図1に示すように、車両用灯具2は、投影レンズ3と、投影レンズ3を保持するレンズホルダ4と、レンズホルダ4の後端部に取り付けられた本体筒5と、本体筒5の後側の開口を塞ぐ底蓋6とを備える。本実施形態では、車両用灯具2は、例えば車両のヘッドライトとして用いられる。
図2及び図3に示すように、車両用灯具2は、第1〜第4励起光源11〜14と、第1〜第4励起光源11〜14からの励起光を二次元的(水平方向及び垂直方向)に走査する第1〜第4光偏向器15a〜15dとを備える。第1〜第4励起光源11〜14及び第1〜第4光偏向器15a〜15dは、詳しくは後述する制御装置19(図5参照)により駆動が制御される。なお、図2においては、第1,第4励起光源11,14及び第1,第4光偏向器15a,15dのみ図示し、第2,第3励起光源12,13及び第2,第3光偏向器15b,15cは省略している。また、図3においては、第2,第3励起光源12,13及び第2,第3光偏向器15b,15cのみ図示し、第1,第4励起光源11,14及び第1,第4光偏向器15a,15dは省略している。
また、車両用灯具2は、第1〜第4光偏向器15a〜15dにより走査された光の歪み(詳しくは後述する)を補正する第1〜第4補正ミラー17a〜17dと、第1〜第4補正ミラー17a〜17dにより補正された光により所定配光パターンに対応する二次元像が描画される蛍光体18(投影体)とを備える。蛍光体18に描画された二次元像は、投影レンズ3により前方に投影される。
第1〜第4励起光源11〜14、第1〜第4光偏向器15a〜15d、第1〜第4補正ミラー17a〜17d、蛍光体18は、本体筒5の内部に配置され、固定部材(図示せず)により固定されている。なお、本体筒5の外周面に放熱用のフィンを設けてもよい。
第1励起光源11は、例えば、励起光として青色域(例えば、発光波長が450nm)のレーザ光を放出するレーザダイオード(LD)等の半導体発光素子11aと、半導体発光素子11aからの光を集光(例えばコリメート)する集光レンズ11bとを備える。
各励起光源12〜14は、第1励起光源11と同様に、半導体発光素子12a、13a、14aと、集光レンズ12b、13b、14bとを備える。なお、各半導体発光素子11a〜14aは、近紫外域(例えば、発光波長が405nm)のレーザ光を放出するレーザダイオード等の半導体発光素子であってもよい。また、各半導体発光素子11a〜14aは、LEDであってもよい。さらに、RGBで混色させたレーザ光を照射するレーザ照射器でもよい。
図2に示すように、第1励起光源11は、詳しくは後述する第1光偏向器15aの光偏向ミラー20の回転中心に向けてレーザ光を照射する。第4励起光源14は、詳しくは後述する第4光偏向器15dの光偏向ミラー20の回転中心に向けてレーザ光を照射する。また、図3に示すように、第2励起光源12は、詳しくは後述する第2光偏向器15bの光偏向ミラー20の回転中心に向けてレーザ光を照射する。第3励起光源13は、詳しくは後述する第3光偏向器15cの光偏向ミラー20の回転中心に向けてレーザ光を照射する。
図4に示すように、第1〜第4励起光源11〜14は、正面視において90°ピッチで離れて配置されている。
図2及び図3に示すように、第1〜第4光偏向器15a〜15dにより走査された光は、第1〜第4補正ミラー17a〜17dに入射する。この第1〜第4光偏向器15a〜15dにより走査された光は、光の光偏向ミラー20への入射角と、光偏向ミラー20の回転軸との影響により歪んでいる。
第1〜第4補正ミラー17a〜17dは、第1〜第4光偏向器15a〜15dにより走査された光の歪みを補正して反射するものであり、反射面が湾曲されている。
蛍光体18は、第1〜第4光偏向器15a〜15dにより二次元的に走査され、第1〜第4補正ミラー17a〜17dにより補正されたレーザ光を受けて、当該レーザ光の少なくとも一部を異なる波長の光に変換するものであり、外形が矩形形状の板状(又は層状)で形成されている。蛍光体18は、投影レンズ3の焦点近傍に配置されている。なお、図2及び図3では、蛍光体18の厚みを誇張して描いている。
