以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や、長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
図1は、照明装置10の全体構成を模式的に示す斜視図である。照明装置10は、被照明領域LZを照明する装置である。本実施の形態による照明装置10は、コヒーレント光源20と、コヒーレント光源20から射出したコヒーレント光を整形する整形光学系30と、整形光学系30で整形されたコヒーレント光を回折して被照明領域LZに向ける回折光学素子40と、を有している。この照明装置10は、回折光学素子40でコヒーレント光を回折して複数の単位像Iuを投影面Ppに投影することで、投影面Pp上の被照明領域LZを照明する。とりわけ本実施の形態による照明装置10では、被照明領域LZを一様な明るさで照明するための工夫が成されている。以下、図示された具体例を参照しながら、一実施の形態による照明装置10について説明していく。
上述したように、照明装置10は、投影面Pp上の被照明領域LZを照明する装置である。図示された例において、実空間における被照明領域LZは、長手方向dlを有した細長い領域となっている。この被照明領域LZは、例えば、長手方向dlへの長さの短手方向dwへの長さに対する比が10以上、さらには、この比が100以上となる被照明領域LZ、典型的にはライン状の被照明領域LZとすることもできる。このような照明装置は、例えば、自動車や船等の移動体に適用され得る。移動体では、進行方向の前方に広がる領域を照明する必要がある。とりわけ、高速で走行する自動者の前照灯、いわゆるヘッドランプは、当該自動車の前方近傍から前方遠方までの路面を明るく照らすことが好ましい。
図示された例において、投影面Ppは、長手方向dlと平行なz方向および幅方向dwと平行なx方向によって画定されるxz平面となっている。また、法線方向ndは、xz平面と直交するy方向と平行になっている。
ただし、図示された例に限られず、照明装置10が、所定の輪郭を有した領域を照明するようにしてもよい。
上述したように、図示された照明装置10は、その構成要素として、コヒーレント光源20、整形光学系30及び回折光学素子40を有している。以下、照明装置10の各構成要素について順に説明していく。
コヒーレント光源20として、種々の型式の光源を用いることができる。典型的には、コヒーレント光源20として、レーザー光を発振するレーザー光源を用いることができ、一具体例として、半導体レーザー光源を例示することができる。図1に示された例において、コヒーレント光源20は、単一の光源を含んでいる。したがって、図示された例では、コヒーレント光源20から発振されるコヒーレント光の波長域に対応した色で、被照明領域LZが照明される。
ただし、コヒーレント光源20が複数のコヒーレント光源20を含み、各コヒーレント光源20から射出した光が重ね合わされた後、整形光学系30及び回折光学素子40に向かうようにしてもよい。また、図10及び図11に示された変形例のように、各コヒーレント光源20から射出した光が当該コヒーレント光源20に対応して設けられた整形光学系30A,30B,30C及び回折光学素子40A,40B,40Cを経て、その後に被照明領域LZ上で重ね合わされてもよい。このような例において、コヒーレント光源20に含まれる複数のコヒーレント光源20は、同一の波長域の光を射出するようにしてもよい。コヒーレント光源20が同一の波長域の光を射出するコヒーレント光源20を含むことで、被照明領域LZを明るく照明することが可能となる。
なお、図10及び図11に示す例において、コヒーレント光源20は、第1コヒーレント光源20A、第2コヒーレント光源20B及び第3コヒーレント光源20Cを有している。コヒーレント光源20が、複数のコヒーレント光源を含む場合には、各コヒーレント光源20からのコヒーレント光の射出、より具体的には射出の発停および射出量を調節することで、被照明領域LZの照明色や被照明領域LZの明るさを制御するようにしてもよい。
