次に、本発明の実施形態について説明する。
(A)本発明の実施形態の構成の説明
図1は、本発明の実施形態に係るレーダ装置の構成例を示す図である。この図に示すように、本発明の実施形態に係るレーダ装置10は、例えば、自動車等の車両に搭載され、車両の周囲に存在する他の車両、歩行者、障害物等の対象物を検出する。
ここで、レーダ装置10は、制御部11、発振部12、パルス整形部13、可変増幅部14、選択部15、送信アンテナ16−1〜16−2、受信アンテナ17−1〜17−4、選択部18、増幅部19、乗算部20、IF(Intermediate Frequency)増幅部21、A/D(Analog to Digital)変換部22、選択部23、記憶部24、および、演算部25を主要な構成要素としている。
ここで、制御部11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および、FPGA(Field Programmable Gate Array)等によって構成され、装置の各部を制御する。なお、図中破線の矢印は、制御線を示している。
発振部12は、制御部11の制御に応じて所定の周波数の局発信号を生成して出力する。
パルス整形部13は、制御部11の制御に基づいて、後述するサブパルスと、メインパルスに対応するパルス波形を有する信号を整形して出力する。
可変増幅部14は、パルス整形部13から供給されるサブパルスおよびメインパルスに対応する波形を有するパルス波形に応じて局発信号を増幅して出力する。これにより、局発信号がサブパルスおよびメインパルスの包絡線を有するように整形される。なお、可変増幅部14は、電流制御増幅回路、電圧制御増幅回路等によって構成するようにしてもよい。
選択部15は、制御部11の制御に応じて、送信アンテナ16−1〜16−2のいずれか一つを選択し、可変増幅部14からの出力信号を供給する。
送信アンテナ16−1〜16−2は、可変増幅部14からの出力信号を電磁波として対象物に向けて送信する。
受信アンテナ17−1〜17−4は、送信アンテナ16−1〜16−2によって送信され、対象物によって反射された反射信号を受信し、電気信号(RF(Radio Frequency)信号)に変換して選択部18に供給する。
選択部18は、受信アンテナ17−1〜17−4から供給される電気信号のいずれか一つを選択して増幅部19に出力する。
増幅部19は選択部18から出力される電気信号を所定のゲインで増幅して乗算部20に供給する。
乗算部20は、発振部12から供給される局発信号と、増幅部19から供給される受信信号とを乗算し、IF信号を生成して出力する。
IF増幅部21は、乗算部20から出力されるIF信号を所定のゲインで増幅して出力する。
A/D変換部22は、制御部11の制御に応じて、IF増幅部21から出力されるIF信号をデジタルデータに変換して出力する。
選択部23は、制御部11の制御に応じて、A/D変換部22から出力されるデジタルデータを対応する記憶部に記憶する。より詳細には、選択部23は、サブパルスに対応するデジタルデータについてはサブ領域242に格納し、メインパルスに対応するデジタルデータについてはメイン領域241に格納する。
演算部25は、検出処理部251,252、飽和検出部253、および、統合処理部254を有している。
検出処理部251は、メイン領域241に格納されたメインパルスに対応するデジタルデータから対象物を検出して飽和検出部253に供給する。
検出処理部252は、サブ領域242に格納されたサブパルスに対応するデジタルデータから対象物を検出して統合処理部254に供給する。
飽和検出部253は、検出処理部251が処理対象とするデジタルデータが飽和していないか否かを検出して検出処理部251に通知する。
統合処理部254は、検出処理部251から供給されたデータと、検出処理部252から供給されたデータを統合する処理を実行し、統合されたデータを、例えば、図示しない上位の装置(例えば、同レーダ装置10内のアプリケーション処理部、または、レーダ装置10外のECU(Electric Control Unit)等)に供給する。
(B)実施形態の動作の説明
