JP6936688B2 - タイヤ用ビード部材、及びタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、タイヤ用ビード部材、及びタイヤに関する。
従来から、一対のビード部と、ビード部からタイヤ径方向外側へ延びる一対のタイヤサイド部と、一方のタイヤサイド部から他方のタイヤサイド部へ延びるトレッド部と、を有する空気入りタイヤが用いられている。なお、空気入りタイヤのビード部においては、リムへの固定性能を高める観点で、ビードワイヤーを有するビードコアが埋設され、かつこのビードコアの周囲に弾性材料で形成されるビードフィラーを備えた構造が採用されている。
なお、こうしたビード部に用いられるビードワイヤーとして、樹脂による被覆部で被覆されたワイヤーを用いることが試されている。
例えば、10%の伸びと室温で測定した伸長切断係数が少なくとも70MPaに等しい素材をもって製造された被覆部によって被覆された線材組立体を含むタイヤ外皮用ビードワイヤが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開昭63−25110号公報
上記のように、樹脂による被覆部で被覆されたビードワイヤーをタイヤのビード部に用いる技術が知られている。しかし、特許文献1に記載のタイヤ外皮用ビードワイヤは、比較的硬い樹脂からなる被覆部によって線材組立体が被覆されているため、かかるビードワイヤをタイヤのビード部に適用した場合には、走行時にビード部周辺に生じた歪みにより割れが発生することがあり、この割れによりタイヤの走行耐久性が低下することがある。
本発明は、上記事情に鑑み、走行耐久性を向上できるタイヤ用ビード部材及びタイヤを提供することを目的とする。
前記課題は、以下の本発明により解決される。
<1> ビードワイヤー、及び前記ビードワイヤーに直に接触するか若しくは他の層を介して接触して配置された被覆樹脂層を有するビードコアと、前記被覆樹脂層に直に接触して配置されたビードフィラーと、を有し、
前記被覆樹脂層は、樹脂Aを含み、
前記ビードフィラーは、樹脂Bを含み、
前記樹脂Bの融点が前記樹脂Aの融点よりも高いタイヤ用ビード部材。
<2> 前記樹脂Bの融点は、170℃以上225℃以下である<1>に記載のタイヤ用ビード部材。
<3> 前記被覆樹脂層及び前記ビードフィラーのシャルピー衝撃強さが5kJ/m以上である<1>又は<2>に記載のタイヤ用ビード部材。
<4> 前記ビードフィラーの引張弾性率が、前記被覆樹脂層の引張弾性率よりも高い<1>〜<3>のいずれか1に記載のタイヤ用ビード部材。
<5> 前記ビードフィラーの引張弾性率が、400MPa以上1700MPa以下であり、
前記被覆樹脂層の引張弾性率が、137MPa以上1000MPa以下である<1>〜<4>のいずれか1に記載のタイヤ用ビード部材。
<6> 前記樹脂A及び前記樹脂Bは、互いに樹脂の主鎖を構成する構成単位中に共通する骨格を有する樹脂である<1>〜<5>のいずれか1に記載のタイヤ用ビード部材。
<7> 前記樹脂A及び前記樹脂Bは、それぞれ独立に、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーである<1>〜<6>のいずれか1に記載のタイヤ用ビード部材。
<8> 前記樹脂A及び前記樹脂Bの少なくとも一方が熱可塑性エラストマーである<7>に記載のタイヤ用ビード部材。
<9> 前記樹脂A及び前記樹脂Bの少なくとも一方が、ポリアミド系熱可塑性エラストマー又はポリエステル系熱可塑性エラストマーである<8>に記載のタイヤ用ビード部材。
<10> 前記ビードワイヤーと前記被覆樹脂層との間には、樹脂Cを含む接着樹脂層が配置されている<1>〜<9>のいずれか1に記載のタイヤ用ビード部材。
<11> 前記樹脂Cが、極性官能基を有する熱可塑性樹脂又は極性官能基を有する熱可塑性エラストマーである<10>に記載のタイヤ用ビード部材。
<12> 前記樹脂Cの融点が139℃以上220℃以下である<10>又は<11>に記載のタイヤ用ビード部材。
<13> 一対のビード部に、<1>〜<12>のいずれか1に記載のタイヤ用ビード部材を有するタイヤ。
本発明によれば、走行耐久性を向上できるタイヤ用ビード部材及びタイヤを提供することができる。
本発明の一実施形態に係るタイヤをタイヤ幅方向に沿って切断した切断面の片側を示すタイヤ半断面図である。 図1のタイヤのビード部周辺を拡大して示す、タイヤ幅方向断面図である。 本発明におけるビードコアの一実施形態を示す、ビードワイヤーの長さ方向に対する垂直切断面の模式図である 本発明におけるビードコアの一実施形態を示す、ビードワイヤーの長さ方向に対する垂直切断面の模式図である 本発明におけるビードコアの一実施形態を示す、ビードワイヤーの長さ方向に対する垂直切断面の模式図である 本発明の別の一実施形態に係るタイヤをタイヤ幅方向に沿って切断した切断面の片側を示すタイヤ半断面図である。
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
本明細書において「樹脂」とは、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、及び熱硬化性樹脂を含む概念であり、加硫ゴムは含まない。また、以下の樹脂の説明において「同種」とは、エステル系同士、スチレン系同士等、樹脂の主鎖を構成する骨格と共通する骨格を備えたものを意味する。
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において「工程」との語には、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その目的が達成されるものであれば、当該工程も本用語に含まれる。
また、本明細書において「熱可塑性樹脂」とは、温度上昇とともに材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になるが、ゴム状弾性を有しない高分子化合物を意味する。
本明細書において「熱可塑性エラストマー」とは、ハードセグメント及びソフトセグメントを有する共重合体を意味する。熱可塑性エラストマーとして具体的には、例えば、結晶性で融点の高いハードセグメント又は高い凝集力のハードセグメントを構成するポリマーと、非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーと、を有する共重合体が挙げられる。また、熱可塑性エラストマーとしては、例えば、温度上昇とともに材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になり、かつ、ゴム状弾性を有するものが挙げられる。
なお、上記ハードセグメントは、例えば、主骨格に芳香族基若しくは脂環式基等の剛直な基を有する構造、又は分子間水素結合若しくはπ−π相互作用による分子間パッキングを可能にする構造等のセグメントが挙げられる。また、ソフトセグメントは、例えば、主鎖に長鎖の基(例えば長鎖のアルキレン基等)を有し、分子回転の自由度が高く、伸縮性を有する構造のセグメントが挙げられる。
<タイヤ用ビード部材>
本発明のタイヤ用ビード部材(以下、単に「ビード部材」とも称す)は、ビードワイヤー、及びビードワイヤーに直に接触するか若しくは他の層を介して接触して配置された被覆樹脂層を有するビードコアと、被覆樹脂層に直に接触して配置されたビードフィラーと、を有し、被覆樹脂層は、樹脂Aを含み、ビードフィラーは、樹脂Bを含み、樹脂Bの融点が前記樹脂Aの融点よりも高い。
以下では、樹脂Bを「融点が高い樹脂B」と称することがあり、樹脂Aを「融点が低い樹脂A」と称することがある。
本発明のビード部材は、タイヤにおいて一対のビード部に用いられる部材であって、該ビード部の全部又は一部を構成する部材である。具体的には、本発明のビード部材は、ビードワイヤーと、被覆樹脂層と、タイヤにおけるビードフィラーの全部又は一部と、を少なくとも構成する。
ここで、本発明のビード部材の実施形態について、図面に基づき簡単に説明する。
図1に示される、タイヤ10(図1では一実施形態としてランフラットタイヤを例に挙げて説明する)では、左右に一対のビード部12(図1では、片側のビード部12のみ図示)を有する。そして、一対のビード部12からタイヤ径方向外側へそれぞれ延びる一対のタイヤサイド部14と、一方のタイヤサイド部14から他方のタイヤサイド部14へ延びるトレッド部16と、を有している。
ビード部12にはビードコア18が埋設され、左右一対のビードコア18にカーカス22が跨っている。
また、ビード部12には、ビードコア18からタイヤ径方向外側へカーカス22の外面22Oに沿って延びるビードフィラー20が埋設されている。ビードフィラー20は、例えば、カーカス本体部22Aと折返し部分22Bとで囲まれた領域に配置される。
ビードコア18は、図2に示されるように、並んで配置された複数のビードワイヤー1と、このビードワイヤー1を被覆し樹脂Aを含む被覆樹脂層3とを有する。
なお、ランフラットタイヤである図1に示されるタイヤ10では、タイヤサイド部14のカーカス22のタイヤ幅方向内側に、タイヤサイド部14を補強するサイド補強層の一例としてのサイド補強ゴム26が配設されている。
さらに、本発明のビード部材の別の実施形態についても、図面により簡単に説明する。
図4に示されるように、タイヤ110では、左右一対のビード部112(図4では、片側のビード部112のみ図示)を有する。そして、一対のビード部112からタイヤ径方向外側へそれぞれ延びる一対のタイヤサイド部114と、一方のタイヤサイド部114から他方のタイヤサイド部114へ延びるトレッド部116と、を有している。
タイヤ110は、タイヤ骨格体に相当する円環状の形状のタイヤケース140を備えており、タイヤケース140は、ビード部112とタイヤサイド部114とトレッド部116とを含んで構成されている。また、タイヤサイド部114及びビード部112には保護層122が設けられている。
ビード部112にはタイヤ周方向に沿って延びる円環状のビードコア118が埋設されている。ビードコア118は、並んで配置された複数のビードワイヤーと、このビードワイヤーを被覆し樹脂Aを含む被覆樹脂層とを有する。
また、ビード部112には、ビードコア118からタイヤ径方向外側へ保護層122に沿って延びるビードフィラー120が埋設されている。
以上のように、図1及び図2に示すタイヤ10並びに図4に示すタイヤ110において、一対のビード部の全部又は一部を構成するのが本発明のビード部材であり、ビードワイヤーと、被覆樹脂層と、ビードフィラーの全部又は一部と、を少なくとも構成するのが本発明のビード部材である。
従来、タイヤのリムへの固定の役割を担うビード部として、ビードワイヤー及び被覆樹脂層を有するビードコアと、被覆樹脂層の少なくとも一部に接触するビードフィラーと、を有するビード部材が用いられている。そして、ビードコアを構成する部材や、ビードフィラーには、従来から一般的にゴム材料が用いられている。一方で、成形容易性の観点から、ビードコアを構成する部材及びビードフィラーに樹脂材料を用いることが求められている。
本発明者らの検討により、本発明のビード部材をタイヤのビード部に適用すると、タイヤの走行耐久性を向上できることがわかった。その理由は明らかではないが、以下のように推察される。
本発明のビード部材を製造する工程では、通常、先に形成された被覆樹脂層の上に後からビードフィラーを形成することで、上記「被覆樹脂層に直に接触して配置されたビードフィラー」を有するビード部材が得られる。この工程によれば、融点の低い樹脂Aを含む被覆樹脂層の表面に、融点の高い樹脂Bが溶融された状態で供給されることになるため、かかる樹脂Bの溶融物の供給により、被覆樹脂層の表面における樹脂Aが良好に溶融し易くなる。これにより、被覆樹脂層とビードフィラーとの接着性が向上し、両者の界面でのずれの発生が抑制される。その結果、走行によって被覆樹脂層とビードフィラーとの界面に強い負荷が掛かった場合でも、該負荷に伴うずれの発生が抑制されることで、優れた耐久性が得られると考えられる。
また、タイヤのビード部のうちタイヤサイド部よりの領域、つまりビード部のタイヤ径方向外側よりの領域は、走行による負荷が加わった際に屈曲が繰り返される領域(屈曲部分)でもある。そして、例えば長時間走行が行われる等、走行によってビード部が熱を持つことがある。しかし、本発明のビード部材は、融点の高い樹脂Bを含むビードフィラーを有しており、走行によりビード部が熱を持った場合でも、屈曲部分などの負荷がかかる箇所において硬さを保持し易い。その結果、屈曲に対する耐久性を確保できるので、これによっても優れた走行耐久性が得られると考えられる。
したがって、本発明のビード部材では、被覆樹脂層に含まれる樹脂A及びビードフィラーに含まれる樹脂Bの融点を「樹脂Bの融点>樹脂Aの融点」の関係とすることで、タイヤの走行耐久性を向上できる。
また、特にランフラットタイヤにはランフラット走行性、つまりタイヤ内の空気が抜けた状態での走行性が求められる。そのため、ランフラット走行の際にはビード部にも極めて高い負荷が加わり、前記屈曲部分にもこの極めて高い負荷が加えられる。また、この高い負荷によって被覆樹脂層とビードフィラーとの界面では前記ずれがより発生し易くなる。
しかし、本発明のビード部材では、かかるビード部材をランフラットタイヤに適用した場合においても、被覆樹脂層とビードフィラーとの接着性の向上により両者の界面でのずれの発生が抑制されることで、ランフラット走行時の耐久性を向上できる。また、融点の高い樹脂Bを含むビードフィラーを有することで、ランフラット走行によりビード部が熱を持った場合でも、屈曲部分などの負荷がかかる箇所において硬さが保持し易く、ランフラット走行時の耐久性を向上できる。
・融点(樹脂A、樹脂B)
本発明のビード部材は、被覆樹脂層が樹脂Aを含み、ビードフィラーが樹脂Bを含み、かつ樹脂Bの融点は樹脂Aの融点よりも高い。
樹脂A及び樹脂Bの融点、並びに、両者の樹脂の融点の差は、タイヤの走行耐久性をより向上させる観点から、以下の範囲であることが好ましい。
樹脂Aの融点は、160℃以上230℃以下であることが好ましく、165℃以上225℃以下であることがより好ましく、170℃以上220℃以下であることが更に好ましい。
樹脂Aの融点が160℃以上であると、加硫した際に流動することなく加硫できる。
樹脂Aの融点が230℃以下であると、被覆樹脂層とビードフィラーとの接着性を向上させ易く、その結果走行耐久性を向上させ易い。
樹脂Bの融点は、170℃以上230℃以下であることが好ましく、175℃以上225℃以下であることがより好ましい。
樹脂Bの融点が170℃以上であると、ビード部が熱を持った場合でも屈曲部分などの負荷がかかる箇所において硬さが保持し易く、その結果走行耐久性を向上させ易い。
樹脂Bの融点が230℃以下であると、樹脂Aとの融点差が大き過ぎず、樹脂Aと溶着ができる。また、加工時に樹脂Aを溶融流動させることが抑制され、形状変形の発生が抑制される。
上記融点の差(樹脂Bの融点−樹脂Aの融点)は、被覆樹脂層とビードフィラーとの接着性向上及びビード部が熱を持った場合における屈曲部分などの負荷がかかる箇所での硬さ保持の観点から、1℃以上20℃以下であることが好ましく、1℃以上15℃以下であることがより好ましく、3℃以上13℃以下であることが更に好ましい。
樹脂A及び樹脂Bの融点は、示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry;DSC)により得られる曲線(DSC曲線)において、吸熱ピークが得られる温度をいう。融点の測定は、示差走査熱量計DSCを用いて、JIS K 7121:2012に準拠して行なう。測定は、例えば、TAインスツルメント(株)の「DSC Q100」を用いて、掃引速度10℃/minで行うことができる。
樹脂被覆層及びビードフィラーに含まれる樹脂A及び樹脂Bの融点の調整は、例えば樹脂A及び樹脂Bの材料の選択によって行ない得る。
・樹脂A及び樹脂Bの樹脂の種類
さらには、本発明のビード部材は、被覆樹脂層及びビードフィラーに含まれる樹脂A及び樹脂Bが、互いに樹脂の主鎖を構成する構成単位中に共通する骨格を有する樹脂であることが好ましい。
ここで、「互いに樹脂の主鎖を構成する構成単位中に共通する骨格を有する樹脂」とは、例えば、樹脂A及び樹脂Bが共に「ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)及び熱可塑性ポリエステルの少なくとも一種」を含有する場合であれば、互いに樹脂の主鎖を構成する構成単位中に共通する骨格(すなわちエステル結合骨格)を有すると言える。また、同様に、樹脂A及び樹脂Bが共に以下の熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーを含む場合が挙げられる。
・樹脂A及び樹脂Bが共に「ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)及び熱可塑性ポリアミドの少なくとも一種」を含有する場合、互いに樹脂の主鎖を構成する構成単位中に共通する骨格として、アミド結合骨格を有する。
・樹脂A及び樹脂Bが共に「ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)及び熱可塑性ポリスチレンの少なくとも一種」を含有する場合、互いに樹脂の主鎖を構成する構成単位中に共通する骨格として、ポリスチレン骨格を有する。
