しかしながら、前述した従来の押ボタン箱における表示器4の取付構造では、前面ケース3に対する表示器の固定に2本のネジ5が必要であった。そのため、部品点数が多くなり、組付工数が増大するばかりでなく、ネジ止め作業が面倒であり時間もかかるため、コストアップの要因となる虞があり、さらなるコスト低減のための改良が望まれていた。
また、防水用のパッキン6は、前面ケース3に対して両面テープにより予め取り付けておく必要があった。そのため、組付工数が増大し、装着性が良くないため、さらなる装着性の向上のための改良も望まれていた。
本発明は、以上のような従来の技術の有する問題点に着目してなされたものであり、筐体に表示器を簡易な構成で容易に固定することが可能であり、部品点数や組付工数が削減されてコスト低減を実現することができ、パッキンに関する装着性も向上させることができる表示器の取付構造を提供することを目的とする。
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1]筐体(11)の前面部(30)に表示器(100)を固定するための取付構造において、
前記前面部(30)には、前記表示器(100)の画面を裏側から合わせる開口部(31)が開設され、前記前面部(30)の裏側で前記開口部(31)の周囲に、前記表示器(100)を固定するための固着手段を備え、
前記表示器(100)は、該表示器(100)の画面をなす表示パネル(101)と、該表示パネル(101)とは互いに別体であり該表示パネル(101)を背面側から支えると共に、光源(120)が取り付けられて該光源(120)からの光を配光制御する光反射面部(112)が設けられた本体(110)と、を備え、
前記固着手段は、前記前面部(30)の裏側で前記開口部(31)を塞ぐように配置した前記表示パネル(101)の背面に前記表示器(100)の本体(110)を重ね合わせた状態で、該本体(110)を前記前面部(30)の裏側で前記開口部(31)の周囲の内壁に沿わせて下方向へ摺動させると、該摺動に伴い前記本体(110)および前記内壁の一方に設けられた係止爪(116)が、他方に設けられた被係止孔(33)にスナップフィット係合するように構成され、該スナップフィット係合により、前記表示器(100)の本体(110)は前記表示パネル(101)と共に、該表示パネル(101)が前記開口部(31)に合致する所定位置に固定され、
前記前面部(30)の内壁にて前記開口部(31)の下側に、前記係止爪(116)および前記被係止孔(33)の一方が設けられ、かつ他方が設けられた前記表示器(100)の本体(110)の下端縁が前記スナップフィット係合後に当接して位置決めされると共に、前記表示パネル(101)の下端側を受ける受け部(32,32a)を備え、
前記表示器(100)の本体(110)の上端縁に、前記表示パネル(101)が上方向へ動かないように押さえるリブ(111b)を設けると共に、前記表示パネル(101)の上端縁に、前記リブ(111b)が係合する凹溝(102)を設けたことを特徴とする表示器(100)の取付構造。
[2]前記受け部(32,32a)は、前記係止爪(116)および前記被係止孔(33)の他方が設けられた部位を間にして、前記表示器(100)の本体(110)の下端縁に沿うように両側方向へ複数に分断されて並ぶように、または一続きに連なって延びるように形成されたことを特徴とする前記[1]に記載の表示器(100)の取付構造。
[3]前記被係止孔(33)に前記係止爪(116)が係合する側の前記被係止孔(33)の周囲の基準面と、前記係止爪(116)が先端に設けられた板バネ片(115)にて前記係止爪(116)が突出する側の基準面との間には、前記受け部(32,32a)に前記表示器(100)の本体(110)の下端縁が当接して支持された時に隙間が生じることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の表示器(100)の取付構造。
[4]前記前面部(30)の内壁にて前記開口部(31)の両側に、前記表示器(100)の本体(110)の両側端が、前記スナップフィット係合後に外側から支えられる支え部(34)を備えることを特徴とする前記[1],[2]または[3]に記載の表示器(100)の取付構造。
[5]前記支え部(34)は、前記前面部(30)の内壁にて前記開口部(31)の両側で互いに対向する一対の断面L字形の爪状に形成され、前記表示器(100)の本体(110)の両側端には、該本体(110)を前記前面部(30)の内壁に対して直交方向から沿わせる時に、前記支え部(34)の先端を回避するために中央に向かって凹む溝部(117)が設けられていることを特徴とする前記[4]に記載の表示器(100)の取付構造。
