JP6953076B2 - チップの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、板状の被加工物を分割して複数のチップを製造するチップの製造方法に関する。
ウェーハに代表される板状の被加工物(ワーク)を複数のチップへと分割するために、透過性のあるレーザビームを被加工物の内部に集光させて、多光子吸収により改質された改質層(改質領域)を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。改質層は、他の領域に比べて脆いので、分割予定ライン(ストリート)に沿って改質層を形成してから被加工物に力を加えることで、この改質層を起点に被加工物を複数のチップへと分割できる。
改質層が形成された被加工物に力を加える際には、例えば、伸張性のあるエキスパンドシート(エキスパンドテープ)を被加工物に貼って拡張する方法が採用される(例えば、特許文献2参照)。この方法では、通常、レーザビームを照射して被加工物に改質層を形成する前に、エキスパンドシートを被加工物に貼り、その後、改質層を形成してからエキスパンドシートを拡張して被加工物を複数のチップへと分割する。
特開2002−192370号公報 特開2010−206136号公報
ところが、上述のようなエキスパンドシートを拡張する方法では、使用後のエキスパンドシートを再び使用することができないので、チップの製造に要する費用も高くなり易い。特に、粘着材がチップに残留し難い高性能なエキスパンドシートは、価格も高いので、そのようなエキスパンドシートを用いると、チップの製造に要する費用も高くなる。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エキスパンドシートを用いることなく板状の被加工物を分割して複数のチップを製造できるチップの製造方法を提供することである。
本発明の一態様によれば、交差する複数の分割予定ラインによってチップとなる複数の領域に区画されたチップ領域と、該チップ領域を囲む外周余剰領域と、を有するガラス基板から複数の該チップを製造するチップの製造方法であって、ガラス基板を保持テーブルで直に保持する保持ステップと、該保持ステップを実施した後に、ガラス基板に対して透過性を有する波長のレーザビームの集光点を該保持テーブルに保持されたガラス基板の内部に位置づけるように該分割予定ラインに沿ってガラス基板の該チップ領域にのみ該レーザビームを照射し、該チップ領域の該分割予定ラインに沿って改質層を形成するとともに、該外周余剰領域を改質層が形成されていない補強部とするレーザ加工ステップと、該レーザ加工ステップを実施した後に、該保持テーブルからガラス基板を搬出する搬出ステップと、該搬出ステップを実施した後に、ガラス基板に力を付与してガラス基板を個々の該チップへと分割する分割ステップと、を備え、該分割ステップでは、複数の該分割予定ラインにより分けられるガラス基板の複数の部分をそれぞれ複数の保持部で保持し、該複数の保持部に対して互いに離れる方向に相対的に移動させる力を付与してガラス基板を複数の該分割予定ラインに沿って一度に分割する方法で、ガラス基板を個々の該チップへと分割するチップの製造方法が提供される。
本発明の一態様において、該レーザ加工ステップを実施した後、該分割ステップを実施する前に、該補強部を除去する補強部除去ステップを更に備えても良い。また、本発明の一態様において、該保持テーブルの上面は、柔軟な材料によって構成されており、該保持ステップでは、該柔軟な材料でガラス基板の表面側を保持しても良い。
本発明の一態様に係るチップの製造方法では、ガラス基板を保持テーブルで直に保持した状態で、ガラス基板のチップ領域にのみレーザビームを照射して分割予定ラインに沿う改質層を形成し、その後、分割予定ラインにより分けられるガラス基板の複数の部分をそれぞれ複数の保持部で保持し、複数の保持部に対して互いに離れる方向に相対的に移動させる力を付与してガラス基板を複数の分割予定ラインに沿って分割する方法で、ガラス基板を個々のチップへと分割するので、ガラス基板に力を加えて個々のチップへと分割するためにエキスパンドシートを用いる必要がない。このように、本発明の一態様に係るチップの製造方法によれば、エキスパンドシートを用いることなく板状の被加工物であるガラス基板を分割して複数のチップを製造できる。
また、本発明の一態様に係るチップの製造方法では、ガラス基板のチップ領域にのみレーザビームを照射して分割予定ラインに沿う改質層を形成するとともに、外周余剰領域を改質層が形成されていない補強部とするので、この補強部によってチップ領域は補強される。よって、搬送等の際に加わる力によってガラス基板が個々のチップへと分割されてしまい、ガラス基板を適切に搬送できなくなることもない。
被加工物の構成例を模式的に示す斜視図である。 レーザ加工装置の構成例を模式的に示す斜視図である。 図3(A)は、保持ステップについて説明するための断面図であり、図3(B)は、レーザ加工ステップについて説明するための断面図である。 図4(A)は、レーザ加工ステップの後の被加工物の状態を模式的に示す平面図であり、図4(B)は、レーザ加工ステップの後の被加工物の状態を模式的に示す断面図である。 図5(A)及び図5(B)は、補強部除去ステップについて説明するための断面図である。 分割装置等の構成例を模式的に示す斜視図である。 図7(A)は、分割装置の一部を模式的に示す断面図であり、図7(B)は、図7(A)の一部を拡大して示す断面図である。 分割ステップで被加工物が吸着、保持される様子について説明するための斜視図である。 図9(A)は、分割ステップで被加工物が吸着、保持される様子について説明するための断面図であり、図9(B)は、分割ステップで被加工物が分割される様子について説明するための断面図である。 変形例に係る保持ステップについて説明するための断面図である。 図11(A)は、変形例に係る分割ステップについて説明するための断面図であり、図11(B)は、変形例に係る分割ステップでチップ領域を分割する前の被加工物の状態を模式的に示す平面図である。
