JP6937095B2 - 殺菌方法 - Google Patents

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Description

本発明は、オゾンを含むオゾン含有空気を利用する殺菌方法に関する。
従来、殺菌方法の一つとして、強い酸化力を有するオゾン(O3 )を利用する手法が知られている。
一方、オゾンの生成方法としては、酸素(O2 )を含有する酸素含有ガスの雰囲気下において、沿面放電などの無声放電を生じさせることによってオゾンを生成させる放電方式、および酸素含有ガスに対して紫外線を照射することによってオゾンを生成させる光化学反応方式などが知られている。
そして、殺菌方法においては、放電方式のオゾン生成方法が広く利用されている。
具体的に、オゾンを利用する殺菌方法の或る種のものとしては、室内の雰囲気を構成する空気中に存在する殺菌対象物あるいは室内に配置してある室内配置物の表面に付着している殺菌対象物を、オゾンを含有するオゾン含有空気と霧(水分)との混合体に曝露させることにより、当該雰囲気を構成する空気あるいは当該室内配置物の殺菌処理を行う手法が開示されている(特許文献1参照。)。
この特許文献1に記載の殺菌方法においては、ダクト内に、室内の雰囲気を構成する空気を取り込み、当該ダクト内において、沿面放電を生じさせることによってオゾンを生成し、その生成されたオゾンを含有するオゾン含有空気と、噴霧ノズルで生成された霧(水分)とを混合する。そして、ダクトから、オゾン含有空気と霧との混合体を、室内に供給することにより、その室内の雰囲気を構成する空気および当該室内に配置してある室内配置物の殺菌処理が行われる。この殺菌方法においては、殺菌効率の観点から、オゾン含有空気と霧との混合体が供給された室内、すなわち殺菌処理中の室内が、高湿度、具体的には湿度が80%以上であることが好ましいとされている。
このように、従来において、オゾンを利用する殺菌方法においては、殺菌効率が、殺菌対象物を殺菌する空間(殺菌処理中の室内)の雰囲気に依存することが知られているものの、殺菌処理に利用するオゾンの生成方法が殺菌効率に及ぼす影響については、明らかにされていない。すなわち、従来において、オゾンを利用する殺菌方法においては、オゾンの生成方法と殺菌効率との関係性については考慮されていない。
特許第4697625号明細書
而して、本発明の発明者らは、オゾンを利用する殺菌方法について鋭意研究を重ね、殺菌処理に利用するオゾンの生成方法によって殺菌処理の様相が異なることを見出した。すなわち、オゾンを利用する殺菌方法においては、オゾン原料ガスとして空気を用いる場合には、その空気の湿度が、オゾンの生成方法との関係において、殺菌効率に大きく影響を及ぼす場合があることが判明した。
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、オゾン原料ガスである空気の湿度によらず、空気から生成したオゾンを利用して、高い殺菌効率で殺菌処理を行うことのできる殺菌方法を提供することにある。
本発明の殺菌方法は、オゾンを分解する波長域の光を含まず、かつ波長200nm以下の光であるオゾン生成用光を、空気よりなるオゾン原料ガスに対して照射することによってオゾン含有空気を得、得られたオゾン含有空気に殺菌対象物を曝露することにより、当該殺菌対象物を殺菌する殺菌方法であって、
殺菌対象物が存在する空間が、殺菌対象物存在空間であり、
空気よりなるオゾン原料ガスが、空気流路形成部材の一端側から導入されて、内部でオゾン生成用光が照射されることによってオゾン含有空気となり他端側から導出され、
空気流路形成部材の内部がオゾン生成空間であり、
前記殺菌対象物存在空間と前記オゾン生成空間とが連通されており、
前記殺菌対象物存在空間と前記オゾン生成空間とが、前記空気流路形成部材によって区画されており、
前記オゾン原料ガスの相対湿度が40%RH以下であることを特徴とする。
本発明の殺菌方法においては、前記殺菌対象物が開放空間に存在しており、当該開放空間におけるオゾン濃度が100ppm以下であることが好ましい。
本発明の殺菌方法においては、前記空気流路形成部材の内部からなるオゾン生成空間が、前記殺菌対象物存在空間の内部に存在し、前記空気流路形成部材の壁が区画壁部となって、前記オゾン生成空間が前記殺菌対象物存在空間と区画されていることが好ましい。
また、本発明の殺菌方法においては、前記空気流路形成部材の内部からなるオゾン生成空間が、前記殺菌対象物存在空間の外部に存在することにより、前記オゾン生成空間が前記殺菌対象物存在空間と区画されていることが好ましい。
更に、前記オゾン生成空間において、前記殺菌対象物存在空間の雰囲気を構成する空気が、前記オゾン原料ガスとして供給されることが好ましい。
本発明の殺菌方法においては、オゾンを分解する波長域の光を含まず、かつ波長200nm以下の光であるオゾン生成用光を、空気よりなるオゾン原料ガスに対して照射することによって得られたオゾン含有空気に、殺菌対象物を曝露する。そのため、オゾン生成用光が照射されることに起因して、生成されたオゾンが分解されることがなく、また殺菌効率がオゾン原料ガスの湿度に大きく影響されることがない。
従って、本発明の殺菌方法によれば、オゾン原料ガスである空気の湿度によらず、空気から生成したオゾンを利用して、高い殺菌効率で殺菌処理を行うことができる。その結果、本発明の殺菌方法においては、低湿度環境下においても、周囲空気をオゾン原料ガスとして用いることによって高い殺菌効率で殺菌処理を行うことができる。
