以下、本発明の原子力プラントの換気空調システムの実施の形態について図面を用いて説明する。
[第1の実施の形態]
まず、本発明の原子力プラントの換気空調システムの第1の実施の形態としての中央制御室の換気空調システムの構成について図1を用いて説明する。図1は本発明の原子力プラントの換気空調システムの第1の実施の形態としての中央制御室の換気空調システムを示す系統図である。
図1において、原子力プラントは、プラントの運転制御及び監視を行う中央制御室101を備えている。中央制御室101は、作業員が常駐し、通常運転時では原子炉等の運転や監視を行う一方、事故時では事故を収束させるべく安全上の対策や運転操作を行う非常に重要な場所である。中央制御室101では、事故時に周辺の外部環境が厳しい状況にあっても作業員が可能な限り種々の監視や操作を行うことができるように、居住性の確保が求められている。
中央制御室101には、換気空調システム1が接続されている。換気空調システム1は、給気系統として、外気の取込が可能な外気取込口11と、外気取込口11と中央制御室101とを接続する給気ライン12とを備えている。給気ライン12は、外気等の空気を中央制御室101へ供給するものである。
給気ライン12には、上流側から順に、放射線検出器13、第1給気隔離弁14、給気処理装置15、送風機16、第2給気隔離弁17、加湿器18が設けられている。放射線検出器13は、放射性物質の外部環境への漏洩を検知するためのものである。放射線検出器13は、例えば、図示しない制御装置に接続されており、検出信号を制御装置へ出力する。第1給気隔離弁14は、例えば、電動駆動弁であり、図示しない制御装置によって開閉制御される。第1給気隔離弁14は、通常運転時に開弁状態に制御される一方、非常運転時に閉弁状態に制御される。給気処理装置15は、例えば、空気に含まれる塵等の粗大粒子を除去して空気を清浄するフィルタ15aと、空気の温度を調節する(空気の冷却又は加熱を行う)コイル15bとを有している。送風機16は、給気処理装置15を通過した空気を中央制御室101へ強制的に供給するものであり、例えば、図示しない制御装置によって制御される。第2給気隔離弁17は、例えば、電動駆動弁であり、図示しない制御装置によって開閉制御される。第2給気隔離弁17は、通常運転時及び非常運転時において開弁状態に制御される。加湿器18は、中央制御室101内の居住性を確保するために、中央制御室101に供給される空気を加湿するものである。
換気空調システム1は、排気系統として、中央制御室101内の空気を外部環境へ排出する排気口21と、排気口21と中央制御室101とを接続する排気ライン22とを備えている。排気ライン22には、上流側から順に、排風機23、排気隔離弁24が設けられている。排風機23は、中央制御室101内の空気を外部環境へ強制的に排出するものであり、例えば、図示しない制御装置によって制御される。排気隔離弁24は、例えば、電動駆動弁であり、図示しない制御装置によって開閉制御される。排気隔離弁24は、通常運転時及び非常運転時に開弁状態に制御され、排気流量を調整する機能を有している。
換気空調システム1は、事故等の非常時に使用される非常用系統として、給気ライン12の一部を迂回する非常時外気取込ライン31を更に備えている。非常時外気取込ライン31は、例えば、一方側端部が給気ライン12における放射線検出器13と第1給気隔離弁14の間の部分に接続されると共に、他方側端部が給気ライン12における第1給気隔離弁14と給気処理装置15の間の部分に接続されている。つまり、非常時外気取込ライン31は、第1給気隔離弁14を迂回するように給気ライン12に接続されている。非常時外気取込ライン31は、給気ライン12を介して外部環境及び中央制御室101に連通しており、非常時に外気の取込が可能である。
非常時外気取込ライン31には、上流側から順に、非常時外気取込弁32、加熱器33、非常時給気処理フィルタ装置34、放射能減衰装置40が設けられている。非常時外気取込弁32は、例えば、電動駆動弁であり、図示しない制御装置によって開閉制御される。非常時外気取込弁32は、通常運転時に閉弁状態に制御される一方、非常運転時に開弁状態に制御される。加熱器33は、非常時給気処理フィルタ装置34の後述の放射性ガス除去フィルタ34cの吸着効率を維持するために、取り込んだ外気を加熱することで外気の相対湿度を低下させるものである。
