JP6948718B2 - ゲノム編集方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ゲノム編集方法などに関する。
遺伝子改変マウスは、遺伝子機能を個体レベルで解析するために世界中の研究者に利用されている。特に、コンディショナルノックアウトマウスは、細胞組織特異的及び時期特異的に遺伝子発現を制御できることから、最も利用されている遺伝子改変マウスの一つである。
コンディショナルノックアウトマウスは、Cre発現カセットが組み込まれた「Creマウス」と、標的遺伝子又はその一部をloxP配列で挟んだ「floxマウス」との交配により作製される。このCreマウスやfloxマウスの作製には、これまで主にマウスES細胞が利用されて又はその一部やCre発現カセットを、ES細胞へ相同組換えによりノックインした後、得られた細胞をマウス胚盤胞にインジェクションして、その胚を偽妊娠雌マウスに移植し、キメラマウスを経て、Creマウスやfloxマウスが作製される。ただ、ES細胞での相同組換えには熟練した知識と技術が必要であるので、組換えES細胞の樹立までだけでも、数ヶ月を要する。またキメラマウスを経るため、最終的にコンディショナルマウスを作製するには1〜2年を要する。
近年、新たなゲノム編集技術であるCRISPR/Casシステムの登場により、ES細胞を用いずに受精卵でより簡便に遺伝子改変ができるようになった。受精卵にCas mRNAとガイドRNAをインジェクションすることにより、ガイドRNAが標的部位に結合し、該結合部位に誘導されたCasタンパク質がDNAを二本鎖切断し、結果として標的とする遺伝子に変異を導入することができる。この際、一本鎖オリゴ(ssODN)を一緒にインジェクションすることによって、1〜数十塩基長のDNA配列を効率的にノックインすることも可能である(非特許文献1)。
一方、CRISPR/Casシステムによりfloxマウスを作製する場合、2ヶ所に同時にloxP配列をノックインできれば効率的であるが、実際にはloxP配列が1ヵ所にしかノックインされない場合が頻繁に起こる。この場合、loxP配列が1ヶ所にのみノックインされたマウスを増産して、このノックインマウスから採卵された受精卵に対してCRISPR/Casシステムを導入し、別の1ヶ所にloxP配列をノックインする必要があり、さらに1年近くかかってしまう。
従来のドナーベクターを利用して、同時に2ヶ所loxP配列を挿入することも理論的には可能だが、実際にはfloxマウスが得られる効率は高くない。
Sander JD, Joung JK. ‘CRISPR-Cas systems for editing, regulating and targeting genomes.’, Nat Biotechnol. 2014 Apr;32(4):347-55.
本発明は、比較的長い領域の変異や比較的長い領域内の複数個所の変異(例えば、2つのloxP配列の挿入)であってもより簡便且つ効率的に導入することができる、新たなゲノム編集方法を提供することを課題とする。
本発明者は上記課題に鑑みて鋭意研究した結果、(a)ゲノム編集対象領域の両端を切断する人工ヌクレアーゼシステム、及び(b)5´側から、5´側ホモロジーアーム配列、ドナーDNA配列、3´側ホモロジーアーム配列の順で配置されてなる塩基配列を含み、前記5´側ホモロジーアーム配列が前記ゲノム編集対象領域外側の一方の塩基配列の相同配列であり、且つ前記3´側ホモロジーアーム配列が前記ゲノム編集対象領域外側の他方の塩基配列の相同配列である、一本鎖DNA、の2つを用いることにより、簡便且つ効率的にゲノム編集を行うことが可能であることを見出した。
特に、人工ヌクレアーゼシステムとしてCRISPR/Casシステムを、一本鎖DNAとしてドナーDNA配列が2つの組換え酵素認識配列を含むものを用い、それらをエレクトロポレーション法により対象に導入することによって、高効率で、2つのアレルのゲノム編集対象領域の両端に組換え酵素認識配列が付加された個体が得られた。また、人工ヌクレアーゼシステムの導入の対象として組換え酵素発現カセットを含む受精卵を利用することにより、目的の個体の作製期間を大幅に短縮することができた。
さらに、本発明者は、一本鎖DNAにおける5´側ホモロジーアームとして比較的長鎖の配列を採用することにより、上記効率を高めることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の態様を包含する:
[1](a)ゲノム編集対象領域の両端を切断する人工ヌクレアーゼシステム、及び(b)5´側から、5´側ホモロジーアーム配列、ドナーDNA配列、3´側ホモロジーアーム配列の順で配置されてなる塩基配列を含み、前記5´側ホモロジーアーム配列が前記ゲノム編集対象領域外側の一方の塩基配列の相同配列であり、且つ前記3´側ホモロジーアーム配列が前記ゲノム編集対象領域外側の他方の塩基配列の相同配列である、一本鎖DNA、を細胞又は非ヒト生物に導入する工程を含む、ゲノム編集された細胞又は非ヒト生物の製造方法。
[2]前記人工ヌクレアーゼシステムがCRISPR/Casシステムである、[1]に記載の方法。
[3]前記人工ヌクレアーゼシステム及び前記一本鎖DNAがエレクトロポレーション法により、前記細胞又は非ヒト生物に導入される、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記ドナーDNA配列が2つの組換え酵素認識配列を含み、前記人工ヌクレアーゼシステム及び前記一本鎖DNAの導入対象が、組換え酵素発現カセットを含む受精卵である、[3]に記載の方法。
[5]前記5´側ホモロジーアーム配列の長さが110塩基長以上である、[1]から[4]のいずれかに記載の方法。
[6]前記5´側ホモロジーアーム配列の長さが130塩基長以上である、[1]から[4]のいずれかに記載の方法。
[7]前記5´側ホモロジーアーム配列の長さが260塩基長以上である、[1]から[4]のいずれかに記載の方法。
[8](a)ゲノム編集対象領域の両端を切断する人工ヌクレアーゼシステム、及び(b)5´側から、5´側ホモロジーアーム配列、ドナーDNA配列、3´側ホモロジーアーム配列の順で配置されてなる塩基配列を含み、前記5´側ホモロジーアーム配列が前記ゲノム編集対象領域外側の一方の塩基配列の相同配列であり、且つ前記3´側ホモロジーアーム配列が前記ゲノム編集対象領域外側の他方の塩基配列の相同配列である、一本鎖DNA、を含む、ゲノム編集用組成物。
[9](a)ゲノム編集対象領域の両端を切断する人工ヌクレアーゼシステム、及び(b)5´側から、5´側ホモロジーアーム配列、ドナーDNA配列、3´側ホモロジーアーム配列の順で配置されてなる塩基配列を含み、前記5´側ホモロジーアーム配列が前記ゲノム編集対象領域外側の一方の塩基配列の相同配列であり、且つ前記3´側ホモロジーアーム配列が前記ゲノム編集対象領域外側の他方の塩基配列の相同配列である、一本鎖DNA、を含む、ゲノム編集用キット。
本発明によれば、ゲノム編集対象領域を、任意のドナーDNA配列に、より簡便且つ効率的に置き換えることが可能である。これにより、比較的短い一本鎖オリゴ(ssODN)を用いる従来法(非特許文献1など)では困難であった、比較的長い領域の変異や比較的長い領域内の複数ヶ所の変異(例えば、2つのloxP配列の挿入)であっても、より簡便且つ効率的に導入することができる。
また、ES細胞を用いる方法や比較的短い一本鎖オリゴ(ssODN)を用いる方法(非特許文献1など)などの従来法では、コンディショナルノックアウトマウスを作製するまでに最低でも1年を要していたが、本発明のゲノム編集方法を用いれば、より短期間(例えば、3〜6ヶ月、Creマウス受精卵を使用すればさらに短期間)でコンディショナルノックアウトマウスを作製することが可能である。これに伴い、コンディショナルノックアウトマウスの作製費用も大幅に低減すること(一試算例として、従来法:300〜900万円/系統→本発明の方法:50〜100万円/系統)ができる。
さらに、本発明の方法においては、ゲノム編集対象細胞への各種ツール(上記材料(a)及び(b))の導入を、エレクトロポレーション法によって行うことも可能である。従来は、通常はマイクロインジェクション法が採用されていたところ、このエレクトロポレーション法を採用することにより、より簡便且つ効率的にゲノム編集を行うことが可能である。
現在、約3万遺伝子についての網羅的なノックアウトマウス作製プロジェクトが進行しているところ、本発明により、このようなプロジェクトの進行を加速させることが可能である。
