JP6933200B2 - 形状最適化解析方法及び装置 - Google Patents
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Description
なお、本明細書において形状最適化と称する場合には、予め所定形状、例えばT字形状を想定し、その形状を前提として最適な形状を求めることではなく、所定の形状を想定することなく、解析条件を満たす最適な形状を求めることを意味する。
トポロジー最適化とは、最適化の対象とする領域である設計空間を設けて、当該設計空間に立体要素を組み込み、そこから要求特性を満たし必要最小限な部位を残存させるという最適化方法のことをいう。トポロジー最適化を用いることで、例えば自動車等の構造体の剛性を高めると共に軽量化したり、軽量化するとともに耐衝突性能を向上させるための構造体の形状最適化を実現することができる。
このようなトポロジー最適化に関する技術として、車体構造の最適化による耐衝突性能の向上と耐衝突性能を所定値に保持しつつ軽量化を実現するための技術が特許文献1に開示されている。
本実施の形態に係る車両は、車体骨格(ホワイトボデー)に蓋物等の艤装品やタイヤ等が設定されているものであり、図2に例示するように、乗員の居住空間Lを形成する客室部41と、客室部41の車両前方側及び車両後方側に配設されて車両40が被衝突体(図示なし)に衝突したときの衝突エネルギーを吸収するクラッシャブルゾーン43と、を有している。
本実施の形態に係る形状最適化解析装置1は、図1に示すように、PC(パーソナルコンピュータ)等によって構成され、表示装置3、入力装置5、記憶装置7、作業用データメモリ9及び演算処理部11を有している。
そして、表示装置3、入力装置5、記憶装置7及び作業用データメモリ9は、演算処理部11に接続され、演算処理部11からの指令によってそれぞれの機能が実行される。
以下、本実施の形態に係る形状最適化解析装置1の各構成について説明する。
表示装置3は、解析結果の表示等に用いられ、液晶モニター等で構成される。
入力装置5は、操作者による構造体モデルファイル7aの表示指示や解析条件の入力等に用いられ、キーボードやマウス等で構成される。
記憶装置7は、構造体モデルファイル7aを記憶するものである。構造体モデルファイル7aとは、車両40を平面要素及び/又は立体要素でモデル化した衝突解析モデルの各種情報が格納された衝突解析モデルファイル、及び、平面要素及び/又は立体要素でモデル化した客室部41を少なくとも有する弾性解析モデルの各種情報が格納された弾性解析モデルファイルをいうものとする。
なお、衝突解析モデル及び弾性解析モデルはいずれも、平面要素のみ、または、立体要素のみによってモデル化されたものであってもよいし、あるいは、平面要素と立体要素の組合せによってモデル化されたものであってもよい。
作業用データメモリ9は、演算処理部11による計算結果を記憶するデータ記憶領域9aと、演算処理部11が計算処理を行うための作業領域9bとを有し、RAM(Random Access Memory)等で構成される。
演算処理部11は、図1に示すように、衝突解析部13と、弾性解析部15と、荷重条件選出部17と、形状最適化解析部19と、を有し、PC等コンピュータのCPU(中央演算処理装置)によって構成される。これらの各部は、CPUが所定のプログラムを実行することによって機能する。
演算処理部11における上記の各部の機能を以下に説明する。
衝突解析部13は、客室部41とクラッシャブルゾーン43とを有する車両40を平面要素及び/又は立体要素でモデル化した衝突解析モデル(図示なし)を取得し、該衝突解析モデルを被衝突体に衝突させる衝突解析を行い、該衝突解析モデルにおける客室部の衝突による変形の変位を取得するものである。
図3に示す変位は、衝突による変形の変位の最大値により規格化したものであり、ダッシュボード57のステアリングシャフト付け根部57a及び足元周りフロア部57bの変位が大きい結果が得られた。この結果から、これらの部位の衝突による変形が乗員に障害を負わせる可能性が懸念される。
もっとも、衝突解析部13による衝突解析において車両が被衝突体との衝突を開始すると、まず、衝突解析モデルにおけるクラッシャブルゾーンが潰れて衝突エネルギーを吸収し、続いて、客室部に衝突による荷重が作用して塑性変形である座屈変形を開始する。そのため、衝突解析部13は、衝突による荷重が客室部に作用してから該客室部が座屈変形を開始する直前までの間を対象とすることが好ましい。