つぎに、本発明の実施形態の動作を説明する。以下では、本発明の実施形態の動作について説明した後、図6〜図10のフローチャートを参照して詳細な動作を説明する。
まず、図2〜5を参照して、本発明の動作について説明する。レーダ装置10が装備されている車両(不図示)のエンジンが始動されると、図1に示すレーダ装置10の各部に対して電源電力の供給が開始され、動作が可能な状態になる。
電源電力の供給が開始されると、制御部11は、所定の起動処理(例えば、デバイスの初期化等)の後に、発振部12に対して局発信号の出力を開始させるとともに、パルス整形部13に対して矩形波を供給し、パルス信号を生成させる。この結果、送信アンテナ16−1〜16−2からは図2に示すパルス信号が出力される。
図2は、図1に示すレーダ装置10から送信される送信信号の例を示す図である。図2(B)に示すように、送信信号には振幅が小さい(電力が相対的に低い)サブパルスPsと、振幅が大きい(電力が相対的に高い)メインパルスPmが含まれている。
サブパルスPsは、レーダ装置10から、例えば、0〜3m程度の近距離の範囲内に存在する対象物を検出するためのパルス信号であり、0〜3mの範囲内に、トラック等のように、電磁波の反射率が高い対象物が存在する場合でも、受信信号が飽和しないように振幅Asが設定されている。
メインパルスPmは、レーダ装置10から、例えば、前述したサブパルスPsが対象とする近距離を含むとともに、70〜100m程度の遠距離を含む範囲内に存在する対象物を検出するためのパルス信号であり、近距離(例えば、0〜3mの範囲)にトラック等のように、電磁波の反射率が高い対象物が存在する場合には、受信信号が飽和するものの、遠距離に存在する対象物からも検出可能な反射信号が得られるように振幅Amが設定されている。
サブパルスPsからメインパルスPmまでの期間はT1とされ、メインパルスPmからつぎのサブパルスPsまでの期間はT2とされ、図2(A)に示すように、サブパルスPsとメインパルスPmを合計した期間はT0とされ、期間T0を繰り返し周期としてサブパルスPsとメインパルスPmの送信が繰り返される。
なお、期間T1は、サブパルスPsが送信されてから、近距離(例えば、0〜3mの範囲)に存在する対象物から反射信号が到達するまでの時間に応じて設定される。また、期間T2は、メインパルスPmが送信されてから、遠距離(例えば、70〜100mの範囲)に存在する対象物から反射信号が到達するまでの時間に応じて設定される。
図2(C)は、パルス整形部13から可変増幅部14に供給される信号の一例を示している。可変増幅部14は、パルス整形部13から供給される信号が“H”である場合には発振部12から供給される局発信号を増幅して出力し、パルス整形部13から供給される信号が“L”である場合には発振部12から供給される局発信号を出力しない。図2(C)に示すように、パルス整形部13から供給される信号は、可変増幅部14から出力されるパルス信号の振幅が図2(B)に示すAs,Amとなるように、パルス幅Ws,Wmが設定されている。
本実施形態では、パルス繰り返し期間T0において、図2(B)に示すような、サブパルスPsおよびメインパルスPmを有する送信信号が送信アンテナ16−1,16−2の一方から送信される。
送信アンテナ16−1,16−2のいずれか一方から送信されたサブパルスPsは、対象物によって反射され、反射信号として受信アンテナ17−1〜17−4に捕捉される。同様に、送信アンテナ16−1,16−2のいずれか一方から送信されたメインパルスPmは、対象物によって反射され、反射信号として受信アンテナ17−1〜17−4に捕捉される。
選択部18は、受信アンテナ17−1〜17−4のいずれか一つを選択するので、選択部18によって選択された受信アンテナ17−1〜17−4によって捕捉された反射信号は電気信号に変換されて増幅部19に供給される。
なお、サブパルスPsは、振幅が小さいことから、遠くに存在している対象物によって反射された場合、反射信号は減衰して受信アンテナ17−1〜17−4には殆ど捕捉されない。一方、メインパルスPmは、サブパルスPsに比較して振幅が大きいことから、遠くに存在している対象物によって反射された場合でも、反射信号は受信アンテナ17−1〜17−4に捕捉される。