[6]前記表示器(100)の画面の周囲と前記前面部(30)の内壁との間に介装されるパッキン(130)を備え、
前記パッキン(130)は、前記表示器(100)の画面側から被さるカバー状に形成され、前記スナップフィット係合時に予め前記表示器(100)の画面の周囲に被せることが可能であることを特徴とする前記[1],[2],[3],[4]または[5]に記載の表示器(100)の取付構造。
[7]前記筐体(11)は、歩行者用信号灯器における作動を指示する押ボタン箱(10)であり、
前記筐体(11)は、背面側となり前面側が開口したベース本体(20)と、該ベース本体(20)の開口を前方から覆うように組み合わされる前面ケース(30)とから構成され、
前記前面ケース(30)の前面側が、前記筐体(11)の前面部(30)となり、
前記表示器(100)は、歩行者支援に関する各種情報を表示するものであることを特徴とする前記[1],[2],[3],[4],[5]または[6]に記載の表示器(100)の取付構造。
次に、前述した解決手段に基づく作用を説明する。
前記[1]に記載の表示器(100)の取付構造によれば、筐体(11)の前面部(30)に、表示器(100)の画面を裏側から合わせる開口部(31)が開設されており、この開口部(31)の周囲にある固着手段によって表示器(100)の本体(110)を固定する。
すなわち、表示器(100)の本体(110)を、筐体(11)の前面部(30)の裏側で前記開口部(31)を塞ぐように配置した前記表示パネル(101)の背面に重ね合わせた状態で、前記開口部(31)の周囲の内壁に沿わせて下方向へ摺動させると、前記本体(110)および前記内壁の一方にある係止爪(116)が他方にある被係止孔(33)に係合する位置まで相対的に変化する。よって、表示器(100)を一方向へ摺動させるだけで、係止爪(116)が被係止孔(33)にスナップフィット係合し、表示器(100)の本体(110)は表示パネル(101)と共に、該表示パネル(101)が前記開口部(31)に合致する所定位置に固定される。
このような表示器(100)の取付構造によれば、筐体(11)の前面部(30)にネジ止めする場合に比べて、ネジが不要となって部品点数や組付工数が削減される。また、面倒なネジ止め作業も不要となり、作業時間を大幅に短縮することができる。しかも、ドライバー等の工具を用意する必要もなくなり、表示器(100)を筐体(11)に簡易な構成で容易に固定することができる。
また、前記前面部(30)の内壁にて開口部(31)の下側に、表示器(100)の受け部(32,32a)を備える。ここで受け部(32,32a)は、係止爪(116)および被係止孔(33)の一方を設ける部位としてだけでなく、表示器(100)の本体(110)の下端縁を当接させる位置決めとなる。さらに受け部(32,32a)は、表示パネル(101)の下端側を受けることになる。これにより、表示器(100)は、固着手段のスナップフィット係合だけでなく、受け部(32,32a)を介して下端縁より筐体(11)の前面部(30)に支えられ、所定位置より下方向へ移動することはない。
さらに、前記表示器(100)の本体(110)の上端縁には、前記表示パネル(101)が上方向へ動かないように押さえるリブ(111b)が設けられている。一方、前記表示パネル(101)の上端縁には、前記リブ(111b)が係合する凹溝(102)が設けられている。これにより、表示パネル(101)は、本体(110)の上方向へ動かないように押さえられる。
前記受け部(32,32a)は、例えば前記[2]に記載したように、前記係止爪(116)および前記被係止孔(33)の他方が設けられた部位を間にして、表示器(100)の本体(110)の下端縁に沿うように両側方向へ複数に分断されて並ぶように形成すると良い。この場合、受け部(32,32a)は、前記係止爪(116)等が設けられた部位(32)の他、その両側にも複数の受け部(32a)が間欠的に配置されることになる。
あるいは、前記係止爪(116)等が設けられた部位を含めて、前記表示器(100)の本体(110)の下端縁に沿うように両側方向へ一続きに連なるように形成しても良い。この場合、受け部(32,32a)は、表示器(100)の本体(110)の下端縁をその全域に亘って支持することになる。
何れの形態の受け部(32,32a)であっても、表示器(100)の下方向への移動を阻止する。ここで受け部(32,32a)を、表示器(100)の本体(110)の下端縁に対して背面側からも当接する断面L字形の爪状とすれば、表示器(100)が後方向、すなわち前面部(30)の内壁から離れる背面側へ移動することも阻止できる。
