本発明のカーボンナノチューブ高密度集合体の製造方法は、カーボンナノチューブ集合体を改質処理した後、カーボンナノチューブ集合体を加熱処理することで高密度化するものである。
以下に、図1〜図5Bを参照して、本発明の一実施形態について説明する。本発明の一実施形態は、カーボンナノチューブ高密度集合体1(以下、CNT高密度集合体1とする。図5B参照)の製造方法であって、成長基板2上にカーボンナノチューブ集合体3(以下、CNT集合体3とする。)を成長させる工程と、CNT集合体3を改質処理する工程と、改質処理されたCNT集合体3を加熱処理する工程とを含んでいる。
1.成長基板2上にCNT集合体3を成長させる工程
図1A〜図1Cに示すように、本発明の一実施形態では、まず、成長基板2上にCNT集合体3を成長させる。
詳しくは、図1Aに示すように、成長基板2を準備する。成長基板2は、特に限定されず、例えば、化学気相成長法(CVD法)に用いられる公知の基板が挙げられ、市販品を用いることができる。成長基板2としては、例えば、シリコン基板や、二酸化ケイ素膜6が積層されるステンレス基板7などが挙げられ、好ましくは、二酸化ケイ素膜6が積層されるステンレス基板7が挙げられる。なお、図1A〜図2Cでは、成長基板2が、二酸化ケイ素膜6が積層されるステンレス基板7である場合を示す。
次いで、図1Aに示すように、二酸化ケイ素膜6(成長基板2)上に触媒層8を形成する。二酸化ケイ素膜6上に触媒層8を形成するには、金属触媒を、公知の成膜方法により、二酸化ケイ素膜6上に成膜する。
金属触媒としては、例えば、鉄、コバルト、ニッケルなどが挙げられ、好ましくは、鉄が挙げられる。金属触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。成膜方法としては、例えば、真空蒸着およびスパッタリングが挙げられ、好ましくは、真空蒸着が挙げられる。
次いで、図1Bに示すように、触媒層8が配置される成長基板2を、例えば、700℃以上900℃以下に加熱する。これにより、触媒層8が、凝集して、複数の粒状体8Aとなる。
次いで、図1Cに示すように、成長基板2に、例えば、1分以上30分以下、原料ガスを供給する。
原料ガスは、炭素数1〜4の炭化水素ガス(低級炭化水素ガス)を含んでいる。炭素数1〜4の炭化水素ガスとしては、例えば、メタンガス、エタンガス、プロパンガス、ブタンガス、エチレンガス、アセチレンガスなどが挙げられ、好ましくは、アセチレンガスが挙げられる。原料ガスは、必要により、水素ガスや、不活性ガス(例えば、ヘリウム、アルゴンなど)、水蒸気などを含むこともできる。
これによって、複数の粒状体8Aのそれぞれを起点として、複数のカーボンナノチューブ9が成長する。図1Cでは、便宜上、1つの粒状体8Aから、1つのカーボンナノチューブ9が成長するように記載されているが、これに限定されず、1つの粒状体8Aから、複数のカーボンナノチューブ9が成長してもよい。なお、以下において、カーボンナノチューブ9をCNT9とする。
CNT9は、単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブのいずれであってもよく、好ましくは、多層カーボンナノチューブである。複数のCNT9は、単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブのいずれか1種のみを含んでいてもよく、単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブの両方を含んでいてもよい。
CNT9の平均外径は、例えば、1nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましく、例えば、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。CNT9の平均長さ(平均軸線方向寸法)は、例えば、1μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、例えば、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましい。なお、CNT9の層数、平均外径および平均長さは、例えば、ラマン分光分析や、電子顕微鏡観察などの公知の方法により測定される。
複数のCNT9は、成長基板2上において、互いに略平行となるように、成長基板2の厚み方向に延びており、成長基板2に対して直交するように配向(垂直に配向)されている。つまり、複数のCNT9は、垂直配向カーボンナノチューブ(Vertically Aligned carbon nanotubes)である。