増幅部19は、選択部18から供給される電気信号を所定のゲインで増幅して出力する。乗算部20は、増幅部19から供給される受信信号と、発振部12から供給される局発信号とを乗算することでダウンコンバートしてIF信号に変換して出力する。
IF増幅部21は、乗算部20から供給されるIF信号を増幅して出力する。A/D変換部は、IF増幅部21から供給されるIF信号をA/D変換して出力する。
選択部23は、A/D変換部22から出力されるデジタルデータのうち、サブパルスPsに関するデータについてはサブ領域242を選択して記憶させる。また、選択部23は、A/D変換部22から出力されるデジタルデータのうち、メインパルスPmに関するデータについてはメイン領域241を選択して記憶させる。
検出処理部251は、メイン領域241に記憶されているデータを読み出し、プリサム処理、FFT(Fast Fourier Transform)処理、クラスタリング処理、および、トラッキング処理等を実行し、車両の周辺に存在する対象物を特定する。検出処理部252も同様に、サブ領域242に記憶されているデータを読み出し、プリサム処理、FFT処理、クラスタリング処理、および、トラッキング処理等を実行し、車両の周辺に存在する対象物を特定する。
図3は、メインパルスPmに関する等価時間サンプリング処理の一例を示す図である。図3(A)は、メインパルスPmを示している。また、図3(B)〜(G)は、等価時間サンプリングにおけるフィールドを示している。より詳細には、図3(A)に示すメインパルスPmが送信されると、図3(B)に示すように、第1フィールドでは、高周波パルス信号がピークとなるタイミングからA/D変換部22がサンプリング周期t1でサンプリングを実行する。なお、図3の例では、各フィールドでは、矢印で示すように5回のサンプリングが実行されている。図3(C)に示すように、第2フィールドでは、第1フィールドに比較すると、時間τ1だけオフセットされてサンプリングが開始される。なお、サンプリング周期は、第1フィールドと同様にt1である。図3(D)に示すように、第3フィールドでは、第2フィールドに比較して時間τ1だけオフセットされサンプリングが開始され、同様に、図3(E)〜(G)に示すように、第3〜6フィールドでは直前のフィールドに比べて時間τ1だけそれぞれオフセットされてサンプリングが開始される。
なお、図3では、詳細は示していないが、各フィールドでは、送信アンテナ16−1,16−2および受信アンテナ17−1〜17−4のそれぞれについて、例えば、1回の高周波パルス信号が送受信され、同じオフセットでサンプリングが実行される。すなわち、第1フィールドでは、例えば、送信アンテナ16−1からメインパルスPmが送信され、受信アンテナ17−1により図3(B)に示す各タイミングで反射信号がサンプリングされる。次に、受信アンテナ17−2に切り替えられ、図3(B)に示す各タイミングで反射信号がサンプリングされる。つぎに、受信アンテナ17−3〜17−4によって、同様に、図3(B)に示す各タイミングで反射信号がそれぞれサンプリングされる。つづいて、送信アンテナ16−2に切り替えられ、受信アンテナ17−1〜17−4によって、図3(B)に示す各タイミングで反射信号がサンプリングされる。以上の動作を1サイクルとすると、このようなサイクルを、例えば、第1フィールドについて1回行い、第1フィールドにおけるデータが取得される。第1フィールドのサンプリングが終了すると、続いて、第2〜第6フィールドのサンプリングが実行される。そして全てのフィールドのサンプリングが完了すると、再度、第1フィールドのサンプリングに戻る。このような等価時間サンプリング処理を所定回数(例えば、2,048回)繰り返した後、対象物を検出する処理が実行される。なお、図3では、各フィールドのサンプリング回数は5回とされているが、これ以外の回数(例えば、40〜50回)としてもよい。また、各フィールドでは、1サイクルを1回行うようにしているが、これ以外の回数繰り返すようにしてもよい。
