1.第1の実施形態
以下では、第1の実施形態に係る油供給装置100について、図面を参照して説明する。油供給装置100は、車両用駆動装置Dに油Fを供給する装置である。
なお、本明細書において、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
また、本明細書において、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体回転するように連結された状態や、当該2つの回転要素が1つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材には、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材(軸、歯車機構、ベルト、チェーン等)が含まれ、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置(摩擦係合装置や噛み合い式係合装置等)が含まれてもよい。
図1に示すように、車両用駆動装置Dは、入力軸Iと、中間軸Mと、出力軸Oと、発進用係合装置C0と、回転電機MGと、変速機TMと、カウンタギヤ機構Gと、差動歯車装置DFと、を備えている。発進用係合装置C0、回転電機MG、変速機TM、カウンタギヤ機構G、及び差動歯車装置DFは、内燃機関ENと車輪Wとを結ぶ動力伝達経路Pに、内燃機関EN側から記載の順に配置されている。これらは、図示しないケース内に収納されている。
入力軸Iは、内燃機関ENの出力軸(クランクシャフト等)と一体回転するように連結され、或いは、ダンパや流体継手(トルクコンバータ等)等の他の部材を介して内燃機関ENの出力軸に駆動連結されている。
内燃機関ENは、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等)である。本実施形態では、内燃機関ENは、車輪Wを駆動する「第1駆動力源」の一つに相当する。
回転電機MGは、前記ケースに固定されたステータStと、ステータStに対して回転自在に支持されたロータRoと、を備えている。本実施形態では、ロータRoは、ステータStの径方向の内側に配置され、中間軸Mと一体回転するように駆動連結されている。本実施形態では、回転電機MGは、車輪Wを駆動する「第1駆動力源」の一つに相当する。また、本実施形態では、回転電機MGには、後述する第1潤滑油路311を介して、潤滑用及び冷却用の油Fが供給される。第1潤滑油路311を介して供給された油Fにより、回転電機MGの各動作部分が潤滑されると共に、ステータSt及びロータRoの発熱部分が冷却される。その後、回転電機MGの外部に油Fが排出され、当該油Fは油貯留部S(図2参照)へ戻される。油貯留部Sは、例えばケースの底部に設けられたオイルパン等により構成される。
発進用係合装置C0は、入力軸Iと中間軸Mとの間に介在されている。発進用係合装置C0の係合状態では、入力軸Iと中間軸Mとの間で動力が伝達され、発進用係合装置C0の解放状態では、入力軸Iと中間軸Mとの間での動力伝達が遮断される。本実施形態では、発進用係合装置C0は、入力軸Iに駆動連結された入力側係合部材と、回転電機MGのロータRoに駆動連結された出力側係合部材とを有している。発進用係合装置C0は、動力伝達経路Pに設けられた「係合装置」の一つに相当する。
ここで、係合装置について「係合状態」とは、係合装置に伝達トルク容量が生じている状態である。「係合状態」には、係合装置の係合部材間に回転速度差がない「直結係合状態」と、係合装置の係合部材間に回転速度差がある「滑り係合状態」とが含まれる。また、係合装置について「解放状態」とは、係合装置に伝達トルク容量が生じていない状態である。なお、係合装置が摩擦係合装置である場合には、制御装置により伝達トルク容量を生じさせる指令が出されていないでも、係合部材(摩擦部材)同士の引き摺りによって伝達トルク容量が生じる場合がある。本明細書では、伝達トルク容量を生じさせる指令が出されていない場合に当該引き摺りによって伝達トルク容量が生じている状態も、「解放状態」に含む。
発進用係合装置C0は、供給される油圧に応じて動作する第1油圧サーボ機構81(図2参照)を備えた油圧駆動式の係合装置である。本実施形態では、発進用係合装置C0は、互いに係合する係合部材間に発生する摩擦力によりトルクの伝達を行う摩擦係合装置であり、具体的には、湿式多板クラッチ機構を備えた湿式の摩擦係合装置である。第1油圧サーボ機構81は、係合の状態を制御するための油Fが供給される作動油圧室(図示せず)を備えている。当該作動油圧室には、後述する第1制御油路321を介して油Fが供給される。当該作動油圧室の油圧を、後述する第1係合制御弁71によって制御することで、発進用係合装置C0の係合の状態が制御される。
本実施形態では、発進用係合装置C0には、後述する第2潤滑油路312を介して、潤滑用及び冷却用の油Fが供給される。第2潤滑油路312を介して供給された油Fにより、発進用係合装置C0の係合部材が潤滑されると共に冷却される。その後、発進用係合装置C0の外部に油Fが排出され、当該油Fは油貯留部S(図2参照)へ戻される。