本発明の殺菌方法に用いられるエキシマランプの構成の一例を、ベース部材および高周波電源と共に示す説明図である。 本発明の殺菌方法を実施するために用いられる殺菌処理機構の構成の一例を示す説明図である。 図2の殺菌処理機構におけるオゾン発生器の構成の一例の概略を示す説明図である。 本発明の殺菌方法を実施するために用いられる殺菌処理機構の構成の他の例を示す説明図である。 本発明の殺菌方法を実施するために用いられる殺菌処理機構の構成の更に他の例を示す説明図である。 本発明の殺菌方法を実施するために用いられる殺菌処理機構の構成のまた更に他の例を示す説明図である。 実験例1に用いた殺菌処理機構の構成の概略を示す説明図である。 実験例1に用いた比較用の殺菌処理機構を構成するオゾン発生器の要部を示す説明図である。 実験例1において、実験用殺菌処理機構を用いることによって得られた、CT値と殺菌率との関係を示すグラフである。 実験例1において、比較実験用殺菌処理機構を用いることによって得られた、CT値と殺菌率との関係を示すグラフである。
以下、本発明の殺菌方法の実施の形態について説明する。
本発明の殺菌方法は、病院(具体的には、病室等)、工場(具体的には、食品取扱室等)および食品庫等の内部空間(室内空間)の雰囲気を構成する空気、水、並びに、椅子および医療機器等の室内配置物などを被殺菌処理対象とし、空気中および水中などに存在している殺菌対象物、並びに室内配置物の表面に付着している殺菌対象物を殺菌する殺菌処理を行うための方法である。
この本発明の殺菌方法は、オゾン生成用光を、空気よりなるオゾン原料ガス(以下、「原料空気」ともいう。)に対して照射することによってオゾン含有空気を得、得られたオゾン含有空気に殺菌対象物を曝露することにより、当該殺菌対象物を殺菌する方法である。そして、オゾン生成用光が、オゾンを分解する波長域の光を含まず、かつ波長200nm以下の光(紫外線)であることを特徴とする。
ここに、「オゾンを分解するオゾン分解波長域の光」とは、波長240〜280nmの光(紫外線)を示す。
本発明の殺菌方法において、オゾン生成用光の波長域は、200nm以下とされ、好ましくは172nmを含む波長域である。
オゾン生成用光が波長200nm以下の光であることにより、原料空気を構成する酸素が分解されることによってオゾンが生成される。具体的に説明すると、酸素分子にオゾン生成用光が照射されることにより、当該酸素分子が分解(解離)して酸素原子が生じ、その酸素原子と他の酸素分子が結合することによってオゾンが生成される。しかも、オゾン生成用光が波長200nm以下の光であることによれば、原料空気に対して、オゾン分解波長域の光が照射されることがないことから、オゾン生成用光が照射されることに起因して、生成されたオゾンが分解されることがない。
また、オゾン生成用光が波長172nmの光を含むことによれば、オゾン生成用光を原料空気に照射することによって、活性酸素の一種である過酸化水素(H2 2 )を高い効率で生成させることができる。そのため、高い殺菌効率を得ることができる。
また、原料空気としては、殺菌対象物が存在する殺菌対象物存在空間の外部雰囲気を構成する空気、または殺菌対象物存在空間を構成する空気が好適に用いられる。
また、本発明の殺菌方法において、原料空気に対するオゾン生成用光の照射条件は、殺菌対象物の種類、被殺菌処理対象の種類および被殺菌処理対象において必要とされる殺菌率などを考慮して適宜に定められる。
原料空気に対するオゾン生成用光の照射条件の一例として、放射強度は、例えば23.3〔mW/cm2 〕であり、照射時間は、例えば14.6〔msec〕である。
また、本発明の殺菌方法において、殺菌効率の観点から、原料空気にオゾン生成用光が照射されることによって得られたオゾン含有空気は、直ちに殺菌処理に供されることが好ましい。
また、本発明の殺菌方法において、殺菌対象物に対するオゾン含有ガスの曝露時間、すなわち殺菌処理時間は、オゾン含有空気におけるオゾン濃度に応じ、殺菌対象物の種類、被殺菌処理対象の種類および被殺菌処理対象において必要とされる殺菌率などを考慮して適宜に定められる。具体的には、オゾン含有空気におけるオゾン濃度との関係において、当該オゾン濃度〔ppm〕と曝露時間〔min〕との積によって算出されるCT値が、60以上であることが好ましい。
ここに、「CT値」とは、殺菌・不活性効果を示す指標であり、そのCT値が高い程、殺菌・不活性効果が大きいことを示すものである。
本発明の殺菌方法において、オゾン生成用光を放射するオゾン生成光源としては、オゾン分解波長域の光を放射することがなく、かつ波長200nm以下の光を放射するもの、具体的には、エキシマランプおよび希ガス蛍光ランプ等の放電ランプ、並びにLED素子およびLD素子などの発光素子などが用いられる。
オゾン生成光源がエキシマランプまたは希ガス蛍光ランプよりなるものである場合には、大きなオゾン発生量を得るために、水銀ランプと比較して大きな投入電力が必要とされることがない。そのため、高い効率でオゾンを生成することができる。
また、オゾン生成光源がLED素子よりなるものである場合には、当該オゾン生成光源は、例えば、複数のLED素子が、放熱基板上に適宜に配列されてなる構成を有するものとされる。
ここに、本発明において、「エキシマランプ」とは、Kogelschatz,Pure&Appl.Chem.Vol.62,No.9,1990,p1667−1674に示されているように、誘電体を介して50Hz〜数MHzの高周波電圧が印加されることによって生じる放電(誘電体バリア放電)を利用するランプである。