前記[3]に記載の表示器(100)の取付構造によれば、前記被係止孔(33)に前記係止爪(116)が係合する側の被係止孔(33)の周囲の基準面と、前記係止爪(116)が先端に設けられた板バネ片(115)にて係止爪(116)が突出する側の基準面との間には、前記受け部(32,32a)に表示器(100)の本体(110)の下端縁が当接して支持された時に隙間が生じている。
これにより、筐体(11)の外部より開口部(31)を通じて表示器(100)に、想定外の衝撃荷重が付与されたとしても、この衝撃荷重が、他の部位と比べて比較的脆弱となりやすい被係止孔(33)や被係止孔(33)がある部位間に直接伝わることはない。よって、衝撃荷重により固着手段が破損することはなく、スナップフィットの機能が失われる事態を防止することができる。
前記[4]に記載の表示器(100)の取付構造によれば、筐体(11)の前面部(30)の内壁にて開口部(31)の両側に、表示器(100)の本体(110)の両側端が、前記スナップフィット係合後に外側から支えられる支え部(34)を備える。これにより、表示器(100)は、スナップフィット係合だけでなく、支え部(34)を介して両側端からも筐体(11)の前面部(30)に支えられ、表示器(100)が両側方向へ移動することが阻止される。
支え部(34)に関しても、前記[5]に記載したように、表示器(100)の左右への移動を阻止するだけでなく、表示器(100)の本体(110)の両側端に対して背面側からも当接する断面L字形の爪状に形成すると良い。これにより、前記受け部(32,32a)とはまた別に支え部(34)によっても、表示器(100)が後方、すなわち前面部(30)の内壁から離れる背面側へ移動することを阻止することができる。
ここで表示器(100)の本体(110)の両側端には、該本体(110)を前面部(30)の内壁に対して直交方向から沿わせる時に、前記支え部(34)の先端を回避するために中央に向かって凹む溝部(117)を設けると良い。これにより、前記前面部(30)の内壁において、支え部(34)より上方に表示器(100)の本体(110)を、その高さ分の距離以上に摺動させるスペースが採れない場合でも対応することができる。
すなわち、表示器(100)を、その溝部(117)に支え部(34)が合致する位置から前面部(30)の内壁に沿わせることが可能となる。その後は、当該位置より表示器(100)の本体(110)の高さ分より少ない距離で、下方向へ摺動させることができる。
前記[6]に記載の表示器(100)の取付構造によれば、表示器(100)の画面の周囲と筐体(11)の前面部(30)の内壁との間にパッキン(130)が介装される。このパッキン(130)は、表示器(100)の画面側から被さるカバー状に形成され、スナップフィット係合時に予め表示器(100)の画面の周囲に被せた状態にすることができる。
これにより、従来のパッキン(6)(図20参照)のように、筐体(11)の前面部(30)に対して両面テープで予め取り付けておく必要がなく、パッキン(130)の装着性を向上させることができる。よって、いっそう簡易かつ迅速にパッキン(130)を含めて表示器(100)を筐体(11)に固定することができる。
以上の表示器(100)を固定する筐体(11)は、具体的には例えば前記[7]に記載したように、歩行者用信号灯器における作動を指示する押ボタン箱(10)に適用することができる。押ボタン箱(10)としての筐体(11)は、背面側となり前面側が開口したベース本体(20)と、該ベース本体(20)の開口を前方から覆うように組み合わされる前面ケース(30)とから構成される。ここで前面ケース(30)の前面側が、筐体(11)の前面部(30)となり、表示器(100)により、歩行者支援に関する各種情報を表示することができる。
本発明に係る表示器の取付構造によれば、筐体に表示器を簡易な構成で、ネジや工具を使うことなく容易に固定することが可能であり、部品点数や組付工数が削減されてコスト低減を実現することができる。また、表示器の画面の周囲と筐体の前面部の内壁との間におけるパッキンの装着性も向上させることができる。
以下、図面に基づき、本発明を代表する実施の形態を説明する。
図1〜図19は、本発明の実施の形態を示している。
本実施の形態に係る表示器100の取付構造は、筐体11の前面部に表示器100を固定するものである。以下、歩行者用信号灯器に付設される押ボタン箱10に適用した例について説明する。
図18に示す押ボタン箱10は、歩行者用信号灯器の作動を指示するものであり、例えば横断歩道の両端等に設置されている。押ボタン箱10は、筐体11を本体としており、筐体11の前面部には、歩行者支援に関する各種情報を表示する表示器100が設けられている。
筐体11は、その背面側となり前側は開口したベース本体20と、該ベース本体20の開口を前方から覆う前面ケース30とから成る。ベース本体20や前面ケース30は、例えばポリカーボネート等の樹脂材料から成形される。ここで前面ケース30が筐体11の前面部となり、その中央にスイッチ(押ボタン)40が設けられ、スイッチ40の上側に表示器100が設けられている。
