この発明に係る眼科装置の実施形態の例について、図面を参照しながら詳細に説明する。実施形態に係る眼科装置は、被検眼の光学的な検査に用いられる。このような眼科装置は、例えば、眼科撮影装置及び眼科測定装置の少なくとも一方を含む。眼科撮影装置の例として、光干渉断層計、眼底カメラ、走査型レーザ検眼鏡などがある。眼科測定装置の例として、眼屈折検査装置、眼圧計、スペキュラーマイクロスコープ、ウェーブフロントアナライザなどがある。この明細書にて引用された文献に開示された技術を含む任意の公知技術を、実施形態に組み合わせることができる。
〈構成〉
眼科装置の構成例を図1及び図2に示す。眼科装置1は、被検眼Eのデータを取得する機能を備える。すなわち、眼科装置1は、被検眼Eを撮影する機能と、被検眼Eの特性を測定する機能との一方又は双方を備える。
眼科装置1は、制御部11と、データ処理部12と、光学ユニット20と、顔支持部70と、第1駆動部80Aと、第2駆動部80Bと、ユーザインターフェイス(UI)90とを含む。なお、第1駆動部80A及び第2駆動部80Bの一方のみが設けられた構成であってもよい。典型的には、眼科装置1は、第1駆動部80Aのみを備えていてよい。
制御部11及びデータ処理部12のそれぞれはプロセッサを含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路を含む。
プロセッサは、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。記憶回路や記憶装置の少なくとも一部がプロセッサに含まれていてよい。また、記憶回路や記憶装置の少なくとも一部がプロセッサ10の外部に設けられていてよい。プロセッサにより実行可能な処理については後述する。
記憶装置等は、各種のデータを記憶する。記憶装置等に記憶されるデータとしては、データ取得光学系30により取得されたデータ(測定データ、撮影データ等)や、被検者及び被検眼に関する情報などがある。記憶装置等には、眼科装置1を動作させるための各種のコンピュータプログラムやデータが記憶されていてよい。記憶装置等には、後述の処理において使用・参照される各種のデータが記憶される。
(制御部11)
制御部11は、眼科装置1の各部の制御を実行する。特に、制御部11は、データ処理部12、光学ユニット20、第1駆動部80A、第2駆動部80B、及びユーザインターフェイス90を制御する。制御部11は、アライメント制御部111と、UI制御部112とを含む。
(アライメント制御部111)
アライメント制御部111は、アライメントに関する制御を実行する。眼科装置1は、前眼部Eaに投影された指標に基づくアライメント(指標アライメントモード)を実行可能である。詳細は後述するが、指標アライメントモードでは、被検眼Eの角膜曲率情報(角膜曲率、角膜曲率半径等)に基づく補正が可能である。更に、アライメント制御部111は、被検眼Eの特徴部位に基づくアライメント(瞳孔アライメントモード)と、検者が手動で行うアライメント(マニュアルアライメント)とを実行可能であってよい。アライメント制御部111は、アライメントモードを選択する処理と、選択されたアライメントモードにおける各部の制御とを実行する。アライメント制御部111が実行する処理の具体例は後述する。
(UI制御部112)
UI制御部112は、ユーザインターフェイス90に関する制御を行う。換言すると、UI制御部112は、眼科装置1とユーザとの間の情報のやりとりに関する制御を行う。典型的には、UI制御部112は、表示部91に情報を表示させるための制御と、操作部92を用いて行われた操作に応じた制御とを実行する。眼科装置1による情報の出力態様は表示出力に限定されず、音声出力、印刷出力、発光ダイオード等の点灯などが含まれていてもよい。UI制御部112が実行する処理の具体例は後述する。
(データ処理部12)
データ処理部12は各種のデータ処理を実行する。例えば、データ処理部12は、前眼部カメラ60により取得された画像を解析する。画像の解析結果は、アライメント等に利用される。データ処理部12の詳細については後述する。
(光学ユニット20)
光学ユニット20には、被検眼Eの測定及び/又は撮影を行うための構成と、その準備を行うための構成とが格納されている。前者はデータ取得光学系30を含み、後者はアライメント光学系及び前眼部カメラ60を含む。アライメント光学系はアライメントにおいて使用され、この実施形態では第1光投射部41と第2光投射部42とを含む。
典型的な例において、データ取得光学系30及び第1光投射部41は、光学ユニット20の内部に格納されている。また、第2光投射部42は、光学ユニット20の筐体表面に設置されているか、或いは、その一部が筐体表面に露出している。同様に、前眼部カメラ60は、光学ユニット20の筐体表面に設置されているか、或いは、その一部が筐体表面に露出している。
第1光投射部41は、光学ユニット20の内部に配置された光学系を含む。第1光投射部41の光学系が形成する光路は、ビームスプリッタ50によりデータ取得光学系30の光路に合成されている。図示は省略するが、ビームスプリッタ50と被検眼Eとの間には、対物レンズ等の各種光学部材が設けられている。
光学ユニット20には、図1に示す構成に加え、被検眼Eを正面から撮影するための光学系(照明光学系、観察光学系、撮影光学系等)が設けられてもよい。更に、データ取得光学系30のフォーカシングを行うための構成などが設けられていてもよい。
(データ取得光学系30)
データ取得光学系30は、被検眼Eの特性を測定するための構成、及び/又は、被検眼Eを撮影するための構成を備える。データ取得光学系30は、眼科装置1が提供する機能(測定機能、撮影機能等)に応じて構成される。データ取得光学系30には、光源、光学素子(光学部材、光学デバイス)、アクチュエータ、機構、回路、表示デバイス、受光素子、イメージセンサなどが設けられる。
データ取得光学系30の構成は従来の眼科装置のそれと同様であってよい。データ取得光学系30の少なくとも一部は、第1光投射部41の光路に合成される光路の外部に配置されてもよい。例えば、角膜曲率を測定するためのケラトメータ機能を眼科装置1が具備する場合、リング状光又は同心円状光を角膜に投影するための光源(ケラトリング光源、プラチドリング光源等)が被検眼Eの直前位置に配置される。
データ取得光学系30は、検査に付随する機能を提供するための構成を備えていてよい。例えば、被検眼Eを固視させるための視標(固視標)を被検眼Eの眼底に投影するための固視光学系が設けられていてよい。
(データ取得光学系30の位置の検出)
眼科装置1は、データ取得光学系30の現在位置を検出する機能を備える。例えば、制御部11は、第1駆動部80A及び/又は第2駆動部80Bに対する制御の内容を記録し、この記録(制御の履歴)からデータ取得光学系30の現在位置を求めることができる。他の例において、眼科装置1は、データ取得光学系30の位置を検知する位置センサを含む。
制御部11(アライメント制御部111等)は、データ取得光学系30の現在位置と、データ処理部12により決定された移動目標位置とに基づいて、第1駆動部80A及び/又は第2駆動部80Bを制御することができる。それにより、データ取得光学系30を移動目標位置に移動させることができる。具体的には、制御部11は、現在位置と移動目標位置との間の差分を求める。この差分は、例えば、現在位置を始点とし、移動目標位置を終点とするベクトル値である。このベクトル値は、例えば、XYZ座標系で表現される3次元ベクトル値である。
(第1光投射部41)
第1光投射部41は、例えば光源とコリメートレンズとを含み、前眼部Eaに光を投射する。この実施形態では、第1光投射部41は、実質的に平行な光(平行光)を前眼部Eaに投射する。それにより、アライメントのための指標が前眼部Eaに投影される。この指標は、プルキンエ像として検出される。指標を用いたアライメントは、例えば、データ取得光学系30の光軸方向(Z方向)におけるZアライメントと、Z方向に直交するX方向(水平方向)及びY方向(鉛直方向)におけるXYアライメントとのうちの少なくとも一方を含む。
