A.実施形態:
A−1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1(および後述する図8および図9)のII−IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1(および後述する図8および図9)のIII−IIIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図4は、図1(および後述する図8および図9)のIV−IVの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図5以降についても同様である。
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)燃料電池発電単位(以下、単に「発電単位」という。)102と、下端用セパレータ189と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106のうちの一方(以下、「上側エンドプレート104」という。)は、7つの発電単位102と下端用セパレータ189とから構成される集合体(以下、「発電ブロック103」という。)の上側に配置されており、一対のエンドプレート104,106のうちの他の(以下、「下側エンドプレート106」という。)は、発電ブロック103の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106は、7つの発電単位102と下端用セパレータ189とから構成される集合体(以下、「発電ブロック103」という。)を上下から挟むように配置されている。なお、上記配列方向(上下方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。
図1および図4に示すように、燃料電池スタック100を構成する各層(上側エンドプレート104、各発電単位102、下端用セパレータ189)のZ軸方向回りの外周の4つの角部付近には、各層を上下方向に貫通する孔が形成されており、下側エンドプレート106のZ軸方向回りの外周の4つの角部付近における上側の表面には、孔(ネジ孔)が形成されている。これらの各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、上下方向に延びるボルト孔109を構成している。以下の説明では、ボルト孔109を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、ボルト孔109と呼ぶ場合がある。
各ボルト孔109にはボルト22が挿入されている。各ボルト22の下端部は下側エンドプレート106に形成されたネジ孔に螺号しており、各ボルト22の上端部にはナット24が嵌められている。ナット24の下側の表面は、絶縁シート26を介してエンドプレート104の上側の表面に当接している。このような構成のボルト22およびナット24により、燃料電池スタック100の各層が一体に締結されている。なお、絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
また、図1から図3に示すように、燃料電池スタック100を構成する各層(各発電単位102、下端用セパレータ189、下側エンドプレート106)のZ軸方向回りの周縁部には、各層を上下方向に貫通する4つの孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、最上部の発電単位102から下側エンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。
図1および図2に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周を構成する1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の付近に位置する1つの連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102の後述する空気室166に供給するガス流路である酸化剤ガス供給マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の付近に位置する1つの連通孔108は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へ排出するガス流路である酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、酸化剤ガスOGとしては、例えば空気が使用される。酸化剤ガス供給マニホールド161は、特許請求の範囲における第3のマニホールドに相当し、酸化剤ガス排出マニホールド162は、特許請求の範囲における第4のマニホールドに相当する。
また、図1および図3に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周を構成する辺の内、上述した酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の1つの連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102の後述する燃料室176に供給するガス流路である燃料ガス供給マニホールド171として機能し、上述した酸化剤ガス供給マニホールド161として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の1つの連通孔108は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へ排出するガス流路である燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、燃料ガスFGとしては、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。燃料ガス供給マニホールド171は、特許請求の範囲における第1のマニホールドに相当し、燃料ガス排出マニホールド172は、特許請求の範囲における第2のマニホールドに相当する。
図2および図3に示すように、燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。図2に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド161の位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス供給マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、図3に示すように、燃料ガス供給マニホールド171の位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス供給マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172の位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。なお、各ガス通路部材27と下側エンドプレート106の表面との間には、絶縁シート26が介在している。