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。本実施形態に係るチップの製造方法は、保持ステップ(図3(A)参照)、レーザ加工ステップ(図3(B)、図4(A)及び図4(B)参照)、搬出ステップ、補強部除去ステップ(図5(A)及び図5(B)参照)、及び分割ステップ(図6、図7(A)、図7(B)、図8、図9(A)及び図9(B)参照)を含む。
保持ステップでは、分割予定ラインによって複数の領域に区画されたチップ領域と、チップ領域を囲む外周余剰領域と、を有する被加工物(ワーク)をチャックテーブル(保持テーブル)で直に保持する。レーザ加工ステップでは、被加工物に対して透過性を有する波長のレーザビームを照射し、分割予定ラインに沿う改質層(改質領域)をチップ領域に形成するとともに、外周余剰領域を改質層が形成されていない補強部とする。
搬出ステップでは、保持テーブルから被加工物を搬出する。補強部除去ステップでは、被加工物から補強部を除去する。分割ステップでは、分割予定ラインにより分けられる被加工物の複数の部分をそれぞれ複数の保持部で保持し、複数の保持部に対して互いに離れる方向に相対的に移動させる力を付与して被加工物を複数の分割予定ラインに沿って分割する方法で、この被加工物を複数のチップへと分割する。以下、本実施形態に係るチップの製造方法について詳述する。
図1は、本実施形態で使用される被加工物(ワーク)11の構成例を模式的に示す斜視図である。図1に示すように、被加工物11は、例えば、シリコン(Si)、ヒ化ガリウム(GaAs)、リン化インジウム(InP)、窒化ガリウム(GaN)、シリコンカーバイド(SiC)等の半導体、サファイア(Al)、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等の誘電体(絶縁体)、又は、タンタル酸リチウム(LiTa)、ニオブ酸リチウム(LiNb)等の強誘電体(強誘電体結晶)でなる円盤状のウェーハ(基板)である。
被加工物11の表面11a側は、交差する複数の分割予定ライン(ストリート)13でチップとなる複数の領域15に区画されている。なお、以下では、チップとなる複数の領域15の全てを含む概ね円形の領域をチップ領域11cと呼び、チップ領域11cを囲む環状の領域を外周余剰領域11dと呼ぶ。
チップ領域11c内の各領域15には、必要に応じて、IC(Integrated Circuit)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)、フォトダイオード(Photodiode)、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタ、BAW(Bulk Acoustic Wave)フィルタ等のデバイスが形成されている。
この被加工物11を分割予定ライン13に沿って分割することで、複数のチップが得られる。具体的には、被加工物11がシリコンウェーハの場合には、例えば、メモリやセンサ等として機能するチップが得られる。被加工物11がヒ化ガリウム基板やリン化インジウム基板、窒化ガリウム基板の場合には、例えば、発光素子や受光素子等として機能するチップが得られる。
被加工物11がシリコンカーバイド基板の場合には、例えば、パワーデバイス等として機能するチップが得られる。被加工物11がサファイア基板の場合には、例えば、発光素子等として機能するチップが得られる。被加工物11がソーダガラスやホウケイ酸ガラス、石英ガラス等でなるガラス基板の場合には、例えば、光学部品やカバー部材(カバーガラス)として機能するチップが得られる。
被加工物11がタンタル酸リチウムや、ニオブ酸リチウム等の強誘電体でなる強誘電体基板(強誘電体結晶基板)の場合には、例えば、フィルタやアクチュエータ等として機能するチップが得られる。なお、被加工物11の材質、形状、構造、大きさ、厚み等に制限はない。同様に、チップとなる領域15に形成されるデバイスの種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。チップとなる領域15には、デバイスが形成されていなくても良い。
本実施形態に係るチップの製造方法では、被加工物11として円盤状のガラス基板を用い、複数のチップを製造する。具体的には、まず、この被加工物11をチャックテーブルで直に保持する保持ステップを行う。図2は、本実施形態で使用されるレーザ加工装置の構成例を模式的に示す斜視図である。
図2に示すように、レーザ加工装置2は、各構成要素が搭載される基台4を備えている。基台4の上面には、被加工物11を吸引、保持するためのチャックテーブル(保持テーブル)6をX軸方向(加工送り方向)及びY軸方向(割り出し送り方向)に移動させる水平移動機構8が設けられている。水平移動機構8は、基台4の上面に固定されX軸方向に概ね平行な一対のX軸ガイドレール10を備えている。
X軸ガイドレール10には、X軸移動テーブル12がスライド可能に取り付けられている。X軸移動テーブル12の裏面側(下面側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、X軸ガイドレール10に概ね平行なX軸ボールネジ14が螺合されている。
X軸ボールネジ14の一端部には、X軸パルスモータ16が連結されている。X軸パルスモータ16でX軸ボールネジ14を回転させることにより、X軸移動テーブル12はX軸ガイドレール10に沿ってX軸方向に移動する。X軸ガイドレール10に隣接する位置には、X軸方向においてX軸移動テーブル12の位置を検出するためのX軸スケール18が設置されている。
X軸移動テーブル12の表面(上面)には、Y軸方向に概ね平行な一対のY軸ガイドレール20が固定されている。Y軸ガイドレール20には、Y軸移動テーブル22がスライド可能に取り付けられている。Y軸移動テーブル22の裏面側(下面側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Y軸ガイドレール20に概ね平行なY軸ボールネジ24が螺合されている。
