JP6948251B2 - 焼結含油軸受及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、内部に潤滑油を含浸させて潤滑を円滑に行わせることができる焼結含油軸受及びその製造方法に関する。
焼結含油軸受は、気孔内に潤滑油を含浸させた状態で使用され、軸が起動すると、軸と軸受の摺動面との間に内部から潤滑油が染み出し、軸の回転に伴って、その潤滑油に圧力が発生して軸が支持されるようになっている。このような潤滑特性により、無給油で長時間使用できることから、車載用モータの軸受など、広く軸受として利用されている。
また、このような焼結含油軸受においては、高速・高荷重(高負荷)の条件下においても使用可能とするため、摺動面の表面開口率を小さくして摺動面からの潤滑油のリークを少なくし、摺動面の潤滑油に適切に圧力を発生させるなど、種々の手段が採用されている。
例えば、特許文献1には、軸が挿入される軸受孔の内周面に、軸の外周面を支持する摺動面と、給油面とが隣接して形成され、摺動面における表面開口率が10%以下であり、給油面の表面開口率が10%を超えて形成された焼結含油軸受が開示されている。また、この特許文献1には、給油面から油が浸みだして摺動面と軸との間に導かれ、軸との間に油膜を形成でき、摺動面に十分な量の油を供給するとともに、供給された油が摺動面から内部に移動することを抑制して、低摩擦係数化を図り、軸受としての摺動特性を向上できることが記載されている。
一方、特許文献2には、質量%で、5〜40%のNiと、3〜15%のSnと、0.5〜4.0%のPとを含有し、残部がCu及び不可避不純物からなるとともに、素地中にNiとPを主成分とした相が分散した金属組成を有し、かつ、5〜25%の気孔率を有するCu基焼結含油軸受が開示されている。特許文献2には、この組成により、Cu基焼結含油軸受が安価で耐摩耗性に優れたものとなり、さらに0.3〜5.0%の固体潤滑剤を含有することでさらに耐摩耗性に優れたものとなることが記載され、高負荷用途に適したCu基焼結含油軸受であることが記載されている。
国際公開第2017/110778号 特開2016‐56453号公報
このように、給油面を付与したり、摺動面の表面開口率を調整したりすることにより、高速・高荷重の条件下においても使用可能な焼結含油軸受が提案されている。しかし、さらに高速・高荷重の条件になると、特許文献1又は特許文献2等に記載されるように、給油面を付与するだけでは十分ではなく、さらに高速・高荷重の条件でも使用可能な軸受が求められるようになっている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、軸受としての摺動特性を向上させ、さらに、高速・高荷重の環境下での使用を可能とした焼結含油軸受及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の焼結含油軸受は、軸が挿入される軸受孔の内周面に、前記軸の外周面を支持する摺動面と、前記摺動面に隣接し該摺動面よりも径方向外側に配置された給油面と、を有し、前記摺動面に固体潤滑剤が3%以上20%以下の面積率で分布されており、前記摺動面の全体における表面開口率が9%以下であり、前記給油面における表面開口率が10%を超え40%未満である。
この焼結含油軸受においては、摺動面に固体潤滑剤が3%以上20%以下の面積率で分布されているので、軸と摺動面との摺動初期において、摺動面に露出する固体潤滑剤が軸と摺動面との間に存在することにより、軸と摺動面との初期なじみ性を向上でき、摩擦抵抗を低減できる。また、この焼結含油軸受においては、摺動時において表面開口率が10%を超える給油面から油が浸みだして軸と摺動面との間に導かれ、表面開口率が9%以下の摺動面において軸との間に十分な油膜を形成できるので、摺動時の摩擦抵抗を低減でき、軸受としての摺動特性を向上できる。
この場合において、摺動面における固体潤滑剤の面積率が3%未満では、固体潤滑剤が不足して、固体潤滑剤を分布させたことによる軸と摺動面との初期なじみ性を十分に向上させることが難しくなり、耐面圧値を向上させることも難しくなる。一方、摺動面における固体潤滑剤の面積率が20%を超えると、摺動面に占める焼結体の素地面が少なくなることで強度が低下し、摩耗を促進させるおそれがある。
また、軸を支持する摺動面の表面開口率が9%を超えていると、高速・高荷重の環境では、軸との間に油を十分に保持できずに摺動面から軸受内部に油を流入させるおそれがある。また、給油面の表面開口率が10%以下であると、軸受内部から軸と摺動面との間に油を十分に供給することが困難になる。このため、軸と摺動面との間の油膜が少なくなり、焼付きが生じやすくなることから、耐面圧を低下させるおそれがある。また、給油面の表面開口率が40%以上になると、給油面から軸と摺動面との間に油を円滑に供給することが難しくなる。
なお、固体潤滑剤の面積率は、摺動面における単位面積当たりの固体潤滑剤の面積比率であり、表面開口率は、摺動面もしくは給油面における単位面積当たりの開口部(空孔)の面積比率である。また、固体潤滑剤の面積率と表面開口率とは、それぞれ任意の複数の視野(例えば、一つの視野が1mm)における固体潤滑剤又は開口部の面積比率の平均値である。
本発明の焼結含油軸受の好適な実施態様として、前記摺動面における表面開口率が6%以下であるとよい。
