JP6946626B2 - 金属張り積層板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属張り積層板の製造方法に関する。
従来、印刷配線板に使用される金属張り積層板の製造方法としては、シート状補強基材に熱硬化性樹脂を含浸又は塗工し、加熱等により熱硬化性樹脂を半硬化(Bステージ化)して製造されるプリプレグを所定の厚みになるよう複数枚重ね、その片側又は両側に金属箔を配置し、これらを主にステンレス製の鏡板で挟み、多段成形プレスでCステージ状態となるまで所定時間、温度及び圧力をかけて成形して得る方法が採用されている。該製造方法において、圧力分布を均一化する目的、熱盤の凹凸の影響を低減する目的、及び加熱圧縮の際の昇温速度の調整の目的で、通常、鏡板の外面(つまり金属箔とは反対側)にクッション材を配置する(特許文献1参照)。
特開2008−307886号公報
しかし、特許文献1に記載の様に、「クッション材/鏡板/金属箔/プリプレグ/金属箔/鏡板/クッション材」という構成で、熱盤で挟み込んで加熱圧縮して得られる金属張り積層板では、加熱圧縮をする成形工程において、プリプレグ中の樹脂の軟化、溶融又は硬化に伴う伸び又は収縮が起きる。一方で、鏡板、クッション材も材質特有の伸び又は収縮が発生する。このとき、成形時の圧縮によってこれらの伸び及び収縮が積層板内部の歪みとなって残留することが判明した。この歪みのことを残留歪みと称する。残留歪みは、例えば、配線板加工工程でのエッチング又は加熱によって開放されて反りとなって現われ、搬送性、密着性及び位置精度等が低下するという問題が生じる。
本発明の課題は、上記問題を解決し、成形中積層板の残留歪みを極小化し、仕上がり反り量及び加工時反り量の小さい金属張り積層板を製造する方法を提供することである。
本発明者らが検討を進めた結果、加熱加圧する工程において、成形中積層板と鏡板との熱膨張係数の差を特定範囲内とすることによって上記課題が解決することを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
本発明は、次の[1]〜[6]に関する。
[1]シート状補強基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸して得られたプリプレグの片側又は両側に金属箔を配置して成形中積層板を形成する工程と、該成形中積層板の両面を挟むように鏡板を配置して構成体を形成する工程と、該構成体を熱盤によって150〜250℃及び2〜5MPaの条件で加熱圧縮する工程とを含み、該成形中積層板と該鏡板との熱膨張係数の差が5ppm/℃以下である金属張り積層板の製造方法。
[2]前記加熱圧縮する工程において、前記構成体の外側に配置するクッション材と前記鏡板との間に樹脂シートを配置して加熱加圧成形する[1]に記載の金属張り積層板の製造方法。
[3]前記成形中積層板と前記樹脂シートとの熱膨張係数の差が5ppm/℃以下である[2]に記載の金属張り積層板の製造方法。
[4]前記成形中積層板の熱膨張係数が5〜20ppm/℃である、[1]〜[3]のいずれかに記載の金属張り積層板の製造方法。
[5]前記鏡板の熱膨張係数が8〜24ppm/℃である、[1]〜[4]のいずれかに記載の金属張り積層板の製造方法。
[6]前記鏡板の材質が、ステンレス鋼である[1]〜[5]のいずれかに記載の金属張り積層板の製造方法。
本発明によると、成形中積層板の残留歪みを極小化し、仕上がり反り量及び加工時反り量の小さい金属張り積層板を製造する方法を提供することができる。
本発明における金属張り積層板の製造方法において、熱盤間の材料配置の一例を示す概略図である。 金属張り積層板の製造方法において、樹脂シートがクッション材と鏡板との間に配置されている形態を示す概略図である。 金属張り積層板の製造方法において、樹脂シートがクッション材と鏡板との間に配置されていない形態を示す概略図である。
[金属張り積層板の製造方法]
本発明の金属張り積層板の製造方法について、図1を参照しながら説明する。
本発明の金属張り積層板の製造方法は、シート状補強基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸して得られたプリプレグの片側又は両側に金属箔を配置して成形中積層板1を形成する工程と、成形中積層板1の両面を挟むように鏡板2を配置して構成体10を形成する工程と、構成体10を熱盤によって150〜250℃及び2〜5MPaの条件で加熱圧縮する工程とを含む。
本発明の金属張り積層板の製造方法では、成形中積層板1と鏡板2との熱膨張係数の差が5ppm/℃以下である。
本発明の金属張り積層板の製造方法の加熱圧縮する工程は、1つ又は複数の構成体10の外側にクッション材3とキャリアプレート5を配置した後、熱盤6によって150〜250℃及び2〜5MPaの条件で、好ましくは0.5〜4時間、加熱圧縮する。
加熱温度は、160〜220℃であることが好ましく、160〜200℃であってもよい。圧力は、3〜5MPaであることが好ましく、3〜4MPaであってもよい。加圧方式に特に制限はなく、多段加圧方式であってもよい。また、加熱圧縮が終了したら、脱圧冷却してもよい。
