JP6927866B2 - 保護フィルム用粘着剤組成物及び保護フィルム - Google Patents
保護フィルム用粘着剤組成物及び保護フィルム Download PDFInfo
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Description
保護フィルムは、光学部材の表面に積層されて、その光学部材の表面が汚染されたり損傷したりしないよう保護し、表面保護が不要となった段階で光学部材から剥離除去される。そのため、保護フィルムには、剥離後に光学部材(被着体)の表面を汚染しないこと(耐汚染性)が求められる。
帯電防止性に優れ、被保護体への汚染性が低減された粘着剤組成物として、アルカリ金属塩を含み、(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加物15重量%〜100重量%をモノマー成分として使用した粘着剤組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
また、アルキレンオキシ基とビニル基とを有するシリコーン化合物を、可視又は紫外の放射線で硬化させる粘着剤組成物が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
耐汚染性を更に向上させる為には、例えば、ジメチルポリシロキサン化合物等の帯電防止助剤及び帯電防止剤の添加量を減らすことが考えられる。しかしながら、単に帯電防止助剤又は帯電防止剤の添加量を減らした場合、帯電防止性が低下する傾向があるため、保護フィルムを剥離除去した際に、静電気が発生しやすくなり、液晶表示装置等の不具合が生じる可能性がある。そのため、従来の粘着剤組成物では、耐汚染性と帯電防止性との両立を高いレベルで維持することが困難であった。
<1>少なくとも架橋性官能基を有する樹脂(A)と、
架橋剤(B)と
分子内に重合性官能基及びアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物(C)と、
帯電防止剤(D)と、
光重合開始剤(E)と、
を含む、保護フィルム用粘着剤組成物。
<2> 前記シリコーン化合物(C)の含有量は、前記樹脂(A)100質量部に対して0.1質量部〜2.5質量部である、<1>に記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
<3> 前記シリコーン化合物(C)は、下記構造式(1)で表される構造を含む、<1>又は<2>に記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
<5> 更に、多官能(メタ)アクリルモノマー(F)を含む、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
<6> 光学部材に用いられる、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
<7> <1>〜<6>のいずれか1つに記載の保護フィルム用粘着剤組成物の硬化物である粘着剤層と、基材と、を有する保護フィルム。
なお、本発明において、数値範囲における「〜」は、「〜」の前後の数値を含むことを意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する該複数の物質の合計量を意味する。
(メタ)アクリル系樹脂又は (メタ)アクリル系オリゴマーにおける主成分とは、樹脂又はオリゴマーを形成するモノマー成分の中で最も含有率(質量%)が多いことを意味する。例えば、(メタ)アクリル系樹脂の場合、主成分となる(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来する構成単位の含有率が全構成単位の50質量%以上であることをいう。
本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の少なくとも一方を意味する。
本発明の保護フィルム用粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤組成物」ともいう。)は、少なくとも架橋性官能基を有する樹脂(A)と、
架橋剤(B)と、
分子内に重合性官能基及びアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物(C)(以下、「特定シリコーン化合物(C)」ともいう。)と、
帯電防止剤(D)と、
光重合開始剤(E)と、を少なくとも含む。
一方、シリコーン化合物は粘着剤層の表面付近に局在しやすいので、保護フィルムを被着体に貼り付けた際に、シリコーン化合物が被着体の表面に転着して、被着体を汚染する要因の一つとなりやすいことが知られている。