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えばステンレス等の導電材料により形成されている。一対のエンドプレート104,106の中央付近には、それぞれ、Z軸方向に貫通する孔32,34が形成されている。Z軸方向視で、一対のエンドプレート104,106のそれぞれに形成された孔32,34の内周線は、後述する各単セル110を内包している。そのため、各ボルト22およびナット24による締結によって生じるZ軸方向の圧縮力は、主として各発電単位102の周縁部(後述する各単セル110より外周側の部分)に作用する。また、本実施形態では、上側エンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側エンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
(下端用セパレータ189の構成)
下端用セパレータ189は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えば金属により形成されている。下端用セパレータ189の周縁部は、発電ブロック103と下側エンドプレート106との間に挟み込まれた状態で、下側エンドプレート106と例えば溶接により接合されており、下側エンドプレート106と電気的に接続されている。
(発電単位102の構成)
図5は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図6は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図7は、図4に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。また、図8は、図5から図7のVIII−VIIIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図であり、図9は、図5から図7のIX−IXの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図である。
図5から図7に示すように、発電単位102は、燃料電池単セル(以下、「単セル」という。)110と、単セル用セパレータ120と、空気極側フレーム130と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電部材144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ190および一対のIC用セパレータ180とを備えている。単セル用セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、IC用セパレータ180におけるZ軸方向回りの周縁部には、各マニホールド161,162,171,172として機能する各連通孔108を構成する孔と、各ボルト孔109を構成する孔とが形成されている。
単セル110は、電解質層112と、電解質層112のZ軸方向の一方側(上側)に配置された空気極114と、電解質層112のZ軸方向の他方側(下側)に配置された燃料極116と、電解質層112と空気極114との間に配置された反応防止層118とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で単セル110を構成する他の層(電解質層112、空気極114、反応防止層118)を支持する燃料極支持形の単セルである。
電解質層112は、Z軸方向視で略矩形の平板形状部材であり、固体酸化物(例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア))を含むように構成されている。すなわち、本実施形態の単セル110は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。空気極114は、Z軸方向視で電解質層112より小さい略矩形の平板形状部材であり、例えばペロブスカイト型酸化物(例えば、LSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物))を含むように構成されている。燃料極116は、Z軸方向視で電解質層112と略同じ大きさの略矩形の平板形状部材であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。反応防止層118は、Z軸方向視で空気極114と略同じ大きさの略矩形の平板形状部材であり、例えばGDC(ガドリニウムドープセリア)とYSZとを含むように構成されている。反応防止層118は、空気極114から拡散した元素(例えば、Sr)が電解質層112に含まれる元素(例えば、Zr)と反応して高抵抗な物質(例えば、SrZrO3)が生成されることを抑制する機能を有する。
単セル用セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。単セル用セパレータ120の板厚は、比較的薄く、例えば0.05mm以上、0.2mm以下程度である。単セル用セパレータ120における貫通孔121を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、単セル110(電解質層112)の周縁部における上側の表面に対向している。単セル用セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、単セル110(電解質層112)と接合されている。単セル用セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリーク(クロスリーク)が抑制される。単セル用セパレータ120は、特許請求の範囲における第1のセパレータに相当する。
単セル用セパレータ120は、単セル用セパレータ120の貫通孔周囲部(貫通孔121を取り囲む部分)を含む内側部126と、内側部126より外周側に位置する外側部127と、内側部126と外側部127とを連結する連結部128とを備える。本実施形態では、内側部126および外側部127は、Z軸方向に略直交する方向に延びる略平板状である。また、連結部128は、内側部126と外側部127との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状となっている。連結部128における下側(燃料室176側)の部分は凸部となっており、連結部128における上側(空気室166側)の部分は凹部となっている。このため、連結部128は、Z軸方向における位置が内側部126および外側部127とは異なる部分を含んでいる。
単セル用セパレータ120における貫通孔121付近には、ガラスを含むガラスシール部125が配置されている。ガラスシール部125は、接合部124に対して空気室166側に位置しており、単セル用セパレータ120の貫通孔周囲部の表面と、単セル110(本実施形態では電解質層112)の表面との両方に接触するように形成されている。ガラスシール部125により、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリーク(クロスリーク)が効果的に抑制される。