また、本発明の金属張り積層板の製造方法は、加熱圧縮する工程において、構成体10の外側に配置するクッション材3と鏡板2との間に樹脂シート4を配置して加熱加圧成形することが好ましい。
(熱膨張係数の測定条件)
測定装置:熱機械測定装置「TMA2940」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)
測定モード:引張りモード
測定条件:30℃→250℃→30℃
荷重:0.2N
雰囲気:空気雰囲気
本明細書における熱膨張係数は、特に断りのない限りは上記方法によって求められたものである。
本発明者らの検討により、成形中積層板1と鏡板2との熱膨張係数の差を5ppm/℃以下にすることによって、反りの原因となる、加熱圧縮する際に蓄積される成形中積層板1の残留歪みが顕著に低減することが判明した。一方、この差が5ppm/℃を超えると、成形中積層板1の反りが顕著に大きくなる。この観点から、成形中積層板1と鏡板2との熱膨張係数の差は、4ppm/℃以下としてもよく、3.5ppm/℃以下としてもよい。
なお、成形中積層板1と鏡板2との熱膨張係数の差の下限値に特に制限はないが、0.5ppm/℃であることが好ましく、1.0ppm/℃であることがより好ましく、1.5ppm/℃であることがさらに好ましく、2.0ppm/℃であることが特に好ましい。
(成形中積層板)
成形中積層板1は、シート状補強基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸して得られたプリプレグの片側又は両側に金属箔を配置して得られる成形過程における積層板である。
成形中積層板1の熱膨張係数は、5〜20ppm/℃であることが好ましく、6〜19ppm/℃であることがより好ましく、7〜18ppm/℃であることがさらに好ましい。
<プリプレグ>
プリプレグは、熱硬化性樹脂組成物をシート状補強基材に含浸又は塗工し、加熱等により半硬化(Bステージ化)させて製造することができる。
プリプレグのシート状補強基材としては、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。シート状補強基材の材質としては、Eガラス、Dガラス、Sガラス及びQガラス等のガラス繊維等の無機物繊維;ポリイミド、ポリエステル及びテトラフルオロエチレン等の有機繊維;これらの混合物などが挙げられる。これらの中でも、無機物繊維及びガラス繊維を用いることが好ましい。これらのシート状補強基材は、例えば、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット又はサーフェシングマット等の形状を有する。なお、材質及び形状は、目的とする成形物の用途及び性能により選択され、1種を単独で使用してもよいし、必要に応じて、2種以上の材質及び形状を組み合わせることもできる。
熱硬化性樹脂組成物をシート状補強基材に含浸又は塗工させる方法としては、ホットメルト法、ソルベント法が挙げられる。
シート状補強基材の厚さは特に制限されないが、10〜400μmであることが好ましく、10〜200μmであることがより好ましく、50〜150μmであることがさらに好ましい。
シート状補強基材に対する熱硬化性樹脂組成物の付着量が、乾燥後のプリプレグの樹脂含有率(つまり熱硬化性樹脂組成物由来の固形分含有量)が20〜90質量%(20〜70質量%であることが好ましく、30〜60質量%であることがさらに好ましい。)となるように、シート状補強基材に含浸又は塗工した後、通常、100〜200℃の温度で1〜30分加熱乾燥し、半硬化(Bステージ化)させて、本発明のプリプレグを得ることができる。
プリプレグは、1枚で用いる、又は2枚以上(2〜20枚であってもよい。)を重ね合わせて用いる。
熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含有する。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、シアネート樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、トリアジン環を有する熱硬化性樹脂等が挙げられる。これらの中でも、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂を用いることが好ましい。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であってもよい。該ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、一部が臭素化された、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂であってもよい。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、100〜500g/eqであることが好ましく、120〜400g/eqでることがより好ましく、140〜300g/eqであることがさらに好ましい。ここで、エポキシ当量は、エポキシ基あたりの樹脂の質量(g/eq)であり、JIS K 7236に規定された方法に従って測定することができる。具体的には、自動滴定装置「GT−200型」(株式会社三菱化学アナリテック製)を用いて、200mlビーカーにエポキシ樹脂2gを秤量し、メチルエチルケトン90mlを滴下し、超音波洗浄器溶解後、氷酢酸10ml及び臭化セチルトリメチルアンモニウム1.5gを添加し、0.1mol/Lの過塩素酸/酢酸溶液で滴定することにより求められる。
フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂であってもよい。フェノール樹脂の水酸基当量は、50〜300g/eqであることが好ましく、70〜200g/eqであることがより好ましく、70〜150g/eqであることがさらに好ましい。
熱硬化性樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
熱硬化性樹脂組成物中の熱硬化性樹脂の含有量は、40〜90質量%であることが好ましく、40〜85質量%であることがより好ましく、50〜85質量%であることがさらに好ましく、55〜85質量%であることが特に好ましい。
熱硬化性樹脂組成物は、無機充填材を含有することもでき、また、無機充填材を含有していてもよい。無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム等が挙げられる。これらの中でも、水酸化アルミニウムを用いることが好ましい。
無機充填材は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
熱硬化性樹脂組成物にける無機充填材の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、0〜300質量部であることが好ましく、20〜150質量部であることがより好ましく、30〜120質量部であることがさらに好ましく、50〜100質量部であることが特に好ましい。
熱硬化性樹脂組成物は、その他の添加剤、例えば、硬化剤、硬化促進剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、密着性向上剤、有機充填材等を含有していてもよい。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。特に、熱硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤を含有していることが好ましい。
硬化促進剤は、例えば、エポキシ樹脂の硬化促進剤として、イミダゾール化合物及びその誘導体、有機リン系化合物、第二級アミン類、第三級アミン類、第四級アンモニウム塩等が挙げられる。これらの中でも、イミダゾール化合物及びその誘導体を用いることが好ましい。
イミダゾール化合物及びその誘導体の具体例としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−1−メチルイミダゾール、1,2−ジエチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、4−エチル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1’)]エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−エチル−4'−メチルイミダゾリル−(1’)]エチル−s−トリアジン等のイミダゾール化合物;上記イミダゾール化合物のトリメリト酸付加体;上記イミダゾール化合物のイソシアヌル酸付加体;上記イミダゾール化合物の臭化水素酸付加体などが挙げられる。これらの中でも、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールであることが好ましく、2−エチル−4−メチルイミダゾールであることがより好ましい。
硬化促進剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
熱硬化性樹脂組成物における硬化促進剤の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、0〜7質量部であることが好ましく、0〜5質量部であることがより好ましく、0.01〜3質量部であることがさらに好ましく、0.05〜1.5質量部であることが特に好ましい。
熱硬化性樹脂組成物は、希釈することによって取り扱いを容易にするという観点及び後述するプリプレグを製造し易くする観点から、有機溶剤を含有させてワニスの状態とすることが好ましい。
有機溶剤としては、特に制限されないが、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリドン等のアミド系溶剤を含む、窒素原子含有溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤を含む硫黄原子含有溶剤;γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤を含むエステル系溶剤などが挙げられる。
