以下、本発明の実施形態である車両用灯具10及びその制御システム30について添付図面を参照しながら説明する。各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
図1は、車両用灯具10の概略構成図である。
図1に示す車両用灯具10(車両用灯具ユニット)は、ヘッドランプ用配光パターン及び路面描画用パターンを形成可能な配光可変型の車両用前照灯であり、車両(図示せず)の前端部に搭載される。
図1に示すように、車両用灯具10は、ヘッドランプ用光源12A、路面描画用光源12B、第1集光レンズ14A、第2集光レンズ14B、光偏向器16、補正ミラー18、蛍光体プレート20、及び、投影レンズ22を備える。図1中の符号AXが示す車両前後方向に延びる線(一点鎖線)は、車両用灯具10(及び投影レンズ22)の光軸を表す。以下、光軸AXと記載する。
まず、ヘッドランプ用配光パターンP1について説明する。
図2中の符号P1は、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(例えば、車両前面から約25m前方に配置される)上に形成されるヘッドランプ用配光パターンの一例を表す。以下、ヘッドランプ用配光パターンP1と記載する。ヘッドランプ用配光パターンP1は、例えば、ADB用配光パターンである。ADB用配光パターンは、車両前方のマスク対象物(先行車や対向車等の移動体)を照射しない非照射領域を含む。なお、ADB用配光パターンを形成するための構成及び処理については、上記先行技術文献等に記載されているため、その説明は省略する。なお、ヘッドランプ用配光パターンP1は、ADB用配光パターンに限らず、ロービーム用配光パターンやハイビーム用配光パターンであってもよい。
図3は、ヘッドランプ用光源12Aから出射されたマルチモードのレーザー光(以下、レーザー光MLと記載する)が光偏向器16(ミラー部16a)によって二次元的に(水平方向及び鉛直方向に)走査されて、蛍光体プレート20にヘッドランプ用配光パターン画像p1(静止画像又は動画像)が形成されている様子を表す。なお、図3中、第1集光レンズ14A、第2集光レンズ14B、補正ミラー18及び投影レンズ22は省略されている。
ヘッドランプ用配光パターンP1(図2参照)は、蛍光体プレート20に形成されるヘッドランプ用配光パターン画像p1が投影レンズ22によって車両前方に投影(反転投影)されることで形成される。
ヘッドランプ用光源12Aの出力は、路面描画用光源12Bの出力より高い(例えば、5倍以上高い)。そのため、路面描画用パターンP2(及び路面描画用パターン画像p2)より光度(MAX光度)の高いヘッドランプ用配光パターンP1(及びヘッドランプ用配光パターン画像p1)を形成することができる。
次に、路面描画用パターンについて説明する。
図4は、車両前方の路面上に形成される路面描画用パターンP2の一例を表す。路面描画用パターンP2は、例えば、車両用灯具10が搭載された車両の進行方向を表す矢印画像である。路面描画用パターンP2は、車両前方の路面上(例えば、5~10m程度前方の路面上)に形成される。路面描画用パターンP2は、仮想鉛直スクリーン上においてヘッドランプ用配光パターンP1の下方に配置される(図2参照)。
図3は、路面描画用光源12Bから出射されたシングルモードのレーザー光(以下、レーザー光SLと記載する)が光偏向器16(ミラー部16a)によって二次元的に(水平方向及び鉛直方向に)走査されて、蛍光体プレート20に路面描画用パターン画像p2(静止画像又は動画像)が形成されている様子を表す。
路面描画用パターンP2(図4参照)は、蛍光体プレート20に形成される路面描画用パターン画像p2が投影レンズ22によって車両前方に投影(反転投影)されることで形成される。
図5(a)はヘッドランプ用光源12Aからのレーザー光MLのスポット径d1(蛍光体プレート20上のスポット径。図3参照)の一例、図5(b)は路面描画用光源12Bからのレーザー光SLのスポット径d2(蛍光体プレート20上のスポット径。図3参照)の一例である。
