従来、この種の容積型機械としては、案内円筒部材に案内される2つのピストンとこの2つのピストンの中央から案内円筒部材の中心軸に対して直交する方向に対称に配置された一対の第1アーム部とを有する往復動部材と、案内円筒部材の中心軸に対して直交するように対称に配置された一対のシャフト部材と、各シャフト部材の回転軸から偏位した位置でシャフト部材に取り付けられて各第1アーム部を保持する一対の第2アーム部と、2つのピストンの往復運動により容積変化を生じる一対の作動室と、を備え、往復動部材が揺動運動を伴って往復運動するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。図17は、従来例の容積型機械920の構成の概略を示す構成図である。なお、従来例の容積型機械920は、後述する本発明の第1実施例の容積型機械20との比較のため、同様の構成とした。
従来例の容積型機械920は、作動流体である気体を昇圧する圧縮機として構成されており、図示するように、図中上下方向(Y軸方向)の中心軸を有する円筒形状の案内円筒部材930a,930bと、この案内円筒部材930a,930bに一対のピストン942a,942bが案内されて図中上下方向(Y軸方向)に往復運動すると共に案内円筒部材930a,930bの中心軸回り(Y軸周り)に揺動運動する往復動部材940と、案内円筒部材930a,930bの中央でその中心軸と直交する直線(Z軸)を回転軸とするよう配置された一対のシャフト部材950a,950bと、ピストン942a,942bの往復運動により容積変化する一対の作動室962a,962bと、作動室962a,962bに隔壁965a,965bを介して隣接する一対の高圧室966a、966bと、一対のシャフト部材950a,950bにそれぞれ取り付けられた一対の電動機970a,970bと、これらを収納するケース922と、を備える。
往復動部材940には、その中央に案内円筒部材930a,930bの中心軸(Y軸)に直交する貫通孔941aが形成された取付部941が形成されている。取付部941の貫通孔941aには、円柱形状に形成された一対の第1アーム部944a,944bが隙間なく嵌挿され、取付部941と一対の第1アーム部944a,944bは、案内円筒部材930a,930bの中心軸(Y軸)と一対の第1アーム部944a,944bの中心軸との交点で両中心軸に直交するよう嵌挿されたピン部材946によって取り付け固定されている。第1アーム部944a,944bの端部には、アーム軸線上に球心P1a,P1bを有する外周球面部945a,945bが形成または取り付け固定されている。
ピストン942a,942bには、作動室962a,962bに作動流体を供給する流体流路963a,963bが形成されており、流体流路963a,963bには、ピストン942a,942bの間の作動流体空間960の圧力よりも作動室962a,962bの圧力が低くなったときに開弁する吸入弁964a,964bが取り付けられている。また、作動室962a,962bと高圧室966a,966bとの間の隔壁965a,965bには、作動室962a,962bの圧力が高圧室966a,966bの圧力よりも高くなったときに開弁する吐出弁967a,967bが取り付けられており、高圧室966a,966bには、流出管968a,968bが取り付けられている。さらに、ケース922には、作動流体空間960に連通する図示しない流入管が取り付けられている。したがって、作動流体は、流入管から作動流体空間960に流入し、ピストン942a,942bの往復運動により流体流路963a,963bおよび吸入弁964a,964bを介して作動室962a,962bに供給され、吐出弁967a,967bを介して高圧室966a,966bに流入し、流出管968a,968bから流出する。
シャフト部材950a,950bは、ボールベアリング951a,951b,952a,952bにより回転自在に支持されており、その一端部(往復動部材40側の端部)の回転軸から偏位した位置には往復動部材940の第1アーム部944a,944bを支持する一対の第2アーム部954a,954bが取り付けられている。この第2アーム部954a,954bは、シャフト部材950a,950bの回転軸に対して平行な軸線を中心軸とする内周円筒部材として形成されており、内周円筒内に第1アーム部944a,944bの外周球面部945a,945bを摺動可能に収納する。ここで、シャフト部材950a,950bを相対的に逆回転となるように回転駆動すると、第2アーム部954a,954bも相対的に逆回転するから、これに伴って第1アーム部944a,944bの外周球面部945a,945bは若干のシャフト部材950a,950bの軸方向への往復運動を伴って公転運動し、往復動部材940は揺動運動を伴う往復運動を行なう。図18は、揺動運動を伴って往復運動する往復動部材940の状態を示す説明図であり、図19は、揺動運動を伴って往復運動する往復動部材940を図17中上方から見た説明図である。図18,図19の(a)〜(e)は、往復動部材940が往復運動における中央に位置する状態からシャフト部材950a,950bが90度回転するごとの状態である。往復動部材940は、図示するように、図18(b)で上死点、図18(d)で下死点となる振幅2εの往復運動を行なうと共に、図19(a),(e)で反時計回りの揺動片振幅角θmax、図19(c)で時計回りの揺動片振幅角θmaxの揺動運動を行なう。図18において、前側の外周球面部945aは反時計回りに公転運動を行ない、後ろ側の外周球面部945bは時計回りの公転運動を行なうから、これに伴ってシャフト部材950aは反時計回りに回転すると共にシャフト部材950bは時計回りに回転する。
シャフト部材950a,950bの一端部には、その遠心力の方向が第2アーム部954a,954bとは反対側の方向となるように一対の主ウエイトバランス958a,958bが取り付けられており、シャフト部材950a,950bの他端部(往復動部材940とは反対側の端部)には、その遠心力の方向が主ウエイトバランス958a,958bと反対側の方向となるように一対の副ウエイトバランス959a,959bが取り付けられている。
従来例の容積型機械920は、直角座標系の3軸(X軸、Y軸、Z軸)方向の慣性力と慣性力によるその3軸周りのトルクの中で、Y軸周りのトルク以外の加振力の発生をゼロにすることができる。
しかしながら、上述の容積機械920では、僅かな製造誤差により摩擦抵抗が大きくなったり動作しなくなる場合が生じる。シャフト部材950aの回転軸とシャフト部材950bの回転軸に製造誤差による僅かなズレ、例えば図17におけるY軸方向のズレや図17のY軸及びZ軸と直交するX軸方向のズレが生じると、このズレにより往復動部材940の中心軸が傾いたり案内円筒部材930a,930bの共通中心軸から偏位したりして、ピストン942a,942bと案内円筒部材930a,930bとの摩擦抵抗が増大し、その大きさによっては動作しなくなってしまう。こうした動作不良は、シャフト部材950aやシャフト部材950bの組み付け時による誤差以外にもシャフト部材950a,950bの第2アーム部偏位量の製造誤差に基づいても発生する。
本発明の容積型機械は、一対のシャフト部材の回転軸間のズレや第2アーム部偏位量等の製造誤差等が生じていてもスムーズに動作するようにすることを主目的とする。