これらの中でも、溶解性の観点から、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、窒素原子含有溶剤であることが好ましく、ケトン系溶剤であることがより好ましく、メチルエチルケトンであることがさらに好ましい。
有機溶剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
熱硬化性樹脂組成物における有機溶剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の取り扱いが容易になる程度に適宜調整すればよく、また、ワニスの塗工性が良好となる範囲であれば特に制限はないが、熱硬化性樹脂組成物由来の固形分濃度(有機溶剤以外の成分の濃度)が30〜90質量%であることが好ましく、40〜80質量%であることがより好ましく、50〜80質量%であることがさらに好ましく、60〜80質量%であることが特に好ましい。
シート状補強基材への熱硬化性樹脂組成物(ワニス)の付着量を制御する方法としては、特に制限はないが、例えば、スクイズロール方式、カットバー方式等が一般的に採用される。シート状補強基材への熱硬化性樹脂ワニスの付着量は、熱硬化性樹脂固形分とシート状補強基材の総量に対して、熱硬化性樹脂組成物由来の固形分の含有割合が35〜80質量%であることが好ましく、35〜60質量%であることがより好ましく、40〜60質量%であることがさらに好ましい。
<金属箔>
金属箔の金属としては、配線パターンの形成に使用し得るものであれば特に制限されないが、導電性の観点から、銅、金、銀、ニッケル、白金、モリブデン、ルテニウム、アルミニウム、タングステン、鉄、チタン、クロム、又はこれらの金属元素のうちの少なくとも1種を含む合金であることが好ましい。これらの中でも、銅、アミルニウムであることがより好ましく、銅であることがさらに好ましい。
金属箔の厚みは、用途によっても異なるが、通常、3〜100μmであることが好ましく、3〜50μmであることがより好ましく、3〜30μmであることがさらに好ましく、5〜20μmであることが特に好ましい。
(鏡板)
鏡板2としては、積層板の製造において使用し得る公知の鏡板を用いることができる。鏡板2としては、例えば、金属板、プラスチック板、ガラス板、セラミック板等が挙げられる。これらの中でも、金属板であることが好ましい。金属板の金属としては、成形中積層板との熱膨張係数を上記範囲に収める観点から、ステンレス鋼であることが好ましい。ステンレス鋼としては、マルテンサイト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト−フェライト系(二相系)ステンレス鋼、析出硬化系ステンレス鋼等が挙げられる。これらの中でも、反り量の低減の観点から、金属板の金属としてはステンレス鋼を選択してもよく、オーステナイト系ステンレス鋼、析出硬化系ステンレス鋼を選択してもよい。オーステナイト系ステンレス鋼としては、例えば、SUS301、SUS304、SUS304L等が挙げられる。また、析出硬化系ステンレス鋼としては、例えば、SUS420、SUS630、SUS631J1等が挙げられる。
オーステナイト系ステンレス鋼はニッケルを含有しているため、常温でもオーステナイトの組織が安定しており、また、クロムとニッケルの含有量が多いことから、耐食性及び耐熱性に優れるという特徴がある。また、析出硬化系ステンレス鋼は、熱処理によって高硬度化したものである。
鏡板2の熱膨張係数は、8〜24ppm/℃であることが好ましく、10〜24ppm/℃であることがより好ましく、10〜20ppm/℃であることがさらに好ましく、10〜18ppm/℃であることが特に好ましい。なお、SUS630の熱膨張係数は11ppm/℃であり、SUS301の熱膨張係数は17ppm/℃である。
鏡板2の厚みは、特に制限はないが、0.2〜5mmであることが好ましく、0.5〜3mmであることがより好ましく、1〜2mmであることがさらに好ましい。
(クッション材)
クッション材3は、熱盤6から成形中積層板1にかかる圧力分布を均一化し、熱盤6の凹凸の影響を低減する効果がある。クッション材3が配置されることで、加熱圧縮の際の昇温速度の調整が可能となる。
クッション材3としては、例えば、ゴム製クッション材、紙製クッション材等が挙げられる。紙製クッション材の紙の材質としては、木材;木綿、麻、木材、竹、わら等の非木材が挙げられる。これらの中でも、反り量の低減の観点から、木材、木綿を選択してもよい。特に、木材はクラフトパルプであることが好ましく、木綿は短繊維(リンター)であることが好ましい。つまり、紙製クッション材としては、クラフト紙クッション材、リンター紙クッション材を選択してもよい。ここで、「クラフト紙」とは、クラフト法により製造されたパルプを原料とした洋紙のうち、漂白工程を行なわない紙のことであり、強度が高い紙である。また、「リンター紙」とは、綿花からとれる繊維の中でも、綿の実についている短繊維及び綿花の加工途中に出る短い地毛等がリンターと呼ばれ、リンターをパルプとして製造した紙のことである。