図5に示すように、路面描画用光源12Bからのレーザー光SLのスポット径d2は、ヘッドランプ用光源12Aからのレーザー光MLのスポット径d1より小さい。レーザー光MLのスポット径d1は400μm程度、レーザー光SLのスポット径d2は40μm程度である。そのため、ヘッドランプ用配光パターンP1より解像度の高い路面描画用パターン(複雑な文字や図形等の画像)を形成することができる。
以上のように本実施形態の車両用灯具10によれば、法規が求める高光度のヘッドランプ用配光パターンP1及び解像度の高い路面描画用パターンP2を両立させることができる。
次に、法規が求める高光度のヘッドランプ用配光パターンP1及び解像度の高い路面描画用パターンP2を両立させることができる車両用灯具10の構成例について図1を参照しながら説明する。
ヘッドランプ用光源12Aは、第1スポット径d1(図4(a)参照)のレーザー光を出射するレーザー光源で、例えば、マルチモードのレーザー光を出射するマルチモードレーザー光源である。ヘッドランプ用光源12Aは、本発明の第1光源の一例である。マルチモードレーザー光源としては、例えば、マルチモードのレーザー光を出射する半導体レーザー素子(レーザーダイオード)を含むCAN型のレーザー光源を用いることができる。
ヘッドランプ用光源12Aから出射されるレーザー光MLの発光波長は、青色域である。レーザー光MLは、第1集光レンズ14Aで集光され(コリメートされ)、光偏向器16のミラー部16aで二次元的に走査され、補正ミラー18で反射されて、蛍光体プレート20上のヘッドランプ用領域A1(図3参照)を照射する。
一般的に、マルチモードレーザー光源の出力は、シングルモードレーザー光源の出力より高い。そのため、マルチモードレーザー光源は、ヘッドランプ用光源に適している。一方、マルチモードレーザー光源は、シングルモードレーザー光源と比べ、レーザー素子の発光サイズが大きく、スポット径が大きい。そのため、マルチモードレーザー光源は、複雑な文字や図形等の画像の形成に適さない。
ヘッドランプ用光源12Aは、光軸AXより上方に配置される(図1参照)。具体的には、ヘッドランプ用光源12Aは、当該ヘッドランプ用光源12Aの光軸AX12A(レーザー光ML)が光軸AXを含む鉛直面に含まれる姿勢で配置される。その際、レーザー光MLが蛍光体プレート20上のヘッドランプ用領域A1(図3参照)を照射するように、ヘッドランプ用光源12Aは、当該ヘッドランプ用光源12Aの光軸AX12Aが前方斜め下方に傾斜した姿勢で配置される(図1参照)。
また、ヘッドランプ用光源12Aは、レーザー光MLのスポットS1が蛍光体プレート20上で水平方向に横長の楕円となる姿勢で配置される(図3参照)。なお、図示しないが、ヘッドランプ用光源12Aは、レーザー光MLのスポットS1が蛍光体プレート20上で鉛直方向に縦長の楕円となる姿勢で配置してもよい。
路面描画用光源12Bは、第1スポット径d1より小さい第2スポット径d2(図5(b)参照)のレーザー光を出射するレーザー光源で、例えば、シングルモードのレーザー光を出射するシングルモードレーザー光源である。路面描画用光源12Bは、本発明の第2光源の一例である。シングルモードレーザー光源としては、例えば、シングルモードのレーザー光を出射する半導体レーザー素子(レーザーダイオード)を含むCAN型のレーザー光源を用いることができる。
路面描画用光源12Bから出射されるレーザー光SLの発光波長は、青色域である。レーザー光SLは、第2集光レンズ14Bで集光され(コリメートされ)、光偏向器16のミラー部16aで二次元的に走査され、補正ミラー18で反射されて、蛍光体プレート20上の路面描画用領域A2(図3参照)を照射する。
一般的に、シングルモードレーザー光源の出力はマルチモードレーザー光源の出力より低いが、シングルモードレーザー光源は、マルチモードレーザー光源と比べ、レーザー素子の発光サイズが小さく、スポット径が小さい。そのため、路面描画用光源12Bとしてシングルモードレーザー光源を用いることで、路面描画用光源12Bとしてマルチモードレーザー光源を用いる場合と比べ、より解像度の高い路面描画用パターン(複雑な文字や図形等の画像)を形成することができる。
路面描画用光源12Bは、光軸AXより上方に配置される(図1参照)。具体的には、路面描画用光源12Bは、当該路面描画用光源12Bの光軸AX12B(レーザー光SL)が光軸AXを含む鉛直面に含まれる姿勢で配置される。その際、レーザー光SLが蛍光体プレート20上の路面描画用領域A2(図3参照)を照射するように、路面描画用光源12Bは、当該路面描画用光源12Bの光軸AX12Bが前方斜め上方に傾斜した姿勢でヘッドランプ用光源12Aの下方に配置される(図1参照)。