本発明の粘着剤組成物より形成された粘着剤層では、表面付近に、特定シリコーン化合物(C)が局在している。このとき、例えば、紫外光等の活性光線を照射すると、光重合開始剤(E)が開裂してラジカルが発生し、特定シリコーン化合物(C)中の重合性官能基が重合反応し、特定シリコーン化合物(C)の重合体が形成される。特定シリコーン化合物(C)の重合体は、分子量が大きくなっているため、架橋性官能基を有する樹脂(A)と適度に絡み合い、粘着剤層に固定化されると推察される。そのため、保護フィルムを被着体から剥離する際に、粘着剤組成物中に含まれる例えば、帯電防止剤(D)、帯電防止助剤(以下、「汚染成分」ともいう。)等が、被着体表面に転着することを抑制するので、本発明の粘着剤組成物より形成された粘着剤層は、優れた耐汚染性を発揮する。
加えて、重合した特定シリコーン化合物(C)は、アルキレンオキシド構造を有するため帯電防止剤(E)が配位し、帯電防止助剤としても機能する。このため、粘着剤組成物が含む特定シリコーン化合物(C)により、帯電防止性能がさらに改善される。
また、樹脂(A)は架橋性官能基を有するので、この架橋性官能基と、架橋剤(B)とが、反応して、架橋構造を形成することにより、保護フィルムに適した粘着力(すなわち、凝集力)が得られる。
以上より、本発明の粘着剤組成物は、耐汚染性及び帯電防止性に優れる粘着剤層の形成に適している。
以下、本発明の粘着剤組成物に用いられる各成分の詳細について説明する。
粘着剤組成物は、少なくとも架橋性官能基を有する樹脂(A)(以下、「特定樹脂(A)」ともいう。)を含む。特定樹脂(A)は、架橋性官能基を有するので、後述の架橋剤(B)と反応して、架橋構造を形成し、保護フィルムに適した粘着力(すなわち、凝集力)を得ることが可能となる。
本明細書において「架橋性官能基」とは、架橋剤と反応して架橋剤と架橋構造を形成可能な官能基を意味する。
特定樹脂(A)としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、環状オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、特定シリコーン化合物(C)との適度な相溶しにくさ、保護フィルムに適した粘着力、及びその他各種物性を得るための設計が容易であり、かつ、透明性に優れるとの観点から、特定樹脂(A)としては、(メタ)アクリル系樹脂であることが好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂は、例えばアルキル(メタ)アクリレートを主成分とするモノマー成分を、重合させることにより得ることができる。
これらの中でも、後述する架橋剤(B)との反応性の観点から、架橋性官能基としては、カルボキシ基、水酸基、アミノ基及びグリシジル基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、カルボキシ基及び水酸基の少なくとも一方であることがより好ましい。
架橋性官能基を有するモノマーは、1種を単独で使用してもよく、又は、2種以上を併用してもよい。
カルボキシ基を有するモノマーは、1種を単独で使用してもよく、又は、2種以上を併用してもよい。
架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有率が、0.1質量%〜10質量%であると、後述する架橋剤(B)と反応して、架橋構造を十分に形成することができ、被着体への汚染成分の転着をより抑制することが可能となる。
上記観点から、架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有率としては、0.5質量%〜8質量%であることが好ましく、1質量%〜5質量%であることがより好ましい。
カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位の含有率が0.1質量%〜10質量%であると、後述する架橋剤(B)と反応して、架橋構造を十分に形成することができ、被着体への汚染成分の転着をより抑制することが可能となる。
上記観点から、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位の含有率は、0.2質量%〜5質量%であることがより好ましく、0.3質量%〜3質量%であることが更に好ましい。
水酸基を有するモノマーに由来する構成単位の含有率が0.5質量%〜10質量%であると、後述する架橋剤(B)と反応して、架橋構造を十分に形成することができ、被着体への汚染成分の転着をより抑制することが可能となる。
上記観点から、水酸基を有するモノマーに由来する構成単位の含有率は、1質量%〜9質量%であることがより好ましく、2質量%〜8質量%であることが更に好ましい。
特定樹脂(A)が、架橋性官能基を有さないアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む場合、架橋性官能基を有さないアルキル(メタ)アクリレートとしては、無置換のアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましく、その種類は特に制限されない。
アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は、1〜18の範囲であることが好ましく、1〜12の範囲であることがより好ましい。アルキル基の炭素数が上記の範囲内であると、保護フィルムに適した粘着力を保つ傾向がある。
アルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独で使用してもよく、又は、2種以上を併用してもよい。
上記観点から、特定樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)としては、30万〜180万であることがより好ましく、40万〜150万であることが更に好ましく、40万〜130万であることが特に好ましく、40万〜100万であることが最も好ましい。
(重量平均分子量(Mw)の測定方法)
下記(1)〜(3)に従って測定する。
(1)特定樹脂(A)の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で1分間乾燥し、フィルム状の特定樹脂(A)を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の特定樹脂(A)とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。
(3)下記条件にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、標準ポリスチレン換算値として、特定樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)を測定する。
(条件)
GPC :HLC−8220 GPC〔東ソー(株)製〕
カラム :TSK−GEL GMHXL 使用
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流速 :0.6mL/分
カラム温度:40℃
なお、固形分総質量とは粘着剤組成物から、溶媒などの揮発性成分を除いた残渣の総質量を意味する。
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤(B)を含む。架橋剤(B)は、特定樹脂(A)中の架橋性官能基と反応して架橋構造を形成する。これにより、本発明の粘着剤組成物より形成された粘着剤層に適度な硬さを付与することが可能となる。また、保護フィルムとして必要な粘着力を粘着剤層に付与しつつ、保護フィルムの用途に適した剥離性を保持させることが可能となる。
これらの中でも、特定樹脂(A)との反応性の観点から、架橋剤(B)としては、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤又は金属キレート化合物であることが好ましく、イソシアネート系架橋剤であることがより好ましい。
架橋剤(B)は、1種を単独で使用してもよく、又は、2種以上を併用してもよい。
更に、反応性に優れ架橋密度を高めることができ、かつ、特定樹脂(A)との相溶性に優れる観点から、架橋剤(B)としては、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体及びイソホロンジイソシアネートの少なくとも一方であることが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体であることがより好ましい。
架橋剤(B)の含有量が上記範囲内であると、被着体からの剥がれをより抑制し、かつ、保護フィルムの用途により適した粘着力を保つ傾向がある。
粘着剤組成物は、分子内に重合性官能基及びアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物(C)(特定シリコーン化合物(C))を含む。
例えば、紫外光等の活性光線を照射すると、後述の光重合開始剤(E)が開裂しラジカルを発生させて、これにより特定シリコーン化合物(C)中の重合性官能基を重合反応させて、特定シリコーン化合物(C)の重合体となる。特定シリコーン化合物(C)の重合体は、重合前と比べて分子量が大きくなるので、特定樹脂(A)と適度に絡み合うことで粘着剤層に固定化されると推察される。そのため、保護フィルムを被着体から剥離する際に、被着体表面への特定シリコーン化合物(C)の転着が抑制される。
そのため、本発明の粘着剤組成物より形成された粘着剤層は優れた耐汚染性を発揮する。
なお、本明細書において、シリコーン化合物の主鎖とは、シロキサン基(−Si−O−)が連結したポリシロキサン構造において、最も多くケイ素原子が連続する鎖を意味する。
プレ反応に用いるシリコーン化合物中のポリシロキサン構造に含まれるケイ素原子の数は、1〜100の範囲であることが好ましい。
これらの中でも、後述するプレ反応に用いる重合性官能基含有化合物が、例えば、イソシアネート(NCO)基等を有する場合、反応が促進されやすい観点から、反応性基としては、水酸基であることが好ましい。