クッション材3の厚みは、作業性及び機械強度の観点から、200〜800μmであることが好ましく、300〜600μmであってもよい。
(樹脂シート)
樹脂シート4は、加熱圧縮する工程において、クッション材3で発生した膨張又は収縮による影響により起因する成形中積層板1の残留歪みを減少させる機能を有する。当該機能を有するために、樹脂シート4は、成形中積層板1との熱膨張係数の差が5ppm/℃以下であることが好ましく、4ppm/℃以下としてもよく、3.5ppm/℃以下としてもよい。成形中積層板1と樹脂シート4との熱膨張係数の差の下限値に特に制限はないが、0.5ppm/℃であることが好ましく、1.0ppm/℃であることがより好ましく、1.5ppm/℃であることがさらに好ましく、2.0ppm/℃であることが特に好ましい。
樹脂シート4は、クッション材3と鏡板2との間に配置されていればよく、上記機能を効率よく発揮するためには、図1で示すように、クッション材3を挟み込んだ状態で加熱加圧成形することがより好ましい。
樹脂シート4としては、作業性、強度の観点から、上述したシート状補強基材にフッ素樹脂を付着させたシートであることが好ましい。樹脂シート4は、フッ素樹脂付着量が50質量%以上であることが好ましく、53質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることがさらに好ましい。
樹脂シート4の動摩擦係数は、上記機能を効率よく発揮するという観点から、0.4以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましく、0.2以下であることがさらに好ましい。
樹脂シート4の機能について、図2及び図3を参照して説明する。
加熱圧縮する際、クッション材3は、材質特有の膨張又は収縮が発生する。クッション材3で発生した膨張又は収縮は、成形圧力によって成形中積層板1の内部の歪みとなって残留することが本発明者らの検討により判明した。
樹脂シート4の機能を示すために、樹脂シート4がクッション材3と鏡板2との間に配置されている形態(図2の左図)と、樹脂シート4がクッション材3と鏡板2との間に配置されていない形態(図3の左図)とを比較する。図2及び図3の右図には、それぞれの形態におけるそれぞれの部材の膨張又は収縮の程度を実線矢印の長さとして示す。図2で示す形態では、クッション材3で発生した膨張又は収縮は、樹脂シート4で絶たれ、成形中積層板1に影響をあたえることはなく、成形中積層板1が残留歪みを有することはない。一方、図3で示す形態では、クッション材3で発生した膨張又は収縮が鏡板2を介して成形中積層板1に伝わり、成形中積層板1は、残留歪み(白抜き矢印)を有することになる。
(配線板)
本発明の製造方法で得られた金属張り積層板は、配線パターンを形成することで配線板とすることができる。配線パターンを形成する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、サブトラクティブ法、フルアディティブ法、セミアディティブ法(SAP:Semi Additive Process)又はモディファイドセミアディティブ法(m−SAP:modified Semi Additive Process)等の公知の方法によって配線パターンを形成することができる。
以下、実施例により本発明の説明をする。なお、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
[測定方法及び測定条件]
各実施例及び比較例において、以下の方法により各測定を行なった。
(熱膨張係数の測定条件)
測定装置:熱機械測定装置「TMA2940」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)
測定モード:引張りモード
測定条件:30℃→250℃→30℃
荷重:0.2N
雰囲気:空気雰囲気
(反り量の測定方法)
各例で製造した金属張り積層板から500mm角の試験用サンプルを切り出し、AKROMETRIX社製「サーモレイ PS200」を用いて、下記条件に従って、シャドーモアレ法でのサンプルの反り量を測定した。
測定エリア:36mm×36mm
測定条件:室温から260℃まで加熱し、その後50℃まで冷却した時の反り量を測定した。
[実施例1]
臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂「エピコート5046」(三菱化学株式会社製、エポキシ当量:475g/eq)100質量部、フェノールノボラック樹脂「エピコート154」(三菱化学株式会社製、水酸基当量:178g/eq)54質量部、水酸化アルミニウム120質量部、及び硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール0.2質量部をメチルエチルケトンに溶解し、固形分濃度70質量%の熱硬化性樹脂組成物(ワニス)を調製した。