Zアライメントは、2以上の前眼部カメラ60により実質的に同時に得られた2以上の撮影画像を解析することによって実行される。XYアライメントは、2以上の前眼部カメラ60により実質的に同時に得られた2以上の撮影画像を解析することによって、又は、被検眼Eを正面から撮影するための光学系(観察光学系、撮影光学系等)により得られる画像(前眼部の正面画像)を解析することによって、実行される。正面画像は、例えばデータ取得光学系30に設けられたイメージセンサを利用して取得される。
前眼部Eaの正面画像に基づくXYアライメントは、従来と同様に、正面画像に描出されたプルキンエ像(指標像)のXY方向における位置に基づき実行される。例えば、前眼部の正面画像に基づくXYアライメントは、アライメントのズレの許容範囲(アライメントマーク)内に指標像を誘導するように光学ユニット20を手動又は自動で移動させることにより実行される。
マニュアルアライメントの場合、UI制御部112が正面画像とアライメントマークとを表示部91に表示し、ユーザが上記条件の満たすように操作部92を操作する。また、マニュアルアライメントにおいて、UI制御部112は、ユーザの操作を補助するための情報を表示部91に表示させることができる。例えば、アライメントのズレ方向及び/又はズレ量を表す情報を表示させることや、光学ユニット20を移動させるべき方向及び/又は量を表示させることができる。
オートアライメントの場合、アライメントマークに対する指標像の変位をデータ処理部12が算出し、この変位をキャンセルするようにアライメント制御部111が光学ユニット20をXY方向に移動させる。
詳細は後述するが、この実施形態では、2以上の前眼部カメラ60を用いてZアライメント及びXYアライメントの双方を実行する。
(第2光投射部42)
第2光投射部42は、光学ユニット20の前面(被検眼Eに対向する面)に配置されている。第2光投射部42の個数は、1つ又は2つ以上の任意の個数であってよい。第2光投射部42は、例えば発光ダイオード(LED)であり、前眼部Eaに光を投射する。この実施形態では、第2光投射部42は、非平行光(発散光、収束光等)を前眼部Eaに投射する。その投影像(プルキンエ像)は、被検眼Eの角膜曲率情報を取得するために利用される。
第1光投射部41により形成される投影像(プルキンエ像)と、第2光投射部42により形成される投影像(プルキンエ像)との双方を、被検眼Eの角膜曲率情報を取得するために利用することができる。例えば、第2光投射部42の個数が1つ(又は比較的少数)である場合、第1光投射部41により形成される投影像と第2光投射部42により形成される投影像との双方を利用するように構成される。
第2光投射部42を前眼部照明として利用することができる。前眼部照明は、前眼部Eaを観察するときなどに用いられる。ケラトリング光源又はプラチドリング光源等が設けられている場合、これの全体又は一部を第2光投射部42として用いることができる。
第1光投射部41と第2光投射部42は、互いに異なる方向から前眼部Eaに光を投射する。2以上の第2光投射部42が設けられている場合、これらはそれぞれ異なる方向から前眼部Eaに光を投射する。
(前眼部カメラ60)
前眼部カメラ60は、異なる位置に2台以上設けられている。各前眼部カメラ60は、例えば、所定のフレームレートで動画撮影を行うビデオカメラである。2以上の前眼部カメラ60は、前眼部を異なる方向から実質的に同時に撮影する。
図1に示す例では、データ取得光学系30等の光路から外れた位置に設けられているが、これには限定されない。例えば、データ取得光学系30にイメージセンサが設けられている場合、2以上の前眼部カメラの1つがこのイメージセンサであってよい。
この実施形態では、例えば、図3に示すように2台の前眼部カメラ60A及び60Bが設けられている。なお、図3は上面図であり、+Y方向は鉛直上方を示し、+Z方向はデータ取得光学系30の光軸方向であってデータ取得光学系30から被検眼Eに向かう方向を示す。また、前眼部カメラ60A及び60Bはそれぞれ、データ取得光学系30の光路から外れた位置に設けられている。以下、2台の前眼部カメラ60A及び60Bをまとめて符号「60」で表すことがある。
前眼部カメラの個数は2以上の任意の個数であってよいが、異なる2方向から実質的に同時に前眼部を撮影可能な構成であればよい。また、1つの前眼部カメラがデータ取得光学系30と同軸に配置されていてもよい。
「実質的に同時」とは、例えば、2以上の前眼部カメラによる撮影において、眼球運動を無視できる程度の撮影タイミングのズレを許容することを示す。それにより、被検眼Eが実質的に同じ位置(向き)にあるときの画像を2以上の前眼部カメラによって取得することができる。
また、2以上の前眼部カメラによる撮影は動画撮影でも静止画撮影でもよいが、この実施形態では動画撮影を行う場合について特に詳しく説明する。動画撮影の場合、撮影開始タイミングを合わせるよう制御したり、フレームレートや各フレームの撮影タイミングを制御したりすることにより、上記した実質的に同時の前眼部撮影を実現することができる。一方、静止画撮影の場合、撮影タイミングを合わせるよう制御することにより、これを実現することができる。
光学ユニット20の筐体の前面の構成例を図4に示す。符号「51」は対物レンズを示す。対物レンズ51は、ビームスプリッタ50の前方(被検眼E側)に配置されている。対物レンズ51は、データ取得光学系30の光路を形成する部材群の最前方位置(最も被検眼Eに近い位置)に配置され、且つ、第1光投射部41の光路を形成する部材群の最前方位置に配置されている。
対物レンズ50よりも前方に光学素子等を配置可能な構成を適用することもできる。例えば、眼科装置1が眼底撮影用の光干渉断層計を含む場合、前眼部撮影用のアタッチメントレンズが対物レンズ51の前方に配置されるように構成することが可能である。
データ取得光学系30の最前方位置に配置される部材は対物レンズ51に限定されない。例えば、眼科装置1が眼圧計を含む場合、角膜表面に空気流を吹き付けるためのノズルが最前方位置に配置される。
図4に示す例において、対物レンズ51は、筐体の中心位置のやや上部に配置されている。検査時において、対物レンズ51は、前眼部Eaに対向するように配置される。
図4において、対物レンズ50の左側には前眼部カメラ60Aが配置され、右側には前眼部カメラ60Bが配置されている。本例では、対物レンズ50の高さ位置(Y方向における位置)と、前眼部カメラ60A及び60Bの高さ位置とが等しく設計されているが、これに限定されない。例えば、対物レンズ50のレンズ中心よりも下方(−Y方向)に前眼部カメラ60A及び60Bを配置することができる。それにより、前眼部カメラ60A及び60Bにより取得される撮影画像に被検者の瞼や睫毛が映り込む可能性を低減することができる。また、眼の窪み(眼窩)が深い被検者であっても、好適に前眼部撮影を行うことができる。他の例として、前眼部カメラ60Aの高さ位置と、前眼部カメラ60Bの高さ位置とが異なるように設計することができる。
前眼部カメラ60Aの上方(+Y方向)及び下方(−Y方向)には、それぞれ第2光投射部42が設けられている。これら第2光投射部42は、前眼部カメラ60Aから互いに等しい距離だけ離れた位置に配置されている。同様に、前眼部カメラ60Bの上方及び下方にも、それぞれ第2光投射部42が設けられている。
本例では、対物レンズ51と、2つの前眼部カメラ60A及び60Bと、4つの第2光投射部42とは、それぞれ固定配置されている。ただし、これら部材のうちの少なくとも1つを移動可能に構成することも可能である。その場合、移動可能な部材の位置を検出する機能が設けられる。
(顔支持部70)
顔支持部70は、被検者の顔を支持するための部材を含む。例えば、顔支持部70は、被検者の額が当接される額当てと、被検者の顎が載置される顎受けとを含む。なお、顔支持部70は、額当て及び顎受けのいずれか一方のみを備えてもよく、これら以外の部材を備えてもよい。
(第1駆動部80A及び第2駆動部80B)
第1駆動部80Aは、制御部11(アライメント制御部111等)による制御を受けて光学ユニット20を移動する。第1駆動部80Aは、光学ユニット20を3次元的に移動可能である。第1駆動部80Aは、例えば、従来と同様に、光学ユニット20をX方向に移動させるための機構と、Y方向に移動させるための機構と、Z方向に移動させるための機構とを含む。また、第1駆動部80Aは、光学ユニット20の光軸を含む平面(水平面、垂直面等)内にて光学ユニット20を回動させる回動機構を含んでもよい。