例えば、各励起光源11〜14の半導体発光素子11a〜14aとして、青色域のレーザ光を放出するレーザダイオード(LD)を用いる場合、蛍光体18としては、青色域のレーザ光によって励起されて黄色光を発光するものが用いられる。蛍光体18には、第1〜第4光偏向器15a〜15dにより二次元的に走査された後に、第1〜第4補正ミラー17a〜17dによって補正された青色域のレーザ光により、所定配光パターンに対応する二次元像が白色の像として描画される。二次元像が白色の像として描画されるのは、青色域のレーザ光が照射された場合、蛍光体18は、これを透過(通過)する青色域のレーザ光と青色域のレーザ光による発光(黄色光)との混色による白色光(疑似白色光)を放出することによるものである。
一方、半導体発光素子11a〜14aとして、近紫外域のレーザ光を放出するレーザダイオード(LD)を用いる場合、蛍光体18としては、近紫外域のレーザ光によって励起されて赤、緑、青の3色の光を発光するものが用いられる。蛍光体18には、第1〜第4光偏向器15a〜15dにより二次元的に走査された後に、第1〜第4補正ミラー17a〜17dによって補正された近紫外域のレーザ光により、所定配光パターンに対応する二次元像が白色の像として描画される。二次元像が白色の像として描画されるのは、近紫外域のレーザ光が照射された場合、蛍光体18は、近紫外域のレーザ光による発光(赤、緑、青の3色の光)の混色による白色光(疑似白色光)を放出することによるものである。なお、近紫外のレーザ光により、青色の蛍光体と黄色の蛍光体とを励起させて白色光を放出させてもよい。
投影レンズ3は、4枚のレンズ3a〜3dからなり、各レンズ3a〜3dは、レンズホルダ4に保持されている。各レンズ3a〜3dは、像面が平面になるように収差(像面湾曲)が補正され、且つ色収差が補正されている。この場合、蛍光体18は、平板形状のものが用いられ、像面(平面)に沿って配置される。
投影レンズ3の焦点は、蛍光体18近傍に位置している。この投影レンズ3により、一枚の凸レンズを用いる場合と比べ、所定配光パターンに対する収差の影響を除去することができる。また、蛍光体18が平板形状であるため、蛍光体18が曲面形状である場合と比べ、その製造が容易となる。さらに、蛍光体18が平板形状であるため、蛍光体18が曲面形状である場合と比べ、二次元像の描画が容易となる。
なお、投影レンズ3は、像面が平面になるように収差(像面湾曲)が補正されていない1枚の非球面レンズからなる投影レンズとして構成されていてもよい。この場合、蛍光体18は、像面湾曲に対応して湾曲した形状のものが用いられ、像面湾曲に沿って配置される。
投影レンズ3は、蛍光体18に描画された二次元像を前方に投影して、車両用灯具2に正対した仮想鉛直スクリーンS(車両用灯具2の前方約25mの位置に配置されている)上に、所定配光パターンとして、例えばハイビーム用配光パターンHPを形成する。
第1〜第4光偏向器15a〜15dは、第1〜第4励起光源11〜14の集光レンズ11b〜14bで集光された励起光を水平方向及び垂直方向に走査する。
図5に示すように、第1〜第4励起光源11〜14、第1〜第4光偏向器15a〜15dは、車両用灯具2を統括的に制御する制御装置19に接続され、制御装置19により駆動が制御される。
第1〜第4光偏向器15a〜15dは、例えば、MEMSスキャナである。光偏向器の駆動方式には大別して圧電方式、静電方式、電磁方式があるが、いずれの方式であってもよい。本実施形態では、圧電方式の光偏向器を代表して説明する。
図6に示すように、第1光偏向器15aは、2軸型光偏向器であり、半導体プロセスやMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を利用して作製され、一定の方向から入射する光を回転するマイクロミラーとしての光偏向ミラー20で反射し、反射光(レーザ光)として出射する。
第1光偏向器15aは第1支持部21を備え、この第1支持部21は、光偏向ミラー20、半環状圧電アクチュエータ23a,23b、及びトーションバー24a,24b等からなる。第1励起光源11からのレーザ光は光偏向ミラー20で反射され、反射光(レーザ光)が第1補正ミラー17a、蛍光体18及び投影レンズ3を介して仮想鉛直スクリーンS上を走査する。