図4は、サブパルスPsに関する等価時間サンプリング処理の一例を示す図である。図4(A)は、サブパルスPsを示している。また、図4(B)〜(Y)は、等価時間サンプリングにおけるフィールドを示している。より詳細には、図4(A)に示すメインパルスPmが送信されると、図4(B)に示すように、第1フィールドでは、高周波パルス信号がピークとなるタイミングからA/D変換部22がサンプリング周期t1でサンプリングを実行する。なお、図4の例では、各フィールドでは、矢印で示すように2回のサンプリングが実行されている。図4(C)に示すように、第2フィールドでは、第1フィールドに比較すると、時間τ2だけオフセットされてサンプリングが開始される。なお、τ2<τ1であり、本実施形態では、一例として、τ1=τ2×4としている。もちろん、これ以外の関係に設定してもよい。また、サンプリング周期は、第1フィールドと同様にt1である。図4(D)に示すように、第3フィールドでは、第2フィールドに比較して時間τ2だけオフセットされサンプリングが開始され、同様に、図3(E)〜(Y)に示すように、第3〜24フィールドでは直前のフィールドに比べて時間τ2だけそれぞれオフセットされてサンプリングが開始される。
なお、図4では、詳細は示していないが、各フィールドでは、送信アンテナ16−1,16−2および受信アンテナ17−1〜17−4のそれぞれについて、例えば、1回の高周波パルス信号が送受信され、同じオフセットでサンプリングが実行される。すなわち、第1フィールドでは、例えば、送信アンテナ16−1からサブパルスPsが送信され、受信アンテナ17−1により図4(B)に示す各タイミングで反射信号がサンプリングされる。つぎに、受信アンテナ17−2に切り替えられ、図4(B)に示す各タイミングで反射信号がサンプリングされる。つぎに、受信アンテナ17−3〜17−4によって、同様に、図4(B)に示す各タイミングで反射信号がサンプリングされる。つづいて、送信アンテナ16−2に切り替えられ、受信アンテナ17−1〜17−4によって、図4(B)に示す各タイミングで反射信号がそれぞれサンプリングされる。以上の動作を1サイクルとすると、このようなサイクルを、例えば、第1フィールドについて1回行い、第1フィールドにおけるデータが取得される。第1フィールドのサンプリングが終了すると、つづいて、第2〜第6フィールドのサンプリングが実行される。そして全てのフィールドのサンプリングが完了すると、再度、第1フィールドに戻る。このような等価時間サンプリング処理を所定回数(例えば、512回)繰り返した後、対象物を検出する処理が実行される。なお、図4では、各フィールドのサンプリング回数は2回とされているが、これ以外の回数(例えば、4〜5回)としてもよい。また、各フィールドでは、1サイクルを1回行うようにしているが、これ以外の回数繰り返すようにしてもよい。
図5は、図3に示すメインパルスPmに関する等価時間サンプリングと、図4に示すサブパルスPsに関する等価時間サンプリングの結果を併せて模式的に表示した模式図である。図5に示すように、サブパルスPsに対する等価サンプリングは、時間τ2をサンプリング周期として実行され、メインパルスPmに対する等価サンプリングは、時間τ1をサンプリング周期として実行される。ここで、τ1=τ2×4であるとすると、サブパルスPsに対するサンプリングの方が4倍の密度で実行されることから、サブパルスPsに対する距離の分解能の方が、メインパルスPmよりも4倍高分解能である。
本実施形態では、レーダ装置10の近傍に存在する対象物については、サブパルスPsによって検出する。サブパルスPsに対するオフセット間隔はτ2であり、例えば、距離の分解能が15cm程度になるように設定されているので、近くに存在する対象物を高分解能で検出することができる。また、レーダ装置10から遠距離に存在する対象物については、メインパルスPmによって検出する。メインパルスPmに対するオフセット間隔はτ1であり、例えば、距離の分解能が60cm程度になるように設定されているので、遠方に存在する対象物を、サブパルスPsに比較して少ないデータ密度で確実に検出することができる。なお、サブパルスPsは、振幅が小さいことから、遠方の対象物によって反射された場合でも受信アンテナ17−1〜17−4に届く前に減衰してしまうことから、メインパルスPmに対する等価時間サンプリングにおいてサンプリングされ、誤検出が発生することはない。
