JP6944697B2 - 糸状菌におけるゲノム編集を用いる多段階による多重変異株の製造方法 - Google Patents

糸状菌におけるゲノム編集を用いる多段階による多重変異株の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、糸状菌におけるゲノム編集プラスミドベクター、及び該ゲノム編集プラスミドベクターを用いた糸状菌における多段階による多重変異株の製造方法等に関する。
糸状菌の一種である麹菌(アスペルギルス・オリゼ:Aspergillus oryzae)は日本酒、醤油、味噌といった日本における伝統的醸造製品の製造に古くから用いられてきた糸状菌であり、日本醸造学会により国菌として認定されている微生物である(Kitamoto, 2002)。A. oryzaeは優れたタンパク質分泌能力を有しており、実際にA. oryzaeを用いて有用なタンパク質が生産されている(Ito et al., 2007; Nakajima et al., 2006; Tsuchiya et al., 1992, 1994)。また、世界保健機関 (WHO) および国際食糧農業機関 (FAO) によりA. oryzaeは安全性の高い菌として認められており(Barbesgaard et al., 1992)、食品・化成品・医療品向けの酵素剤および代謝化合物の生産にも利用されている。
A. oryzaeの遺伝子操作技術としては、1987年に形質転換系が開発され(Gomi et al., 1987)、今日までに栄養要求性、薬剤耐性を利用した選択マーカーが開発されてきた(Gomi et al., 1987, Yamada et al., 1997, Kubodera et al., 2000, Mattern et al., 1987, Jin et al., 2004)。また、2005年にA. oryzae野生株であるRIB40株のゲノム解読が完了し、ゲノム情報の利用が可能となった(Machida et al., 2005)。しかし、当時用いられていた株は相同組換え頻度が低く、目的とする遺伝子改変は容易ではなかった。この問題の解決のため、非相同組換え修復に関与するligD遺伝子やku70遺伝子の破壊により高頻度で相同組換えが可能な株が取得され、遺伝子改変の効率は著しく向上した(Takahashi et al., 2006; Escano et al., 2009; Mizutani et al., 2008; Maruyama and Kitamoto, 2008)。しかしながら、このような効率的なA. oryzaeの遺伝子操作の基盤は野生株RIB40など限られた株においてしか整備されていなかった。
産業上用いられるA. oryzae株実用株については、古くから用いられてきたことに起因して膨大な種類の株が存在している(NRIB: http://www.nrib.go.jp/data/asp/strain.html)。これらの株の特性の解析や有用な株の育種には遺伝子操作技術が必要となるが、個々の実用株において遺伝子操作基盤を整備するには多大な労力と時間を要する。
近年、複数のゲノム編集技術が確立された(Ul Ain et al., 2015)。これらはゲノム上の任意の部位をヌクレアーゼで切断することにより、切断部位での変異の導入や相同組換えを誘発する方法である。そのうち、clustered regulatory interspaced short palindromic repeats (CRISPR)/Cas9システムはStreptococcus属のヌクレアーゼであるCas9とゲノム上の標的部位にCas9を誘導するガイドRNAの2つの構成因子からなる簡便な方法であり、酵母や動植物まで幅広く用いられている(非特許文献1)。これまでに複数の糸状菌においてもこのシステムを応用したゲノム編集技術が確立されている(Liu et al., 2015; Arazoe et al., 2015; Nodvig et al., 2015; Fuller et al., 2015; Pohl et al., 2016)。
最近、KatayamaらはA. oryzaeにおいてCas9とガイドRNAを発現するプラスミドを導入することで標的とする遺伝子に変異導入が可能であることを示し、CRISPR/Cas9システムを用いたA. oryzaeにおけるゲノム編集技術を確立した(非特許文献2)。さらに、この技術はRIB40に由来する株だけでなく実用株においても有効であることも示された(非特許文献2)。
一方、特許文献1には、ネガティブ選択マーカー遺伝子およびポジティブ選択マーカー遺伝子を含む融合遺伝子であって、該ネガティブ選択マーカー遺伝子および該ポジティブ選択マーカー遺伝子はそれぞれ第1および第2のプロモーターに作動可能に連結されており、該ネガティブ選択マーカー遺伝子がコードするポリペプチドは、レバンスクラーゼ活性を有しかつシグナル配列の切断活性を有していないポリペプチド、またはレバンスクラーゼ活性を有しかつシグナル配列を有していないポリペプチドであることを特徴とする融合遺伝子が記載されている。又、該融合遺伝子をグラム陽性菌細胞内に導入する工程;ポジティブ選択のための条件下で該細胞を培養する工程;上記ネガティブ選択マーカー遺伝子を除去する工程;およびネガティブ選択のための条件下で該細胞を培養する工程を包含することを特徴とする、目的の細胞を二重選択する方法が記載されている。
特開2008−199963号公報