このとき、制御装置19は、第1光偏向器15a及び第1励起光源11に制御信号を送信する。当該制御信号により第1光偏向器15aの半環状圧電アクチュエータ23a,23bが駆動され、半環状圧電アクチュエータ23a,23bと結合したトーションバー24a,24bがねじれることで、光偏向ミラー20を回動させる。また、当該制御信号により、各励起光源11,12において、レーザ光のオン・オフ及び輝度が制御される。
本実施形態では、2軸直交座標系において、円形の光偏向ミラー20の中心を通る水平方向の回転軸をX軸、垂直方向の回転軸をY軸と定義する。また、図6においては、X軸を左右方向、Y軸を上下方向、光偏向ミラー20の厚み方向を前後方向としている。
第1光偏向器15aは矩形環状の第2支持部22を備え、この第2支持部22の中央に第1支持部21が配設されている。また、第1支持部21の中心を通るY軸に対して線対称に、蛇腹状の圧電アクチュエータ31a,31bが配設され、第1支持部21の辺部下端及び第2支持部22と結合している。なお、図5では、第1,第2支持部21,22及び圧電アクチュエータ31a,31bをまとめてMEMSと称している。
圧電アクチュエータ31a,31bは、複数のカンチレバーを長手方向が隣り合う向きに並べて、上下方向端部で折り返して直列結合したミアンダ構造に形成されている。詳細は後述するが、上記制御信号により圧電アクチュエータ31a,31bを駆動させることで、第1支持部21が水平方向、すなわち、図中の光偏向ミラー20の中心を通るX軸線回りを往復回動する。
また、上述したように、半環状圧電アクチュエータ23a,23bを駆動させることにより、光偏向ミラー20がトーションバー24a,24bの軸と一致し、図中の光偏向ミラー20の中心を通るY軸線回りを往復回動する。
この結果、第1光偏向器15aは、レーザ光を光偏向ミラー20で反射する際、光を第1光偏向器15aの前方に出射して、さらにX軸方向とY軸方向の2方向に走査することができる。
第2支持部22の下方には、電極パッド32a〜32e(以下、電極パッド32という)と、電極パッド33a〜33e(以下、電極パッド33という)とが配設されている。電極パッド32,33は、圧電アクチュエータ31a,31b及び半環状圧電アクチュエータ23a,23bの各電極に駆動電圧を印加できるように電気的に接続されている。
なお、圧電アクチュエータ31a,31bの部分がなくても光偏向器として機能させることができる。この場合、第1支持部21の部分が支持体の役割を果たし、光偏向ミラー20がY軸線回りを往復回動する1軸型光偏向器を構成する。
次に、図7を参照して、圧電アクチュエータ31aを例に動作を説明する。上述したように、第1光偏向器15aは、圧電アクチュエータ31a,31bを動作させることにより、光偏向ミラー20のX軸線回りの往復回動を可能としている。
図7Aは、第1光偏向器15aを表側から見たとき、左側に配設される圧電アクチュエータ31aを切り出した図である。圧電アクチュエータ31aは、圧電カンチレバーを4つ並べた形状であり、第1支持部21から離れた方より順に、圧電カンチレバー31a(1)、31a(2)、31a(3)、31a(4)である。
例えば、圧電アクチュエータ31aにおいて、奇数番目の圧電カンチレバー31a(1)、31a(3)に第1の電圧を印加する。また、偶数番目の圧電カンチレバー31a(2)、31a(4)に、第1の電圧とは逆位相の第2の電圧を印加する。
このように電圧を印加することで、図7Bに示すように、奇数番目の圧電カンチレバー31a(1)、31a(3)を図7B中の上方向に屈曲変位させ、偶数番目の圧電カンチレバー31a(2)、31a(4)を図7B中の下方向に屈曲変位させることができる。
圧電アクチュエータ31bは、圧電アクチュエータ31aと同様に4個の圧電カンチレバーから構成され、第1支持部21に近い方より順に、1番目,2番目,3番目,4番目の圧電カンチレバーであり、奇数番目の2個の圧電カンチレバーを図6中の後側に屈曲変位させ、偶数番目の2個の圧電カンチレバーを図6中の前側に屈曲変位させることができる。
これにより、光偏向ミラー20の図6中の下側(トーションバー24b側)より光偏向ミラー20の図6中の上側(トーションバー24a側)が図6中の後側になる(上側が図7中のU方向に動く)ように、光偏向ミラー20を変位させることができる。