以上によって、成長基板2上に、複数のCNT9からなるCNT集合体3が成長する。
図1C〜図2Bでは、便宜上、CNT集合体3において全てのCNT9が直線状に延びるように記載されているが、実際には、図1Cに示すように、複数のCNT9は、直線状に延びるカーボンナノチューブ90(以下、直線状CNT90とする。)、曲線状に延びるカーボンナノチューブ91(以下、曲線状CNT91とする。)、配向方向に対して屈曲するカーボンナノチューブ92(以下、屈曲CNT92とする。)などを含んでいる。
CNT集合体3において、複数のCNT9は成長基板2の面方向に互いに密集している(図2C参照)。CNT集合体3の平均嵩密度は、例えば、10mg/cm3以上であることが好ましく、20mg/cm3以上であることがより好ましく、例えば、50mg/cm3以下であることが好ましい。なお、平均嵩密度は、例えば、単位面積当たり質量(目付量:単位 mg/cm2)と、カーボンナノチューブの長さ(SEM(日本電子社製)または非接触膜厚計(キーエンス社製)により測定)とから算出される。
また、CNT集合体3のG/D比は、例えば、1.0以上であることが好ましく、例えば、10以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましい。G/D比とは、カーボンナノチューブのラマンスペクトルにおいて、1350cm−1付近に観測されるDバンドと呼ばれるピークのスペクトル強度に対する、1590cm−1付近に観測されるGバンドと呼ばれるピークのスペクトル強度の比である。なお、Dバンドのスペクトルは、カーボンナノチューブにおけるグラフェンの結晶欠陥に由来し、Gバンドのスペクトルは、炭素の六員環の面内振動に由来する。
次いで、必要により、図2A〜図2Cに示すように、成長基板2からCNT集合体3を剥離する。
詳しくは、図2Aおよび図2Bに示すように、切断刃10(例えば、カッター刃、剃刀など)を成長基板2の上面に沿ってスライド移動させて、複数のCNT9の基端部(成長基板2側端部)を一括して切断する。これによって、CNT集合体3が成長基板2から分離される。
次いで、分離されたCNT集合体3を成長基板2から引き上げる。以上によって、CNT集合体3が、成長基板2から剥離される。なお、以下において、剥離されたCNT集合体3をCNTアレイシート4とする。
図2Cに示すように、CNTアレイシート4は、複数のCNT9からシート形状に形成されている。詳しくは、CNTアレイシート4において、複数のCNT9は、CNTアレイシート4の厚み方向に配向されており、面方向(縦方向および横方向)に互いに連続してシート形状となるように配列されている。
これによって、CNTアレイシート4は、成長基板2から剥離された状態で、複数のCNT9が面方向に互いに接触するように形状を保持している。また、CNTアレイシート4は、可撓性を有している。なお、複数のCNT9のうち、互いに隣接するCNT9間には、ファンデルワールス力が作用している。
CNTアレイシート4の平均嵩密度の範囲は、CNT集合体3の平均嵩密度の範囲と同一である。CNTアレイシート4のG/D比の範囲は、CNT集合体3のG/D比の範囲と同一である。
CNTアレイシート4をそのまま改質処理することもできるが、CNT高密度集合体1の高密度化の観点から好ましくは、CNTアレイシート4は、改質処理する工程の前に、(例えば、2600℃以上に)加熱処理されて高密度化されてもよい。CNT集合体3を改質処理する工程の前において、CNT集合体3を(例えば、2600℃以上に)加熱処理することで高密度化する工程をさらに含んでいる。なお、本発明の一実施形態では、CNTアレイシート4を改質処理する工程の前における加熱処理を一次加熱処理とし、CNTアレイシート4を改質処理する工程の後における加熱処理を二次加熱処理とする。
CNTアレイシート4を一次加熱処理するには、まず、CNTアレイシート4を、加熱炉内に配置する。加熱炉としては、特に制限されず、例えば、抵抗加熱炉、誘導加熱炉、直通電型電気炉などが挙げられ、好ましくは、抵抗加熱炉が挙げられる。また、加熱炉は、バッチ式であってもよく、連続式であってもよい。
また、図3Aに示すように、CNTアレイシート4を、好ましくは、耐熱容器17に収容した状態で、加熱炉内に配置する。
耐熱容器17は、耐熱温度が2600℃を超過する耐熱容器であって、例えば、炭素から形成される炭素容器、セラミックから形成されるセラミック容器などの公知の耐熱容器が挙げられる。このような耐熱容器のなかでは、好ましくは、炭素容器が挙げられる。
