以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や、長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
図1~図14は、一実施の形態およびその変形例を説明するための図である。このうち、図1は照明装置を示す平面図である。また、図2~図5は照明装置に組み込まれる回折光学素子を説明するための図である。さらに、図6A~図7は、照明装置を用いて、被照射面IP上の被照明領域LZを照明している状態を示している。
本実施の形態による照明装置20は、コヒーレント光源25と、コヒーレント光源25から射出したコヒーレント光を整形する整形光学系30と、整形光学系30で整形されたコヒーレント光を回折する回折光学素子40と、を有している。この照明装置20は、回折光学素子40でコヒーレント光を回折して複数の単位像UIを被照射面IPに照射することで、被照射面IP上の被照明領域LZを照明する。とりわけ本実施の形態による照明装置20では、被照明領域LZを一様な明るさで照明するための工夫が成されている。以下、図示された具体例を参照しながら、一実施の形態による照明装置20について説明していく。
図1に示された例において、照明装置20は、投射型表示装置10及び投射装置15に適用されている。照明装置20は、空間光変調器50とともに投射装置15を構成している。また、投射装置15は、スクリーン12とともに投射型表示装置10を構成する。すなわち、図示された例において、照明装置20は、空間光変調器50の入射面を被照明領域LZとして照明する。この例において、被照明領域LZは例えば矩形形状とすることができる。
空間光変調器50は、被照明領域LZに配置される。そして、空間光変調器50は、照明装置20によって照明され、変調画像を形成する。好ましくは、照明装置20からの光は、被照明領域LZの全域のみを照明する。そして、空間光変調器50の入射面は、照明装置20によって光を照射される被照明領域LZと同一の形状および大きさであることが好ましい。この場合、照明装置20からの光を、変調画像の生成に高い利用効率で利用することができるからである。
空間光変調器50は、特に制限されることなく、種々の公知の空間光変調器を利用することができる。例えば、デジタルミラーデバイス(DMD)、透過型の液晶マイクロディスプレイや反射型のLCoS(Liquid Crystal On Silicon(登録商標))を、空間光変調器50として用いることができる。
図1に示された例のように、空間光変調器50が、透過型の液晶マイクロディスプレイである場合、照明装置20によって面状に照明される空間光変調器50が、画素毎にコヒーレント光を選択して透過させることにより、空間光変調器50をなすディスプレイの画面上に変調画像が形成されるようになる。こうして得られた変調画像は、最終的には、投射光学系13によって、等倍で或いは変倍されてスクリーン12へ投射される。これにより、変調画像がスクリーン12上に等倍で或いは変倍されて表示され、観察者は当該画像を観察することができる。スクリーン12は、透過型スクリーンとして構成されていてもよいし、反射型スクリーンとして構成されていてもよい。
次に、照明装置20について説明する。上述したように、照明装置20は、コヒーレント光源25、整形光学系30および回折光学素子40を有している。また、照明装置20は、コヒーレント光源25、整形光学系30および回折光学素子40を収容するケーシングを、更に有していてもよい。
コヒーレント光源25は、波長及び位相が揃ったコヒーレント光を射出することができる。コヒーレント光源25として、種々の型式の光源を用いることができる。典型的には、コヒーレント光源25として、レーザー光を発振するレーザー光源を用いることができる。一具体例として、図示されたコヒーレント光源25は、半導体レーザー光源として構成され、例えば回路基板上に支持される。図1に示された例において、コヒーレント光源25は、単一の光源を含んでいる。したがって、図示された例では、コヒーレント光源25から発振されるコヒーレント光の波長域に対応した色で、被照明領域LZ照明する。
ただし、コヒーレント光源25が複数のコヒーレント光源25を含み、各コヒーレント光源25から射出した光が重ね合わされた後、整形光学系30及び回折光学素子40に向かうようにしてもよい。また、図12に示された変形例のように、各コヒーレント光源25から射出したコヒーレント光が、当該コヒーレント光源25に対応して設けられた整形光学系30A,30B,30C及び回折光学素子40A,40B,40Cを経て、その後に被照明領域LZ上で重ね合わされるようにしてもよい。このような例において、照明装置20に含まれる複数のコヒーレント光源25は、同一の波長域のコヒーレント光を射出するようにしてもよいし、互いに異なる波長域のコヒーレント光を射出するようにしてもよい。照明装置20が同一の波長域の光を射出する複数のコヒーレント光源25を含むことで、被照射領域IAを明るく照明することが可能となる。