非常時給気処理フィルタ装置34は、例えば、上流側から順に、プレフィルタ34a、前置高性能フィルタ34b、放射性ガス除去フィルタ34c、後置高性能フィルタ34dを有している。プレフィルタ34aは、主に、非常時外気取込ライン31内に取り込んだ外気中に含まれている塵等の粗大粒子を除去するためのものである。前置高性能フィルタ34b及び後置高性能フィルタ34dは、例えば,HEPAフィルタで構成されており、主に、非常時外気取込ライン31内に取り込んだ外気中に含まれている放射性セシウム等の粒子状の放射性物質を捕集して除去するためのものである。放射性ガス除去フィルタ34cは、活性炭やアルミナ、ゼオライト、シリカゲル等の表面に複数の細孔を有する材料により形成されており、非常時外気取込ライン31内に取り込んだ外気中に含まれている放射性物質、主に放射性ヨウ素を物理吸着して除去するためのものである。放射性ガス除去フィルタ34cは、例えば、チャコールフィルタで構成されており、通過する空気が高湿度の場合に吸着効率が低下するという特性を有している。なお、非常時給気処理フィルタ装置34では、非常時外気取込ライン31内に取り込んだ外気中に含まれている放射性希ガスを除去することは難しい。
放射能減衰装置40は、取り込んだ外気中に含まれている放射性希ガスの放射能を減衰させつつ、放射能濃度の低下した外気を加圧した状態で中央制御室101へ継続的に供給するものである。放射能減衰装置40は、非常時外気取込ライン31における非常時給気処理フィルタ装置34の下流側に設置された加圧装置41と、加圧装置41の下流側において並列に設置された2つの圧力容器42とを備えている。加圧装置41は、非常時外気取込ライン31内に取り込まれた外気を加圧して圧力容器42へ供給するものである。
各圧力容器42は、加圧装置41によって加圧された外気の充填、加圧された状態の外気の所定時間以上保持、及び保持する外気の中央制御室101への供給を可能とする耐圧容器である。圧力容器42の容量は、一方の圧力容器42が外気を保持する期間中、他方の圧力容器42が加圧状態の外気を中央制御室101へ継続的に供給可能となるような大きさに設定されている。2つの圧力容器42は、非常時外気取込ライン31における加圧装置41の下流側で分岐して並列に配置された2つの並列ライン31a上にそれぞれ設けられている。
2つの圧力容器42の各々の上流側における並列ライン31aには、入口弁43が設けられている。各入口弁43は、各圧力容器42と加圧装置41との連通及び当該連通の遮断を切り換えるものである。入口弁43は、例えば、電動駆動弁であり、図示しない制御装置によって開閉制御される。2つの圧力容器42の各々の下流側における並列ライン31aには、出口弁44が設けられている。各出口弁44は、各圧力容器42と中央制御室101との連通及び当該連通の遮断を切り換えるものである。出口弁44は、例えば、電動駆動弁であり、図示しない制御装置によって開閉制御される。非常時外気取込ライン31における出口弁44よりも下流側であって2つの並列ライン31aの下流側接続部よりも下流側の部分には、調整弁45が設けられている。調整弁45は、圧力容器42から中央制御室101へ供給される外気(空気)の流量及び圧力を調整するものである。調整弁45は、例えば、電動駆動弁であり、図示しない制御装置によって開閉制御される。
換気空調システム1は、さらに、中央制御室101内の空気を外部環境へ排出せずに再び中央制御室101へ供給するための再循環ライン51を備えている。再循環ライン51は、一方側が中央制御室101に接続されると共に、他方側端部が給気ライン12における第1給気隔離弁14と給気処理装置15の間の部分に接続されている。
次に、本発明の原子力プラントの換気空調システムの第1の実施の形態における換気空調方法を図2〜図5を用いて説明する。図2は本発明の原子力プラントの換気空調システムの第1の実施の形態における換気空調方法の通常運転モードを示す説明図、図3は本発明の原子力プラントの換気空調システムの第1の実施の形態における換気空調方法の非常時運転モードの初期段階を示す説明図、図4は本発明の原子力プラントの換気空調システムの第1の実施の形態における換気空調方法の非常時運転モードの第1供給状態を示す説明図、図5は本発明の原子力プラントの換気空調システムの第1の実施の形態における換気空調方法の非常時運転モードの第2供給状態を示す説明図である。