耐熱容器17は、例えば、上方に向かって開放される容器本体17Aと、容器本体17Aの上端部を閉鎖するための蓋部17Bとを備えている。
そして、CNTアレイシート4を、例えば、蓋部17Bと上下方向に間隔を空けるとともに、容器本体17Aの側壁に対して間隔を空けるように配置する。これにより、CNTアレイシート4は、無負荷の状態(CNTアレイシート4に荷重がかけられていない状態、つまり、大気圧下)で一次加熱処理される。
次いで、加熱炉内に不活性ガスを流入して、加熱炉内を不活性ガス雰囲気に置換する。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴンなどが挙げられ、好ましくは、アルゴンが挙げられる。
次いで、加熱炉内の温度を、所定の昇温速度で加熱温度まで上昇させた後、温度を維持したまま、カーボンナノチューブ集合体が高密度化されるまで所定時間放置する。
昇温速度としては、例えば、1℃/分以上であることが好ましく、3℃/分以上であることがより好ましく、5℃/分以上であることがとりわけ好ましく、例えば、40℃/分以下であることが好ましく、20℃/分以下であることがより好ましい。
加熱温度は、例えば、2600℃以上であることが好ましく、2700℃以上であることがより好ましく、2800℃以上であることがとりわけ好ましい。加熱温度が上記下限以上であれば、CNTアレイシート4において複数のCNT9を確実に密集させることができる。また、加熱温度としては、複数のCNT9の昇華温度未満であればよく、3000℃以下であることが好ましい。加熱温度が上記上限以下であれば、複数のCNT9が昇華することを抑制できる。
加熱時間は、例えば、10分以上であることが好ましく、1時間以上であることがより好ましく、例えば、5時間以下であることが好ましく、3時間以下であることがより好ましい。
CNTアレイシート4が一次加熱処理されると、図3Aおよび図3Bに示すように、CNTアレイシート4において、互いに隣接するCNT9は、それらの間に作用するファンデルワールス力などにより束状となるように密集する。なお、図3A〜図4Bでは、便宜上、複数のCNT9として、直線状CNT90と曲線状CNT91とを記載し、屈曲CNT92を省略している。
このとき、直線状CNT90と曲線状CNT91(または屈曲CNT92)とが互い密集すると、曲線状CNT91の曲がった部分が密集を妨げる抗力として作用し、直線状CNT90と曲線状CNT91との間に、複数の直線状CNT90が密集した場合のスペースと比較して大きなスペースが生じる。なお、直線状CNT90と屈曲CNT92とが互い密集した場合、複数の曲線状CNT91が互い密集した場合、複数の屈曲CNT92が互い密集した場合、および、曲線状CNT91と屈曲CNT92とが互い密集した場合も同様である。
また、曲線状CNT91および屈曲CNT92のそれぞれを構成する炭素の数は、それらが曲がっているために、直線状CNT90を構成する炭素の数よりも多く、曲線状CNT91および屈曲CNT92が直線状となるには過剰である。そのため、上記のように一次加熱処理しても、曲線状CNT91および屈曲CNT92の直線性の向上を図るには限度がある。
以上により、CNTアレイシート4が一次加熱処理されて、CNTアレイシート4が高密度化する。その後、必要により、一次加熱処理されたCNTアレイシート4を冷却(例えば、自然冷却)する。なお、以下において、一次加熱処理後のCNTアレイシート4を一次加熱CNTアレイシート5とする。
一次加熱CNTアレイシート5の厚みは、複数のCNT9が配向性を維持したまま密集するため、加熱処理前のCNTアレイシート4の厚みと略同じである。具体的には、一次加熱CNTアレイシート5の厚みは、加熱処理前のCNTアレイシート4の厚みに対して、例えば、95%以上105%以下であることが好ましく、100%であることがより好ましい。
一次加熱CNTアレイシート5の体積は、加熱処理前のCNTアレイシート4の体積に対して、例えば、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、例えば、70%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましい。
一次加熱CNTアレイシート5の平均嵩密度は、例えば、50mg/cm3を超過することが好ましく、60mg/cm3以上であることがより好ましく、120mg/cm3以上であることがとりわけ好ましい。
