以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタという)の実施形態について説明する。なお、本発明が適用される画像形成装置は、プリンタに限定されるものではなく、複写機、ファクシミリ、複写機能及びFAX機能を有する複合機などにも、本発明の適用が可能である。
まず、実施形態に係るプリンタ(以下、本プリンタともいう)の基本的な構成について説明する。図1は、本プリンタを示す概略構成図である。同図において、本プリンタは、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を作像するための四つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Kを備えている。また、一次転写ユニット30、光書込ユニット80、定着装置90、給送カセット100、レジストローラ対101なども備えている。
四つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Kは、互いに異なる色(Y,M,C,K)のトナーを用いるが、それ以外の点は互いに同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を作像するための作像ユニット1Kを例にすると、これは、図2に示されるように、潜像担持体たるドラム状の感光体2K、ドラムクリーニング装置3K、除電装置、帯電装置6K、現像装置8K等を有している。それらの装置を共通の保持体に保持させた状態でプリンタ本体に対して一体的に脱着することで、それらの装置を同時に交換できるようになっている。
感光体2Kは、金属製のドラム基体の表面上に有機感光層が被覆されたものであって、駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。帯電装置6Kは、帯電バイアスが印加される帯電ローラ7Kを感光体2Kに接触あるいは近接させながら、帯電ローラ7Kと感光体2Kとの間に放電を発生させることで、感光体2Kの表面をトナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電せしめる。帯電バイアスとしては、直流電圧に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラ7Kは、金属製の芯金の表面に導電性弾性材料からなる導電性弾性層が被覆されたものである。帯電ローラ等の帯電部材を感光体2Kに接触あるいは近接させる方式に代えて、帯電チャージャーによる方式を採用してもよい。
一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、後述する光書込ユニット80から発せられるレーザー光によって光走査されてK用の静電潜像を担持する。このK用の静電潜像は、Kトナーを用いる現像装置8Kによって現像されてKトナー像になる。そして、後述する中間転写ベルト31上に一次転写される。
ドラムクリーニング装置3Kは、一次転写工程(後述する一次転写ニップ)を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去する。回転駆動されるクリーニングブラシローラ4K、片持ち支持された状態で自由端を感光体2Kに当接させるクリーニングブレード5Kなどを有している。回転するクリーニングブラシローラ4Kで転写残トナーを感光体2K表面から掻き取ったり、クリーニングブレードで転写残トナーを感光体2K表面から掻き落としたりする。
上記除電装置は、ドラムクリーニング装置3Kによってクリーニングされた後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
現像装置8Kは、現像剤担持体たる現像ロール12Kを収容する現像部9Kと、K現像剤を撹拌搬送する現像剤搬送部13Kとを有している。そして、現像剤搬送部13Kは、第1スクリュー部材10Kを収容する第1搬送室と、第2スクリュー部材11Kを収容する第2搬送室とを有している。それらスクリュー部材は、それぞれ、軸線方向の両端部がそれぞれ軸受けによって回転自在に支持される回転軸部材と、これの周面に螺旋状に突設せしめられた螺旋羽根とを具備している。
第1スクリュー部材10Kを収容している第1搬送室と、第2スクリュー部材11Kを収容している第2搬送室とは、仕切り壁によって仕切られているが、仕切壁におけるスクリュー軸線方向の両端部には、それぞれ両搬送室を連通させる連通口が形成されている。第1スクリュー部材10Kは、螺旋羽根内に保持しているK現像剤を、回転駆動に伴って回転方向に撹拌しながら、図中の紙面に直交する方向の奥側から手前側に向けて搬送する。第1スクリュー部材10Kと、後述する現像ロール12Kとは互いに向かい合う姿勢で平行配設されているため、このときのK現像剤の搬送方向は、現像ロール12Kの回転軸線方向に沿った方向でもある。そして、第1スクリュー部材10Kは、現像ロール12Kの表面に対してK現像剤をその軸線方向に沿って供給していく。
第1スクリュー部材10Kの図中手前側端部付近まで搬送されたK現像剤は、仕切壁の図中手前側端部付近に設けられた連通開口を通って、第2搬送室内に進入した後、第2スクリュー部材11Kの螺旋羽根内に保持される。そして、第2スクリュー部材11Kの回転駆動に伴って、回転方向に撹拌されながら、図中手前側から奥側に向けて搬送されていく。
第2搬送室内において、ケーシングの下壁にはトナー濃度センサーが設けられており、第2搬送室内のK現像剤のKトナー濃度を検知する。Kトナー濃度センサーとしては、透磁率センサーからなるものが用いられている。Kトナーと磁性キャリアとを含有するK現像剤の透磁率は、Kトナー濃度と相関関係があるため、透磁率センサーは、Kトナー濃度を検知していることになる。
本プリンタは、Y,M,C,K用の現像装置の第2収容室内にY,M,C,Kトナーをそれぞれ個別に補給するためのY,M,C,Kトナー補給手段を備えている。本プリンタのメイン制御部は、Y,M,C,Kトナー濃度検知センサーからの出力電圧値の目標値であるY,M,C,K用のVtrefをフラッシュメモリーに記憶している。そして、Y,M,C,Kトナー濃度検知センサーからの出力電圧値と、Y,M,C,K用のVtrefとの差が所定値を超えた場合には、その差に応じた時間だけY,M,C,Kトナー補給手段を駆動する。これにより、Y,M,C,K用の現像装置における第2搬送室内にY,M,C,Kトナーが補給され、K現像剤のKトナー濃度が所定の範囲内に維持される。
現像部9K内に収容されている現像ロール12Kは、第1スクリュー部材10Kに対向しているとともに、ケーシングに設けられた開口を通じて、感光体2Kにも対向している。また、現像ロール12Kは、回転駆動される非磁性パイプからなる筒状の現像スリーブと、これの内部にスリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラとを具備している。そして、第1スクリュー部材10Kから供給されるK現像剤をマグネットローラの発する磁力によってスリーブ表面に担持しながら、スリーブの回転に伴って、感光体2Kに対向する現像領域に搬送する。
現像スリーブには、トナーと同極性であって、感光体2Kの静電潜像の電位よりも絶対値が大きく、且つ感光体2Kの一様帯電電位よりも絶対値が小さな現像バイアスが印加されている。これにより、現像スリーブと感光体2Kの静電潜像との間には、現像スリーブ上のKトナーを静電潜像に向けて静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2Kの地肌部との間には、現像スリーブ上のKトナーをスリーブ表面に向けて移動させる地肌ポテンシャルが作用する。それら現像ポテンシャル及び地肌ポテンシャルの作用により、現像スリーブ上のKトナーが感光体2Kの静電潜像に選択的に転移して、静電潜像をKトナー像に現像する。
図1において、Y,M,C用の作像ユニット1Y,1M,1Cにおいても、K用の作像ユニット1Kと同様にして、感光体2Y,2M,2C上にY,M,Cトナー像が形成される。作像ユニット1Y,1M,1C,1Kの上方には、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。この光書込ユニット80は、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光により、感光体2Y,2M,2C,2Kを光走査する。この光走査により、感光体2Y,2M,2C,2K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。
なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザー光を、ポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
作像ユニット1Y,1M,1C,1Kの下方には、無端状の中間転写ベルト31を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる一次転写ユニット30が配設されている。一次転写ユニット30は、第一像担持体たる中間転写ベルト31の他に、駆動ローラ32、ニップ裏側ローラ33、クリーニング補助ローラ34、4つの一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kなどを有している。また、中転クリーニング装置37なども有している。