摺動面における表面開口率を6%以下とすることにより、さらに高速・高荷重の環境において、軸と摺動面との間に安定して油を保持でき、摺動面の良好な耐面圧を確保できる。
本発明の焼結含油軸受の好適な実施態様として、前記摺動面における前記固体潤滑剤の分布状態は、直径5μm以上の大きさの前記固体潤滑剤が200個/mm以上で分布されているとよい。
直径5μm以上の大きさの固体潤滑剤が摺動面の耐面圧改善に大きく寄与することから、摺動面における直径5μm以上の大きさ固体潤滑剤の分布状態を200個/mm以上とすることにより、摺動面に固体潤滑剤を均一に分布でき、固体潤滑剤により安定して摺動面の良好な耐面圧を維持できる。一方、上記の大きさの固体潤滑剤の分布状態が200個/mm未満であると、摺動面に露出する固体潤滑剤の量が少なく、その分布も不均一になるため、摺動面の耐面圧を低下させるおそれがある。
本発明の焼結含油軸受の好適な実施態様として、前記摺動面から内部に少なくとも10μmまでの深さ範囲に、前記摺動面と同じ面積率で前記固体潤滑剤が分布された潤滑層が形成されているとよい。
固体潤滑剤を摺動面だけでなく、その摺動面の内部にまで同様の面積率で分布させた潤滑層を設けておくことで、摺動時に摺動面が摩耗した際にも、安定して固体潤滑剤を軸と摺動面との間に供給できる。したがって、焼結含油軸受を高速・高荷重の環境において長期的に安定して使用できる。
本発明の焼結含油軸受の好適な実施態様として、前記軸受孔の内周面全体の面積を1としたときに、前記摺動面の面積比率をaとすると、前記面積比率aが0.2以上0.98以下であるとよい。
摺動面の面積比率aが0.2未満では、実用的なサイズの軸受では摺動面にかかる面圧が高くなり、摺動面の摩耗が進行して焼付きが生じやすくなる。また、摺動面の面積比率aを0.2未満として軸受の耐久性を持たせようとすると、軸受自体のサイズを大きくする必要があり、実用的ではない。さらに、摺動面の面積比率aが0.98を超える場合では、潤滑油を十分に供給することができず、摺動面の摩耗が進行して焼付きが生じやすくなる。
本発明の焼結含油軸受の好適な実施態様として、前記固体潤滑剤には、黒鉛、フッ化黒鉛、二硫化モリブデン、PTFE、窒化ホウ素、フッ化カルシウム、タルクのいずれかを用いることができる。
固体潤滑剤に上記のいずれかを用いることで、潤滑性を付与でき、耐摩耗性に優れた焼結含油軸受を構成できる。
本発明の焼結含油軸受の製造方法は、原料粉末を加圧成形した圧粉体を焼結して、軸が挿入される軸受孔の内周面に前記軸の外周面を支持する摺動基準面と、該摺動基準面に隣接して該摺動基準面よりも径方向外側に配置された給油面と、を有する焼結軸受基体を形成する基体形成工程と、前記摺動基準面に固体潤滑剤を塗布して前記摺動基準面に前記固体潤滑剤が分布された摺動面を形成する潤滑剤分布工程と、を有し、前記基体形成工程において前記給油面の表面開口率を10%を超え40%未満に形成し、前記潤滑剤分布工程において、前記摺動基準面に前記固体潤滑剤を3%以上20%以下の面積率で分布させて、前記摺動面の全体における表面開口率を9%以下に形成する。
予め基体形成工程において摺動基準面と給油面とを有する焼結軸受基体を形成しておき、潤滑剤分布工程で摺動基準面に固体潤滑剤を分布させることにより、表面開口率を9%以下に小さくした摺動面を形成できる。なお、給油面については10%を超え40%未満の表面開口率を維持する。このように、本発明の焼結含油軸受の製造方法では、焼結軸受基体を形成した後に、焼結基準面に固体潤滑剤を分布させることで、摺動面における固体潤滑剤の面積率を所望の範囲内に容易に調整できるとともに、摺動面の表面開口率を所望の範囲内に容易に調整できる。
本発明の焼結含油軸受の製造方法の好適な実施態様として、前記基体形成工程と前記潤滑剤分布工程との間に、前記焼結軸受基体を加圧して寸法矯正することにより、前記摺動基準面の表面開口率を低減する矯正工程を有するとよい。また、前記矯正工程において、前記摺動基準面の表面開口率を9%以下に低減するとよい。
矯正工程により、摺動基準面の一部の空孔が圧縮・塑性流動されることにより潰され、封孔されるので、摺動基準面を緻密に形成でき、表面開口率を9%以下に小さくできる。このように、予め緻密な摺動基準面を形成しておくことで、摺動面に占める焼結体の素地面の割合を大きくできるので、摺動面の強度を高く維持でき、摺動面の耐面圧を向上できる。
本発明によれば、軸受としての摺動特性を向上でき、焼結含油軸受の高速・高荷重の環境下での使用が可能となる。
本発明の第1実施形態の焼結含油軸受を軸心を通る縦断面において模式的に示した縦断面図である。 図1の焼結含油軸受における軸受孔付近の拡大断面図である。 本発明の実施形態の焼結含油軸受の摺動面を撮影したSEM画像の一例である。 本発明の第1実施形態の焼結含油軸受の製造方法を示す工程図である。 成形用金型内を模式的に示す縦断面図である。 図5に示す成形用金型による圧粉体の成形時を模式的に示す縦断面図である。 図6に示す状態から成形用ダイプレートを上昇させて圧粉体を取り出した状態を模式的に示す縦断面図である。 矯正用金型に焼結軸受基体を載置した状態を模式的に示す縦断面図である。 図8に示す状態から焼結軸受基体を矯正している状態を模式的に示す縦断面図である。 焼結軸受基体の摺動基準面への固体潤滑剤の塗布時を模式的に示す縦断面図である。 本発明の他の実施形態の焼結含油軸受を軸心を通る縦断面において模式的に示した縦断面図である。