一次加熱CNTアレイシート5のG/D比は、例えば、2.0を超過することが好ましく、10以上であることがより好ましく、例えば、100以下であることが好ましい。
2.CNT集合体3を改質処理する工程
次いで、図4Aおよび図4Bに示すように、CNT集合体3(好ましくはCNTアレイシート4、より好ましくは一次加熱CNTアレイシート5)を改質処理する。
しかるに、CNT9は、通常、複数の炭素原子が六角網目状に結合したグラフェンから筒状に形成される。つまり、CNT9のグラフェンは、好ましくは、炭素原子の6員環から形成される。そして、直線状CNT90は、主に炭素原子の6員環から形成されるグラフェンにより構成される。
一方、曲線状CNT91や屈曲CNT92における曲がり部分は、グラフェン中に5員環や7員環などの結晶欠陥を含んでいると推定される。このような結晶欠陥は、6員環から形成される結晶構造と比較して、エネルギー的に不安定である。
従って、このCNT集合体3を改質処理する工程では、直線状のCNTに比べて、優先的に曲線状CNT91や屈曲CNT92に含まれる結晶欠陥が改質される。
CNT集合体3の改質処理方法としては、例えば、UV照射処理、空気酸化処理、電子線照射処理、レーザ照射処理、プラズマ処理およびコロナ処理などが挙げられる。改質処理方法は、少なくとも1回実施され、複数回繰り返すこともできる。同一の改質処理方法を複数回繰り返してもよく、複数種類の高密度化処理改質処理方法を組み合わせて実施してもよい。換言すると、改質処理は、エネルギー的に比較的不安定な屈曲部のCNTなどに含まれる結晶欠陥(5員環、7員環など)を選択的(優先的)に攻撃して結晶欠陥が改質される処理である。
UV照射処理では、酸素存在下においてCNT集合体3にUVを照射する。
UVの波長は、例えば、10nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましく、例えば、400nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましい。
UV照射時の温度は、例えば、0℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましく、例えば、500℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。UV照射時間は、例えば、1分間以上であることが好ましく、5分間以上であることがより好ましく、例えば、120分間以下であることが好ましく、60分間以下であることがより好ましい。
UVを照射すると、酸素分子が分解されて酸素原子が生成し、その酸素原子と酸素分子とが結合することにより、オゾンが生成する。オゾンは、エネルギー的に比較的不安定な屈曲部などに含まれる結晶欠陥(5員環、7員環など)を選択的(優先的)に攻撃する。すると、結晶欠陥を構成する炭素原子は、オゾンとの反応によりCO2を生成する。これによって、結晶欠陥が改質される。
空気酸化処理では、空気存在下においてCNT集合体3を所定温度以上に加熱する。
空気酸化処理における加熱温度は、例えば、400℃以上であることが好ましく、500℃以上であることがより好ましく、例えば、800℃以下であることが好ましく、700℃以下であることがより好ましい。空気酸化処理における加熱時間は、例えば、1分間以上であることが好ましく、5分間以上であることがより好ましく、例えば、120分間以下であることが好ましく、60分間以下であることがより好ましい。
CNT集合体3を所定温度以上に加熱すると、空気中の酸素分子が、エネルギー的に比較的不安定な屈曲部などに含まれる結晶欠陥(5員環、7員環など)を選択的(優先的)に攻撃する。すると、結晶欠陥を構成する炭素原子は、酸素分子との反応によりCO2を生成する。これによって、結晶欠陥が改質される。
電子線照射処理では、CNT集合体3に電子線を照射する。
電子線のエネルギーは、例えば、3eV以上であることが好ましく、5eV以上であることがより好ましく、例えば、10eV以下であることが好ましく、8eV以下であることがより好ましい。
電子線照射時の温度は、例えば、0℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましく、例えば、500℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。電子線照射時間は、例えば、1分間以上であることが好ましく、5分間以上であることがより好ましく、例えば、120分間以下であることが好ましく、60分間以下であることがより好ましい。