また、「希ガス蛍光ランプ」とは、例えば、両端に封止部が形成された、石英ガラスなどの透光性を有する誘電体材料よりなる筒状の発光管を有し、この発光管の内部に、キセノン、アルゴンおよびクリプトンなどの希ガスが封入され、当該発光管の内周面に蛍光体層が形成されたものである。そして、発光管には、一対の外部電極が、当該発光管の管軸方向に沿って互いに離間して設けられている。このような希ガス蛍光ランプにおいては、一対の外部電極に対して高周波電圧を印加することにより、誘電体(石英ガラスよりなる発光管の管壁)が介在された状態の一対の外部電極の間において放電が形成される。その結果、発光管の内部において希ガスエキシマ分子が形成され、この希ガスエキシマ分子が基底状態に遷移する際、エキシマ光が放出される。このエキシマ光により蛍光体層を構成する蛍光体が励起され、当該蛍光体層から紫外線が発生し、その光が発光管の外部に向かって放射される。
オゾン生成光源の好ましい具体例としては、中心波長172nmのキセノンエキシマランプが挙げられる。
エキシマランプ10は、図1に示すように、例えば石英ガラスなどの紫外線透過材料によって構成され、一端(図1における右端)が封止され、他端(図1における左端)にピンチシール法によって形成された扁平状の封止部11Aが形成された直円筒状の発光管11を備えている。この発光管11の内部には、キセノンガスなどの希ガスが封入されていると共に、コイル状の内部電極14が、発光管11の管軸に沿って伸びるように配設されている。この内部電極14は、内部リード15を介して封止部11Aに埋設された金属箔16に電気的に接続されており、金属箔16には、封止部11Aの外端面から外方に突出する内部電極用外部リード17の一端部が電気的に接続されている。また、発光管11の外周面には、網状の外部電極18が設けられおり、外部電極18には、封止部11Aに沿って伸びる外部電極用外部リード19の一端部が電気的に接続されている。そして、内部電極14と外部電極18とが、発光管11の内部空間および発光管11の管壁を介して対向する領域において、発光領域が形成されている。このようにして、発光管11の内部に放電空間が形成されている。
また、エキシマランプ10の封止部11Aには、セラミック製のベース部材21が装着されている。このベース部材21には、給電線22,23が配設されており、この給電線22,23には、それぞれ外部電極用外部リード19の他端部および内部電極用外部リード17の他端部が接続されている。
そして、エキシマランプ10は、内部電極14が、金属箔16、内部電極用外部リード17およびベース部材21の給電線22を介して高周波電源24に接続され、外部電極18が、外部電極用外部リード19およびベース部材21の給電線23を介して接地されている。
この図の例において、発光管11は、一端に排気管残部11Bを有するものである。
本発明の殺菌方法の具体例としては、後述する、種々の殺菌処理機構を用いる手法が挙げられる。
いずれの殺菌処理機構を利用するかは、被殺菌処理対象の種類および被殺菌処理対象において必要とされる殺菌率などを考慮して、適宜に選択される。
(第1の殺菌処理機構)
図2は、本発明の殺菌方法を実施するために用いられる殺菌処理機構の構成の一例を示す説明図である。また、図3は、図2の殺菌処理機構におけるオゾン発生器の構成の一例の概略を示す説明図である。
第1の殺菌処理機構30は、外観形状が立方体状の箱状部材よりなる区画壁部31によって区画された、殺菌対象物が存在する殺菌対象物存在空間S1を被殺菌処理対象とするものである。そして、第1の殺菌処理機構30において、殺菌対象物存在空間S1内には、オゾン生成空間S2が区画されている。
この第1の殺菌処理機構30は、具体的には、例えば病院の病室、工場の食品取扱室および食品庫などの室内空間よりなる殺菌対象物存在空間S1内に、オゾン発生器40におけるオゾン生成空間S2が位置された構成のものである。そして、第1の殺菌処理機構30においては、殺菌対象物存在空間S1が閉塞空間とされた状態、すなわち室内空間(殺菌対象物存在空間S1)と外部(区画壁部31の外部)とを連通する、開閉可能な開口部(具体的には、扉および窓等)が閉じられた状態で殺菌処理が行われる。
オゾン発生器40は、原料空気G1にオゾン生成用光を照射することによって、当該原料空気G1中の酸素にオゾン生成用光を吸収させてオゾンを生成し、生成されたオゾンを含有するオゾン含有空気G2を、当該オゾン発生器40の外部に排出するものである。
このオゾン発生器40は、長尺な直円筒状の空気流路形成部材41を備えており、この空気流路形成部材41によって、殺菌対象物存在空間S1とオゾン生成空間S2とを区画する区画壁部が構成されている。すなわち、空気流路形成部材41における円柱状の内部空間によってオゾン生成空間S2が構成されている。空気流路形成部材41においては、一端に空気導入口41Aが形成され、他端に空気導出口41Bが形成されている。この空気導入口41Aには、直円筒状の空気導入路形成部材42による原料空気導入路を介して、殺菌対象物存在空間S1の外部、すなわち区画壁部31の外部に設けられた原料空気供給手段(図示省略)が接続されている。区画壁部31には、空気供給用開口32が形成されており、この空気供給用開口32には、空気導入路形成部材42が気密に挿設されている。また、空気導出口41Bには、直円筒状の空気導出路形成部材43が接続されおり、この空気導出路形成部材43における空気導出口43Aは、殺菌対象物存在空間S1の略中心部に位置している。また、空気流路形成部材41の内部(オゾン生成空間S2)には、図1に示すような構成のエキシマランプ10よりなるオゾン生成光源が、給電線22を介して高周波電源24に接続され、給電線23を介して接地された状態で、発光領域の全域が当該内部に位置するように配置されている。このエキシマランプ10は、空気流路形成部材41の内径よりも小さい外径を有すると共に、当該空気流路形成部材41の全長よりも短い発光長(発光領域の長さ)を有するものである。また、エキシマランプ10は、空気流路形成部材41の内部において、当該エキシマランプ10の管軸(ランプ中心軸)が空気流路形成部材41の管軸と略一致するように支持部材(図示省略)によって支持されている。すなわち、エキシマランプ10は、管軸(ランプ中心軸)が空気流路形成部材41の管軸と略一致し、当該エキシマランプ10の外周面が全周にわたって空気流路形成部材41の内周面と離間し、当該外周面と当該内周面との間に環状空間が形成されるように配設されている。このようにして、空気流路形成部材41の内部、すなわちオゾン生成空間S2には、原料空気供給手段から空気導入口41Aを介して供給された原料空気G1が空気導出口41Bに向かって流動する空気流路が形成されている。