Doudna JA & Charpentier E (2014) The new frontier of genome engineering with CRISPR-Cas9. Science 346: 1258096-1-1258096-9 Katayama T, Tanaka Y, Okabe T, Nakamura H, Fujii W, Kitamoto K, & Maruyama J (2016) Development of a genome editing technique using the CRISPR/Cas9 system in the industrial filamentous fungus Aspergillus oryzae. Biotechnol Lett 38: 637-642 Liu Q, Gao R, Li J, Lin L, Zhao J, Sun W, & Tian C (2017) Development of a genome-editing CRISPR/Cas9 system in thermophilic fungal Myceliophthora species and its application to hyper-cellulase production strain engineering. Biotechnol Biofuels 10:1 Gems D, Johnstone IL, Clutterbuck AJ (1991). An autonomously replicating plasmid transforms Aspergillus nidulans at high frequency. Gene 98:61-7
CRISPR/Cas9システム等を用いたゲノム編集技術では、別々の遺伝子を標的とするガイドRNAを同時に発現させることにより、一度に複数の遺伝子に変異を導入することも可能である。しかし、同時に改変する遺伝子の数が増えるに従ってその効率が低下することが報告されており(非特許文献3)、一度に改変できる遺伝子数には限りがあると考えられる。一方、多段階で複数の遺伝子を改変するためには、一度株に導入したDNA断片やプラスミドを除去しなければならない。これまで糸状菌において、プラスミドの自律複製を可能とするAspergillus nidulans由来のDNA断片AMA1を含むプラスミドを用いた際に、一度導入したゲノム編集プラスミドが脱落することが報告されている(非特許文献4)。しかしながら、複数回の継代が必要であり、株の取得に時間を要するという問題がある。
従って、ゲノム編集技術を用いて数多くの遺伝子に変異を有する株を効率的に作製するためには新たな手法の確立が必要である。
本発明者らは鋭意研究の結果、プラスミドの自律複製を可能とするA. nidulans由来のDNA断片AMA1および高発現により生育を著しく悪化させるAoace2遺伝子を特定の条件で高発現できるよう設計したDNA断片をゲノム編集プラスミドに挿入した。作製したプラスミドを用い、まずゲノム編集による変異導入を行い標的とする遺伝子の変異株を作製し、次にAoace2を高発現できる培地に植え継ぐことで一度導入したゲノム編集プラスミドを脱落した変異株を効率的に選択することに成功した。さらにプラスミドを脱落した変異株に別の遺伝子を標的とするゲノム編集プラスミドを導入することによって二重変異株の作製に成功して本発明を完成させ、上記の課題を解決することができた。
即ち、本発明は以下の各態様に係る。
[態様1]
糸状菌用のゲノム編集プラスミドベクターであって、
(1)Cas9ヌクレアーゼをコードする遺伝子、
(2)1つ又は複数の異なるゲノム標的部位の夫々に対するガイドRNAをコードする遺伝子
(3)ポジティブ選択マーカー遺伝子、及び
(4)ネガティブ選択マーカー遺伝子、
を含む前記プラスミドベクター。
[態様2]
ポジティブ選択マーカー遺伝子が薬剤耐性遺伝子である、態様1記載のプラスミドベクター。
[態様3]
ネガティブ選択マーカー遺伝子が転写因子をコードする遺伝子であって、該遺伝子の過剰発現によって該遺伝子を保持する形質転換体の生育が阻害される作用を有することを特徴とする、態様1又は2記載のプラスミドベクター。
[態様4]
ネガティブ選択マーカー遺伝子が誘導性プロモーターと作動可能に連結されている、態様3記載のベクター。
[態様5]
ネガティブ選択マーカー遺伝子がAoace2であり、誘導性プロモーターがamyBプロモーターである、態様4記載のベクター。
[態様6]
糸状菌が麹菌である、態様1〜5のいずれか一項に記載のベクター。
[態様7]
麹菌が実用株である、態様6に記載のベクター。
[態様8]
糸状菌におけるゲノム編集を用いた多段階による多重変異株の製造方法であって、
(A)態様1〜7のいずれか一項に記載のゲノム編集プラスミドベクターにより糸状菌を形質転換し、得られた形質転換体をポジティブ選択マーカー遺伝子用の条件下で培養することによって形質を安定させ、該ゲノム編集プラスミドベクターに含まれるCas9ヌクレアーゼ及びガイドRNAの作用によって該形質転換体の1つ以上のゲノム標的部位に変異を導入する工程;
(B)前の工程で得られた変異株をネガティブ選択マーカー遺伝子用の条件下で培養することによって、該変異株から前記ゲノム編集プラスミドベクターを脱落させる工程;並びに
(C)以下の工程から成る繰り返し工程:
(C−1)工程(B)で得られた変異株を用いて工程(A)を実施することによって、新たなゲノム標的部位に変異を導入する工程であって、ゲノム編集プラスミドベクターには、以前の工程で用いられたいずれのガイドRNAとも異なるゲノム標的部位に対する1つ以上のガイドRNAをコードする遺伝子が含まれる、前記工程;及び
(C−2)工程(B)を実施することによって、工程(C−1)で用いたゲノム編集プラスミドベクターが脱落した多重変異株を得る、前記工程;
を含む前記製造方法。
[態様9]
態様8に記載の糸状菌におけるゲノム編集を用いた多段階による多重変異株の製造方法に於いて、一連の繰り返し工程(C)に於ける最後の工程(C−2)は実施されないことを特徴とする、前記製造方法。
[態様10]
前記繰り返し工程(C)の一連の繰り返しにおける最後の工程(C−1)に於いて、態様1〜7のいずれか一項に記載のゲノム編集プラスミドベクターを用いる、態様9記載の製造方法。
[態様11]
全ての工程を通じて、使用されるゲノム編集プラスミドベクターに含まれるポジティブ選択マーカー遺伝子及びネガティブ選択マーカー遺伝子は夫々一種類である、態様8〜10のいずれか一項に記載の方法。
[態様12]
