JP6935748B2 - プロピレン系樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents
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Description
また、プロピレンーエチレンランダム共重合体において、衝撃強度をあげるためにはエチレン含有量を増大させることが必要であるが、エチレン含有量を増やすと、融点の低下を伴い耐熱性を悪化させることになる。
かかる熱可塑性エラストマーのうち、結晶性ポリプロピレンにプロピレン−エチレン共重合体エラストマーを付与する、いわゆるブロックタイプのTPOと称されるものは、ランダムコポリマータイプのエラストマーに比べて生産性が高く、また耐熱性及び機械的強度(特に衝撃強度)などに優れるという特長を有することから、最近において非常に汎用されている。
そこで、透明性に極めて優れ、かつ、衝撃強度に優れつつ高温処理時に熱変形を抑制でき得るポリプロピレン系樹脂組成物が実現されれば、産業上極めて有意義であると認識され、これまでに様々な改良提案がなされてきた。
この手法の改良のために、低分子量成分の生成を抑えるようエラストマーの固有粘度すなわち分子量をある程度以上高くする手法も開示されているが(特許文献3を参照)、チーグラー・ナッタ系触媒では、エラストマーの分子量を増加させても低結晶性成分の生成に対する抑制効果が小さく、透明性が十分でなく、ベタツキやブリードアウトの改良が未だに不十分であって、エラストマーの分子量が高いことでブツやフィッシュアイなどと称される外観不良が発生しやすくなり、押出成形性が悪化するため造粒工程で有機過酸化物を用いることでオリゴマーが増加し、また、臭いが顕著に悪化するなどの多くの問題を有している。
他方では、結晶化核剤を含ませてポリプロピレン樹脂組成物の透明性を改善する方法も提案されている(特許文献4、5を参照)。一方で、結晶化核剤はブリードによる内容物の汚染や、製品としての異臭の原因となるなどの多くの問題を有している。
(A−i)温度230℃、荷重が2.16kgの条件で測定したメルトフローレートが1〜20g/10分であること。
(A−ii)エチレン含有量が1〜6重量%であること。
(A−iii)示差走査熱量測定において50〜180℃の範囲に観測される最大の結晶融解ピーク温度が135℃以上であること。
(B−i)メタロセン触媒で重合されたエチレン−α−オレフィンランダム共重合体であること。
(B−ii)温度230℃、荷重が2.16kgの条件で測定したメルトフローレートが0.1〜20g/10分であること。
(B−iii)密度が0.899〜0.920g/cm3であること。
(1)基本規定
本発明に用いられるプロピレン−エチレンランダム共重合体(A)は、メタロセン系触媒又はチーグラー触媒を用いて製造される。
プロピレン系樹脂組成物中に占めるプロピレン−エチレンランダム共重合体(A)の割合は、組成物の全重量を基準にして、65〜85重量%、好ましくは70〜85重量%、より好ましくは75〜85重量%である。プロピレン−エチレンランダム共重合体(A)の割合が85重量%以下であると、プロピレン系樹脂組成物の衝撃強度を十分に発揮することができる。また、プロピレン−エチレンランダム共重合体(A)の割合が65重量%以上であると、プロピレン系樹脂組成物としての耐熱性が良好である。
プロピレン−エチレンランダム共重合体(A)は、そのMFRがJIS−K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定された方法で、0.1〜20g/10分、好ましくは0.2〜10g/10分、より好ましくは0.3〜5g/10分、さらに好ましくは0.4〜3g/10分である。MFRが20g/10分以下であるとプロピレン系樹脂組成物としてのMFRが高くなりすぎることがなく、容器としての衝撃強度が十分あり、また、ブロー成形時に溶融張力が不足することなく均一な肉厚の成形体を得ることができ、MFRが0.1g/10分以上であると、ブロー成形時に吐出圧が高くなりすぎて生産性が低下するという問題を回避することができる。
プロピレン−エチレンランダム共重合体(A)としては、エチレン含有量が1〜6重量%であり、好ましくは1.5〜5.0重量%であり、より好ましくは2.0〜4.5重量%であり、さらに好ましくは2.5〜4.0重量%である。エチレン含有量が6重量%以下である場合には、プロピレン系樹脂組成物としての剛性向上効果を十分得ることができ、容器としての座屈強度等が損なわれず、また、熱処理時の変形を引き起こしにくい。更には、ブロー成形時の結晶化が速いため、成形時間が短く、ブロー成形性が良好である。一方で、エチレン含有量が1重量以上である場合には、プロピレン系樹脂組成物の衝撃強度、及び透明性を十分に発揮することが可能である。