第2駆動部80Bは、制御部11(アライメント制御部111等)による制御を受けて顔支持部70を移動する。第2駆動部80Bは、顔支持部70を3次元的に移動可能である。第2駆動部80Bは、例えば、顔支持部70をX方向に移動させるための機構と、Y方向に移動させるための機構と、Z方向に移動させるための機構とを含む。また、第2駆動部80Bは、顔支持部70(又はそれに含まれる部材)の向きを変更するための回動機構を含んでもよい。顔支持部70に複数の部材が設けられている場合、第2駆動部80Bは、これら部材を個別に移動するよう構成されてよい。例えば、第2駆動部80Bは、額当てと顎受けとを個別に移動するよう構成されてよい。
(ユーザインターフェイス90)
ユーザインターフェイス90は、情報の表示、情報の入力、操作指示の入力など、眼科装置1とそのユーザとの間で情報をやりとりするための機能を提供する。ユーザインターフェイス90は、出力機能と入力機能とを提供する。ユーザインターフェイス90は、UI制御部112によって制御される。
出力機能を提供する構成の典型例として表示部91がある。表示部91は、フラットパネルディスプレイ等の表示デバイスを含む。出力機能に係る構成の他の例として、音声出力装置や発光ダイオードがある。
入力機能を提供する構成の典型例として操作部92がある。操作部92は、レバー、ボタン、キー、ポインティングデバイス等の操作デバイスを含む。また、入力機能に係る構成の他の例として、マイクロフォンやデータライタがある。
ユーザインターフェイス90は、タッチパネルディスプレイのような出力機能と入力機能とが一体化されたデバイスを含んでよい。また、ユーザインターフェイス90は、情報の入出力を行うためのグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)を含んでよい。
(データ処理部12の詳細)
データ処理部12の詳細を説明する。図2に示すように、データ処理部12には、画像補正部120と、角膜曲率情報取得部130と、位置決定部140と、瞳孔位置取得部150とが設けられている。これらはアライメントのために機能する。
(画像補正部120)
画像補正部120は、前眼部カメラ60により得られた撮影画像の歪みを、所定の収差情報に基づいて補正する。この処理は、例えば、歪曲収差を補正するための補正係数に基づく公知の画像処理技術によって実行される。なお、前眼部カメラ60の光学系が撮影画像に与える歪曲収差が十分に小さい場合などには画像補正部120を設ける必要はない。
収差情報は、例えば、眼科装置1に設けられた記憶装置等に予め格納される。或いは、外部装置に予め格納された収差情報を眼科装置1が参照できるように構成することもできる。収差情報には、各前眼部カメラ60について、それに搭載された光学系の影響により撮影画像に発生する歪曲収差に関する情報が記録されている。ここで、前眼部カメラ60に搭載された光学系には、例えばレンズ等の歪曲収差を発生させる光学素子が含まれている。収差情報は、これらの光学素子が撮影画像に与える歪みを定量化したパラメータと言える。
収差情報の生成方法の例を説明する。前眼部カメラ60の器差(歪曲収差の差異)を考慮して各前眼部カメラ60について次のような測定が行われる。作業者は、所定の基準点を準備する。基準点とは、歪曲収差の検出に用いられる撮影ターゲットである。作業者は、基準点と前眼部カメラ60との相対位置を変更しつつ複数回の撮影を行う。それにより、異なる方向から撮影された基準点の複数の撮影画像が得られる。作業者は、取得された複数の撮影画像をコンピュータで解析することにより、この前眼部カメラ60のための収差情報を生成する。
収差情報を生成するための解析処理には、例えば以下の工程が含まれる。
・各撮影画像から基準点に相当する画像領域を抽出する抽出工程
・各撮影画像における基準点に相当する画像領域の分布状態(座標)を算出する分布状態算出工程
・得られた分布状態に基づいて歪曲収差を表すパラメータを算出する歪曲収差算出工程
・得られたパラメータに基づいて歪曲収差を補正するための係数を算出する補正係数算出工程
なお、光学系が画像に与える歪曲収差に関連するパラメータとしては、主点距離、主点位置(縦方向、横方向)、レンズのディストーション(放射方向、接線方向)などがある。収差情報は、各前眼部カメラ60の識別情報と、これに対応する補正係数とを関連付けた情報(例えばテーブル情報)として構成される。画像補正部120は、このようにして生成された収差情報を参照することで、前眼部カメラ60A又は60Bにより取得された撮影画像の収差補正を行う。このような収差補正はキャリブレーション(Calibration)などと呼ばれる。
画像補正部120により補正された撮影画像は、角膜曲率情報取得部130、位置決定部140、及び瞳孔位置取得部150のうちの少なくとも1つに送られる。典型的な例において、制御部11(アライメント制御部111等)は、画像補正部120により補正された撮影画像の送信先を、動作モードや処理フェーズに応じて切り替えるように構成される。
(角膜曲率情報取得部130)
角膜曲率情報取得部130は、前眼部カメラ60A及び60Bにより取得された2つの撮影画像(第1撮影画像)に基づいて、被検眼Eの角膜曲率情報(角膜曲率又は角膜曲率半径)を求める。
典型的な例において、角膜曲率情報取得部130は、非平行光の投影像に基づいて角膜曲率情報を求めるように構成される。この実施形態では、第2光投射部42が非平行光を前眼部Eaに投射するので、角膜曲率情報取得部130は、第2光投射部42により形成される投影像を利用する。
より詳しくは、角膜曲率情報取得部130は、前眼部カメラ60Aにより取得された撮影画像に描出された2以上の非平行光の投影像と、前眼部カメラ60Bにより取得された撮影画像に描出された2以上の非平行光の投影像との一方又は双方に基づいて、角膜曲率情報を求めることができる。図4に示すように、この実施形態に係る眼科装置1は、4つの第2光投射部42を備える。角膜曲率情報取得部130は、4つの第2光投射部42により形成される4つの投影像のうちの2つ以上に基づいて角膜曲率情報を求めることができる。典型的には、4つの投影像の全てが参照される。角膜曲率情報取得部130が実行する処理の例を以下に説明する。
前眼部カメラ60A及び60Bにより実質的に同時に取得された2つの撮影画像(前眼部像)の例を図5に示す。撮影画像200Aは前眼部カメラ60Aにより取得された前眼部像であり、撮影画像200Bは前眼部カメラ60Bにより取得された前眼部像である。ここで、撮影画像200A及び200Bは、画像補正部120により補正された前眼部像であってよい。
撮影画像200Aは、前眼部Eaを斜め方向から撮影して得られた画像である。撮影画像200Aには、被検眼Eの瞳孔Epに相当する瞳孔画像201Aと、第1光投射部41により形成されたプルキンエ像202Aと、4つの第2光投射部42により形成された4つの非平行光の投影像(プルキンエ像)203Aとが描出されている。
同様に、撮影画像200Bは、撮影画像200Aとは異なる斜め方向から前眼部Eaを撮影して得られた画像である。撮影画像200Bには、被検眼Eの瞳孔Epに相当する瞳孔画像201Bと、第1光投射部41により形成されたプルキンエ像202Bと、4つの第2光投射部42により形成された4つの非平行光の投影像(プルキンエ像)203Bとが描出されている。
本例において、撮影画像200A及び200Bは、対物レンズ51の光軸(つまり、データ取得光学系30の光軸、且つ第1光投射部41の光軸)と異なる方向からの撮影により取得された画像である。また、XYアライメントが実質的に合っているとき、プルキンエ像202A及び202Bは対物レンズ51の光軸上に形成される。
前眼部カメラ60Aの見込角(対物レンズ51の光軸に対する角度)と、前眼部カメラ60Bの見込角とは、それぞれ既知である。更に、撮影倍率も既知である。したがって、撮影画像200Aにおける任意の対象の描出位置と、撮影画像200Bにおける当該対象の描出位置とに基づいて、眼科装置1(前眼部カメラ60A及び60B)に対する当該対象の相対位置(実空間における3次元位置)を求めることができる(後述の位置決定部140の説明を参照)。