次に、整形光学系30について説明する。整形光学系30は、コヒーレント光源20から射出したコヒーレント光を整形する。言い換えると、整形光学系30は、コヒーレント光の光軸に直交する断面での形状や、コヒーレント光の光束の立体的な形状を整形する。典型的には、整形光学系30は、コヒーレント光の光軸に直交する断面でのコヒーレント光の光束断面積を拡大させる。
図示された例において、整形光学系30は、コヒーレント光源20から射出したコヒーレント光を拡幅した平行光束に整形する。すなわち、整形光学系30は、コリメート光学系として機能する。図1に示すように、整形光学系30は、コヒーレント光の光路に沿った順で、第1レンズ31及び第2レンズ32を有している。第1レンズ31は、コヒーレント光源20から射出したコヒーレント光を発散光束に整形する。第2レンズ32は、第1レンズ31で生成された発散光束を、平行光束に整形し直す。すなわち、第2レンズ32は、コリメートレンズとして機能する。
次に、回折光学素子40について説明する。回折光学素子40は、コヒーレント光源20から射出した光に対して回折作用を及ぼす素子である。回折光学素子40は、コヒーレント光源20からの光を回折して、被照明領域LZに向ける。したがって、被照明領域LZは、回折光学素子40での回折光によって、照明されることになる(図1参照)。
回折光学素子40は、典型的には、ホログラム素子である。回折光学素子40としてホログラム素子を用いることで、ホログラム素子の回折特性を設計しやすくなり、予め定めた位置、サイズおよび形状の被照明領域LZの全域を照明するようなホログラム素子の設計も比較的容易に行うことができる。
被照明領域LZは、回折光学素子40に対して予め定めた位置に、予め定めたサイズおよび形状でxyz座標の実空間に設定されている。被照明領域LZの位置、サイズおよび形状は、回折光学素子40の回折特性に依存しており、回折光学素子40の回折特性を調整することで、被照明領域LZの位置、サイズおよび形状を任意に調整することができる。従って、回折光学素子40を設計する際には、まず被照明領域LZの位置、サイズおよび形状を決定して、決定した被照明領域LZの全域を照明できるように、回折光学素子40の回折特性を調整すればよい。
回折光学素子40は、計算機合成ホログラム(CGH:Computer Generated Hologram)として作製され得る。計算機合成ホログラムは、任意の回折特性を持つ構造をコンピュータ上で計算することによって作製される。したがって、計算機合成ホログラムを回折光学素子40として採用することで、コヒーレント光源や光学系を用いた物体光及び参照光の生成や、露光によるホログラム記録材料への干渉縞の記録を不要とすることができる。照明装置10は、例えば図1に示すように、回折光学素子40に対して予め定めた位置に、予め定めたサイズおよび形状の被照明領域LZを照明することを想定されている。被照明領域LZに関する情報をパラメータとしてコンピュータに入力することで、この被照明領域LZを照明可能な回折特性を持つ構造、例えば凹凸面を、コンピュータでの演算によって特定することができる。特定された構造を、例えば樹脂賦型により形成することで、計算機合成ホログラムとしての回折光学素子40を、簡易な手順にて低コストで作製することができる。
回折光学素子40で回折された光が、照明光として、被照明領域LZを照明する。図示された例において、回折光学素子40と被照明領域LZとの間には、他の光学素子等が介在していない。したがって、回折光学素子40での回折光は、被照明領域LZに直接入射する。回折光学素子40上の各点における回折光は、被照明領域LZの少なくとも一部を照明する。すなわち、回折光学素子40上の各点における回折光は、所定の拡散角度範囲内を進行して、被照明領域LZを照明する。
本実施の形態による回折光学素子40は、図2に示すように、整形光学系30からのコヒーレント光を回折して、複数の単位像Iuを投影面Pp上に生成する。投影面Pp上の被照明領域LZは、複数の単位像Iuの集合体によって、照明されることになる。この回折光学素子40は、次のようにして設計される。まず、図3に示すように、被照明領域LZの形状を設定する。次に、図3に示すように、各単位像Iuの原像となる点像Ipを仮想面Pv上に配列してなる点像パターンを設定する。例えば、点像Ipは、被照明領域LZ内に敷き詰められる。図3に示された例において、点像パターンの外輪郭は、被照明領域LZの外輪郭に概ね一致している。