・樹脂A及び樹脂Bが共に「ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)及び熱可塑性ポリウレタンの少なくとも一種」を含有する場合、互いに樹脂の主鎖を構成する構成単位中に共通する骨格として、ウレタン結合骨格を有する。
・樹脂A及び樹脂Bが共に「ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)及び熱可塑性ポリオレフィンの少なくとも一種」を含有する場合、互いに樹脂の主鎖を構成する構成単位中に共通する骨格として、ポリオレフィン骨格を有する。
なお、樹脂A及び樹脂Bとしては、樹脂の分子構造を構成する構成単位として、同じ化学構造の構成単位を含む熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー(例えば樹脂の原料となるモノマーとして同じ構造のモノマーを用いた熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー)を用いることがより好ましい。
また、樹脂の分子構造を構成する構成単位として、同じ化学構造の構成単位のみを含む熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー(例えば樹脂の原料となるモノマーとして同じ構造のモノマーのみを用いた熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー)を用いることがさらに好ましい。
被覆樹脂層に含まれる樹脂Aと、ビードフィラーに含まれる樹脂Bと、が互いに樹脂の主鎖を構成する構成単位中に共通する骨格を有する樹脂であることで、被覆樹脂層とビードフィラーとの親和性が高められ、優れた接着性が発揮される。その結果、被覆樹脂層とビードフィラーとの界面でのずれの発生が抑制され、走行によって強い負荷が掛かった場合でも、優れた耐久性が得られ易くなる。
また、本発明のビード部材は、タイヤの走行耐久性をより向上させる観点から、樹脂被覆層に含まれる樹脂A及びビードフィラーに含まれる樹脂Bは、それぞれ独立に、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーであることが好ましい。
さらに本発明のビード部材は、樹脂A及び樹脂Bの少なくとも一方が熱可塑性エラストマーであることが好ましく、樹脂A及び樹脂Bの少なくとも一方が、ポリアミド系熱可塑性エラストマー又はポリエステル系熱可塑性エラストマーであることがより好ましい。
熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーの詳細は後述する。
・シャルピー衝撃強さ(被覆樹脂層、ビードフィラー)
本発明のビード部材は、ビードフィラーのシャルピー衝撃強さが、5kJ/m以上であることが好ましく、6kJ/m以上がより好ましく、7kJ/m以上がさらに好ましい。また、ビードフィラーのシャルピー衝撃強さの上限値は、特に限定されるものではないが、破壊しないこと(NB)が好ましく、20kJ/m以下がより好ましく、15kJ/m以下がさらに好ましい。
また、本発明のビード部材は、被覆樹脂層のシャルピー衝撃強さが、5kJ/m以上であることが好ましく、6kJ/m以上がより好ましく、8kJ/m以上がさらに好ましい。また、被覆樹脂層のシャルピー衝撃強さの上限値は、特に限定されるものではないが、破壊しないこと(NB)が好ましく、20kJ/m以下がより好ましく、15kJ/m以下がさらに好ましい。
なお、本発明のビード部材では、ビードフィラー及び被覆樹脂層が共に、上記範囲のシャルピー衝撃強さを有していることが好ましく、ビードフィラーより被覆樹脂の方が高い方が好ましい。
シャルピー衝撃強さの下限値が上記の範囲であることで、リム組み時や走行時(特にランフラット走行時)等において、ビードフィラーや被覆樹脂層に瞬間的に負荷がかかった際に生じる割れの発生が抑制され易い。
一方、シャルピー衝撃強さの上限値が上記の範囲であることで、割れることなく、リム組、走行を行うことができ、樹脂を用いたビードとしての効果が得られる。
ビードフィラー及び被覆樹脂層のシャルピー衝撃強さは、JIS K7111−1:2012年に定める手法にのっとり、シャルピー衝撃試験機(安田精機社製、製品名:141型)を用いて、試験片(ノッチ加工あり)の温度23℃の条件で測定する。
例えば、公称振り子エネルギー(ひょう量)を4J、ハンマー持上げ角度を150°の条件で、サンプルに衝突した後に戻った角度を測定することで、衝突前後の角度の差から消費されたエネルギー量(エネルギー吸収量)を算出する。
ビードフィラー及び被覆樹脂層のシャルピー衝撃強さの調整は、例えば、ビードフィラー及び被覆樹脂層を構成する材料の選択、特にはビードフィラー及び被覆樹脂層に含まれる樹脂B及び樹脂Aの材料の選択によって調整し得る。
・引張弾性率(被覆樹脂層、ビードフィラー)
本発明のビード部材は、ビードフィラーの引張弾性率が被覆樹脂層の引張弾性率よりも高いことが好ましい。
ビードフィラー及び被覆樹脂層の引張弾性率、並びに、両者の引張弾性率の差は、タイヤの走行耐久性をより向上させる観点から、以下の範囲であることが好ましい。
ビードフィラーの引張弾性率は、250MPa以上1700MPa以下であることが好ましく、300MPa以上1600MPa以下であることがより好ましく、350MPa以上1500MPa以下であることが更に好ましい。
ビードフィラーの引張弾性率が250MPa以上であると、ビード部における屈曲部分などの負荷がかかる箇所において適度な硬さが得られ、走行時に生じる屈曲に対して耐久性を確保できるため、走行耐久性を向上させ易い。
ビードフィラーの引張弾性率が1700MPa以下であると、ビードフィラーに求められる適度な柔らかさが担保され、走行時に加えられた負荷に対し、割れにくくし易い。
被覆樹脂層の引張弾性率は、137MPa以上1000MPa以下であることが好ましく、150MPa以上900MPa以下であることがより好ましく、200MPa以上800MPa以下であることが更に好ましい。
被覆樹脂層の引張弾性率が137MPa以上であると、加硫時に変形し難い。
被覆樹脂層の引張弾性率が1000MPa以下であると、ビード部に求められる適度な柔らかさが担保され、走行時に加えられる負荷に対する被覆樹脂層の追従性が得られるため、ビードコアの位置ずれの発生や、エア漏れの発生が抑制し易くなる。
上記引張弾性率の差(ビードフィラーの引張弾性率−被覆樹脂層の引張弾性率)は、ビード部における屈曲部分などの負荷がかかる箇所における適度な硬さの担保、及びビード部の被覆樹脂層に求められる適度な柔らかさの担保の観点から、130MPa以上1000MPa以下であることが好ましく、135MPa以上900MPa以下であることがより好ましく、137MPa以上800MPa以下であることが更に好ましい。
引張弾性率の測定は、JIS K7113:1995に準拠して行う。詳細には、島津製作所社製、島津オートグラフAGS−J(5KN)を用い、引張速度を100mm/minに設定し、引張弾性率の測定を行う。なお、ビード部材における被覆樹脂層又はビードフィラーの引張弾性率を測定する場合、例えば、被覆樹脂層又はビードフィラーと同じ材料の測定試料を別途準備して弾性率測定してもよい。
被覆樹脂層及びビードフィラーの引張弾性率の調整は、例えば、被覆樹脂層及びビードフィラーを構成する材料の選択、特には樹脂A及び樹脂Bの材料の選択によって調整し得る。
・吸水率(被覆樹脂層、ビードフィラー)
本発明では、ビードフィラーの吸水率が、3.5質量%以下であることが好ましい。なお、ビードフィラーの吸水率は、3.0質量%以下であることがより好ましく、2.8質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%に近いほど好ましい。
また、本発明では、樹脂被覆層の吸水率が、3.5質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、2.8質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%に近いほど好ましい。
なお、本発明のビード部材では、ビードフィラー及び被覆樹脂層が共に、上記範囲の吸水率を有していることが好ましい。
吸水率が上記範囲であることで、例えばポリアミド樹脂、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの場合、給水に起因するビードフィラー及び被覆樹脂層の弾性率変化が抑制され、弾性率変化に伴うエア漏れ(エアシール性の低下)が抑制され易くなる。また、加硫時に吸水に伴う発泡が抑制される。
ビードフィラー及び被覆樹脂層の吸水率は、ISO62(1999)に従って測定された吸水率を表す。
上記吸水率の調整は、例えば、ビードフィラー及び被覆樹脂層を構成する材料の選択、特にはビードフィラー及び被覆樹脂層に含まれる樹脂B及び樹脂Aの材料の選択によって調整し得る。
以下、ビード部材の各構成部材について詳細に説明する。
<ビード部材の構成>
ビード部材は、ビードワイヤー、及びビードワイヤーに直に接触するか若しくは他の層を介して接触して配置された被覆樹脂層を有するビードコアと、被覆樹脂層に直に接触して配置されたビードフィラーと、を有する。
本発明のビード部材の形状は特に制限されない。なお、ビードコアはビードワイヤーと被覆樹脂層との間に接着剤層を有していてもよい。接着剤層は樹脂Cを含んだ接着樹脂層であることが好ましい。接着樹脂層の詳細は後述する。
ビード部材において、「被覆樹脂層がビードワイヤーに直に接触するか若しくは他の層を介して接触して配置された構造」には、例えば、ビードワイヤーの表面の全部が被覆樹脂層に直に接触して被覆された状態と、ビードワイヤーの表面の一部が接着剤層を介して被覆樹脂層に被覆された状態と、ビードワイヤーの表面の全部が接着剤層を介して被覆樹脂層で被覆された状態と、が挙げられる。
また、ビード部材において、「ビードフィラーが被覆樹脂層に直に接触して配置される構造」には、例えば、被覆樹脂層の表面の全部が直にビードフィラーに接触して配置された状態と、被覆樹脂層の表面の一部に直にビードフィラーが接触して配置された状態と、が挙げられる。
[ビードワイヤー]
ビードワイヤーは特に制限されず、例えば従来のゴム製タイヤに用いられる金属製や有機樹脂製のコード等を適宜用いることができる。例えば、金属繊維や有機繊維等のモノフィラメント(単線)、又はこれらの繊維を撚ったマルチフィラメント(撚り線)で構成される。中でも、金属製のコード(より好ましくは鉄製のコード(スチールコード))が好ましい。
本発明におけるビードワイヤーとしては、タイヤの耐久性をより向上させる観点からは、モノフィラメント(単線)が好ましい。ビードワイヤーの断面形状、サイズ(直径)等は、特に限定されるものではなく、所望のタイヤに適したものを適宜選定して用いることができる。
ビードワイヤーが複数本のコードの撚り線である場合、複数本のコードの数としては、例えば2本〜10本が挙げられ、5本〜9本が好ましい。
タイヤの耐内圧性と軽量化とを両立する観点からは、ビードワイヤーの太さは、0.3mm〜3mmであることが好ましく、0.5mm〜2mmであることがより好ましい。ビードワイヤーの太さは、任意に選択した5箇所の断面(ビードワイヤーの長さ方向に対する垂直断面)において測定した太さの数平均値とする。
ビードワイヤー自体の強力は、通常1000N〜3000Nであり、1200N〜2800Nであることが好ましく、1300N〜2700Nであることがさらに好ましい。なお、ビードワイヤーの強力は、引張試験機にてZWICK型チャックを用いて応力−歪曲線を描き、その破断点から算出する。
ビードワイヤー自体の破断伸び(引張破断伸び)は、通常0.1%〜15%であり、1%〜15%が好ましく、1%〜10%が更に好ましい。ビードワイヤーの引張破断伸びは、引張試験機にてZWICK型チャックを用いて応力−歪曲線を描き、歪から求めることができる。
[被覆樹脂層]
被覆樹脂層は樹脂Aを含む。ただし、樹脂Aの融点は、ビードフィラーに含まれる樹脂Bの融点よりも低い。
被覆樹脂層に含まれる樹脂Aとしては、例えば、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、及び熱硬化性樹脂が挙げられる。
被覆樹脂層は、成形容易性の観点から、樹脂Aとして、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーを含むことが好ましく、熱可塑性エラストマーを含むことがより好ましい。熱可塑性エラストマーの中でも特に、ポリアミド系熱可塑性エラストマー及びポリエステル系熱可塑性エラストマーの少なくとも一方を含むことが好ましい。
被覆樹脂層は、樹脂Aを少なくとも含んでいればよく、本発明の効果を損なわない範囲で、他の樹脂(熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー等)を含んでもよく、つまり樹脂Aと他の樹脂との混合物であってもよい。また、添加剤等の他の成分を含んでもよい。ただし、被覆樹脂層中における樹脂Aの含有量は、被覆樹脂層の総量に対して、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、75質量%以上がさらに好ましい。
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂、オレフィン系熱可塑性樹脂、ポリウレタン系熱可塑性樹脂、塩化ビニル系熱可塑性樹脂、ポリスチレン系熱可塑性樹脂等を例示することができる。被覆樹脂層において、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂、及びオレフィン系熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ポリアミド系熱可塑性樹脂及びポリエステル系熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも1種がさらに好ましい。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418に規定されるポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が挙げられる。被覆樹脂層において、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(熱可塑性エラストマー)
−ポリアミド系熱可塑性エラストマー−
ポリアミド系熱可塑性エラストマーとは、結晶性で融点の高いハードセグメントを形成するポリマーと非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性の樹脂材料であって、ハードセグメントを形成するポリマーの主鎖にアミド結合(−CONH−)を有するものを意味する。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリアミドが結晶性で融点の高いハードセグメントを形成し、他のポリマー(例えば、ポリエステル、ポリエーテル等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。また、ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメント及びソフトセグメントの他に、ジカルボン酸等の鎖長延長剤を用いて形成されてもよい。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、JIS K6418:2007に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)等や、特開2004−346273号公報に記載のポリアミド系エラストマー等を挙げることができる。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーにおいて、ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、例えば、下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるモノマーによって生成されるポリアミドを挙げることができる。
Figure 0006936688


一般式(1)
[一般式(1)中、Rは、炭素数2〜20の炭化水素の分子鎖(例えば炭素数2〜20のアルキレン基)を表す。]
Figure 0006936688


一般式(2)
[一般式(2)中、Rは、炭素数3〜20の炭化水素の分子鎖(例えば炭素数3〜20のアルキレン基)を表す。]
一般式(1)中、Rとしては、炭素数3〜18の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数3〜18のアルキレン基が好ましく、炭素数4〜15の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数4〜15のアルキレン基が更に好ましく、炭素数10〜15の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数10〜15のアルキレン基が特に好ましい。
また、一般式(2)中、Rとしては、炭素数3〜18の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数3〜18のアルキレン基が好ましく、炭素数4〜15の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数4〜15のアルキレン基が更に好ましく、炭素数10〜15の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数10〜15のアルキレン基が特に好ましい。