工程(A)及び工程(C−1)に於ける選択培地がピリチアミンを含む、態様8〜11のいずれか一項に記載の方法。
[態様13]
工程(B)及び工程(C−2)に於ける選択培地がデキストリンを含む、請求項8〜12のいずれか一項記載の方法。
糸状菌、特に麹菌の実用株においては宿主ベクター系の整備が難しく、使用可能な形質転換用マーカーが薬剤耐性に限定されるため、多重変異導入にはゲノム編集のためのプラスミドを効率よく脱落させる必要がある。そのために、従来技術に於いては、複数回の継代を必要とし、株の取得に時間を要するという問題があった。
本発明のゲノム編集プラスミドベクターにポジティブ選択マーカー遺伝子を含有させることによって、正の選択圧によって形質転換体の形質が安定し、ゲノム標的部位への変異の導入効率が向上する。更に、ポジティブ選択マーカー遺伝子として薬剤耐性遺伝子を用いることによって、形質転換の態様として糸状菌実用株の栄養要求性株を予め作製する必要がないので、特に、糸状菌の実用株の多重変異株を作製する際には有利である。
一方、ネガティブ選択マーカー遺伝子を含有させることによって、形質転換に用いたゲノム編集プラスミドベクターを積極的に脱落させ、該プラスミドベクターが脱落した形質転換体を容易かつ効率的に選択することが出来、更に、次の段階で別のゲノム編集プラスミドベクターを用いて新たなゲノム変異を累積的に導入することが出来る。
更に、ネガティブ選択マーカー遺伝子として、該遺伝子の過剰発現によって該遺伝子を保持する糸状菌株の生育が阻害される遺伝子を使用することによって、選択に際して薬剤を使用する必要がなくなる等の効果も得られる。
尚、導入したゲノム編集プラスミドベクターが実質的に全て形質転換体から除去されているので、新たな形質転換に際しても、同じポジティブ選択マーカー遺伝子及びネガティブ選択マーカー遺伝子を使用することが可能となるので、効率的、且つ、経済的に有利である。
これらのことから、本発明によって、糸状菌、特にその実用株への多重変異導入が容易かつ安全に行われ、更に、変異の導入効率(変異株取得効率)を顕著に向上させることができる。
プラスミドベクターppAsATC9a2の構造を示す。 プラスミドベクターppAsATC9a2gmBの構造を示す。 形質転換体からコロニーPCRによって標的配列を含むDNA断片を増幅し、それをシークエンス解析した結果を示す。 RIB128mB株ではプラスミド由来のDNA断片のサザン解析に用いたプローブの位置(図4a)、得られたバンドの検出結果を示す(図4b)。RIB128mB株はピリチアミンを含むCD+Sorbitol培地では生育できないことを示す(図4c)。 プラスミドベクターppAsATC9a2gmOの構造を示す。 形質転換体からコロニーPCRによって標的配列を含むDNA断片を増幅し、それをシークエンス解析した結果を示す。 アスペルギルス・オリゼの代表的な実用株を示す。
本発明に係るゲノム編集プラスミドベクターは以下の構成要素を含み、好ましくは糸状菌、特に麹菌における多重変異株(多数の異なるゲノム標的部位に変異を有する株)の製造に用いられる。
(1)Cas9ヌクレアーゼをコードする遺伝子、
(2)1つ又は複数の異なるゲノム標的部位の夫々に対するガイドRNAをコードする遺伝子
(3)ポジティブ選択マーカー遺伝子、及び
(4)ネガティブ選択マーカー遺伝子。
ゲノム編集はゲノム上の任意の部位をヌクレアーゼで切断することにより二本鎖切断(DSB)を生じ、相同組換え又は非相同組換えによる該二本鎖切断部位の修復を介して、該切断部位に、塩基配列の挿入・欠損及び特定塩基配列の導入(特異的変異)等の各種の変異(遺伝子改変)を誘発する方法である。例えば、ゲノム編集を実施したい領域に隣接する上流及び下流の配列と相同性の高い配列を輸するDNA修復用鋳型を細胞内に導入することによって、該鋳型の存在下での相同組換えを介して該切断部位に特定の塩基配列を導入することが出来る。又、非相同組換えによる修復の際には塩基配列の挿入・欠損が誘発される。このようなゲノム編集のうち、clustered regulatory interspaced short palindromic repeats (CRISPR)/Cas9システムはStreptococcus pyrogenesのヌクレアーゼであるCas9とゲノム上の標的部位にCas9を誘導するガイドRNA(gRNA, sgRNA)の2つの構成因子からなる簡便な方法である。
ガイドRNAは予め設計された単鎖キメラRNAであり、細菌性trancrRNAの足場機能と細菌性crRNAの特異性を併せ持っている。ガイドRNAの5’末端の最後の約20〜21塩基はホーミング装置として働き、特異的RNA標的部位とRNA−DNA塩基対の形成を介して、Cas9/gRNAをリクルートする。尚、Cas9ヌクレアーゼをコードする遺伝子の塩基配列は公知であり、更に、該遺伝子を含むCRISPR-Cas9システム、CRISPR-Cas9ベクター及びCRISPR-Cas9 ゲノム編集用ガイドベクター等の各種ツールは市販されており、当業者は容易に入手できる(例えば、Applied Biological MaAterilas社、Origene Technologies社、ATUM社)。
尚、Cas9ヌクレアーゼをコードする遺伝子の5’及び3’の両末端にはCas9ヌクレアーゼを核に局在させるための当業者に公知の適当な核局在シグナルをコードする配列が付加されていることが好ましい。
本発明のゲノム編集プラスミドベクターには1つ又は複数のガイドRNAをコードする遺伝子が含まれる。複数のガイドRNAをコードする遺伝子を含む場合には、夫々のガイドRNAをコードする遺伝子は異なるゲノム標的部位に於いて変異を導入するためのものであり、夫々、異なる標的部位(標的配列)の各々に相補的な塩基配列が含まれる。このような複数のガイドRNAをコードする遺伝子が含まれるゲノム編集プラスミドベクターで形質転換することによって、複数のゲノム標的部位に一段階で複数の変異(多重変異)を導入することが出来る。