本例において、角膜曲率情報取得部130は、まず、撮影画像200Aを解析することで、4つの投影像203Aを探索する。この処理は、例えば、投影像203Aに相当する輝点(周囲と比較して高輝度の画素)を探索するための、撮影画像200Aの画素値に関する閾値処理を含む。それにより、投影像203Aが特定される。なお、アライメント状態等によっては、4つ全ての投影像203Aが特定されない場合もある。
投影像203Aが特定されたら、角膜曲率情報取得部130は、4つ(又はそれ未満の個数)の投影像203Aのラベリング処理を実行する。ラベリング処理は、各投影像203Aが、4つの非平行光(つまり、4つの第2光投射部42)のいずれに対応しているか特定するための処理である。ラベリング処理の手法の例を以下に説明する。なお、ラベリング処理の手法はこれら例に限定されない。
ラベリング処理の第1の例において、角膜曲率情報取得部130は、撮影画像200Aの画像フレームの所定位置に対する投影像203Aの相対位置に基づいて、当該投影像203Aに識別情報を付与することができる。この処理の基準となる所定位置の例として、画像フレームの中心、上端、下端、左端、右端などがある。
ラベリング処理の第2の例では、角膜曲率情報取得部130は、撮影画像200Aに描出された被検眼Eの所定部位に対する投影像203Aの相対位置に基づいて、当該投影像203Aに識別情報を付与することができる。この処理の基準となる所定部位の例として、瞳孔中心(瞳孔重心)、虹彩中心(虹彩重心)、疾患部などがある。
ラベリング処理の第3の例は、撮影画像200Aに2以上の投影像203Aが描出されている場合に適用可能である。角膜曲率情報取得部130は、撮影画像200Aに描出された2以上の投影像203Aの間の位置関係に基づいて、各投影像203Aに識別情報を付与することができる。
ラベリング処理の第4の例では、4つの投影像203を識別するために第2光投射部42の構成及び/又は制御を利用する。例えば、4つの第2光投射部42は、互いに異なる特性(光量、波長等)の光を出力するように構成される。或いは、4つの第2光投射部42は、異なる周波数で強度変調(点滅等)するように構成又は制御される。
ラベリング処理が完了したら、角膜曲率情報取得部130は、投影像203Aの位置に基づいて被検眼Eの角膜曲率情報を求める。2以上の投影像203Aが特定された場合、それらの位置関係に応じて角膜曲率又は角膜曲率半径を求めることができる。
そのために、角膜曲率情報取得部130は、例えば、次の処理を実行する:(1)ラベリングされたそれぞれの投影像203Aについて、所定の基準角膜曲率(例えば8mm)の場合における基準位置に対する偏位を求める処理;(2)2以上の投影像203Aについて求められた2以上の偏位と、前眼部カメラ60Aの見込角(対物レンズ51の光軸に対する角度)と、撮影倍率とに基づいて、角膜曲率又は角膜曲率半径を求める。
ここで、有限距離に配置された2以上の光源により形成される2以上のプルキンエ像(つまり、2以上の投影像203A)の間隔は、角膜曲率の他、アライメント状態の影響を受ける。特に、Zアライメントの状態が当該間隔に影響を与える。この影響を鑑み、前眼部カメラ60A及び600Bの見込角や撮影倍率から得られたアライメント(特にZアライメント)の状態を利用して、角膜曲率(又は角膜曲率半径)を補正することができる。
以上の処理は、撮影画像200Aのみに基づいて角膜曲率情報を求める場合の例である。同様の処理により、撮影画像200Bから角膜曲率情報を求めることができる。
これに対し、撮影画像200A及び200Bの双方に基づいて角膜曲率情報を求めることも可能である。その場合、例えば、角膜曲率情報取得部130は、投影像203Aそれぞれについて、撮影画像200Aにおける当該投影像203Aの描出位置と、撮影画像200Bにおける当該投影像203Aの描出位置と、前眼部カメラ60Aの見込角と、前眼部カメラ60Bの見込角と、撮影倍率とに基づいて、眼科装置1に対する当該投影像203Aの相対位置(実空間における3次元位置)を求めることができる。
なお、撮影画像200Aから投影像203Aが1つしか検出されなかった場合、アライメント制御部111によりアライメント調整を行った後に、角膜曲率情報取得部130により投影像203Aの探索を再度行うことができる。或いは、撮影画像200Aから投影像203Aが1つしか検出されなかった場合、角膜曲率情報取得部130は、後述のプルキンエ像と当該投影像203Aとに基づいて、角膜曲率情報を求めることができる。他の例において、撮影画像200Aから投影像203Aが1つしか検出されなかった場合、角膜曲率情報取得部130は、画像フレームの所定位置(又は被検眼Eの所定部位の描出位置)に対する当該投影像203Aの相対位置に基づいて、角膜曲率情報を求めることができる。
角膜曲率情報を求める手法は、例えば、角膜曲率情報の確度及び/又は精度、処理に掛かる時間、検査のスループットなど、所定のファクタを考慮して選択される。また、角膜曲率情報を求める手法(モード)を複数準備しておき、ユーザ又は眼科装置1がモードを選択できるように構成することが可能である。
以上のように、眼科装置1は、次の2つの機能の一方又は双方を備えていてよい:(1)4つの第2光投射部42により形成される4つの投影像のうちの2つ以上に基づいて、角膜曲率情報を求める機能;4つの第2光投射部42により形成される4つの投影像のうちの1つ以上と、第1光投射部41により形成されるプルキンエ像とに基づいて、角膜曲率情報を求める機能。
また、この実施形態では、データ取得光学系30と同軸に平行光を投射し、且つ、データ取得光学系30と非同軸に非平行光を投射しているが、これに限定されない。例えば、データ取得光学系30と同軸に非平行光を投射し、且つ、データ取得光学系30と非同軸に平行光を投射するように構成することができる。或いは、平行光と非平行光との双方をデータ取得光学系30と非同軸に投射するように構成することができる。
他の実施形態において、角膜曲率を計測するための2以上の光束が全て平行光束であってよい。この場合、アライメント(特にZアライメント)の状態が角膜曲率計測に与える影響が小さくなるため、アライメントの状態に応じた角膜曲率(又は角膜曲率半径)の補正を行う必要はない。
(位置決定部140)
位置決定部140は、前眼部カメラ60A及び60Bにより取得された2つの撮影画像と、角膜曲率情報取得部130により求められた角膜曲率情報とに基づいて、データ取得光学系30の移動目標位置を決定する。移動目標位置とは、アライメントにおけるデータ取得光学系30の移動先を表す位置である。
この実施形態の位置決定部140は、暫定位置決定部141と位置補正部142とを含む。
(暫定位置決定部141)
前眼部カメラ60A及び60Bのそれぞれにより取得される撮影画像には、第1光投射部41により形成される平行光の投影像(プルキンエ像)が描出される。暫定位置決定部141は、前眼部カメラ60A及び60Bにより取得された2つの撮影画像に描出された2つのプルキンエ像に基づいて、データ取得光学系30の暫定的移動目標位置を求める。
暫定的移動目標位置とは、位置補正部142に供給される移動目標位置である。換言すると、暫定的移動目標位置とは、位置補正部142により最終的な移動目標位置が得られる前の段階の移動目標位置である。
暫定位置決定部141は、前眼部カメラ60Aにより取得された撮影画像を解析してプルキンエ像を探索する。同様に、暫定位置決定部141は、前眼部カメラ60Bにより取得された撮影画像を解析してプルキンエ像を探索する。双方の撮影画像からプルキンエ像が検出されたとき、暫定位置決定部141は、暫定的移動目標位置を求める。以下、暫定的移動目標位置を決定するための一連の処理の例を説明する。
アライメント制御部111は、光投射光学系50を制御して前眼部Eaに平行光を投射させる。それにより、プルキンエ像が形成される。プルキンエ像は、角膜曲率半径の2分の1の距離だけ角膜頂点から軸方向(Z方向)に偏位した位置に形成される。標準的な生体眼では、角膜曲率半径は7.8〜8.0ミリメートル程度であり、プルキンエ像は角膜頂点から網膜側に3.9〜4.0ミリメートル程度偏位した位置に形成される。暫定位置決定部141は、標準的な角膜曲率情報を参照して暫定的移動目標位置を求める。本例では、角膜曲率半径の標準値を8mmとし、これが参照される。