以下、本発明の焼結含油軸受及びその製造方法の実施形態について説明する。
本実施形態の焼結含油軸受101は、金属粉末の焼結体により形成された筒状の軸受であり、図1及び図2に示すように、軸受孔10の内周面には、軸30の外周面311を支持する摺動面11と、摺動面11に隣接して摺動面11よりも径方向外側に配置された給油面12a,12bと、が形成されている。
軸受孔10の摺動面11は、挿入された軸30を回転自在に支持するものであり、摺動面11の内径Diは、軸30の外径よりもわずかに大きい直径に形成される。また、給油面12a,12bは、摺動面11よりも径方向外側に凹ませた凹面状に形成されており、摺動面11よりも内径が大きく形成され、軸受孔10の内周面の軸方向の端部に開口して、軸受孔10の両端部に形成されている。図1及び図2に示す例では、焼結含油軸受101の長さ方向(軸方向)の中央部に摺動面11が形成され、その両端部に隣接して給油面12a,12bが形成されている。そして、各給油面12a,12bは、同径で、かつ、軸方向に同幅wで形成されており、各給油面12a,12bは周方向に一定の幅wで形成されている。
なお、給油面は、少なくとも軸受孔10の内周面の一部に形成されていればよく、例えば図11に示す焼結含油軸受102のように、摺動面11a,11bを軸受孔10の両端に開口させるように配置し、軸受孔10の軸方向の中央部を径方向外側に凹ませた給油面12を形成することもできる。また、図示は省略するが、給油面は、周方向に連続した形状の他にも、軸方向に螺旋状に形成してもよいし、摺動面に対して独立した島状に分散する複数の凹部により形成することもできる。
焼結含油軸受101は、前述したように、金属粉末の焼結体により形成されており、図示は省略するが、内部に複数の空孔(ポア)が形成された多孔質体により形成されている。また、軸受孔10の内周面に形成された給油面12a,12bには、空孔が開口しており、給油面12a,12bにおいては空孔の表面開口率が10%を超え40%未満とされている。これに対し、摺動面11は、固体潤滑剤が3%以上20%以下の面積率で分布されており、図3のSEM画像に示されるように、空孔(図3に符号14で示す。)の表面開口率が9%以下とされ、好ましくは6%以下とされる。なお、以下の説明では、給油面12a,12bに開口する空孔も、摺動面11に開口する空孔14と同様に、符号14を付して説明する。
図3に示すように、固体潤滑剤(図3に符号15で示す。)は摺動面11に開口する空孔14の一部に充填されており、摺動面11に占める焼結体の素地面における空孔が固体潤滑剤15により埋められることで、摺動面11に開口する空孔14の表面開口率が小さく設けられている。摺動面11における固体潤滑剤15の分布状態は、直径5μm以上の大きさの固体潤滑剤15が200個/mm以上で分布されることが望ましい。摺動面11における上記大きさの固体潤滑剤15の分布状態を200個/mm以上とすることにより、摺動面11に固体潤滑剤15を均一に分布でき、軸30と摺動面11との間に、固体潤滑剤15を安定して供給でき、摺動面11の良好な耐面圧を維持できる。なお、上記大きさの固体潤滑剤15の分布状態が200個/mm未満であると、摺動面11に露出する固体潤滑剤15の量が少なく、その分布も不均一になるため、固体潤滑剤15を分布させたことによる効果が十分に得られず、摺動面11の耐面圧を低下させるおそれがある。
固体潤滑剤15の直径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定される。本実施形態では、光学顕微鏡により観察される既知の面積(例えば1mm)の測定範囲(視野範囲)内に完全に含まれる固体潤滑剤15の面積を測定し、円相当径(固体潤滑剤15の単位面積と同じ面積を持つ円の直径)を算出し、この円相当径を各固体潤滑剤15の直径とした。
また、固体潤滑剤15は、摺動面11だけでなく、摺動面11から内部に少なくとも10μmまでの深さ範囲にも、摺動面11と同じ面積率で分布させることが望ましい。本実施形態の焼結含油軸受101では、摺動面11より内側の内部にまで摺動面11と同様の面積率で固体潤滑剤15を分布させた潤滑層13が形成されている。軸30と摺動面11との摺動時には、摺動面11が10μm程度摩耗されるおそれがあることから、摺動面11だけでなく、摺動面11よりも内部に摺動面11と同様の面積率で固体潤滑剤15を分布させた潤滑層13を設けておくことで、摺動面11が摩耗した際にも、安定して固体潤滑剤15を軸30と摺動面11との間に供給できる。
また、本実施形態では、摺動面11を構成する焼結体の素地面(後述する摺動基準面221)は、空孔14が封孔処理された緻密な層(緻密層)により形成されており、給油面12a,12bよりも摺動面11に占める焼結体の素地面の割合が大きく設けられている。例えば、給油面12a,12bに開口する空孔14の平均直径は5μm以上40μm以下とされ、摺動面11に開口する空孔14の平均直径は5μm以上20μm以下とされる。このように緻密層により形成された摺動面11においては、開口する空孔14の表面開口率が給油面12a,12bと比較して小さく設けられていることから、軸受内部への油の流入が抑制され、軸30と摺動面11との間に油を安定して保持できる。このように、摺動面11は、その素地面が緻密層により形成されることで、摺動面11の強度が高く維持され、摺動面11の耐面圧が高く維持されている。また、給油面12a,12aにおいては、開口する空孔14の表面開口率が摺動面11と比較して大きく設けられているので、軸受内部から軸30と摺動面11との間に油を円滑に供給できる。