以上のような等価時間サンプリングによって得られたデータは、プリサム処理によって、所定の個数のデータが加算される。プリサム処理によって得られたデータは、FFT処理が施され、時間領域から周波数領域に変換される。
検出処理部251,252は、FFT処理によって得られたデータに基づいて、クラスタリング処理およびトラッキング処理を実行し、対象物を特定する。
飽和検出部253は、検出処理部251が処理対象とするデータ(例えば、メイン領域241から読み出したデータ)を参照し、受信信号の飽和の有無を検出する。例えば、メイン領域241から読み出されるデータの一部がクリッピングしている場合には、飽和していると判断することができる。検出処理部251は、検出処理の結果と、飽和の有無の検出結果とを、統合処理部254に供給する。
統合処理部254は、検出処理部251および検出処理部252から供給されるデータを統合する処理を実行する。より詳細には、遠方の対象物については検出処理部251による検出処理によって検出された対象物を採用し、近傍の対象物については検出処理部252による検出処理によって検出された対象物を採用する。また、メインパルスPmによる検出範囲となる領域に、例えば、反射率の高い対象物(例えば、トラック)等が存在する場合、当該対象物からの反射信号は強度が大きいため飽和してしまう場合がある。そのような場合には、飽和検出部253が飽和を検出するので、飽和したデータについては採用せず、サブパルスPsによって検出されたデータを採用する。なお、メインパルスPmによる反射信号が飽和している場合でも、サブパルスPsは信号の振幅が小さいので、飽和しない反射信号を得ることができる。このため、反射率が高い対象物(例えば、トラック等)が近くに存在する場合でも、対象物を確実に検出することができる。
以上に説明したように、本発明の実施形態によれば、サブパルスPsとメインパルスPmとを連続して送信するとともに、サブパルスPsに対する等価時間サンプリングと、メインパルスPmに対する等価時間サンプリングとを独立して実行し、図3および図4に示すτ1,τ2を、τ1>τ2となるように設定した。サブパルスPsの反射信号は短い周期でサンプリングすることで、近くの対象物は高分解能に検出することができる。このため、車両の駐車時等において、接近する対象物を高分解能に検出することができるため、車両との接触等を回避することができる。
つぎに、図6〜図10を参照して、図1に示す実施形態において実行される処理の一例について説明する。
図6は、図1に示す実施形態において実行されるメインの処理の流れを説明するためのフローチャートの例である。図6に示すフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
ステップS10では、制御部11は、処理回数をカウントするための変数kに初期値1を代入する。
ステップS11では、制御部11は、処理回数をカウントするための変数jに初期値1を代入する。
ステップS12では、制御部11は、処理回数をカウントするための変数iに初期値1を代入する。
ステップS13では、制御部11は、選択部15を制御して、第j送信アンテナを選択させる。なお、送信アンテナ16−1および送信アンテナ16−2のそれぞれを第1送信アンテナおよび第2送信アンテナと定義する。このため、j=1の場合には送信アンテナ16−1が選択され、j=2の場合には送信アンテナ16−2が選択される。
ステップS14では、制御部11は、選択部18を制御して、第i受信アンテナを選択させる。なお、受信アンテナ17−1〜受信アンテナ17−4のそれぞれを第1受信アンテナ〜第4受信アンテナと定義する。このため、i=1の場合には受信アンテナ17−1が、i=2の場合には受信アンテナ17−2が、i=3の場合には受信アンテナ17−3が、i=4の場合には受信アンテナ17−4が選択される。
ステップS15では、制御部11は、サブパルスPsを送信させる。より詳細には、制御部11は、発振部12を制御して局発信号を出力させるとともに、パルス整形部13に対して図2(C)のに示す幅がWsの矩形波を供給する。この結果、発振部12から供給される局発信号は、可変増幅部14において、パルス整形部13から供給されるサブパルスPsの波形を有する信号によって変調され、図2(B)に示す振幅がAsのサブパルスPsが生成される。このようなサブパルスPsは、ステップS13で選択部15によって選択されている送信アンテナから送信される。