平行光が投射されている前眼部Eaが、2つの前眼部カメラ60A及び60Bによって実質的に同時に撮影される。2つの前眼部カメラ60A及び60Bにより実質的に同時に取得された2つの撮影画像は、必要に応じて画像補正部120による補正を受け、暫定位置決定部141に入力される。
暫定位置決定部141は、2つの撮影画像のそれぞれを解析することでプルキンエ像を探索する。この探索処理は、例えば従来と同様に、プルキンエ像に相当する輝点(高輝度の画素)を検出するための、画素値に関する閾値処理を含む。
暫定位置決定部141は、プルキンエ像として検出された画像領域における代表点の位置を求めることができる。代表点は、例えば、当該画像領域の中心点又は重心点であってよい。この場合、暫定位置決定部141は、例えば、当該画像領域の周縁の近似円又は近似楕円を求める処理と、この近似円又は近似楕円の中心を求める処理とを実行するように構成される。或いは、暫定位置決定部141は、当該画像領域内の画素のうちから閾値を超える画素値(輝度値)を有する画素を特定する処理と、特定された1又は2以上の画素の重心位置を求める処理とを実行するように構成されてよい。
前眼部カメラ60A及び60Bにより取得された2つの撮影画像のそれぞれにおけるプルキンエ像の位置が特定されると、暫定位置決定部141は、これらプルキンエ像の位置に基づいて暫定的移動目標位置を求める。暫定的移動目標位置は、例えば、X方向の位置(X座標値)と、Y方向の位置(Y座標値)と、Z方向の位置(Z座標値)とを含む。なお、暫定的移動目標位置は、X座標値、Y座標値及びZ座標値のうちのいずれか1つ以上を含んでもよい。また、3次元直交座標系(XYZ座標系)以外の座標系を用いて暫定的移動目標位置を定義してもよい。
前述したように、暫定位置決定部141は、実質的に同時に取得された2つの撮影画像のそれぞれからプルキンエ像を特定する。これら撮影画像(前眼部像)の例が図5である。撮影画像200Aは、前眼部カメラ60Aにより取得された前眼部像である。暫定位置決定部141は、撮影画像200Aを解析してプルキンエ像202Aを特定する。撮影画像200Bは前眼部カメラ60Bにより取得された前眼部像である。暫定位置決定部141は、撮影画像200Bを解析してプルキンエ像202Bを特定する。
前述したように、前眼部カメラ60A及び60Bの見込角(対物レンズ51の光軸に対する角度)は既知であり、撮影倍率も既知である。暫定位置決定部141は、撮影画像200A内のプルキンエ像202Aの位置と撮影画像200B内のプルキンエ像202Bの位置とに基づいて、眼科装置1(前眼部カメラ60A及び60B)に対するプルキンエ像の相対位置(実空間における3次元位置)を求めることができる。この処理について図3を参照しつつ説明する。
2つの前眼部カメラ60A及び60Bの間の距離(基線長)を「B」で表す。2つの前眼部カメラ60A及び60Bを結ぶ基線と、前眼部Eaに形成されたプルキンエ像Pとの間の距離(撮影距離)を「H」で表す。また、前眼部カメラ60Aと、その画面平面との間の距離(画面距離)を「f」で表す。同様に、前眼部カメラ60Bと、その画面平面との間の距離も「f」で表す。
このような配置状態において、前眼部カメラ60A及び60Bによる撮影画像の分解能は次式で表される。ここで、Δpは画素分解能を表す。
XY方向の分解能(平面分解能):ΔXY=H×Δp/f
Z方向の分解能(奥行き分解能):ΔZ=H×H×Δp/(B×f)
暫定位置決定部141は、2つの前眼部カメラ60A及び60Bの位置(既知である)と、2つの撮影画像においてプルキンエ像Pに相当する位置とに対して、図3に示す配置関係(見込角等)を考慮した公知の三角法を適用することにより、プルキンエ像Pの3次元位置を算出する。
(位置補正部142)
位置補正部142は、角膜曲率情報取得部130により取得された角膜曲率情報に基づいて、暫定位置決定部141により求められた暫定的移動目標位置を補正する。それにより、位置決定部140の処理結果である移動目標位置が得られる。
図6を参照しつつ、位置補正部142が実行する処理の例を説明する。図6には、3つのケース(1)〜(3)が示されている。ここで、角膜曲率半径をrで表し、角膜曲率半径の標準値(例えば8mm)を「r0」で表す。また、データ取得光学系30の光軸を符号「30a」で示す。符号「51」は対物レンズである。
なお、標準値は単一の値である必要はなく、角膜曲率半径の値の区間(つまり範囲)でもよい。この区間は、例えば、連結区間であり、且つ、閉区間又は開区間である。
ケース(1)は、被検眼Eの角膜曲率半径r=r1が標準値r0よりも小さい場合である。或いは、ケース(1)は、被検眼Eの角膜曲率半径r=r1が標準区間に含まれる任意の値よりも小さい場合である。ケース(2)は、被検眼Eの角膜曲率半径rが標準値r0に等しい場合である。或いは、ケース(2)は、被検眼Eの角膜曲率半径rが標準区間に含まれる場合である。ケース(3)は、被検眼Eの角膜曲率半径r=r2が標準値r0よりも大きい場合である。或いは、ケース(3)は、被検眼Eの角膜曲率半径r=r2が標準区間に含まれる任意の値よりも大きい場合である。以下、標準値r0が単一の値である場合について説明するが、標準区間が適用される場合も同様の処理を実行できる。
まず、標準的なケース(2)について説明する。前述したように、ケース(2)は、被検眼Eの角膜曲率半径rが標準値r0に等しい場合である(r=r0)。この場合に形成されるプルキンエ像を「P0」で示す。
従来のアライメントでは、プルキンエ像P0に基づいて、被検眼Eの角膜頂点位置Lから−Z方向に所定の作動距離WDだけ偏位した位置に、対物レンズ51が配置される。このとき、角膜曲率半径r=r0の2分の1の距離(r0/2)だけプルキンエ像P0から−Z方向に偏位した位置に角膜頂点が配置されているとの仮定の下、この角膜頂点位置Lから−Z方向に作動距離WDだけ偏位した位置が移動目標位置に設定される。この実施形態では、距離「r0/2+WD」だけプルキンエ像P0から−Z方向に偏位した位置が、暫定的移動目標位置に設定される。
次に、ケース(1)について説明する。前述したように、ケース(1)は、被検眼Eの角膜曲率半径r=r1が標準値r0よりも小さい場合である(r=r1<r0)。この場合に形成されるプルキンエ像を「P1」で示す。
従来のアライメントでは、角膜曲率情報の個人差を考慮しないため、距離「r0/2+WD」だけプルキンエ像P1から−Z方向に偏位した位置が移動目標位置に設定される。よって、角膜頂点位置Lと対物レンズ51との間の距離が、作動距離WDよりもΔZ1だけ長くなる。ここで、ΔZ1は、実質的に「(r0−r1)/2」に等しい。この実施形態では、距離「r0/2+WD」だけプルキンエ像P1から−Z方向に偏位した位置が、暫定的移動目標位置に設定される。
次に、ケース(3)について説明する。前述したように、ケース(3)は、被検眼Eの角膜曲率半径r=r2が標準値r0よりも大きい場合である(r=r2>r0)。この場合に形成されるプルキンエ像を「P2」で示す。
従来のアライメントでは、角膜曲率情報の個人差を考慮しないため、距離「r0/2+WD」だけプルキンエ像P2から−Z方向に偏位した位置が移動目標位置に設定される。よって、角膜頂点位置Lと対物レンズ51との間の距離が、作動距離WDよりもΔZ2だけ短くなる。ここで、ΔZ2は、実質的に「(r2−r0)/2」に等しい。この実施形態では、距離「r0/2+WD」だけプルキンエ像P2から−Z方向に偏位した位置が、暫定的移動目標位置に設定される。
位置補正部142は、角膜曲率情報取得部130により取得された角膜曲率情報(角膜曲率半径r)と標準値r0とを比較する。
角膜曲率半径rが標準値r0に等しいと判定された場合(つまり、ケース(2)に該当する場合)、位置補正部142は、暫定位置決定部141により求められた暫定的移動目標位置(距離「r0/2+WD」だけプルキンエ像P0から−Z方向に偏位した位置)に対する補正を行わない。つまり、角膜曲率半径rが標準値r0に等しいと判定された場合、暫定的移動目標位置がそのまま移動目標位置に設定される。なお、角膜曲率情報と異なる条件に応じて暫定的移動目標位置を補正することは可能である。