中間転写ベルト31は、そのループ内側に配設された駆動ローラ32、ニップ裏側ローラ33、クリーニング補助ローラ34、及び4つの一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kによって張架されている。そして、駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ32の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。
4つの一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kは、無端移動せしめられる中間転写ベルト31を感光体2Y,2M,2C,2Kとの間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、感光体2Y,2M,2C,2Kとが当接するY,M,C,K用の一次転写ニップが形成されている。一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kには、一次転写電源によってそれぞれ一次転写バイアスが印加されている。これにより、感光体2Y,2M,2C,2K上のY,M,C,Kトナー像と、一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kとの間に転写電界が形成される。
Y用の感光体2Y表面に形成されたYトナー像は、感光体2Yの回転に伴ってY用の一次転写ニップに進入する。そして、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト31上に一次転写される。このようにしてYトナー像が一次転写せしめられた中間転写ベルト31は、その後、M,C,K用の一次転写ニップを順次通過する。そして、感光体2M,2C,2K上のM,C,Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト31上には四色重ね合わせトナー像が形成される。なお、一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
一次転写ユニット30の下方には、二次転写ローラ42や、第二像担持体たる二次転写ベルト41などを具備する二次転写ユニット40が配設されている。無端状の二次転写ベルト41は、そのループ内側に配設された二次転写ローラ42などの複数のローラによって張架された状態で、二次転写ローラ42の回転駆動によって図中時計回り方向に無端移動せしめられる。そして、二次転写ローラ42により、中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、ニップ裏側ローラ33に対する掛け回し領域に当接している。つまり、一次転写ユニット30のニップ裏側ローラ33と、二次転写ユニット40の二次転写ローラ42とは、互いの間に中間転写ベルト31及び二次転写ベルト41を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、ニップ形成部材たる二次転写ベルト41のおもて面とが当接する二次転写ニップが形成されている。
二次転写ベルト41のループ内に配設された二次転写ローラ42は接地されているのに対し、中間転写ベルト31のループ内に配設されたニップ裏側ローラ33には、二次転写電源36によって二次転写バイアスが印加される。これにより、ニップ裏側ローラ33と、二次転写ローラ42との間に、マイナス極性のトナーをニップ裏側ローラ33側から二次転写ローラ42側に向けて静電移動させる二次転写電界が形成される。なお、ニップ形成部材として、二次転写ベルト41の代わりに、二次転写ローラを用い、これを中間転写ベルト31に直接当接させてもよい。
二次転写ユニット40の下方には、記録シートSを複数枚重ねたシート束の状態で収容している給送カセット100が配設されている。この給送カセット100は、シート束の一番上の記録シートSに給紙ローラ100aを当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録シートSを給送路に向けて送り出す。給送路の末端付近には、レジストローラ対101が配設されている。このレジストローラ対101は、給送カセット100から送り出された記録シートSをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録シートSを二次転写ニップ内で中間転写ベルト31上の四色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録シートSを二次転写ニップに向けて送り出す。
二次転写ニップで記録シートSに密着せしめられた中間転写ベルト31上の四色重ね合わせトナー像は、二次転写電界やニップ圧の作用によって記録シートS上に一括二次転写されてフルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録シートSは、二次転写ニップを通過すると、中間転写ベルト31から曲率分離する。更に、二次転写ベルト41を掛け回している分離ローラ43の近くまでくると、二次転写ベルト41から分離する。
二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト31には、記録シートSに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト31のおもて面に当接している中転クリーニング装置37によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト31のループ内側に配設されたクリーニング補助ローラ34は、中転クリーニング装置37による中間転写ベルト31のクリーニングをループ内側から補助する。
中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、駆動ローラ32に対する掛け回し箇所には、ベルト速度センサー85がベルトおもて面側から所定の間隙を介して対向している。このベルト速度センサー85は、中間転写ベルト31の走行速度を検知するものである。
二次転写ニップよりもシート搬送方向の下流側には、定着装置90が配設されている。この定着装置90は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ91と、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とによって定着ニップを形成している。定着装置90内に送り込まれた記録シートSは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ91に密着させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。定着装置90内から排出された記録シートSは、定着後搬送路を経由した後、機外へと排出される。
本プリンタは、モノクロ画像を形成する場合に、一次転写ユニット30におけるY,M,C用の一次転写ローラ35(Y,M,C)を支持している支持板の姿勢をソレノイド等の駆動によって変化させる。これにより、Y,M,C用の一次転写ローラ35(Y,M,C)を、感光体2(Y,M,C)から遠ざけて、中間転写ベルト31のおもて面を感光体2(Y,M,C)から離間させる。このようにして、中間転写ベルト31をブラック用の感光体2Kだけに当接させた状態で、4つの作像ユニット1(Y,M,C,K)のうち、ブラック用の作像ユニット1Kだけを駆動して、Kトナー像をブラック用の感光体2K上に形成する。
図3は、本プリンタに搭載された弾性ベルトからなる中間転写ベルト31の横断面を部分的に示す拡大断面図である。中間転写ベルト31は、ある程度の屈曲性を有し且つ剛性の高い材料からなる無端ベルト状の基層(硬質素材のベルト基体)31aと、これのおもて面上に積層された柔軟性に優れた弾性材料からなる弾性層31bとを具備している。弾性層31bには、粒子31cが分散せしめられていて、それらの粒子31cが自らの一部を弾性層31bの表面から突出させた状態で、同図に示されるように、ベルト面方向に密集して並んでいる。それら複数の粒子31cにより、複数の凸がベルト面に形成されている。
基層31aの材料としては、樹脂中に、電気抵抗を調整するための充填材や添加材などからなる電気抵抗調整材を分散させたものを例示することができる。その樹脂としては、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)などのフッ素系樹脂や、ポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂等を例示することができる。
弾性層31bを形成するための弾性材料としては、汎用の樹脂や、エラストマーゴムなどを例示することができる。特に、アクリルゴムが好適である。
粒子31cとしては、平均粒子径が100μm以下であり、真球状の形状をしており、有機溶剤に不溶であり、且つ3%熱分解温度が200℃以上である樹脂粒子を用いる。粒子31cの樹脂材料に特に制限はないが、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ゴムなどを例示することができる。
図4は、中間転写ベルト31を弾性層31bの側から示す部分拡大平面図である。同図に示されるように、中間転写ベルト31の表面において、粒子31c同士の重なり合いは殆ど観測されない。
記録シートSとして、和紙のような表面凹凸に富んだものを用いたとする。この場合に、記録シートSの表面における複数の凹部にそれぞれトナーを良好に二次転写して、表面凹凸にならった画像濃度ムラの発生を抑えるためには、弾性層31bをある程度の柔軟性(弾性)に優れたものを採用する必要がある。そして、そのような弾性層31bを採用すると、弾性層31bの単体だけでは、張架するとすぐに伸びてしまうことから、実使用に耐えられない。このため、弾性層31bよりも剛性のある基層31aを設け、その基層31aの剛性によってベルト全体の伸びを長期間に渡って抑えることが必須の条件になる。
