<コーティング組成物>
本発明のコーティング組成物は、必須成分として、ブロックイソシアネートと、硬化性官能基含有フッ素ポリマーとを含む。
(1)ブロックイソシアネート
ブロックイソシアネートは、芳香環不含有ポリイソシアネート化合物がブロック剤によってブロックされており、芳香環不含有ポリイソシアネート化合物とブロック剤との反応生成物(芳香環不含有ブロックイソシアネート)である。
(1−1)芳香環不含有ポリイソシアネート化合物
芳香環不含有ポリイソシアネート化合物は、2つ以上の遊離のイソシアネート基を有する。芳香環不含有ポリイソシアネート化合物として、例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物などが挙げられる。なお、芳香環不含有ポリイソシアネート化合物には、芳香環含有ポリイソシアネート化合物は含まれない。芳香環含有ポリイソシアネート化合物として、例えば、芳香族ポリイソシアネート化合物(例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシネート(MDI)、それらの誘導体など)、芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物(例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、それらの誘導体など)などが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネート化合物として、例えば、脂肪族ポリイソシアネート単量体、脂肪族ポリイソシアネート誘導体などが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネート単量体として、例えば、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート)、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエートなどが挙げられる。
また、脂肪族ポリイソシアネート単量体は、脂環族ポリイソシアネート単量体を含む。
脂環族ポリイソシアネート単量体として、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロジイソシアネート)(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(4,4’−、2,4’−または2,2’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート、これらのTrans,Trans−体、Trans,Cis−体、Cis,Cis−体、もしくはその混合物))(H12MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート(各種異性体もしくはその混合物)(NBDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物)(H6XDI)などが挙げられる。脂肪族ポリイソシアネート単量体は、単独使用または2種以上併用することができる。
脂肪族ポリイソシアネート誘導体は、例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネート単量体の多量体、ポリオール変性体、アロファネート変性体、ビウレット変性体、ウレア変性体、オキサジアジントリオン変性体、カルボジイミド変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。脂肪族ポリイソシアネート誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
脂肪族ポリイソシアネート単量体の多量体として、例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネート単量体の2量体(例えば、ウレトジオン変性体)、3量体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体)、5量体、7量体などが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネート単量体のポリオール変性体として、例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネート単量体と、公知の低分子量ポリオール(例えば、トリメチロールプロパンなど)との反応生成物(アルコールアダクト体)などが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネート単量体のアロファネート変性体として、例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネート単量体と、公知の低分子量ポリオールとを、公知のアロファネート化触媒の存在下で反応させた反応生成物などが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネート単量体のビウレット変性体として、例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネート単量体と、水やアミン類とを、公知のビウレット化触媒の存在下で反応させた反応生成物などが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネート単量体のウレア変性体として、例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネート単量体と、ジアミンとの反応生成物などが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネート単量体のオキサジアジントリオン変性体として、例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネート単量体と、炭酸ガスとの反応生成物などが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネート単量体のカルボジイミド変性体として、例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネート単量体の脱炭酸縮合反応による反応生成物などが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネート単量体のウレトンイミン変性体として、例えば、上記のカルボジイミド変性体と、上記した脂肪族ポリイソシアネート単量体との反応生成物などが挙げられる。
このような脂肪族ポリイソシアネート化合物のなかでは、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネート誘導体が挙げられ、さらに好ましくは、脂肪族ポリイソシアネート単量体の多量体が挙げられる。つまり、芳香環不含有ポリイソシアネート化合物は、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネート誘導体を含み、さらに好ましくは、脂肪族ポリイソシアネート単量体の多量体を含む。
芳香環不含有ポリイソシアネート化合物が脂肪族ポリイソシアネート誘導体(脂肪族ポリイソシアネート単量体の多量体)を含むと、ブロックイソシアネートと硬化性官能基含有フッ素ポリマーとの相溶性の向上を確実に図ることができ、コーティング組成物から形成される硬化塗膜(後述)の硬化性(耐溶剤性)の向上を確実に図ることができる。
また、脂肪族ポリイソシアネート単量体の多量体のなかでは、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネート単量体の3量体が挙げられ、さらに好ましくは、脂環骨格を有しない脂肪族ポリイソシアネート単量体(脂環族ポリイソシアネート単量体を除く脂肪族ポリイソシアネート単量体)の3量体が挙げられ、とりわけ好ましくは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の3量体が挙げられる。
また、芳香環不含有ポリイソシアネート化合物は、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネート誘導体(より好ましくは、脂肪族ポリイソシアネート化合物の多量体、さらに好ましくは、脂肪族ポリイソシアネート単量体の3量体、とりわけ好ましくは、脂環骨格を有しない脂肪族ポリイソシアネート単量体の3量体、特に好ましくは、HDIの3量体)からなる。
芳香環不含有ポリイソシアネート化合物におけるイソシアネート基の平均官能基数は、例えば、2以上、好ましくは、2.5以上、例えば、4以下、好ましくは、3.5以下である。