CNT集合体3を電子線照射処理すると、エネルギー的に比較的不安定な屈曲部などに含まれる結晶欠陥(5員環、7員環など)を選択的(優先的)に攻撃する。すると、結晶欠陥を構成する炭素原子は、弾き飛ばされ、欠陥が改質される。
レーザ照射処理では、CNT集合体3に、公知のレーザ発振器によりレーザを照射する。
レーザの波長は、特に制限されず、例えば、380nm以上であることが好ましく、例えば、1×106nm以下であることが好ましく、760nm以下であることがより好ましい。
レーザ照射時の温度は、例えば、0℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましく、例えば、500℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。レーザ照射時間は、例えば、1分間以上であることが好ましく、5分間以上であることがより好ましく、例えば、120分間以下であることが好ましく、60分間以下であることがより好ましい。
CNT集合体3をレーザ照射処理すると、エネルギー的に比較的不安定な屈曲部などに含まれる結晶欠陥(5員環、7員環など)を選択的(優先的)に攻撃する。すると、結晶欠陥を構成する炭素原子は、弾き飛ばされ、欠陥が改質される。
プラズマ処理では、公知のプラズマ発生装置により、CNT集合体3にプラズマを照射する。
プラズマ発生装置における原料ガスとしては、例えば、水素、アルゴン、酸素、それらの混合ガスなどが挙げられる。プラズマ発生装置における圧力は、例えば、1Pa以上100Pa以下であることが好ましい。
プラズマ照射時の温度は、例えば、0℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましく、例えば、500℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。プラズマ照射時間は、例えば、1分間以上であることが好ましく、5分間以上であることがより好ましく、例えば、120分間以下であることが好ましく、60分間以下であることがより好ましい。
CNT集合体3をプラズマ処理すると、グラフェン中の屈曲部などに含まれる結晶欠陥(5員環、7員環など)が選択的(優先的)にエッチングされる。これによって、結晶欠陥が改質される。
コロナ処理では、公知のコロナ処理装置により、CNT集合体3にコロナ放電を照射する。
コロナ放電照射時の温度は、例えば、0℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましく、例えば、500℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。コロナ放電照射時間は、例えば、1分間以上であることが好ましく、5分間以上であることがより好ましく、例えば、120分間以下であることが好ましく、好ましくは、60分間以下であることがより好ましい。
CNT集合体3をコロナ処理すると、UV照射処理と同様にオゾンが発生する。そして、オゾンが屈曲部などに含まれる結晶欠陥(5員環、7員環など)を選択的(優先的)に攻撃し、結晶欠陥が改質される。
このような改質処理方法のなかでは、好ましくは、UV照射処理および空気酸化処理が挙げられる。
以上によって、曲線状CNT91および屈曲CNT92に含まれる結晶欠陥(5員環、7員環など)が改質されて、原子空孔が生じる。また、曲線状CNT91および屈曲CNT92において、結晶欠陥の除去に伴なって炭素数が低減される。
3.改質されたCNT集合体3を加熱処理する工程
次いで、図4Aおよび図4Bに示すように、改質されたCNT集合体3(好ましくは、CNTアレイシート4、より好ましくは、一次加熱CNTアレイシート5)を(例えば、2600℃以上に)加熱処理することで高密度化する。
改質されたCNT集合体3を加熱処理する方法としては、上記の一次加熱処理と同様の方法が挙げられる。
詳しくは、図5Aに示すように、改質されたCNT集合体3を、好ましくは、耐熱容器17に収容した状態で、上記の加熱炉内に配置する。
次いで、加熱炉内に上記の不活性ガスを流入して、加熱炉内の温度を、上記の昇温速度で上記の加熱温度(2600℃以上、好ましくは、2700℃以上、さらに好ましくは、2800℃以上、3000℃以下)まで上昇させた後、温度を維持したまま、カーボンナノチューブ集合体が高密度化されるまで所定時間放置する。