Y軸ボールネジ24の一端部には、Y軸パルスモータ26が連結されている。Y軸パルスモータ26でY軸ボールネジ24を回転させることにより、Y軸移動テーブル22はY軸ガイドレール20に沿ってY軸方向に移動する。Y軸ガイドレール20に隣接する位置には、Y軸方向においてY軸移動テーブル22の位置を検出するためのY軸スケール28が設置されている。
Y軸移動テーブル22の表面側(上面側)には、支持台30が設けられており、この支持台30の上部には、チャックテーブル6が配置されている。チャックテーブル6の表面(上面)は、上述した被加工物11の裏面11b側(又は表面11a側)を吸引、保持する保持面6aになっている。保持面6aは、例えば、酸化アルミニウム等の硬度が高い多孔質材で構成されている。ただし、保持面6aは、ポリエチレンやエポキシ等の樹脂に代表される柔軟な材料で構成されていても良い。
この保持面6aは、チャックテーブル6の内部に形成された吸引路6b(図3(A)等参照)やバルブ32(図3(A)等参照)等を介して吸引源34(図3(A)等参照)に接続されている。チャックテーブル6の下方には、回転駆動源(不図示)が設けられており、チャックテーブル6は、この回転駆動源によってZ軸方向に概ね平行な回転軸の周りに回転する。
水平移動機構8の後方には、柱状の支持構造36が設けられている。支持構造36の上部には、Y軸方向に伸びる支持アーム38が固定されており、この支持アーム38の先端部には、被加工物11に対して透過性を有する波長(吸収され難い波長)のレーザビーム17(図3(B)参照)をパルス発振して、チャックテーブル6上の被加工物11に照射するレーザ照射ユニット40が設けられている。
レーザ照射ユニット40に隣接する位置には、被加工物11の表面11a側又は裏面11b側を撮像するカメラ42が設けられている。カメラ42で被加工物11等を撮像して形成された画像は、例えば、被加工物11とレーザ照射ユニット40との位置等を調整する際に使用される。
チャックテーブル6、水平移動機構8、レーザ照射ユニット40、カメラ42等の構成要素は、制御ユニット(不図示)に接続されている。制御ユニットは、被加工物11が適切に加工されるように各構成要素を制御する。
図3(A)は、保持ステップについて説明するための断面図である。なお、図3(A)では、一部の構成要素を機能ブロックで示している。保持ステップでは、図3(A)に示すように、例えば、被加工物11の裏面11bをチャックテーブル6の保持面6aに接触させる。そして、バルブ32を開いて吸引源34の負圧を保持面6aに作用させる。
これにより、被加工物11は、表面11a側が上方に露出した状態で保持テーブル6に吸引、保持される。なお、本実施形態では、図3(A)に示すように、被加工物11の裏面11b側をチャックテーブル6で直に保持する。つまり、本実施形態では、被加工物11に対してエキスパンドシートを貼る必要がない。
保持ステップの後には、被加工物11に対して透過性を有する波長のレーザビーム17を照射し、分割予定ライン13に沿う改質層を形成するレーザ加工ステップを行う。図3(B)は、レーザ加工ステップについて説明するための断面図であり、図4(A)は、レーザ加工ステップの後の被加工物11の状態を模式的に示す平面図であり、図4(B)は、レーザ加工ステップの後の被加工物11の状態を模式的に示す断面図である。なお、図3(B)では、一部の構成要素を機能ブロックで示している。
レーザ加工ステップでは、まず、チャックテーブル6を回転させて、例えば、対象となる分割予定ライン13の延びる方向をX軸方向に対して平行にする。次に、チャックテーブル6を移動させて、対象となる分割予定ライン13の延長線上にレーザ照射ユニット40の位置を合わせる。そして、図3(B)に示すように、X軸方向(すなわち、対象の分割予定ライン13の延びる方向)にチャックテーブル6を移動させる。
その後、対象となる分割予定ライン13上の2箇所に存在するチップ領域11cと外周余剰領域11dとの境界の一方の直上にレーザ照射ユニット40が到達したタイミングで、このレーザ照射ユニット40からレーザビーム17の照射を開始する。本実施形態では、図3(B)に示すように、被加工物11の上方に配置されたレーザ照射ユニット40から、被加工物11の表面11aに向けてレーザビーム17が照射される。
このレーザビーム17の照射は、レーザ照射ユニット40が、対象となる分割予定ライン13上の2箇所に存在するチップ領域11cと外周余剰領域11dとの境界の他方の直上に到達するまで続けられる。つまり、ここでは、対象の分割予定ライン13に沿ってチップ領域11c内にのみレーザビーム17を照射する。
また、このレーザビーム17は、被加工物11の内部の表面11a(又は裏面11b)から所定の深さの位置に集光点を位置付けるように照射される。このように、被加工物11に対して透過性を有する波長のレーザビーム17を、被加工物11の内部に集光させることで、集光点及びその近傍で被加工物11の一部を多光子吸収により改質し、分割の起点となる改質層(改質領域)19を形成できる。本実施形態では、対象の分割予定ライン13に沿ってチップ領域11c内にのみレーザビーム17を照射するので、対象の分割予定ライン13に沿ってチップ領域11c内にのみ改質層19が形成される。
対象の分割予定ライン13に沿って所定の深さの位置に改質層19を形成した後には、同様の手順で、対象の分割予定ライン13に沿って別の深さの位置に改質層19を形成する。具体的には、例えば、図4(B)に示すように、被加工物11の表面11a(又は裏面11b)からの深さが異なる3つの位置に改質層19(第1改質層19a、第2改質層19b、第3改質層19c)を形成する。
ただし、1つの分割予定ライン13に沿って形成される改質層19の数や位置に特段の制限はない。例えば、1つの分割予定ライン13に沿って形成される改質層19の数を1つにしても良い。また、改質層19は、表面11a(又は裏面11b)にクラックが到達する条件で形成されることが望ましい。もちろん、表面11a及び裏面11bの両方にクラックが到達する条件で改質層19を形成しても良い。これにより、被加工物11をより適切に分割できるようになる。