一方、図12に示す例において、コヒーレント光源25は、互いに異なる波長域のコヒーレント光を射出する第1コヒーレント光源25A、第2コヒーレント光源25B及び第3コヒーレント光源25Cを有している。各コヒーレント光源25A~25Cからのコヒーレント光の射出、より具体的には射出の発停および射出出力を調節することで、被照明領域LZの照明色や明るさを制御するようにしてもよい。
整形光学系30は、コヒーレント光源25から射出したコヒーレント光を整形する。言い換えると、整形光学系30は、コヒーレント光の光軸に直交する断面での形状や、コヒーレント光の光束の立体的な形状を整形する。典型的には、整形光学系30は、コヒーレント光の光軸に直交する断面でのコヒーレント光の光束断面積を拡大させる。
図示された例において、整形光学系30は、コヒーレント光源25から射出したコヒーレント光を拡幅した平行光束に整形する。すなわち、整形光学系30は、コリメート光学系として機能する。図1に示すように、整形光学系30は、コヒーレント光の光路に沿った順で、第1レンズ31及び第2レンズ32を有している。第1レンズ31は、コヒーレント光源25から射出したコヒーレント光を発散光束に整形する。第2レンズ32は、第1レンズ31で生成された発散光束を、平行光束に整形し直す。すなわち、第2レンズ32は、コリメートレンズとして機能する。
整形光学系30による整形精度を向上させる観点において、整形光学系30が、少なくとも一つの凹レンズと少なくとも一つの凸レンズとを含んでいることが好ましい。図1に示された例では、第1レンズ31及び第2レンズ32の両方が凸レンズとして構成されているが、第1レンズ31及び第2レンズ32のいずれか一方を凹レンズとしてもよい。凹レンズ及び凸レンズは、正負が逆のパワーを有していることから、お互いの収差の影響を緩和するようになる。すなわち、凹レンズと凸レンズとを組み合わせることで、レンズで生じる収差の影響を緩和することができる。これにより、被投射領域に対してさらに高精度に光を投射することができる。また、図示された例において、整形光学系30は、二つのレンズを含んでいるが、この例に限られず、三以上のレンズを含むようにしてもよい。
また、整形光学系30が凹レンズ及び凸レンズを含むことに代えて、整形光学系30は、非球面レンズを含むようにしてもよい。正パワーを有した部分および負パワーを有した部分の両方を含む非球面レンズを用いることで、レンズで生じる収差の影響を緩和することができる。これにより、被照射面IP上の所望の領域に対してさらに高精度に光を投射することが可能となる。
なお、整形光学系30に含まれるレンズは、当該レンズの光軸方向からの観察において、矩形形状となっていることが好ましい。レンズの不要部分をトリミングすることで、照明装置20を小型軽量化することができる。
次に、回折光学素子40について説明する。回折光学素子40は、コヒーレント光源25から射出した光に対して回折作用を及ぼす素子である。回折光学素子40は、コヒーレント光源25からのコヒーレント光を回折して、被照射面IP上の被照明領域LZに向ける。したがって、図1に示すように、被照明領域LZは、回折光学素子40の回折光によって、照明されることになる。
図2に示すように、回折光学素子40は複数の要素回折光学素子41を有している。複数の要素回折光学素子41は、例えば同一平面上に配置される。各要素回折光学素子41が、コヒーレント光源25から射出したコヒーレント光に対して回折作用を及ぼすことができる。各要素回折光学素子41は、コヒーレント光源25からのコヒーレント光を回折して被照明領域LZに向ける。
本実施の形態において、回折光学素子40は、複数の要素回折光学素子41の各々として、第1要素回折光学素子41A及び第2要素回折光学素子41Bを含んでいる。第1要素回折光学素子41A及び第2要素回折光学素子41Bは、互いに異なる回折構造を有している。ただし、第1要素回折光学素子41A及び第2要素回折光学素子41Bは、コヒーレント光源25からのコヒーレント光を回折して同一の被照明領域LZに向ける。そして、第1要素回折光学素子41Aで回折されたコヒーレント光と、第2要素回折光学素子41Bで回折されたコヒーレント光は、被照明領域LZにおいて重なる。
