図1は本実施の形態において本発明の説明に使用するマッサージ器1を、マッサージを受ける者(以下、「被施術者」という)の頭部に巻きつけて被施術者の左側から見た場合の図である。マッサージ器1はコントローラ2とウレタンゴムを基材とする弾性を有するベルト3からなる。ベルト3には第1エアバックであるエアバックA102と第2エアバックであるエアバックB103と第3エアバックであるエアバックC104が形成されている。各エアバックは頭頂部に近い方から順に並んでベルト3の内部に配置されていて、最も頭頂部に近い位置にエアバックA102が、次に頭頂部に近い位置にエアバックB103が、さらにその次に頭頂部に近い位置にエアバックC104が配置されている(上から順に第1エアバック、第2エアバック、第3エアバックが配置されている)。換言すると、エアバックA102は最も頭頂部に近い位置に配置され、エアバックB103はエアバックA102に対して前記頭頂部の反対側に配置され、エアバックC104はエアバックB103に対して前記頭頂部の反対側に配置されている。或いは、エアバックA102は最も頭頂部に近い位置に配置され、エアバックB103はエアバックA102の次に前記頭頂部に近い位置に配置され、エアバックC104はエアバックB103の次に前記頭頂部に近い位置に配置されている。或いは、エアバックA102は最も頭頂部に近い位置に配置され、エアバックB103はエアバックA102に近接した位置であって、エアバックA102より前記頭頂部から遠い位置に配置され、エアバックC104はエアバックB103に近接した位置であって、エアバックB103より前記頭頂部から遠い位置に配置されていると言うことができる。尚、図1においてベルト3は3つのエアバックから構成されているが本発明はこれに限定されず、4個以上のエアバックで構成されていてもよい。
上記の各エアバックはそれぞれホースA105、ホースB106及びホースC107によってコントローラ2と接続されている。これらホースA105、ホースB106及びホースC107は一つにまとめられてホース4を構成してもよい。
上記ベルト3は環状であって、その弾性力により被施術者の頭部に装着することができる。図1の(b)はベルト3の断面であって同図(a)におけるX−X断面を示している。ベルト3は内部に空洞部を形成することによって各エアバックを形成している。但し、本発明はこれに限定されるではなく、別途用意したエアバックをベルト内部に内包するような構成でもよい。或いはベルト3は環状に限定されず、例えば面ファスナー部108(不図示)を設けて面ファスナーの着脱によってベルト3を装着したり外したりが自由にできる構成でもよく、面ファスナーによらず複数のボタンやファスナ等によって着脱を自由に行えるような構成でもよい。また、ベルト3の基材はウレタンゴムに限定されず、エアバックの膨張に耐えられるならば特に限定されず、他の合成ゴムや天然ゴム、例えばシリコンゴム、或いは木綿のような生地であってもよい。
コントローラ2は、ベルト3内部のエアバックによる加圧を制御することによりマッサージを行うことができ、マッサージのモードや時間を設定できる。本明細書においてモードとは、エアバックに対する所定の給気と所定の排気をそれぞれ1回以上行う一連の制御であって、空気の供給時間や排気時間、或いは給気の圧力等により実現できる種々の制御を示す。例えばマッサージ器1はマッサージのモードとしてモードA、モードB、モードCとモードDの4つのモードで動作できる。これらのモードの選択は操作パネル122を使用して次のように行う。
モードAランプ117はマッサージのモードAに、モードBランプ118はモードBに、モードCランプ120はモードCに、モードDランプ121はモードDにそれぞれ対応している。モード選択部116を押すことにより、マッサージのモードがモードA、モードB、モードC、モードDの順番に切り替えられ、マッサージのモードに対応したランプが点灯する。例えばモード選択部116を押すとモードAが選択されてモードAランプ117が点灯する。再度モード選択部116を押すことによりモードBが選択されてモードAランプ117の代わりにモードBランプ118が点灯し、さらにモード選択部116を押すことによりモードCが選択されてモードBランプ118の代わりにモードCランプ120が点灯し、さらにモード選択部116を押すとモードDが選択されてモードDランプ121が点灯して、選択されたモードによるマッサージが開始される。
尚、コントローラ2の操作パネル122に上記のように操作手段である各ボタンや操作部を配置すると共に表示手段であるタイマ表示部115やモードAランプ118他を配置するような構成でも良いが、例えばタッチパネルを配置して操作と表示を一つのデバイスを使用して行うような構成でも良い。