プロピレン−エチレンランダム共重合体(A)としては、示差走査熱量測定において50〜180℃の範囲に観測される最大の結晶融解ピーク温度が135℃以上であり、好ましくは136℃以上、より好ましくは137℃以上、さらに好ましくは138℃以上である。135℃以上であると、蒸気滅菌時に耐熱性が十分あり、製品として形状を維持することができる。好ましい上限値は170℃である。
本発明に用いられるプロピレン−エチレンランダム共重合体(A)は、チーグラー触媒や、メタロセン触媒で重合して得ることが出来る。
例えば、スラリー重合法の場合には、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素又は液状モノマー中で行うことができる。重合温度は、通常−80〜150℃であり、好ましくは40〜120℃である。重合圧力は、1〜60気圧(0.101〜6.08MPa)が好ましく、また得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体(A)の分子量の調節は、水素又は他の公知の分子量調整剤で行うことができる。
重合は連続式又はバッチ式反応で行い、その条件は通常用いられている条件でよい。さらに重合反応は一段で行ってもよく、多段で行ってもよい。
(1)基本規定(要件(B−i))
本発明に用いられるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(B)は、メタロセン系触媒を用いて製造されるメタロセン系エチレン−α−オレフィンランダム共重合体である。
プロピレン系樹脂組成物中に占めるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(B)の割合は、組成物の全重量を基準にして、15〜35重量%、好ましくは20〜30重量%である。エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(B)の割合が35重量%以下であると、プロピレン系樹脂組成物としての耐熱性が良好である。一方、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(B)の割合が15重量%以上であると、プロピレン系樹脂組成物として衝撃強度、及び透明性を十分に発揮することが可能である。
(3)要件(B−ii):エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(B)のメルトフローレート(MFR)
エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(B)の230℃におけるMFRは、好ましくは0.1〜20g/10分、より好ましくは0.2〜10g/10分、さらに好ましくは0.5〜8g/10分、最も好ましくは1〜6g/10分である。この範囲にあると、プロピレン系樹脂組成物とエチレン−α−オレフィンランダム共重合体との混合具合が良好となり、分散が向上し安定して透明性に優れたバランスのとれた樹脂組成物を得ることができる。
(4)要件(B−iii):エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(B)の密度
エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(B)は、密度が0.899〜0.920g/cm3、好ましくは0.899〜0.910g/cm3であるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体が望ましい。密度が0.899g/cm3以上であれば容器としての剛性を保持することが可能となり、また、密度が0.920g/cm3以下であれば、容器としての透明性を保持することが可能となる。
(5)エチレン由来の構成単位の含有量
エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(B)中のエチレン由来の構成単位の含有量が好ましくは50重量%以上、より好ましくは65〜95重量%の範囲で、他のα−オレフィンを共重合させたものを用いると、衝撃強度が良好となる。他のα−オレフィンの例としては、プロパン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン等を挙げることができる。