変速機TMは、変速入力軸の回転を変速して出力軸Oに伝達する装置である。本実施形態では、変速機TMは、変速比をステップ的又は連続的に変更可能に構成されている。そして、変速機TMは、中間軸Mの回転速度を現時点の変速比で変速して、カウンタギヤ機構Gへ伝達する。本実施形態では、変速機TMは、複数の変速用係合装置C1を備え、当該複数の変速用係合装置C1のそれぞれの係合の状態を制御することにより、変速段が切り替えられる。複数の変速用係合装置C1には、クラッチ及びブレーキの少なくとも一方が含まれる。変速機TMとしては、例えば、有段自動変速機、無段自動変速機、手動変速機等、公知の各種変速機を用いることができる。なお、図1及び2では、複数の変速用係合装置C1のうちの1つのみを示している。
本実施形態では、変速機TMには、後述する第3潤滑油路313を介して、潤滑用及び冷却用の油Fが供給される。第3潤滑油路313を介して供給された油により、変速機TMが備える変速用係合装置C1、歯車機構、軸受等が潤滑されると共に冷却される。その後、変速機TMの外部に油Fが排出され、当該油Fは油貯留部S(図2参照)へ戻される。
変速用係合装置C1は、供給される油圧に応じて動作する第2油圧サーボ機構82(図2参照)を備えた油圧駆動式の係合装置である。変速用係合装置C1は、動力伝達経路Pに設けられた「係合装置」の一つに相当する。本実施形態では、変速用係合装置C1は、互いに係合する係合部材間に発生する摩擦力によりトルクの伝達を行う摩擦係合装置であり、具体的には、湿式多板クラッチ機構を備えた湿式の摩擦係合装置である。第2油圧サーボ機構82は、係合の状態を制御するための油Fが供給される作動油圧室(図示せず)を備えている。当該作動油圧室には、後述する第2制御油路322を介して油Fが供給される。当該作動油圧室の油圧を、後述する第2係合制御弁72によって制御することで、変速用係合装置C1の係合の状態が制御される。
カウンタギヤ機構Gは、動力伝達経路Pにおいて、変速機TMと差動歯車装置DFとの間に配置された歯車機構である。カウンタギヤ機構Gは、差動歯車装置DFを介して2つの出力軸Oに駆動連結されている。したがって、変速機TMの側からカウンタギヤ機構Gに伝達された回転及びトルクは、差動歯車装置DFを介して2つの出力軸O(2つの車輪W)に分配されて伝達される。これにより、車両用駆動装置Dは、内燃機関EN及び回転電機MGの一方又は双方のトルクを車輪Wに伝達させて車両を走行させることができる。つまり、この車両用駆動装置Dは、ハイブリッド車両用の駆動装置として構成され、具体的には、1モータパラレル方式のハイブリッド駆動装置として構成されている。
本実施形態では、カウンタギヤ機構Gには、後述する第4潤滑油路314を介して、潤滑用の油Fが供給される。第4潤滑油路314を介して供給された油により、カウンタギヤ機構Gが潤滑される。その後、カウンタギヤ機構Gの外部に油Fが排出され、当該油Fは油貯留部S(図2参照)へ戻される。
また、本実施形態では、差動歯車装置DFには、後述する第5潤滑油路315を介して、潤滑用の油Fが供給される。第5潤滑油路315を介して供給された油により、差動歯車装置DFが潤滑される。その後、差動歯車装置DFの外部に油Fが排出され、当該油Fは油貯留部S(図2参照)へ戻される。
図1に示すように、油供給装置100は、第1油圧ポンプ11と、第2油圧ポンプ12と、を備えている。第1油圧ポンプ11及び第2油圧ポンプ12は、油Fを吐出する油圧ポンプである。第1油圧ポンプ11及び第2油圧ポンプ12として、例えば、内歯又は外歯のギヤポンプ、ベーンポンプ等を採用可能である。
第1油圧ポンプ11は、動力伝達経路Pを伝わる駆動力により駆動される機械式の油圧ポンプである。図示の例では、第1油圧ポンプ11は、入力軸Iや回転電機MGとは別軸上に配置されており、第1油圧ポンプ11の駆動軸11aは、スプロケット及びチェーンを介して中間軸Mと連動して回転するように駆動連結されている。なお、第1油圧ポンプ11が入力軸Iや回転電機MGと同軸上に配置された構成とすることも可能である。
第2油圧ポンプ12は、動力伝達経路Pから独立した電動モータ121によって駆動される電動式の油圧ポンプである。本実施形態では、第2油圧ポンプ12は、油Fの吐出圧を制御可能に構成されている。具体的には、第2油圧ポンプ12からの油Fの吐出圧が目標値となるように、後述する制御装置10によって電動モータ121が制御される。なお、電動モータ121を制御することにより、第2油圧ポンプ12からの油Fの吐出流量を制御するように構成しても良い。これらのような第2油圧ポンプ12の制御は、電動モータ121の回転速度及びトルクの少なくとも一方を制御することにより行われる。
電動モータ121は、動力伝達経路Pから独立した「第2駆動力源」に相当する。電動モータ121としては、例えば、複数相の交流電力で駆動される交流回転電機を用いることができる。この場合、図示は省略するが、電動モータ121は、直流電力と交流電力との間で電力変換を行うインバータを介して直流電源に接続されており、制御装置10は、インバータを介して電動モータ121の駆動を制御する。本実施形態では、電動モータ121は、車輪Wの駆動用の回転電機MGより小型の回転電機である。そのため、電動モータ121は、回転電機MG又は内燃機関ENに比べて出力可能なトルクの最大値が小さい。