図2はコントローラ2のブロック図である。コントローラ2の内部には、各エアバックに空気を送る加圧部A221、加圧部B222、加圧部C223と、操作パネル122に配置されている電源ボタン110や延長ボタン112、短縮ボタン114、ユーザーインターフェースとしてのモード選択部116他と接続されている操作部IF201、操作パネル122に配置されている表示手段であるパイロットランプ111やタイマ表示部115他と接続されている表示部IF216、流路A209、流路B210、流路C211と、制御部202と、マッサージの時間を計測するタイマ207と、各流路と各ホースを接続するジョイントA212、ジョイントB214、ジョイントC215を有する。尚、コントローラ2の内部には、この他に電源等が内蔵されているが本発明における制御には直接関係ないので省略している。
加圧部A221は流路A209にジョイントA212によって接続されたホースA105を介してエアバックA102に接続されて、エアバックA102に給気して頭部に加圧を行う。同様に加圧部B222は流路B210にジョイントB214によって接続されたホースB106を介してエアバックB103に接続されて、エアバックB103に給気して頭部に加圧を行い、加圧部C223は流路C211にジョイントC215によって接続されたホースC107を介してエアバックC104に接続されて、エアバックC104に給気して頭部に加圧を行う。
使用者が操作パネル122において電源110を押すとその情報が操作部IF201を介して制御部202に送られ、制御部202はパイロットランプ111を点灯させるように表示部IF216に指示を出し、表示部IF216からパイロットランプ111に電力が供給されてパイロットランプ111が点灯する。続けて使用者はモード選択部116によって所望のモードを選択する。ここでは使用者はモード選択部116を1回おしてモードAを選択したとする。モードAが選択された場合はその情報が操作部IF201によって制御部202に送られ、制御部202は表示部IF216に対して上記のようにモードAランプ117を点灯させるように指示し、表示部IF216はモードAランプ117に電力を供給してモードAランプ117を点灯させる。続けて延長ボタン112を押すとその情報は操作部IF201を介して制御部202に送られ、制御部202は後述するように各加圧部を動作させる。同時にその情報はタイマ207に送られてタイマ207が時間の計測を開始する。タイマ207の計測に関する情報は制御部202にフィードバックされて、表示部IF216を介してタイマ表示部115に送られてマッサージの残り時間を分単位で表示する。延長ボタン112が1回押された場合は1分が計測され、続けて2回押された場合は2分が計測され、延長ボタン112が押された回数に対応して時間の計測が行われる。代わりに短縮ボタン114が押された場合はその分だけ計測する時間が短くなる。尚、モード選択部116が押されことによって直ちに制御部202は各加圧部を駆動させるような構成でも良く、この場合は初期値としてマッサージ時間が例えば5分が設定されると共に、延長ボタン112と短縮ボタン114によってマッサージ時間を適宜調整するように構成であってもよい。
図3は各モードにおいて、制御部202が各加圧部の制御を行って各エアバックの給排気が行われることによって生じるエアバックによる加圧の制御を図示している。同図(a)はモードAを、同図(b)はモードBを、同図(c)はモードCを、同図(d)はモードDを示している。各モードはこれら(a)から(d)の動作をそれぞれ一つのサイクルとして、設定された時間において繰り返される。
モードAは、同図(a)のように各エアバックに対して同じ制御が適用されて、各エアバックに対して同時に給気され、同時に排気される。簡単の為にエアバックA102に注目する。他のエアバックB103やエアバックC104についても同様な説明が適用できるのでここでは説明を省略する。制御部202は加圧部A221を駆動して流路A209を介してホースA105に接続されたエアバックA102に給気を行い、或いは加圧部A221の駆動を停止してエアバックA102の排気を行うことによって図3の(a)のように頭部に対する圧力の付与と圧力の解放を行う。以後、エアバックに給気を行ってエアバックに空気を送り込むことをオンと称し、排気を行うことをオフと称する。従って、例えばモードAは3つのエアバックにおいてオンとオフが繰り返されていると表現できる。
モードAにおいては図3の(a)のように例えば制御部202は加圧部A221を0.5秒駆動してエアバックA102に給気を行う。エアバックA102は当該給気により膨らんで頭部を加圧する。続けて制御部202は加圧部A221の駆動を0.5秒停止することにより、エアバックA102から頭部に加えられる圧力は所定の圧力P1をピークとして減少する。さらに制御部202は加圧部A221を再度0.5秒駆動して再度エアバックA102に給気を行って頭部に圧力を与える。以後これを繰り返すことによって、頭部に与えられる圧力はP1をピークとして定期的に、例えば上記のように1秒ごとに非常に短時間の加圧によるマッサージを施すことができる。このような短時間の加圧を繰り返すマッサージは、頭部のタッピングというマッサージ方法に似た効果を得ることができる。以後、このように短時間の加圧を繰り返し与えることをタッピングと称する。即ち、モードAは頭部のタッピングによるマッサージを行うことができる。