空気流路形成部材41においては、内周面の全面がオゾンに対する耐性を有しており、また必要に応じてオゾン生成光源(エキシマランプ10)からの光に対する遮光性を有している。この空気流路形成部材41は、フッ素樹脂およびステンレス鋼などの耐オゾン性材料よりなることが好ましい。
また、空気流路形成部材41は、内周面における、少なくともオゾン生成光源(エキシマランプ10)からの光が照射される領域が、オゾン生成用光に対する光反射機能を有するものであることが好ましい。
空気流路形成部材41が、オゾン生成光源(エキシマランプ10)からの光が照射される領域において光反射能を有するものであることにより、オゾン生成光源からの光(オゾン生成用光)を有効に利用することができるため、より高い効率でオゾンを生成することができる。
この図の例において、空気流路形成部材41は、金属(具体的には、アルミニウム)よりなることにより、内周面の全面がオゾンに対する耐性を有すると共に光反射能を有するものとされており、またエキシマランプ10からの光に対する遮光性を有するものとされている。
原料空気供給手段としては、例えば区画壁部31の外部から外部雰囲気を構成する空気(周囲空気)を導入し、その外部雰囲気を構成する空気を、空気流路形成部材41の内部(オゾン生成空間S2)に供給して流動させることのできる送風手段が用いられる。
原料空気供給手段による原料空気G1の供給条件は、空気流路形成部材41の内部(オゾン生成空間S2)において、原料空気G1に対して所期の照射条件でオゾン生成用光が照射されるように、空気流路形成部材41の内径やエキシマランプ10の外径などを考慮して適宜に定められる。
このような構成の第1の殺菌処理機構30においては、本発明の殺菌方法により、殺菌対象物存在空間S1に存在する殺菌対象物を殺菌する殺菌処理が行われる。
具体的に説明すると、オゾン発生器40において、原料空気供給手段により、隔壁壁部31の外部雰囲気を構成する空気(周囲空気)が、原料空気G1として、空気導入口41Aを介して空気流路形成部材41の内部(オゾン生成空間S2)に供給される。この空気流路形成部材41の内部に供給された原料空気G1は、空気導出口41Bに向かって空気流路を流動し、その原料空気G1に対して、エキシマランプ10(オゾン生成光源)からの光(オゾン生成用光)が照射される。これにより、原料空気G1中の酸素がオゾン生成用光(紫外線)を吸収することによってオゾン生成反応が生じてオゾンが生成される。このようにして原料空気G1にオゾン生成用光が照射されることによって生成されたオゾンを含有するオゾン含有空気G2が、空気導出口41Bを介して空気導出口43Aからオゾン発生器40の外部に排出される。そして、このようにしてオゾン生成空間S2から殺菌対象物存在空間S1に供給されたオゾン含有空気G2に、当該殺菌対象物存在空間S1に存在する殺菌対象物が曝露されることにより、当該殺菌対象物存在空間S1が殺菌処理される。
(第2の殺菌処理機構)
図4は、本発明の殺菌方法を実施するために用いられる殺菌処理機構の構成の他の例を示す説明図である。
第2の殺菌処理機構50は、図2に係る第1の殺菌処理機構30において、原料空気供給手段が殺菌対象物存在空間S1の内部、すなわち区画壁部31の内部に設けられていること、および区画壁部31に空気供給用開口32が形成されていないこと以外は、当該図2に係る第1の殺菌処理機構30と同様の構成を有するものである。すなわち、第2の殺菌処理機構50は、殺菌対象物存在空間S1の雰囲気を構成する空気が、原料空気G1として、空気流路形成部材41の内部(オゾン生成空間S2)に供給される構成のものである。
この第2の殺菌処理機構50において、原料空気供給手段46としては、殺菌対象物存在空間S1の雰囲気を構成する空気を循環する構成のものが用いられる。具体的に説明すると、原料空気供給手段46は、殺菌対象物存在空間S1の雰囲気を構成する空気を導入し、その空気を、原料空気G1として、空気流路形成部材41の内部(オゾン生成空間S2)に供給して流動させることのできるものが用いられる。
また、第2の殺菌処理機構50は、具体的には、例えば病院の病室、工場の食品取扱室および食品庫などの室内空間よりなる殺菌対象物存在空間S1内に、オゾン発生器40におけるオゾン生成空間S2が位置された構成のものである。そして、第2の殺菌処理機構50においては、殺菌対象物存在空間S1が閉塞空間とされた状態、すなわち室内空間(殺菌対象物存在空間S1)と外部(区画壁部31の外部)とを連通する、開閉可能な開口部(具体的には、扉および窓等)が閉じられた状態で殺菌処理が行われる。
このような構成の第2の殺菌処理機構50においては、本発明の殺菌方法により、殺菌対象物存在空間S1に存在する殺菌対象物を殺菌する殺菌処理が行われる。
