用いてモータの回転角速度を推定し、車両モデルの逆特性と、車両のねじり振動周波数近傍の周波数を中心周波数とするバンドパスフィルタとで構成されるフィルタを用いて、モータの回転角速度の検出値と推定値との偏差から第2のトルク指令値を算出し、第1のトルク指令値と第2のトルク指令値とを加算して得られる最終トルク指令値に従ってモータのトルクを制御し、一方の前記駆動輪につながるモータを第1モータとし、他方の駆動輪につながるモータを第2モータとした場合に第2モータの制駆動トルクが車両に入力された際には、第2モータの制駆動トルクの入力から第1モータの回転角速度までの伝達関数のフィルタを用いて第1モータの回転角速度の推定値を補正する。
本発明の一態様における車両の制御方法は、車両情報に基づいてモータトルク指令値を設定し、駆動輪につながるモータのトルクを制御する電動車両の制御方法である。この電動車両の制御方法は、左右の駆動輪がモータをそれぞれ別個に備え、モータトルク指令値に基づいて複数の前記モータそれぞれに対する目標トルク指令値算出し、モータの回転角速度を検出する。そして、目標トルク指令値を入力とし、電動車両の駆動力伝達系の捻り振動を抑制する制振制御を施した最終トルク指令値を算出する制振制御をモータのそれぞれに実行する。制振制御では、目標トルク指令値に基づくフィードフォワード演算により第1のトルク指令値を算出し、第1のトルク指令値に基づいて、モータに対するトルク指令値の入力からモータの回転角速度までの伝達特性を模擬した第1車両モデルを用いてモータの回転角速度を推定し、車両モデルの逆特性と、車両のねじり振動周波数近傍の周波数を中心周波数とするバンドパスフィルタとで構成されるフィルタを用いて、モータの回転角速度の検出値と推定値との偏差から第2のトルク指令値を算出し、第1のトルク指令値と第2のトルク指令値とを加算して得られる最終トルク指令値に従ってモータのトルクを制御し、一方の前記駆動輪につながるモータを第1モータとし、他方の駆動輪につながるモータを第2モータとした場合に、第2モータに対する第1トルク指令値から第1モータの回転角速度までの伝達特性を模擬した第2車両モデルを用いて、第1モータの回転角速度の推定値を補正する。
図1は、本発明の制御装置が適用される電動車両のシステム構成(システム構成1)を示すブロック図である。 図2は、本発明の制御装置が適用される電動車両のシステム構成(システム構成2)を示すブロック図である。 図3は、本発明の制御装置が適用される電動車両のシステム構成(システム構成3)を示すブロック図である。 図4は、電動モータコントローラによって行われる処理の流れを示すフローチャートである。 図5は、アクセル開度−トルクテーブルの一例を示す図である。 図6は、前後左右駆動力分配処理を説明するための図である。 図7は、左右駆動力分配処理を説明するための図である。 図8は、左右駆動輪において独立したモータを有する車両の運動方程式を説明する図である。 図9は、第1実施形態のシステム構成3における制振制御演算処理を実現するブロック構成図である。 図10は、第1実施形態のシステム構成3における制振制御演算処理で用いる車両モデルの一例を示すブロック構成図である。 図11は、右の駆動モータのF/F補償器を示すブロック構成図である。 図12は、左の駆動モータのF/F補償器を示すブロック構成図である。 図13は、左右の駆動モータのF/F補償器を示すブロック構成図である。 図14は、第1実施形態のシステム構成1における制振制御演算処理を実現するブロック構成図である。 図15は、第1実施形態のシステム構成1における制振制御演算処理で用いる車両モデルの一例を示すブロック構成図である。 図16は、第1、第2実施形態の制御装置をシステム構成3の電動車両に適用した際の制御結果の一例と、従来例に係る制御結果とを示したタイムチャートである。 図17は、第1、第2実施形態の制御装置をシステム構成1の電動車両に適用した際の制御結果の一例と、従来例に係る制御結果とを示したタイムチャートである。 図18は、一つのモータを有する車両の運動方程式を説明する図である。 図19は、第2実施形態のシステム構成3における制振制御演算処理を実現するブロック構成図である。 図20は、第2実施形態のシステム構成3における制振制御演算処理で用いる車両モデルの一例を示すブロック構成図である。 図21は、第2実施形態のシステム構成1における制振制御演算処理を実現するブロック構成図である。 図22は、第2実施形態のシステム構成1における制振制御演算処理で用いる車両モデルの一例を示すブロック構成図である。
最初に、本発明にかかる電動車両の制御方法が適用される車両のシステム構成(システム構成1、システム構成2、およびシステム構成3)について説明する。
〈システム構成1〉
図1は、本発明の制御方法が適用される電動車両の主要なシステム構成(システム構成1)を示すブロック図である。システム構成1に係る電動車両は、合計4つの駆動モータを備えた4WD車両である。より詳細には、当該車両は、左右のフロント駆動輪9fa、9fb、および、左右のリア駆動輪9ra、9rbが駆動源としての電動モータ4fa、fb、ra、rbをそれぞれ独立して有している。なお、電動車両とは、車両の駆動源の一部または全部として、少なくとも一つの電動モータ(以下単にモータともいう)を備え、電動モータの駆動力により走行可能な自動車のことであり、電気自動車や、ハイブリッド自動車が含まれる。
バッテリ1は、各電動モータ4fa、fb、ra、rbの駆動電力の放電、および、電動モータ4fa、fb、ra、rbの回生電力の充電を行う。なお、以下では各電動モータ4fa、fb、ra、rbをまとめて、単に「各電動モータ4」とも称する。
電動モータコントローラ2は、例えば、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、および、入出力インタフェース(I/Oインタフェース)から構成される。電動モータコントローラ2には、車速V、アクセル開度θ、各電動モータ4のそれぞれの回転子位相α(αfa、αfb、αra、αrb)、各電動モータ4のそれぞれの実電流(三相交流の場合は、iu、iv、iw)、制駆動力指令値等の車両状態を示す各種車両変数の信号がデジタル信号として入力される。電動モータコントローラ2は、入力された信号に基づいて各電動モータ4を制御するためのPWM信号を生成する。また、生成したPWM信号に応じて各インバータ3(3fa、3fb、3ra、3rb)の駆動信号を生成する。なお、前述の制駆動力指令値は、ブレーキやエンジン出力など、システム構成1のモータ4以外に車両に作用する制駆動力(制駆動トルク)を指示する制駆動力指令値、または、例えばブレーキ圧センサなどのセンサにより検出される計測値等が使用されても良い。
インバータ3(3fa、3fb、3ra、3rb)は、相ごとに備えられた2個のスイッチング素子(例えば、IGBTやMOS−FET等のパワー半導体素子)をオン/オフすることにより、バッテリ1から供給される直流の電流を交流に変換あるいは逆変換し、各インバータ3にそれぞれつながる電動モータ4に所望の電流を流す。
各電動モータ4(三相交流モータ)は、各インバータ3から供給される交流電流により駆動力を発生し、各減速機5(5fa、5fb、5ra、5rb)および各駆動軸8(8fa、8fb、8ra、8rb)を介して、左右の駆動輪9(9fa、9fb、9ra、9rb)それぞれに駆動力を伝達する。また、電動モータ4は、車両の走行時に左右の各駆動輪9fa、9fb、9ra、9rbに連れ回されて回転するときに、回生駆動力を発生させることで、車両の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する。この場合、各インバータ3は、電動モータ4の回生運転時に発生する交流電流を直流電流に変換して、バッテリ1に供給する。
電流センサ7f、7rは、各電動モータ4に流れる3相交流電流iu、iv、iwを検出する。ただし、3相交流電流iu、iv、iwの和は0であるため、任意の2相の電流を検出して、残りの1相の電流は演算により求めてもよい。
回転センサ6(6fa、6fb、6ra、6rb)は、例えば、レゾルバやエンコーダであり、各電動モータ4それぞれの回転子位相αを検出する。
〈システム構成2〉
図2は、本発明にかかる制御装置が適用される電動車両であって、前述のシステム構成1を備える電動車両とは異なる電動車両の所要なシステム構成(システム構成2)を示すブロック図である。
システム構成2がシステム構成1と異なる主な点は、車両のフロントの構成が、左右の駆動輪9fa、9fbを一つのモータ(電動モータ4f)によって駆動するように構成されていることである。すなわち、システム構成2に係る電動車両は、合計3つの駆動モータを備えた4WD車両である。システム構成2に係る電動車両は、左右のリア駆動輪9ra、9rbが駆動源としての電動モータ4ra、rbをそれぞれ独立して有し、左右のフロント駆動輪9fa、9fbが共通の駆動源としての電動モータ4fを有している。
〈システム構成3〉
図3は、本発明にかかる制御装置が適用される電動車両であって、前述のシステム構成1を備える電動車両とは異なる電動車両の所要なシステム構成(システム構成3)を示すブロック図である。
システム構成3がシステム構成1、および2と異なる主な点は、車両のフロントには駆動モータを備えていないことである。すなわち、システム構成3に係る電動車両は、左右のリア駆動輪9ra、9rbが駆動源としての電動モータ4ra、rbをそれぞれ独立して有する電動車両であって、合計2つの駆動モータを備えた2WD車両である。
以上が、本実施形形態の電動車両の制御装置が適用される電動車両のシステム構成1、2、および3の概要である。以下では、このようなシステム構成を有する電動車両に適用される本実施系形態の制御方法について説明する。
図4は、電動モータコントローラ2によって行われる処理の流れを示すフローチャートである。電動モータコントローラ2には、ステップS201からステップS205に係る処理が、車両システムが起動している間、一定の間隔で常時実行されるようにプログラムされている。なお、以下の説明において説明する構成および検出値等は、一つの値のみが示されている場合であっても、各システム構成1、2、および3が備える構成数に準じるものとする。例えば、以下における電動モータ4の「回転子位相α(rad)」の記載は、システム構成1に適用する場合は「回転子位相α(αfa、αfb、αra、αrb)」を示し、システム構成2に適用する場合は「回転子位相α(αf、αra、αrb)」を示し、システム構成3に適用する場合は「回転子位相α(αra、αrb)」を示すものとする。
ステップS201では、車両状態を示す信号が電動モータコントローラ2に入力される。ここでは、車速V(km/h)、アクセル開度θ(%)、電動モータ4の回転子位相α(rad)、電動モータ4の回転速度Nm(rpm)、電動モータ4に流れる三相交流電流iu、iv、iw、バッテリ1の直流電圧値Vdc(V)が入力される。
車速V(km/h)は、図示しない車速センサや、他のコントローラより通信にて取得される。または、電動モータコントローラ2は、回転子機械角速度ωmにタイヤ動半径rを乗算し、ファイナルギヤのギヤ比で除算することにより車速v(m/s)を求め、3600/1000を乗算することで単位変換して、車速V(km/h)を求める。
電動モータコントローラ2は、アクセル開度θ(%)を、図示しないアクセル開度センサから取得する。なお、アクセル開度θ(%)は、図示しない車両コントローラ等の他のコントローラから取得するようにしても良い。
電動モータ4の回転子位相α(rad)は、回転センサ6から取得される。電動モータ4の回転速度Nm(rpm)は、回転子角速度ω(電気角)を電動モータの極対数pで除算して、電動モータ4の機械的な角速度であるモータ回転速度ωm(rad/s)を求め、求めたモータ回転速度ωmに60/(2π)を乗算することによって求められる。回転子角速度ωは、回転子位相αを微分することによって求められる。
電動モータ4に流れる電流iu、iv、iw(A)は、電流センサ7から取得される。
直流電流値Vdc(V)は、バッテリ1とインバータ3間の直流電源ラインに設けられた電圧センサ(不図示)により検出する。なお、直流電圧値Vdc(V)は、バッテリコントローラ(不図示)から送信される信号により検出するようにしてもよい。
ステップS202では、電動モータコントローラ2が、車両情報に基づいて、ドライバが要求する基本目標トルクとしてのトルク指令値Tmを設定する。具体的には、電動モータコントローラ2は、ステップS201で入力されたアクセル開度θ及び車速Vに基づいて、図5に示すアクセル開度−トルクテーブルを参照することにより、トルク指令値Tmを設定する。
次に、システム構成1においては、フロントおよびリア(前後)の駆動力の配分を設定する。
図6は、システム構成1において前後駆動力配分処理を説明するための図である。図中のKfは、ドライバ要求トルクとしてのトルク指令値Tm*に応じて出力する駆動力を、フロント駆動モータ4fa、fbと、リア駆動モータ4ra、rbとに分配するための値であって、0〜1の間の値に設定される。電動モータコントローラ2は、トルク指令値Tm*に、0〜1の間の値に設定されるKfを乗じることにより、フロント駆動システムへのフロント目標トルク指令値Tm1*を算出する。同時に、電動モータコントローラ2frは、トルク指令値Tm*に、1−Kfを乗じることで、リア駆動システムのリア目標トルク指令値Tmr1を算出する。
次に、フロントの左右のモータの駆動力を分配するために、0〜1の間の値に設定されるKfrをフロント目標トルク指令値Tm1*に乗じることで第3のトルク目標値Tm1aを算出するとともに、フロント目標トルク指令値Tm1*に1−Kfrを乗じることで第4のトルク目標値Tm1bを算出する。
さらに、リアの左右のモータの駆動力を分配するために、0〜1の間の値に設定されるKrrをフロント目標トルク指令値Tm1*に乗じることで第1のトルク目標値Tmr1a*を算出するとともに、フロント目標トルク指令値Tm1*に1−Krrを乗じることで第4のトルク目標値Tmr1b*を設定する。
図7は、システム構成3においてリアの左右駆動力配分処理を説明するための図である。システム構成3は、リアの2WD車両であって、駆動力を前後に分配しないので、ドライバ要求トルクとしてのトルク指令値Tm*がそのままリアの目標トルク指令値Tmr1となる。図中のKrrは、リアの目標トルク指令値Tmr1に応じて出力する駆動力を、リア駆動モータ4raと、リア駆動モータ4rbとに分配するための値であり、0〜1の間の値に設定される。電動モータコントローラ2は、目標トルク指令値Tmr1に、0〜1の間の値に設定されるKrrを乗じることで第1のトルク指令値Tmr1a*を算出するとともに、フロント目標トルク指令値Tm1*に1−Krrを乗じることで第4のトルク指令値Tmr1b*を設定する。
ステップS203では、電動モータコントローラ2が制振制御演算処理を行う。具体的には、電動モータコントローラ2は、ステップS202で設定された各目標トルク指令値と、各電動モータ4のモータ回転速度ωmとに基づいて、駆動軸トルクを無駄にすることなく、駆動力伝達系振動(駆動軸8のねじり振動など)を抑制する制振制御後の各最終トルク指令値を算出する。制振制御演算処理の詳細については後述する。
ステップS204では、電動モータコントローラ2が電流指令値算出処理を行う。具体的には、電動モータコントローラ2は、ステップS203で算出された各電動モータに対する最終トルク指令値に加え、各モータ回転速度ωmや直流電圧値Vdcに基づいて、d軸電流目標値id、q軸電流目標値iqを求める。例えば、トルク指令値、モータ回転速度、及び、直流電圧値と、d軸電流目標値及びq軸電流目標値との関係を定めたテーブルを予め用意しておいて、このテーブルを参照することにより、d軸電流目標値id及びq軸電流目標値iqが求められる。
ステップS205では、d軸電流id及びq軸電流iqをそれぞれ、ステップS204で求めたd軸電流目標値id及びq軸電流目標値iqと一致させるための電流制御を行う。このため、まず初めに、ステップS201で入力された三相交流電流値iu、iv、iwと、電動モータ4の回転子位相αに基づいて、d軸電流id及びq軸電流iqを求める。続いて、d軸、q軸電流指令値id、iqと、d軸、q軸電流id、iqとの偏差から、d軸、q軸電圧指令値vd、vqを算出する。なお、ここでは、算出したd軸、q軸電圧指令値vd、vqに対して非干渉制御を加える場合もある。
次に、d軸、q軸電圧指令値vd、vqと、電動モータ4の回転子位相αから、三相交流電圧指令値vu、vv、vwを求める。そして、求めた三相交流電圧指令値vu、vv、vwと、電流電圧値Vdcから、PWM信号tu(%)、tv(%)、tw(%)を求める。このようにして求めたPWM信号tu、tv、twにより、インバータ3のスイッチング素子を開閉することによって、それぞれの電動モータ4を目標トルク指令値Tmで指示された所望のトルクで駆動することができる。
以上が、本発明の電動車両の制御装置が適用される電動車両のシステム構成、および、各システムが備えるコントローラ(電動モータコントローラ2)が実行する処理の概要である。以下では、本発明の実施形態について、本発明の特徴である制振制御演算処理の詳細を中心に説明する。
−第1実施形態−
以下に説明する本実施形態の電動車両の制御装置は、上述したシステム構成3に適用されることを前提とする。以下に、第1実施形態の電動車両の制御装置が上述のステップS503にて実行する制振制御処理の詳細を説明する。なお、制振制御処理は、車両の駆動力伝達系において、主にドライブシャフトのねじりに起因した振動を除去(抑制)することを目的として実行される。
まず初めに、左右の駆動輪(左右輪)にそれぞれ対応する電動モータ4ra、rbを有している2WD車両(システム構成3、図3参照)のフロントトルク指令値からフロントモータ回転角速度の運動方程式について、図8を参照して説明する。
図8は、車両の駆動力伝達系をモデル化した図であり、同図における各パラメータは以下のとおりである。なお、補助記号のfは右の駆動モータを、rは左の駆動モータを示している。
mf、Jmr:モータイナーシャ
wf、Jwr:駆動輪イナーシャ(1軸分)
df、Kdr:駆動系のねじり剛性
tf、Ktr:タイヤと路面の摩擦に関する係数
、N:オーバーオールギヤ比
、r:タイヤ荷重半径
ωmf、ωmr:モータ回転角速度
θmf、θmr:モータ回転角度
ωwf、ωwr:駆動輪回転角速度
θwf、θwr:駆動輪回転角度
mf、Tmr:モータトルク
df、Tdr:駆動軸トルク
、F:駆動力(2軸分)
θdf、θdr:駆動軸ねじり角度
V:車体速度
M:車体重量
図7より、左右輪にそれぞれ駆動源としての電動モータを有している車両の運動方程式は、次式(1)〜(11)で表される。
Figure 0006954062