また、芳香環不含有ポリイソシアネート化合物におけるイソシアネート基含有量(NCO%)は、例えば、2質量%以上、好ましくは、5質量%以上、例えば、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。なお、イソシアネート基含有量は、電位差滴定装置を用いて、JIS K−1603−1(2007年)に準拠したn−ブチルアミン法により測定できる(以下同様)。
(1−2)ブロック剤
ブロック剤は、第1ブロック剤と、第2ブロック剤とを含む。
そのため、ブロックイソシアネートは、第1ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基と、第2ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基とを含有する。
(1−2−1)第1ブロック剤
第1ブロック剤は、イソシアネート基をブロックして不活性化する一方、脱ブロック後にはイソシアネート基を活性化し、また、イソシアネート基をブロックした状態および脱ブロックされた状態において、イソシアネート基を活性化させる触媒作用(後述)を有する。
具体的には、第1ブロック剤は、後述する第2ブロック剤よりもイソシアネート基を活性化させる触媒作用(後述)が大きく、下記一般式(1)で示される。第1ブロック剤は、イソシアネート基と反応可能な活性基を有し、グアニジン骨格を有するグアニジン化合物である。
(式中、R1〜R3は、炭素数1〜12の炭化水素基または水素原子を示し、かつ、R1〜R3の少なくともいずれか1つが水素原子を示し、また、R1およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。R4およびR5は、炭素数1〜12の炭化水素基または水素原子を示し、また、R4およびR1が互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、R5およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成してもよい。)
上記一般式(1)において、R1〜R3は、互いに同一または相異なって、炭素数1〜12の炭化水素基または水素原子を示し、かつ、R1〜R3の少なくともいずれか1つが水素原子を示す。
R1〜R3で示される炭素数1〜12の炭化水素基として、例えば、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基などが挙げられる。
炭素数1〜12のアルキル基として、例えば、炭素数1〜12の鎖状アルキル基、炭素数3〜12の環状アルキル基などが挙げられる。
炭素数1〜12の鎖状アルキル基として、直鎖または分岐の炭素数1〜12の鎖状アルキル基が挙げられ、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、イソノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどが挙げられる。
炭素数3〜12の環状アルキル基として、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロドデシルなどが挙げられる。
炭素数6〜12のアリール基として、例えば、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、アズレニル、ビフェニルなどが挙げられる。
炭素数1〜12の炭化水素基は、R1〜R3において、互いに同一または相異なっていてもよい。
また、R1およびR3は、互いに結合してヘテロ環を形成することができる。
R1およびR3が互いに結合して形成されるヘテロ環は、−N=C−N−構造を有する含窒素ヘテロ環であって、例えば、3〜20員環のヘテロ環、好ましくは、3〜10員環、さらに好ましくは、3〜8員環、とりわけ好ましくは、5〜7員環のヘテロ環が挙げられる。また、ヘテロ環は、例えば、単環状であってもよく、例えば、複数の単環が一辺を共有する多環状であってもよい。また、ヘテロ環は、共役系ヘテロ環であってもよい。なお、R1およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成する場合、R2は、水素原子を示す。
このような上記一般式(1)におけるR1およびR2のなかでは、低温硬化性の観点から、好ましくは、炭素数1〜12の炭化水素基が挙げられ、さらに好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基が挙げられ、とりわけ好ましくは、炭素数1〜12の鎖状アルキル基が挙げられる。なお、R1およびR2が上記の炭化水素基である場合、R3は、水素原子を示す。
上記一般式(1)において、R4およびR5は、互いに同一または相異なって、炭素数1〜12の炭化水素基または水素原子を示す。
R4およびR5で示される炭素数1〜12の炭化水素基として、例えば、上記した炭素数1〜12の炭化水素基が挙げられる。
また、R4およびR1が互いに結合してヘテロ環を形成するとともに、R5およびR3が互いに結合してヘテロ環を形成することができる。
また、それらR1、R3、R4およびR5から形成されるヘテロ環は、複数の単環が一辺を共有する多環状であってもよい。その場合に形成されるヘテロ環は、−N=C−N−構造を有する含窒素ヘテロ環であって、例えば、6〜20員環のヘテロ環、好ましくは、6〜15員環、さらに好ましくは、6〜12員環、とりわけ好ましくは、10〜12員環のヘテロ環が挙げられる。また、ヘテロ環は、共役系ヘテロ環であってもよい。なお、R1、R3、R4およびR5がヘテロ環を形成する場合、R2は、水素原子を示す。このようなヘテロ環構造として、具体的には、例えば、トリアザビシクロ環構造などが挙げられる。
上記一般式(1)におけるR4およびR5のなかでは、低温硬化性の観点から、好ましくは、炭素数1〜12の炭化水素基が挙げられ、さらに好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基が挙げられ、とりわけ好ましくは、炭素数1〜12の鎖状アルキル基が挙げられる。
このような上記一般式(1)に示される第1ブロック剤として、具体的には、1−アルキルグアニジン(例えば、1−メチルグアニジンなど)、1−アリールグアニジン(例えば、1−フェニルグアニジンなど)、1,3−ジアルキルグアニジン(例えば、1,3−ジメチルグアニジンなど)、1,3−ジアリールグアニジン(例えば、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ(o−トリル)―グアニジンなど)、1,1−ジアルキルグアニジン(例えば、1,1−ジメチルグアニジン、1,1−ジエチルグアニジンなど)、1,2,3−トリアルキルグアニジン(例えば、1,2,3−トリメチルグアニジンなど)、1,2,3−トリアリールグアニジン(例えば、1,2,3−トリフェニルグアニジンなど)、1,1,3,3−テトラアルキルグアニジン(例えば、1,1,3,3−テトラメチルグアニジンなど)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン 、2−アミン−イミダゾールなどが挙げられる。第1ブロック剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
上記一般式(1)に示される第1ブロック剤(グアニジン化合物)のなかでは、好ましくは、1,1,3,3−テトラアルキルグアニジン、さらに好ましくは、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(TMG、解離温度110℃)が挙げられる。
つまり、第1ブロック剤は、好ましくは、TMGを含み、さらに好ましくは、TMGからなる。
第1ブロック剤がTMGを含むと、コーティング組成物の低温硬化性の向上を図ることができながら、硬化塗膜(後述)の硬化性(耐溶剤性)の向上をより確実に図ることができる。
第1ブロック剤の解離温度は、例えば、60℃以上、好ましくは、80℃以上、例えば、150℃以下、好ましくは、130℃以下である。
なお、ブロック剤の解離温度は、以下の方法により測定できる(以下同様)。
ブロックイソシアネートをシリコンウェハーに塗布し、加熱しながらIR測定によってイソシアネート基が再生する温度を観察する。なお、ブロック剤の触媒能(後述)が高く、再生したイソシアネート基を観察できない場合には、公知のポリオールと混合し、その混合物をシリコンウェハーに塗布し、加熱しながらIR測定によってポリオールの水酸基が反応する温度を観察することにより、ブロック剤の解離温度を測定できる。
(1−2―1)第2ブロック剤
第2ブロック剤は、イソシアネート基をブロックして不活性化する一方、脱ブロック後にはイソシアネート基を再生するブロック剤であって、再生されたイソシアネート基を活性化させる程度の触媒作用(後述)を有しないか、または、再生されたイソシアネート基を活性化させる程度の触媒作用(後述)を有したとしてもその触媒作用(後述)が上記の第1ブロック剤よりも小さい。つまり、第2ブロック剤は、第1ブロック剤よりもイソシアネート基を活性化させる触媒作用が小さい。