被加工物11がシリコンウェーハの場合には、例えば、次のような条件で改質層19が形成される。
被加工物:シリコンウェーハ
レーザビームの波長:1340nm
レーザビームの繰り返し周波数:90kHz
レーザビームの出力:0.1W〜2W
チャックテーブルの移動速度(加工送り速度):180mm/s〜1000mm/s、代表的には、500mm/s
被加工物11がヒ化ガリウム基板やリン化インジウム基板の場合には、例えば、次のような条件で改質層19が形成される。
被加工物:ヒ化ガリウム基板、リン化インジウム基板
レーザビームの波長:1064nm
レーザビームの繰り返し周波数:20kHz
レーザビームの出力:0.1W〜2W
チャックテーブルの移動速度(加工送り速度):100mm/s〜400mm/s、代表的には、200mm/s
被加工物11がサファイア基板の場合には、例えば、次のような条件で改質層19が形成される。
被加工物:サファイア基板
レーザビームの波長:1045nm
レーザビームの繰り返し周波数:100kHz
レーザビームの出力:0.1W〜2W
チャックテーブルの移動速度(加工送り速度):400mm/s〜800mm/s、代表的には、500mm/s
被加工物11がタンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の強誘電体でなる強誘電体基板の場合には、例えば、次のような条件で改質層19が形成される。
被加工物:タンタル酸リチウム基板、ニオブ酸リチウム基板
レーザビームの波長:532nm
レーザビームの繰り返し周波数:15kHz
レーザビームの出力:0.02W〜0.2W
チャックテーブルの移動速度(加工送り速度):270mm/s〜420mm/s、代表的には、300mm/s
被加工物11がソーダガラスやホウケイ酸ガラス、石英ガラス等でなるガラス基板の場合には、例えば、次のような条件で改質層19が形成される。
被加工物:ソーダガラス基板、ホウケイ酸ガラス基板、石英ガラス基板
レーザビームの波長:532nm
レーザビームの繰り返し周波数:50kHz
レーザビームの出力:0.1W〜2W
チャックテーブルの移動速度(加工送り速度):300mm/s〜600mm/s、代表的には、400mm/s
被加工物11が窒化ガリウム基板の場合には、例えば、次のような条件で改質層19が形成される。
被加工物:窒化ガリウム基板
レーザビームの波長:532nm
レーザビームの繰り返し周波数:25kHz
レーザビームの出力:0.02W〜0.2W
チャックテーブルの移動速度(加工送り速度):90mm/s〜600mm/s、代表的には、150mm/s
被加工物11がシリコンカーバイド基板の場合には、例えば、次のような条件で改質層19が形成される。
被加工物:シリコンカーバイド基板
レーザビームの波長:532nm
レーザビームの繰り返し周波数:25kHz
レーザビームの出力:0.02W〜0.2W、代表的には、0.1W
チャックテーブルの移動速度(加工送り速度):90mm/s〜600mm/s、代表的には、シリコンカーバイド基板の劈開方向で90mm/s、非劈開方向で400mm/s
対象の分割予定ライン13に沿って必要な数の改質層19を形成した後には、上述の動作を繰り返し、他の全ての分割予定ライン13に沿って改質層19を形成する。図4(A)に示すように、全ての分割予定ライン13に沿って改質層19が形成されると、レーザ加工ステップは終了する。
本実施形態では、分割予定ライン13に沿ってチップ領域11c内にのみ改質層19を形成し、外周余剰領域11dには改質層19を形成しないので、この外周余剰領域11dによって被加工物11の強度が保たれる。これにより、搬送等の際に加わる力によって被加工物11が個々のチップへと分割されてしまうことはない。このように、レーザ加工ステップの後の外周余剰領域11dは、改質層19が形成されたチップ領域11cを補強するための補強部として機能する。
また、本実施形態では、外周余剰領域11dに改質層19を形成しないので、例えば、改質層19から伸長するクラックが表面11a及び裏面11bの両方に到達し、被加工物11が完全に分割された状況でも、各チップが脱落、離散することはない。一般に、被加工物11に改質層19が形成されると、この改質層19の近傍で被加工物11は膨張する。本実施形態では、改質層19の形成によって発生する膨張の力を、補強部として機能するリング状の外周余剰領域11dで内向きに作用させることで、各チップを押さえつけ、脱落、離散を防止している。
レーザ加工ステップの後には、チャックテーブル6から被加工物11を搬出する搬出ステップを行う。具体的には、例えば、被加工物11の表面11a(又は、裏面11b)の全体を吸着、保持できる搬送ユニット(不図示)で被加工物11の表面11aの全体を吸着してから、バルブ32を閉じて吸引源34の負圧を遮断し、被加工物11を搬出する。なお、本実施形態では、上述のように、外周余剰領域11dが補強部として機能するので、搬送等の際に加わる力によって被加工物11が個々のチップへと分割されてしまい、被加工物11を適切に搬送できなくなることはない。
搬出ステップの後には、被加工物11から補強部を除去する補強部除去ステップを行う。図5(A)及び図5(B)は、補強部除去ステップについて説明するための断面図である。なお、図5(A)及び図5(B)では、一部の構成要素を機能ブロックで示している。補強部除去ステップは、例えば、図5(A)及び図5(B)に示す切削装置52を用いて行われる。
切削装置52は、被加工物11を吸引、保持するためのチャックテーブル54を備えている。このチャックテーブル54の上面の一部は、被加工物11のチップ領域11cを吸引、保持する保持面54aになっている。保持面54aは、チャックテーブル54の内部に形成された吸引路54bやバルブ56等を介して吸引源58に接続されている。