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Figure 0006954062

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Figure 0006954062

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Figure 0006954062

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Figure 0006954062
上記式(1)〜(11)をラプラス変換して、電動モータ4raから電動モータ4raのモータ回転角速度ωmfまでの伝達特性を求めると、次式(12)で表せる。
Figure 0006954062

ただし、式(12)中の各パラメータは、それぞれ以下式(13)〜(17)で表される。
Figure 0006954062

Figure 0006954062

Figure 0006954062

Figure 0006954062

Figure 0006954062
式(12)に示す伝達関数の極と零点を調べると、次式(18)となる。
Figure 0006954062
式(18)のαとα´、βとβ´、ζprとζpr´、ωprとωpr´が極めて近い値を示すため、極零相殺(α=α´、β=β´、ζpr=ζpr´、ωpr=ωpr´と近似する)することにより、次式(19)に示すような(2次)/(3次)の伝達特性Gp(s)を構成することができる。
Figure 0006954062
結果として、左右駆動輪にそれぞれ駆動モータを有している車両の運動方程式は、右の駆動モータ(電動モータ4ra)のトルク指令値Tmfから右の駆動モータ(電動モータ4ra)のモータ回転角速度ωmfまでの伝達特性を2次/3次式で表した車両モデルGp(s)に近似することができる。
ここで、車両モデルGp(s)は、ドライブシャフト8raに起因するねじり振動を抑止する規範応答を次式(20)とする場合、右の駆動モータ(電動モータ4ra)のねじり振動を抑止するフィードフォワード補償器(F/F補償器901、図9参照)は、以下式(21)で表せる。
Figure 0006954062