次に、図4に示すように、回折光学素子40への入射光Liと、各点像Ipから回折光学素子40に向かう発散光Ldと、を設定する。ここで、「回折光学素子40への入射光Li」は、回折光学素子40が照明装置10に組み込まれた状態において整形光学系30から回折光学素子40へ入射するようになる光と同一の光路を進む光とする。「各点像Ipから回折光学素子40に向かう発散光Ld」は、照明装置10の実際の使用時に、回折光学素子40の各位置で回折されて各点像Ipに向かうようになる回折光の光路を逆向きに進んで、点像Ipの位置から回折光学素子40内の各位置へ入射する光とする。その後、回折光学素子40への入射光と各点像Ipから回折光学素子40に向かう発散光とによって形成される回折光学素子40上での干渉パターンを形成し、この干渉パターンに対応した微細構造を作製する。微細構造としては、凹凸パターンが例示される。干渉パターンの計算は、「回折光学素子40への入射光」や「各点像Ipから回折光学素子40に向かう発散光」のモデル設計を含め、計算機によって実行される。また、凹凸パターンからなる微細構造は、フォトリソグラフィー技術を利用した樹脂成形により、作製され得る。
次に、以上に説明した照明装置10の作用について説明する。
図1に示すように、光源20から射出したコヒーレント光は、まず、整形光学系30に入射する。整形光学系30では、光源20から射出した光を拡大する。すなわち、光軸に直交する断面においてコヒーレント光が占める領域が広がるよう、整形光学系30は光を整形する。整形光学系30は、第1レンズ31及び第2レンズ32を有している。図1に示すように、整形光学系30の第1レンズ31は、光源20から射出した光を発散させて発散光束に変換する。そして、整形光学系30の第2レンズ32は、発散光束を平行光束へとコリメートする。
整形光学系30で整形された光は、次に、回折光学素子40へと向かう。回折光学素子40は、整形光学系30からのコヒーレント光を回折して、被照明領域LZに向ける。図2に示すように、回折光学素子40は、整形光学系30からのコヒーレント光を回折することで、複数の点像Ipの各々に対応した複数の単位像Iuを投影面Pp上に再生する。複数の単位像Iuは、投影面Pp上において被照明領域LZ内に投影される。そして、この単位像Iuの集合体により、被照明領域LZが照明される。
上述したように、このような回折特性を有した回折光学素子40は、仮想面Pv上に配列された多数の点像Ipを再生する素子として計算機合成ホログラムにより作製され得る。この計算機合成ホログラムによって構成される回折光学素子40は、各点像Ipからの発散光と使用時に回折光学素子40へ入射する入射光との干渉パターンに対応する微細構造として、作製される。この作製時に、微細構造を作製するにあたっての制約や、計算機での計算量の制約等から、点像Ipの数を無条件に増やすことは不可能であり、また点像Ipは点として設計される。したがって、照明装置10の実際の使用においては、投影面Pp上の被照明領域LZ内に点像Ipの配列に起因した明るさのむらが生じてしまう可能性がある。さらには、被照明領域LZ内に再生された隣り合う二つの単位像Iuの間に隙間が生じることも想定され得る。このような不具合は、被照明領域LZが大面積の場合にとりわけ顕著となる。
一方、本実施の形態では、被照明領域LZ内に明るさのむらが生じてしまうといった不具合に対処するため、以下の三つの工夫を提案する。なお、以下の三つの工夫は、互いから独立して照明装置10又は回折光学素子40に適用することができる。そして、照明装置10又は回折光学素子40が、以下の三つの工夫のうちのいずれか一以上の工夫を有していることで、被照明領域LZ内の明るさのむらを効果的に抑制することも可能である。
図5及び図6を参照しながら、第1の工夫について説明する。
上述したように、点像Ipは仮想面Pvに配列されているものと想定して、回折光学素子40に付与されるべき構造が特定される。そして、単位像Iuを投影される投影面Ppが仮想面Pvと重なる場合、設計通りの回折特性を付与された回折光学素子40の各位置で回折されて一つの点像Ipを原像とする単位像Iuを再生する回折光は、図5及び図6において点線で示すように、投影面Pp上における極めて狭い領域に集光する。
