JP6935752B2 - 色素増感型太陽電池用の増感色素、及び当該増感色素を備える色素増感型太陽電池。 - Google Patents

色素増感型太陽電池用の増感色素、及び当該増感色素を備える色素増感型太陽電池。 Download PDF

Info

Publication number
JP6935752B2
JP6935752B2 JP2018007403A JP2018007403A JP6935752B2 JP 6935752 B2 JP6935752 B2 JP 6935752B2 JP 2018007403 A JP2018007403 A JP 2018007403A JP 2018007403 A JP2018007403 A JP 2018007403A JP 6935752 B2 JP6935752 B2 JP 6935752B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
dye
groups
peg
sensitizing dye
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2018007403A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2019125764A (ja
Inventor
勝也 土本
勝也 土本
パイディ・イエラ・レディ
マリードゥ・スリニバス
ハリナダ・チャリィ
鈴木 晃
晃 鈴木
充浩 安達
充浩 安達
理恵 渡辺
理恵 渡辺
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Aisin Corp
Original Assignee
Aisin Seiki Co Ltd
Aisin Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Aisin Seiki Co Ltd, Aisin Corp filed Critical Aisin Seiki Co Ltd
Priority to JP2018007403A priority Critical patent/JP6935752B2/ja
Publication of JP2019125764A publication Critical patent/JP2019125764A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6935752B2 publication Critical patent/JP6935752B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E10/00Energy generation through renewable energy sources
    • Y02E10/50Photovoltaic [PV] energy
    • Y02E10/542Dye sensitized solar cells

Landscapes

  • Hybrid Cells (AREA)
  • Photovoltaic Devices (AREA)

Description

本発明は、色素増感型太陽電池用の増感色素、及び当該増感色素を備える色素増感型太陽電池に関する。詳細には、特徴的構造を有するポルフィリン系の色素増感型太陽電池用の増感色素、及び、当該増感色素を備える色素増感型太陽電池に関する。
色素増感型太陽電池とは、光エネルギーを直接電力に変換できる太陽電池の一種であり、簡便な構造を有し、材料及び製造コストが低いことから次世代型太陽電池として注目されている。色素増感型太陽電池は、透明導電体上に二酸化チタン等を焼成させて形成した半導体電極に増感色素を吸着させた光極と、光極に対して所定の間隔をもって設けられた対極と、光極と対極との間に封入された電解質層から構成される。入射した光により電池内の増感色素が励起状態となり、電子を放出する。放出された電子は半導体電極を介して光極に移行し、光極から外部に取り出される。電子は外部回路を経て対極に移動し、電解質層中の酸化還元系分子を介して増感色素が再生する。このサイクルを繰り返すことにより太陽光エネルギーが電気エネルギーに変換される。
色素増感型太陽電池の実用化に際して、光電変換効率、長波長領域の太陽光の有効利用、及び、長期安定性の向上等の観点から各種要素技術の開発が進められ、現在までに種々の新規増感色素が報告されている。例えば、ポルフィリンが自然界における光合成に重要な役割を果たすことから、従来から多くのポルフィリン系化合物が色素増感型太陽電池の増感色素として研究開発されてきた。なかでも、ドナー−π共役系−アプセプター(以下、「D-π-A」と称する場合がある)型構造を持つポルフィリン系化合物の一つである、下記一般式(6)に示すYD-2が優れた光起電特性を示すことが報告されている(非特許文献1を参照)。当該YD-2は、740 nmまでの波長の光の吸収を示し、ヨウ素系電解液であるヨウ化物/三ヨウ化物レドックス電解液を使用する色素増感型太陽電池において太陽光の照射光強度から発電に至る総合効率で11 %の変換効率を示したことが報告されている。
Figure 0006935752
一般式(6)
また、上記したYD-2構造において、ポルフィリン環の5位及び15位に導入したフェニル基のメタ位に置換したt-ブチル基に代えて、オルト位にn-オクチロキシ基を導入した、一般式(7)に示すYD2-o-C8が報告されている(非特許文献2を参照)。当該YD2-o-C8は、コバルト系電解液であるCo (II/III)トリス(ビピリジル)ベースのレドックス電解液を使用する色素増感型太陽電池において12 %の変換効率を示したことが報告されている。
Figure 0006935752
一般式(7)
T. Bessho他著、"Highly Efficient Mesoscopic Dye-Sensitized Solar Cells Based on Donor-Acceptor-Substituted Porphyrins"、Angewandte Chemie International Edition、2010年、Vol.49、p6646-6649 A. Yella他著、"Porphyrin-Sensitized Solar Cells with Cobalt (II/III)-Based Redox Electrolyte Exceed 12 Percent Efficiency"、SCIENCE、2011年、Vol.334、p629-633
しかしながら、非特許文献1に記載のYD-2は、非特許文献2にも記載されるように、太陽電池(以下、「セル」と称する場合がある)において、太陽光の照射により放出される励起電子が電極に移行する前に、電解質層中のカチオンと接触することで再結合し失活する等の電荷再結合が多く、内部損失により変換効率をこれ以上向上させることが困難である、との問題がある。
非特許文献2に記載のYD2-o-C8は、コバルト系電解液の使用により優れた光電変換特性を発揮することが報告されているが、本発明者らの研究により、一般的なヨウ素系電解液の使用では、変換効率が3.1 %とYD-2の光電変換特性よりも劣ることが確認されている。この要因としては、YD2-o-C8に導入したo-オクチロキシ基と電解液のコバルトイオンの相互作用により電荷再結合抑制効果を発揮されているものであり、ヨウ素系電解液のヨウ素イオンの使用ではそのような効果が得られないことが推定される。したがって、YD2-o-C8がその光電変換特性を最大限に発揮するためにはコバルト系電解液の使用が前提となるが、コバルト系電解液は一般的なヨウ素系電解液と比較すると高価であることから製造及び運用コストが増大する、との問題がある。
また、非特許文献1に記載のYD-2及び非特許文献2に記載のYD2-o-C8の色素自体の吸光特性評価では、何れも実質的な長波長側の光吸収端は670 nm程度であることを考えると、可視光域の長波長側領域の太陽光を吸収することができず、セルにより得られる電流値が低くなる要因となっている。
したがって、従来の増感色素は、実用的な色素増感型太陽電池の構築という市場の要求を十分に満足させるものではなかった。そこで、色素増感型太陽電池の性能の更なる向上に寄与できる増感色素、特に、色素増感型太陽電池の増感色素として利用した際に内部損失の低減効果を発揮し電池性能向上に寄与し得る優れた光電変換特性を有する増感色素が依然として求められている。また、太陽光の吸収可能領域の拡張、特には、長波長側領域を含めた太陽光の有効利用を図れる増感色素が求められている。
そこで、本発明は、優れた光電変換特性を有する増感色素の提供を目的とする。特には、本発明は、色素増感型太陽電池の増感色素として利用した際に内部損失の低減効果を発揮し色素増感型太陽電池の性能の更なる向上に寄与できる増感色素の提供を目的とする。また、長波長側領域を含めた広範な領域の太陽光を吸収でき、色素増感型太陽電池の性能の更なる向上に寄与できる増感色素の提供を目的とする。更に、当該増感色素を備えた優れた電池性能を有する色素増感型太陽電池の構築を目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ドナー−π共役系−アプセプター(以下、「D-π-A」と称する場合がある)型構造を持つポルフィリン系化合物において、ポルフィリン環に、ポリエーテル型の置換基をオルト位又はメタ位に有するフェニル基を導入した。当該化合物を色素増感型太陽電池の増感色素として用いた場合に、太陽光の照射により当該増感色素から放出された励起電子は効率よく電極に注入され、内部損失を低減でき電池性能を大幅に向上できることを見出した。更に、ポルフィリン環とアプセプター側の安息香酸基の間にベンゾチアジアゾール基を導入した。当該化合物は、長波長側領域に吸収可能波長領域が拡張し、太陽光を更に有効利用可能な増感色素として機能し、当該化合物を色素増感型太陽電池の増感色素として用いた場合に電池性能を大幅に向上できることを見出した。本発明者らはこれらの知見に基づき本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の〔1〕〜〔6〕に関する。
〔1〕下記一般式(1)で示される色素増感型太陽電池用の増感色素。
Figure 0006935752
一般式(1)
〔一般式(1)において、Mは金属原子である、
R1及びR2は独立的に炭素原子数1〜15の直鎖若しくは分岐炭化水素基であり、R3、R4、R5及びR6は水素原子である、又は
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は独立的に炭素原子数1〜3の直鎖若しくは分岐炭化水素基である、
R7、R8、R9及びR10は独立的にポリエーテル基であり、R11、R12、R13及びR14は独立的に水素原子である、又は、
R7、R8、R9及びR10は独立的に水素原子であり、R11、R12、R13及びR14は独立的にポリエーテル基である、そして、
Aは有していても有していなくともよく、有する場合には、Aはベンゾチアジアゾール基であり、前記ベンゾチアジアゾール基のベンゼン環部がエチニル基と安息香酸基のベンゼン環部と結合している。〕
〔2〕前記Mが、亜鉛である上記〔1〕の増感色素。
〔3〕前記R7、R8、R9及びR10は独立的にメトキシエチルオキシ基(-O-CH2-CH2-O-CH3基)であり、前記R11、R12、R13及びR14は独立的に水素原子である、又は、
前記R7、R8、R9及びR10は独立的に水素原子であり、前記R11、R12、R13及びR14は独立的にメトキシエチルオキシ基(-O-CH2-CH2-O-CH3基)である上記〔1〕又は〔2〕の増感色素。
〔4〕下記一般式(2)又は(3)で示される上記〔3〕の増感色素。
Figure 0006935752
一般式(2)
Figure 0006935752
一般式(3)

〔5〕前記Aが、前記ベンゾチアジアゾール基である上記〔1〕〜〔3〕の何れかの増感色素。
〔6〕下記一般式(4)又は(5)の何れかで示される上記〔5〕に記載の増感色素。
Figure 0006935752

一般式(4)