なお、第1ブロック剤の触媒作用と第2ブロック剤の触媒作用は、特開2017−82208号公報の[0242]段落〜[0247]段落に記載の方法により比較できる。その比較方法の詳細については、後の(1−4)触媒作用の比較において詳述する。
第2ブロック剤は、イミダゾール骨格を含んでおらず、すなわち、イミダゾール系化合物を含有していない。なお、イミダゾール系化合物とは、具体的には、特開2017−82208号公報の[0058]段落に記載のイミダゾール系化合物(例えば、イミダゾールなど)などが挙げられる。
また、第2ブロック剤は、イソシアネート基と反応可能な活性基を有する。
第2ブロック剤として、例えば、アルコール系化合物、フェノール系化合物、活性メチレン系化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、オキシム系化合物、カルバミン酸系化合物、尿素系化合物、酸アミド系(ラクタム系)化合物、酸イミド系化合物、トリアゾール系化合物、ピラゾール系化合物、メルカプタン系化合物、重亜硫酸塩、イミダゾリン系化合物、および、ピリミジン系化合物などが挙げられる。第2ブロック剤は、単独使用または2種併用することができる。
アルコール系化合物として、例えば、特開2017−82208号公報の[0070]段落に記載のアルコール系化合物などが挙げられる。
フェノール系化合物として、例えば、特開2017−82208号公報の[0071]段落に記載のフェノール系化合物などが挙げられる。
活性メチレン系化合物として、例えば、特開2017−82208号公報の[0072]段落に記載の活性メチレン系化合物などが挙げられる。
アミン系化合物として、例えば、特開2017−82208号公報の[0073]段落に記載のアミン系化合物などが挙げられる。
イミン系化合物として、例えば、特開2017−82208号公報の[0074]段落に記載のイミン系化合物などが挙げられる。
オキシム系化合物として、例えば、特開2017−82208号公報の[0075]段落に記載のオキシム系化合物(具体的には、メチルエチルケトオキシム(解離温度130℃)など)などが挙げられる。
カルバミン酸系化合物として、例えば、特開2017−82208号公報の[0076]段落に記載のカルバミン酸系化合物などが挙げられる。
尿素系化合物として、例えば、特開2017−82208号公報の[0077]段落に記載の尿素系化合物などが挙げられる。
酸アミド系(ラクタム系)化合物として、例えば、特開2017−82208号公報の[0078]段落に記載の酸アミド系(ラクタム系)化合物などが挙げられる。
酸イミド系化合物として、例えば、特開2017−82208号公報の[0079]段落に記載の酸イミド系化合物などが挙げられる。
トリアゾール系化合物として、例えば、特開2017−82208号公報の[0080]段落に記載のトリアゾール系化合物などが挙げられる。
ピラゾール系化合物として、例えば、特開2017−82208号公報の[0081]段落に記載のピラゾール系化合物(具体的には、3,5−ジメチルピラゾール(解離温度120℃)など)などが挙げられる。
メルカプタン系化合物として、例えば、特開2017−82208号公報の[0082]段落に記載のメルカプタン系化合物などが挙げられる。
重亜硫酸塩として、例えば、特開2017−82208号公報の[0083]段落に記載の重亜硫酸塩などが挙げられる。
イミダゾリン系化合物として、例えば、特開2017−82208号公報の[0059]段落に記載のイミダゾリン系化合物などが挙げられる。
ピリミジン系化合物として、例えば、特開2017−82208号公報の[0060]段落に記載のピリミジン系化合物などが挙げられる。
第2ブロック剤のなかでは、好ましくは、オキシム系化合物およびピラゾール系化合物が挙げられ、さらに好ましくは、ピラゾール系化合物が挙げられ、とりわけ好ましくは、3,5−ジメチルピラゾールが挙げられる。
つまり、第2ブロック剤は、好ましくは、オキシム系化合物および/またはピラゾール系化合物を含み、さらに好ましくは、ピラゾール系化合物を含み、とりわけ好ましくは、3,5−ジメチルピラゾールを含む。
第2ブロック剤がオキシム系化合物および/またはピラゾール系化合物(とりわけ、ピラゾール系化合物)を含むと、コーティング組成物の低温硬化性の向上を確実に図ることができながら、硬化塗膜(後述)の硬化性(耐溶剤性)の向上を確実に図ることができる。
また、第2ブロック剤は、好ましくは、オキシム系化合物および/またはピラゾール系化合物(さらに好ましくは、ピラゾール系化合物、とりわけ好ましくは、3,5−ジメチルピラゾール)からなる。
このような第2ブロック剤の解離温度は、例えば、60℃以上、例えば、150℃以下、好ましくは、140℃以下である。
また、第1ブロック剤および第2ブロック剤の組み合わせとして、好ましくは、上記一般式(1)で示されるグアニジン化合物(第1ブロック剤)とピラゾール系化合物(第2ブロック剤)との組み合わせ、上記一般式(1)で示されるグアニジン化合物(第1ブロック剤)とオキシム系化合物(第2ブロック剤)との組み合わせが挙げられる。
より具体的には、第1ブロック剤および第2ブロック剤の組み合わせとして、好ましくは、1,1,3,3−テトラアルキルグアニジン(TMG、第1ブロック剤)と3,5−ジメチルピラゾール(DMP、第2ブロック剤)との組み合わせ、TMG(第1ブロック剤)とメチルエチルケトオキシム(MEKO、第2ブロック剤)との組み合わせが挙げられ、さらに好ましくは、TMG(第1ブロック剤)とDMP(第2ブロック剤)との組み合わせが挙げられる。
(1−3)ブロックイソシアネートの製造
次に、ブロックイソシアネートの製造について説明する。
ブロックイソシアネートを製造するには、上記した芳香環不含有ポリイソシアネート化合物と、上記した第1ブロック剤および上記した第2ブロック剤とを反応させる。
芳香環不含有ポリイソシアネート化合物と、第1ブロック剤および第2ブロック剤との反応順序は、特に制限されないが、例えば、芳香環不含有ポリイソシアネート化合物と第2ブロック剤とを、遊離のイソシアネート基が残存する割合で反応させた後、その遊離のイソシアネート基を有するブロックイソシアネートと第1ブロック剤とを反応させる。
芳香環不含有ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する、第2ブロック剤におけるイソシアネート基と反応可能な活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.2以上、好ましくは、0.5以上、例えば、1.0未満、好ましくは、0.9以下である。
また、芳香環不含有ポリイソシアネート化合物と第2ブロック剤との反応は、例えば、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気において実施される。
反応温度は、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下であり、反応圧力は、例えば、大気圧である。反応時間は、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
これにより、第2ブロック剤が芳香環不含有ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部をブロックして、第2潜在イソシアネート基を生成するとともに、芳香環不含有ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の残部を遊離のイソシアネート基として残存させる。
次いで、遊離のイソシアネート基が残存するブロックイソシアネートと第1ブロック剤とを反応させる。
ブロックイソシアネートの遊離のイソシアネート基に対する、第1ブロック剤におけるイソシアネート基と反応可能な活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.1以上、例えば、1.3以下、好ましくは、1.2以下である。
なお、ブロックイソシアネートと第1ブロック剤との反応条件は、上記した芳香環不含有ポリイソシアネート化合物と第2ブロック剤との反応条件と同様である。
また、反応の終了は、例えば、赤外分光分析法などを採用し、イソシアネート基の消失または減少を確認することによって判断できる。
これにより、ブロックイソシアネートにおいて、遊離のイソシアネート基が第1ブロック剤と反応して、第1潜在イソシアネート基を生成する。
この反応において、第1ブロック剤および第2ブロック剤の割合は、ブロックイソシアネートにおける第1潜在イソシアネート基と第2潜在イソシアネート基との含有割合が、下記の範囲となるように、適宜設定される。