ゲノム編集試験1(実施例1)のスキームを示す。mSerpina3nはゲノム編集前のゲノムDNAを示し、lssDNAは一本鎖DNAを示し、floxed-mSerpina3nは、ゲノム編集後のゲノムDNAを示す。ハサミ絵はCRISPR/Casシステムによって切断される部位を示し(2つのハサミ絵で挟まれる領域がゲノム編集対象領域である)、gRNA-1及びgRNA-2はゲノム編集対象領域の両端を切断するようにデザインされた2つのガイドRNAを示し、矢印(F1及びR1)はジェノタイピングに用いたPCRプライマーの位置を示し、該矢印の向きは該プライマーの向き(5´→3´)を示し、(-)は一本鎖DNAがアンチセンス鎖であることを示し、5´HAは5´ホモロジーアームを示し(括弧内は塩基長)、3´HAは3´ホモロジーアームを示し(括弧内は塩基長)、三角はloxP配列を示し、三角の横方向に対する向きはloxP配列の向きを示し、mSerpina3nとlssDNAの間の×は、その領域が相同配列であることを示す。 一本鎖DNAの調製方法の概要を示す。まず、「Plasmid preparation」においてニッキングエンドヌクレアーゼ認識サイトを含むプラスミドDNAを調製し、「Nicking enzyme」において該プラスミドDNAをニッキングエンドヌクレアーゼを用いて消化し、「Gel electrophoresis」において消化物をアガロースゲル電気泳動し、「Gel extraction」において目的の一本鎖DNAに一致するバンドを含むゲルから一本鎖DNAを抽出する。 ゲノム編集試験5(実施例5)のスキームを示す。rVapbはゲノム編集前のゲノムDNAを示し、lsODNは一本鎖DNAを示し、floxed-rVapbは、ゲノム編集後のゲノムDNAを示す。ハサミ絵はCRISPR/Casシステムによって切断される部位を示し(2つのハサミ絵で挟まれる領域がゲノム編集対象領域である)、gRNA-1及びgRNA-2はゲノム編集対象領域の両端を切断するようにデザインされた2つのガイドRNAを示し、矢印(F1及びR1)はジェノタイピングに用いたPCRプライマーの位置を示し、該矢印の向きは該プライマーの向き(5´→3´)を示し、5´HAは5´ホモロジーアームを示し(括弧内は塩基長)、3´HAは3´ホモロジーアームを示し(括弧内は塩基長)、三角はloxP配列を示し、三角の横方向に対する向きはloxP配列の向きを示し、rVapbとlsODNの間の×は、その領域が相同配列であることを示し、エクソン4内のT又はCはゲノム編集により変異させる塩基を示し、P56Sは該変異によりrVapbタンパク質の56番目のアミノ酸(プロリン)がセリンに変異することを示す。
1.定義
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
アミノ酸配列の「同一性」とは、2以上の対比可能なアミノ酸配列の、お互いに対するアミノ酸配列の一致の程度をいう。従って、ある2つのアミノ酸配列の一致性が高いほど、それらの配列の同一性又は類似性は高い。アミノ酸配列の同一性のレベルは、例えば、配列分析用ツールであるFASTAを用い、デフォルトパラメータを用いて決定される。若しくは、Karlin及びAltschulによるアルゴリズムBLAST(KarlinS, Altschul SF.“Methods for assessing the statistical significance of molecular sequence features by using general scoringschemes”Proc Natl Acad Sci USA.87:2264−2268(1990)、KarlinS,Altschul SF.“Applications and statistics for multiple high−scoring segments in molecular sequences.”Proc Natl Acad Sci USA.90:5873−7(1993))を用いて決定できる。このようなBLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている。これらの解析方法の具体的な手法は公知であり、National Center of Biotechnology Information(NCBI)のウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を参照すればよい。また、塩基配列の「同一性」も上記に準じて定義される。
本明細書中において、「保存的置換」とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置換されることを意味する。例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジンといった塩基性側鎖を有するアミノ酸残基同士で置換されることが、保存的な置換にあたる。その他、アスパラギン酸、グルタミン酸といった酸性側鎖を有するアミノ酸残基;グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システインといった非帯電性極性側鎖を有するアミノ酸残基;アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンといった非極性側鎖を有するアミノ酸残基;スレオニン、バリン、イソロイシンといったβ−分枝側鎖を有するアミノ酸残基;チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジンといった芳香族側鎖を有するアミノ酸残基同士での置換も同様に、保存的な置換にあたる。
本明細書において、外来的に用いるDNA、RNAなどのヌクレオチドには、次に例示するように、公知の化学修飾が施されていてもよい。ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、各ヌクレオチドのリン酸残基(ホスフェート)を、例えば、ホスホロチオエート(PS)、メチルホスホネート、ホスホロジチオネート等の化学修飾リン酸残基に置換することができる。また、各リボヌクレオチドの糖(リボース)の2位の水酸基を、-OR(Rは、例えば、CH3(2´-O-Me)、CH2CH2OCH3(2´-O-MOE)、CH2CH2NHC(NH)NH2、CH2CONHCH3、CH2CH2CN等を示す)に置換してもよい。さらに、塩基部分(ピリミジン、プリン)に化学修飾を施してもよく、例えば、ピリミジン塩基の5位へのメチル基やカチオン性官能基の導入、あるいは2位のカルボニル基のチオカルボニルへの置換などが挙げられる。さらには、リン酸部分やヒドロキシル部分が、例えば、ビオチン、アミノ基、低級アルキルアミン基、アセチル基等で修飾されたものなどを挙げることができるが、これに限定されない。また、ヌクレオチドの糖部の2´酸素と4´炭素を架橋することにより、糖部のコンフォーメーションをN型に固定したものであるBNA(LNA)等もまた、好ましく用いられ得る。
2.材料
本発明は、その一態様において、2種の材料(材料(a)及び材料(b))を利用した、ゲノム編集方法、ゲノム編集された細胞又は非ヒト生物の製造方法、ゲノム編集用組成物、ゲノム編集用キットなどに関する。以下、これらの材料について説明する。
2-1.材料(a)
材料(a)は、ゲノム編集対象領域の両端を切断する人工ヌクレアーゼシステムである。
ゲノム編集対象領域は、ゲノム編集対象細胞又は生物が有するゲノムDNA上の任意領域であり、ゲノム編集により後述のドナーDNA配列へと置き換える対象領域である。
ゲノム編集対象領域の長さは、特に制限されない。該長さは、例えば、10塩基長以上、好ましくは30塩基長以上、より好ましくは60塩基長以上、さらに好ましくは100塩基長以上、よりさらに好ましくは150塩基長以上、よりさらに好ましくは200塩基長以上、また例えば、10000塩基長以下、好ましくは5000塩基長以下、より好ましくは2000塩基長以下、さらに好ましくは1000塩基長以下、よりさらに好ましくは800塩基長以下である。
ゲノム編集対象細胞及び生物は、人工ヌクレアーゼシステムによりゲノム編集可能な細胞及び生物である限り特に制限されない。ゲノム編集対象細胞としては、各種組織由来又は各種性質の細胞、例えば、血液細胞、造血幹細胞・前駆細胞、配偶子(精子、卵子)、受精卵、各段階の胚の胚細胞(例えば、1細胞期胚、2細胞期胚、4細胞期胚、8細胞期胚、16細胞期胚、桑実期胚など)、線維芽細胞、上皮細胞、血管内皮細胞、神経細胞、肝細胞、ケラチン生成細胞、筋細胞、表皮細胞、内分泌細胞、ES細胞、iPS細胞、組織幹細胞、がん細胞等が挙げられる。ゲノム編集対象生物としては、例えば、ヒト、サル、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウサギ等の哺乳類動物; アフリカツメガエル等の両生類動物; ゼブラフィッシュ、メダカ、トラフグ、マグロ、マダイ等の魚類動物; ホヤ等の脊索動物; ショウジョウバエ、カイコ等の節足動物;等の動物: シロイヌナズナ、トマト、ダイズ、イネ、コムギ、トウモロコシ、ナタネ、タバコ等の植物: 酵母、アカパンカビ等の菌類: 大腸菌、枯草菌、藍藻等の細菌等が挙げられる。
哺乳類動物は、好ましくは、マウス、ラット、モルモット、ハムスター等の齧歯類動物であり、特に好ましくはマウス又はラットである。
ゲノム編集対象細胞として、受精卵(例えば、受精直後の卵、前核期胚、初期胚、胚盤胞など、好ましくは前核期胚)を使用することにより、ゲノム編集対象領域が後述のドナーDNA配列に置き換えられた生物を、より簡便且つ効率的に得ることができる。
また、組換え酵素とその認識配列(例えば、Cre-loxPシステムやFLP-FRTシステム)を利用した条件特異的遺伝子変異体(例えば、コンディショナルノックアウト体)などを作製しようとする場合であれば、受精卵として、組換え酵素発現カセットを含む受精卵(例として、CreやFLPの発現カセットを含む精子で受精させた受精卵)を用い、且つ後述のドナーDNAとして2つの組換え酵素認識配列(例としてloxP配列やFRT配列)を含むドナーDNAを用いることにより、極めて簡便且つ効率的に条件特異的遺伝子変異体を得ることが可能である。
組換え酵素発現カセットは、細胞内で組換え酵素を発現可能なDNAである限り特に制限されない。組換え酵素発現カセットの典型例としては、プロモーター、及びそのプロモーターの制御下に配置された組換え酵素コード配列を含むDNAが挙げられる。該発現カセットのプロモーターとしては、特に制限されず、例えば、組織特異的プロモーター、時期特異的プロモーター、薬剤応答性プロモーターなど、各種条件に応じて転写活性が変化するプロモーターを広く採用することができる。