本発明の容積型機械は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明の容積型機械は、
円筒状の案内円筒部材と、
前記案内円筒部材の内周面に案内されて該案内円筒部材の中心軸方向に往復運動すると共に該中心軸回りに搖動運動するピストン部を有する往復動部材と、
前記案内円筒部材の中心軸に直交すると共に該中心軸に対して対称となるように前記往復動部材に取り付けられた一対の第1アーム部と、
前記案内円筒部材の中心軸に直交すると共に前記中心軸に対して対称となるよう配置された一対のシャフト部材と、
前記一対のシャフト部材の回転軸から偏位した位置で前記一対の第1アーム部を各々支持するよう該一対のシャフト部材に取り付けられた一対の第2アーム部と、
前記ピストン部の往復運動に伴って容積変化が生じる作動室と、
を備える容積型機械において、
前記一対の第1アーム部と前記ピストン部は、前記一対の第1アーム部の中心軸と前記ピストン部の中心軸とのなす角が90度を中心として所定微小角だけ変位可能に、且つ、前記一対の第1アーム部が前記ピストン部の中心軸に対して直交する方向に所定微小距離だけ平行移動可能に、取り付けられている、
ことを特徴とする。
本発明の容積型機械では、一対の第1アーム部とピストン部は、一対の第1アーム部の中心軸とピストン部の中心軸とのなす角が90度を中心として所定微小角だけ変位可能に取り付けられていると共に、一対の第1アーム部がピストン部の中心軸に対して直交する方向に所定微小距離だけ平行移動可能に取り付けられている。
いま、一対のシャフト部材の回転軸に製造誤差または組み付け誤差などにより一方のシャフト部材の回転軸が他方のシャフト部材の回転軸に対して案内円筒部材の中心軸方向に若干のズレが生じているときを考える。この場合、一方のシャフト部材の回転軸と他方のシャフト部材の回転軸とのズレにより、一対の第1アーム部は案内円筒部材の中心軸に対して直交する角度(90度)から僅かな角度だけ傾く。しかし、本発明の容積型機械では、一対の第1アーム部とピストン部は、一対の第1アーム部の中心軸とピストン部の中心軸とのなす角が90度を中心として所定微小角だけ変位可能に取り付けられているから、これを許容する。このため、往復動部材は、一方のシャフト部材の回転軸と他方のシャフト部材の回転軸に若干のズレが生じていても、案内円筒部材の中心軸から傾くことはない。
次に、一対のシャフト部材の回転軸に製造誤差または組み付け誤差などにより一方のシャフト部材の回転軸が他方のシャフト部材の回転軸に対して案内円筒部材の中心軸に直交すると共に一対のシャフト部材の回転軸に直交する方向に若干のズレが生じているときを考える。この場合、一方のシャフト部材の回転軸と他方のシャフト部材の回転軸とのズレにより、一対の第1アーム部は案内円筒部材の中心軸に対して直交する方向に僅かに平行移動する。しかし、本発明の容積型機械では、一対の第1アーム部とピストン部は一対の第1アーム部がピストン部の中心軸に対して直交する方向に所定微小距離だけ平行移動可能に取り付けられているから、これを許容する。このため、往復動部材は、一方のシャフト部材の回転軸と他方のシャフト部材の回転軸に若干のズレが生じていても、案内円筒部材の中心軸から半径方向に偏位することはない。
これらの結果、本発明の容積型機械では、一対のシャフト部材に製造誤差または組み付け誤差などが生じても、往復動部材が案内円筒部材の中心軸から傾いたり偏位したりするのを抑止することができる。この結果、往復動部材が案内円筒部材の中心軸から傾いたり偏位したりすることによって生じる不都合(摩擦抵抗の増大や動作不能)を回避することができる。
この本発明の容積型機械は、作動室に圧力流体を供給することにより往復動部材に往復運動及び揺動運動を生じさせて一対のシャフト部材に回転駆動力を生じさせる機械(エンジンなど)とすることもできるし、一対のシャフト部材に回転駆動力を供給することにより往復動部材に往復運動及び揺動運動を生じさせて作動室の容積変化を生じさせる機械(圧縮機など)とすることもできる。これらの場合、ピストン部は、一対の第1アーム部を挟んで対称に2つのピストンを有し、作動室は、2つのピストンの各々に対応するよう2つ形成されている、ものとすることもできる。また、1つのピストンのみを有し、作動室も1つだけ形成されているものとすることもできる。
本発明の容積型機械において、前記一対の第1アーム部は円柱部材により形成されており、前記ピストン部は前記一対の第1アーム部の直径より大きな直径の貫通孔を有し、前記一対の第1アーム部は前記ピストン部の前記貫通孔に貫通した状態で前記一対の第1アーム部の中心軸と前記ピストン部の中心軸の交点を両中心軸に対して直交する方向から貫くピン部材により該ピン部材が軸方向に摺動可能に取り付けられているものとしてもよい。こうすれば、一対の第1アーム部を、ピストン部に、一対の第1アーム部の中心軸とピストン部の中心軸とのなす角が90度を中心として所定微小角だけ変位可能に、且つ、一対の第1アーム部がピストン部の中心軸に対して直交する方向に所定微小距離だけ平行移動可能に取り付けらることができる。
本発明の容積型機械において、前記一対の第1アーム部と前記ピストン部とを取り付ける取付部材を有し、前記取付部材は、前記ピストン部については該ピストン部との取り付けを行なう第1取付位置において前記一対の第1アーム部が前記ピストン部の中心軸に対して直交する方向に所定微小距離だけ平行移動可能となるように取り付け、前記一対の第1アーム部については該一対の第1アーム部との取り付けを行なう第2取付位置において前記一対の第1アーム部の中心軸が揺動可能となるように取り付けられているものとしてもよい。この場合でも、一対の第1アーム部は案内円筒部材の中心軸に対して直交する角度(90度)から僅かな角度だけ傾くことを許容すると共に、一対の第1アーム部は案内円筒部材の中心軸に対して直交する方向に僅かに平行移動するのを許容するから、一対のシャフト部材に製造誤差または組み付け誤差などが生じても、往復動部材が案内円筒部材の中心軸から傾いたり偏位したりするのを抑止することができる。この場合、前記取付部材は、前記ピストン部については前記第1取付位置において前記一対の第1アーム部と平行な軸を回転軸とする第1ピン部材により取り付けられており、前記一対の第1アーム部については前記第2取付位置において前記一対の第1アーム部の中心軸と前記ピストン部の中心軸とに対して直交する方向を軸とする第2ピン部材により取り付けられているものとしてもよい。