チャックテーブル54の上面の別の一部には、被加工物11の外周余剰領域11d(すなわち、補強部)を吸引、保持するための吸引路54cの一端が開口している。吸引路54cの他端側は、バルブ60等を介して吸引源58に接続されている。このチャックテーブル54は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、鉛直方向に概ね平行な回転軸の周りに回転する。
チャックテーブル54の上方には、切削ユニット62が配置されている。切削ユニット62は、保持面54aに対して概ね平行な回転軸となるスピンドル64を備えている。スピンドル64の一端側には、結合材に砥粒が分散されてなる環状の切削ブレード66が装着されている。
スピンドル64の他端側には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されており、スピンドル64の一端側に装着された切削ブレード66は、この回転駆動源から伝わる力によって回転する。切削ユニット62は、例えば、昇降機構(不図示)に支持されており、切削ブレード66は、この昇降機構によって鉛直方向に移動する。
なお、チャックテーブル54の上面には、被加工物11のチップ領域11cと外周余剰領域11dとの境界に対応する位置に、切削ブレード66との接触を防ぐための切削ブレード用逃げ溝(不図示)が形成されている。
補強部除去ステップでは、まず、被加工物11の裏面11bをチャックテーブル54の保持面54aに接触させる。そして、バルブ56,60を開き、吸引源58の負圧を保持面54a等に作用させる。これにより、被加工物11は、表面11a側が上方に露出した状態でチャックテーブル54に吸引、保持される。なお、本実施形態では、図5(A)に示すように、被加工物11の裏面11b側をチャックテーブル54で直に保持する。つまり、ここでも、被加工物11に対してエキスパンドシートを貼る必要がない。
次に、切削ブレード66を回転させて、被加工物11のチップ領域11cと外周余剰領域11dとの境界に切り込ませる。併せて、図5(A)に示すように、チャックテーブル54を、鉛直方向に概ね平行な回転軸の周りに回転させる。これにより、チップ領域11cと外周余剰領域11dとの境界に沿って被加工物11を切断できる。
その後、バルブ60を閉じて、被加工物11の外周余剰領域11dに対する吸引源58の負圧を遮断する。そして、図5(B)に示すように、チャックテーブル54から外周余剰領域11dを除去する。これにより、チャックテーブル54上には、被加工物11のチップ領域11cのみが残る。
補強部除去ステップの後には、被加工物11を個々のチップへと分割する分割ステップを行う。具体的には、分割予定ライン13により分けられる被加工物11の複数の部分をそれぞれ複数の保持部で保持し、複数の保持部に対して互いに離れる方向に相対的に移動させる力を付与して被加工物11を複数の分割予定ライン13に沿って分割する方法で、この被加工物11を分割する。
図6は、本実施形態の分割ステップで使用される分割装置等の構成例を模式的に示す斜視図であり、図7(A)は、分割装置の一部を模式的に示す断面図であり、図7(B)は、図7(A)の一部を拡大して示す断面図である。図6、図7(A)及び図7(B)に示すように、分割装置72は、概ね等間隔に配置された複数の静電吸着部材(保持部)74を含む。各静電吸着部材74は、所定の方向に長い直方体状(平板状又は棒状)に形成されており、その上面(吸着面)74a側で被加工物11の下面側(例えば、裏面11b側)を吸着、保持する。
静電吸着部材74の上面74aの長さ(上述した所定の方向に沿った長さ)は、例えば、分割の対象となる被加工物11(本実施形態では、チップ領域11c)の直径よりも長い。一方で、静電吸着部材74の上面74aの幅(上述した所定の方向に対して垂直な方向の長さ)は、被加工物11において隣接する2本の分割予定ライン13の間隔よりも狭い。よって、被加工物11の隣接する2本の分割予定ライン13の間の部分(分割後の小片に相当する部分)を、この静電吸着部材74で吸着、保持できる。
各静電吸着部材74の下面74bには、上述した所定の方向(すなわち、各静電吸着部材74の長手方向)に対して垂直な方向に延びる帯状の2本(2枚)の弾性シート(付与機構)76a,76bが接着剤78(図7(B))によって固定されている。具体的には、各静電吸着部材74の長手方向の一端側に、一方の弾性シート76aが固定されている。
また、各静電吸着部材74の長手方向の他端側に、他方の弾性シート76bが固定されている。各弾性シート76a,76bは、例えば、ゴム等の高弾性材料でなり、所定の伸縮性を有している。2本の弾性シート76a,76bによって、各静電吸着部材74は、その長手方向に対して垂直な方向に配列された状態で連結される。
ただし、弾性シート76a,76bの材質、構造、数量、配置等に特段の制限はない。例えば、伸縮性又は非伸縮性の繊維で構成される織物や編物等を弾性シート76a,76bとして用いても良い。また、本実施形態では、2本の弾性シート76a,76bによって複数の静電吸着部材74を連結しているが、1本(1枚)、又は3本(3枚)以上の弾性シートを用いて複数の静電吸着部材74を連結することもできる。
各弾性シート76a,76bの一端側は、静電吸着部材74の長手方向に概ね平行な回転軸を持つ円筒状(円柱状)のローラー(付与機構)80aに固定されている。このローラー80aは、モータ等の回転駆動源(付与機構)82aに連結されており、回転駆動源82aで発生する力によって回転軸の周りに回転する。
同様に、各弾性シート76a,76bの他端側は、各静電吸着部材74の長手方向に概ね平行な回転軸を持つ円筒状(円柱状)のローラー(付与機構)80bに固定されている。このローラー80bは、モータ等の回転駆動源(付与機構)82bに連結されており、回転駆動源82bで発生する力によって回転軸の周りに回転する。
回転駆動源82a,82bでローラー80a,80bを回転させることにより、弾性シート76a,76bをローラー80a,80bで巻き取ったり、弾性シート76a,76bをローラー80a,80bから繰り出したりして、この弾性シート76a,76bに掛かる張力を調整できる。