具体的なエチレン−α−オレフィンランダム共重合体としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテンランダム共重合体、エチレン−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−3−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘプテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−1−デセン共重合体等を挙げることができる。
このようなエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(B)は、市販品として、日本ポリエチレン(株)製のハーモレックスシリーズ、カーネルシリーズ、プライムポリマー(株)製のエボリューシリーズ、住友化学(株)製のエクセレンFXシリーズ、DOW製のエンゲージシリーズ等が例示できる。
本発明のプロピレン系樹脂組成物においては、耐酸化性などの他の性質を付加させたりするために、ポリオレフィンに対して用いられる公知の添加剤を付加的成分として、本発明の効果を損なわない範囲内で配合することができるが、これら添加剤において本発明の用途である飲料食品分野および医療分野における要求を満足させるものを選択することが必要であるが、特に、結晶化核剤は溶出の観点から実質的に含まないことが必要である。
酸化防止剤の具体例として、フェノール系酸化防止剤の具体例としては、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸などを挙げることができる。
燐系酸化防止剤の具体例としては、トリス(ミックスド、モノ及びジノニルフェニルホスファイト)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、4,4´−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4´−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4´−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトなどを挙げることができる。
硫黄系酸化防止剤の具体例としては、ジ−ステアリル−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ミリスチル−チオ−ジ−プロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリル−チオ−プロピオネート)などを挙げることができる。
本発明のプロピレン系樹脂組成物には、結晶化核剤を実質的に含まない。具体的には結晶化核剤の含有量としては、プロピレン−エチレンランダム共重合体(A)とエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(B)の合計100重量%(これを100重量部とする)に対して、0.002重量部未満である必要があり、好ましくは0重量部である。一般的に透明性改善や剛性向上、成形サイクル向上を目的として造核剤を配合するが、溶出物が増加し、内容物を汚染することが確認された。更に、日本薬局方に適合しなくなることも確認された。そのため、本発明のプロピレン系樹脂組成物には、結晶化核剤を実質的に含まない。結晶化核剤としては、ソルビトール系造核剤(新日本理化(株)製 商品名;ゲルオールMD)、ノニトール系造核剤(ミリケン社製 商品名;ミラッドNX8000J)を例示することができる。
上記添加剤成分の配合方法としては、重合で得られた重合体のパウダーに直接添加剤を予備混合して溶融混練混合する方法、また予め添加剤を高濃度にしたマスターバッチをブレンドする方法等で配合物を得ることができる。上記機械的混合又は溶融混練に用いられる混合機又は溶融混練機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、Vブレンダー、タンブラーミキサー、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー、ブラベンダープラストグラフ、ロール、一軸スクリュー押出造粒機、二軸スクリュー押出造粒機等を挙げることができる。また、溶融混練温度は一般に100〜300℃、好ましくは150〜280℃、より好ましくは180〜250℃で行われる。本発明の二軸延伸ブロー成形用プロピレン系樹脂組成物の製造方法は、上記のとおり溶融混練処理してペレタイズすることによって、ペレット状の組成物とする方法を挙げることができる。 本発明のプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン−エチレンランダム共重合体(A)、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(B)及び、必要に応じて上記添加剤の各所定量を、上記混合機に投入して混合した後、上記溶融混練機で180〜250℃の温度範囲で溶融混練処理することにより得ることができる。