このとき、図5Bに示すように、曲線状CNT91(屈曲CNT92)を構成するグラフェンは、改質処理により生じた原子空孔を埋めるように再構成されて修復すると推定される。また、改質処理工程において、曲線状CNT91(屈曲CNT92)を構成する炭素数が低減されているために、曲線状CNT91(屈曲CNT92)の直線性が向上し、曲線状CNTおよび屈曲CNTが直線状に近づく。
これによって、直線状CNT90と曲線状CNT91との間のスペースを低減するように、直線状CNT90と曲線状CNT91とが互い密集する。
以上により、改質されたCNT集合体3が高密度化し、CNT高密度集合体1が製造される。
より詳しくは、CNT集合体3が一次加熱CNTアレイシート5である場合、一次加熱CNTアレイシート5が二次加熱処理されてさらに高密度化し、CNT高密度集合体1が製造される。
CNT高密度集合体1の厚みは、一次加熱CNTアレイシート5の厚み(CNT9の配向方向長さ)と略同じである。具体的には、CNT高密度集合体1の厚みは、一次加熱CNTアレイシート5の厚みに対して、例えば、90%以上110%以下であることが好ましく、±5%であることがより好ましい。
CNT高密度集合体1の体積は、一次加熱CNTアレイシート5の体積に対して、例えば、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、例えば、95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましい。
CNT高密度集合体1の平均嵩密度は、例えば、75mg/cm3以上であることが好ましく、80mg/cm3以上であることがより好ましく、90mg/cm3以上であることがとりわけ好ましく、例えば、200mg/cm3以下であることが好ましい。
CNT高密度集合体1のG/D比は、例えば、20以上であることが好ましく、22以上であることがより好ましく、24以上であることがとりわけ好ましく、例えば、30以下であることが好ましい。
CNT高密度集合体1の電気伝導率は、厚み方向において、例えば、102S/m以上であることが好ましく、103S/m以上であることがより好ましく、例えば、106S/m以下であることが好ましく、105S/m以下であることがより好ましい。なお、電気伝導率は、公知の電気伝導率測定装置により測定される。
CNT高密度集合体1の熱伝導率は、厚み方向において、例えば、20W/(m・K)以上であることが好ましく、25W/(m・K)以上であることがより好ましく、例えば、50W/(m・K)以下であることが好ましく、40W/(m・K)以下であることがより好ましい。なお、熱伝導率は、公知の熱伝導率測定装置により測定される。
4.作用効果
本実施形態では、CNT集合体3を加熱処理する前に、CNT集合体3が改質処理される。
これによって、曲線状CNT91や屈曲CNT92が改質される。詳しくは、曲線状CNT91および屈曲CNT92のグラフェンに含まれる結晶欠陥が改質されて原子空孔が生じるとともに、炭素数が低減されると推定される。
そして、改質処理されたCNT集合体3を(例えば、2600℃以上に)加熱処理すると、複数のCNT9が互いに密集するとともに、曲線状CNT91および屈曲CNT92のグラフェンが原子空孔を埋めるように再構成されて修復すると推定される。さらに、改質処理により曲線状CNT91および屈曲CNT92を構成する炭素数が低減されているので、曲線状CNT91および屈曲CNT92の曲がりが低減されて、曲線状CNT91および屈曲CNT92が直線状に近づく。
その結果、CNT高密度集合体1の平均嵩密度の向上を図ることができる。
また、改質処理は、UV照射処理、空気酸化処理、電子線照射処理、レーザ照射処理、プラズマ処理およびコロナ処理からなる群から選択される少なくとも1種の改質処理である。
そのため、CNT集合体3を十分に改質できる。その結果、CNT集合体3の高密度化を安定して図ることができ、CNT高密度集合体1の平均嵩密度の向上を安定して図ることができる。
また、本実施形態では、CNT集合体3を改質処理する前に、好ましくは、CNT集合体3を2600℃以上に加熱処理する。そのため、改質処理の前において、CNT集合体3が加熱されることにより密集して、高密度化される。その後、加熱処理されたCNT集合体3(一次加熱CNTアレイシート5)が、改質処理された後、再度、2600℃以上に加熱される。その結果、CNT高密度集合体1の平均嵩密度のさらなる向上を図ることができる。
また、CNT高密度集合体1では、平均嵩密度が75mg/cm3以上であり、G/D比が22以上であることが好ましい。そのため、熱伝導性および電気伝導性の向上を図ることができる。
5.変形例