Figure 0006935752
一般式(5)
上記〔1〕〜〔6〕の構成によれば、太陽光の吸光波長域が広く、効率良く太陽光を吸光できる優れた吸光特性を有し、色素増感型太陽電池用色素として優れた性能を有する増感色素を提供することができる。当該増感色素は色素増感型太陽電池の増感色素として好適に利用することができ、優れた光電変換特性を発揮できる。当該増感色素を色素増感型太陽電池の増感色素として用いた場合には、太陽光の照射により当該増感色素から放出された励起電子が効率よく電極に注入され、内部損失を低減する効果を発揮することができ、顕著な電池性能の向上に寄与することができる。また、〔5〕及び〔6〕の構成によれば、長波長側領域に吸収可能波長領域が拡張した増感色素を提供できる。これにより、太陽光を更に有効利用可能な増感色素として機能することができ、当該増感色素を色素増感型太陽電池の増感色素として用いた場合に電池性能を大幅に向上できる。
〔7〕上記〔1〕〜〔6〕の何れかの増感色素を備える色素増感型太陽電池。
上記〔7〕の構成によれば、優れた太陽光の吸光特性を有する上記〔1〕〜〔6〕の何れかの構成の増感色素を備えた色素増感型太陽電池を提供できる。上記〔1〕〜〔6〕の構成の増感色素は、優れた光電変換特性を有すると共に色素増感型太陽電電池の内部損失を低減させる効果をも有することから、優れた電池性能を発揮することができる色素増感型太陽電池を提供することができる。
実施例1に示す色素増感型太陽電池用の増感色素PEG YD-2の合成スキームを示す図であり、PEG YD-2合成中間体である化合物1の合成スキームを示す。 実施例1に示す色素増感型太陽電池用の増感色素PEG YD-2の合成スキームを示す図であり、化合物1からPEG YD-2の合成スキームを示す。 実施例1に示す色素増感型太陽電池用の増感色素PEG YD-2の合成において、合成中間体である化合物1の1H-NMRスペクトルを示す図であり、CDCl3中での化合物1の1H NMRスペクトルである。 実施例1において合成された色素増感型太陽電池用の増感色素PEG YD-2の1H-NMRスペクトルを示す図であり、[CDCl3 +ピリジン-d5]中でのPEG YD-2の1H NMRスペクトルである。 実施例1において合成された色素増感型太陽電池用の増感色素PEG YD-2の紫外可視吸光スペクトルを示す図であり、THF中でのPEG YD-2の紫外可視吸収スペクトルの既知増感色素YD-2との比較である。 実施例1において合成された色素増感型太陽電池用の増感色素PEG YD-2のHPLCによる純度測定結果を示す図である。 実施例2に示す色素増感型太陽電池用の増感色素PEG YD-3の合成スキームを示す図である。 実施例2において合成された色素増感型太陽電池用の増感色素PEG YD-3の1H-NMRスペクトルを示す図であり、[CDCl3 +ピリジン-d5]中でのPEG YD-3の1H NMRスペクトルである。 実施例2において合成された色素増感型太陽電池用の増感色素PEG YD-3のHPLCによる純度測定結果を示す図である。 実施例1に示す色素増感型太陽電池用の増感色素PEG YD-4の合成スキームを示す図であり、PEG YD-4合成中間体である化合物14の合成スキームを示す。 実施例3に示す色素増感型太陽電池用の増感色素PEG YD-4の合成スキームを示す図であり、化合物14からPEG YD-4の合成スキームを示す。 実施例3に示す色素増感型太陽電池用の増感色素PEG YD-4の合成において、合成中間体である化合物14の1H-NMRスペクトルを示す図であり、DMSO -d6中での化合物14の1H-NMRスペクトルである。 実施例3に示す色素増感型太陽電池用の増感色素PEG YD-4の合成において、合成中間体である化合物14の質量分光測定結果を示す図である。 実施例3において合成された色素増感型太陽電池用の増感色素PEG YD-4の1H-NMRスペクトルを示す図であり、[CDCl3 +ピリジン-d5]中でのPEG YD-4の1H NMRスペクトルである。 実施例3において合成された色素増感型太陽電池用の増感色素PEG YD-4の紫外可視吸光スペクトルを示す図であり、THF中でのPEG YD-4の紫外可視吸収スペクトルの既知増感色素YD-2との比較である。 実施例3において合成された色素増感型太陽電池用の増感色素PEG YD-4のHPLCによる純度測定結果を示す図である。 実施例4に示す色素増感型太陽電池用の増感色素PEG YD-5の合成スキームを示す図である。 実施例4において合成された色素増感型太陽電池用の増感色素PEG YD-5の1H-NMRスペクトルを示す図であり、[CDCl3 +ピリジン-d5]中でのPEG YD-5の1H NMRスペクトルである。 実施例4において合成された色素増感型太陽電池用の増感色素PEG YD-5の紫外可視吸光スペクトルを示す図であり、THF中でのPEG YD-5の紫外可視吸収スペクトルの既知増感色素YD-2との比較である。 実施例4において合成された色素増感型太陽電池用の増感色素PEG YD-5のHPLCによる純度測定結果を示す図である。 実施例により合成された色素増感型太陽電池用の増感色素の吸光特性を評価した実施例5の結果を示す図である。 実施例6で作製した色素増感型太陽電池の分解概略図であり、色素増感型太陽電池の一例を示す。 実施例により合成された増感色素を利用した色素増感型太陽電池のIPCEを評価した実施例6の結果を示す図である。 実施例により合成された色素増感型太陽電池用の増感色素を利用した色素増感型太陽電池の太陽電池効率を評価した実施例6の結果を示す図である。
本発明は、特徴的構造を有するD-π-A型構造を持つポルフィリン系の色素増感型太陽電池用の増感色素(以下、「増感色素」と称する場合がある。)、及び、当該増感色素を備える色素増感型太陽電池である。以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明は、下記の実施形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらは全て本発明の範囲内に包含される。
〔増感色素〕
本実施形態の増感色素は、D-π-A型構造を持つポルフィリン系化合物であり、ポルフィリン環に、ポリエーテル型の置換基をオルト位又はメタ位に有するフェニル基が導入されている。
本実施形態の増感色素は、下記一般式(1)で示される。
Figure 0006935752
一般式(1)
上記一般式(1)において、Mは金属原子である。金属原子はポルフィリン環内部に配位できるものである限り、特に制限はない。好ましくは2価以上、特に好ましくは2価又は3価の金属原子である。具体的には、Zn、Cu、La、Lu、Y、In、Cd、Co、Mo、Mg、Al、Ru、Ni、Mn、Fe、Pd、Ag、Pt、Au、Er、Si、Ti、V、CrやRh等が挙げられ、好ましくはZnである。このように構成することにより、本実施形態の増感色素はポルフィリン環に金属原子が配位した構造をとる。
上記一般式(1)において、R1及びR2は独立的に炭素原子数1〜15の直鎖若しくは分岐炭化水素基であり、R3、R4、R5及びR6は水素原子である、又は、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は独立的に炭素原子数1〜3の直鎖若しくは分岐炭化水素基である。
R1及びR2は独立的に炭素原子数1〜15の直鎖若しくは分岐炭化水素基であり、R3、R4、R5及びR6は水素原子である場合には、好ましくは、R1及びR2は炭素原子数1〜15の直鎖若しくは分岐飽和炭化水素基、例えば、炭素原子数1〜15の直鎖若しくは分岐アルキル基であり、特に、好ましくは直鎖アルキル基である。
直鎖又は分岐アルキル基としては、これらに限定するものではないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、s-ペンチル基、2-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、2-エチルプロビル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、ネオヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、s-ヘプチル基、t-ヘプチル基、2,2-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、1-エチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、1-プロピルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、t-オクチル基、ネオオクチル基、2,2-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、4,4-ジメチルヘキシル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、1-プロピルペンチル基、2-プロピルペンチル基、3-プロピルペンチル基、n-ノニル基、イソノニル基、s-ノニル基、t-ノニル基、ネオノニル基、2,2-ジメチルヘプチル基、3,3-ジメチルヘプチル基、4,4-ジメチルヘプチル基、5,5-ジメチルヘプチル基、2-メチルオクチル基、3-メチルオクチル基、4-メチルオクチル基、5-メチルオクチル基、6-メチルオクチル基、1-エチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、3-エチルヘプチル基、4-エチルヘプチル基、5-エチルヘプチル基、1-プロピルヘキシル基、2-プロピルヘキシル基、3-プロピルヘキシル基、1-ブチルペンチル基、n-デシル基、イソデシル基、s-デシル基、t-デシル基、ネオデシル基、2,2-ジメチルオクチル基、3,3-ジメチルオクチル基、4,4-ジメチルオクチル基、5,5-ジメチルオクチル基、6,6-ジメチルオクチル基、2-メチルノニル基、3-メチルノニル基、4-メチルノニル基、5-メチルノニル基、6-メチルノニル基、7-メチルノニル基、1-エチルオクチル基、2-エチルオクチル基、3-エチルオクチル基、4-エチルオクチル基、5-エチルオクチル基、6-エチルオクチル基、1-プロピルヘプチル基、2-プロピルヘプチル基、3-プロピルヘプチル基、4-プロピルヘプチル基、1-ブチルヘキシル基、2-ブチルヘキシル基、n-ウンデシル基、イソウンデシル基、s-デシル基、t-デシル基、ネオウンデシル基、n-ドデシル基、イソドデシル基、s-ドデシル基、t-ドデシル基、ネオドデシル基、n-トリデシル基、イソトリデシル基、s-トリデシル基、t-トリデシル基、ネオトリデシル基、n-テトラデシル基、イソテトラデシル基、s-テトラデシル基、t-テトラデシル基、ネオテトラデシル基、n-ペンタデシル基、イソペンタデシル基、s-ペンタデシル基、t-ペンタデシル基、ネオペンタデシル基等を利用することができる。なお、“n”は、“normal”の略、“s”は、“sec”及び“secondery”の略、“t”は、“tert”及び“tertiary”の略である。
R1及びR2は、特に好ましくは、ヘキシル基である。R1及びR2は同じであっても異なっていてもよく、好ましくは同じである。したがって、本実施形態の増感色素は、好ましくはドナー基としてビス(4-ヘキシルフェニル)アミノ基を有するものを例示することができる。
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は独立的に炭素原子数1〜3の直鎖若しくは分岐炭化水素基である場合には、好ましくは、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は炭素原子数1〜3の直鎖若しくは分岐飽和炭化水素基、例えば、炭素原子数1〜3の直鎖若しくは分岐アルキル基であり、特に、好ましくは直鎖アルキル基である。
直鎖又は分岐アルキル基としては、これらに限定するものではないが、メチル基、エチル基、プロピル基、及び、イソプロピル基等を利用することができる。R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、特に好ましくは、メチル基である。したがって、本実施形態の増感色素は、好ましくはドナー基としてビス(3,4,5-トリメチルフェニル)アミノ基を有するものを例示することができる。