図2に示すように、第1油圧ポンプ11及び第2油圧ポンプ12は、それぞれ、第1吸入油路21及び第2吸入油路22を介してストレーナ23に接続されている。具体的には、第1油圧ポンプ11の吸入ポートには、第1吸入油路21が接続され、第2油圧ポンプ12の吸入ポートには、第2吸入油路22が接続されている。そして、第1吸入油路21と第2吸入油路22とが合流しており、その合流部よりも下流側にストレーナ23が接続されている。ストレーナ23は、油貯留部Sに貯留されている油Fを第1油圧ポンプ11又は第2油圧ポンプ12が吸入する際に、油Fに含まれる異物を除去する濾過器である。油貯留部Sには、車両用駆動装置Dの各部を循環した後の油Fが貯留されている。なお、第1吸入油路21と第2吸入油路22とが合流せず、第1吸入油路21と第2吸入油路22とのそれぞれにストレーナ23が接続された構成としても良い。
また、油供給装置100は、第1供給油路31と、第2供給油路32と、第1接続油路41と、第2接続油路42と、第3接続油路43と、を備えている。
第1供給油路31は、駆動伝達機構Tを含む潤滑対象Lに対して、潤滑用の油Fを供給する油路である。本実施形態では、第1供給油路31は、第1潤滑油路311と、第2潤滑油路312と、第3潤滑油路313と、第4潤滑油路314と、第5潤滑油路315と、を含んでいる。上述のように、これらの油路は、それぞれ、回転電機MG、発進用係合装置C0、変速機TM、カウンタギヤ機構G、及び差動歯車装置DFに油Fを供給可能に形成されている。したがって、本実施形態では、潤滑対象Lには、回転電機MG、発進用係合装置C0、変速機TM、カウンタギヤ機構G、及び差動歯車装置DFが含まれる。また、本実施形態では、駆動伝達機構Tには、回転電機MGのロータ軸、発進用係合装置C0、変速機TMの変速用係合装置C1や歯車機構等、カウンタギヤ機構G、及び差動歯車装置DFの歯車機構等が含まれる。
第2供給油路32は、発進用係合装置C0及び変速用係合装置C1に対して、制御用の油圧を供給する油路である。本実施形態では、第2供給油路32は、第1制御油路321と、第2制御油路322と、を含んでいる。上述のように、第1制御油路321は、発進用係合装置C0の第1油圧サーボ機構81に、第2制御油路322は、変速用係合装置C1の第2油圧サーボ機構82に、それぞれ油Fを供給可能に形成されている。
第1接続油路41は、第1油圧ポンプ11と第1供給油路31とを接続する油路である。第2接続油路42は、第2油圧ポンプ12と第2供給油路32とを接続する油路である。第3接続油路43は、第1接続油路41と第2接続油路42とを接続する油路である。本実施形態では、第1接続油路41における第3接続油路43との接続部を、第1分岐部41aと称する。また、第2接続油路42における第3接続油路43との接続部を、第2分岐部42aと称する。
第3接続油路43の途中には、第1逆止弁51が設けられている。第1逆止弁51は、第2接続油路42の側から第1接続油路41の側への油Fの流動を規制する弁である。また、本実施形態では、第2接続油路42における第2分岐部42aよりも上流側に、第2逆止弁52が設けられている。第2逆止弁52は、第2分岐部42aの側から第2油圧ポンプ12の側への油Fの流動を規制する弁である。
第1分岐部41aよりも下流側には、第1接続油路41の油圧を制御する制御弁6が設けられている。以下の説明では、便宜上、第1接続油路41における、制御弁6よりも上流側の部分を上流部411とし、制御弁6よりも下流側の部分を下流部412とする。
本実施形態では、制御弁6は、上流部411の油圧を制御するように構成されている。図示の例では、制御弁6は、指令圧制御弁61から供給される油圧を信号圧として油圧を調整する。指令圧制御弁61は、目標油圧に応じた油圧(信号圧)を出力するように、後述する制御装置10によって制御される。ここでは、指令圧制御弁61としてリニアソレノイド弁が用いられる。また、制御弁6は、複数のポートが形成されたスリーブと、スリーブの内部を摺動するスプール(弁体)とを備えている。スリーブには、上流部411に接続された入力ポート6a、下流部412に接続された出力ポート6b、後述する帰還油路62に接続された排出ポート6c、指令圧制御弁61からの信号圧が供給される信号圧入力ポート(図示せず)、フィードバック油圧室への導入口であるフィードバックポート(図示せず)等が設けられている。そして、フィードバック油圧室に供給される油圧と、指令圧制御弁61から供給される信号圧とのバランスに応じてスプールの位置が移動し、当該スプールの位置に応じて異なるポート間の連通の状態が変更されることで、上流部411又は下流部412の油圧が調整される。本実施形態では、上流部411と同じ油圧がフィードバックポートに供給されるように構成されており、これにより、上流部411の油圧が信号圧に応じて制御される。
本実施形態では、制御弁6は、排出ポート6cが帰還油路62に接続されており、油圧の調整に伴うドレン油を帰還油路62へ排出するように構成されている。帰還油路62は、第1油圧ポンプ11の吸入ポートに接続された第1吸入油路21に、制御弁6の排出ポート6cを接続する油路である。本実施形態では、帰還油路62は、第1吸入油路21と第2吸入油路22との合流部よりも下流側であって、ストレーナ23よりも上流側に接続されている。
本実施形態では、第2接続油路42に、当該第2接続油路42の油圧を制御する油圧制御弁が設けられていない。しかし、これは第2接続油路42にリリーフ弁を設けることを排除するものではない。第2接続油路42に過剰な油圧が生じた場合にその油圧を逃がすためのリリーフ弁は、第2接続油路42の油圧を積極的に制御するものではなく、ここでいう油圧制御弁には含めない。なお、そのような構成に限定されることなく、第2接続油路42に、当該第2接続油路42の油圧を制御する油圧制御弁が設けられていても良い。
