JP6928760B2 - 泡沫、スクリーンフォーマー用の組成物、およびその評価方法 - Google Patents

泡沫、スクリーンフォーマー用の組成物、およびその評価方法 Download PDF

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Description

本発明は、泡沫、該泡沫を形成するためのスクリーンフォーマー用の組成物、および該組成物の評価方法に関する。
フォーム剤は、フォームの持っている、皮膚上での使用時のやさしさと、閉塞機能、活性な表面積が非常に大きいなどの大きな利点があるため古くより使用されてきた(例えば、特許文献1を参照)。フォーム剤の原型は、表面張力の低い組成物を液化ガスとともに吐出させ、液化ガスの気化、体積膨張により泡を形成する製剤である。当初、液化ガスとしてフロンなどのフッ素化合物が用いられてきたが、フッ素ガスはオゾンホールを拡大させる懸念があることから利用できなくなり、液化天然ガスに切り替えられたが、液化天然ガスが皮膚に対して刺激を示す(例えば、特許文献2を参照)、また可燃爆発物であるので取り扱いが難しいなどの問題があり、実質的には製品応用が難しい状況になっている。
そのような中で、発泡用のガスを用いずに、圧力をかけてフォーム剤をスクリーンに通し発泡させる技術が開発され、洗浄剤などに応用されるようになった(例えば、特許文献3、特許文献4を参照)。洗浄剤などでは、アニオン界面活性剤など、イオン性界面活性剤が洗浄剤兼発泡剤として用いられる。このようなイオン性界面活性剤では、界面活性剤の疎水基同士を内側に向けた強い構造の二重膜を形成し(図1を参照)、これにより起泡し、泡が安定する。従って、このような泡沫を顕微鏡で観察した場合、泡沫殻の二重膜構造が観察される。すなわち、このような泡沫は一枚の二重膜が空気を内包して形成される。これは、イオン性界面活性剤においては、親水基の親水性が高く、且つ小さいこと及び疎水基が大きいことの2つの理由による。一方、非イオン性界面活性剤では、親水基の親水性が低く、部分的には疎水部分も有し、且つ、親水基が大きいことから、イオン性界面活性剤のような強固な二重膜構造をとることができないため、泡強度が十分でなく、スクリーンフォーマー程度の起泡手段では満足できる起泡性が得られないとされていた。このため、スクリーンフォーマー用の組成物は洗浄剤への応用しか試されてこなかった。このような背景において、非イオン性界面活性剤を用いたスクリーンフォーマー用の組成物であっても、良好な泡を呈する製品の開発が望まれている。
この課題に対し、スクリーンフォーマーでも起泡性を有する組成物が見いだされてきたが(例えば、特許文献5、特許文献6を参照)、良好な泡の観点からは十分と言えなかった。そのため、洗浄工程を必要としない皮膚外用剤への応用は閉ざされていた。
特開2007−314494号公報 特開平10−158122号公報 特開2014−218470号公報 特開2005−213230号公報 特開2006−083093号公報 特開2004−277365号公報
本発明は、このような状況下為されたものであり、洗い流すことを前提としない皮膚外用剤として適用し得る、良好な泡を呈する新規なフォーム形態の製剤を提供することを課題とする。また、本発明は、このような泡沫を形成するために用いられるスクリーンフォーマー用組成物を提供することを課題とする。さらに、本発明は、このような泡沫を形成するスクリーンフォーマー用組成物の評価方法を提供することを課題とする。
このような状況に鑑みて、本発明者らは、安全性が高い非イオン性界面活性剤を泡沫形成剤として用いた泡沫の構造について鋭意研究を重ねた結果、持続性のある良好な泡沫には、泡沫を形成する泡沫殻の表面方向に広がる複数の島状構造体が観察されることを見出した。そして、当該島状構造体をスクリーンフォーマーによって形成するための組成物の性質について研究を行った結果、当該組成物の新規な物性を見出すことによって、本発明に至った。即ち、本発明は以下に示す通りである。
上記課題を解決する本発明は、非イオン性界面活性剤を泡沫形成剤として用いるスクリーンフォーマー用の組成物の評価方法であって、前記組成物をスクリーンフォーマーに通して泡沫を形成させて、前記泡沫の気液界面に複数の島状構造体が形成されていることを認めた場合には、スクリーンフォーマー用の組成物として適したものであると判別し、前記泡沫の気液界面に前記島状構造体が形成されていないと認めた場合には、スクリーンフォーマー用の組成物として適していないものであると判別することを特徴とする、スクリーンフォーマー用の組成物の評価方法である。
本発明の評価方法を用いれば、スクリーンフォーマー用の組成物として適しているか否かを判別することができるため、適している組成物を選択することで起泡性、泡持続性に優れるスクリーンフォーマーで起泡する製剤を提供することができる。
本発明の好ましい形態では、前記泡沫の気液界面に前記島状構造体が形成されているか否か、光学顕微鏡で観察することにより判別する。
光学顕微鏡で観察することにより、簡便に、又は正確に、スクリーンフォーマー用の組成物として適しているか否か判別することができる。
本発明の好ましい形態では、前記島状構造体の泡沫殻表面方向から観察した場合の投影面積が大きいほど、スクリーンフォーマー用の組成物としてより適していると判別する。
当該基準を用いることにより、より正確な評価ができる。
本発明の好ましい形態では、前記組成物をスクリーンフォーマーに通さずに光学顕微鏡で観察した場合において、下記(A)および下記(B)の条件を充足する場合に、スクリーンフォーマー用の組成物として適したものであると判別する。
(A)下記(I)又は下記(II)の処理前は、ミセル像が観察されない状態又はほとんどミセル像が観察されない状態にある。
(B)下記(I)の処理後は、ミセル像が観察されない状態又はほとんどミセル像が観察されない状態にある。
(I)前記組成物を開放系で静置する。
(II)前記組成物に応力を加える。
この評価方法によれば、スクリーンフォーマー用の組成物として適しているか否かを判別することができるため、適している組成物を選択することで良好な泡を呈する製品を提供することができる。当該評価方法は、それのみで用いることもできるし、前述した泡沫の島状構造体の評価と組み合わせて用いることもできる。
本発明の好ましい形態では、さらに、下記(C)の条件を充足する場合に、スクリーンフォーマー用の組成物としてより適したものであると判別する。
(C)前記(II)の処理後は、該処理前よりも多くのミセル像が観察される状態にある。
当該基準を用いることにより、より正確な評価ができる。
本発明の好ましい形態では、前記(C)において、観察されるミセル像の粒径が大きいほど、スクリーンフォーマー用の組成物としてより適していると判別する。
当該基準を用いることにより、より正確な評価ができる。
本発明の好ましい形態では、前記(II)の処理が、前記組成物に遠心分離により応力を加える処理である。
遠心分離によって前記組成物に応力を加えた後に光学顕微鏡観察することにより、より正確にミセル像を観察することが可能であり、より正確にスクリーンフォーマー用の組成物として適しているか否か判別することができる。
また、前記課題を解決する本発明は、空気層とこれを内包する泡沫殻とからなる泡沫であって、前記泡沫殻は、非イオン性界面活性剤を含み、該泡沫殻の表面方向に広がる複数の島状構造体を含むことを特徴とする。
本発明の泡沫は、安全性が高く、持続性に優れる。
本発明の好ましい形態では、前記島状構造体は、扁平なミセルであることを特徴とする。
このような形態の泡沫は、持続性に優れる。
さらに、前記課題を解決する本発明は、非イオン性界面活性剤を泡沫形成剤として含み、スクリーンフォーマーにより前記泡沫を形成可能な、可溶化状態であることを特徴とするスクリーンフォーマー用の組成物である。
本発明の組成物は、前述した本発明の泡沫を形成するのに好適である。
本発明の好ましい形態では、前記組成物は非イオン性界面活性剤を1〜15質量%含有する。
非イオン性界面活性剤の濃度が前記範囲である組成物は、本発明の泡沫を形成するのにより好適である。
本発明の好ましい形態では、前記組成物は多価アルコールを10質量%以上含有する。
多価アルコールの濃度を前記範囲とすることによって、本発明の泡沫を形成するのにより好適である。また、保湿感などの使用実感を向上させることができる。