ポジティブ選択マーカー遺伝子としては、当業者に公知の任意の遺伝子、例えば、ピリチアミン、ハイグロマイシン及びフレオマイシン等の各種の薬剤に対する耐性遺伝子、並びに、pyrG, sC及びniaD等の栄養要求性(ウリジン要求、イオウ資化、及び硝酸資化)を補償する遺伝子を用いることが出来る。但し、栄養要求性を補償する遺伝子を用いる場合には、予め形質転換の対象となる菌の栄養要求株を作製しておく必要がある。従って、ポジティブ選択マーカー遺伝子としては、そのような栄養要求株が必要ない薬剤耐性遺伝子であることが好ましい。
尚、Cas9ヌクレアーゼをコードする遺伝子、ガイドRNAをコードする遺伝子、及び、薬剤耐性遺伝子等のポジティブ選択マーカー遺伝子は、当業者に公知の任意のプロモーター、好ましくは構成的プロモーターに作動可能に連結されている。
ネガティブ選択マーカー遺伝子としては、当業者に公知の任意の遺伝子、例えば、薬剤感受性遺伝子(自殺遺伝子)及び各種の転写因子をコードする遺伝子(該遺伝子の過剰発現によって該遺伝子を保持する形質転換体の生育が阻害される作用を有する)等がある。
この中でも、薬剤感受性遺伝子のように薬剤を含む選択培地で培養することによって該遺伝子を有する株を除外する(負の選択)必要がないので、過剰発現によって該遺伝子を保持する糸状菌株の生育が阻害される作用を有する転写因子をコードする遺伝子が好ましい。その一例として、分化に関わる転写因子をコードする遺伝子Aoace2等を挙げることが出来る。
ネガティブ選択マーカー遺伝子がこのような転写因子をコードする遺伝子の場合には、該遺伝子には当業者に公知の任意の誘導プロモーターが作動可能に連結されていることが好ましい。例えば、metallothioneinプロモーター(重金属イオンで誘導)、heat shock protein プロモーター(ヒートショックで誘導)、Tet-ON/Tet-OFF系(テトラサイクリンで誘導/抑制)、及びステロイド応答性プロモーター(ステロイドホルモンやそのアゴニストで誘導)等、更に、amyB等の炭素源の違いにより誘導又は抑制が可能なプロモーターを挙げることが出来る。上記Aoace2遺伝子の場合には、amyB遺伝子プロモーターを用いることが好ましい。
本発明に於ける糸状菌(子嚢菌、担子菌等)の中で、アスペルギルス・オリゼ等の麹菌が代表的な菌であり、その中でも、これまでに醤油及び酒等の食品醸造、農業、医薬品製造、及び酵素・蛋白質等の有用物質の生産等の商業的用途で使用されてきた「実用株」と呼ばれる膨大な種類の菌株の代表例が図7に挙げられている。ここで、各菌株名の数字の前に付された「RIB」は、これら菌株が寄託されている独立行政法人酒類総合研究所(広島県東広島市鏡山3-7-1)に於ける寄託ID番号である。
本発明のゲノム編集プラスミドベクターには、当業者に公知のその他の任意の要素、例えば、プラスミドの自律複製用のDNA断片(塩基配列)、各種の制御配列(例えば、ターミネーター配列、エンハンサー配列、ポリアデニル化配列等)、及び、クローニング部位等が適宜含まれる。
更に、本発明は、糸状菌におけるゲノム編集を用いた多段階による多重変異株の製造方法であって、
(A)本発明のゲノム編集プラスミドベクターにより糸状菌を形質転換し、得られた形質転換体をポジティブ選択マーカー遺伝子用の条件下で培養することによって形質を安定させ、該ゲノム編集プラスミドベクターに含まれるCas9ヌクレアーゼ及びガイドRNAの作用によって該形質転換体の1つ以上のゲノム標的部位に変異を導入する工程;
(B)前の工程で得られた変異株をネガティブ選択マーカー遺伝子用の条件下で培養することによって、該変異株から前記ゲノム編集プラスミドベクターを脱落させる工程;並びに
(C)以下の工程から成る繰り返し工程:
(C−1)工程(B)で得られた変異株を用いて工程(A)を実施することによって、新たなゲノム標的部位に変異を導入する工程であって、ゲノム編集プラスミドベクターには、以前の工程で用いられたいずれのガイドRNAとも異なるゲノム標的部位に対する1つ以上のガイドRNAをコードする遺伝子が含まれる、前記工程;及び
(C−2)工程(B)を実施することによって、工程(C−1)で用いたゲノム編集プラスミドベクターが脱落した多重変異株を得る、前記工程;
を含む前記製造方法に係る。
即ち、該製造方法は、工程(A)→(B)→((C−1)→(C−2))n(nは1以上の整数)の順に実施される。
本発明の製造方法における第一段階の工程(A)に於いては、糸状菌に導入されたゲノム編集プラスミドベクターに含まれるポジティブ選択マーカー遺伝子の作用によって形質転換体の形質が安定化され、該形質転換体における所望のゲノム標的部位に変異が効率的に導入される。次に、第一段階の工程(B)に於いては、該ゲノム編集プラスミドベクターに含まれるネガティブ選択マーカー遺伝子の作用によって、工程(A)で得られた変異株から該ゲノム編集プラスミドベクターが実質的に脱落する(除去される)。更に、本発明の製造方法における第二段階以降の工程(C)に於いては、それ以前の工程で用いたゲノム編集プラスミドベクターとは別のゲノム編集プラスミドベクター、即ち、以前の工程で用いられたいずれのガイドRNAとも異なるゲノム標的部位に対する1つ以上のガイドRNAをコードする遺伝子を含むゲノム編集プラスミドベクターによって、更に、新たなゲノム標的部位に変異を導入して多重変異株を得(工程(C−1))、次いで、該ゲノム編集プラスミドベクターを脱落させる(除去する)(工程(C−2))。かかる工程(C)を一回以上繰り返すことによって、ゲノム編集を用いて多重変異株を効率的に製造することが出来る。
一連の繰り返し工程(C)で用いられるゲノム編集プラスミドベクターには、以前の工程で用いられたいずれのガイドRNAとも異なるゲノム標的部位に対する1つ以上のガイドRNAをコードする遺伝子が含まれている。例えば、工程(A)(第一段階のゲノム変異導入工程)で使用されたガイドRNAが遺伝子a及び遺伝子bを標的部位とした場合、第二段階のゲノム変異導入工程である繰り返し工程(C−1)で使用されるガイドRNAは遺伝子c及び遺伝子dを標的部位とし、第三段階のゲノム変異導入工程である繰り返し工程(C−1)で使用されるガイドRNAは遺伝子e及び遺伝子fを標的部位とすることが出来る。その結果、本発明方法に於いて、前工程で導入された全てのゲノム変異は保持されるので、第三段階のゲノム変異導入工程後には、6種類の遺伝子a〜遺伝子fに変異を有する多重変異株が得られる。尚、ゲノム編集プラスミドベクターには、以前の工程で用いられたガイドRNAと同じゲノム標的部位に対するガイドRNAをコードする遺伝子が含まれていても良い。
