JP6947442B2 - 透析排水処理システム - Google Patents
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Description
これは、使用済みの透析液には、患者の血液中の老廃物や余分な水分、電解質が含まれるため、透析液の移動経路となる装置内配管や透析膜等にタンパク質や細菌等の汚染物質が付着して、透析膜が透析機能を低下させたり、透析膜を介して患者の血液が細菌などで汚染されるおそれがあるためである。また、血中濃度を調整するために透析液に含まれるカルシウムが透析装置内に沈着して、透析装置の誤作動を引き起こすおそれがあるためである。
こうした透析装置の除菌、洗浄等には、塩酸、酢酸等の酸水溶液や、次亜塩素酸ナトリウム等のアルカリ水溶液が用いられる。
この透析排水基準(2019年版)によると、透析排水の水素イオン指数(pH)は、5を超え9未満となることが定められている。
特許文献1に記載されている中和処理装置は、酸性廃液専用の酸性貯液槽と、アルカリ性廃液専用のアルカリ性貯液槽とを備えることで、酸性廃液を受け入れる貯液槽とアルカリ性廃液を受け入れる貯液槽が同じであることにより有毒の塩素ガスが発生する危険を回避するものである。
特許文献3に記載されている中和処理装置は、水に溶解して酸性またはアルカリ性を呈する粒状物からなる中和剤が充填された簀子板の上に、透析機器の洗浄排水を散水して流下させて、中和処理するものである。
特許文献4に記載されている排水処理装置は、酢酸による洗浄を採用した場合に生じる酸洗浄排水を、破砕石灰石を充填した縦型筒状容器を複数個直列に連結してなる中和処理装置内に送液して、中和処理するものである。
また、特許文献2−4に記載されている中和処理装置のように、固形中和剤を用いて中和処理する構成とした場合には、充填された固形中和剤に汚染物質が次第に付着、堆積して目詰まりを起こすため、固形中和剤を定期的に交換する等のメンテナンス作業が必要となる。
また、本発明の透析排水処理システムによれば、薬液の透析液供給路への導入の開始および停止のタイミングを、中和液の排水ラインへの供給の開始および停止を知らせる中和動作信号を受信して決定することにより、また、中和液の排水ラインへの供給の開始および停止のタイミングを、薬液の透析液供給路への導入の開始および停止を知らせる洗浄動作信号を受信して決定することにより、薬液の透析液供給路への導入および中和液の排水ラインへの供給について、特定の開始時間および停止時間を事前に設定することを要しないため、設定時間に基づいて、自動的かつ任意に、薬液の透析液供給路への導入の開始および停止、ならびに、中和液の排水ラインへの供給の開始および停止を実行することができる。
なお、以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。
まず、本発明の一実施形態に係る透析排水処理システムの概要図である図1を用いて、本発明の一実施形態である透析排水処理システム1について説明する。
透析監視装置200には、ダイアライザー230が着脱交換自在に装着される。
透析患者Pは、ダイアライザー230を介して血液透析を受ける。
RO水生成装置500は、透析液供給装置100にRO水供給路Aを介して接続されている。
透析液溶解装置600は、RO水生成装置500に別のRO水供給路Aを介して接続されると共に、透析液供給装置100に透析原液供給路Bを介して接続されている。
次に、本発明の一実施形態に係る透析排水処理システムの機能的構成を示すブロック図である図2を用いて、本発明の一実施形態である透析排水処理システム1の機能的構成について説明する。
まず、透析排水処理システム1を構成しない、RO水生成装置500および透析液溶解装置600についても言及しつつ、透析液の供給プロセスを順に追って、透析排水処理システム1の各構成について説明する。
RO水生成装置500は、水道水等の原水から逆浸透(Reverse Osmosis)法で不純物を除去し、透析液の調製に用いられる純度・洗浄度の高い水(RO水)を生成する装置である。