一方、図5及び図6から明らかなように、回折光学素子40の各位置で回折されて一つの単位像Iuを再生する回折光の光束の断面積は、仮想面Pv上で最も小さくなる。すなわち、回折光によって仮想面Pv上に再生される単位像Iuの面積は、最も小さくなる。したがって、仮想面Pv上において、一つの単位像Iuを再生するコヒーレント光が入射する領域は、他の単位像Iuを再生するコヒーレント光が入射する領域から離間しやすくなる。ここで、光束の断面積とは、当該光束の光軸に直交する断面において光束が占める面積、言い換えると光束が通過する面積のことを意味する。また、光束の光軸とは、光束の最も中心を通過する軸線のことを意味する。
そこで、本実施の形態の第1の工夫では、投影面Ppへの法線方向ndに沿って投影面Ppから仮想面Pvをずらす。すなわち、回折光学素子40の回折特性を設計する際における回折光学素子40と仮想面Pvとの相対位置関係と、実際の使用における回折光学素子40と投影面Ppとの相対位置関係が異なる。この結果、投影面Pp上に投影された一つの単位像Iuの面積は、投影面Ppの法線方向ndに沿って投影面Ppからずれた或る面上に投影された当該一つの単位像Iuの面積よりも大きくすることができる。少なくとも、投影面Pp上に投影された一つの単位像Iuの面積は、回折光学素子40に対して回折特性設計時における仮想面Pvと同一の相対位置にある面上に投影される一つの単位像Iuの面積と比較して、大きくなる。
したがって、このような照明装置10を用いた場合、投影面Ppへの法線方向ndに沿って投影面Ppから離間した或る面上において、一つの単位像Iuを再生するコヒーレント光が入射する領域が、その他の単位像Iuを再生するコヒーレント光が入射する領域から離間することもある。言い換えると、このような照明装置10を用いた場合、投影面Ppへの法線方向ndに沿って投影面Ppから離間した或る面上において、一つの単位像Iuを再生するコヒーレント光が入射する領域が、その他の単位像Iuを再生するコヒーレント光が入射する領域との間に隙間をあけることも起こり得る。
図5に示された具体例では、回折特性を設計する際の仮想面Pvは、実際の投影面Ppよりも法線方向ndにそって上方に位置している。回折光学素子40の各位置で回折した回折光L5は、投影面Ppに到達する前に集光し、その後、発散しながら投影面Ppに接近する。結果として、一つの点像Ipを再生する単位像Iuが投影される投影面Pp上の領域を、仮想面Pv上に再生される点像Ipの大きさよりも、格段に大きくすることができる。
同様に、図6に示された具体例では、仮想面Pvは、実際の投影面Ppよりも法線方向ndにそって下方に位置している。回折光学素子40の各位置で回折した回折光L6は、仮想面Pvで集光または収束する前に、投影面Ppに到達する。結果として、一つの点像Ipを再生する単位像Iuが投影される投影面Pp上の領域を、仮想面Pv上に再生される点像Ipの大きさよりも、格段に大きくすることができる。
以上のような照明装置10に対する第1の工夫によれば、複数の単位像Iuを隙間無く投影面Pp上に投影して、被照明領域LZを一様な明るさでむらなく照明することが可能となる。その一方で、単位像Iuの数を必要以上に多く設定することを回避して、回折特性設計時における点像Ipの数が増加することも効果的に抑制することができる。これにより、回折特性設計時における計算機の負担を必要以上に増大させることなく、明るさのむらを抑制し得る照明装置10を簡易に作製することが可能となる。
なお、図5及び図6に示すように、法線方向ndに沿って仮想面Pv及び投影面Ppがずれて配置されると、仮想面Pv上における点像Ipの位置と、投影面Pp上における単位像Iuの位置は、仮想面Pv及び投影面Ppの面方向に沿ってずれてしまう。法線方向ndに沿って仮想面Pv及び投影面Ppをずらして回折光学素子40を製造する場合、このようなずれを考慮して、仮想面Pv上における点像Ipの配列パターンを決定することが好ましい。