上記一般式(1)において、R7、R8、R9及びR10は独立的にポリエーテル基であり、R11、R12、R13及びR14は独立的に水素原子である、又は、R7、R8、R9及びR10は独立的に水素原子であり、R11、R12、R13及びR14は独立的にポリエーテル基である。
R7、R8、R9及びR10は独立的にポリエーテル基であり、R11、R12、R13及びR14は独立的に水素原子である場合、ポリエーテル基は、好ましくは、オキシアルキレン基の1〜10の繰り返し単位を有し、末端にアルコキシ基を有する。例えば、ポリエーテル基は-(O-Ra)n-O-Rbで示すことができ、Raは、炭素原子数1〜8の直鎖又は分岐の炭化水素基、好ましくは直鎖又は分岐アルキレン基であり、繰り返し単位nは1〜10である。各繰り返し単位におけるRaは同一であってもよいし、炭素鎖長が異なっていてもよい。Rbは、炭素原子数1〜8の直鎖又は分岐炭化水素基、好ましくは直鎖又は分岐アルキル基である。
直鎖アルキレン基としては、これらに限定するものではないが、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基等が例示される。更には、メチル基やエチル基、プロピル基等の直鎖又は分岐アルキル基の側鎖を有する分岐アルキレン基を例示でき、具体的には、これらに限定するものではないが、メチルエチレン基、エチルメチレン基、1-メチルプロピレン基、2-メチルプロピレン基、エチルエチレン基、プロピルメチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、1-メチルブチレン基、2-メチルブチレン基、1-エチルプロピレン基、2-エチルプロピレン基、プロピルエチレン基、ブチルメチレン基、1,2-ジメチルプロピレン基、1,3-ジメチルプロピレン基、1,1-ジメチルプロピレン基、2,2-ジメチルプロピレン基、1-メチルペンチレン基、2-メチルペンチレン基、3-メチルペンチレン基、1-エチルブチレン基、2-エチルブチレン基、1-プロピルプロピレン基、2-プロピルプロピレン基、ブチルエチレン基、ペンチルメチレン基、1,2-ジメチルブチレン基、2,3-ジメチルブチレン基、1,3-ジメチルブチレン基、1,4-ジメチルブチレン基、1,1-ジメチルブチレン基、2,2-ジメチルブチレン基、1-エチル-2-メチルプロピレン基、1-エチル-3-メチルプロピレン基、2-エチル-3-メチルプロピレン基、1-メチル-1-エチルプロピレン基、2-メチル-2-エチルプロピレン基、1,1-ジエチルエチレン基、1,2-ジエチルエチレン基、1-プロピル-2-メチルエチレン基、1-メチル-1-プロピルエチレン基、1-メチルへキシレン基、2-メチルへキシレン基、3-メチルへキシレン基、1-エチルペンチレン基、2-エチルペンチレン基、3-エチルペンチレン基、1-プロピルブチレン基、2-プロピルブチレン基、1-ブチルプロピレン基、2-ブチルプロピレン基、ペンチルエチレン基、ヘキシルメチレン基、1,2-ジメチルペンチレン基、1,3-ジメチルペンチレン基、1,4-ジメチルペンチレン基、1,5-ジメチルペンチレン基、2,3-ジメチルペンチレン基、2,4-ジメチルペンチレン基、1,1-ジメチルペンチレン基、2,2-ジメチルペンチレン基、3,3-ジメチルペンチレン基、1-メチルへプチレン基、2-メチルへプチレン基、3-メチルへプチレン基、4-メチルへプチレン基、1-エチルへキシレン基、2-エチルへキシレン基、3-エチルへキシレン基、1-プロピルペンチレン基、2-プロピルペンチレン基、3-プロピルペンチレン基、1-ブチルブチレン基、2-ブチルブチレン基、1-ペンチルプロピレン基、2-ペンチルプロピレン基、1-ヘキシルエチレン基、ヘプチルメチレン基、1,2-ジメチルへキシレン基、1,3-ジメチルへキシレン基、1,4-ジメチルへキシレン基、1,5-ジメチルへキシレン基、1,6-ジメチルへキシレン基、2,3-ジメチルへキシレン基、2,4-ジメチルへキシレン基、2,5-ジメチルへキシレン基、2,6-ジメチルへキシレン基、3,4-ジメチルへキシレン基、1,1-ジメチルへキシレン基、2,2-ジメチルへキシレン基、3,3-ジメチルへキシレン基等が例示される。アルキル基としては、上記したものが例示される。
ポリエーテル基は、具体的には、これらに限定するものではないが、メトキシエチルオキシ基等の-(O-C2H4)n-O-CH3基、メトキシメチルオキシ基等の-(O-CH2)n-O-CH3基、メトキシプロピルオキシ基等の-(O-C3H6)n-O-CH3基、メトキシブチルオキシ基等の-(O-C4H8)n-O-CH3基、メトキシペンチルオキシ基等の-(O-C5H10)n-O-CH3基、メトキシヘキシルオキシ基等の-(O-C6H12)n-O-CH3基、メトキシヘプチルオキシ基等の-(O-C7H14)n-O-CH3基、メトキシオクチルオキシ基等の-(O-C8H16)n-O-CH3基、エトキシメチルオキシ基等の-(O-CH2)n-O-C2H5基、エトキシエチルオキシ基等の-(O-C2H4-)n-O-C2H5基、エトキシプロピルオキシ基等の-(O-C3H6)n-O-C2H5基、エトキシブチルオキシ基等の-(O-C4H8)n-O-C2H5基、エトキシペンチルオキシ基等の-(O-C5H10)n-O-C2H5基、エトキシヘキシルオキシ基等の-(O-C6H12)n-O-C2H5基、エトキシヘプチルオキシ基等の-(O-C7H14)n-O-C2H5基、エトキシオクチルオキシ基等の-(O-C8H16)n-O-C2H5基、プロポキシメチルオキシ基等の-(O-CH2)n-O-C3H7基、プロポキシエチルオキシ基等の-(O-C2H4)n-O-C3H7基、プロポキシプロピルオキシ基等の-(O-C3H6)n-O-C3H7基、プロポキシブチルオキシ基等の-(O-C4H8)n-O-C3H7基、プロポキシペンチルオキシ基等の-(O-C5H10)n-O-C3H7基、プロポキシヘキシルオキシ基等の-(O-C6H12)n-O-C3H7基、プロポキシヘプチルオキシ基等の-(O-C7H14)n-O-C3H7基、プロポキシオクチルオキシ基等の-(O-C8H16)n-O-C3H7基、ブトキシメチルオキシ基等の-(O-CH2)n-O-C4H9基、ブトキシエチルオキシ基等の-(O-C2CH4)n-O-C4H9基、ブトキシプロピルオキシ基等の-(O-C3H6)n-O-C4H9基、ブトキシブチルオキシ基等の-(O-C4H8)n-O-C4H9基、ブトキシペンチルオキシ基等の-(O-C5H10)n-O-C4H9基、ブトキシヘキシルオキシ基等の-(O-C6H12)n-O-C4H9基、ブトキシヘプチルオキシ基等の-(O-C7H14)n-O-C4H9基、ブトキシオクチルオキシ基等の-(O-C8H16)n-O-C4H9基、ペントキシメチルオキシ基等の-(O-CH2)n-O-C5H11基、ペントキシエチルオキシ基等の-(O-C2H4)n-O-C5H11基、ペントキシプロピルオキシ基等の-(O-C3H6)n-O-C5H11基、ペントキシブチルオキシ基等の-(O-C4H8)n-O-C5H11基、ペントキシペンチルオキシ基等の-(O-C5H10)n-O-C5H11基、ペントキシヘキシルオキシ基等の-(O-C6H12)n-O-C5H11基、ペントキシヘプチルオキシ基等の-(O-C7H14)n-O-C5H11基、ペントキシオクチルオキシ基等の-(O-C8H16)n-O-C5H11基、ヘキソキシメチルオキシ基等の-(O-CH2)n-O-C6H13基、ヘキソキシエチルオキシ基等の-(O-C2H4-)n-O-C6H13基、ヘキソキシプロピルオキシ基等の-(O-C3H6)n-O-C6H13基、ヘキソキシブチルオキシ基等の-(O-C4H8)n-O-C6H13基、ヘキソキシペンチルオキシ基等の-(O-C5H10)n-O-C6H13基、ヘキソキシヘキシルオキシ基等の-(O-C6H12)n-O-C6H13基、ヘキソキシヘプチルオキシ基等の-(O-C7H14)n-O-C6H13基、ヘキソキシオクチルオキシ基等の-(O-C8H16)n-O-C6H13基、ヘプトキシメチルオキシ基等の-(O-CH2)n-O-C7H15基、ヘプトキシエチルオキシ基等の-(O-C2H4)n-O-C7H15基、ヘプトキシプロピルオキシ基等の-(O-C3H6)n-O-C7H15基、ヘプトキシブチルオキシ基等の-(O-C4H8)n-O-C7H15基、ヘプトキシペンチルオキシ基等の-(O-C5H10)n-O-C7H15基、ヘプトキシヘキシルオキシ基等の-(O-C6H12)n-O-C7H15基、ヘプトキシヘプチルオキシ基等の-(O-C7H14)n-O-C7H15基、ヘプトキシオクチルオキシ基等の-(O-C8H16)n-O-C7H15基、オクトキシメチルオキシ基等の-(O-CH2)n-O-C8H17基、オクトキシエチルオキシ基等の-(O-C2H4)n-O-C8H16基、オクトキシプロピルオキシ基等の-(O-C3H6)n-O-C8H16基、オクトキシブチルオキシ基等の-(O-C4H8)n-O-C8H17基、オクトキシペンチルオキシ基等の-(O-C5H10)n-O-C8H17基、オクトキシヘキシルオキシ基等の-(O-C6H12)n-O-C8H17基、オクトキシヘプチルオキシ基等の-(O-C7H14)n-O-C8H17基、オクトキシオクチルオキシ基等の-(O-C8H16)n-O-C8H17基等が例示される。更には、メチル基やエチル基、プロピル基等の側鎖を有するものを例示でき、具体的には、これらに限定するものではないが、-(O-CH2)n-O-CH(CH3)2基、-(O-CH2)n-O-C(CH3)3基、-(O-CH2)n-O-CH2-CH(CH3)2基、-(O-CH2)n-O-CH(CH3)-C2H5基、-(O-C2H4)n-O-CH(CH3)2基、-(O-C2H4)n-O-C(CH3)3基、-(O-C2H4)n-O-CH2-CH(CH3)2基、-(O-C2H4)n-O-CH(CH3)-C2H5基、-(O-C3H6)n-O-CH(CH3)2基、-(O-C3H6)n-O-C(CH3)3基、-(O-C3H6)n-O-CH2-CH(CH3)2基、-(O-C3H6)n-O-CH(CH3)- C2H5基、-(O-C4H8)n-O-CH(CH3)2基、-(O-C4H8)n-O-C(CH3)3基、-(O-C4H8)n-O-CH2-CH(CH3)2基、-(O-C4H8)n-O-CH(CH3)-C2H5基、-(O-CH(CH3))n-O-CH(CH3)2基、-(O-CH(CH3))n-O-C(CH3)3基、-(O-CH(CH3))n-O-CH2-CH(CH3)2基、-(O-CH(CH3))n-O-CH(CH3)-C2H5基、-(O-CH(CH3)-CH2)n-O-CH(CH3)2基、-(O-CH(CH3)-CH2)n-O-C(CH3)3基、-(O-CH(CH3)-CH2)n-O-CH2-CH(CH3)2基、-(O-CH2-CH(CH)3)n-O-CH(CH3)2基、-(O-CH2-CH(CH3))n-O-C(CH3)3基、-(O-CH2-CH(CH)3)n-O-CH2-CH(CH3)2基、-(O-CH2-CH(CH3))n-O-CH(CH3)-C2H5基、-(O-CH(CH3)-C2H4)n-O-CH(CH3)2基、-(O-CH(CH3)-C2H4)n-O-C(CH3)3基、-(O-CH(CH3)-C2H4)n-O-CH2-CH(CH3)2基、-(O-CH(CH3)-C2H4)n-O-CH(CH3)-C2H5基、-(O-CH2-CH(CH3)-CH2)n-O-CH(CH3)2基、-(O-CH2-CH(CH3)-CH2)n-O-C(CH3)3基、-(O-CH2-CH(CH3)-CH2)n-O-CH2-CH(CH3)2基、-(O-CH2-CH(CH3)-CH2)n-O-CH(CH3)-C2H5基、-(O-C2H4-CH(CH3))n-O-CH(CH3)2基、-(O-C2H4-CH(CH3))n-O-C(CH3)3基、-(O--C2H4-CH(CH3))n-O-CH2-CH(CH3)2基、-(O-C2H4-CH(CH3))n-O-CH(CH3)-C2H5基、-(O-C(CH3)2-CH2)n-O-CH(CH3)2基、-(O-C(CH3)2-CH2)n-O-C(CH3)3基、-(O-C(CH3)2-CH2)n-O-CH2-CH(CH3)2基、-(O-C(CH3)2-CH2)n-O-CH(CH3)- C2H5基、-(O-CH2-C(CH3)2)n-O-CH(CH3)2基、-(O-CH2-C(CH3)2)n-O-C(CH3)3基、-(O-CH2-C(CH3)2)n-O-CH2-CH(CH3)2基、-(O-CH2-C(CH3)2)n-O-CH(CH3)-C2H5基、-(O-CH(CH3)-CH(CH3))n-O-CH(CH3)2基、-(O-CH(CH3)-CH(CH3))n-O-C(CH3)3基、-(O-CH(CH3)-CH(CH3))n-O-CH2-CH(CH3)2基、