角膜曲率半径rが標準値r0よりも小さいと判定された場合(つまり、ケース(1)に該当する場合)、位置補正部142は、暫定位置決定部141により求められた暫定的移動目標位置(距離「r0/2+WD」だけプルキンエ像P1から−Z方向に偏位した位置)を補正する。具体的には、位置補正部142は、この暫定的移動目標位から+Z方向にΔZ1(=(r0−r1)/2)だけ偏位した位置を移動目標位置に設定する。それにより、実質的に、角膜頂点位置Lから作動距離WDだけ離れた位置が移動目標位置として設定される。
角膜曲率半径rが標準値r0よりも大きいと判定された場合(つまり、ケース(3)に該当する場合)、位置補正部142は、暫定位置決定部141により求められた暫定的移動目標位置(距離「r0/2+WD」だけプルキンエ像P2から−Z方向に偏位した位置)を補正する。具体的には、位置補正部142は、この暫定的移動目標位から+Z方向にΔZ2(=(r2−r0)/2)だけ偏位した位置を移動目標位置に設定する。それにより、実質的に、角膜頂点位置Lから作動距離WDだけ離れた位置が移動目標位置として設定される。
このように、従来のアライメントでは、角膜曲率情報の個人差により移動目標位置(特にZアライメントの移動目標位置)に誤差が生じるが、この実施形態の補正処理によれば、角膜曲率情報の個人差にかかわらず、被検眼Eの角膜頂点位置Lから作動距離WDだけ離れた位置にデータ取得光学系30を配置することができる。
(瞳孔位置取得部150)
瞳孔位置取得部150は、前眼部カメラ60A及び60Bにより取得された2つの撮影画像のそれぞれを解析して瞳孔画像を探索する。双方の撮影画像から瞳孔画像が検出されたとき、瞳孔位置取得部150は、被検眼Eの瞳孔Epの3次元位置を求める。
瞳孔位置取得部150は、瞳孔画像検出部151と瞳孔位置算出部152とを含む。
(瞳孔画像検出部151)
瞳孔画像検出部151は、(画像補正部120により歪曲収差が補正された)撮影画像を解析することで、被検眼Eの瞳孔Epに相当する当該撮影画像中の画像領域(瞳孔画像)を検出する。
まず、瞳孔画像検出部151は、撮影画像の画素値(輝度値など)の分布に基づいて瞳孔画像を特定する。一般に瞳孔は他の部位よりも低い輝度で表現されるので、低輝度の画像領域を探索することによって瞳孔画像を特定することができる。このとき、瞳孔の形状を考慮して瞳孔画像を特定するようにしてもよい。例えば、略円形かつ低輝度の画像領域を探索することによって瞳孔画像を検出することができる。
(瞳孔位置算出部152)
瞳孔位置算出部152は、瞳孔画像検出部151により検出された瞳孔画像に基づいて、被検眼Eの瞳孔Epの3次元位置を求める。本例では、被検眼Eの3次元位置として、被検眼Eの瞳孔中心の3次元位置を求める。なお、被検眼Eの3次元位置の定義はこれに限定されない。例えば、瞳孔重心、虹彩中心、虹彩重心、疾患部等、任意の特徴点の位置によって、被検眼Eの3次元位置を定義することができる。
瞳孔位置算出部152は、瞳孔画像検出部151により検出された瞳孔画像の中心位置を特定する。上記のように瞳孔は略円形であるので、瞳孔画像の輪郭を検出し、この輪郭の近似楕円の中心位置を特定し、これを瞳孔中心に設定することができる。また、瞳孔画像の重心を求め、この重心位置を瞳孔中心としてもよい。
なお、他の特徴点が適用される場合であっても、上記と同様に撮影画像の画素値の分布に基づいて当該特徴点の位置を特定することが可能である。
更に、瞳孔位置算出部152は、2つの前眼部カメラ60A及び60Bの位置(見込角)と、撮影倍率と、2つの撮影画像から検出された2つの瞳孔中心の位置とに基づいて、被検眼Eの瞳孔中心の3次元位置を求める。この処理は、プルキンエ像の3次元位置の特定と同様にして実行可能である(図3を参照)。
データ処理部12は、例えば、プロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ等を含む。ハードディスクドライブ等の記憶装置には、上記した処理をプロセッサに実行させるコンピュータプログラムが予め格納されている。
〈動作〉
眼科装置1の動作について説明する。眼科装置1の動作例を図7A及び図7Bに示す。なお、被検者の患者情報(患者ID、患者氏名等)の入力や、検査種別(検査モード)の選択などは事前に行われる。以下、主として、アライメントに関する動作について説明する。
(S1:平行光の投射を開始する)
アライメント制御部111は、第1光投射部41を制御して平行光を出力させる。それにより、平行光が前眼部Eaに投射される。
更に、この段階で、アライメント制御部111は、第2光投射部42を制御して非平行光を出力させてもよい。それにより、非平行光が前眼部Eaに投射される。
(S2:前眼部カメラでの撮影を開始する)
アライメント制御部111は、前眼部カメラ60A及び60Bを制御して前眼部Eaの撮影を開始させる。
前眼部カメラ60A及び60Bのそれぞれは、所定の時間間隔で画像取得を繰り返し、取得された撮影画像を逐次に制御部11に送る。アライメント制御部111は、前眼部カメラ60A及び60Bにより実質的に同時に取得された一対の撮影画像(前眼部像)を、データ処理部12に逐次に送る。
データ処理部12は、逐次に入力される一対の前眼部像に対し、以下のような処理を逐次に適用する。任意的ではあるが、画像補正部120は、前眼部像の歪みを収差情報に基づいて補正することができる。
(S3:プルキンエ像を検出する)
暫定位置決定部141は、プルキンエ像を特定するために、(歪みが補正された)前眼部像を解析する。
この段階までに非平行光の投射が開始されていない場合、プルキンエ像は前眼部像中の単一の輝点として検出される。
これに対し、この段階までに非平行光の投射が開始された場合、プルキンエ像は、前眼部像の中心位置又はその近傍に位置する輝点として検出される。このとき、例えば、前眼部像中の複数の輝点の位置関係、画像フレームの所定位置に対する相対位置、又は、被検眼Eの所定部位の画像に対する相対位置に基づいて、複数の輝点のうちからプルキンエ像を選択してもよい。
(S4:プルキンエ像の検出に成功したか?)
前眼部像からプルキンエ像が検出された場合(例えば、一対の前眼部像の双方からプルキンエ像が検出された場合)(S4:Yes)、処理はステップS5に移行する。この場合、暫定位置決定部141は、プルキンエ像における代表点を特定し、その位置を求めることができる。
前眼部像からプルキンエ像が検出されなかった場合(例えば、一対の前眼部像の少なくとも一方からプルキンエ像が検出されなかった場合)(S4:No)、処理はステップS10に移行する。
(S5:暫定的移動目標位置を決定する)
ステップS4において前眼部像からプルキンエ像が検出された場合(S4:Yes)、暫定位置決定部141は、検出されたプルキンエ像に基づいて暫定的移動目標位置を求める。本例では、暫定位置決定部141は、一対の前眼部像から検出された一対のプルキンエ像に基づいて、プルキンエ像の3次元位置(X座標値、Y座標値、Z座標値)を求めることができる。プルキンエ像のX座標値及びY座標値は、そのまま暫定的移動目標位置に用いられる。
更に、暫定位置決定部141は、プルキンエ像のZ座標値と、既定の作動距離(WD)と、既定の角膜曲率半径の標準値(r0)とに基づいて、暫定的移動目標位置のZ座標値を求める(図6を参照)。これにより、暫定的移動目標位置を表す3次元座標値が得られる。
(S6:暫定的移動目標位置に光学系を移動する)
アライメント制御部111は、ステップS5で求められた暫定的移動目標位置のX座標値及びY座標値が表す位置に、対物レンズ51の光軸(データ取得光学系30の光軸)を移動するように、第1駆動部80Aを制御する。
更に、アライメント制御部111は、ステップS5で求められた暫定的移動目標位置のZ座標値が表す位置に、対物レンズ51(データ取得光学系30)を配置するように、第1駆動部80Aを制御する。
(S7:暫定的なアライメントが完了したか?)
ステップS6の暫定的なアライメントが完了するまで、ステップS3〜S7が繰り返し実行される。この一連の動作は、例えば、データ取得光学系30の光軸が既定の許容範囲内に入るまで繰り返される。
ステップS6の暫定的なアライメントが完了するすると(S7:Yes)、処理はステップS20に移行する。
(S10:瞳孔画像を検出する)
ステップS4において前眼部像からプルキンエ像が検出されなかった場合(S4:No)、瞳孔画像検出部1511は、瞳孔画像を検出するために、(歪みが補正された)前眼部像を解析する。
(S11:瞳孔画像の検出に成功したか?)