また、奇数番目の圧電カンチレバー31a(1)、31a(3)に第2の電圧を印加し、偶数番目の圧電カンチレバー31a(2)、31a(4)に、第1の電圧を印加することで、光偏向ミラー20の図6中の上側(トーションバー24a側)より光偏向ミラー20の図6中の下側(トーションバー24b側)が図6中の後側になるように、光偏向ミラー20を変位させることができる。これらの制御を連続して行うことで、光偏向ミラー20をX軸線回りに回動(揺動)させることができる。
第2〜第4光偏向器15b〜15dは、第1光偏向器15aと同様に構成されており、その詳細な説明を省略する。
第1の電圧、第2の電圧の印加方法として、サインカーブや櫛歯上に変化する逆位相の電圧を、奇数番目の圧電カンチレバーと、偶数番目の圧電カンチレバーに印加する方法がある。また、カンチレバーを上下方向に交互に屈曲させる場合に限らず、上下のいずれかの屈曲と屈曲しない状態とを交互に繰り返してもよい。
車両用灯具2を駆動して、仮想鉛直スクリーンS上にハイビーム用配光パターンHPを形成する場合、先ず、制御装置は、第1〜第4励起光源11〜14、第1〜第4光偏向器15a〜15dに向けて制御信号を送信する。
制御信号により、第1〜第4励起光源11〜14からレーザ光が出力され、且つ、第1〜第4光偏向器15a〜15dが駆動して各々の光偏向ミラー20が、X軸周り及びY軸周りに回動する。
図2に示すように、第1励起光源11から出力されたレーザ光は、第1光偏向器15aの光偏向ミラー20の回転中心に入射して、回動する光偏向ミラー20により水平方向及び垂直方向に走査される。図6に示す光偏向ミラー20の楕円状の点線が、第1励起光源11から出力されたレーザスポットを示している。
図2及び図3に示すように、第2〜第4励起光源12〜14から出力されたレーザ光は、第2〜第4光偏向器15b〜15dの光偏向ミラー20の回転中心に入射して、回動する光偏向ミラー20により水平方向及び垂直方向に走査される。
図8Aに示すように、第1励起光源11から照射されたレーザ光は、第1光偏向器15a、第1補正ミラー17a、蛍光体18及び投影レンズ3を介して仮想鉛直スクリーンSの実線で示す第1走査範囲SR1で走査される(二次元像が投影される)。
図8Bに示すように、第2励起光源12から照射されたレーザ光は、第2光偏向器15b、第2補正ミラー17b、蛍光体18及び投影レンズ3を介して仮想鉛直スクリーンSの実線で示す第2走査範囲SR2で走査される。第2走査範囲SR2は、水平方向が第1走査範囲SR1と同じ長さで、垂直方向が第1走査範囲SR1より短い範囲となっている。第2走査範囲SR2は、第1走査範囲SR1に含まれるように重なっている。
図8Cに示すように、第3励起光源13から照射されたレーザ光は、第3光偏向器15c、第3補正ミラー17c、蛍光体18及び投影レンズ3を介して仮想鉛直スクリーンSの実線で示す第3走査範囲SR3で走査される。第3走査範囲SR3は、水平方向及び垂直方向が第1走査範囲SR1及び第2走査範囲SR2より短い範囲となっている。第3走査範囲SR3は、第1走査範囲SR1及び第2走査範囲SR2の両方に含まれるように重なっている。
図8Dに示すように、第4励起光源14から照射されたレーザ光は、第4光偏向器15d、第4補正ミラー17d、蛍光体18及び投影レンズ3を介して仮想鉛直スクリーンSの実線で示す第4走査範囲SR4で走査される。第4走査範囲SR4は、水平方向が第3走査範囲SR3と同じ長さで、垂直方向が第3走査範囲SR3より短い範囲となっている。第4走査範囲SR4は、第1〜第3走査範囲SR1〜SR3の全てに含まれるように重なっている。なお、同じとは、僅かに違うものも含む。
仮想鉛直スクリーンSにおいて、第1〜第4走査範囲SR1〜SR4はそれぞれ重なっている。
図8Eに示すように、第1〜第4走査範囲SR1〜SR4の重なりにより、仮想鉛直スクリーンSにおけるハイビーム用配光パターンHPは、単一の光が走査される領域P1と、2つの光が走査される領域P2と、3つの光が走査される領域P3と、4つの光が走査される領域P4とに分けられる。本実施形態では、走査される光の数が多いほど重ね合わせることができる光も多くなるため、光度を高くすることができる。すなわち、4つの光が走査される領域P4の光度を最も高くすることができる。