本発明の好ましい形態では、前記組成物は、その構成成分を、前記非イオン性界面活性剤の曇点以上で可溶化することで製造される。
曇点以上で可溶化することにより製造して得られる組成物は、本発明の泡沫を形成するのにより好適である。
本発明の好ましい形態では、前記組成物は、これを光学顕微鏡で観察した場合において、下記(A)および(B)の条件を充足する。
(A)下記(I)および下記(II)の処理前は、ミセル像が観察されない状態又はほとんどミセル像が観察されない状態にある。
(B)下記(I)の処理後は、ミセル像が観察されない状態又はほとんどミセル像が観察されない状態にある。
(I)前記組成物を開放系で静置する。
(II)前記組成物に応力を加える。
上記(A)および上記(B)の条件を充足する組成物は、本発明の泡沫を形成するのに好適である。
本発明の好ましい形態では、前記組成物は、さらに、下記(C)の条件を充足する。
(C)前記(II)の処理後は、該処理前よりも多くのミセル像が観察される状態にある。
上記(C)の条件を充足する前記組成物は、発明の泡沫を形成するのにより好適である。
本発明の好ましい形態では、前記組成物は、前記(II)の処理として、前記組成物に遠心分離により応力を加えた場合に、前記条件を充足する。
遠心分離によって応力を加えた場合に前記条件を充足する組成物は、発明の泡沫を形成するのにより好適である。
また、前記課題を解決する本発明は、前述した本発明のスクリーンフォーマー用の組成物の製造方法であって、前記組成物の構成成分を、前記非イオン性界面活性剤の曇点以上で可溶化することを特徴とする。
このような製造方法により、本発明の泡沫を形成するスクリーンフォーマー用の組成物としてより適している組成物を製造することが可能となる。
本発明の泡沫は、非イオン界面活性剤を含むため安全性が高く、新規な構造がゆえに泡持続性に優れる。また、本発明のスクリーンフォーマー用の組成物は、起泡性に優れ、前記泡沫を形成するのに好適である。また、本発明の評価方法を用いることにより、簡便又は正確に、前記泡沫を形成し得る組成物を評価することができる。
以上の本発明によれば、洗い流すことを前提としない皮膚外用剤として適用し得る、良好な泡を呈する新規なフォーム形態の製剤の設計、製造が可能となる。
イオン性界面活性剤がつくる二重膜構造を示す模式図である。 イオン性界面活性剤を用いた場合の泡沫が形成される過程を示す模式図である。 本発明の組成物から本発明の泡沫が形成される過程を示す模式図である。 実施例で製造した組成物1〜6、及び該組成物から形成された泡沫の顕微鏡写真である(図面代用写真)。 実施例で製造した組成物2〜4の遠心分離後の顕微鏡写真である(図面代用写真)。 組成物2〜4から形成された泡沫の写真である(図面代用写真)。
以下、本発明の泡沫、これを形成するためのスクリーンフォーマー用の組成物、及び該組成物の評価方法の順に好ましい実施形態を説明する。
<1>本発明の泡沫
本発明において、「泡沫」とは、集合体としての泡を意味し、空気層とこれを内包する泡沫殻とからなる。
<1−1>泡沫の構造
本発明の泡沫は、これを構成する泡沫殻が、該泡沫殻の表面方向に広がる複数の島状構造体を有することを特徴とする(図3(C)、(D)参照)。図3(C)は、本発明の泡沫における一つの気泡の形成過程の断面の模式図である。図3(D)は、本発明の泡沫の模式図である。
前記島状構造体とは、連続相(海)において、不連続に、独立している構造体のことをいう。すなわち、本発明の泡沫は、前記島状構造体と、前記島状構造体間を埋める連続相と、からなる泡沫殻を有している。島状構造体は複数の変曲点を有する不定形な構造体であり得る。島状構造体は、好ましくは、扁平なミセルである。
泡沫を構成する泡沫殻の表面方向に広がる島状構造体、好ましくは扁平なミセルを含むことにより、泡沫殻が安定し、泡沫の泡持続性が向上する。
島状構造体の大きさは、泡沫殻表面方向から観察した場合の投影面積が平均値で1000μm2以上であることが好ましく、より好ましくは1500μm2以上である。ここで、「泡沫殻表面方向から観察した場合の投影面積」とは、島状構造体の実際の表面積ではなく、泡沫殻表面方向から観察することができる面積である。また、計測域で観察される60%以上、好ましくは80%以上の前記島状構造体の前記投影面積が1000μm以上であることが好ましい。また、その投影面積の上限値は特に限定されないが、8000μm2以下が目安となる。
前記島状構造体の投影面積が前記範囲であると、本発明の泡沫は、持続性により優れた泡沫となる。
前記計測域とは、顕微鏡で実際に観察される縦×横の寸法である。前記計測域は、500μm四方以上であることが好ましい。
前記島状構造体の投影面積を測定する方法は、泡沫をスライドグラスに乗せ、観察した泡沫の吐出後から30秒後の顕微鏡写真(計測域500μm×700μm)をプリントし、スケールの10μm×10μmの部位(標準部位)を切り出し、秤量し、島状構造体部分を切り出し、秤量した値を標準部位の重さで割り、100μmを掛けることにより求める方法が挙げられる。すなわち、(島状構造体の投影面積)={(島状構造体部分の写真の重量)/(標準部位の重量)}×100という式にそれぞれの値を当てはめることで、前記島状構造体の投影面積を導き出すことができる。
<1−2>泡沫の構成成分
本発明の泡沫は、前記泡沫殻に必須成分として非イオン性界面活性剤を含有する。非イオン界面活性剤は、泡沫を形成する作用を有する。
非イオン性界面活性剤は、前記島状構造体を形成する限り、特段の限定なく適用することができる。
また、非イオン性界面活性剤のHLB値は、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは11以上、特に好ましくは13以上である。非イオン性界面活性剤のHLB値は、例えば10〜19である。
前記非イオン性界面活性剤の疎水基を構成する炭素鎖の炭素数は、好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上、特に好ましくは12以上である。また、炭素数の上限値として好ましくは22である。
非イオン性界面活性剤としては、以下のX群から選ばれる1種又は2種以上が好ましく用いられる。
(X群)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルケニルエーテル
中でも、非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルを含む形態が好ましい。本発明の好ましい形態としては、非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルのみを含有させる形態、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルに加えて、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油より選択される1種又は2種以上を組み合わせる形態が好ましく例示できる。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルと組み合わせる成分として、特に、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましく、これらの両者を組み合わせることも好ましく例示できる。また、非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのみを用いる形態も好ましく例示できる。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルを構成するアルキル又はアルケニルの炭素数は、好ましくは10〜24、より好ましくは12〜22である。
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルとしては、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルなどが好ましく例示できる。
また、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルにおいて、また、ポリオキシエチレンの平均付加モル数は2〜50が好ましく、4〜45がより好ましく、4〜40が更に好ましく、6〜30が特に好ましい。