(1)ブロー成形方法
本発明に用いるプロピレン系樹脂組成物のブロー容器は、上記の様にして製造された本発明のプロピレン系樹脂組成物を、ブロー成形機を用いて容器を成形することによって得られる。
使用するブロー成形法としては、円筒状溶融樹脂を押出後に金型を閉じて空気圧力により膨らまし、冷却固化する一般的なダイレクトブロー成形方法が好ましい。ブロー成形条件としては、成形温度が120〜250℃、吹込圧力2〜10kg/cm2(0.196〜0.981MPa)、ブロー比が1.2〜5.0の条件が好ましい。また、これらの成形は単層押出ばかりでなく、各種樹脂との多層押出成形においても広く使用することができるが、多層の場合は本用途が医療用であるため本発明のプロピレン−エチレンランダム共重合体(A)を最内層に用いることが好ましい。
本発明のプロピレン系樹脂組成物から得られるブロー成形体からなる容器の用途としては、飲料容器、食品容器、医療関係全般に用いることができる医療用容器、例えば、飲料水容器、清涼飲料水容器、スポーツドリンク容器等の飲料容器、しょうゆ容器、ソース容器、サラダ油容器等の食品容器、洗眼液容器、栄養剤容器、流動食容器、診断薬容器、医療用キット製剤等の医療用容器が挙げられ、液体のみならず錠剤、粉薬等の固体容器にも使用できる。この中でも耐熱性を必要とし、かつ透明性、衛生性に対する要求性能の高い容器に効力を発揮する。また、医療用キット製剤の用途としては、日本薬局方の適合が求められる血液、リンゲル液、精製水等の静注用輸液容器、液体風邪薬等の投薬容器、目薬容器、洗眼液容器が挙げられ、液体のみならず錠剤、粉薬等の固体容器にも使用できる。
医療用容器として使用されるに際しては、通常、内容物の充填後に加熱滅菌が行われる。加熱滅菌の方法は、一般的な加圧下での蒸気滅菌機等を使用することができ、バッチ法、連続法、シャワー法等いかなる方法でもよい。このとき要求される耐熱性は滅菌方法によって異なり、煮沸殺菌なら100℃、加圧下での蒸気滅菌器で110℃、又は121℃、もしくはそれ以上の温度である。このとき、温度が低いと滅菌効果が劣り、一般的に加熱温度を高くすることができれば加熱時間を削減できるため、加熱滅菌工程の効率を高め、生産効率を上げることができる。そこで、本発明におけるプロピレン系樹脂組成物は少なくとも100℃の耐熱性を有し、好ましくは110℃以上、より好ましくは121℃以上での滅菌に対応できることが好ましい。
なお、実施例及び比較例で用いた評価方法及び使用樹脂は、以下の通りである。
(1)物性評価用射出試験片の準備
樹脂ペレットを型締め力80tの射出成形機を用いて射出成型法で各物性評価用の試験片を作成し、加熱滅菌前の試験片は後述のブロー成形又はプレス成形後に室温23±5℃、相対湿度50±5%に調節された恒温室で72時間状態調整して準備した。
(2)日本薬局方試験用試験片の準備
樹脂ペレットを温度230℃の電気プレスを用いて、圧力0kg/cm2G(ゲージ圧、以下同様)(0MPaG)で7分間溶融させた後、70kg/cm2G(6.86MPaG)の圧力で3分圧縮した。その後、30℃の冷却プレスにサンプルを素早く移動して、圧力120kg/cm2G(11.77MPaG)で3分間冷却を行い、0.5mm厚で表裏の表面積が1200cm2の平板を作製した。
(3)MFR
メルトフローレイト(MFR)は、樹脂ペレットを用いてJIS K−7210−1999(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した。
(4)曲げ弾性率
射出成形法により試験片を成形し、成形後に室温23±5℃、相対湿度50±5%に調節された恒温室に72時間放置した後、JIS K−7171(ISO178)に準拠して求めた。
(5)0℃シャルピー衝撃強度
射出成形法により試験片を成形し、成形後に室温23±5℃、相対湿度50±5%に調節された恒温室に72時間放置した後、0℃の恒温槽内で1時間状態調整してJIS K−7111に準拠して求めた。
(6)透明性(ヘイズ)
射出成形法により厚さ1mmのISO平板を成形し、成形後に室温23±5℃、相対湿度50±5%に調節された恒温室に72時間放置した後、JIS K−7136(ISO14782)JIS K−7361−1に準拠して求めた。