本発明の容積型機械において、前記一対の第2アーム部と同期して前記一対のシャフト部材に対して公転すると共に公転に伴って自転し、前記往復動部材が上死点および下死点に位置するときには前記一対の第1アーム部の前記往復動部材の中心軸方向以外への微小移動を規制し、前記往復動部材が上死点および下死点から90度だけ位相が異なる点に位置するときには前記一対の第1アーム部の前記往復動部材の中心軸と直交する方向以外への微小移動を規制する機構である規制機構を備えるものとしてもよい。この場合、復動部材が上死点および下死点に位置するときには一対の第1アーム部の往復動部材の中心軸方向への微小移動は許容されるから、一対の第1アーム部の一方が往復動部材の中心軸方向の一方に微小移動し、一対の第1アーム部の他方が往復動部材の中心軸方向の他方に微小移動するときを考えれば、一対の第1アーム部は案内円筒部材の中心軸に対して直交する角度(90度)から僅かな角度だけ傾くことを許容するものとなる。また、往復動部材が上死点および下死点から90度だけ位相が異なる点に位置するときには一対の第1アーム部の往復動部材の中心軸と直交する方向への微小移動は許容されるから、一対の第1アーム部は案内円筒部材の中心軸に対して直交する方向に僅かに平行移動するのを許容するものとなる。そして、これらの以外の方向への微小移動を規制するから、復動部材が上死点および下死点に位置するときでも上死点および下死点から90度だけ位相が異なる点に位置するときでも、一対のシャフト部材の同方向の回転運動を規制するものとなる。このため、一対の第1アーム部は案内円筒部材の中心軸に対して直交する角度(90度)から僅かな角度だけ傾くことを許容したり、一対の第1アーム部は案内円筒部材の中心軸に対して直交する方向に僅かに平行移動するのを許容したりするための機構に若干過剰な隙間等が生じていても、これによるガタの発生を抑制することができる。この場合、前記規制機構は、前記一対の第1アーム部に該一対の第1アーム部の中心軸周りに回転自在に取り付けられると共に前記一対の第2アーム部に取り付けられ、前記往復動部材が上死点および下死点に位置するときに前記往復動部材の中心軸方向に突出する一対の凸部が形成された一対の公転部材と、前記一対の公転部材の前記一対の凸部が凸方向に移動可能に前記一対の凸部を保持すると共に前記往復動部材に回転摺動可能に取り付けられた摺動部材と、を備えるものとしてもよい。
本発明の容積型機械において、前記一対のシャフト部材が同期して逆回転するように前記一対のシャフト部材に連結するギヤ機構を備えるものとしてもよい。こうすれば、一対の第1アーム部は案内円筒部材の中心軸に対して直交する角度(90度)から僅かな角度だけ傾くことを許容したり、一対の第1アーム部は案内円筒部材の中心軸に対して直交する方向に僅かに平行移動するのを許容したりするための機構に若干過剰な隙間等が生じていても、これによるガタの発生を抑制することができる。この場合、前記ギヤ機構は、前記一対の第2アーム部に取り付けられた一対の第1傘歯歯車と、前記一対のシャフト部の中心軸と直交する軸を回転軸とし前記一対の第1傘歯歯車と噛合する第2傘歯歯車と、を備えるものとしてもよい。こうすれば、一対のシャフト部材の一方に作用する動力を他方に分配することができるから、一対のシャフト部材の一方にのみ電動機や発電機などを取り付けることができる。更に、この場合 前記第2傘歯歯車は、前記往復動部材の中心軸と直交する軸を回転軸とする一対の傘歯歯車であるものとしてもよい。
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の第1実施例の容積型機械20の構成の概略を示す構成図である。第1実施例の容積型機械20は、作動流体である気体を昇圧する圧縮機として構成されており、図示するように、図中上下方向(Y軸方向)の中心軸を有する円筒形状の一対の案内円筒部材30a,30bと、この案内円筒部材30a,30bに一対のピストン42a,42bが案内されて図中上下方向(Y軸方向)に往復運動すると共に案内円筒部材30a,30bの共通中心軸回り(Y軸周り)に揺動運動する往復動部材40と、案内円筒部材30a,30bの中央でその中心軸と直交する直線(Z軸)を回転軸とするよう配置された一対のシャフト部材50a,50bと、ピストン42a,42bの往復運動により容積変化する一対の作動室62a,62bと、作動室62a,62bに隔壁65a,65bを介して隣接する一対の高圧室66a、66bと、一対のシャフト部材50a,50bにそれぞれ取り付けられた一対の電動機70a,70bと、これらを収納するケース22と、を備える。なお、第1実施例では、Y軸およびZ軸の交点で直交する軸をX軸と称し、第2実施例以降でも同様に称する。
往復動部材40には、その中央に一対の第1アーム部44a,44bを取り付ける取付部41が形成されている。図2に取付部41に一対の第1アーム部44a,44bが取り付けられている部分を拡大して示す。取付部41には、案内円筒部材30a,30bの共通中心軸(Y軸)に直交する貫通孔41aが形成されている。貫通孔41aは、一対の第1アーム部44a,44bの直径より若干大きい直径となるように形成されており、この貫通孔41aに円柱形状に形成された一対の第1アーム部44a,44bが若干の隙間をもって嵌挿されている。取付部41と一対の第1アーム部44a,44bは、案内円筒部材30a,30bの共通中心軸(Y軸)と一対の第1アーム部44a,44bの中心軸との交点に両中心軸に直交する方向に嵌挿されたピン部材46によってピン部材46の軸方向に摺動自在に軸回りに回転自在に取り付けられている。第1アーム部44a,44bの端部には、アーム軸線上に球心P1a,P1bを有する外周球面部45a,45bが形成または取り付け固定されている。
ピストン42a,42bには、作動室62a,62bに作動流体を供給する流体流路63a,63bが形成されており、流体流路63a,63bには、ピストン42a,42bの間の作動流体空間60の圧力よりも作動室62a,62bの圧力が低くなったときに開弁する吸入弁64a,64bが取り付けられている。また、作動室62a,62bと高圧室66a,66bとの間の隔壁65a,65bには、作動室62a,62bの圧力が高圧室66a,66bの圧力よりも高くなったときに開弁する吐出弁67a,67bが取り付けられており、高圧室66a,66bには、流出管68a,68bが取り付けられている。さらに、ケース22には、作動流体空間60に連通する図示しない流入管が取り付けられている。したがって、作動流体は、流入管から作動流体空間60に流入し、ピストン42a,42bの往復運動により流体流路63a,63bおよび吸入弁64a,64bを介して作動室62a,62bに供給され、吐出弁67a,67bを介して高圧室66a,66bに流入し、流出管68a,68bから流出する。
シャフト部材50a,50bは、ボールベアリング51a,51b,52a,52bにより回転自在に支持されており、その一端部(往復動部材40側の端部)の回転軸から偏位した位置には往復動部材40の第1アーム部44a,44bを支持する一対の第2アーム部54a,54bが取り付けられている。この第2アーム部54a,54bは、シャフト部材50a,50bの回転軸に対して平行な軸線を中心軸とする内周円筒部材として形成されており、内周円筒内に第1アーム部44a,44bの外周球面部45a,45bを摺動可能に収納する。ここで、シャフト部材50a,50bを相対的に逆回転となるように回転駆動すると、第2アーム部54a,54bも相対的に逆回転するから、これに伴って第1アーム部44a,44bの外周球面部45a,45bは若干のシャフト部材50a,50bの軸方向への往復運動を伴って公転運動し、往復動部材40は揺動運動を伴う往復運動を行なう。往復動部材40は、従来例の容積型機械920の往復動部材940と同様に、図18(b)で上死点、図18(d)で下死点となる振幅2εの往復運動を行なうと共に、図19(a),(e)で反時計回りの揺動片振幅角θmax、図19(c)で時計回りの揺動片振幅角θmaxの揺動運動を行なう。図18において、前側の外周球面部45aは反時計回りに公転運動を行ない、後ろ側の外周球面部45bは時計回りの公転運動を行なうから、これに伴ってシャフト部材50aは反時計回りに回転すると共にシャフト部材50bは時計回りに回転する。