上記の実施形態では、CNTアレイシート4が、一次加熱処理された後、改質処理され、次いで、二次加熱処理されるが、これに限定されない。CNTアレイシート4を、一次加熱処理せずに、改質処理し、次いで、加熱処理してもよい。これによっても、CNT高密度集合体1を製造できる。CNT高密度集合体1は、複数のCNT9が所定の方向(成長基板に対して垂直)に配向している。また、CNT高密度集合体1は、面方向(縦方向および横方向)に互いに連続してシート形状となるように配列されている。なお、CNT高密度集合体1は、面積に制限がなく、好ましくは約1.0cm角以上A4サイズ(21cm×29.7cm)以下である。
この場合、CNT高密度集合体1の厚みは、改質されたCNTアレイシート4の厚みに対して、例えば、95%以上105%以下であることが好ましく、100%であることがより好ましい。CNT高密度集合体1の体積は、改質されたCNTアレイシート4の体積に対して、例えば、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、例えば、95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましい。
CNT高密度集合体1の平均嵩密度は、例えば、75mg/cm3以上であることが好ましく、80mg/cm3以上であることがより好ましく、90mg/cm3以上であることがとりわけ好ましく、例えば、200mg/cm3以下であることが好ましい。CNT高密度集合体1のG/D比は、例えば、20以上であることが好ましく、22以上であることがより好ましく、24以上であることがとりわけ好ましく、例えば、30以下であることが好ましい。
CNT高密度集合体1の電気伝導率は、厚み方向において、例えば、102S/m以上であることが好ましく、103S/m以上であることがより好ましく、例えば、106S/m以下であることが好ましく、105S/m以下であることがより好ましい。CNT高密度集合体1の熱伝導率は、厚み方向において、例えば、20W/(m・K)以上であることが好ましく、25W/(m・K)以上であることがより好ましく、例えば、50W/(m・K)以下であることが好ましく、40W/(m・K)以下であることがより好ましい。
また、CNTアレイシート4の改質処理の前に、その他の高密度化処理を実施してもよい。その他の高密度化処理としては、例えば、CNTアレイシート4に揮発性の液体(例えば、水、有機溶媒など)を供給して気化させる方法、CNTアレイシート4を機械的に圧縮する方法などが挙げられる。
上記の実施形態では、改質処理が1回実施されるが、これに限定されない。改質処理と加熱処理とを複数回繰り返して実施してもよい。例えば、CNT集合体を改質処理工程後に、改質処理されたCNT集合体を複数回の加熱処理することで高密度化する工程のパターンを繰り返してもよいし、CNT集合体を複数回の改質処理工程後に、改質処理されたCNT集合体を加熱処理することで高密度化する工程のパターンを繰り返してもよい。このように改質処理と加熱処理とのパターンを複数回繰り返すことにより、平均嵩密度およびG/D比が段階的に向上することが考えられる。
上記の実施形態では、CNTアレイシート4は、耐熱容器17に収容されて加熱されるが、これに限定されない。CNTアレイシート4は、耐熱容器17に収容されることなく、加熱炉で加熱されてもよい。
上記の実施形態では、CNT集合体3は、成長基板2から剥離された後、一次加熱処理され、次いで改質処理されるが、これに限定されない。成長基板2上に配置されるCNT集合体3を、一次加熱処理した後、改質処理してもよい。また、成長基板2上に配置されるCNT集合体3を、一次加熱処理せずに、改質処理してもよい。
上記の実施形態および変形例は、適宜組み合わせることができる。
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
(実施例1)
ステンレス製の成長基板(ステンレス基板)の表面に二酸化ケイ素膜を積層した後、二酸化ケイ素膜上に、触媒層として鉄を蒸着した。
次いで、成長基板を600℃に加熱して、触媒層に原料ガス(アセチレンガス)を、10分間供給した。これにより、成長基板上において、平面視略矩形形状のCNT集合体を形成した。
CNT集合体において、複数のCNTは、互いに略平行となるように延び、成長基板に対して直交するように配向(垂直配向)されていた。CNTは、多層カーボンナノチューブであり、CNTの平均外径は、約10nm、CNTの平均長さは、約200μmであった。CNT集合体の平均嵩密度は、約30mg/cm3であった。CNT集合体の平均G/D比は、2であった。