RO水生成装置500は、生成したRO水を、2系統のRO水供給路Aの一方を介して透析液供給装置100に、他方を介して透析液溶解装置600に供給する。
透析液溶解装置600は、粉末の透析剤であるA剤601およびB剤602を、其々、RO水で溶解して透析原液を作成する装置である。
透析液溶解装置600は、作成した透析原液を、透析原液供給路Bを介して透析液供給装置100に供給する。
各装置で作成された透析原液は、A液およびB液として、未だ混合されることなく、個別に透析液溶解装置600に供給される。
なお、透析剤は、上述のような粉末としてのみならず、当初から液体、すなわち透析原液としても販売されており、液体の透析剤を使用する場合、透析液溶解装置600を要しない。
透析液供給装置100は、透析液調製部110と、透析液送出部120と、薬液調製部130と、薬液送出部140と、制御部150とからなる。
また、透析液供給装置100は、RO水供給路Aを介してRO水生成装置500に接続され、RO水の供給を受ける。
そして、透析液供給装置100は、透析原液供給路Bを介して透析液溶解装置600に接続され、透析原液の供給を受ける。
さらに、透析液供給装置100は、薬液供給路Dを介して薬液タンク160と接続され、後述する薬液の供給を受ける。
透析液送出部120は、ポンプ等により構成され、透析液調製部110で調製した透析液を、透析液供給路Cを通じて後述する透析監視装置200に送り出す。
薬液送出部140は、ポンプ等により構成され、薬液調製部130で調製した薬液を、透析液調製部110および透析液送出部120を介し、透析液供給路Cを通じて後述する透析監視装置200に送り出す。
メモリ152は、透析液調製部110、透析液送出部120、薬液調製部130および薬液送出部140に対する動作指令をプログラムとして記憶すると共に、この動作指令を、システム時刻および以下に述べるタイマー153が計測する経過時間に基づいて実行するためのタイムテーブルを記憶する。
通信部(透析液供給装置通信部)154は、CPU151によって制御され、薬液送出部140から透析液供給路Cへ薬液の導入が開始されたこと、および、停止されたことを通知する洗浄動作信号Fを、後述する透析排水処理装置400の通信部(透析排水処理装置通信部)424に有線または無線で送信する。
また、通信部154は、後述する透析排水処理装置400の中和液送出部410から排水ライン300へ中和液の供給が開始されたこと、および、停止されたことを通知する中和動作信号Gを、後述する透析排水処理装置400の通信部(透析排水処理装置通信部)424から有線または無線で受信する。
薬液タンク160は、透析液供給路Cを含む、透析液の移動経路を洗浄する薬液を貯蔵する。
ここで、透析液の移動経路には、透析液供給装置100の内部の配管や機器(すなわち、透析液調製部110および透析液送出部120)、および、後述する透析監視装置200の内部の配管が含まれる。
酸性洗浄液161は、主に装置内配管等の炭酸カルシウム等(いわゆるスケール)の除去(広義の「洗浄」に含まれる。)に用いられる。
アルカリ性洗浄液162は、主に装置内配管等のタンパク質の除去(狭義の「洗浄」に該当する。)に用いられる。以降、次亜塩素酸ナトリウムを単に「次亜」と、次亜系洗浄剤を単に「次亜系」とも称する。
また、別途、専用装置で希塩酸もしくは酢酸と次亜塩素酸ナトリウムを混合し、必要に応じてRO水で希釈して、5.0〜7.0付近の弱酸性域の水素イオン指数(pH)に調整した弱酸性次亜塩素酸水溶液は、装置内配管等の除菌に用いられる。
なお、薬液タンク160および薬液供給路Dは、透析液供給装置100の一部として構成されてもよい。
また、透析液供給装置100の薬液調製部130、薬液送出部140および制御部150の一部に係る構成と薬液タンク160とを、透析液の移動経路の洗浄に係る別の専用装置とすることもできる。
この専用装置は、例えば、RO水生成装置500と透析液供給装置100とを接続するRO水供給路A上に設けられ、RO水の供給を受けると共に、調製した薬液を透析液供給装置100に送り出す。
透析監視装置200は、透析患者Pに血液透析を行う際に、透析液流量、温度及び静脈圧等をモニタする装置である。
透析監視装置200には、ダイアライザー230が着脱交換自在に装着される。