尚、図3の(a)では、P1のピークを3回頭部に付与した後、即ち、時間t1においてタッピングを行った後、時間t2(例えば1秒)のインターバルをおいて、再度時間t1のタッピングを繰り返す。但し本発明はこれに限定されない。例えばタッピングは3回に限定されず、N回(Nは2以上の自然数)としてよい。さらに、インターバルは1秒に限定されず、1秒未満でも1秒以上でもよく、或いはインターバルを適用しない(インターバルを0秒とする)マッサージであってもよい。
さらに、図3の(a)では、加圧部A221の駆動時間と停止時間はそれぞれ0.5秒としているがこれに限定されない。例えば加圧部A221の能力が十分に高く、即ち給気の速度が高く、逆に排気の速度が低い場合は、給気の時間より排気の時間を長くする、即ち加圧部A221の駆動時間より停止時間を長くしてもよい。逆に給気の速度が遅く、逆に排気の速度が速い場合は、給気の時間より排気の時間を短くする、即ち加圧部A221の駆動時間より停止時間を短くしてもよい。
さらに図3の(a)ではベルト3内の総てのエアバックに対して吸気を行い、総てのエアバックによって頭部のマッサージを行っているがこれに限定されず、一部のエアバック、例えばエアバックB103のみ、或いはエアバックC104のみ、のように1つのエアバックのみを使用するような制御であってもよいし、エアバックC104とエアバックA102のように2つのエアバックのみを使用するが一つのエアバックB103は使用しないような制御でも良い。
さらに、図3の(a)では圧力P1の後に、再度加圧部A221の駆動が開始された瞬間の圧力P2はエアバックA102に給気が行われていない場合の圧力であるP0と同じとなるように、即ち、P0=P2となるように停止時間を制御している。この場合、加圧部A221によってエアバックA102内に給気された空気のほとんど排気された状態である。本発明はこれに限らず、P2がP0より大きくなるように制御してもよく、即ち、圧力が解放されて最低値となる前に給気を再開するように停止時間を制御することにより実現できる。
図3の(b)はマッサージのモードBを示している。モードBは図のように3つのエアバックのうち、2つのエアバックは時間t3(例えば7秒間)にわたって所定の圧力P1が維持されると共に残りの一つのエアバックによる加圧は発生しないように、即ちエアバックによる圧力はP0となるように制御される。さらにこの加圧がされないエアバックは頭頂部に近い方から(最上部に配置されたエアバックから)順番に発生するように制御される。換言すると、エアバックA102による加圧は行わないで少なくともエアバックB103による加圧を行う第1ステップと、エアバックB103による加圧を行わないでエアバックA102とエアバックC104による加圧を行う第2ステップと、エアバックC104による加圧を行わないで少なくともエアバックB103による加圧を行う第3ステップによってモードBは構成されると共にこの順番で各ステップが実行される。
本実施の形態のモードBではまずt3(例えば7秒間)においてエアバックA102による頭部の加圧は生じないがエアバックB103とエアバックC104による頭部の加圧が発生し、続けてt4(例えば7秒間)ではエアバックB103による頭部の加圧は生じないがエアバックA102とエアバックC104による頭部の加圧が発生し、さらに後続のt5(例えば7秒間)ではエアバックC104による頭部の加圧は生じないがエアバックB103とエアバックA102による頭部の加圧が発生する。エアバックC104による圧力の解放が終了すると再度t3がエアバックA102に適用され、エアバックA102の圧力が解放されと共にエアバックB103とエアバックC104による加圧が開始され、以後順次これを繰り返す。
このモードBの効果を説明する。t3においてエアバックB103がオンとなり、エアバックB103に対向する頭部の領域がせき止められることにより、エアバックA102の部分にベルト3より上方の頭頂部に近い方の領域の血液が集中する。以後、エアバックに対向する頭部の領域を当該エアバックの対向部分という。続いてt4においてエアバックA102がオンとなると共にエアバックB103がオフとなり、t3においてエアバックA102の対向部分に集まった血液は、エアバックB103の対向部分に移動する。続けてt5においてエアバックB103がオンとなると共にエアバックC104がオフとなるのでエアバックB103の対向部分に集まっている血液はエアバックC104に移動する。