以上のように、本プリンタでは、基層31aの上に弾性層31bを積層した弾性ベルトからなる中間転写ベルト31を用いる。これにより、ベルト線速(プロセス線速)=630[mm/s]という事業ユーザー向けの超高速で画像を形成しても、凹凸シートの表面凹部内に十分量のトナーを転移させて、凹凸シートの表面凹凸にならった画像濃度ムラの発生を抑えることができる。
図1において、中間転写ベルト31のおもて面をクリーニングする中転クリーニング装置37は、クリーニングブレードを用いるブレードクリーニング方式を採用していない。中間転写ベルト31のおもて面側には、弾性層31bが被覆されており、摩擦抵抗の大きな弾性層31bにクリーニングブレードのエッジを当接させると、すぐにブレードめくれが発生してクリーニング機能を維持することができなくなるからである。中間転写ベルト31のおもて面に当接させるクリーニング部材としては、回転駆動するクリーニングブラシローラを採用している。このようなブラシクリーニング方式だけを採用した中転クリーニング装置37は、短時間に多量のトナーをクリーニングすることが困難である。
本プリンタのメイン制御部は、プロセスコントロール処理と呼ばれる作像条件調整処理を定期的に実施する。このプロセスコントロール処理では、Y,M,C,Kの各色のそれぞれについて、現像バイアスや帯電バイアスなどを調整して、所望の画像濃度が得られるようにする。具体的には、まず、互いに異なる画像濃度になるように互いに異なる現像ポテンシャルの条件で現像した複数のテストトナー像からなる濃度パターン像を形成して中間転写ベルト31上に一次転写する。弾性ベルトからなる中間転写ベルト31は色調が暗いことから、トナー像の画像濃度(単位面積あたりのトナー付着量)の検知には適していない。そこで、中間転写ベルト31上の濃度パターン像を二次転写ニップで非弾性の二次転写ベルト41に二次転写する。
二次転写ユニット40の二次転写ベルト41は、ポリイミドなど、比較的明るい色調で、ゴムよりも硬く、且つベルト形状を長期間に渡って維持することができる材質からなる単層のベルトである。色調が明るいことから、その表面上に二次転写された濃度パターン像の各テストトナー像のトナー付着量を正確に測定することが可能である。
二次転写ベルト41上に二次転写された濃度パターン像における各テストトナー像は、反射型光学センサーからなる付着量検知センサーによって単位面積あたりのトナー付着量が検知される。本プリンタのメイン制御部は、それらの検知結果に基づいて、目標の画像濃度が得られる現像バイアスや帯電バイアスを特定する。以降のプリントジョブにおいては、特定結果と同じ値の現像バイアスや帯電バイアスの条件下で、ユーザーの命令に基づく画像を形成する。このような処理を、Y,M,C,Kの各色のそれぞれについて実施する。これにより、環境変動にかかわらず、長期間に渡って目標の画像濃度を維持することができる。
連続プリントジョブの実施中にプロセスコントロール処理の実施タイミングが到来した場合、メイン制御部は、連続プリントジョブ中における中間転写ベルト31のシート間対応領域のベルト周方向の長さを通常よりも大きくする。そして、その大きくしたシート間対応領域に、各色の濃度パターン像を形成する。なお、連続プリントジョブ中における中間転写ベルト31のシート間対応領域は、連続プリントジョブ中に先行して搬送される記録シートSに密着する領域と、後続の記録シートSに密着する領域との間の領域である。
また、本プリンタのメイン制御部は、複数の記録シートSに対して画像を連続的に形成する連続プリントジョブにおいて、必要に応じてトナー強制消費処理を実施する。具体的には、連続プリントジョブにおいて、出力する画像の平均画像面積率が比較的低くなると、現像装置内のトナーが積極的に消費されずに、多くのトナーが現像装置内を長期間に渡って撹拌搬送され続ける。これにより、外添剤の埋没や離脱を進行させた劣化トナーの割合が徐々に増加したり、トナーの帯電量(Q/M)が過剰になったりして、現像性が低下してしまう。そこで、メイン制御部は、連続プリントジョブ中において、過去の所定枚数分の出力における平均画像面積率が所定の閾値を下回った場合には、中間転写ベルト31のシート間対応領域に、トナー強制消費用トナー像を形成して、トナー消費を促す。このようなトナー強制消費処理を、Y,M,C,Kの各色のそれぞれについて個別に実施する。
上述したように、中間転写ベルト31のおもて面をクリーニングする中転クリーニング装置37は、短時間で多量のトナーをクリーニングすることができない。このため、中間転写ベルト31上に形成したトナー強制消費用トナー像を中転クリーニング装置37にクリーニングさせようとすると、クリーニング不良による不具合を引き起こしてしまう。そこで、本プリンタにおいては、トナー強制消費用トナー像についても、濃度パターン像と同様に、二次転写ニップで中間転写ベルト31から二次転写ベルト41に二次転写する。そして、それらのトナー像については、二次転写ユニット40の二次転クリーニング装置49によって二次転写ベルト41からクリーニングする。二次転クリーニング装置49は、ブレードクリーニング方式とブラシクリーニング方式とを併用するものであるため、濃度パターン像やトナー強制消費用トナー像を良好に二次転写ベルト41からクリーニングすることが可能である。
なお、二次転写ベルト41上に二次転写されるトナー強制消費用トナー像のベルト周方向における単位長さあたりのトナー付着量は、二次転写ベルト41上に二次転写される濃度パターン像の同単位長さあたりのトナー付着量よりも多い。よって、トナーをクリーニングする条件は、濃度パターン像よりもトナー強制消費用トナー像の方が厳しくなる。
図5は、二次転写ユニット40の要部構成を示す要部構成図である。二次転写ユニット40は、二次転写ベルト41、二次転写ローラ42、分離ローラ43、検知補助ローラ44、第一クリーニング補助ローラ45、第二クリーニング補助ローラ46、第三クリーニング補助ローラ47等を有している。また、反射型光学センサーからなる付着量検知センサー48や、二次転クリーニング装置49なども有している。
二次転クリーニング装置49は、クリーニングブラシローラ49a、第一クリーニングブレード49b、塗布ブラシローラ49c、固形潤滑剤49d、押圧バネ49e、第二クリーニングブレード49f、フリッカー部材49gなどを具備している。
二次転写ベルト41は、そのループ内側に配設された二次転写ローラ42、分離ローラ43、検知補助ローラ44、第一クリーニング補助ローラ45、第二クリーニング補助ローラ46、及び第三クリーニング補助ローラ47によって張架されている。
接地された二次転写ローラ42は、二次転写ニップに二次転写電界を形成したり、その回転駆動によって二次転写ベルト41を図中時計回り方向に無端移動させたりするローラである。また、比較的小径の分離ローラ43は、二次転写ベルト41の進行方向を自らに対する掛け回し位置で急激に変化させることで、二次転写ニップを通過した記録シートSの二次転写ベルト41からの曲率分離を促すローラである。
二次転写ベルト41の周方向における全域のうち、検知補助ローラ44に対する掛け回し箇所のおもて面には、反射型光学センサーからなる付着量検知センサー48が所定の間隙を介して対向している。中間転写ベルト31から二次転写ベルト41に二次転写された濃度パターン像は、二次転写ベルト41の無端移動に伴って付着量検知センサー48との対向位置まで移動すると、付着量検知センサー48によってそのトナー付着量が検知される。二次転写ベルト41のループ内側に配設された検知補助ローラ44は、二次転写ベルト41を介して付着量検知センサー48と対向しながら、その対向位置にて、二次転写ベルト41を自らの周面に巻き付けてベルトの波打ちを防止することで検知を補助する。
なお、二次転写ベルト41に二次転写されたトナー強制消費用トナー像も、ベルトの無端移動に伴って付着量検知センサー48との対向位置に移動するが、トナー強制消費用トナー像のトナー付着量を付着量検知センサー48によって検知する処理は行われない。
二次転写ベルト41の周方向における全域のうち、第一クリーニング補助ローラ45に対する掛け回し箇所のおもて面には、クリーニングブラシローラ49aが当接している。このクリーニングブラシローラ49aは、回転軸部材と、これの周面に植毛された複数の導電性起毛からなるブラシローラ部とを具備しており、駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動する。この回転駆動に伴って、ブラシローラ部が二次転写ベルト41のおもて面に摺擦する。
クリーニングブラシローラ49aには、二次転クリーニング電源74から出力される直流電圧からなるクリーニングバイアスが印加される。このクリーニングバイアスは、トナーの正規帯電極性(マイナス極性)とは逆のプラス極性になっており、ベルト表面上のトナー粒子をクリーニングブラシローラ49aのブラシ内に引き寄せて静電転移させる。
二次転写ベルト41の無端移動に伴って付着量検知センサー48との対向位置を通過した濃度パターン像やトナー強制消費用トナー像のトナーは、二次転写ベルト41とクリーニングブラシローラ49aとの摺擦部に進入する。そして、二次転写ベルト41のおもて面から掻き取られてクリーニングブラシローラ49aのブラシローラ部内に捕捉される。