ブロックイソシアネートにおいて、第1潜在イソシアネート基の含有割合は、特に限定されないが、好ましくは、第2潜在イソシアネート基の含有割合よりも少なく、第1潜在イソシアネート基および第2潜在イソシアネート基の総mol量に対して、例えば、1mol%以上、好ましくは、5mol%以上、さらに好ましくは、10mol%以上、例えば、50mol%未満、好ましくは、30mol%以下、さらに好ましくは、20mol%以下である。
ブロックイソシアネートにおいて、第2潜在イソシアネート基の含有割合は、第1潜在イソシアネート基および第2潜在イソシアネート基の総mol量に対して、例えば、50mol%を超過し、好ましくは、70mol%以上、さらに好ましくは、80mol%以上、例えば、99mol%以下、好ましくは、95mol%以下、さらに好ましくは、90mol%以下である。
第1潜在イソシアネート基および第2潜在イソシアネート基の含有割合が上記範囲であれば、コーティング組成物の低温硬化性およびポットライフの向上を図ることができる。
また、上記の各反応は、いずれも、無溶剤下であってもよく、例えば、有機溶媒の存在下であってもよい。
有機溶媒として、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、ニトリル類(例えば、アセトニトリルなど)、アルキルエステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなど)、グリコールエーテルエステル類(例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなど)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなど)、ハロゲン化脂肪族炭化水素類(例えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタンなど)、極性非プロトン類(例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなど)などが挙げられる。有機溶媒は、単独使用または2種以上併用することができる。
このような有機溶媒のなかでは、好ましくは、エーテル類が挙げられる。
以上によって、芳香環不含有ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基が第1ブロック剤および第2ブロック剤にブロックされた、ブロックイソシアネートが調製される。
ブロックイソシアネートは、第1ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第1潜在イソシアネート基と、第2ブロック剤によりイソシアネート基がブロックされている第2潜在イソシアネート基とを、1分子中に併有している。
なお、ブロックイソシアネートの製造方法は、上記の方法に限定されない。
例えば、芳香環不含有ポリイソシアネート化合物と第1ブロック剤とを、遊離のイソシアネート基が残存する割合で反応させた後、その遊離のイソシアネート基を有するブロックイソシアネートと第2ブロック剤とを反応させてもよい。また、芳香環不含有ポリイソシアネート化合物と第1ブロック剤および第2ブロック剤とを同時に反応させてもよい。
また、第1ブロック剤のみによってブロックされた芳香環不含有ポリイソシアネート化合物と、第2ブロック剤のみによってブロックされた芳香環不含有ポリイソシアネート化合物とを別々に調製し、それらを、第1潜在イソシアネート基および第2潜在イソシアネート基の含有割合が上記範囲となるように混合することもできる。この場合、ブロックイソシアネートは、第1潜在イソシアネート基を有する分子と、第2潜在性イソシアネート基を有する分子とを別々に含有する。言い換えれば、ブロックイソシアネートは、第1潜在イソシアネート基を有し、第2潜在イソシアネート基を有しない第1のブロックイソシアネートと、第2潜在イソシアネート基を有し、第1潜在イソシアネート基を有しない第2のブロックイソシアネートとを含有してもよい。
なお、ブロックイソシアネートは、好ましくは、上記のように、第1潜在イソシアネート基と、第2潜在イソシアネート基とを、1分子中に併有する。
また、コーティング組成物におけるブロックイソシアネートの含有割合は、後述する範囲となるように、適宜調整される。
(1−4)触媒作用の比較
次に、第1ブロック剤の触媒作用と第2ブロック剤の触媒作用との比較方法について説明する。
第1ブロック剤の触媒作用と第2ブロック剤の触媒作用とを比較するには、まず、芳香環不含有ポリイソシアネート化合物と、基準となるブロック剤(以下、基準ブロック剤とする。)とを反応させて、基準ブロックイソシアネートを調製する。
基準ブロック剤は、触媒作用の比較対象であるブロック剤(第1ブロック剤および第2ブロック剤)とは異なるブロック剤であり、かつ、比較対象のブロック剤の解離温度よりも高い解離温度を有するブロック剤である。例えば、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(TMG、第1ブロック剤)と3,5−ジメチルピラゾール(DMP、第2ブロック剤)とを比較する場合、基準ブロック剤としてメチルエチルケトオキシム(MEKO)などを採用でき、TMG(第1ブロック剤)とMEKO(第2ブロック剤)とを比較する場合、基準ブロック剤としてε−カプロラクタムなどを採用できる。
そして、基準ブロックイソシアネートの解離温度を測定する。
次いで、芳香環不含有ポリイソシアネート化合物と、基準ブロック剤と、比較対象である第1ブロック剤とを、第1ブロック剤:基準ブロック剤のmol比を20:80の割合で反応させて、第1比較ブロックイソシアネートを調製する。その後、第1比較ブロックイソシアネートの解離温度を測定する。
そして、基準ブロックイソシアネートの解離温度と、第1比較ブロックイソシアネートの解離温度との差を、第1ブロック剤1molに換算した値(℃/mol)を、第1ブロック剤の触媒能として定義する。
次いで、芳香環不含有ポリイソシアネート化合物と、基準ブロック剤と、比較対象である第2ブロック剤とを、第2ブロック剤:基準ブロック剤のmol比を20:80の割合で反応させて、第2比較ブロックイソシアネートを調製する。その後、第2比較ブロックイソシアネートの解離温度を測定する。
そして、基準ブロックイソシアネートの解離温度と、第2比較ブロックイソシアネートの解離温度との差を、第2ブロック剤1molに換算した値(℃/mol)を、第2ブロック剤の触媒能として定義する。
そして、第1ブロック剤の触媒能と第2ブロック剤の触媒能とを比較する。なお、触媒能は、値の大きな方が触媒作用に優れる。
つまり、「第2ブロック剤は、第1ブロック剤よりもイソシアネート基を活性化させる触媒作用が小さい」とは、第2ブロック剤の触媒能が第1ブロック剤の触媒能よりも小さいことを意味する。
(2)硬化性官能基含有フッ素ポリマー
硬化性官能基含有フッ素ポリマーは、コーティング組成物を硬化させる官能基(硬化性官能基)を有するフッ素ポリマーである。硬化性官能基は、イソシアネート基をブロックしたブロック剤に対する活性、および/または、イソシアネート基に対する活性を有する官能基である。
硬化性官能基として、例えば、水酸基(ただし、カルボキシル基に含まれる水酸基は除く。(以下同様))、カルボキシル基、−COOCO−基、シアノ基、アミノ基、グリシジル基、シリル基、シラネート基、イソシアネート基などが挙げられる。硬化性官能基は、単独使用または2種以上併用することができる。
硬化性官能基として、好ましくは、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、シリル基が挙げられ、さらに好ましくは、水酸基、カルボキシル基が挙げられ、とりわけ好ましくは、水酸基が挙げられる。
硬化性官能基含有フッ素ポリマーは、例えば、単独重合によりフッ素ポリマーを形成可能なフッ素を含有する単量体(以下、フッ素含有−重合性単量体とする。)と、そのフッ素含有−重合性単量体と共重合可能であり、上記の硬化性官能基を含有する単量体(以下、硬化性官能基含有−共重合性単量体とする。)との共重合体である。
言い換えれば、硬化性官能基含有フッ素ポリマーでは、フッ素含有−重合性単量体の重合により得られるフッ素ポリマー(ベースポリマー)に、硬化性官能基含有−共重合性単量体に由来する硬化性官能基が導入されている。
フッ素含有−重合性単量体として、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ビニリデンフルオライド(VdF)、ビニルフルオライド(VF)、(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステル(AFAE)、フルオロビニルエーテル、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)などが挙げられる。フッ素含有−重合性単量体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