この時にエアバックA102も同時にオンとなる(オンのままである)のでエアバックB103の対向部分の血液はエアバックA102方向に移動できずに、より確実にエアバックC104の対向部分に移動する。さらに続けて再びt3が適用されるので、エアバックC104がオンとなると共にエアバックB103がオンと成る(エアバックB103がオンまままである)為にエアバックC104の対向部分に移動された血液は、エアバックC104の対向部分の外に排出される。以上の一連の動作によって、最初にエアバックA102やその近傍に存在していた血液がエアバックC104のさらに下方に排出される、換言すればベルト3の上部にあった血液がベルト3の下方に排出されることになる。これを繰り返すことによってベルト3の上方にある例えば頭頂部やその近傍の血液がベルト3の下方に排出されることとなる。このベルト3の下方に排出される血液は栄養分や酸素量が少なくなった血液(以後、便宜上、古い血液という)である。
頭部において、特に頭頂部における血管は手や足に比較すると少なく、さらに手足に比較すると動きが少ないので柔軟性が手足の血管に比較して十分でない。従って血液を送り込むようなマッサージをいきなり行っても送り込まれた血液による血流量の増加を十分に吸収できず、頭皮にある血液が逃げ場を失って、栄養分や酸素量が少なくなった血液(古い血液)が長時間とどまる結果となる可能性がある。或いはその他の部分、例えば額等に血流が逃げてしまうので肝心の頭頂部におけるマッサージの効果が十分に表れない、或いは長続きしない結果となっていた。
しかし、このモードBでは血液を頭部から排出する方向にマッサージを行うので、栄養分や酸素量が少なくなった血液をまず排出することにより、逆に栄養分や酸素量が豊富な血液(以後、新鮮な血液という)が頭部に供給され易く、頭頂部に対しても供給されやすくなることとなり、心地いいマッサージ効果を得るだけでなく、被施術者の気分的なリフレッシュや頭皮のコンディションの改善につながる等の効果が得られる。
このモードBでは加圧をしない時間としてt3、t4、t5を挙げて、それぞれ7秒としているがこれに限定されず、7秒未満であってもよいし7秒以上であってもよく、2秒以上且つ10秒以下が望ましく、4秒から7秒程度が最も良い体感が得られる。
さらにt3、t4、t5をそれぞれ同一の時間としているがこれに限定されず、それぞれ異なる時間とすることでもよい。例えば血液が良好に排出されるようであればよいので、t4をt3より短くしても或いはt5を短くするように制御してもよい。さらにはt4をt3より短くし、さらにt5を短くするように制御してもよい。このような制御は例えばt4においてエアバックB103がオフであることによって集められた血液が、次のt5においてエアバックB103がオンとなると共にエアバックC104がオフとなることによって血液が移動できればよいのでt5においてt4以上にエアバックB103のオンを長くする必要はない。即ち、t3においてエアバックA102の対向部分に集まった血液がt4おいてエアバックB103の対向部分に移動し、さらにt5においてエアバックC104の対向部分に移動できればよいのでt5をt4より長くする必要がない。このようにt4やt5を必要以上に長くしない場合は、モードのサイクルを短くでき、マッサージ時間を短くしてもマッサージの効率を維持又は向上させることができる。
これとは逆にt4をt3より長くしても或いはt5を長くするように制御してもよい。さらにはt4をt3より長くすると共にt5を長くするように制御してもよい。この制御では例えばt4に於いてエアバックB103の対向部分には、エアバックA102とエアバックC104がオンであるのでこれらのエアバックの対向部分の血液がエアバックB103の対向部分に集中し血管が拡張する。この拡張に関する効果をより長く維持できるメリットがある。対向部分の血管拡張による血流の改善は、対向部以外の例えば頭頂部への血流促進にも有効である。t3やt5においてはエアバックA102やエアバックC104がオフであっても少なくともエアバックB103がオンであるので血流がそこでせき止められてt3ではエアバックA102の対向部分、又はt5ではエアバックC104の対向部分に血液が集中して血管が拡張し、血流促進につながる。
図3の(c)はマッサージのモードCを示している。モードCはモードAとモードBを同時に実行することができるモードである。本モードはモードAのタッピング効果とモードBの古い血液を排出する効果を同時に得ることができる。即ち、モードBにモードAのタッピングを適用して得られるモードである。よってモードAとモードBのマッサージを別々に行う必要がなく、一つのモードのみを行うことによって少なくとも2つのマッサージを行うことができ、時間を短縮してもマッサージの効率を維持又は向上させることができる効率的なマッサージを提供できる。
