JP6942350B2 - 抗ウイルス剤及び抗ウイルス用組成物 - Google Patents
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Description
ウイルスには、ゲノムとしてDNAを有するDNAウイルスと、RNAを有するRNAウイルスとに大別される。このうち、RNAウイルスには、ノロウイルス(NV)、インフルエンザウイルス(IFV)などがある。
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、新規な抗ウイルス剤及び抗ウイルス用組成物など、特にノロウイルス(NV) またはインフルエンザウイルス(IFV)に対する薬剤を提供することである。
こうして、本発明に係る組成物は、硫酸化多糖類を含有し、抗ウイルス効果を示すことを特徴とする。
上記発明において、硫酸化多糖類は、ラムナン硫酸であることが好ましい。また、ウイルスとしては、ノロウイルス(NV)またはインフルエンザウイルス(IFV)であることが好ましく、NVであることがより好ましい。また、抗ウイルス効果としては、抗体産生刺激作用及び/又は殺ウイルス活性であることが好ましい。
本発明の組成物は、医薬品(医薬組成物)として提供できる。
また、本発明の組成物は、ウイルス感染症の予防又は治療に用いられる抗ウイルス用食品組成物として提供できる。
また、医薬組成物の剤型としては、適当に設定できるが、例えば錠剤、顆粒剤、カプセル剤、粉末剤、散剤などの固形製剤、液剤、懸濁剤などの液状製剤、軟膏剤、またはゲル剤等の半固形剤が例示される。
食品組成物としては、例えば畜肉加工品、農産加工品、飲料(清涼飲料、アルコール飲料、炭酸飲料、乳飲料、果汁飲料、茶、コーヒー、栄養ドリンク、濃縮飲料など)、粉末飲料(粉末ジュース、粉末スープなど)、菓子(キャンディ(のど飴)、クッキー、ビスケット、ガム、グミ、チョコレート等)、パン、シリアル、調味料などが例示される。
本発明は、ラムナン硫酸を有効成分として含み、ウイルス感染症患者、ウイルス感染症を罹患したヒト以外の動物を対象とした抗ウイルス剤用特定保健用食品、抗ウイルス剤栄養機能食品、抗ウイルス剤機能性表示食品として用いられる。
本発明は、ラムナン硫酸を有効成分として含み、生体、例えばウイルス感染症を罹患する前のヒト、ウイルス感染症予備軍のヒト、ヒト以外の動物を対象とした抗ウイルス剤用特定保健用食品、抗ウイルス剤用栄養機能食品、抗ウイルス剤用機能性表示食品として用いられる。
<ラムナン硫酸の調製>
ラムナン硫酸としては、天然由来のどのような物でも用いることができる。本実施形態では、ヒトエグサから熱水抽出して得たものを用いた。簡単に説明すると次の通りである。乾燥した海藻を水で洗浄し、熱水(95℃〜100℃)で6時間抽出した。得られた熱水抽出液を純水に対して透析し、凍結乾燥した。この凍結乾燥物を水に溶解した後、陰イオン交換クロマトグラフィーにアプライし、連続的に溶出させ、ラムナン硫酸を精製した。これを発明の試料として用いた。
なお、本発明に使用可能な硫酸化多糖類(例えば、ラムナン硫酸)は、上記方法以外にも各種方法によって調製できる。また、原料としては、ヒトエグサに限られず、アナアオサ、リボンアオサなどを用いることができる。
一般に、ウイルスは宿主となる細胞内に侵入し、細胞内で増殖した後に、細胞外に放出される。抗ウイルス効果として、細胞内でのウイルス増殖を抑制するものと、細胞外のウイルス粒子の感染力を失わせるものがある。後者の作用は、殺ウイルス活性(virucidal effect)、不活化効果(inactivation)などと呼ばれている。ラムナン硫酸について、殺ウイルス活性の有無を調べた。
1.試験方法
(1)ウイルス株−宿主細胞系
ウイルス株−宿主細胞系として、次の2種類を用いた。MNV(マウスノロウイルス)−RAW264.7細胞(マウスマクロファージ様細胞)及びIFV(インフルエンザウイルス)−MDCK細胞(イヌ腎由来細胞)を用いた。
各ウイルスについて、ストック溶液をPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で希釈し、それぞれ2×105 PFU/mL(PFU=プラーク形成単位)に調製したものをウイルス溶液とした。このウイルス溶液0.5mLと被験溶液0.5mLとを混合し、検体溶液とした。被験溶液として、10, 100及び1000μg/mLに調製したラムナン硫酸溶液を用いた。陰性対照として、PBSを用いた。