前眼部像から瞳孔画像が検出された場合(例えば、一対の前眼部像の双方から瞳孔画像が検出された場合)(S11:Yes)、処理はステップS12に移行する。
一方、前眼部像から瞳孔画像が検出されなかった場合(例えば、一対の前眼部像の少なくとも一方から瞳孔画像が検出されなかった場合)(S11:No)、処理はステップS13に移行する。
(S12:瞳孔アライメントを行う)
前眼部像から瞳孔画像が検出された場合(S11:Yes)、瞳孔位置算出部152は、検出された瞳孔画像に基づいて、被検眼Eの瞳孔Epの位置を求める。本例では、瞳孔位置算出部152は、一対の前眼部像から検出された一対の瞳孔画像(一対の瞳孔中心)に基づいて、被検眼Eの瞳孔中心の3次元位置(X座標値、Y座標値、Z座標値)を求める。
アライメント制御部111は、瞳孔位置算出部152により求められた瞳孔中心のX座標値及びY座標値に対応する位置に、対物レンズ51の光軸を配置するように、第1駆動部80Aを制御する。更に、アライメント制御部111は、瞳孔中心のZ座標値と既定の作動距離(WD)と既定の角膜曲率半径の標準値(r0)とに応じた位置に、対物レンズ51(データ取得光学系30)を配置するように、第1駆動部80Aを制御する。このような瞳孔アライメントが完了すると、処理はステップS3に戻る。
(S13:手動アライメントを行う)
前眼部像から瞳孔画像が検出されなかった場合(S11:No)、アライメントモードが手動アライメントモードに切り替わる。
手動アライメントモードでは、アライメント制御部111は、前眼部カメラ60A及び/又は60Bにより取得される前眼部像(又は、データ取得光学系30等により取得される前眼部Eaの観察画像)が、表示部91にリアルタイムで動画として表示される。
ユーザは、データ取得光学系30を移動するために、操作部92を操作する。このとき、アライメント制御部111は、操作部92から入力される操作信号に応じて第1駆動部80Aを制御する。手動アライメントが完了すると、処理はステップS3に戻る。
(S20:非平行光の投影像を検出する)
ステップS6の暫定的なアライメントが完了すると(S7:Yes)、角膜曲率情報取得部130は、暫定的なアライメントの完了後に前眼部カメラ60A及び60Bにより取得された一対の撮影画像を解析することで、第2光投射部42から出力される非平行光の投影像を検出する。ここで、撮影画像は、画像補正部120による補正を受けたものでもよい。
なお、この段階までに非平行光の投射が開始されていない場合、アライメント制御部111は、第2光投射部42を制御して非平行光を出力させる。その後に前眼部カメラ60A及び60Bにより取得された一対の撮影画像が角膜曲率情報取得部130に提供され、非平行光の投影像が検出される。
(S21:角膜曲率半径を算出する)
角膜曲率情報取得部130は、ステップS20で検出された非平行光の投影像に基づいて、被検眼Eの角膜曲率半径rを算出する。
(S22:暫定的移動目標位置の補正は必要か?)
位置補正部142は、ステップS21で算出された角膜曲率半径rに基づいて、暫定的移動目標位置の補正が必要か否か判定する。
例えば、位置補正部142は、被検眼Eの角膜曲率半径rを標準値r0(又は標準区間)と比較する。角膜曲率半径rが標準値r0に等しい場合(又は、角膜曲率半径rが標準区間に含まれる場合)、位置補正部142は、補正は不要と判定する(S22:No)。この判定結果は、図6のケース(2)に該当する。補正は不要と判定された場合、処理はステップS25に移行する。
一方、角膜曲率半径rが標準値r0に等しくない場合(又は、角膜曲率半径rが標準区間に含まれない場合)、位置補正部142は、補正が必要と判定する(S22:Yes)。この判定結果は、図6のケース(1)又は(3)に該当する。補正が必要と判定された場合、処理はステップS23に移行する。
(S23:補正量を算出する)
補正が必要と判定された場合(S22:Yes)、位置補正部142は、ステップS21で算出された角膜曲率情報に基づいて、データ取得光学系30の現在位置(暫定的移動目標位置)を補正する。この補正量は、例えば図6に示すように、ケース(1)の場合には「ΔZ1」であり、ケース(3)の場合には「ΔZ2」である。それにより、最終的な移動目標位置が決定される。
(S24:光学系の位置を補正する)
アライメント制御部111は、ステップS23で算出された補正量だけデータ取得光学系30を移動するように、第1駆動部80Aを制御する。それにより、被検眼Eの角膜頂点位置Lから作動距離WDだけ離れた位置にデータ取得光学系30が配置される。
(S25:被検眼の測定/撮影)
ステップS24のアライメント位置の補正が完了すると、制御部11は、データ取得光学系30を制御することにより、被検眼Eの特性の測定、及び/又は、被検眼Eの撮影を実行させる。UI制御部112は、データ取得光学系30により取得された測定データ及び/又は撮影画像を表示部91に表示させる。また、制御部11は、測定データ及び/又は撮影画像を記憶装置に記憶させることができる。以上で、本例における動作に関する処理は終了となる。
〈作用・効果〉
実施形態に係る眼科装置の作用及び効果の幾つかについて説明する。
実施形態に係る眼科装置は、データ取得光学系と、光投射部と、2以上の撮影部と、角膜曲率情報取得部と、位置決定部とを含む。
データ取得光学系は、被検眼のデータを取得するための構成を有する。例示的な眼科装置1では、データ取得光学系30がその機能を担っている。
光投射部は、被検眼の前眼部に異なる方向から2以上の光を投射する。例示的な眼科装置1では、第1光投射部41及び第2光投射部42がその機能を担っている。
2以上の撮影部は、被検眼の前眼部を異なる方向から撮影するための構成を有する。例示的な眼科装置1では、前眼部カメラ60A及び60Bがその機能を担っている。
角膜曲率情報取得部は、2以上の撮影部により取得された2以上の第1撮影画像に基づいて被検眼の角膜曲率情報を求めるための構成を有する。例示的な眼科装置1では、角膜曲率情報取得部130がその機能を担っている。
位置決定部は、2以上の撮影部により取得された2以上の第2撮影画像と角膜曲率情報取得部により取得された角膜曲率情報とに基づいてデータ取得光学系の移動目標位置を決定するための構成を有する。例示的な眼科装置1では、位置決定部140がその機能を担っている。なお、第2撮影画像は、第1撮影画像と同じ画像でもよいし、第1撮影画像と異なる画像でもよい。
このように構成された実施形態によれば、被検眼の角膜曲率を考慮してデータ取得光学系の移動目標位置(アライメントの目標位置)を決定することができる。したがって、角膜曲率の個人差にかかわらず、高い精度でアライメントを行うことが可能である。
このような利点は、眼圧計やスペキュラーマイクロスコープのように高精度のアライメントが要求される眼科装置において特に有効と思われる。なお、当該利点は他種別の眼科装置においても有効である。
実施形態において、光投射部は、前眼部に平行光を投射する第1光投射部を含んでいてよい。例示的な眼科装置1では、第1光投射部41がその機能を担っている。
更に、位置決定部は、暫定位置決定部と位置補正部とを含んでいてよい。
暫定位置決定部は、2以上の第2撮影画像に描出された平行光の投影像に基づいてデータ取得光学系の暫定的移動目標位置を求めるための構成を有する。例示的な眼科装置1では、暫定位置決定部141がその機能を担っている。
位置補正部は、角膜曲率情報取得部により取得された角膜曲率情報に基づいて、暫定位置決定部により決定された暫定的移動目標位置を補正するための構成を有する。例示的な眼科装置1では、位置補正部142がその機能を担っている。
このように構成された実施形態によれば、第1光投射部により投射される平行光の投影像であるプルキンエ像を用いたアライメントが可能となる。このアライメントにおいて、プルキンエ像から得られた暫定的移動目標位置を、被検眼の角膜曲率に応じて補正することができる。したがって、角膜曲率の個人差がアライメント精度に悪影響を与えることがない。
実施形態に係る眼科装置は、データ取得光学系を移動する駆動部と、制御部とを含んでいてよい。ここで、駆動部は、被検眼とデータ取得光学系とを相対的に移動するように構成されてよい。例示的な眼科装置1では、第1駆動部80A及び/又は第2駆動部80が駆動部の機能を担っている。また、例示的な眼科装置1では、制御部11(特にアライメント制御部111)が制御部の機能を担っている。