さらにモードCでは、タッピングよってよって血管或いは血流が振動するので栄養分や酸素量が少なくなった古い血液の排出効果をより高めることができる。例えばモードBのように一定の圧力しか付与されない場合に比較して、繰り返して加圧と減圧が得られるので血液の排出がより効率よくおこなわれると共に、血管の拡張がより効率よく実現できるので血流改善効果をより向上できる。
特にモードCでは各エアバックの対向部分にある血管のストレスを最小限度にとどめて血管の拡張効果が得られる。上記のように頭部にある血管は手足の血管と異なり弾力性に富んでいるわけではない。例えばモードBのt4においては、エアバックA102とエアバックC104がオンの状態であるので、エアバックA102の対向部分とエアバックC104の対向部分にある血液がエアバックB103の対向部分に集まってエアバックB103の対向部分に多くの血液が集中する。この結果、エアバックB103の対向部分の血管が膨らんで、この状態が維持されて血管の拡張が起こり、結果的に血行が促進される。
ところが血管が拡張されている状態が長く維持するより、血管の拡張を繰り返した方が血管の拡張による血行の促進には効果的となる場合があり、さらに被施術者の体感もよくなる。モードCではエアバックB103がオフの状態でエアバックA102とエアバックC104によってタッピングを行うので、エアバックA102の対向部分とエアバックC104の対向部分からエアバックB103の対向部分に繰り返して血液が送り込まれ、エアバックB103の対向部分の血管が繰り返して膨らんで、ストレスなく血管の拡張が得られ結果的に血行が促進され、より良好な体感も得られる。
図3の(d)はモードDを示している。血液を頭部から排出する方向に作用するモードBに比較するとモードDは血液を頭部に送り込む方向に作用する。モードDを単独でいきなり使用すると上記のように十分なマッサージ効果が得られない場合があるので上記のモードBやモードCによるマッサージを行って古い血液を排出した後にモードDによってマッサージを行って栄養分が豊富で酸素量の多い新鮮な血液を頭部、特に頭頂部に供給することが効率よく行える。尚、(d)のように各エアバックにおいてオンが連続して繰り返されるような場合は、当該オンの間で一旦オフとする制御でもよいが、これに限定されず、連続してオンとなる時間領域の間で一旦オフとすることなく、オンを維持するような制御でもよい。例えば(d)におけるエアバックA102は、オンが2回繰り返された後、オフが維持される制御であるが、この制御の代わりに、図3の(b)におけるエアバックC104の制御を(d)のエアバックA102の制御に使用してもよい。このように連続するオンとオフの制御の代わりに、一旦オフとすることなくオンの状態を維持する制御が可能で、この制御は、各モードを繰り返すことで、形式的にオンが繰り返して生じる場合にも適用できる。例えば(b)及び(d)におけるエアバックB103についてこれが適用できる。(b)において、エアバックB103に対するt4の制御の後(t4の右側)は、エアバックB103はオンの状態となった後、一旦オフとなり、当該(b)の制御が繰り返される為に、引き続いてt4の左側のようにオンの状態となる。即ちエアバックB103についてはオンの後、一時的にオフとなった後に再度オンとなるように制御される。この場合は一旦オフと制御することなく、オンの状態を維持するように制御してもよい。
上記の各モードによるマッサージはそれぞれ一つサイクルを繰り返して使用するマッサージであるが、本発明においてはこれに限定されない。例えば複数のモードを組み合わせて使用することも可能であってより望ましい。このように複数のモードを連続して自動的に実施することを、本明細書においてはプログラムと称する。このようにマッサージをプログラムすることによってより高効率なマッサージを実施することもできる。
例えば、モードBを2分間実施した後に続けてモードDを例えば3分間実施するプログラムも可能である。モードBを実施することによって頭部の古い血液が排出され、引き続いてモードDを実施することによって、古い血液が排出された直後に新鮮な血液が供給されるので、モードDを単独で使用する場合に比較してより効率的に新鮮な血流を頭部に供給でき、より効率的なマッサージが可能となる。
尚、上記のように本実施の形態におけるプログラムでは、血液を排出する効果の高いモードBのマッサージを行う時間TBと、血液を頭部に供給する効果の高いモードDのマッサージを行う時間TDとして上記のようにTBよりTDを長くするように設定しているがこれに限定されず、各モードの時間を同じとしてよい。さらにはプログラムでモードBの後にモードDを使用するとより効率的に血液の供給ができるので、その時間はモードDを単独で使用する場合に比較して短い時間で効果を得ることができる。よってTBよりTDを短くすることもでき、この方が全体としてのマッサージ時間を短くしてもモードBとモードDの繰り返しをより多く実行できるのでより効率的なマッサージが実施できる。