ダイアライザー230は、腎臓の糸球体と同じ働きをする一種の浄化器であり、透析患者Pの血液中の老廃物や余分な水分、電解質を、透析液供給装置100から供給される透析液に移すとともに、透析液から不足している電解質などを透析患者Pの血液に補充する。
なお、本図では、透析監視装置200を1台のみ示すが、実際には、透析監視装置200は、透析施設の規模により、透析患者Pごとに複数台設置されている。
また、透析監視装置200は、透析液供給路Cを介して透析液供給装置100に接続され、透析液の供給を受けると共に、透析液の移動経路を洗浄する薬液の供給を受ける。
そして、透析監視装置200は、使用済みの透析液を、後述するように排液として排水ライン300に排出する。
さらに、透析監視装置200は、透析液の移動経路を洗浄した薬液を含む排液を、排水ライン300に排出する。
メモリ222は、電磁弁機構210に対する動作指令をプログラムとして記憶する。
まず、透析患者Pの腕の血管に、すなわち動脈側の血液を取る側(脱血)と静脈側の血液を返す側(返血)とに2本の針を刺し、各血管と筒状のダイアライザー230の各端部との間をチューブでつなぐ。
そして、動脈側のチューブの途中に設けられた図示しない血液ポンプにより、透析患者Pの体内から血液(浄化前血液)を取り出し、ダイアライザー230の一端に送る。
ダイアライザー230の一端に入った血液は、この透析膜の内側を流れ、透析液により浄化された後、ダイアライザー230の他端から出る。
最後に、ダイアライザー230の他端から出た血液(浄化後血液)は、静脈側のチューブを通じて、透析患者Pの体内に戻される。
この一連の流れが循環して行われ、透析患者Pの血液中の老廃物や余分な水分、電解質を含む使用済みの透析液は、排液として排水ライン300に排出される。
なお、1回の血液透析にかかる時間は、約4〜5時間であり、血液透析は、一般に週3回行われる。
透析排水処理装置400は、中和液送出部410と、制御部420とからなる。
また、透析排水処理装置400は、中和液供給路Eを介して中和液タンク430と接続され、後述する中和液の供給を受ける。
なお、中和液送出部410が中和液を排水ライン300に供給する位置は、図上、排水ライン300の末端付近に設定されているが、透析監視装置200からの排液が排出される位置よりも、あるいは、更に透析液供給装置100からの排液が排出される位置よりも上流に、すなわちRO水生成装置500により近い位置に設定されてもよい。
メモリ422は、中和液送出部410に対する動作指令をプログラムとして記憶すると共に、この動作指令を、システム時刻および以下に述べるタイマー423が計測する経過時間に基づいて実行するためのタイムテーブルを記憶する。
通信部(透析排水処理装置通信部)424は、CPU421によって制御され、透析液供給装置100の薬液送出部140から透析液供給路Cへ薬液の導入が開始されたこと、および、停止されたことを通知する洗浄動作信号Fを、透析液供給装置100の通信部(透析液供給装置通信部)154から有線または無線で受信する。
また、通信部424は、中和液送出部410から排水ライン300へ中和液の供給が開始されたこと、および、停止されたことを通知する中和動作信号Gを、透析液供給装置100の通信部(透析液供給装置通信部)154に有線または無線で送信する。
中和液タンク430は、上記の透析液の移動経路を洗浄する薬液を含む排液を、所定範囲の水素イオン指数(pH)に中和する中和液を貯蔵する。
この排液には、透析液供給装置100から排水ライン300に排出される余剰のRO水、および、透析監視装置200から排水ライン300に排出される透析患者Pの血液を浄化した透析液が含まれる。
すなわち、排水ライン300に排出された排液が、酸性洗浄液161を含むものであるときはアルカリ剤432が、アルカリ性洗浄液162を含むものであるときは酸剤431が用いられる。
なお、中和液タンク430および中和液供給路Eは、透析排水処理装置400の一部として構成されてもよい。