ポリオキシエチレン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数は、好ましくは8〜24、より好ましくは12〜18である。
前記ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレンオレート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンラウレート等のポリオキシエチレンの、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸エステルが好ましく例示できる。
また、前記ポリオキシエチレン脂肪酸エステルにおいて、ポリオキシエチレンの平均付加モル数は5〜70が好ましい。より好ましくは、5〜65である。さらに好ましくは、5〜55である。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数は、好ましくは12〜18である。
前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどが好適に例示できる。
また、前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルにおいて、ポリオキシエチレンの平均付加モル数は10〜50が好ましく、5〜25がより好ましい。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油においては、ポリオキシエチレンの平均付加モル数が30〜90であることが好ましい。
ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルケニルエーテルを構成するアルキル又はアルケニルの炭素数は、好ましくは16〜24である。
ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルケニルエーテルとしては、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンセチルなどが好ましく例示できる。
また、ポリオキシエチレンの平均付加モル数は2〜30が好ましく、4〜20がより好ましい。また、ポリオキシプロピレンの平均付加モル数は10〜20が好ましく、6〜16がより好ましい。
また、部分的な非イオン性界面活性剤として、脂肪族アルカノールアミド型界面活性剤から1種又は2種以上を選択し、組成物に含有させることができる。
脂肪族アルカノールアミド型界面活性剤は、外用医薬や化粧品などの通常の皮膚外用剤で使用されるものであれば特段の定めなく適用できる。具体例を挙げれば、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド(コカミドMEA)、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド(コカミドDEA)、ラウリン酸モノエタノールアミド(ラウラミドMEA)、ラウリン酸ジエタノールアミド(ラウラミドDEA)、ラウリン酸モノイソプロパノールアミド(ラウラミドMIPA)、パルミチン酸モノエタノールアミド(パルタミドMEA)、パルミチン酸ジエタノールアミド(パルタミドDEA)ヤシ油脂肪酸メチルエタノールアミド(コカミドメチルMEA)などが好適に例示でき、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、パルミチン酸ジエタノールアミドが好適に例示できる。
前記脂肪族アルカノールアミド型界面活性剤は、組成物全量に対し1質量%であることが好ましい。より好ましくは0.5質量%である。さらに好ましくは、全く含まない形態である。
本発明の泡沫は、前記HLB値が9以上の非イオン性界面活性剤以外に、HLB値が5以下の非イオン性界面活性剤を含んでいてもよい。
前記HLB値が5以下の非イオン性界面活性剤は、皮膚外用剤などに配合可能であれば特段の定めなく適用することができる。
前記HLB値が5以下の非イオン性界面活性剤として、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどが好適に例示できる。
前記グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノステアリン酸グリセリン、モノミリスチン酸グリセリルが好適に例示できる。より好ましくは、モノステアリン酸グリセリルである。
前記ソルビタン脂肪酸エステルとしては、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタンなどが好適に例示できる。より好ましくは、モノステアリン酸ソルビタンである。
前記HLBが9以上の非イオン性界面活性剤と、HLB値が5以下の非イオン性界面活性剤の組み合わせの例としては、非イオン性界面活性剤として、HLBが9以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルにHLBが5以下のモノステアリン酸グリセリン及び/又はモノステアリン酸ソルビタンを組み合わせる形態、HLB値が9以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルに加え、HLBが9以上のポリオキシチレン脂肪酸エステル、ポリオキシチレン化されたソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシチレン化されていても良いヒマシ油より選択される1種又は2種以上と、HLB値が5以下のモノステアリン酸グリセリン及び/又はモノステアリン酸ソルビタンを組み合わせる形態が例示できる。
非イオン界面活性剤は、好ましくは泡沫殻における島状構造体、好ましくは扁平なミセルの構成成分として含まれる。
本発明の泡沫は、イオン性界面活性剤(但し、リン脂質を除く)を好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは実質的に含まないことが好ましい。これにより、安全性の高い泡沫とすることが可能である。
本発明の泡沫は、泡沫殻にアルコールを含むことが好ましい。本発明の泡沫におけるアルコールとは、一価アルコールおよび多価アルコールの総称である。かかる成分は、水と任意の割合で混合する性質のものが好ましい。
本発明の泡沫におけるアルコールは、非イオン性界面活性剤と相互作用することにより、泡沫殻を強固にする。
本発明の泡沫におけるアルコールは、多価アルコールであることが好ましい。
一価のアルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等が好適に例示できる。
多価アルコールとしては、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、
グリセリン、ジグリセリン、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、
1,2−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が好
適に例示できる。
多価アルコールとしては、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンおよびプロピレングリコールから選択される1種乃至は2種以上が好ましく、より好ましくはポリエチレングリコールおよび1,3−ブチレングリコールである。
また、本発明の多価アルコールの分子量は、好ましくは、3500以下、より好ましくは、2000以下であることが好ましい。
また、本発明の泡沫において、アルコールは、泡沫殻における連続相または島状構造体の何れかもしくは両方に含まれていることが好ましい。また、アルコールが前記連続相および前記島状構造体の両方に含まれていることがより好ましい。
本発明の泡沫は、皮膚外用医薬、化粧料などの外用組成物で使用される任意の成分を含有することができる。