ここで、片末端とは、シリコーン化合物の前記主鎖の一方の末端を意味する。両末端とは、例えば、シロキサン基の繰り返し単位を有する分子鎖(主鎖)を有するシリコーン化合物の前記主鎖の両方の末端を意味する。
特定アルキレンオキシド構造含有シリコーン化合物が、アルキレンオキシド構造の末端にヒドロキシ基が結合した構造を有すると、優れた耐汚染性をさらに発揮することが可能となる。
ジアルキルシロキサンにおけるアルキル基の炭素数は、1〜4であることが好ましく、1であることがより好ましい。
またアルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンにおけるアルキレンオキシド鎖の炭素数は、2〜4であることが好ましく、2〜3であることがより好ましい。
アルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンにおけるアルキレンオキシド鎖の含有数は、1〜100であることが好ましく、10〜100であることがより好ましい。アルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンにおけるアルキル基の炭素数は、1〜4であることが好ましい。
さらに、メチルプロピレンシロキサン構造単位の繰り返し数qは、2〜100の数であり、2〜80の数であることが好ましい。qが2以上であると十分な導電性が得られやすく、帯電防止効果を向上させる傾向がある。またqが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性がより向上し、粘着剤層の透明性が向上する傾向がある。
HLB= {(親水性基部分の式量の総和)/(アルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物の分子量)}×20
これらの中でも、ラジカル重合の反応性の観点から、ビニル基、(メタ)アクリロイル基又はアリール基であることが好ましく、特定シリコーン化合物(C)の調製のし易さの観点から(メタ)アクリロイル基であることがより好ましい。
これらの中でも、帯電防止性の観点から、R1及びR2としては、それぞれ独立に、炭素数2又は3のアルキレン基であることが好ましい。
上記観点から、rとしては、2〜80の整数であることがより好ましい。
上記観点から、bは、10〜100の整数であることが好ましい。
重合性官能基を有する1価の有機基としては、1分子中に少なくとも2つ以上の重合性官能基を有する化合物から、重合性官能基を1つ除いた基が挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を含む1価の有機基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた基等が挙げられる。
ここで、一般式(1−1)で表される化合物が複数の化合物の集合体である場合、p、q、r、a及びbは化合物の集合体としての平均値であり、有理数である。
またpが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性が向上する傾向がある。
更にメチルプロピレンシロキサン構造単位の繰り返し数qは、2〜80の数であることが好ましい。qが2以上であると十分な導電性が得られ、帯電防止性がより向上する傾向がある。またqが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性が更に向上する傾向がある。
dが1以上であると十分な導電性が得られ、帯電防止性が向上する傾向がある。またdが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性がより向上する傾向がある。
eが1以上であると十分な導電性が得られ、帯電防止性が向上する傾向がある。またeが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性がより向上する傾向がある。
一般式(2−2)中、R3〜R5、c、d、及びe並びにXは、一般式(2−1)中のR3〜R5、c、d、及びe並びにXと同義であり、好ましい範囲も同様である。
例えば、反応容器に、分子内に反応性基及びアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物と、重合性官能基含有化合物と、を所定量づつ投入し、均一に撹拌して反応(プレ反応)させることで、特定シリコーン化合物(C)を得ることができる。
特定シリコーン化合物(C)の含有量が0.1質量部以上であると、特定シリコーン化合物(C)中の重合性官能基が重合反応により、特定シリコーン化合物(C)の重合体が形成される。特定シリコーン化合物(C)の重合体は、重合前の特定シリコーン化合物(C)と比べて分子量が大きい。そのため、特定シリコーン化合物(C)が粘着剤層の表面付近に局在にした後に、重合させることで、保護フィルムを被着体から剥離する際に、汚染成分の被着体への転着を更に抑制することができ、粘着剤組成物より形成された粘着剤層は更に優れた耐汚染性を発揮する。