次いで、剃刀(切断刃)を成長基板に沿って移動させて、約5.0cm角のCNT集合体を成長基板から切り離して、CNTアレイシートを準備した。CNTアレイシートの平均嵩密度は、CNT集合体の平均嵩密度と同じであり、CNTアレイシートの平均G/D比は、CNT集合体の平均G/D比と同じであった。
次いで、CNTアレイシートを、耐熱容器である炭素容器(内寸高さ1mm)に収容して、その炭素容器を抵抗加熱炉内に配置した。
次いで、抵抗加熱炉内を、アルゴン雰囲気に置換した後、10℃/分で2800℃まで昇温し、2800℃で2時間保持した。これにより、CNTアレイシートが高密度化された。その後、自然冷却(−100℃/分程度)により、室温(25℃)まで冷却した。
加熱処理後のCNTアレイシート(一次加熱CNTアレイシート)は、加熱処理前のCNTアレイシートに対して2.5倍高密度化された。一次加熱CNTアレイシートの平均嵩密度は、約75mg/cm3であった。また、一次加熱CNTアレイシートの平均G/D比は、加熱処理前のCNTアレイシートの平均G/D比に対して10倍向上した。一次加熱CNTアレイシートの平均G/D比は、20であった。
なお、一次加熱CNTアレイシートの走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図6に示す。CNTアレイシートが、直線状CNTと、曲線状CNTと、屈曲CNTとを含むことが確認された。
次いで、一次加熱CNTアレイシートを、600℃で10分間空気酸化して改質処理した。
次いで、改質処理後のCNTアレイシートを、上記と同様に、炭素容器に収容して、その炭素容器を抵抗加熱炉内に配置した後、抵抗加熱炉内を、アルゴン雰囲気に置換し、2800℃で2時間保持した。これにより、CNTアレイシートがさらに高密度化された。その後、自然冷却(−100℃/分程度)により、室温(25℃)まで冷却した。
以上によって、CNT高密度集合体を得た。
CNT高密度集合体は、一次加熱CNTアレイシートに対して1.2倍高密度化された。CNT高密度集合体の平均嵩密度は、約90mg/cm3であった。また、CNT高密度集合体の平均G/D比は、一次加熱CNTアレイシートの平均G/D比に対して1.2倍向上した。CNT高密度集合体の平均G/D比は、24であった。
(実施例2および3)
CNT集合体におけるCNTの平均長さを、下記表1に示す値に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、CNT高密度集合体を得た。CNTアレイシート、一次加熱CNTアレイシートおよびCNT高密度集合体のそれぞれの、平均嵩密度および平均G/D比を表1に示す。
(実施例4)
CNT集合体における平均嵩密度を約50mg/cm3に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、CNT高密度集合体を得た。CNTアレイシート、一次加熱CNTアレイシートおよびCNT高密度集合体のそれぞれの、平均嵩密度および平均G/D比を表1に示す。
(実施例5)
改質処理をUV照射処理に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてCNT高密度集合体を得た。
具体的には、一次加熱CNTアレイシートに、空気存在下で、25℃において、波長200nmのUVを5分間照射した。これにより、一次加熱CNTアレイシートを改質処理した。その後、改質処理後のCNTアレイシートを、実施例1と同様に加熱処理した。CNTアレイシート、一次加熱CNTアレイシートおよびCNT高密度集合体のそれぞれの、平均嵩密度および平均G/D比を表1に示す。
(実施例6)
改質処理の前に一次加熱処理を実施しなかったこと以外は、実施例5と同様にしてCNT高密度集合体を得た。具体的には、CNTアレイシートをUV処理した後、加熱処理した。CNTアレイシートおよびCNT高密度集合体のそれぞれの、平均嵩密度および平均G/D比を表1に示す。
(比較例1)
改質処理を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、CNT集合体(二次加熱CNTアレイシート)を得た。具体的には、CNTアレイシートを一次加熱処理して、一次加熱CNTアレイシートを得た後、改質処理をすることなく、一次加熱CNTアレイシートを二次加熱処理した。CNTアレイシート、一次加熱CNTアレイシートおよび二次加熱CNTアレイシートのそれぞれの、平均嵩密度および平均G/D比を表1に示す。