一般式(1)又は一般式(2)で表されるモノマーとしては、ω−アミノカルボン酸又はラクタムが挙げられる。また、ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、これらω−アミノカルボン酸又はラクタムの重縮合体、ジアミンとジカルボン酸との共縮重合体等が挙げられる。
ω−アミノカルボン酸としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等の炭素数5〜20の脂肪族ω−アミノカルボン酸等を挙げることができる。また、ラクタムとしては、ラウリルラクタム、ε−カプロラクタム、ウデカンラクタム、ω−エナントラクタム、2−ピロリドン等の炭素数5〜20の脂肪族ラクタム等を挙げることができる。
ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルペンタメチレンジアミン、メタキシレンジアミン等の炭素数2〜20の脂肪族ジアミン等のジアミン化合物を挙げることができる。
また、ジカルボン酸は、HOOC−(R−COOH(R:炭素数3〜20の炭化水素の分子鎖、m:0又は1)で表すことができ、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、ラウリルラクタム、ε−カプロラクタム、又はウデカンラクタムを開環重縮合したポリアミドを好ましく用いることができる。
また、ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリエーテル等が挙げられ、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ABA型トリブロックポリエーテル等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ポリエーテルの末端にアンモニア等を反応させることによって得られるポリエーテルジアミン等も用いることができる。
ここで、「ABA型トリブロックポリエーテル」とは、下記一般式(3)に示されるポリエーテルを意味する。
Figure 0006936688


一般式(3)
[一般式(3)中、x及びzは、1〜20の整数を表す。yは、4〜50の整数を表す。]
一般式(3)において、x及びzは、それぞれ、1〜18の整数が好ましく、1〜16の整数がより好ましく、1〜14の整数が更に好ましく、1〜12の整数が特に好ましい。また、一般式(3)において、yは、5〜45の整数が好ましく、6〜40の整数がより好ましく、7〜35の整数が更に好ましく、8〜30の整数が特に好ましい。
ハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、上述で挙げたハードセグメントとソフトセグメントとのそれぞれの組合せを挙げることができる。これらの中でも、ハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリエチレングリコールの組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリプロピレングリコールの組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリテトラメチレンエーテルグリコールの組合せ、又はラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテルの組合せが好ましく、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテルの組合せがより好ましい。
ハードセグメントを形成するポリマー(ポリアミド)の数平均分子量は、溶融成形性の観点から、300〜15000が好ましい。また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量としては、強靱性及び低温柔軟性の観点から、200〜6000が好ましい。さらに、ハードセグメント(x)及びソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、50:50〜90:10が好ましく、50:50〜80:20がより好ましい。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、宇部興産(株)の「UBESTA XPA」シリーズ(例えば、XPA9068X1、XPA9063X1、XPA9055X1、XPA9048X2、XPA9048X1、XPA9040X1、XPA9040X2XPA9044等)、ダイセル・エポニック(株)の「ベスタミド」シリーズ(例えば、E40−S3、E47−S1、E47−S3、E55−S1、E55−S3、EX9200、E50−R2等)等を用いることができる。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、弾性率(柔軟性)、強度等の観点からビード部として要求される性能を満たすため、樹脂材料として好適である。また、ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーとの接着性も良好であることが多い。
−ポリエステル系熱可塑性エラストマー−
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリエステルが結晶性で融点の高いハードセグメントを形成し、他のポリマー(例えば、ポリエステル又はポリエーテル等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。
ハードセグメントを形成するポリエステルとしては、芳香族ポリエステルを用いることができる。芳香族ポリエステルは、例えば、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールとから形成することができる。芳香族ポリエステルは、好ましくは、テレフタル酸及びジメチルテレフタレートの少なくとも1種と、1,4−ブタンジオールと、から誘導されるポリブチレンテレフタレートである。また、芳香族ポリエステルは、例えば、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸、若しくはこれらのエステル形成性誘導体等のジカルボン酸成分と、分子量300以下のジオール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロール等の脂環式ジオール;キシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシ−p−ターフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−p−クオーターフェニル等の芳香族ジオール;等)と、から誘導されるポリエステル、又はこれらのジカルボン酸成分及びジオール成分を2種以上併用した共重合ポリエステルであってもよい。また、3官能以上の多官能カルボン酸成分、多官能オキシ酸成分、多官能ヒドロキシ成分等を5モル%以下の範囲で共重合することも可能である。
ハードセグメントを形成するポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられ、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
また、ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリエーテル等が挙げられる。
脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体等が挙げられる。
脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等が挙げられる。
これらの脂肪族ポリエーテル及び脂肪族ポリエステルの中でも、得られるポリエステルブロック共重合体の弾性特性の観点から、ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等が好ましい。
また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量は、強靱性及び低温柔軟性の観点から、300〜6000が好ましい。さらに、ハードセグメント(x)とソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、99:1〜20:80が好ましく、98:2〜30:70が更に好ましい。
上述のハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、例えば、上述で挙げたハードセグメントとソフトセグメントとのそれぞれの組合せを挙げることができる。これらの中でも、上述のハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、ハードセグメントがポリブチレンテレフタレートであり、ソフトセグメントが脂肪族ポリエーテルである組み合わせが好ましく、ハードセグメントがポリブチレンテレフタレートであり、ソフトセグメントがポリ(エチレンオキシド)グリコールである組み合わせが更に好ましい。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、東レ・デュポン(株)製の「ハイトレル」シリーズ(例えば、3046、5557、6347、4047、4767等)、東洋紡(株)製の「ペルプレン」シリーズ(例えば、P30B、P40B、P40H、P55B、P70B、P150B、P280B、P450B、P150M、S1001、S2001、S5001、S6001、S9001等)等を用いることができる。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。
−ポリスチレン系熱可塑性エラストマー
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリスチレンがハードセグメントを形成し、他のポリマー(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリエチレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。ハードセグメントを形成するポリスチレンとしては、例えば、公知のラジカル重合法、イオン性重合法等で得られるものが好ましく用いられ、具体的には、アニオンリビング重合を持つポリスチレンが挙げられる。また、ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(2,3−ジメチル−ブタジエン)等が挙げられる。
ハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、上述で挙げたハードセグメントとソフトセグメントとのそれぞれの組合せを挙げることができる。これらの中でも、ハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、ポリスチレン/ポリブタジエンの組合せ、又はポリスチレン/ポリイソプレンの組合せが好ましい。また、熱可塑性エラストマーの意図しない架橋反応を抑制するため、ソフトセグメントは水素添加されていることが好ましい。
ハードセグメントを形成するポリマー(ポリスチレン)の数平均分子量は、5000〜500000が好ましく、10000〜200000がより好ましい。
また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量としては、5000〜1000000が好ましく、10000〜800000がより好ましく、30000〜500000が更に好ましい。さらに、ハードセグメント(x)及びソフトセグメント(y)との体積比(x:y)は、成形性の観点から、5:95〜80:20が好ましく、10:90〜70:30がより好ましい。
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン系共重合体[SBS(ポリスチレン−ポリ(ブチレン)ブロック−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン)]、スチレン−イソプレン共重合体(ポリスチレン−ポリイソプレンブロック−ポリスチレン)、スチレン−プロピレン系共重合体[SEP(ポリスチレン−(エチレン/プロピレン)ブロック)、SEPS(ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン)、SEEPS(ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン)、SEB(ポリスチレン(エチレン/ブチレン)ブロック)]等が挙げられる。
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、旭化成(株)製の「タフテック」シリーズ(例えば、H1031、H1041、H1043、H1051、H1052、H1053、H1062、H1082、H1141、H1221、H1272等)、(株)クラレ製の「SEBS」シリーズ(8007、8076等)、「SEPS」シリーズ(2002、2063等)等を用いることができる。
−ポリウレタン系熱可塑性エラストマー−
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリウレタンが物理的な凝集によって疑似架橋を形成しているハードセグメントを形成し、他のポリマーが非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、JIS K6418:2007に規定されるポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)が挙げられる。ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、下記式Aで表される単位構造を含むソフトセグメントと、下記式Bで表される単位構造を含むハードセグメントとを含む共重合体として表すことができる。
Figure 0006936688


[式中、Pは、長鎖脂肪族ポリエーテル又は長鎖脂肪族ポリエステルを表す。Rは、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、又は芳香族炭化水素を表す。P’は、短鎖脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、又は芳香族炭化水素を表す。]
式A中、Pで表される長鎖脂肪族ポリエーテル又は長鎖脂肪族ポリエステルとしては、例えば、分子量500〜5000のものを使用することができる。Pは、Pで表される長鎖脂肪族ポリエーテル及び長鎖脂肪族ポリエステルを含むジオール化合物に由来する。このようなジオール化合物としては、例えば、分子量が前記範囲内にある、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリ(ブチレンアジベート)ジオール、ポリ−ε−カプロラクトンジオール、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール、ABA型トリブロックポリエーテル等が挙げられる。
これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
式A及び式B中、Rは、Rで表される脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、又は芳香族炭化水素を含むジイソシアネート化合物を用いて導入された部分構造である。Rで表される脂肪族炭化水素を含む脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,3−プロピレンジイソシアネート、1,4−ブタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
また、Rで表される脂環族炭化水素を含むジイソシアネート化合物としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4−シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。さらに、Rで表される芳香族炭化水素を含む芳香族ジイソシアネート化合物としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等が挙げられる。
これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
式B中、P’で表される短鎖脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、又は芳香族炭化水素としては、例えば、分子量500未満のものを使用することができる。また、P’は、P’で表される短鎖脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、又は芳香族炭化水素を含むジオール化合物に由来する。P’で表される短鎖脂肪族炭化水素を含む脂肪族ジオール化合物としては、例えば、グリコール及びポリアルキレングリコールが挙げられ、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等が挙げられる。