制御部は、暫定位置決定部により決定された暫定的移動目標位置にデータ取得光学系を移動するために駆動部の第1制御を実行する。
駆動部の第1制御の後に、2以上の撮影部による前眼部の画像が得られる。角膜曲率情報取得部は、駆動部の第1制御の後に2以上の撮影部により取得された2以上の第1撮影画像に基づいて角膜曲率情報を求める。
駆動部の第1制御の後に取得された2以上の第1撮影画像から求められた角膜曲率情報に基づいて、位置補正部は、データ取得光学系の移動目標位置を決定する。
暫定位置決定部により決定された暫定的移動目標位置から、位置補正部により決定された移動目標位置にデータ取得光学系を移動するために、制御部は、駆動部の第2制御を実行する。
このように構成された実施形態によれば、プルキンエ像を基準とした暫定的移動目標位置にデータ取得光学系を移動し、その後に2以上の前眼部像を取得し、これら前眼部像に基づき被検眼の角膜曲率情報を取得し、この角膜曲率情報に基づきデータ取得光学系の位置を補正することができる。
このような一連の処理によれば、プルキンエ像を基準としたアライメントの後に取得された2以上の前眼部像から角膜曲率情報を求めているので、高い精度の角膜曲率情報を容易に取得することができる。
例えば、角膜曲率情報を取得するために複数の非平行光が前眼部に投射される場合、複数の投影像の相対位置や、各投影像のサイズが、被検眼と撮影部との相対位置(換言すると、アライメント状態)に応じて変化するため、非平行光の投影像から角膜曲率情報を求める処理に誤差が混入しやすい。
一方、この実施形態では、被検眼と撮影部との位置関係を調整した後に2以上の前眼部像を取得し、それらに基づき角膜曲率情報を求めている。よって、誤差が混入する可能性を低減することができる。また、被検眼と撮影部との位置関係の不確定性が複数の投影像の相対位置に与える影響が低減されるので、角膜曲率情報を算出するためのアルゴリズムの簡略化や、演算処理の短時間化を図ることができる。
実施形態において、暫定位置決定部は、2以上の撮影部により取得された2以上の第2撮影画像を解析して平行光の投影像を探索し、平行光の投影像が検出されたとき、暫定的移動目標位置を求めるように構成されてよい。
一方、投影像が検出されなかったとき、瞳孔位置取得部は、2以上の撮影部により取得された2以上の第3撮影画像を解析して瞳孔画像を探索することができる。瞳孔画像が検出されたとき、瞳孔位置取得部は、被検眼の瞳孔の3次元位置を求めることができる。例示的な眼科装置1では、瞳孔位置取得部150がその機能を担っている。
制御部は、瞳孔位置取得部により求められた被検眼の瞳孔の3次元位置に応じた位置にデータ取得光学系を移動するために、駆動部の第3制御を実行することができる。
更に、暫定位置決定部は、駆動部の第3制御の後に2以上の撮影部により取得された2以上の撮影画像を解析することで、平行光の投影像を再度探索することができる。
このように構成された実施形態によれば、プルキンエ像が検出されないときに、瞳孔を基準としたアライメントを実行し、プルキンエ像を再度探索することができる。したがって、プルキンエ像を基準としたアライメントを、より確実に行うことができる。
実施形態に係る眼科装置は、前眼部の観察画像を取得する観察画像取得部と、操作部とを含んでいてよい。例示的な眼科装置1では、前眼部カメラ60A及び60Bの少なくとも一方が観察画像取得部の機能を担っている。なお、観察画像取得部は、データ取得光学系30に含まれていてもよいし、データ取得光学系30と同軸に設けられていてもよい。また、例示的な眼科装置1では、操作部92が操作部の機能を担っている。
瞳孔位置取得部により瞳孔画像が検出されなかったとき、制御部は、観察画像取得部により取得された観察画像を表示手段に表示させることができる。更に、制御部は、操作部を用いてユーザが行った操作に応じて駆動部を制御することができる。つまり、データ取得光学系の移動をユーザが任意に行うことができる。
例示的な眼科装置1では、表示部91が表示手段の機能を担っている。なお、表示手段は、眼科装置に含まれていてもよいし、眼科装置に接続された周辺機器であってもよい。
暫定位置決定部は、データ取得光学系の移動操作の後に2以上の撮影部により取得された2以上の撮影画像を解析することで、平行光の投影像を再度探索することができる。
このように構成された実施形態によれば、瞳孔画像が見つからない場合に、ユーザが手動でアライメントを行い、その完了後にプルキンエ像を再度探索することができる。したがって、プルキンエ像を基準としたアライメントを、より確実に行うことができる。
実施形態において、光投射部は、前眼部に非平行光を投射する第2光投射部を含んでいてよい。例示的な眼科装置1では、第2光投射部42がその機能を担っている。
更に、角膜曲率情報取得部は、少なくとも、第1撮影画像に描出された非平行光の投影像に基づいて、角膜曲率情報を求めることができる。例えば、角膜曲率情報取得部は、第1撮影画像に描出された非平行光の投影像に基づいて、角膜曲率情報を求めるように構成されてよい。或いは、角膜曲率情報取得部は、第1撮影画像に描出された非平行光の投影像及び平行光の投影像に基づいて、角膜曲率情報を求めるように構成されてよい。
実施形態において、第2光投射部は、前眼部に異なる方向から2以上の非平行光を投射するよう構成されてよい。この場合、角膜曲率情報取得部は、第1撮影画像に描出された2以上の非平行光の投影像に基づいて角膜曲率情報を求めるように構成されてよい。
実施形態において、光投射部は、2以上の光のうちの1の光をデータ取得光学系の光路を通じて前眼部に投射するように構成されてよい。例示的な眼科装置1では、第1光投射部41がそのように構成されている。
実施形態に係る眼科装置は、データ取得光学系を移動する駆動部と、位置決定部により決定された移動目標位置に基づいて駆動部を制御する制御部とを含んでいてよい。
ここで、駆動部は、被検眼とデータ取得光学系とを相対的に移動するように構成されてよい。例示的な眼科装置1では、第1駆動部80A及び/又は第2駆動部80が駆動部の機能を担っている。また、例示的な眼科装置1では、制御部11(特にアライメント制御部111)が制御部の機能を担っている。
このように構成された実施形態によれば、位置決定部により決定された移動目標位置にデータ取得光学系を移動する処理を自動で行うことができる。つまり、オートアライメントを実現することができる。
実施形態に係る眼科装置は、位置決定部により決定された移動目標位置に基づく情報を表示手段に表示させる制御部と、操作部と、操作部を用いて行われた操作に応じてデータ取得光学系を移動する駆動部とを含んでいてよい。
例示的な眼科装置1では、表示部91が表示手段の機能を担っている。なお、表示手段は、眼科装置に含まれていてもよいし、眼科装置に接続された周辺機器であってもよい。また、例示的な眼科装置1では、制御部11(特にアライメント制御部111)が制御部の機能を担っている。また、例示的な眼科装置1では、操作部92が操作部の機能を担っている。また、駆動部は、被検眼とデータ取得光学系とを相対的に移動するように構成されてよい。例示的な眼科装置1では、第1駆動部80A及び/又は第2駆動部80が駆動部の機能を担っている。なお、駆動部は、電動制御される構成には限定されず、操作部に印加された力を伝達してデータ取得光学系を移動するよう構成されたものでもよい。
このように構成された実施形態によれば、ユーザは、移動目標位置を示す情報を参照して手動でアライメントを行うことができる。ここで、移動目標位置を示す情報は、例えば、移動目標位置の方向を示す画像又はテキスト情報、移動目標位置までの距離を示す画像又はテキスト情報、又は、移動目標位置を示す画像などを含んでよい。
実施形態に係る処理を実現するためのコンピュータプログラムを、コンピュータによって読み取り可能な任意の記録媒体に記憶させることができる。この記録媒体としては、例えば、半導体メモリ、光ディスク、光磁気ディスク(CD−ROM/DVD−RAM/DVD−ROM/MO等)、磁気記憶媒体(ハードディスク/フロッピー(登録商標)ディスク/ZIP等)などを用いることが可能である。
また、インターネットやLAN等のネットワークを通じてコンピュータプログラムを送受信することも可能である。
以上に説明した態様は、この発明を実施するための例に過ぎない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加等)を施すことが可能である。