図8Fに示すように、ハイビーム用配光パターンHPの左右方向における照度は、左右方向中心部が最も高照度で、左右端部に向かうにつれて照度が低くなるように設定されている。
第1励起光源11から常に光を出力している場合、光を水平方向(左右方向)に走査するために第1光偏向器15aの光偏向ミラー20を往復回動させる際の折り返し部分(左右端部)では、他の範囲に比べて光の出力時間が長くなり、輝度が高くなる(図9Aの二点鎖線)。このため、光偏向ミラー20を往復回動させる際の折り返し部分(左右端部)では、第1励起光源11から光を出力しないように制御することで、折り返し部分の輝度が高くなるのを防止することが考えられる。しかし、このような制御を行う場合、励起光源を活用できない時間が生じることになる。
本実施形態では、詳しくは後述するように、第1補正ミラー17aの形状を設定することにより、図9Aに実線で示すように、光を水平方向(左右方向)に走査するために光偏向ミラー20を往復回動させる際の折り返し部分(左右端部)では、他の範囲に比べて輝度が低くなるようにしている。
同様に、光を水平方向(左右方向)に走査するために第3光偏向器15cの光偏向ミラー20を往復回動させる際の折り返し部分(左右端部)では、他の範囲に比べて光の出力時間が長くなるため輝度が高くなる(図9Bの二点鎖線)。
本実施形態では、詳しくは後述するように、第3補正ミラー17cの形状を設定することにより、図9Bに実線で示すように、光を水平方向(左右方向)に走査するために光偏向ミラー20を往復回動させる際の折り返し部分(左右端部)では、他の範囲に比べて輝度が低くなるようにしている。
図10は、第1,第3補正ミラー17a,17cの左右方向(水平方向)の断面図である。図10Aに示すように、第1補正ミラー17aは、光入射範囲の中央部が凹曲面で両端部が凸曲面形状で形成されている。これにより、図9Aに示すように、第1光偏向器15aの光偏向ミラー20を往復回動させる際の折り返し部分(左右端部)の光であって、第1補正ミラー17aにより補正された光は、他の部分(中央部)より光の密度が疎になり、輝度が低くなる。また、第1補正ミラー17aは、補正する際に中心部が最も高密度な光となるように補正する。これにより、中心部の輝度を従来のものに比べて高くすることができる。
同様に、図10Bに示すように、第3補正ミラー17cは、光入射範囲の中央部が凹曲面で両端部が凸曲面形状で形成されている。これにより、図9Bに示すように、第3光偏向器15cの光偏向ミラー20を往復回動させる際の折り返し部分(左右端部)の光であって、第3補正ミラー17cにより補正された光は、他の部分(中央部)より光の密度が疎になり、輝度が低くなる。また、第3補正ミラー17cは、補正する際に中心部が最も高密度な光となるように補正する。なお、図10A及び図10Bにおいては、第1,第3補正ミラー17a,17cの両端部の凸曲面形状を誇張して描いている。
また、第1補正ミラー17aの光入射範囲の両端部は、第3補正ミラー17cの光入射範囲の両端部より曲率半径が小さい(曲率が大きい)凸曲面形状で形成されている。これにより、図9Aに示すように、第1補正ミラー17aにより補正された光は、第3補正ミラー17cにより補正された光(図9B参照)に比べて、左右端部に向けて緩やかに輝度が低下する光となる。
図9Bに示すように、第3補正ミラー17cにより補正された光は、第1補正ミラー17aにより補正された光(図9A参照)に比べて、左右端部に向けて急に輝度が低下する光(走査ピッチ変化が、第1補正ミラー17aにより補正された光の左右端部に比べ相対的に大きい)となる。図9Aの実線で示す光と図9Bの実線で示す光とが組み合わさって、図8Fに示す光となる。
このように、第1補正ミラー17a及び第3補正ミラー17cは、第1光偏向器15a及び第3光偏向器15cの光偏向ミラー20を往復回動させる際の折り返し部分(左右部)の輝度が他の範囲より高くなるのを防止するので、第1〜第4励起光源11〜14から常に光を出力するように制御することができる。