また、P’で表される脂環族炭化水素を含む脂環族ジオール化合物としては、例えば、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,3−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール等が挙げられる。
さらに、P’で表される芳香族炭化水素を含む芳香族ジオール化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシン、クロロヒドロキノン、ブロモヒドロキノン、メチルヒドロキノン、フェニルヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、フェノキシヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルサルファイド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビスフェノールA、1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)エタン、1,4−ジヒドロキシナフタリン、2,6−ジヒドロキシナフタリン等が挙げられる。
これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ハードセグメントを形成するポリマー(ポリウレタン)の数平均分子量は、溶融成形性の観点から、300〜1500が好ましい。また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量としては、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの柔軟性及び熱安定性の観点から、500〜20000が好ましく、500〜5000が更に好ましく、500〜3000が特に好ましい。また、ハードセグメント(x)及びソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、15:85〜90:10が好ましく、30:70〜90:10が更に好ましい。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、特開平5−331256号公報に記載の熱可塑性ポリウレタンを用いることができる。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、芳香族ジオールと芳香族ジイソシアネートとからなるハードセグメントと、ポリ炭酸エステルからなるソフトセグメントとの組合せが好ましく、より具体的には、トリレンジイソシアネート(TDI)/ポリエステル系ポリオール共重合体、TDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、TDI/カプロラクトン系ポリオール共重合体、TDI/ポリカーボネート系ポリオール共重合体、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)/ポリエステル系ポリオール共重合体、MDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、MDI/カプロラクトン系ポリオール共重合体、MDI/ポリカーボネート系ポリオール共重合体、及びMDI+ヒドロキノン/ポリヘキサメチレンカーボネート共重合体から選ばれる少なくとも1種が好ましく、TDI/ポリエステル系ポリオール共重合体、TDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、MDI/ポリエステルポリオール共重合体、MDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、及びMDI+ヒドロキノン/ポリヘキサメチレンカーボネート共重合体から選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
また、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、BASF社製の「エラストラン」シリーズ(例えば、ET680、ET880、ET690、ET890等)、(株)クラレ社製「クラミロンU」シリーズ(例えば、2000番台、3000番台、8000番台、9000番台等)、日本ミラクトラン(株)製の「ミラクトラン」シリーズ(例えば、XN−2001、XN−2004、P390RSUP、P480RSUI、P26MRNAT、E490、E590、P890等)等を用いることができる。
−オレフィン系熱可塑性エラストマー−
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリオレフィンが結晶性で融点の高いハードセグメントを形成し、他のポリマー(例えば、ポリオレフィン、他のポリオレフィン、ポリビニル化合物等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。ハードセグメントを形成するポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられる。
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、オレフィン−α−オレフィンランダム共重合体、オレフィンブロック共重合体等が挙げられ、具体的には、プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−4−メチル−1ペンテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−ペンテン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、1−ブテン−4−メチル−ペンテン、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、プロピレン−メタクリル酸共重合体、プロピレン−メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸ブチル共重合体、プロピレン−メチルアクリレート共重合体、プロピレン−エチルアクリレート共重合体、プロピレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
これらの中でも、オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−4−メチル−1ペンテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−ペンテン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、プロピレン−メタクリル酸共重合体、プロピレン−メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸ブチル共重合体、プロピレン−メチルアクリレート共重合体、プロピレン−エチルアクリレート共重合体、プロピレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びプロピレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれる少なくとも1種が好ましく、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、及びエチレン−ブチルアクリレート共重合体から選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
また、エチレンとプロピレンといったように2種以上のオレフィン樹脂を組み合わせて用いてもよい。また、オレフィン系熱可塑性エラストマー中のオレフィン樹脂含有率は、50質量%以上100質量%以下が好ましい。
オレフィン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量は、5000〜10000000であることが好ましい。オレフィン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量が5000〜10000000であると、熱可塑性樹脂材料の機械的物性が十分であり、加工性にも優れる。同様の観点から、オレフィン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量は、7000〜1000000であることが更に好ましく、10000〜1000000が特に好ましい。これにより、熱可塑性樹脂材料の機械的物性及び加工性を更に向上させることができる。また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量としては、強靱性及び低温柔軟性の観点から、200〜6000が好ましい。更に、ハードセグメント(x)及びソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、50:50〜95:15が好ましく、50:50〜90:10が更に好ましい。
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、公知の方法によって共重合することで合成することができる。
また、オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、熱可塑性エラストマーを酸変性してなるものを用いてもよい。
「オレフィン系熱可塑性エラストマーを酸変性してなるもの」とは、オレフィン系熱可塑性エラストマーに、カルボン酸基、硫酸基、燐酸基等の酸性基を有する不飽和化合物を結合させることをいう。
オレフィン系熱可塑性エラストマーに、カルボン酸基、硫酸基、燐酸基等の酸性基を有する不飽和化合物を結合させることとしては、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマーに、酸性基を有する不飽和化合物として、不飽和カルボン酸(一般的には、無水マレイン酸)の不飽和結合部位を結合(例えば、グラフト重合)させることが挙げられる。
酸性基を有する不飽和化合物としては、オレフィン系熱可塑性エラストマーの劣化抑制の観点からは、弱酸基であるカルボン酸基を有する不飽和化合物が好ましく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等が挙げられる。
オレフィン系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、三井化学(株)製の「タフマー」シリーズ(例えば、A0550S、A1050S、A4050S、A1070S、A4070S、A35070S、A1085S、A4085S、A7090、A70090、MH7007、MH7010、XM−7070、XM−7080、BL4000、BL2481、BL3110、BL3450、P−0275、P−0375、P−0775、P−0180、P−0280、P−0480、P−0680等)、三井・デュポンポリケミカル(株)製の「ニュクレル」シリーズ(例えば、AN4214C、AN4225C、AN42115C、N0903HC、N0908C、AN42012C、N410、N1050H、N1108C、N1110H、N1207C、N1214、AN4221C、N1525、N1560、N0200H、AN4228C、AN4213C、N035C)等、「エルバロイAC」シリーズ(例えば、1125AC、1209AC、1218AC、1609AC、1820AC、1913AC、2112AC、2116AC、2615AC、2715AC、3117AC、3427AC、3717AC等)、住友化学(株)の「アクリフト」シリーズ、「エバテート」シリーズ等、東ソー(株)製の「ウルトラセン」シリーズ等、プライムポリマー製の「プライムTPO」シリーズ(例えば、E−2900H、F−3900H、E−2900、F−3900、J−5900、E−2910、F−3910、J−5910、E−2710、F−3710、J−5910、E−2740、F−3740、R110MP、R110E、T310E、M142E等)等も用いることができる。
(熱可塑性樹脂)
−ポリアミド系熱可塑性樹脂−
ポリアミド系熱可塑性樹脂としては、前述のポリアミド系熱可塑性エラストマーのハードセグメントを形成するポリアミドを挙げることができる。ポリアミド系熱可塑性樹脂としては、具体的には、ε−カプロラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド6)、ウンデカンラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド11)、ラウリルラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド12)、ジアミンと二塩基酸とを重縮合したポリアミド(アミド66)、メタキシレンジアミンを構成単位として有するポリアミド(アミドMX)等を例示することができる。
アミド6は、例えば、{CO−(CH−NH}で表すことができる。アミド11は、例えば、{CO−(CH10−NH}で表すことができる。アミド12は、例えば、{CO−(CH11−NH}で表すことができる。アミド66は、例えば、{CO(CHCONH(CHNH}で表すことができる。アミドMXは、例えば、下記構造式(A−1)で表すことができる。ここで、nは繰り返し単位数を表す。
アミド6の市販品としては、例えば、宇部興産(株)製の「UBEナイロン」シリーズ(例えば、1022B、1011FB等)を用いることができる。アミド11の市販品としては、例えば、アルケマ(株)製の「Rilsan B」シリーズを用いることができる。アミド12の市販品としては、例えば、宇部興産(株)製の「UBEナイロン」シリーズ(例えば、3024U、3020U、3014U等)を用いることができる。アミド66の市販品としては、例えば、宇部興産(株)製の「UBEナイロン」シリーズ(例えば、2020B、2015B等)を用いることができる。アミドMXの市販品としては、例えば、三菱ガス化学(株)製の「MXナイロン」シリーズ(例えば、S6001、S6021、S6011等)を用いることができる。
Figure 0006936688

ポリアミド系熱可塑性樹脂は、上記の構成単位のみで形成されるホモポリマーであってもよく、上記の構成単位と他のモノマーとのコポリマーであってもよい。コポリマーの場合、各ポリアミド系熱可塑性樹脂における上記構成単位の含有率は、40質量%以上であることが好ましい。
−ポリエステル系熱可塑性樹脂−
ポリエステル系熱可塑性樹脂としては、前述のポリエステル系熱可塑性エラストマーのハードセグメントを形成するポリエステルを挙げることができる。
ポリエステル系熱可塑性樹脂としては、具体的には、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ−3−ブチル酪酸、ポリヒドロキシ−3−ヘキシル酪酸、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等の脂肪族ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等の芳香族ポリエステルなどを例示することができる。これらの中でも、耐熱性及び加工性の観点から、ポリエステル系熱可塑性樹脂としては、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
ポリエステル系熱可塑性樹脂の市販品としては、例えば、ポリプラスチック(株)製の「ジュラネックス」シリーズ(例えば、2000、2002等)、三菱エンジニアリングsプラスチック(株)製の「ノバデュラン」シリーズ(例えば、5010R5、5010R3−2等)、東レ(株)製の「トレコン」シリーズ(例えば、1401X06、1401X31等)等を用いることができる。
−オレフィン系熱可塑性樹脂−
オレフィン系熱可塑性樹脂としては、前述のオレフィン系熱可塑性エラストマーのハードセグメントを形成するポリオレフィンを挙げることができる。
オレフィン系熱可塑性樹脂としては、具体的には、ポリエチレン系熱可塑性樹脂、ポリプロピレン系熱可塑性樹脂、ポリブタジエン系熱可塑性樹脂等を例示することができる。これらの中でも、耐熱性及び加工性の点から、オレフィン系熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン系熱可塑性樹脂が好ましい。
ポリプロピレン系熱可塑性樹脂の具体例としては、プロピレンホモ重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体等が挙げられる。α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素数3〜20程度のα−オレフィン等が挙げられる。
−他の成分−
被覆樹脂層は、樹脂(樹脂A、又は樹脂Aと他の樹脂との混合物)以外にも、他の成分を含んでもよい。他の成分としては、ゴム、各種充填剤(例えば、シリカ、炭酸カルシウム、クレイ等)、老化防止剤、オイル、可塑剤、発色剤、耐候剤等が挙げられる。