第1制御油路321は、第1係合制御弁71を介して第1油圧サーボ機構81に接続されている。第1係合制御弁71は、制御装置10によって制御され、印加される電流に応じて第1制御油路321の油圧を調整して発進用係合装置C0の第1油圧サーボ機構81に供給する。また、第2制御油路322は、第2係合制御弁72を介して第2油圧サーボ機構82に接続されている。第2係合制御弁72は、制御装置10によって制御され、印加される電流に応じて第2制御油路322の油圧を調整して変速用係合装置C1の第2油圧サーボ機構82に供給する。なお、本実施形態では、第2油圧サーボ機構82は、変速用係合装置C1と同数設けられるが、図2ではそのうちの1つを代表的に示すと共に、当該1つの第2油圧サーボ機構82に油圧を供給する第2係合制御弁72のみを示している。なお、第2係合制御弁72の数を変速用係合装置C1よりも少なくする場合もある。この場合、第2係合制御弁72よりも下流側に、油圧の供給先を複数の変速用係合装置C1(複数の油圧サーボ機構)の間で切り替える油路切替機構(油路切替弁)が設けられる。
図2に示すように、油供給装置100は、制御装置10を備えている。制御装置10は、上述のように、電動モータ121と指令圧制御弁61と第1係合制御弁71と第2係合制御弁72とに電気的に接続され、それらを制御する。
制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置を中核部材として備えると共に、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の当該演算処理装置が参照可能な記憶装置を備えている。そして、ROM等の記憶装置に記憶されたソフトウェア(プログラム)又は別途設けられた演算回路等のハードウェア、或いはそれらの両方により、制御装置10の各機能が実現される。制御装置10は、車両の全体を統合して制御する統合制御装置(図示せず)との間で互いに通信を行うように構成されており、制御装置10と統合制御装置とは、各種情報を共有すると共に協調制御を行うように構成されている。この統合制御装置は、制御装置10の他にも、回転電機MGの動作制御を行う回転電機制御装置や、内燃機関ENの動作制御を行う内燃機関制御装置との間でも互いに通信を行うように構成されている。また、統合制御装置は、車両に備えられた各種センサ(例えば、アクセル開度、車速センサ、油温センサ等)による検出結果の情報を取得可能に構成されている。制御装置10の少なくとも一部が、統合制御装置の一部を構成していてもよい。
図3は、油供給装置100における定常状態での油Fの流動を示している。図3に示すように、定常状態では、第1油圧ポンプ11は、第1接続油路41を介して第1供給油路31に油Fが流動するように油Fを吐出する。この際、制御弁6は、第1接続油路41の上流部411に油圧P1で流量Q1の油Fが流動するように制御を行う。第2油圧ポンプ12は、上記のとおり油Fの吐出圧を制御可能に構成されており、第2接続油路42に油圧P2で流量Q2の油Fが流動するように油Fを吐出する。このとき、第1接続油路41の上流部411の油圧P1は、第2接続油路42の油圧P2よりも低い。そのため、第1逆止弁51は閉じた状態となり、第1接続油路41を流動する油Fが第3接続油路43を介して第2接続油路42に流入することはない(図3の第1接続油路41に沿う矢印F参照)。また、第2接続油路42を流動する油Fは、第3接続油路43に設けられた第1逆止弁51により、第2接続油路42から第1接続油路41への流動が規制されている(図3の第2接続油路42に沿う矢印F参照)。そのため、第2接続油路42を流動する油Fは第2供給油路32へ供給される(図3の第2接続油路42に沿う矢印F参照)。なお、第1接続油路41の上流部411の流量Q1は、第2接続油路42の流量Q2よりも大きい。そして、制御弁6は、第1接続油路41の下流部412の流量が潤滑対象Lの潤滑に適した量となるように制御を行う。
ここで、「定常状態」とは、係合装置C0,C1を解放状態から係合状態に変化させる係合動作中以外の状態である。このような「定常状態」には、少なくとも全ての係合装置C0,C1の状態変化がない状態が含まれ、例えば一定の変速段で車両が走行している状態が含まれる。
なお、図3では、便宜上、油供給装置100における一部の要素の図示を省略しており、これは図4でも同様である。
図4は、油供給装置100における係合装置C0,C1の係合動作中の油Fの流動を示している。図4に示すように、制御弁6は、係合装置C0,C1の係合動作中、第1接続油路41の上流部411の油圧P1を、第2接続油路42の油圧P2よりも高い油圧である係合動作中油圧P1Uとする係合動作中制御を実行する。具体的には、係合装置C0,C1の係合動作中、上流部411を流動する油Fの油圧が係合動作中油圧P1Uとなるように、制御装置10が指令圧制御弁61を制御する。これにより、制御弁6は、第1接続油路41の上流部411から下流部412へ流れる油Fの流量を絞り、下流部412の油Fの流量を、定常状態での流量よりも減少させる。ここで、第1油圧ポンプ11は、車輪Wの駆動力源である内燃機関EN及び回転電機MGにより十分大きい駆動力により駆動されているため、吐出先である上流部411を流動する油Fの流量が制限されると、上流部411の油圧を上昇させることになる。その結果、上流部411の油圧P1が、第2接続油路42の油圧P2よりも高い係合動作中油圧P1Uとなる。また、上流部411の流量Q1が定常状態よりも小さい係合動作中流量Q1Dへ減少する。これに伴い、第3接続油路43を介して第1接続油路41から第2接続油路42へ油Fが流動する(図4の矢印F参照)。