また、本発明は、上記製造方法の別法として、糸状菌におけるゲノム編集を用いた多段階による多重変異株の製造方法であって、上記の製造方法における一連の繰り返し工程(C)における最後の工程(C−2)は実施されないことを特徴とする、前記製造方法にも係る。
即ち、該製造方法は、工程(A)→(B)→((C−1)→(C−2))n →(C−1)(nは0以上の整数)の順に実施される。
即ち、この別法では、前記最後の繰り返し工程に於いては、それ以降、もう形質転換によるゲノム変異導入は行われないので、その最後の繰り返し工程(C−1)で使用したゲノム編集プラスミドベクターを積極的に除去するための工程(C−2)は実施せずに、形質転換体を培養する過程で自然に該ベクターを脱落させる。
従って、この別法における最後の繰り返し工程(C)で使用されるゲノム編集プラスミドベクターとしては、本発明のゲノム編集プラスミドベクターを用いるか、或いは、本発明のゲノム編集プラスミドベクターからネガティブ選択マーカー遺伝子が除かれているゲノム編集プラスミドベクターを用いることもできる。
本発明の製造方法における全ての工程を通じて、使用されるゲノム編集プラスミドベクターに含まれるポジティブ選択マーカー遺伝子、及びネガティブ選択マーカー遺伝子は夫々、必ずしも同じものと使用する必要ないが、全操作を通じて夫々共通するマーカー遺伝子をもちいることによって、操作が簡便となり、効率上及び経済上が好ましい。
工程(A)及び(C−1)では、ポジティブ選択マーカー遺伝子用の条件下で培養する。即ち、使用するポジティブ選択マーカー遺伝子の種類に応じて、栄養源又は薬剤等が添加された選択培地で適当な期間(例えば、数回の継代)培養することによって、ポジティブ選択マーカー遺伝子の作用により、ゲノム編集プラスミドベクターが保持され、形質転換体の転換形質が安定する(正の選択圧)。その結果、該プラスミドベクターに含まれるCas9ヌクレアーゼ及びガイドRNAの作用による1つ以上のゲノム標的部位への変異の導入が促進される(変異効率が向上する)ものと考えられる。
例えば、ポジティブ選択マーカー遺伝子として薬剤耐性遺伝子を用いる場合には、上記の栄養要求株が必要なく、適当な量の対応する薬剤(例えば、ピリチアミン)を含有する選択培地で培養することによって形質転換体が有する薬剤耐性によって正の選択がなされる。
工程(B)及び(C−2)におけるネガティブ選択マーカー遺伝子用の培養条件は、該遺伝子の種類・機能により当業者が適宜決めることが出来る。例えば、誘導プロモーターがネガティブ選択マーカー遺伝子に作動可能に連結されている場合には、該プロモーターが誘導されるような培養条件下で適当な期間(例えば、数回の継代)培養することが出来る。
例えば、Aoace2遺伝子にamyB遺伝子プロモーターが作動可能に連結されている場合には、特定の炭素源(デキストリン等)を含む選択培地を用いる培養)下で培養することにより該遺伝子が過剰に発現され、ネガティブ選択が可能となる。
このようなネガティブ選択マーカー遺伝子用の条件下で培養することによって、Aoace2遺伝子が過剰に発現されて形質転換体の育成が著しく阻害されるので、形質転換体からのAoace2遺伝子を含むゲノム編集プラスミドベクターの脱落が促進される(負の選択圧)。その結果、該ゲノム編集プラスミドベクターに含まれるネガティブ選択マーカー遺伝子の作用によって、工程(A)で得られた変異株から該ゲノム編集プラスミドベクターが実質的に脱落し(除去され)、該形質転換体が有していた転換形質(例えば、薬物耐性)が失われるが、前工程までに導入された変異は保持される。
本発明の製造方法の各工程に於ける各形質転換は、本明細書の実施例で用いられているような、プロトプラストPEG法等の当業者に公知の適当な方法で行うことが出来る。
また、本発明の製造方法の各工程に於ける培養は、所望の効果が得られるような適当な期間(例えば、数回の継代)行われる。更に、形質転換体の各種培養条件は、当該技術分野における技術常識に基づき、当業者が適宜設定することが出来る。又、相同組換えを介してゲノム標的部位に特定の塩基配列を導入したい場合には、工程(A)又は該工程に先立ち、該部位(又は領域)に隣接する上流及び下流の配列と相同性の高い配列を輸するDNA修復用鋳型を当業者に公知の任意の方法・手段で細胞内に導入することが出来る。
以下、実施例に則して本発明を詳述する。尚、該実施例は本発明の一態様にすぎず、本発明の技術的範囲はこれら実施例の記載によって制限されるものではなく、本明細書全体の記載、本明細書に引用された参考文献等の記載内容、及び、当該技術分野における技術常識等によって判断される。
尚、本明細書に特に記載がない場合には、実施例等に於ける各種条件・手段・手法等は当該技術分野における技術常識に従って当業者が適宜設定し実施することが出来る。
[材料と方法]
1. 使用菌株、培地および形質転換
1-1使用菌株
大腸菌Escherichia coli
大腸菌組換えプラスミドの取得にはE. coli DH5α(F-, Φ80dlacZΔM15, Δ(lacZYA-argF)U169, deoR, recA1, endA1, hsdR17(rK -, mK +), phoA, supE44, λ-, thi-1, gyrA96, relA1)を用いた。
麹菌Aspergillus oryzae
本発明で使用したA. oryzae菌株一覧を表1に示した。
Figure 0006944697
1-2使用培地
E. coli DH5α用