−被覆樹脂層の厚み−
被覆樹脂層の厚みは、特に限定されない。耐久性に優れる点や溶着性の観点から、20μm以上1000μm以下であることが好ましく、30μm以上700μm以下であることがより好ましい。
なお、被覆樹脂層の厚みとは、被覆樹脂層におけるビードワイヤー側の表面(例えばビードワイヤーや接着剤層との界面)から、被覆樹脂層における外側の表面(ビードワイヤー側と反対の表面)までの長さのうち、最も短い箇所の長さをさす。
被覆樹脂層の厚みは、ビードワイヤーの長さ方向に対する垂直断面のビデオマイクロスコープ等の顕微鏡による拡大画像を任意の5箇所から取得し、得られた5個の拡大画像からそれぞれ測定される被覆樹脂層の最小厚み部分の厚さを測定し、その数平均値とする。
[ビードフィラー]
ビードフィラーは樹脂Bを含む。ただし、樹脂Bの融点は、樹脂被覆層に含まれる樹脂Aの融点よりも高い。
ビードフィラーに含まれる樹脂Bとしては、例えば、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂が挙げられる。
ビードフィラーは、成形容易性の観点から、樹脂Bとして熱可塑性エラストマーを含むことが好ましい。熱可塑性エラストマーの中でも特に、ポリアミド系熱可塑性エラストマー及びポリエステル系熱可塑性エラストマーの少なくとも一方を含むことが好ましい。
ビードフィラーは、樹脂Bを少なくとも含んでいればよく、本発明の効果を損なわない範囲で、他の樹脂(熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー等)を含んでもよく、つまり樹脂Bと他の樹脂との混合物であってもよい。また、添加剤等の他の成分を含んでもよい。ただし、ビードフィラー中における樹脂Bの含有量は、ビードフィラーの総量に対して、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、75質量%以上がさらに好ましい。
熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーの具体例等については、前述の樹脂被覆層の説明欄において列挙した各種の熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーを挙げることができ、その好ましい態様も前述の通りである。
また、ビードフィラーに含ませることができる他の成分についても、前述の被覆樹脂層の説明欄において列挙した他の成分を挙げることができる。
[接着剤層]
本発明のビード部材は、ビードワイヤーと被覆樹脂層との間に接着剤層を有していてもよい。接着剤層の材質は特に制限されず、タイヤのビード部において用いられる接着剤を用いることができる。
接着剤層は樹脂Cを含む層(接着樹脂層)であることが好ましく、この樹脂Cとしては熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーが好ましい。
接着剤層が樹脂Cを含む場合、樹脂Cの含有率は接着剤層全体の50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましい。
熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーの具体例等については、前述の被覆樹脂層の説明欄において列挙した各種の熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーを挙げることができる。
ただし、接着剤層に含まれる樹脂Cとしては、極性官能基を有する熱可塑性樹脂又は極性官能基を有する熱可塑性エラストマー(以下、単に「極性官能基含有樹脂」とも称す)であることがより好ましい。
「極性官能基」とは、化学的な反応性(官能性)を示す基であって分子内に電荷の偏り(極性)をもたらす基を表す。
本発明では、接着剤層に極性官能基含有樹脂を含むことで、極性官能基による電荷の偏りによって、ビードワイヤーが金属ワイヤーである場合に、その表面に存在する水和した水酸基との間で相互作用が生じ、両者の間に引力をもたらしたり、錯体を形成することでビードワイヤー(金属ワイヤー)と接着剤層との高い接着性が得られるものと考えられる。
そして、接着剤層を介して被覆樹脂層を設けることで、ビードワイヤー(金属ワイヤー)とビードフィラーとの間の剛性の差を緩和することができるため、ビードワイヤーを備えたビード部材として、優れた接着耐久性を実現し得るものと推察される。
−極性官能基含有樹脂−
極性官能基を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、極性官能基を有するポリエステル系熱可塑性樹脂、オレフィン系熱可塑性樹脂、ポリスチレン系熱可塑性樹脂等を例示することができる。
極性官能基を有する熱可塑性エラストマーとしては、例えば、極性官能基を有するポリエステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
極性官能基含有樹脂が有する極性官能基としては、エポキシ基(下記(1)に示す基、なおR11、R12及びR13はそれぞれ独立に水素原子又は有機基(例えばアルキル基)を表す)、カルボキシ基(−COOH)及びその無水物基、アミノ基(−NH)、イソシアネート基(−NCO)、ヒドロキシ基(−OH)、イミノ基(=NH)、シラノール基(−SiOH)等が挙げられる。
なお、上記「無水物基」とは、2つのカルボキシ基からHOが取れた無水物状の基(下記(2-1)に示す無水物状の基、なおR21は単結合又は置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、R22及びR23はそれぞれ独立に水素原子又は有機基(例えばアルキル基)を表す。)を指す。下記(2-1)に示す無水物基は、HOが与えられることで下記(2-2)に示す状態、つまり2つのカルボキシ基を有する状態となる。
これらの中でも、ビードワイヤーとの接着性の観点から、エポキシ基、カルボキシ基及びその無水物基、ヒドロキシ基、並びにアミノ基が好ましい。
また、極性官能基は、エポキシ基との反応性の観点から、カルボキシ基及びその無水物基、ヒドロキシ基、並びにアミノ基が好ましい。
Figure 0006936688

極性官能基含有樹脂は、極性官能基となる基を有する化合物(誘導体)で熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーを変性することで得られる。例えば、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーに極性官能基となる基を有しかつそれとは別に反応性基(例えば不飽和基(エチレン性の炭素−炭素二重結合等))を有する化合物を化学的に結合(付加反応、グラフト反応等)させることで得られる。
熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーを変性する誘導体(極性官能基となる基を有する化合物)としては、例えば、反応性基を有するエポキシ化合物、不飽和カルボン酸(メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等)、不飽和カルボン酸無水物(無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸等)、その他反応性基を有するカルボン酸及びその無水物、反応性基を有するアミン化合物、反応性基を有するイソシアネート化合物、反応性基を有するアルコール、反応性基を有するシラン化合物、又はその誘導体等が挙げられる。
ポリエステル系熱可塑性樹脂としては、例えば、脂肪族ポリエステル系熱可塑性樹脂、芳香族ポリエステル系熱可塑性樹脂等が挙げられる。極性官能基となる基を有する化合物(誘導体)で変性される前のポリエステル系熱可塑性樹脂としては、前述の被覆樹脂層に用いられるポリエステル系熱可塑性樹脂と同様である。
オレフィン系熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン系熱可塑性樹脂、ポリプロピレン系熱可塑性樹脂、ポリブタジエン系熱可塑性樹脂等が挙げられる。極性官能基となる基を有する化合物(誘導体)で変性される前のオレフィン系熱可塑性樹脂としては、前述の被覆樹脂層に用いられるオレフィン系熱可塑性樹脂と同様である。
極性官能基となる基を有する化合物(誘導体)で変性される前のポリエステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、及びポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、前述の被覆樹脂層に用いられるポリエステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、及びポリスチレン系熱可塑性エラストマーと同様である。
(合成方法)
ここで、極性官能基含有樹脂の合成方法について、具体的に説明する。
例えば、極性官能基を有するスチレン系エラストマーであれば、未変性のスチレン系エラストマーに極性官能基を導入することで得られる。具体的には、極性官能基としてエポキシ基を有するスチレン系エラストマーの場合、未変性のスチレン系エラストマーと、エポキシ化剤と、を必要に応じて溶媒及び触媒の存在下で反応させることで得られる。上記エポキシ化剤としては、例えば、過酸化水素、ターシャリブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、トリフルオロ過酢酸等の過酸類;等が挙げられる。
また、合成方法の一例として、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)を不飽和カルボン酸又はその無水物で変性する方法について、以下に詳細に説明する。
極性官能基を有するポリエステル系熱可塑性エラストマー(以下単に「極性基含有TPC」とも称す)は、例えば、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーの溶融物を、不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性処理して得られる
変性とは、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーの不飽和カルボン酸又はその誘導体によるグラフト変性、末端変性及びエステル交換反応による変性、分解反応による変性等をいう。具体的に、不飽和カルボン酸又はその誘導体が結合している部位としては、末端官能基やアルキル鎖部分が考えられ、特に末端カルボン酸、末端水酸基及びポリアルキレンエーテルグリコールセグメントのエーテル結合に対してα位やβ位の炭素が挙げられる。特に、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントのエーテル結合に対してα位に多く結合しているものと推定される。
(1)配合材料
(A)飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマー
飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、通常、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有するソフトセグメントとポリエステルを含有するハードセグメントとからなる、ブロック共重合体である。
また、飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマー中のポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量は、該ポリエステル系エラストマー中の58〜73質量%であることが好ましく、より好ましくは60〜70質量%である。
このソフトセグメントを構成するポリアルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2及び1,3−プロピレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンエーテル)グリコール等が挙げられる。特に好ましいものは、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールである。本発明において、ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、数平均分子量が400〜6,000のものが好ましく、600〜4,000のものがより好ましく、特に1,000〜3,000のものが好適である。なお、ここでいう「数平均分子量」とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されたものである。GPCのキャリブレーションには、英国POLYMERLABORATORIES社のPOLYTETRAHYDROFURANキャリブレーションキットを使用すればよい。
飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、例えば、i)炭素原子数2〜12の脂肪族及び/又は脂環式ジオールと、ii)芳香族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸又はそれらのアルキルエステル、及びiii)数平均分子量が400〜6,000のポリアルキレンエーテルグリコールとを原料とし、エステル化反応又はエステル交換反応により得られたオリゴマーを重縮合させて得ることができる。
炭素原子数2〜12の脂肪族及び/又は脂環式ジオールとしては、ポリエステルの原料、特にポリエステル系熱可塑性エラストマーの原料として通常用いられるものが使用できる。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、中でも1,4−ブタンジオール、エチレングリコールが好ましく、特に1,4−ブタンジオールが好ましい。これらのジオールは、一種又は二種以上の混合物を使用することができる。
芳香族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸としては、ポリエステルの原料、特にポリエステル系熱可塑性エラストマーの原料として一般的に用いられているものが使用でき、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。これらの中では、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく、特にテレフタル酸が好適である。また、これらのジカルボン酸は2種以上を併用してもよい。芳香族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸のアルキルエステルを用いる場合は、上記のジカルボン酸のジメチルエステルやジエチルエステル等が用いられる。好ましいものは、ジメチルテレフタレート及び2,6−ジメチルナフタレートである。
また、上記の成分以外に3官能性のトリオールやトリカルボン酸又はそれらのエステルを少量共重合させてもよく、さらにアジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸又はそのジアルキルエステルも共重合成分として使用できる。
このようなポリエステル系熱可塑性エラストマーの市販品としては、三菱ケミカル株式会社製「プリマロイ」、東洋紡績株式会社製「ペルプレン」、東レ・デュポン株式会社製「ハイトレル」等が挙げられる。
(B)不飽和カルボン酸又はその誘導体
不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の不飽和カルボン酸;例えば、コハク酸2−オクテン−1−イル無水物、コハク酸2−ドデセン−1−イル無水物、コハク酸2−オクタデセン−1−イル無水物、マレイン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、ブロモマレイン酸無水物、ジクロロマレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、1−ブテン−3,4−ジカルボン酸無水物、1−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、exo−3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、endo−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸無水物等の不飽和カルボン酸無水物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、グリシジルメタクリレート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸(2−エチルへキシル)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の不飽和カルボン酸エステル等が挙げられる。この中では、不飽和カルボン酸無水物が好適である。これらの不飽和結合を有する化合物は、変性すべきポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する共重合体や、変性条件に応じて適宜選択すればよく、また二種以上を併用してもよい。この不飽和結合を有する化合物は有機溶剤等に溶解して加えることもできる。