換気空調システム1は、原子力プラントの通常運転時、通常運転モードにて作動する。具体的には、図示しない制御装置の指令信号によって、図2に示すように、給気系統の第1給気隔離弁14、第2給気隔離弁17、及び、排気系統の排気隔離弁24が開弁状態に制御される。これにより、給気ライン12及び排気ライン22が外部環境と連通した状態となっている。それに対して、非常時外気取込弁32が閉弁状態に制御され、非常時外気取込ライン31が外部環境と遮断された状態となっている。
送風機16が駆動することで、外気取込口11から外気が取り込まれて給気ライン12を介して強制的に中央制御室101へ供給される。外気は、給気ライン12を通過する際に、給気処理装置15によって塵等の粗大粒子が除去されると共に温度調節が行われ、更に、加湿器18によって加湿される。また、排風機23が駆動することで、中央制御室101内の空気が排気ライン22を介して排出口21から強制的に外部環境へ放出される。これにより、中央制御室101では、作業員が作業可能な居住性が確保されている。
原子力プラントで万が一事故が発生して放射性物質が周辺の外部環境へ漏洩して換気空調システム1内に流入すると、放射性物質からの放射線を放射線検出部13が検知する。原子力プラントの事故時に発生する放射性物質として、主に、放射性セシウム、放射性ヨウ素、放射性希ガスが挙げられる。
この場合、換気空調システム1は、通常運転モードから非常時運転モードに切り換わる。具体的には、放射線検出部13の放射線の検出結果に基づいて制御装置によって、図3に示すように、第1給気隔離弁14が開弁状態(図2参照)から閉弁状態へ切り換えられる一方、非常時外気取込弁32が閉弁状態(図2参照)から開弁状態へ切り換えられる。これにより、非常時外気取込ライン31が外部環境と連通した状態となる。なお、第2給気隔離弁17及び排気隔離弁24は開弁状態を維持するように制御されると共に、送風機16及び排風機23は駆動状態を維持するように制御される。
また、この放射線検出部13の検出結果に基づいて制御装置により、放射能減衰装置40が駆動する。具体的には、放射能減衰装置40の2つ入口弁43のうち、一方(図3中、上側)の入口弁43が開弁状態に制御される一方、他方(図3中、下側)の入口弁43が閉弁状態に制御される。また、2つの出口弁44の両方が閉弁状態に制御される。さらに、加圧装置41が駆動状態に制御される。
この場合、外気取込口11から外気が非常時外気取込ライン31へ取り込まれて加熱器33により加熱される。加熱されて相対湿度が低下した外気が非常時給気処理フィルタ装置34を通過することで、外気中に含まれている塵等の粗大粒子、放射性セシウム等の粒子状の放射性物質、及び、放射性ヨウ素などが除去される。ただし、非常時給気処理フィルタ装置34を通過した外気中には、反応性の乏しい放射性希ガスが依然として含まれている可能性がある。
非常時給気処理フィルタ装置34を通過した外気は、加圧装置41によって加圧され、入口弁43が開弁状態にある一方(図3中、上側)の圧力容器42に充填される。一方の圧力容器42に対する所定の加圧状態の外気の充填が完了した後、開弁状態の入口弁43を閉弁状態へ切り換える(図3中、矢印で示す開から閉への切換を参照)。その後、外気が充填された一方の圧力容器42の上流側の入口弁43及び下流側の出口弁44を所定時間以上継続して閉弁状態に維持することで、一方の圧力容器42内に外気を所定時間以上保持する。これにより、時間の経過分、一方の圧力容器42内に保持された外気中の放射性希ガスの放射能が減衰する。
その後、図4に示すように、外気を保持している一方(図4中、上側)の圧力容器42の上流側の入口弁43を閉弁状態に維持しつつ、下流側の出口弁44を閉弁状態(図3参照)から開弁状態へ切り換える。これにより、一方の圧力容器42内に保持されている外気が加圧された状態のまま中央制御室101へ供給(放出)される。このとき、調整弁45によって、一方の圧力容器42から中央制御室101へ供給される外気(空気)の圧力及び流量を調整する。なお、一方の圧力容器42から中央制御室101へ供給される外気は、通常運転時と同様に、給気処理装置15によって温度が調整されると共に、加湿器18によって加湿される。