図示された例において、第1要素回折光学素子41Aは回折光を被照明領域LZの全域に照射し、第2要素回折光学素子41Bも同様に回折光を被照明領域LZの全域に照射する。また、図2に示された例において、回折光学素子40は、複数の第1要素回折光学素子41A及び複数の第2要素回折光学素子41Bを含んでいる。複数の第1要素回折光学素子41Aは千鳥配列され、複数の第2要素回折光学素子41Bは千鳥配列されている。第1要素回折光学素子41A及び第2要素回折光学素子41Bは、回折光学素子40が画成する面に沿った第1方向d1及び第2方向d2のそれぞれに沿って、交互に配列されている。
図示された例において、各要素回折光学素子41は平面視において、四角形状、より詳しくは正方形形状または長方形形状となっている。とりわけ、第1要素回折光学素子41A及び第2要素回折光学素子41Bは、平面視において、同一形状を有している。ただし、第2要素回折光学素子41Bの向きは、第1要素回折光学素子41Aを45°回転させた向きとなっている。第2要素回折光学素子41Bの角部は、隣り合う第1要素回折光学素子41Aの直線状の縁部に接触している。
なお、図面間での方向関係を明確化するため、いくつかの図面には、第1方向d1、第2方向d2、第3方向d3、第4方向d4及び第5方向d5を図面間で共通する方向として示している。第1方向d1及び第2方向d2は、互いに直交している。第4方向d4及び第5方向d5は、互いに直交している。第3方向d3は、第1方向d1に直交し且つ第2方向d2に直交している。すなわち、第3方向d3は、回折光学素子40が画成する面に直交している。また、第3方向d3は、第4方向d4に直交し且つ第5方向d5に直交している。
要素回折光学素子41は、典型的には、ホログラム素子である。要素回折光学素子41としてホログラム素子を用いることで、ホログラム素子の回折特性を設計しやすくなる。予め定めた位置、サイズおよび形状の被照明領域LZの全域のみにコヒーレント光を投射し得るホログラム素子の設計は、比較的容易に行うことができる。
被照明領域LZは、要素回折光学素子41に対して予め定めた位置に、予め定めたサイズおよび形状を有するよう、例えば角度空間に設定される。被照明領域LZの位置、サイズおよび形状は、要素回折光学素子41の回折特性に依存しており、要素回折光学素子41の回折特性を調整することで、被照明領域LZの位置、サイズおよび形状を任意に調整することができる。従って、要素回折光学素子41を設計する際には、まず被照明領域LZの位置、サイズおよび形状を決定して、決定した被照明領域LZの全域にコヒーレント光を投射できるように、要素回折光学素子41の回折特性を調整すればよい。
要素回折光学素子41は、計算機合成ホログラム(CGH:Computer Generated Hologram)として、作製され得る。計算機合成ホログラムは、任意の回折特性を持つ構造をコンピュータ上で計算することによって作製される。したがって、計算機合成ホログラムを利用して要素回折光学素子41を作製することで、コヒーレント光源や光学系を用いた物体光及び参照光の生成や、露光によるホログラム記録材料への干渉縞の記録を不要とすることができる。照明装置20は、例えば図1に示すように、要素回折光学素子41に対して予め定めた位置に、予め定めたサイズおよび形状の被照明領域LZを照明することを想定されている。被照明領域LZに関する情報をパラメータとしてコンピュータに入力することで、この被照明領域LZを照明可能な回折特性を実現するための構造、例えば凹凸面を、コンピュータでの演算によって特定することができる。特定された構造を、例えば樹脂賦型により形成することで、計算機合成ホログラムとしての要素回折光学素子41を、簡易な手順にて低コストで作製することができる。
回折光学素子40の要素回折光学素子41は、図6A~図7に示すように、整形光学系30からのコヒーレント光を回折して、複数の単位像UIを被照射面IP上に再生する。被照射面IP上の被照明領域LZは、複数の単位像UIの集合体によって、照明されることになる。この要素回折光学素子41は、次のようにして設計される。まず、図6Aに示すように、要素回折光学素子41によってコヒーレント光を照射可能な点像PIを被照射面IP上に配列してなる点像パターンを設定する。次に、被照射面IP上に被照明領域LZの形状を設定する。その後、実際にコヒーレント光を照射すべき位置として、被照明領域LZに位置する点像PIを選択する。コヒーレント光を照射されるべき点像は、被照射面IP上の被照明領域LZ内に敷き詰められている、或いは、分散されている。コヒーレント光を照射されるべき点像の配列パターンの外輪郭が、被照明領域LZの外輪郭に概ね一致するようになる。