図1,図2に示すように、前面ケース30の上部には、表示器100の画面を裏側から合わせる開口部31が開設されている。開口部31は、表示器100の画面よりも一回り小さい横長矩形である。前面ケース30の裏側で開口部31の周囲には、表示器100の本体110を固定するための固着手段が設けられている。
表示器100は、ディスプレイである表示パネル101と、該表示パネル101を背面側から支える本体110と、光源であるLED基板120とを備えている。図3〜図5に示すように、表示パネル101は、正面視で両側方向に延びる横長矩形であり、例えばポリカーボネート等の透光性材質から形成される。なお、表示パネル101の上端縁の両側の角隅は、上下の方向性を識別させるために切り欠かれている。
表示パネル101の正面は、そのまま表示器100の画面となり、表示パネル101の背面には、点灯時に表示する文字(各種情報)が直接印刷されている。ここでの印刷は、例えばシルク印刷が適しており、文字部分にのみ光が透過して、その他の部分は光が透過しないようにインクが塗られている。以下、表示器100の画面とは、表示パネル101の正面を指すものとする。また、表示パネル101の両側端には、それぞれ中央に向かって半円形に凹む一対の溝部103が設けられている
図6〜図9に示すように、本体110は、前記表示パネル101の背面に合致する形状の正面壁部111と、この正面壁部111の周囲を残して背面側に窪むように設けられた光反射面部112と、該光反射面部112の上端側でLED基板120を取り付ける基板取付部113とを備えている。本体110は、例えばポリカーボネート等の樹脂材料から形成される。
正面壁部111は、前記表示パネル101と同様に、正面視で両側方向に延びる横長矩形であり、その上端縁の両側の角隅は、表示パネル101に合わせて上下の方向性を識別させるために切り欠かれている。正面壁部111には、表示パネル101の画面のうち表示領域を背面側から縁取る横長矩形の開口部111aが設けられ、光反射面部112は、開口部111aの内側で背面側に窪むように設けられている。
また、正面壁部111の正面側で上端縁の略中央には、横長直線状に延びて前方向へ突出した押さえリブ111bが設けられている。押さえリブ111bは、正面壁部111を前記表示パネル101の背面に合わせた際に、表示パネル101が本体110の上方向へ動かないように押さえるための部位である。
図4,図1に示すように、表示パネル101の背面にて上端縁の略中央には、前記押さえリブ111bが係合する横長直線状に延びた凹溝102が設けられている。また、正面壁部111の両側端には、前記表示パネル101の溝部103に合致するように、それぞれ中央に向かって半円形に凹む一対の溝部117が設けられている。
光反射面部112は、基板取付部113の後端側より下方へ湾曲して延びる断面形状をなしており、その下端は前記開口部111aの下側内縁に連なっている。光反射面部112における反射面の具体的な形状は、その上端より下方向へ照射される後述のLED121からの直接光を、主に垂直方向へ配光制御するように設計されている。
すなわち、光反射面部112の反射面は、LED121に近い表示パネル101の上部だけでなく、LED121から遠い表示パネル101の下部にも集光させて明るくする放物面形状となっている。これにより、表示パネル101で表示する文字の均斉度を向上させ、文字の上部と下部の明るさの差を少なくする。また、長期使用によってLED121の光束維持率(明るさ)が低下しても、下部の文字の視認性を維持することができる。
光反射面部112の反射面は、LED121からの光を水平方向へも配光制御するように設計しても良い。光反射面部112における水平方向への配光は、後述のLED基板120上にLED121を狭い間隔で配置することでも行えるが(配光無制御)、水平方向へも反射面自体で配光制御すれば、使用するLED121の数を減らすことができる。また、反射面は鏡面(蒸着面)による配光制御とするが、白色塗料による拡散反射によるものでも可能となる。
図6〜図9に示すように、基板取付部113は、正面壁部111の背面側で、開口部111aの上側内縁より後方向へ所定幅で水平に延出する台座状に形成されている。基板取付部113に固定されたLED基板120は、LED121のある下面が正面壁部111の背面側で表示パネル101の背面と直交し、光反射面部112に対して上方向から光を垂直に照射するように配置されている。