フッ素含有−重合性単量体のなかでは、好ましくは、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ビニリデンフルオライドが挙げられ、さらに好ましくは、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンが挙げられる。
硬化性官能基含有−共重合性単量体として、例えば、国際公開第2017/200054号の[0092]段落に記載の硬化性官能基含有−共重合性単量体が挙げられ、好ましくは、水酸基含有−共重合性単量体、カルボキシル基含有−共重合性単量体、アミノ基含有−共重合性単量体、シリル基含有−共重合性単量体が挙げられる。硬化性官能基含有−共重合性単量体は、単独使用または2種以上併用することができる。
水酸基含有−共重合性単量体として、例えば、国際公開第2017/200054号の[0093]段落に記載の水酸基含有−共重合性単量体が挙げられ、好ましくは、水酸基含有ビニルエーテル類(例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテルなど)、さらに好ましくは、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルが挙げられる。水酸基含有−共重合性単量体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
カルボキシル基含有−共重合性単量体として、例えば、国際公開第2017/200054号の[0096]段落に記載のカルボキシル基含有−共重合性単量体が挙げられ、好ましくは、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、3−アリルオキシプロピオン酸が挙げられる。カルボキシル基含有−共重合性単量体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
アミノ基含有−共重合性単量体として、例えば、国際公開第2017/200054号の[0099]段落に記載のアミノ基含有−共重合性単量体が挙げられる。アミノ基含有−共重合性単量体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
シリル基含有−共重合性単量体として、例えば、国際公開第2017/200054号の[0101]段落に記載のシリコーン系ビニル単量体が挙げられる。シリル基含有−共重合性単量体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
さらに、硬化性官能基含有フッ素ポリマーは、原料成分として、その他の単量体を含んでもよい。その他の単量体として、例えば、国際公開第2017/200054号の[0104]段落に記載のその他の単量体(具体的には、バーサチック酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類、アルキルビニルエーテル、非フッ素系オレフィン類など)が挙げられる。その他の単量体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
そして、硬化性官能基含有フッ素ポリマーは、フッ素含有−重合性単量体に基づく構造単位と、硬化性官能基含有−共重合性単量体に基づく構造単位とを含んでいる。また、硬化性官能基含有フッ素ポリマーは、好ましくは、フッ素含有−重合性単量体に基づく構造単位と、水酸基含有−共重合性単量体および/またはカルボキシル基含有−共重合性単量体に基づく構造単位とを含み、さらに好ましくは、フッ素含有−重合性単量体に基づく構造単位と、水酸基含有−共重合性単量体に基づく構造単位とを含む。
硬化性官能基含有フッ素ポリマーにおいて、フッ素含有−重合性単量体に基づく構造単位のmol割合は、硬化性官能基含有フッ素ポリマーの総量に対して、例えば、80mol%以上、好ましくは、90mol%以上、例えば、99mol%以下、好ましくは、98mol%以下である。また、硬化性官能基含有−共重合性単量体に基づく構造単位のmol割合は、硬化性官能基含有フッ素ポリマーの総量に対して、例えば、1mol%以上、好ましくは、2mol%以上、例えば、20mol%以下、好ましくは、10mol%以下である。
また、硬化性官能基含有フッ素ポリマーに含まれる硬化性官能基の含有割合の範囲は、好ましくは、硬化性官能基含有−共重合性単量体に基づく構造単位のmol割合の範囲と同じである。なお、硬化性官能基の含有割合は、NMR、FT−IR、元素分析、蛍光X線分析、中和滴定を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
また、硬化性官能基含有フッ素ポリマーが硬化性官能基として水酸基を含有する場合、硬化性官能基含有フッ素ポリマーにおける水酸基価は、例えば、10mgKOH/g以上、好ましくは、20mgKOH/g以上、例えば、100mgKOH/g以下、好ましくは、70mgKOH/g以下である。なお、水酸基価は、JIS K 1557−1(2007年)のA法またはB法に準拠するアセチル化法やフタル化法などから求めることができる(以下同様)。
このような硬化性官能基含有フッ素ポリマーとして、例えば、硬化性官能基含有テトラフルオロエチレン(TFE)系ポリマー、硬化性官能基含有クロロトリフルオロエチレン(CTFE)系ポリマー、硬化性官能基含有ビニリデンフルオライド(VdF)系ポリマー、硬化性官能基含有(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステル(AFAE)系ポリマーなどが挙げられる。硬化性官能基含有フッ素ポリマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
硬化性官能基含有TFE系ポリマーとして、例えば、TFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/必要によりその他の単量体の共重合体、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/必要によりその他の単量体の共重合体、TFE/VdF/ヒドロキシブチルビニルエーテル/必要によりその他の単量体の共重合体などが挙げられ、好ましくは、TFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/必要によりその他の単量体の共重合体、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/必要によりその他の単量体の共重合体が挙げられる。硬化性官能基含有TFE系ポリマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
また、硬化性官能基含有TFE系ポリマーは、市販品を用いることもできる。硬化性官能基含有TFE系ポリマーの市販品として、例えば、ゼッフル(登録商標)GKシリーズ(ダイキン工業製)などが挙げられる。
硬化性官能基含有CTFE系ポリマーとして、例えば、CTFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/必要によりその他の単量体の共重合体などが挙げられる。
また、硬化性官能基含有CTFE系ポリマーは、市販品を用いることもできる。硬化性官能基含有CTFE系ポリマーの市販品として、例えば、ルミフロン(登録商標)シリーズ(旭硝子製)、フルオネート(登録商標)シリーズ(DIC製)、セフラルコート(登録商標)シリーズ(セントラル硝子製)、ザフロン(登録商標)シリーズ(東亜合成製)などが挙げられる。
硬化性官能基含有VdF系ポリマーとして、例えば、VdF/TFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/必要によりその他の単量体の共重合体などが挙げられる。また、硬化性官能基含有VdF系ポリマーは、市販品を用いることもできる。
硬化性官能基含有AFAE系ポリマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステル/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ステアリルアクリレート/必要によりその他の単量体の共重合体などが挙げられる。
また、硬化性官能基含有AFAE系ポリマーは、市販品を用いることもできる。硬化性官能基含有AFAE系ポリマーの市販品として、例えば、ユニダイン(登録商標)シリーズ(ダイキン工業製)、エフトーン(登録商標)シリーズ(ダイキン工業製)、ゾニール(登録商標)シリーズ(デュポン社製)などが挙げられる。
このような硬化性官能基含有フッ素ポリマーのなかでは、好ましくは、硬化性官能基含有TFE系ポリマーおよび硬化性官能基含有CTFE系ポリマーが挙げられる。つまり、硬化性官能基含有フッ素ポリマーは、好ましくは、硬化性官能基含有TFE系ポリマーおよび/または硬化性官能基含有CTFE系ポリマーを含み、さらに好ましくは、硬化性官能基含有TFE系ポリマーまたは硬化性官能基含有CTFE系ポリマーからなる。