前記任意の成分としては、例えば、流動パラフィンやスクワランなどの炭化水素類、ホホバ油、ドデカン酸オレイルエステル、セチルイソオクタネート等のエステル類、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキル−2−メチルピロリドン、炭酸エチレン、炭酸プロピレンなどの炭素数2〜4の炭酸アルキレン、クロタミトン、クエン酸トリエチル、ジエチレングリコールのエチルエーテル、トリアセチン、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピルなどの炭素数5〜12の二塩基酸のジエステル、ベンジルアルコール等の溶剤類、オレイン酸、イソステアリン酸などの脂肪酸、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガムなどの増粘剤、パラベン、クロルヘキシジングルコネート等の殺菌剤などが好適に例示できる。これらの任意成分の内、好適なものを適宜選択し、含有させることができる。
本発明の泡沫に有効成分を含有することで、フォーム剤形の医薬として用いることができる。有効成分としては、例えば、ヒドロコルチゾン、クロベタゾン、デキサメタゾン及びベタメゾン、並びにそれらの誘導体などのステロイド類、インドメタシン、スプロフェンなどの非ステロイド抗炎症剤、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウムなどの殺菌剤、テルビナフィン、ブテナフィン、ビフォナゾール、ケトコナゾールなどの抗真菌剤、ペニシリン、メチシリン、テトラサイクリン、コリスチンメタンスルホン酸、フォスフォマイシン等の抗生物質、ナルフラフィンなどの抗掻痒剤、ビタミンA類、ビタミンB類、ビタミンC類、ビタミンD類、ビタミンE類、タクロリムスなどの免疫抑制剤、ヒアルロン酸、ヘパリン類似物質などのムコ多糖類等が好適に例示できる。
本発明はまた、特に、抗真菌剤として、ナフチルアミン系、ベンジルアミン系、アゾール系、ジチオラン系の抗真菌剤を含有する形態も好適に例示できる。
前記有効成分は、水に対する溶解性に応じて、泡沫殻の連続相または島状構造体のいずれに含むこともできる。例えば、水不溶性、水難溶性の有効成分については、適切な溶剤に溶解され、少なくとも島状構造体の内部に含むことが好ましい。
溶剤としては、例えば、以下Y群から選ばれる極性溶剤を含有することが好ましい。
(Y群)
N−アルキルピロリドン、炭酸アルキレン、ベンジルアルコール、アジピン酸ジエステル、セバシン酸ジエステル
前記Y群の極性溶剤は、難溶解性の薬剤(有効成分)の溶解性に優れ、難溶解性の薬剤を本発明の泡沫に安定に含有することができる。
前記N−アルキルピロリドンとしては、炭素数1〜4のアルキル鎖を有するN−アルキル−2−ピロリドンが好適に例示できる。より好ましくは、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンである。
前記炭酸アルキレンとしては、炭酸プロピレンが好ましい。
前記アジピン酸ジエステルとしては、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピルが好ましい。
前記セバシン酸ジエステルとしては、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピルが好ましい。
前記極性溶剤は単独で組成物に含有させることもできるし、1種又は2種以上を選択し組成物に含有させることができる。
本発明の泡沫は、リン脂質を含有することが好ましい。リン脂質としては、外用医薬や化粧品などの通常の皮膚外用剤で使用されるものであれば特段限定なく適用できる。具体例として、大豆や卵黄から精製されるレシチン、レシチンの主成分であるフォスファチジルコリン、水酸化レシチン、フォスファチジルコリンの主鎖であるフォスファチジン酸、水添レシチン、フォスファチジルセリン、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルグリセロール、スフィンゴミエリン、セレプロシドおよびこれらのリゾ体などが好適に例示できる。より好ましくは、レシチン、水素添加レシチンである。
前記リン脂質は、組成物の泡質を向上させる作用、保湿作用に優れるほか、起泡性を低下させることなく、塗布後の適度な時間で消泡するため、塗布予及び延展時の刺激性が低く、伸ばし易く、泡残りしないため、アトピー性皮膚炎などの皮膚バリア機能が低下した皮膚への塗布に適する。前記リン脂質は、ただ1種を含有することもできるし、2種以上を組み合わせて含有させることもできる。
本発明の泡沫は、前記リン脂質に加え、スクワレン、コレステロール、コレステロールエステル、ワックスエステル、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、セラミド、遊離脂肪酸などの皮脂成分、セリン、グリシンなどのアミノ酸、ピロリドンカルボン酸及びその塩、尿素、乳酸などの天然保湿因子、ヒアルロン酸などの酸性ムコ多糖類なども含有させることができる。
本発明の泡沫は、有機塩及び/又は無機塩を含有していてもよい。本発明の泡沫は、有機塩及び/又は無機塩により液性が調整され、強酸性〜強アルカリ性(pH2〜12)の範囲において液性に影響を受けることなく優れた起泡性、泡持ち、泡質を形成し得る。
前記有機塩及び/又は無機塩としては、塩酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、ソルビン酸、乳酸、マレイン酸、硫酸、リン酸、リンゴ酸、アルギニン、アンモニア水、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、水酸化カリウム、水酸化カルシウム及び水酸化ナトリウム、又はそれらの塩が挙げられるがこれに限定されない。
本発明の泡沫は、アミノカルボン酸誘導体及びその塩、ホスホン酸誘導体及びその塩、フェナントロリン誘導体及びその塩、フェチン酸誘導体及びその塩、グルコン酸誘導体及びその塩から選択される1種または2種以上を含有していてもよい。
前記アミノ酸カルボン酸誘導体としては、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、1,3−プロパンジアミン四酢酸、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、(S,S)−エチレンジアミンスクシン酸およびこれらの塩などが好適に例示できる。より好ましくは、エチレンジアミン四酢酸およびその塩が好ましい。
前記ホスホン酸誘導体としては、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、ホスホノブタントリカルボキシキシリックアシッド、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)およびこれらの塩などが好適に例示できる。より好ましくは、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸及びその塩である。
以上説明した各成分の含有量など、好ましい組成については、<2>本発明のスクリーンフォーマー用組成物の項において説明し、その組成が本発明の泡沫にも当てはまる。
<1−3>泡沫の用途
本発明の泡沫は、安全性が高く、泡持続性を有するため、患部に負担をかけることなく、均一に塗布することができる。
このような性質から、本発明の泡沫は、皮膚疾患に対する有効成分を含有する医薬として用いることが好ましい。この場合には、塗布後除去しないで用いられる。
<1−4>泡沫の製造方法
本発明の泡沫は、次項で説明するスクリーンフォーマー用の組成物をスクリーンフォーマーに通すことで調製することができる。
ここで、スクリーンフォーマーとは、液体を加圧し、ネット状のスクリーンを通過させることにより、組成物を空気と混合せしめ、発泡させる機構のものを意味し、ポンプフォーマー、チューブフォーマーなどが知られており、特にポンプフォーマーが好ましく例示できる。ポンプフォーマーとはポンプでくみ上げた内容物を、泡状の形態で吐出する機構である。このようなスクリーンフォーマーを備えた容器は公知であり(例えば、特開2012−45525号公報、特開2008−307478号公報を参照)、市販品も存在するので、これを適宜用いることができる。
以下、スクリーンフォーマー用の組成物について詳述する。
<2>本発明のスクリーンフォーマー用の組成物
本発明のスクリーンフォーマー用の組成物(以下、本発明の組成物)は、前述した本発明の泡沫の調製に用いられる組成物である。
<2−1>組成物の構成成分