ゲノム編集対象領域の両端の切断とは、換言すれば、ゲノム編集対象領域の一方の端及び他方の端の2ヶ所における切断である。より具体的にはゲノム編集対象領域の一方の端の塩基対と該塩基対の外側(ゲノム編集対象領域外側)で隣接する塩基対との間の切断、及びゲノム編集対象領域の他方の端の塩基対と該塩基対の外側(ゲノム編集対象領域外側)で隣接する塩基対との間の切断である。これにより、ゲノムDNAより、ゲノム編集対象領域を含むDNA断片が生じることになる。
人工ヌクレアーゼシステムは、ゲノムDNA上の任意の2ヶ所を切断して、切断断片を生じさせることができるシステムである限り特に制限されない。人工ヌクレアーゼシステムとしては、例えば、CRISPR/Casシステム、TALENシステム、ZFNシステム、PPRシステムなどが挙げられる。
CRISPR/Casシステムは、ヌクレアーゼ(RGN;RNA-guided nuclease)であるCasタンパク質とガイドRNA(gRNA)を使用する。該システムを細胞内に導入することにより、ガイドRNAが標的部位に結合し、該結合部位に誘導されたCasタンパク質によってDNAを切断することができる。
TALENシステムは、DNA切断ドメイン(例えば、FokIドメイン)に加えて転写活性化因子様(TAL)エフェクターのDNA結合ドメインを含む人工ヌクレアーゼ(TALEN)を使用する(例えば、米国特許8470973号、米国特許8586363号)。該システムを細胞内に導入することにより、TALENがDNA結合ドメインを介して標的部位に結合し、そこでDNAを切断する。標的部位に結合するDNA結合ドメインは、公知のスキーム(例えば、Zhang, Feng et. al. (2011) Nature Biotechnology 29 (2);この論文は、本明細書に参考として援用される)に従って設計することができる。
ZFNシステムは、ジンクフィンガーアレイを含むDNA結合ドメインにコンジュゲートした核酸切断ドメインを含む人工ヌクレアーゼ(ZFN)を使用する(例えば、米国特許6265196号、8524500号、7888121号、欧州特許1720995号)。該システムを細胞内に導入することにより、ZFNがDNA結合ドメインを介して標的部位に結合し、そこでDNAを切断する。標的部位に結合するDNA結合ドメインは、公知のスキームに従って設計することができる。
PPRシステムとしては、例えば、ヌクレアーゼドメインが融合されたPPR(pentatricopeptiderepeat)を使用することができる(Nakamura et al., Plant Cell Physiol 53:1171-1179(2012))。
人工ヌクレアーゼシステムの中でも、標的部位の認識に核酸(ガイドRNA)を用いるため、標的部位をより自由に選択でき、その調製も簡便であるという観点から、CRISPR/Casシステムが好ましい。CRISPR/Casシステムは、典型的には、Casタンパク質、Cas mRNA、Casタンパク質発現カセットなどのCasコンポーネント、並びにゲノム編集対象領域の両端を切断するようにデザインされたガイドRNA、その発現カセットなどのガイドRNAコンポーネントから構成される。以下、各コンポーネントについて説明する。
2-1-1.Casコンポーネント(材料(a1))
Casコンポーネントとしては、例えば、Casタンパク質、Cas mRNA、Casタンパク質発現カセットなどが挙げられる。Casコンポーネントは、1種単独であっても、2種以上の組合せであってもよい。
Casタンパク質は、CRISPR/Casシステムにおいて用いられるものであれば特に制限されず、例えば、ガイドRNAと複合体を形成した状態でゲノムDNAの標的部位に結合し、該標的部位を2本鎖切断できるものを各種使用することができる。
本明細書において、「標的部位」とは、PAM(Proto-spacer Adjacent Motif)配列及びその5´側に隣接する17〜30塩基長(好ましくは18〜25塩基長、より好ましくは19〜22塩基長、特に好ましくは20塩基長)程度の配列からなるDNA鎖(標的鎖)とその相補DNA鎖(非標的鎖)からなる、ゲノムDNA上の部位である。
各種生物由来のCasタンパク質が知られており、Casタンパク質としては、例えば、S.pyogenes由来のCas9タンパク質(II型)、S.solfataricus由来のCas9タンパク質(I-A1型)、S.solfataricus由来のCas9タンパク質(I-A2型)、H.walsbyl由来のCas9タンパク質(I-B型)、E.coli由来のCas9タンパク質(I-E型)、E.coli由来のCas9タンパク質(I-F型)、P.aeruginosa由来のCas9タンパク質(I-F型)、S.Thermophilus由来のCas9タンパク質(II-A型)、S.agalactiae由来のCas9タンパク質(II-A型)、S.aureus由来のCas9タンパク質、N.meningitidis由来のCas9タンパク質、T.denticola由来のCas9タンパク質等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはCas9タンパク質が挙げられ、より好ましくはストレプトコッカス属に属する細菌が内在的に有するCas9タンパク質が挙げられる。また、Casタンパク質としては、Cpf1タンパク質を利用することも可能である。Cpf1タンパク質は、好ましくは、Lachnospiraceae bacteriumあるいはAcidaminococcus sp.由来のCpf1タンパク質が挙げられる。
各種Casタンパク質のアミノ酸配列、及びそのコード配列の情報は、文献やNCBI等の各種データベース上で容易に得ることができる(WO2014/131833、アクセッション番号:Q99ZW2.1、WP_021736722、WP_035635841等)。
PAM配列は、利用するCasタンパク質の種類によって異なる。例えば、S.pyogenes由来のCas9タンパク質(II型)に対応するPAM配列は5´-NGGであり、S.solfataricus由来のCas9タンパク質(I-A1型)に対応するPAM配列は5´-CCNであり、S.solfataricus由来のCas9タンパク質(I-A2型)に対応するPAM配列は5´-TCNであり、H.walsbyl由来のCas9タンパク質(I-B型)に対応するPAM配列は5´-TTCであり、E.coli由来のCas9タンパク質(I-E型)に対応するPAM配列は5´-AWGであり、E.coli由来のCas9タンパク質(I-F型)に対応するPAM配列は5´-CCであり、P.aeruginosa由来のCas9タンパク質(I-F型)に対応するPAM配列は5´-CCであり、S.Thermophilus由来のCas9タンパク質(II-A型)に対応するPAM配列は5´-NNAGAAであり、S.agalactiae由来のCas9タンパク質(II-A型)に対応するPAM配列は5´-NGGであり、S.aureus由来のCas9タンパク質に対応するPAM配列は、5´-NGRRT又は5´-NGRRNであり、N.meningitidis由来のCas9タンパク質に対応するPAM配列は、5´-NNNNGATTであり、T.denticola由来のCas9タンパク質に対応するPAM配列は、5´-NAAAACである。また、Cpf1のPAM配列は、例えば、5´-TTN又は5´-TTTNである。
なお、Casタンパク質を改変すること(例えば、変異の導入)により、PAM認識を改変することも可能である(Benjamin,P.ら、Nature 523, 481-485(2015)、Hirano,S.ら、 Molecular Cell 61, 886-894(2016))。これにより標的部位の選択肢を拡大することができる。
Casタンパク質は、ヌクレアーゼ活性を損なわない限りにおいて、変異を有していてもよい。この観点から、Casタンパク質は、その元となる野生型Casタンパク質のアミノ酸配列と、例えば、85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つその活性(ガイドRNAと複合体を形成した状態でゲノムDNAの標的部位に結合し、該標的部位を切断する活性)を有するタンパク質であってもよい。或いは、同様の観点から、Casタンパク質は、その元となる野生型Casタンパク質のアミノ酸配列に対して1若しくは複数個(例えば、2〜100個、好ましくは2〜50個、より好ましくは2〜20個、さらに好ましくは2〜10個、よりさらに好ましくは2〜5個、特に好ましくは2個)のアミノ酸が置換、欠失、付加、又は挿入されたアミノ酸配列からなり、且つその活性(ガイドRNAと複合体を形成した状態でゲノムDNAの標的部位に結合し、該標的部位の標的鎖又は非標的鎖を切断する活性)を有するタンパク質であってもよい。なお、上記「活性」は、in vitro又はin vivoにおいて、公知の方法に従って又は準じて評価することができる。また、変異は、保存的置換であることが望ましい。
Casタンパク質としては、触媒部位の1つに変異が導入されニッカーゼ活性を示すCas9タンパク質(nCasタンパク質)を用いることもできる。nCasタンパク質を利用することにより、オフターゲット作用を減少させることができる。
Casタンパク質は、上記「活性」を有する限りにおいて、化学修飾されたものであってもよい。