粘着剤組成物は、帯電防止剤(D)を含む。粘着剤組成物は、帯電防止剤(D)を含有することで、優れた帯電防止性能を発揮する。
帯電防止剤としては、イオン性化合物が挙げられる。イオン性化合物としては、特に制限はなく、アルカリ金属塩、有機塩などが挙げられる。
イオン解離性が高く、かつ、少量であっても優れた帯電防止性を発現しやすい点から、帯電防止剤としては、アルカリ金属塩又は有機塩であることが好ましい。
例えば、Li+、Na+及びK+からなる群より選ばれる少なくとも1種のカチオンと、Cl−、Br−、I−、BF4 −、PF6 −、SCN−、ClO4 −、CF3SO3 −、(FSO2)2N−、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−及び(CF3SO2)3C−からなる群より選ばれる少なくとも1種のアニオンと、から構成される金属塩を好適に用いることができる。
アルカリ金属塩は、単独で使用してもよく、又は、2種以上を併用して使用してもよい。
有機塩としては、融点が30℃以上であることが好ましい。有機塩の融点が30℃以上であると、被着体への移行が少なく、汚染性が低く好ましい。
有機カチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、アルキルピロリジニウムカチオン、有機基を置換基として有するアンモニウムカチオン、有機基を置換基として有するスルホニウムカチオン、有機基を置換基として有するホスホニウムカチオンが挙げられる。これらの中でも、帯電防止性の観点から、有機カチオンとしては、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオンであることが好ましい。
帯電防止剤(D)の含有量が特定樹脂(A)100質量部に対して、0.05質量部以上であると、帯電防止性により優れる傾向がある。帯電防止剤(D)の含有量が0.5質量部以下であると、帯電防止剤(D)の含有量に対する帯電防止効果の効率がより高くなり、被着体への耐汚染性がより改善できる傾向がある。
粘着剤組成物は、光重合開始剤(E)を含む。光重合開始剤(E)は、紫外光、可視光等の活性光線を受けて開裂し、ラジカルを発生させて、重合性官能基の重合を開始させる。重合反応により特定シリコーン化合物(C)は重合体となり、重合前の特定シリコーン化合物(C)と比べて分子量が大きいため、保護フィルムを被着体から剥離する際に、被着体へのシリコーン化合物の転着が抑制される。
また、特定シリコーン化合物(C)が2つ以上の重合性官能基を有する場合、特定シリコーン化合物(C)は光重合開始剤(E)と反応して、三次元の重合体を形成し、被着体へのシリコーン化合物の転着を更に抑制することができる。
光重合開始剤(E)の含有量が上記範囲であると、特定シリコーン化合物(C)との重合反応効率がよく、被着体の汚染性を更に抑制することができる。
粘着剤組成物は、多官能(メタ)アクリルモノマー(F)を更に含んでいてもよい。
粘着剤組成物が、多官能(メタ)アクリルモノマー(F)を含む場合、重合反応により、特定シリコーン化合物(C)と多官能(メタ)アクリルモノマー(F)との三次元の重合体が得られる。粘着剤組成物が多官能(メタ)アクリルモノマー(F)を含む場合、特定シリコーン化合物(C)のみを含む場合と比べて重合性官能基の量が増える。そのため、重合反応効率がよくなり、被着体へのシリコーン化合物の転着を更に抑制することができる。
多官能(メタ)アクリルモノマー(F)の含有率が上記範囲であると、特定シリコーン化合物(C)との重合反応効率がよく、被着体の汚染性を更に抑制することができる。
本発明の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、特定シリコーン化合物(C)以外のシリコーン化合物(以下、「他のシリコーン化合物」ともいう。)を含んでいてもよい。粘着剤組成物が、他のシリコーン化合物を含む場合、帯電防止性をより向上させることが可能である。
他のシリコーン化合物は、1種単独で使用してもよく、又は2種以上を併用してもよい。
他のシリコーン化合物の含有量が0.05質量部以上であると、帯電防止性により優れる傾向がある。また他のシリコーン化合物の含有量が1質量部以下であることで、被着体への汚染(クモリ)の発生が抑制され、また、特定樹脂(A)との相溶性が低下して発生する白濁をより抑制することが可能となる。
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系オリゴマーを更に含んでいてもよい。
より優れた帯電防止性及び被着体に対する耐汚染性を発揮する観点から、(メタ)アクリル系オリゴマーとしては、アルキレンオキシド構造単位を含む(メタ)アクリル系オリゴマーであることが好ましい。
なお、アルキレンオキシ基の含有数は、(メタ)アクリル系オリゴマーにアルキレンオキシ基を有する構成単位が2種以上含まれる場合、含有数の平均値である有理数となる。