本実施形態では、制御弁6は、係合装置C0,C1の係合動作中、第2接続油路42における第2分岐部42aよりも下流側の油圧が、係合動作に必要な油圧以上となるように、係合動作中制御を実行する。つまり、上記係合動作中油圧P1Uは、係合装置C0,C1の係合動作に必要な最大油圧より高い油圧に設定される。これにより、係合装置C0,C1の係合動作を適切に行うことができる。
また、本実施形態では、上記のとおり、制御弁6は、係合動作中制御の実行中、第1接続油路41の下流部412の油Fの流量を定常状態での流量よりも減少させる。これにより、係合動作中制御の実行中、第1供給油路31における油Fの流量が、定常状態での必要流量よりも低くなる。この構成によれば、係合動作中制御の実行中に、係合装置C0,C1の制御用の油圧と潤滑対象Lの潤滑用の油Fとの双方を供給することになる第1油圧ポンプ11の最大吐出流量を比較的小さく抑えることができる。したがって、第1油圧ポンプ11の大型化を抑制できると共に、第1油圧ポンプ11を駆動するために必要な駆動力も小さく抑えることができる。なお、潤滑対象Lに供給する潤滑用の油Fの流量が定常状態での必要流量よりも低くなっても、潤滑用の油は潤滑対象Lの各所に存在しているため、係合動作中の一時的な流量の低下による問題は生じ難い。
本実施形態では、第2油圧ポンプ12は、係合装置C0,C1の係合動作中、吐出圧を低下させる。具体的には、係合装置C0,C1の係合動作中、つまり、制御弁6による上記係合動作中制御の実行中、第2接続油路42における第2逆止弁52よりも上流側の油圧P2が低下後油圧P2Dへ低下すると共に、第2接続油路42における第2逆止弁52よりも上流側を流動する油Fの流量Q2が低下後流量Q2Dへ減少するように、制御装置10が電動モータ121を制御する。係合装置C0,C1の係合動作中は、第2油圧ポンプ12から油Fを吐出しても、係合装置C0,C1へは供給されない。したがって、第2油圧ポンプ12の吐出圧及び吐出流量を低下させることにより、第2油圧ポンプ12を駆動する電動モータ121におけるエネルギ消費を低減させることができると共に、第2油圧ポンプ12に作用する負荷を低減することができる。なお、エネルギ効率の観点からは、電動モータ121を停止させ、低下後油圧P2D及び低下後流量Q2Dをゼロとすると好適である。或いは、係合装置C0,C1の係合動作が終了して第2油圧ポンプ12から第2供給油路32への油Fの供給が再開した際に、第2油圧ポンプ12の吐出油圧の立ち上がりの遅れを抑制するために、低下後油圧P2D及び低下後流量Q2Dをゼロより大きい値に維持するようにしても好適である。
なお、係合装置C0,C1の係合動作が終了したら、制御弁6は係合動作中制御を終了する。すなわち、制御弁6は、第1接続油路41の上流部411の油圧を係合動作中油圧P1Uから定常状態の油圧P1へ低下させ、流量を係合動作中流量Q1Dから定常状態の流量Q1へ増加させる。これにより、第1接続油路41の下流部412及び第1供給油路31における油Fの流量が増加し、潤滑対象Lに対して定常状態で必要な流量の油Fが供給される状態となる。また、第2油圧ポンプ12は、吐出圧を上昇させ、第2接続油路42に油圧P2で流量Q2の油Fが流動するように油Fを吐出する状態に戻る。これにより、第2接続油路42及び第2供給油路32に、定常状態において係合装置C0,C1の係合状態を維持するために必要な油圧が供給される状態となる。
図5に示すように、本実施形態に係る油供給装置100では、第1油圧ポンプ11は、定常状態で第1接続油路41において必要とされる最大の油圧P1及び流量Q1が確保できる吐出能力を有していれば良く(図5のA1で示す領域参照)、第2油圧ポンプ12は、第2接続油路42において必要とされる最大の油圧P2及び流量Q2が確保できる吐出能力を有していれば良い(図5のA2で示す領域参照)。
一方、従来のように、第1油圧ポンプ11が第1供給油路31及び第2供給油路32の双方に油Fを供給する比較例の構成では、第1油圧ポンプ11には、第1接続油路41及び第2接続油路42の双方で必要とされる最大の油圧である、係合装置C0、C1の制御用の油圧P2と、第1接続油路41及び第2接続油路42のそれぞれで必要とされる流量である流量Q1と流量Q2との合計流量(Q1+Q2)とが確保できる吐出能力を有していることが要求される(図5のA1、A2及びA3で示す領域参照)。つまり、このような比較例の構成では、第1油圧ポンプ11は、油圧P2×流量(Q1+Q2)の仕事(図5のA1+A2+A3)を行うことができる能力を備えている必要がある。そのため、第1油圧ポンプ11が大型化し易いと共に、第1油圧ポンプ11を駆動する内燃機関EN及び回転電機MGの駆動力の損失が大きくなり易かった。よって、特に、大きい油圧が必要とされない定常状態において、車両用駆動装置Dのエネルギ効率が悪化するという問題があった。