(C)ラジカル発生剤
変性処理に際し、ラジカル反応を行うために用いられるラジカル発生剤としては、例えばt−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチルへキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ターシャリーブチルオキシ)ヘキサン、3,5,5−トリメチルへキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジブチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、過酸化カリウム、過酸化水素等の有機及び無機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(イソブチルアミド)ジハライド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、アゾジ−t−ブタン等のアゾ化合物、及びジクミル等の炭素ラジカル発生剤等が例示できる。これらのラジカル発生剤は、変性処理に用いるポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーの種類や、不飽和カルボン酸又はその誘導体の種類や、変性条件に応じて適宜選択すればよく、また二種以上を併用してもよい。このラジカル発生剤は有機溶剤等に溶解して加えることもできる。また、接着性をさらに向上させるために、ラジカル発生剤だけでなく、変性助剤として、不飽和結合を有する化合物(下記(D))を併用することもできる。
(D)不飽和結合を有する化合物
不飽和結合を有する化合物とは、前記(B)ラジカル発生剤以外の炭素−炭素多重結合を有する化合物のことをいい、具体的には、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、フェニルスチレン、o−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、o−クロロスチレン、o−クロロメチルスチレン等のビニル芳香族単量体等が挙げられる。これらの配合により、変性効率の向上が期待できる。
(2)付加的配合材料(任意成分)
接着剤層を形成するための接着剤には、極性基含有TPC以外にも、任意の成分を配合することができる。具体的には、樹脂成分、ゴム成分、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ガラス繊維等のフィラー、パラフィンオイル等の可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、架橋剤、架橋助剤、着色剤、難燃剤、分散剤、帯電防止剤、防菌剤、蛍光増白剤等の各種添加物を添加することができる。中でも、フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系、芳香族アミン系等の各種酸化防止剤の少なくとも一種を添加することが好ましい。
(3)配合比
極性基含有TPCを構成する各成分の配合割合は、(A)飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、(B)不飽和カルボン酸又はその誘導体が、好ましくは0.01〜30質量部、より好ましくは0.05〜5質量部、更に好ましくは0.1〜2質量部、特に好ましくは0.1〜1質量部の配合比となるものであり、また(C)ラジカル発生剤が、好ましくは0.001〜3質量部、より好ましくは0.005〜0.5質量部、更に好ましくは0.01〜0.2質量部、特に好ましくは0.01〜0.1質量部の配合比となるものである。
極性基含有TPCの赤外吸収スペクトル法による変性量は、下記式A1786/(Ast×r)の値で0.01〜15であることが望ましく、好ましくは、0.03〜2.5であり、より好ましくは、0.1〜2.0であり、特に好ましくは、0.2〜1.8である。
[但し、A1786は、極性基含有TPCの厚さ20μmのフィルムについて測定された、1786cm−1のピーク強度であり、Astは、標準試料(ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量が65質量%である飽和ポリエステル系エラストマー)の厚さ20μmのフィルムについて測定された、規準波数のピーク強度であり、rは、極性基含有TPC中のポリエステルセグメントのモル分率を、上記標準試料中のポリエステルセグメントのモル分率で除した値である。]
極性基含有TPCの赤外吸収スペクトル法による変性量の値を求める方法は、次の通りである。すなわち、厚さ20μmのフィルム状の試料を100℃で15時間減圧乾燥し未反応物を除去し、赤外吸収スペクトルを測定する。得られたスペクトラムから、1786cm−1に現れる酸無水物由来のカルボニル基の伸縮振動による吸収ピーク(1750〜1820cm−1の範囲にある該吸収帯の両側の山裾を結んだ接線をベースラインとする)のピーク高さを算出して「ピーク強度A1786」とする。一方、標準試料(ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量が65質量%である飽和ポリエステル系エラストマー)の厚さ20μmのフィルムについて、同様に赤外吸収スペクトルを測定する。得られたスペクトラムから、規準波数のピーク、例えばベンゼン環を含む芳香族ポリエステル系エラストマーの場合は、872cm−1に現れるベンゼン環のC−Hの面外変角による吸収ピーク(850〜900cm−1の範囲にある該吸収帯の両側の山裾を結んだ接線をベースラインとする)のピーク高さを算出して「ピーク強度Ast」とする。なお、この規準波数のピークについては、ハードセグメント由来のピークであって、変性による影響を受けず、かつ、その近傍に重なり合うような吸収ピークのないものから選択すればよい。これら両ピーク強度から、前記式に従って赤外吸収スペクトル法による変性量を算出する。その際、rとしては、変性量を求める極性基含有TPC中のポリエステルセグメントのモル分率を、上記標準試料中のポリエステルセグメントのモル分率で除した値を使用する。また、各試料のポリエステルセグメントのモル分率mrは、ポリエステルセグメント及びポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの質量分率(w及びw)と両セグメントを構成する単量体単位の分子量(e及びe)とから、次式によって求める。
mr=(w/e)/[(w/e)+(w/e)]
(4)配合方法
極性基含有TPCの合成は、例えば、(A)飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーを、(C)ラジカル発生剤の存在下、(B)不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性することで行われる。この際、成分(A)を溶融物とすると、成分(B)との反応がより効率的に可能となり、十分な変性が実現されるので好ましい。例えば、予備的に、非溶融状態の成分(A)に成分(B)を混合した上で、成分(A)を溶融して成分(B)と反応させる方法も好ましく用いることができる。
また、成分(A)に成分(B)を混合するには、十分な剪断応力を与えることのできる混練機を使用した、いわゆる溶融混練法を選択することが好ましい。溶融混練法に使用する混練機としては、ミキシングロール、シグマ型回転羽根付混練機、バンバリーミキサー、高速二軸連続ミキサー、一軸、二軸、多軸押出機型混練機等の通常の混練機から、任意のものを選ぶことができる。中でも、反応効率が高いことや製造コストが低いことから、二軸押出機が好ましい。溶融混練は、粉状又は粒状の成分(A)、成分(B)及び成分(C)、並びに、必要であれば、成分(D)、前記付加的配合材料(任意成分)として挙げた、その他の配合剤を、所定の配合割合にて、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等を用いて均一に混合した後、行うこともできる。各成分の混練の温度は、成分(A)の熱劣化分解や成分(C)の半減期温度を考慮し、100℃〜300℃の範囲が好ましく、より好ましくは120℃〜280℃の範囲、特に好ましくは150℃〜250℃の範囲である。実用上、最適な混練温度は、成分(A)の融点より20℃高い温度から融点までの温度範囲である。さらに、各成分の混練順序及び方法は、特に限定されるものではなく、成分(A)、成分(B)及び成分(C)と、成分(D)等の付加的配合材料とを一括して混練する方法、成分(A)〜成分(D)の内の一部を混練した後、付加的な配合材料を含めた残りの成分を混練する方法でもよい。ただし、成分(C)を配合する場合は、これを成分(B)及び成分(D)と、同時に添加することが接着性向上の点から好ましい。
接着剤層は、樹脂C等の接着剤以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、カーボンブラック、ラジカル捕捉剤、ゴム、エラストマー、各種充填剤(例えば、シリカ、炭酸カルシウム、クレイ等)、老化防止剤、オイル、可塑剤、発色剤、耐候剤等が挙げられる
(物性)
・接着剤層の引張弾性率
接着剤層は被覆樹脂層よりも引張弾性率が高い層であることが好ましい。接着剤層の引張弾性率は、例えば、接着剤層の形成に用いる接着剤の種類、接着剤層の形成条件や熱履歴(例えば、加熱温度、加熱時間等)等によって制御することができる。
接着剤層の引張弾性率は、例えば下限値は、1MPa以上が好ましく、20MPa以上がより好ましく、50MPa以上がさらに好ましい。引張弾性率が上記下限値以上であることで、ビードワイヤーとの接着性能及びタイヤ耐久性に優れる。
また、接着剤層の引張弾性率の上限値は、乗り心地の観点から、1500MPa以下が好ましく、600MPa以下がより好ましく、400MPa以下がさらに好ましい。
なお、接着剤層の引張弾性率の測定は、前記被覆樹脂層の引張弾性率と同様の方法で行うことができる。
また、接着剤層の引張弾性率をEとし、被覆樹脂層の引張弾性率をEとしたとき、E/Eの値としては、例えば0.5以上10以下が挙げられ、0.7以上7以下が好ましく、0.7以上5以下がより好ましい。E/Eの値が前記範囲であることにより、前記範囲よりも小さい場合に比べてハンドリング性に優れ、前記範囲よりも大きい場合に比べて走行時の耐久性に優れる。
・接着剤層の融点
接着剤層に含まれる樹脂Cの融点は、139℃以上225℃以下が好ましく、139℃以上220℃以下がより好ましい。
融点の下限値が上記の範囲であることで、タイヤ製造時の加熱(例えば加硫)に対する耐熱性に優れる。また、融点が上記範囲であることで、被覆樹脂層に含まれる樹脂Aとの間で近い融点とすることが容易となり、近い融点とすることでより優れた接着性が得られる。
なお、樹脂Cの融点の測定は、前記樹脂Aの融点と同様の方法で行うことができる。
・接着剤層の厚み
接着剤層の平均厚みは、特に制限されないが、走行時の乗り心地及びタイヤの耐久性の観点で、5μm〜500μmであることが好ましく、20μm〜150μmであることがより好ましく、20μm〜100μmであることが更に好ましい。
接着剤層の平均厚みは、ビードワイヤーの長さ方向に対する垂直断面のビデオマイクロスコープ等の顕微鏡による拡大画像を任意の5箇所から取得し、得られた拡大画像から測定される接着剤層の厚みの数平均値とする。各拡大画像における接着剤層の厚みは、最も厚みの小さい部分(ビードワイヤーと接着剤層との間の界面と、接着剤層と被覆樹脂層との間の界面との距離が最小となる部分)で測定される値とする。
また、接着剤層の平均厚みをTとし、被覆樹脂層の平均厚みをTとしたとき、T/Tの値としては、例えば0.1以上0.5以下が挙げられ、0.1以上0.4以下が好ましく、0.1以上0.35以下がより好ましい。T/Tの値が前記範囲であることにより、前記範囲よりも小さい場合に比べて走行時の乗り心地に優れ、前記範囲よりも大きい場合に比べてタイヤの耐久性に優れる。
<タイヤ>
次いで、本発明のタイヤ用ビード部材を一対のビード部に有する、本発明に係るタイヤについて説明する。
[第1の実施形態]
以下、本発明のタイヤの一実施形態として、ランフラットタイヤを例に挙げ、図面に基づき説明する。
図1には、第1の実施形態のタイヤ10のタイヤ幅方向に沿って切断した切断面の片側が示されている。なお、図中矢印TWはタイヤ10の幅方向(タイヤ幅方向)を示し、矢印TRはタイヤ10の径方向(タイヤ径方向)を示す。ここでいうタイヤ幅方向とは、タイヤ10の回転軸と平行な方向を指し、タイヤ軸方向ともいう。また、タイヤ径方向とは、タイヤ10の回転軸と直交する方向をいう。また、符号CLはタイヤ10の赤道(タイヤ赤道)を示している。
また、第1の実施形態では、タイヤ径方向に沿ってタイヤ10の回転軸側を「タイヤ径方向内側」、タイヤ径方向に沿ってタイヤ10の回転軸と反対側を「タイヤ径方向外側」と記載する。一方、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道CL側を「タイヤ幅方向内側」、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道CLと反対側を「タイヤ幅方向外側」と記載する。
図1では、標準リム30(図1では、二点鎖線で示している。)に装着して標準空気圧を充填したときのタイヤ10を示している。ここでいう標準リムとは、JATMA(日本自動車タイヤ協会)のYear Book2017年度版に記載されている、適用サイズにおける標準リムを指す。また、上記標準空気圧とは、JATMAのYear Book2017年度版の最大負荷能力に対応する空気圧である。
なお、以下の説明において、荷重とは下記規格に記載されている適用サイズにおける単輪の最大荷重(最大負荷能力)のことであり、内圧とは下記規格に記載されている単輪の最大荷重(最大負荷能力)に対応する空気圧のことであり、リムとは下記規格に記載されている適用サイズにおける標準リム(または、”Approved Rim”、”Recommended Rim”)のことである。規格は、タイヤが生産又は使用される地域に有効な産業規格によって決められている。例えば、アメリカ合衆国では、”The Tire and Rim Association Inc.のYear Book ”で、欧州では”The European Tire and Rim Technical OrganizationのStandards Manual”で、日本では日本自動車タイヤ協会の“JATMA Year Book”にて規定されている。
なお、図1に示す第1の実施形態のタイヤ10は、偏平率が55以上のタイヤであり、タイヤ断面高さ(タイヤセクションハイト)SHが115mm以上に設定されている。なお、ここでいうセクションハイト(タイヤ断面高さ)SHとは、タイヤ10を標準リム30に組み付けて内圧を標準空気圧とした状態におけるタイヤ外径とリム径との差の1/2の長さを指す。また、第1の実施形態では、タイヤ10の偏平率を55以上で且つタイヤ断面高さSHを115mm以上に設定しているが、本発明はこの構成に限定されない。
図1に示されるように、タイヤ10は、左右一対のビード部12(図1では、片側のビード部12のみ図示)と、一対のビード部12からタイヤ径方向外側へそれぞれ延びる一対のタイヤサイド部14と、一方のタイヤサイド部14から他方のタイヤサイド部14へ延びるトレッド部16と、を有している。なお、タイヤサイド部14は、走行時(ランフラット走行時を含む)にタイヤ10に作用する荷重を負担する。
図1に示されるように、一対のビード部12には、ビードコア18がそれぞれ埋設されている。一対のビードコア18には、カーカス22が跨っている。このカーカス22の端部側はビードコア18に係止されている。第1の実施形態のカーカス22は、端部側がビードコア18周りにタイヤ内側から外側へ折り返されて係止されており、折返し部分22Bの端部22Cがカーカス本体部22Aに接している。なお、第1の実施形態では、カーカス22の端部22Cがタイヤサイド部14に対応する範囲(領域)に配置されているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、カーカス22の端部22Cをトレッド部16に対応する範囲、特に、ベルト層24Aに対応する範囲に配置してもよい。
また、カーカス22は、一方のビードコア18から他方のビードコア18へトロイダル状に延びてタイヤ10の骨格を構成している。
カーカス本体部22Aのタイヤ径方向外側には、複数(第1の実施形態では2層)のベルト層24Aが設けられている。このベルト層24Aのタイヤ径方向外側には、キャップ層24Bが設けられている。このキャップ層24Bは、ベルト層24Aの全体を覆っている。
キャップ層24Bのタイヤ径方向外側には、キャップ層24Bの両端部をそれぞれ覆うように一対のレイヤー層24Cが設けられている。なお、本発明は上記構成に限定されず、キャップ層24Bの片側の端部のみをレイヤー層24Cで覆う構成としてもよく、キャップ層24Bの両端部をタイヤ幅方向に連続する一つのレイヤー層24Cで覆う構成としてもよい。また、タイヤ10の仕様に応じて、キャップ層24B及びレイヤー層24Cを省略してもよい。
また、カーカス22、ベルト層24A、キャップ層24B及びレイヤー層24Cには、従来公知のタイヤ(ランフラットタイヤを含む)で用いる各部材の構造を用いることができる。