ステップS16では、サブパルス受信処理が実行される。なお、サブパルス受信処理の詳細は、図7を参照して後述する。
ステップS17では、制御部11は、メインパルスPmを送信させる。より詳細には、制御部11は、発振部12を制御して局発信号を出力させるとともに、パルス整形部13に対して図2(C)のに示す幅がWmの矩形波を供給する。この結果、発振部12から供給される局発信号は、可変増幅部14において、パルス整形部13から供給されるメインパルスPmの波形を有する信号によって変調され、図2(B)に示す振幅がAmのメインパルスPmが生成される。このようなメインパルスPmは、ステップS13で選択部15によって選択されている送信アンテナから送信される。
ステップS18では、メインパルス受信処理が実行される。なお、メインパルス受信処理の詳細は、図8を参照して後述する。
ステップS19では、制御部11は、処理回数をカウントする変数iを1インクリメントする。
ステップS20では、制御部11は、変数iの値が4よりも大きいか否かを判定し、4よりも大きいと判定した場合(ステップS20:Y)にはステップS21に進み、それ以外の場合にはステップS14に戻って同様の処理を繰り返す。ステップS14〜ステップS20の処理を繰り返すことで、受信アンテナ17−1〜17−4が順次選択されて受信処理が実行される。
ステップS21では、制御部11は、処理回数をカウントする変数jを1インクリメントする。
ステップS22では、制御部11は、変数jの値が2よりも大きいか否かを判定し、2よりも大きいと判定した場合(ステップS22:Y)にはステップS23に進み、それ以外の場合にはステップS12に戻って同様の処理を繰り返す。ステップS12〜ステップS22の処理を繰り返すことで、送信アンテナ16−1〜16−2が順次選択されて送信処理が実行される。
ステップS23では、制御部11は、処理回数をカウントする変数kを1インクリメントする。
ステップS24では、制御部11は、変数kの値がnよりも大きいか否かを判定し、nよりも大きいと判定した場合(ステップS24:Y)には処理を終了し、それ以外の場合にはステップS11に戻って同様の処理を繰り返す。ステップS11〜ステップS24の処理を繰り返すことで、図3および図5に示す等価時間サンプリングが実行される。なお、nは繰り返し回数であり、本実施形態では、12,288とされる。すなわち、メインパルスPmでは、2,048回×6フィールドが繰り返し回数であり、サブパルスPsでは、512回×24フィールドが繰り返し回数であり、これの積はともに12,288となるように設定されているからである。
つぎに、図7を参照して、図6に示すサブパルス受信処理の詳細について説明する。図7に示すフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
ステップS30では、検出処理部252は、処理回数をカウントする変数mに初期値1を代入する。
ステップS31では、反射信号が受信される。より詳細には、選択部18によって選択された受信アンテナによって捕捉された電磁波は、増幅部19によって増幅され、乗算部20によって局発信号と乗算されてIF信号に変換され、A/D変換部22に供給される。
ステップS32では、制御部11は、A/D変換部22を制御し、反射信号(IF信号)をA/D変換により、デジタルデータに変換させる。このとき、制御部11によって、オフセット時間τ1の制御が行われる。
ステップS33では、制御部11は、選択部23を制御し、A/D変換部22から出力されるデータを記憶部24のサブ領域242に記憶させる。
ステップS34では、制御部11は、処理回数をカウントする変数mを1インクリメントする。
ステップS35では、制御部11は、変数mの値が2よりも大きいか否かを判定し、m>2を満たす場合(ステップS35:Y)にはステップS36に進み、それ以外の場合(ステップS35:N)にはステップS32に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返す。なお、ステップS32〜ステップS35の処理により、図4に示すように、各フィールドにおける2回のサンプリングが実行される。