インターコネクタ190は、略矩形の平板形状の平板部150と、平板部150から空気極114側に突出した複数の略柱状の空気極側集電部134とを有する導電性の部材であり、金属(例えば、フェライト系ステンレス)により形成されている。本実施形態では、インターコネクタ190の表面(空気室166に面する表面)に、例えばスピネル型酸化物により構成された導電性の被覆層194が形成されている。以下では、被覆層194に覆われたインターコネクタ190を、単にインターコネクタ190という。各発電単位102において、上側のインターコネクタ190(の平板部150)は、単セル110に対して空気室166を挟んで上側に配置されている。上側のインターコネクタ190(の各空気極側集電部134)は、例えばスピネル型酸化物により構成された導電性接合材196を介して、単セル110の空気極114に接合されており、これにより単セル110の空気極114に電気的に接続されている。また、各発電単位102において、下側のインターコネクタ190は、単セル110に対して燃料室176を挟んで下側に配置されており、後述する燃料極側集電部材144を介して、単セル110の燃料極116に電気的に接続されている。インターコネクタ190は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を抑制する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ190は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ190は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ190と同一部材である。また、燃料電池スタック100は下端用セパレータ189を備えているため、燃料電池スタック100において最も下側に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ190を備えていない(図2から図4参照)。
IC用セパレータ180は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔181が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。IC用セパレータ180の板厚は、比較的薄く、例えば0.05mm以上、0.2mm以下程度である。IC用セパレータ180における貫通孔181を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、インターコネクタ190の平板部150の周縁部における上側の表面に例えば溶接により接合されている。ある発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180のうち、上側のIC用セパレータ180は、該発電単位102の空気室166と、該発電単位102に対して上側に隣り合う他の発電単位102の燃料室176とを区画する。また、ある発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180のうち、下側のIC用セパレータ180は、該発電単位102の燃料室176と、該発電単位102に対して下側に隣り合う他の発電単位102の空気室166とを区画する。このように、IC用セパレータ180により、発電単位102の周縁部における発電単位102間のガスのリークが抑制される。なお、燃料電池スタック100において最も上側に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ190に接合されたIC用セパレータ180は、上側エンドプレート104に電気的に接続されている。IC用セパレータ180は、特許請求の範囲における第2のセパレータに相当する。
IC用セパレータ180は、IC用セパレータ180の貫通孔周囲部(貫通孔181を取り囲む部分)を含む内側部186と、内側部186より外周側に位置する外側部187と、内側部186と外側部187とを連結する連結部188とを備える。本実施形態では、内側部186および外側部187は、Z軸方向に略直交する方向に延びる略平板状である。また、連結部188は、内側部186と外側部187との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状となっている。連結部188における下側(空気室166側)の部分は凸部となっており、連結部188における上側(燃料室176側)の部分は凹部となっている。このため、連結部188は、Z軸方向における位置が内側部186および外側部187とは異なる部分を含んでいる。
図5から図8に示すように、空気極側フレーム130は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、単セル用セパレータ120の周縁部における上側の表面と、上側のIC用セパレータ180の周縁部における下側の表面とに接触しており、両者の間のガスシール性(すなわち、空気室166のガスシール性)を確保するシール部材として機能する。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180間(すなわち、一対のインターコネクタ190間)間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス供給マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通流路132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通流路133とが形成されている。酸化剤ガス供給連通流路132は、特許請求の範囲における第3の連通流路に相当し、酸化剤ガス排出連通流路133は、特許請求の範囲における第4の連通流路に相当する。
図5から図7および図9に示すように、燃料極側フレーム140は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、単セル用セパレータ120の周縁部における下側の表面と、下側のIC用セパレータ180の周縁部における上側の表面とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス供給マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通流路142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通流路143とが形成されている。燃料ガス供給連通流路142は、特許請求の範囲における第1の連通流路に相当し、燃料ガス排出連通流路143は、特許請求の範囲における第2の連通流路に相当する。
図5から図7に示すように、燃料極側集電部材144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電部材144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116の下側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ190(の平板部150)の上側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下側に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ190を備えていないため、該発電単位102における燃料極側集電部材144のインターコネクタ対向部146は、下端用セパレータ189に接触している。燃料極側集電部材144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ190(または下端用セパレータ189)とを電気的に接続する。なお、燃料極側集電部材144の電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電部材144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電部材144を介した燃料極116とインターコネクタ190(または下端用セパレータ189)との電気的接続が良好に維持される。