厚み0.10mmのガラスクロス織布に該熱硬化性樹脂組成物を含浸塗工し、その後、140℃で3〜4分加熱乾燥することによりBステージ化し、熱硬化性樹脂組成物由来の固形分含有量が45質量%のプリプレグを製造した。同様にしてプリプレグを合計4枚製造した。
得られたプリプレグ4枚を重ね合わせ、両側に、厚さ12μmの銅箔を配置して、成形中積層板を製造した。この成形中積層板の熱膨張係数を前述の方法に従って測定したところ、9ppm/℃であった。
次いで、成形中積層板を厚さ1.5mmのステンレス製鏡板「SUS630」(熱膨張係数11ppm/℃)に挟んで1セットの構成体とした。
同じ構成体を15セット準備し、これを重ね合わせ、その両外側へ動摩擦係数0.3、厚み0.24mm、フッ素樹脂付着量58質量%の樹脂シート「TOMBO9000−G15」(熱膨張係数11ppm/℃、ニチアス株式会社製)で挟み込んだ、リンター紙クッション材「AACP」(熱膨張係数8ppm/℃、阿波製紙株式会社製)を配置し、さらにその両外側へキャリアプレートを配置してから、熱盤間に挿入し、多段加圧方式にて、185℃、4MPaの条件下で85分間加熱圧縮することにより、両面銅張積層板を作製した。
得られた両面銅張り積層板のうち、構成体の最も熱盤側に配置された両面銅張積層板(熱盤側)と、構成体の最も熱盤側に配置された両面銅張積層板に隣接する両面銅張積層板(その他)の反り量を前述の方法に従って測定した。結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1と同様にプリプレグを合計4枚製造し、得られたプリプレグ4枚を重ね合わせ、両側に厚さ12μmの銅箔を配置し、実施例2における成形中積層板を製造した。実施例2における成形中積層板の熱膨張係数を測定した結果、熱膨張係数は15ppm/℃であった。
そして、実施例1において、ステンレス製鏡板「SUS630」の代わりにステンレス製鏡板「SUS301」(熱膨張係数17ppm/℃)を用いて両面銅張積層板を作製し、同様にして反り量を測定した。結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1において、樹脂シート「TOMBO 9000−G15」(熱膨張係数11ppm/℃、ニチアス株式会社製)の代わりに樹脂シート「TOMBO 9000−CF15」(熱膨張係数8ppm/℃、ニチアス株式会社製)を用いたこと以外は同様にして両面銅張積層板を作製し、同様にして反り量を測定した。結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1において、ステンレス製鏡板「SUS630」の代わりにステンレス製鏡板「SUS301」(熱膨張係数17ppm/℃)を用いたこと、及びクッション材を用いなかったこと以外は同様にして両面銅張積層板を作製し、同様にして反り量を測定した。結果を表1に示す。
Figure 0006946626
表1より、比較例1と比べて、実施例1〜3では、両面銅張積層板を上記「反り量の測定方法」に記載の温度に加熱し、これによって残留歪みが開放されて得られた両面銅張積層板においても、反り量が極めて小さくなった。つまり、本発明の製造方法により、加熱圧縮して作製された金属張り積層板の残留歪みを極少化することができたといえる。
本発明の製造方法により得られる金属張り積層板は、反り量が小さいため、加工性及び搬送性を改善することができ、特に電子機器の配線板の製造に有用である。
1:成形中積層板
2:鏡板
3:クッション材
4:樹脂シート
5:キャリアプレート
6:熱盤
10:構成体

Claims (5)

  1. シート状補強基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸して得られたプリプレグの片側又は両側に金属箔を配置して成形中積層板を形成する工程と、
    該成形中積層板の両面を挟むように鏡板を配置して構成体を形成する工程と、
    該構成体を熱盤によって150〜250℃及び2〜5MPaの条件で加熱圧縮する工程とを含み、
    前記加熱圧縮する工程において、前記構成体の外側に配置するクッション材と前記鏡板との間に樹脂シートを配置して加熱加圧成形し、
    該成形中積層板と該鏡板との熱膨張係数の差が5ppm/℃以下であり、且つ、前記成形中積層板と前記樹脂シートとの熱膨張係数の差が5ppm/℃以下である、金属張り積層板の製造方法。
  2. 前記クッション材がクラフト紙クッション材又はリンター紙クッション材である、請求項1に記載の金属張り積層板の製造方法。
  3. 前記成形中積層板の熱膨張係数が5〜20ppm/℃である、請求項1又は2に記載の金属張り積層板の製造方法。
  4. 前記鏡板の熱膨張係数が8〜24ppm/℃である、請求項1〜のいずれか1項に記載の金属張り積層板の製造方法。
  5. 前記鏡板の材質が、ステンレス鋼である請求項1〜のいずれか1項に記載の金属張り積層板の製造方法。
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