-(O-CH(CH3)-CH(CH3))n-O-CH(CH3)-C2H5基、-(O-CH(C2H5)-CH2)n-O-CH(CH3)2基、-(O-CH(C2H5)-CH2)n-O-C(CH3)3基、-(O-CH(C2H5)-CH2)n-O-CH2-CH(CH3)2基、-(O-CH(C2H5)-CH2)n-O-CH(CH3)-C2H5基、-(O-CH2-CH(C2H5))n-O-CH(CH3)2基、-(O-CH2-CH(C2H5))n-O-C(CH3)3基、-(O-CH2-CH(C2H5))n-O-CH2-CH(CH3)2基、-(O-CH2-CH(C2H5))n-O-CH(CH3)-C2H5基、-(O-CH(C3H7))n-O-CH(CH3)2基、-(O-CH(C3H7))n-O-C(CH3)3基、-(O-CH(C3H7))n-O-CH2-CH(CH3)2基、-(O-CH(C3H7)n-O-CH(CH3)-C2H5基等が例示される。特に好ましくは、メトキシエチルオキシ基である。R7、R8、R9及びR10は、同じであっても異なっていてもよく、好ましくは同じである。したがって、アクセプター側のポルフィリン環の5位及び15位に、2,6-ジメトキシエチルオキシフェニル基(ポリエーテル基:オルト位)が導入された構造をとる。
R7、R8、R9及びR10は独立的に水素原子であり、R11、R12、R13及びR14は独立的にポリエーテル基である場合のポリエーテル基については上記した通りであり、特に好ましくは、メトキシエチルオキシ基である。R11、R12、R13及びR14は、同じであっても異なっていてもよく、好ましくは同じである。したがって、アクセプター側のポルフィリン環の5位及び15位に、3,5-ジメトキシエチルオキシフェニル基(ポリエーテル基:メタ位)が導入された構造をとる。
一般式(1)において、Aは有していても有していなくともよい。Aを有する場合には、Aはベンゾチアジアゾール基であり、当該ベンゾチアジアゾール基のベンゼン環部(ベンゾチアジアゾール基の4位、5位、6位、及び、7位の任意の2つの位置)でエチニル基と安息香酸基のベンゼン環部(安息香酸基の2位、3位、4位、5位、及び、6位の任意の1つの位置)と結合している。好ましくは、2,1,3-ベンゾチアジアゾール基の4位及び7位でそれぞれエチニル基と安息香酸基の4位と結合している。
〔増感色素の好適例〕
本実施形態の増感色素の好適例は、下記一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)、又は、一般式(5)で示される。明細書中、一般式(2)の増感色素を「PEG YD-2」と、一般式(3)の増感色素を「PEG YD-3」と、一般式(4)の増感色素を「PEG YD-4」と、一般式(5)の増感色素を「PEG YD-5」と称する場合がある。しかしながら、本実施形態の増感色素はこれらに限定されるものではない。
Figure 0006935752
一般式(2)
Figure 0006935752
一般式(3)
Figure 0006935752
一般式(4)
Figure 0006935752
一般式(5)
〔増感色素の特性〕
本実施形態の増感色素は、ドナー-π共役系-アプセプター型のポルフィリン系の増感色素が有する優れた光電変換特性を保持する。更に、上記した特徴的構造を有することで、励起電子の再結合を妨げ内部損失を低減できる効果をも有し、色素増感型太陽電池の増感色素として電池性能の向上に寄与できる。また、上記した特徴的構造を有することで、光吸収端が長波長側に拡張され広範な領域の太陽光を吸収でき、色素増感型太陽電池の性能の更なる向上に寄与できる。以下、本実施形態の増感色素の特徴的構造とそれに起因すると考えられる有利な特性につき、詳細に説明する。
本実施形態の増感色素は、上記〔先行技術〕の項で説明した非特許文献1に記載のYD-2等のD-π-A型のポルフィリン系の増感色素が有する優れた光電変換特性を保持する。D-π-A型のポルフィリン系の増感色素は、一分子中に電子供与性を示すドナー基と電子受容性を示すアプセプター基を有し、両者がπ電子系で連結されたものである。強力な電子供与性を示すビス(アルキル置換フェニル)アミノ基をドナー基として導入することにより、電極への電荷注入効率の向上に寄与することができ、太陽電池の性能を向上させることができる。また、ポルフィリン環とアクセプターである安息香酸基のベンゼン環がエチニル基により結合されるものであり、これによりπ共役系が延長され、増感色素の吸光特性を向上に寄与することができ、太陽電池の性能を向上させることができる。
本実施形態の増感色素は、ポルフィリン環の5位及び15位に、2,6-ジメトシキエチルオキシフェニル基や3,5-ジメトシキエチルオキシフェニル基等のポリエーテル型の置換基が導入されたフェニル基が結合されている。かかるポリエーテル型の置換基の導入は、色素増感型太陽電池において、太陽光の照射により放出される励起電子の電極に移行する前における電解質層中のカチオンとの再結合による失活や、光極から電解質層へ電子が流れる逆電子移動が生じることによる光の照射と無関係な逆電流の発生、電解質層中において色素に電子を受け渡す電解質の移動を妨げるイオン移動抵抗の発生等に起因する内部損失を低減することができる。これにより、高いIPCE及び太陽電池効率を実現でき太陽電池の性能を向上させることができる。また、かかる内部損失低減効果は、当該技術分野で汎用され、かつ、安価であるヨウ素系電解液を使用した場合においても発揮することができ、太陽電池性能のみならず経済面でも優れている。
本実施形態の増感色素は、ポルフィリン環とアクセプター基である安息香酸基の間にベンゾチアジアゾール基を導入したものであってもよい。かかるベンゾチアジアゾール基の導入によるπ共役系の伸長により、光吸収端が長波長側に拡張され広範な領域の太陽光を吸収でき、色素増感型太陽電池の性能の更なる向上に寄与できる。ここで、π共役系の伸長は、吸収波長域が拡張され光電流値が増加する一方で、電圧低下を引き起こすことが知られていた。しかしながら、ベンゾチアオジアゾールの導入により、光吸収端を30 nm程度長波長側に拡張することで広帯域の太陽光を有効利用できると共に、高効率な光電変換が可能となり、色素増感型太陽電池の性能の更なる向上に寄与できる。
〔増感色素の合成方法〕
本実施形態の増感色素は、下記の実施例1(PEG YD-2)、実施例2(PEG YD-3)、実施例3(PEG YD-4)、及び、実施例4(PEG YD-5)に記載の合成方法を参照して容易に合成することができる。なお、実施例1〜4に記載の本発明の色素の合成方法の一例を示すものであり、これに限定するものではなく、適宜他の方法を用いて合成することができる。
また、反応化合物や試薬を適宜変更することにより、PEG YD-2、PEG YD-3、PEG YD-4、及びPEG YD-5とは、ポルフィリン環の5位及び15位に導入されたフェニル基を置換するポリエーテル基の鎖長、分岐の有無、及び、置換位置、並びに、エーテル結合の数等、また、ポルフィリン環にドナー基として導入されたビスフェニルアミノ基のフェニル基を置換する炭化水素基の鎖長、分岐の有無、置換位置、及び、置換数等が異なる増感色素を合成することができる。例えば、PEG YD-2において、PEG YD-2合成の中間体である図1に示す化合物1の合成において、工程(a)の出発物質であるメトキシエタノールAを他のグリコールエーテル類等に適宜変更することができ、また、図2のスキーム1の工程5で添加されるビス(4-ヘキシルフェニル)アミン7のヘキシル基を他のアルキル基等の炭化水素基等に置換したものに適宜変更することにより、PEG YD-2の類縁化合物を合成することができる。また、PEG YD-3において、図7のスキーム2の工程8で添加されるビス(3,4,5-トリメチルフェニル)アミン11のメチル基を他のアルキル基等の炭化水素基等に置換したものに適宜変更することによりその類縁化合物を合成することができる。更に、PEG YD-2及びPEG YD-3それぞれにおいて、ポルフィリン環とアプセプター基である安息香酸基の間にベンゾチアジアゾール基が導入されたPEG YD-4及びPEG YD-5についても同様にしてその類縁化合物を合成することができる。更に、例えば、PEG YD-2において、PEG YD-2合成の中間体である図1に示す化合物1の合成において、工程bで添加されるレゾルシノールCを3,5-ジヒドロキシベンズアルデヒドに変更することにより、ポルフィリン環の5位及び15位に導入したフェニル基のメタ位にポリエーテル基が導入された化合物を合成することができる。
〔色素増感型太陽電池〕
本実施形態の色素増感型太陽電池は、上記した本実施形態の増感色素を含んで構成される限り、公知の色素増感型太陽電池に基づいて構成することができる。例えば、受光面の側から、透明基板、透明導電膜、金属酸化物に本発明の増感色素を担持させた半導体電極が順次積層された光極と、前記光極に対して所定の間隔をもって対向する共に導電性を有する対極と、前記光極と前記対極との間に封入された電解質層を有して構成される。
透明基板は、光透過性を有するものであれば、特に限定されない。例えば、透明ガラス基板、半透明ガラス基板、透明樹脂基板等を利用することができる。透明導電膜は、例えば、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化スズ(TO)、スズドープ酸化インジウム(ITO)等を利用することができる。
半導体電極は、TiO2、ZnO、SnO2、ZrO2、WO3、Nb2O5、Ta2O5、In2O3、SrTiO3、BaTiO3、CaTiO3、及びKTaO3等の金属酸化物を使用して構築することができる。このとき、単一の化合物を使用しても良く、2種以上を混合して使用しても良い。好ましくは、光電変換効率が高いTiO2を使用する。金属酸化物は、多くの色素を吸着できるように表面積が大きいものが好ましい。例えば、多孔質の形態で使用される。したがって、金属酸化物の超微粒子を焼成した多孔質薄膜として形成することができ、この多孔質薄膜に本発明の増感色素を吸着することができる。本発明の増感色素は、アクセプター部位にカルボキシル基を有することから、このカルボキシル基と金属酸化物を脱水反応させることにより、本発明の増感色素を半導体電極表面に化学結合により吸着させることができる。
電解質層は光極と対極との間に形成される空間に電解質を充填することにより形成される。電解質は、光励起されて光極へ電子を注入した後の増感色素を還元するための酸化還元対等を含んで構成される。電解質層は、電解質を適当な溶媒に加えた電解質液とすることができる。また、電解液に公知の高分子或いは低分子ゲル化剤を添加して得られるゲル状等の電解質層とすることができ、p型半導体やホール輸送材等を利用して固体電解質層として構成してもよい。
電解質層を電解液として調製する場合、溶媒は電解質を溶解できる化合物であれば特に限定されないが、電気化学的に不活性で、比誘電率が高くかつ粘度が低い溶媒が好ましい。例えば、メトキシプロピオニトリルやアセトニトリルのようなニトリル化合物、γ−ブチロラクトンやバレロラクトンのようなラクトン化合物、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネートのようなカーボネート化合物、炭酸プロピレン等が挙げられる。また、イミダゾリウム塩などの溶融塩を用いてもよい。