反力は、衝突開始から増加して15msecで最大値を示した後に減少する。そして、反力は35msecで極小値となった後、再度、増加し、45msecで極大値となった。その後、反力は減少し、70msec以降は0となり、車両の衝突による変形は終了した。
弾性解析部15は、平面要素及び/又は立体要素によりモデル化された客室部を少なくとも有する弾性解析モデルを取得し、該弾性解析モデルに異なる荷重条件を設定して弾性解析を行い、前記異なる荷重条件ごとに客室部の弾性変形による変位を取得するものである。
荷重条件選出部17は、弾性解析部15により異なる荷重条件ごとに取得した客室部61の弾性変形の変位と衝突解析部13により取得した客室部の衝突による変形の変位とを比較し、前記異なる荷重条件のうち前記衝突による変形との間で所定の条件を満たす前記弾性変形となる荷重条件を選出するものである。
まず、弾性解析部15により取得した客室部61の弾性変形の変位と衝突解析部13により取得した客室部の衝突による変形の変位の各評価点での偏差を求め、該求めた偏差が予め定めた閾値以下であるかどうかを判定する。
閾値以下であると判定された場合には、当該評価点における衝突による変形の変位と弾性変形の変位とが一致していると判定し、閾値以下でないと判定された場合には、当該評価点における変位は不一致であると判定する。
このよう、弾性解析部により設定した異なる荷重条件ごとに変位の一致率を算出し、全ての荷重条件のうち、変位の一致率が最も高い荷重条件を選出する。
形状最適化解析部19は、荷重条件選出部17により選出した荷重条件を用いて客室部最適な形状を求める形状最適化解析を行うものであり、図1に例示するように、構造体モデル取得部21、設計空間設定部23、最適化ブロックモデル生成部25、結合処理部27、材料特性設定部29、解析条件設定部31、最適化解析部33、とを有する。形状最適化解析部19としては、例えば以下の参考文献1に開示されている形状最適化解析装置の一部を用いることができる。
(参考文献1)特開2014−149733号公報
本実施の形態では、ダッシュボード63については厚さ25mm、フロア部65については高さ70mm、センタートンネル部67については高さ30mmという寸法で設計空間を設定した。
図9に、本実施の形態において生成した最適化ブロックモデル81を示す。最適化ブロックモデル81には、弾性解析モデル60(図5及び図6)におけるダッシュボード63、フロア部65及びセンタートンネル部67に相当する部位として、ダッシュボード83、フロア部85及びセンタートンネル部87がそれぞれ設定され、最適化ブロックモデル81は、六面体立体要素によって要素サイズが約7.5mmとなるようにメッシュ化されている。
最適化ブロックモデルと構造体モデルとの結合には、剛体要素、板要素または梁要素を用いることができる。
制約条件は、最適化解析を行う上で課す制約であり、例えば、最適化前の最適化ブロックモデル81の体積に対して最適化後の最適化ブロックモデルの体積比率である材料体積率、任意の部分の変位等がある。制約条件は、複数設定可能である。
図10に、最適化ブロックモデル81について求めた最適形状91の一例を示す。
最適化パラメータの離散化を行うことで、薄板の構造体形状に反映することが可能となる。
本実施の形態に係る形状最適化解析方法は、図2に示すような客室部41を有する車両40が被衝突体に衝突した際の該衝突に対する客室部41の最適な形状を求めるものであって、図11に示すように、衝突解析ステップS1と、弾性解析ステップS3と、荷重条件選出ステップS5と、形状最適化解析ステップS7と、を備えている。
以下、各ステップについて説明する。なお、以下の説明では、各ステップとも、コンピュータによって構成された形状最適化解析装置1を用いて実行するものとしている。
衝突解析ステップS1は、車両40を平面要素及び/又は立体要素でモデル化した衝突解析モデルを取得し、該衝突解析モデルを前記被衝突体に衝突させる衝突解析を行い、該衝突解析モデルにおける前記客室部の衝突による変形の変位を取得するものであり、形状最適化解析装置1においては衝突解析部13が行うものである。
弾性解析ステップS3は、少なくとも平面要素及び/又は立体要素でモデル化した前記客室部を有する弾性解析モデルを取得し、該弾性解析モデルに異なる荷重条件を設定して弾性解析を行い、前記異なる荷重条件ごとに前記客室部の弾性変形の変位を取得するものであり、形状最適化解析装置1においては弾性解析部15が行うものである。