(7)示差走査熱量測定(DSC)
示差走査熱量計(DSC)を用い、樹脂ペレットからサンプル量5.0mgを採り、一旦200℃まで温度を上げて、熱履歴を消去した後、200℃で5分間保持した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させて結晶化させ、再び昇温速度10℃/分にて測定して融解させた際の、50〜180℃の範囲に観測される吸熱ピークトップの温度を最大の結晶融解ピーク温度(融点)(Tm)とした。
(8)ブロー成形性評価
先端にダルメージ混練部がある径50mmφ、L/D22のスクリュー及びダイスがクロスヘッド構造である(株)日本製鋼所製小型ダイレクトブロー成形機JB105型を用い、成形温度200℃、ブロー金型冷却温度15℃、冷却時間24秒の条件にてボトル重量30gの内容量550cc扁平角ボトルを成形し、成形体下部肉厚に対する上部肉厚の比が0.8〜1.0のものを、良好とし、0.8未満のもの又は成形不良若しくは成形不能のものを、不良とした。
上記(8)で得た試料容器に500mlの水を充填し、この試料容器と同じ材料で予め熱圧縮した厚み0.5mmtのシートを、約200℃に加熱したバット溶着機で30秒間、2kgの圧力で熱シールした。続いて、この試料容器を内容量100Lのステンレス製オートクレーブ型蒸気滅菌器に入れ121℃の温度で30分間加熱した後、常温まで冷却して取り出し、容器の状態を判定した。
○;試験前に比して変形が全く認められず。
△;若干の変形の発生が認められる。
×;著しい変形の発生が認められる。
(10)第16改正 日本薬局方一般試験(日本薬局方試験):
日本薬局方「7.02 プラスチック製医薬品容器試験法 2 プラスチック製水溶性注射剤容器の規格、2.1 ポリエチレン製又はポリプロピレン製水性注射剤容器」の項の試験法に従って、灰化試験と溶出物試験を評価した。
但し、試験に用いた試料は、(2)で準備した0.5mm厚で表裏の表面積が1200cm2の平板を用い、灰化試験は平板を5g切削して使用した。溶出物試験は0.5mm厚で表裏の表面積が1200cm2の平板全て用いてこれを長さ約5cm、幅約0.5cmの大きさに細断し、水で洗った後、室温で乾燥し、これを内容積約300mlの硬質ガラス製容器に入れ、水200mlを正確に加え、適当な栓で密封した後、高圧蒸気滅菌器を用いて121℃で1時間加熱した後、室温になるまで放置し、この内溶液を試験液とし、別に水につき、同様の方法で空試験液を調製した。そして日本薬局方 2.1 ポリエチレン製又はポリプロピレン製水性注射剤容器の規格に全て適合すれば適合と、1項目でも不適合であれば不適合と評価した。
プロピレン−エチレンランダム共重合体(A)
(A−1)
チーグラー系プロピレン−エチレンランダム共重合体「日本ポリプロ(株)製;商品名ノバテックPP EG8Q」
MFR(230℃、2.16kg荷重)は0.8g/10min、エチレン含量は3.3重量%、最大の結晶融解ピーク温度が140℃である。
(A−2)
メタロセン系プロピレン−エチレンランダム共重合体「日本ポリプロ(株)製;商品名ウィンテック WFX6Q」
MFR(230℃、2.16kg荷重)は2.0g/10min、エチレン含量は3.2重量%、最大の結晶融解ピーク温度が125℃である。
(A−3)
チーグラー系プロピレン−エチレンランダム共重合体「日本ポリプロ(株)製;商品名ノバテックPP MG03BQ」
MFR(230℃、2.16kg荷重)は30g/10min、エチレン含量は2.2重量%、最大の結晶融解ピーク温度が154℃である。
(B−1)
メタロセン系エチレン−αオレフィン共重合体「日本ポリエチレン(株)製;
商品名カーネル KS261」
MFR(230℃、2.16kg荷重)は4g/10min、密度は0.900g/cm3である。
(B−2)
メタロセン系エチレン−αオレフィン共重合体「日本ポリエチレン(株)製;
商品名カーネル KF283」
MFR(230℃、2.16kg荷重)は5g/10min、密度は0.921g/cm3である。
(B−3)
メタロセン系エチレン−αオレフィン共重合体「日本ポリエチレン(株)製;
商品名カーネル KS240T」
MFR(230℃、2.16kg荷重)は4g/10min、密度は0.880g/cm3である。
(B−4)
メタロセン系エチレン−αオレフィン共重合体「日本ポリエチレン(株)製;
商品名カーネル KS572」
MFR(230℃、2.16kg荷重)は40g/10min、密度は0.907g/cm3である。
(C−1)
フェノール系酸化防止剤 「BASF社製;商品名Irganox1076」
(C−2)
リン系酸化防止剤 「BASF社製;商品名Irgafos168」