Figure 0006954062
同様に、左の駆動モータ(電動モータ4rb)のトルク指令値Tmrから左の駆動モータ(電動モータ4rb)のモータ回転角速度2ωmrまでの伝達特性を求めると、次式(22)となる。
Figure 0006954062
ここで、車両モデルGpr(s)は、ドライブシャフト8rbに起因するねじり振動を抑止する規範応答を次式(23)とする場合、左の駆動モータ(電動モータ4rb)のねじり振動を抑止するF/F補償器(F/F補償器902、図9参照)は、以下式(24)で表せる。
Figure 0006954062

Figure 0006954062
続いて、左の駆動モータ(電動モータ4rb)のトルク指令値Tmrから右の駆動モータ(電動モータ4ra)のモータ回転角速度ωmfまでの運動方程式について、図8を用いて具体的に説明する。
上記式(1)〜(11)をラプラス変換して、左の駆動モータ(電動モータ4rb)のトルク指令値Tmrから右の駆動モータ(電動モータ4ra)のモータ回転角速度ωmfまでの伝達特性を求めると、次式(25)で表せる。なお、式(22)中の各パラメータは、それぞれ上記式(13)〜(17)で表される。
Figure 0006954062
式(25)に示す伝達関数の極を調べると、次式(26)となる。
Figure 0006954062
ただし、式(26)の極のαとβは、原点と支配的な極から遠い位置にあるため、Gprf(s)で表される車両モデルへの影響は少ない。したがって、式(26)は、次式(27)で表す伝達関数に近似することができる。
Figure 0006954062
さらに、車両モデルGprf(s)に左の駆動モータ(電動モータ4rb)の制振制御アルゴリズムを考慮すると、次式(28)で示す伝達関数となる。
Figure 0006954062
次に、右の駆動モータ(電動モータ4ra)のモータ回転角速度推定値の規範応答から右の駆動モータ(電動モータ4ra)のねじり振動を抑止するために、式(28)の伝達関数を次式(29)の伝達関数とする。
Figure 0006954062
同様に、右の駆動モータ(電動モータ4ra)の最終トルク指令値Tmfから左の駆動モータ(電動モータ4rb)のモータ回転角速度2ωmrまでの伝達特性は、式(30)となる。
Figure 0006954062

ただし、式(30)の極のαとβは、原点と支配的な極から遠い位置にあるため、Gpfr(s)で表される車両モデルへの影響は少ない。したがって、式(30)は、次式(31)で表す伝達関数に近似することができる。
Figure 0006954062

さらに、車両モデルGpfr(s)に右の駆動モータ(電動モータ4ra)の制振制御のアルゴリズムを考慮すると、次式(32)で示す伝達関数となる。
Figure 0006954062
次に、左の駆動モータ(電動モータ4rb)のモータ回転角速度推定値の規範応答から左の駆動モータ(電動モータ4rb)ののねじり振動を抑止するために、式(32)式の伝達関数を次式(33)の伝達関数とする。
Figure 0006954062

以上説明した車両モデル(伝達関数)を用いて実行される制振制御演算処理を、図9を参照して説明する。
図9は、第1実施形態の制振制御演算処理を実現するブロック構成図の一例である。図9に示す制御ブロックは、F/F補償器901と、F/F補償器902と、車両モデル903と、制御ブロック904と、制御ブロック905と、加算器908、909と、減算器906、907とから構成される。
F/F補償器901は、右の駆動モータ(電動モータ4ra)の駆動軸ねじり振動を抑止するフィルタであって、上記式(21)で表されるフィルタGr(s)/Gp(s)から構成される。F/F補償器901は、電動モータ4raに対応する第1の目標トルク指令値Tm1*を入力とし、上記式(21)によるF/F補償処理を行うことにより、第1のトルク指令値を算出する。
F/F補償器902は、左の駆動モータ(電動モータ4rb)の駆動軸ねじり振動を抑止するフィルタであって、上記式(24)で表されるフィルタGrr(s)/Gpr(s)から構成される。F/F補償器902は、電動モータ4rbに対応する第2の目標トルク指令値Tmr1b*を入力とし、上記式(24)によるF/F補償処理を行うことにより、第3のトルク指令値を算出する。
車両モデル903は、第1のトルク指令値と第3のトルク指令値とを入力とし、図10で表される車両モデルを用いて、モータ回転角速度推定値ω^mraと、モータ回転角速度推定値ω^mrbとを算出する。ここで用いられる車両モデルは、図10で示すとおり、左右駆動輪に駆動源としてのモータをそれぞれ有する2輪駆動車2WD車両)の駆動力伝達系、すなわち、右駆動輪および左駆動輪へのトルク入力から右の駆動モータ(電動モータ4ra)および左の駆動モータ(電動モータ4rb)のモータ回転角速度までの伝達特性を模擬した車両モデルである。図10で示す2WD車両モデル903は、左右輪にそれぞれ駆動源としての電動モータを独立して有している車両の運動方程式(1)〜(11)と等価に構成されたブロック構成図である。
ここで、図示する車両モデル903において、第1のトルク指令値に基づいてモータ回転角速度推定値ω^mraを算出する系に、第3のトルク指令値に基づいて算出された左駆動輪の駆動力Frが加算されている。これにより、車両モデル903において、第1のトルク指令値に基づいて算出される右の駆動モータ(電動モータ4ra)のモータ回転角速度推定値を、左の駆動モータ(電動モータ4rb)の制駆動トルクを表す第3トルク指令値に基づいて補正することができる。
なお、車両モデル903は、第1のトルク指令値から電動モータ4raのモータ回転角速度推定値ω^mraまでの伝達特性Gp(s)、第1のトルク指令値から電動モータ4rbのモータ回転角速度推定値ω^mrbまでの伝達特性Gpfr(s)、第3のトルク指令値から電動モータ4raのモータ回転角速度推定値ω^mraまでの伝達特性Gprf(s)、および、第3のトルク指令値から電動モータ4rbのモータ回転角速度推定値ω^mrbまでの伝達特性Gpr(s)に係る2入力2出力の伝達特性と等価である。したがって、車両モデル903は、図10に示した構成に限らず、それぞれ4つの伝達特性に分割したフィルタ構成としてもよい。
また、制御対象の伝達特性Gprf(s)および伝達特性Gpfr(s)は、左右の駆動モータ(電動モータ4raおよび電動モータ4rb)それぞれのねじり振動周波数を考慮した2次フィルタ、例えば左右駆動輪それぞれのねじり振動周波数がカットオフ周波数となるように構成されたフィルタ等で近似してもよい。このようなフィルタで近似することにより、演算負荷を低減することができる。なお、左右駆動輪の少なくとも一方の駆動輪のねじり振動周波数のみを考慮したフィルタで近似しても良い。
また、制御対象の伝達特性Gprf(s)、および伝達特性Gpfr(s)は、定常状態における要素の特性(静特性)、すなわち伝達特性のゲイン特性のみを考慮したフィルタで近似してもよい。これにより、車両モデルを用いずに、ゲイン調整によりモータ回転角度推定値を算出できるので、電動モータコントローラ2のソフト演算負荷を低減することができる。
さらに、制御対象の伝達特性Gprf(s)、および伝達特性Gpfr(s)は、ねじり振動周波数に起因する減衰係数が1未満となる特性を有する場合は、減衰係数を1に近似した前述の式(29)で示す伝達特性Grrf(s)で代用してもよい。
図9で示す減算器906は、右の駆動モータ(電動モータ4ra)のモータ回転角速度推定値ω^mraから電動モータ4raのモータ回転角速度ωmf(検出値)を減算して、モータ回転角速度の推定値と検出値の偏差を算出し、算出した値を制御ブロック904に出力する。
制御ブロック904は、上記式(34)で表すバンドパスフィルタHf(s)と、上記式(19)で表す車両モデルGp(s)の逆特性とから構成される。制御ブロック904は、モータ回転角速度の推定値と検出値の偏差を入力とし、Hf(s)/Gp(s)を乗算することにより、第2のトルク指令値を算出する。
加算器908は、第1のトルク指令値と第2のトルク指令値とを足し合わせて、右の駆動モータ(電動モータ4ra)への第1の最終トルク指令値Tmf*を算出する。
一方、減算器907は、左の駆動モータ(電動モータ4rb)のモータ回転角速度推定値ω^mrbから電動モータ4raのモータ回転角速度ωmr(検出値)を減算して、モータ回転角速度の推定値と検出値の偏差を算出し、算出した値を制御ブロック905に出力する。
制御ブロック905は、上記式(35)で表すバンドパスフィルタHr(s)と、上記式(19)で表す車両モデルGpr(s)の逆特性とから構成される。制御ブロック905は、モータ回転角速度の推定値と検出値の偏差を入力とし、Hr(s)/Gpr(s)を乗算することにより、第4のトルク指令値を算出する。
加算器909は、第2のトルク指令値と第4のトルク指令値とを足し合わせて、左の駆動モータ(電動モータ4rb)への第2の最終トルク指令値Tmr*を算出する。
ここで、バンドパスフィルタHf(s)、Hr(s)について説明する。バンドパスフィルタHf(s)、Hr(s)は、ローパス側、および、ハイパス側の減衰特性が略一致し、かつ、駆動系のねじり共振周波数fが、対数軸(logスケール)上で、通過帯域の中央部近傍となるように設定される。
例えば、バンドパスフィルタHf(s)、Hr(s)を一次のハイパスフィルタと一次のローパスフィルタとで構成する場合は、バンドパスフィルタHf(s)は、次式(34)のように構成され、バンドパスフィルタHrは、次式(35)のように構成される。
Figure 0006954062

ただし、τLf=1/(2πfHCf)、fHCf=kf・fpf、τHf=1/(2πfLCf)、fLCf=fpf/kfである。また、周波数fpfは右の駆動モータ(電動モータ4ra)のねじり共振周波数とし、kfはバンドパスを構成する任意の値とする。
Figure 0006954062