なお、空孔14の平均直径は、固体潤滑剤15の直径の測定と同様に、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定される。走査型電子顕微鏡(SEM)により観察される摺動面11上の既知の面積(例えば1mm)の測定範囲(視野範囲)内に完全に含まれる空孔(開口部)14の面積を測定し、円相当径(空孔14の単位面積と同じ面積を持つ円の直径)を算出し、この円相当径を各空孔14の直径とし、これらの平均値を平均直径とした。
また、上述の固体潤滑剤15の面積率は、摺動面11における単位面積当たりの固体潤滑剤15の面積比率であり、表面開口率は、摺動面11もしくは給油面12における単位面積当たりの開口部(空孔14)の面積比率である。また、固体潤滑剤15の面積率と表面開口率とは、それぞれ任意の複数の視野(例えば、一つの視野が1mm)における固体潤滑剤15又は開口部の面積比率の平均値である。
固体潤滑剤としては、優れた潤滑性を有し、耐摩耗性の向上に寄与する黒鉛、フッ化黒鉛、二硫化モリブデン、PTFE、窒化ホウ素、フッ化カルシウム、タルク等のいずれかを好適に用いることができる。
また、軸受孔10の内周面全体の面積を1としたときに、摺動面11の面積比率をaとすると、摺動面11の面積比率aが0.2以上0.98以下とされる。この場合、軸受孔10の軸方向の長さをL(本実施形態では、焼結含油軸受101の長さLと同じ)とすると、軸30が軸受孔10に挿入されて内周面に接触したときに、軸受孔10の長さLの(a×100)%の範囲で摺動面11に接することになる。
このように構成される焼結含油軸受101の諸寸法について一例を挙げると、摺動面11の内径Diが1mm以上30mm以下に形成され、摺動面11と軸30との間には、摺動面11の内径Diの0.05%以上0.6%以下の隙間が形成される。また、摺動面11と給油面12a,12bとの高低差d11は、摺動面11の内径Diの0.01%以上15%以下に形成される。なお、図11に示すように、軸受孔10の軸方向の中央部を径方向外側に凹ませた給油面12を形成する等、軸受孔10の両端から離れた位置に給油面を形成する場合、焼結体となる圧粉体の成形時の離型性(スプリングバック量)を考慮して、摺動面11a,11bと給油面12との高低差d11は、摺動面11の内径Diの0.01%以上0.5%以下に形成される。ただし、これらの寸法は、上記数値範囲に限られるものではない。
次に、本実施形態の焼結含油軸受101の製造方法について説明する。
この焼結含油軸受101の製造方法は、図4のフロー図に示すように、焼結含油軸受101となる多孔質体からなる焼結軸受基体22を形成する基体形成工程(S11)と、焼結軸受基体22を加圧して寸法矯正する矯正工程(S12)と、固体潤滑剤が分布された摺動面11を形成する潤滑剤分布工程(S13)と、を有する。
焼結含油軸受101の材料となる金属の原料粉末としては、特に限定されるものではないが、銅系粉末あるいは鉄銅系粉末が好適である。銅系粉末は、主成分が銅、銅‐錫、銅‐錫‐リンあるいは銅‐亜鉛等の銅合金からなる銅粉であり、融点が焼結温度以下である低融点金属粉(例えば、錫粉)を5〜12質量%、あるいは黒鉛等の固体潤滑剤を0.5〜9質量%含有してもよい。また、鉄銅系粉末は、銅粉が15〜80質量%、残部が鉄粉とされるが、低融点金属粉を0.1〜5質量%、固体潤滑剤を0.5〜5質量%含有してもよい。固体潤滑剤を少量含有させることで、低荷重で所定密度の圧粉体を容易に成形でき、圧粉体の成形性を向上させることができる。なお、原料粉末に含有される固体潤滑剤には、摺動面11に分布される固体潤滑剤15と同じものを用いることができるが、摺動面11に分布される固体潤滑剤15とは異なる種類のものを含有させることもできる。
また、これら原料粉末のうち、銅粉の形状としては、必ずしも限定されないが、扁平粉末と粒状粉末との二種類を用いるとよい。粒状粉末は、電解銅粉やアトマイズ銅粉が用いられる。扁平粉末は、アスペクト比(直径/厚さ)が10以上であり、例えば銅箔片を用いることができる。そして、銅粉中の扁平粉末の混合比率は、銅系粉末の場合は5質量%〜30質量%、鉄銅系粉末の場合は5質量%〜60質量%が好ましい。銅系粉末の粒状粉末と、扁平粉末とは、例えば、扁平粉末の最大直径が1μm以上200μm以下であるのに対して、粒状粉末は5μm以上100μm以下の平均粒径に形成される。また、鉄銅系粉末においては、鉄粉の平均粒径は銅粉の平均粒径と同等以上に形成される。
(基体形成工程)
基体形成工程(S11)には、図5〜図7に示すように、成形用ダイプレート51と、成形用コアロッド52、成形用下パンチ53及び成形用上パンチ54を備える成形用金型50が用いられる。この成形用金型50において、成形用ダイプレート51には円柱状の貫通孔511が形成されており、この貫通孔511の中心に挿入される成形用コアロッド52は全体として円柱状に形成されている。