また、一方の圧力容器42から中央制御室101へ外気が供給され続けている間、他方(図4中、下側)の圧力容器42は、加圧装置41によって充填された加圧状態の外気を保持する。具体的には、他方の圧力容器42の下流側の出口弁44を閉弁状態に維持しつつ、上流側の入口弁43を閉弁状態(図3参照)から開弁状態へ切り換える。これにより、入口弁43が開弁状態にある他方の圧力容器42に、加圧装置41によって加圧された外気が充填される。他方の圧力容器42に対する所定の加圧状態の外気の充填が完了した後、開弁状態の入口弁43を閉弁状態へ切り換える(図4中、矢印で示す開から閉への切換を参照)。その後、外気が充填された他方の圧力容器42の上流側の入口弁43及び下流側の出口弁44を所定時間以上継続して閉弁状態に維持することで、他方の圧力容器42内に外気を所定時間以上保持する。これにより、時間の経過分、他方の圧力容器42内の保持された外気中の放射性希ガスの放射能が減衰する。
このように、2つの圧力容器42のうちの他方(図4中、下側)の圧力容器42に加圧装置41によって加圧された外気を充填して所定時間以上保持させている間、残りの一方(図4中、上側)の圧力容器42から所定時間以上保持した外気を所定の加圧状態で中央制御室101へ供給(放出)し続ける。
一方の圧力容器42から中央制御室101への外気の供給(放出)を続けると、一方の圧力容器42からは所定の加圧状態の外気を供給できなくなる。この場合、他方の圧力容器42から所定の加圧状態の外気を中央制御室101へ供給するように切り換える。具体的には、図5に示すように、外気を保持している他方(図5中、下側)の圧力容器42の上流側の入口弁43を閉弁状態に維持しつつ、下流側の出口弁44を閉弁状態(図4参照)から開弁状態へ切り換える。これにより、他方の圧力容器42内に保持されている外気が加圧された状態のまま中央制御室101へ供給(放出)される。このとき、一方の圧力容器42からの外気の供給の場合と同様に、調整弁45によって、他方の圧力容器42から中央制御室101へ供給される外気(空気)の圧力及び流量を調整する。
また、一方(図5中、上側)の圧力容器42から所定の加圧状態の外気を供給できなくなると、一方の圧力容器42の上流側の入口弁43を閉弁状態(図4参照)から開弁状態へ切り換える一方、下流側の出口弁44を開弁状態(図4参照)から閉弁状態へ切り換える。これにより、入口弁43が開弁状態にある一方の圧力容器42内に加圧装置41によって加圧された外気が再び充填される。その後、前述した工程と同様に、開弁状態の入口弁43を閉弁状態に切り換え(図5中、矢印で示す開から閉への切換を参照)、入口弁43及び出口弁44を所定時間以上継続して閉弁状態に維持することで、一方の圧力容器42内に外気を所定時間以上保持する。これにより、時間の経過分、一方の圧力容器42内に保持された外気中の放射性希ガスの放射能が減衰する。
このように、2つの圧力容器42のうちの一方(図5中、下側)の圧力容器42に加圧装置41によって加圧された外気を充填して所定時間以上保持させている間、残りの他方(図5中、上側)の圧力容器42から所定時間以上保持した外気を所定の加圧状態で中央制御室101へ供給(放出)し続ける。
本実施の形態においては、加圧装置41の下流側に2つの圧力容器42を並列に設置したので、2つの圧力容器42のうちのいずれか一方の圧力容器42が加圧状態の外気を所定時間以上保持する間、残りの圧力容器42が中央制御室101へ所定の加圧状態の外気を供給し続けることが可能である。したがって、2つの圧力容器42によって、非常時外気取込ライン31内に取り込んだ外気中に含まれている放射性希ガスの放射能を減衰させつつ、放射能が減衰した状態の放射性希ガスを含む外気を所定の加圧状態で中央制御室101へ継続して供給することができる。その結果、放射線量が高い状態の放射性希ガスが換気空調システム1を介して中央制御室101内へ侵入することを長期間継続して阻止できる。また、加圧された外気の中央制御室101への継続的な供給により、中央制御室101が外部環境よりも高圧(正圧)に維持されるので、外部環境から中央制御室101の間隙(例えば、中央制御室101を構成する壁面と開閉可能な扉との隙間等)を介した放射性物質の侵入(インリーク)を長期間継続して防止することができる。