シャフト部材50a,50bの一端部には、その遠心力の方向が第2アーム部54a,54bとは反対側の方向となるように一対の主ウエイトバランス58a,58bが取り付けられており、シャフト部材50a,50bの他端部(往復動部材40とは反対側の端部)には、その遠心力の方向が主ウエイトバランス58a,58bと反対側の方向となるように一対の副ウエイトバランス59a,59bが取り付けられている。
こうして構成された第1実施例の容積型機械20でも上述した図17に例示した従来例の容積型機械920と同様に、直角座標系の3軸(X軸、Y軸、Z軸)方向の慣性力と慣性力によるその3軸周りのトルクの中で、Y軸周りのトルク以外の加振力の発生をゼロにすることができる。
いま、第1実施例の容積型機械20において、シャフト部材50aの回転軸とシャフト部材50bの回転軸間のズレや第2アーム部偏位量等の製造誤差などにより第2アーム部54a,54b間で図1におけるY軸方向に僅かなズレが生じているときを考える。このとき、一対の第1アーム部44a,44bは図2の破線に示すように往復動部材40の中心軸に対して直交する角度(90度)から僅かな角度だけ傾く。しかし、往復動部材40に形成された取付部41の貫通孔41aの直径が一対の第1アーム部44a,44bの直径より僅かに大きくなるように形成されているから、貫通孔41aと一対の第1アーム部44a,44bとには僅かな空間が生じ、一対の第1アーム部44a,44bが直交する角度(90度)から僅かな角度だけ傾くのを許容する。このため、往復動部材40は、シャフト部材50aの回転軸とシャフト部材50bの回転軸間のズレや第2アーム部偏位量等の製造誤差などにより第2アーム部54a,54b間で図1におけるY軸方向に僅かなズレが生じていても、案内円筒部材30a,30bの共通中心軸から傾くことはない。
次に、第1実施例の容積型機械20において、シャフト部材50aの回転軸とシャフト部材50bの回転軸間のズレや第2アーム部偏位量等の製造誤差により第2アーム部54a,54b間で図1におけるYZ平面に直交するX軸方向位置の絶対値に僅かなズレが生じているときを考える。このとき、一対の第1アーム部44a,44bは往復動部材40の中心軸に対して直交する方向(ピン46の軸方向)に僅かに平行移動する。しかし、往復動部材40に形成された取付部41の貫通孔41aの直径が一対の第1アーム部44a,44bの直径より僅かに大きくなるように形成されていると共にピン46は軸方向に摺動可能に取り付けられているから、一対の第1アーム部44a,44bの直交する方向への僅かな移動を許容する。このため、往復動部材40は、シャフト部材50aの回転軸とシャフト部材50bの回転軸間のズレや第2アーム部偏位量等の製造誤差などにより第2アーム部54a,54b間で図1におけるX軸方向位置の絶対値に僅かなズレが生じていても、案内円筒部材30a,30bの共通中心軸から平行移動して偏位することはない。
実際には、上記の第2アーム部54a,54b間の正常な位置関係からのズレは、図1におけるY軸方向のズレとX軸方向のズレとが同時に生じるものとなる。この場合、上述したY軸方向のズレに対する動作とX軸方向のズレに対する動作とを組み合わせることにより対処することができるから、第1実施例の容積型機械20では、往復動部材40が案内円筒部材30a,30bの共通中心軸から傾くことも偏位することもない。なお、第1実施例では、第1アーム部44a,44bの上記の僅かな傾斜量や平行移動量を十分吸収できる大きさに貫通孔41aの直径が設計される。
以上説明した第1実施例の容積型機械20では、往復動部材40の中央に一対の第1アーム部44a,44bの直径より若干大きい直径の貫通孔41aを形成した取付部41を形成し、貫通孔41aに一対の第1アーム部44a,44bが若干の隙間をもって嵌挿し、取付部41と一対の第1アーム部44a,44bを往復動部材40の中心軸と一対の第1アーム部44a,44bの中心軸との交点で両中心軸に直交する軸を有するピン部材46によってピン部材46が軸方向に摺動自在に且つ軸回りに回転自在に取り付ける。これにより、シャフト部材50aの回転軸とシャフト部材50bの回転軸間のズレや第2アーム部偏位量のズレなどが生じても、往復動部材140が案内円筒部材30a,30bの共通中心軸から傾くことも偏位することも抑止することができる。この結果、往復動部材40が案内円筒部材30a,30bの共通中心軸から傾いたり偏位したりすることによって生じる不都合(摩擦抵抗の増大や動作不能)を回避することができる。
次に、本発明の第2実施例の容積型機械120について説明する。図3は、本発明の第2実施例の容積型機械120の構成の概略を示す構成図である。第2実施例の容積型機械120は、第1実施例の容積型機械20と同様に、作動流体である気体を昇圧する圧縮機として構成されている。第2実施例の容積型機械120は、一対のアーム部材144a,144bの取り付け構造が異なる点、第1実施例の容積型機械20が備える図1中下方の案内円筒部材30b,ピストン42b,作動室62b,流体流路63b,吸入弁64b,隔壁65b,高圧室66b,吐出弁67b,流出管68bを備えない点を除いて第1実施例の容積型機械20と同様の構成をしている。説明の容易のために、第2実施例の容積型機械120の構成のうち第1実施例の容積型機械20の構成と同様の構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。以下、第2実施例の容積型機械120では、一対のアーム部材144a,144bの取り付け構造を中心に説明する。
図4は、図3のXY平面における一対のアーム部材144a,144bの取り付け構造部分を示す説明図である。第2実施例の容積型機械120では、往復動部材140を貫通させて往復部材140に取り付けられる第1取付部180aと、一対のアーム部材144a,144bのアーム取付部144を取り付ける第2取付部180bと、を有する取付部材180を備える。取付部材180の第1取付部180aには、一対のアーム部材144a,144bの中心軸と平行な一対の貫通孔182が形成されており、往復動部材140には、一対の貫通孔182に整合するように貫通孔140aが形成されている。取付部材180は、第1取付部180aで、一対の貫通孔182および往復動部材140の貫通孔140aにピン部材183によりその軸回りに回転自在に往復動部材140に取り付けられている。これにより、取付部材180はピン部材183の軸回りに揺動することができる。