本発明の組成物は、泡沫形成剤として、非イオン性界面活性剤を含む。すなわち、本発明の組成物は、非イオン性界面活性剤以外の泡沫を形成し得る成分(典型的には、イオン性界面活性剤)を、これが泡沫形成能を発揮する形態で含まない。例えば、イオン性界面活性剤(但し、リン脂質を除く)の含有量は、好ましくは1質量%以下であり、更に好ましくは実質的に含有しない。非イオン性界面活性剤の好ましい形態については、<1>本発明の泡沫の項の記載が当てはまる。
本発明の組成物において、本発明の組成物において、非イオン性界面活性剤は、組成物が可溶化状態となる量配合する。
例えば、非イオン性界面活性剤は、組成物全量に対し1〜15質量%含有されることが好ましい。また、非イオン性界面活性剤は、組成物全量に対し好ましくは2〜12質量%、更に好ましくは2〜10質量%、より好ましくは2.5〜10質量%、特に好ましくは2.5〜7質量%含有される。前記所定のHLB値を有する非イオン性界面活性剤の占める割合は、非イオン性界面活性剤の総量に対して、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。例えば、非イオン性界面活性剤の全量をHLB値が9以上、好ましくは10以上、さらに好ましくは11以上、特に好ましくは13以上の非イオン性界面活性剤で構成することも好ましい。
前記X群から選ばれる非イオン性界面活性剤の占める割合は、非イオン性界面活性剤の総量に対して、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。例えば、非イオン性界面活性剤の全量を前記X群から選ばれる非イオン性界面活性剤で構成することも好ましい。
また、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルの占める割合は、非イオン性界面活性剤の総量に対して、好ましくは25質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。これらの割合の上限値は特に制限されないが、例えば、90質量%以下、好ましくは80質量%以下が挙げられる。
非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルに加え、他の非イオン性界面活性剤を含有させる場合には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルの総含有量が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレンアルケニルエーテル以外の非イオン性界面活性剤の総含有量に対し、質量比で、1:5〜5:1、より好ましくは、1:4〜4:1、さらに好ましくは、1:3〜3:1であることが好ましい。
本発明の組成物において、前記脂肪族アルカノールアミド型界面活性剤を用いる場合には、例えば0.5〜10質量%、好ましくは1〜5質量%とすることができる。
本発明の組成物において、前記HLB値が5以下の非イオン性界面活性剤を、前記HLB値が9以上の非イオン性界面活性剤と組み合わせる場合には、それらの質量比は、1:3〜3:1が好ましく、1:2〜2:1がより好ましい。
また、HLB値が9以上の非イオン性界面活性剤と、HLB値が5以下の非イオン性界面活性剤を共に配合する場合は、HLB値の加重平均が9〜16であることが好ましい。
本発明の組成物において、アルコールを含有する場合には、前記一価アルコールおよび前記多価アルコールの総含有量は、組成物の全量に対し、下限値として10質量%であることが好ましく、より好ましくは12質量%、さらに好ましくは15質量%であり、上限値として50質量%であることが好ましく、より好ましくは45質量%、特に好ましくは30質量%である。
前記一価アルコールの含有量は、組成物の全量に対し5〜25質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜20質量%、さらに好ましくは10〜15質量%である。
前記多価アルコールの含有量は、組成物の全量に対し10〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは12〜45質量%、さらに好ましくは15〜30質量%である。
前記アルコールの総含有量は、組成物の全量に対し10〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは12〜45質量%、特に好ましくは15〜30質量%である。さらに、本発明の組成物は、前記アルコールの総含有量のうち、前記多価アルコールを10質量%以上含有することが好ましく、より好ましくは10〜45質量%、さらに好ましくは12〜30質量%である。
本発明の組成物は、アルコールの含有量を前記範囲とすることで、吐出した泡沫を長時間保持することができ、また保湿感などの使用実感を向上させることができる。
また、本発明の組成物の好ましい形態としては、以下が挙げられる。
エタノールを10〜20質量%、より好ましくは10〜15質量%含有する形態。
エタノールに加え多価アルコールを含有する形態。
ポリエチレングリコールを0.5〜30質量%、より好ましくは1.5〜25質量%含有し、且つ他の多価アルコールも含有する形態。
1,3−ブチレングリコールを5〜30質量%、より好ましくは10〜25質量%含有する形態。
前記1,3−ブチレングリコールに加え他の多価アルコールも含有する形態。
前述のアルコール、取り分け、多価アルコールを高濃度で含有することにより、非イオン界面活性剤との相互作用により、空気との界面が強化された泡沫殻を有する泡を形成することができる。また、アルコールを高濃度で含有することにより、保湿感を実感できる組成物となる。
本発明の組成物において、前記極性溶剤を含有する場合には、その含有量は、組成物の全量に対し1〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは1〜10質量%である。
また、本発明の組成物は、前記極性溶剤の含有量が、難溶解性の薬剤(有効成分)の含有量の20〜250質量倍とすることが好ましく、より好ましくは30〜200質量倍である。
本発明の組成物は、前記極性溶剤の濃度を上記範囲とすることで、吐出した泡沫の強度を高めることができ、かつ有効成分を組成物に安定的に配合することができる。
さらに、本発明の組成物は、前記極性溶剤の濃度を上記範囲とすることで、塗布及び延展時の刺激感を低減することができる。
本発明の組成物において、前記リン脂質を含有する場合には、その含有量は、組成物全量に対し0.001〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.01〜5質量%である。
本発明の組成物は前記リン脂質の濃度を上記範囲とすることで、吐出した泡沫の強度を高めるとともに、泡沫がpHの影響を受けて性状が変化するのを防ぐ作用を有する。さらに塗布延展時の使用感を向上させるとともに、皮膚が刺激を受けるのを避けることができる。
本発明の組成物において、前記有機塩及び/又は無機塩を含む場合には、その含有量は、組成物の液性が前記pH範囲(pH2〜12)に調整される量であることが好ましい。前記含有量は有機塩及び/無機塩の種類により異なるが、一般には組成物全量に対し0.1〜10質量%であり、好ましくは0.5〜5質量%である。
本発明の組成物は、アルカリ性においては洗浄剤などとして、弱酸性においては、皮膚への刺激を低減した医薬品、化粧品などに適用することができる。特に、弱酸性においては、塗布後除去しない形態で使用される医薬品や化粧品に好適である。
本発明の組成物において、アミノカルボン酸誘導体及びその塩、ホスホン酸誘導体及びその塩、フェナントロリン誘導体及びその塩、フェチン酸誘導体及びその塩、グルコン酸誘導体及びその塩から選択される1種または2種以上を含有する場合には、前記誘導体およびその塩は、組成物の全量に対し0.0001〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.001〜5質量%である。
本発明の組成物は、前記誘導体およびその塩の含有量を上記範囲とすることで、有効成分又は製剤成分の分解、変性などを抑制し、製剤安定性を向上させることができる。
前述した成分以外の任意成分の好ましい含有量は、それぞれの配合目的により異なるが、大凡0.1〜20質量%である。
