以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による巻線温度推定システム100について説明する。
図1は、第1実施形態による巻線温度推定システム100の概略構成図である。図示のように、巻線温度推定システム100は、モータ1と、制御装置2を有している。
本実施形態のモータ1は、三相で動作する永久磁石型の同期電動機(PMSM:Permanent Magnet Synchronous Motor)である。モータ1は、中空円柱状の固定子11と、固定子11の中空部に回転可能に設けられた回転子12とにより構成されている。モータ1の構成をより詳細に説明する。
図2は、本実施形態のモータ1の構成を説明する図である。図示のように、本実施形態のモータ1は、8極12スロットの三相モータとして構成されている。
モータ1の固定子11には、固定子11の軸方向に貫通するスロット21が、固定子11の周方向に等間隔に複数形成されており、各スロット21の間にティース22が構成される。そして、ティース22には、巻線23が巻回されている。
具体的に、周方向に隣接する3つのティース22の内のそれぞれには、巻線23を構成するU相巻線23U、V相巻線23V、及びW相巻線23Wが巻回されている。特に、本実施形態のモータ1は、周方向全域に16個のティース22が設けられており、隣接する3つのティース22毎にU相巻線23U、V相巻線23V、及びW相巻線23Wから構成される一つの相の巻線23が巻回される。すなわち、本実施形態では、固定子11に4つの巻線23がいわゆる集中巻で巻回されている。
なお、以下では説明の便宜のため、それぞれ相を構成している4つの巻線23を相互に区別するべく、これらを「第1巻線23−1」、「第2巻線23−2」、「第3巻線23−3」、及び「第4巻線23−4」とも称する。
さらに、第1巻線23−1、第2巻線23−2、第3巻線23−3、及び第4巻線23−4には、それぞれに個別にインバータ10が接続されている。なお、以下では、各インバータ10を相互に区別するために、これらを「第1インバータ10−1」、「第2インバータ10−2」、「第3インバータ10−3」、及び「第4インバータ10−4」とも称する。図2においては、それぞれのインバータ10−1〜10−4が接続されている部分を破線で示している。
図3は、各巻線23−1〜23−4に対する各インバータ10−1〜10−4の接続態様を説明する図である。図示のように、第1インバータ10−1、第2インバータ10−2、第3インバータ10−3、及び第4インバータ10−4は、それぞれ、モータ1に対して並列に第1巻線23−1、第2巻線23−2、第3巻線23−3、及び第4巻線23−4に接続されている。
そして、各インバータ10−1〜10−4は、制御装置2からの指令に基づいてそれぞれのスイッチング部10a−1〜10a−4でスイッチング動作を行い、各巻線23−1〜23−4に対して、所定の周波数の交流電力が印加される。
図2に戻り、回転子12には、周方向に沿って複数箇所(図2では8箇所)設けられた軸方向に延在する空隙に永久磁石25a〜25hが挿入されている。なお、周方向において隣接する永久磁石25は、径方向中央側の面の極性が相互に異なるように構成される。例えば、永久磁石25aの径方向中央側の面と、永久磁石25bの径方向中央側の面は、相互に極性が異なる。
また、回転子12には回転子位置検出センサ35が設けられる。回転子位置検出センサ35は、回転子12の位置を所定の周期で検出して回転子12の電気角θ(現在電気角θ_c)を算出する。回転子位置検出センサ35は、例えば、レゾルバにより構成される。
次に、制御装置2について説明する。制御装置2は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたコンピュータ、特にマイクロコンピュータ等で構成される。そして、制御装置2は、本実施形態、又は後述する各実施形態における各処理を実行可能となるようにプログラムされている。
本実施形態では、制御装置2は、各インバータ10−1〜10−4を制御して駆動周波数の交流電力を各巻線23−1〜23−4に供給するとともに、この各巻線23−1〜23−4に供給される交流電力に当該駆動周波数(基本波の周波数)とは異なる周波数を重畳することで、各巻線23−1〜23−4、及びこれらの回転磁界と鎖交する磁界を生じる永久磁石25a〜25hの少なくとも何れかからなる回路系のインピーダンスを計測し、巻線温度Tcを推定する。以下、この制御装置2における巻線温度Tcの推定に関連する構成及び処理をより詳細に説明する。
図4は、制御装置2による巻線温度Tcの推定機能を示すブロック図である。
図示のように、制御装置2は、配置位置情報記憶部200と、第1インバータ制御部210と、第2インバータ制御部220と、第3インバータ制御部230と、第4インバータ制御部240と、巻線温度推定部250と、を備えている。
配置位置情報記憶部200は、固定子11における各巻線23−1〜23−4の配置位置と回転子12における各永久磁石25a〜25hの配置位置を記憶している。より詳細には、配置位置情報記憶部200は、各インバータ10−1〜10−4にどの巻線23−1〜23−4が接続されているか、及び回転子12の電気角θ及び機械角θmに対応した各巻線23−1〜23−4と各永久磁石25a〜25hの空間位置関係を記憶している。以下では、配置位置情報記憶部200に記憶されたこれらの情報を単に「配置情報」とも称する。
そして、本実施形態では、配置位置情報記憶部200に記憶された上記配置情報、及び回転子位置検出センサ35で検出される現在電気角θ_cに基づいて、第1インバータ制御部210、第2インバータ制御部220、第3インバータ制御部230、及び第4インバータ制御部240の少なくとも何れかによって、対応するインバータ10にインピーダンス計測を実行させる。
第1インバータ制御部210は、インピーダンス計測にあたり、第1インバータ10−1を制御して第1巻線23−1に対して、所定の駆動周波数の交流電力に当該駆動周波数よりも高い周波数のインピーダンス計測用周波数の交流信号を重畳して第1インピーダンスZh1を演算する。
同様に、第2インバータ制御部220も、インピーダンス計測にあたり、第2インバータ10−2を制御して第2巻線23−2に対して、所定の駆動周波数の交流電力に当該駆動周波数よりも高い周波数のインピーダンス計測用周波数の交流信号を重畳して第2インピーダンスZh2を演算する。また、第3インバータ制御部230も、インピーダンス計測にあたり、第3インバータ10−3を制御して第3巻線23−3に対して、所定の駆動周波数の交流電力に当該駆動周波数よりも高い周波数のインピーダンス計測用周波数の交流信号を重畳して第3インピーダンスZh3を演算する。さらに、第4インバータ制御部240も、インピーダンス計測にあたり、第4インバータ10−4を制御して第4巻線23−4に対して、所定の駆動周波数の交流電力に当該駆動周波数よりも高い周波数のインピーダンス計測用周波数の交流信号を重畳して第4インピーダンスZh4を演算する。
そして、第1インバータ制御部210、第2インバータ制御部220、第3インバータ制御部230、及び第4インバータ制御部240は、それぞれ演算した第1インピーダンスZh1、第2インピーダンスZh2、第3インピーダンスZh3、及び第4インピーダンスZh4を巻線温度推定部250に出力する。