なお、本実施形態の分割装置72では、2組のローラー80a,80bと2組の回転駆動源82a,82bとを用いているが、例えば、1組のローラーと1組の回転駆動源とを用いて同等の機能を実現することもできる。この場合には、例えば、各弾性シート76a,76bの一端側(又は他端側)を固定し、他端側(又は一端側)に1組のローラーと1組の回転駆動源とを接続すれば良い。
図7(A)及び図7(B)に示すように、静電吸着部材74は、その長手方向に延びる柱状(棒状)の心材84aと、心材84aの周りを被覆する導電部材86aとを含んでいる。導電部材86aは、例えば、銅等の金属で構成され、静電吸着部材74の一方の電極として機能する。心材84aの材質、形状等に特段の制限はないが、本実施形態では、シリコンでなる角柱状の心材84aを用いる。
また、静電吸着部材74は、その長手方向に延びる柱状(棒状)の心材84bと、心材84bの周りを被覆する導電部材86bとを含んでいる。心材84bや導電部材86bの材質、形状等は、心材84aや導電部材86aの材質、形状等と同じで良い。なお、この導電部材86bは、静電吸着部材74の他方の電極として機能する。
心材84a及び導電部材86aと、心材84b及び導電部材86bとは、所定の間隔をあけて配置され、絶縁部材88で被覆されている。これにより、互いに平行な一対の電極が実現されている。なお、この絶縁部材88の上面が静電吸着部材74の上面74aとなり、絶縁部材88の下面が静電吸着部材74の下面74bとなる。
図6に示すように、各静電吸着部材74の一方の電極(導電部材86a)は、配線90やスイッチ92等を介して、直流電源(電源ユニット)94の正極に接続されている。また、各静電吸着部材74の他方の電極(導電部材86b)は、配線90等を介して、直流電源94の負極に接続されている。
よって、スイッチ92を導通(ON)状態にして、直流電源94の電圧を各静電吸着部材74の電極に加えることで、各静電吸着部材74の周りに電界を発生させることができる。複数の静電吸着部材74等の上方には、搬送ユニット96が配置されている。搬送ユニット96は、被加工物11の上面側(例えば、表面11a側)を吸着、保持して、この被加工物11を搬送する。
分割ステップでは、図6に示すように、まず、被加工物11の上面側(本実施形態では、表面11a側)を搬送ユニット96で吸着、保持する。次に、搬送ユニット96を移動させて、被加工物11の下面側(本実施形態では、裏面11b側)を複数の静電吸着部材74の上面74aに接触させる。この時、被加工物11の第1方向に延びる分割予定ライン13を、隣接する2個の静電吸着部材74の隙間に合わせるように、複数の静電吸着部材74と被加工物11との相対的な位置及び向きを搬送ユニット96で調整する。
その後、搬送ユニット96による被加工物11の吸着、保持を解除することで、被加工物11を複数の静電吸着部材74に載せることができる。なお、静電吸着部材74に被加工物11を載せる前には、スイッチ92を非導通(OFF)状態にしておく。また、回転駆動源82a,82bで弾性シート76a,76bに掛かる張力を調整し、静電吸着部材74の配列される周期(繰り返し周期)を第1方向に延びる分割予定ライン13の配列される周期(繰り返し周期)に合わせておく。
被加工物11を複数の静電吸着部材74に載せた後には、複数の静電吸着部材74で被加工物11を吸着、保持する。図8は、被加工物11が吸着、保持される様子について説明するための斜視図であり、図9(A)は、被加工物が吸着、保持される様子について説明するための断面図である。図8に示すように、被加工物11を吸着、保持する際には、スイッチ92を非導通状態から導通状態に切り替えて、直流電源94の電圧を各静電吸着部材74の電極に印加する。
これにより、各静電吸着部材74の周りに電界が発生し、その効果として、被加工物11と各静電吸着部材74との間に静電気の力が作用する。この静電気の力によって、図8及び図9(A)に示すように、被加工物11は、各静電吸着部材74に吸着、保持される。なお、被加工物11と各静電吸着部材74との間に作用する静電気の力には、クーロン力、ジョンソン・ラーベック力、グラジエント力等がある。
本実施形態では、被加工物11を複数の静電吸着部材74に載せる際に、第1方向に延びる分割予定ライン13の位置を、隣接する2個の静電吸着部材74の隙間に相当する位置に合わせている。そのため、各静電吸着部材74の周りに電界を発生させると、第1方向に延びる複数の分割予定ライン13によって分けられる複数の部分(分割後の小片に相当する部分)が、それぞれ、静電吸着部材74によって吸着、保持される。
複数の静電吸着部材74で被加工物11を吸着、保持した後には、第1方向に延びる複数の分割予定ライン13に沿って被加工物11を複数の小片に分割する。図9(B)は、被加工物11が分割される様子について説明するための断面図である。具体的には、弾性シート76a,76bを巻き取る方向にローラー80a,80bを回転させて、弾性シート76a,76bに掛かる張力(所定の方向に対して垂直な方向の張力)を増大させる。
すなわち、所定の方向に対して垂直な方向(ここでは、第1方向に対して垂直な方向)に引っ張る力を弾性シート76a,76bに作用させる。これにより、各静電吸着部材74には、各静電吸着部材74を所定の方向に対して垂直、且つ互いに離れる方向に相対的に移動させるような力が付与される。
上述のように、第1方向に延びる複数の分割予定ライン13には、それぞれ、分割の起点となる改質層19が形成されている。この改質層19は、被加工物11の他の領域に比べて脆い。そのため、被加工物11は、各静電吸着部材74を介して伝わる力によって、図9(B)に示すように、第1方向に延びる複数の分割予定ライン13に沿って複数の小片21に分割される。
第1方向に延びる全ての分割予定ライン13に沿って、被加工物11が複数の小片21に分割された後には、複数の静電吸着部材74に対して被加工物11を相対的に回転させる。具体的には、まず、複数の静電吸着部材74に保持されている被加工物11の上面側(本実施形態では、表面11a側)を搬送ユニット96で吸着、保持する。併せて、スイッチ92を非導通状態に切り替える。