なお、コーティング組成物における硬化性官能基含有フッ素ポリマーの含有割合は、後述する範囲となるように、適宜調整される。
(3)その他の添加剤
コーティング組成物は、任意成分として、白色顔料としての酸化チタンをさらに含有することができる。
コーティング組成物が酸化チタンを含有すれば、硬化塗膜を白色に着色することができる。
酸化チタンとして、例えば、一酸化チタン(TiO)、三酸化二チタン(Ti2O3)、二酸化チタン(TiO2)、過酸化チタン(TiO3・nH2O)などが挙げられる。酸化チタンは、単独使用または2種以上併用することができる。酸化チタンのなかでは、好ましくは、二酸化チタンが挙げられる。
二酸化チタンの結晶型として、例えば、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型などが挙げられ、好ましくは、ルチル型が挙げられる。なお、二酸化チタンは、例えば、Al、Si、Znなどを含む公知の処理剤で処理されていてもよい。さらに、二酸化チタンは、耐候性グレードを用いることが好ましい。
コーティング組成物における酸化チタンの含有割合は、後述する範囲となるように、適宜調整される。
また、コーティング組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲において、上記した芳香環含有ポリイソシアネート化合物が上記した第1ブロック剤および/または第2ブロックによってブロックされた芳香環含有ブロックイソシアネートを含有することができる。
なお、コーティング組成物は、相溶性および耐候性の観点から好ましくは、芳香環含有ブロックイソシアネートを含有せず、さらに好ましくは、ブロックイソシアネートとして上記した芳香環不含有ブロックイソシアネート(上記した芳香環不含有ポリイソシアネート化合物と上記した第1ブロック剤および第2ブロックとの反応生成物)のみを含有する。
また、コーティング組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲において、ブロック剤にブロックされていないポリイソシアネート化合物(具体的には、上記した芳香環不含有ポリイソシアネート化合物および/または上記した芳香環含有ポリイソシアネート化合物)を含有してもよい。
また、コーティング組成物は、必要に応じて、公知の添加剤を適宜の割合で含有してもよい。公知の添加剤として、例えば、酸化防止剤、硬化促進剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、シランカップリング剤、エポキシ樹脂、触媒、塗工性改良剤、レベリング剤、核剤、滑剤、離型剤、消泡剤、増粘剤、可塑剤、界面活性剤、顔料(酸化チタンを除く。)、顔料分散剤、染料、有機または無機微粒子、防黴剤、難燃剤、密着改良剤、つや消し剤などが挙げられる。
さらに、コーティング組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲において、アルコキシシランを含有してもよいが、好ましくは、アルコキシシランを含有しない。コーティング組成物がアルコキシシランを含有する場合、アルコキシシランの含有割合(固形分基準)は、コーティング組成物の固形分総量に対して、例えば、0.1質量%未満、好ましくは、5質量%以下である。
アルコキシシランの含有割合が上記下限以下(好ましくは、0質量%)であれば、所定期間貯蔵したコーティング組成物から、硬化塗膜を形成しても硬化塗膜の変色(黄変)を抑制できる。
<硬化塗膜>
上記したコーティング組成物は、例えば、ポリウレタン原料として用いることができ、より具体的には、二液型ポリウレタン原料として用いることができる。
二液型ポリウレタン原料は、上記した硬化性官能基含有フッ素ポリマーを含む主剤と、上記したブロックイソシアネートを含む硬化剤とを備える。そして、二液型ポリウレタン樹脂原料は、別々に調製される主剤および硬化剤を使用直前に配合するものである。
また、上記した酸化チタンおよび公知の添加剤のそれぞれは、主剤および硬化剤のいずれに含有されてもよいが、好ましくは、主剤に含有される。
また、主剤および硬化剤のそれぞれは、塊状(バルク状、固形分濃度100質量%)で用いることもできるが、例えば、上記した各成分を、水や上記した有機溶媒に溶解または分散させて用いることもできる。つまり、コーティング組成物は、水や上記した有機溶媒をさらに含有することができる。
主剤は、好ましくは、上記した有機溶媒をさらに含有して、硬化性官能基含有フッ素ポリマーが有機溶媒に溶解または分散する溶剤型主剤として調製される。主剤が水または有機溶媒を含有する場合、主剤の固形分濃度は、例えば、1質量%以上、好ましくは、10質量%以上、さらに好ましくは、50質量%以上、例えば、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下である。
また、硬化剤は、好ましくは、上記した有機溶媒をさらに含有して、ブロックイソシアネートが有機溶媒に溶解または分散する溶剤型硬化剤として調製される。硬化剤が水または有機溶媒を含有する場合、硬化剤の固形分濃度は、例えば、1質量%以上、好ましくは、10質量%以上、さらに好ましくは、60質量%以上、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
次に、コーティング組成物からの硬化塗膜の製造方法について、図1を参照して説明する。
硬化塗膜を製造するには、その使用時において、主剤と硬化剤とを配合して、主剤と硬化剤との混合物(コーティング組成物)を調製する。
主剤と硬化剤とは、例えば、硬化性官能基含有フッ素ポリマーの硬化性官能基(例えば、水酸基)に対するブロックイソシアネートの潜在イソシアネート基(ブロック剤によりブロックされているイソシアネート基)の当量比(イソシアネート基/硬化性官能基)が、例えば、0.1以上、好ましくは、0.2以上、さらに好ましくは、0.5以上、例えば、5以下、好ましくは、3以下、さらに好ましくは、2以下となるように配合される。
また、ブロックイソシアネートの含有割合(固形分基準)は、コーティング組成物の固形分総量に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
また、ブロックイソシアネートの含有割合(固形分基準)は、ブロックイソシアネートおよび硬化性官能基含有フッ素ポリマーの総量100質量部(固形分基準)に対して、例えば、2質量部以上、好ましくは、5質量部以上、例えば、40質量部以下、好ましくは、20質量部以下である。
また、硬化性官能基含有フッ素ポリマーの含有割合(固形分基準)は、コーティング組成物の固形分総量に対して、例えば、20質量%以上、好ましくは、30質量%以上、例えば、95質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。
また、硬化性官能基含有フッ素ポリマーの含有割合(固形分基準)は、ブロックイソシアネートおよび硬化性官能基含有フッ素ポリマーの総量100質量部(固形分基準)に対して、例えば、60質量部以上、好ましくは、80質量部以上、例えば、98質量部以下、好ましくは、95質量部以下である。
また、コーティング組成物が酸化チタンを含有する場合、酸化チタンの含有割合(固形分基準)は、コーティング組成物の固形分総量に対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、例えば、70質量%以下、好ましくは、50質量%以下である。また、酸化チタンの含有割合(固形分基準)は、硬化性官能基含有フッ素ポリマー100質量部(固形分基準)に対して、例えば、20質量部以上、例えば、200質量部以下、好ましくは、100質量部以下、さらに好ましくは、60質量部以下である。
次いで、混合物(コーティング組成物)を基材2に塗工する。
基材2は、硬化塗膜3(後述)によりコーティングされる被コーティング材である。基材2として、例えば、水が実質的に透過しない材料を使用でき、重量や価格、可撓性などの観点から、より具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート、Si蒸着PETシート、アルミニウムやステンレススチールなどの金属薄シートなどが多用されている。このような基材2は、用途に応じて適宜選択されるが、PETシートがよく用いられ、特に防湿性が要求される場合には、Si蒸着PETシートがよく用いられている。PETシートの厚さは、通常50μm〜250μm程度であり、Si蒸着PETシートの厚さは、通常10μm〜20μm程度である。
また、基材2には、表面処理(例えば、プラズマ処理など)が施されていてもよく、公知のプライマー用塗料(例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂など)から形成されるプライマー層が、予め形成されていてもよい。