図5に示すように、成形用ダイプレート51の貫通孔511と成形用コアロッド52の外周面521とにより円筒状空間55が形成されており、この円筒状空間55に下方から挿入される成形用下パンチ53は全体として円筒状に形成され、その外周面531が成形用ダイプレート51の貫通孔511の内周面に係合可能に設けられるとともに、その内周面532が成形用コアロッド52の外周面521に係合可能に設けられている。そして、成形用下パンチ53の上端部には、他の部分よりも径方向内側に凹とされた縮径面533が形成されている。また、円筒状空間55に上方から挿入される成形用上パンチ54も、成形用下パンチ53と同様に全体として円筒状に形成され、その外周面541が成形用ダイプレート51の貫通孔511の内周面に係合可能に設けられるとともに、その内周面542が成形用コアロッド52の外周面521に係合可能に設けられている。そして、成形用上パンチ54の下端部には、他の部分よりも径方向内側に凹とされた縮径面543が形成されている。
基体形成工程(S11)では、図5に示すように、成形用下パンチ53を円筒状空間55の下部に挿入し、成形用ダイプレート51と成形用コアロッド52と成形用下パンチ53とによって形成される空間内に、所定量の原料粉末を上方から投入する。そして、円筒状空間55内に上方から成形用上パンチ54を挿入して、成形用下パンチ53と成形用上パンチ54との間隔を狭めて原料粉末を例えば150MPa〜400MPaで圧縮することにより加圧成形して、圧粉体21を形成する。このとき、圧粉体21の内周面の両端には、成形用下パンチ53の縮径面533と成形用上パンチ54の縮径面543とにより、圧粉体21の内周面の軸方向の両端に他の部分よりも径方向外側に凹とされた凹面212a,212bが形成されるとともに、成形用コアロッド52の外周面521により、両凹面212a,212bに隣接する凸面211が形成される。つまり、圧粉体21の内周面に、成形用コアロッド52の外周面521と、成形用下パンチ53の縮径面533及び成形用上パンチ54の縮径面543との形状に対応する高低差を有する凹面212aと凸面211と凹面212bとが隣接して形成される。
成形用ダイプレート51と成形用コアロッド52との間で圧粉体21を成形した後、図6に示すように成形用ダイプレート51を成形用コアロッド52及び両パンチ53,54に対して下降移動させ、成形用ダイプレート51による拘束を解除(除圧)する。このとき、圧粉体21に若干のスプリングバックが生じ、成形用コアロッド52と圧粉体21との間に隙間が生じる。そして、この状態で、図7に示すように、成形用ダイプレート51を上昇移動させて元の位置に復帰させることで、圧粉体21の内部から成形用コアロッド52を容易に抜き出す(離型させる)ことができる。
なお、圧粉体21の内周面の凸面211と凹面212a,212bとの高低差d21は、スプリングバックが生じることから、成形用ダイプレート51による拘束時と比べて若干大きくなり、凸面211と凹面212a,212bの各内径も成形用ダイプレート51による拘束時と比べて若干大きくなる。
なお、圧粉体21の加圧成形時において、扁平銅粉末が、成形用ダイプレート51の貫通孔511の内周面及び成形用コアロッド52の外周面521に多く集まるため、圧粉体21の内周面及び外周面に沿った方向に扁平銅粉末を多く配置することができる。このため、成形用コアロッド52の外周面521付近に扁平銅粉末が多く配置された状態となり、鉄銅系粉末を原料粉末とした場合は、圧粉体21の内周面及び外周面における表層部が銅リッチとなる。
次に、圧粉体21を800℃〜950℃の温度で焼結することにより、表面開口率が10%を超え40%未満の焼結体からなる焼結軸受基体22を形成する。この焼結時において、圧粉体21の収縮が生じるものの、焼結軸受基体22の内周面には、圧粉体21の凸面211であった部分に摺動基準面221が形成されるとともに、圧粉体21の凹面212a,212bであった部分に給油面12a,12bが形成される。給油面12a,12bに開口する空孔の平均直径は、5μm以上40μm以下に形成される。また、摺動基準面221に開口する空孔14の平均直径は、給油面12a,12bと同様の大きさに形成される。
なお、圧粉体21の加圧成形時において、焼結軸受基体22の内周面全体の面積を1としたときに、摺動基準面221の面積比率が0.2以上0.98以下となるように寸法設定しておく。
(矯正工程)
矯正工程(S12)では、図8に示すように、矯正用金型60を用いて焼結軸受基体22を加圧して寸法矯正することにより、摺動基準面221に開口する空孔(開口部)14の表面開口率を低減する。
矯正用金型60は、焼結軸受基体22の内外径を寸法矯正するものであり、例えば図8に示すように、成形用金型50と同様に、矯正用ダイプレート61、矯正用コアロッド62、矯正用下パンチ63及び矯正用上パンチ64の4つを備える。そして、焼結軸受基体22に接触する矯正用ダイプレート61の貫通孔611の表面(内周面)や、矯正用コアロッド62の外周面621、矯正用下パンチ63の上端面633及び矯正用上パンチ64の上端面643は平滑な表面に仕上げられている。また、矯正用コアロッド62の外周面621は、焼結軸受基体22の摺動基準面221により形成される内径よりも大きく、かつ凹面である給油面12a,12bにより形成される内径よりも小さな外径で形成されている。