Casタンパク質は、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO)、アミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルなどのC1−6アルキル基;例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基;例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6−12アリール基;例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1−2アルキル基;α−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1−2アルキル基などのC7−14アラルキル基;ピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
Casタンパク質は、C末端以外のカルボキシル基(またはカルボキシレート)が、アミド化またはエステル化されていてもよい。この場合のエステルとしては、例えば、上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、Casタンパク質には、N末端のアミノ酸残基のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アルカノイルなどのC1−6アシル基など)で保護されているもの、生体内で切断されて生成し得るN末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば、−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖蛋白質などの複合蛋白質なども包含される。
Casタンパク質は、上記「活性」を有する限りにおいて、公知のタンパク質タグ、シグナル配列、酵素タンパク質等のタンパク質が付加されたものであってもよい。タンパク質タグとしては、例えば、ビオチン、Hisタグ、FLAGタグ、Haloタグ、MBPタグ、HAタグ、Mycタグ、V5タグ、PAタグ等が挙げられる。シグナル配列としては、例えば、核移行シグナル等が挙げられる。酵素タンパク質としては、例えば、各種ヒストン修飾酵素、脱アミノ酵素等が挙げられる。
Casタンパク質は、酸または塩基との薬学的に許容される塩の形態であってもよい。塩は、薬学的に許容される塩である限り特に限定されず、酸性塩、塩基性塩のいずれも採用することができる。例えば、酸性塩の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩; 酢酸塩、プロピオン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩等の有機酸塩; アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等のアミノ酸塩等が挙げられる。また、塩基性塩の例として、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩; カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
Casタンパク質は、溶媒和物の形態であってもよい。溶媒は、薬学的に許容されるものであれば特に限定されず、例えば、水、エタノール、グリセロール、酢酸等が挙げられる。
Cas mRNAは、Casタンパク質コード配列を含み、ゲノム編集対象細胞又はゲノム編集対象生物の細胞内で翻訳されることによりCasタンパク質を発現させることができるものである限り特に制限されない。Cas mRNAは、Casタンパク質コード配列以外にも、各種配列や各種修飾構造、例えば、5´キャップ構造、シャイン・ダルガノ配列、コザック配列、IRESなどを含む5´非翻訳領域; ポリアデニレーションシグナル、AUリッチエレメント、GUリッチエレメントなどを含む3´非翻訳領域を含むことができる。
Casタンパク質発現カセットは、ゲノム編集対象細胞又はゲノム編集対象生物の細胞内でCasタンパク質を発現可能なDNAである限り特に制限されない。Casタンパク質発現カセットの典型例としては、プロモーター、及びそのプロモーターの制御下に配置されたCasタンパク質コード配列を含むDNAが挙げられる。
Casタンパク質発現カセットに含まれるプロモーターとしては、特に制限されず、例えば、pol II系プロモーターを各種使用することができる、pol II系プロモーターとしては、特に制限されないが、例えば、CMVプロモーター、EF1プロモーター、SV40プロモーター、MSCVプロモーター、hTERTプロモーター、βアクチンプロモーター、CAGプロモーター等が挙げられる。
Casタンパク質発現カセットは、後述のガイドRNA発現カセットと、同一DNA(1分子のDNA)上に含まれていてもよいし、別々のDNA(異なるDNA分子)上に含まれていてもよい。
Casタンパク質発現カセットは、必要に応じて、他のエレメント(例えば、マルチクローニングサイト(MCS)、薬剤耐性遺伝子、複製起点など)を含んでいてもよい。例えば、Casタンパク質発現カセットにおいて、5´側から、プロモーター、Casタンパク質のコード配列の順に配置されている場合であれば、プロモーターとCasタンパク質のコード配列の間に(好ましくはいずれか一方或いは両方に隣接して)、Casタンパク質のコード配列の3´側に(好ましくは隣接して)、MCSが配置されている態様が挙げられる。MCSは複数(例えば、2〜50、好ましくは2〜20、より好ましくは2〜10)個の制限酵素サイトを含むものであれば特に制限されない。
薬剤耐性遺伝子としては、例えば、クロラムフェニコール耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、エリスロマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子等が挙げられる。
Casタンパク質発現カセットは、これのみで、或いは他の配列と共にベクターを構成していてもよい。ベクターの種類は、特に制限されず、例えば、動物細胞発現プラスミド等のプラスミドベクター; レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、センダイウイルス等のウイルスベクター; アグロバクテリウムベクター等が挙げられる。
上記したCasコンポーネントは、公知の遺伝子工学的手法に従って容易に作製することができる。例えば、PCR、制限酵素切断、DNA連結技術、in vitro転写・翻訳技術、リコンビナントタンパク質作製技術等を利用して作製することができる。
2-1-2.ガイドRNAコンポーネント(材料(a2))
ガイドRNAコンポーネントとしては、ゲノム編集対象領域の両端を切断するようにデザインされたガイドRNA、その発現カセットなどが挙げられる。ガイドRNAコンポーネントは、1種単独であっても、2種以上の組合せであってもよい。
ガイドRNAは、CRISPR/Casシステムにおいて用いられるものであれば特に制限されず、例えば、ゲノムDNAの標的部位に結合し、且つCasタンパク質と結合することにより、Casタンパク質をゲノムDNAの標的部位に誘導可能なものを各種使用することができる。
ガイドRNAはゲノムDNAの標的部位への結合に関与する配列(crRNA(CRISPR RNA)配列といわれることもある)を有しており、このcrRNA配列が、非標的鎖のPAM配列相補配列を除いてなる配列に相補的(好ましくは、相補的且つ特異的)に結合することにより、ガイドRNAはゲノムDNAの標的部位に結合することができる。
なお、「相補的」に結合とは、完全な相補関係(AとT、及びGとC)に基づいて結合する場合のみならず、ストリンジェントな条件でハイブリダイズすることができる程度の相補関係に基づいて結合する場合も包含される。ストリンジェントな条件は、Berger and Kimmel(1987, Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology, Vol. 152, Academic Press, San Diego CA)に教示されるように、複合体或いはプローブを結合する核酸の融解温度(Tm)に基づいて決定することができる。例えば、ハイブリダイズ後の洗浄条件として、通常「1×SSC、0.1%SDS、37℃」程度の条件を挙げることができる。かかる条件で洗浄してもハイブリダイズ状態を維持するものであることが好ましい。特に制限されないが、より厳しいハイブリダイズ条件として「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」程度、さらに厳しいハイブリダイズ条件として「0.1×SSC、0.1%SDS、65℃」程度の洗浄条件を挙げることができる。
具体的には、crRNA配列の内、標的配列に結合する配列は、標的鎖と例えば、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、特に好ましくは100%の同一性を有する。なお、ガイドRNAの標的部位への結合には、crRNA配列の内、標的配列に結合する配列の3´側の12塩基が重要であるといわれている。このため、crRNA配列の内、標的配列に結合する配列が、標的鎖と完全同一ではない場合、標的鎖と異なる塩基は、crRNA配列の内、標的配列に結合する配列の3´側の12塩基以外に存在することが好ましい。