本発明の組成物は、安全性、特に敏感肌のヒトに対して、刺激や刺激感を呈する成分を含有しないという観点から、以下の成分についてはその使用が制限されることが好ましい。
リン脂質を除くイオン性界面活性剤の含有量の総和は1質量%以下であることが好ましく、実質的に含有しないことが好ましい。
また、非イオン性界面活性剤のうち、アルカノールアミド型界面活性剤もその使用は制限されることが好ましく、特に好ましい形態では実質的に含有しない。また、非イオン性界面活性剤のうち、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールは、粘膜においてアナフィラキシーを誘起することから、その使用が制限されることが好ましい。これらの非イオン性界面活性剤の使用量は、非イオン性界面活性剤に占める割合として、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは含有しない。
また、シリコーンについても実質的に含有しないことが好ましい。
<2−2>組成物の物性
本発明の組成物は可溶化状態であることを特徴とする。可溶化状態とは、肉眼観察上では、透明で、干渉色も、にごりも有さない形態である。また、可溶化状態は、マイクロエマルションの状態を含む。マイクロエマルション(ナノエマルションを含む)は100nm以下の微細な粒子径のミセル(マイクロミセル乃至はナノミセル)の分散物であり、熱力学的に安定なミセル溶液である。可溶化状態であることは、組成物が透明であることをもって確認できる。また、常法により、粒子サイズを測定することにより可溶化状態を確認することもできる。
前記可溶化状態の組成物は、組成物を空気と大面積で接触させる、もしくは応力を加える操作により、ミセルの合一と推察される現象が起こる。すなわち、前記操作後に、組成物を100〜4000倍の倍率での顕微鏡にて観察すると、1〜100ミクロンの大きさのミセルが観察される。
本発明の組成物は、好ましくは、O/W型のマイクロエマルションである。このような形態において、組成物がアルコール、好ましくは多価アルコールを含む場合には、(アルコール+非イオン性界面活性剤)/(水+アルコール)のO/W型であることが好ましい。また、更に極性溶剤を含む場合には、油相に極性溶剤を含むことが好ましい。例えば、本発明の組成物は(溶剤+多価アルコール+非イオン性界面活性剤)/(水+一価アルコール+多価アルコール)のO/W型のマイクロエマルションであることが好ましい。
本発明の組成物は、スクリーンフォーマーを通すことにより、起泡する。そして、発泡後の泡沫は持続性のあるものである。また、本発明の組成物の好ましい形態では、結晶などを析出することなく、長期保存における安定性に優れる。
本発明の組成物は、好ましくは水系である。ここで、水系とは、水が基剤として機能する程度に含有されていることをいい、例えば、その含有量は15質量%以上、好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。
本発明の組成物は、水を40〜85質量%、より好ましくは50〜80質量%、更に好ましくは55〜75質量%含有することを特徴とする。
本発明の組成物において、水はスクリーンフォーマーで吐出したときに泡沫を形成するための重要な構成要素である。
本発明の組成物は、水の量を前記範囲とすることで、起泡性や泡持続性により優れた泡沫を形成することができる。また、外用の際に、塗布している間安定に泡を維持するためには、水の量を前記範囲とすることが有効である。
また、本発明の組成物は、下記(A)の条件を充足する。好ましくは、下記(A)および下記(B)を充足する。より好ましくは、下記(A)、下記(B)および下記(C)の条件を充足する。

(A)下記(I)又は下記(II)の処理前は、ミセル像が観察されない状態又はほとんどミセル像が観察されない状態にある。
(B)下記(I)の処理後は、ミセル像が観察されない状態又はほとんどミセル像が観察されない状態にある。
(C)下記(II)の処理後は、該処理前よりも多くのミセル像が観察される状態にある。
(I)前記組成物を静置する。
(II)前記組成物に応力を加える。
前記(I)の処理は、例えば前記組成物を開放系で静置する処理である。また、前記(I)の処理は、好ましくは前記組成物を開放系で1時間静置する処理である。
また、本発明の組成物における、前記(II)の応力を加える処理として、例えば、引っ張り応力、圧縮応力、遠心分離による応力を加える処理等が好ましく例示できる。中でも好ましくは前記(II)の処理が遠心分離により応力を加える処理である。遠心分離の条件としては、例えば5000〜15000g、0.5〜3分間が挙げられる。
また、前記ミセル像の観察方法は、特段の限定はされないが、光学顕微鏡を用いる観察方法、100〜10000倍の倍率でマイクロスコープを用いる観察方法および顕微鏡観察をモニター映像に取り出し、モニター上で実質倍率を上げて観察する方法等が好ましく例示でき、光学顕微鏡を用いる観察方法がより好ましい。
前記光学顕微鏡の観察倍率は、好ましくは100〜4000倍であり、より好ましくは100〜2000倍、さらに好ましくは100〜1000倍である、特に好ましくは、100〜500倍である。
本発明の組成物の好ましい形態を定義するにあたり、開放系で静置する等の経時的条件あるいは応力負荷条件を加えた後に、ミセルが観察できるか否かは重要である。
開放系で静置する等の負荷が小さい条件を加えた後に、ミセルが観察される組成物は、持続性が低い泡沫を形成する可能性が高い。一方で、前記負荷が小さい条件を加えた後に、ミセルが観察されない、もしくはほとんど観察されない組成物は、持続性が高い泡沫を形成する可能性が高い。
また、応力を加える等の大きい負荷によって、ミセルが観察される組成物は、起泡性に優れており、かつ持続性の高い泡沫を形成する可能性が高い。
本発明の組成物は、皮膚外用医薬、化粧料などの皮膚外用組成物の形態であることが好ましい。より好ましくは塗布後除去しない態様で使用するためのものである。
<2−3>組成物の製造方法
本発明の組成物は、前述した構成成分を室温以上で可溶化することにより製造することができる。本発明の組成物は、前述した構成成分を50℃以上で可溶化することにより製造することが好ましく、より好ましくは非イオン性界面活性剤の曇点以上で可溶化することにより製造する。
本発明の組成物は、室温付近で可溶化することにより製造することもできるが、非イオン性界面活性剤の曇点以上で可溶化することで、スクリーンフォーマー用の組成物としてより適している組成物を製造することができる。
<3>本発明の組成物を用いた泡沫の形成過程
以下に、本発明の組成物を用いて本発明の泡沫が形成される過程について、模式図を参照して説明する。
典型的なフォーム剤であるイオン性界面活性剤を含む組成物による泡沫形成は、イオン性界面活性剤からなる二重膜構造(図1参照)が空気界面で空気を包含し、閉鎖空間を形成して起こる(図2参照)。これは、二重膜構造の表面張力が、小さいために、一枚の膜で空気を包含できるが故に起こる現象である。
これに対し、本発明の泡沫の形成過程は、非イオン性界面活性剤による表面張力の低下が少ないため、一枚の膜で空気を包含することができないと推定される。そのため、スクリーンフォーマーに通すことによる空気との接触によって、次のような過程を経て泡沫が形成されると推定される。
1)マイクロミセル(マイクロエマルションに含まれるミセル)の空気との親和性が高いために、マイクロミセルが空気界面に集合し、合一してミセルとなる(図3(A))。
2)形成したミセルは、空気界面との接触面積を増加させるために扁平化する(図3(B))。
3)ミセルの扁平化は、ミセルの表面張力と、連続相とのバランスで終結し、表面に扁平化したミセルと、これらのミセルとミセルとの間を埋める連続相とからなる膜(泡沫殻)が生成する。
4)生成した膜(泡沫殻)が空気を包含し、泡沫を形成する(図3(C))。
この扁平化したミセルが、本発明の泡沫の気液界面に島状構造体として観察される(図3(D))。また、この扁平化したミセルと連続相のつくる膜が、本発明の泡沫における泡沫殻である。
<4>本発明のスクリーンフォーマー用の組成物の評価方法