図10,図11に示すように、LED基板120は、両側方向に沿って細幅に延びる横長矩形であり、その下面に表面実装型のチップ状LED121が所定間隔おきに複数配置されている。LED121は、一般的であるので詳細な説明は省略するが、LED基板120の下面に対して直交する光軸を中心に所定角度の放射範囲で光を出射するものである。LED121の発光色は任意に選択される。LED基板120は、その下面が実装面となり、LED121やその配線回路、抵抗の他、コネクタ122等が配置されている。
LED基板120におけるLED121等の関連部品の配置は、下面だけに集中した片面実装となっている。また、各LED121の具体的な配置は、互いに均等に並ぶ状態に限られることなく、例えば光反射面部112の両側端における輝度低下を防ぐために、LED基板120の両端部に若干寄せた配置としても良い。なお、LED121には、例えばコーティング剤を塗布する等の硫化(ガス)対策を施すと良い。
LED基板120を前記本体110の基板取付部113に取り付けるには、スナップフィットによる係合が用いられている。すなわち、図1,図9に示すように、基板取付部113の前端側が連なる正面壁部111の背面側上部には、LED基板120の前端縁を沿わせた際に係止できる引掛爪111cが設けられている。一方、引掛爪111cと対向する基板取付部113の後端側には突片113aが設けられ、この突片113aの略中央に、スナップフィットによりLED基板120の後端縁にある切欠溝123に係合する係止爪113bが設けられている。
LED基板120の前端縁を、基板取付部113の前端側に向けて斜め下方に傾けながら引掛爪111cに係止した後、この前端縁を支点として後端縁を下方へ押し込む。すると、LED基板120の後端縁の切欠溝123に対して、基板取付部113の後端側の係止爪113bが噛み合ってスナップフィットにより係合し、LED基板120は基板取付部113に固定される。なお、LED基板120を外す時は、係止爪113bを内側から押して切欠溝123から離脱させれば良い。
LED基板120の前端縁の一端には、基板取付部113の前端側にある位置決め突起113cに係合することで、LED基板120の前後の正しい取り付け向きを規制するための位置決め切欠124が設けられている。また、図7示すように、基板取付部113の前端側が連なる正面壁部111の背面側上部には、互いに間隔をあけて上下方向に延びる突条のリブ111dが2箇所に設けられている。各リブ111dに対してLED基板120の前端縁が当接することで、この前端縁の両端の角がLED基板120の前端縁の両端のアール面に干渉することを避けることができる。
以上のLED基板120の取付によれば、LED121からの照射光は、本体110の光反射面部112によって表示パネル101の背面側より前方向へ反射される。表示パネル101では、文字部分のみに光が透過するため、文字の形に光って見える。なお、表示器100で表示する各種情報は、図1,図18に示した例では、歩行者に待機を指示する「おまちください」の文字だが、他に「おしてください」等のスイッチ操作を促す文字であっても良く、様々な各種情報を表示することができる。
図1,図2に示すように、表示器100は、表示パネル101の画面の周囲と前面ケース30の内壁との間に介装されて防水性を高めるパッキン130を備えている。図12〜図15に示すように、パッキン130は、表示パネル101の正面から被さるカバー状に形成され、予め表示パネル101の周囲に被せた状態に仮止め可能である。パッキン130は、表示パネル101の周囲に沿って被さる枠組状であり、例えばシリコンやブチルゴム等の弾性材質から形成される。なお、パッキン130は、表示器100とは別の構成要素として捉えても良い。
パッキン130は、前記表示パネル101と同様に、正面視で両側方向に延びる横長矩形であり、その上端縁の両側の角隅は、表示パネル101に合わせて上下の方向性を識別させるために切り欠かれている。パッキン130には、表示パネル101の画面のうち表示領域を縁取る横長矩形の開口部131が設けられている。また、パッキン130の両側端には、前記表示パネル101や本体110の溝部103等に合致するように、それぞれ中央に向かって半円形に凹む一対の溝部132が設けられている。
パッキン130の正面には、開口部131を縁取るように周回する水切り山であるリップ135が設けられている。同様に、パッキン130の背面にも、開口部131を縁取るように周回する水切り山であるリップ136が設けられている。表示器100の取付時に、正面のリップ135は、前面ケース30の内壁と線接触して前面ケース30とパッキン130との間の防水性を高め、背面のリップ136は、表示パネル101の画面と線接触して表示パネル101とパッキン130との間の防水性を高める。