具体的に説明すると、オゾン発生器40において、原料空気供給手段46により殺菌対象物存在空間S1の雰囲気を構成する空気が、原料空気G1として、空気導入口41Aを介して空気流路形成部材41の内部(オゾン生成空間S2)に供給される。この空気流路形成部材41の内部に供給された原料空気G1は、空気導出口41Bに向かって空気流路を流動し、その原料空気G1に対して、エキシマランプ10(オゾン生成光源)からの光(オゾン生成用光)が照射される。これにより、原料空気G1中の酸素がオゾン生成用光(紫外線)を吸収することによってオゾン生成反応が生じてオゾンが生成される。このようにして原料空気G1にオゾン生成用光が照射されることによって生成されたオゾンを含有するオゾン含有空気G2が、空気導出口41Bを介して空気導出口43Aからオゾン発生器40の外部に排出される。そして、このようにしてオゾン生成空間S2から殺菌対象物存在空間S1に供給されたオゾン含有空気G2に、当該殺菌対象物存在空間S1に存在する殺菌対象物が曝露されることにより、当該殺菌対象物存在空間S1が殺菌処理される。
(第3の殺菌処理機構)
図5は、本発明の殺菌方法を実施するために用いられる殺菌処理機構の構成の更に他の例を示す説明図である。
第3の殺菌処理機構52は、図2に係る第1の殺菌処理機構30において、殺菌対象物存在空間S1の外部にオゾン生成空間S2が区画されていること、具体的には、オゾン発生器40が殺菌対象物存在空間S1の外部、すなわち区画壁部31の外部に設けられていること以外は、当該図2に係る第1の殺菌処理機構30と同様の構成を有するものである。
この第3の殺菌処理機構52において、区画壁部31の空気供給用開口32には、空気導出路形成部材43が気密に挿設されている。
この第3の殺菌処理機構52は、例えば病院の病室、工場の食品取扱室および食品庫などの室内空間よりなる殺菌対象物存在空間S1の外部に、オゾン発生器40が配置された構成のものである。そして、第3の殺菌処理機構52においては、殺菌対象物存在空間S1が閉塞空間とされた状態、すなわち室内空間(殺菌対象物存在空間S1)と外部(区画壁部31の外部)とを連通する、開閉可能な開口部(具体的には、扉および窓等)が閉じられた状態で殺菌処理が行われる。
このような構成の第3の殺菌処理機構52においては、本発明の殺菌方法により、殺菌対象物存在空間S1に存在する殺菌対象物を殺菌する殺菌処理が行われる。
具体的に説明すると、オゾン発生器40において、原料空気供給手段により、隔壁壁部31の外部雰囲気を構成する空気(周囲空気)が、原料空気G1として、空気導入口41Aを介して空気流路形成部材41の内部(オゾン生成空間S2)に供給される。この空気流路形成部材41の内部に供給された原料空気G1は、空気導出口41Bに向かって空気流路を流動し、その原料空気G1に対して、エキシマランプ10(オゾン生成光源)からの光(オゾン生成用光)が照射される。これにより、原料空気G1中の酸素がオゾン生成用光(紫外線)を吸収することによってオゾン生成反応が生じてオゾンが生成される。このようにして原料空気G1にオゾン生成用光が照射されることによって生成されたオゾンを含有するオゾン含有空気G2が、空気導出口41Bを介して空気導出口43Aからオゾン発生器40の外部に排出される。そして、このようにしてオゾン生成空間S2から殺菌対象物存在空間S1に供給されたオゾン含有空気G2に、当該殺菌対象物存在空間S1に存在する殺菌対象物が曝露されることにより、当該殺菌対象物存在空間S1が殺菌処理される。
(第4の殺菌処理機構)
図6は、本発明の殺菌方法を実施するために用いられる殺菌処理機構の構成のまた更に他の例を示す説明図である。
第4の殺菌処理機構54は、図2に係る第1の殺菌処理機構30において、区画壁部31の一部または全部が設けられておらず、殺菌対象物存在空間S1が開放空間とされていること以外は、当該図2に係る第1の殺菌処理機構30と同様の構成を有するものである。
この第4の殺菌処理機構54は、具体的には、例えば病院の病室、工場の食品取扱室および食品庫などの室内空間よりなる殺菌対象物存在空間S1の内部に、オゾン発生器40におけるオゾン生成空間S2が位置された構成のものである。そして、第4の殺菌処理機構54においては、殺菌対象物存在空間S1が開放空間とされた状態、すなわち室内空間(殺菌対象物存在空間S1)と外部(区画壁部31の外部)とを連通する、開閉可能な開口部(具体的には、扉および窓等)が開けられた状態で殺菌処理が行われる。
このような構成の第4の殺菌処理機構54においては、本発明の殺菌方法により、殺菌対象物存在空間S1に存在する殺菌対象物を殺菌する殺菌処理が行われる。
具体的に説明すると、オゾン発生器40において、原料空気供給手段により、殺菌対象物存在空間S1の外部雰囲気(但し、殺菌対象物存在空間S1に連通している)を構成する空気(周囲空気)が、原料空気G1として、空気導入口41Aを介して空気流路形成部材41の内部(オゾン生成空間S2)に供給される。この空気流路形成部材41の内部に供給された原料空気G1は、空気導出口41Bに向かって空気流路を流動し、その原料空気G1に対して、エキシマランプ10(オゾン生成光源)からの光(オゾン生成用光)が照射される。これにより、原料空気G1中の酸素がオゾン生成用光(紫外線)を吸収することによってオゾン生成反応が生じてオゾンが生成される。このようにして原料空気G1にオゾン生成用光が照射されることによって生成されたオゾンを含有するオゾン含有空気G2が、空気導出口41Bを介して空気導出口43Aからオゾン発生器40の外部に排出される。そして、このようにしてオゾン生成空間S2から殺菌対象物存在空間S1に供給されたオゾン含有空気G2に、当該殺菌対象物存在空間S1に存在する殺菌対象物が曝露されることにより、当該殺菌対象物存在空間S1が殺菌処理される。