トナーを捕捉したブラシローラ部は、クリーニングブラシローラ49aの回転に伴ってフリッカー部材49gとの対向位置までくると、複数の起毛の先端をフリッカー部材49gに接触させた状態で連れ回ろうとする。これにより、複数の起毛を大きく撓ませた後、フリッカー部材49gから離間させた瞬間にフリッカー運動させる。このフリッカー運動により、ブラシローラ部内に捕捉されていたトナーのブラシローラ内からの振り落としが促進される。
濃度パターン像やトナー強制消費用トナー像を構成していたトナーの殆どは、クリーニングブラシローラ49aによって二次転写ベルト41の表面から除去されるが、若干量のトナーが同表面上に残ってしまう。
二次転写ベルト41の周方向における全域のうち、第二クリーニング補助ローラ46に対する掛け回し箇所のおもて面には、第一クリーニングブレード49bや塗布ブラシローラ49cが当接している。第一クリーニングブレード49bは、支持部材によって片持ち支持された状態で、自由端のエッジをカウンター方向で二次転写ベルト41に当接させている。また、回転軸部材と、ブラシローラ部とを具備する塗布ブラシローラ49cは、ブラシローラ部の先端を二次転写ベルト41のおもて面に摺擦させながら図中時計回り方向に回転駆動する。この塗布ブラシローラ49cには、押圧バネ49eによって付勢される固形潤滑剤49dが押し当てられている。塗布ブラシローラ49cは、回転駆動に伴って固形潤滑剤49dから潤滑剤を粉末状に掻き取る。なお、固形潤滑剤49dとしては、ステアリン酸亜鉛塊を例示することができる。
クリーニングブラシローラ49aとの摺擦位置を通過した後の二次転写ベルト41に残留してしまったトナーは、二次転写ベルト41の無端移動に伴って、ベルトと第一クリーニングブレード49bとの当接位置に向けて搬送される。そして、その殆どが第一クリーニングブレード49bによって二次転写ベルト41から掻き落とされる。このようにしてトナーがクリーニングされた二次転写ベルト41のおもて面には、塗布ブラシローラ49cによって粉末潤滑剤が塗布される。
二次転写ベルト41の周方向における全域のうち、第三クリーニング補助ローラ47に対する掛け回し箇所のおもて面には、第二クリーニングブレード49fが当接している。第二クリーニングブレード49fは、支持部材によって片持ち支持された状態で、自由端のエッジをカウンター方向で二次転写ベルト41に当接させている。そして、静電クリーニング部材としての塗布ブラシローラ49cとの摺擦位置を通過してもなお二次転写ベルト41に付着している微量のトナーを、二次転写ベルト41から掻き落とす。
以下、二次転写ベルト41の周方向において、クリーニングブラシローラ49aによるクリーニング位置をブラシクリーニング位置という。また、第一クリーニングブレード49bによるクリーニング位置を第一ブレードクリーニング位置という。また、塗布ブラシローラ49cによる潤滑剤の塗布位置を潤滑剤塗布位置という。また、第二クリーニングブレード49fによるクリーニング位置を第二ブレードクリーニング位置という。
以上の基本的な構成を備える本プリンタにおいて、中間転写ベルト31は、第一像担持体として機能している。また、二次転写ベルト41は、中間転写ベルトの表面上のトナー像が自らの表面に転写されるように中間転写ベルト31に当接して転写ニップたる二次転写ニップを形成する第二像担持体として機能している。また、クリーニングブラシローラ49aは、第二像担持体たる二次転写ベルト41の表面を静電方式でクリーニングする静電クリーニング部材として機能している。また、第一クリーニングブレード49bや第二クリーニングブレード49fは、二次転写ベルト41の表面を掻き取り方式でクリーニングするクリーニングブレードとして機能している。また、二次転クリーニング電源74は、静電クリーニング部材たるクリーニングブラシローラ49aに印加するための直流電圧を出力する電源として機能している。
次に、本発明者らが行った実験について説明する。
本発明者らは、上述した基本的な構成を備えるプリンタ試験機を用意した。そして、このプリンタ試験機を用いて、クリーニングブラシローラ49aによるトナー除去率[%]と、二次転クリーニング装置49のクリーニング性と、ブレードめくれ回避性とを調査する実験を行った。
クリーニングブラシローラ49aによるトナー除去率[%]については、次のようにして測定した。まず、Kのトナー強制消費用トナー像を二次転写ベルト41に二次転写し、それをクリーニングブラシローラ49aによるクリーニング位置に進入させる前に、プリンタを一旦停止させた。そして、進入前のトナー強制消費用トナー像のトナーを粘着テープで回収してその重量を測定した後、測定結果と粘着テープの面積とに基づいて、ベルト単位面積あたりにおけるトナー付着量をクリーニング前付着量として算出した。次に、プリンタ試験機を空運転した後、プリンタ試験機を停止させて、二次転クリーニング装置49から、第一クリーニングブレード49b、塗布ブラシローラ49c、及び第二クリーニングブレード49fを取り外した。その後、プリンタ試験機を稼働させて、二次転写ベルト41にKのトナー強制消費用トナー像を二次転写した。そして、二次転写ベルト41におけるトナー構成消費用トナー像の担持領域をクリーニングブラシローラ49aによるクリーニング位置に通した後、その担持領域に付着している残留トナーを粘着テープで回収してその重量を測定した。この測定結果と粘着テープの面積とに基づいて、ベルト単位面積あたりにおける残留トナー付着量をクリーニング後付着量として算出した。そして、クリーニング後付着量をクリーニング前付着量で除算した結果に100を乗じた値を、トナー除去率[%]として求めた。
二次転クリーニング装置49のクリーニング性については、次のようにして評価した。まず、取り外していた第一クリーニングブレード49b、塗布ブラシローラ49c、及び第二クリーニングブレード49fを二次転クリーニング装置49に再組み付けした。そして、Kのトナー強制消費用トナー像を二次転写ベルト41に二次転写し、それをブラシクリーニング位置、第一ブレードクリーニング位置、潤滑剤塗布位置、第二ブレードクリーニング位置に順に通した。その後、プリンタ試験機を停止させ、第二ブレードクリーニング位置を通過した直後の二次転写ベルト41に付着している極めて微量の残留トナーを粘着テープに転移させた。そして、粘着テープに付着したトナー粒子の量を拡大鏡で確認した結果に基づいて、クリーニング性を×、△、○、◎の四段階で評価した。×は、クリーニング不良の範疇に入るほど多くのトナー粒子が付着しているレベルである。また、△は、少量のトナー粒子の存在が認められるが許容範囲内とされるレベルである。また、○は、微量のトナー粒子しか認められないレベルである。また、◎は、トナー粒子が全く認められないレベルである。
ブレードめくれ回避性におけるブレードめくれは、カウンター方向に当接させていたクリーニングブレードの自由端をめくれさせて、カウンター方向とは逆の順方向に向かわせてしまう現象である。ブレードめくれが発生すると、二次転写ベルト41の駆動源となっているモーターに対する負荷が過剰になってモーターに過電流が流れることから、サーマルトリップになってプリンタが緊急停止することが一般的である。
ブレードめくれついては、次のようにして評価した。画像を全く形成せずに、A4用紙を単に連続通紙する白紙連続出力動作を連続して最大で三時間行った。その前に、第一クリーニングブレード49b、第二クリーニングブレード49fの何れかにブレードめくれが発生した場合には、発生した時点で白紙連続出力動作を中止した。また、白紙連続出力動作中には、それらクリーニングブレードのベルトとの当接部の挙動を拡大撮影した。三時間の連続動作を終了する前に、ブレードめくれが発生した場合には、ブレードめくれ回避性を×と評価した。また、三時間の連続動作中にブレードめくれが発生しなかったものの、拡大撮影による挙動観察に基づいてブレードめくれの発生の可能性が高いと思われる場合におけるブレードめくれ回避性を△と評価した。また、三時間の連続動作中にブレードめくれが発生せず、拡大撮影による挙動観察に基づいてブレードめくれの発生の可能性が比較的低いと思われる場合におけるブレードめくれ回避性を○と評価した。また、三時間の連続動作中にブレードめくれが発生せず、拡大撮影による挙動観察に基づいてブレードめくれの発生の可能性が極めて比較的低いと思われる場合におけるブレードめくれ回避性を◎と評価した。
実験室内における環境条件として、低温低湿(10℃15%)、中温中湿(23℃50%)、高温高湿(27℃80%)の三水準を採用する一方で、直流電圧からなるクリーニングバイスとして2.0[kV]、2.3[kV]、2.7[kV]の三水準を採用した。それら環境条件とクリーニングバイアスとの9通りの組み合わせのそれぞれについて、上述したクリーニングブラシローラ49aによるトナー除去率[%]、二次転クリーニング装置49のクリーニング性、及びブレードめくれ回避性を調査した。この結果を次の表1に示す。
表1に示されるように、低温低湿の環境下では、クリーニングブラシローラ49aに印加するクリーニングバイアスの値(絶対値)を比較的小さくすると、二次転クリーニング装置49のクリーニング性が悪くなってしまう(×)。低温になると、第一クリーニングブレード49bや第二クリーニングブレード49fの硬度が高くなって、それらクリーニングブレードのクリーニング性能が低下してしまう。このため、それらクリーニングブレードによるクリーニングよりも前段において、クリーニングブラシローラ49aによって多くのトナーを除去しておく必要がある。にもかかわらず、クリーニングブラシローラ49aに印加するクリーニングバイアスの値を比較的小さくすると、二つのクリーニングブレードに対して、それらのクリーニング能力を上回る量のトナーを搬送して、クリーニング不良を引き起こしてしまうのである。