次に、搬送ユニット96を上昇させて、各静電吸着部材74と被加工物11とを相対的に回転させる。具体的には、第1方向に交差する第2方向(本実施形態では、第1方向に対して垂直な方向)に延びる分割予定ライン13(第2分割予定ライン)を、隣接する2個の静電吸着部材74の隙間に合わせるように、複数の静電吸着部材74と被加工物11とを相対的に回転させる。そして、搬送ユニット96を下降させ、被加工物11の下面側(本実施形態では、裏面11b側)を再び複数の静電吸着部材74の上面74aに接触させる。
その後、搬送ユニット96による被加工物11の吸着、保持を解除することで、被加工物11を複数の静電吸着部材74に再び載せることができる。なお、静電吸着部材74に被加工物11を再び載せる前には、回転駆動源82a,82bで弾性シート76a,76bに掛かる張力を調整し、静電吸着部材74の配列される周期(繰り返し周期)を第2方向に延びる分割予定ライン13の配列される周期(繰り返し周期)に合わせておく。
被加工物11を再び静電吸着部材74に載せた後には、複数の静電吸着部材74で被加工物11を吸着、保持する。具体的には、スイッチ92を非導通状態から導通状態に切り替えて、直流電源94の電圧を各静電吸着部材74の電極に印加する。これにより、各静電吸着部材74の周りに電界が発生し、その効果として、被加工物11と各静電吸着部材74との間に静電気の力が作用する。この静電気の力によって、被加工物11は、各静電吸着部材74に吸着、保持される。
本実施形態では、各静電吸着部材74と被加工物11とを相対的に回転させることによって、第2方向に延びる分割予定ライン13の位置を、隣接する2個の静電吸着部材74の隙間に相当する位置に合わせている。そのため、各静電吸着部材74の周りに電界を発生させると、第2方向に延びる複数の分割予定ライン13によって分けられる複数の部分(分割後の小片に対応する部分)が、それぞれ、静電吸着部材74によって吸着、保持される。
複数の静電吸着部材74で被加工物11を吸着、保持した後には、第2方向に延びる複数の分割予定ライン13に沿って被加工物11を複数の小片に分割する。具体的には、弾性シート76a,76bを巻き取る方向にローラー80a,80bを回転させて、弾性シート76a,76bに掛かる張力(所定の方向に対して垂直な方向の張力)を増大させる。
すなわち、所定の方向に対して垂直な方向(ここでは、第2方向に対して垂直な方向)に引っ張る力を弾性シート76a,76bに作用させる。これにより、各静電吸着部材74には、各静電吸着部材74を所定の方向に対して垂直、且つ互いに離れる方向に相対的に移動させるような力が付与される。
上述のように、第2方向に延びる複数の分割予定ライン13には、それぞれ、分割の起点となる改質層19が形成されている。この改質層19は、被加工物11の他の領域に比べて脆い。そのため、被加工物11は、各静電吸着部材74を介して伝わる力によって、第2方向に延びる複数の分割予定ライン13に沿って複数の小片に分割される。全ての分割予定ライン13に沿って被加工物11が個々のチップへと分割されると、分割ステップは終了する。
以上のように、本実施形態に係るチップの製造方法では、被加工物(ワーク)11をチャックテーブル(保持テーブル)6で直に保持した状態で、被加工物11のチップ領域11cにのみレーザビーム17を照射して分割予定ライン13に沿う改質層19を形成し、その後、分割予定ライン13により分けられる被加工物11の複数の部分をそれぞれ複数の静電吸着部材(保持部)74で保持し、複数の静電吸着部材74に対して互いに離れる方向に相対的に移動させる力を付与して被加工物11を複数の分割予定ライン13に沿って分割する方法で、被加工物11を個々のチップへと分割するので、被加工物11に力を加えて個々のチップへと分割するためにエキスパンドシートを用いる必要がない。このように、本実施形態に係るチップの製造方法によれば、エキスパンドシートを用いることなく板状の被加工物11であるガラス基板を分割して複数のチップを製造できる。
また、本実施形態に係るチップの製造方法では、被加工物11のチップ領域11cにのみレーザビーム17を照射して分割予定ライン13に沿う改質層19を形成するとともに、外周余剰領域11dを改質層19が形成されていない補強部とするので、この補強部によってチップ領域11cは補強される。よって、搬送等の際に加わる力によって被加工物11が個々のチップへと分割されてしまい、被加工物11を適切に搬送できなくなることもない。
なお、本発明は、上記実施形態等の記載に制限されず種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、被加工物11の裏面11b側をチャックテーブル6で直に保持して、表面11a側からレーザビーム17を照射しているが、被加工物11の表面11a側をチャックテーブル6で直に保持して、裏面11b側からレーザビーム17を照射しても良い。
図10は、変形例に係る保持ステップについて説明するための断面図である。この変形例に係る保持ステップでは、図10に示すように、例えば、ポリエチレンやエポキシ等の樹脂に代表される柔軟な材料でなる多孔質状のシート(ポーラスシート)44によって上面が構成されたチャックテーブル(保持テーブル)6を用いると良い。
このチャックテーブル6では、シート44の上面44aで被加工物11の表面11a側を吸引、保持することになる。これにより、表面11a側に形成されているデバイス等の破損を防止できる。このシート44はチャックテーブル6の一部であり、チャックテーブル6の本体等とともに繰り返し使用される。
ただし、チャックテーブル6の上面は、上述した多孔質状のシート44によって構成されている必要はなく、少なくとも、被加工物11の表面11a側に形成されているデバイス等を傷つけない程度に柔軟な材料で構成されていれば良い。また、シート44は、チャックテーブル6の本体に対して着脱できるように構成され、破損した場合等に交換できることが望ましい。