Casタンパク質が、例えば、Cas9タンパク質の場合、ガイドRNAは、Cas9タンパク質との結合に関与する配列(tracrRNA(trans-activating crRNA)配列といわれることもある)を有しており、このtracrRNA配列が、Cas9タンパク質に結合することにより、Cas9タンパク質をゲノムDNAの標的部位に誘導することができる。
tracrRNA配列は、特に制限されない。tracrRNA配列は、典型的には、複数(通常、3つ)のステムループを形成可能な50〜100塩基長程度の配列からなるRNAであり、利用するCasタンパク質の種類に応じてその配列は異なる。tracrRNA配列としては、利用するCasタンパク質の種類に応じて、公知の配列を各種採用することができる。
crRNA配列とtracrRNA配列を含むガイドRNAの態様は、crRNA配列とtracrRNA配列を含む一本鎖RNA(sgRNA)であってもよいし、crRNA配列を含むRNAとtracrRNA配列を含むRNAとが相補的に結合してなるRNA複合体であってもよい。
一方、Cpf1タンパク質は、crRNAと結合するが、ガイドRNAにおいてtracrRNAは不要である。また、Cas9タンパク質が、標的二本鎖DNAを切断した結果、平滑末端を生じさせるのに対し、Cpf1タンパク質は突出末端を生じさせる点でも異なる。
ゲノム編集対象領域の両端を切断するようにデザインされたガイドRNAは、Casタンパク質によってゲノム編集対象領域の両端が切断されるように標的部位がデザインされたガイドRNAであれば特に制限されず、上記情報に基づいて容易に設計することができる。該領域の両端の切断は、一方の端を切断するようにデザインされたガイドRNA(gRNA 1)と、他方の端を切断するようにデザインされたガイドRNA(gRNA 2)によって行われる。gRNA 1の標的部位の配列とgRNA 2の標的部位の配列は同じであってもよいが、オフターゲット効果をより低減できるという観点から、両者は異なることが好ましい。
なお、nCasタンパク質を利用する場合には、例えば、標的部位おける二本鎖の各鎖に対して、それぞれ一箇所(合計2箇所)を標的としたガイドRNAを用いることができる。
ガイドRNA発現カセットは、ゲノム編集対象細胞又はゲノム編集対象生物の細胞内でガイドRNAを発現(転写)可能なDNAである限り特に制限されない。例えば、ガイドRNAがcrRNA配列とtracr RNA配列を含む一本鎖RNAである場合は、ガイドRNAの発現カセットの典型例としては、プロモーター、及びそのプロモーターの制御下に配置されたガイドRNAコード配列を有するDNAが挙げられる。別の例として、ガイドRNAがcrRNA配列を含むRNAとtracrRNA配列を含むRNAとが相補的に結合してなるRNA複合体である場合は、ガイドRNAの発現カセットの典型例としては、プロモーター、及びそのプロモーターの制御下に配置された「crRNA配列を含むRNA」コード配列を含む発現カセット(便宜上、「crRNA発現カセット」と示すこともある)と、プロモーター、及びそのプロモーターの制御下に配置された「tracrRNA配列を含むRNA」コード配列を含む発現カセット(便宜上、「tracrRNA発現カセット」と示すこともある)との組合せが挙げられる。
ガイドRNA発現カセットに含まれるプロモーターとしては、特に制限されず、pol II系プロモーターを使用することもできるが、比較的短いRNAの転写をより正確に行わせるという観点から、pol III系プロモーターが好ましい。pol III系プロモーターとしては、特に制限されないが、例えば、マウス及びヒトのU6-snRNAプロモーター、ヒトH1-RNase P RNAプロモーター、ヒトバリン-tRNAプロモーター等が挙げられる。
ガイドRNA発現カセットが、crRNA発現カセットとtracrRNA発現カセットとの組合せである場合、これら2つの発現カセットは、同一DNA(1分子のDNA)上に含まれていてもよいし、それぞれが別々のDNA(異なるDNA分子)上に含まれていてもよい。
ガイドRNA発現カセットは、上述のCasタンパク質発現カセットと、同一DNA(1分子のDNA)上に含まれていてもよいし、別々のDNA(異なるDNA分子)上に含まれていてもよい。
ガイドRNA発現カセットは、必要に応じて、他のエレメント(例えば、マルチクローニングサイト(MCS)、薬剤耐性遺伝子、複製起点など)を含んでいてもよい。例えば、ガイドRNA発現カセットにおいて、5´側から、プロモーター、crRNA配列のコード配列の順に配置されている場合であれば、プロモーターとcrRNA配列のコード配列の間に(好ましくはいずれか一方或いは両方に隣接して)、crRNA配列のコード配列の3´側に(好ましくは隣接して)、MCSが配置されている態様が挙げられる。MCSは複数(例えば、2〜50、好ましくは2〜20、より好ましくは2〜10)個の制限酵素サイトを含むものであれば特に制限されない。
薬剤耐性遺伝子としては、例えば、クロラムフェニコール耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、エリスロマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子等が挙げられる。
ガイドRNA発現カセットは、これのみで、或いは他の配列と共にベクターを構成していてもよい。ベクターの種類は、特に制限されず、例えば、動物細胞発現プラスミド等のプラスミドベクター; レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、センダイウイルス等のウイルスベクター; アグロバクテリウムベクター等が挙げられる。
上記したガイドRNAコンポーネントは、公知の遺伝子工学的手法に従って容易に作製することができる。例えば、PCR、制限酵素切断、DNA連結技術、in vitro転写・翻訳技術、リコンビナントタンパク質作製技術等を利用して作製することができる。
2-2.材料(b)
材料(b)は、5´側から、5´側ホモロジーアーム配列、ドナーDNA配列、3´側ホモロジーアーム配列の順で配置されてなる塩基配列を含む、一本鎖DNAである。
5´側ホモロジーアーム配列は、ゲノム編集対象領域外側の一方の塩基配列の相同配列であり、3´側ホモロジーアーム配列は、ゲノム編集対象領域外側の他方の塩基配列の相同配列である。
ゲノム対象領域のセンス鎖に基づいて設計する場合、5´側ホモロジーアーム配列は、ゲノム編集対象領域センス鎖の5´外側の塩基配列の相同配列であり、3´側ホモロジーアーム配列は、ゲノム編集対象領域センス鎖の3´外側の塩基配列の相同配列である。
ゲノム対象領域のアンチセンス鎖に基づいて設計する場合、5´側ホモロジーアーム配列は、ゲノム編集対象領域アンチセンス鎖の5´外側の塩基配列の相同配列であり、3´側ホモロジーアーム配列は、ゲノム編集対象領域アンチセンス鎖の3´外側の塩基配列の相同配列である。
5´側ホモロジーアーム配列の、ゲノム編集対象領域外側の一方の塩基配列に対する同一性は、例えば、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、よりさらに好ましくは97%以上、よりさらに好ましくは98%以上、よりさらに好ましくは99%以上、よりさらに好ましくは100%である。
3´側ホモロジーアーム配列の、ゲノム編集対象領域外側の他方の塩基配列に対する同一性は、例えば、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、よりさらに好ましくは97%以上、よりさらに好ましくは98%以上、よりさらに好ましくは99%以上、よりさらに好ましくは100%である。
5´側ホモロジーアーム配列の長さは、特に制限されないが、例えば、10塩基長以上、好ましくは20塩基長以上、より好ましくは30塩基長以上、さらに好ましくは40塩基長以上、よりさらに好ましくは50塩基長以上、よりさらに好ましくは60塩基長以上、よりさらに好ましくは80塩基長以上、よりさらに好ましくは100塩基長以上、よりさらに好ましくは110塩基長以上、よりさらに好ましくは130塩基長以上、よりさらに好ましくは150塩基長以上、よりさらに好ましくは200塩基長以上、よりさらに好ましくは250塩基長以上(例えば、260塩基長以上、270塩基長以上、280塩基長以上、290塩基長以上、300塩基長以上、310塩基長以上)であり、また例えば、2000塩基長以下、好ましくは1000塩基長以下、より好ましくは600塩基長以下、さらに好ましくは400塩基長以下、よりさらに好ましくは350塩基長以下である。5´側ホモロジーアーム配列の長さの範囲は、上記上限と下限を任意に組み合わせた範囲とすることができ、例えば、10〜2000塩基長、10〜1000塩基長、10〜600塩基長、40〜600塩基長、50〜600塩基長、60〜600塩基長、80〜600塩基長、100〜600塩基長、110〜600塩基長、130〜600塩基長、150〜600塩基長、200〜600塩基長、250〜600塩基長(例えば、260〜600塩基長)、200〜400塩基長、200〜350塩基長、250〜350塩基長(例えば、260〜350塩基長)である。5´側ホモロジーアーム配列の長さを比較的長くすることにより、より効率的に目的のゲノム編集を行うことができる。