また、路面描画用光源12Bは、レーザー光SLのスポットS2(図5(b)参照)が蛍光体プレート20上で水平方向に横長の楕円となる姿勢で配置される。なお、図示しないが、路面描画用光源12Bは、レーザー光SLのスポットS2が蛍光体プレート20上で鉛直方向に縦長の楕円となる姿勢で配置してもよい。
ヘッドランプ用光源12A及び路面描画用光源12Bを上記のように配置した場合、ヘッドランプ用光源12Aから出射されたレーザー光MLと路面描画用光源12Bから出射されたレーザー光SLは、交点CP(図1、図3参照)において交差する。光偏向器16のミラー部16aは、レーザー光ML及びレーザー光SLが入射するように、この交点CPに配置される。
光偏向器16は、例えば、MEMSスキャナである。光偏向器の駆動方式には大別して圧電方式、静電方式、電磁方式があるが、いずれの方式であってもよい。本実施形態では、圧電方式の光偏向器を代表して説明する。
圧電方式には大別して1軸非共振・1軸共振タイプ、2軸非共振タイプ、2軸共振タイプがあるが、いずれの方式であってもよい。本実施形態では、1軸非共振・1軸共振タイプの光偏向器を代表して説明する。
図3に示すように、光偏向器16は、第1軸X1(共振駆動軸)及びこれに直交する第2軸X2(非共振駆動軸)を中心に揺動可能に支持されたミラー部16a(例えば、MEMSミラー)、ミラー部16aを第1軸X1を中心に往復揺動させる第1アクチュエーター16b、16c(圧電アクチュエーター)、ミラー部16aを第2軸X2を中心に往復揺動させる第2アクチュエーター16d、16e(圧電アクチュエーター)等を含む。
光偏向器16は、光軸AXより上方に配置される(図1参照)。具体的には、光偏向器16は、第1軸X1が光軸AXを含む鉛直面に含まれ、かつ、第2軸X2が水平面に含まれた状態で配置される(図3参照)。その際、光偏向器16のミラー部16aは、レーザー光MLとレーザー光SLの交点CPに配置される。
光偏向器16によって走査されるレーザー光ML、SLは、補正ミラー18で反射されて、蛍光体プレート20を照射する(図1参照)。光偏向器16のミラー部16aによって反射されたレーザー光ML、SLのスポットはそれぞれ蛍光体プレート20上の離間した位置に照射された状態で走査される。
補正ミラー18は、ヘッドランプ用配光パターン画像p1及び路面描画用パターン画像p2がそれぞれ歪むことなく蛍光体プレート20上のヘッドランプ用領域A1及び路面描画用領域A2(図3参照)に形成されるように、当該補正ミラー18に入射する光偏向器16(ミラー部16a)からのレーザー光ML、SLそれぞれの反射方向を制御する反射面として構成される。
補正ミラー18は、光軸AXより上方に配置される(図1参照)。具体的には、補正ミラー18は、蛍光体プレート20の後方、かつ、光偏向器16より下方の光軸AX寄りの位置に配置される。なお、補正ミラー18は、省略される場合がある。補正ミラー18は、本発明の補正光学系の一例である。
補正ミラー18に代えて補正レンズをレーザー光ML、SLの光路上にそれぞれ配置してもよい。補正レンズは補正ミラー18同様に補正光学系であり、ヘッドランプ用配光パターン画像p1及び路面描画用パターン画像p2がそれぞれ歪むことなく蛍光体プレート20上のヘッドランプ用領域A1及び路面描画用領域A2(図3参照)に形成されるように、入射する光偏向器16(ミラー部16a)からのレーザー光ML、SLそれぞれの透過方向を制御する屈折面を含む。補正ミラー18、補正レンズいずれであっても歪みの補正に加え、パターン画p1、p2それぞれの鉛直方向及び水平方向を任意の倍率で変化させる機能を有していてもよい。
蛍光体プレート20は、例えば、光偏向器16によって走査されるレーザー光ML、SLを受けて当該レーザー光ML、SLの少なくとも一部を異なる波長の光(例えば、黄色域の光)に変換する外形が矩形で、かつ、平板状(又は層状)の波長変換部材である。蛍光体プレート20は、本発明のスクリーン部材の一例である。蛍光体プレート20は、投影レンズ22の像面(平面)に沿って配置される(図1参照)。