これに対して、本実施形態に係る油供給装置100では、上記のとおり、第1油圧ポンプ11は、定常状態では、潤滑対象Lに対して潤滑用の油Fを供給するために比較的大きい流量Q1が必要とされるものの、油圧に関しては、係合装置C0、C1の制御用の油圧P2よりも大幅に低い潤滑用の油圧P1を確保できる吐出能力を有していれば良い。つまり、本実施形態の構成では、第1油圧ポンプ11は、油圧P1×流量Q1の仕事(図5の領域A1)を行うことができる能力があれば十分である。したがって、第1油圧ポンプ11の大型化を抑制することができると共に、第1油圧ポンプ11を駆動する内燃機関EN及び回転電機MGの駆動力の損失も小さく抑えることができる。
また、上記のとおり、第2油圧ポンプ12は、係合装置C0、C1の制御用に比較的高い油圧P2が必要とされるものの、流量に関しては、潤滑対象Lに対する潤滑用の流量Q1よりも大幅に小さい係合装置C0、C1の制御用の流量Q2を確保できる吐出能力を有していれば良い。つまり、本実施形態の構成では、第2油圧ポンプ12は、油圧P2×流量Q2の仕事(図5の領域A2)を行うことができる能力があれば十分である。したがって、第2油圧ポンプ12の大型化を抑制することができると共に、第2油圧ポンプ12を駆動する電動モータ121の大型化も抑制でき、第2油圧ポンプ12のエネルギ効率も高くすることができる。
そして、油供給装置100の油圧ポンプの全体でも、比較例の構成では第1油圧ポンプ11が図5のA1+A2+A3の領域に相当する仕事を行う結果、図5のA3の領域に相当する仕事が無駄になっていた。これに対して、本実施形態の構成では、第1油圧ポンプ11と第2油圧ポンプ12との双方を合わせても、図5のA1+A2の領域に相当する仕事を行うだけであるため、油圧ポンプを駆動するためのエネルギを大幅に低減することができる。したがって、車両用駆動装置Dのエネルギ効率を比較例の構成に比べて大きく向上させることができる。
2.第2の実施形態
以下では、第2の実施形態に係る油供給装置100について図面を参照して説明する。第2の実施形態に係る油供給装置100は、第3油圧ポンプ13を備えている点で、上記第1の実施形態のものとは異なっている。以下では、上記第1の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態と同様とする。
図6に示すように、本実施形態に係る油供給装置100は、上記第1の実施形態の構成に加えて、第3油圧ポンプ13と、第4接続油路44と、を備えている。第3油圧ポンプ13は、動力伝達経路Pから独立していると共に第2油圧ポンプ12の電動モータである第1電動モータ121とは異なる駆動力源である第2電動モータ131によって駆動される電動式の油圧ポンプである。本実施形態では、第3油圧ポンプ13は、第2油圧ポンプ12と同様、油Fの吐出圧を制御可能に構成されている。具体的には、第3油圧ポンプ13からの油Fの吐出圧が目標値となるように、制御装置10によって第2電動モータ131が制御される。なお、第2電動モータ131を制御することにより、第3油圧ポンプ13からの油Fの吐出流量を制御するように構成しても良い。
第3油圧ポンプ13は、第3吸入油路24を介してストレーナ23に接続されている。具体的には、第3油圧ポンプ13の吸入ポートには、第3吸入油路24が接続されている。そして、第3吸入油路24は、第1吸入油路21及び第2吸入油路22と合流しており、その合流部よりも下流側にストレーナ23が接続されている。なお、第3吸入油路24が、第1吸入油路21及び第2吸入油路22と合流せず、独立したストレーナ23に接続された構成としても良い。
第4接続油路44は、第3油圧ポンプ13と第1接続油路41とを接続する油路である。本実施形態では、第4接続油路44は、第1分岐部41aに接続されている。第4接続油路44の途中には、第3逆止弁53が設けられている。第3逆止弁53は、第1接続油路41の側から第4接続油路44の側への油Fの流動を規制する弁である。
第3油圧ポンプ13は、第4接続油路44を流動する油Fの油圧として、第1接続油路41において必要とされる最大の油圧である係合動作中油圧P1U以上の油圧が確保できる吐出能力を有している。そのため、第1油圧ポンプ11の駆動中に、第3油圧ポンプ13から吐出した油Fを、第4接続油路44を介して第1接続油路41に供給することができる。つまり、第3油圧ポンプ13により第1油圧ポンプ11を補助することができる。よって、図7に示すように、第3油圧ポンプ13が規定流量Q3の油Fを吐出することで(図7のA4で示す領域参照)、第1油圧ポンプ11の最大吐出流量を、第3油圧ポンプ13の規定流量Q3分減らすことができる(図7のA1で示す領域参照)。本実施形態の構成では、第1油圧ポンプ11は、油圧P1×流量(Q1−Q3)の仕事(図7のA1)を行うことができる能力があれば十分である。したがって、上記第1の実施形態に比べて、第1油圧ポンプ11を小型化することができると共に、第1油圧ポンプ11を駆動する内燃機関EN及び回転電機MGの駆動力の損失も更に小さく抑えることができる。
3.その他の実施形態
(1)上記の実施形態では、第2接続油路42における第2分岐部42aよりも上流側に、第2逆止弁52が設けられた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第2逆止弁52が設けられていなくても良い。また、第2逆止弁52に代えて、第2接続油路42における第2分岐部42aよりも上流側にリリーフ弁が設けられても良い。