上記の如き、第1補正ミラー17aと第3補正ミラー17cとの違いは、第1走査範囲SR1と第3走査範囲SR3との幅の違いに対応している。走査範囲が相対的に広い第1走査範囲SR1は、左右端部で相対的に輝度変化が緩やか(走査ピッチ変化が緩やか)な第1補正ミラー17aを用いて形成される。走査範囲が相対的に狭い第3走査範囲SR3は、左右端部で相対的に輝度変化が急(=走査ピッチ変化が急)な第3補正ミラー17cを用いて形成される。なお、上記はすべて左右方向を水平方向と同一方向として想定している。
水平方向にて走査範囲幅が第1走査範囲SR1と同等の第2走査範囲SR2に対応する第2補正ミラー17bも、左右方向断面は図10Aと同等となり、水平方向にて走査範囲幅が第3走査範囲SR3と同等の第4走査範囲SR4に対応する第4補正ミラー17dも、左右方向断面は図10Bと同等となる。
したがって、第2補正ミラー17bにより補正された光は、第1補正ミラー17aにより補正された光(図9A参照)と同じ輝度変化の光になる。また、第4補正ミラー17dにより補正された光は、第3補正ミラー17cにより補正された光(図9B参照)と同じ輝度変化の光になる。これにより、第1,第2補正ミラー17a,17bにより補正された光(図9A参照)は、第3,第4補正ミラー17c,17dにより補正された光(図9B参照)に比べて、左右端部に向けて緩やかに輝度が低下する光となる。
ハイビーム用配光パターンHPの左右端部における照度は、第1,第2補正ミラー17a,17bにより補正された光の照度となる。第1,第2補正ミラー17a,17bは、左右端部に向けて緩やかに輝度が低下するように光を補正するので、ハイビーム用配光パターンHPの左右端部における照度は、緩やかに変化する。
ハイビーム用配光パターンHPの中心周辺(第3,第4走査範囲SR3,SR4の左右端部)における照度は、第1,第2補正ミラー17a,17bにより補正された光と、第3,第4補正ミラー17c,17dにより補正された光とを組み合わせた光の照度となる。第3,第4補正ミラー17c,17dは、左右端部に向けて急に輝度が低下するように光を補正するので、ハイビーム用配光パターンHPの中心周辺における照度は、ハイビーム用配光パターンHPの左右端部に比べて急に変化する。
このように、第1,第2補正ミラー17a,17bと第3,第4補正ミラー17c,17dとの形状を変えることで、ハイビーム用配光パターンHPを、左右端部において照度が緩やかに変化し、中心付近において照度が急に変化する配光パターンにすることができる。
なお、光偏向器の数や、1個の光偏向器に光を照射する励起光源の数は適宜変更可能である。
上記実施形態では、複数の光の走査範囲の一部を重複させているが、重複させないようにしてもよい。
上記実施形態では、水平方向を左右方向と同方向として、第1補正ミラー17a及び第2補正ミラー17bの水平方向断面形状は同じとし、第3補正ミラー17c及び第4補正ミラー17dの水平方向断面形状は同じとしているが、さらに、垂直方向でも走査領域に合わせて補正の態様を変えることもできる。この場合、第1補正ミラー17a及び第2補正ミラー17bと、第3補正ミラー17c及び第4補正ミラー17dとの上下方向(垂直方向)の断面形状が異なる。相対的に広い走査領域の上下端部の輝度変化が緩やか(走査ピッチ変化が緩やか)で、相対的に狭い走査領域の上下端部の輝度変化が急(走査ピッチ変化が急)になるように、各補正ミラー17a〜17dは異なる形状とする。
上記実施形態では、1つの光学系で仮想鉛直スクリーンに光を照射しているが、これに限らず、複数の光学系からの光を仮想鉛直スクリーンで重ね合わせるようにしてもよい。この場合、光学系の少なくとも1つが上記実施形態のように、単独の光偏向器で複数の光源からの光を異なる範囲で走査するようになっていればよい。
上記実施形態では、励起光源を用いているが、光源の色そのものを照射するような光源を用いてもよい。この場合、蛍光体(投影体)は不要となり、光源からの光がそのまま照射される。また、蛍光体に代えて、透光性の拡散板を用いてもよい。さらに、光源は、1つのまとまった光線を照射すればよく、例えば、ファイバで光を導くようにしてもよい。ファイバに導く光は、RGBで混色された白色光でもよい。