塗工方法は、特に制限されず、例えば、スプレーコーター、カーテンスプレーコーター、グラビアコーター、ドクターコーター、バーコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター、ビード、スパイラル、スロットなどの公知の塗工方法が挙げられる。
なお、塗工条件は、通常の塗工条件の範囲でよく、また、塗工されたコーティング組成物層の厚みは、乾燥および硬化後の硬化塗膜3の厚みが後述する範囲となるように、適宜設定される。
次いで、塗工されたコーティング組成物を乾燥および硬化させて、硬化塗膜3を形成する。
硬化温度は、例えば、40℃以上、好ましくは、80℃以上、例えば、200℃以下、好ましくは、150℃以下、さらに好ましくは、140℃未満、とりわけ好ましくは、130℃未満、特に好ましくは、110℃以下である。また、硬化時間は、例えば、30秒以上3日間以下である。
硬化温度が上記範囲であれば、例えば、高温での処理を避けたい材料から形成される基材(Si蒸着PETシートなどの水不透過性シートなど)を採用することができる。
これにより、ブロックイソシアネートをブロックしているブロック剤と、硬化性官能基含有フッ素ポリマーにおける硬化性官能基とが反応(例えば、エステル化反応)するか、または、ブロックイソシアネートからブロック剤が脱離して再生したイソシアネート基と、硬化性官能基含有フッ素ポリマーにおける硬化性官能基とが反応(例えば、ウレタン化反応)して、コーティング組成物層が硬化する。
このとき、イソシアネート基を活性化させる触媒作用が大きい第1ブロック剤(イソシアネート基をブロックした状態の第1ブロック剤、および、解離された第1ブロック剤を含む。)は、イソシアネート基を活性化する触媒として作用する。そのため、第1ブロック剤を用いれば、第2ブロック剤のみを用いる場合に比べ、より効率よくコーティング組成物を硬化させることができる。
つまり、第1潜在イソシアネート基および第2潜在イソシアネート基が併存している場合のコーティング組成物の硬化温度は、第1潜在イソシアネート基が存在せず、第2潜在イソシアネート基のみが存在している場合の硬化温度よりも低い。また、さらに好ましくは、第1潜在イソシアネート基および第2潜在イソシアネート基が併存している場合のコーティング組成物の硬化温度は、第2潜在イソシアネート基が存在せず、第1潜在イソシアネート基のみが存在している場合の硬化温度よりも低い。
言い換えれば、芳香環不含有ポリイソシアネート化合物と第1ブロック剤および第2ブロック剤との反応生成物であるブロックイソシアネートを用いるコーティング組成物の硬化温度A(℃)は、芳香環不含有ポリイソシアネート化合物と第2ブロック剤との反応生成物であるブロックイソシアネートを用いるコーティング組成物の硬化温度B(℃)よりも低く、好ましくは、芳香環不含有ポリイソシアネート化合物と第1ブロック剤との反応生成物であるブロックイソシアネートを用いるコーティング組成物の硬化温度C(℃)よりも低い。
これによって、コーティング組成物の硬化塗膜3が、基材2のコーティング層として形成される。その後、必要により、硬化塗膜3を、20〜300℃にて1分間〜30日間養生する。
硬化塗膜3は、基材2の表面(基材2に対して厚み方向の一方側)に配置されており、シート形状(フィルム形状)を有する。硬化塗膜3の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上、さらに好ましくは、7μm以上、とりわけ好ましくは、10μm以上、例えば、1000μm以下、好ましくは、100μm以下、さらに好ましくは、40μm以下である。
以上によって、基材2と、基材2の表面に配置される硬化塗膜3とを備える積層体1が製造される。なお、図1において仮想線で示すように、硬化塗膜3は、基材2の表面に加えて、基材2の裏面(厚み方向の他方側)にも設けることができる。
このような硬化塗膜3の黄度(b値)は、例えば、−1.0以下、好ましくは、−2.0以下である。
なお、硬化塗膜の黄度は、コーティング組成物を調製直後(主剤と硬化剤との混合から60分以内)に基材に塗布し、乾燥および硬化させて硬化塗膜を形成し、公知の色差計(例えば、日本電色工業社製、SE2000など)を用いて測定できる。
また、このようなコーティング組成物は、主剤と硬化剤とが混合され、所定期間(例えば、4週間)貯蔵された後に、硬化塗膜の形成に使用されても硬化塗膜の変色(黄変)を抑制できる。
具体的には、調製直後のコーティング組成物から形成される硬化塗膜の黄度(b値)と、貯蔵後のコーティング組成物から形成される硬化塗膜の黄度(b値)との差が、例えば、±1.0未満である。
なお、貯蔵後のコーティング組成物から形成される硬化塗膜の黄度は、主剤と硬化剤とを混合した後、23℃において所定期間(例えば、4週間)貯蔵した後、硬化塗膜の形成に使用されること以外は、上記した硬化塗膜の黄度の測定と同様に測定できる。
また、このようなコーティング組成物(ポリウレタン原料)の用途として、各種産業製品、例えば、屋外で長期間使用される産業製品などが挙げられ、より具体的には、塗料(例えば、太陽電池用塗料、太陽電池バックシート用塗料、建材用塗料、自動車用塗料、船舶用塗料、航空機用塗料、電車用塗料など)、接着剤(例えば、太陽電池用接着剤、太陽電池バックシート用接着剤など)などが挙げられ、好ましくは、塗料が挙げられ、さらに好ましくは、太陽電池バックシート用塗料が挙げられる。
つまり、コーティング組成物(ポリウレタン原料)は、塗料として好適に利用でき、太陽電池バックシート用塗料としてさらに好適に利用できる。
そのため、積層体1は、各種産業製品(例えば、太陽電池、太陽電池バックシート、建材、自動車部品、船舶部品、航空機部品、電車部品など)として好適に利用でき、太陽電池バックシートとして極めて有用である。
積層体1が太陽電池バックシート1Aである場合、太陽電池バックシート1Aの基材2は、好ましくは、水を実質的に透過しない材料から形成される水不透過性シートであり、太陽電池バックシート1Aの硬化塗膜3は、好ましくは、酸化チタンを含有する。
つまり、太陽電池バックシート1Aは、水不透過性シートからなる基材2と、酸化チタンを含有する硬化塗膜3(コーティング層)とを含む。
なお、太陽電池のバックシートなどを、太陽電池モジュールに適用する方法は、公知の方法を採用することができ、例えば、特開2013−136736号公報、特開2014−7371号公報などに開示された方法を採用することができる。
<作用効果>
上記のコーティング組成物では、芳香環不含有ポリイソシアネート化合物が、上記一般式(1)で示される第1ブロック剤と、イミダゾール骨格を含有せず、かつ、第1ブロック剤よりもイソシアネート基を活性化させる触媒作用が小さい第2ブロック剤とによってブロックされている。
そのため、ブロックイソシアネートは、芳香環不含有ポリイソシアネート化合物に由来する骨格と、上記一般式(1)で示される第1ブロック剤によりブロックされる第1潜在イソシアネート基と、第2ブロック剤によりブロックされる第2潜在イソシアネート基とを含有している。
その結果、ブロックイソシアネートと硬化性官能基含有フッ素ポリマーとの相溶性の向上を図ることができる。
また、そのようなコーティング組成物では、優れた硬化性(耐溶剤性)、低黄度および優れた耐候性を硬化塗膜に付与することができ、さらには、貯蔵後に硬化塗膜を形成しても硬化塗膜の変色(黄変)を抑制できる。
これによって、コーティング組成物を上記した用途に好適に利用することができ、好ましくは、塗料、さらに好ましくは、太陽電池バックシート用塗料として好適に利用できる。
また、図1に示すように、コーティング組成物を太陽電池バックシート用塗料として用いた太陽電池バックシート1Aは、コーティング組成物の硬化塗膜3を含むので、優れた硬化性(耐溶剤性)、低黄度および耐候性を有する。そのため、太陽電池バックシート1Aは、太陽電池に好適に用いることができる。
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
1.実施例1〜6、比較例1〜7および参考例1
室温(23℃)において、攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた容量1Lの反応器に、表1に示すポリイソシアネート化合物を、イソシアネート基のmol数が1.00molとなるように、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル65.61gに加えて混合した。
次いで、液温が50℃を超えないように調整しながら、表1に示す第2ブロック剤を表1に示すmol数となるように、混合液に数回に分けて加えた。
次いで、表1に示す第1ブロック剤を表1に示すmol数となるように、混合液に数回に分けて加えた後、室温(23℃)において5時間攪拌した。なお、比較例3〜5では、第1ブロック剤を添加しなかった。
その後、FT−IRスペクトルを測定することで、イソシアネートがブロック化されていることを確認し、ブロックイソシアネートを含む硬化剤を得た。硬化剤の固形分濃度は、70質量%であった。