このような殺菌処理機構によって実施される本発明の殺菌方法においては、オゾン生成用光を、原料空気に対して照射することによって得られたオゾン含有空気に、殺菌対象物を曝露する。そのため、オゾン生成用光が照射されることに起因して、生成されたオゾンが分解されることがない。また、後述の実験例から明らかなように、原料空気雰囲気下において無声放電を生じさせることによって得られたオゾン含有空気を利用した場合のように、殺菌効率が原料空気の湿度に大きく影響されることがない。具体的には、原料空気雰囲気下において無声放電を生じさせることによって得られたオゾン含有空気を利用する殺菌方法において、高い殺菌効率を得ることのできない相対湿度60%RH以下の空気、特に殺菌効果を得ることのできない20%RHの空気を原料空気として場合であっても、高い殺菌効率を得ることができる。
従って、本発明の殺菌方法によれば、オゾン原料ガスを構成する空気の湿度によらず、空気から生成したオゾンを利用して、高い殺菌効率で殺菌処理を行うことができる。その結果、本発明の殺菌方法においては、低湿度環境下においても、特に、相対湿度が60%RH以下、好ましくは相対湿度が40%RH以下、更に好ましくは相対湿度が20%RHの低湿度条件下においても、高い殺菌効率で確実に殺菌処理を行うことができる。
また、本発明の殺菌方法においては、原料空気に対するオゾン生成用光の照射時間などを調整することにより、オゾン含有空気におけるオゾン濃度を容易に制御することができる。そのため、殺菌対象物存在空間S1におけるオゾン濃度を、100ppm以下、好ましくは人体に悪影響を及ぼすことのない濃度、具体的には50ppm以下にすることができる。特に、第4の殺菌処理機構54のように、殺菌対象物存在空間S1が開放空間である場合には、オゾンによる人体への悪影響を考慮して、当該殺菌対象物存在空間S1におけるオゾン濃度が50ppm以下であることが好ましい。
従って、本発明の殺菌方法は、扉や窓の開閉によって閉塞空間にも開放空間にもされる居住空間を殺菌処理するために好適に用いることができる。
以上、本発明の殺菌方法について具体的に説明したが、本発明は以上の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、本発明の殺菌方法を実施するために用いられる殺菌処理機構は、上記の構成(具体的には、第1の殺菌処理機構30、第2の殺菌処理機構50、第3の殺菌処理機構52および第4の殺菌処理機構54)に限定されるものではない。
以下、本発明の実験例について説明する。
〔実験例1〕
図7に示すように、容積288Lの環境試験機61と、当該環境試験機61の内部に配設されたオゾン発生器63と、循環路形成部材66を介して環境試験機61に接続されたオゾンモニタ65とを備えた実験用殺菌処理機構(以下、「実験用殺菌処理機構(1)」ともいう。)を作製した。オゾン発生器63は、アルミニウムよりなる直円筒状の空気流路形成部材内に、中心波長が172nmであって入力電力が20Wのキセノンエキシマランプ(ウシオ電機株式会社製)が、当該空気流路形成部材の管軸に沿って配置されたものである(図3参照)。また、オゾンモニタ65としては、紫外線吸収式オゾンモニタ「EG−3000D」(荏原実業株式会社製)を用いた。この実験用殺菌処理機構(1)においては、循環路形成部材66による循環路を介して環境試験機61の内部雰囲気を構成するガス(空気)を循環し、オゾンモニタ65によって当該内部雰囲気を構成する空気のオゾン濃度が測定される。
この実験用殺菌処理機構(1)は、本発明の殺菌方法によって殺菌処理を行うものである。
また、実験用殺菌処理機構(1)において、オゾン発生器63として、入力電力(消費電力)が45Wの放電式オゾン発生器「剛腕1000T(型番:GWD−1000T)」(オーニット株式会社製)を用いた比較実験用殺菌処理機構(以下、「実験用殺菌処理機構(2)」ともいう。)を作製した。
この実験用殺菌処理機構(2)は、オゾン生成方法として、空気の雰囲気下において、沿面放電などの無声放電を生じさせることによってオゾンを生成させる放電方式を利用するものである。以下において、実験用殺菌処理機構(2)によって行われる、放電方式のオゾンの生成方法によって得られたオゾン含有空気を利用する殺菌方法を、「放電方式利用殺菌方法」ともいう。
ここに、放電方式のイオンの生成方法において用いられるオゾン発生器は、例えば、図8に示すように、石英ガラスなどの誘電体材料よりなる直円筒状の空気流路形成部材71を備えており、この空気流路形成部材71の内周面によって区画される円柱状空間により、一方の端部71Aから他方の端部71Bに向かって空気が流動すると共に、放電(無声放電)が生じる空気流路が形成されたものである。この空気流路形成部材71には、外周面に、管軸に沿って螺旋状に伸びる一方の電極72が設けられ、また内周面に、管軸に沿って螺旋状に伸びる一方の電極73が設けられており、これらの一方の電極72および他方の電極73は、給電線74,75を介して高周波電源76に接続されている。
一方、寒天培地が充填されており、その寒天培地上に、大腸菌K12株(NBRC106373)を植菌した試験区用シャーレと対照区用シャーレとを、それぞれ複数用意した。ここに、複数の試験区用シャーレおよび複数の対照区用シャーレにおいて、植菌した大腸菌K12株(NBRC106373)の数は、1000個以上であって1200個以下である。