図8に示すように、この矯正用金型60において矯正用ダイプレート61内に矯正用コアロッド62と矯正用下パンチ63とを配置した状態で、矯正用ダイプレート61上に焼結軸受基体22を配置し、矯正用上パンチ64を下降移動させる。これにより、矯正用ダイプレート61の貫通孔611内に焼結軸受基体22を押し込み、図9に示すように焼結軸受基体22の内周面に矯正用コアロッド62を押し当てることにより、矯正用ダイプレート61の貫通孔611の内周面と矯正用コアロッド62の外周面621との間、及び矯正用下パンチ63と矯正用上パンチ64との間で、焼結軸受基体22が径方向及び軸方向に圧縮・塑性流動されて、その形状が製品寸法に仕上げられる。特に原料粉末に鉄銅系粉末を用いる場合、扁平銅粉末により焼結軸受基体22の内周面及び外周面における表層部が銅リッチに形成されるので、矯正工程において、表層部の柔らかい銅リッチ部分が塑性流動しやすく、摺動基準面221に開口する空孔(開口部)14が潰しやすくなる。
この際、矯正用コアロッド62の外周面621の外径は、焼結軸受基体22の摺動基準面221よりも大きく、かつ凹面である給油面12a,12bよりも小さな外径で形成されていることから、焼結軸受基体22の内周面の給油面12a,12bは圧縮されることがなく、摺動基準面221のみが径方向外側に圧縮・塑性流動される。そして、焼結軸受基体22の摺動基準面221が圧縮される際に、矯正用コアロッド62の外周面621と摺動基準面221とが摺動することで、摺動基準面221に開口する空孔14の一部が目潰し(封孔処理)され、特に摺動基準面221に開口する比較的直径の小さな空孔14が潰される。そして、摺動面11に開口する空孔14の平均直径が5μm以上20μm以下に形成され、空孔14の表面開口率が寸法矯正前よりも小さくなる。
このように、矯正工程では、摺動基準面221の表面全体に空孔14が目潰しされた状態の緻密層が形成されることで、開口する空孔14の表面開口率が寸法矯正前よりも低減され、すなわち、給油面12a,12bよりも表面開口率が低減された摺動基準面221が形成される。そして、高低差d11が摺動面11の内径Diの1%以上1.5%以下に形成された給油面12a,12bと摺動面11とを備える焼結軸受基体22が形成される。なお、摺動基準面221の表面全体に摺動面11が形成されることから、軸受孔10の内周面全体の面積を1としたときに、摺動面11の面積比率aは0.2以上0.98以下に設けられる。
なお、矯正工程では、摺動基準面221の表面開口率を10%以下に低減することが望ましい。予め緻密な摺動基準面221を形成しておくことで、摺動面11に占める焼結体の素地面の割合を大きくでき、摺動面11の強度を高く維持できる。また、潤滑剤分布工程(S13)において、摺動面11の表面開口率を低減することが容易になる。
(潤滑剤分布工程)
潤滑剤分布工程(S13)では、摺動基準面221に固体潤滑剤15を塗布して、摺動基準面221に固体潤滑剤15が3%以上20%以下の面積率で分布された摺動面11を形成する。そして、摺動面11における表面開口率を9%以下、好ましくは6%以下に形成する。
具体的には、エタノール等の溶媒に固体潤滑剤15を分散させた分散液を、例えば0.6mg/cmの割合で摺動基準面221に塗布し、乾燥させる。分散液の塗布は、例えばスプレー方式やスピンコート方式により行うことができる。そして、図10に示すように、摺動基準面221に係合可能な外周面711を有する軸棒70を軸受孔10に挿入し、この軸棒70を軸受孔10内で軸回りに回転させる。これにより、固体潤滑剤15を摺動基準面221に開口する空孔14内になじませ、空孔14の一部を封孔することにより、摺動基準面221に固体潤滑剤15を3%以上20%以下の面積率で分布させ、摺動面11における表面開口率を9%以下、好ましくは6%以下に形成する。
また、潤滑剤分布工程(S13)では、軸棒70を軸受孔10内で回転させることにより、固体潤滑剤15を摺動基準面221に開口する空孔14を通じて内部の空孔14にまで押し込むことができる。このため、摺動面11から内部に向けた適宜の深さ範囲に、摺動面11と同じ面積率で固体潤滑剤15が分布された潤滑層13を形成できる。この際、余分な固体潤滑剤15は、軸棒70によりこぞぎ落とされ、除去される。
なお、潤滑剤分布工程(S13)において、給油面12a,12bに固体潤滑剤15が付着し、表面に開口する空孔14を封孔することがあっても、その付着量は少量であり、給油面12a,12bの表面開口率を10%を超え40%未満の範囲に確保することで、軸30と摺動面11との摺動時において、給油面12a,12bから円滑に油を供給できる。また、軸棒70は、摺動基準面221のみに接触し、給油面12a,12bには接触しないことから、固体潤滑剤15が給油面12a,12bに付着することがあっても、給油面12a,12bから容易に脱落しやすく、給油面12a,12bから軸30と摺動面11との間への油の供給を阻害することはない。
なお、摺動面11に固体潤滑剤15を分布させる方法としては、本実施形態のように分散液と軸棒70とを用いる方法に限定されるものではなく、他の方法を用いることもできる。例えば、図示は省略するが、予め表面に固体潤滑剤15が成膜された軸棒を用い、この軸棒を軸受孔10内で回転させることにより、固体潤滑剤15を摺動基準面221に塗布するとともに、固体潤滑剤15を空孔14内になじませ、摺動面11に分布させることができる。