さらに、以下では、第1インバータ制御部210、第2インバータ制御部220、第3インバータ制御部230、及び第4インバータ制御部240における処理の詳細について説明する。なお、第1インバータ制御部210、第2インバータ制御部220、第3インバータ制御部230、及び第4インバータ制御部240における処理は相互に類似するため、説明を簡略化する観点からこれらを包括して説明する。
図5は、各インバータ制御部210、220、230、240の詳細な機能を示すブロック図である。なお、各構成の入出力の線に付された2本斜線および3本斜線は、それぞれ、各構成にて入出力される値が2次元、3次元のベクトルであることを示している。
図示のように、各インバータ制御部210、220、230、240は、減算器411と、電流制御部412と、加算器413と、座標変換部414と、電力変換部415と、電流検出部416と、座標変換部417と、バンドストップフィルター418と、減算器421と、共振制御部422と、バンドパスフィルター423と、インピーダンス演算部424とを備えている。
減算器411には、モータ1が搭載される車両等の装置による要求負荷に応じたトルク指令値に基づいて定められる電流指令値をdq座標系で表示した基本波電流指令値idsf*、iqsf*と、巻線23に流れる電流の検出値をdq座標系で表示した基本波検出電流値idsf、iqsfが入力される。
減算器411は、基本波電流指令値idsf*、iqsf*から、後述するバンドストップフィルター418からの基本波検出電流値idsf、iqsfを減算して基本波電流偏差を求め、これらの減算結果を電流制御部412に出力する。
電流制御部412には、減算器411から入力された基本波電流偏差がゼロに近づくように、フィードバック制御(例えば比例積分制御)を行い、第1電圧指令値vd0*、vq0*を演算する。そして、電流制御部412は、第1電圧指令値vd0*、vq0*を加算器413に出力する。
加算器413は、電流制御部412からの第1電圧指令値vd0*、vq0*に、後述する共振制御部422からの高調波電圧指令値vdsc*、vqsc*を加算することで、第2電圧指令値vds*、vqs*を演算する。そして、加算器413は、演算した第2電圧指令値vds*、vqs*を座標変換部414に出力する。
座標変換部414は、加算器413からの第2電圧指令値vds*、vqs*に対して、dq座標系(回転座標系)からuvw座標系(三相座標系)への座標変換を実行して三相電圧指令値vu*、vv*、vw*を求める。そして、座標変換部414は、求めた三相電圧指令値vu*、vv*、vw*を電力変換部415に出力する。
電力変換部415は、各インバータ10−1〜10−4のスイッチング部10a−1〜10a−4にPWM制御するためのPWM信号生成部として構成される。電力変換部415は、座標変換部414から三相電圧指令値vu*、vv*、vw*を受信する。そして、電力変換部415は、三相電圧指令値vu*、vv*、vw*に基づいて、図示しないバッテリー等から供給される直流電力を三相電圧vu、vv、vwに変換する。これにより、モータ1の巻線23には、この三相電圧vu、vv、vwが印加される。
電流検出部416は、例えばホール素子などを用いて構成された電流センサの検出値を座標変換部417に出力する。特に、本実施形態では、入力交流電力としての三相電圧vu、vv、vwの巻線23への印加に応じて当該巻線23に流れる三相電流iu、iv、iwを検出する。電流検出部416は、検出した三相電流iu、iv、iwを座標変換部417に出力する。なお、上述の回転子位置検出センサ35により検出される回転子12の現在電気角θ_cも座標変換部417に出力される。
座標変換部417は、現在電気角θ_cに基づいて電流検出部416からの三相電流iu、iv、iwに対してuvw座標系からdq座標系への座標変換を行い、検出電流ids、iqsを求める。そして、座標変換部417は、求めた検出電流ids、iqsを、バンドストップフィルター418、及びバンドパスフィルター423に出力する。
バンドストップフィルター418は、検出電流ids、iqsに含まれている高調波の周波数帯の信号をカットする。すなわち、上記インピーダンス測定用周波数を含む高調波数帯の除去をカットして駆動周波数の電流成分に相当する基本波検出電流値idsf、iqsfを求める。そして、バンドストップフィルター418は、求めた基本波検出電流値idsf、iqsfを上述した減算器411に出力する。
一方、バンドパスフィルター423は、上記駆動周波数を含む低周波数帯の信号をカットして、高調波数帯の信号を抽出する。すなわち、バンドパスフィルター423は、座標変換部417からの検出電流ids、iqsから基本波成分を除去して、インピーダンス測定用周波数の電流成分に相当する高調波検出電流値idsc、iqscを求める。そして、バンドパスフィルター423は、求めた高調波検出電流値idsc、iqscを上述した減算器421に出力する。
次に、減算器421には、高調波電流指令値idsc*、iqsc*とバンドパスフィルター423からの高調波検出電流値idsc、iqscが入力される。ここで、高調波電流指令値idsc*、iqsc*は、既に説明したように駆動周波数(基本波の周波数)よりも高い周波数を有するとともに、インピーダンス計測系の作動(モータ1の作動)への影響を小さくする観点から基本波電流指令値idsf*、iqsf*の振幅よりも小さい振幅に設定される。
例えば、高調波電流指令値idsc
*、iqsc
*は、以下の式(1)のように与えられる。
ただし、Icは高調波電流指令値idsc
*の振幅、ωcは高調波の周波数に対応する角周波数、及びtは時間である。
そして、減算器421は、高調波電流指令値idsc*、iqsc*から高調波検出電流値idsc、iqscをそれぞれ減算して高調波電流偏差を求める。さらに、減算器421は、高調波電流偏差を共振制御部422に出力する。
共振制御部422は、減算器421から受信した高調波電流偏差に基づいて、高調波電圧指令値vdsc
*、vqsc
*を演算する。なお、共振制御部422は、高調波電圧指令値vdsc
*、vqsc
*の振幅及び間隔を任意に設定することができる。本実施形態において、共振制御部422は、例えば、高調波電圧指令値vdsc
*、vqsc
*を下記式(2)のように算出する。
ただし、Rdは巻線23及び永久磁石25等からなるインピーダンス計測系の抵抗値(インピーダンス実部に相当)である。また、Ldはd軸インダクタンス、ωrは回転子12の角周波数である。
さらに、共振制御部422は、演算したq軸の高調波電圧指令値vqsc*をゼロに設定する。これは、q軸の高調波電圧指令値vqsc*には、回転子12の角周波数ωrの項が含まれているため、q軸の高調波電圧指令値vqsc*をこのまま加算器413で用いると、モータ1の回転トルクにq軸インダクタンスの影響が含まれるためである。
そして、共振制御部422は、演算した高調波電圧指令値vdsc*、vqsc*(vqsc*=0)を、上述の加算器413、及びインピーダンス演算部424に出力する。