LB培地: 1% Bacto tryptone、0.5% Yeast Extract、0.5% NaCl(プレート用寒天培地には2.0% Agarを含む。また必要に応じてampicillinを終濃度50 μg/mlとなるように添加した。)
A. oryzae用
形質転換体を選択するために、0.1 μg/mlのピリチアミン臭化水素酸塩を添加した。
CD(Glc)培地:0.3% NaNO3, 0.2% KCl, 0.1% KH2PO4, 0.05% MgSO4・7H2O, 0.002% FeSO4・7H2O, 2% Glucose (pH 5.5)
CD(Dex)培地:0.3% NaNO3, 0.2% KCl, 0.1% KH2PO4, 0.05% MgSO4・7H2O, 0.002% FeSO4・7H2O, 2% Dextrin (pH 5.5)
CD+Sorbitol培地:0.3% NaNO3, 0.2% KCl, 0.1% KH2PO4, 0.05% MgSO4・7H2O, 0.002% FeSO4・7H2O, 2% Glucose, 1.2 M sorbitol (pH 5.5)
2. 遺伝子操作
2-1 PCR反応
各DNA断片の増幅には、ポリメラーゼとしてPrimeSTAR (TaKaRa)を用いた。また、A. oryzaeのコロニーPCRにはKOD FX Neo (TOYOBO)を用いた。反応液の組成は全て添付の説明書に従った。
Prime STAR温度条件
98℃ 30 sec, {94℃ 15 sec, 55℃ 15 sec, 72℃ 1 kb/min; 30 cycle}, 16℃
KOD FX Neo温度条件
94℃ 2 min, {94℃ 15 sec, 68℃ 2 kb/min; 35 cycle}, 16℃
テンプレートには、20 μlスケールあたり50 μl TEに白金耳懸濁した溶液2 μlを用いた。
2-2 プラスミドの作製
本発明で使用したプライマーは表2、プラスミドは表3に示した。
Figure 0006944697
Figure 0006944697
pUtNAN
遺伝子をamyB遺伝子のプロモーター(PamyB)制御下で発現するためのベクターpUtNANは、A. oryzae RIB40株の染色体DNAをテンプレートとしプライマーpUC19-niaD3_FとniaD3-PaB_Rを用いて増幅したniaD遺伝子ORFの一部とその下流を含む1.8 kbのDNA断片、プライマーniaDd-TaB_FとpUC19nDAADnD_Rを用いて増幅したniaD遺伝子下流の1.6 kbのDNA断片、プライマーTaB-PaB_FとTaB-niaDd_Rを用いて増幅したamyB遺伝子のターミネーター(TamyB)からなる0.3 kbのDNA断片、pUNA (Wada et al., 2014)をテンプレートとしプライマーPaB-niaD3_FとPaB-TaB_Rを用いて増幅したPamyBからなる0.6 kbのDNA断片の4つのDNA断片をプライマーpUC19-niaD3_FとpUC19nDAADnD_Rを用いて連結後、In-Fusion(登録商標) HD Cloning Kit (Clontech)を用いてBamHI消化したpUC19 (TaKaRa)と連結することで作製した。
pUtNAa2N
PamyB制御下でAoace2を発現するためのプラスミドpUtNAa2Nは、A. oryzae RIB40株の染色体DNAをテンプレートとしプライマーpUNA′Aoace2ORF_FとpUNA′Aoace2ORF_Rを用いて増幅したAoace2のORFからなる2.3 kbのDNA断片を、In-Fusion(登録商標)HD Cloning Kitを用いてSmaI消化したpUtNANと連結することで作製した。
ppAsATC9a2
pPTRIIをテンプレートとしプライマー19IF-ptrA-Fと19IF-mAMA1-Rを用いてPCRにより増幅したプラスミドの自律複製を可能とするA. nidulans由来のDNA断片AMA1の約半分とピリチアミン耐性遺伝子ptrAを含む5.0 kbのDNA断片をIn-Fusion(登録商標)HD Cloning Kitを用いてBamHI消化したpUC19と連結し、ppAsAを作製した。次に、A. oryzae RIB40株の染色体DNAをテンプレートとしプライマーIF-Ptef1FとPtef1Rを用いて増幅したtef1遺伝子のプロモーターからなる1.3 kbのDNA断片とpUNAFNcas9 (Katayama et al., 2016)をテンプレートとしプライマーPtef1-FNC9FとTamyBRで増幅したcas9とamyB遺伝子のターミネーターからなる4.4 kbのDNA断片をプライマーIF-Ptef1FとTamyBRを用いて連結後、In-Fusion(登録商標)HD Cloning Kitを用いて連結したDNA断片をHindIII消化したppAsAと連結することでppAsATC9を作製した。さらに、pUtNAa2NをテンプレートとしプライマーsApAIF-PamyBとace2mRを用いて増幅したPamyBとAoace2の前半を含む1.8 kbのDNA断片とプライマーace2mFとsApAIF-TamyBRを用いて増幅したAoace2の後半とTamyBを含む1.3 kbのDNA断片をプライマーsApAIF-PamyBとsApAIF-TamyBRを用いて連結後、In-Fusion(登録商標)HD Cloning Kitを用いてSmaI消化したppAsATC9と連結することでppAsATC9a2(図1)を作製した。
ppAsATC9a2gmB
ゲノム編集によってmelB遺伝子(固体培養特異的に発現するチロシナーゼ遺伝子、尚、チロシナーゼはメラニン合成に関わる酵素であり、酒粕の褐変化の原因である)に変異を導入するためのプラスミドベクターppAsATC9a2gmB(図2)は、pUNAFNC9gwA1 (Katayama et al., 2016)をテンプレートとしプライマーSmaIIF1-PU6FとgmB-PU6-Rを用いて増幅したU6遺伝子のプロモーターからなる0.6 kbのDNA断片とプライマーgmB-TU6-FとpAsATC9a2-TU6-Rを用いて増幅したU6遺伝子のターミネーターからなる0.2 kbのDNA断片をプライマーSmaIIF1-PU6FとpAsATC9a2-TU6-Rを用いて連結後、In-Fusion(登録商標)HD Cloning Kitを用いてSmaI消化したppAsATC9a2と連結することで作製した。