本発明のスクリーンフォーマー用の組成物の評価方法(以下、本発明の評価方法)は、非イオン性界面活性剤を泡沫形成剤として含んだ組成物をスクリーンフォーマーに通して泡沫を形成させて、前記泡沫の気液界面に複数の島状構造体が形成されていることを認めた場合には、スクリーンフォーマー用の組成物として適したものであると判別し、前記泡沫の気液界面に前記島状構造体が形成されていないと認めた場合には、スクリーンフォーマー用の組成物として適していないものであると判別する。
スクリーンフォーマー用の組成物が形成する泡沫の起泡性および泡持続性は、製造方法や、製造手順などにより異なる場合が存在する。
本発明の評価方法は、これらの製造方法や、製造手順の違いによって生じる起泡性および泡持続性の差異を、泡沫の気液界面に島状構造体が形成されているか否かによって判別することができる。前記島状構造体とは、連続相(海)に対して、不連続で、独立している構造体のことをいう。
本発明の評価方法は、前記島状構造体が形成しているか否かの判別方法について特段の定めはない。例えば、光学顕微鏡や電子顕微鏡による観察、X線回折による構造の特定等が挙げられる。本発明の評価方法は、簡便さ、正確さの観点から、好ましくは顕微鏡によって、より好ましくは光学顕微鏡によって観察する。
また、本発明の評価方法は、泡沫殻表面方向から観察した場合の前記島状構造体の投影面積が大きいほど、スクリーンフォーマー用の組成物としてより適していると判別する。すなわち、前記島状構造体の投影面積が大きいほど、より優れた起泡性および泡持続性を有するスクリーンフォーマー用の組成物であると判別することができる。
上記判別方法は、2つ以上の組成物を比べる相対的な判別方法であるが、絶対的な判別方法として好ましくは、前記島状構造体の投影面積の平均値が、1000μm以上である場合に、スクリーンフォーマー用の組成物としてより適していると判別し、より好ましくは1500μm以上である場合に、スクリーンフォーマー用の組成物としてより適していると判別する。
また、本発明の評価方法では、計測域で観察される60%以上、好ましくは80%以上の前記島状構造体の前記投影面積が1000μm以上である場合に、スクリーンフォーマー用の組成物としてより適していると判別することが好ましい。
前記計測域に特段の定めはないが、好ましくは泡沫の一つの気泡の1/3が収まるスケールが、より好ましくは泡沫の少なくとも一つの気泡が収まるスケールが好ましい。具体的には前記計測域が、好ましくは300μm四方以上であり、より好ましくは500μm四方以上であり、さらに好ましくは1000μm四方以上である。
本発明の評価方法では、泡沫の吐出後から泡沫の消失まで観察を行うことができるが、前記島状構造体の形成しているか否かの判別、および前記島状構造体の泡沫殻表面方向から観察した場合の投影面積の測定は、島状構造体の形および大きさが経時的に変化せず、安定化した後に測定することが好ましい。具体的には、好ましくは前記泡沫の吐出後10秒〜3分間の間、より好ましくは前記泡沫の吐出後20秒〜2分間の間、さらに好ましくは前記泡沫の吐出後30秒〜1分間の間に前記判別および前記投影面積の測定を行う。
また、本発明の評価方法は、非イオン性界面活性剤を含む組成物をスクリーンフォーマーに通さずに光学顕微鏡で観察した場合において、下記(A)の条件を充足する場合に、スクリーンフォーマー用の組成物として適したものであると判別する。
好ましくは、下記(A)および(B)の条件を充足する場合に、スクリーンフォーマー用の組成物として適したものであると判別する。
より好ましくは、下記(A)、(B)および(C)の条件を充足する場合に、スクリーンフォーマー用の組成物として適したものであると判別する。
(A)下記(I)又は下記(II)の処理前は、ミセル像が観察されない状態又はほとんどミセル像が観察されない状態にある。
(B)下記(I)の処理後は、ミセル像が観察されない状態又はほとんどミセル像が観察されない状態にある。
(C)下記(II)の処理後は、該処理前よりも多くのミセル像が観察される状態にある。
(I)前記組成物を静置する。
(II)前記組成物に応力を加える。
各処理、並びに観察の方法および条件の好ましい形態は、前述したとおりである。
当該評価方法は、組成物の評価方法として、単独で用いることができる。また、前述した泡沫の島状構造体についての評価と組み合わせて用いることもできる。
以下、本発明について、実施例を挙げて更に詳細に説明を加える。
<実施例1>
下記の表1に示した処方成分を全て合わせて、70℃で加温溶解した後に、30℃まで攪拌冷却し、組成物1を製造した。なお、表1中の処方成分は、質量%にて表示している。
<実施例2>
下記の表1に示した処方成分を、室温で相溶させ組成物2を製造した。また、下記の表1に示した処方成分を50℃で可溶化し、撹拌冷却して組成物3を製造した。さらに、下記の表1に示した処方成分を80℃で可溶化し、撹拌冷却して組成物4を製造した。
<比較例1>
下記の表1に示した処方成分を全て合わせて、実施例1と同様の操作を行い、組成物5を製造した。
<比較例2>
下記の表1に示した処方成分を全て合わせて、実施例1と同様の操作を行い、組成物6を製造した。
Figure 0006928760
<試験例1>泡沫の観察
前記組成物1〜6をポンプフォーマーに通して、泡沫を形成させた。前記泡沫をスライドグラスに乗せた状態で、光学顕微鏡観察を行い、起泡性および泡持続性について評価を行った。また、泡沫をスライドグラスに乗せた状態で、光学顕微鏡観察(計測域500μm×700μm)を行い、前記泡沫の気液界面に島状構造体が形成されているか評価を行った。それぞれの評価項目について、以下の基準により評価した。結果を図4に示す。
また、組成物1および2に関しては、前記島状構造体の投影面積を測定した。投影面積は、泡沫の吐出後から30秒後の顕微鏡写真をプリントし、スケールの10μm×10μmの部位(標準部位)を切り出し、秤量し、島状構造の部分を切り出し、秤量した値を前記標準部位の重さで割り、100μmを掛けることにより求めた。
(起泡性)
○・・・起泡性が高い
×・・・起泡性が低い
(泡持続性)
◎・・・泡持続性が非常に高い
○・・・泡持続性が高い
×・・・泡持続性が低い
(島状構造体)
◎・・・大きい島状構造体が形成されている
○・・・島状構造体が形成されている
×・・・島状構造体が形成されていない、もしくはほとんど形成されていない
試験例1の結果より、起泡性および泡持続性に優れている組成物は、組成物3および組成物4であることがわかった。組成物3および組成物4はどちらも泡持続性が非常に高いという評価であり、また組成物4は組成物3よりも泡持続性に優れていた。
組成物3および4に次いで、組成物1および組成物2が起泡性および泡持続性に優れていた。組成物5は起泡性に優れているが泡持続性が低く、組成物6は起泡性および泡持続性ともに優れていなかった。
ここで、図4の泡の光学顕微鏡写真を見ると、組成物3および組成物4では、大きな島状構造体が形成されていることがわかる。組成物3および組成物4はどちらも大きい島状構造体が形成されているが、組成物4には組成物3よりも大きい島状構造体が形成されていた。
また、組成物1および組成物2に形成されている島状構造体は、組成物3と組成物4に形成されている島状構造体と比して、サイズが小さいことがわかる。 組成物1の泡沫における島状構造の泡沫殻表面方向から観察した場合の投影面積は、3148±1562μmであり、組成物2が1700±1515μmであった。又、計測域において1000μm以上の島状構造の割合は組成物1では87%であり、組成物2では67%であった。
さらに、組成物5に形成されている構造体は、構造体同士が一部融合しており、独立していないため、島状構造体ではない。また、組成物6には、島状構造体がほとんど形成されていないことがわかる。
すなわち、試験例1の結果より、泡沫の気液界面に島状構造体が観察される場合に、起泡性および泡持続性に優れることがわかった。さらに、島状構造体が観察された組成物同士で比較を行うと、より大きい島状構造体が観察される場合に、泡持続性により優れていることがわかった。
この結果から、泡沫の気液界面に島状構造体が形成されている場合には、泡沫殻が安定し、持続性の高い泡沫となることがわかった。
また、この結果から、組成物をスクリーンフォーマーに通して泡沫を形成させ、前記泡沫の気液界面に島状構造体が形成されている場合には、スクリーンフォーマーに適した組成物であると判別し、前記島状構造体が形成されていない場合には、適していないと判別することができることが示された。