図7及び図8を参照しながら、第2の工夫について説明する。
上述したように回折光学素子40を作製する際の回折特性の設計では、回折光学素子40に点像Ipを再生する回折特性を付与しようとしている。しかしながら、実際に作製された回折光学素子40では、図7及び図8に示すように、回折光学素子40の各位置で回折されて投影面Pp上に一つの単位像Iuを再生するコヒーレント光は、入射光の拡散特性等に依存して、いくらかの拡散角をもった拡散光となる。したがって、投影面Pp上に再生される単位像Iuは、一定の面積を持った領域となる。そして、図8に示すように、回折光学素子40の各位置から当該位置で回折された回折光の投影面Pp上への入射位置までの距離を表す投影距離Lpが長くなれば、投影面Pp上に単位像Iuが大きく投影される。逆に、図7に示すように、投影距離Lpが短くなれば、投影面Pp上に単位像Iuが小さく投影される。
したがって、投影面Ppに投影される単位像Iuの大きさが小さくなる傾向のある被照明領域LZ内における投影距離Lpが短くなる領域に、より多くの単位像Iuが投影されることが好ましい。そこで、本実施の形態の第2の工夫では、投影面Pp上での単位像Iuの密度を、被照明領域LZ内で変化させている。具体的には、投影面Pp上での単位像Iuの密度を、或る領域において、当該或る領域と比較して投影距離が長くなる他の領域よりも、高くしている。すなわち、投影距離Lpが長くなり単位像Iuが大きくなる傾向のある投影面Pp上の領域とは別の投影面Pp上の領域において、単位像Iuを高密度で再生するようにしている。
上述したように、図3は、被照明領域LZ内に設定された多数の点像Ipの配列パターンの一例を示している。ただし、図3に示された例において、投影面Ppは、仮想面Pvと重なる位置に配置され、上述した第1の工夫はなされていないものとする。したがって、照明装置10で照明を行う場合、被照明領域LZ内には、図3に示された点像Ipの各々に対応して単位像Iuが再生されることになる。
図3に示された例において、被照明領域LZは長手方向dlを有している。照明装置10は、長手方向dlにおける一側から被照明領域LZを照明する。図3に示された例において、被照明領域LZは、単位像Iuの密度を説明する便宜上、長手方向dlに沿った六つの分割領域DZに区分けされている。第1〜第6分割領域DZ1〜DZ6は同一の面積を有している。図示された被照明領域LZは、長手方向dlにおける照明装置10に近接する一側から、照明装置10から離間する他側に向けて、第1〜第6分割領域DZ1〜DZ6を含んでいる。投影距離Lpは、第6分割領域DZ6で最も長くなり、第1分割領域DZ1で最も短くなる。投影距離Lpは、第6分割領域DZ6から第1分割領域DZ1へとしだいに短くなっていく。そして、投影距離Lpが短くなれば、上述したように投影面Pp上に単位像Iuが小さく再生されるようになる。
一方、図3に示すように、各分割領域DZ内に位置する点像Ipの数は異なっている。このため、照明装置10で照明を行った際に、各分割領域DZ内に投影される単位像Iuの数も異なるようになる。つまり、単位面積あたりに存在する単位像Iuの数を表す単位像Iuの密度は、複数の分割領域DZの間で異なっている。とりわけ、図示された例では、任意の一つの分割領域DZにおける投影面Pp上での単位像Iuの密度は、当該一つの分割領域DZよりも投影距離Lpが長くなる他の任意の一つの分割領域DZにおける投影面Pp上での単位像Iuの密度以上となっている。より具体的には、各分割領域DZ内における単位像Iuの密度は、第6分割領域DZ6から第1分割領域DZ1に向けて次第に高くなっていく。
図3に示された例によれば、被照明領域LZを区分けしてなる各分割領域DZに再生される単位像Iuの密度は、分割領域DZまでの投影距離Lpが短くなるにつれて、高くなっていく。つまり、一つ単位像Iuの投影面積が小さくなる分割領域DZに、より高密度で単位像Iuを再生することができる。これにより、投影面Pp上の被照明領域LZ内での明るさのむらをさらに効果的に抑制することができる。例えば、投影面Pp上に隙間無く単位像Iuを再生することも可能となる。