また、上記実施形態では、搬出ステップの後、分割ステップの前に、補強部除去ステップを行っているが、例えば、レーザ加工ステップの後、搬出ステップの前に、補強部除去ステップを行っても良い。
また、補強部除去ステップを省略することもできる。この場合には、例えば、補強部の幅が被加工物11の外周縁から2mm〜3mm程度になるように、レーザ加工ステップで改質層19を形成する範囲を調整すると良い。また、例えば、分割ステップでチップ領域11cを分割する前に、補強部に分割の起点となる溝を形成しても良い。図11(A)は、変形例に係る分割ステップについて説明するための断面図であり、図11(B)は、変形例に係る分割ステップでチップ領域11cを分割する前の被加工物11の状態を模式的に示す平面図である。
変形例に係る分割ステップでは、分割装置72で被加工物11を個々のチップへと分割する前に、上述した切削装置52を用いて分割の起点となる溝を形成する。具体的には、図11(A)及び図11(B)に示すように、外周余剰領域11d(すなわち、補強部)に切削ブレード66を切り込ませて、分割の起点となる溝11eを形成する。この溝11eは、例えば、分割予定ライン13に沿って形成されることが望ましい。このような溝11eを形成することにより、上述した分割装置72で被加工物11を外周余剰領域11dごと分割できるようになる。なお、変形例に係る分割ステップでは、切削装置52が備えるチャックテーブル54の吸引路54cやバルブ60等を省略できる。
また、上記実施形態の分割ステップでは、被加工物11の裏面11b側を下方に向けて、この裏面11b側を複数の静電吸着部材74で吸着、保持しているが、被加工物11の表面11a側を下方に向けて、この表面11a側を複数の静電吸着部材74で吸着、保持しても良い。
また、上記実施形態の分割装置72では、弾性シート76a,76b、ローラー80a,80b、及び回転駆動源82a,82bを用いて、複数の静電吸着部材74に力を付与しているが、この力を付与する付与機構の構造等に特段の制限はない。同様に、上記実施形態の分割装置72では、静電気の力で被加工物11を吸着、保持する複数の静電吸着部材74を用いているが、この複数の静電吸着部材74に代えて、真空吸着等の方法で被加工物11を吸着、保持する複数の吸着部材(保持部)を用いることもできる。
その他、上記実施形態及び変形例に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
11 被加工物(ワーク)
11a 表面
11b 裏面
11c チップ領域
11d 外周余剰領域
13 分割予定ライン(ストリート)
15 領域
17 レーザビーム
19 改質層(改質領域)
19a 第1改質層
19b 第2改質層
19c 第3改質層
2 レーザ加工装置
4 基台
6 チャックテーブル(保持テーブル)
6a 保持面
6b 吸引路
8 水平移動機構
10 X軸ガイドレール
12 X軸移動テーブル
14 X軸ボールネジ
16 X軸パルスモータ
18 X軸スケール
20 Y軸ガイドレール
22 Y軸移動テーブル
24 Y軸ボールネジ
26 Y軸パルスモータ
28 Y軸スケール
30 支持台
32 バルブ
34 吸引源
36 支持構造
38 支持アーム
40 レーザ照射ユニット
42 カメラ
44 シート(ポーラスシート)
44a 上面
52 切削装置
54 チャックテーブル(保持テーブル)
54a 保持面
54b 吸引路
54c 吸引路
56 バルブ
58 吸引源
60 バルブ
62 切削ユニット
64 スピンドル
66 切削ブレード
72 分割装置
74 静電吸着部材(保持部)
74a 上面(吸着面)
74b 下面
76a,76b 弾性シート(付与機構)
78 接着剤
80a,80b ローラー(付与機構)
82a,82b 回転駆動源(付与機構)
84a,84b 心材
86a,86b 導電部材
88 絶縁部材
90 配線
92 スイッチ
94 直流電源(電源ユニット)
96 搬送ユニット

Claims (3)

  1. 交差する複数の分割予定ラインによってチップとなる複数の領域に区画されたチップ領域と、該チップ領域を囲む外周余剰領域と、を有するガラス基板から複数の該チップを製造するチップの製造方法であって、
    ガラス基板を保持テーブルで直に保持する保持ステップと、
    該保持ステップを実施した後に、ガラス基板に対して透過性を有する波長のレーザビームの集光点を該保持テーブルに保持されたガラス基板の内部に位置づけるように該分割予定ラインに沿ってガラス基板の該チップ領域にのみ該レーザビームを照射し、該チップ領域の該分割予定ラインに沿って改質層を形成するとともに、該外周余剰領域を改質層が形成されていない補強部とするレーザ加工ステップと、
    該レーザ加工ステップを実施した後に、該保持テーブルからガラス基板を搬出する搬出ステップと、
    該搬出ステップを実施した後に、ガラス基板に力を付与してガラス基板を個々の該チップへと分割する分割ステップと、を備え、
    該分割ステップでは、複数の該分割予定ラインにより分けられるガラス基板の複数の部分をそれぞれ複数の保持部で保持し、該複数の保持部に対して互いに離れる方向に相対的に移動させる力を付与してガラス基板を複数の該分割予定ラインに沿って一度に分割する方法で、ガラス基板を個々の該チップへと分割することを特徴とするチップの製造方法。
  2. 該レーザ加工ステップを実施した後、該分割ステップを実施する前に、該補強部を除去する補強部除去ステップを更に備えることを特徴とする請求項1に記載のチップの製造方法。
  3. 該保持テーブルの上面は、柔軟な材料によって構成されており、
    該保持ステップでは、該柔軟な材料でガラス基板の表面側を保持することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のチップの製造方法。
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