上記のプログラムにおいて使用されるモードはモードBとモードDに限定されてない。血液を排出する効果の高いモードとしてのモードBの代わりにモードCが使用されてもよく、新鮮な血液を供給する効果の高いモードDの代わりに他のモードとしてもよい。モードCはモードBに於いて各エアバックがオンとなるときに、所定の圧力であるP1が維持されないように制御してタッピングの効果をえられるように制御するモードであり、モードBにモードAを適用して得られる。同様にモードDにモードAを適用することによってモードDのオンの部分がモードAのようにタッピング可能なように制御される新たなモードEを使用することもとできる。即ち、モードDの代わりに新たな当該モードEとしてもよい。
プログラムとしては、各モードの間にモードAを挿入することもできる。例えば、モードB、モードD、モードAの順番で各モードを繰り返して実施してもよい。或いは、モードB、モードD、モードA、モードC、モードD、モードAの順番で各モードを繰り返して実施する、即ち、モードBの代わりにモードDにプログラムの一部において変更してもよい。
上記のプログラムにおいて、どのモードを何分実施するかを規定している情報、即ち、実施するモードの種類と当該モードによるマッサージを実施する時間を規定した情報を、本明細書においてプロファイルと称する。当該プロファイルには少なくともモードを示す情報と当該モードに対応した時間が記録されている。プロファイルはコントローラ2の制御部202内のメモリ領域に記憶されていてもよい。
プロファイルはモードを実行する順番を規定した情報をさらに含んでいてもよく、給気の強さなどのマッサージの強度に関する情報を含んでいてもよい。
頭部のマッサージ器においては、プロファイルを自由に設定できる構成が最も望ましいが、そのためは複雑なユーザーインターフェースを用意する必要があり、プロファイルの設定方法も煩雑となって望ましくない。そこで本発明のコントローラ2にはあらかじめ複数のプロファイルが設定されて制御部202内のメモリ領域に記憶されている。
コントローラ2にあらかじめ設定されているプロファイルは、プロファイル1として、モードBを3分、モードDを2分実施しこれを繰り返す情報が記憶されている。プロファイル2としてはモードBを3分、モードDを2分、続けてモードAが1分実施され、これを繰り返す情報が記憶されている。プロファイル3としてモードB、モードD、モードA、モードC、モードD、モードAの順番で各モードをそれぞれ3分ずつ繰り返して実施する情報が記憶されている。このように複数のプロファイルの中から適切なプロファイルを適宜選択することにより、プロファイルを設定するわずらわしさなしに複雑なマッサージを実施できて、マッサージの効率をより高めることができる。
このように複数のプロファイルを準備することは、例えばマッサージ器1を複数の人で使用する場合に好適である。例えばある被施術者はプロファイル1を好むが他の被施術者はプロファイル2を好むケースなどが容易に考えられる。或いは一人の被施術者が使用する場合であっても、午前中に使用するプロファイルと就寝前のリラックスの為に使用するプロファイルは違っていて当然である。従って、人、時間或いはマッサージの用途によって使用するプロファイルを自由に且つ容易に選択できる構成とするのが望ましい。
本実施の形態ではプロファイルの選択は次のようにして1つのユーザーインターフェースのみを使用して選択する。ユーザーはモード選択部116を押してモードを選択する際に、モード選択部116を押すたびに選択されるモードがモードA、モードB、モードC、モードDのように順番が切り替わり、これに連動してモードAランプ117、モードBランプ118、モードCランプ120、モードDランプ121が順次点灯する。モードDが選択されてモードDランプ121が点灯している状態でさらにモード選択部116を押すと、プロファイル1が選択されると共に制御部202内のメモリ領域からプロファイル1に関する情報が読み出され、制御部202はプロファイル1で実行されるモードBとモードDに対応してモードBランプ117とモードDランプ121を点灯させるように表示部IF216に指示を出してモードBランプ117とモードDランプ121を点灯させる。これによって使用者にプロファイル1が選択されたことが示される。同様にモード選択部116をさらに押すことによりプロファイル2が次に選択されて、プロファイル2の情報が制御部202内のメモリ領域から読みだされてプロファイル2で実行されるモードAとモードBとモードDに対応したモードAランプ117とモードBランプ118とモードDランプ121が点灯し、プロファイル2が選択されたことが示される。同様にして、さらにモード選択部116を押すことにより、プロファイル3が選択される。このようにモード選択部116を押すたびに選択させるプロファイルが順次切り替わる構成となっている。尚、さらに続けてモード選択部116が押された場合は、再度モードAが選択されるような構成となっていてもよい。