生産性の観点から、アルキレンオキシ基に由来する構成単位は、アルキレンオキシ基及びビニル基を有するモノマーに由来するものが好ましい。
中でもメトキシポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート及びメトキシポリプロピレンオキシ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、エチレンオキシ基の含有数が20以上であるメトキシポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート及びプロピレンオキシ基の含有数が20以上であるメトキシポリプロピレンオキシ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
(メタ)アクリル系オリゴマーがカルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位を含むと、剥離性の向上に寄与する傾向がある。
カルボキシ基を有するモノマーの種類としては、特に制限されず、既述の(メタ)アクリル系樹脂におけるカルボキシ基を有するモノマーが挙げられる。剥離性の観点から、カルボキシ基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸であることが好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、既述の特定樹脂(A)におけるアルキル(メタ)アクリレートと同義であり、具体例も同様である。
粘着剤層を高温高湿環境下に曝した場合に、高い耐久性が発揮される点で、アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数4〜12のアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましく、分岐鎖を有する炭素数4〜12のアルキル(メタ)アクリレートであることがより好ましく、2−エチルヘキシルメタクリレートであることが更に好ましい。
また、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有率としては、耐久性の点で、(メタ)アクリル系オリゴマーの全構成単位に対して99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが更に好ましい。
この場合、(メタ)アクリル系オリゴマーの全構成単位に占める、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位及びアルキレンオキシ基を有するモノマーに由来する構成単位の合計の含有量としては、(メタ)アクリル系オリゴマーの全構成単位に対して80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。
(メタ)アクリル系オリゴマーの含有率が0.05質量部〜2.0質量部であると、保護フィルムに必要な粘着力を粘着剤層に付与しつつ、保護フィルムの用途に適した剥離性を更に保持することが可能となる。
粘着剤組成物は、特定樹脂(A)、架橋剤(B)、特定シリコーン化合物(C)、帯電防止剤(D)、光重合開始剤(E)、多官能(メタ)アクリルモノマー(F)及び(メタ)アクリル系オリゴマーの他に、必要に応じて、特定樹脂(A)及び(メタ)アクリル系オリゴマー以外の樹脂、架橋触媒、耐候性安定剤、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、剥離助剤、染料、顔料、無機充填剤、界面活性剤などを適宜含有することができる。
有機金属化合物の具体的な例としては、ジオクチル錫ジラウレート、1,3−ジアセトキシテトラブチルスタノキサンなどが挙げられる。
第3級アミン化合物の具体例としては、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリンなどの三級アミンが挙げられる。
本発明の粘着剤組成物は、光学部材に用いることが好ましい。本発明の粘着剤組成物より形成された粘着剤層は、耐汚染性及び帯電防止性に優れるため、光学部材の保護フィルムに好適に用いることができる。
また、ステンレスやアルミ等金属板、プラスチック板、ラミネート鋼板、化粧シート、
各種建材、及びボディ、内装等の自動車関連部材用の保護フィルムに好適に用いることができる。
本発明の保護フィルムは、保護フィルム用粘着剤組成物の硬化物である粘着剤層と、基材と、を少なくとも有する。
本明細書において、保護フィルム用粘着剤組成物の硬化物は、特定樹脂(A)の架橋物と、特定シリコーン化合物(C)の重合体と、を少なくとも有する態様を含む。
保護フィルムが有する粘着剤層は、例えば光学部材に対して、優れた耐汚染性及び帯電防止性を発揮する。
透視による被着体(例えば、光学部材)の検査及び管理の観点から、基材としては、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、及びアクリル系樹脂などから選択される樹脂を用いたフィルムが挙げられる。