次に、本発明の一実施形態に係る透析排水処理システムを構成する透析液供給装置による透析液の移動経路の洗浄パターンの一例である図3を用いて、透析液供給装置100による透析液の移動経路の洗浄パターンおよび併せて行われる透析排水処理装置400による排水の中和処理について説明する。
ここで、透析施設は、例えば、1週間中、昼休みを挟んで朝と夜に週3日ほど、残りの日は朝のみ、透析患者Pに血液透析を実施する。
以下に述べる洗浄パターンは、このような洗浄プログラムの下で行われるものの一例である。
また、各洗浄パターンの直下に、其々の上記イベントの流れと並行して、透析排水処理装置400から排水ライン300に供給される中和液の量の経時的変化を示す。ここで、中和液の量の増減は、垂直方向の変化として示す。
「洗浄」とは、透析液の移動経路におけるタンパク質を除去することを意味する。
また、「除菌」とは、透析液の移動経路における細菌等の有害微生物を除去することを意味する。
まず、透析液供給装置100は、血液透析(「透析」)の終了後に、RO水生成装置500から供給されるRO水を用いて、60分の間、透析液の移動経路を下洗い(「水洗」)する。
その後、透析液供給装置100は、RO水生成装置500から供給されるRO水を、60分の間、透析液の移動経路に導入する(「水洗」)。
また、透析排水処理装置400は、供給する中和液(酸剤431)の量を段階的に増やして、透析液の移動経路を洗浄(兼除菌)したアルカリ性洗浄液162を含む排液を中和するために必要な一定量にまで達した後、暫く、同量による供給を継続する。
そして、透析排水処理装置400は、アルカリ性洗浄液162(「次亜」)による洗浄(兼除菌)の終了後、「水洗」が開始されると、今度は供給する中和液(酸剤431)の量を段階的に減らしていき、最終的に供給量をゼロとする。
透析監視装置200において、薬液の貯留の開始および停止は、通信部(透析監視装置通信部)223が貯留制御信号Hを受信することで行われる。
そして、次の血液透析(「透析」)が再開される。
また、本発明の一実施形態に係る透析排水処理システム1において、薬液の透析液供給路Cへの導入を停止する「薬液停止タイミング」に対応するのは、本洗浄パターンの「次亜」による洗浄(兼除菌)の40分間の終了点であり、図上、T1−2で示す。
「スケール除去」とは、透析液の移動経路における炭酸カルシウム等(いわゆるスケール)を除去することを意味する。
ここで、「スケール除去」は、広義の「洗浄」に含まれるが、ここでは、上述のタンパク質の除去(狭義の「洗浄」)と区別して、「スケール除去」と呼ぶ。
本洗浄パターンの最初の「透析」および「水洗」の説明は、上述の通りであるので省略する。
その後、透析液供給装置100は、RO水生成装置500から供給されるRO水を、60分の間、透析液の移動経路に導入する。
また、透析排水処理装置400は、供給する中和液(アルカリ剤432)の量を段階的に増やして、透析液の移動経路を洗浄した酸性洗浄液161を含む排液を中和するために必要な一定量にまで達した後、暫く、同量による供給を継続する。
そして、透析排水処理装置400は、酸性洗浄液161(「酢酸」)による洗浄の終了後、「水洗」が開始されると、今度は供給する中和液(アルカリ剤432)の量を段階的に減らしていき、最終的に供給量をゼロとする。
また、本発明の一実施形態に係る透析排水処理システム1において、薬液の透析液供給路Cへの導入を停止する「薬液停止タイミング」に対応するのは、本洗浄パターンの「酢酸」によるスケール除去の40分間の終了点および「次亜」による洗浄(兼除菌)の40分間の終了点であり、其々、図上、T2−2、T2−4で示す。
次に、本発明の一実施形態に係る透析排水処理システムを構成する透析液供給装置による透析液の移動経路の洗浄パターンの別の一例である図4を用いて、透析液供給装置100による透析液の移動経路の洗浄パターンおよび併せて行われる透析排水処理装置400による排水の中和処理について説明する。
ここで、透析施設は、例えば、1週間中、昼休みを挟んで朝と夜に週3日ほど、残りの日は朝のみ、透析患者Pに血液透析を実施する。
以下に述べる洗浄パターンは、このような洗浄プログラムの下で行われるものの一例である。
また、各洗浄パターンの直下に、其々の上記イベントの流れと並行して、透析排水処理装置400から排水ライン300に供給される中和液の量の経時的変化を示す。ここで、中和液の量の増減は、垂直方向の変化として示す。