尚、プロファイルのいずれかが選択された場合も、上記のようにモードのいずれかが選択された場合と同様に、延長ボタン112を押すと共にマッサージが開始され、延長ボタン112を押すたびにマッサージの時間が長くなるような構成でも良い。或いは、モード選択部116が押されことによって直ちに制御部202は各加圧部を駆動させるような構成でも良く、この場合は初期値としてマッサージ時間が例えば5分が設定されると共に、延長ボタン112と短縮ボタン114によってマッサージ時間を適宜調整するように構成であってもよい。
図3に記載のモードAとモードCは上記の如くタッピングマッサージを実現することができる。特にモードAやCでは所定の圧力を維持しないことによってタッピングを実現しているが、圧力を維持する期間がモードBやモードDのように長くなく、十分に短いならタッピングの効果を得ることができる。例えば所定の圧力を維持する時間が0.5秒程度であれば十分にタッピングの効果を得ることができる。
図4はこの場合のモードAとモードCに対応する制御であるモードFとモードGの制御を模式的に示している。(a)はモードAに対応したモードFを示しており、(c)はモードCに対応したモードGを示す。(a)における破線で囲んだPの領域を拡大して(b)に示している。(b)はエアバックA102の制御のみを代表で示しているが、エアバックB103もエアバックC104の制御も同じである。このように各エアバックは圧力P3を十分に短い時間t7だけ一定に維持された後に減圧され、減圧開始からt8が経過した後に再度加圧がされる略パルス状の制御を4回繰り返してこれを1つのセットとして、これを繰り返すように制御される。t6としては例えば1秒、t7としては0.5秒、t8としはて0.5秒が適用される。当該略パルス状の制御は4回に限らず、3回以下でもよく、或いは5回以上でもよい。
図4の(c)であるモードGでは、各エアバックは(a)における2セット毎に加圧を行わない時間を設けており、加圧を行わないエアバックをエアバックA102から順番に切り替えている。モードGはモードCにモードFの略パルス状の制御を適用した場合に相当する。モードGにおいては、モードFと同様に略パルス状の制御を4回繰り返してこれを1セットとして繰り返すと共に、当該1セットのタイミングと当該1セットに相当する時間において加圧を行わない制御としている。本発明はこれに限定されず、当該略パルス状の制御は4回に限らず、3回以下でもよく、或いは5回以上でもよい。加圧を行わない時間は、当該1セットの間だけであってもよいし、2セット以上の間であってもよく、さらに当該1セットの時間を単位とする制御ではなく、当該1セットの時間とは関係なく自由に制御してもよい。
図4のような制御では、各エアバックの圧力は確実に所定の圧力であるP3に達する。一方、モードAやモードCにおいては、複数のエアバックを使用する構成では総てのエアバックに対して所定の圧力を付与して制御することは困難な場合がある。例えば使用する加圧部A221、加圧部B222、加圧部C223の給気能力に微妙な違いが有ったり、使用するホースにねじれが生じたり、ホースが変形して部分的に細くなるなどにより、所定の給気ができず、所定の圧力、例えばP1に到達する前に減圧が開始されるなど、所望の制御ができない場合があり、この場合は十分な効果が得られなかったり、例えばモードAでは一つのエアバックによる加圧が不十分な為に十分な体感が得られなかったり、所望の効果が得られない可能性がある。
ところが図4の制御では、一部の加圧部の給気能力が低下した場合であっても、例えばホースの折れやねじれや部分的な変形によってホースが部分的に、或いは一時的に細くなって給気に支障が生じて給気能力が低下している場合であっても、給気能力の低下がわずかであれば、総てのエアバックに対して確実に所望の圧力P3が得られるように制御できる可能性が増えるので、十分な効果が得られ、十分な体感が得られ、所望のマッサージが得られる。尚、上記のP3はコントローラ2のような構成では各加圧部によって各エアバックに空気を満たすことで容易に設定できる。
図5はコントローラ2の他の例であるコントローラ5を示している。コントローラ5にはコントローラ2と比較すると、加圧部A221、加圧部B222、加圧部C223の代わりに一つの加圧部521が配置されている。さらに、流路A209に給気バルブA504と排気バルブA517と排気口A507が、流路B210には給気バルブB505と排気バルブB518と排気口B508が、流路C215には給気バルブC506と排気バルブC520と排気口C509が配置されている。その他はコントローラ2と同じであり、同じ符号を使用して記載している。
コントローラ2は、各エアバックをそれぞれ独立した加圧部によって給気と排気を制御していた。例えばエアバックA102には加圧部A221が、エアバックB103には加圧部B222が、エアバックC104には加圧部C223が接続されてそれぞれの加圧部の動作の有無によって各エアバックが制御されていた。一方、コントローラ5は図5のように一つの加圧部521によって各エアバックの給気及び排気の制御を行う。但し各エアバックに対しては各給気バルブ及び排気バルブによって給気と排気が制御される。