本実施形態では、共振制御部422は、パルセイティング・ベクトル・インジェクション(Pulsating vector injection)方式によって高調波電圧指令値vdsc*を出力するものとする。具体的には、共振制御部422は、高調波電圧指令値vdsc*に正負の符号を交互に付して出力する。このようにすることにより、モータ1への指令値として加算器413から出力される第2電圧指令値vds*、vqs*においては、d軸方向に高調波電圧指令値vdsc*の進みと遅れとが交互に生じることになる。
さらに、インピーダンス演算部424には、高調波電流指令値idsc*、iqsc*と共振制御部422からの高調波電圧指令値vdsc*、vqsc*が入力される。ここで、上述のように、q軸の高調波電流指令値iqsc*及びq軸の高調波電圧指令値vqsc*は0である。したがって、インピーダンス演算部424は、d軸の高調波電流指令値idsc*及びd軸の高調波電圧指令値vdsc*に基づいて、インピーダンスZhを演算する。インピーダンス演算部424は、d軸の高調波電圧指令値vdsc*をd軸の高調波電流指令値idsc*で除してインピーダンスZhを演算する。
すなわち、本実施形態では、上述のd軸の高調波電流指令値idsc*及びd軸の高調波電圧指令値vdsc*が、駆動周波数とは異なるインピーダンス計測用周波数の交流信号に相当する。
そして、インピーダンス演算部424は、演算したインピーダンスZhを図4に示す巻線温度推定部250に出力する。
本実施形態では、以上説明したインピーダンスZhの演算器脳及び演算したインピーダンスZhのへ巻線温度推定部250への出力機能が、第1インバータ制御部210、第2インバータ制御部220、第3インバータ制御部230、及び第4インバータ制御部240のそれぞれに備えられている。
次に、巻線温度推定部250は、第1インピーダンスZh1、第2インピーダンスZh2、第3インピーダンスZh3、及び第4インピーダンスZh4に基づいて、第1巻線23−1の第1巻線抵抗Rc1(Tc1)、第2巻線23−2の第2巻線抵抗Rc2(Tc2)、第3巻線23−3の第3巻線抵抗Rc3(Tc3)、及び第4巻線23−4の第4巻線抵抗Rc4(Tc4)を演算する。さらに、巻線温度推定部250は、これら各巻線抵抗Rc1(Tc1)〜Rc4(Tc4)に基づいて、第1巻線23−1の第1巻線温度Tc1、第2巻線23−2の第2巻線温度Tc2、第3巻線23−3の第3巻線温度Tc3、及び第4巻線23−4の第4巻線温度Tc4を推定する。
以下では、各インピーダンスZh1〜Zh4から各巻線抵抗Rc1(Tc1)〜Rc4(Tc4)、及び各巻線温度Tc1〜Tc4の推定に用いるモデルを説明する。なお、以下の説明において、第1インピーダンスZh1、第2インピーダンスZh2、第3インピーダンスZh3、及び第4インピーダンスZh4のそれぞれに基づく推定モデルは相互に類似するため、説明を簡略化する観点からこれらを包括して説明する。
図6は、本実施形態におけるインピーダンス計測系をモデル化した等価回路を示している。
図示のように、本実施形態のインピーダンス計測系は、主として、巻線23のインピーダンス構成要素とこの巻線23の回転磁界に錯交する磁界を発生させる永久磁石25のインピーダンス構成要素から構成される。具体的に、インピーダンスZhは、巻線23の抵抗に相当する巻線抵抗成分、巻線23のインダクタンス成分、永久磁石25のインダクタンス成分(渦電流路インダクタンス)、永久磁石25の電気抵抗成分、及び固定子11と回転子12の間の相互インダクタンス成分等で構成される。
特に、図示のモデルに基づくと、インピーダンスZhのインピーダンス実部Rdは、以下の式(3)で表すことができる。
ただし、式中の各パラメータは次のように定義される。
Rc(Tc):巻線23の巻線抵抗、
Tc:巻線23の巻線温度、
Rm(Tm):永久磁石25の電気抵抗、
Tm:永久磁石25の温度、
Lm(Tm、Ih):永久磁石25の渦電流路インダクタンス、
M(Tm、Ih):固定子11と回転子12間の相互インダクタンス、
Ih:高調波電流(高調波電流指令値idsc*に相当)、
ω:高調波電圧Vh(高調波電圧指令値vdsc*に相当)の角周波数。
上記式(3)から理解されるように、インピーダンスZhは巻線抵抗Rc(Tc)、及び永久磁石電気抵抗Rm(Tm)の関数である。また、巻線抵抗Rc(Tc)は巻線温度Tcに、永久磁石25の電気抵抗Rm(Tm)は磁石温度Tmにそれぞれ相関がある。特に、巻線抵抗Rc(Tc)と巻線温度Tcの間には、図7に示すような略直線状の正の相関関係を関係があることが知られている。
したがって、本実施形態では、巻線温度推定部250は、上記モデルにしたがい、第1インピーダンスZh1、第2インピーダンスZh2、第3インピーダンスZh3、及び第4インピーダンスZh4から、上記式(3)及び図7に示す巻線抵抗Rc(Tc)と巻線温度Tcの関係を用いて、各巻線抵抗Rc1(Tc1)〜Rc4(Tc4)、及び各巻線温度Tc1〜Tc4を演算する。
以上説明した構成を有する制御装置2により実行される本実施形態の巻線温度Tcを演算する流れの詳細を説明する。
図8は、本実施形態における各巻線温度Tc1〜Tc4の推定の流れを示すフローチャートである。また、図9A〜図9Dは、本実施形態における回転子12の回転位置(機械角θm及び電気角θ)と各インピーダンスZh1〜Zh4の計測タイミングの関係を説明する図である。
ステップS110において、制御装置2は、回転子位置検出センサ35で検出される回転子12の現在電気角θ_cが予め定められた所定の計測開始電気角θ0に到達したか否かを判定する。
なお、本実施形態においては、制御装置2は、配置位置情報記憶部200に記憶された配置位置情報に基づいて、好適なインピーダンス計測開始タイミングとなるように計測開始電気角θ0を設定する。
より具体的には、本実施形態において、制御装置2は、配置位置情報記憶部200から読み出したモータ1に対応する配置位置情報に基づいて、インピーダンス計測開始時から回転子12が1電気角分移動する過程で第1巻線23−1の回転磁界が4つの永久磁石25a、25b、25c、25dの磁界と錯交するように、計測開始電気角θ0を定める。
なお、計測開始電気角θ0は、電動機のタイプ(極数及びスロット数など)に応じて予め定めておき、適宜、用いる電動機のタイプに応じて適宜選択するようにしても良い。
そして、制御装置2は、現在電気角θ_cが計測開始電気角θ0と等しいと判断すると、回転子12が計測開始電気角θ0に到達したと判断し、ステップS120の処理に移行する。
ステップS120において、制御装置2(特に第1インバータ制御部210)は、第1インバータ10−1に、図5で説明した制御ロジックにしたがうインピーダンス計測を実行させる。
ここで、図9Aには、第1インバータ10−1によるインピーダンス計測の状態が示されている。図示のように、第1インバータ10−1のインピーダンス計測では、回転子12が計測開始電気角θ0に到達してから1電気角分回転するまでの間に、第1巻線23−1、永久磁石25a、25b、25c、25d(図9Aの太字実線で囲まれた領域参照)を計測対象とした第1インピーダンスZh1を求めることができる。
次に、ステップS130において、制御装置2は、回転子12が上記計測開始電気角θ0から電気角1周期分(機械角1/4周期分)回転した位置に対応する第1基準電気角θ1に到達したか否かを判定する。
そして、制御装置2は、回転子12が第1基準電気角θ1に到達したと判定すると、第1インバータ10−1のインピーダンス計測を終了させて、ステップS140の処理を実行する。