ただし、τLr=1/(2πfHCr)、fHCr=kr・fpr、τHr=1/(2πfLCr)、fLCr=fpr/krである。また、周波数fprは左の駆動モータ(電動モータ4rb)の駆動系のねじり共振周波数とし、krはバンドパスを構成する任意の値とする。
次に、右の駆動モータの駆動軸ねじり共振周波数fpfと、左の駆動モータの駆動軸ねじり共振周波数fprとが異なる場合(fpf≠fpr)は、左右の駆動モータの駆動力応答を揃えるために、F/F補償器901が行うF/F補償処理と、F/F補償器902が行うF/F補償処理の規範応答を一致させても良い。すなわち、図11で示すように、F/F補償器901の構成に、制御ブロック1101を考慮することにより、F/F補償器901が行うF/F補償処理と、F/F補償器902が行うF/F補償処理の規範応答を一致させることができる。
制御ブロック1101は、次式(36)で表されるフィルタGrr(s)/Gr(s)から構成される。
Figure 0006954062
また、右の駆動モータ(電動モータ4ra)の駆動軸ねじり共振周波数fpfが、左の駆動モータ(電動モータ4rb)の駆動軸ねじり共振周波数fprより小さい場合(fpf<fpr)は、左右の駆動モータの規範応答を低周波側の特性に合わせるために、高周波側のF/F補償器902のF/F補償処理を、F/F補償器901のF/F補償処理側に考慮しても良い。すなわち、図12で示すように、F/F補償器902の構成に、制御ブロック1201を考慮することにより、左右の駆動モータの駆動力応答を、より低周波側の特性に合わせることができる。制御ブロック1201は、上記式(23)で表す車両モデルGrr(s)の逆特性と、上記式(20)で表す車両モデルGr(s)とで表されるフィルタGr(s)/Grr(s)により構成される。
また、fpf≠fprの場合には、左右の駆動モータの駆動力応答を揃えるために、F/F補償器901とF/F補償器902とを、図13で示すような構成としてもよい。すなわち、F/F補償器901とF/F補償器902とが、それぞれ、右の駆動モータの駆動軸ねじり振動を抑止するフィルタGr(s)/Gp(s)と、左の駆動モータの駆動軸ねじり振動を抑止するフィルタGrr(s)/Gpr(s)の両方のフィルタにより構成されても良い。このような構成によっても、F/F補償器901が行うF/F補償処理と、F/F補償器902が行うF/F補償処理の規範応答を一致させることができる。
このような構成によれば、複数駆動輪のねじり振動周波数が全て減衰されるので、F/F補償器901、902のみで、全ての駆動軸ねじり振動を抑制することができる。
ここで、複数駆動輪の規範応答を高周波側に合わせると、低周波側の駆動軸ねじり振動周波数特性を持つ駆動輪に対して進み補償が必要となるので、当該駆動輪に対して、ドライバの要求するトルク以上のトルクを指示するトルク指令値を設定することになる。しかしながら、全開加速時等はトルクの上下限制限等があるため、進み補償を行うと規範応答通りのトルクを出力できない場合がある。したがって、本実施形態では、複数駆動輪の規範応答を低周波側に合わせている。
なお、第1実施形態に係る上述の説明では、左右駆動輪にそれぞれ駆動モータ(電動モータ4ra、4tb)を有する2WD車両(システム構成3)について説明したが、上述した制振制御は、図1、図2に示すような前後左右において独立した駆動モータを少なくとも3つ以上有する4WD車両へも適用することができる。以下では、本実施形態の制振制御が適用された図1に示す4WD電動車両(システム構成1)について説明する。
図14は、第1実施形態の制振制御演算処理をシステム構成1において実現するブロック構成図の一例である。システム構成1では、システム構成3を参照して説明したリアの左右駆動モータ(電動モータ4ra、4rb)に対する制振制御処理を、フロントの左右駆動モータ(電動モータ4fa、4fb)に対しても実行する。
図14に示す制御ブロックは、主に、図9で示したシステム構成3が備えるF/F補償器901、902、制御ブロック904、905、加算器908、909、および、減算器906,907に加えて、フロントにおける左右の駆動モータ(電動モータ4fa、4fb)に対する最終トルク指令値を算出するためのF/F補償器1103、1104、および制御ブロック1106、1107、加算器1110、1111、および減算器1108,1109をさらに備える。そして、システム構成1では、システム構成3において用いた車両モデル903に替えて、車用モデル1401を使用する。以下、システム構成1における制振制御を実現する構成において、特にシステム構成3におけるブロック構成から追加された構成について説明する。
F/F補償器1103は、フロント右の駆動モータ(電動モータ4fa)の駆動軸ねじり振動を抑止するフィルタGra(s)/Gpa(s)から構成される。F/F補償器1103は、電動モータ4faに対応する第3の目標トルク指令値Tm1a*を入力とし、F/F補償処理を行うことにより、第5のトルク指令値を算出する。
F/F補償器1104は、フロント左の駆動モータ(電動モータ4fb)の駆動軸ねじり振動を抑止するフィルタGrra(s)/Gpra(s)から構成される。F/F補償器1104は、電動モータ4fbに対応する第4の目標トルク指令値Tm1b*を入力とし、F/F補償処理を行うことにより、第7のトルク指令値を算出する。
車用モデル1401は、第1のトルク指令値と第3のトルク指令値と第5のトルク指令値と第6のトルク指令値とを入力とし、図15で表される車両モデルを用いて、モータ回転角速度推定値ω^mra、ω^mrb、ω^mfa、およびω^mfaを算出する。ここで用いられる車両モデルは、図15で示すとおり、フロントおよびリアそれぞれの左右駆動輪に駆動源としてのモータをそれぞれ独立して有する4輪駆動車(4WD車両)の駆動力伝達系を模擬した車両モデルである。図15で示す車用モデル1401は、フロントとリアにおいて、左右輪にそれぞれ駆動源としての電動モータを独立して有している車両の運動方程式(1)〜(11)と等価に構成されたブロック構成図である。
ここで、図示する車用モデル1401において、第5のトルク指令値に基づいてフロント右のモータ回転角速度推定値ω^mfaを算出する系において算出される駆動力Fr2に、第7のトルク指令値に基づいて算出されたフロント左の駆動モータの駆動力Fr3が加算されている。また、第3のトルク指令値に基づいてリア左のモータ回転角速度推定値ω^mraを算出する系において算出される駆動力Fr1に、フロント左の駆動モータの駆動力Fr3と、第5のトルク指令値に基づいて算出されたフロント右の駆動モータの駆動力Fr2との加算値(Fr3+Fr2)が加算されている。そして、第1のトルク指令値に基づいてフロント右のモータ回転角速度推定値ω^mfaを算出する系には、上述の3つの駆動モータの駆動力の合計値(Fr3+Fr2+Fr1)が加算されている。これにより、車用モデル1401において、各駆動モータのモータ回転角速度推定値を、それぞれ他の駆動モータの制駆動トルクに基づいて補正することができる。
図14で示す減算器1108は、フロント右の駆動モータ(電動モータ4fa)のモータ回転角速度推定値ω^mfaから電動モータ4faのモータ回転角速度ωfa(検出値)を減算して、モータ回転角速度の推定値と検出値の偏差を算出し、算出した値を制御ブロック1106に出力する。
制御ブロック1106は、バンドパスフィルタHfa(s)と、Gpa(s)の逆特性とから構成される。制御ブロック1106は、モータ回転角速度の推定値と検出値の偏差を入力とし、Hfa(s)/Gpa(s)を乗算することにより、第6のトルク指令値を算出する。なお、バンドパスフィルタHfa(s)は上述のHf(s)と、伝達特性Gpa(s)は上述のGp(s)と、それぞれ等価である。
加算器1110は、第5のトルク指令値と第6のトルク指令値とを足し合わせて、フロント右の駆動モータ(電動モータ4fa)への第3の最終トルク指令値Tmfa*を算出する。
一方、減算器1109は、フロント左の駆動モータ(電動モータ4fb)のモータ回転角速度推定値ω^mfbから電動モータ4faのモータ回転角速度ωmra(検出値)を減算して、モータ回転角速度の推定値と検出値の偏差を算出し、算出した値を制御ブロック1107に出力する。
制御ブロック1107は、バンドパスフィルタHfra(s)と、Gpra(s)の逆特性とから構成される。制御ブロック1107は、モータ回転角速度の推定値と検出値の偏差を入力とし、Hfra(s)/Gpra(s)を乗算することにより、第8のトルク指令値を算出する。なお、バンドパスフィルタHfra(s)は上述のHr(s)と、伝達特性Gpra(s)は上述のGpr(s)と、それぞれ等価である。
そして、加算器1111は、第7のトルク指令値と第8のトルク指令値とを足し合わせて、フロント左の駆動モータ(電動モータ4fb)への第4の最終トルク指令値Tmra*を算出する。
このようにして、システム構成1についても、システム構成3と同様に、各駆動輪がそれぞれ独立した駆動源として有する各駆動モータに対して制振制御処理を適用することができる。
なお、システム構成2に対しても上述した制振制御処理を同様に適用することができる。その場合は、まず、図6で示す駆動力分配処理では、フロントの目標トルク指令値Tm1*をフロントの駆動モータ(電動モータ4f)に対する第3の目標トルク指令値Tm1a*とする。そして、図14で示す制振制御ブロックでは、第4の目標トルク指令値Tm1b*に基づいて第4の最終トルク指令値tmra*を算出する系(F/F補償器1104、制御ブロック1107、加算器1111、減算器1109)を削除するとともに、図15で示す制振制御ブロックでは、第7のトルク指令値からモータ回転角速度推定値ω^mfbを算出する系を削除すればよい。
ここで、第1実施形態の電動車両の制御装置による制振制御演算結果について、図16及び図17を参照して説明する。
〈システム構成3の制振制御結果〉
図16は、第1実施形態、および、後述する第2実施形態の制振制御をシステム構成3の電動車両に適用した際の制振結果と、従来技術による制御結果とを比較するタイムチャートである。図中、上から順に、第1の最終トルク指令値Tmf*、第2の最終トルク指令値Tmr*、および、車両の前後加速度をそれぞれ表している。なお、各図中の実線は、第1、第2実施形態による制御結果を示し、破線は、従来技術による制御結果を示す。
図16で示されるのは、左右駆動輪においてそれぞれ独立した駆動モータを有する2WD電動車両において、停車状態からドライバがアクセルを急峻に踏み込むことにより第1の目標トルク指令値と第2の目標トルク指令値とがステップ的に増加した場合に車両が加速する場面での該車両の制御状態である。
まず、時刻t1において、ドライバがアクセルペダルを踏み込むことにより、フロント目標トルク指令値とリア目標トルク指令値とがステップで変化する。
そうすると、従来技術(破線)では、左右の駆動モータの一方の制駆動力しか考慮されていないので、他方の駆動モータによる駆動力が加味される分、フィードバック制御系で算出される左右の駆動モータのモータ回転速度推定値の値よりも実際の検出値が大きくなる。そうすると、想定よりも大きく検出されたモータ回転速度分のトルクを補償するため、時刻t1からt3にかけて、加速を妨げる負トルク側(モータトルクを小さくする方向)にトルク指令値を補正してしまう。そのため、第1の最終トルク指令値Tmf*と第2の最終トルク指令値Tmr*もドライバの要求するトルク指令値を出力することができなくなる。結果として、時刻t3に比べて、時刻t2付近の車両の前後加速度(加速度)がより制限されていることが分かる。
このように、従来技術では、制振制御のF/B補償器から余分な振動抑制補償が出力されることにより、車両の加速が妨げられ、ドライバによるアクセル操作あるいはブレーキ操作に基づくドライバの意図する加減速度を得ることができないので、ドライバに違和感を与えてしまう。
これに対して、第1実施形態の電動車両の制御装置(実線)によれば、時刻t1にて左右の駆動モータの目標トルク指令値がステップで変化した場合でも、フィードバック制御系において例えば左の駆動モータのモータ回転角速度の推定値と検出値との差分に基づくトルク成分を補償するためにF/B補償器から余分な振動抑制補償(負トルク)が出力されるのを抑止することができる。そのため、時刻t1〜t3では、第1の最終トルク指令値Tmf*、第2の最終トルク指令値Tmrf*はともに、ドライバの意図通りのトルク指令値を出力できている。