電解質としては、上記の通り、発明の増感色素や対極と電子の受け渡しを行える酸化還元対が好ましく、当該電子の受け渡しを助長する作用を有する化合物等を含んでいてもよい。また、これらをそれぞれ単独あるいは複数組み合せてもよい。酸化還元対を構成する物質としては、例えば、ヨウ素(I3 -/I-系の電解質)、臭素(Br3 -/Br-系の電解質)、塩素などのハロゲン、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウム、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム、ヨウ化リチウムのようなハロゲン化物などが挙げられる。また、Co-トリスビピリジン等のCo錯体を用いてもよい。特に好ましくは、ヨウ素系電解質である。電子の受け渡しを効率よく行うための添加剤としては、4−t−ブチルピリジン、N−メチルベンズイミダゾールのようなヘテロ環状化合物などが挙げられる。
対極は、電解質中の酸化還元対に効率よく電子を渡すことができる材料から構成されるものであれば特に限定されるものではない。例えば、上記透明導電膜が成膜された透明基板の電解質側に、白金、金、銀、銅等の金属の単体や合金の金属薄膜電極を形成することが好ましい。金属薄膜電極の他に、カーボンやグラファイト等の導電性材料を用いた導電性膜として構成してもよく、金属成分との混合物を使用してもよい。また、透明基板の代わりに金属基板を使用してもよい。
本実施形態の色素増感型太陽電池の作動機構を説明すると、光極に光が照射されると、入射した光により本実施形態の増感色素が基底状態(HOMO)から励起状態(LUMO)となり、電子を放出する。放出された電子は金属酸化物を介して光極に移行し、光極から外部回路へ取り出される。一方、放出によって電子が不足した状態なった色素は、電解質層中の電解質物質から電子を供給され再生される。一方、外部回路を経て対極に移動した電子は、電解質物質に電子を供給する。このサイクルを繰り返すことにより光エネルギーが電気エネルギーに変換される。
〔色素増感型太陽電池の特性〕
本実施形態の色素増感型太陽電池は、優れた太陽光の吸光特性を有する本実施形態の増感色素を備える。本実施形態の増感色素は、優れた光電変換効率を有すると共に、色素増感型太陽電電池の内部損失を低減させる効果をも有する。したがって、本実施形態の色素増感型太陽電池は優れた電池性能を発揮することができる。
〔色素増感型太陽電池の製造方法〕
本実施形態の色素増感型太陽電池は、上記した本実施形態の増感色素を増感色素として利用する限り、公知の色素増感型太陽電池の製造方法に基づいて製造することができる。例えば、透明基板上に、透明導電膜を塗布法、スパッタリング法、真空蒸着法やCVD法等の公知の技術により薄膜成形する。このとき、予め透明導電膜が透明基板上に薄膜成形された市販品を利用することもできる。この透明基板に金属酸化物の微粒子をスピンコート法、ローラコート法、スプレー法やスクリーン印刷法などの公知技術によって塗布し、この塗膜を焼成する。続いて、これを、本実施形態の増感色素を適当な溶媒中に溶解させた溶液に浸漬等することにより金属酸化物に色素を吸着させることができ、こうして光極を作製することができる。次いで、別途調製した対極を、光極に対向させて配置し、必要に応じて光極と対極の接触面を封止し電池セルを組み立てる。続いて、光極と対極との間に形成される空間に電解質液を注入することにより、目的とする本実施形態の色素増感型太陽電池を製造することができる。なお、電解質層として、電解液ではなく固体電解質層を使用する場合には、光極、固体電解質層、対極の順に配置するように電池セルを組み立てればよい。
以下、本発明の実施例を上記一般式(2)に示すPEG YD-2、一般式(3)に示すPEG YD-3、一般式(4)に示すPEG YD-4、一般式(5)に示すPEG YD-5を例示して説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらは全て本発明の範囲内に包含される。
実施例1.増感色素(PEG YD-2)の合成例
本実施例では、増感色素の合成例を示す。ここで、合成を行った増感色素は、ポルフィリン環の5及び15位に2,6-ジメトキシエチルオキシフェニル基が導入され、ドナー基としてビス(4-ヘキシルフェニル)アミノ基が導入された上記一般式(2)に示す「PEG YD-2」と称するものである。合成スキームについては図1及び図2(スキーム1)に示した。
1.化合物1の合成(図1)
(工程a)中間体B:4-トルエンスルホン酸2-メトキシエチル(2-methoxyethyl 4-toluenesulfonate)の合成
ジクロロメタン(以下、「DCM」と称する場合がある)50 mLにメトキシエタノールA(3.0 g、39.4 mmol)を溶解し0℃に冷却して撹拌しつつ、p-トルエンスルホニルクロリド(p-toluenesulfonyl chloride)(7.52 g、39.4 mmol)とトリエチルアミン(triethyl amine、以下、「TEA」と称する場合がある)(22.0 mL、70.9 mmol)を加えた。室温で8時間撹拌後、蒸留水30 mLを加えて希釈しDCMで抽出した(50 mLずつ3回)。有機層を取り分け飽和食塩水で洗浄後硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、次いで、減圧下で濃縮した。粗生成物溶液をカラムクロマトグラフィーにより精製し淡黄色の油状生成物である中間体B:4-トルエンスルホン酸2-メトキシエチルを収率85 %(7.58 g)で得た。なお、中間体Bは1H NMRにより同定した。
(工程b)中間体D:1,3-ビス(2-メトキシエトキシ)ベンゼン(1,3-bis(2-methoxyethoxy)benzene)の合成
乾燥アルゴン気流下においてエタノール(10 mL)にレゾルシノール(resorcinol)C(1.0 g、9.0 mmol)と水酸化カリウム(1.53 g、27.3 mmol)を溶解した。これを撹拌しつつ、上記工程aで得た中間体B(6.27 g、27.2 mmol)を滴下して加え、その後12時間還流した。次にこの反応溶液をトリクロロメタン(クロロホルム:以下「CHCl3」と称する場合がある)(20 mL)と塩化アンモニウム水溶液(10 mL)の混合液に空けた。有機層を分離後、塩化アンモニウム水溶液により洗浄し、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥させ、減圧下で濃縮した。この粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、黄色液状の中間体D:1,3-ビス(2-メトキシエトキシ)ベンゼンを収率83 %(1.7 g)で得た。なお、中間体Dは1H NMRで同定した。
(工程c)化合物1:2,6-ビス(2-メトキシエトキシ)ベンズアルデヒド(2,6-bis(2-methoxyethoxy) benzaldehyde)(2,6-ビス-ジエチレングリコールベンズアルデヒド(2,6-bis-diethylene glycol benzaldehyde))の合成
三つ首フラスコに、10 mLのテトラヒドロフラン(以下、「THF」と称する場合がある)に、上記工程bで得た中間体D(1.0 g、4.2 mmol)とテトラメチルエチレンジアミン(tetramethylethylenediamine)(0.3 mL、0.4 mmol)を溶解して入れる。この溶液を乾燥窒素ガスのバブリングによって15分間脱気し、次いで0℃に冷却した。ここにn-ブチルリチウム1.6Mヘキサン溶液3.3 ml(5.3 mmol)を20分かけて滴下し、その後3時間撹拌する。室温まで温度上昇させたのち、DMF 0. 65 mL(8.9 mmol)を滴下させて加え、更に2時間撹拌を継続する。その後、反応溶液に純水を加えて反応を停止し、ジエチルエーテルによって抽出を行い(10 mLずつ3回)、これを無水硫酸マグネシウムにより乾燥させた。溶媒を陰圧によって除去し、残渣をカラムクロマトグラフィーによって精製した結果、淡黄色固体である化合物1:2,6-ビス(2-メトキシエトキシ)ベンズアルデヒド(2,6-ビス-ジエチレングリコールベンズアルデヒド)を収率35 % (0.4 g)で得た。化合物1は1H NMRによって同定した(図3)。
2.化合物1からのPEG YD-2の合成(図2:スキーム1)
(工程1)化合物3:ポルフィリン(Porphyrin)の合成
DCM(4 L)にジピロメタン(dipyrromethane)2(4.0 g、27.3 mmol)及び上記1で合成した化合物1:2,6-ビス(2-メトキシエトキシ)ベンズアルデヒド(2,6-ビス-ジエチレングリコールベンズアルデヒド)(6.95 g、27.3 mmol)を溶解し乾燥窒素により脱気を行った。これを0℃に冷却しトリフルオロ酢酸(trifluoroacetic acid)(1.78 mL、23.28 mmol)を加えた。続いて、これを乾燥窒素気流下で23℃を保って4時間攪拌し、DDQ(9.33 g、41.1 mmol)を加えて更に1時間攪拌を続けた後、シリカを用いてろ過した。減圧により溶媒を除いた後、カラムクロマトグラフィーによって精製した。更にメタノール(以下、「MeOH」と称する場合がある)から再結晶を行うことで目的物である紫色の粉末の化合物3:ポルフィリンを4 g、収率38.4 %で得た。なお、化合物3は1H NMRで同定した。
(工程2)化合物4:ブロモポルフィリン(Bromo porphyrin synthesis)の合成
DCM(4 L)に上記工程1で得た化合物3(4.0 g、5.2 mmol)を溶解し、これを乾燥窒素気流下で‐20℃に保って攪拌しつつDCM(340 mL)に溶解したNBS(0.94 g、5.2 mmol)を6時間かけてゆっくりと滴下した。ここにアセトン(30 mL)を加えて反応を停止し、溶媒は減圧により除去した。残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、MeOH/DCM混合溶媒によって再結晶を行った結果、紫色の粉末の化合物4:ブロモポルフィリンを2.3 g、収率52.1 %で得た。なお、化合物4は1H NMRにより同定した。
(工程3)化合物5:亜鉛ブロモポルフィリン(Zinc bromo porphyrin)の合成
CHCl3(1.1 L)とMeOH(150 mL)の混合溶媒に上記工程4で合成した化合物4(7.2 g、8.6 mmol)と 酢酸亜鉛二水和物(Zn(OAc)2.2H2O)(15.1 g、68.9 mmol)を懸濁させ、23 °Cで3時間攪拌した。純水200 mLを加えて反応を停止後、CHCl3(400 mLずつ2回)により抽出した。抽出液は水洗し無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧により溶媒を除き、化合物5:亜鉛ブロモポルフィリンを7.5 g、収率97 %で得た。なお、化合物5は1H NMRで同定した。
(工程4)化合物6:ポルフィリンTIPSの合成
THF/TEA混合溶媒(350/100 mL)に上記工程3で得た化合物5(7.5 g、8.3 mmol)、トリイソプロピルシリルアセチレン(triisopropylacetylene)(7.47 mL、33.4 mmol)を溶解し、10分間のアルゴンガスのパージにより脱気した。ここにPd(PPh3)2Cl2(0.58 g、0.83 mmol)/ CuI(0.15 g、0.8.3 mmol)を加え、アルゴンガス気流下で3時間、穏やかに還流した。陰圧により溶媒除去後、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製することにより、紫色の固体として化合物6:ポルフィリンTIPSを7 g、収率83.8 %で得た。なお、化合物6は1H NMRで同定した。
(工程5)化合物8:ジヘキシルジアリールアミンポルフィリンTIPS(Dihexyl diarylamine porphyrin TIPS)の合成