最後に、潤滑油(油)が含浸され、図1及び図2に示す焼結含油軸受101が製造される。なお、潤滑油は、矯正工程(S12)と潤滑剤塗布工程(S13)との間で、焼結軸受基体22に含浸させるようにしてもよい。また、矯正工程(S12)を実施しない場合には、基体形成工程(S11)と潤滑剤塗布工程(S13)との間で、焼結軸受基体22に含浸させるようにしてもよい。
このようにして製造した焼結含油軸受101は、摺動面11に固体潤滑剤15が3%以上20%以下の面積率で分布されているので、軸30と摺動面11との摺動初期において、摺動面11に露出する固体潤滑剤15が軸30と摺動面11との間に存在することにより、軸30と摺動面11との初期なじみ性を向上でき、摩擦抵抗を低減できる。また、この焼結含油軸受101においては、摺動時において表面開口率が10%を超える給油面12a,12bから油が浸みだして軸30と摺動面11との間に導かれ、表面開口率が9%以下の摺動面11において軸30との間に十分な油膜を形成できるので、摺動時の摩擦抵抗を低減でき、軸受としての摺動特性を向上できる。
なお、摺動面11における固体潤滑剤15の面積率が3%未満では、固体潤滑剤が不足して、固体潤滑剤15を分布させたことによる軸30と摺動面11との初期なじみ性を十分に向上させることが難しくなり、耐面圧値を向上させることも難しくなる。一方、摺動面11における固体潤滑剤15の面積率が20%を超えると、摺動面11に占める焼結体の素地面が少なくなることで強度が低下し、摩耗を促進させるおそれがある。
また、軸30を支持する摺動面11の表面開口率が9%を超えていると、高速・高荷重の環境では、軸30との間に油を十分に保持できずに摺動面11から軸受内部に油を流入させるおそれがある。また、給油面12a,12bの表面開口率が10%以下であると、軸受内部から軸30と摺動面11との間に油を十分に供給することが困難になる。このため、軸30と摺動面11との間の油膜が少なくなり、焼付きが生じやすくなるため、耐面圧を低下させるおそれがある。また、給油面12a,12bの表面開口率が40%以上になると、給油面12a,12bから軸30と摺動面11との間に油を円滑に供給することが難しくなる。
なお、本発明は前記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、図1及び図2に示される焼結含油軸受101では、給油面12aを全て同じ直径、同じ幅(同じ面積)に設定したが、異なる面積の給油面が混在するように分散させてもよい。また、給油面を軸受孔の軸心を中心とする螺旋状に形成する等、給油面の形状は特に限定されるものではなく、任意の形状で形成することができる。
また、前記実施形態では、基体形成工程(S11)と潤滑剤分布工程(S13)との間に矯正工程(S12)を実施したが、矯正工程(S12)は必須の要件ではない。基体形成工程後に矯正工程を実施することなく潤滑剤分布工程を実施し、固体潤滑剤の塗布量を調整することにより、摺動面11における表面開口率を調整してもよい。
本発明の効果を実証するために行った試験結果について説明する。
試験には、原料粉末として鉄、銅、錫、黒鉛等を混合した鉄銅系粉末を用いた。鉄銅系粉末からなる原料粉末は、銅粉が50質量%、錫粉が2質量%、銅‐8質量%リン粉が5質量%、銅‐亜鉛粉が10質量%、黒鉛等の固体潤滑剤が0.5質量%、そして残部を鉄粉として調整した。また、そのうち銅粉については、アスペクト比が10以上で最大直径が1μm以上100μm以下の扁平粉末と、平均粒径5μm以上100μm以下の粒状粉末とを混合したものを用い、銅粉中の偏平粉の混合比率を25質量%とした。また、鉄粉の平均粒径は、銅粉のうちの粒状粉末の平均粒径と同等以上であった。
そして、基体形成工程において原料粉末を150〜500MPaで圧縮成形して圧粉体を成形し、圧粉体を800〜950℃の温度で焼結して内周面に摺動基準面と給油面とを有する焼結軸受基体を形成した後、矯正工程を経て、軸受孔の内周面に高低差d11の摺動基準面と給油面とを形成した。また、試料1〜16ついては、矯正工程後に摺動基準面に黒鉛(固体潤滑剤)を塗布し、潤滑剤分布工程を実施することにより、摺動面における固体潤滑剤の面積率を調整した。一方、試料17ついては、矯正工程後に潤滑剤分布工程を実施することなく、矯正工程において形成した摺動基準面をそのまま摺動面とした。各試料1〜17固体潤滑剤の面積率は表1に示すとおりである。
各試料1〜17焼結含油軸受(以下、軸受と省略する。)の長さLは、いずれも8mmとした。また、摺動面の内径Diは、いずれも8mmとした。また、給油面は、表1に示す一個当りの幅、個数、高低差(深さ)d11で軸受孔の周方向に一定の幅で形成し、軸受孔の内周面の給油面以外の部分に摺動面を形成した。摺動面の面積比率aは表1に示す通りとした。なお、表1では、高低差d11は、摺動面の内径Diに対する比率で記載した。