この結果、左右独立した駆動モータを併用する加速時でも、ドライバの意図する加速度を得ることができる。これは、右の駆動モータに対する左の駆動モータのモータ回転角速度(あるいは、左の駆動モータに対する右の駆動モータのモータ回転角速度)の伝達関数に基づいて構成されたフィルタを用いてモータ回転角速度推定値を補正した効果である。
なお、本実施形態では駆動側の制御結果について説明したが、回生時の制御結果も同様である。すなわち、従来技術では、電動車両が減速する際、F/B補償器からの振動抑制補償(第2のトルク指令値、および第4のトルク指令値)が余分な振動抑制補償により正トルク側に補正されることによる減速が妨げられるので、ドライバの意図する減速度を得ることができない。これに対して、第1実施形態の電動車両の制御装置によれば、上述の駆動側の制御と同様に、制振制御のF/B補償器からの余分な振動抑制補償(正トルク)が出力されることを抑止することができるので、ドライバの意図する減速を実現することができる。
〈システム構成1の制振制御結果〉
図17は、第1実施形態、および、後述する第2実施形態の制振制御をシステム構成1の電動車両に適用した際の制振結果と、従来技術による制御結果とを比較するタイムチャートである。図中、上から順に、第1の最終トルク指令値Tmf*、第2の最終トルク指令値Tmr*、第3の最終トルク指令値Tmfa*、第4の最終トルク指令値Tmra*、および、車両の前後加速度をそれぞれ表している。なお、各図中の実線は、第1、第2実施形態による制御結果を示し、破線は、従来技術による制御結果を示す。
図17で示されるのは、フロントおよびリアそれぞれの左右駆動輪においてそれぞれ独立した駆動モータを有する4WD電動車両において、停車状態からドライバがアクセルを急峻に踏み込むことにより第1の目標トルク指令値と第2の目標トルク指令値とがステップ的に増加した場合に車両が加速する場面での該車両の制御状態である。
まず、時刻t1において、ドライバがアクセルペダルを踏み込むことにより、フロント目標トルク指令値とリア目標トルク指令値とがステップで変化する。
そうすると、従来技術(破線)では、一つの駆動モータの制駆動力しか考慮されていないので、他の駆動モータによる駆動力が加味される分、フィードバック制御系で算出されるフロントおよびリアの左右の駆動モータのモータ回転速度推定値の値よりも実際の検出値が大きくなる。そうすると、想定よりも大きく検出されたモータ回転速度分のトルクを補償するため、時刻t1からt3にかけて、加速を妨げる負トルク側(モータトルクを小さくする方向)にトルク指令値を補正してしまう。そのため、それぞれの駆動モータに対応する最終トルク指令値もドライバの要求するトルク指令値を出力することができなくなる。結果として、時刻t3に比べて、時刻t2付近の車両の前後加速度(加速度)がより制限されていることが分かる。
このように、従来技術では、制振制御のF/B補償器から余分な振動抑制補償が出力されることにより、車両の加速が妨げられ、ドライバによるアクセル操作あるいはブレーキ操作に基づくドライバの意図する加減速度を得ることができないので、ドライバに違和感を与えてしまう。
これに対して、第1実施形態の電動車両の制御装置(実線)によれば、時刻t1にてフロントおよびリアの左右の駆動モータの目標トルク指令値がステップで変化した場合でも、フィードバック制御系において例えば左の駆動モータのモータ回転角速度の推定値と検出値との差分に基づくトルク成分を補償するためにF/B補償器から余分な振動抑制補償(負トルク)が出力されるのを抑止することができる。そのため、時刻t1〜t3では、それぞれの駆動モータに対する最終トルク指令値は全て、ドライバの意図通りのトルク指令値を出力できている。
この結果、フロントおよびリアにおいて左右独立した駆動モータを併用する加速時でも、ドライバの意図する加速度を得ることができる。これは、一の駆動モータのモータ回転角速度に対する他の駆動モータのモータ回転角速度の伝達関数に基づいて構成されたフィルタを用いてモータ回転角速度推定値を補正した効果である。
なお、本実施形態では駆動側の制御結果について説明したが、回生時の制御結果も同様である。すなわち、従来技術では、電動車両が減速する際、F/B補償器からの振動抑制補償(第2のトルク指令値、第4のトルク指令値、第6のトルク指令値、および第8のトルク指令値)が余分な振動抑制補償により正トルク側に補正されることによる減速が妨げられるので、ドライバの意図する減速度を得ることができない。これに対して、第1実施形態の電動車両の制御装置によれば、上述の駆動側の制御と同様に、制振制御のF/B補償器からの余分な振動抑制補償(正トルク)が出力されることを抑止することができるので、ドライバの意図する減速を実現することができる。
以上、第1実施形態の電動車両の制御装置は、車両情報に基づいてモータトルク指令値を設定し、駆動輪につながるモータのトルクを制御する電動車両の制御方法を実現する制御装置である。この電動車両の制御装置は、左右の駆動輪9ra、9rbが電動モータ4をそれぞれ別個に備え、モータトルク指令値を各電動モータ4それぞれに対する目標トルク指令値(Tmr1a、Tmr1b。Tm1a、Tm1b)を算出し、電動モータ4の回転角速度を検出する。そして、目標トルク指令値を入力とし、電動車両の駆動力伝達系の捻り振動を抑制する制振制御を施した最終トルク指令値を算出する制振制御を電動モータ4のそれぞれに実行する。制振制御では、目標トルク指令値に基づくフィードフォワード演算により第1トルク指令値(第1のトルク指令値、第3のトルク指令値、第5のトルク指令値、第7のトルク指令値)を算出し、第1トルク指令値に基づいて、電動モータ4に対するトルク指令値の入力からモータの回転角速度までの伝達特性を模擬した車両モデルを用いてモータの回転角速度を推定し、車両モデルの逆特性と、車両のねじり振動周波数近傍の周波数を中心周波数とするバンドパスフィルタとで構成されるフィルタを用いて、モータの回転角速度の検出値と推定値との偏差から第2トルク指令値(第2のトルク指令値、第4のトルク指令値、第6のトルク指令値、第8のトルク指令値)を算出し、第1トルク指令値と第2トルク指令値とを加算して得られる最終トルク指令値に従って電動モータ4のトルクを制御し、一方の駆動輪につながるモータを第1モータ(電動モータ4ra)とし、他方の駆動輪につながるモータを第2モータ(電動モータ4rb)とした場合に第2モータの制駆動トルクが車両に入力された際には、第2モータの制駆動トルクの入力から第1モータの回転角速度までの伝達関数のフィルタを用いて第1モータの回転角速度の推定値を補正する。
これにより、左右の駆動モータから制駆動トルクが別個に入力された場合でも、それぞれのモータ回転角速度の推定値と検出値とを一致させることができるので、フィードバック制御系において各駆動モータの回転角速度の推定値と検出値との乖離分に基づくトルク成分を補償するためにF/B補償器から余分な振動抑制補償が出力されるのを抑止することができる。
また、第1実施形態の電動車両の制御装置によれば、電動車両が前記左右の駆動輪とは別の駆動輪につながる独立したモータを一つ以上さらに備え、複数のモータそれぞれに対する目標トルク指令値に基づいて、当該複数のモータそれぞれの回転角速度を推定する。制振制御では、推定したモータそれぞれの回転角速度に基づいて、当該複数のモータそれぞれに対する最終トルク指令値を算出する。また、制振制御に用いる車両モデルは、複数のモータそれぞれに対するトルク指令値の入力から当該複数のモータそれぞれの回転角速度までの伝達特性を模擬して構成され、制振制御では、当該車両モデルを用いて複数のモータそれぞれの回転角速度を推定する。これにより、前後左右の駆動モータから制駆動トルクが入力された場合でも、複数のモータを対象として設計された車両モデルを用いて各モータの回転角速度の推定値と検出値とを一致させることができるので、フィードバック制御系において各モータの回転角速度の推定値と検出値との乖離分に基づくトルク成分を補償するためにF/B補償器から余分な振動抑制補償が出力されるのを抑止することができる。
また、第1実施形態の電動車両の制御装置によれば、複数のモータ4の駆動軸ねじり振動周波数が異なる場合は、複数のモータ4に対する第1トルク指令値を算出するフィードフォワード演算において使用する規範応答を一致させる。これにより、ドライバがアクセルをON/OFF操作した際の各駆動モータのトルクの立上り応答の乖離を抑制することができるので、フロント/リア駆動モータの駆動力の応答スピードの違いにより2段加速感が生じること、及び、左右に駆動モータの駆動力の応答スピードの違いによりドライバの意図しないヨーモーメントが車両に発生することを抑止することができる。
また、第1実施形態の電動車両の制御方法によれば、複数のモータの駆動軸ねじり振動周波数が異なる場合は、複数のモータに対する第1トルク指令値を算出するフィードフォワード演算において使用する規範応答を、駆動軸ねじり振動周波数が最も小さいモータに対する第1トルク指令値を算出するフィードフォワード演算において使用する規範応答に一致させる。これにより、ドライバがアクセルをON/OFF操作した際の各駆動モータのトルクの立上り応答の乖離を抑制することができるので、フロント/リア駆動モータの駆動力の応答スピードの違いにより2段加速感が生じること、及び、左右に駆動モータの駆動力の応答スピードの違いによりドライバの意図しないヨーモーメントが車両に発生することを抑止することができる。
また、第1実施形態の電動車両の制御装置によれば、複数のモータ4の駆動軸ねじり振動周波数を減衰させる伝達特性を有するフィルタを用いたフィードフォワード演算により第1トルク指令値を算出する。これにより、各モータ4のねじり振動周波数が全て減衰されるので、F/F補償器のみで全ての駆動軸ねじり振動を抑制することができる。
また、第1実施形態の電動車両の制御装置によれば、複数のモータのうち、一のモータのトルク入力から少なくとも一つ以上の他のモータの回転角速度までの伝達関数のフィルタは、複数のモータの少なくとも一つ以上のねじり振動周波数をカットオフ周波数に設定したフィルタで近似される。これにより、電動モータコントローラ2によるソフト演算負荷を低減することができる。
また、第1実施形態の電動車両の制御装置によれば、複数のモータのうち、一のモータのトルク入力から少なくとも一つ以上の他のモータの回転角速度までの伝達関数のフィルタは、一のモータのトルク入力から少なくとも一つ以上の他のモータの回転角速度までの伝達特性のゲイン成分を構成するように近似される。これにより、車両モデルを用いずに、ゲイン調整により各モータの回転角度推定値を算出できるので、電動モータコントローラ2のソフト演算負荷を低減することができる。
また、第1実施形態の電動車両の制御装置によれば、複数のモータのうち、一のモータ4のトルク入力から少なくとも一つ以上の他のモータ4の回転角速度までの伝達関数のフィルタは、分母にねじり振動周波数に起因する減衰係数を有し、減衰係数が1未満となる特性を有する場合は、当該減衰係数を1以上の値に設定する。これにより、減衰係数が1未満となる特性を有する場合は、一のモータから一つ以上の他のモータ4の回転角速度までの伝達関数が複雑なために生じるモータ回転角速度補正量(Fr1〜Fr3)の振動的な特性を抑止することができる。
−第2実施形態−
以下、第2実施形態の電動車両の制御装置が上述したステップS203にて実行する制振制御演算処理について、図面等を参照して説明する。
最初に、本実施形態における制振制御演算処理で用いられる車両モデルについて説明する。
図18は、電動車両が備える一つの駆動モータの駆動力伝達系をモデル化した図であり、同図における各パラメータは以下に示すとおりである。
:モータイナーシャ
:駆動輪イナーシャ(1軸分)
:駆動系のねじり剛性
:タイヤと路面の摩擦に関する係数
N:オーバーオールギヤ比
r:タイヤ荷重半径
ω:モータ回転角速度
θ:モータ回転角度
ω:駆動輪回転角速度
θ:駆動輪回転角度
:モータトルク
:駆動軸トルク
F:駆動力(1軸分)
V:車体速度
θ:駆動軸ねじり角度
図18より、電動車両の運動方程式は、次式(37)〜(42)で表される。
Figure 0006954062