「洗浄」および「除菌」の説明は、上述の通りであるので省略する。
まず、透析液供給装置100は、血液透析(「透析」)の終了後に、RO水生成装置500から供給されるRO水を用いて、60分の間、透析液の移動経路を下洗い(「水洗」)する。
また、透析排水処理装置400は、供給する中和液(酸剤431)の量を段階的に増やして、透析液の移動経路を洗浄(兼除菌)したアルカリ性洗浄液162を含む排液を中和するために必要な一定量にまで達した後、暫く、同量による供給を継続する。
そして、透析排水処理装置400は、アルカリ性洗浄液162(「次亜系」)による洗浄(兼除菌)の終了にあわせて、供給する中和液(酸剤431)の量をゼロとする。
ここで、透析監視装置200において、薬液の貯留の開始および停止は、通信部(透析監視装置通信部)223が貯留制御信号Hを受信することで行われる。
透析排水処理装置400は、透析液供給装置100から貯留動作信号Iを受信して、透析監視装置200における薬液の貯留の停止に伴う「水洗」の開始にあわせて、中和液(酸剤431)の排水ライン300への供給を再び開始する。
そして、透析排水処理装置400は、供給する中和液(酸剤431)の量を段階的に減らしていき、最終的に供給量をゼロとする。
そして、次の血液透析(「透析」)が再開される。
また、本発明の一実施形態に係る透析排水処理システム1において、薬液の透析液供給路Cへの導入を停止する「薬液停止タイミング」に対応するのは、本洗浄パターンの「次亜系」による洗浄の40分間の終了点であり、図上、T3−2で示す。
「スケール除去」および「除菌」の説明は、上述の通りであるので省略する。
本洗浄パターンの最初の「透析」および「水洗」の説明は、上述の通りであるので省略する。
また、透析排水処理装置400は、供給する中和液(アルカリ剤432)の量を段階的に増やして、透析液の移動経路を洗浄した酸性洗浄液161を含む排液を中和するために必要な一定量にまで達した後、暫く、同量による供給を継続する。
そして、透析排水処理装置400は、酸性洗浄液161(「過酢酸」)による洗浄の終了にあわせて、供給する中和液(アルカリ剤432)の量をゼロとする。
ここで、透析監視装置200において、薬液の貯留の開始および停止は、上述のように、通信部(透析監視装置通信部)223が貯留制御信号Hを受信することで行われる。
透析排水処理装置400は、透析液供給装置100から貯留動作信号Iを受信して、透析監視装置200における薬液の貯留の停止に伴う「水洗」の開始にあわせて、中和液(アルカリ剤432)の排水ライン300への供給を再び開始する。
そして、透析排水処理装置400は、供給する中和液(アルカリ剤432)の量を段階的に減らしていき、最終的に供給量をゼロとする。
そして、次の血液透析(「透析」)が再開される。
また、本発明の一実施形態に係る透析排水処理システム1において、薬液の透析液供給路Cへの導入を停止する「薬液停止タイミング」に対応するのは、本洗浄パターンの「過酢酸」による洗浄の40分間の終了点であり、図上、T4−2で示す。
透析液供給装置による薬液洗浄開始以降の排水ライン末端における水素イオン指数(pH)の経時変化を示す参考図である図5を用いて、薬液を含む排液を収集する排水ラインの末端における水素イオン指数(pH)の経時変化(参考例)について説明する。
この折れ線グラフ上で、透析液供給路に導入される薬液が次亜塩素酸ナトリウム(「次亜」)であるときの水素イオン指数(pH)の経時変化を、三角形のプロット(マーカー)付きの折れ線で示す。
図示するように、排水ラインの末端における水素イオン指数(pH)は、薬液導入タイミングから最初の3分間は、上述の透析排水基準に定められた、5を超え9未満の範囲に留まっている。
しかしながら、薬液導入タイミングから3分を経過して以降、水素イオン指数(pH)は、急激にアルカリ側に傾き、10に達している。
この折れ線グラフ上で、透析液供給路に導入される薬液が希塩酸(「塩酸」)であるときの水素イオン指数(pH)の経時変化を、四角形のプロット(マーカー)付きの折れ線で示す。