A−2.燃料電池スタック100の動作:
図2および図5に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス供給マニホールド161に供給され、酸化剤ガス供給マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通流路132を介して、空気室166に供給される。また、図3および図6に示すように、燃料ガス供給マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス供給マニホールド171に供給され、燃料ガス供給マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通流路142を介して、燃料室176に供給される。
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は上側のインターコネクタ190に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電部材144を介して下側のインターコネクタ190(または、下端用セパレータ189)に電気的に接続されている。すなわち、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。また、最も上側に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ190およびIC用セパレータ180は、上側エンドプレート104に電気的に接続されており、最も下側に位置する発電単位102の燃料極側集電部材144に電気的に接続された下端用セパレータ189は、下側エンドプレート106に電気的に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
図2および図5に示すように、各発電単位102の空気室166から酸化剤ガス排出連通流路133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出された酸化剤オフガスOOGは、酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、図3および図6に示すように、各発電単位102の燃料室176から燃料ガス排出連通流路143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出された燃料オフガスFOGは、燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
なお、本実施形態の燃料電池スタック100では、図8および図9に示すように、Z軸方向視で、酸化剤ガス供給マニホールド161に連通する酸化剤ガス供給連通流路132と、燃料ガス排出マニホールド172に連通する燃料ガス排出連通流路143とが、単セルの一の辺(図8および図9に示される第2の辺SI2)に(同じ方向に)対向するように配置されており、かつ、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通する酸化剤ガス排出連通流路133と、燃料ガス供給マニホールド171に連通する燃料ガス供給連通流路142とが、単セルの上記第2の辺SI2に対して単セル110の中心点を挟んで対向する他の辺(図8および図9に示され第1の辺SI1)に(同じ方向に)対向するように配置されている。すなわち、本実施形態の発電単位102(燃料電池スタック100)は、空気室166における酸化剤ガスOGの主たる流れ方向(X軸正方向からX軸負方向へ向かう方向)と燃料室176における燃料ガスFGの主たる流れ方向(X軸負方向からX軸正方向へ向かう方向)とが略反対方向(互いに対向する方向)である、カウンターフロータイプのSOFCである。
A−3.ガス流通部材50の構成:
本実施形態の燃料電池スタック100は、さらにガス流通部材50を備える。以下、ガス流通部材50の構成について説明する。図10は、ガス流通部材50の外観構成を概略的に示す説明図である。
図10に示すように、ガス流通部材50は、全体として所定の方向(本実施形態ではY軸方向)に延びる長尺状の部材であり、例えば金属により形成されている。なお、図10では、ガス流通部材50における延伸方向の両端部の図示が省略されている。ガス流通部材50は、板材を断面が波形になるように折り曲げ加工して作製された部材である。すなわち、ガス流通部材50は、ガス流通部材50全体の延伸方向(Y軸方向)に直交する方向(XZ面内方向)に延伸する平板状の複数の部分(以下、「第1の部分51」という。)と、それぞれ、隣り合う2つの第1の部分51の端部間を接続する平板状の複数の第2の部分52とが、ガス流通部材50全体の延伸方向(Y軸方向)に交互に並んだ構成を有している。ガス流通部材50はこのような構成であるため、ガス流通部材50には、上側および下側に、ガス流通部材50全体の延伸方向(Y軸方向)に直交する方向(本実施形態ではX軸方向)に延びる複数の溝CHが形成されていると言える。なお、第1の部分51の延伸方向(XZ面内方向)は、Z軸方向に直交する方向(XY面内方向)に平行ではない。換言すれば、第1の部分51の延伸方向は、Z軸方向に直交する方向(XY面内方向)に交差する方向である。XY面内方向は、特許請求の範囲における第2の方向に相当する。また、本実施形態では、各第2の部分52は、上下方向(Z軸方向)に直交する方向(XY面内方向)に延伸する平板状の部分である。
ガス流通部材50の板厚t1は、0.05mm以上、0.2mm以下程度であり、例えば0.1mmである。また、ガス流通部材50の高さh1(Z軸方向の大きさ)は、0.4mm以上、1.0mm以下程度であり、例えば0.7mmである。なお、ガス流通部材50に形成された溝CHの深さd1は、ガス流通部材50の高さh1と板厚t1との差分(h1−t1)である。また、ガス流通部材50の幅W1(X軸方向の大きさ)は、1mm以上、7mm以下程度であり、例えば4mmである。また、ガス流通部材50における隣り合う2つの第1の部分51の間の距離l1は、例えば5mm以上、15mm以下程度であり、例えば10mmである。
図5、図6および図9に示すように、ガス流通部材50は、発電単位102における燃料室176内に配置されている。本実施形態では、燃料電池スタック100に含まれるすべての発電単位102の燃料室176に、それぞれ2つのガス流通部材50(第1のガス流通部材50aおよび第2のガス流通部材50b)が配置されている。