(2)上記の実施形態では、電動モータ121の回転速度及びトルクを制御することにより、第2油圧ポンプ12が油Fの吐出圧或いは吐出流量を制御可能な構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第2油圧ポンプ12が基本的に一定の回転速度或いは一定のトルクで駆動されるように構成されていても良い。
(3)上記の実施形態では、第2油圧ポンプ12が、係合装置C0,C1の係合動作中、吐出圧を低下させる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第2油圧ポンプ12が、係合装置C0,C1の係合動作中も、一定の吐出圧を維持する構成としても良い。
(4)上記第1の実施形態では、制御弁6の排出ポート6cと、第1油圧ポンプ11の第1吸入油路21及び第2油圧ポンプ12の第2吸入油路22とを接続する帰還油路62が設けられた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、帰還油路62が設けられていなくても良い。或いは、帰還油路62が、第1油圧ポンプ11の第1吸入油路21のみに接続されていても良い。
(5)上記第2の実施形態では、第4接続油路44の途中に第3逆止弁53が設けられた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第3逆止弁53が設けられていなくても良い。
(6)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
4.上記実施形態の概要
以下、上記において説明した油供給装置(100)の概要について説明する。
油供給装置(100)は、
車輪(W)を駆動する第1駆動力源(EN,MG)と、前記第1駆動力源(EN,MG)と前記車輪(W)とを結ぶ動力伝達経路(P)に設けられた駆動伝達機構(T)と、前記動力伝達経路(P)に設けられた係合装置(C0,C1)と、を備えた車両用駆動装置(D)に、油(F)を供給する油供給装置(100)であって、
前記動力伝達経路(P)を伝わる駆動力により駆動される第1油圧ポンプ(11)と、
前記動力伝達経路(P)から独立した第2駆動力源(121)により駆動される第2油圧ポンプ(12)と、
前記駆動伝達機構(T)を含む潤滑対象(L)に対して、潤滑用の油(F)を供給する第1供給油路(31)と、
前記係合装置(C0,C1)に対して、制御用の油圧を供給する第2供給油路(32)と、
前記第1油圧ポンプ(11)と前記第1供給油路(31)とを接続する第1接続油路(41)と、
前記第2油圧ポンプ(12)と前記第2供給油路(32)とを接続する第2接続油路(42)と、
前記第1接続油路(41)と前記第2接続油路(42)とを接続し、途中に第1逆止弁(51)が設けられた第3接続油路(43)と、を備え、
前記第1逆止弁(51)は、前記第2接続油路(42)の側から前記第1接続油路(41)の側への油(F)の流動を規制し、
前記第1接続油路(41)における前記第3接続油路(43)との接続部(41a)よりも下流側に、前記第1接続油路(41)の油圧を制御する制御弁(6)が設けられ、
前記制御弁(6)は、前記係合装置(C0,C1)を解放状態から係合状態に変化させる係合動作中、前記第1接続油路(41)における前記制御弁(6)よりも上流側の油圧を、前記第2接続油路(42)の油圧よりも高くする係合動作中制御を実行する。
一般的に、潤滑対象(L)に供給する潤滑用の油(F)は、比較的大きい流量が必要であるものの油圧は低くて良い。一方、係合装置(C0,C1)に供給する制御用の油圧は、比較的高い油圧が必要であるものの流量は小さくて良い。そして、この構成によれば、係合装置(C0,C1)の係合動作中以外の定常状態では、第1油圧ポンプ(11)が潤滑対象(L)に対して潤滑用の油(F)を供給し、第2油圧ポンプ(12)が係合装置(C0,C1)に対して制御用の油圧を供給する。したがって、第1油圧ポンプ(11)により、潤滑対象(L)に供給する潤滑用の油(F)と係合装置(C0,C1)に供給する制御用の油圧との双方を供給する構成に比べて、第1油圧ポンプ(11)に要求される吐出油圧の最大値を低く抑えることができる。したがって、第1油圧ポンプ(11)の大型化を抑制することができると共に、第1油圧ポンプ(11)を駆動することによる車両用駆動装置(D)の駆動力の損失を小さく抑えることができる。
また、上記のような定常状態では、係合装置(C0,C1)の制御用に供給する油(F)の流量は小さいため、第2油圧ポンプ(12)に要求される吐出流量も小さく抑えることができる。そして、この構成によれば、係合装置(C0,C1)を解放状態から係合状態に変化させる係合動作中は、制御弁(6)を制御することにより、第3接続油路(43)を介して、第1油圧ポンプ(11)から係合装置(C0,C1)に対して制御用の油圧を供給する。そのため、第2油圧ポンプ(12)は、係合装置(C0,C1)の係合動作に必要な油圧を供給する必要はなく、定常状態において係合装置(C0,C1)の係合状態を維持するための油圧を供給可能であれば良い。よって、第2油圧ポンプ(12)に要求される吐出油圧の最大値を低く抑えることができる。したがって、第2油圧ポンプ(12)の大型化を抑制することができる。