図示するように、排水ラインの末端における水素イオン指数(pH)は、薬液導入タイミングから最初の3分間は、透析排水基準に定められた、5を超え9未満の範囲に留まっている。
しかしながら、薬液導入タイミングから3分を経過して以降、水素イオン指数(pH)は、急激に酸側に傾き、2付近に達している。
本発明の一実施形態に係る透析排水処理システムを構成する透析排水処理装置が透析液供給装置による薬液洗浄開始と同時に中和液の供給を開始した際の排水ライン末端における水素イオン指数(pH)の経時変化を示す図6を用いて、本発明の一実施形態である透析排水処理システム1の透析排水処理装置400を用いて薬液を含む排液を排水ライン300上で中和する場合の排水ライン300の末端における水素イオン指数(pH)の経時変化(実施例)について説明する。
図示するように、排水ライン300の末端における水素イオン指数(pH)は、薬液導入タイミングと同時に排水ライン300に供給された中和液(アルカリ剤432)によって、一旦、急激に酸側からアルカリ側に傾いた後、8付近で暫く変動する。
本発明の一実施形態に係る透析排水処理システムを構成する透析液供給装置による薬液洗浄において、透析排水処理装置による排水の中和処理の有無が排水ライン末端における水素イオン指数(pH)の経時変化に与える影響を示す図7Aおよび図7Bを用いて、排水ライン末端における水素イオン指数(pH)の経時変化(実施例)を、薬液を含む排液を排水ライン上で中和する中和処理を行う場合と行わない場合とを比較して説明する。
なお、横軸に示す分単位の経過時間のゼロは、洗浄開始のタイミング(「薬液導入タイミング」)を示すものでなく、洗浄開始以降の任意の時間を起点として示すものである。
本実施例では、薬液として酸性洗浄液161である塩酸を用いている。
図7Aに示すように、排水ライン300の末端における水素イオン指数(pH)は、排水ライン300に中和液(アルカリ剤432)が供給されず中和処理が行われないとき(「中和処理なし」)、変動を繰り返しつつ幾度か5を下回り、透析排水基準の下限を逸脱している。
本実施例では、薬液としてアルカリ性洗浄液162である次亜塩素酸ナトリウムを用いている。
図7Bに示すように、排水ライン300の末端における水素イオン指数(pH)は、排水ライン300に中和液(酸剤431)が供給されず中和処理が行われないとき(「中和処理なし」)、変動を繰り返しつつ9を上回り、透析排水基準の上限を逸脱している。
透析排水処理装置400が、排水ライン300に中和液を供給するタイミングは、上記の図6に示す例では、薬液導入タイミングと、単に同時に設定されている。
しかし、薬液が排液に未だ含まれないタイミングで中和液を供給すると、中和液を無駄に消費するばかりでなく、中和液の水素イオン指数(pH)によっては、中和液により、排液が透析排水基準の範囲から逸脱するおそれもある。
そこで、透析排水処理装置400が排水ライン300に中和液を供給するタイミング(以下、「中和液供給タイミング」と呼ぶ。)は、例えば、以下のように設定することができる。
まず、排水ライン300上で、薬液を含む排液が透析液供給装置100から透析監視装置200を経由して排水ライン300に排出される位置(以下、「排液排出位置」と呼ぶ。)と、中和液が透析排水処理装置400から排水ライン300に供給される位置(以下、「中和液供給位置」と呼ぶ。)の位置関係を把握する。
そして、薬液が透析液供給路Cに導入されてから、薬液を含む排液が排水ライン300に排出されるまでの時間を、「排出所要時間」とする。
また、排水ライン300に排出された薬液を含む排液と、排水ライン300に供給された中和液とが合流するまでの時間を、「合流所要時間」とする。
排液排出位置と中和液供給位置とが一致する場合、合流所要時間はゼロとなる。
よって、透析排水処理装置400は、薬液導入タイミングから、排出所要時間に相当する設定時間を空けて、中和液を排水ライン300に供給する。
中和液供給位置が排液排出位置よりも排水ライン300の上流にある場合、排水ライン300に供給された中和液が排液排出位置に到達するまでの時間が、合流所要時間となる。