次に、要素回折光学素子41への入射光と、各コヒーレント光を照射されるべき点像から要素回折光学素子41に向かう発散光と、を設定する。ここで、「要素回折光学素子41への入射光」は、要素回折光学素子41が照明装置20に組み込まれた状態において整形光学系30から当該要素回折光学素子41へ入射するようになる光と同一の光路を進む光とする。「各点像から要素回折光学素子41に向かう発散光」は、照明装置20の実際の使用時に、要素回折光学素子41の各位置で回折されて各点像の位置に向かうようになる回折光の光路を逆向きに進んで、点像の位置から要素回折光学素子41内の各位置へ入射する光とする。その後、要素回折光学素子41への入射光と各点像から要素回折光学素子41に向かう発散光とによって形成される要素回折光学素子41上での干渉パターンを特定し、この干渉パターンに対応した微細構造を作製する。干渉パターンの計算は、「要素回折光学素子41への入射光」や「各点像から要素回折光学素子41に向かう発散光」のモデル設計を含め、計算機によって実行され得る。
要素回折光学素子41は、位相型の回折光学素子であってもよいし、振幅型の回折光学素子であってもよい。更に、要素回折光学素子41は、図1に示された例において透過型として構成されているが、反射型として構成されてもよい。要素回折光学素子41が位相型の回折光学素子として構成される場合、要素回折光学素子41をなす微細構造は、コヒーレント光の入射位置に応じて光路長が変化する凹凸パターン構造や、コヒーレント光の入射位置に応じて屈折率が異なるパターン構造を採用することができる。凹凸パターンからなる微細構造は、フォトリソグラフィー技術を利用した樹脂成形により、量産することができる点において好ましい。また、要素回折光学素子41が振幅型の回折光学素子として構成される場合、要素回折光学素子41をなす微細構造は、コヒーレント光の入射位置に応じて透過率が異なる構造を採用することができる。
ここで、図3A、図3B及び図4を参照して、要素回折光学素子41の具体例について更に説明する。図3A、図3B及び図4に示された要素回折光学素子41は、位相変調型のフーリエ変換ホログラムとして構成されている。位相変調型のフーリエ変換ホログラムは、フーリエ変換像の位相情報を多値化した深さとして媒体、すなわち表面層に記録することで作製される凹凸面を有するホログラムであり、媒体の光路長差に基づく回折現象を利用して再生光から原画像の光像を再生する。
図3A及び図3Bは、それぞれ一つの要素回折光学素子41を示す平面図である。具体例として、図3Aは、一つの第1要素回折光学素子41Aを示しており、図3Bは、一つの第2要素回折光学素子41Bを示している。これらの要素回折光学素子41は、複数の単位ピクセル45を有している。単位ピクセル45は、入射光に及ぼす変調量を調節する最小単位である。図示された位相型の要素回折光学素子41では、単位ピクセル45毎に異なる量で入射光の位相を変調することができる。図4は、図3AのZ-Z線に沿った断面の一例および図3BのZ-Z線に沿った断面の一例を示している。図4に示された要素回折光学素子41では、単位ピクセル45が、第3方向d3に沿って8段階の高さのいずれかに設定されている。したがって、図示された要素回折光学素子41では、入射光に与える位相変調量を8段階で制御することができる。ただし、単位ピクセル45の段数は特に限定されるものではない。
多数の単位ピクセル45に分割された要素回折光学素子41では、多数の単位ピクセル45に周期的な構造を付与することで、当該要素回折光学素子41への入射光を回折することができる。単位ピクセル45の配列方向に沿った周期構造のピッチをP〔nm〕とし入射光の波長をλ〔nm〕とすると、要素回折光学素子41は、次の式で表される回折角度θ〔rad〕だけ、入射光の進行方向を曲げて、回折光が進む位置が単位ピクセル45の配列方向にそってずれるようにすることができる。
Sinθ=λ/P
この要素回折光学素子41での最小の回折角度θminは、周期構造のピッチが要素回折光学素子41の一辺の長さA〔nm〕と等しくなる場合であり、具体的には、Sin-1(λ/A)〔rad〕となる。一方、要素回折光学素子41を連続的に並列配置することを考慮すると、要素回折光学素子41での周期構造のピッチは、自然数kを用いて、A/k〔nm〕となる。周期構造のピッチがA/k〔nm〕の場合、回折角度θkは、Sin-1(k×λ/A)〔rad〕となる。ここで、「λ/A」が十分に小さい場合、回折角度θkは、最小の回折角度θminのk倍となる。したがって、要素回折光学素子41が一方向に配列された十分な数の単位ピクセル45を有する場合、回折角度を一方向に沿って同一角度間隔で量子的に変化させることが可能となる。
ここで、図3Aに示された第1要素回折光学素子41Aの例において、単位ピクセル45は、第1方向d1に配列され、また第2方向d2にも配列されている。この第1要素回折光学素子41Aでの回折作用により、入射光の進行方向が0次光の進行方向に対して曲げられ、回折光の入射位置を、0次光が入射するべき位置から、第1方向d1及び第2方向d2のそれぞれにずらすことができる。図6Aは、例えば角度空間において、図3Aに示された第1要素回折光学素子41Aによって照射可能な点像の配列パターンを示す平面図である。図6Aに示された例において、第1方向d1及び第2方向d2に配列された点像PIのうち、被照明領域LZ内に位置する点像PIの位置に単位像UIが再生されている。