(C−3)
中和剤 「協和化学工業(株)製;商品名DHT−4A」
(C−4)
結晶化核剤 「ミリケン・アンド・カンパニー社製 商品名;ミラッドNX8000J」
表1に記載の配合割合で準備し、具体的にはプロピレン−エチレンランダム共重合体(A)とエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(B)の合計100重量%(これを100重量部とする)に対して、処方する添加剤を重量部で秤量した後、スーパーミキサーで3分間ドライブレンドし、35mmΦ2軸押出機を用いて、温度200℃、スクリュー回転数200rpm、押出量約15kg/hr、サンプル供給ホッパーは窒素雰囲気下の条件で、溶融混練し、プロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。物性、評価結果を表1に示す。
一方で、比較例1は、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(B)を含まないため、耐衝撃性に劣ることが分かる。比較例2では、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(B)の配合量が少なく、耐衝撃性に劣ることが分かる。比較例3では、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(B)の配合量が多く、容器として柔軟になりすぎて121℃耐熱性に劣ることがわかる。比較例4はエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(B)の密度が高い為、透明性に劣ることが分かる。比較例5では、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(B)の密度が低いため、透明性に劣ることが分かる。比較例6では、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(B)のMFRが高いため、透明性に劣ることが分かる。比較例7では、プロピレン−エチレンランダム共重合体(A)の融解ピーク温度が低いため、121℃耐熱性に劣ることが分かる。比較例8では、プロピレン−エチレンランダム共重合体(A)のMFRが高いため、ブロー成形性に劣ることが分かる。比較例9では、結晶化核剤を処方しているため、透明性に優れ、物性バランスも良好であるが、日本薬局方には適合しなくなることが分かる。
Claims (5)
- 組成物の全重量を基準にして、以下の要件(A−i)〜(A−iii)を満たすプロピレン−エチレンランダム共重合体(A)を65〜85重量%、以下の要件(B−i)〜(B−iii)を満たすエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(B)を15〜35重量%含有し、かつ、結晶化核剤の含有量が、プロピレン−エチレンランダム共重合体(A)とエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(B)の合計100重量%(これを100重量部とする)に対して、0.002重量部未満である、ブロー成形されることを特徴とするプロピレン系樹脂組成物。
(A−i)温度230℃、荷重が2.16kgの条件で測定したメルトフローレートが0.1〜20g/10分であること。
(A−ii)エチレン含有量が1〜6重量%であること。
(A−iii)示差走査熱量測定において50〜180℃の範囲に観測される最大の結晶融解ピーク温度が135℃以上であること。
(B−i)メタロセン触媒で重合されたエチレン−α−オレフィンランダム共重合体であること。
(B−ii)温度230℃、荷重が2.16kgの条件で測定したメルトフローレートが0.1〜20g/10分であること。
(B−iii)密度が0.899〜0.920g/cm 3であること。 - プロピレン系樹脂組成物が、医療用キット製剤用プロピレン系樹脂組成物である請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物。
- 請求項2に記載の医療用キット製剤用プロピレン系樹脂組成物からなる層を有し、かつ、ブロー成形にて生産される医療用キット製剤。
- 医療用キット製剤が、輸液バック又は輸液ボトルであることを特徴とする請求項3に記載の医療用キット製剤。
- 医療用キット製剤がエチレンオキサイドガス滅菌又は高圧蒸気滅菌がされていることを特徴とする請求項3または4に記載の医療用キット製剤。
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