よって、排出所要時間の終了と合流所要時間の終了とが一致するように、薬液導入タイミングから一定の設定時間(ゼロ時間を含む。)を空けて、透析排水処理装置400は、中和液を排水ライン300に供給する。
つまり、薬液導入タイミング以降のみならず、薬液導入タイミングと同時に、または薬液導入タイミング以前から、透析排水処理装置400が、中和液を排水ライン300に供給する場合もあり得る。
中和液供給位置が排液排出位置よりも排水ライン300の下流にある場合、排水ライン300に排出された薬液を含む排液が中和液供給位置に到達するまでの時間が、合流所要時間となる。
よって、透析排水処理装置400は、薬液導入タイミングから、排出所要時間と合流所要時間との和に相当する設定時間を空けて、中和液を排水ライン300に供給する。
透析排水処理装置400が、排水ライン300に中和液を供給するのを一旦開始してから停止するタイミング(以下、「中和液停止タイミング」と呼ぶ。)は、例えば、以下のように設定することができる。
すなわち、まず、上述の予め設定された設定時間の経過後から、引き続き、透析液供給装置100が薬液を透析液供給路Cに導入する時間を把握する。
そして、上述の予め設定された設定時間の経過後から、この把握した時間に対応する一定の時間間隔を更に空けて、透析排水処理装置400に対して、中和液停止タイミングを設定する。
透析液供給装置100が通信部154を有し、透析排水処理装置400が通信部424を有する構成とすることによって、透析液供給装置100は透析液供給路Cへの薬液の導入の開始および停止を、透析排水処理装置400は排水ライン300への中和液の供給の開始および停止を、相互に制御することができる。
透析排水処理装置400による中和液の排水ライン300への供給の開始および停止、ならびに、透析液供給装置100による透析液供給路Cへの薬液の導入の開始および停止は、以下の制御手法によって、実行することができる。
薬液調製部130および薬液送出部140に対する動作指令のプログラムを実行するためのタイムテーブル、および、中和液送出部410に対する動作指令のプログラムを実行するためのタイムテーブルを、薬液導入タイミングから中和液供給タイミングまでの上述の予め設定された設定時間に基づいて作成する。
また、上記のタイムテーブルを、予め設定された設定時間の経過後から、薬液が透析液供給路Cに導入されていた時間に対応する一定の時間間隔を更に空けて、中和液停止タイミングを設定することにより作成する。
さらに、上記の各タイムテーブルと、透析液供給装置100および透析排水処理装置400のシステム時刻ならびに其々のタイマー153およびタイマー423が計測した経過時間とに基づいて、各動作指令のプログラムを実行する。
通信部(透析液供給装置通信部)154が、薬液の透析液供給路Cへの導入の開始および停止を通知する洗浄動作信号Fを、通信部(透析排水処理装置通信部)424に送信する。
そして、透析排水処理装置400が、この洗浄動作信号Fに応じて、中和液の排水ライン300への供給の開始および停止を制御する。
通信部(透析排水処理装置通信部)424が、中和液の排水ライン300への供給の開始および停止を通知する中和動作信号Gを、通信部(透析液供給装置通信部)154に送信する。
そして、透析排水処理装置400が、この中和動作信号Gに応じて、薬液の透析液供給路Cへの導入の開始および停止を制御する。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上記に限定されるものではない。
100… 透析液供給装置
110… 透析液調製部
120… 透析液送出部
130… 薬液調製部
140… 薬液送出部
150… 制御部
151… CPU
152… メモリ
153… タイマー
154… 通信部(透析液供給装置通信部)
160… 薬液タンク
161… 酸性洗浄液
162… アルカリ性洗浄液
200… 透析監視装置
210… 電磁弁機構
220… 制御部
221… CPU
222… メモリ
223… 通信部(透析監視装置通信部)
230… ダイアライザー
300… 排水ライン
400… 透析排水処理装置
410… 中和液送出部
420… 制御部
421… CPU
422… メモリ