また、表1に示す硬化性官能基含有フッ素ポリマーを含む主剤を準備した。
次いで、主剤と硬化剤とを、硬化性官能基含有フッ素ポリマーの水酸基に対するブロックイソシアネートの潜在イソシアネート基とのmol比が1になるように混合した後、最終的なコーティング組成物の固形分濃度が50質量%になるように、メチルイソブチルケトンをその混合液に加えて30分間攪拌した。
以上によって、コーティング組成物を調製した。
2.実施例7
比較例4のコーティング組成物と、比較例5のコーティング組成物とを、潜在イソシアネート基のmol比が表1に示すmol比となるように混合して、コーティング組成物を調製した。
3.実施例8
実施例2のコーティング組成物と、比較例7のコーティング組成物とを、潜在イソシアネート基のmol比が表1に示すmol比となるように混合して、コーティング組成物を調製した。
4.実施例9〜11
硬化性官能基含有フッ素ポリマーを含む主剤を、下記のように調製される主剤に変更したこと以外は、実施例1〜3と同様にして、コーティング組成物を調製した。
マヨネーズ瓶に、ゼッフルGK−570(硬化性官能基含有フッ素ポリマー、硬化性官能基:水酸基、ダイキン工業社製)37.05gと、CR93(酸化チタン、石原産業社製)48.60gと、酢酸ブチル(有機溶媒)31.34gと、ガラスビーズ115gとを加えて軽く混合した後、ペイントシェーカーにて2時間よく混合した。
次いで、得られた混合物に、さらに、ゼッフルGK−570(硬化性官能基含有フッ素ポリマー、ダイキン工業製)54.89g、および、酢酸ブチル(有機溶媒)8.11gを加えてよく混合した。
その後、ろ過によりガラスビーズを取り除き、硬化性官能基含有フッ素ポリマーと、酸化チタンと、酢酸ブチルとを含有する主剤を調製した。なお、主剤において、ゼッフルGK−570(硬化性官能基含有フッ素ポリマー100質量部)に対する、酸化チタンの含有割合は、52.6質量部であった。
5.比較例8〜12
硬化性官能基含有フッ素ポリマーを含む主剤を、実施例9〜11と同じ上記の主剤に変更したこと以外は、比較例1〜5と同様にして、コーティング組成物を調製した。
6.参考例2
ゼッフルGK−570をアクリルポリオールに変更したこと以外は、比較例8と同様にして、コーティング組成物を調製した。
<評価>
1.相溶性
各コーティング組成物の調製直後(主剤と硬化剤との混合直後)の状態を目視により観察した。
そして、クリア(透明)であったものを○、ややくもったものを△、白濁や凝集物が生じたものを×として評価した。その結果を表1に示す。なお、くもりや白濁は、ブロックイソシアネートと硬化性官能基含有フッ素ポリマーとの相分離に由来すると考えられる。
2.硬化温度
各コーティング組成物を、アプリケーターにより乾燥厚みが250μmのポリプロピレン(PP)板上に塗工し、所定の温度で30分間硬化後、室温(23℃)で24時間熟成させた。得られた硬化塗膜を、アセトン/メタノール=1/1(vol/vol)混合溶媒に23℃で24時間浸漬させた。
その後、混合溶媒に浸漬する前の質量に対する、混合溶媒に溶解しなかった部分の質量を、ゲル分率として計算し、ゲル分率が60%以上になった温度を硬化温度とした。その結果を表1に示す。
3.硬化塗膜の硬化性(耐溶剤性)
各コーティング組成物を、バーコーターにより乾燥厚みが10μmになるように、プラズマ処理したPETフィルム(ルミラーX10S、東レ社製)に塗布し、150℃で2分間、硬化させた。
そして、各硬化塗膜を、メチルエチルケトンを浸み込ませた脱脂綿で、荷重1Kgで往復100回ラビング処理した。各硬化塗膜の残存面積を目視にて評価し、残存面積率として表した。また、ラビングの跡が残らなかったものを◎、ラビングの跡は残るが、硬化塗膜の残存率が95面積%以上であったものを○、硬化塗膜の残存率が60面積%以上95面積%未満であったものを△、硬化塗膜の残存率が60面積%未満であったものを×として評価した。その結果を表1に示す。
4.耐候性
「2.硬化塗膜の硬化性」と同様にして調製した硬化塗膜を、QUV促進耐候試験機にて、昼間(60℃×相対湿度10%×4時間×光照射)、夜間(50℃×相対湿度95%×4時間×光照射なし)のサイクルで200時間処理した。処理前後の塗膜の光沢度を光沢度計(日本電色工業社製、VG2000)にて測定し、初期の光沢度を100としたときの保持率を算出して、50%以上を○、50%未満を×として評価した。その結果を表1に示す。
なお、表中の略号の詳細を下記する。
D127N:タケネートD−127N、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの3量体、イソシアネート基含有量13.5質量%、三井化学社製、
D170N:タケネートD−170N、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、イソシアネート基含有量20.7質量%、三井化学社製、
D160N:タケネートD−160N、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(ポリオール変性体)、イソシアネート基含有量12.6質量%、三井化学社製、
D120N:タケネートD−120N、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのトリメチロールプロパンアダクト体(ポリオール変性体)、イソシアネート基含有量11.0質量%、三井化学社製、
D140N:タケネートD−140N、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(ポリオール変性体)、イソシアネート基含有量10.5質量%、三井化学社製、
D204:タケネートD−204、トリレンジイソシアネートの3量体、イソシアネート基含有量7.5質量%、三井化学社製、
D110N:タケネートD−110N、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(ポリオール変性体)、イソシアネート基含有量11.5質量%、三井化学社製、
ETERFLON−41011:硬化性官能基含有フッ素ポリマー、硬化性官能基;水酸基、ETERNAL MATERIALS社製、
アクリルポリオールQ182:三井化学社製、
GK−570:ゼッフルGK−570、硬化性官能基含有TFE系ポリマー、硬化性官能基;水酸基、ダイキン工業社製、
CR93:酸化チタン、石原産業社製、
TMG:1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、東京化成工業社製、
DMP:3,5−ジメチルピラゾール、
MEKO:メチルエチルケトキシム、東京化成工業社製、
IMZ:イミダゾール、東京化成工業社製。
<考察>
参考例1および比較例1のブロックイソシアネートは、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(TMG)およびイミダゾール(IMZ)によってブロックされている。
そのようなブロックイソシアネートは、参考例1に示されるように、ポリウレタン塗料の主剤に広く利用されるアクリルポリオールに対して良好に相溶し、参考例1のコーティング組成物から形成される硬化塗膜は、硬化性(耐溶剤性)に優れていることが確認された。
一方、そのようなブロックイソシアネートは、比較例1に示されるように、特に優れた耐久性が要求されるポリウレタン塗料の主剤に利用される硬化性官能基含有フッ素ポリマーに対して十分に相溶せず、比較例1のコーティング組成物から形成される硬化塗膜は、硬化性(耐溶剤性)に劣っていることが確認された。
つまり、TMGおよびIMZによってブロックされるブロックイソシアネートは、アクリルポリオールに対して十分に相溶し、硬化塗膜に優れた硬化性を付与する一方、硬化性官能基含有フッ素ポリマーに対して十分に相溶せず、硬化塗膜に硬化性を十分に付与できないことが確認された。
また、比較例2に示されるように、ブロックイソシアネートが、イミダゾール(IMZ)およびメチルエチルケトキシム(MEKO)によってブロックされていても、比較例1と同様に、硬化性官能基含有フッ素ポリマーに対して十分に相溶せず、硬化塗膜に硬化性を十分に付与できないことが確認された。
また、比較例6および7に示されるように、ブロックイソシアネートのポリイソシアネート化合物が、芳香族環含有ポリイソシアネート化合物である場合、硬化性官能基含有フッ素ポリマーに対して十分に相溶せず、また、硬化塗膜に耐候性を十分に付与できないことが確認された。
これらに対して、実施例1〜6のブロックイソシアネートは、芳香環不含有ポリイソシアネート化合物が、上記一般式(1)で示される第1ブロック剤と、イミダゾール骨格を含有せず、かつ、第1ブロック剤よりもイソシアネート基を活性化させる触媒作用が小さい第2ブロック剤とによってブロックされている。そのため、硬化性官能基含有フッ素ポリマーに対して十分に相溶し、硬化塗膜に硬化性および耐候性を十分に付与できることが確認された。