DCM(120 mL)に化合物6(350 mg、0.35 mmol)及びジヘキシルジアリールアミン(Di-hexyl di-arylamine)(ビス(4-ヘキシルフェニル)アミン)7(354 mg、1.05 mmol)を溶解し、0℃で攪拌しつつヨードベンゼンジアセタート(iodobenzene diacetate(以下、「PIDA」と称する場合がある))(338 mg、1.05 mmol)とテトラクロロ金酸ナトリウム二水和物(sodium tetrachloroaurate dihydrate)(14 mg、0.035 mmol)を加え、大気中室温で30分間攪拌を続けた。薄層クロマトグラフィー(以下、「TLC」と略する場合がある)で反応の進行を確認し、チオ硫酸ナトリウム飽和水溶液を加えて反応を停止後、有機層を分離した。水層はDCM(30 mLずつ2回)で抽出し有機層に加え、飽和食塩水(30 mLずつ2回)で洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムにより乾燥させた。減圧により溶媒を除去し、化合物8:ジヘキシルジアリールアミンポルフィリンTIPSの粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィーによって精製することで化合物8を272 mg、収率58 %で得た。なお、化合物8はH1NMRで同定した。
(工程6及び工程7)PEG YD-2の合成
乾燥THF(30 mL)に上記工程5で得た化合物8(0.8 g, 0.59 mmol)を溶解し、ここに1 M TBAFのTHF溶液(0.8 mL)をゆっくり加えた。乾燥アルゴン気流下、0℃、暗所にて30分攪拌し、イオン交換水を加えて反応を停止した。反応溶液はDCM(50 mLずつ2回)によって抽出し、無水硫酸ナトリウムによって乾燥させた。減圧によって溶媒を除去し、粗生成物9を4-ヨード安息香酸(4-Iodo benzoic acid)10(0.6 g、2.40 mmol)と共に乾燥した丸底フラスコに移し、蒸留したTEA(20 mL)とTHF(75 mL)を加えてアルゴンガスにより10分間脱気する。更にPd2(dba)3(0.11 g、0.12 mmol)とAsPh3(0.366 g、0.12 mmol)を加え、アルゴン気流下暗所にて5時間還流を行った。反応終了後、減圧により溶媒を除き、カラムクロマトグラフィーとMeOHからの再結晶を経て、緑色の固体であるPEG YD-2を0.44 g、収率57 %で得た。PEG YD-2は1H NMR(図4)及び紫外可視吸光スペクトルにより同定した。なお、PEG YD-2の紫外可視吸光スペクトルは、既知増感色素YD-2と比較したものであり、PEG YD-2はTHF(0.01 mM)中でλmax 643 nm(ε= 42, 460)であった(図5)。更に、定性HPLC(Qualitative HPLC)により、得られたPEG YD-2の純度測定を行った(図6)。
実施例2.増感色素(PEG YD-3)の合成例
本実施例では、増感色素の合成例を示す。ここで、合成を行った増感色素は、ポルフィリン環の5及び15位に2,6-ジメトキシエチルオキシフェニル基が導入され、ドナー基としてビス(3,4,5-トリメチルフェニル)アミノ基が導入された上記一般式(3)に示す「PEG YD-3」と称するものである。合成スキームについては図7(スキーム2)に示した。
まず、上記実施例1の合成方法により、図1に示すスキーム1の工程4で得た化合物6:ポルフィリンTIPSまで合成を行い、これを用いて、以下の合成方法によりPEG YD-3の合成を行った。
PEG YD-3の合成(図7:スキーム2)
(工程8)化合物12:トリメチルジアリールアミンポルフィリンTIPS(Tri-methyl di-arylamine porphyrin TIPS)の合成
DCM(120 mL)に化合物6:ポルフィリンTIPS(3.0 g、3.0 mmol)及びトリメチルジアリールアミン(Tri-methyl di-arylamine)(ビス(3,4,5-トリメチルフェニル)アミン)11(1.52 g、6.0 mmol)を溶解し0℃に冷却して、ここにPIDA(2.9 g、9.0 mmol)とテトラクロロ金酸ナトリウム二水和物(sodium tetrachloroaurate dihydrate)(0.24 g、0.6 mmol)を加え、大気中室温で30分間攪拌した。反応終了をTLCで確認し、チオ硫酸ナトリウム飽和水溶液を加えて反応を停止後、有機層を分離した。水層はDCM(30 mLずつ2回)で抽出し有機層に加え、飽和食塩水(30 mLずつ2回)で洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムにより乾燥させた。減圧により溶媒を除去し、化合物12:トリメチルジアリールアミンポルフィリンTIPSの粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィーによって精製することで化合物12を2.8 g、収率74 %で得た。なお、化合物12は1H‐NMRで同定した。
(工程9及び10)PEG YD-3の合成
乾燥THF(30 mL)に上記工程8で得た化合物12(0.6 g、0.47 mmol)を溶解し、ここに1 M TBAFのTHF溶液(0.6 mL)をゆっくり加えた。乾燥アルゴン気流下、0℃、暗所にて30分攪拌し、イオン交換水を加えて反応を停止した。反応溶液はDCM(50 mLずつ2回)によって抽出し、無水硫酸ナトリウムによって乾燥させた。減圧によって溶媒を除去し、得られた粗生成物13を4-ヨード安息香酸(4-Iodo benzoic acid)10(0.35 g、1.43 mmol)と共に乾燥した丸底フラスコに移し、蒸留した TEA(20 mL)とTHF(75 mL)を加えてアルゴンガスにより10分間脱気した。更にPd2(dba)3(0.08 g、0.09 mmol)とAsPh3(0.29 g、0.095 mmol)を加え、アルゴン気流下暗所にて5時間還流を行った。反応終了後、減圧により溶媒を除き、カラムクロマトグラフィーとMeOHからの再結晶を経て、茶褐色の固体であるPEG YD-3を0.36 g、収率62 %で得た。なお、PEG YD-3は1H NMRにより同定した(図8)。また、ここで図示しないが、紫外可視吸光スペクトルは最大波長及び波形は、実施例1のPEG YD-2と類似していた。更に、定性HPLC(Qualitative HPLC)により、得られたPEG YD-2の純度測定を行った(図9)。
実施例3.増感色素(PEG YD-4)の合成例
本実施例では、増感色素の合成例を示す。ここで、合成を行った増感色素は、ポルフィリン環の5及び15位に2,6-ジメトキシエチルオキシフェニル基が導入され、ドナー基としてビス(4-ヘキシルフェニル)アミノ基が導入されると共に、ポルフィリン環とアプセプター基である安息香酸基の間にベンゾチアジアゾール基が導入された上記一般式(4)に示す「PEG YD-4」と称するものである。合成スキームについては図10及び図11(スキーム3)に示した。
1.化合物14(アプセプター基)の合成(図10)
(工程A)化合物2a:1,3-ベンゾチアジアゾール(1,3-Benzthiadiazole)の合成
o-フェニレンジアミン(o-phenylene diamine)1a(10.0 g、92.5 mmol)、DCM(300 mL)、及び、TEA(37.4 g、370 mmol)を混合し、化合物1aが完全に溶解するまで撹拌した。塩化チオニル(thionyl chloride)(184.9 mmol、2 equiv.)をゆっくりと滴下し、その後加熱して5時間還流した。終了後、溶媒は減圧して除去し純水700 mLを加えた。ここに濃塩酸を加えてpH1に調整し、水蒸気蒸留した。留出した留分をDCM(200 mLずつ5回)で抽出し、これを硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧により除くことで純粋な化合物2a:1,3-ベンゾチアジアゾールを11.7 g、収率93 %で得た。なお、化合物2aは1H NMR及び質量分光測定法(Mass spectroscopy)で同定した。
(工程B)化合物3a:4, 7-ジブロモベンゾチアジアゾール(4, 7- Dibromobenzthiodiazole)の合成
500 mLの二口フラスコに上記工程Aで得た化合物2a(10.0 g、73.4 mmol)及びHBr(150 mL、48 %)を加えた。ここにBr2(35.2 g、220.3 mmol)を溶解したHBr(100 mL)を非常にゆっくりと滴下した。その後加熱し、6時間還流する。この際に暗橙色の固体が見られる。還流の終了後、室温まで放冷し、ここに適量の飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応系に残存する過剰のBr2を消費した。混合物は吸引ろ過しつつ水洗する。最後に一度ジエチルエーテルで洗浄し、減圧して溶媒を除くことにより化合物3a:4, 7-ジブロモベンゾチアジアゾールを20.5 g、収率95 %で得た。なお、化合物3aは1H NMR及び質量分光測定法により同定した。
(工程C)化合物5a:メチル4-(7-ブロモベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール -4-イル)安息香酸エステル(Methyl-4-(7-bromobenzo[c][1,2,5]thiadiazol -4-yl)benzoate)の合成
トルエン(48 mL)/ 水(9.6 mL)の混合溶媒に上記工程Bで得た化合物3a(3.0 g、10.2 mmol)、4-(メトキシカルボニル)フェニルボロン酸(4-(methoxycarbonyl) phenyl boronic acid)4a(1.84 g、10.2 mmol)を溶解し、乾燥窒素により脱気した。ここに、Pd(PPh3)4(1.18 g、1.02 mmol)、Na2CO3(1.08 g、10.2 mmol)を加え、再度乾燥窒素による脱気を行った後、乾燥窒素気流下で90℃に加熱し、12時間保持し、鈴木カップリングを行った。その後放冷し、次いで反応混合物を純水に空け、次いで酢酸エチルにより抽出した。有機層は飽和食塩水により洗浄した後、無水硫酸ナトリウムにより乾燥させた。溶媒を減圧により除去し、残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製することにより黄色固体である化合物5a:メチル4-(7-ブロモベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール-4-イル)安息香酸エステルを1.21 g、収率34 %で得た。なお、化合物5aは1H NMR及び質量分光測定法で同定した。
(工程D)化合物14:4-(7-ブロモベンゾ[c][1, 2, 5]チアジアゾール-4-イル)安息香酸(4-(7-bromobenzo[c][1, 2, 5] thiadiazol-4-yl)benzoic acid)の合成
50 mLのTHFに上記工程Cで得た化合物5a(0.500 g、1.43 mmol)を溶解し、1MのLiOH水溶液10 mLをシリンジを用いて加えた。アルゴン気流下で2時間還流を行い、その後室温まで放冷した。pHが2程度となるように1 N塩酸を加えた。この反応混合物をろ過し残渣を水洗した後、減圧により乾燥させることにより化合物14:4-(7-ブロモベンゾ[c][1, 2, 5]チアジアゾール-4-イル)安息香酸を441 mg、収率92 %で得た。化合物14は1H NMR(図12)及び質量分光測定法(図13)により同定した。
2.化合物14からのPEG YD-4の合成(図11、スキーム3)
上記実施例1の合成方法により図2に示すスキーム1の工程5で得た化合物8:ジヘキシルジアリールアミンポルフィリンTIPSまで合成を行い、これと実施例3の上記1の工程Dで合成した化合物14を用いて、以下の合成方法によりPEG YD-4の合成を行った。
(工程11及び12)PEG YD-4の合成
THF(30 mL)に化合物8(0.8 g、0.59 mmol)を溶解し、ここに1 M TBAFのTHF溶液0.8 mLをゆっくり加えた。この反応液はアルゴン気流下で0℃に冷却しつつ暗所で30分撹拌し、脱イオン水を加えることにより反応を終了させる。反応溶液はDCM(50 mLずつ2回)で抽出し、抽出液は無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧により溶媒を除いた後、この粗生成物9と化合物14(0.80 g、2.40 mmol)を丸底フラスコに移し、ここに蒸留したTEA(20 mL)とTHF(75 mL)を加え、アルゴンにより10分間脱気した。ここにPd2(dba)3(0.11 g、0.12 mmol)とAsPh3(0.366 g、0.12 mmol)を加え、アルゴン気流下、暗所で5時間還流させた。反応終了後に溶媒を除き、粗生成物をカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、抽出液からメタノールを用いて再結晶を行うことで、緑色固体であるPEG YD-4を0.48 g、収率60 %で得た。PEG YD-4は1H NMR(図14)及び紫外可視吸光スペクトルにより同定した。なお、PEG YD-4の紫外可視吸光スペクトルは、既知増感色素YD-2と比較したものであり、THF(0.01 mM)中でPEG YD-4はλmax 662 nm(ε= 54, 306)であり、YD-2は648 nm(36, 496)であった(図15)。更に、定性HPLC(Qualitative HPLC)により、得られたPEG YD-4の純度測定を行った(図16)。