蛍光体プレート20は、ヘッドランプ用配光パターン画像p1が形成されるヘッドランプ用領域A1及び路面描画用パターン画像p2が形成される路面描画用領域A2を含む(図3参照)。ヘッドランプ用領域A1は、路面描画用領域A2の下方に配置される。なお、ヘッドランプ用領域A1と路面描画用領域A2は、互いに重複していてもよいし、互いに重複していなくてもよい。
投影レンズ22は、像面が平面になるように収差(像面湾曲及び色収差)が補正された投影レンズである。投影レンズ22は、1つのレンズによって構成される場合もあるし、複数のレンズによって構成される場合もある。投影レンズ22は、本発明の投影光学系の一例である。
次に、上記構成の車両用灯具10を制御する制御システム30の構成例について説明する。
図6は、制御システム30の概略構成図である。
制御システム30は、制御部32、記憶装置34、光偏向器駆動部&同期信号制御部36、電流強化レーザー駆動部38等を備える。
制御部32は、図示しないが、映像エンジンCPU等のCPU、RAM、ROM等を備える。制御部32は映像エンジンCPU等のCPUがROMからRAM等に読み込まれた所定プログラムを実行することにより光偏向器駆動部&同期信号制御部36、電流強化レーザー駆動部38等を以下のとおり制御する。
記憶装置34には、ヘッドランプ用配光パターンデータ、路面描画用パターンデータ等が予め格納されている。なお、ヘッドランプ用配光パターンデータ等は、所定演算により生成してもよい。例えば、車両前方のマスク対象物(先行車や対向車等の移動体)を照射しない非照射領域を含むADB用配光パターンデータを所定演算により生成してもよい。
ヘッドランプ用配光パターンデータは、各々のピクセル(画素)が複数ビット(輝度値)で表される輝度画像(例えば、640×360ピクセルの輝度画像)である。
路面描画用パターンデータは、各々のピクセル(画素)が複数ビット(輝度値)で表される輝度画像(例えば、800×600ピクセルの輝度画像)である。
図6に示すように、ヘッドランプ用光源12Aは、電流強化レーザー駆動部38に接続されており、電流強化レーザー駆動部38から印加される駆動電流によって制御される。電流強化レーザー駆動部38は、制御部32からの制御に従って、ヘッドランプ用配光パターンデータが表す光分布(輝度分布)のヘッドランプ用配光パターンP1が形成されるように調整された駆動電流を、ヘッドランプ用光源12Aに印加する。
図示しないが、路面描画用光源12Bも、電流強化レーザー駆動部38に接続されており、電流強化レーザー駆動部38から印加される駆動電流によって制御される。電流強化レーザー駆動部38は、制御部32からの制御に従って、路面描画用パターンデータが表す光分布(輝度分布)の路面描画用パターンP2が形成されるように調整された駆動電流を、路面描画用光源12Bに印加する。
光偏向器16(各アクチュエーター)は、偏向器駆動部&同期信号制御部36に接続されており、偏向器駆動部&同期信号制御部36から印加される駆動電圧によって制御される。偏向器駆動部&同期信号制御部36は、制御部32からの制御に従って、ミラー部16aが所定角度範囲内で揺動するように調整された駆動電圧(共振駆動用の駆動電圧及び非共振駆動用の駆動電圧)を、光偏向器16(各アクチュエーター)に印加する。
所定角度範囲は、ヘッドランプ用配光パターン画像p1及び路面描画用パターン画像p2の縦幅及び横幅がそれぞれ予め定められた縦幅及び横幅となる、光偏向器16のミラー部16aの揺動範囲のことである。
駆動電圧が印加された光偏向器16のミラー部16aは、各軸X1、X2を中心に所定角度範囲内で往復揺動し、これに同期して変調されるヘッドランプ用光源12Aからのレーザー光ML及び路面描画用光源12Bからのレーザー光SLを二次元的に(水平方向及び鉛直方向に)走査する。
二次元的に走査されるレーザー光MLは、補正ミラー18で反射されて、蛍光体プレート20上のヘッドランプ用領域A1(図3参照)を照射する。これにより、蛍光体プレート20(ヘッドランプ用領域A1)に白色(正確には、擬似白色)のヘッドランプ用配光パターン画像p1が形成される。