コントローラ5による各エアバックの制御を、モードGを例に挙げて説明する。モード選択部116によって所望のモードGが選択されて延長ボタン112が押されたことを操作部IF201が検出してその情報を制御部202に送信する。制御部202は加圧部521に電力を供給して加圧部521が動作を開始して各エアバックに対する給気が可能な状態となる。但し各エアバックに対しては各給気バルブによって給気の有無が制御される。加圧部521の動作が開始されると、制御部202は時刻T1において給気バルブC506と給気バルブB505を開く共に排気バルブC520と排気バルブB518を閉じてエアバックC104とエアバックB103に給気を行う。続けて時刻T2において給気バルブC506と給気バルブB505を閉じると共に排気バルブC520と排気バルブB518を開いてエアバックC104とエアバックB103から排気を行う。T3において制御部202は給気バルブC506と給気バルブB505を開く共に排気バルブC520と排気バルブB518を閉じてエアバックC104とエアバックB103に給気を行う。エアバックA102は給気を行わないので給気バルブA504を開くことはなく、排気バルブA517は開いたままである。以後この動作を繰り返してエアバックB103とエアバックC104には略パルス状の制御を4回繰り返した1つのセットを終了する。
制御部202は時刻T4において給気バルブC506と給気バルブA504を開く共に排気バルブC520と排気バルブA517を閉じてエアバックC104とエアバックA102に給気を行う。続けて時刻T5において給気バルブC506と給気バルブA504を閉じると共に排気バルブC520と排気バルブA517を開いてエアバックC104とエアバックA102から排気を行う。T6において制御部202は給気バルブC506と給気バルブA504を開く共に排気バルブC520と排気バルブA517を閉じてエアバックC104とエアバックA102に給気を行う。エアバックB103には給気を行わないので給気バルブB505を開くことはなく、排気バルブB518は開いたままである。以後この動作を繰り返してエアバックC104とエアバックA102には略パルス状の制御を4回繰り返した1つのセットを終了する。
制御部202は時刻T7において給気バルブB505と給気バルブA504を開いと共に排気バルブB518と排気バルブA517を閉じてエアバックB103とエアバックA102に給気を行う。続けて時刻T8において給気バルブB505と給気バルブA504を閉じると共に排気バルブB518と排気バルブA517を開いてエアバックB103とエアバックA102から排気を行う。T9において制御部202は給気バルブB505と給気バルブA504を開く共に排気バルブB518と排気バルブA517を閉じてエアバックB103とエアバックA102に給気を行う。エアバックC104には給気を行わないので給気バルブC506を開くことはなく、排気バルブC520は開いたままである。以後この動作を繰り返してエアバックB103とエアバックA102には略パルス状の制御を4回繰り返した1つのセットを終了する。
コントローラ5においては排気用の排気バルブを配置して排気するがこれに限定されず、給気と排気を切り替えられるバルブを代わりに使用してもよい。
コントローラ5に使用されている給気バルブをコントローラ2の各流路に配置してもよい。この場合には、図4のように一定のP3で圧力を維持することが極めて容易となる。上記においてP3は加圧部の給気能力を調整することよって制御されるが、給気バルブを使用することによって、圧力がP3となった時点で給気バルブを閉じることにより、加圧部の能力によらず自由にP3を設定或いは調整できるメリットがある。
本実施の形態では上記のように所定の圧力としてP0は圧力が解放された状態を示しているがこれに限定されず、わずかに圧力が加わった状態であってもよく、所望のマッサージが得られれば特に限定はない。
本実施の形態では上記のように所定の圧力としてP0、P1、P3を一定の圧力として制御しているがこれに限定されず、これらを或いはこれらの一部をユーザーが適宜調整して使用できる構成としてもよい。例えば操作パネルに強度設定手段であるボタンを配置して、例えばP1とP3の圧力を強と弱の2段階に制御することも可能であり、2段に限らず3段以上に或いは無段階に制御できるような構成であってもよい。さらにはプロファイルにおいてもこれらP0、P1、P3の値を変更できるような情報を含んでいてもよい。
上記のように本発明により、タッピングによるマッサージ効果が得られると共に、血流の排出を行う効果も得ることができ、さらにマッサージの効率を向上させて効果的なマッサージを実現できる。