なお、中央制御室101内の空気は、通常運転時と同様に、排風機23が駆動することで、排気ライン22を介して排出口21から外部環境へ強制的に放出される。加えて、中央制御室101内の空気は、再循環ライン51及び給気ライン12を介して再び中央制御室101へ供給される。圧力容器42から中央制御室101へ供給される外気には、放射能が減衰した状態の放射性希ガスしか含まれていないので、中央制御室101内の空気を再び中央制御室101へ循環させても、中央制御室101内の作業員の放射性物質による被ばくを懸念する必要がない。
上述した本発明の原子力プラントの換気空調システム及び換気空調方法の第1の実施の形態によれば、2つの圧力容器42のうちのいずれか1つの圧力容器42に加圧装置41によって加圧された外気を充填して所定時間以上保持させる一方、2つの圧力容器42のうちのいずれか1つの圧力容器42から所定時間以上保持した外気を加圧した状態で中央制御室101(部屋)へ供給することが可能なので、放射性希ガスを含む放射性物質が外部環境へ漏洩した場合、換気空調システム1によって、放射能が減衰した状態の放射性希ガスを含む外気を加圧した状態で連続的に中央制御室101(部屋)へ供給して中央制御室101(部屋)内を長期間正圧に維持することができる。したがって、放射線量が高い状態の放射性希ガスの中央制御室101(部屋)内への侵入を長期間阻止することができ、その結果、中央制御室101(部屋)内の作業員に対する放射性希ガスによる被ばく量を長期間抑制することができる。
また、本実施の形態によれば、2つの圧力容器42の各々の上流側に入口弁43を設けると共に下流側に出口弁44を設けたので、加圧装置41によって加圧された外気の各圧力容器42に対する充填、各圧力容器42における外気の保持、及び各圧力容器42から保持する外気の中央制御室101への供給(放出)のいずれかの切り換えを、各入口弁43及び各出口弁44の開閉操作によって行うことができる。したがって、複雑な構造構成を用いることなく簡素な構成によって圧力容器42の切換操作を実現することができる。
さらに、本実施の形態によれば、出口弁44と中央制御室101の間に設けた調整弁45によって、各圧力容器42から中央制御室101へ供給される外気(空気)の圧力及び流量を調整することが可能なので、各圧力容器42から中央制御室101へ外気を供給する継続時間及び中央制御室101内の圧力を適切に管理することができる。
また、本実施の形態によれば、加圧装置41の上流側に設置した非常時給気処理フィルタ装置34の前置及び後置の高性能フィルタ34b、34dによって放射性セシウム等の粒子状の放射性物質を捕集すると共に、放射性ガス除去フィルタ34cによって放射性ヨウ素等の放射性物質を物理吸着するように構成したので、放射性希ガス以外の放射性物質の換気空調システム1を介した中央制御室101内への侵入も抑制することができる。その結果、中央制御室101に滞在する作業員の放射性物質による被ばく量を確実に抑制することができる。
また、本実施の形態によれば、再循環ライン51によって、中央制御室101内の空気を再び中央制御室101内へ供給することが可能なので、再循環ライン51を介して循環する空気の流量分、非常時外気取込ライン31を介して中央制御室101へ供給される外気の流量を低減することができる。そのため、圧力容器42の容量や加圧装置41の吐出量を小さくすることができるので、圧力容器42及び加圧装置41の小型化が可能となる。
また、本実施の形態によれば、放射性物質の外部環境への漏洩が検知されると、直ちに、加圧装置41が駆動されると共に、各入口弁43及び出口弁44が開閉操作されるように構成しているので、圧力容器42に対する外気の充填を素早く開始することができる。したがって、圧力容器42内に保持した外気の中央制御室101への最初の供給を迅速に実行することができる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の原子力プラントの換気空調システムの第2の実施の形態としての中央制御室の換気空調システムの構成について図6を用いて説明する。図6は本発明の原子力プラントの換気空調システムの第2の実施の形態としての中央制御室の換気空調システムを示す系統図である。