荷重条件選出ステップS5は、弾性解析ステップS3において異なる荷重条件ごとに取得した客室部の弾性変形の変位と衝突解析ステップS1において取得した客室部の衝突による変形の変位とを比較し、前記異なる荷重条件のうち、衝突による変形の変位との間で所定の条件を満たす弾性変形の変位となる荷重条件を選出するものあり、形状最適化解析装置1においては、荷重条件選出部17が行うものである。
形状最適化解析ステップS7は、荷重条件選択ステップS5で選出した荷重条件を用いて前記客室部の最適な形状を求める形状最適化解析を行うものであり、形状最適化解析装置1においては、形状最適化解析部19が行うものである。
まず、形状最適化解析部19の構造体モデル取得部21により、構造体モデル(例えば、図5及び図6に示す弾性解析モデル60)を読み出して表示する(S11)。
具体的には、構造体モデルにおいて、最適化処理の対象となる部位の座標を指定し、当該部位の要素を削除する指示を行う。この指示がなされることで、設計空間設定部23が当該部位の要素を削除する処理を行い、設計空間が設定される。
具体的には、操作者は設計空間に入る大きさの最適化ブロックモデル81の生成を最適化ブロックモデル生成部25に指示する。この指示により、設計空間の内部が立体要素で要素分割された最適化ブロックモデル81が生成される。
最適化ブロックモデルと構造体モデルとの結合について、操作者は、剛体要素、板要素または梁要素のいずれの要素を用いるかを指示することができる。
最適化解析条件としては、前述したように、ひずみエネルギーを最小にする、吸収エネルギーを最大にする等の目的条件と、材料体積率等の制約条件を設定する。
荷重条件としては、衝突荷重を加える位置や方向、荷重値を設定する。
本実施例では、上記の実施の形態で述べたように、客室部41とクラッシャブルゾーン43を有する車両40(図2参照)のスモールオーバーラップ衝突を対象とし、客室部の最適形状91を求めた。さらに、最適形状に基づいて客室部の構造(発明構造)を設定し、その重量増加と衝突による変形に伴う客室部内部への侵入量を評価した。
発明例においては、荷重条件の設定と、客室部に設定した変位の評価点における変位の偏差の算出と、偏差の一致率の算出とをプログラムにより自動的に行うことが可能であり、本実施例で用いたコンピュータでは1つの荷重条件に対する偏差の一致率を算出までを完了するのに要する時間はわずか約4分であるため、荷重を負荷するX方向の荷重値とY方向の荷重値の組合せとして1843条件について偏差の一致率を算出した。
そのため、同じ時間を掛けて実施した場合、比較例においては、X方向の荷重値とY方向の荷重値の組合せが発明例に比べて少なく、発明例においては非常に広範囲かつ多様な荷重条件についての変位の一致率によって定量的に検討可能となった。
発明例においては、広範囲かつ多様な荷重値について衝突による変形の変位と弾性変形の変位との偏差を比較したため、比較例と比較して変位の一致率の高い荷重条件を得ることができた。
比較例と比較すると、発明例における荷重値は1.5倍から2倍増加していることがわかる。
図18に示す発明例に係る発明構造100は、ダッシュボード45の上部に左右のAピラーロア51に接続するハット断面部材101と、ダッシュボード45の下部にホイルハウス45cからセンタートンネル部49に向かって接続するハット断面部材103を追加したものである。
図19に示す比較例に係る比較構造110は、ダッシュボード45の上部中央に接続するハット断面部材111と、フロア部47の前部であってホイルハウス45cの近くからセンタートンネル部49に向かって接続するハット断面部材113を追加したものである。
これにより、元の客室部に比べると、発明例に係る発明構造100の重量は2.2kg増加し、比較例に係る比較構造110の重量は1.6kg増加した。
さらに、発明構造100及び比較構造110に係る客室部の変位と従来の客室部の変位の偏差を従来の客室部の変位で除した値を性能向上率として、発明例及び比較例のそれぞれについて算出し、さらに、増加重量で除した重量効率を求めた。その結果、比較例に係る比較構造110に比べると、発明例に係る発明構造100は約3倍の重量効率を示した。
3 表示装置
5 入力装置
7 記憶装置
7a 構造体モデルファイル
9 作業用データメモリ
9a データ記憶領域
9b 作業領域
11 演算処理部
13 衝突解析部
15 弾性解析部
17 荷重条件選出部
19 形状最適化解析部
21 構造体モデル取得部
23 設計空間設定部
25 最適化ブロックモデル生成部