さらに、この結果から、前記島状構造体の泡沫殻表面方向から観察した場合の投影面積が大きいほど、スクリーンフォーマーにより適した組成物であると判別することができることが示された。
<試験例2>開放系で静置後の組成物の観察
前記組成物1〜6を、調製直後にスライドグラス上に乗せ顕微鏡観察を行った。さらに、スライドグラス上に1時間静置した後に、光学顕微鏡観察を行った。前記調製直後および大気下1時間静置後のそれぞれの光学顕微鏡観察により、ミセルの形成を認めるか否かの評価を行った。ミセル形成を認めるか否かは、以下の基準により評価した。結果を図4に示した。
(ミセルの形成)
○・・・ミセルが観察されない、もしくはほとんどミセルが観察されない
×・・・ミセルが観察される
調製直後の顕微鏡観察では、組成物1〜6のいずれもミセルが観察されないことがわかった。また、大気下1時間静置後には、組成物1〜4ではミセルが観察されず、組成物5および6ではミセルが観察された。
この試験例2の結果から、組成物1〜4は、マイクロミセル乃至はナノミセルを含有するマイクロエマルション(ナノエマルションを含む)であることが推定された。
また、試験例1の結果を併せて考察すると、起泡性および泡持続性に優れた組成物1〜4では、大気下1時間静置後にミセルが観察されず、泡持続性が低い組成物5と起泡性および泡持続性が低い組成物6はミセルが観察されたことから、組成物を大気下放置後に光学顕微鏡観察を行った場合、ミセルが観察されない、もしくはほとんどミセルが観察されない場合には、スクリーンフォーマー用の組成物として適していると判別し、ミセルが観察される場合には、スクリーンフォーマー用の組成物として適していないと判別することができることが示された。
<試験例3>遠心分離後の組成物の観察
組成物2〜4をそれぞれポリエチレン製の遠心分離用チューブに100μL入れ、遠心分離(15000g、1分間)を行った。遠心分離後、組成物2〜4をそれぞれスライドグラス上に乗せ、光学顕微鏡観察を行い、観察されるミセルの評価行った。観察されるミセルの評価は、以下の基準により評価した。結果を図5に示した。
(観察されるミセル)
◎・・・ミセルが出現し、かつそのミセルの粒径が大きい
○・・・ミセルが出現する
△・・・ミセルがわずかに出現する
×・・・ミセルが出現しない
なお、上記の「そのミセルの粒径が大きい」とは、組成物2〜4で比べた時の相対的な評価である。
試験例3の結果より、組成物2はミセルがわずかに出現し、組成物3はミセルが出現し、組成物4はミセルが出現し、かつそのミセルが大きいということがわかった。
この試験例3の結果と、試験例1の結果を併せると、起泡性および泡持続性に最も優れていた組成物4に応力を加えると、ミセルが出現し、かつそのミセルが大きいことがわかった。
すなわち、組成物に応力を加えた後に、組成物を顕微鏡観察し、ミセルの形成を認め、かつそのミセルが大きい場合はスクリーンフォーマー用の組成物としてより適していると判別することができることが示された。
組成物1〜4について、試験例2においては、大気下1時間静置後でもミセルは観察されず、試験例3においては、前記応力を加えることで、1〜100ミクロン程度の大きさのミセルが観察された。これにより、組成物は、マイクロエマルション(ナノエマルションを含む)であると判断された。
以上の試験結果から、泡沫の形成過程について以下のように考察することができる。
1)スクリーンフォーマーを通すことにより組成物に応力がかかると、組成物中のマイクロミセルが空気界面に集合し、マクロミセルの合一が起こる。
2)合一して形成されたミセルは、空気界面との接触面積を増加させるために扁平化する。
3)ミセルの扁平化は、ミセルの表面張力と、連続相とのバランスで終結し、表面に扁平化したミセルと、これらのミセルとミセルとの間を埋める連続相とからなる膜(泡沫殻)が生成する。
4)生成した膜(泡沫殻)が空気を包含し、泡沫を形成する。
すなわち、また、非イオン性界面活性剤は、組成物中でマイクロミセルを形成しており、泡沫においては、泡沫殻において、扁平なミセルを構成する。光学顕微鏡観察によって泡沫の気液界面に観察された島状構造体は扁平なミセルである。
また、組成物2〜4は、構成成分は同じであるが、異なる製造方法によって製造された組成物である。その製造方法の違いから、組成物2〜4は、その起泡性および泡持続性が異なっていた。
すなわち、組成物の構成成分のみによって泡沫の性質が決まるわけではないことが示された。室温で製造した組成物2よりも、50℃で製造した組成物3がスクリーンフォーマー用の組成物として適しており、50℃で製造した組成物3よりも、80℃で製造した組成物4がスクリーンフォーマー用の組成物として適していることから、組成物に含まれている非イオン性界面活性剤の曇点以上で組成物を製造することで、スクリーンフォーマー用の組成物としてより適している組成物を製造できることが示された。
本発明は、スクリーンフォーマー用製品に応用できる。

Claims (8)

  1. 非イオン性界面活性剤を泡沫形成剤として用いるスクリーンフォーマー用の組成物の評価方法であって、前記組成物をスクリーンフォーマーに通して泡沫を形成させて、前記泡沫の気液界面に複数の島状構造体が形成されていることを認めた場合には、スクリーンフォーマー用の組成物として適したものであると判別し、前記泡沫の気液界面に前記島状構造体が形成されていないと認めた場合には、スクリーンフォーマー用の組成物として適していないものであると判別することを特徴とする、スクリーンフォーマー用の組成物の評価方法。
  2. 前記泡沫の気液界面に前記島状構造体が形成されているか否か、光学顕微鏡で観察することにより判別することを特徴とする、請求項1に記載のスクリーンフォーマー用の組成物の評価方法。
  3. 前記島状構造体の泡沫殻表面方向から観察した場合の投影面積が大きいほど、スクリーンフォーマー用の組成物としてより適していると判別することを特徴とする、請求項1又は2に記載のスクリーンフォーマー用の組成物の評価方法。
  4. さらに、前記組成物をスクリーンフォーマーに通さずに光学顕微鏡で観察した場合において、下記(A)および下記(B)の条件を充足する場合に、スクリーンフォーマー用の組成物として適したものであると判別することを特徴とする、請求項1〜3何れか一項に記載のスクリーンフォーマー用の組成物の評価方法。
    (A)下記(I)又は下記(II)の処理前は、ミセル像が観察されない状態又はほとんどミセル像が観察されない状態にある。
    (B)下記(I)の処理後は、ミセル像が観察されない状態又はほとんどミセル像が観察されない状態にある。
    (I)前記組成物を開放系で静置する。
    (II)前記組成物に応力を加える。
  5. さらに、下記(C)の条件を充足する場合に、スクリーンフォーマー用の組成物としてより適したものであると判別することを特徴とする、請求項4に記載のスクリーンフォーマー用の組成物の評価方法。
    (C)前記(II)の処理後は、該処理前よりも多くのミセル像が観察される状態にある。
  6. 前記(C)において、観察されるミセル像の粒径が大きいほど、スクリーンフォーマー用の組成物としてより適していると判別することを特徴とする、請求項5に記載のスクリーンフォーマー用の組成物の評価方法。
  7. 前記(II)の処理が、前記組成物に遠心分離により応力を加える処理であることを特徴とする、請求項4〜6何れか一項に記載のスクリーンフォーマー用の組成物の評価方法。
  8. 非イオン性界面活性剤を泡沫形成剤として用いるスクリーンフォーマー用の組成物の評価方法であって、前記組成物を光学顕微鏡で観察した場合において、下記(A)〜(C)の条件を充足する場合に、スクリーンフォーマー用の組成物として適したものであると判別することを特徴とする、スクリーンフォーマー用の組成物の評価方法。
    (A)下記(I)又は下記(II)の処理前は、ミセル像が観察されない状態又はほとんどミセル像が観察されない状態にある。
    (B)下記(I)の処理後は、ミセル像が観察されない状態又はほとんどミセル像が観察されない状態にある。
    (C)下記(II)の処理後、該処理前よりも多くのミセル像が観察される状態にある。
    (I)前記組成物を開放系で静置する。
    (II)前記組成物に応力を加える。
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