ステップS140において、制御装置2(特に第2インバータ制御部220)は、第2インバータ10−2を制御して、図5で説明した制御ロジックにしたがって第2インピーダンスZh2を演算する。
ここで、図9Bには、第2インバータ10−2によるインピーダンス計測の状態が示されている。図示のように、第2インバータ10−2によるインピーダンス計測では、回転子12が第1基準電気角θ1に到達してから1電気角分回転するまでの間に、第2巻線23−2、永久磁石25a、25b、25c、25dを計測対象とした第2インピーダンスZh2を求めることができる。
ステップS150において、制御装置2は、回転子12が上記第1基準電気角θ1から電気角1周期分(機械角1/4周期分)回転した位置に対応する第2基準電気角θ2に到達したか否かを判定する。
そして、制御装置2は、回転子12が第2基準電気角θ2に到達したと判定すると、第2インバータ10−2のインピーダンス計測を終了させて、ステップS160の処理を実行する。
ステップS160において、制御装置2(特に第3インバータ制御部230)は、第3インバータ10−3を制御して、図5で説明した制御ロジックにしたがって第3インピーダンスZh3を演算する。
ここで、図9Cには、第3インバータ10−3によるインピーダンス計測の状態が示されている。図示のように、第3インバータ10−3によるインピーダンス計測では、回転子12が第2基準電気角θ2に到達してから1電気角分回転するまでの間に、第3巻線23−3、永久磁石25a、25b、25c、25dを計測対象とした第3インピーダンスZh3を求めることができる。
ステップS170において、制御装置2は、回転子12が上記第2基準電気角θ2から電気角1周期分(機械角1/4周期分)回転した位置に対応する第3基準電気角θ3に到達したか否かを判定する。
そして、制御装置2は、回転子12が第3基準電気角θ3に到達したと判定すると、ステップS180の処理を実行する。
ステップS180において、制御装置2(特に第4インバータ制御部240)は、第4インバータ10−4を制御して、図5で説明した制御ロジックにしたがって第4インピーダンスZh4を演算する。
ここで、図9Dには、第4インバータ10−4によるインピーダンス計測の状態が示されている。図示のように、第4インバータ10−4によるインピーダンス計測では、回転子12が第3基準電気角θ3に到達してから1電気角分回転するまでの間に、第4巻線23−4、永久磁石25a、25b、25c、25dを計測対象とした第4インピーダンスZh4を求めることができる。
次に、ステップS190において、制御装置2(特に巻線温度推定部250)は、巻線温度Tcを演算する。特に、本実施形態の制御装置2は、第1巻線23−1、第2巻線23−2、第3巻線23−3、及び第4巻線23−4のそれぞれの第1巻線温度Tc1、第2巻線温度Tc2、第3巻線温度Tc3、及び第4巻線温度Tc4を個別に演算する。
図10は、本実施形態の巻線温度推定処理の流れを示すフローチャートである。
図示のように、ステップS191において、制御装置2は、演算した第1インピーダンスZh1、第2インピーダンスZh2、第3インピーダンスZh3、及び第4インピーダンスZh4のそれぞれのインピーダンス実部Rd1、Rd2、Rd3、Rd4を演算する。
次に、ステップS192において、制御装置2は、各インピーダンス実部Rd1、Rd2、Rd3、Rd4から、各巻線抵抗Rc(Tc)の相互の差である巻線抵抗差を演算する。
具体的に、制御装置2は、先ず、各インピーダンス実部Rd1、Rd2、Rd3、Rd4を式(3)に適用して、以下の巻線抵抗Rc(Tc)を定める各式(4)〜式(7)を得る。
なお、式(4)〜式(7)に含まれるλは、式(3)の右辺第2項に起因する未知数である。
ここで、式(3)の右辺第2項は、永久磁石25a、25b、25c、25dのインピーダンス構成要素(電気抵抗及びインダクタンス等)によって定まる項である。そして、上記各ステップの説明、及び図9A〜図9Dを参照すれば理解されるように、各インバータ10−1〜10−4による第1インピーダンスZh1、第2インピーダンスZh2、第3インピーダンスZh3、及び第4インピーダンスZh4に係る計測対象は、共通の永久磁石25a、25b、25c、25dである。
さらに、永久磁石25a、25b、25c、25dのインピーダンス要素に影響を与える磁石温度Tmは、各インバータ10−1〜10−4によるそれぞれのインピーダンス計測の総時間(電気角数2周期分の時間)程度の短時間では、実質的に変動しないものとみなすことができる。
したがって、これらインピーダンスZhを式(3)に適用する場合には、永久磁石25a、25b、25c、25dのインピーダンス構成要素によって定まる当該式(3)の右辺第2項は、実質的に全て同一の値(=λ)とみなすことができる。
結果として、制御装置2は、式(3)に基づいて、第1巻線抵抗Rc1(Tc1)、第2巻線抵抗Rc2(Tc2)、第3巻線抵抗Rc3(Tc3)、第4巻線抵抗Rc4(Tc4)、及びλの5つを未知数とした上記式(4)〜式(7)を得ることができる。
さらに、制御装置2は、式(4)〜式(7)からλを消去する演算を実行し、第1巻線抵抗Rc1(Tc1)、第2巻線抵抗Rc2(Tc2)、第3巻線抵抗Rc3(Tc3)、及び第4巻線抵抗Rc4(Tc4)の相互差を定める以下の式(8)〜式(10)を求める。
式(8)〜式(10)において左辺を構成する各インピーダンス実部Rd1〜Rd4が既知の値であることを考慮すれば、巻線抵抗相互差Rc1(Tc1)−Rc2(Tc2)、Rc2(Tc2)−Rc3(Tc3)、及びRc3(Tc3)−Rc4(Tc4)のそれぞれの値を求めることができる。
すなわち、制御装置2は、第1巻線23−1〜第4巻線23−4の間における各巻線抵抗Rc1(Tc1)〜Rc4(Tc4)の相互差(ばらつき)を把握することができる。
次に、ステップS193において、制御装置2は、第1巻線抵抗Rc1(Tc1)、第2巻線抵抗Rc2(Tc2)、第3巻線抵抗Rc3(Tc3)、及び第4巻線抵抗Rc4(Tc4)を演算する。
具体的に、制御装置2は、図7に示したマップを用いて、巻線温度センサ40で検出される第1巻線温度Tc1から第1巻線抵抗Rc1(Tc1)を演算する。そして、制御装置2は、求めた第1巻線抵抗Rc1(Tc1)に基づいて、式(8)〜式(10)を順次適用して第2巻線抵抗Rc2(Tc2)、第3巻線抵抗Rc3(Tc3)、及び第4巻線抵抗Rc4(Tc4)を演算する。
そして、ステップS194において、制御装置2は、図7に示したマップを用いて演算した第2巻線抵抗Rc2(Tc2)、第3巻線抵抗Rc3(Tc3)、及び第4巻線抵抗Rc4(Tc4)のそれぞれに基づいて、第2巻線温度Tc2、第3巻線温度Tc3、及び第4巻線温度Tc4を求める。
したがって、一つの巻線温度センサ40によって、固定子11上において異なる相互に異なる位置に配置されている各巻線23−1〜23−4ごとの第1巻線温度Tc1、第2巻線温度Tc2、第3巻線温度Tc3、及び第4巻線温度Tc4を演算することができる。