Figure 0006954062

Figure 0006954062

Figure 0006954062

Figure 0006954062

Figure 0006954062
上記式(37)〜(42)をラプラス変換して、モータトルクTからモータ回転速度ωまでの伝達特性を求めると、次式(43)、(44)で表せる。
Figure 0006954062

Figure 0006954062

ただし、式(44)中のa、a、a1、0、、b、b、b、は、それぞれ次式(45)で表される。
Figure 0006954062
また、モータトルクTから駆動軸トルクTまでの伝達特性は、次式(46)で表される。
Figure 0006954062

ただし、式(46)中のc、cは、次式(47)で表される。
Figure 0006954062
式(38)、(40)、(41)、(42)より、モータ回転速度ωから駆動輪回転角速度ωまでの伝達特性を求めると、次式(48)で表される。
Figure 0006954062
式(43)、(44)、(48)より、モータトルクTから駆動輪回転角速度ωまでの伝達特性は、次式(49)で表される。
Figure 0006954062
式(46)、(49)より、駆動軸トルクTから駆動軸回転角速度ωまでの伝達特性は、次式(50)で表される。
Figure 0006954062
ここで、式(50)を変形すると、次式(51)で表される。
Figure 0006954062

従って、式(50)、(51)より、駆動軸ねじり角速度ωは、次式(52)で表される。
Figure 0006954062
ただし、式(52)中のH(s)は、次式(53)で表される。
Figure 0006954062
式(53)中のv、v、w.wは、次式(54)のとおりである。
Figure 0006954062
また、式(54)は、次式(55)のとおりに変形することができる。
Figure 0006954062
ここで、式(55)中のζpは駆動軸トルク伝達系の減衰係数、ωpは駆動軸トルク伝達系の固有振動周波数である。
さらに、式(55)の極と零点を調べると、α≒c/cとなるため、極零相殺すると、次式(56)となる。
Figure 0006954062

ただし、式(56)中のgは、次式(57)で表される。
Figure 0006954062
ここで、最終トルク指令値Tmfは、次式(58)で表すことができる。
Figure 0006954062
そうすると、最終トルク指令値Tmfは、次式(59)のとおりに置き換えることができる。
Figure 0006954062
そして、モータトルクTm=最終トルク指令値Tmf(Tm=Tmf)として、式(59)を式(56)に代入すると、次式(60)のように整理することができる。
Figure 0006954062
モータトルクから駆動軸トルクまでの規範応答は、次式(61)で表される。
Figure 0006954062
規範応答を式(61)とすると、最終トルク指令値Tmfから駆動軸トルクTまでの伝達特性(式(60))と、規範応答とが一致する条件は、次式(62)となる。
Figure 0006954062

次に、上記式(37)から(53)を適用して、モータから駆動軸までのギヤのバックラッシュ特性を模擬した不感帯をモデル化(不感帯モデル)する。そうすると、不感帯モデルを考慮した駆動軸トルクTdを、次式(63)で表すことができる。
Figure 0006954062

ここで、θdeadは、モータから駆動軸までのオーバーオールのギヤバックラッシュ量である。
図19は、第2実施形態の制振制御演算処理を実現するブロック構成図の一例である。図19で示す制御ブロックは、F/F補償器1801と、制御ブロック1802と、制御ブロック1803と、加算器1804、1805と、減算器1806、1807とから構成される。
F/F補償器1801は、第1の目標トルク指令値Tmr1a*と、第2の目標トルク指令値Tmr1b*とを入力とし、左右の駆動輪において独立した駆動モータをそれぞれ有する2WD車両モデルを使用したF/F補償処理を行う。これにより、F/F補償器1801は、第1のトルク指令値と第2のトルク指令値とを算出するとともに、右の駆動モータ(電動モータ4ra)のモータ回転角速度推定値ω^mraと、左の駆動モータ(、4rb)のモータ回転角速度推定値ω^mbとを算出する。
なお、F/F補償器1801は、国際公開番号WO2013/157315に記載の、左右駆動輪を一つのモータで駆動する2WDモデルを用いたF/F補償器を基に、左右駆動輪にてそれぞれに駆動モータを有している車両として設計する。F/F補償器1801の詳細を図20を用いて説明する。
図20は、F/F補償器1801において実行されるF/F補償処理を実現する制御ブロック構成の一例である。
図示するとおり、F/F補償器1801は、2WD車両モデル1900と、右の駆動軸ねじり角速度F/B演算器1911と、左の駆動軸ねじり角速度F/B演算器1912と、から構成される。
2WD車両モデル1900は、2WD車両の運動方程式(1)〜(11)と等価に構成された図9で示す車両モデル903に、右の駆動力伝達系に係る不感帯モデル1913と、左の駆動力伝達系に係る不感帯モデル1914とを加えて構成される。
右の不感帯モデル1913は、車両パラメータ(図8参照)と右の駆動モータ4raから右の駆動輪9raまでのギヤバックラッシュ特性を模擬した不感帯モデルであって、前述の式(63)で表される。
左の不感帯モデル1914は、右と同様に、車両パラメータ(図8参照)と左の駆動モータ4rbから右の駆動輪9raまでのギヤバックラッシュ特性を模擬した不感帯モデルであって、上記式(37)から(53)を適用して、次式(64)で表される。
Figure 0006954062