なお、低温低湿の環境下では、クリーニングバイアスの値にかかわらず、非常に良好なブレードめくれ回避性(◎)が発揮される。クリーニングブレード(49b、49f)の硬度が比較的高くなることに伴ってブレードの腰が比較的強くなることから、めくれが発生し難くなるのである。
また、低温低湿の環境下では、クリーニングバイアスの値を2.0[kV]から2.3[kV]、2.7[kV]大きくしていくにつれて、クリーニング性を×、○、◎と高めていく。この一方で、ブレードめくれ回避性については、クリーニングバイアスの値にかかわらず、非常に良好な結果(◎)を維持することが可能である。低温低湿の環境下において、クリーニングブレード(49b、49f)の硬度が比較的高くなることに伴ってブレードの腰が比較的強くなることから、ブレードめくれが発生し難くなるからである。
このように、低温低湿の環境下では、クリーニングバイアスの値を比較的高くすることで(表1の例では2.7kV)、非常に良好なクリーニング性(◎)を発揮しつつ、非常に良好なブレードめくれ回避性(◎)を発揮することができる。
一方、中温中湿の環境下において、クリーニングバイアスの値を比較的低くすると(2.0kV)、クリーニング不良は起きないものの、クリーニング性がやや劣ってしまう(△)。この一方で、クリーニングバイアスの値を比較的高くすると(2.7kV)、ブレードめくれ回避性がやや劣ってしまう(△)。これは次に説明する理由による。即ち、中温中湿の環境下では、クリーニングブレード(49a、49f)の硬度がやや低くなって、めくれに対する耐性をやや低下させる。この状態で、クリーニングバイアスの値を比較的高くして、クリーニングブラシローラ49aによるトナー除去率を比較的高くすると、クリーニングブレード(49a、49f)と二次転写ベルト41との当接部入口に適量を下回るトナーしか滞留させなくなる。これにより、当接部入口のトナーによるブレードめくれ抑制作用が十分に発揮されなくなって、ブレードめくれ回避性がやや劣ってしまうのである(△)。クリーニングバイアスを中程度の値にすれば、適量に近いトナーを当接部入口に滞留させて、ブレードめくれ回避性を良好にしつつ(○)、クリーニング性も良好にする(○)ことができる。
このように、中温中湿の環境下では、クリーニングバイアスを中程度の値にすることで(表1の例では2.3kV)、良好なクリーニング性と、良好なブレードめくれ回避性とを得ることができる。
一方、高温高湿の環境下では、クリーニングブレード(49a、49f)の硬度が低くなってブレードクリーニング性が高まる。このため、クリーニングバイアスを比較的小さな値(2.0kV)にしてブラシクリーニング性を低下させるのに伴って、クリーニングブレードに対して多くのトナーを搬送しても、非常に良好なクリーニング性を得ることができる。更には、クリーニングブレードと二次転写ベルト41との当接部入口に多くのトナーを滞留させ、それらに対して良好なブレードめくれ抑制作用を発揮させることから、非常に良好なブレードめくれ回避性を得ることもできる。この一方で、クリーニングバイアスを比較的大きな値(2.7kV)にすると、前述の当接部入口におけるトナーの滞留量を非常に少なくして、ブレードめくれ回避性を悪化させてしまう(×)。
よって、高温高湿の環境下においては、クリーニングバイアスの値を比較的小さくすることで(表1の例では2.0kV)、非常に良好なクリーニング性と、非常に良好なブレードめくれ回避性とを得ることが望ましい。
なお、表1に示されるように、低温低湿の環境下ではクリーニングバイアスにかかわらず、良好なブレードめくれ回避性を発揮することができるが、塗布ブラシローラ49cを取り外した状態で試験すると、ブレードめくれ回避性を悪化させるケースがあった。具体的には、低温低湿の環境下で良好なクリーニング性を得るために、クリーニングバイアスを2.7[kV]まで高めた状態で、画像を形成せずにブレードめくれ回避性を試験したところ、ブレードめくれを引き起こしてしまった。よって、塗布ブラシローラ49cを設けて、ブレードめくれ回避性を高めることが望ましい。
次に、本プリンタの特徴的な構成について説明する。
図6は、本プリンタの電気回路の要部を示すブロック図である。同図において、メイン制御部50は、RAM、ROM、CPU、フラッシュメモリーなどを有しており、ROMに記憶している制御プログラムに基づいて各機器の駆動を制御したり、各種センサーからの信号に基づいて各種のパラメーターを把握したりする。
メイン制御部50には、書込制御部71、各色の作像ユニット1Y,1M,1C,1Kの各センサー、K作像モーター51、カラー作像モーター52、中転ベルトモーター53、二次転ベルトモーター54、中転クリーニング電源70などが接続されている。また、二次転クリーニング電源74、各色の一次転写電源72Y,72M,72C,72K、二次転写電源73、環境センサー86、中転クリーニングモーター55、二次転クリーニングモーター56なども接続されている。
書込制御部71は、パーソナルコンピューターやスキャナーなどの外部機器から送られてくる画像情報や、メイン制御部50から送られてくる画像情報に基づいて光書込ユニット80を駆動する。これにより、外部機器から送られてきた画像情報に基づく静電潜像、トナー強制消費用トナー像の静電潜像、濃度パターン像の静電潜像などを各色の感光体2Y,2M,2C,2Kに形成する。
K作像モーター51は、K用の作像ユニット1Kの駆動源になっているモーターである。また、カラー作像モーター52は、Y,M,C用の作像ユニット1Y,1M,1Cの駆動源になっているモーターである。
中転ベルトモーター53は、一次転写ユニット30の駆動ローラ32や中間転写ベルト31の駆動源になっているモーターである。また、二次転ベルトモーター54は、二次転写ユニット40の二次転写ローラ42や二次転写ベルト41の駆動源になっているモーターである。
中転クリーニング電源70は、一次転写ユニット30の中転クリーニング装置37のブラシローラに印加するためのプラス極性のクリーニングバイアスを出力する電源である。また、二次転クリーニング電源74は、二次転写ユニット40の二次転クリーニング装置49のクリーニングブラシローラ49aに印加するためのクリーニングバイアスを出力する電源である。また、一次転写電源72Y,72M,72C,72Kは、一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kに印加するためのY,M,C,K用の一次転写バイアスを出力する電源である。また、二次転写電源73は、一次転写ユニット30のニップ裏側ローラ33に印加するための二次転写バイアスを出力する電源である。なお、二次転写バイアスは、交流電圧に、マイナス極性の直流電圧を重畳した重畳電圧からなる。
環境センサー86は、ベルト速度センサー85の近くで(図1参照)、機内の温度及び湿度を検知するセンサーである。
中転クリーニングモーター55は、中転クリーニング装置37の駆動源になっているモーターである。また、二次転クリーニングモーター56は、二次転クリーニング装置49の駆動源になっているモーターである。
次に示す表2は、メイン制御部50のROMに記憶されているデーターテーブルと、クリーニング性やブレードめくれ回避性の評価結果を示す表とを並べて示すものである。メイン制御部50のROMには、表2における左側のデーターテーブルが記憶されている。
表2における絶対湿度6.2[g/m3]未満は、低温低湿の環境に対応している。また、絶対湿度の6.2[g/m3]〜15.5[g/m3]という範囲は、中温中湿の環境に対応している。また、絶対湿度15.5[g/m3]超は、高温高湿の環境に対応している。メイン制御部50は、環境センサー86による温度[℃]、湿度[%]の検知結果に基づいて算出される絶対湿度が6.2[g/m3]未満である場合には、それに対応する2.7[kV]というクリーニングバイアス値を表2のデーターテーブルから特定する。また、絶対湿度が6.2[g/m3]〜15.5[g/m3]の範囲内にある場合には、それに対応する2.3[kV]というクリーニングバイアス値を表2のデーターテーブルから特定する。また、絶対湿度が15.5[g/m3]超である場合には、それに対応する2.0[kV]というクリーニングバイアス値を表2のデーターテーブルから特定する。このようにしてクリーニングバイアス値を特定すると、特定結果と同じ出力値を出力させるための出力信号を二次転クリーニング電源74に出力する。
図7は、メイン制御部50によって実施される二次転クリーニングバイアス調整制御の処理フローを示すフローチャートである。二次転クリーニングバイアス調整制御を開始したメイン制御部50は、まず、環境センサー86による温度[℃]、湿度[%]の検知結果を取得する(ステップ1:以下、ステップをSと記す)。そして、それら温度[℃]、湿度[%]に基づいて絶対湿度[g/m3]を算出すると(S2)、算出結果に対応するクリーニングバイアス値を上記データーテーブルから特定する(S3)。次いで、二次転クリーニング電源74からのクリーニングバイアスの出力値を、特定結果と同じ値にするための制御信号を二次転クリーニング電源74に出力する(S4)。これにより、二次転クリーニング装置49のクリーニングブラシローラ49aに印加されるクリーニングバイアスが、環境に応じた値に調整される。
なお、複数の記録シートSに対して連続的に画像を形成する連続プリントジョブ中においては、1枚の記録シートSに画像を形成する毎に、S1〜S4の処理フローを繰り返す。但し、二次転クリーニングバイアス調整制御は、プリントジョブ中に常時行われるものではなく、プリントジョブ中におけるシート非同期領域進入タイミングだけで実施されるものである。このシート非同期領域進入タイミングについては後に詳述する。