また、パッキン130の背面にて下端両側には、表示パネル101の正面にて下端両側にある位置決め凹部104に係合する位置決め凸部133が設けられている。位置決め凹部104と位置決め凸部133とが係合しなければ、表示パネル101に対してパッキン130が合わさらないため、表示パネル101の背面からパッキン130を被せてしまい表裏逆となることを防ぐことができる。さらに、パッキン130の両側端の外側には、それぞれ隙間埋め用の凸部134が設けられている。
次に、前面ケース30の裏側に表示器100の本体110を固定するための固着手段について説明する。固着手段は、表示器100の本体110を前面ケース30の内壁に沿わせて下方向(一方向)へ摺動させると、該摺動に伴い本体110に設けられた係止爪116が、前面ケース30に設けられた被係止孔33にスナップフィット係合するものである。かかる固着手段のスナップフィット係合により、表示器100は画面が開口部31に合致する所定位置に固定される。
図1に示すように、係止爪116は、表示器100における本体110の正面壁部111の下端縁に設けられている。一方、被係止孔33は、前面ケース30の内壁にて開口部31の下側に設けられている。ここで前面ケース30の内壁にて開口部31の下側には、被係止孔33が設けられ、かつ係止爪116がある正面壁部111の下端縁がスナップフィット係合後に当接して位置決めされる受け部32,32aが設けられている。
図6〜図9に示すように、表示器100の本体110の下端縁の略中央には、上側に向かって凹む切欠部114が設けられている。切欠部114の上端中央より、板バネ片115が下方向へ延びるように突設され、この板バネ片115の下端背面側に係止爪116は設けられている。係止爪116の先端より外側は、後述する被係止孔33がある受け部32の上端に乗り上がるようにテーパーが設けられている。また、係止爪116の基端の内側にて被係止孔33に引っ掛かる顎部の保持角は、一度嵌るとそのままでは外れないよう直角に設定されている。
図1,図2に示すように、前面ケース30の内壁にて開口部31の略中央の下側には、被係止孔33を含む受け部32が背面側に突設されている。受け部32は、両側方向へ所定幅で延びており、その全幅に亘って表示器100の本体110の下端縁が当接して下方向への動きを阻止する位置決めとなる。しかも、受け部32は、その先端が上向きとなる断面L字形の爪状に形成されており、本体110の下端縁に対して背面側からも当接するため、本体110の後方向への移動も阻止することができる。
受け部32の垂直となる壁部には、被係止孔33が横長矩形に設けられている。被係止孔33は、前記係止爪116の顎部が嵌入する形状をなしている。ここで受け部32の垂直の壁部において被係止孔33の上側に位置する上端縁の内側は、前記係止爪116の先端のテーパーが円滑に摺接するためのテーパーが設けられている。
受け部32は、被係止孔33を含む一箇所だけではなく、この受け部32を間にして、表示器100の本体110の下端縁に沿うように両側方向へ複数に分断されて並ぶように設けられている。すなわち、受け部32の両側には、本体110の下端縁の両側端が当接して位置決めとなる一対の受け部32aも設けられている。各受け部32aは、基本的には中央の受け部32と同様の構成であるが、被係止孔33を含まず、その横幅も若干狭くなっている。各受け部32aも、本体110の下端縁に対して背面側からも当接する。
このように受け部32,32aは、前記被係止孔33が設けられた部位を間にして、表示器100の本体110の下端縁に沿うように両側方向へ複数に分断されて並ぶように設けられている。なお、受け部32の別の態様として、複数に分断することなく一続きに連なって両側方向へ延びるように形成しても良い。何れの形態にせよ、受け部32,32aが位置決めとなって、表示器100は所定位置に位置決めされ、所定位置により下方向への移動が阻止される。
図9において、係止爪116が先端にある板バネ片115にて、係止爪116が突出する側の基準面L1と、前記被係止孔33に係止爪116が係合する側の被係止孔33の周囲の基準面との間には、受け部32,32aに表示器100の本体110の下端縁が当接して支持された時に隙間が生じている。すなわち、板バネ片115の基準面L1は、本体110の正面壁部111における下端背面側の基準面L2よりも、前方向(奥側)に位置するように設計されている。
また、前面ケース30の内壁にて開口部31の両側には、表示器100の本体110の両側端が、スナップフィット係合後に外側から支えられる支え部34が背面側に突設されている。支え部34は、前面ケース30の内壁にて開口部31の両側で互いに対向する一対の断面L字形の細幅爪状に形成されている。前述したように、表示器100の本体110の両側端には、該本体110を前面ケース30の内壁に対して直交方向から平行に沿わせる際、支え部34の先端を回避するための溝部117が設けられている。