一方、図3Bに示された第2要素回折光学素子41Bの例において、単位ピクセル45は、第1方向d1及び第2方向d2と非平行な第4方向d4に配列され、且つ第1方向d1及び第2方向d2と非平行な第5方向d5に配列されている。この第2要素回折光学素子41Bでの回折作用により、入射光の進行方向が0次光の進行方向に対して曲げられ、回折光の入射位置を、0次光が入射するべき位置から、第4方向d4及び第5方向d5のそれぞれにずらすことができる。図6Bは、例えば角度空間において、図3Bに示された第2要素回折光学素子41Bによって照射可能な点像の配列パターンを示す平面図である。図6Bに示された例において、第4方向d4及び第5方向d5に配列された点像PIのうち、被照明領域LZ内に位置する点像PIの位置に単位像UIが再生されている。
また、図7に示すように、第1要素回折光学素子41Aからの回折光で照明される被照明領域LZと、第2要素回折光学素子41Bからの回折光で照明される被照明領域LZは、一致させている。すなわち、第1要素回折光学素子41Aの回折特性を設計する際の被照明領域LZと、第2要素回折光学素子41Bの回折特性を設計する際の被照明領域LZは、例えば同一の角度空間において同一の位置にある。これにより、第1要素回折光学素子41A及び第2要素回折光学素子41Bは、同一の被照明領域LZに向けて入射光を回折するようになる。
なお、要素回折光学素子41の一辺の長さWAは、数μm~数mmとすることができる。例えば、要素回折光学素子41の平面形状を2mm四方の正方形とすることができる。単位ピクセル45の一辺の長さWBは、10nm以上10μm以下の範囲にあることが好ましく、50nm以上5μm以下の範囲にあることがより好ましく、100nm以上2μm以下の範囲にあることが更に好ましい。また、要素回折光学素子41をなす凹凸構造の凹凸深さ、すなわち第3方向d3における最大高低差HBは、50nm以上20μm以下の範囲にあることが好ましく、80nm以上15μm以下の範囲にあることがより好ましく、100nm以上10μm以下の範囲にあることが更に好ましい。
要素回折光学素子41の設計には、例えば反復フーリエ変換法が用いられる。図5は反復フーリエ変換法の処理手順の一例を示すフローチャートである。図5の処理手順は、被照射面IP上に得られる回折像をフラウンホーファ回折像として、実施される。
まず、要素回折光学素子41への入射光の放射強度分布を設定するとともに、ランダムな位相分布を準備する(ステップST1)。次に、ステップST1で設定した放射強度分布とランダムな位相分布とを組み合わせた複素振幅分布を生成する(ステップST2)。その後、得られた複素振幅分布に対して逆フーリエ変換(IFT)を施して、被照射面IP上での複素振幅分布を生成する(ステップST3)。
得られた複素振幅分布は、ランダムな位相分布を用いて計算されたものであり、当該ランダムな位相分布を反映している。次に、要素回折光学素子41での回折によって得られるべき放射強度分布に基づき、ステップST3で得られた被照射面IP上での複素振幅分布の実部を修正する(ステップST4)。その後、ステップST4で実部を修正された複素振幅分布に対してフーリエ変換を施して、要素回折光学素子41上での複素振幅分布を計算する(ステップST5)。次に、ステップST1で設定した要素回折光学素子41への入射光の放射強度分布に基づき、ステップST5で得られた要素回折光学素子41上での複素振幅分布の実部を修正する(ステップST6)。
その後、ステップST6で生成した複素振幅分布を用いて、ステップST3以降の処理を繰り返す。ステップST3~ST6の処理を繰り返すうちに、要素回折光学素子41上での複素振幅分布の実部が、ステップST1で設定した放射強度分布に近づいていく。
以上のようにして、所望の回折特性を実現するための要素回折光学素子41の構造を設計することができる。なお、回折光学素子40には複数の要素回折光学素子41が含まれる。複数の要素回折光学素子41の間での僅かな配置位置の相違を無視して、複数の要素回折光学素子41を同一に設計してもよいし、或いは、複数の要素回折光学素子41の間での僅かな配置位置の相違を考慮して、複数の要素回折光学素子41を別々に設計してもよい。