作製した実験用殺菌処理機構(1)および実験用殺菌処理機構(2)において、環境試験機61の内部の相対湿度が、20%RH、40%RH、60%RHまたは80%RHとなる条件下において、当該環境試験機61におけるオゾン濃度が40ppmとなるように、オゾン発生器63を連続駆動した。ここに、環境試験機61の内部は、温度が20℃であって、気圧が大気圧と同等である。そして、環境試験機61の扉(図示省略)を開けて、当該環境試験機61の内部に、試験区用シャーレを配置した後、直ちに扉を閉めた。この環境試験機61の扉の開閉に伴って、環境試験機61の内部におけるオゾン濃度が30ppmに低下した。その後、オゾン発生器63の駆動を制御(ON/OFF制御)することにより、環境試験機61におけるオゾン濃度を30±2ppmに維持した。このオゾン濃度が30±2ppmに維持された状態の環境試験機61の内部において、温度および気圧は一定であった。このようにして、オゾン濃度30±2ppmのオゾン含有空気に、大腸菌K12株(NBRC106373)を曝露した。
その後、CT値が40、60、80または100となる曝露時間が経過したところで、環境試験機61から試験区用シャーレを取り出し、この試験区用シャーレを、対照区用シャーレと共に、温度37℃の条件下において24時間放置することによって培養した。
そして、24時間培養後の試験区用シャーレおよび対照区用シャーレを確認した。
実験用殺菌処理機構(1)において、環境試験機の相対湿度が20%RHの条件下でオゾン含有空気を曝露した場合には、CT値が40の試験区用シャーレにおけるコロニー数は331個であり、CT値が60、80、100と大きくなるにつれて、コロニー数は減少し、CT値が100の試験区用シャーレにおけるコロニー数は51個であった。
また、実験用殺菌処理機構(1)において、環境試験機の相対湿度が40%RHの条件下でオゾン含有空気を曝露した場合には、CT値が40の試験区用シャーレにおけるコロニー数は343個であり、CT値が60、80、100と大きくなるにつれて、コロニー数は減少傾向にあり、CT値が100の試験区用シャーレにおけるコロニー数は16個であった。
また、実験用殺菌処理機構(1)において、環境試験機の相対湿度が60%RHの条件下でオゾン含有空気を曝露した場合には、CT値が40の試験区用シャーレにおけるコロニー数は267個であり、CT値が60、80、100と大きくなるにつれて、コロニー数は減少し、CT値が100の試験区用シャーレにおけるコロニー数は18個であった。
また、実験用殺菌処理機構(1)において、環境試験機の相対湿度が80%RHの条件下でオゾン含有空気を曝露した場合には、CT値が40の試験区用シャーレにおけるコロニー数は77個であり、CT値が60、80、100と大きくなるにつれて、コロニー数は減少し、CT値が100の試験区用シャーレにおける殺菌率は13個であった。
一方、実験用殺菌処理機構(2)において、環境試験機の相対湿度が20%RHの条件下でオゾン含有空気を曝露したすべての試験区用シャーレは、コロニー数が1000個以上であった。
また、実験用殺菌処理機構(2)において、環境試験機の相対湿度が40%RHの条件下でオゾン含有空気を曝露した場合には、CT値が40の試験区用シャーレにおけるコロニー数は1000個以上であったが、CT値が60、80および100のときにはいずれもコロニー数が400個を下回り、CT値が100の試験区用シャーレにおけるコロニー数は186個であった。
また、実験用殺菌処理機構(2)において、環境試験機の相対湿度が60%RHの条件下でオゾン含有空気を曝露した場合には、CT値が40の試験区用シャーレにおけるコロニー数は185個であり、CT値が60、80、100と大きくなるにつれて、コロニー数は減少し、CT値が100の試験区用シャーレにおけるコロニー数は86個であった。
また、実験用殺菌処理機構(2)において、環境試験機の相対湿度が80%RHの条件下でオゾン含有空気の曝露した場合には、CT値が40の試験区用シャーレにおけるコロニー数は81個であり、CT値が60、80、100と大きくなるにつれて、コロニー数は減少し、CT値が100の試験区用シャーレにおけるコロニー数は3個であった。
なお、いずれの対照区用シャーレにおいても、コロニー数は1000個以上であった。
そして、コロニー数が1000個未満であった試験区用シャーレについて、そのコロニー数から大腸菌K12株(NBRC106373)の殺菌率を算出た。結果を図9および図10に示す。この図9および図10においては、環境試験機の相対湿度が20%RHの条件に係る結果が菱形プロット(◆)で示されており、環境試験機の相対湿度が40%RHの条件に係る結果が四角プロット(■)で示されており、環境試験機の相対湿度が60%RHの条件に係る結果が三角プロット(▲)で示されており、環境試験機の相対湿度が80%RHの条件に係る結果がクロスプロット(×)で示されている。
実験例1の結果から、実験用殺菌処理機構(1)によれば、原料空気として、相対湿度が20%RH、40%RH、60%RHおよび80%RHの空気のいずれを用いた場合であっても、65%以上の高い殺菌率が得られることが明らかである。特に、実験用殺菌処理機構(2)においては殺菌効果または高い殺菌率が得られることのなかった、原料空気として、相対湿度が60%RH以下の空気を用いた場合であっても、高い殺菌率が得られることが明らかである。
従って、本発明に係る実験用殺菌処理機構(1)、すなわち本発明の殺菌方法によれば、オゾン原料ガスである空気の湿度によらず、空気から生成したオゾンを利用して、高い殺菌効率で殺菌処理を行うことができる。
具体的に説明すると、実験用殺菌処理機構(2)、すなわち放電方式利用殺菌方法においては、原料空気の相対湿度が80%RHおよび60%RHである場合には、CT値が40、60、80および100のいずれの値であっても、75%以上の高い殺菌率が得られるものの、原料空気の相対湿度が40%RHである場合には、CT値が40では殺菌率が著しく低いことが明らかである。また、20%RHである場合には、CT値が40、60、80および100のいずれの値であっても、殺菌率が著しく低いことが明らかである。