なお、上記態様に代えて、制御装置2が、ステップS193において各巻線抵抗相互差Rc1(Tc1)−Rc2(Tc2)、Rc2(Tc2)−Rc3(Tc3)、及びRc3(Tc3)−Rc4(Tc4)を求めた後に、図7に示したマップを用いて、これらに対応する各巻線温度相互差Tc1−Tc2、Tc2−Tc3、Tc3−Tc4を求めるようにしても良い。この態様によっても、一つの巻線温度センサ40による第1巻線温度Tc1を用いれば、その他の第2巻線温度Tc2、第3巻線温度Tc3、及び第4巻線温度Tc4を演算することができる。
以上説明した構成を有する本実施形態の巻線温度推定システム100又は巻線温度推定方法によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、相ごとの巻線23が複数(各巻線23−1〜23−4)設けられた固定子11と、永久磁石25が設けられた回転子12と、を備えた永久磁石同期型の電動機であるモータ1において巻線温度Tcを推定する巻線温度推定システム100が提供される。
また、巻線温度推定システム100は、各巻線23−1〜23−4のそれぞれに並列に接続されたインバータ10−1〜10−4と、インバータ10−1〜10−4を制御する制御装置2と、を備える。
そして、制御装置2は、インバータ10−1〜10−4を個別に制御して基本波とは異なる周波数の交流信号である高調波電圧指令値vdsc*を重畳することでそれぞれのインピーダンスZh1〜Zh4を計測するインピーダンス計測処理を実行する(図4、図5、及び図8)。
さらに、制御装置2は、各インピーダンスZhに基づいて、各巻線23−1〜23−4における巻線抵抗Rc1(Tc1)〜Rc4(Tc4)を推定する(図4の巻線温度推定部250、及び図10のステップS191〜ステップS193)。
これによれば、各巻線23−1〜23−4のそれぞれに並列に接続された各インバータ10−1〜10−4で個別にインピーダンス計測を実行して、それぞれのインピーダンスZh1〜Zh4を推定することができ、これら値に基づいて各巻線23−1〜23−4の巻線抵抗Rc1(Tc1)〜Rc4(Tc4)又はこれらの巻線抵抗相互差Rc1(Tc1)−Rc2(Tc2)、Rc2(Tc2)−Rc3(Tc3)、及びRc3(Tc3)−Rc4(Tc4)を推定し、対応する巻線温度Tc1〜Tc4又は各巻線温度相互差Tc1−Tc2、Tc2−Tc3、Tc3−Tc4を推定することができる。
したがって、モータ1の設置環境などにより各巻線23−1〜23−4の間で巻線温度分布のばらつきが生じても、当該ばらつきを適切に把握して高精度な巻線温度Tcの推定に寄与することができる。
また、本実施形態では、制御装置2は、固定子11における各巻線23の配置位置と回転子12における各永久磁石25a〜25hとの間の配置位置を記憶した配置位置情報記憶部200をさらに有する(図4参照)。そして、制御装置2は、回転子12の現在回転位置としての現在電気角θ_cを取得し、配置位置情報記憶部200を参照して現在電気角θ_cに基づいて各インバータ10−1〜10−4によるインピーダンス計測のタイミングを設定する(図8及び図9A〜図9D)。
これによれば、配置位置情報記憶部200に記憶された配置位置情報に基づいて、現在電気角θ_cに応じて適切な各インバータ10−1〜10−4によるインピーダンス計測のタイミングを定めることができる。
より具体的には、回転子12の現在電気角θ_cに応じて、各巻線23−1〜23−4の回転磁界と永久磁石25a〜25hの磁界の錯交状態を特定することができるので、各インバータ10−1〜10−4が計測するインピーダンスZh1〜Zh4に特定の永久磁石25のインピーダンス成分を含ませるようにすることができる。
例えば、本実施形態においては、図9Aに示す回転子12の現在電気角θ_cがθ1〜θ2である場合、第1インバータ10−1に第1巻線23−1が発生させる回転磁界に永久磁石25a、25b、25c、25dによる磁界が錯交する。
これにより、回転子12の現在電気角θ_cが計測開始電気角θ0となるタイミング(第1巻線23−1の回転磁界と永久磁石25dの磁界が錯交を開始するタイミング)において第1インバータ10−1によるインピーダンス計測を開始すると、当該インピーダンス計測では実質的に第1巻線23−1及び永久磁石25a、25b、25c、25dをインピーダンス計測対象とすることができる。
そして、本実施形態では、制御装置2は、回転子12が所定の基準電気角である第1基準電気角θ1、第2基準電気角θ2、及び第3基準電気角θ3に到達する度に、インピーダンス計測を実行させるインバータ10を切り替える。
これにより、計測開始電気角θ0から電気角周期間隔の第1基準電気角θ1、第2基準電気角θ2、及び第3基準電気角θ3に到達するタイミングで、回転子12の回転位置に応じてインピーダンス計測を実行させるインバータ10が適宜切り替えられるので、一度にインピーダンス計測を実行させるインバータ10の台数を抑制することができる。結果として、各インバータ10−1〜10−4を統括的に制御する制御装置2における演算処理の平準化を図ることができるので、制御装置2への演算負荷を抑制することができる。
特に、本実施形態では、制御装置2は、回転子12が所定の計測開始電気角θ0に到達すると、第1インバータ10−1にインピーダンス計測を実行させて第1インピーダンスZh1を取得し(図8のステップS120)、回転子12が計測開始電気角θ0から1電気角分回転した所定の第1基準電気角θ1に到達すると、第1インバータ10−1にインピーダンス計測を実行させて第1インピーダンスZh1を取得し(図8のステップS140)、回転子12が第1基準電気角θ1から1電気角分回転した所定の第2基準電気角θ2に到達すると、第2インバータ10−2にインピーダンス計測を実行させて第2インピーダンスZh2を取得し(図8のステップS160)、回転子12が第2基準電気角θ2から1電気角分回転した所定の第3基準電気角θ3に到達すると、第3インバータ10−3にインピーダンス計測を実行させて第3インピーダンスZh3を取得し(図8のステップS180)、第1インピーダンスZh1、第2インピーダンスZh2、第3インピーダンスZh3、及び第4インピーダンスZh4に基づいて、巻線抵抗Rc1(Tc1)〜Rc4(Tc4)を演算する(図9のステップS190)。
本実施形態では、計測開始電気角θ0から第1基準電気角θ1の間において、第1巻線23−1が発生させる回転磁界には永久磁石25a、25b、25c、25dによる磁界が錯交する(図9A参照)。したがって、第1インバータ10−1によるインピーダンス計測では、実質的に第1巻線23−1及び永久磁石25a、25b、25c、25dを計測対象とする第1インピーダンスZh1が取得される。
そして、第1基準電気角θ1から第2基準電気角θ2の間において、第2巻線23−2が発生させる回転磁界には永久磁石25a、25b、25c、25dによる磁界が錯交する(図9A参照)。したがって、第2インバータ10−2によるインピーダンス計測では、実質的に第2巻線23−2及び永久磁石25a、25b、25c、25dを計測対象とする第2インピーダンスZh2が取得される。
同様に、第2基準電気角θ2〜第3基準電気角θ3における第3インバータ10−3によるインピーダンス計測、及び第3基準電気角θ3から1電気角周期分の第4インバータ10−4によるインピーダンス計測によって、第3巻線23−3及び永久磁石25a、25b、25c、25dを計測対象とする第3インピーダンスZh3、並びに第4巻線23−4及び永久磁石25a、25b、25c、25dを計測対象とする第4インピーダンスZh4が取得される。