このように構成された2WD車両モデル1900は、第1のトルク指令値と第3のトルク指令値とを入力とし、右の駆動軸ねじり角速度推定値と、左の駆動軸ねじり角速度推定値と、左の駆動モータのモータ回転角速度推定値ω^mraと、左の駆動モータのモータ回転角速度推定値ω^mrbとを算出する。
ここで、図示する2WD車両モデル1900において、第1のトルク指令値に基づいてフロントモータ回転角速度推定値ω^mraを算出する系に、第3のトルク指令値に基づいて算出された左の駆動モータの駆動力Fr1が加算されている。これにより、2WD車両モデルにおいて、第1のトルク指令値に基づいて算出される右の駆動モータのモータ回転角速度推定値を、左の駆動モータの制駆動トルクを表す第2の目標トルク指令値に基づいて補正することができる。
右の駆動軸ねじり角速度F/B演算器1911は、まず、入力される右の駆動軸ねじり角速度推定値に、右の駆動モータへの最終トルク指令値から右の駆動軸トルクまでの伝達特性と規範応答とを一致させるためのゲインk1を乗じる。そして、第1の目標トルク指令値Tmr1a*から右の駆動軸ねじり角速度推定値にゲインk1を乗じた値を減じて、第1のトルク指令値を算出する。ゲインk1は、上記式(62)が適用される。
左の駆動軸ねじり角速度F/B演算器1912は、まず、入力される左の駆動軸ねじり角速度推定値に、左の駆動モータに対する最終トルク指令値から左の駆動軸トルクまでの伝達特性と規範応答とを一致させるためのゲインk2を乗じる。そして、左の目標トルク指令値Tmr1b*から左の駆動軸ねじり角速度推定値にゲインk2を乗じた値を減じて、第3のトルク指令値を算出する。ゲインk2は、次式(65)で表される。
Figure 0006954062
図19に戻って説明を続ける。減算器1806は、右のモータ回転角速度推定値ω^mraから、右のモータ回転角速度ωmfを減算することで、右の駆動モータのモータ回転角速度の推定値と検出値の偏差を算出して、算出値を制御ブロック1802に出力する。
制御ブロック1802は、上記式(34)で表すバンドパスフィルタHf(s)と、上記式(19)で表す車両モデルGp(s)の逆特性とから構成される。制御ブロック1802は、右の駆動モータのモータ回転角速度の推定値と検出値の偏差を入力とし、Hf(s)/Gp(s)を乗算することにより、第2のトルク指令値を算出する。
そして、加算器1804において第1のトルク指令値と第2のトルク指令値とが足し合わされることにより、右の駆動モータ(電動モータ4ra)に対する第1の最終トルク指令値Tmf*が算出される。
同様に、減算器1807は、左の駆動モータのモータ回転角速度推定値ω^mrbから左の駆動モータのモータ回転角速度ωmrを減算することで、モータ回転角速度の推定値と検出値の偏差を算出して、算出値を制御ブロック1803に出力する。
制御ブロック1802は、上記式(35)で表すバンドパスフィルタHr(s)と、上記式(19)で表す車両モデルGp(s)の逆特性とから構成される。制御ブロック1803は、左の駆動モータのモータ回転角速度の推定値と検出値の偏差を入力とし、Hr(s)/Gp(s)を乗算することにより、第4のトルク指令値を算出する。
そして、加算器1805において第3のトルク指令値と第4のトルク指令値とが足し合わされることにより、左の駆動モータ(電動モータ4ra)に対する第2の最終トルク指令値Tmrf*が算出される。
ここで、複数駆動輪を有する車両において、左右の駆動モータに関連する駆動軸ねじり振動共振周波数がそれぞれ異なる場合、一方の駆動モータは、他方の駆動モータのトルク外乱の影響により駆動軸ねじり振動が誘起されてしまう。しかしながら、上述したように、複数駆動輪を対象とする車両モデル1900と、複数駆動輪それぞれに配置された駆動ねじり角速度F/B演算器1901、1902を用いることにより、上記の駆動軸ねじり振動を抑制することができる。なお、制御系の遅れや外乱が無い場合には、F/F補償器1801のみで左右の駆動モータの駆動軸ねじり振動を抑制することも可能である。
このように算出された第2の最終トルク指令値Tmraf*と第1の最終トルク指令値Tmf*によっても、上述の図16、17で示した制御結果が示すとおり(図中の第2実施形態参照)、制振制御のF/B補償器からの余分な振動抑制補償が出力されることを抑止することができるので、左右の駆動モータを併用する加速時でも、ドライバの意図する加速度を得ることができる。
なお、第2実施形態に係る上述の説明では、左右駆動輪にそれぞれ駆動モータ(電動モータ4ra、4tb)を有する2WD車両(システム構成3)について説明したが、上述した制振制御は、図1、図2に示すような前後左右において独立した駆動モータを少なくとも3つ以上有する4WD車両へも適用することができる。以下では、本実施形態の制振制御が適用された図1に示す4WD電動車両(システム構成1)について説明する。
図21は、第2実施形態の制振制御演算処理をシステム構成1において実現するブロック構成図の一例である。システム構成1では、システム構成3を参照して説明したリアの左右駆動モータ(電動モータ4ra、4rb)に対する制振制御処理を、フロントの左右駆動モータ(電動モータ4fa、4fb)に対しても実行する。
図21に示す制御ブロックは、主に、図19で示したシステム構成3が備える制御ブロック1802、1803、加算器1804、1805、および、減算器1806,1807に加えて、フロントにおける左右の駆動モータ(電動モータ4fa、4fb)に対する最終トルク指令値を算出するための制御ブロック1902、1903、加算器1904、1905、および減算器1902,1903をさらに備える。そして、システム構成1では、システム構成3において用いたF/F補償器1801に替えて、F/F補償器1901を使用する。以下、システム構成1における制振制御を実現する構成において、特にシステム構成3におけるブロック構成から追加された構成について説明する。
制御ブロック1902は、バンドパスフィルタHfa(s)と、車両モデルGpa(s)の逆特性とから構成される。制御ブロック1902は、右の駆動モータのモータ回転角速度の推定値と検出値の偏差を入力とし、Hfa(s)/Gpa(s)を乗算することにより、第6のトルク指令値を算出する。
そして、加算器1904において第5のトルク指令値と第6のトルク指令値とが足し合わされることにより、右の駆動モータ(電動モータ4ra)に対する第3の最終トルク指令値Tmfa*が算出される。
制御ブロック1903は、バンドパスフィルタHfra(s)と、車両モデルGpra(s)の逆特性とから構成される。制御ブロック1903は、右の駆動モータのモータ回転角速度の推定値と検出値の偏差を入力とし、Hfra(s)/Gpra(s)を乗算することにより、第8のトルク指令値を算出する。
そして、加算器1905において第7のトルク指令値と第8のトルク指令値とが足し合わされることにより、右の駆動モータ(電動モータ4ra)に対する第4の最終トルク指令値Tmra*が算出される。
F/F補償器1901は、第1の目標トルク指令値Tmr1a*、第2の目標トルク指令値Tmr1b*、第3の目標トルク指令値Tm1a*、および第4の目標トルク指令値Tmr1b*を入力とし、フロントおよびリアの左右の駆動輪において独立した駆動モータをそれぞれ有する4WD車両モデルを使用したF/F補償処理を行う。これにより、F/F補償器1901は、第1のトルク指令値と第2のトルク指令値と第3のトルク指令値と第5のトルク指令値とを算出するとともに、フロント右の駆動モータ(電動モータ4fa)のモータ回転角速度推定値ω^mfaと、フロント左の駆動モータ(、4fb)のモータ回転角速度推定値ω^mfbと、リア右の駆動モータ(電動モータ4ra)のモータ回転角速度推定値ω^mraと、リア左の駆動モータ(、4rb)のモータ回転角速度推定値ω^mbとを算出する。
なお、F/F補償器1801は、国際公開番号WO2013/157315に記載の、左右駆動輪を一つのモータで駆動する2WDモデルを用いたF/F補償器を基に、フロント及びリアの左右駆動輪にてそれぞれに駆動モータを有している車両として設計する。F/F補償器1901の詳細を図22を用いて説明する。
図22は、F/F補償器1901において実行されるF/F補償処理を実現する制御ブロック構成の一例である。システム構成3を対象とした図20で示す制御ブロック構成に対してフロントの左右駆動モータを制御するための構成が加えられている。
図示するとおり、F/F補償器1901は、4WD車両モデル2000と、フロント右の駆動軸ねじり角速度F/B演算器2001と、フロント左の駆動軸ねじり角速度F/B演算器2002と、リア右の駆動軸ねじり角速度F/B演算器1911と、リア左の駆動軸ねじり角速度F/B演算器1912と、から構成される。
4WD車両モデル2000において、第3の目標トルク指令値に基づいてフロント右の駆動モータの制駆動力Fr2等を算出する系(不感帯2003を含む)、および、第4の目標トルク指令値に基づいてフロント左の駆動モータの制駆動力Fr2等を算出する系(不感帯2004を含む)は、第1の目標トルク指令値に基づいてリア右の駆動モータの制駆動力Fr等を算出する系、および、第2の目標トルク指令値に基づいてリア左の駆動モータの制駆動力Fr2等を算出する系とそれぞれ等価である。図22で示す車両モデル1000は、フロントとリアにおいて、左右輪にそれぞれ駆動源としての電動モータを独立して有している車両の運動方程式(1)〜(11)と等価に構成されたブロック構成図である。
また、フロントの左右駆動輪を制御するために追加された構成、すなわち、フロント右の駆動軸ねじり角速度F/B演算器2001と、フロント左の駆動軸ねじり角速度F/B演算器2002は、リア右の駆動軸ねじり角速度F/B演算器1911と、リア左の駆動軸ねじり角速度F/B演算器1912とそれぞれ等価である。
ここで、図示する車両モデル2000において、第3の目標トルク指令値に基づいてフロント右のモータ回転角速度推定値ω^mfaを算出する系において算出される駆動力Fr2に、第4の目標トルク指令値に基づいて算出されたフロント左の駆動モータの駆動力Fr3が加算されている。また、第2の目標トルク指令値に基づいてリア左のモータ回転角速度推定値ω^mrbを算出する系において算出される駆動力Fr1に、フロント左の駆動モータの駆動力Fr3と、第3の目標トルク指令値に基づいて算出されたフロント右の駆動モータの駆動力Fr2との加算値(Fr3+Fr2)が加算されている。そして、第1の目標トルク指令値に基づいてフロント右のモータ回転角速度推定値ω^mfaを算出する系には、上述の3つの駆動モータの駆動力の合計値(Fr3+Fr2+Fr1)が加算されている。これにより、車両モデル2000において、各駆動モータのモータ回転角速度推定値を、それぞれ他の駆動モータの制駆動トルクに基づいて補正することができる。
このようにして、システム構成1についても、システム構成3と同様に、各駆動輪がそれぞれ独立した駆動源として有する各駆動モータに対して制振制御処理を適用することができる。
なお、システム構成2に対しても上述した制振制御処理を同様に適用することができる。その場合は、まず、図6で示す駆動力分配処理では、フロントの目標トルク指令値Tm1*をフロントの駆動モータ(電動モータ4f)に対する第3の目標トルク指令値Tm1a*とする。そして、図21で示す制振制御ブロックでは、第4の目標トルク指令値Tm1b*に基づいて第4の最終トルク指令値tmra*を算出する系(制御ブロック1903、加算器1905、減算器1907)を削除するとともに、図22で示す制振制御ブロックでは、第4の目標トルク指令値からモータ回転角速度推定値ω^mfbを算出する系を削除すればよい。
以上のように算出された第1の最終トルク指令値Tmf*と第2の最終トルク指令値Tmr*と第3の最終トルク指令値Tmfa*と第4の最終トルク指令値Tmra*によっても、上述の図16、17で示した制御結果が示すとおり(図中の第2実施形態参照)、制振制御のF/B補償器からの余分な振動抑制補償が出力されることを抑止することができる。その結果、各駆動輪がそれぞれ独立して有する駆動モータを併用する加速時でも、ドライバの意図する加速度を得ることができる。
以上、第2実施形態の電動車両の制御装置によれば、制振制御は、車両モデルを用いて、第1のトルク指令値から複数のモータそれぞれの駆動軸ねじり角速度推定値を算出するとともに、複数のモータに対するそれぞれの目標トルク指令値から駆動軸ねじり角速度推定値に所定のゲインを乗じた値を減算することにより第1トルク指令値を算出する。これにより、左右の駆動モータから制駆動トルクが入力された場合でも、複数のモータを対象として設計された車両モデルを用いて各モータの回転角速度の推定値と検出値とを一致させることができる。したがって、フィードバック制御系において各モータの回転角速度の推定値と検出値との乖離分に基づくトルク成分を補償するためにF/B補償器から余分な振動抑制補償が出力されるのを抑止することができる。
以上、本発明に係る一実施形態の電動車両の制御装置について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、様々な変形や応用が可能である。例えば、上述した実施形態の説明においては、車両の右駆動輪につながるモータを右の駆動モータ(電動モータ4ra)とし、車両の左駆動輪につながるモータを左の駆動モータ(電動モータ4rb)として説明したが、車両の左右方向と一致させる必要は必ずしもなく、車両の左側の駆動モータを電動モータ4raとし、車両の右側の駆動モータを電動モータ4rbとして制御しても良い。また、同様に、車両の前後方向においても、フロント、リアの記載を車両の前後方向と一致させる必要は必ずしもなく、車両の後方側の駆動モータをフロントとし、車両の前方側の駆動モータをリアとして制御してもよい。