3´側ホモロジーアーム配列の長さは、特に制限されないが、例えば、10塩基長以上、好ましくは20塩基長以上、より好ましくは30塩基長以上、さらに好ましくは40塩基長以上、よりさらに好ましくは50塩基長以上、また例えば、2000塩基長以下、好ましくは1000塩基長以下、より好ましくは600塩基長以下、さらに好ましくは400塩基長以下、よりさらに好ましくは200塩基長以下、よりさらに好ましくは150塩基長以下、よりさらに好ましくは100塩基長以下、よりさらに好ましくは80塩基長以下である。3´側ホモロジーアーム配列の長さの範囲は、上記上限と下限を任意に組み合わせた範囲とすることができ、例えば、10〜2000塩基長、10〜1000塩基長、10〜600塩基長、10〜400塩基長、20〜400塩基長、30〜400塩基長、30〜200塩基長、30〜150塩基長、30〜100塩基長、40〜100塩基長、50〜100塩基長、50〜80塩基長である。
ドナーDNA配列は、任意の塩基配列を採用することができる。本発明のゲノム編集方法により、ゲノム編集対象領域がドナーDNA配列に置き換えられる。一例として、ドナーDNA配列は、ゲノム編集対象領域に変異(例えば、塩基の置換、欠失、付加、又は挿入)が導入されてなる配列であることができる。別の例として、ドナーDNA配列は、外来DNA配列を含むことができる。外来DNA配列としては、例えば、組換え酵素認識配列(例えば、loxP配列、FRT配列)、組換え酵素(例えば、CreやFLP)発現カセット、薬剤耐性遺伝子発現カセット、ネガティブセレクションマーカー発現カセット、蛍光タンパク質発現カセットなどが挙げられる。この場合、一例として、ドナーDNA配列は、ゲノム編集対象領域(又はその変異配列)に外来DNA配列が導入されてなる配列であることができる。
比較的短い一本鎖オリゴ(ssODN)を用いる従来法(非特許文献1など)では、ある領域内の複数個所に変異(例えば、2つのloxP配列の挿入)を一度に導入することは困難であったが、本発明によればこのような変異も一度に導入することが可能である。この観点から、ドナーDNA配列が、ゲノム編集対象領域に対する変異、外来DNA配列などを2つ以上含む場合、好ましくはこれらの内の少なくとも2つが50塩基長以上(より好ましくは100塩基長以上、さらに好ましくは200塩基長以上、よりさらに好ましくは300塩基長以上)離れて存在している場合に、本発明の利点を特に生かすことができる。
ドナーDNA配列の長さは、特に制限されない。該長さは、例えば、10塩基長以上、好ましくは30塩基長以上、より好ましくは60塩基長以上、さらに好ましくは100塩基長以上、よりさらに好ましくは150塩基長以上、よりさらに好ましくは200塩基長以上、また例えば、10000塩基長以下、好ましくは5000塩基長以下、より好ましくは2000塩基長以下、さらに好ましくは1000塩基長以下、よりさらに好ましくは800塩基長以下である。ドナーDNA配列がより長い方が、本発明の利点を特に生かすことができる。
ドナーDNA配列のゲノム編集対象領域に対する同一性は、特に制限されない。該同一性は、例えば、20%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、よりさらに好ましくは80%以上である。
一本鎖DNAの塩基配列は、通常、5´側から、5´側ホモロジーアーム配列、ドナーDNA配列、3´側ホモロジーアーム配列の順で配置されてなる、5´側ホモロジーアーム配列、ドナーDNA配列、及び3´側ホモロジーアーム配列のみからなる塩基配列であるが、本発明のゲノム編集効率を著しく損なわない限りにおいて、これに限定されず、例えば、該塩基配列に任意の配列が付加などされていてもよい。
5´側ホモロジーアーム配列の5´側に任意の配列が付加されている場合、5´側ホモロジーアーム配列及び任意の配列からなる塩基配列の、ゲノム編集対象領域外側の一方の塩基配列に対する同一性は、例えば、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、よりさらに好ましくは97%以上、よりさらに好ましくは98%以上、よりさらに好ましくは99%以上、よりさらに好ましくは100%である。
3´側ホモロジーアーム配列の3´側に任意の配列が付加されている場合、3´側ホモロジーアーム配列及び任意の配列からなる塩基配列の、ゲノム編集対象領域外側の他方の塩基配列に対する同一性は、例えば、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、よりさらに好ましくは97%以上、よりさらに好ましくは98%以上、よりさらに好ましくは99%以上、よりさらに好ましくは100%である。
一本鎖DNAは、公知の遺伝子工学的手法に従って容易に作製することができる。例えば、PCR、制限酵素切断、DNA連結技術等を利用して作製することができる。また、既報(Yoshimi, K. et al. ssODN-mediated knock-in with CRISPR-Cas for large genomic regions in zygotes. Nat Commun 7, 10431 (2016).)に従って、一本鎖DNAの配列及びその両側にニッキングエンドヌクレアーゼ認識サイトを含むプラスミドDNAを調製し、該プラスミドDNAをニッキングエンドヌクレアーゼを用いて消化し、得られた消化物をアガロースゲル電気泳動し、目的の一本鎖DNAに一致するバンドを含むゲルから一本鎖DNAを抽出することにより、より簡便且つ効率的に作製することもできる。
3.ゲノム編集方法、ゲノム編集された細胞又は生物の製造方法
上記材料(a)及び(b)をゲノム編集対象細胞又はゲノム編集対象生物に導入する工程を含む方法により、これらの細胞又は生物のゲノムを編集すること、より具体的には、ゲノム編集対象領域を任意のドナーDNA配列に置き換えることができる。
材料(a)及び(b)の導入方法は、特に制限されず、対象細胞又は生物の種類、材料の種類(核酸であるのか、タンパク質であるのか等)に応じて、適宜選択することができる。導入方法としては、例えば、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、DEAE-デキストラン処理、リポフェクション、ナノ粒子媒介性トランスフェクション、ウイルス媒介性核酸送達等が挙げられる。材料(a)及び(b)が全て核酸(特に、材料aがガイドRNAとCas mRNAである場合)であれば、エレクトロポレーションを採用することにより、より簡便且つ効率的に導入することができる。エレクトロポレーションは、例えば、既報(特開2015-070825号公報)に従って、或いは後述の実施例に従って行うことができる。
材料(a)及び(b)の導入の態様は、最終的に対象細胞又は生物内に材料(a)及び(b)全てが送達される限りにおいて特に制限されない。材料(a)及び(b)は、同時に、逐次的に、或いは一定期間を空けて別々に導入することができる。
材料(a)及び(b)を導入してから、一定時間経過後に、対象細胞又は対象生物内でゲノム編集が起こるので、この細胞又は生物を回収することにより、ゲノム編集された(すなわち、ゲノム編集対象領域が任意のドナーDNA配列に置き換えられた)細胞又は生物を得ることができる。材料(a)及び(b)を受精卵に導入した場合であれば、得られた受精卵を、必要に応じて一定期間培養後、偽妊娠雌個体の子宮に移植し、該個体から生まれる子どもを取得することによって、ゲノム編集された(すなわち、ゲノム編集対象領域が任意のドナーDNA配列に置き換えられた)生物を得ることができる。
4.ゲノム編集用キット、ゲノム編集用組成物
上記材料(a)及び(b)は、これらが一体となって含まれるゲノム編集用組成物として利用することもできるし、或いはキットとして利用することもできる。
ゲノム編集用組成物は、上記材料(a)及び(b)を含有する限りにおいて特に制限されず、必要に応じてさらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、薬学的に許容される成分であれば特に限定されるものではないが、例えば、基剤、担体、溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、保湿剤、着色料、香料、キレート剤等が挙げられる。
ゲノム編集用キットは、上記材料(a)及び(b)を別々に或いは一体となって含まれている限りにおいて特に制限されず、必要に応じて核酸導入試薬、タンパク質導入試薬、緩衝液等、本発明のゲノム編集方法の実施に必要な他の試薬、器具等を適宜含んでいてもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1.ゲノム編集試験1(野生型マウス、Serpina3n遺伝子、マイクロインジェクション)
マウスSerpina3a(serine peptidase inhibitor clade A member 3A)遺伝子のエクソン4及びその周辺領域をゲノム編集対象領域として、該領域を、該領域の両端にloxP配列が付加されてなる配列に置き換えた。具体的には、図1に示すスキームに従って、次のように行った。
<実施例1-1.ガイドRNAの調製>
ガイドRNAのデザインは、ソフトウェアツール(crispr.genome-engineering.org)を用いて行った。ゲノム編集対象領域(配列番号1)の一方の端部を切断するようにデザインされたガイドRNA(Serpina3a gRNA-1、標的部位(標的鎖)の配列は配列番号2)、及び他方の端部を切断するようにデザインされたガイドRNA(Serpina3a gRNA-2、標的部位(標的鎖)の配列は配列番号3)を、二本鎖DNA(Integrated DNA Technologies社にて合成)を鋳型として、in vitro転写キット(MEGAshortscript T7 Transcription Kit、Life Technologies社製)を用いて合成した。
<実施例1-2.Cas9 mRNAの調製>