上述したように、本実施の形態における要素回折光学素子41は、複数の要素回折光学素子41の各々として、第1要素回折光学素子41A及び第2要素回折光学素子41Bを含んでいる。第1要素回折光学素子41A及び第2要素回折光学素子41Bは、互いに異なる回折構造を有している。具体的には、第1要素回折光学素子41Aを設計する際における原画像となる点像PIの配列方向と、第2要素回折光学素子41Bを設計する際における原画像となる点像PIの配列方向と、を非平行としている。これにより、第1要素回折光学素子41Aにおける複数の単位ピクセル45の配列方向d1,d2は、第2要素回折光学素子41Bにおける複数の単位ピクセル45の配列方向d4,d5と非平行となる。
第1要素回折光学素子41Aにおける複数の単位ピクセル45の配列方向d1,d2は、第2要素回折光学素子41Bにおける複数の単位ピクセル45の配列方向d4,d5と、10°以上異なっていることが好ましく、22.5°より大きく異なっているとより好ましい。図3A及び図3Bは、特に好ましく、第1要素回折光学素子41Aにおける複数の単位ピクセル45の配列方向d1,d2は、第2要素回折光学素子41Bにおける複数の単位ピクセル45の配列方向d4,d5に対して45°傾斜している。
以上のような構成からなる照明装置20では、コヒーレント光源25から射出したコヒーレント光が、整形光学系30で整形される。図示された具体例において、コヒーレント光は、光束断面積を拡大された平行光束に整形される。整形光学系30で整形されたコヒーレント光は、回折光学素子40に入射する。コヒーレント光は、入射位置に応じて、回折光学素子40の第1要素回折光学素子41Aまたは第2要素回折光学素子41Bによって回折される。
第1要素回折光学素子41Aで回折されたコヒーレント光は、被照射面IP上の被照明領域LZ内に向かう。第1要素回折光学素子41Aで回折されたコヒーレント光は、被照射面IP上の被照明領域LZ内に想定された点像PIの位置に投射され、単位像UIを再生する。同様に、第2要素回折光学素子41Bで回折されたコヒーレント光は、被照射面IP上の被照明領域LZ内に向かう。第2要素回折光学素子41Bで回折されたコヒーレント光は、被照射面IP上の被照明領域LZ内に想定された点像PIの位置に投射され、単位像UIを再生する。すなわち、本実施の形態による照明装置20では、単位像UIの集合体として、被照射面IP上の被照明領域LZが所定のパターンにて照明される。
図1に示された例では、被照明領域LZが、空間光変調器50の入射面によって形成されている。照明装置20によってコヒーレント光を照射された空間光変調器50は、変調画像を形成する。変調画像は、投射光学系13を経てスクリーン12上に投射される。スクリーン12上には、観察者によって観察される画像が表示される。
ところで、回折光学素子は、入射光の位相または振幅を変調する複数の単位ピクセルを有している。そして、要素回折光学素子41の一辺の長さWAを大きくすることで、単位像UIの原像となる点像PIを高密度で近接して配置することができる。すなわち、単位像UIを高密度で近接して再生することが可能となる。しかしながら、計算機での計算量、装置サイズ等の制約から、単位ピクセル45で照明され得る点像PIを高密度で近接して配置することには限界がある。この結果、従来の照明装置では、被照明領域内に単位像の配列に応じた明暗が視認されることがあった。
このような不具合に対処するため、本実施の形態の照明装置20に含まれる回折光学素子40では、第1要素回折光学素子41Aにおける複数の単位ピクセル45の配列方向d1,d2が、第2要素回折光学素子41Bにおける複数の単位ピクセル45の配列方向d4,d5に非平行であり、とりわけ傾斜している。したがって、第1要素回折光学素子41Aによって照射可能な点像PIの配列方向は、第2要素回折光学素子41Bによって照射可能な点像PIの配列方向と非平行で傾斜する。この結果、第1要素回折光学素子41A及び第2要素回折光学素子41Bからの回折光を利用して同一の被照明領域LZを照明する場合、被照明領域LZをより均一な明るさで照明して、明るさのむらを目立たなくさせることができる。
より具体的には、図7に示すように、第1要素回折光学素子41Aからの回折光によって再生される単位像UIの配列方向は、第2要素回折光学素子41Bからの回折光によって再生される単位像UIの配列方向と非平行となり傾斜する。このため、被照明領域LZにおいて、第1要素回折光学素子41Aからの回折光によって再生される単位像UIの位置と、第2要素回折光学素子41Bからの回折光によって再生される単位像UIの位置が、被照明領域LZにおいてずれやすくなる。例えば、第1要素回折光学素子41A及び第2要素回折光学素子41Bの間で、要素回折光学素子41の一辺の長さWAが一致し、且つ、単位ピクセル45の一辺の長さWBが一致している場合、単位ピクセル45の配列方向が相違することで、第1要素回折光学素子41Aによる単位像UIの位置と第2要素回折光学素子41Bによる単位像UIの位置は、少なくとも部分的にずれる。これにより、同一数の要素回折光学素子41を用いた場合、被照明領域LZのより多くの面積に単位像UIを再生することが可能となり、被照明領域LZ内における明るさのむらを効果的に目立たなくさせることができる。