以上の説明した各インバータ10−1〜10−4による順次のインピーダンス計測によって、回転子12が回転しているにもかかわらず共通の永久磁石25a、25b、25c、25dを計測対象とする各インピーダンスZh1〜Zh4を取得することができる。
したがって、これら各インピーダンスZh1〜Zh4を相互に比較すれば、永久磁石25に起因するインピーダンス成分をより容易に抽出してこれを除去することができる。結果として、各巻線抵抗Rc1(Tc1)〜Rc4(Tc4)をより効率的に推定することができる。
また、本実施形態の巻線温度推定システム100では、複数の巻線23−1〜23−4の内の一つの巻線である第1巻線23−1の温度を検出巻線温度センサ40が設けられる。そして、制御装置2は、巻線温度センサ40の温度検出値に基づいて、巻線温度センサ40が設けられていない巻線23−2〜23−4における巻線温度Tc2、Tc3、Tc4を演算する(図10のステップS194)。
すなわち、各インバータ10−1〜10−4のうちの1台の第1インバータ10−1に接続されている第1巻線23−1の第1巻線温度Tc1を巻線温度センサ40で検出することで、当該第1巻線温度Tc1から第1巻線抵抗R1(Tc1)を求めることができる。これにより、求めた第1巻線抵抗R1(Tc1)を用いれば、他の各巻線23−2〜23−4のそれぞれに対して計測されたインピーダンスZh2〜Zh4に基づいて、それらの各巻線抵抗R2(Tc1)〜R4(Tc4)を容易に求めることができる。したがって、各巻線抵抗R2(Tc1)〜R4(Tc4)から各巻線温度Tc2、Tc3、Tc4を個別により確実に演算することができる。
以上説明したように、本実施形態では、相ごとの巻線23が複数(各巻線23−1〜23−4)設けられた固定子11と、永久磁石25が設けられた回転子12と、を備えた永久磁石同期型の電動機としてもモータ1において巻線温度Tcを推定する巻線温度推定システム100が提供される。
さらに、本実施形態では、この巻線温度推定システム100において、複数の巻線23−1〜23−4に個別に交流信号である高調波電圧指令値vdsc*を印加して各インピーダンスZh1〜Zh4を計測し(図8のステップS120、ステップS140、ステップS160、及びステップS180)、それぞれのインピーダンスZh1〜Zh4に基づいて、各巻線23−1〜23−4における巻線抵抗R1(Tc1)〜R4(Tc4)を推定する(図10のステップS193)巻線温度推定方法が提供される。
これによれば、各巻線23−1〜23−4に対して個別に計測する各インピーダンスZh1〜Zh4に基づいて、各巻線23−1〜23−4の巻線抵抗Rc1(Tc1)〜Rc4(Tc4)又はこれらの巻線抵抗相互差Rc1(Tc1)−Rc2(Tc2)、Rc2(Tc2)−Rc3(Tc3)、及びRc3(Tc3)−Rc4(Tc4)を推定し、対応する巻線温度Tc1〜Tc4又は各巻線温度相互差Tc1−Tc2、Tc2−Tc3、Tc3−Tc4を推定することができる。
したがって、モータ1の設置環境などにより各巻線23−1〜23−4の間で巻線温度分布のばらつきが生じても、当該ばらつきを適切に把握して高精度な巻線温度Tcの推定に寄与することができる。
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。本実施形態では、制御装置2は、特に第1実施形態と異なる態様の巻線温度Tcの推定を行う。
図11は、本実施形態における各巻線温度Tc1〜Tc4の推定の流れを示すフローチャートである。また、図12A及び図12Bは、本実施形態における各インピーダンスZh1〜Zh4の計測態様を説明する図である。
図示のように、ステップS210において、制御装置2は、図8のステップS110と同様に、回転子12が予め定められた所定の計測開始電気角θ0に到達したか否かを判定する。そして、制御装置2は、回転子12が計測開始電気角θ0に到達したと判断すると、ステップS220の処理に移行する。
ステップS220において、制御装置2(特に第1〜第4インバータ制御部210、220、230、240)は、第1インバータ10−1、第2インバータ10−2、第3インバータ10−3、及び第4インバータ10−4の全てに、図5で説明した制御ロジックにしたがう第1回目のインピーダンス計測(以下では、単に「第1回全計測」とも記載する)を実行させる。
図12Aには、第1回全計測の状態が示されている。
本実施形態の第1回全計測では、第1インバータ10−1によるインピーダンス計測によって、第1巻線23−1、永久磁石25a、25b、25c、25d(図12Aにおいて太字の実線で囲まれた領域内の磁石)を計測対象とした第1インピーダンスZh1を求めることができる。
一方、第3インバータ10−3によるインピーダンス計測によって、第3巻線23−3、永久磁石25h、25g、25f、25e(図12Aにおいて太字の破線で囲まれた領域内の磁石)を計測対象とした第3インピーダンスZh3を求めることができる。
次に、ステップS230において、制御装置2は、回転子12が上記計測開始電気角θ0から電気角1周期分回転した位置に対応する第1基準電気角θ1に到達したか否かを判定する。そして、制御装置2は、回転子12が第1基準電気角θ1に到達したと判定すると、ステップS240の処理を実行する。
ステップS240において、制御装置2(特に第1〜第4インバータ制御部210、220、230、240)は、第1インバータ10−1、第2インバータ10−2、第3インバータ10−3、及び第4インバータ10−4の全てに、図5で説明した制御ロジックにしたがう第2回目のインピーダンス計測(以下では、単に「第2回全計測」とも記載する)を実行させる。
図12Bには、第2回全計測の状態が示されている。
本実施形態の第2回全計測では、第2インバータ10−2によるインピーダンス計測によって、第2巻線23−2、永久磁石25a、25b、25c、25d(図12Bにおいて太字の実線で囲まれた領域内の磁石)を計測対象とした第2インピーダンスZh2を求めることができる。
また、第4インバータ10−4によるインピーダンス計測によって、第4巻線23−4、永久磁石25h、25g、25f、25e(図12Bにおいて太字の破線で囲まれた領域内の磁石)を計測対象とした第4インピーダンスZh4を求めることができる。
以上により、上述した第1回全計測及び第2回全計測を経ることで、第1インバータ10−1及び第2インバータ10−2により共通の永久磁石25a、25b、25c、25dを計測対象としたインピーダンス計測が実行されることとなる。また、第3インバータ10−3及び第4インバータ10−4により共通の永久磁石25h、25g、25f、25eを計測対象としたインピーダンス計測が実行されることとなる。
そして、図11に戻り、ステップS250において、制御装置2(特に巻線温度推定部250)は、巻線抵抗Rc(Tc)及び巻線温度Tcを演算する。
具体的に、制御装置2は、図10のステップS191〜ステップS194で説明した処理と同様の処理を実行する。
より詳細には、永久磁石25a、25b、25c、25dを共通の計測対象として得られる第1インピーダンスZ(1)h1及び第2インピーダンスZ(2)h2に基づいてステップS191〜ステップS194で説明した処理と同様の処理を実行する一方で、永久磁石25h、25g、25f、25eを共通の計測対象として得られる第3インピーダンスZ(1)h3及び第4インピーダンスZ(2)h4に基づいてステップS191〜ステップS194で説明した処理と同様の処理を実行する。