Cas9コード配列の下流にポリAテールが付加されてなる配列を含むプラスミド(pCas9-polyA、Addgene ID #72602)をリニアライズしたものを鋳型DNAとして、in vitro転写キット(MEGAshortscript T7 Transcription Kit、Life Technologies社製)を用いて合成し、精製キット(MEGAClear kit、Life Technologies社製)を用いて精製した。
<実施例1-3.一本鎖DNAの調製>
5´側から、5´側ホモロジーアーム配列(ゲノム編集対象領域アンチセンス鎖(配列番号1の相補配列)の5´外側の約300塩基長の配列)、loxP配列(逆向き)、ゲノム編集対象領域アンチセンス鎖配列(配列番号1の相補配列)、loxP配列(逆向き)、3´側ホモロジーアーム配列(ゲノム編集対象領域アンチセンス鎖(配列番号1の相補配列)の3´外側の約60塩基長の配列)の順で配置されてなる塩基配列(配列番号4)からなる一本鎖DNAを、既報(Yoshimi, K. et al. ssODN-mediated knock-in with CRISPR-Cas for large genomic regions in zygotes. Nat Commun 7, 10431 (2016).)に従って調製した。調製方法の概要を図2に示す。
具体的には、次のとおりである。まず、上記一本鎖DNAの塩基配列、及び該塩基配列の両側に配置されたニッキングエンドヌクレアーゼ認識サイトを含むプラスミドDNAを、人工遺伝子合成サービス(GeneArt(登録商標)、Thermo Fisher Scientific社)を利用して合成した。得られたプラスミドDNAを、一本鎖DNAの塩基配列の両側を認識するニッキングエンドヌクレアーゼを用いて消化し、得られた消化物をアガロースゲル電気泳動した。目的の一本鎖DNAに一致するバンドを切り出し、得られたゲルからDNA抽出キット(NucleoSpin(登録商標) Gel and PCR Clean-up、タカラバイオ社製)を用いて目的の一本鎖DNAを抽出した。
<実施例1-4.受精卵への導入、及びジェノタイピング>
C57BL/6J Jcl雌マウスを、妊馬血清性性腺刺激ホルモン(あすか製薬社製)及びヒト絨毛性ゴナドトロピン(あすか製薬社製)の注射により、過排卵状態にした。得られた過排卵マウスより、前核期胚を採取し、KSOM培地(ア−クリソース社製)中で培養した。上記で調製した、ガイドRNA(25ng/μL)、Cas9 mRNA(50ng/μL)、及び一本鎖DNA(50ng/μL)を、マイクロマニピュレーター(ナリシゲ社製)を用いて胚中の雄前核にマイクロインジェクションした。胚を培養し、二細胞期胚を偽妊娠雌マウスの子宮内に移した。生まれてきたマウス(F0マウス)の尾部からゲノムDNAを抽出して、ゲノム編集対象領域の外側に設計されたプライマーセットを用いたPCR、及び得られたPCR断片のシークエンシングにより、ジェノタイピングを行った。
<実施例1結果>
結果を末尾の表1に示す(Mouse C57B6 Serpina3n MIの段)。表1に示されるように、生まれたマウスの16.1%という高効率で、ゲノム編集対象領域が、該領域の両端にloxP配列が付加されてなる配列に置き換えられたアレルを有するF0マウス(すなわち、目的のゲノム編集が成功したマウス)が得られた。
また、このF0マウスをC57BL/6J Jclマウスと掛け合わせ、得られたF1マウスについてもジェノタイピングを行った結果、目的のゲノム編集がなされたアレルが生殖細胞系列伝達することが確認された。
実施例2.ゲノム編集試験2(野生型マウス、Tyr遺伝子、マイクロインジェクション)
マウスTyr(Tyrosinase)遺伝子のエクソン2及びその周辺領域をゲノム編集対象領域として、該領域を、該領域の両端にloxP配列が付加されてなる配列に置き換えた。具体的には、ゲノム編集対象領域を配列番号5とし、ガイドRNAとしてTyr gRNA-1(標的部位(非標的鎖)の配列は配列番号6)及びTyr gRNA-2(標的部位(非標的鎖)の配列は配列番号7)を用い、一本鎖DNAとして、5´側から、5´側ホモロジーアーム配列(ゲノム編集対象領域アンチセンス鎖(配列番号5の相補配列)の5´外側の約300塩基長の配列)、loxP配列(逆向き)、ゲノム編集対象領域アンチセンス鎖配列(配列番号5の相補配列)、loxP配列(逆向き)、3´側ホモロジーアーム配列(ゲノム編集対象領域アンチセンス鎖(配列番号5の相補配列)の3´外側の約50塩基長の配列)の順で配置されてなる塩基配列(配列番号8)からなる一本鎖DNAを用いる以外は、実施例1と同様にして行った。
結果を末尾の表1に示す(Mouse C57B6 Tyr MIの段)。表1に示されるように、生まれたマウスの17.6%という高効率で、ゲノム編集対象領域が、該領域の両端にloxP配列が付加されてなる配列に置き換えられたアレルを有するF0マウス(すなわち、目的のゲノム編集が成功したマウス)が得られた。
また、このF0マウスをC57BL/6J Jclマウスと掛け合わせ、得られたF1マウスについてもジェノタイピングを行った結果、目的のゲノム編集がなされたアレルが生殖細胞系列伝達することが確認された。
実施例3.ゲノム編集試験3(野生型マウス、Serpina3n遺伝子、エレクトロポレーション)
ガイドRNA、Cas9 mRNA、及び一本鎖DNAの導入を、マイクロインジェクション法に代えて、既報(特開2015-070825号公報)に従ったエレクトロポレーション法によって行う以外は、実施例1と同様にして行った。
エレクトロポレーション法の条件は次の通りである。ガイドRNA(100ng/μL)、Cas9 mRNA(400ng/μL)、及び一本鎖DNA(40ng/μL)を、エレクトロポレーター(NEPA21 Super Electroporator、Nepa Gene社製)を用いて、前核期胚に導入した。ポアーリングパルスの条件は、電圧:225V、パルス幅:1-2.5ms、パルス間隔:50ms、回数:4回、極性:+とし、第1及び第2トランスファーパルスの条件は、電圧:20V、パルス幅:50ms、パルス間隔:50ms、回数:5回、極性:±とした。
結果を末尾の表1に示す(Mouse C57B6 Serpina3n ELの段)。表1に示されるように、生まれたマウスの11.1%という高効率で、ゲノム編集対象領域が、該領域の両端にloxP配列が付加されてなる配列に置き換えられたアレルを有するF0マウス(すなわち、目的のゲノム編集が成功したマウス)が得られた。
さらに、このF0マウスをCre-driverマウス(B6.Cg-Tg(CAG-Cre)CZ-MO2Osb、RBRC01828)と掛け合わせて、得られたF1マウスを解析した結果、該F1マウスにおいてloxP配列間の欠失が起こることが確認された。
実施例4.ゲノム編集試験4(野生型マウス、Mct4遺伝子、エレクトロポレーション)
マウスMct4(Monocarboxylate transporter 4)遺伝子のエクソン4及びその周辺領域をゲノム編集対象領域として、該領域を、該領域の両端にloxP配列が付加されてなる配列に置き換えた。具体的には、ゲノム編集対象領域を配列番号9とし、ガイドRNAとしてMct4 gRNA-1(標的部位(標的鎖)の配列は配列番号10)及びMct4 gRNA-2(標的部位(標的鎖)の配列は配列番号11)を用い、一本鎖DNAとして、5´側から、5´側ホモロジーアーム配列(ゲノム編集対象領域センス鎖(配列番号9)の5´外側の約300塩基長の配列)、loxP配列、ゲノム編集対象領域センス鎖配列(配列番号9)、loxP配列、3´側ホモロジーアーム配列(ゲノム編集対象領域センス鎖(配列番号9)の3´外側の約50塩基長の配列)の順で配置されてなる塩基配列(配列番号12)からなる一本鎖DNAを用いる以外は、実施例3と同様にして行った。
結果を末尾の表1に示す(Mouse C57B6 Mct4 ELの段)。表1に示されるように、生まれたマウスの9.5%という高効率で、ゲノム編集対象領域が、該領域の両端にloxP配列が付加されてなる配列に置き換えられたアレルを有するF0マウス(すなわち、目的のゲノム編集が成功したマウス)が得られた。
実施例5.ゲノム編集試験5(野生型ラット、Vapb遺伝子、エレクトロポレーション)
ラットVapb(vesicle-associated membrane protein-associated protein B/C)遺伝子のエクソン2及びその周辺領域をゲノム編集対象領域として、該領域を、該領域に変異(Vapbタンパク質のN末端から56番目のアミノ酸(プロリン)をセリンに変異させる変異:CCC→TCC)が導入されてなる領域の両端にloxP配列が付加されてなる配列に置き換えた。具体的には、図3に示すスキームに従って、次のように行った。
<実施例5-1.ガイドRNAの調製>
ゲノム編集対象領域(配列番号13)の一方の端部を切断するようにデザインされたガイドRNA(Vapb gRNA-1、標的部位(標的鎖)の配列は配列番号14)、及び他方の端部を切断するようにデザインされたガイドRNA(Vapb gRNA-2、標的部位(標的鎖)の配列は配列番号15)を、実施例1-1と同様にして合成した。
<実施例5-2.Cas9 mRNAの調製>
実施例1-2と同様にして調製した。
<実施例5-3.一本鎖DNAの調製>
5´側から、5´側ホモロジーアーム配列(ゲノム編集対象領域センス鎖(配列番号13)の5´外側の約250塩基長の配列)、loxP配列、ゲノム編集対象領域センス鎖配列(配列番号13)において5´端から178番目の塩基(シトシン)がチミンに変異してなる配列(配列番号16)、loxP配列、3´側ホモロジーアーム配列(ゲノム編集対象領域センス鎖(配列番号13)の3´外側の約60塩基長の配列)の順で配置されてなる塩基配列(配列番号17)からなる一本鎖DNAを、実施例1-3と同様にして調製した。