ベルト層24A、キャップ層24B及びレイヤー層24Cのタイヤ径方向外側には、トレッド部16が設けられている。このトレッド部16は、走行中に路面に接地する部位であり、トレッド部16の踏面には、タイヤ周方向に延びる周方向溝16Aが複数本形成されている。また、トレッド部16には、タイヤ幅方向に延びる図示しない幅方向溝が形成されている。なお、周方向溝16A及び幅方向溝の形状や本数は、タイヤ10に要求される排水性や操縦安定性等の性能に応じて適宜設定される。
・ビードフィラー
ビード部12には、ビードコア18からタイヤ径方向外側へカーカス22の外面22Oに沿って延びる、樹脂Bを含むビードフィラー20が埋設されている。第1の実施形態では、ビードフィラー20は、カーカス本体部22Aと折返し部分22Bとで囲まれた領域に配置されている。なお、カーカス22の外面22Oは、カーカス本体部22Aにおいてはタイヤ外側の面であり、折返し部分22Bにおいてはタイヤ内側の面である。また、第1の実施形態では、ビードフィラー20のタイヤ径方向外側の端部20Aがタイヤサイド部14に入り込んでいる。また、ビードフィラー20は、タイヤ径方向外側に向けて厚みが減少している。
図1に示されるビードフィラー20の高さBHは、タイヤ断面高さSHの30〜50%の範囲内に設定するのが好ましい。なお、ここでいうビードフィラー20の高さBHとは、タイヤ10を標準リム30に組み付けて内圧を標準空気圧とした状態におけるビードフィラー20のタイヤ径方向外側の端部20Aからビード部12の先端までの高さ(タイヤ径方向に沿った長さ)を指す。ここで、ビードフィラー20の高さBHがタイヤ断面高さSHの30%以上であることにより、例えばランフラット走行時の耐久性が十分に確保できる。また、ビードフィラー20の高さBHがタイヤ断面高さSHの50%以下であることにより、乗り心地性に優れる。
また、第1の実施形態では、ビードフィラー20の端部20Aをタイヤ10の最大幅位置よりもタイヤ径方向内側に配置している。なお、ここでいうタイヤ10の最大幅位置とは、タイヤ10のタイヤ幅方向に沿って最も幅が広い位置を指している。
・ビードコア
ビードコア18は、図2に示されるように、並んで配置された複数のビードワイヤー1と、このビードワイヤー1を被覆し樹脂Aを含む被覆樹脂層3とを有する。
なお、上記構成において「並んで配置」とは、タイヤに適用する際に必要な長さに切断したビード部材中で、複数のビードワイヤー1同士が交差しない位置関係にあることを意味する。
ここで、図2に示されるビードコア18が取り得る形態について、複数の例を挙げて説明する。
図3の(A)は、ビードコア18の一部をビードワイヤー1の長さ方向に対して垂直に切断したときの断面を模式的に表す図である。図3(A)では、3本のビードワイヤー1に直に接するよう被覆樹脂層3が設けられている。また、1本のビードワイヤー1を熱溶着しながら、横、縦に段済みし、作製してもよい。
また、ビードコア18が、ビードワイヤー1と被覆樹脂層3との間に配置される接着剤層2を有していてもよい。なお、接着剤層2は前述の樹脂Cを含む接着樹脂層であることが好ましい。
図3(B)に示すビードコア18の一部は、3本のビードワイヤー1の表面に接着剤層2がそれぞれ設けられ、さらにその表面に被覆樹脂層3が設けられている。
さらに、ビードワイヤー1と被覆樹脂層3との間に配置される接着剤層2は、複数本のビードワイヤー1を含むよう連結した態様であってもよい。
図3(C)に示すビードコア18の一部は、3本のビードワイヤー1を含むように連結した接着剤層2が設けられた態様であり、さらに連結した接着剤層2の表面に被覆樹脂層3が設けられている。
なお、図3(A)〜(C)ではビードワイヤー1が並列に3本並べられた態様を示しているが、その本数は2本以下であっても、4本以上であってもよい。
また、図2に示されるビードコア18は、図3(A)〜(C)のいずれかに示される3本のビードワイヤー1と被覆樹脂層3と(図3(B)、(C)ではさらに接着剤層2と)が3層積層された形態となっている。ただし、ビードコア18は、1層で使用しても、2層以上を積層して使用してもよい。その場合、被覆樹脂間溶着することが好ましい。

さらに、ビードコア18が取り得る形態について図3(A)〜(C)を挙げて説明したが、本発明はこの構成に限定されない。
ビードコア18を作製する方法は、特に制限されない。例えば、図3(B)に示すビードコア18を作製する場合であれば、ビードワイヤー1と、接着剤層2を形成する材料(好ましくは樹脂Cを含む材料)と、被覆樹脂層3を形成する樹脂Aを含む材料と、を用いて押出成形法により作製することができる。この場合、接着剤層2の断面の形状は、押出成形に用いる口金の形状を変更する等の方法によって調節することができる。
・サイド補強層
タイヤサイド部14には、カーカス22のタイヤ幅方向内側にタイヤサイド部14を補強するサイド補強層の一例としてのサイド補強ゴム26が配設されている。このサイド補強ゴム26は、タイヤ10の内圧がパンクなどで減少した場合に車両及び乗員の重量を支えた状態で所定の距離を走行させるための補強ゴムである。
サイド補強ゴム26は、カーカス22の内面22Iに沿ってビードコア18側からトレッド部16側へタイヤ径方向に延びている。また、サイド補強ゴム26は、ビードコア18側及びトレッド部16側に向かうにつれて厚みが減少する形状、例えば、略三日月形状とされている。なお、ここでいうサイド補強ゴム26の厚みとは、タイヤ10を標準リム30に組み付けて内圧を標準空気圧とした状態におけるカーカス22の法線に沿った長さを指している。
また、サイド補強ゴム26は、トレッド部16側の端部26Aがカーカス22(カーカス本体部22A)を挟んでトレッド部16と重なっている。具体的には、サイド補強ゴム26の端部26Aがベルト層24Aと重なっている。一方、サイド補強ゴム26は、ビードコア18側の端部26Bがカーカス22(カーカス本体部22A)を挟んでビードフィラー20と重なっている。
サイド補強ゴム26は、破断伸びが130〜190%の範囲内に設定されることが好ましい。なお、ここでいう「破断伸び」とは、JIS K6251:2010年(ダンベル状3号形試験片使用)に基づいて測定された破断伸び(%)を指す。第1の実施形態では、サイド補強ゴム26を1種類のゴム材で構成しているが、本発明はこの構成に限定されず、サイド補強ゴム26複数種類のゴム材で構成してもよい。
また、第1の実施形態では、サイド補強層の一例としてゴムを主成分とするサイド補強ゴム26を用いているが、本発明はこの構成に限定されず、サイド補強層を他の材料で形成してもよい。例えば、熱可塑性樹脂等を主成分とするサイド補強層を形成してもよい。なお、サイド補強ゴム26は、他にフィラー、短繊維、樹脂等の材料を含んでもよい。
また、ビードフィラー20のカーカス22を挟んでサイド補強ゴム26と重なる重なり部分28の中点(つまりカーカス22の延在方向に沿ってビードフィラー20の端部20A及びサイド補強ゴム26の端部26B間の中点)Qにおけるサイド補強ゴム26の厚みGBは、サイド補強ゴム26の最大厚みGAの40〜80%の範囲内に設定されることが好ましい。このように、サイド補強ゴム26の厚みGBを最大厚みGAの40〜80%以下の厚みとすることで、仮に、タイヤサイド部14にバックリング現象が発生した場合であっても、サイド補強ゴム26に破損(一例として、割れ)が生じるのを抑制できる。なお、第1の実施形態では、カーカス22の最大幅位置におけるサイド補強ゴム26の厚みが最大厚みGAとなっているが、本発明はこの構成に限定されない。また、ここでいうカーカス22の最大幅位置とは、カーカス22のタイヤ幅方向に沿って最も幅が広い位置を指す。
タイヤ10を標準リム30に組み付けて内圧を標準空気圧とした状態におけるサイド補強ゴム26の端部26Bからビード部12の先端までの高さLHは、ビードフィラー20の高さBHの50〜80%の範囲内の高さに設定されることが好ましい。ここで、高さLHが高さBHの80%以下であることにより、ランフラット走行時の耐久性が確保され易い。また、高さLHが高さBHの50%以上であることにより、乗り心地性に優れる。
第1の実施形態のタイヤ10では、タイヤ断面高さSHが高いタイヤ10を対象としているため、リムガード(リムプロテクション)を設けていないが、本発明はこの構成に限定されず、リムガードを設けてもよい。
タイヤ10の内面には、一方のビード部12から他方のビード部12にわたって図示しないインナーライナーが設けられている。第1の実施形態のタイヤ10では、インナーライナーの主成分を、一例として、ブチルゴムとしているが、本発明はこの構成に限定されず、インナーライナーの主成分を他のゴム材や樹脂としてもよい。
また、前記の実施形態では、図1に示されるように、サイド補強ゴム26を1種類のゴム(又は樹脂)で構成しているが、本発明はこの構成に限定されず、サイド補強ゴム26を複数種類のゴム(又は樹脂)で構成してもよい。例えば、サイド補強ゴム26をタイヤ径方向に異なる複数種類のゴム(又は樹脂)を重ねた構成としてもよく、サイド補強ゴム26をタイヤ幅方向に異なる複数種類のゴム(又は樹脂)を重ねた構成としてもよい。
・材質
図1に示されるタイヤ10は、主に弾性材料で構成される。つまり、ビード部12におけるカーカス22の周囲の領域、タイヤサイド部14におけるカーカス22のタイヤ幅方向外側の領域、サイド補強層(サイド補強ゴム26)、トレッド部16におけるベルト層24A、キャップ層24B及びレイヤー層24C以外の領域、等が弾性材料で構成される。
弾性材料としては、例えばゴム材料(いわゆるゴムタイヤ)、樹脂材料(いわゆる樹脂タイヤ)等が挙げられる。
特に、図1に示されるタイヤ10においては、上記の各部がゴム材料で構成されたゴムタイヤであることが好ましい。
(弾性材料:ゴム材料)
ゴム材料は、ゴム(ゴム成分)を少なくとも含んでいればよく、本発明の効果を損なわない範囲で、添加剤等の他の成分を含んでもよい。ただし、前記ゴム材料中におけるゴム(ゴム成分)の含有量は、ゴム材料の総量に対して、50質量%以上が好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
第1の実施形態に係るタイヤに用いるゴム成分としては、特に限定はなく、従来より公知のゴム配合に使用される天然ゴム及び各種合成ゴムを、単独もしくは2種以上混合して用いることができる。例えば、下記に示す様なゴム、もしくはこれらの2種以上のゴムブレンドを使用することができる。
上記天然ゴムとしては、シートゴムでもブロックゴムでもよく、RSS#1〜#5の総てを用いることができる。
上記合成ゴムとしては、各種ジエン系合成ゴムやジエン系共重合体ゴム及び特殊ゴムや変性ゴム等を使用できる。具体的には、例えば、ポリブタジエン(BR)、ブタジエンと芳香族ビニル化合物との共重合体(例えばSBR、NBRなど)、ブタジエンと他のジエン系化合物との共重合体等のブタジエン系重合体;ポリイソプレン(IR)、イソプレンと芳香族ビニル化合物との共重合体、イソプレンと他のジエン系化合物との共重合体等のイソプレン系重合体;クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR);エチレン−プロピレン系共重合体ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン系共重合体ゴム(EPDM)及びこれらの任意のブレンド物等が挙げられる。
また、第1の実施形態に係るタイヤに用いるゴム材料は、目的に応じてゴムに添加物等の他の成分を加えてもよい。
添加物としては、例えば、カーボンブラック等の補強材、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、脂肪酸又はその塩、金属酸化物、プロセスオイル、老化防止剤等が挙げられ、これらを適宜配合することができる。
ゴム材料で形成されるタイヤは、含まれるゴムが未加硫の状態である未加硫のゴム材料をタイヤの形状に成形し、加熱によってゴムを加硫することで得られる。
・タイヤの製造
第1の実施形態のタイヤ10の製造方法としては、公知のタイヤ成形ドラムの外周に、ゴム材料からなるインナーライナー(不図示)、ビードコア18、ビードフィラー20、コードを弾性材料(ゴム材料、樹脂材料等)で被覆したカーカス22、弾性材料(ゴム材料、樹脂材料等)で形成されるタイヤサイド部14におけるカーカス22のタイヤ幅方向外側の領域、及びサイド補強ゴム26からなる未加硫のタイヤケースを形成する。
タイヤケースのトレッド部16にベルト層24Aを形成する方法としては、例えば、前記タイヤケースを回転させながらリールに巻き取ったワイヤー等の部材を巻き出し、ワイヤーをトレッド部16に所定の回数巻き付けてベルト層24Aを形成してもよい。なお、ワイヤーが樹脂で被覆されている場合、加熱及び加圧を行って被覆されている樹脂をトレッド部16に溶着させてもよい。
最後に、ベルト層24Aの外周面に、未加硫のトレッドを貼り付け、生タイヤが得られる。このようにして製造された生タイヤは、加硫成形モールドで加硫成形され、タイヤ10が完成する。
[第2の実施形態]
次いで、本発明に係るタイヤの別の実施形態について、図面に基づき説明する。
図4には、第2の実施形態のタイヤ110のタイヤ幅方向に沿って切断した切断面の片側が示されている。なお、図中矢印TWはタイヤ110の幅方向(タイヤ幅方向)を示し、矢印TRはタイヤ110の径方向(タイヤ径方向)を示す。
図4に示されるように、タイヤ110は、左右一対のビード部112(図4では、片側のビード部112のみ図示)と、一対のビード部112からタイヤ径方向外側へそれぞれ延びる一対のタイヤサイド部114と、一方のタイヤサイド部114から他方のタイヤサイド部114へ延びるトレッド部116と、を有している。
図4に示すタイヤ110は、タイヤ骨格体に相当するタイヤケース140を備えている。タイヤケース140は、弾性材料(好ましくは樹脂材料)を用いて形成され、円環状の形状を有している。タイヤケース140は、ビード部112とタイヤサイド部114とトレッド部116とを含んで構成されている。
また、タイヤサイド部114及びビード部112のタイヤ幅方向外側、ビード部112のタイヤ径方向内側、及びビード部112のタイヤ幅方向内側の一部には保護層122が設けられている。タイヤケース140は、ビード部112、タイヤサイド部114及びトレッド部116が同じ工程で一体的に形成されたものであっても、それぞれ異なる工程で形成された部材を組み合わせたものであってもよいが、生産効率の観点からは一体的に形成されたものであることが好ましい。
また、ビード部112には、ビードコア118からタイヤ径方向外側へ保護層122に沿って延びるビードフィラー120が埋設されている。ビードフィラー120は、タイヤ径方向外側に向けて厚みが減少している。
ビード部112は、リム(図示せず)に接触する部位であり、タイヤ周方向に沿って延びる円環状のビードコア118が埋設されている。ビードコア118が取り得る形態については、前述の第1の実施形態において説明した形態と同様である。
保護層122は、タイヤケース140とリムとの間の気密性を高める等の目的で設けられるものであり、タイヤケース140よりも軟質で且つ耐候性が高いゴム材等の材料で構成されているが、省略してもよい。
トレッド部116は、タイヤ110の接地面に相当する部位であり、ベルト層124A(補強部材、ベルト部材)が設けられている。さらに、ベルト層124Aの上にはクッションゴム124Bを介してトレッド130が設けられている。ベルト層124A、クッションゴム124B、及びトレッド130の材質は特に制限されず、タイヤの製造に一般的に用いられる材料(金属ワイヤー、有機樹脂ワイヤー等のワイヤー、樹脂、ゴム材料等)から選択できる。
・材質
タイヤケース140(タイヤ骨格体)は、弾性材料で形成される。つまり、タイヤ骨格体としては、弾性材料としてのゴム材料で形成される態様(いわゆるゴムタイヤ用のタイヤ骨格体)、弾性材料として樹脂材料で形成される態様(いわゆる樹脂タイヤ用のタイヤ骨格体)等が挙げられる。
特に、図4に示されるタイヤ110においては、上記の各部が樹脂材料で構成された樹脂タイヤであることが好ましい。
(弾性材料:樹脂材料)
樹脂材料は、樹脂(樹脂成分)を少なくとも含んでいればよく、本発明の効果を損なわない範囲で、添加剤等の他の成分を含んでもよい。ただし、前記樹脂材料中における樹脂(樹脂成分)の含有量は、樹脂材料の総量に対して、50質量%以上が好ましく、90質量%以上が更に好ましい。タイヤ骨格体は、例えば樹脂材料を用いて形成することができる。
タイヤ骨格体に含まれる樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、及び熱硬化性樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール系熱硬化性樹脂、ユリア系熱硬化性樹脂、メラミン系熱硬化性樹脂、エポキシ系熱硬化性樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂、オレフィン系熱可塑性樹脂、ポリウレタン系熱可塑性樹脂、塩化ビニル系熱可塑性樹脂、ポリスチレン系熱可塑性樹脂等を例示することができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂、及びオレフィン系熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ポリアミド系熱可塑性樹脂及びオレフィン系熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418に規定されるポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が挙げられる。