これにより、第1実施形態と同様に、第1巻線抵抗Rc1(Tc1)、第2巻線抵抗Rc2(Tc2)、第3巻線抵抗Rc3(Tc3)、及び第4巻線抵抗Rc4(Tc4)又はこれらの相互差を演算することができ、結果として第1巻線温度Tc1、第2巻線温度Tc2、第3巻線温度Tc3、及び第4巻線温度Tc4又はこれらの相互差を推定することができる。特に、本実施形態では、実質的に電気角2周期分程度の時間しか要しない第1回全計測及び第2回全計測によって、これらを求めることができる。
以上説明した構成を有する本実施形態の巻線温度推定システム100又は巻線温度推定方法によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の巻線温度推定システム100では、制御装置2は、各インバータ10−1〜10−4の全てに略同一タイミングでインピーダンス計測を実行させる(図11のステップS220及びステップS240)。
これによれば、1回のインピーダンス計測において、各インバータ10−1〜10−4により計測される各インピーダンスZh1〜Zh4を全て得ることができる。すなわち、1回のインピーダンス計測であっても、各インピーダンスZh1〜Zh4を相互に比較することで推定に用いるより多くの情報を得ることができるので、各巻線抵抗Rc1(Tc1)〜Rc4(Tc4)の演算、及び該演算に基づく各巻線温度Tc1〜Tc4の推定をより速やかに行うことができる。
特に、制御装置2は、回転子12が所定の計測開始電気角θ0に到達すると、各インバータ10−1〜10−4の全てに1回目のインピーダンス計測(第1回全計測)を実行させて第1回全計測時インピーダンス、特に第1インピーダンスZ(1)h1及び第3インピーダンスZ(1)h3を取得し(図11のステップS210及びステップS220)、回転子12が計測開始電気角θ0から1電気角分回転した第1基準電気角θ1に到達すると、各インバータ10−1〜10−4の全てに2回目のインピーダンス計測(第2回全計測)を実行させて第2回全計測時インピーダンス、特に第2インピーダンスZ(2)h2及び第4インピーダンスZ(2)h4を取得し(図11のステップS230及びステップS240)を取得し、上記第1回全計測時インピーダンス及び第2回全計測時インピーダンスに基づいて、各巻線23−1〜23−4における巻線抵抗Rc1(Tc1)〜Rc4(Tc4)を演算する(図11のステップS250)。
これにより、回転子12が2電気角分回転する間の短時間において、巻線抵抗Rc1(Tc1)〜Rc4(Tc4)を演算することができる。結果として、巻線抵抗Rc1(Tc1)〜Rc4(Tc4)に基づく巻線温度Tc1〜Tc4の推定をより速やかに実行することができる。
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態又は第2実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。本実施形態では、特に、4極6スロットの三相モータに対する巻線温度Tcの推定処理が実行される。
図13は、本実施形態のモータ1の構成を説明する図である。図示のように、本実施形態では、固定子11に第1巻線23−1及び第2巻線23−2が設けられている。また、回転子12には、周方向に沿って4つの永久磁石25a、永久磁石25b、永久磁石25c、及び永久磁石25dが配置されている。
さらに、第1巻線23−1及び第2巻線23−2には、それぞれに個別に第1インバータ10−1及び第2インバータ10−2が接続されている。
図14には、第1巻線23−1及び第2巻線23−2に対する第1インバータ10−1及び第2インバータ10−2の接続態様を示している。また、図15には、制御装置2による巻線温度Tcの推定機能を示すブロック図である。
図14及び図15から理解されるように、本実施形態における第1インバータ10−1及び第2インバータ10−2の接続構造、及び制御装置2の機能ブロックはインバータ10の台数が2台になったことによる各構成の変更を除いて、第1実施形態の巻線温度推定システム100の場合と同様である。
特に、本実施形態のモータ1では、固定子11がどの回転位置であったとしても、当該回転位置から電気角1周期分回転すれば、第1巻線23−1の回転磁界及び第2巻線23−2の回転磁界の何れも、全ての永久磁石25a、永久磁石25b、永久磁石25c、及び永久磁石25dの磁界と錯交することとなる。
したがって、本実施形態では、制御装置2は、固定子11の回転位置に依らず、第1インバータ10−1及び第2インバータ10−2の双方に同時に1電気角周期分のインピーダンス計測を実行させれば、第1インピーダンスZh1及び第2インピーダンスZh2の双方に全ての永久磁石25a〜25dのインピーダンス要素が含まれることとなる。
したがって、上記インピーダンス計測により得られた第1インピーダンスZh1及び第2インピーダンスZh2に関して図10で説明した方法と同様の演算を実行することで、第1巻線抵抗Rc1(Tc1)及び第2巻線抵抗Rc2(Tc2)を求めることができ、結果として第1巻線温度Tc1及び第2巻線温度Tc2を求めることができる。
以上説明した構成を有する本実施形態の巻線温度推定システム100又は巻線温度推定方法によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の巻線温度推定システム100では、モータ1は、4極6スロットの三相モータであり、各インバータ10は、2台の第1インバータ10−1及び第2インバータ10−2である。そして、制御装置2は、第1インバータ10−1及び第2インバータ10−2に略同時にインピーダンス計測を実行させて、第1インバータ10−1によるインピーダンス計測で得られる第1インピーダンスZh1及び前記第2インバータによるインピーダンス計測で得られる第2インピーダンスZh2を取得し、第1インピーダンスZh1及び第2インピーダンスZh2に基づいて、第1巻線抵抗Rc1(Tc1)及び第2巻線抵抗Rc2(Tc2)を演算する。
これにより、4極6スロットのモータ1において、第1インバータ10−1及び第2インバータ10−2の双方で同時にインピーダンス計測を実行することで、1度のインピーダンス計測に必要な時間で第1巻線抵抗Rc1(Tc1)及び第2巻線抵抗Rc2(Tc2)又はこれらの相互差の演算を実行することができる。結果として、これらに基づく、第1巻線温度Tc1及び第2巻線温度Tc2又はこれらの相互差の推定もより短時間に実行することができる。
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について説明する。なお、上記各実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。本実施形態では、制御装置2が、さらに、第1実施形態の巻線温度推定部250で演算された各インピーダンスZh1〜Zh4のインピーダンス実部Rd1〜Rd4に基づいて、各巻線抵抗Rc1(Tc1)〜Rc4(Tc4)の相互差を考慮しつつ、永久磁石25の温度である磁石温度Tmを演算する。