<実施例5-4.受精卵への導入、及びジェノタイピング>
受精卵採取に用いるラットとしてF344/Jcl雌ラットを用い、前核期胚の培養培地としてm-KRB(modified Krebs-Ringer Bicarbonate)培地(ア−クリソース社製)を用いる以外は、実施例3と同様にして実施した。
<実施例5結果>
結果を末尾の表1に示す(Rat F344 Vapb ELの段)。表1に示されるように、生まれたラットの50.0%という高効率で、ゲノム編集対象領域が、該領域に変異(Vapbタンパク質のN末端から56番目のアミノ酸(プロリン)をセリンに変異させる変異:CCC→TCC)が導入されてなる領域の両端にloxP配列が付加されてなる配列に置き換えられたアレルを有するF0ラット(すなわち、目的のゲノム編集が成功したラット)が得られた。
また、このF0ラットをF344/Jclラットと掛け合わせ、得られたF1ラットについてもジェノタイピングを行った結果、目的のゲノム編集がなされたアレルが生殖細胞系列伝達することが確認された。
実施例6.ゲノム編集試験6(Creマウス、Serpina3n遺伝子、マイクロインジェクション)
ガイドRNA、Cas9 mRNA、及び一本鎖DNAの導入対象として、Cre-driver雄マウス(Emx1-cre、RBRC00808:皮質ニューロン及びグリアにおいてCreタンパク質を発現するマウス)の精子を用いてin vitroで受精させたC57BL/6J Jcl雌マウス受精卵を用いる以外は、実施例1と同様にして行った。
結果を末尾の表1に示す(Mouse Emx1-Cre Serpina3n MIの段)。表1に示されるように、生まれたマウスの12.5%という高効率で、ゲノム編集対象領域が、該領域の両端にloxP配列が付加されてなる配列に置き換えられたアレルを有するF0マウス(すなわち、目的のゲノム編集が成功したマウス)が得られた。
また、このF0マウスの各種組織からゲノムDNAを抽出して、ジェノタイピングを行った結果、脳組織特異的にloxP配列間の欠失が起こることが確認された。
実施例7.ゲノム編集試験7(Creマウス、Serpina3n遺伝子、エレクトロポレーション)
ガイドRNA、Cas9 mRNA、及び一本鎖DNAの導入を、エレクトロポレーション法によって行う以外は、実施例6と同様にして行った。
結果を末尾の表1に示す(Mouse Emx1-Cre Serpina3n ELの段)。表1に示されるように、生まれたマウスの18.5%という高効率で、ゲノム編集対象領域が、該領域の両端にloxP配列が付加されてなる配列に置き換えられたアレルを有するF0マウス(すなわち、目的のゲノム編集が成功したマウス)が得られた。
また、このF0マウスの各種組織からゲノムDNAを抽出して、ジェノタイピングを行った結果、脳組織特異的にloxP配列間の欠失が起こることが確認された。
Figure 0006948718
表1の説明:
「Species」及び「Strain」は、ゲノム編集対象生物の種及び株を示す。
「Target」は、ゲノム編集対象の遺伝子名を示す。
「Transfer methods」は、ガイドRNA、Cas9 mRNA、及び一本鎖DNAを導入した方法を示す。「MI」はマイクロインジェクション法を示し、「EL」はエレクトロポレーション法を示す。
「Embryos injected」は、ガイドRNA、Cas9 mRNA、及び一本鎖DNAを導入した胚の数を示す。
「Embryos transferred」は、偽妊娠の雌個体の子宮に移した胚の数、及び該数の「Embryos injected」の数に対する割合(%)を示す。
「Live births」は、生まれてきた個体の数、及び該数の「Embryos transferred」の数に対する割合(%)を示す。
「LD」は、ゲノム編集対象領域の一部又は全部を含む比較的大きな領域が欠失(large deletion)したアレルを有する個体数、及び該個体数の「Live births」の個体数に対する割合(%)を示す。
「loxP」は、loxPサイトが1つのみ導入されたアレルを有する個体数、及び該個体数の「Live births」の個体数に対する割合(%)を示す。
「flox」は、ゲノム編集対象領域が、該領域の両端にloxP配列が付加されてなる配列に置き換えられたアレルを有する個体数(すなわち、目的のゲノム編集が成功した個体数)、及び該個体数の「Live births」の個体数に対する割合(%)を示す。
「Conditional」は、2つのアレルが両方ともfloxアレルである個体数、及びfloxアレルとLDアレルを有する個体数の合計数、及び該合計数の「Live births」の個体数に対する割合(%)を示す。
「Germline transmission」は、「flox allele」の個体と野生型個体とを掛け合わせて得られたF1マウスについてもジェノタイピングを行った結果、「flox allele」が生殖細胞系列伝達することが確認された個体数を示す。
「Cre-loxP」は、「flox allele」の個体とCre-driver個体とを掛け合わせて得られたF1マウス、或いはF0マウスのCre発現組織(実施例7)を解析した結果、該F1マウス又は該Cre発現組織においてloxP配列間の欠失が起こることが確認された個体数を示す。
「-」は、解析していないことを示す。
「Live births」中、「LD allele」、「loxP allele」及び「flox allele」以外にも、ゲノム編集対象領域の5´端周辺及び/又は3´端周辺が数塩基〜数十塩基欠失したアレルを有する個体も見られた。
本発明によれば、簡便且つ効率的に、ゲノム上に外来DNAが導入された細胞や生物を作製することができる。本発明は、実験動物の作成などの研究目的のみならず、再生医療などの医療分野、有用形質を有する作物の作成などの農業分野、微生物を利用した有用物質の生産などの工業分野、など幅広い産業分野での利用が期待される。
配列番号2
<223> Serpina3a gRNA-1 標的鎖
配列番号3
<223> Serpina3a gRNA-2 標的鎖
配列番号4
<223> Serpina3aに対する一本鎖DNA
配列番号6
<223> Tyr gRNA-1 非標的鎖
配列番号7
<223> Tyr gRNA-2 非標的鎖
配列番号8
<223> Tyrに対する一本鎖DNA
配列番号10
<223> Mct4 gRNA-1 標的鎖
配列番号11
<223> Mct4 gRNA-2 標的鎖
配列番号12
<223> Mct4に対する一本鎖DNA
配列番号14
<223> Vapb gRNA-1 標的鎖
配列番号15
<223> Vapb gRNA-2 標的鎖
配列番号16
<223> 変異したゲノム編集領域
配列番号16
<223> Vapbに対する一本鎖DNA

Claims (5)

  1. (a)ゲノム編集対象領域の両端を切断する人工ヌクレアーゼシステム、及び(b)5´側から、5´側ホモロジーアーム配列、ドナーDNA配列、3´側ホモロジーアーム配列の順で配置されてなる塩基配列を含む一本鎖DNAであって、前記5´側ホモロジーアーム配列が前記ゲノム編集対象領域外側の一方の塩基配列の相同配列であって200〜350塩基長であり、前記ドナーDNA配列が200塩基長以上であり、且つ前記3´側ホモロジーアーム配列が前記ゲノム編集対象領域外側の他方の塩基配列の相同配列である一本鎖DNAを、エレクトロポレーション法により細胞又は非ヒト生物に導入する工程を含む、ゲノム編集された細胞又は非ヒト生物の製造方法。
  2. 前記人工ヌクレアーゼシステムがCRISPR/Casシステムである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記ドナーDNA配列が2つの組換え酵素認識配列を含み、前記人工ヌクレアーゼシステム及び前記一本鎖DNAの導入対象が、組換え酵素発現カセットを含む受精卵である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. (a)ゲノム編集対象領域の両端を切断する人工ヌクレアーゼシステム、及び(b)5´側から、5´側ホモロジーアーム配列、ドナーDNA配列、3´側ホモロジーアーム配列の順で配置されてなる塩基配列を含む一本鎖DNAであって、前記5´側ホモロジーアーム配列が前記ゲノム編集対象領域外側の一方の塩基配列の相同配列であって200〜350塩基長であり、前記ドナーDNA配列が200塩基長以上であり、且つ前記3´側ホモロジーアーム配列が前記ゲノム編集対象領域外側の他方の塩基配列の相同配列である一本鎖DNAを含む、請求項1に記載の方法に用いるための組成物。
  5. (a)ゲノム編集対象領域の両端を切断する人工ヌクレアーゼシステム、及び(b)5´側から、5´側ホモロジーアーム配列、ドナーDNA配列、3´側ホモロジーアーム配列の順で配置されてなる塩基配列を含む一本鎖DNAであって、前記5´側ホモロジーアーム配列が前記ゲノム編集対象領域外側の一方の塩基配列の相同配列であって200〜350塩基長であり、前記ドナーDNA配列が200塩基長以上であり、且つ前記3´側ホモロジーアーム配列が前記ゲノム編集対象領域外側の他方の塩基配列の相同配列である一本鎖DNAを含む、請求項1に記載の方法に用いるためのキット。
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