取付部材180の第2取付部180bには、図4中下方に延びる一対の取付アーム部184a,184bが形成されており、この一対の取付アーム部184a,184bにはピン部材183とねじれの位置でピン部材183と直交する方向に一対の貫通孔185a,185bが形成されている。一方、一対のアーム部材144a,144bのアーム取付部144は、断面が略矩形に形成されており、往復動部材140を貫通させる貫通孔144cが形成されていると共に、一対の貫通孔185a,185bに整合するように一対の貫通孔144d,144eが形成されている。一対の取付アーム部184a,184bは、一対の取付アーム部184a,184bに形成された一対の貫通孔185a,185bとアーム取付部144に形成された一対の貫通孔144d,144eとが整合するようにアーム取付部144を挟持し、一対の貫通孔185a,185bと一対の貫通孔144d,144eとに各々ピン部材186a,186bを挿入し、一対のアーム部材144a,144bがピン部材186a,186bの軸回りに回転自在に、且つ、一対の取付アーム部184a,184bの底部184cに対して若干の隙間をもつように取付部材180の第2取付部180bに取り付けられる。これにより、一対のアーム部材144a,144bは、一対のピン部材186a.186bの軸回りに若干の回転を行なうことができる。
いま、第2実施例の容積型機械120において、シャフト部材50aの回転軸とシャフト部材50bの回転軸に製造誤差または組み付け誤差などにより図3におけるY軸方向に僅かなズレが生じているときを考える。このとき、シャフト部材50aの回転軸とシャフト部材50bの回転軸とのズレにより、一対の第1アーム部144a,141aは往復動部材140の中心軸に対して直交する角度(90度)から僅かな角度だけ傾く。しかし、第2取付部180bに一対のアーム部材144a,144bが、ピン部材186a,186bの軸回りに回転自在に、且つ、一対の取付アーム部184a,184bの底部184cに対して若干の隙間をもって取り付けられているから、一対のアーム部材144a,144bは、一対のピン部材186a.186bの軸回りに若干回転することができる。このため、往復動部材140は、シャフト部材50aの回転軸とシャフト部材50bの回転軸に図3におけるY軸方向に僅かなズレが生じるなどして一対の第1アーム部144a,144bが僅かに傾いても、案内円筒部材30aの中心軸から傾くことはない。
次に、第2実施例の容積型機械120において、シャフト部材50aの回転軸とシャフト部材50bの回転軸に製造誤差または組み付け誤差などにより図3におけるYZ平面に直交するX軸方向に僅かなズレが生じているときを考える。このとき、シャフト部材50aの回転軸とシャフト部材50bの回転軸とのズレにより、一対の第1アーム部144a,141aは往復動部材140の中心軸に対して直交する方向に僅かに平行移動する。しかし、取付部材180は、第1取付部180aで一対の貫通孔182および往復動部材140の貫通孔140aにピン部材183をその軸回りに回転自在に嵌挿するように往復動部材140に取り付けられているから、一対の第1アーム部144a,141aはピン部材183の軸を中心として軸回りに揺動する。この揺動は微小なときには一対の第1アーム部144a,141aのピン部材186a,186bの軸方向の平行移動とみなすことができるから、一対の第1アーム部144a,141aの往復動部材140の中心軸に対して直交する方向への僅かな移動を許容するものとなる。このため、往復動部材140は、シャフト部材50aの回転軸とシャフト部材50bの回転軸に図3におけるX軸方向に僅かなズレが生じていても、案内円筒部材30aの中心軸から偏位することはない。
実際には、上記の第2アーム部54a,54b間の正常な位置関係からのズレは、図3におけるY軸方向のズレとX軸方向のズレとが同時に生じるものとなる。この場合、上述したY軸方向のズレに対する動作とX軸方向のズレに対する動作とを組み合わせることにより対処することができるから、第2実施例の容積型機械120では、往復動部材140が案内円筒部材30aの中心軸から傾くことも偏位することもない。なお、第2実施例では、第1アーム部144a,144bの上記の僅かな傾斜量や平行移動量を充分吸収できる大きさとなるように、一対の取付アーム部184a,184bの底部184cとアーム取付部144との隙間や、往復動部材140と貫通孔144cとの隙間が設計される。
以上説明した第2実施例の容積型機械120では、取付部材180を第1取付部180aで一対の貫通孔182および往復動部材140の貫通孔140aにピン部材183をその軸回りに回転自在に嵌挿するように往復動部材140に取り付け、第2取付部180bで一対のアーム部材144a,144bをピン部材186a,186bの軸回りに回転自在に且つ一対のスカート部184bの底部184cに対して若干の隙間をもって取り付ける。これにより、シャフト部材50aの回転軸とシャフト部材50bの回転軸間のズレや第2アーム部偏位量間のズレなどが生じても、往復動部材140が案内円筒部材30aの中心軸から傾いたり偏位したりするのを抑止することができる。この結果、往復動部材140が案内円筒部材30aの中心軸から傾いたり偏位したりすることによって生じる不都合(摩擦抵抗の増大や動作不能)を回避することができる。
次に、本発明の第3実施例の容積型機械220について説明する。図5は、本発明の第3実施例の容積型機械220の構成の概略を示す構成図である。第3実施例の容積型機械220は、第1実施例の容積型機械20と同様に、作動流体である気体を昇圧する圧縮機として構成されている。第3実施例の容積型機械220は、一対のアーム部材244a,244bの取り付け構造および一対のアーム部材244a,244bの一対の第2アーム部254a,254bとの取り付け構造が異なる点を除いて第1実施例の容積型機械20と同様の構成をしている。説明の容易のために、第3実施例の容積型機械220の構成のうち第1実施例の容積型機械20の構成と同様の構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。以下、第3実施例の容積型機械220では、一対のアーム部材244a,244bの取り付け構造および一対のアーム部材244a,244bの一対の第2アーム部254a,254bとの取り付け構造を中心に説明する。
第3実施例の容積型機械220の一対のアーム部材244a,244bは、一対の軸部材280a,280bと一対の公転部材290a,290bとを備え、一対の軸部材280a,280bを取付部241の内周円筒面241aに挿入し、その中央で往復動部材240の中心軸および一対の軸部材280a,280bの中心軸に直交する方向を軸とするピン部材246により軸方向に摺動自在に且つ軸回りに回転自在に取付部241に取り付けられている。図6は、図5におけるアーム部材244aを含む一部を拡大して示す拡大説明図である。図7は、一対の公転部材290a,290bと一対の第2アーム部254a,254bへの取り付け構造に用いる部品とを分解して示す分解斜視図である。図8は、図6のA−A面の断面を示す断面図である。
図6に示すように、一対の軸部材280a,280bは先端部が小径の円柱形状に形成されており、中空の円筒形状に形成された公転部材290a,290bに軸方向に摺動自在に且つ軸回りに回転自在に嵌挿されている。公転部材290a,290bは、図6および図7に示すように、中空の円筒形状の筒部291と、筒部291の端部に形成された外周球面部292と、により構成されている。筒部291の外周球面部292が形成されている端部とは反対側の端部には、180度異なる位置に外側に一対の凸部293a,293bが形成されている。外周球面部292は、筒部291の軸方向に平行な面で分割された一対の内周球面部材295a,295bにより摺動可能に保持されている。内周球面部材295bには貫通孔295cが形成されており、この貫通孔295cにピン部材296が嵌め込まれている。内面球面部材295a,295bは、図8に示すようにピン部材296が内周球面部材295bから突出して第2アーム部254aの溝部に係合することにより、回転不能に第2アーム部254aに取り付けられる。また、段差部と止め輪に挟まれることで軸方向にも摺動不能に第2アーム部254aに取り付けられる。これにより、一対の公転部材290a,290bは、一対の第2アーム部254a,254bと同様に、一対のシャフト部材50a,50bの回転により、一対のシャフト部材50a,50bの回転軸回りに公転運動すると共に公転1回転につき1回転の自転運動を行なう。