同様に表示パネル101やパッキン130にも、それぞれ両側端に一対の凹溝103等が設けられている。このような表示器100の両側端における溝部117等は、元々は図20に示す従来の表示器1の両側端をネジ止めするボス3bに嵌合させるものであり、これをそのまま残している。なお、従来の表示器4のように円孔ではなく、半円形の溝とすることで、その分、表示器100の横幅を狭くして全体的にコンパクトに設計している。
次に、図16,図17に基づき、表示器100の具体的な取り付けの詳細について説明する。図16(a)に示すように、前面ケース30を用意してから、図16(b)に示すように、パッキン130と表示パネル101を一体化する。パッキン130は、表示パネル101の正面から被さるカバー状であり、予め表示パネル101の周囲に被せた状態に仮止めすることができる。
これにより、従来のパッキン6(図20参照)のように、表示器100に対して両面テープで予め取り付けておく必要がなく、また、スナップフィット係合時に両面テープの位置がずれることもなく、パッキン130の装着性を向上させることができる。よって、いっそう簡易かつ迅速にパッキン130を含めて表示器100を筐体11に固定することができる。
図16(c)に示すように、一体化したパッキン130と表示パネル101を、前面ケース30の裏側で開口部31を塞ぐように配置する。ここで、パッキン130と表示パネル101を、前面ケース30の内壁に対して直交方向から平行に沿わせる時、それぞれの両側端にある凹溝132等を前面ケース30側の一対の支え部34の先端に通せば良い。パッキン130の両側端の外側には、それぞれ隙間埋め用の凸部134(図12参照)が設けられている。この凸部134によって、支え部34の内側とパッキン130の側端との間の隙間が塞がれるため、表示器100の取付後における左右方向へのガタつきを抑えることができる。
次いで、図16(d)に示すように、表示器100の本体110にLED基板120を取り付ける。すなわち、詳しくは図1において、LED基板120の前端縁を、基板取付部113の前端側に向けて斜め下方に傾けながら引掛爪111cに係止する。続いて、図17(e)に示すように、LED基板120の前端縁を支点として後端縁を下方へ水平になるまで押し込む。すると、図1に示したLED基板120の後端縁の切欠溝123に対して、基板取付部113の後端側の係止爪113bが噛み合ってスナップフィットにより係合し、LED基板120は基板取付部113に固定される。
その後、図17(f)に示すように、本体110を前面ケース30側に既に配置してある表示パネル101の背面に重ね合わせて、受け部32に当接するまで下方向へ摺動させる。ここで本体110を表示パネル101の背面に合わせた時に、正面壁部111にある押さえリブ111bが表示パネル101にある凹溝102に係合する。よって、表示パネル101は本体110の上方向へ動かないように押さえられる。パッキン130と表示パネル101は既に一体であるため、表示パネル101を押さえることで、同時にパッキン130も押さえることができる。
本体110を、前面ケース30の内壁に対して直交方向から平行に沿わせる時も、両側端にある溝部117(図1参照)に前面ケース30側の一対の支え部34を通してから下方向へ摺動させる。表示器100の両側端に溝部117等を設けたことにより、開口部31の上側に、表示器100の本体110をその高さ分以上の距離で摺動させるスペースがない場合でも、対応することができる。すなわち、表示器100を、その溝部117等に支え部34が合致する位置から前面ケース30の内壁に沿わせることが可能となる。その後は、当該位置より表示器100の本体110の高さ分より少ない距離で、下方向へ摺動させることができる。
図17(g)に示すように、本体110を下方向へ押し込み摺動させると、本体110の正面壁部111の下端にある係止爪116が、前面ケース30側にある被係止孔33に係合する。このように、表示器100を下方向へ摺動させるだけで、係止爪116が被係止孔33にスナップフィット係合し、表示器100は画面が開口部31に合致する所定位置に固定される。
かかる表示器100の取付構造によれば、筐体11の前面ケース30にネジ止めする場合に比べて、ネジが不要となって部品点数や組付工数が削減される。また、面倒なネジ止め作業も不要となり、作業時間を大幅に短縮することができる。しかも、ドライバー等の工具を用意する必要もなくなり、表示器100を筐体11に簡易な構成で容易に固定することができる。