以上のような照明装置10に対する第2の工夫によれば、複数の単位像Iuを隙間無く投影面Pp上に再生して、被照明領域LZを一様な明るさでむらなく照明することが可能となる。その一方で、単位像Iuの数を必要以上に多く設定することを回避して、回折特性設計時における点像Ipの数が増加することも効果的に抑制することができる。これにより、回折特性設計時における計算機の負担を必要以上に増大させることなく、明るさのむらを抑制し得る照明装置10を簡易に作製することが可能となる。
図9を参照しながら、第3の工夫について説明する。
上述したように、実際に作製された回折光学素子40を用いた場合、回折光学素子40の各位置で回折されて投影面Pp上に一つの単位像Iuを再生するコヒーレント光は、入射光の拡散特性等に依存して、いくらかの拡散角をもった拡散光となる。したがって、投影面Pp上に再生される単位像Iuは、一定の面積を持った領域に生成される。図9に示すように、単位像Iuを再生するコヒーレント光の投影面Ppへの入射方向が投影面Ppの法線方向ndに対して傾斜していると、単位像Iuは投影面Pp上において更に広がる。より具体的には、図1に示すように、単位像Iuは、当該単位像Iuを再生するコヒーレント光の入射方向を、投影面Ppの法線方向ndに沿って投影面Ppに投影した投影面Pp上の方向dxに、延びる。
そして、単位像Iuを再生するコヒーレント光の投影面Ppへの入射方向が投影面Ppの法線方向ndに対してなす角度を表すコヒーレント光の投影面Ppへの入射角度θiが大きくなれば、投影面Pp上に単位像Iuが大きく投影される。逆に、入射角度θiが小さくなれば、投影面Pp上に単位像Iuが小さく投影される。ここで、図9に示された例において、回折光L91の拡散角θdは、回折光L92の拡散角θdと同一となっている。そして、入射角度θiが大きくなる回折光L91によって投影面Pp上に投影される単位像Iuの面積は、入射角度θiが小さくなる回折光L92によって投影面Pp上に投影される単位像Iuの面積よりも大きくなっている。
したがって、投影面Ppに投影される単位像Iuの大きさが小さくなる傾向のある被照明領域LZ内における入射角度θiが小さくなる領域に、より多くの単位像Iuが投影されることが好ましい。そこで、本実施の形態の第3の工夫では、投影面Pp上での単位像Iuの密度を、被照明領域LZ内で変化させている。具体的には、投影面Pp上での単位像Iuの密度を、或る領域において、当該或る領域と比較して入射角度θiが大きくなる他の領域よりも、高くしている。すなわち、入射角度θiが大きくなり単位像Iuが大きくなる傾向のある投影面Pp上の領域とは別の投影面Pp上の領域において、単位像Iuを高密度で再生するようにしている。
ここで、図3に示された被照明領域LZは、長手方向dlにおける照明装置10に近接する一側から、照明装置10から離間する他側に向けて、第1〜第6分割領域DZ1〜DZ6を含んでいる。そして、入射角度θiは、第6分割領域DZ6で最も大きくなり、第1分割領域DZ1で最も小さくなる。入射角度θiは、第6分割領域DZ6から第1分割領域DZ1へとしだいに小さくなっていく。
その一方で、図3に示された例において、単位面積あたりに存在する単位像Iuの数を表す単位像Iuの密度は、複数の分割領域DZの間で異なっている。とりわけ、図示された例では、任意の一つの分割領域DZにおける投影面Pp上での単位像Iuの密度は、当該一つの分割領域DZよりも入射角度θiが大きくなる他の任意の一つの分割領域DZにおける投影面Pp上での単位像Iuの密度以上となっている。より具体的には、各分割領域DZ内における単位像Iuの密度は、第6分割領域DZ6から第1分割領域DZ1に向けて次第に高くなっていく。
図3に示された例によれば、被照明領域LZを区分けしてなる各分割領域DZに再生される単位像Iuの密度は、分割領域DZまでの入射角度θiが小さくなるにつれて、高くなっていく。つまり、一つ単位像Iuの投影面積が小さくなる分割領域DZに、より高密度で単位像Iuを再生することができる。これにより、投影面Pp上の被照明領域LZ内での明るさのむらをさらに効果的に抑制することができる。例えば、投影面Pp上に隙間無く単位像Iuを再生することも可能となる。