423… タイマー
424… 通信部(透析排水処理装置通信部)
430… 中和液タンク
431… 酸剤
432… アルカリ剤
500… RO水生成装置
600… 透析液溶解装置
601… A剤
602… B剤
A … RO水供給路
B … 透析原液供給路
C … 透析液供給路
D … 薬液供給路
E … 中和液供給路
F … 洗浄動作信号
G … 中和動作信号
H … 貯留制御信号
I … 貯留動作信号
P … 透析患者
T1−1,T2−1,T2−3,T3−1,T4−1… 薬液導入タイミング
T1−2,T2−2,T2−4,T3−2,T4−2… 薬液停止タイミング
Claims (5)
- 透析液供給装置と、該透析液供給装置に透析液供給路を介して接続された透析監視装置と、前記透析液供給装置および前記透析監視装置に接続された排水ラインとからなる透析排水処理システムであって、
前記透析液供給装置が、透析液を調製する透析液調製部と、前記透析液を前記透析監視装置に供給する透析液送出部と、前記透析液供給路を含む前記透析液の移動経路を洗浄する薬液を調製する薬液調製部と、前記薬液を前記透析液調製部および前記透析液送出部を介して前記透析監視装置に導入する薬液送出部を有し、
前記透析監視装置が、前記透析液によって透析患者の血液を浄化し、
前記排水ラインが、前記透析液供給装置および前記透析監視装置から、前記透析患者の血液を浄化した前記透析液を含む排液を収集し、
前記薬液が前記透析液供給路に導入される薬液導入タイミングから予め設定された設定時間を空けて、前記薬液を含む前記排液を所定範囲の水素イオン指数(pH)に中和する中和液を前記排水ラインに供給する透析排水処理装置をさらに備え、
前記透析液供給装置が、前記薬液の前記透析液供給路への導入の開始および停止を通知する洗浄動作信号を前記透析排水処理装置に送信すると共に、該透析排水処理装置から前記中和液の前記排水ラインへの供給の開始および停止を通知する中和動作信号を受信する透析液供給装置通信部を有し、前記中和動作信号に応じて、前記薬液の前記透析液供給路への導入の開始および停止を制御し、
前記透析排水処理装置が、前記中和動作信号を前記透析液供給装置に送信すると共に、該透析液供給装置から前記洗浄動作信号を受信する透析排水処理装置通信部を有し、前記洗浄動作信号に応じて、前記中和液の前記排水ラインへの供給の開始および停止を制御する透析排水処理システム。 - 前記薬液が前記透析液供給路に導入されてから前記薬液を含む前記排液が前記排水ラインに排出されるまでの排出所要時間と、前記排水ラインに供給された前記中和液が前記薬液を含む前記排液と合流するまでの合流所要時間とに基づいて、前記設定時間が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の透析排水処理システム。
- 前記設定時間の経過後から、前記薬液が前記透析液供給路に導入されていた時間に対応する一定の時間間隔を更に空けて、前記透析排水処理装置が前記排水ラインへの前記中和液の供給を停止する中和液停止タイミングが設定されていることを特徴とする請求項2に記載の透析排水処理システム。
- 前記透析液供給装置通信部が、前記薬液の前記透析監視装置における貯留の開始および停止を制御する貯留制御信号を前記透析監視装置に送信すると共に、前記貯留の開始および停止を通知する貯留動作信号を前記透析排水処理装置に送信し、
前記透析監視装置が、前記透析液供給装置から前記貯留制御信号を受信する透析監視装置通信部を有し、前記貯留制御信号に応じて、前記貯留の開始および停止を制御し、
前記透析排水処理装置が、前記透析排水処理装置通信部を通じて前記貯留動作信号を受信し、該貯留動作信号に応じて、前記中和液の前記排水ラインへの供給の開始および停止を制御することを特徴とする請求項1に記載の透析排水処理システム。 - 前記透析排水処理装置が、前記中和液を前記排水ラインに供給する量を段階的に増減させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の透析排水処理システム。
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