ステップS36では、制御部11は、(k mod 24)の結果が0か否かを判定し、0である場合(ステップS36:Y)にはステップS37に進み、それ以外の場合(ステップS36:N)にはステップS38に進む。なお、modは、kを24で割った余りを求める演算子である。ここで、kは、図4に示す1サイクル(送信アンテナ16−1〜16−2の双方による送信処理および受信アンテナ17−1〜17−4の全てによる受信処理が1サイクル)が実行されると値が1インクリメントされる変数である。サブパルス受信処理では、1フィールドでは、1サイクルが1回実行されてつぎのフィールドに進み、第24フィールドまで進むと第1フィールドに戻って同じ処理を繰り返す。このため、(k mod 24)が0になる場合には、第1フィールドに戻り、それ以外の場合にはつぎのフィールドに進む。
ステップS37では、制御部11は、つぎのフィールドの処理に移行する。例えば、現在、図4の第1フィールドの処理が完了した場合には、第2フィールドに移行する。
ステップS38では、制御部11は、第1フィールドに復帰する。例えば、現在、図4の第24フィールドの処理が完了した場合には、第1フィールドに復帰する。
つぎに、図8を参照して、図6に示すメインパルス受信処理の詳細について説明する。図8に示すフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
ステップS50では、検出処理部251は、処理回数をカウントする変数mに初期値1を代入する。
ステップS51では、反射信号が受信される。より詳細には、選択部18によって選択された受信アンテナによって捕捉された電磁波は、増幅部19によって増幅され、乗算部20によって局発信号と乗算されてIF信号に変換され、A/D変換部22に供給される。
ステップS52では、制御部11は、A/D変換部22を制御し、反射信号(IF信号)をA/D変換により、デジタルデータに変換させる。このとき、制御部11によって、オフセット時間τ2の制御が行われる。
ステップS53では、制御部11は、選択部23を制御し、A/D変換部22から出力されるデータを記憶部24のメイン領域241に記憶させる。
ステップS54では、制御部11は、処理回数をカウントする変数mを1インクリメントする。
ステップS55では、制御部11は、変数mの値が5よりも大きいか否かを判定し、m>5を満たす場合(ステップS55:Y)にはステップS56に進み、それ以外の場合(ステップS55:N)にはステップS52に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返す。なお、ステップS52〜ステップS55の処理により、図3の各フィールドに示すように、5回のサンプリングが実行される。
ステップS56では、制御部11は、(k mod 6)の結果が0か否かを判定し、0である場合(ステップS56:Y)にはステップS57に進み、それ以外の場合(ステップS56:N)にはステップS58に進む。なお、modは、前述したように、kを6で割った余りを求める演算子である。メインパルス受信処理では、1フィールドでは、1サイクルが1回実行されてつぎのフィールドに進み、第6フィールドまで進むと第1フィールドに戻って同じ処理を繰り返す。このため、(k mod 6)が0になる場合には、第1フィールドに戻り、それ以外の場合にはつぎのフィールドに進む。
ステップS57では、制御部11は、第1フィールドに復帰する。例えば、現在、図3の第6フィールドの処理が完了した場合には、第1フィールドに復帰する。
ステップS58では、制御部11は、つぎのフィールドの処理に移行する。例えば、現在、図3の第1フィールドの処理が完了した場合には、第2フィールドに移行する。
つぎに、図9を参照して、図1に示す演算部25において、メインパルスPmに対するデータに対して実行される処理について説明する。図9に示すフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
ステップS70では、飽和検出部253は、検出処理部251が処理対象とするデータを参照し、データの一部が飽和していないか検出する。