以上のような照明装置10に対する第3の工夫によれば、複数の単位像Iuを隙間無く投影面Pp上に再生して、被照明領域LZを一様な明るさでむらなく照明することが可能となる。その一方で、単位像Iuの数を必要以上に多く設定することを回避して、回折特性設計時における点像Ipの数が増加することも効果的に抑制することができる。これにより、回折特性設計時における計算機の負担を必要以上に増大させることなく、明るさのむらを抑制し得る照明装置10を簡易に作製することが可能となる。
なお、図3に示された例では、入射角度θiが大きくなる分割領域DZにおいて、投影距離Lpが長くなり、入射角度θiが小さくなる分割領域DZにおいて、投影距離Lpが短くなっている。したがって、上述した第2の工夫と第3に工夫とが同時に実現され、極めて効果的に、被照明領域LZを一様な明るさでむらなく照明することが可能となる。
上述した一実施の形態において、照明装置10は、コヒーレント光源20と、コヒーレント光源20から射出したコヒーレント光を整形する整形光学系30と、整形光学系30で整形されたコヒーレント光を回折する回折光学素子40と、を含んでいる。そして、回折光学素子40がコヒーレント光を回折して複数の単位像Iuを投影面Pp上に再生することで、被照明領域LZを照明する。回折光学素子40の各位置で回折されて投影面Pp上に一つの単位像Iuを再生するコヒーレント光は、入射光の拡散特性等に依存して、いくらかの拡散角をもった拡散光となる。したがって、投影面Pp上において、単位像Iuは、一定の面積を持った領域に投影される。そして、回折光学素子40の各位置から当該位置で回折された回折光の投影面Pp上への入射位置までの距離を表す投影距離Lpが長くなれば、投影面Pp上に単位像Iuが大きく再生される。逆に、投影距離Lpが短くなれば、投影面Pp上に単位像Iuが小さく再生される。そして、上述した一実施の形態では、投影面Pp上での単位像Iuの密度は、或る領域において、当該或る領域と比較して投影距離Lpが長くなる他の領域よりも、高くなっている。すなわち、投影距離Lpが長くなり単位像Iuが大きくなる傾向のある投影面Pp上の領域とは別の投影面Pp上の領域において、単位像Iuを高密度で再生することができる。したがって、投影面Pp上の被照明領域LZ内での明るさのむらを効果的に抑制し、被照明領域LZを十分に一様な明るさで照明することが可能となる。
上述した一実施の形態の具体例において、被照明領域LZを複数の分割領域DZに分割した場合、任意の一つの分割領域DZにおける投影面Pp上での単位像Iuの密度は、当該一つの分割領域DZよりも投影距離Lpが長くなる他の任意の一つの分割領域DZにおける投影面Pp上での単位像Iuの密度以上となっている。このような例では、被照明領域LZを区分けしてなる各分割領域DZに再生される単位像Iuの密度は、分割領域DZまでの投影距離Lpが短くなるにつれて、高くなっていく。つまり、一つ単位像Iuの面積が小さくなる分割領域DZに、より高密度で単位像Iuを再生することができる。これにより、投影面Pp上の被照明領域LZ内での明るさのむらをさらに効果的に抑制することができる。例えば、投影面Pp上に隙間無く単位像を再生することも可能となる。
また、上述した一実施の形態において、照明装置10は、コヒーレント光源20と、コヒーレント光源20から射出したコヒーレント光を整形する整形光学系30と、整形光学系30で整形されたコヒーレント光を回折する回折光学素子40と、を含んでいる。そして、回折光学素子40がコヒーレント光を回折して複数の単位像Iuを投影面Pp上に再生することで、被照明領域LZを照明する。このとき、単位像Iuを再生するコヒーレント光の投影面Ppへの入射方向が投影面Ppの法線方向ndに対して傾斜していると、単位像Iuは投影面Pp上において広がる。単位像Iuを再生するコヒーレント光の投影面Ppへの入射方向が投影面Ppの法線方向ndに対してなす角度を表すコヒーレント光の投影面Ppへの入射角度θiが大きくなれば、投影面Pp上に単位像Iuが大きく再生される。逆に、入射角度θiが短くなれば、投影面Pp上に単位像Iuが小さく再生される。そして、上述した一実施の形態では、投影面Pp上での単位像Iuの密度は、或る領域において、当該或る領域と比較して投影面Ppへのコヒーレント光の入射角度θiが大きくなる他の領域よりも、高くなっている。すなわち、入射角度θiが大きくなり単位像Iuが大きくなる傾向のある投影面Pp上の領域とは別の投影面Pp上の領域に、単位像Iuを高密度で再生することができる。したがって、投影面Pp上の被照明領域LZ内での明るさのむらを効果的に抑制し、被照明領域LZを十分に一様な明るさで照明することが可能となる。