なお、走行時に必要とされる弾性、製造時の成形性等を考慮すると、タイヤ骨格体を形成する樹脂材料としては、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーの少なくとも一方を用いることが好ましく、走行時の乗り心地の観点から、熱可塑性エラストマーを含むことがより好ましい。中でも、ポリアミド系熱可塑性エラストマー及びポリエステル系熱可塑性エラストマーの少なくとも一方を含むことがさらに好ましい。
−他の成分−
弾性材料(ゴム材料又は樹脂材料)は、所望に応じて、ゴム又は樹脂以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、樹脂、ゴム、各種充填剤(例えば、シリカ、炭酸カルシウム、クレイ)、老化防止剤、オイル、可塑剤、着色剤、耐候剤、補強材等が挙げられる。
−弾性材料の物性−
弾性材料として樹脂材料を用いる場合(つまり樹脂タイヤ用のタイヤ骨格体の場合)、樹脂材料に含まれる樹脂の融点は、例えば100℃〜350℃程度が挙げられ、タイヤの耐久性及び生産性の観点から、100℃〜250℃程度が好ましく、120℃〜250℃が更に好ましい。
弾性材料(タイヤ骨格体)自体のJIS K7113:1995に規定される引張弾性率は、50MPa〜1000MPaが好ましく、50MPa〜800MPaが更に好ましく、50MPa〜700MPaが特に好ましい。弾性材料の引張弾性率が、50MPa〜1000MPaであると、タイヤ骨格の形状を保持しつつ、リム組みを効率的に行なうことができる。
弾性材料(タイヤ骨格体)自体のJIS K7113(1995)に規定される引張強さは、通常、15MPa〜70MPa程度であり、17MPa〜60MPaが好ましく、20MPa〜55MPaが更に好ましい。
弾性材料(タイヤ骨格体)自体のJIS K7113(1995)に規定される引張降伏強さは、5MPa以上が好ましく、5MPa〜20MPaが更に好ましく、5MPa〜17MPaが特に好ましい。弾性材料の引張降伏強さが、5MPa以上であると、走行時等にタイヤにかかる荷重に対する変形に耐えることができる。
弾性材料(タイヤ骨格体)自体のJIS K7113(1995)に規定される引張降伏伸びは、10%以上が好ましく、10%〜70%が更に好ましく、15%〜60%が特に好ましい。弾性材料の引張降伏伸びが、10%以上であると、弾性領域が大きく、リム組み性を良好にすることができる。
弾性材料(タイヤ骨格体)自体のJIS K7113(1995)に規定される引張破断伸びは、50%以上が好ましく、100%以上が更に好ましく、150%以上が特に好ましく、200%以上が最も好ましい。弾性材料の引張破断伸びが、50%以上であると、リム組み性が良好であり、衝突に対して破壊し難くすることができる。
弾性材料(タイヤ骨格体)自体のISO 75−2又はASTM D648に規定される荷重たわみ温度(0.45MPa荷重時)は、50℃以上が好ましく、50℃〜150℃が更に好ましく、50℃〜130℃が特に好ましい。弾性材料の荷重たわみ温度が、50℃以上であると、タイヤの製造において加硫を行う場合であってもタイヤ骨格体の変形を抑制するこができる。
・タイヤの製造
タイヤケース140の作製方法は、特に制限されない。例えば、タイヤケース140を赤道面(図4中のCLで示される面)で分割した状態のタイヤケース半体をそれぞれ射出成形法等により作製し、タイヤケース半体同士を赤道面で接合することで作製してもよい。
タイヤケース140のトレッド部116にベルト層124Aを形成する方法としては、例えば、タイヤケース140を回転させながらリールに巻き取ったワイヤー等の部材を巻き出し、ワイヤーをトレッド部116に所定の回数巻き付けてベルト層124Aを形成してもよい。なお、ワイヤーが樹脂で被覆されている場合、加熱及び加圧を行って被覆されている樹脂をトレッド部116に溶着させてもよい。
タイヤケース140のビード部112にビードフィラー120及びビードコア118を形成する方法としては、例えば、予め形成したビードフィラー120及びビードコア118用の円環状の部材を、公知の方法でビード部112に埋め込むことで形成してもよい。
以上、第1及び第2の実施形態を挙げて本発明を説明したが、これらの実施形態は一例であり、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加えて実施することができる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。なお、特に断りのない限り「部」は質量基準を表す。
[実施例、比較例]
<ビードコアの作製>
上述の第1の実施形態で示した図3(B)に示す態様のビードコアを作製した。
まず、ビードワイヤーとしてモノフィラメント(平均直径φ1.25mmのモノフィラメント、スチール製、強力:2700N、伸度:7%)を用い、このビードワイヤーに、加熱溶融した表1に示す接着樹脂(樹脂C)を付着させて接着樹脂層となる層を形成した。
次いで、接着樹脂層となる層が形成されたビードワイヤーが3本並んで配置されるよう金型に設置し、接着樹脂層となる層の外周に、押出機にて押し出した表1に示す被覆樹脂(樹脂A)を付着させて被覆し、冷却した。なお、押出条件は、ビードワイヤーの温度を200℃、被覆樹脂(樹脂A)の温度を240℃、押出速度を30m/分とした。ビードワイヤーが3本並んだ図3(B)に示す部材を熱風で溶着しながら、巻回しすることで、9本のビードワイヤーの外周が、接着樹脂層を介して被覆樹脂層で被覆された構造を有するビードコアを作製した。
ビードコアにおける接着樹脂層の厚み(最小部の平均厚み)は50μm、被覆樹脂層の厚み(最小部の平均厚み)は200μmであった。また、隣り合うビードワイヤー間の平均距離は200μmであった。
<ビード部材の作製>
上述の第1の実施形態で示した図1及び図2に示す態様のビード部材(ビードコア及びビードフィラーからなる部材)を作製した。
予めビードフィラー形状を加工した金型に前記より得たビードコアをセットし、射出成形機にてビードフィラー用の樹脂(樹脂B)を射出することで、ビードコアの外周にビードフィラーが直に接触して配置された構造を有するビード部材を作製した。なお、金型温度は80〜110℃、成形温度は200〜270℃とした。
<ビード部材をビード部として備えるタイヤの作製>
上述の第1の実施形態で示した図1及び図2に示す態様のタイヤ(ランフラットタイヤ)を、前記より得たビード部材を一対のビード部に用いて作製した。
前記より得たビード部材、及びポリエチレンテレフタレート製のプライコードからなるカーカスを準備し、これに天然ゴム(NR)とスチレンブタジエンゴム(SBR)との混合ゴム材料を用いたタイヤサイド部(カーカスのタイヤ幅方向外側の領域)、サイド補強ゴム、及びトレッド部、並びに撚り線のベルト層を用いて、生タイヤを作製した。
作製した生タイヤについて、比較例1〜4、実施例1〜4は150℃、25分、比較例5、実施例5〜7は170℃、20分の条件で加熱(ゴムの加硫)を行った。
得られたタイヤは、タイヤサイズ225/40R18、トレッド部の厚み10mmであった。
〔物性の測定〕
被覆樹脂層(樹脂A)、ビードフィラー(樹脂B)、及び接着樹脂層(樹脂C)の融点は、示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry;DSC)により得られる曲線(DSC曲線)において、吸熱ピークが得られる温度を指す。融点の測定は、示差走査熱量計DSCを用いて、JIS K 7121:2012に準拠して行なった。測定は、TAインスツルメント(株)の「DSC Q100」を用いて、掃引速度10℃/minで行った。
被覆樹脂層及びビードフィラーの吸水率は、ISO62(1999)に従って測定した。
被覆樹脂層及びビードフィラーの引張弾性率の測定は、JIS K7113:1995に準拠して行った。詳細には、島津製作所社製、島津オートグラフAGS−J(5KN)を用い、引張速度を100mm/minに設定し、引張弾性率の測定を行った。
なお、測定試料は、被覆樹脂層又はビードフィラーと同じ材料を用いて別途準備した。具体的には、射出成形機(日精樹脂工業製、NEX−50)にてシリンダー温度180℃〜260℃、金型温度50℃〜110℃で、JIS3号の形状を成形し測定試料とした。もしくは110mm×110mm、厚さt=2mmの平板を成形し、(株)ダンベル製、スーパーダンベル(登録商標)にてJIS3号形状に打ち抜いて測定試料を作製した。
被覆樹脂層及びビードフィラーのシャルピー衝撃強さは、JIS K7111−1:2012年に定める手法にのっとり、シャルピー衝撃試験機(安田精機社製、製品名:141型)を用いて、試験片(ノッチ加工あり)の温度23℃の条件で測定した。
詳細には、公称振り子エネルギー(ひょう量)を4J、ハンマー持上げ角度を150°の条件で、サンプルに衝突した後に戻った角度を測定することで、衝突前後の角度の差から消費されたエネルギー量(エネルギー吸収量)を算出した。
なお、測定試料は前記の成形条件にて、JIS K7139:2009のA1の形状で成形した。
〔ランフラット走行性〕
ISO規格に基づいた室内ドラム試験において、内圧0kPaで速度80km/hでランフラット走行させた。タイヤ故障または支持体故障により走行が不可能になるまでの距離を測定した。なお、300km走行しても故障が生じない場合は、その時点で試験終了とした。
−基準−
A(○):100km以上走行可能
B(△):80km以上100km未満走行可能
C(×):80km未満で走行不可能
〔リム組み性〕
空気入りタイヤとして、タイヤサイズが225/40R18、リムはタイヤサイズに対応する標準リム7.5J×18を準備し、1人の作業者に3回リム組み作業を実施させ、リム組み作業時における「割れ(ビード部材における割れ)」の発生の有無を判定した。
〔インサート溶着性〕
25mm×70mm、t=3mmの1次成形品を被覆樹脂の材料(樹脂A)にて射出成形で作製した。次いで、可動部に1次成形品をインサートし、ビードフィラーの材料(樹脂B)にて融点+40℃で2次射出成形を行い、サンプルを成形した。なお、2次成形のサンプル形状は、30mm×70mm、t=3mmで1次成形品と2次成形品の接着面積は、25mm×12.5mmとした。
得られたサンプルを島津製作所社製、島津オートグラフAGS−J(5KN)を用い、引張試験機にて100mm/minにて引張試験を行い、破断界面の観察を行った。
−基準−
A(○):溶着が被覆樹脂中、ビードフィラーの樹脂中で破断(つまり被覆樹脂とビードフィラー樹脂の界面以外の領域で破断)したもの
B(△):溶着が部分的に被覆樹脂中、ビードフィラーの樹脂中で破断(つまり部分的に被覆樹脂とビードフィラー樹脂の界面以外の領域で破断)したもの
C(×):溶着が被覆樹脂とビードフィラー樹脂の界面で破断したもの
Figure 0006936688
表中の成分は、次のとおりである。
(接着樹脂層)
・PA66:東レ(株)社製、ナイロン66、製品名「アミラン CM1017」、融点265℃
・QE060:三井化学社製、無水マレイン酸変性プロピレン、「アドマー QE060」、融点139℃
・QF500:三井化学社製、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、「アドマー QF500」、融点165℃
・GQ730:三菱ケミカル社製、無水マレイン酸変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー、「プリマロイ−AP GQ730」、融点200℃
(被覆樹脂層、及びビードフィラー)
・PA6:宇部興産社製、ナイロン6、製品名「UBE ナイロン 1013B」、融点225℃
・PA11:アルケマ社製、ナイロン11、製品名「BMNO TLD」、融点188℃
・PA12:宇部興産社製、ナイロン12、製品名「UBESTA 3024U」、融点178℃
・PA66:上記と同様である。
・XPA9048:宇部興産社製、製品名「UBESTA XPA9048」、融点155℃
・XPA9055:宇部興産社製、製品名「UBESTA XPA9055」、融点164℃
・XPA9068:宇部興産社製、製品名「UBESTA XPA9068」、融点175℃
・ハイトレル2571:東レ・デュポン社製、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、「ハイトレル2571」、融点225℃
・ハイトレル5557:東レ・デュポン社製、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、「ハイトレル5557」、融点208℃
・ハイトレル6347:東レ・デュポン社製、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、「ハイトレル6347」、融点215℃
・ハイトレル7247:東レ・デュポン社製、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、「ハイトレル7247」、融点216℃
・70R53:アルケマ社製、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、製品名「ペバックス70R53」、融点183℃
表1に示した評価結果から分かるように、被覆樹脂層とビードフィラーとを有し、ビードフィラーに含まれる樹脂Bの融点を被覆樹脂層に含まれる樹脂Aの融点よりも高く調整した本実施例は、比較例に比べ、ランフラット走行性(走行耐久性)に優れていた。また、本実施例では、エアシール性及びインサート溶着性が良好であり、リム組み時の破断も抑制されていた。
1 ビードワイヤー
2 接着剤層
3 被覆樹脂層
10 タイヤ(ランフラットタイヤ)
12 ビード部
14 タイヤサイド部
16 トレッド部
18 ビードコア
20、120 ビードフィラー
20A 端部
22 カーカス
22A 本体部
22B 折返し部分
22C 端部
22I 内面
22O 外面
26 サイド補強ゴム
26A 端部(トレッド部側の端部)
26B 端部(ビードコア側の端部)
30 標準リム
110 タイヤ
112 ビード部
114 タイヤサイド部
116 トレッド部
118 ビードコア
140 タイヤケース(タイヤ骨格体)
122 保護層
124A ベルト層
124B クッションゴム
130 トレッド
CL タイヤ赤道面
Q 中点

Claims (12)

  1. ビードワイヤー、及び前記ビードワイヤーに直に接触するか若しくは他の層を介して接触して配置された被覆樹脂層を有するビードコアと、前記被覆樹脂層に直に接触して配置されたビードフィラーと、を有し、
    前記被覆樹脂層は、樹脂Aを含み、
    前記ビードフィラーは、樹脂Bを含み、
    前記ビードフィラーの引張弾性率が前記被覆樹脂層の引張弾性率よりも高く、
    前記樹脂Bの融点が前記樹脂Aの融点よりも高いタイヤ用ビード部材。
  2. 前記樹脂Bの融点は、170℃以上225℃以下である請求項1に記載のタイヤ用ビード部材。
  3. 前記被覆樹脂層及び前記ビードフィラーのシャルピー衝撃強さが5kJ/m以上である請求項1又は請求項2に記載のタイヤ用ビード部材。
  4. 前記ビードフィラーの引張弾性率が、400MPa以上1700MPa以下であり、
    前記被覆樹脂層の引張弾性率が、137MPa以上1000MPa以下である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のタイヤ用ビード部材。
  5. 前記樹脂A及び前記樹脂Bは、互いに樹脂の主鎖を構成する構成単位中に共通する骨格を有する樹脂である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のタイヤ用ビード部材。
  6. 前記樹脂A及び前記樹脂Bは、それぞれ独立に、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーである請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のタイヤ用ビード部材。
  7. 前記樹脂A及び前記樹脂Bの少なくとも一方が熱可塑性エラストマーである請求項に記載のタイヤ用ビード部材。
  8. 前記樹脂A及び前記樹脂Bの少なくとも一方が、ポリアミド系熱可塑性エラストマー又はポリエステル系熱可塑性エラストマーである請求項に記載のタイヤ用ビード部材。
  9. 前記ビードワイヤーと前記被覆樹脂層との間には、樹脂Cを含む接着樹脂層が配置されている請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のタイヤ用ビード部材。
  10. 前記樹脂Cが、極性官能基を有する熱可塑性樹脂又は極性官能基を有する熱可塑性エラストマーである請求項に記載のタイヤ用ビード部材。
  11. 前記樹脂Cの融点が139℃以上220℃以下である請求項又は請求項10に記載のタイヤ用ビード部材。
  12. 一対のビード部に、請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載のタイヤ用ビード部材を有するタイヤ。
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