ppAsATC9a2gmO
ゲノム編集によってmelO遺伝子(液体培養特異的に発現するチロシナーゼ遺伝子)に変異を導入するためのプラスミドppAsATC9a2gmO(図5)は、pUNAFNC9gwA1 (Katayama et al., 2016)をテンプレートとしプライマーSmaIIF1-PU6FとgmO-PU6-Rを用いて増幅したU6遺伝子のプロモーターからなる0.6 kbのDNA断片とプライマーgmO-TU6-FとpAsATC9a2-TU6-Rを用いて増幅したU6遺伝子のターミネーターからなる0.2 kbのDNA断片をプライマーSmaIIF1-PU6FとpAsATC9a2-TU6-Rを用いて連結後、In-Fusion(登録商標)HD Cloning Kitを用いてSmaI消化したppAsATC9a2と連結することで作製した。
2-3 プラスミドDNAの調製
大腸菌プラスミドDNAの調製は、アルカリSDS法により行った。
2-4 DNAシークエンス
ファスマック社による受注シークエンスを行った。
2-5 大腸菌の形質転換法
大腸菌の形質転換はInoueら(Inoue et al., 1990)の方法に従った。
3. A. oryzae形質転換法
A. oryzaeの形質転換はプロトプラストPEG法を用い、以下のように行った。
親株を20 mlのCD(Glc) 液体培地を用いて30℃で18〜20時間振盪培養し、ミラクロス(EMD Millipore)を用いて菌体を回収した。
回収した菌体を滅菌水で洗浄後、5 ml TF Solution 1 (1% Yatalase (TaKaRa), 0.6 M (NH4)2SO4, 50 mM Maleate buffer (pH 5.5))により30℃で3時間処理してプロトプラスト化した。
ミラクロスを用いてプロトプラストを回収して5 ml TF Solution 2 (1.2 M Sorbitol, 50 mM CaCl2, 35 mM NaCl, 10 mM Tris-HCl (pH 7.5))を加え、遠心して沈殿を回収する。同様の操作でプロトプラストをさらに2回洗い、1.0-5.0×107個/ mlとなるようにTF Solution 2 に懸濁した。
200 μlのプロトプラスト懸濁液に数ng/μlの形質転換用DNAを10 μl加えて、氷中に30分間静置する。
500、850 μlと2回に分けてTF Solution 3 (60% PEG4000, 50 mM CaCl2, 10 mM Tris-HCl (pH 7.5))を加え、室温で25分間静置した。
懸濁液をあらかじめ45℃で保温しておいたTop agar (1.2 M Sorbitol, 0.8% Agar入り選択培地)と混和して下層培地 (1.2 M Sorbitol, 1.5% Agar入り選択培地)に重層する。30℃で3-7日間培養して形質転換体を取得し、選択培地で2回植え継ぐことにより、形質を安定させた。
4. サザンブロッティング解析
対象とするA. oryzae株の全DNAを0.6%アガロースゲルで電気泳動を行った。必要に応じて全DNAは一晩制限酵素処理することにより断片化した。その後の操作は、AlkPhos Direct Labelling and Detection system(GEヘルスケア)及びを用いて、説明書に従って行った。また、バンドの検出には、ルミノイメージアナライザーLAS-4000mini (Fujiflim)を用いた。トランスファーは一晩、メンブレンの乾熱固定は80℃で 1時間、プレハイブリダイゼーション1時間そしてハイブリダイゼーション 8時間もしくは一晩で行った。
[実験]
(1)ゲノム編集ベクターの構築
条件依存的に菌体からの脱落が可能なベクターppAsATC9a2を構築した(図1)。CRISPR/Cas9システムを用いたゲノム編集に必要とされるCas9ヌクレアーゼは、A. oryzaeの翻訳伸長因子EF-1-alphaをコードするtef1のプロモーター制御下で発現させた。Cas9ヌクレアーゼをコードする遺伝子はA. oryzaeで発現させるためにコドンを改変した。さらに、Cas9ヌクレアーゼを核に局在させるためにcas9遺伝子の5′-、3′-両末端にシミアンウイルス40に由来する核局在シグナル(SV40NLS)をコードする配列を付加したものを用いた。また、条件依存的にプラスミドを脱落させるため、その高発現により生育が著しく悪化するAoace2遺伝子を炭素源の違いにより誘導、抑制が可能なamyBプロモーターの制御下で発現させた。さらに形質転換用の選択マーカーにはピリチアミン耐性遺伝子ptrAを用い、プラスミドの自律複製を可能とするA. nidulans由来のDNA断片AMA1の約半分をプラスミドに挿入した。
(2)melB遺伝子を標的とするゲノム編集プラスミドの構築
melB遺伝子に変異を導入するため、melB遺伝子のコード領域内から21塩基の標的配列(配列番号1:GCATGGACACGACAATACCCA)を選択し、この配列にCas9ヌクレアーゼを標的配列に誘導するためのガイドRNAを、核内低分子RNAをコードするU6遺伝子のプロモーターとターミネーターの制御下で発現するゲノム編集プラスミドベクターppAsATC9a2gmBを設計した(図2)。
(3)melB遺伝子への変異の導入
A. oryzae RIB128株にppAsATC9a2gmBを形質転換によって導入した。得られた形質転換体を、ピリチアミンを含むCD+Sorbitol培地で2回植え継ぐことによって形質を安定させた。コロニーPCRによって標的配列を含むDNA断片を増幅し、シークエンス解析することによって、得られた形質転換体2株のいずれのmelB遺伝子にも変異(塩基配列の欠損)が確認された。更に、それら変異株の一つについてはmelB遺伝子中に22塩基の欠損を持つ株(RIB128mBC9)であることを確認した(図3)。