なお、図6において、図1〜図5に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図6に示す本発明の原子力プラントの換気空調システムの第2の実施の形態が第1の実施の形態に係る換気空調システム1(図1参照)と相違する点は、放射能減衰装置40Aの圧力容器42が2つでなく3つ並列に設置されていることである。すなわち、放射能減衰装置40Aは、加圧装置41の下流側に並列に配置された3つの圧力容器42を備えている。3つの圧力容器42は、非常時外気取込ライン31Aにおける加圧装置41の下流側で分岐して並列に配置された3つの並列ライン31a上にそれぞれ設けられている。3つの圧力容器42の各々の上流側における各並列ライン31aに入口弁43が設けられている。3つの圧力容器42の下流側における各並列ライン31aに出口弁44が設けられている。
次に、本発明の原子力プラントの換気空調システムの第2の実施の形態における放射性物質の漏洩事故時の換気空調方法について図6を用いて説明する。なお、換気空調システム1Aによる原子力プラントの通常運転時の換気空調方法は、第1の実施の形態の場合と同様である。
万が一事故が発生して放射性物質が周辺の外部環境へ漏洩した場合、換気空調システム1Aは、第1の実施の形態に係る換気空調システム1と同様に、非常時運転モードにて作動する。すなわち、第1給気隔離弁14が閉弁状態に制御される一方、非常時外気取込弁32が開弁状態に制御されることで、非常時外気取込ライン31A内に外気が取り込まれる。取り込まれた外気中に含まれている塵等の粗大粒子、放射性セシウム等の粒子状の放射性物質、及び、放射性ヨウ素などが非常時給気処理フィルタ装置34によって除去される。ただし、非常時給気処理フィルタ装置34を通過した外気中には放射性希ガスが依然として含まれている。
そこで、3つの圧力容器42のうちの第1の圧力容器42(例えば、図6の最上段の圧力容器42)が加圧状態の外気を所定時間以上保持する際に、残りの第2の圧力容器42(例えば、図6の中段の圧力容器42)及び第3の圧力容器42(例えば、図6の最下段の圧力容器42)の少なくとも1つの圧力容器42が中央制御室101へ所定の加圧状態の外気を供給(放出)し続ける運用を実行する。また、3つの圧力容器42のうちの第2の圧力容器42が加圧状態の外気を所定時間以上保持する際に、残りの第1及び第3の圧力容器42の少なくとも1つの圧力容器42が中央制御室101へ所定の加圧状態の外気を供給(放出)し続ける運用を実行する。また、3つの圧力容器42のうちの第3の圧力容器42が加圧状態の外気を所定時間以上保持する際に、残りの第1及び第2の圧力容器42の少なくとも1つの圧力容器42が中央制御室101へ所定の加圧状態の外気を供給(放出)し続ける運用を実行する。すなわち、3つの圧力容器42の各々は、加圧装置41によって加圧された外気が充填されて外気を所定時間以上保持する第1工程と所定時間以上保持した外気を所定の加圧状態で中央制御室101へ供給(放出)する第2工程との間を、他の2つの圧力容器42の第1工程と第2工程の兼ね合いを考慮して切り換えられる。
したがって、3つの圧力容器42によって、非常時外気取込ライン31A内に取り込んだ外気中に含まれている放射性希ガスの放射能を減衰させつつ、放射能が減衰した状態の放射性希ガスを含む外気を所定の加圧状態で連続的に中央制御室101へ供給することができる。その結果、放射線量が高い状態の放射性希ガスが換気空調システム1Aを介して中央制御室101内へ侵入することを長期間継続して阻止できる。また、加圧された外気の中央制御室101への継続的な供給により中央制御室101を長期間正圧に維持することができ、中央制御室101の間隙(例えば、中央制御室101を構成する壁面と開閉可能な扉との隙間等)を介した放射性物質の侵入(インリーク)を長期間継続して防止することができる。
なお、3つの圧力容器42の各々の工程(外気の充填及び保持と外気の放出)は、少なくとも1つの圧力容器42が第1工程(外気の充填及び保持)にあり、少なくとも1つの圧力容器42が第2工程(外気の放出)にあれば、残りの1つの圧力容器42は第1工程及び第2工程のいずれかを選択することが可能である。つまり、本実施の形態に係る換気空調システム1Aは、圧力容器42を3つ並列に設置しているので、圧力容器42を2つ並列に設置する第1の実施の形態に係る換気空調システム1よりも、圧力容器42の運用の自由度が増す。