27 結合処理部
29 材料特性設定部
31 解析条件設定部
33 最適化解析部
40 車両
41 客室部
43 クラッシャブルゾーン
45 ダッシュボード
45c ホイルハウス
47 フロア部
47a 後端
49 センタートンネル部
51 Aピラーロア
57 ダッシュボード(衝突解析モデル)
57a ステアリングシャフト付け根部
57b 足元周りフロア部
60 弾性解析モデル
61 客室部
63 ダッシュボード
65 フロア部
67 センタートンネル部
69 Aピラーロア
71 フロントサイドメンバ
81 最適化ブロックモデル
83 ダッシュボード
85 フロア部
87 センタートンネル部
91 最適形状(発明例)
93 ダッシュボード
95 最適形状(比較例)
97 ダッシュボード
100 発明構造(発明例)
101 ハット断面部材
103 ハット断面部材
110 比較構造(比較例)
111 ハット断面部材
113 ハット断面部材
Claims (4)
- 客室部を有する車両が被衝突体に衝突した際の該衝突に対する前記客室部の最適な形状を求めるために、コンピュータが以下の各ステップを行う形状最適化解析方法であって、
前記車両を平面要素及び/又は立体要素でモデル化した衝突解析モデルを取得し、該衝突解析モデルを前記被衝突体に衝突させる衝突解析を行い、該衝突解析モデルにおける客室部の衝突による変形の変位を取得する衝突解析ステップと、
平面要素及び/又は立体要素でモデル化した前記客室部を少なくとも有する弾性解析モデルを取得し、該弾性解析モデルに異なる荷重条件を設定して弾性解析を行い、前記異なる荷重条件ごとに前記客室部の弾性変形の変位を取得する弾性解析ステップと、
該弾性解析ステップにおいて前記異なる荷重条件ごとに取得した前記客室部の弾性変形の変位と前記衝突解析ステップにおいて取得した前記客室部の衝突による変形の変位とを比較し、前記衝突による変形の変位との間で所定の条件を満たす前記弾性変形の変位となる前記荷重条件を選出する荷重条件選出ステップと、
該荷重条件選出ステップで選出した荷重条件を用いて前記客室部の最適な形状を求める形状最適化解析を行う形状最適化解析ステップと、を備えたことを特徴とする形状最適化解析方法。 - 前記車両は、前記客室部の車両前方側及び車両後方側に衝突エネルギーを吸収するクラッシャブルゾーンを有し、
前記衝突解析ステップは、前記衝突解析モデルにおける前記車両前方側又は車両後方側の前記クラッシャブルゾーンを前記被衝突体に衝突させる衝突解析を行い、前記被衝突体に作用する前記衝突解析モデルからの反力が最大値を示してから前記客室部が座屈変形を開始するまでの間における該客室部の変位を取得する、ことを特徴とする請求項1記載の形状最適化解析方法。 - 客室部を有する車両が被衝突体に衝突した際の該衝突に対する前記客室部の最適な形状を求める形状最適化解析装置であって、
前記車両を平面要素及び/又は立体要素でモデル化した衝突解析モデルを取得し、該衝突解析モデルを前記被衝突体に衝突させる衝突解析を行い、該衝突解析モデルにおける客室部の衝突による変形の変位を取得する衝突解析部と、
平面要素及び/又は立体要素でモデル化した前記客室部を少なくとも有する弾性解析モデルを取得し、該弾性解析モデルに異なる荷重条件を設定して弾性解析を行い、前記異なる荷重条件ごとに前記客室部の弾性変形の変位を取得する弾性解析部と、
該弾性解析部により前記異なる荷重条件ごとに取得した前記客室部の弾性変形の変位と前記衝突解析部により取得した前記客室部の衝突による変形の変位とを比較し、前記異なる荷重条件のうち、前記衝突による変形の変位との間で所定の条件を満たす前記弾性変形の変位となる荷重条件を選出する荷重条件選出部と、
該荷重条件選出部により選出した荷重条件を用いて前記客室部の最適な形状を求める形状最適化解析を行う形状最適化解析部と、を備えたことを特徴とする形状最適化解析装置。 - 前記車両は、前記客室部の車両前方側及び車両後方側に衝突エネルギーを吸収するクラッシャブルゾーンを有し、
前記衝突解析部は、前記衝突解析モデルにおける前記車両前方側又は車両後方側の前記クラッシャブルゾーンを前記被衝突体に衝突させる衝突解析を行い、前記被衝突体に作用する前記衝突解析モデルからの反力が最大値を示してから前記客室部が座屈変形を開始するまでの間における該客室部の変位を取得する、ことを特徴とする請求項3記載の形状最適化解析装置。
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