図5および図6に示すように、各発電単位102において、2つのガス流通部材50は、Z軸方向視で、単セル用セパレータ120およびIC用セパレータ180と重なる位置に配置されている。より具体的には、2つのガス流通部材50は、Z軸方向視で、単セル用セパレータ120およびIC用セパレータ180の各連結部128、188と重なる位置に配置されている。
また、図6および図9に示すように、第1のガス流通部材50aは、Z軸方向視で、燃料ガス供給連通流路142と単セル110およびインターコネクタ190との間に配置され、第2のガス流通部材50bは、Z軸方向視で、燃料ガス排出連通流路143と単セル110およびインターコネクタ190との間に配置されている。なお、上述したように、本実施形態の燃料電池スタック100はカウンターフロータイプのSOFCであるため、第1のガス流通部材50aは、Z軸方向視で、酸化剤ガス排出連通流路133と単セル110およびインターコネクタ190との間に配置され、第2のガス流通部材50bは、Z軸方向視で、酸化剤ガス供給連通流路132と単セル110およびインターコネクタ190との間に配置されているとも言える(図5参照)。
また、図9に示すように、本実施形態では、第1のガス流通部材50a全体の延伸方向(Y軸方向)は、単セル110における燃料ガス供給連通流路142に対向する辺である第1の辺SI1と平行である。また、第1の辺SI1に平行な方向(Y軸方向)に沿った第1のガス流通部材50aの長さL0は、第1の辺SI1の長さL1の2分の1以上となっている。より具体的には、第1のガス流通部材50aの長さL0は、第1の辺SI1の長さL1以上となっている。同様に、第2のガス流通部材50b全体の延伸方向(Y軸方向)は、単セル110における燃料ガス排出連通流路143に対向する辺である第2の辺SI2と平行である。また、第2の辺SI2に平行な方向(Y軸方向)に沿った第2のガス流通部材50bの長さL0は、第2の辺SI2の長さL1の2分の1以上となっている。より具体的には、第2のガス流通部材50bの長さL0は、第2の辺SI2の長さL1以上となっている。
上述したように、各ガス流通部材50には、X軸方向に延びる複数の溝CHが形成されている。各溝CHの延伸方向(X軸方向)は、燃料室176における燃料ガスFGの主たる流れ方向と一致している。燃料ガス供給マニホールド171から燃料ガス供給連通流路142を介して燃料室176に供給された燃料ガスFGの少なくとも一部は、第1のガス流通部材50aに形成された各溝CH内を通過して単セル110(燃料極116)に面する位置に至り、また、単セル110に面する位置から第2のガス流通部材50bに形成された各溝CH内を通過して燃料ガス排出連通流路143に面する位置に至り、燃料ガス排出連通流路143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出される。すなわち、溝CHの存在により、ガス流通部材50を燃料室176内に配置しても、燃料室176における燃料ガスFGの流れが阻害されることを抑制することができる。
なお、本実施形態では、各ガス流通部材50は、他の部材(IC用セパレータ180や単セル用セパレータ120)に固定されてはおらず、IC用セパレータ180の上に載置されている。ただし、所定の方法(例えば、ロウ付けや溶接等)により、各ガス流通部材50が他の部材に接合されて固定されていてもよい。また、本実施形態では、燃料電池スタック100の組立時における燃料室176の高さの変化(減少)を考慮して、各ガス流通部材50の高さh1が燃料室176の設計高さより低く設定されている。そのため、各ガス流通部材50がIC用セパレータ180の上に載置された状態では、各ガス流通部材50と単セル用セパレータ120とが接触していない。
A−4.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の燃料電池スタック100は、Z軸方向に並べて配置された複数の発電単位102を備える。各発電単位102は、単セル110と単セル用セパレータ120とを有する。各単セル110は、電解質層112と、電解質層112に対して上側に配置された空気極114と、電解質層112に対して下側に配置された燃料極116とを含む。各単セル用セパレータ120は、貫通孔121が形成され、貫通孔121を取り囲む部分が単セル110の周縁部と接合され、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とを区画する部材である。また、燃料電池スタック100には、各発電単位102の燃料室176にガスを供給する燃料ガス供給マニホールド171と、各発電単位102の燃料室176からガスを排出する燃料ガス排出マニホールド172と、燃料ガス供給マニホールド171と各発電単位102の燃料室176とをつなぐ燃料ガス供給連通流路142と、燃料ガス排出マニホールド172と各発電単位102の燃料室176とをつなぐ燃料ガス排出連通流路143とが形成されている。また、各発電単位102は、さらにガス流通部材50を備える。ガス流通部材50には、ガスが流れる溝CHが形成されている。ガス流通部材50は、燃料室176内における、Z軸方向視で、燃料ガス供給連通流路142および燃料ガス排出連通流路143と単セル110との間に配置されると共に、単セル用セパレータ120と重なって配置されている。
ここで、燃料電池スタック100の発電運転中には、各発電単位102において、燃料室176内のガスの圧力と空気室166内のガスの圧力との間に差が生じる。具体的には、空気室166内のガスの圧力が、燃料室176内のガスの圧力より高くなる。そのため、燃料室176と空気室166との間のガスの圧力差に起因して、燃料室176と空気室166とを区画する単セル用セパレータ120に応力が生じ、単セル用セパレータ120における単セル110や他の部材に支持されていない部分が変形する(燃料室176の高さが低くなるように変形する)おそれがある。また、単セル用セパレータ120のうち、Z軸方向視で燃料ガス供給連通流路142および燃料ガス排出連通流路143と単セル110との間に位置する部分は、上記変形が発生した場合に、燃料ガス供給マニホールド171および燃料ガス排出マニホールド172と燃料室176との間のガスの流れが阻害されて燃料電池スタック100の性能に悪影響を及ぼしやすい部分である。
しかしながら、上述したように、本実施形態の燃料電池スタック100は、燃料室176内における、Z軸方向視で、燃料ガス供給連通流路142および燃料ガス排出連通流路143と単セル110との間に配置されると共に、単セル用セパレータ120と重なって配置されたガス流通部材50を備える。そのため、ガス流通部材50の存在により、ガス流通部材50が配置されていない形態と比較して、Z軸方向視で、燃料ガス供給連通流路142および燃料ガス排出連通流路143と単セル110との間の位置において、単セル用セパレータ120の上記変形が発生することを抑制することができる。そのため、単セル用セパレータ120の変形に起因して燃料ガス供給マニホールド171および燃料ガス排出マニホールド172と燃料室176との間のガスの流れが阻害されることを抑制することができ、ひいては燃料電池スタック100の性能が低下することを抑制することができる。
また、ガス流通部材50には、ガスが流れる溝CHが形成されているため、ガス流通部材50を、燃料室176内における、Z軸方向視で、燃料ガス供給連通流路142および燃料ガス排出連通流路143と単セル110との間に配置しても、ガス流通部材50の存在によって燃料室176内におけるガスの流れが阻害されることを抑制することができる。