中でも、基材としては、表面保護性能の観点から、ポリエステル系樹脂を用いたフィルムが好ましく、実用性を考慮すると、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を用いたフィルムであることがより好ましい。
粘着剤層の形成方法としては、例えば、粘着剤組成物を、そのままで又は必要に応じて適宜の溶媒で希釈し、これを基材に塗布した後、乾燥して溶媒を除去する方法を採用することができる。
また、先ずシリコーン樹脂などにより離型処理が施された紙、ポリエステルフィルム等の適宜のフィルムからなる剥離フィルムの上に粘着剤組成物を塗布し、加熱乾燥して粘着剤層を形成し、次いで、剥離フィルムの粘着剤層側を基材に圧着して、粘着剤層を基材に転写させる方法を採用することもできる。
活性光線を照射することで、光重合開始剤(E)が開裂しラジカルを発生させて、特定シリコーン化合物(C)中の重合性官能基を重合反応させる。重合反応により、特定シリコーン化合物(C)を含む重合体が得られるので、保護フィルムを被着体から剥がす際にシリコーン化合物の転着を抑制することができ、耐汚染性に優れる。
(重合性シリコーン1)
撹拌羽根、温度計、窒素導入管及び還流冷却器、滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、カレンズMOI(登録商標)(2−イソシアナトエチルメタクリレート、昭和電工(株)を6質量部、SH−3773M(ポリエーテル変性シリコーン化合物、東レ・ダウコーニング(株)製)を94質量部仕込み、30分の窒素置換後、内温を25℃に保持しながら96時間撹拌させ、メタクリロイル基とアルキレンオキシド構造とを有する重合性シリコーン1(特定シリコーン化合物(C))を得た。得られた重合性シリコーン1の組成を表1に示す。
重合性シリコーン1において、組成を表1に示すように変更したこと以外は、重合性シリコーン1の製造と同様の方法により、重合性シリコーン2〜重合性シリコーン6を調製した。なお、重合性シリコーン7は市販品である。
・SH−3773M:反応性基を有するシリコーン化合物(ポリエーテル変性シリコーン化合物、東レ・ダウコーニング(株)製)(一般式(1)で表されるポリシロキサン化合物)
・SF−8427:反応性基を有するシリコーン化合物(カルビノール変性シリコーン化合物(両末端変性)、東レ・ダウコーニング(株)製)(一般式(1)で表されるポリシロキサン化合物)
・SF−8400:反応性基を有さないシリコーン化合物(末端がアセチル基であるポリエーテル変性シリコーン化合物、東レ・ダウコーニング(株)製)
・X−22−164C:反応性基を有さないシリコーン化合物(側鎖メタクリロイル基変性(アルキレンオキシド変性なし)シリコーン化合物、東レ・ダウコーニング(株)製)
・AOI:2−イソシアナトエチルアクリラート(商品名:カレンズAOI(登録商標)、昭和電工(株)製)
−樹脂(A)の製造−
温度計、撹拌機、窒素導入管及び還流冷却器を備えた反応容器内に、酢酸エチル171.0質量部、tert−ブタノール249質量部を入れた。また別の反応容器に、モノマーとしてn−ブチルアクリレート(nBA)217.8質量部、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)360.0質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)18.0質量部、及びアクリル酸(AA)4.2質量部を入れ、混合してモノマー混合物とした。このモノマー混合物のうち、20.0質量%を反応容器中に加え、次いで反応容器の空気を窒素ガスで置換した後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.08質量部を添加して、撹拌下に窒素雰囲気中で、反応容器内の混合物温度を85℃に昇温させて、初期反応を開始させた。初期反応がほぼ終了した後、残りのモノマー混合物80.0質量%、並びに酢酸エチル88.0質量部、及びAIBN0.80質量部の混合物をそれぞれ逐次添加しながら約2時間反応させ、引き続いて、さらに2時間反応させた。その後、酢酸エチル132.0質量部にtert−ブチルペルオキシピバレート0.60質量部を溶解させた溶液を、上記混合物に1時間かけて滴下し、さらに1.5時間反応させた。反応終了後、樹脂(A)溶液を得た。得られた樹脂(A)溶液の重量平均分子量(Mw)を表2に示す。
なお、重量平均分子量(Mw)は既述の方法で測定したものである。
製造例1において、モノマー組成を表2に示すように変更し、重合開始剤の量、重合条件等を適宜変更して重量平均分子量(Mw)を調整したこと以外は、製造例1と同様の方法により、樹脂(A)溶液を調製した。得られた樹脂(A)溶液の固形分の組成(質量%)及び重量平均分子量(Mw)を表2に示す。
なお、重量平均分子量(Mw)は既述の方法で測定したものである。