また、表1の軸受孔の内周面全体に対する摺動面の面積比率a、摺動面と給油面との高低差d11は、軸受孔の内周面をコントレーサーにより測定した。また、摺動面及び給油面のそれぞれの表面開口率及び固体潤滑剤の面積率は、軸受の摺動面と給油面とのそれぞれについて倍率500倍のSEM像(SEI、COMPO)を撮影し、その写真を画像解析ソフトで2値化して開口部、固体潤滑剤をそれぞれ抽出し、開口部の面積率(表面開口率)及び固体潤滑剤の面積率を計測するとともに、直径5μm以上の大きさの固体潤滑剤の単位面積当たりの個数(個/mm)を求めた。これらの計測における各軸受の摺動面と給油面との撮影箇所は、条件の異なる軸受毎に5個の試料(軸受)を用意し、各軸受の摺動面と給油面とについてそれぞれ5視野とした。そして、それぞれ25か所の撮影箇所の計測結果の平均値を表面開口率、固体潤滑剤の面積率、固体潤滑剤の分布数(単位面積当たりの個数)とした。
また、得られた軸受に潤滑油を含浸させた後、軸受孔にSUJ2焼き入れ品からなる軸を挿入して、摩耗試験を実施した。摩耗試験は、常温(25℃)から開始で実施し、軸心に直交する垂直方向にラジアル荷重(負荷面圧P)を付与した状態で周速度V(8000rpm)を一定として軸を回転させ、負荷面圧Pを1MPaから一定時間(20分)毎に1MPaずつ段階的に昇圧させた際に、軸受が焼付いて摩擦係数が急激に上昇したり、摩耗や異音の発生が確認された時点の負荷面圧P(MPa)を計測した。そして、この負荷面圧Pの最大値と周速度V(m/min)との積から限界PV値を算出した。結果を表2に示す。
Figure 0006948251
Figure 0006948251
表1及び表2の結果から、摺動面に固体潤滑剤が3%以上20%以下の面積率で分布され、摺動面における表面開口率が9%以下で、給油面における表面開口率が10%を超え40%未満とされる試料1〜12については、摺動初期において焼付きが生じることもなく、上記範囲外の試料13〜17と比較して限界PV値を高くできることがわかる。また、試料1〜12の中でも、摺動面の面積比率aが0.2以上0.98以下とされ、直径5μm以上の大きさの固体潤滑剤の分布数が200個/mm以上とされる試料1〜7は特に限界PV値が高くなり、高荷重環境での軸受特性に優れることがわかる。
10 軸受孔
11,11a,11b 摺動面
12,12a,12b 給油面
13 潤滑層
14 空孔
15 固体潤滑剤
21 圧粉体
22 焼結軸受基体
30 軸
50 成形用金型
51 成形用ダイプレート
52 成形用コアロッド
53 成形用下パンチ
54 成形用上パンチ
55 円筒状空間
60 矯正用金型
61 矯正用ダイプレート
62 矯正用コアロッド
63 矯正用下パンチ
64 矯正用上パンチ
70 軸棒
101,102 焼結含油軸受(軸受)
211 凸面
212a,212b 凹面
221 摺動基準面

Claims (8)

  1. 軸が挿入される軸受孔の内周面に、前記軸の外周面を支持する摺動面と、前記摺動面に隣接し該摺動面よりも径方向外側に配置された給油面と、を有し、
    前記摺動面に固体潤滑剤が3%以上20%以下の面積率で分布されており、
    前記摺動面の全体における表面開口率が9%以下であり、前記給油面における表面開口率が10%を超え40%未満であることを特徴とする焼結含油軸受。
  2. 前記摺動面における前記固体潤滑剤の分布状態は、直径5μm以上の大きさの前記固体潤滑剤が200個/mm以上で分布されていることを特徴とする請求項1に記載の焼結含油軸受。
  3. 前記摺動面から内部に少なくとも10μmまでの深さ範囲に、前記摺動面と同じ面積率で前記固体潤滑剤が分布された潤滑層が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の焼結含油軸受。
  4. 前記軸受孔の内周面全体の面積を1としたときに、前記摺動面の面積比率をaとすると、前記面積比率aが0.2以上0.98以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の焼結含油軸受。
  5. 前記固体潤滑剤は、黒鉛、フッ化黒鉛、二硫化モリブデン、PTFE、窒化ホウ素、フッ化カルシウム、タルクのいずれかであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の焼結含油軸受。
  6. 原料粉末を加圧成形した圧粉体を焼結して、軸が挿入される軸受孔の内周面に前記軸の外周面を支持する摺動基準面と、該摺動基準面に隣接して該摺動基準面よりも径方向外側に配置された給油面と、を有する焼結軸受基体を形成する基体形成工程と、
    前記摺動基準面に固体潤滑剤を塗布して前記摺動基準面に前記固体潤滑剤が分布された摺動面を形成する潤滑剤分布工程と、を有し、
    前記基体形成工程において前記給油面の表面開口率を10%を超え40%未満に形成し、
    前記潤滑剤分布工程において、前記摺動基準面に前記固体潤滑剤を3%以上20%以下の面積率で分布させて、前記摺動面の全体における表面開口率を9%以下に形成することを特徴とする焼結含油軸受の製造方法。
  7. 前記基体形成工程と前記潤滑剤分布工程との間に、前記焼結軸受基体を加圧して寸法矯正することにより、前記摺動基準面の表面開口率を低減する矯正工程を有することを特徴とする請求項6に記載の焼結含油軸受の製造方法。
  8. 前記矯正工程において、前記摺動基準面の表面開口率を9%以下に低減することを特徴とする請求項7に記載の焼結含油軸受の製造方法。
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