図16は、制御装置2による巻線温度Tc及び磁石温度Tmの推定機能を示すブロック図である。
図示のように、制御装置2は、図4に示す第1実施形態のブロックに加えて、磁石温度推定部260を備えている。
磁石温度推定部260には、巻線温度推定部250で演算された各巻線抵抗Rc1(Tc1)〜Rc4(Tc4)の相互差及び各インピーダンス実部Rd1〜Rd4が入力される。そして、磁石温度推定部260は、入力されたこれらの値に基づいて、永久磁石25の推定値としての磁石温度Tmを演算する。なお、以下では、記載の簡略化のため、巻線抵抗相互差Rc1(Tc1)−Rc2(Tc2)、Rc2(Tc2)−Rc3(Tc3)、及びRc3(Tc3)−Rc4(Tc4)をそれぞれ、ΔR12、ΔR23、及びΔR34という記号に書き換える。
磁石温度推定部260は、図18に示す予め実験やシミュレーションを通じて取得されたマップから各インピーダンス実部Rd1〜Rd4に対するそれぞれの磁石温度Tm1、Tm2、Tm3、Tm4を演算する。なお、既に説明したように、各インピーダンスZh1〜Zh4のインピーダンス実部Rd1〜Rd4には、共通の永久磁石25a〜25dのインピーダンス構成要素が含まれている。したがって、これら磁石温度Tm1、Tm2、Tm3、Tm4は、理論的に全て永久磁石25a〜25dの温度を計測したものである。
さらに、第1実施形態又は第2実施形態における各インバータ10−1〜各インバータ10−4のインピーダンス計測時間(4電気角周期分又は2電気角集気分の時間)では永久磁石25a〜25dの温度変化は無視できる。
したがって、理論的には各磁石温度Tm1〜Tm4は全て同一の値となる。しかしながら、各巻線23−1〜23−4の温度のばらつきに起因する各巻線抵抗Rc1(Tc1)〜Rc4(Tc4)のばらつきのため、当該各巻線抵抗Rc1(Tc1)〜Rc4(Tc4)の項をそれぞれ含むインピーダンス実部Rd1〜Rd4から図18のマップで求めた各磁石温度Tm1〜Tm4にもばらつきが生じる。
しかしながら、本実施形態では、既に説明したように巻線抵抗相互差ΔR12、ΔR23、ΔR34を評価しているので、当該巻線抵抗相互差ΔR12、ΔR23、ΔR34を考慮した上で、各磁石温度Tm1〜Tm4を好適に補正し、より実際の値に近い磁石温度Tmを求めることができる。
以上説明した構成を有する本実施形態の巻線温度推定システム100又は巻線温度推定方法によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、制御装置2は、さらに、インピーダンス実部Rd1〜Rd4及び巻線抵抗Rc1(Tc1)〜Rc4(Tc4)に基づいて、永久磁石25の温度である磁石温度Tmを推定する。
これにより、各インバータ10−1〜10−4によるインピーダンス計測の計測対象である巻線抵抗Rc1(Tc1)〜Rc4(Tc4)の相互のばらつきを表す巻線抵抗相互差ΔR12、ΔR23、ΔR34を考慮して磁石温度Tmを推定できるので、当該磁石温度Tmの推定精度の向上を図ることができる。
なお、本実施形態に係る磁石温度Tmの推定は、第2実施形態で説明した巻線温度推定システム100又は第3実施形態で説明した巻線温度推定システム100に対しても、必要な変更を加えて適用することができる。
(第5実施形態)
以下、第5実施形態について説明する。なお、上記各実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図18は、本実施形態の巻線温度推定システム100の構成を説明する図である。図示のように、本実施形態では、第1実施形態で説明したモータ1が、その回転軸が水平となるように、冷却液(冷却油)が貯留される冷却液槽80に一部漬けられた状態で配置される。この配置によって、回転子12の回転に伴い、冷却液槽80の冷却水が掻き揚げられてモータケース内の空間に誘導(循環)される。
そして、冷却液槽80には、冷却液の温度を検出する冷却液温度センサ82が設けられている。
そして、本実施形態では、制御装置2の巻線温度推定部250に入力される第1巻線温度Tc1の検出値として、冷却液温度センサ82の検出値が用いられる。したがって、制御装置2は、上記巻線温度センサ40に代えて冷却液温度センサ82の検出値を用い、図10のステップS191以降の処理を実行する。
これにより、冷却用の液体の温度検出に用いる冷却液温度センサ82の検出値を利用して各巻線抵抗Rc1(Tc1)〜Rc4(Tc4)及び各巻線温度Tc1〜Tc4を演算することができる。
なお、このような冷却構造で冷却されるモータ1の場合には、冷却液槽80に液没している巻線23(図では第1巻線23−1)と、そうでない巻線23(第2巻線23−2、第3巻線23−3、及び第4巻線23−4)の放熱性能が異なる。したがって、各巻線温度Tc1〜Tc4のばらつきが生じ易いことが考えられる。これに対して、本実施形態の巻線温度推定システム100であれば、このような冷却構造が適用されるモータ1に対しても、当該ばらつきが好適に把握することができる。
以上説明した構成を有する本実施形態の巻線温度推定システム100又は巻線温度推定方法によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、固定子11又は回転子12に冷却液を循環させて冷却する冷却構造と、液体の温度を検出する冷却液温度センサ82と、をさらに備える。そして、制御装置2は、冷却液温度センサ82の温度検出値に基づいて各巻線温度Tc1〜Tc4を演算する。
これにより、冷却液温度センサ82の検出値を、第1実施形態で説明した巻線温度センサ40の検出として用いることができる。すなわち、冷却液の温度を検出する冷却液温度センサ82を利用して巻線抵抗相互差ΔR12、ΔR23、ΔR34から各巻線抵抗Rc2(Tc2)〜Rc4(Tc4)を演算するための基準となる第1巻線抵抗Rc1(Tc1)の値を定めることができる。特に、固定子11の第1巻線23−1は、冷却液槽80内の冷却液に常に液没している状態であるため、冷却液温度センサ82の検出値は第1巻線23−1の実際の温度に近い値となる。したがって、第1巻線抵抗Rc1(Tc1)をより高精度に定めることができる。
なお、本実施形態の構成は、第2実施形態で説明した巻線温度推定システム100又は第3実施形態で説明した巻線温度推定システム100に対しても、必要な変更を加えて適用することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。また、上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。
例えば、モータ1の極数及びスロット数は上記各実施形態で説明したものに限られない。すなわち、極数及びスロット数の種々の態様に応じてモータ1に設けられる巻線23の数が変更される場合であっても、各巻線23に個別にインバータ10を接続しつつ、適宜必要な制御の修正を行い、上記各実施形態で説明した巻線抵抗Rc(Tc)、巻線温度Tc、又は磁石温度Tmの推定を実行することができる。
また、上記各実施形態は、適宜組み合わせが可能である。例えば、第1及び第2実施形態は、それぞれ、第4実施形態及び第5実施形態の少なくとも何れか一方と組み合わせが可能である。また、第3実施形態も第4実施形態及び第5実施形態の少なくとも何れか一方と組み合わせが可能である。