実施例4.増感色素(PEG YD-5)の合成例
本実施例では、増感色素の合成例を示す。ここで、合成を行った増感色素は、ポルフィリン環の5及び15位に2,6-ジメトキシエチルオキシフェニル基が導入され、ドナー基としてビス(3,4,5-トリメチルフェニル)アミノ基が導入され、ポルフィリン環とアプセプター基である安息香酸基の間にベンゾチアジアゾール基が導入された上記一般式(4)に示す「PEG YD-5」と称するものである。合成スキームについては図17(スキーム4)に示した。
上記実施例2の合成方法により図7のスキーム2の工程8の化合物12:トリメチルジアリールアミンポルフィリンTIPSまで合成を行い、これと上記実施例3の1の工程Dで合成した化合物14を用いて、以下の合成方法によりPEG YD-5の合成を行った。
(工程13及び工程14)PEG YD-5の合成
THF(30 mL)に化合物12(0.6 g、0.47 mmol)を溶解し、ここに1 M TBAF のTHF 溶液0.8 mLをゆっくり加えた。この反応液はアルゴン気流下で0℃に冷却しつつ暗所で30分撹拌し、脱イオン水を加えることにより反応を終了させた。DCM(50 mLずつ2回)で抽出し、抽出液は無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧により溶媒を除いた後、この粗生成物13と化合物14(0.48 g、1.43 mmol)を丸底フラスコに移し、ここに蒸留した TEA(20 mL)とTHF(75 mL)を加え、アルゴンにより10分間脱気した。ここにPd2(dba)3(0.08 g、0.095 mmol)とAsPh3(0.29 g、0.9 mmol)を加え、アルゴン気流下、暗所で5時間還流させた。反応終了後に溶媒を除き、粗生成物をカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、溶出液からメタノールを用いて再結晶を行うことで、緑色固体であるPEG YD-5を0.45 g、収率69.6 %で得た。PEG YD-5は1H NMR(図18)及び紫外可視吸光スペクトルにより同定した。なお、PEG YD-5の紫外可視吸光スペクトルは、既知増感色素YD-2と比較したものであり、THF(0.01 mM)中でPEG YD-5はλmax 669 nm(ε=35, 469)であり、YD-2は648 nm(36, 496)であった(図19)。更に、定性HPLC(Qualitative HPLC)により、得られたPEG YD-5の純度測定を行った(図20)。
実施例5.増感色素の吸光特性評価
本実施例では、先の実施例1で合成した増感色素の吸光特性評価を実施した。
(評価対象色素)
評価対象とした増感色素は、実施例1で合成したPEG YD-2、実施例3で合成したPEG YD-4、実施例4で合成したPEG YD-5である。PEG YD-2、PEG YD-4、及び、PEG YD-5は、D-π-A型構造を持つポルフィリン系化合物において、ポルフィリン環にポリエーテル型の置換基を有するフェニル基を導入したものであり、更に、PEG YD-4、及び、PEG YD-5は、ポルフィリン環と安息香酸基の間にベンゾチアジアゾール環を導入したものである。
(評価方法)
吸光特性評価は、それぞれの増感色素の0.01 mM AcCN / t-BtOH = 1:1溶液について、紫外可視吸光光度計(島津製作所製)を用いて吸光測定を行った。
(評価結果)
結果を図21に示し、図中、横軸は波長(nm)を、縦軸は吸光度である。PEG YD-2、PEG YD-4、及び、PEG YD-5は、何れもポルフィリン系化合物の特徴的な吸光波形を示した。PEG YD-2は、400 nm〜500 nm付近の領域のソーレー帯において、良好な吸光特性を示した。PEG YD-2は、先の実施例1で確認した紫外可視吸収スペクトル(図5)でも示す通り、既知増感色素YD-2の吸光ピーク波長とほとんど変化はなかったが、PEG YD-2の方が若干高い吸光が認められた。PEG YD-4及びPEG YD-5は、ソーレ帯及び500 nm〜700 nm付近の領域のQ帯の双方において、吸収ピーク波長が長波長側に10 nm〜20 nmシフトしていることが認められた。かかる吸収ピーク波長の長波長側へのシフトは、先の実施例3及び4で確認した紫外可視吸収スペクトル(図15及び19)でも示す通り、既知増感色素YD-2との比較でも明らかである。かかる結果から、D-π-A型構造を持つポルフィリン系化合物においてポルフィリン環にポリエーテル型の置換基を有するフェニル基を導入することによっても良好な吸光特性を有すると共に、ポルフィリン環と安息香酸基の間にベンゾチアジアゾール環を導入することにより、長波長側の領域に増感色素の光吸収端を拡張できることが判明した。したがって、本発明の増感色素は、増感色素として優れた特性を有し、これを利用することで色素増感型太陽電池の光電変換をより高めることができることが理解できる。
実施例6.本発明の色素を利用した色素増感型太陽電池の性能評価
本実施例では、先の実施例で合成した増感色素を用いて色素増感型太陽電池セルを構築し、その性能を評価した。なお、色素増感型太陽電池の性能は、IPCE及び太陽電池効率により評価した。
(評価対象色素)
ここで、評価対象とした色素は、実施例1で評価対象とした増感色素は、実施例1で合成したPEG YD-2、実施例3で合成したPEG YD-4、実施例4で合成したPEG YD-5である。比較例として上記〔背景技術〕の項で説明した非特許文献1のYD-2についても別途合成を行い評価した(比較例)。なお、各増感色素は、色素増感型太陽電池の作製に際して、AcCN:t-BuOH=1:1混合溶液に溶解して使用した。
(色素増感型太陽電池の作製)
ここで作製した色素増感型太陽電池101の分解概略図を図22に示す。なお、本実施例で作製した色素増感型太陽電池101は、本発明の一例を示すものに過ぎず、他の構成を有するものについても、本発明の色素を含む限り本発明の一部を為すことを当業者は理解できる。
図22に示す通り、色素増感型太陽電池101は、光極102、対極103、及び樹脂膜のスペーサ104から構成されている。光極102は、酸化チタンナノ粒子焼結膜(ポーラス膜)の半導体電極7、ガラスの光極透明基板108、及び光極透明導電膜109から構成されている。また、対極103は、電解液注入孔112が設けられ、対極透明導電膜111が付いたガラスの対極透明基板110と、白金触媒膜113とから構成されている。
光極102は、日本板硝子社製のFTO(フッ素ドープ酸化スズ)膜付きガラス基板108上に、Dysol社製のTiO2ナノ粒子ペースト18NR-Tをスクリーン印刷法によって成膜し空気中で500℃1時間焼成することにより多孔質の半導体電極107を形成した。焼成後のTiO2の膜厚がおよそ10μmとなるように、数回〜10数回スクリーン印刷による重ね塗りを行った。次いでこの基板を各色素の0.02 mM溶液に3時間浸漬後、エタノールで洗浄し、乾燥させることにより作製した。このとき、他社製の透明導電膜付ガラス基板にTiO2以外の別の金属酸化物を塗布し、焼成したものに色素溶液を浸漬することにより光極を作成してもよい。
対極103は、電解液を注入する注入孔12を設けた対極透明導電膜11が付いたガラスの対極透明基板110(光極と同じFTO膜付きガラス基板)上に、塩化白金酸のアルコール溶液を塗布した後、空気中で430℃にて加熱焼成し、白金触媒膜113を形成することにより作製した。このとき、ガラス基板の代わりに金属板を用いてもよく、また白金触媒膜の代わりに炭素粉末を用いてもよい。
光極102及び対極103を、図22に示すように、電極間隔を所定間隔に保つため25μm厚の熱可塑性樹脂膜のスペーサ104を間に挟むように対向配置して圧着し、対局側から半田ごて等で加熱することで熱融着させ、光極102と対極103とを互いに接合した。その後、注入孔112から電解液を注入し、注入孔112の上に熱可塑性樹脂フィルム(図示しない)及びガラス薄板(図示しない)をのせ、これを半田ごてなどで加熱し融着させ、電解液を封止することにより、目的の太陽電池を作製した。
なお、電解液には、ヨウ素、ヨウ化リチウム、イミダゾリウム塩、t-ブチルピリジンなどをアセトニトリルに溶解したものを使用した。
(評価方法)
IPCE測定方法
IPCEの測定にはコニカミノルタ社製のIPCE測定装置を使用した。光源としてはキセノンランプを使用し、バイアス光にはハロゲンランプを光源とした。測定は室温にて行った。
太陽電池性能測定方法
JIS C8912 等級AAAのキセノンランプを光源として用い、1sun、AM1.5に近似した光照射下にて電流電圧特性を測定した。
(評価結果)
各増感色素のIPCEの測定結果を図23に示し、図中、横軸は波長(nm)、縦軸はIPCE(%)である。また、各色素の電流−電圧特性の測定結果を図24に示し、図中、横軸は電圧(V)、縦軸は電流密度(mA/cm2)である。表1に、図24の結果から導かれた短絡電流密度(Jsc〔mA/cm2〕)、開放電圧(Voc〔V〕)、形状因子(フィルファクター:F.F)、太陽電池効率〔Eff〔%〕〕、及び色素吸着量〔nmol/cm2〕を要約する。なお、太陽電池効率はJsc×Voc×FFにより算出した。
Figure 0006935752
図23に示す通り、PEG YD-2を利用した色素増感型太陽電池のIPCEの結果より、PEG YD-2はYD-2とほぼ同波長領域の光を利用することが可能であり、その吸収した光の光電流への変換効率はYD-2より高く、より効果的に電気エネルギーに変換できることが判明した。PEG YD-4及びPEG YD-5はYD-2とよりも長波長側(約770 nm〜820 nm)の波長領域の光を利用することが可能であり、更にその吸収した光の光電流への変換効率はYD-2より高く、より効果的に電気エネルギーに変換できることが判明した。図24及び表1に示す通り、PEG YD-2、PEG YD-4、及び、PEG YD-5を利用した太陽電池においては、YD-2に比べて短絡電流密度が向上し、特に、PEG YD-4、及び、PEG YD-5において顕著であった。また、太陽電池効率は、YD-2は6.98 %であるのに対して、PEG YD-2は8.09 %、PEG YD-4は8.63 %、及び、PEG YD-5は7.95 %であり、顕著な太陽電池効率の向上が確認された。したがって、本発明の増感色素を利用した色素増感型太陽電池の太陽電池性能の顕著な向上を確認できた。このように、PEG YD-2、PEG YD-4、及び、PEG YD-5を利用した太陽電池において実測の短絡電流密度が大きく向上したこと等から、導入したポリエーテル型の置換基による励起電子の再結合防止効果を示していることが理解できる。また、PEG YD-4、及び、PEG YD-5を利用した太陽電池において太陽電池効率の向上は、利用できる光波長域の拡張によるものであることが理解できる。PEG YD-4に比べてPEG YD-5の方が太陽電池効率が高いことから、ドナー基としての性能がビス(4-ヘキシルフェニル)アミノ基の方が高いことが理解できる。
本発明は、光電変換特性に優れ太陽光を広波長域で効率良く吸光できる増感色素、及び当該増感色素を用いた電荷再結合による内部損失を低減し電池性能向上が図れる色素増感型太陽電池を提供でき、多種多様な技術分野において利用価値が高いものである。
101 色素増感型太陽電池
102 光極
103 対極
104 スペーサ
105 電解質
106 透明電極
107 半導体電極
108 光極透明基板
109 光極透明導電膜
110 対極透明基板
111 対極透明導電膜
112 注入孔
113 白金触媒膜