以上のことから、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、燃料室176内におけるガスの流れが阻害されることを抑制しつつ、単セル用セパレータ120の変形に起因して燃料電池スタック100の性能が低下することを抑制することができる。
なお、本実施形態では、燃料電池スタック100に含まれるすべての発電単位102がガス流通部材50を備えているため、ある発電単位102の単セル用セパレータ120の変形に起因して発電単位102毎の燃料ガスFGの流路の圧損に差が生じることを抑制することができ、該圧損の差に起因して発電単位102毎の燃料ガスFGの供給量に差が生じることを抑止することができ、その結果、燃料電池スタック100全体の性能が低下することを抑制することができる。
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、各発電単位102は、さらに、インターコネクタ190とIC用セパレータ180とを有する。インターコネクタ190は、単セル110に対して燃料室176を挟んで下側に配置され、燃料極116に電気的に接続された導電性の部材である。IC用セパレータ180は、貫通孔181が形成され、貫通孔181を取り囲む部分がインターコネクタ190の周縁部と接合され、燃料室176と、他の発電単位102の空気室166とを区画する部材である。また、ガス流通部材50は、燃料室176内における、Z軸方向視で、燃料ガス供給連通流路142および燃料ガス排出連通流路143とインターコネクタ190との間に配置されると共に、IC用セパレータ180と重なって配置されている。
上述したように、燃料電池スタック100の発電運転中には、各発電単位102において、燃料室176内のガスの圧力と空気室166内のガスの圧力との間に差が生じる。そのため、一の発電単位102の燃料室176内のガスの圧力と、該発電単位102に隣り合う他の発電単位102の空気室166内のガスの圧力との間にも差が生じる。具体的には、該他の発電単位102の空気室166内のガスの圧力が、該一の発電単位102の燃料室176内のガスの圧力より高くなる。そのため、両者のガスの圧力差に起因して、一の発電単位102の燃料室176と他の発電単位102の空気室166とを区画するIC用セパレータ180に応力が生じ、IC用セパレータ180におけるインターコネクタ190や他の部材に支持されていない部分が変形する(燃料室176の高さが低くなるように変形する)おそれがある。また、IC用セパレータ180のうち、Z軸方向視で燃料ガス供給連通流路142および燃料ガス排出連通流路143とインターコネクタ190との間に位置する部分は、上記変形が発生した場合に、燃料ガス供給マニホールド171および燃料ガス排出マニホールド172と燃料室176との間のガスの流れが阻害されて燃料電池スタック100の性能に悪影響を及ぼしやすい部分である。
しかしながら、上述したように、本実施形態の燃料電池スタック100では、ガス流通部材50は、燃料室176内における、Z軸方向視で、燃料ガス供給連通流路142および燃料ガス排出連通流路143とインターコネクタ190との間に配置されると共に、IC用セパレータ180と重なって配置される。そのため、ガス流通部材50の存在により、ガス流通部材50が配置されていない形態と比較して、Z軸方向視で、燃料ガス供給連通流路142および燃料ガス排出連通流路143とインターコネクタ190との間の位置において、IC用セパレータ180の上記変形が発生することを抑制することができる。そのため、IC用セパレータ180の変形に起因して燃料ガス供給マニホールド171および燃料ガス排出マニホールド172と燃料室176との間のガスの流れが阻害されることを抑制することができ、ひいては燃料電池スタック100の性能が低下することを抑制することができる。
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、ガス流通部材50は、Z軸方向に直交する方向(XY面方向)に交差する方向に延伸する平板状の複数の第1の部分51を有する。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、ガス流通部材50の複数の第1の部分51が、Z軸方向に変形しようとする単セル用セパレータ120を支える支持柱のように機能し、単セル用セパレータ120がZ軸方向に変形することを効果的に抑制することができ、単セル用セパレータ120の変形に起因して燃料電池スタック100の性能が低下することを効果的に抑制することができる。
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、ガス流通部材50は、隣り合う2つの第1の部分51の端部間を接続する平板状の第2の部分52を有する。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、ガス流通部材50を燃料室176内におけるガスの流れが阻害されることを抑制できる構成としつつ、比較的シンプルで作製容易な構成とすることができる。
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、Z軸方向視で、単セル110における燃料ガス供給連通流路142に対向する辺である第1の辺SI1に平行な方向に沿ったガス流通部材50(第1のガス流通部材50a)の長さ(の合計)は、第1の辺SI1の長さの2分の1以上である。同様に、Z軸方向視で、単セル110における燃料ガス排出連通流路143に対向する辺である第2の辺SI2に平行な方向に沿ったガス流通部材50(第2のガス流通部材50b)の長さ(の合計)は、第2の辺SI2の長さの2分の1以上である。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、ガス流通部材50を十分に長くすることができ、ガス流通部材50の存在によって広範囲にわたって単セル用セパレータ120がZ軸方向に変形することを効果的に抑制することができ、単セル用セパレータ120の変形に起因して燃料電池スタック100の性能が低下することを効果的に抑制することができる。
また、本実施形態の燃料電池スタック100には、各発電単位102の空気室166にガスを供給する酸化剤ガス供給マニホールド161と、各発電単位102の空気室166からガスを排出する酸化剤ガス排出マニホールド162と、酸化剤ガス供給マニホールド161と各発電単位102の空気室166とをつなぐ酸化剤ガス供給連通流路132と、酸化剤ガス排出マニホールド162と各発電単位102の空気室166とをつなぐ酸化剤ガス排出連通流路133とが形成されている。Z軸方向視で、燃料ガス供給連通流路142と酸化剤ガス排出連通流路133とは、単セル110の第1の辺SI1に対向するように配置され、かつ、燃料ガス排出連通流路143と酸化剤ガス供給連通流路132とは、単セル110の第1の辺SI1に対して単セル110の中心点を挟んで対向する第2の辺SI2に対向するように配置されている。また、ガス流通部材50は、燃料室176内における、Z軸方向視で、酸化剤ガス供給連通流路132および酸化剤ガス排出連通流路133と単セル110との間に配置されている。