上述した二次転クリーニングバイアス調整制御を実施する本プリンタにおいては、環境が低温低湿の側に変動してブレードめくれ回避性が向上するとともにブレードクリーニング性が悪化した場合には、クリーニングバイアスを高める。これにより、ブレードクリーニング性を向上させることで、環境の低温低湿側への変動に起因するクリーニング不良の発生を抑える。このとき、クリーニングバイアス変更前に比べてクリーニングブレード(49a、49f)への入力トナー量を低減することになるが、それまでの入力トナー量が過剰であったため、低減後であっても、ある程度の量のトナーをクリーニングブレードに入力する。このため、ブレードめくれの発生を抑えることも可能である。
一方、環境が高温高湿の側に変動してブレードめくれ回避性が低下するとともにブレードクリーニング性が向上した場合には、クリーニングバイアス(の絶対値)を低下させる。これにより、環境の高温高湿側への変動に伴って低下してしまったクリーニングブレードへのトナー入力量を増やすことで、ブレードめくれ回避性を向上させて、環境の高温高湿側への変動に起因するブレードめくれの発生を抑える。このとき、環境の高温高湿側への変動によってブレードクリーニング性が向上していることから、クリーニングブレードへのトナー入力量を増やしても、クリーニングブレードによってトナーを良好にクリーニングすることが可能である。
このように、本プリンタにおいては、環境に応じてクリーニングバイアスを調整することで、環境の変動に伴うクリーニングブレードのめくれやクリーニング不良の発生を抑えることができる。
なお、二次転クリーニング電源74は、クリーニングバイアスを定電圧制御で出力するものである。メイン制御部50は、定電圧制御の出力目標値(kV)を変更するための制御信号を二次転クリーニング電源74に出力することで、二次転クリーニング電源74からの出力電圧値を調整する。かかる構成に代えて、次のような構成を採用してもよい。即ち、二次転クリーニング電源74として、クリーニングバイアスを定電流制御で出力するものを用いる。そして、その定電流制御の出力目標値(μA)を変更するための制御信号を二次転クリーニング電源74に出力することで、二次転クリーニング電源74からの出力電圧値を調整するように、メイン制御部50を構成する。
表2に示される通り、本プリンタでは、低温低湿(6.2g/m3未満)の環境下では、中温中湿や高温高湿の環境下に比べてクリーニングバイアスを高くする。但し、その値については、ブラシ(49a)と二次転写ベルト41との間における放電を発生させな値に留めることが望ましい。放電の有無については、放電音の有無で判定することが可能である。より正確な判定法としては、暗中でクリーニングブラシローラ49aと二次転写ベルト41との当接部を撮影して、放電による光の発生の有無を確認する方法がある。本発明者らが、低温低湿(10℃15%)放電音の有無で放電の有無を確認したところ、クリーニングバイアスを4.0[kV]まで高めても放電は認められなかったが、4.5[kV]では放電が認められた。
値の比較的小さなクリーニングバイアスをクリーニングブラシローラ49aに印加したときに、二次転クリーニング電源74から出力される電流量が比較的多い場合には、印加バイアスの変動に対する電流の変動が比較的大きいことになる。この場合、電流を微調整することが困難であることから、制御性に劣ると言える。例えば、本プリンタの場合には、1[kV]のクリーニングバイアスをクリーニングブラシローラ49aに印加した場合に、二次転クリーニング電源74から出力される電流量が2[mA]以上であると、制御性に劣ると言える。この一方で、値の比較的大きなクリーニングバイアスをクリーニングブラシローラ49aに印加したときに、二次転クリーニング電源74から出力される電流量がそれほど多くないと、二次転クリーニング電源74の回路に高負荷対策を施す必要が生じる。このため、電源基板コストが高くなってしまう。例えば、本プリンタの場合には、5[kV]のクリーニングバイアスをクリーニングブラシローラ49aに印加したときに、二次転クリーニング電源74から出力される電流値が100[μA]以上ないと、二次転クリーニング電源74の回路に高負荷対策を施す必要がある。つまり、電源基板コストが高くなってしまう。
本発明者らは、互いに抵抗値の異なる複数のクリーニングブラシローラ49aを用意した。クリーニングブラシローラ49aのブラシの導電性起毛に含有させる抵抗調整剤の処方を変えることで、抵抗値を調整した。そして、それぞれのクリーニングブラシローラ49aの抵抗値を測定した。具体的には、図8に示されるように、抵抗値の被検対象となるクリーニングブラシローラ49aのブラシ先端を長手方向全域に渡って金属板59に当接させた。このとき、ブラシ先端の金属板59に対する食い込み量を1[mm]とした。つまり、クリーニングブラシローラ49aの回転軸心から金属板59までの距離を、クリーニングブラシローラ49aの半径よりも1[mm]だけ小さな値に設定した。そして、実験室の環境を25℃65%に調整した状態で、電源58から出力した300[V]の直流電圧をクリーニングブラシローラ49aの金属製の回転軸部材に印加し、このときに金属板59を介してアースに流れる電流を電流計57によって測定した。この電流の測定値と、印加電圧とに基づいて、クリーニングブラシローラ49a全体の抵抗値を求めた。
このようにして抵抗値を測定した複数のクリーニングブラシローラ49aのそれぞれについて、プリンタ試験機に搭載した状態で制御性や電源基板低コスト性を調査した。具体的には、二次転クリーニング電源74から1[kV]のクリーニングバイアスを出力した状態で、二次転クリーニング電源74からの出力電流値を測定し、2[mA]以上である場合には、制御性を×と評価し、2[mA]未満の場合には制御性を○と評価した。また、二次転クリーニング電源74から5[kV]のクリーニングバイアスを出力した状態で、二次転クリーニング電源74からの出力電流値を測定し、100[μA]未満である場合には、電源基板低コスト性を×と評価した。また、100[μA]以上である場合には、電源基板低コスト性を○と評価した。
表3に示される通り、クリーニングブラシローラ49aの抵抗値が0.1[MΩ]未満であると、制御性の評価結果が×になるが、電源基板低コスト性の評価結果は○である。この一方で、抵抗値が10[MΩ]を超えると、制御性の評価結果は○であるが、電源基板低コスト性の評価結果が×になってしまう。本プリンタにおいては、クリーニングブラシローラ49aとして、抵抗値が0.1[MΩ]〜10[MΩ]であるものを用いている。かかる構成では、良好な制御性と良好な電源基板低コスト性とを実現することができる。
図7のフローチャートで示される二次転クリーニングバイアス調整制御は、プリントジョブ中におけるシート非同期領域進入タイミングで実施されるものである。シート非同期領域進入タイミングは、二次転写ベルト41の周方向における全域のうち、二次転写ニップで記録シートSと同期しない領域(以下、シート非同期領域)を、ブラシクリーニング位置に進入させているタイミングである。このシート非同期領域進入タイミングでは、上述した濃度パターン像を構成する多量のトナーや、トナー強制消費用トナー像を構成する多量のトナーをブラシクリーニング位置に進入させる可能性があり、その他のタイミングではその可能性がないからである。
その他のタイミングは、具体的には、二次転写ベルト41の周方向における全域のうち、二次転写ニップで記録シートSと同期したシート同期領域をブラシクリーニング位置に進入させるタイミングである(以下、シート同期領域進入タイミングという)。メイン制御部50は、シート同期領域進入タイミングでは、次のような制御を実施する。即ち、二次転クリーニング電源74からの出力電圧を0[V]にする制御である。これは次に説明する理由による。即ち、二次転写ベルト41におけるシート同期領域は、二次転写ニップを通過するときに記録シートSに密着することから、中間転写ベルト31には直接接触しない。このため、中間転写ベルト31上の転写残トナーなどが二次転写されることはない。この一方で、記録シートSから転移した紙粉を付着させている。紙粉の帯電極性は一定ではなくまちまちである。このため、クリーニングブラシローラ49aに対する印加電圧を0[V]にして静電クリーニング機能をオフにして、ブラシによる剥離機能だけで紙粉を二次転写ベルト41から除去する。かかる構成では、シート同期領域進入タイミングでプラス極性あるいはマイナス極性のクリーニングバイアスをクリーニングブラシローラ49aに印加する構成に比べて、二次転写ベルト41から紙粉を効率良く除去することができる。
なお、シート同期領域進入タイミングにおけるクリーニングバイアスの値は0[V]に限られるものではない。予め定められた固定値であればよい。以下、シート同期領域進入タイミングにおいてクリーニングバイアスを固定値で一定にする制御を固定値制御という。
図9は、二次転クリーニング装置49のクリーニングバイアスに関連する各種のタイミングを説明するためのタイミングチャートである。図示のように、メイン制御部50は、シート非同期領域進入タイミングでは、図7に示される二次転クリーニングバイアス調整制御を実施する。これに対し、シート同期領域進入タイミングでは、固定値制御を実施する。固定値制御を実施することで、二次転写ベルト41のシート同期領域から紙粉を効率良く除去することができる。
なお、同図におけるxVは、二次転クリーニングバイアス調整制御によって決定される絶対値が0よりも大きな電圧値である。同図では、個々のシート非同期領域進入タイミングにおいてxVが同じ値になっているが、環境変動があれば、それに応じてxVの大きさが変化する。