前面ケース30側にある受け部32,32aは、被係止孔33を設ける部位としてだけでなく、表示器100の本体110の下端縁を当接させる位置決めとなる。これにより、表示器100は、スナップフィット係合だけでなく、受け部32,32aを介して下端縁より前面ケース30に支えられ、所定位置より下方向へ移動することはない。しかも、受け部32,32aは、その先端が上向きとなる断面L字形の爪状であるため、表示器100の本体110の下端縁に対して背面側からも当接し、本体110の後方向への移動も阻止することができる。
また、前面ケース30側にある支え部34は、表示器100の溝部117等より相対的に上方向へ移動した後、表示器100の両側端に係合する。これにより、表示器100は、一対の支え部34を介して両側端からも前面ケース30に支えられ、表示器100が両側方向へ移動することが阻止される。特に、支え部34に直接係合するパッキン130の両側端の外側には、それぞれ隙間埋め用の凸部134があり、支え部34の内側に点接触して弾性変形する。
これにより、表示器100の取付後におけるパッキン130の左右方向への位置ズレを防ぐことができる。また、支え部34に関しても、表示器100の左右方向への位置ズレを防ぐだけでなく、表示器100の本体110の両側端に対して背面側からも当接するため、よりしっかりと表示器100を保持することができる。
以上のように、前面ケース30の裏側に固定された表示器100は、係止爪116と被係止孔33のスナップフィット係合だけでなく、受け部32,32aおよび支え部34によって、左右方向と下方向へ移動しないように支えられる。また、前面ケース30の前方より開口部31を通して表示器100に外力が加えられた際は、この外力は受け部32,32aおよび支え部34によって受けられて、後方向への移動も防止される。
ただし、前述したように、係止爪116が先端にある板バネ片115で係止爪116が突出する側の基準面L1(図9参照)と、前記被係止孔33に係止爪116が係合する側の被係止孔33の周囲の基準面との間には隙間が生じている。これにより、筐体11の外部より開口部31を通じて表示器100に、想定外の衝撃荷重が付与されたとしても、この衝撃荷重が、他の部位と比べて比較的脆弱となりやすい被係止孔33や被係止孔33がある部位間に直接伝わることはない。よって、衝撃荷重によりスナップフィットの機能が失われることを防止することができる。
また、表示パネル101とパッキン130の上方向への動きは、本体110にある押さえリブ111bによって押さえられるが、本体110の上方向への動きを押さえる構成はない。かかる上方向への動きは、スナップフィットだけの係合力だけでも十分に押さえることが可能であり、また、表示器100は自重でも下方へ押さえられることになり、特に問題はない。
表示器100を前面ケース30から取り外す時は、被係止孔33の外側から細い棒等で係止爪116を押して被係止孔33から外せば、スナップフィット係合を容易に解除することができ、表示器100を取り外すことができる。
なお、筐体11の内部には、図示省略したが制御基板も収納されており、この制御基板に格納された所定プログラムに従って、表示器100の表示を含む押ボタン箱10の各種機能は制御される。表示器100は、例えば交通信号制御機から送出される表示駆動信号により点灯するように制御される。
図1,図2に示すように、前面ケース30には、上下に2つの開口部31が設けられており、表示器100は、上側の開口部31に対して前述した取付構造で固定される。ここで下側の開口部31には、図18に示したように、前面ケース30の表側から取り付ける表示板35によって塞がれている。ただし、図19に示したように、下側の開口部31にも、前面ケース30の裏側から従来同様の表示器4(図20参照)を取り付けるように構成したり、あるいは表示器100を取り付けられるように構成しても良い。
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述したような実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば表示器100の種類は、特に限定されるものではなく、他に液晶ユニットやLED表示器等と何れの形態であっても、画面に各種情報として文字や図形等を表示可能なものであれば良い。
また、前記固着手段では、表示器100の本体110に係止爪116を設ける一方、前面ケース30に被係止孔33を設けたが、逆の態様として、表示器100の本体110に被係止孔を設ける一方、前面ケース30に係止爪を設けるように構成しても良い。また、係止爪116および被係止孔33等の具体的な形状も、図示した例に限定されることはなく、様々な形状が考えられる。
さらに、押ボタン箱10に関しても図示したものに限定されることはなく、他に例えば、本出願人が既に提案している特願2015−109899号に記載されたものに適用することもできる。さらに、筐体11は押ボタン箱10に限定されることもなく、他の様々な分野の筐体構造に適用することができる。