外周球面部292には、図7に示すように、外周面に沿って軸方向に溝292aが形成されており、溝292aをスライドするスライダ294が嵌め込まれている。スライダ294には中央に貫通孔294aが形成されており、この貫通孔294aにピン部材296の先端の小径ピン部が嵌め込まれることにより、内周球面部材295bに対して移動不能に固定されている。これにより、公転部材290a,290bは、溝292aとスライダ294により一対の内周球面部材295a,295bに対して溝292aの方向の回転運動とピン部材296の中心軸回りの回転運動を行なうことができる。
図9は、図6のB−B面の断面を示す断面図である。図10は、筒部291に形成された一対の凸部293a,293bを取付部241に取り付ける部分の構成の概略を示す部分構成図である。図示するように、公転部材290a,290bの筒部291の端部に形成された一対の凸部293a,293bは、一対の半環部材297a,297bにより挟持され、取付部241に対して軸回りに回転自在に取り付けられている。一対の半環部材297a,297bの内周側の直径は筒部291の直径より若干大きくなるように形成されている。一対の半環部材297a,297bの一対の凸部293a,293bとの当接部には凹部298a,298bが形成されており、凹部298a,298bに一対の凸部293a,293bが嵌合されている。このため、公転部材290a,290bは、一対の凸部293a,293bを貫く方向(図9中上下方向)には若干の移動が可能となっており、これとは異なる方向には若干の移動も不能となっている。
第3実施例の容積型機械220では、公転部材290a,290bは、図5に示すように往復動部材240が上死点および下死点に位置するときに一対の凸部293a,293bが往復動部材240の中心軸の方向(図5におけるY軸方向)に向くように取り付けられており、シャフト部材50a,50bと共に自転運動を行なうことで往復動部材240が上死点および下死点から90度だけ位相が異なる点に位置するときに一対の凸部293a,293bが往復動部材240の中心軸に対して直交する方向に向くようになる。したがって、往復動部材240が上死点および下死点に位置するときには、一対のアーム部材244a,244bは往復動部材240の中心軸の方向(図5におけるY軸方向)に若干の移動が可能となる。上述したように、一対のアーム部材244a,244bは中央でピン部材246によりX軸回りに回転自在に取り付けられているから、一対のアーム部材244a,244bの一方が往復動部材240の中心軸の方向のうちの一方(例えば図5における上方向)に若干の移動を行ない、一対のアーム部材244a,244bの他方が往復動部材240の中心軸の方向のうちの他方(例えば図5における下方向)に若干の移動を行なうことを考えれば、一対のアーム部材244a,244bはピン部材246の軸回りに若干の回転を行なうことができるものとなる。
いま、第3実施例の容積型機械220において、シャフト部材50aの回転軸とシャフト部材50bの回転軸に製造誤差または組み付け誤差などにより図5におけるY軸方向に僅かなズレが生じているときを考える。このとき、シャフト部材50aの回転軸とシャフト部材50bの回転軸とのズレにより、一対の第1アーム部244a,244aは図2で説明したように往復動部材240の中心軸に対して直交する角度(90度)から僅かな角度だけ傾く。しかし、一対のアーム部材244a,244bはピン部材246の軸回りに若干の回転を行なうことができるから、一対の第1アーム部244a,244aが直交する角度(90度)から僅かな角度だけ傾くのを許容する。このため、往復動部材240は、シャフト部材50aの回転軸とシャフト部材50bの回転軸に図5におけるY軸方向に僅かなズレが生じていても、案内円筒部材30a,30bの共通中心軸から傾くことはない。
図11は、往復動部材240が上死点および下死点から90度だけ位相が異なる点に位置するときの一対の第1アーム部244a,244bを中心とする部材をXZ平面で見た説明図である。往復動部材240が上死点および下死点から90度だけ位相が異なる点に位置するときには、一対の凸部293a,293bは、往復動部材240の中心軸に対して直交する方向(ZX平面に平行な方向)を向く。このため、一対のアーム部材244a,244bは、一対の凸部293a,293bを貫く方向に若干の平行移動が可能となる。一対のアーム部材244a,244bは、ZX平面においてZ軸に対してある程度の角度を有した方向を向いているが、公転部材290a,290bは軸方向に摺動自在に且つ軸回りに回転自在に一対の軸部材280a,280bに取り付けられているから、一対のアーム部材244a,244bはZX平面におけるX軸方向に若干の平行移動が可能となる。
いま、第3実施例の容積型機械220において、シャフト部材50aの回転軸とシャフト部材50bの回転軸に製造誤差または組み付け誤差などにより図5におけるYZ平面に直交するX軸方向に僅かなズレが生じているときを考える。このとき、シャフト部材50aの回転軸とシャフト部材50bの回転軸とのズレにより、一対の第1アーム部244a,244aは往復動部材240の中心軸に対して直交する方向に僅かに平行移動するが、第3実施例の容積型機械220の一対のアーム部材244a,244bはZX平面におけるX軸方向に若干の平行移動が可能であるから、これを許容する。このため、往復動部材240は、シャフト部材50aの回転軸とシャフト部材50bの回転軸に図5におけるX軸方向に僅かなズレが生じていても、案内円筒部材30a,30bの中心軸から平行移動して偏位することはない。
以上説明した第3実施例の容積型機械220では、往復動部材240の上死点および下死点のときには一対のアーム部材244a,244bがピン部材246の軸回りに若干の回転が可能であり、往復動部材240の上死点および下死点から90度だけ位相が異なる点に位置するときには一対のアーム部材244a,244bはZX平面におけるX軸方向に若干の平行移動が可能であるから、シャフト部材50aの回転軸とシャフト部材50bの回転軸間のズレや第2アーム部偏位量間のズレなどが生じても、往復動部材240が案内円筒部材30a,30bの共通中心軸から傾いたり偏位したりするのを抑止することができる。この結果、往復動部材240が案内円筒部材30a,30bの共通中心軸から傾いたり偏位したりすることによって生じる不都合(摩擦抵抗の増大や動作不能)を回避することができる。