二次転クリーニングバイアス調整制御において、絶対湿度に基づいてクリーニングバイアスの値を選択する構成について説明したが、表4に示されるように、温度と相対湿度とのうち、温度の検知結果だけに基づいてクリーニングバイアスの値を選択させるようにしてもよい。
また、温度と相対湿度とには相関関係があることから、相対湿度の検知結果だけに基づいてクリーニングバイアスの値を選択させるようにしてもよい。
また、クリーニングバイアスの値を、絶対湿度6.2[g/m3]未満、絶対湿度6.2[g/m3]〜15.5[g/m3]、15.5[g/m3]超の3通りで変更する構成について説明したが、2通り、又は4通り以上で変更してもよい。例えば、絶対湿度6.2[g/m3]未満でクリーニングバイアスを3.0[kV]に設定する一方で、絶対湿度6.2[g/m3]以上でクリーニングバイアスを0[kV]に設定してもよい。
また、低温低湿の絶対湿度の条件、中温中湿の絶対湿度の条件、高温高湿の絶対湿度の条件のそれぞれは、6.2[g/m3]未満、6.2[g/m3]〜15.5[g/m3]、15.5[g/m3]超に限られるものではない。
また、クリーニングバイアスの値は、表2、表3、表4に示されるものに限られない。例えば、低温低湿で3[kV]に設定し、中温中湿で2[kV]に設定し、高温高湿で1[kV]に設定してもよい。
次に、実施形態に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した各実施例について説明する。なお、以下に特筆しない限り、各実施例に係るプリンタの構成は、実施形態と同様である。
[第一実施例]
二次転写ベルト41の走行距離(表面移動距離と同意)が長くなるほど、第一クリーニングブレード49bや第二クリーニングブレード49fの摩耗による劣化が進行する。このため、二次転写ベルト41の走行距離が長くなるほど、第一クリーニングブレード49bや第二クリーニングブレード49fのクリーニング性能が低下する。そして、同じ環境条件であっても、二次転写ベルト41の走行距離が長くなるほど、クリーニング不良が発生し易くなる。
そこで、第一実施例に係るプリンタのメイン制御部50は、プリントジョブ中に、二次転写ベルト41の走行距離(累積走行距離)をカウントする。そして、二次転クリーニングバイアス調整制御において、同じ環境条件であれば、二次転写ベルト41の走行距離が長くなるほど、二次転クリーニング電源74からの出力値(クリーニングバイアス)を大きくする。
次に示される表5は、二次転クリーニングバイアス調整制御において使用されるデーターテーブルを示す表である。
表5に示されるように、同じ環境条件(絶対湿度の区分)であれば、二次転写ベルト41の走行距離が長くなるほど、より大きな出力値(クリーニングバイアス)が選択される。かかる構成では、二次転写ベルト41の走行距離の違いに起因する二次転写ベルト41のクリーニング不良の発生を抑えることができる。
なお、二次転写ベルト41の走行距離そのものをカウントして二次転クリーニングバイアス調整制御に用いる構成について説明したが、走行距離と相関関係にある代替特性を走行距離の代わりに用いてもよい。例えば、代替特性としての累積プリント枚数を走行距離の代わりに用いてもよい。
[第二実施例]
濃度パターン像やトナー強制消費用トナー像の形成回数(累計値)が多くなるほど、第一クリーニングブレード49bや第二クリーニングブレード49fの摩耗による劣化が進行する。このため、濃度パターン像やトナー強制消費用トナー像の形成回数が多くなるほど、第一クリーニングブレード49bや第二クリーニングブレード49fのクリーニング性能が低下する。そして、同じ環境条件であっても、濃度パターン像やトナー強制消費用トナー像の形成回数が多くなるほど、クリーニング不良が発生し易くなる。
そこで、第二実施例に係るプリンタのメイン制御部50は、濃度パターン像の形成回数と、トナー強制消費用トナー像の形成回数との合計値(以下、形成回数合計値という)を算出する。そして、二次転クリーニングバイアス調整制御において、同じ環境条件であれば、形成回数合計値が大きくなるほど、二次転クリーニング電源74からの出力値(クリーニングバイアス)を大きくする。
次に示される表6は、二次転クリーニングバイアス調整制御において使用されるデーターテーブルを示す表である。表6に示される形成回数は、前述した形成回数合計値である。
表6に示されるように、同じ環境条件であれば、形成回数合計値が大きくなるほど、より大きな出力値(クリーニングバイアス)が選択される。かかる構成では、形成回数合計値の違いに起因する二次転写ベルト41のクリーニング不良の発生を抑えることができる。
なお、濃度パターン像とトナー強制消費用トナー像とのうち、何れか一方しか形成しない構成では、その何れか一方の形成回数を二次転クリーニングバイアス調整制御を使用すればよい。
[第三実施例]
第三実施例に係るプリンタのメイン制御部50は、二次転クリーニングバイアス調整制御にて、絶対湿度に加えて、二次転写ベルト41の走行距離と、形成回数合計値とにも基づいて、二次転クリーニング電源74からの出力値を調整するように構成されている。次に示す表7は、かかる調整を実現するために二次転クリーニングバイアス調整制御で用いられる選択番号決定用テーブルを示す表である。この表7に示される形成回数も、上述した形成回数合計値である。
表7に示されるように、走行距離と形成回数合計値との16通りの組み合わせに応じて、1から8までの選択番号(自然数)が選択される。二次転写ベルト41の走行距離の増加や、形成回数合計値の増加に起因して第一クリーニングブレード49bや第二クリーニングブレード49fの摩耗が進行するにつれて、より大きな値の選択番号が選択されるようなデーター構造になっている。
次に示される表8は、二次転クリーニングバイアス調整制御において使用されるデーターテーブルを示すものである。
表8に示されるように、同じ環境条件であれば、選択番号が大きくなるほど、より大きな出力値(クリーニングバイアス)が選択される。かかる構成では、二次転写ベルト41の走行距離や形成回数合計値の違いに起因する二次転写ベルト41のクリーニング不良の発生を抑えることができる。
実施形態や各実施例に係るプリンタにおいては、中間転写ベルト31として、少なくとも基層31aと弾性層31bとを具備する弾性ベルトからなるものを搭載している。このことに起因して、中間転写ベルト31をクリーニングする中転クリーニング装置37として、クリーニングブレードによるクリーニングを実施しないクリーニング能力の比較的低い構成のものを採用せざるを得ない。このため、中転クリーニング装置37による濃度パターン像やトナー強制消費用トナー像のクリーニングが困難であることから、それらトナー像を二次転写ベルト41に二次転写して二次転クリーニング装置49によってクリーニングしている。
かかる構成に代えて、次のような構成を採用することも可能である。即ち、中間転写ベルト31として、弾性層31bを設けていない硬質ベルトからなるものを用いるとともに、中間転写ベルト31をクリーニングする中転クリーニング装置37として、クリーニングブレードによるクリーニング方式を採用したものを用いる。更に、濃度パターン像やトナー強制消費用トナー像を二次転写ベルト41に二次転写せずに、中転クリーニング装置37によって中間転写ベルト31からクリーニングする構成である。かかる構成においては、中転クリーニング装置37のクリーニングブラシローラに印加するクリーニングバイアスを調整する制御に、本発明を適用することが可能である。
これまで、カラー画像を形成するプリンタに本発明を適用した例について説明したが、本発明は、カラー画像を形成する画像形成装置に限らず、モノクロ画像だけを形成する画像形成装置にも適用が可能である。
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aは、像担持体(例えば二次転写ベルト41)と、前記像担持体の表面を静電方式でクリーニングする静電クリーニング部材(例えばクリーニングブラシローラ49a)と、前記表面を掻き取り方式でクリーニングするクリーニングブレード(例えば第一クリーニングブレード49b、第二クリーニングブレード49f)と、前記静電クリーニング部材に印加するための直流電圧を出力する電源(例えば二次転クリーニング電源74)とを備える画像形成装置(例えばプリンタ)において、環境を検知する環境検知手段(例えば環境センサー86)と、前記環境検知手段による検知結果に基づいて前記電源からの前記直流電圧(例えば直流電圧からなるクリーニングバイアス)の出力値を制御する制御手段(例えばメイン制御部50)とを設けたことを特徴とするものである。
態様Aにおいては、低温低湿の環境下でクリーニングブレードが硬度増加によってクリーニング性を低下させてクリーニング不良を発生させ易くなると、制御手段が静電クリーニング部材に印加する直流電圧の絶対値を比較的大きくする。これによって静電クリーニング部材によるクリーニング性を高めてクリーニングブレードのクリーニング性の低下を補うことで、低温低湿の環境下におけるクリーニング不良の発生を抑えることが可能である。この一方で、中温中湿や高温高湿の環境下でクリーニングブレードが硬度低下によってクリーニング性を向上させるとともに、ブレードめくれを発生させ易くなると、制御手段が静電クリーニング部材に印加する直流電圧の絶対値を比較的小さくする。これにより、静電クリーニング部材によるクリーニング性を低下させてクリーニングブレードと像担持体との当接部に対してより多くのトナーを供給して当接部の摩擦抵抗を低下させることで、ブレードめくれの発生を抑えることが可能である。よって、環境の変動に伴うクリーニングブレードのめくれやクリーニング不良の発生を抑えることができる。
[態様B]