ここで、各発電単位102において、単セル用セパレータ120のうち、Z軸方向視で酸化剤ガス供給連通流路132および酸化剤ガス排出連通流路133と単セル110との間に位置する部分は、空気室166における圧力が局所的に高い領域に面する部分であるためにZ軸方向に変形しやすい部分である。上述したように、本実施形態の燃料電池スタック100では、ガス流通部材50が、燃料室176内における、Z軸方向視で、酸化剤ガス供給連通流路132および酸化剤ガス排出連通流路133と単セル110との間に配置されている。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、ガス流通部材50の存在により、単セル用セパレータ120における上述した変形しやすい部分がZ軸方向に変形することを抑制することができ、単セル用セパレータ120の変形に起因して燃料電池スタック100の性能が低下することを効果的に抑制することができる。
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
上記実施形態における燃料電池スタック100の構成や燃料電池スタック100を構成する各部分の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、2つのガス流通部材50が、Z軸方向視で、単セル用セパレータ120およびIC用セパレータ180の各連結部128、188と重なる位置に配置されているが、2つのガス流通部材50は、Z軸方向視で、単セル用セパレータ120およびIC用セパレータ180における各連結部128、188以外の部分と重なる位置に配置されていてもよい。また、上記実施形態では、単セル用セパレータ120およびIC用セパレータ180が、連結部128,188を有しているが、単セル用セパレータ120およびIC用セパレータ180が、連結部128,188を有さなくてもよい。
また、上記実施形態では、燃料室176内における、Z軸方向視で、燃料ガス供給連通流路142と単セル110との間に1つのガス流通部材50(第1のガス流通部材50a)が配置されているが、該位置に複数のガス流通部材50が配置されていてもよい。同様に、上記実施形態では、燃料室176内における、Z軸方向視で、燃料ガス排出連通流路143と単セル110との間に1つのガス流通部材50(第2のガス流通部材50b)が配置されているが、該位置に複数のガス流通部材50が配置されていてもよい。
また、上記実施形態では、Z軸方向視で、単セル110における燃料ガス供給連通流路142に対向する辺である第1の辺SI1に平行な方向に沿ったガス流通部材50(第1のガス流通部材50a)の長さは、第1の辺SI1の長さの2分の1以上であり、Z軸方向視で、単セル110における燃料ガス排出連通流路143に対向する辺である第2の辺SI2に平行な方向に沿ったガス流通部材50(第2のガス流通部材50b)の長さは、第2の辺SI2の長さの2分の1以上であるが、第1のガス流通部材50aと第2のガス流通部材50bとの少なくとも一方の長さがより短いとしてもよい。
また、上記実施形態では、ガス流通部材50が、燃料室176内における、Z軸方向視で、燃料ガス供給連通流路142および燃料ガス排出連通流路143と単セル110との間に配置されているが、ガス流通部材50が、燃料室176内における、Z軸方向視で、燃料ガス供給連通流路142と燃料ガス排出連通流路143との一方と、単セル110との間に配置されているとしてもよい。
また、上記実施形態では、燃料電池スタック100に含まれるすべての発電単位102がガス流通部材50を備えているが、必ずしも燃料電池スタック100に含まれるすべての発電単位102がガス流通部材50を備えている必要はなく、少なくとも1つの発電単位102がガス流通部材50を備えていればよい。なお、ガス流通部材50を備える発電単位102は、特許請求の範囲における特定電気化学反応単位に相当する。
また、上記実施形態では、ガス流通部材50が、燃料室176内における、Z軸方向視で、燃料ガス供給連通流路142および燃料ガス排出連通流路143とインターコネクタ190との間に配置されると共に、IC用セパレータ180と重なって配置されているが、必ずしもこのような構成である必要はない。また、燃料電池スタック100がIC用セパレータ180を備えている必要はなく、インターコネクタ190が燃料電池スタック100の周縁部(Z軸方向視で空気極側フレーム130や燃料極側フレーム140と重なる部分)まで延伸していてもよい。
また、上記実施形態では、ガス流通部材50は、板材を断面が波形になるように折り曲げ加工して作製された部材であり、ガス流通部材50全体の延伸方向(Y軸方向)に直交する方向(XZ面内方向)に延伸する平板状の複数の第1の部分51と、それぞれ、隣り合う2つの第1の部分51の端部間を接続する平板状の複数の第2の部分52とが、ガス流通部材50全体の延伸方向(Y軸方向)に交互に並んだ構成を有しているが、ガス流通部材50の構成は種々変形可能である。例えば、第1の部分51の延伸方向は、XZ面内方向に限らず、Z軸方向に直交する方向(XY面内方向)に交差する方向(換言すれば、XY面内方向に平行ではない方向)であれば、他の方向であってもよい。また、図11のA欄に示す変形例のように、ガス流通部材50が有する第2の部分52の数は、1つであってもよい。すなわち、ガス流通部材50は、1つの第2の部分52と、該第2の部分52から一方の側(例えば下側)に延びる複数の第1の部分51とを有する構成であってもよい。
また、上記実施形態では、ガス流通部材50にガスが流れる溝CHが形成されているが、例えば図11のB欄に示す変形例のように、ガス流通部材50に、溝CHに代えて、あるいは、溝CHと共に、ガスが流れる孔HOが形成されていてもよい。
また、図11のC欄に示す変形例のように、ガス流通部材50は、ガス流通部材50全体の延伸方向(Y軸方向)に直交する方向(XZ面内方向)に非平行な平板状の複数の第1の部分51が並んだ断面波形(山形)の構成であってもよい。なお、このような構成においても、第1の部分51の延伸方向は、Z軸方向に直交する方向(XY面内方向)に平行ではない。換言すれば、第1の部分51の延伸方向は、Z軸方向に直交する方向(XY面内方向)に交差する方向である。
また、図12および図13の各欄に示す変形例のように、ガス流通部材50は、Z軸方向に略直交する略平板状の基板54から複数の中空または密実な凸部55がZ軸方向に突出した構成であってもよい。このような構成のガス流通部材50では、各凸部55間に、ガス流通部材50全体の延伸方向(Y軸方向)に直交する方向(本変形例ではX軸方向)に延びる溝CHが形成されている。なお、図12のA〜C欄に示す変形例では、各凸部55が略直方体状であり、図13のA欄に示す変形例では、各凸部55が略円柱状であり、図13のB欄に示す変形例では、各凸部55が略半球状である。図12および図13の各欄に示す変形例において、凸部55の形状が他の形状であってもよい。このような構成のガス流通部材50は、例えば、プレス加工や折り曲げ加工により作製することができる。