上述した本発明の原子力プラントの換気空調システムの第2の実施の形態によれば、3つの圧力容器42のうち少なくともいずれか1つの圧力容器42に加圧装置41によって加圧された外気を充填して所定時間以上保持させる間、3つの圧力容器42のうちの少なくともいずれか1つの圧力容器42から所定時間以上保持した外気を加圧した状態で中央制御室101へ供給することが可能である。したがって、放射性希ガスを含む放射性物質が外部環境へ漏洩した場合に、放射能が減衰した状態の放射性希ガスを含む外気を加圧した状態で連続的に中央制御室101へ供給して中央制御室101内を長期間正圧に維持することができるので、第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
また、本実施の形態によれば、放射能減衰装置40Aの圧力容器42を2つでなく3つ並列に設置したので、第1の実施の形態に係る換気空調システム1と比較して、各圧力容器42の容量の小型化及び各圧力容器42の設置空間の縮小が可能となる。したがって、圧力容器42の仕様及び設置の自由度が増す。
[第2の実施の形態の変形例]
次に、本発明の原子力プラントの換気空調システムの第2の実施の形態の変形例としての中央制御室の換気空調システムの構成について図7を用いて説明する。図7は本発明の原子力プラントの換気空調システムの第2の実施の形態の変形例としての中央制御室の換気空調システムを示す系統図である。なお、図7において、図1〜図6に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図7に示す本発明の原子力プラントの換気空調システムの第2の実施の形態の変形例が第2の実施の形態に係る換気空調システム1Aと相違する点は、換気空調システムが多重化されていることである。すなわち、中央制御室101に対して、同じ構成の換気空調システム1Aが2系統接続されている。本変形例においては、一方の系統の換気空調システム1Aが故障して使用できない場合に、もう一方の系統の換気空調システム1Aを作動させる。したがって、中央制御室101の換気空調機能を失うことがない。
上述した本発明の原子力プラントの空調システムの第2の実施の形態の変形例によれば、第2の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
また、本変形例によれば、中央制御室101に対して換気空調システム1Aを2系統接続して中央制御室101の換気空調システムを多重化しているので、換気空調システムの安全性の向上が図られている。
[その他の実施の形態]
なお、本発明は上述した第1、第2の実施の形態及びその変形例に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
例えば、上述した本発明の原子力プラントの換気空調システムの第1、第2の実施の形態及びその変形例は、中央制御室101の換気空調システムに適用した例である。しかし、本発明の原子力プラントの換気空調システムを、緊急時対策所等の作業員が滞在する可能性のある部屋に接続する換気空調システムに適用することも可能である。
また、本発明の原子力プラントの換気空調システムを、作業員が滞在する部屋ではなく、機器室等の各種機器を収容する部屋に接続する換気空調システムに適用することも可能もある。すなわち、図1〜図7に示す中央制御室101を機器室102に変更する構成も可能である。本発明の原子力プラントの換気空調システムを機器室102の換気空調システムに適用する場合、原子力プラントで万が一事故が発生して放射性希ガスを含む放射性物質が周辺の外部環境へ漏洩しても、中央制御室101の換気空調システム1、1Aと同様に、放射線量が高い状態の放射性希ガスの機器室102内への侵入を長期間阻止することができる。したがって、機器室102に収容されている各種機器に対する放射性希ガスによる被ばく量が長期間抑制されるので、被ばくによる機器の誤作動や損傷を抑制することができる。