上述した一実施の形態の具体例において、被照明領域LZを複数の分割領域DZに分割した場合、任意の一つの分割領域DZにおける投影面Pp上での単位像Iuの密度は、当該一つの分割領域DZよりも投影面Ppへのコヒーレント光の入射角度θiが大きくなる他の任意の一つの分割領域DZにおける投影面Pp上での単位像Iuの密度以上となっている。このような例では、被照明領域LZを区分けしてなる各分割領域DZに再生される単位像Iuの密度は、分割領域DZまで投影面Ppへのコヒーレント光の入射角度θiが大きくなるにつれて、高くなっていく。つまり、一つ単位像Iuの面積が小さくなる分割領域DZに、より高密度で単位像Iuを再生することができる。これにより、投影面Pp上の被照明領域LZ内での明るさのむらをさらに効果的に抑制することができる。例えば、投影面Pp上に隙間無く単位像Iuを再生することも可能となる。
上述した一実施の形態において、照明装置10は、コヒーレント光源20と、コヒーレント光源20から射出したコヒーレント光を整形する整形光学系30と、整形光学系30で整形されたコヒーレント光を回折する回折光学素子40と、を含んでいる。そして、回折光学素子40がコヒーレント光を回折して複数の単位像Iuを投影面Pp上に再生することで、被照明領域LZを照明する。このような回折光学素子40は、仮想面Pv上に配列された多数の点像Ipを再生する計算機合成ホログラムとして作製され得る。この場合、各点像Ipからの発散光および想定される入射光の干渉パターンに対応する微細構造として、計算機合成ホログラムは作製され得る。このとき、微細構造を作製するにあたっての制約や、計算機での計算量の制約等から、点像Ipの数は無条件に増やすことは不可能であり、また点像Ipは点として設計される。このため、照明装置10の実際の使用においては、投影面Pp上の被照明領域LZ内に点像Ipの配列に起因した明るさのむらが生じてしまう可能性がある。一方、上述した一実施の形態では、回折光学素子40の設計において点像Ipが配列される仮想面Pvは、実際の投影面Ppから当該投影面Ppへの法線方向ndに沿ってずらして設定することができる。そして、上述した一実施の形態によれば、投影面Ppの法線方向ndに沿って投影面Ppから離間した仮想面Pv上において、一つの単位像Iuを再生するコヒーレント光が入射する領域は、他の単位像Iuを再生するコヒーレント光が入射する領域から離間するようになるが、実際の投影面Pp上では、各単位像Iuを再生するコヒーレント光は仮想面Pv上よりも拡散してより広い領域に入射することができる。したがって、投影面Pp上の被照明領域LZ内での明るさのむらを効果的に抑制し、被照明領域LZを十分に一様な明るさで照明することが可能となる。
一実施の形態を複数の具体例により説明してきたが、これらの具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
上述した一実施の形態の具体例として、照明装置10が、細長い領域を照明する例を示したが、これに限られない。照明装置10が、所定の輪郭を有した領域を照明し、したがって、所定の輪郭を表示する装置として機能するようにしてもよい。所定の輪郭として、例えば矢印等を例示することができる。
また、図12に示す例のように、回折光学素子40が、複数の要素回折光学素子41を含み、各要素回折光学素子が、複数の単位像Iuを投影面Pp上に投影するようにしてもよい。この場合、各要素回折光学素子41が、それぞれ、被照明領域LZの全域を照明するようにしてもよいし、被照明領域LZの一部分を照明するようにしてもよい。複数の要素回折光学素子41が、互いに異なる領域を照明する場合、各要素回折光学素子41によって照明される領域は、互いに重なり合っていてもよいし、或いは、互いからずれていて重なり合わないようにしてもよい。