検体溶液を調製後、室温に置き、0,1,10及び30分後に10μLずつ採取し、990μLのPBSと混合して、1000μLの100倍希釈溶液とした。100倍希釈溶液から100μLを採取し、予め単層状に培養した宿主細胞に振り掛け、室温で1時間感染させた。ここにプラークアッセイ用培地を重層し、37℃にて2〜3日間培養した。プラークの出現を確認後、クリスタルバイオレット液(IFVの場合)またはニュートラルレッド液(MNVの場合)で細胞を固定・染色し、顕微鏡下でプラーク数を測定した。0時間のプラーク数を100%として、各処理時間経過後の残存ウイルス量を求めた。
図1にはMNVに対する殺ウイルス活性試験の結果を、図2にはIFVに対する殺ウイルス活性試験の結果を、それぞれ示した。
図1に示すように、ラムナン硫酸は、10μg/mL〜1000μg/mLの濃度域において、MNVに対して、時間依存的・濃度依存的に殺ウイルス活性を示した。
図2に示すように、ラムナン硫酸は、10μg/mLにおいて、1分間の処理時間でIFVの感染力をほぼ半減させた。但し、濃度依存的な活性は顕著には認められなかった。
このように、ラムナン硫酸は、MNV及びIFVに対する殺ウイルス活性を示すことが明らかとなった。
1.試験方法
(1)MNV感染系
(i)ウイルス接種と糞便の収集
MNVとしてS7-PP3株を、宿主細胞としてRAW264.7細胞を用いた。
BALB/cマウス(6週齢、各群2匹)を下記2群に分け、それぞれにMNV(1×106 PFU/0.2 ml/mouse)を経口接種した。ラムナン硫酸は、ウイルス接種3日前から7日後まで経口投与した(各日について、9時と18時の2回)。ウイルス接種から1、2、3、4、5、6、8、10、12及び14日後に、1匹ずつの糞便を5mlチューブに収集し、ウイルス測定時まで−80℃にて保存した。糞便の収集時には、マウスを空の飼育用ケージに15分間〜30分間入れた。
(ii)糞便中のウイルス量の測定
糞便 1mg当たりPBS 10μlを加え、超音波処理にて均一に分散させた後、4℃にて、3,000rpm, 15分間の遠心分離を行った。糞便上清をPBSで100、101、102、103倍に希釈した。前日に24ウエルプレートに培養しておいたRAW264.7細胞について、各ウエルから培地を除去後、糞便上清の各希釈液(ウイルス液)を100μl/well加え、室温で1時間感染させた。各ウエルからウイルス液を除去後、1.5% Sea plaque agarose、1%牛胎児血清加DMEM培地を重層した。2日後にニュートラルレッド液を500μl/well重層し、37℃で1時間処理した。ニュートラルレッド液を除去後、顕微鏡下で速やかにプラーク数を測定した。
下記2群を用いた。
#1 陰性対照群:蒸留水(Control)を0.4ml/dayとして、ウイルス接種3日前から7日後まで経口投与した。
#2 ラムナン硫酸投与群:ラムナン硫酸を5mg/0.4ml/dayとして、ウイルス接種3日前から7日後まで経口投与した。
図3には、マウスにMNVを感染させたときの経時的な糞便中のウイルス量(平均値)を示した。数値は、糞便10 mg当たりのウイルス量(×102 PFU/10 mg)として示した。ウイルス量は、感染24時間〜48時間後に最大となり、8日後までは徐々に減少し、10日後に急激に減少した。陰性対照群(#1)では、感染14日後にも、少量ではあるがウイルスが排出された。
ラムナン硫酸投与群(#2)は、対照群(#1)に比べると、ウイルス排出量を大幅に低下させた。特に、感染24時間〜48時間後の最大のウイルス排出量についても、1/3〜1/5以下に低下させた。また、感染14日後には、ウイルスを排出しなかった。
ヒトノロウイルス(HNV)については、培養系が確立されていないため、感染実験に用いることができない。このため、系統的にHNVに近く、感染実験可能なMNVを代替ウイルスとした試験が行われており、MNVに対して効果的であれば、HNVへの効果が認められることが知られている(非特許文献1)。
1.試験方法
(1)MNV感染系
(i)ウイルス接種と糞便の収集
BALB/cマウス(6週齢、各群3匹)を下記A、Bの2群に分けた。このうち、A群(免疫機能正常群)はNK活性を下げ免疫機能を低下させる5-フルオロウラシル(5-FU)(非特許文献2)を非投与とし、B群(免疫機能低下群)には5-FU(0.25mg/day/mouse)を1日おきに、ウイルス接種7日前から21日後まで皮下注射した。