また、第3実施例の容積型機械220では、一対の第1アーム部244a,244bは、往復動部材240が上死点および下死点に位置するときには、一対の公転部材290a,290bの一対の凸部293a,293bは往復動部材240の中心軸と同方向に向くから、往復動部材240に対してピン部材246の軸方向への移動は規制される。また、一対の第1アーム部244a,244bは、往復動部材240が上死点および下死点から90度だけ位相が異なる点に位置するときには、一対の公転部材290a,290bの一対の凸部293a,293bは往復動部材240の中心軸と直交する方向に向くから、ピン部材246の軸回りの回転が規制される。このため、往復動部材240が上死点および下死点に位置するときや上死点および下死点から90度だけ位相が異なる点に位置するときには、いずれの位置でも一対のシャフト部材50a,50bの同方向の回転運動が規制される。このため、一対の凸部293a,293bが形成された筒部291と一対の半環部材297a,297bとの間の隙間が若干過剰であってもガタの発生を抑制することができる。なお、一対の公転部材290a,290bが公転すると共に自転するように一対の第2アーム部254a,254bに取り付けると共に往復動部材240が上死点および下死点に位置するときに一対の凸部293a,293bが往復動部材240の中心軸の方向に向くように一対の凸部293a,293bを一対の半環部材297a,297bで挟持して取付部241に取り付ける構造は、一対のシャフト部材50a,50bの同方向の回転運動を規制する機構、言い換えると、一対のシャフト部材50a,50bを同期して逆回転させる機構ということができる。
第3実施例の容積型機械220では、一対の凸部293a,293bを一対の半環部材297a,297bで挟持した状態で往復動部材240の上死点および下死点のときに一対の凸部293a,293bが往復動部材240の軸方向となるように、一対の公転部材290a,290bを取付部241に取り付けるものとした。しかし、往復動部材240が上死点および下死点に位置するときに往復動部材240の軸方向に若干の移動が可能となり、それ以外の方向への移動が困難となればよいから、これを可能とする機構であれば如何なる機構であっても構わない。例えば半休部材297a,297bを用いずに、公転部材の取付部241への取付部の断面の外周を楕円形状とし、往復動部材240の上死点および下死点のときに公転部材の取付部の短径が往復動部材240の軸方向となるように公転部材を取り付けるものとしてもよい。公転部材の取付部241への取付部の外周直径を取付部241の内周円筒面241aの内径より小さく形成し、往復動部材240の上死点および下死点のときに公転部材の取付部の外周が往復動部材240の軸方向と直交する方向に偏心して内周円筒面241aに近接する機構としてもよい。
図12は、第2実施例の容積型機械120および第3実施例の容積型機械220の変形例としての容積型機械320の構成の概略を示す構成図である。変形例の容積型機械320は、第2実施例の容積型機械120における第1取付部180aの取り付け構造と、第3実施例の容積型機械220における一対のアーム部材244a,244bの取り付け構造とを組み合わせたものである。説明の容易のために、変形例の容積型機械320の構成のうち第2実施例の容積型機械120の構成や第3実施例の容積型機械220の構成と同様の構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。
変形例の容積型機械320では、往復動部材340は略円筒形状に形成されて案内円筒部材30aに摺動するように配置されている。往復動部材340には、その中心軸に直行する方向に貫通孔340a,340bが形成されている。取付部材341には、貫通孔340a,340bに整合するように貫通孔341aが形成されている。取付部材341は、往復動部材340の貫通孔340a,340bと貫通孔341aとを整合させた状態でピン部材383を嵌挿することにより、往復動部材340に回転自在に取り付けられている。この取付部材341の往復動部材340への取り付け構造が第2実施例の容積型機械120における第1取付部180aの取り付け構造に相当する。
一対の第1アーム部244a,244bは、第3実施例と同様に、一対の軸部材280a,280bと一対の公転部材290a,290bとを備え、両者は回転可能であるが、一対の公転部材290a,290bがそれぞれ軸部材280a,280bの段差部と止め輪に挟まれているため、軸方向の摺動は規制されている。一対の軸部材280a,280bは往復動部材340の中心軸および一対の軸部材280a,280bの中心軸に直交する方向を軸とするピン部材246により軸回りに回転自在に取付部材341に取り付けられている。一対の公転部材290a,290bは、一方の端部に形成された外周球面部292が一対の内周球面部材295a,295bにより摺動可能に保持された状態でピン部材296が第2アーム部254a,254bの溝に係合することによって一対の第2アーム部254a,254bに回転不能に取り付けられている。なお、この変形例では、内周球面部材295a,295bは第2アーム部254a、254bに対する軸方向移動を規制されていない。一対の公転部材290a、290bは、他方の端部に形成された一対の凸部293a,293bが一対の半環部材297a,297bにより挟持された状態で往復動部材340に形成された内周円筒面340c,340dに取り付けられている。この一対の軸部材280a,280bの取付部材341への取り付け構造と、 一対の公転部材290a,290bの一対の第2アーム部254a,254bへの取り付け構造および往復動部材340への取り付け構造とが第3実施例の容積型機械220における一対のアーム部材244a,244bの取り付け構造に相当する。
この変形例の容積型機械320は、上述したように、第2実施例の容積型機械120における第1取付部180aの取り付け構造に相当する取り付け構造と、第3実施例の容積型機械220における一対のアーム部材244a,244bの取り付け構造に相当する取り付け構造とを有するから、第2実施例の容積型機械120における第1取付部180aの取り付け構造が奏する効果や第3実施例の容積型機械220における一対のアーム部材244a,244bの取り付け構造が奏する効果と同様な効果を奏する。即ち、シャフト部材50aの回転軸とシャフト部材50bの回転軸間のズレや第2アーム部偏位量のズレなどが生じても、往復動部材340が案内円筒部材30aの中心軸から傾いたり偏位したりするのを抑止し、往復動部材340が案内円筒部材30aの中心軸から傾いたり偏位したりすることによって生じる不都合(摩擦抵抗の増大や動作不能)を回避することができる効果や、ガタの発生を抑制することができる効果を奏することができる。
次に、本発明の第4実施例の容積型機械420について説明する。図13は、本発明の第4実施例の容積型機械420の構成の概略を示す構成図である。第4実施例の容積型機械420は、第1実施例の容積型機械20と同様に、作動流体である気体を昇圧する圧縮機として構成されている。説明の容易のために、第4実施例の容積型機械420の構成のうち第1実施例の容積型機械20の構成と同様の構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。図14は、往復動部材440が上死点および下死点から90度だけ位相が異なる点に位置するときの一対の第1アーム部444a,444bおよび一対の第2アーム部454a,454bを中心とする部材をXZ平面で見た説明図である。