(4)RIB128mBC9からのppAsATC9a2gmBの脱落
RIB128mBC9株をCD(Dex)培地で培養することでAoace2の発現を誘導し、ppAsATC9a2gmBが脱落した株を選択した。CD(Dex)培地での培養は植え継ぎにより2回行った。CD(Dex)培地で生育した株を単離し、RIB128mBと命名した。RIB128mB株ではRIB128mBC9株の持つmelB遺伝子内の変異が保持されていることもシークエンス解析によって確認された(図3)。RIB128mB株ではサザン解析によりプラスミド由来のDNA断片のバンドが検出されないこと(図4b)、ピリチアミンを含むCD+Sorbitol培地では生育できないことを確認した(図4c)。これらの結果から、RIB128mB株ではゲノム編集プラスミドベクターppAsATC9a2mBが脱落していることが示された。
(5)melO遺伝子を標的とするゲノム編集プラスミドの構築
melO遺伝子に変異を導入するため、melO遺伝子のコード領域内から21塩基の標的配列(配列番号2:GATTCAAGACCCCGCGAGAAC)を選択し、この配列にCas9ヌクレアーゼを標的配列に誘導するためのガイドRNAをU6プロモーターとターミネーターの制御下で発現するゲノム編集プラスミドppAsATC9a2gmOを設計した(図5)。
(6)melO遺伝子への変異の導入
RIB128mB株にppAsATC9a2gmOを形質転換によって導入した。得られた形質転換体を、ピリチアミンを含むCD+Sorbitol培地で2回植え継ぐことによって形質を安定させた。コロニーPCRによって標的配列を含むDNA断片を増幅し、シークエンス解析することによって、得られた形質転換体6株のいずれのmelO遺伝子にも変異(塩基配列の欠損)確認された。更に、それら変異株の一つがmelO遺伝子中に2塩基の欠損を持つ株(RIB128mBmOC9)であることを確認した(図6)。又、RIB128mBmOC9株はmelB遺伝子内の変異も保持されている多重変異株であることもシークエンス解析によって確認された(図3)。
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本発明により、麹菌等の糸状菌に於いてゲノム編集を利用した効率的な多重変異導入を可能とする新規技術が提供される。この新規技術によって、有用タンパク質や2次代謝産物育種生産等の産業利用において麹菌等の糸状菌に於ける高生産株の育種が可能となる。

Claims (12)

  1. 糸状菌用のゲノム編集プラスミドベクターであって、
    (1)Cas9ヌクレアーゼをコードする遺伝子、
    (2)1つ又は複数の異なるゲノム標的部位の夫々に対するガイドRNAをコードする遺伝子、
    (3)ポジティブ選択マーカー遺伝子、及び
    (4)Aoace2であるネガティブ選択マーカー遺伝子、
    を含む前記プラスミドベクター。
  2. ポジティブ選択マーカー遺伝子が薬剤耐性遺伝子である、請求項1記載のプラスミドベクター。
  3. ネガティブ選択マーカー遺伝子が誘導性プロモーターと作動可能に連結されている、請求項1又は2記載のベクター。
  4. 誘導性プロモーターがamyBプロモーターである、請求項3記載のベクター。
  5. 糸状菌が麹菌である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のベクター。
  6. 麹菌が実用株である、請求項5に記載のベクター。
  7. 糸状菌におけるゲノム編集を用いた多段階による多重変異株の製造方法であって、
    (A)請求項1〜6のいずれか一項に記載のゲノム編集プラスミドベクターにより糸状菌を形質転換し、得られた形質転換体をポジティブ選択マーカー遺伝子用の条件下で培養することによって形質を安定させ、該ゲノム編集プラスミドベクターに含まれるCas9ヌクレアーゼ及びガイドRNAの作用によって該形質転換体の1つ以上のゲノム標的部位に変異を導入する工程;
    (B)前の工程で得られた変異株をネガティブ選択マーカー遺伝子用の条件下で培養することによって、該変異株から前記ゲノム編集プラスミドベクターを脱落させる工程;並びに
    (C)以下の工程から成る繰り返し工程:
    (C−1)工程(B)で得られた変異株を用いて工程(A)を実施することによって、新たなゲノム標的部位に変異を導入する工程であって、ゲノム編集プラスミドベクターには、以前の工程で用いられたいずれのガイドRNAとも異なるゲノム標的部位に対する1つ以上のガイドRNAをコードする遺伝子が含まれる、前記工程;及び
    (C−2)工程(B)を実施することによって、工程(C−1)で用いたゲノム編集プラスミドベクターが脱落した多重変異株を得る、前記工程;
    を含む前記製造方法。
  8. 請求項7に記載の糸状菌におけるゲノム編集を用いた多段階による多重変異株の製造方法に於いて、一連の繰り返し工程(C)に於ける最後の工程(C−2)は実施されないことを特徴とする、前記製造方法。
  9. 前記繰り返し工程(C)の一連の繰り返しにおける最後の工程(C−1)に於いて、請求項1〜6のいずれか一項に記載のゲノム編集プラスミドベクターを用いる、請求項8記載の製造方法。
  10. 全ての工程を通じて、使用されるゲノム編集プラスミドベクターに含まれるポジティブ選択マーカー遺伝子は一種類である、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 工程(A)及び工程(C−1)に於ける選択培地がピリチアミンを含む、請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 工程(B)及び工程(C−2)に於ける選択培地がデキストリンを含む、請求項7〜11のいずれか一項記載の方法。
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