Claims (11)

  1. 車両情報に基づいてモータトルク指令値を設定し、駆動輪につながるモータのトルクを制御する電動車両の制御方法であって、
    左右の前記駆動輪が前記モータをそれぞれ別個に備え、
    前記モータトルク指令値に基づいて複数の前記モータそれぞれに対する目標トルク指令値を算出し、
    前記モータの回転角速度を検出し、
    前記目標トルク指令値を入力とし、車両の駆動力伝達系の捻り振動を抑制する制振制御を施した最終トルク指令値を算出する制振制御を前記モータのそれぞれに実行し、
    前記制振制御では、
    前記目標トルク指令値に基づくフィードフォワード演算により第1トルク指令値を算出し、
    前記第1トルク指令値に基づいて、前記モータに対するトルク指令値の入力から前記モータの回転角速度までの伝達特性を模擬した第1車両モデルを用いて前記モータの回転角速度を推定し、
    前記車両モデルの逆特性と、車両の駆動軸ねじり振動周波数近傍の周波数を中心周波数とするバンドパスフィルタとで構成されるフィルタを用いて、前記モータの回転角速度の検出値と推定値との偏差から第2トルク指令値を算出し、
    前記第1トルク指令値と前記第2トルク指令値とを加算して得られる最終トルク指令値に従って前記モータのトルクを制御し、
    一方の前記駆動輪につながる前記モータを第1モータとし、他方の前記駆動輪につながる前記モータを第2モータとした場合に、前記第2モータに対する前記第1トルク指令値から前記第1モータの回転角速度までの伝達特性を模擬した第2車両モデルを用いて、前記第1モータの回転角速度の推定値を補正する、
    ことを特徴とする電動車両の制御方法。
  2. 請求項1に記載の電動車両の制御方法において、
    前記車両が前記左右の駆動輪とは別の駆動輪につながる独立したモータを一つ以上さらに備え、
    複数の前記モータそれぞれに対する前記目標トルク指令値に基づいて、当該複数の前記モータそれぞれの回転角速度を推定し、
    前記制振制御では、推定した前記モータそれぞれの回転角速度に基づいて、当該複数の前記モータそれぞれに対する前記最終トルク指令値を算出する、
    ことを特徴とする電動車両の制御方法。
  3. 請求項1または2に記載の電動車両の制御方法において、
    前記車両が前記左右の駆動輪とは別の駆動輪につながる独立したモータを一つ以上さらに備え、
    前記第1車両モデルは、当該複数の前記モータそれぞれに対するトルク指令値の入力から当該複数の前記モータそれぞれの回転角速度までの伝達特性を模擬して構成され、
    前記制振制御では、当該第1車両モデルを用いて複数の前記モータそれぞれの回転角速度を推定する、
    ことを特徴とする電動車両の制御方法。
  4. 請求項3に記載の電動車両の制御方法において、
    前記制振制御は、
    前記第1車両モデルを用いて、前記第1トルク指令値から複数の前記モータそれぞれの駆動軸ねじり角速度推定値を算出するとともに、複数の前記モータに対するそれぞれの前記目標トルク指令値から前記駆動軸ねじり角速度推定値に所定のゲインを乗じた値を減算することにより前記第1トルク指令値を算出する、
    ことを特徴とする電動車両の制御方法。
  5. 請求項3または4に記載の電動車両の制御方法において、
    複数の前記モータの駆動軸ねじり振動周波数が異なる場合は、複数の前記モータに対する前記第1トルク指令値を算出するフィードフォワード演算において使用する規範応答を一致させる、
    電動車両の制御方法。
  6. 請求項5に記載の電動車両の制御方法において、
    複数の前記モータの駆動軸ねじり振動周波数が異なる場合は、複数の前記モータに対する前記第1トルク指令値を算出するフィードフォワード演算において使用する規範応答を、前記駆動軸ねじり振動周波数が最も小さい前記モータに対する前記第1トルク指令値を算出するフィードフォワード演算において使用する規範応答に一致させる、
    電動車両の制御方法。
  7. 請求項5に記載の電動車両の制御方法において、
    複数の前記モータの駆動軸ねじり振動周波数を減衰させる伝達特性を有するフィルタを用いたフィードフォワード演算により前記第1トルク指令値を算出する、
    電動車両の制御方法。
  8. 請求項1から3のいずれか一項に記載の電動車両の制御方法において、
    複数の前記モータのうち、一の前記モータに対する前記第1トルク指令値から少なくとも一つ以上の他の前記モータの回転角速度までの伝達特性を模擬した前記第2車両モデルは、複数の前記モータの少なくとも一つ以上の駆動軸ねじり振動周波数をカットオフ周波数に設定したフィルタで近似される、
    電動車両の制御方法。
  9. 請求項1から3のいずれか一項に記載の電動車両の制御方法において、
    複数の前記モータのうち、一の前記モータに対する前記第1トルク指令値から少なくとも一つ以上の他の前記モータの回転角速度までの伝達特性を模擬した前記第2車両モデルは、前記一の前記モータに対する前記第1トルク指令値から少なくとも一つ以上の他の前記モータの回転角速度までの伝達特性のゲイン成分を構成するように近似される、
    電動車両の制御方法。
  10. 請求項1から3のいずれか一項に記載の電動車両の制御方法において、
    複数の前記モータのうち、一の前記モータに対する前記第1トルク指令値から少なくとも一つ以上の他の前記モータの回転角速度までの伝達特性を模擬した前記第2車両モデルは、分母に駆動軸ねじり振動周波数に起因する減衰係数を有し、
    前記減衰係数が1未満となる特性を有する場合は、当該減衰係数を1以上の値に設定する、
    電動車両の制御方法。
  11. 車両情報に基づいてモータトルク指令値を設定し、駆動輪につながるモータのトルクを制御するコントローラを備える電動車両の制御装置であって、
    左右の前記駆動輪が駆動源としての前記モータをそれぞれ別個に有する場合は、
    前記コントローラは、
    前記モータトルク指令値を複数の前記モータそれぞれに対する目標トルク指令値に分配し、
    前記目標トルク指令値を入力とし、車両の駆動力伝達系の捻り振動を抑制する制振制御を施した最終トルク指令値を算出する制振制御を前記モータのそれぞれに実行し、
    前記制振制御では、
    前記目標トルク指令値に基づくフィードフォワード演算により第1トルク指令値を算出し、
    前記モータの回転角速度を検出し、
    前記第1トルク指令値に基づいて、前記モータに対するトルク指令値の入力から前記モータの回転角速度までの伝達特性を模擬した第1車両モデルを用いて前記モータの回転角速度を推定し、
    前記車両モデルの逆特性と、車両の駆動軸ねじり振動周波数近傍の周波数を中心周波数とするバンドパスフィルタとで構成されるフィルタを用いて、前記モータの回転角速度の検出値と推定値との偏差から第2トルク指令値を算出し、
    前記第1トルク指令値と前記第2トルク指令値とを加算して得られる前記最終トルク指令値に従って前記モータのトルクを制御し、
    一方の前記駆動輪につながる前記モータを第1モータとし、他方の前記駆動輪につながる前記モータを第2モータとした場合に、前記第2モータに対する前記第1トルク指令値から前記第1モータの回転角速度までの伝達特性を模擬した第2車両モデルを用いて、前記第1モータの回転角速度の推定値を補正する、
    ことを特徴とする電動車両の制御装置。
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