一方、二次元的に走査される路面描画用光源12Bからのレーザー光SLは、補正ミラー18で反射されて、蛍光体プレート20上の路面描画用領域A2(図3参照)を照射する。これにより、蛍光体プレート20(路面描画用領域A2)に白色(正確には、擬似白色)の路面描画用パターン画像p2が形成される。
なお、ヘッドランプ用配光パターン画像p1及び路面描画用パターン画像p2は同時に形成される場合もあるし、ヘッドランプ用配光パターン画像p1のみ形成される場合もあるし、路面描画用パターン画像p2のみ形成される場合もある。
そして、蛍光体プレート20に形成されたヘッドランプ用配光パターン画像p1及び路面描画用パターン画像p2が投影レンズ22によって車両前方に投影(反転投影)されることで、ヘッドランプ用配光パターンP1(図2参照)及び路面描画用パターンP2(図4参照)が形成される。
ヘッドランプ用配光パターン画像p1は、例えば、水平及び垂直方向に格子状に配置された複数ピクセル(例えば、縦640×横360ピクセル)の画像として構成される。各々のピクセルの明るさ(例えば、輝度)は、ヘッドランプ用配光パターンデータが表す光分布(輝度分布)のヘッドランプ用配光パターンが形成されるように調整された駆動電流がヘッドランプ用光源12Aに印加されることで個別に制御される。
路面描画用パターン画像p2は、例えば、水平及び垂直方向に格子状に配置された複数ピクセル(例えば、縦800×横600ピクセル)の画像として構成される。各々のピクセルの明るさ(例えば、輝度)は、路面描画用パターンデータが表す光分布(輝度分布)の路面描画用パターンが形成されるように調整された駆動電流が路面描画用光源12Bに印加されることで個別に制御される。
各々のピクセルから出射して投影レンズ22を透過した光(白色光。正確には擬似白色光)は、光軸AXに対して各々のピクセル位置に応じた角度方向(角度範囲)に照射される。
例えば、蛍光体プレート20の基準位置(例えば、蛍光体プレート20の中心位置)から出射されて投影レンズ22を透過した光は、光軸AXに対して平行の方向に照射されて水平線Hと鉛直線Vとの交点に向かう。また例えば、各々のピクセルサイズが0.2°×0.2°の場合、基準位置に対して下に隣接するピクセルから出射されて投影レンズ22を透過した光は、光軸AXに対して0°~上0.2°の角度範囲に照射される。また例えば、基準位置に対して右(車両前方に向かって右)に隣接するピクセルから出射されて投影レンズ22を透過した光は、光軸AXに対して0°~左0.2°の角度範囲に照射される。他のピクセルから出射されて投影レンズ22を透過した光についても同様で、各々のピクセル位置に応じた角度方向(角度範囲)に照射される。
以上のようにして、法規が求める高光度のヘッドランプ用配光パターンP1及び解像度の高い路面描画用パターンP2が形成される。
次に、路面描画用パターンP2の高光度化を実現するための構成例について説明する。
図7は、路面描画用パターンP2の高光度化を実現するための構成例で、第1路面描画用光源12B1、第2路面描画用光源12B2、偏光ビームスプリッター24、及び、反射ミラー26を備える。
第1路面描画用光源12B1及び第2路面描画用光源12B2は、それぞれのレーザー光SL1、SL2が同一方向(例えば、図7中右方向)かつ互いに平行に出射されるように配置される。
偏光ビームスプリッター24は、第1路面描画用光源12B1から出射されるレーザー光SL1の光路中に配置される。具体的には、偏光ビームスプリッター24は、レーザー光SL1(P偏光)が直進して当該偏光ビームスプリッター24を透過し、かつ、レーザー光SL1(S偏光)が直進方向に対して90°の方向(例えば、図7中上方向)に反射される姿勢で配置される。偏光ビームスプリッター24としては、例えば、キューブ型偏光ビームスプリッターを用いることができる。
反射ミラー26は、第2路面描画用光源12B2から出射されるレーザー光SL2の光路中に配置される。具体的には、反射ミラー26は、当該反射ミラー26で反射されるレーザー光SL2(S偏光)が、直進方向に対して90°の方向(例えば、図7中上方向)に反射されて偏光ビームスプリッター24に入射し、さらに、当該偏光ビームスプリッター24において直進方向に対して90°の方向(例えば、図7中右方向)に反射されてレーザー光SL1(P偏光)と重なり合うように、45°傾斜した姿勢で配置される。