態様Bは、態様Aにおいて、前記環境検知手段による温度の検知結果が所定値以下又は前記所定値未満である場合には、前記所定値を超える又は前記所定値以上である場合に比べて、前記出力値を大きくする処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、温度が所定値以下又は所定値未満である環境下でクリーニングブレードが硬度増加によってクリーニング性を低下させると、静電クリーニング部材に印加する直流電圧の絶対値を比較的大きくする。これにより、クリーニングブレードのクリーニング性の低下を静電クリーニング部材によるクリーニング性の増加で補うことで、クリーニング不良の発生を抑えることができる。この一方で、温度が所定値を超える又は所定値以上である環境下でクリーニングブレードが硬度低下によってクリーニング性を高めるとともにブレードめくれを発生させ易くなると、直流電圧の絶対値を比較的小さくする。これにより、クリーニングブレードと像担持体との当接部により多くのトナーを供給して当接部の摩擦抵抗を低下させることで、ブレードめくれの発生を抑えることができる。
[態様C]
態様Cは、態様Aにおいて、前記環境検知手段による検知結果が低温低湿を示す範囲の値である場合には、前記範囲の値でない場合に比べて、前記出力値を大きくする処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、低温低湿の環境下でクリーニングブレードが硬度増加によってクリーニング性を低下させると、静電クリーニング部材に印加する直流電圧の絶対値を比較的大きくする。これにより、クリーニングブレードのクリーニング性の低下を静電クリーニング部材によるクリーニング性の増加で補うことで、クリーニング不良の発生を抑えることができる。この一方で、中温中湿や高温高湿の環境下でクリーニングブレードが硬度低下によってクリーニング性を高めるとともにブレードめくれを発生させ易くなると、直流電圧の絶対値を比較的小さくする。これにより、クリーニングブレードと像担持体との当接部により多くのトナーを供給して当接部の摩擦抵抗を低下させることで、ブレードめくれの発生を抑えることができる。
[態様D]
態様Dは、態様B又は態様Cにおいて、第一像担持体(例えば中間転写ベルト31)と、前記第一像担持体の表面上のトナー像が自らの表面に転写されるように前記第一像担持体に当接して転写ニップを形成する第二像担持体(例えば二次転写ベルト41)とを設け、前記静電クリーニング部材及び前記クリーニングブレードにより、前記像担持体としての前記第一像担持体又は前記第二像担持体の表面をクリーニングすることを特徴とするものである。かかる構成では、第一像担持体をクリーニングする構成、又は第二像担持体をクリーニングする構成において、環境の変動に伴うクリーニングブレードのめくれやクリーニング不良の発生を抑えることができる。
[態様E]
態様Eは、態様Dにおいて、前記静電クリーニング部材を、前記第一像担持体又は前記第二像担持体の無端移動する表面の周方向における全域のうち、前記転写ニップを通過した後、前記クリーニングブレードとの当接位置に進入する前の領域に当接させ、且つ、前記クリーニングブレードを、前記表面の周方向における全域のうち、前記静電クリーニング部材との当接位置を通過した後、前記転写ニップに進入する前の領域に当接させたことを特徴とするものである。かかる構成では、多量のトナーに対応可能な静電クリーニング部材によって殆どのトナーを像担持体(第一又は第二)の表面からクリーニングした後、僅かに残った微量のトナーをクリーニングブレードによって像担持体からクリーニングすることができる。
[態様F]
態様Fは、態様Eであって、ユーザーからの命令に基づいて前記第一像担持体の表面に形成したトナー像を、前記転写ニップ(例えば二次転写ニップ)に挟み込んだ記録シートに転写する一方で、所定のタイミングで前記第一像担持体の表面に形成した画像濃度測定用トナー像(例えば濃度パターン像)又はトナー強制消費用トナー像を、前記転写ニップで前記表面から前記像担持体たる前記第二像担持体の表面に転写し、且つ、前記表面上の前記画像濃度測定用トナー像又は前記トナー強制消費用トナー像のトナーを、前記クリーニングブレード及び前記静電クリーニング部材によってクリーニングすることを特徴とするものである。かかる構成では、第一像担持体として、弾性層を具備する表面柔軟性に富んだものを使用して表面凹凸に富んだ記録シートの表面凹部へのトナー転写性を高めることが可能である。更には、ブレードクリーニング方式が困難な第一像担持体に代えて、ブレードクリーニング方式を適用可能でクリーニング性の比較的高い第二像担持体から画像濃度測定用トナー像やトナー強制消費用トナー像をクリーニングする。これにより、画像濃度測定用トナー像やトナー強制消費用トナー像を良好にクリーニングすることができる。
[態様G]
態様Gは、態様Fにおいて、画像形成動作中にて、前記像担持体の表面における表面移動方向の全域の一部領域であって、前記転写ニップで記録シートと同期した領域であるシート同期領域と、前記一部領域であって、前記転写ニップで記録シートと同期しなかった領域であるシート非同期領域とのうち、前記シート非同期領域を前記静電クリーニング部材と前記第二像担持体との当接位置に進入させているタイミングで、前記環境検知手段による検知結果に基づいて前記出力値を制御する一方で、前記シート同期領域を前記当接位置に進入させているタイミングでは、前記検知結果にかかわらず、前記出力値を所定値に制御する処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、トナーのクリーニング不良やブレードめくれが発生し易いタイミング、即ち、シート非同期領域を当接部に進入させているタイミングでは、静電クリーニング部材に印加する直流電圧の絶対値を環境に応じて制御する。これにより、環境変動に起因するトナーのクリーニング不良やブレードめくれの発生を抑えることができる。この一方で、紙粉のクリーニング不良が発生し易いタイミング、即ち、シート同期領域を当接部に進入させているタイミングでは、直流電圧の絶対値を紙粉のクリーニングに適した所定値にする。これにより、紙粉のクリーニング不良の発生を抑えることができる。
[態様H]
態様Hは、態様Gにおいて、前記シート同期領域を前記当接位置に進入させているタイミングでは、前記検知結果にかかわらず、前記出力値を0[V]に制御する処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、紙粉のクリーニング不良が発生し易いタイミングに、静電クリーニング部材に印加する直流電圧の絶対値を紙粉のクリーニングに適した0[V]にすることで、紙粉のクリーニング不良の発生を抑えることができる。
[態様I]
態様Iは、態様G又はHにおいて、前記シート非同期領域を前記当接位置に進入させているタイミングで、前記出力値を、前記検知結果に加えて、前記第二像担持体の表面移動距離にも基づいて制御する処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、第二像担持体の表面移動距離の違いに起因する第二像担持体のクリーニング不良の発生を抑えることができる。
[態様J]
態様Jは、態様G又はHにおいて、前記シート非同期領域を前記当接位置に進入させているタイミングで、前記出力値を、前記検知結果に加えて、前記画像濃度測定用トナー像又は前記トナー強制消費用トナー像の形成回数にも基づいて制御する処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、前記形成回数の違いに起因する第二像担持体のクリーニング不良の発生を抑えることができる。
[態様K]
態様Kは、態様Jであって、前記画像濃度測定用トナー像を所定のタイミングで形成する一方で、前記トナー強制消費用トナー像を前記タイミングとは異なる所定のタイミングで形成し、且つ、前記制御手段が、前記シート非同期領域を前記当接位置に進入させているタイミングで、前記出力値を、前記検知結果に加えて、前記画像濃度測定用トナー像及び前記トナー強制消費用トナー像の形成回数にも基づいて制御する処理を実施するものであることを特徴とするものである。かかる構成では、画像濃度測定用トナー像の形成回数と、トナー強制消費用トナー像の形成回数との合計値の違いに起因する第二像担持体のクリーニング不良の発生を抑えることができる。
[態様L]
態様Lは、態様J又はKにおいて、前記シート非同期領域を前記当接位置に進入させているタイミングで、前記出力値を、前記検知結果と、前記第二像担持体の表面移動距離と、前記画像濃度測定用トナー像の形成回数及び前記トナー強制消費用トナー像の形成回数、又はそれら形成回数の何れか一方とに基づいて制御する処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、画像濃度測定用トナー像の形成回数とトナー強制消費用トナー像の形成回数との合計値、又はそれら形成回数の何れか一方の違いや、第二像担持体の表面移動距離の違いに起因する第二像担持体のクリーニング不良の発生を抑えることができる。
[態様M]
態様Mは、態様G〜Lの何れかにおいて、前記第二像担持体の表面に対して潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段(例えば塗布ブラシローラ49c)を設けたことを特徴とするものである。かかる構成では、ブレードめくれの発生をより確実に抑えることができる。
[態様N]
態様Nは、態様A〜Mの何れかであって、前記静電クリーニング部材の抵抗値が0.1[MΩ]から10[MΩ]までの範囲内であることを特徴とするものである。かかる構成では、電源からの出力値の良好な制御性と良好な電源基板低コスト性とを実現することができる。