ここで、前記制御弁(6)は、前記係合動作中、前記第2接続油路(42)における前記第3接続油路(43)との接続部(42a)よりも下流側の油圧が、前記係合装置(C0,C1)の前記係合動作に必要な油圧以上となるように、前記係合動作中制御を実行すると好適である。
この構成によれば、係合装置(C0,C1)の係合動作を制御するために必要な油圧を第2供給油路(32)に供給することができるので、係合装置(C0,C1)の係合動作を適切に行うことができる。
また、前記制御弁(6)は、前記係合動作中制御の実行中、前記第1供給油路(31)における油(F)の流量を、前記係合動作中以外の定常状態での必要流量よりも低くすると好適である。
この構成によれば、係合動作中制御の実行中に、係合装置(C0,C1)の制御用の油圧と潤滑対象(L)の潤滑用の油(F)との双方を供給することになる第1油圧ポンプ(11)の最大吐出流量を比較的小さく抑えることができる。したがって、第1油圧ポンプ(11)の大型化を抑制できると共に、第1油圧ポンプ(11)を駆動することによる駆動力の損失を更に小さく抑えることができる。なお、潤滑対象(L)に供給する潤滑用の油(F)の流量が定常状態での必要流量よりも低くなっても、潤滑用の油(F)は潤滑対象(L)の各所に存在しているため、係合動作中の一時的な流量の低下による問題は生じ難い。
また、前記第2接続油路(42)における前記第3接続油路(43)との接続部(42a)よりも上流側に、第2逆止弁(52)が設けられ、
前記第2逆止弁(52)は、前記第2接続油路(42)における前記第3接続油路(43)との前記接続部(42a)から前記第2油圧ポンプ(12)への油(F)の流動を規制すると好適である。
この構成によれば、係合動作中制御の実行中における、第2油圧ポンプ(12)への油(F)の逆流を防止できる。したがって、第2油圧ポンプ(12)に過剰な負荷が作用することを抑制できる。
また、前記第2油圧ポンプ(12)は、油(F)の吐出圧を制御可能に構成されていると好適である。
この構成によれば、係合装置(C0,C1)の状態に応じて第2油圧ポンプ(12)を制御して、第2供給油路(32)に必要とされる油圧を適宜供給することができる。したがって、第2油圧ポンプ(12)と第2供給油路(32)とを接続する第2接続油路(42)に油圧制御弁(6)を設ける必要性を低下させることができる。
また、前記第2油圧ポンプ(12)が油の吐出圧を制御可能である構成において、
前記第2油圧ポンプ(12)は、前記係合動作中、前記吐出圧を低下させると好適である。
この構成によれば、係合動作中、第1接続油路(41)の油圧と第2接続油路(42)の油圧との差を大きくすることができる。したがって、第1油圧ポンプ(11)から第2供給油路(32)への油(F)の供給を円滑に行うことができる。
また、係合動作中は第2油圧ポンプ(12)から係合装置(C0,C1)への油圧の供給を行わないため、第2油圧ポンプ(12)の吐出圧を低下させることにより、第2油圧ポンプ(12)を駆動することによるエネルギの損失を低減することができる。更に、第2油圧ポンプ(12)に作用する負荷を低減することができる。
また、前記第2接続油路(42)に、当該第2接続油路(42)の油圧を制御する油圧制御弁(6)が設けられていないと好適である。
この構成によれば、油供給装置(100)の構成を簡略化することができる。
また、前記動力伝達経路(P)から独立していると共に前記第2駆動力源(121)とは異なる駆動力源である第3駆動力源(131)により駆動される第3油圧ポンプ(13)と、前記第3油圧ポンプ(13)と前記第1接続油路(41)とを接続する第4接続油路(44)と、を更に備えていると好適である。
一般的に、潤滑対象(L)に供給する潤滑用の油(F)の必要流量は車両用駆動装置(D)の動作状態に応じて異なり、最大流量が必要となるのは、車両の高速走行中などの比較的限られた動作状態のみであることが多い。この構成によれば、第1油圧ポンプ(11)に加えて、第3油圧ポンプ(13)によっても、潤滑対象(L)に潤滑用の油(F)を供給することができる。そのため、潤滑対象(L)に供給する潤滑用の油(F)の必要流量が比較的多い状態では第1油圧ポンプ(11)及び第3油圧ポンプ(13)の双方を用い、潤滑用の油(F)の必要流量が比較的少ない定常状態で第3油圧ポンプ(13)を用いないようにすることで、第1油圧ポンプ(11)の最大吐出流量を小さく抑えることができる。したがって、第1油圧ポンプ(11)を駆動することによる駆動力の損失を更に小さく抑えることができる。
また、前記第1油圧ポンプ(11)の吸入ポートに接続された吸入油路(21)に、前記制御弁(6)の排出ポート(6c)を接続する帰還油路(62)を更に備えていると好適である。
この構成によれば、制御弁(6)によって油圧が調整された結果、制御弁(6)から排出された油(F)を、帰還油路(62)を通して吸入油路(21)に戻すことができる。そのため、第1油圧ポンプ(11)の吸入ポートへ戻す油(F)の量を増やし、第1油圧ポンプ(11)がストレーナ(23)を介して油貯留部(S)から吸入する油(F)の量を減らすことができる。したがって、第1油圧ポンプ(11)が空気を吸い込むことを抑制できると共に、第1油圧ポンプ(11)の効率を高めることができる。