MNV(1x106 PFU/0.2 ml/mouse)を全マウスに経口接種した。
コントロール(滅菌水)またはラムナン硫酸は、ウイルス接種7日前から21日後まで経口投与した(各日について、9時と18時の2回)。ウイルス接種から8時間後、1、2、3、4、5、6、8、10、12、14、16、18及び21日後に、1匹ずつ糞便を5 mlチューブに収集し、測定時まで−80℃にて保存した。糞便の収集時には、マウスを空の飼育用ケージに15〜30分間入れた。
(ii)糞便中のウイルス量の測定
上記<試験2:MNVの感染に対する効果確認試験1>の「1.(1)(ii)糞便中有のウイルス量の測定」に記載の方法に従って、ウイルス量を測定した。
感染21日後に、マウスから全採血を行い、遠心(3,000rpm、5分間、4℃)して血清を分離後、下記方法で中和抗体価を測定した。
血清をPBSで10, 50, 200, 1000, 5000倍希釈した。各希釈液100μlとウイルス(2000 PFU/ml)100μlとを混合した(各ウエル200μlについて200 PFUのウイルスを含むことになる)。このとき、コントロール(control)として、血清の代わりにPBSを加えたものを用いた。
37℃で1時間処理した後、24ウエルプレートに単層状に培養したRAW 264.7細胞に対し、上記混合液を1ウエル当たり100μl(約100 PFU)添加し、室温で1時間感染させた。1.5% SeaPlaque agarose添加DMEM(FBS不含)を各ウエルあたり、500μl重層した。2日〜3日後に、ニュートラルレッド液を各ウエルあたり500μl加えて、37℃で1時間処理した後、ニュートラルレッド液を除去し、顕微鏡下でプラーク数を計測した。controlのプラーク数を100 %とした時の各希釈液のプラーク数のパーセンテージを計算した。
プラーク形成を50%阻害する血清希釈倍数をグラフ上で求め、これを中和抗体価とした。
下記2群を用いた。
#1 陰性対照群:蒸留水(Control)を0.4ml/dayとして、ウイルス接種7日前から21日後まで経口投与した。
#2 ラムナン硫酸投与群:ラムナン硫酸を5mg/0.4ml/dayとして、ウイルス接種7日前から21日後まで経口投与した。
また、上記の通り、#1のA群及び#2のA群には、5-FUを非投与とし、#1のB群及び#2のB群には、5-FUを投与して、免疫機能を低下させた。
(1)糞便中のウイルス量の変化
表1、図4〜図7には、マウスにMNVを感染させたときの経時的な糞便中のウイルス量(平均値)を示した。数値は、糞便10 mg当たりのウイルス量(PFU/10 mg)として示した。なお、表1において、「*」はp<0.05、「**」はp<0.01で、Controlに対する有意差が認められたことを示す。
(2)中和抗体価
図8には、MNV感染21日後の血清中の中和抗体価を示した。5-FU非処理群では、ラムナン硫酸の投与によって、抗体価が有意に(p<0.05)上昇した。これに対し、5-FU処理群では、Control及びラムナン硫酸群ともに、対応する5-FU非処理群に比較すると低値であったが、ラムナン硫酸投与によって有意の(p<0.05)の抗体価上昇がみられ、かつ5-FU非処理Control群に比べても高値となった。
上記のように、免疫機能が低下した場合には、ノロウイルスの腸管からの排泄が長期に及ぶことが分かった。また、ラムナン硫酸は、免疫機能の正常時及び低下時のいずれにおいても、腸管内でのノロウイルス量を減少させ、ウイルス排泄期間を短縮する効果が認められた。上記両現象は、中和抗体価によって説明できると考えられた。
このように、本実施形態によれば、抗ウイルス剤及び抗ウイルス用組成物など、特にNVまたはIFVに対して効果的な薬剤を提供できた。
Claims (3)
- ラムナン硫酸を含有し、ノロウイルスに対する抗ノロウイルス効果を示し、当該抗ノロウイルス効果を示す活性が、抗体産生刺激作用及び/又は殺ウイルス活性であることを特徴とする抗ノロウイルス用組成物。
- 経口投与用または経皮投与用の医薬品である請求項1に記載の抗ノロウイルス用組成物。
- 請求項1に記載の抗ノロウイルス用組成物を含有し、ノロウイルス感染症の予防又は治療に用いられる抗ノロウイルス用食品組成物。
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