この構成によれば、第1路面描画用光源12B1から出射されるレーザー光SL1と第2路面描画用光源12B2から出射されるレーザー光SL2とが重なり合った状態で同一方向(例えば、図7中右方向)照射される。そのため、この構成全体を路面描画用光源12Bとして用いることで、路面描画用パターンP2の高光度化が実現される。
以上説明したように、本実施形態によれば、法規が求める高光度のヘッドランプ用配光パターンP1及び解像度の高い路面描画用パターンP2(複雑な文字や図形等の画像)を両立させることができる車両用灯具10を提供することができる。
これは、ヘッドランプ用配光パターン画像p1が二次元的に走査される第1スポット径d1のレーザー光MLで蛍光体プレート20に形成され、路面描画用パターン画像p2が二次元的に走査される第1スポット径d1より小さい第2スポット径d2のレーザー光SLで蛍光体プレート20に形成されることによるものである。
また、本実施形態によれば、ヘッドランプ用光源12Aから出射されるレーザー光ML及び路面描画用光源12Bから出射されるレーザー光SLを1つの光偏向器16によって蛍光体プレート20上の2つの領域A1、A2(図3参照)に照射させることができる。
このように、1つの光偏向器16でヘッドランプ用光源12Aから出射されるレーザー光ML及び路面描画用光源12Bから出射されるレーザー光SLを制御するため、光偏向器16の数を削減することができる。また、法規が求める高光度のヘッドランプ用配光パターンP1及び解像度の高い路面描画用パターンP2を両立させることができる車両用灯具10のコンパクト化が可能となる。
次に、変形例について説明する。
図8は、車両用灯具10A(変形例)の概略構成図である。
上記実施形態では、ヘッドランプ用光源12A、路面描画用光源12B及び光偏向器16(さらに、補正ミラー18)の組み合わせを1組用いた例について説明したが、これに限らない。
例えば、図8に示すように、ヘッドランプ用光源12A、路面描画用光源12B及び光偏向器16(さらに、補正ミラー18)の組み合わせを複数組用いてもよい。
図9は、車両用灯具10B(変形例)の概略構成図である。
上記実施形態では、2つの光源(ヘッドランプ用光源12A及び路面描画用光源12B)に対して1つの光偏向器16を用いた例について説明したが、これに限らない。
例えば、図9に示すように、各々の光源12A、12Bに対して1つの光偏向器16を用いてもよい。
図10は、車両用灯具10C(変形例)の概略構成図である。
上記実施形態においては、補正ミラー18(図1等参照)を用いた例について説明したが、これに限らない。
例えば、図10に示すように、補正ミラー18は、省略してもよい。車両用灯具10A~10Cにおいても同様である。
図11は、車両用灯具10D(変形例)の概略図である。
上記実施形態においては、光偏向器16によって二次元的に走査されるレーザー光ML、SLが蛍光体プレート20の後面20aから前面20bに透過するいわゆる透過型の車両用灯具10について説明したが、これに限らない。
例えば、図11に示すように、光偏向器16によって二次元的に走査されるレーザー光ML、SLが蛍光体プレート20の前面20bに入射するいわゆる反射型の車両用灯具10として構成されていてもよい。車両用灯具10A~10Cにおいても同様である。
また、上記実施形態においては、ヘッドランプ用光源12A及び路面描画用光源12Bとして発光波長が青色域のレーザー光源を用い、蛍光体プレート20として波長変換部材を用いることで、蛍光体プレート20に白色のヘッドランプ用配光パターン画像p1及び白色の路面描画用パターン画像p2を形成する例について説明したが、これに限らない。
例えば、ヘッドランプ用光源12A及び路面描画用光源12Bとして白色のレーザー光源を用い、蛍光体プレート20に代えて拡散プレートを用いることで、拡散プレートに白色のヘッドランプ用配光パターン画像及び白色の路面描画用パターン画像を形成してもよい。
白色のレーザー光源、拡散プレートとしては、例えば、上記先行技術文献に記載のものを用いることができる。
上記実施形態及び各変形例で示した各数値は全て例示であり、これと異なる適宜の数値を用いることができる。
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。