なお、第1要素回折光学素子41Aでの単位ピクセル45の配列方向d1,d2は、第2要素回折光学素子41Bでの単位ピクセル45の配列方向d4,d5に対して、45°傾斜していることが非常に好ましい。また、第1要素回折光学素子41Aでの単位ピクセル45の配列方向d1,d2が、第2要素回折光学素子41Bでの単位ピクセル45の配列方向d4,d5に対して、22.5°より大きく67.5°より小さく傾斜していることが優位な条件といえる。第1要素回折光学素子41A及び第2要素回折光学素子41Bの一辺の長さWAや単位ピクセル45の一辺の長さWBにも依存するが、このように第1要素回折光学素子41A及び第2要素回折光学素子41Bの間で単位ピクセル45の配列方向を調節することで、第1要素回折光学素子41Aによる単位像UIの位置と第2要素回折光学素子41Bによる単位像UIの位置とがずれ易くなり、被照明領域LZ内における明るさのむらを効果的に目立たなくさせることができる。
以上に説明してきたように、本実施の形態における回折光学素子40は、入射光の位相または振幅を変動させる複数の単位ピクセル45を有し被照明領域LZに向けて入射光を回折する第1要素回折光学素子41Aと、入射光の位相または振幅を変動させる複数の単位ピクセル45を有し被照明領域LZに向けて入射光を回折する第2要素回折光学素子41Bと、を有している。そして、第1要素回折光学素子41Aにおける複数の単位ピクセル45の配列方向d1,d2は、第2要素回折光学素子41Bにおける複数の単位ピクセル45の配列方向d4,d5と非平行である。このような本実施の形態によれば、第1要素回折光学素子41Aで回折されて被照明領域LZ内に照射される単位像UIの位置と、第2要素回折光学素子41Bで回折されて被被照明領域LZ内に照射される単位像UIの位置を、ずらすことができる。したがって、被照明領域LZをより多くの単位像UIによって照明することができる。これにより、被照明領域LZをより均一な明るさで照明して、被照明領域LZにおける明るさのむらを目立たなくさせることができる。
なお、レーザー光などのコヒーレント光源を用いた照明装置では、スペックルの発生という問題が生じる。スペックル(speckle)は、レーザー光などのコヒーレント光を散乱面に照射したときに現れる斑点状の模様であり、斑点状の輝度ムラ(明るさのムラ)として観察され、観察者に対して生理的な悪影響を及ぼす要因になる。本実施の形態によれば、第1要素回折光学素子41Aで回折されたコヒーレント光と第2要素回折光学素子41Bで回折されたコヒーレント光とが被照明領域LZで重なり合うことで、スペックルを目立たなくさせることが可能となる。
上述した一実施の形態の一具体例において、第1要素回折光学素子41Aの向きは第2要素回折光学素子41Bの向きと異なっている。例えば第1要素回折光学素子41A及び第2要素回折光学素子41Bを同一の外輪郭を有するようにしてもよい。このような具体例によれば、簡易な構成を有する回折光学素子40を用いて、被照明領域LZ内の明るさのむらを効果的に目立たなくさせることができる。
一実施の形態を複数の具体例により説明してきたが、これらの具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加を行うことができる。
以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
例えば、上述した一具体例において、第1要素回折光学素子41A及び第2要素回折光学素子41Bが同一の外輪郭を有する例を示したが、この例に限られない。図8Aに示すように、第1要素回折光学素子41Aの外輪郭が、第2要素回折光学素子41Bの外輪郭と異なるようにしてもよい。図8Aに示された例において、第1要素回折光学素子41Aは、正方形形状または長方形形状となっている。一方、第2要素回折光学素子41Bは、図8A及び図8Bに示すように、正方形形状または長方形形状の四隅を取り除いた外輪郭を有している。この例において、第2要素回折光学素子41Bは八角形形状の外輪郭を有している。図8Bには、第2要素回折光学素子41Bに重ねて、第1要素回折光学素子41Aの外輪郭を二点鎖線で示している。図8Bに示すように、第2要素回折光学素子41Bは、第1要素回折光学素子41Aの外輪郭に内接する外輪郭を有している。この結果、図8Aに示すように、第1要素回折光学素子41A及び第2要素回折光学素子41Bを高密度で配置することができ、回折光学素子40を小型化することができる。なお図8Bに示された第2要素回折光学素子41Bは、図3Bに示された第2要素回折光学素子41Bの四隅を切断することで作製することができる。