なお、図12のA欄に示す変形例では、各凸部55が、基板54からXZ面内方向に延伸する2つの平板状部分56と、2つの平板状部分56の先端部間を接続し、XY面内方向に延伸する1つの平板状部分57とから構成されている。そのため、この変形例においては、各凸部55の位置に、ガス流通部材50全体の延伸方向(Y軸方向)に直交する方向(本変形例ではX軸方向)に延びる孔HOが形成されている。図12のA欄に示す変形例において、各凸部55の各平板状部分56は上記第1の部分51に該当し、各凸部55の平板状部分57および基板54は上記第2の部分52に該当する。また、図12のB欄に示す変形例では、各凸部55が、基板54からXZ面内方向に延伸する1つの平板状部分56と、該平板状部分56の先端からXY面内方向に延伸する1つの平板状部分57とから構成されている。そのため、この変形例においては、各凸部55の位置にも、ガス流通部材50全体の延伸方向(Y軸方向)に直交する方向(本変形例ではX軸方向)に延びる溝CHが形成されている。図12のB欄に示す変形例において、各凸部55の平板状部分56は上記第1の部分51に該当し、基板54は上記第2の部分52に該当する。また、図12のC欄に示す変形例では、各凸部55が、基板54からXZ面内方向に延伸する2つの平板状部分56と、基板54からYZ面内方向に延伸する2つの平板状部分58と、2つの平板状部分56の先端部間および2つの平板状部分58の先端部間を接続し、XY面内方向に延伸する1つの平板状部分57とから構成されている。図12のC欄に示す変形例において、各凸部55の各平板状部分56は上記第1の部分51に該当し、各凸部55の平板状部分57および基板54は上記第2の部分52に該当する。
また、上記実施形態では、ガス流通部材50が、板状部材を加工した構成を有しているが、ガス流通部材50は、ガスが流れる多数の孔が形成されたメッシュ状の部材であってもよい。図14および図15は、ガス流通部材50としてメッシュ状の部材を用いた変形例における互いに隣接する2つの発電単位102の断面構成を示す説明図である。このようなメッシュ状の部材としては、例えば、ニッケルメッシュを用いることができる。このような構成とすれば、ガス流通部材50を、燃料室176内におけるガスの流れが阻害されることを抑制できる構成としつつ、比較的シンプルで作製容易な構成とすることができる。なお、メッシュ状の部材のメッシュ繊維の直径は、例えば0.03〜0.06mm程度とすることができる。
また、上記実施形態では、一対のエンドプレート104,106に孔32,34が形成されているが、一対のエンドプレート104,106の少なくとも一方について該孔32,34が形成されていなくてもよい。また、上記実施形態では、一対のエンドプレート104,106がターミナルプレートとして機能するが、一対のエンドプレート104,106とは別に、ターミナルプレートを設けてもよい。
また、上記実施形態では、インターコネクタ190は導電性の被覆層194を含んでいるが、インターコネクタ190が該被覆層194を含んでいなくてもよい。また、上記実施形態では、単セル110が反応防止層118を有しているが、単セル110が反応防止層118を有さないとしてもよい。また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる単セル110の個数(発電単位102の個数)は、あくまで一例であり、単セル110の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。また、上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。
また、上記実施形態の燃料電池スタック100は、カウンターフロータイプのSOFCであるが、本明細書に開示される技術は、コフロータイプのSOFCにも同様に適用可能である。なお、コフロータイプのSOFCでは、Z軸方向視で、燃料ガス供給連通流路142と酸化剤ガス供給連通流路132とは、単セル110の一の辺に対向するように配置され、かつ、燃料ガス排出連通流路143と酸化剤ガス排出連通流路133とは、単セル110の該一の辺に対して単セル110の中心点を挟んで対向する他の辺に対向するように配置されているような構成を有している。また、本明細書に開示される技術は、クロスフロータイプのSOFCにも同様に適用可能である。
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池スタック100を対象としているが、本明細書に開示される技術は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解単セルを複数備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの基本的な構成は、例えば特開2016−81813号公報に記載されているように公知であるが、おおよそ以下の通りである。すなわち、電解セルスタックの構成は、上述した実施形態の燃料電池スタック100の構成において、「発電単位」を「電解セル単位」と読み替え、「単セル」を「電解単セル」と読み替え、「酸化剤ガス供給マニホールド」を「空気排出マニホールド」と読み替え、「酸化剤ガス排出マニホールド」を「空気供給マニホールド」と読み替え、「燃料ガス供給マニホールド」を「水素排出マニホールド」と読み替え、「燃料ガス排出マニホールド」を「水蒸気供給マニホールド」と読み替え、「酸化剤ガス供給連通流路」を「空気排出連通流路」と読み替え、「酸化剤ガス排出連通流路」を「空気供給連通流路」と読み替え、「燃料ガス供給連通流路」を「水素排出連通流路」と読み替え、「燃料ガス排出連通流路」を「水蒸気供給連通流路」と読み替えた構成である。
電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極(水素極)116がマイナス(陰極)となるように、電解セルスタックに電圧が印加される。また、ガス通路部材27を介して水蒸気供給マニホールドに原料ガスとしての水蒸気が供給される。なお、供給される水蒸気に、水素ガスが含まれていてもよい。水蒸気供給マニホールドに供給された水蒸気は、水蒸気供給マニホールドから各電解セル単位の水蒸気供給連通流路を介して燃料室176に供給され、各電解単セルにおける水の電気分解反応に供される。各電解単セルにおける水の電気分解反応により燃料室176で発生した水素ガスは、余った水蒸気と共に水素排出連通流路を介して水素排出マニホールドに排出され、水素排出マニホールドからガス通路部材27を経て電解セルスタックの外部に取り出される。
また、電解セルスタックの運転の際には、電解セルスタックの温度の制御等のために、必要により空気が電解セルスタックの内部に供給される。この場合には、ガス通路部材27を介して空気供給マニホールドに供給された空気が、空気供給マニホールドから各電解セル単位の空気供給連通流路を介して、空気室166に供給される。空気室166に供給された空気は、空気極114で生成される酸素とともに空気排出連通流路を介して空気排出マニホールドに排出され、空気排出マニホールドからガス通路部材27を経て電解セルスタックの外部に排出される。
このような構成の電解セルスタックにおいても、上記実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成を採用することにより、上記実施形態における燃料電池スタック100の作用効果と同様の作用効果を奏する。
また、上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本明細書に開示される技術は、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池(または電解セル)にも適用可能である。