第4実施例の容積型機械420では、変形例の容積型機械320と同様に、往復動部材440は、略円筒形状に形成されて案内円筒部材30aに摺動するように配置されており、往復動部材440に形成された貫通孔440a,440bと取付部材441に形成された貫通孔441aとにピン部材483が嵌挿されることにより、回転自在に取付部材441に取り付けられている。これにより、取付部材441は、ピン部材483の軸回りに揺動が可能となる。
第4実施例の容積型機械420では、変形例の容積型機械320と同様に、一対の第1アーム部444a,444bは、一対の軸部材480a,480bと一対の公転部材490a,490bとを備え、一対の軸部材480a,480bは往復動部材440の中心軸および一対の軸部材480a,480bの中心軸に直交する方向を軸とするピン部材446により軸方向に摺動自在に且つ軸回りに回転自在に取付部材441に取り付けられている。これにより、一対の第1アーム部444a,444bは、ピン部材446の軸方向に移動可能となると共にピン部材446の軸回りに回転可能となる。
第4実施例の容積型機械420では、一対の第1アーム部444a,444bにおける一対の公転部材490a,490bの一方の端部に形成された外周球面部が一対の内周球面部材により摺動可能に保持された状態で内周面部材が第2アーム部454a,454bにその軸方向に摺動可能に取り付けられている。一対の第1アーム部444a,444bにおける一対の公転部材490a,490bの他方の端部には一対の凸部は形成されておらず、この他方の端部は往復動部材440や取付部材441に取り付けられていない。
これらの機構により、第4実施例の容積型機械420は、変形例の容積型機械420と同様に、シャフト部材50aの回転軸とシャフト部材50bの回転軸間のズレや第2アーム部偏位量間のズレなどが生じても、往復動部材440が案内円筒部材30aの中心軸から傾いたり偏位したりするのを抑止することができ、往復動部材440が案内円筒部材30aの中心軸から傾いたり偏位したりすることによって生じる不都合(摩擦抵抗の増大や動作不能)を回避することができる。
第4実施例の容積型機械420では、一対のシャフト部材50a,50bに取り付けられた一対の第2アーム部454a,454bおよび主ウエイトバランス58a,58bに、一対のシャフト部材50a,50bの中心軸と同軸の一対の第1傘歯歯車472a,472bが複数のボルト473a,473bにより取り付けられている。一対の第1傘歯歯車472a,472bは、ボルト477によりケース22の底面に取り付けられたボールベアリング476により軸支された第2傘歯歯車474と噛合している。このため、第1傘歯歯車472aと第1傘歯歯車472bは、同期して逆方向に回転する。即ち、一対の第1傘歯歯車472a,472bと第2傘歯歯車474とによるギヤ機構は、一対のシャフト部材50a,50bを同期して逆回転させる機構となる。このため、取付部材441の揺動運動や一対の第1アーム部444a,444bのピン部材446の軸回りの回転運動によるガタの発生を抑制することができる。
第4実施例の容積型機械420では、シャフト部材50aには電動機70aが取り付けられているが、シャフト部材50bには電動機は取り付けられていない。一対の第1傘歯歯車472a,472bと第2傘歯歯車474とによるギヤ機構は、電動機70aの動力を逆方向に回転する動力としてシャフト部材50bにも伝達するから、シャフト部材50bに電動機は必ずしも取り付ける必要がない。
以上説明した第4実施例の容積型機械420は、変形例の容積型機械320と同様に、往復動部材440に取付部材441がピン部材483の軸回りに揺動が可能となるように取付部材441を取り付けると共に、一対の第1アーム部444a,444bを第1アーム部444a,444bがピン部材446の軸回りに回転可能となるように取付部材441に取り付ける。これにより、シャフト部材50aの回転軸とシャフト部材50bの回転軸間のズレや第2アーム部偏位量間のズレなどが生じても、往復動部材440が案内円筒部材30aの中心軸から傾いたり偏位したりするのを抑止することができ、往復動部材440が案内円筒部材30aの中心軸から傾いたり偏位したりすることによって生じる不都合(摩擦抵抗の増大や動作不能)を回避することができる。しかも、一対の第1傘歯歯車472a,472bと第2傘歯歯車474とによる一対のシャフト部材50a,50bを同期して逆回転させるギヤ機構を備えることにより、ガタの発生を抑制することができる。また、一対の第1傘歯歯車472a,472bと第2傘歯歯車474とによるギヤ機構は、電動機70aの動力を逆方向に回転する動力としてシャフト部材50bにも伝達するから、シャフト部材50bに電動機を取り付けることが必ずしも必要ではなくなる。
第4実施例の容積型機械420では、一対の第1傘歯歯車472a,472bと噛合する第2傘歯歯車474をケース22の底面に取り付けられたボールベアリング476で軸支するものとした。しかし、図15および図16に例示する変形例の容積型機械520のように、一対の第1傘歯歯車472a,472bに噛合する対向する一対の第2傘歯歯車474a,474bを備えるものとしてもよい。図15は、変形例の容積型機械520の構成の概略を示す構成図である。図16は、変形例の容積型機械520の往復動部材440の上死点および下死点から90度だけ位相が異なる点に位置するときの一対の第1アーム部444a,444bおよび一対の第2アーム部454a,454bを中心とする部材をXZ平面で見た説明図である。変形例の容積型機械520では、一対の第2傘歯歯車474a,474bは、往復動部材440の中心軸および一対のシャフト部材50a,50bの中心軸に直交する軸を回転軸(図16におけるX軸方向)とするように配置されている。一対の第2傘歯歯車474a,474bは、ボールベアリング476a,476bの内輪にナット477a、477bにより固定され、ケース22に取り付けられた固定部材479によって、ボールベアリング476a,476bを介して軸支され、一対の第1傘歯歯車472a,472bと噛合している。変形例の容積型機械520でも、第4実施例の容積型機械420と同様に、一対の第1傘歯歯車472a,472bと一対の第2傘歯歯車474a,474bとによるギヤ機構は、一対のシャフト部材50a,50bを同期して逆回転させる機構となる。このため、取付部材441の揺動運動や一対の第1アーム部444a,444bのピン部材446の軸回りの回転運動によるガタの発生を抑制することができる。
以上本発明の実施形態を第1実施例ないし第4実施例およびその変形例の容積型機械20,120,220,320,420,520の構成として説明した。しかし、一対の第1アーム部と往復動部材(ピストン部)は、一対の第1アーム部の中心軸と往復動部材(ピストン部)の中心軸とのなす角が90度を中心として微小角だけ変位可能に、且つ、一対の第1アーム部が往復動部材(ピストン部)の中心軸に対して直交する方向に微小距離だけ平行移動可能に取り付けられているものであれば、如何なる構成としても構わない。
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。