また、上述した実施の形態においては、非常時外気取込ライン31、31Aが給気ライン12の一部(第1給気隔離弁14の部分)を迂回して給気ライン12に接続された構成の例を示したが、非常時外気取込ラインを給気ライン12に接続せずに中央制御室101又は機器室102に直接接続する構成も可能である。この構成の場合でも、放射性希ガスを含む放射性物質が外部環境へ漏洩した場合に、放射能が減衰した状態の放射性希ガスを含む外気を所定の加圧状態で中央制御室101又は機器室102へ連続的に供給して中央制御室101又は機器室102内を長期間正圧に維持することができる。
また、上述した実施の形態においては、再循環ライン51によって、中央制御室101又は機器室102内の空気を再び中央制御室101又は機器室102内へ供給可能な構成の例を示したが、再循環ライン51を省略する構成も可能である。この場合、中央制御室101又は機器室102内の空気を排気ライン22を介して外部環境へ強制的に放出する。
また、上述した実施の形態においては、放射線検出部13を換気空調システム1、1Aの給気ライン12の上流側に設けた構成の例を示したが、放射線検出部13の設置位置は任意である。例えば、原子炉建屋内や燃料取扱設備等に設置することが可能である。
また、上述した実施の形態においては、放射線検出部13による放射線の検出結果に基づき放射能減衰装置40、40Aの駆動を自動的に開始する運用方法(換気空調方法)の例を示した。しかし、放射線検出部13が放射性物質の漏洩を検知する以前に、作業員等の判断によって放射能減衰装置40、40Aの駆動を開始する運用方法(換気空調方法)も可能である。例えば、放射性物質の外部環境への漏洩には至っていないが漏洩に繋がる可能性のある事故が生じたときに、作業員が放射能減衰装置40、40Aの駆動を開始する操作を行うことが可能である。この場合、放射性物質の外部環境への漏洩前に、複数の圧力容器42のうちの1つの圧力容器42に加圧装置41によって加圧された外気が充填されるので、放射性物質による汚染が無い状態の外気を予め圧力容器42内に保持することができる。その後、放射性物質が外部環境への漏洩した場合、直ちに、圧力容器42から中央制御室101又は機器室102へ汚染されていない外気を供給する一方、放射性希ガスにより汚染された外気を複数の圧力容器42のうちの少なくとも1つの圧力容器42に保持することができる。このように、放射性物質が外部環境へ漏洩した直後に、圧力容器42から中央制御室101又は機器室102へ人体又は機器への影響の無い外気を供給することができる。
また、上述した本発明の原子力プラントの換気空調システムの第2の実施の形態及びその変形例においては、3つの圧力容器42を並列に設置した放射能減衰装置40Aの例を示したが、4つ以上の圧力容器42を並列に設置した構成の放射能減衰装置も可能である。4つ以上の複数の圧力容器42を並列に設置した放射能減衰装置では、放射性希ガスを含む放射性物質が外部環境へ漏洩した場合、4つ以上の複数の圧力容器42のうち少なくともいずれか1つの圧力容器42に加圧装置41によって加圧された外気を充填して所定時間以上保持させる間、残りの圧力容器42のうち少なくとも1つの圧力容器42から所定時間以上保持した外気を所定の加圧状態で中央制御室101又は機器室102へ供給する運用(換気空調方法)が可能である。各圧力容器42は、加圧装置41によって加圧された外気が充填されて外気を所定時間以上保持する第1工程と所定時間以上保持した外気を所定の加圧状態で中央制御室101へ供給(放出)する第2工程との間を、他の圧力容器42の第1工程及び第2工程の兼ね合いを考慮して切り換えられる。
これにより、放射能が減衰した状態の放射性希ガスを含む外気を所定の加圧状態で中央制御室101又は機器室102へ連続的に供給できるので、中央制御室101又は機器室102を長期間正圧に維持することができる。したがって、放射線量が高い状態の放射性希ガスの中央制御室101又は機器室102内への侵入を長期間防止でき、中央制御室101又は機器室102内の作業員又は機器に対する放射性希ガスによる被ばく量を長期間抑制することができる。
なお、4つ以上の複数の圧力容器42の各々の工程(外気の充填及び保持と外気の放出)は、少なくとも1つの圧力容器42が第1工程(外気の充填及び保持)にあり、残りの圧力容器42のうち少なくとも1つの圧力容器42が第2工程(外気の放出)にあれば、その他の圧力容器42は第1工程及び第2工程のいずれかを選択することが可能である。つまり、この換気空調システムでは、第2の実施の形態に係る換気空調システム1Aよりも、圧力容器42の運用の自由度が増す。