ステップS71では、検出処理部251は、対象物検出処理を実行する。より詳細には、検出処理部251は、メイン領域241に記憶されているデータを取得し、プリサム処理、FFT処理、クラスタリング処理、および、トラッキング処理等を実行し、対象物を検出する。なお、プリサム処理については、必ずしも実行する必要はない。
ステップS72では、統合処理部254は、検出処理部252からサブパルス側の処理結果を取得する。
ステップS73では、統合処理部254は、検出処理部252から取得したサブパルス側の処理結果と、飽和検出部253から取得したメインパルス側の処理結果とに対して、統合処理を実行する。より詳細には、レーダ装置10から遠方に存在する対象物についてはメインパルス側の処理結果を採用し、レーダ装置10の近傍に存在する対象物についてはサブパルス側の処理結果を採用し、これらを統合する。また、飽和検出部253によって飽和が検出されたデータについては、サブパルス側の処理結果を採用する。
ステップS74では、統合処理部254は、統合処理の結果を、上位装置(例えば、ECU)に対して出力する。
つぎに、図10を参照して、図1に示す演算部25において、サブパルスPsに対するデータに対して実行される処理について説明する。図10に示すフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
ステップS90では、検出処理部252は、対象物検出処理を実行する。より詳細には、検出処理部252は、サブ領域242に記憶されているデータを取得し、プリサム処理、FFT処理、クラスタリング処理、および、トラッキング処理等を実行し、対象物を検出する。なお、プリサム処理については、必ずしも実行する必要はない。
ステップS91では、検出処理部252は、検出結果を、統合処理部254に対してサブパルス側の処理結果として供給する。
以上の処理によれば、前述した動作を実現することができる。
(C)変形実施形態の説明
以上の実施形態は一例であって、本発明が上述したような場合のみに限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、以上の実施形態では、サブパルスPsは、図4に示すように、24のフィールドを有するとともに、各フィールドが2回のサンプリングを行うようにし、また、メインパルスPmは、図3に示すように、6のフィールドを有するとともに、各フィールドが5回のサンプリングを行うようにしたが、これ以外の数のフィールドを有するとともに、これ以外のサンプリング回数としてもよい。
また、以上の実施形態では、サブパルスPsとメインパルスPmに対するサンプリングは、同じサンプリング周期t1としたが、サブパルスPsとメインパルスPmでサンプリング周期を変更するようにしたり、サンプリング周期は同じで、間引きをしたりするようにしてもよい。
また、以上の実施形態では、図2に示すパルスの繰り返し期間T0は固定としたが、前の周期のパルス信号が、つぎのパルス周期で受信され、誤検出が生じることを防止するために、例えば、T0を変更することで、誤検出を防止するようにしてもよい。
また、以上の実施形態では、統合処理としては、いずれか一方のデータを採用することを例に挙げて説明したが、これ以外にも、例えば、メインパルスPmによって検出された対象物と、サブパルスPsによって検出された対象物との間で、同一の対象物を特定するとともに、対象物が遠方から近傍に移動する場合には、これらの間で引き継ぎ処理を実行するようにしてもよい。
また、以上の実施形態では、サブパルスPsとメインパルスPmを交互に送信するようにしたが、これ以外の方法で送信するようにしてもよい。
また、以上の実施形態では、車両として自動四輪車を例に挙げて説明したが、これ以外にも自動二輪車や自転車等を検出するようにしてもよい。すなわち、本明細書中において、車両とは自動四輪車には限定されない。
また、図6〜図10に示すフローチャートの処理は一例であって、本発明がこれらフローチャートの処理に限定されるものではないことはいうまでもない。
また、メインパルスPmの反射信号の強度が所定の電力強度以上か否かに基づいて飽和しているか否かを判断するようにしてもよい。