さらに、図9A及び図9Bに示すように、1要素回折光学素子41A及び第2要素回折光学素子41Bが同一の外輪郭を有するとともに、向きも同一にしてもよい。同一の外輪郭を有し且つ向きを同一とした第1要素回折光学素子41A及び第2要素回折光学素子41Bによれば、図9A及び図9Bに示すように、第1要素回折光学素子41A及び第2要素回折光学素子41Bを高密度で配置することができ、回折光学素子40を小型化することができる。
また、上述した一具体例において、第1要素回折光学素子41A及び第2要素回折光学素子41Bが入り交じって配置される例を示したが、この例に限られない。図10に示す例において、回折光学素子40は第1領域A1及び第2領域A2を含んでいる。第1領域A1及び第2領域A2は重なりあっていない。図示された例において、第1領域A1及び第2領域A2は接触しているが、この例に限られず第1領域A1及び第2領域A2は互いから離間していてもよい。
第1領域A1には複数の第1要素回折光学素子41Aが配置されている。複数の第1要素回折光学素子41Aは同一の外輪郭を有している。したがって、複数の第1要素回折光学素子41Aを、第1領域A1内に規則的に配列して、高密度に配置することができる。典型的には、複数の第1要素回折光学素子41Aを第1領域A1内に隣接して隙間なく敷き詰めることができる。同様に、第2領域A2には複数の第2要素回折光学素子41Bが配置されている。複数の第2要素回折光学素子41Bは同一の外輪郭を有している。したがって、複数の第2要素回折光学素子41Bを、第2領域A2内に規則的に配列して、高密度に配置することができる。典型的には、複数の第2要素回折光学素子41Bを第2領域A2内に隣接して隙間なく敷き詰めることができる。この結果、図10に示すように、第1要素回折光学素子41A及び第2要素回折光学素子41Bを高密度で配置することができ、回折光学素子40を小型化することができる。
また、上述した一具体例において、回折光学素子40が第1要素回折光学素子41A及び第2要素回折光学素子41Bを有する例を示したが、図11に示すように、回折光学素子40が、入射光の位相または振幅を変調する複数の単位ピクセル45を有し且つ被照明領域LZに向けて入射光を回折する第3要素回折光学素子41Cを更に有するようにしてもよい。この例において、第3要素回折光学素子における複数の単位ピクセル45の配列方向が、第1要素回折光学素子41Aにおける複数の単位ピクセル45の配列方向d1,d2の少なくとも一つと非平行であり、且つ、第2要素回折光学素子41Bにおける複数の単位ピクセル45の配列方向d4,d5の少なくとも一つと非平行であるようにしてもよい。この例によれば、第1~第3要素回折光学素子からの単位像UIの重ね合わせによって、被照明領域LZ内における明るさのむらを更に効果的に目立たなくさせることができる。
さらに、上述した一具体例として、被照明領域LZが矩形形状からなる例を示したが、この例に限られない。被照明領域LZが、文字、絵柄、色模様、記号、マーク、イラスト、キャラクター、ピクトグラムのいずれか一以上を表すパターンを含むようにしてもよい。要素回折光学素子41を用いることで被照明領域LZの形状を高い自由度で変更することができる。これにより、多様な演出効果を実現することができる。
さらに、空間光変調器50が被照明領域LZに重ねて配置される例を示したがこの例に限られない。照明装置20が、直接または投射光学系を介し、スクリーン12上に単位像UIを再生するようにしてもよい。すなわち、この例では、スクリーン12が被照射面IP上に設けられる。また、別の例として、図13に示すように、路面を被照射面IPとして、整形光学系30が路面上の被照明領域LZを照明するようにしてもよい。或いは、路面以外の地面や、ビル等の構造物、湖面や海面等の水面等を被照射面IPとして、照明装置20がこれらの被照射面IP上の被照明領域LZを照明するようにしてもよい。
さらに、図14に示すように、照明装置20は携帯型の装置として構成されてもよい。図14に示された照明装置20は、円柱状の外形状を有し、片手で把持できるようになっている。この照明装置20はケーシング21を有している。コヒーレント光源25、整形光学系30及び回折光学素子40は、ケーシング21によって保持されている。回折光学素子40は、コヒーレント光の出射面をなし、ケーシング21の端面に保持されている。コヒーレント光源25及び整形光学系30は、図示しない電源等とともに、ケーシング21内に収容されている。ケーシング21の外面には、照明装置20を制御するためのスイッチ22が設けられている。