従って、放電方式利用殺菌方法においては、原料空気が低湿度である場合には、殺菌効果が得られないこと、または十分な殺菌効率が得られないことが確認された。
一方、実験用殺菌処理機構(1)、すなわち本発明の殺菌方法においては、実験用殺菌処理機構(2)とは異なり、原料空気の相対湿度によらず、65%以上の高い殺菌率が得られることが明らかである。しかも、原料空気の相対湿度が60%RHである場合には、CT値が60、80および100のいずれの値においても、実験用殺菌処理機構(2)に比してより高い殺菌率が得られ、また原料空気の相対湿度が20%RHおよび40%RHである場合には、CT値が40、60、80および100のいずれの値においても、実験用殺菌処理機構(2)に比してより高い殺菌率が得られることが明らかである。
従って、本発明の殺菌方法においては、原料空気の湿度によらず、十分な殺菌効率が得られることが確認された。
このように、本発明の殺菌方法と放電方式利用殺菌方法とにおいて、原料空気の湿度との関係で殺菌効率に大きな相違が生じる理由については、必ずしも明らかではないが、以下のように推考される。
光化学反応方式のオゾンの生成方法および放電方式のオゾンの生成方法を利用することによって空気から得られるオゾン含有空気には、オゾンと共に、オゾンの生成過程において生じる、酸素および水素などに由来のラジカルやイオンが含有されていると考えられる。そして、これらのオゾン含有空気に含有されるラジカルやイオンは、オゾンの生成方法の方式(光化学反応方式または放電方式)によって、その種類が異なるものとなると考えられる。具体的に説明すると、光化学反応方式のオゾンの生成方法においては、低湿環境下においても、原料空気にオゾン生成用光が照射されることによって、原料空気中に存在する水(水分)が液滴化され、その液滴化された水からラジカルが生じると考えられる。一方、放電方式のオゾンの生成方法においては、原料空気中に存在する水が液滴化されてラジカルが生じることはない。このオゾン含有空気に含有されるラジカルやイオンの、当該オゾン含有空気の殺菌作用に及ぼす影響が、殺菌効率の相違をもたらすものと考えられる。
また、実験例1において、試験区用シャーレに植菌した大腸菌K12株(NBRC106373)をオゾン含有空気に曝露する曝露時間を一定時間とし、当該オゾン含有空気におけるオゾン濃度を変更することによって、CT値が40、60、80または100となるようにしたこと以外は、当該実験例1と同様の実験を行った。この実験においても、実験例1と同様の結果が得られた。
10 エキシマランプ
11 発光管
11A 封止部
11B 排気管残部
14 内部電極
15 内部リード
16 金属箔
17 内部電極用外部リード
18 外部電極
19 外部電極用外部リード
21 ベース部材
22,23 給電線
24 高周波電源
30 第1の殺菌処理機構
31 区画壁部
32 空気供給用開口
40 オゾン発生器
41 空気流路形成部材
41A 空気導入口
41B 空気導出口
42 空気導入路形成部材
43 空気導出路形成部材
43A 空気導出口
46 原料空気供給手段
50 第2の殺菌処理機構
52 第3の殺菌処理機構
54 第4の殺菌処理機構
61 環境試験機
63 オゾン発生器
65 オゾンモニタ
66 循環路形成部材
71 空気流路形成部材
71A 一方の端部
71B 他方の端部
72,73 電極
74,75 給電線
76 高周波電源
S1 殺菌対象物存在空間
S2 オゾン生成空間
G1 原料空気
G2 オゾン含有空気

Claims (5)

  1. オゾンを分解する波長域の光を含まず、かつ波長200nm以下の光であるオゾン生成用光を、空気よりなるオゾン原料ガスに対して照射することによってオゾン含有空気を得、得られたオゾン含有空気に殺菌対象物を曝露することにより、当該殺菌対象物を殺菌する殺菌方法であって、
    殺菌対象物が存在する空間が、殺菌対象物存在空間であり、
    空気よりなるオゾン原料ガスが、空気流路形成部材の一端側から導入されて、内部でオゾン生成用光が照射されることによってオゾン含有空気となり他端側から導出され、
    空気流路形成部材の内部がオゾン生成空間であり、
    前記殺菌対象物存在空間と前記オゾン生成空間とが連通されており、
    前記殺菌対象物存在空間と前記オゾン生成空間とが、前記空気流路形成部材によって区画されており、
    前記オゾン原料ガスの相対湿度が40%RH以下であることを特徴とする殺菌方法。
  2. 前記殺菌対象物が開放空間に存在しており、当該開放空間におけるオゾン濃度が100ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の殺菌方法。
  3. 前記空気流路形成部材の内部からなるオゾン生成空間が、前記殺菌対象物存在空間の内部に存在し、前記空気流路形成部材の壁が区画壁部となって、前記オゾン生成空間が前記殺菌対象物存在空間と区画されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の殺菌方法。
  4. 前記空気流路形成部材の内部からなるオゾン生成空間が、前記殺菌対象物存在空間の外部に存在することにより、前記オゾン生成空間が前記殺菌対象物存在空間と区画されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の殺菌方法。
  5. 前記オゾン生成空間において、前記殺菌対象物存在空間の雰囲気を構成する空気が、前記オゾン原料ガスとして供給されることを特徴とする請求項に記載の殺菌方法。
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