Claims (7)

  1. 下記一般式(1)で示される色素増感型太陽電池用の増感色素。
    Figure 0006935752

    一般式(1)
    〔一般式(1)において、Mは金属原子である、
    R1及びR2は独立的に炭素原子数1〜15の直鎖若しくは分岐炭化水素基であり、R3、R4、R5及びR6は水素原子である、又は
    R1、R2、R3、R4、R5及びR6は独立的に炭素原子数1〜3の直鎖若しくは分岐炭化水素基である、
    R7、R8、R9及びR10は独立的にポリエーテル基であり、R11、R12、R13及びR14は独立的に水素原子である、又は、
    R7、R8、R9及びR10は独立的に水素原子であり、R11、R12、R13及びR14は独立的にポリエーテル基である、そして、
    Aは有していても有していなくともよく、有する場合には、Aはベンゾチアジアゾール基であり、前記ベンゾチアジアゾール基のベンゼン環部がエチニル基と安息香酸基のベンゼン環部と結合している。〕
  2. 前記Mが、亜鉛である請求項1に記載の増感色素。
  3. 前記R7、R8、R9及びR10は独立的にメトキシエチルオキシ基(-O-CH2-CH2-O-CH3基)であり、前記R11、R12、R13及びR14は独立的に水素原子である、又は、
    前記R7、R8、R9及びR10は独立的に水素原子であり、前記R11、R12、R13及びR14は独立的にメトキシエチルオキシ基(-O-CH2-CH2-O-CH3基)である請求項1又は2に記載の増感色素。
  4. 下記一般式(2)又は(3)で示される請求項3に記載の増感色素。
    Figure 0006935752

    一般式(2)

    Figure 0006935752

    一般式(3)
  5. 前記Aが、前記ベンゾチアジアゾール基である請求項1〜3の何れか一項に記載の増感色素。
  6. 下記一般式(4)又は(5)の何れかで示される請求項5に記載の増感色素。
    Figure 0006935752

    一般式(4)

    Figure 0006935752

    一般式(5)
  7. 請求項1〜6の何れか一項に記載の増感色素を備える色素増感型太陽電池。
JP2018007403A 2018-01-19 2018-01-19 色素増感型太陽電池用の増感色素、及び当該増感色素を備える色素増感型太陽電池。 Active JP6935752B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018007403A JP6935752B2 (ja) 2018-01-19 2018-01-19 色素増感型太陽電池用の増感色素、及び当該増感色素を備える色素増感型太陽電池。

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018007403A JP6935752B2 (ja) 2018-01-19 2018-01-19 色素増感型太陽電池用の増感色素、及び当該増感色素を備える色素増感型太陽電池。

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019125764A JP2019125764A (ja) 2019-07-25
JP6935752B2 true JP6935752B2 (ja) 2021-09-15

Family

ID=67399115

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018007403A Active JP6935752B2 (ja) 2018-01-19 2018-01-19 色素増感型太陽電池用の増感色素、及び当該増感色素を備える色素増感型太陽電池。

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6935752B2 (ja)

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014165060A (ja) * 2013-02-26 2014-09-08 Rohm Co Ltd 色素増感太陽電池およびその製造方法、および電子機器
JP2014237743A (ja) * 2013-06-06 2014-12-18 国立大学法人京都大学 ポルフィリン錯体及び色素増感太陽電池
JP6181676B2 (ja) * 2015-01-19 2017-08-16 株式会社豊田中央研究所 色素増感型太陽電池、色素増感型太陽電池モジュール
JP2016216663A (ja) * 2015-05-25 2016-12-22 株式会社ケミクレア 光増感剤および光電変換素子

Also Published As

Publication number Publication date
JP2019125764A (ja) 2019-07-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5124161B2 (ja) 色素増感太陽電池用色素および色素増感太陽電池
Huang et al. Effect of the linkage location in double branched organic dyes on the photovoltaic performance of DSSCs
Duan et al. Triphenylamine-based organic dyes containing a 1, 2, 3-triazole bridge for dye-sensitized solar cells via a ‘Click’reaction
Yang et al. Efficient and stable organic DSSC sensitizers bearing quinacridone and furan moieties as a planar π-spacer
KR102171481B1 (ko) 전기화학 또는 광전자 장치에 대한 디케토피롤로피롤 (dpp)-계 증감제
Hua et al. Bulky dendritic triarylamine-based organic dyes for efficient co-adsorbent-free dye-sensitized solar cells
Xiang et al. The structural modification of thiophene-linked porphyrin sensitizers for dye-sensitized solar cells
Cheng et al. Organic dyes containing indolodithienopyrrole unit for dye-sensitized solar cells
Qian et al. Triazatruxene-based organic dyes containing a rhodanine-3-acetic acid acceptor for dye-sensitized solar cells
Baik et al. Synthesis and photovoltaic properties of novel organic sensitizers containing indolo [1, 2-f] phenanthridine for solar cell
Liao et al. Novel BODIPY dyes with electron donor variety for dye-sensitized solar cells
Qin et al. Panchromatic donor–acceptor–acceptor sensitizers based on 4H-cyclopenta [2, 1-b: 3, 4-b′] dithiophen-4-one as a strong acceptor for dye-sensitized solar cells
Iqbal et al. Impact of hydroxy and octyloxy substituents of phenothiazine based dyes on the photovoltaic performance
Wang et al. Influence of the N-heterocycle substituent of the dithieno [3, 2-b: 2′, 3′-d] pyrrole (DTP) spacer as well as sensitizer adsorption time on the photovoltaic properties of arylamine organic dyes
Martins et al. Styryl and phenylethynyl based coumarin chromophores for dye sensitized solar cells
Liao et al. (D− π− A) 3− Type metal-free organic dye for dye-sensitized solar cells application
Zang et al. Impact of the position isomer of the linkage in the double D–A branch-based organic dyes on the photovoltaic performance
Abdellah et al. Efficiency enhancement of ruthenium-based DSSCs employing A–π–D–π–A organic Co-sensitizers
Baheti et al. Synthesis, optical, electrochemical and photovoltaic properties of organic dyes containing trifluorenylamine donors
Arrechea et al. Charge recombination losses in thiophene-substituted porphyrin dye-sensitized solar cells
Zhang et al. Meso-Schiff-base substituted porphyrin dimer dyes for dye-sensitized solar cells: synthesis, electrochemical, and photovoltaic properties
Tang et al. 2D‐Π‐A Type Organic Dyes Based on N, N‐Dimethylaryl Amine and Rhodamine‐3‐acetic Acid for Dye‐sensitized Solar Cells
Zhao et al. Thieno [2, 3-a] carbazole-based donor–π–acceptor organic dyes for efficient dye-sensitized solar cells
Li et al. Pyrrolo [3, 2, 1-kl] phenothiazine-based D-π-A type organic dyes for efficient dye-sensitized solar cells
Fang et al. Molecular engineering of efficient organic sensitizers containing diyne-bridge for dye-sensitized solar cells

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20201217

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210708

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210727

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210809

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6935752

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150