温度計、撹拌羽根、窒素ガス導入管、冷却器、滴下ロートを備えた反応容器内に、メチルエチルケトン100.0部を入れ、窒素雰囲気下で撹拌しながら還流温度まで加熱した。滴下ロートに、予め混合しておいた、n−ブチルメタクリレート(nBMA)68.0質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)20.0質量部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(アルキレンオキシ基の含有数:23)10部、アクリル酸(AA)2.0質量部、メチルエチルケトン100.0質量部及びアゾビスイソブチロニトリル5.0質量部の混合溶液を入れ、120分かけて還流温度の反応容器に逐次添加した。その後、240分間還流温度を維持したまま反応させ、反応を終了した。このようにして、(メタ)アクリル系オリゴマー溶液を得た。
得られた(メタ)アクリル系オリゴマーの溶液の固形分は33.0質量%であり、重量平均分子量(Mw)は7,000であった。なお、重量平均分子量(Mw)は既述の方法で測定したものである。
撹拌羽根、温度計、冷却器、滴下ロートを備えた四つ口フラスコに製造例1で調製した樹脂(A)の溶液(固形分45%)を222.2質量部(固形分として100質量部)、上記で調製した(メタ)アクリル系オリゴマーの溶液(固形分33%)を0.9質量部(固形分として0.8質量部)、帯電防止剤(D)としてLiTFS(Li(CF3SO3)、森田化学工業(株)製)0.25質量部、光重合開始剤(E)としてイルガキュア184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、BASFジャパン(株)製)0.18質量部、多官能モノマーとしてライトアクリレートTMP−A(トリメチロールプロパントリアクリレート、共栄社化学(株))5.0質量部を仕込み、フラスコ内の液温を25℃付近に保って4.0時間混合撹拌を行った。架橋剤(B)としてスミジュールN−3300希釈物(イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、住化コベストロウレタン(株))を12.0質量部(固形分として3.0質量部)、重合性シリコーン1を0.32質量部相当量添加し、十分に撹拌して、粘着剤組成物溶液を得た。
上記で得られた粘着剤組成物溶液を用いて、試験用保護フィルムを作製した。
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名:帝人テトロンフィルムG2、厚み38μm、帝人デュポンフィルム(株)製)の上に、乾燥後の塗工量が15g/m2となるように粘着剤組成物溶液を塗布し、100℃の条件下1分間、熱風循環式乾燥機にて乾燥した。
次いで、粘着剤組成物溶液を塗布した塗布面を、別途用意したシリコーン系離型剤で表面処理された離型フィルム(商品名:フィルムバイナ 100E−0010NO23、厚み25μm、藤森工業(株)製)の表面処理面と重ね合せて積層体とした。この積層体を加圧ニップロール対に通して圧着して貼り合わせた後、剥離フィルム側から、高圧水銀灯を用いて照度235mW/cm2、積算光量500mJ/cm2の条件で紫外光を照射した。その後、23℃、50%RHの条件下で96時間養生して、試験用保護フィルムとした。
−耐汚染性−
(シリコーン反応率)
75mm×75mmの大きさに切断した試験用保護フィルムから、一方の離型フィルムを剥がし、粘着剤層が露出した面を100mm×100mmに切断した250メッシュの金網(真鍋工業(株)製)に貼り合わせた。次いで、残りの離型フィルムを剥がし、溶媒浸漬時に粘着剤が漏れでないように250メッシュの金網で包み込み、粘着剤入りの金網を準備した。この操作を繰り返して、粘着剤入りの金網を6個用意し、粘着剤の全質量を測定した。
粘着剤の全質量=粘着剤入りの金網の質量(g)−金網の質量(g)
再度放冷後、残溶液をポリ容器に流し入れ、パーフルオロアルコキシ(PFA)製の蒸発皿を蒸留水10mlで洗浄した後、洗浄液をポリ容器に流し入れ、残留物を測定用サンプルとした。
測定用サンプル中に含まれるケイ素(Si)原子の量は、以下の測定条件で定量した。
分析機器:誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−AES)装置(型番:ICPS−7510型、(株)島津製作所製)
スプレーチャンバー:サイクロンチャンバー
測定位置:横方向観測
ネブライザー:同軸ネブライザー
高周波パワー:1.2kW
クーラントガス:14.0L/分
キャリアガス:アルゴンガス、0.7L/分
定量方法:検量線法により実施
検量線用サンプル濃度:0.2ppm、1.0ppm、5.0ppm(和光純薬工業(株)製 原子吸光用標準液(Si 1000ppm))
A:酢酸エチルへ溶出したシリコーン化合物量(ppm)=検出されたケイ素(Si)原子の量の値(ppm)−0.04(ppm)
なお、検出されたケイ素(Si)原子の量は、離型フィルムに含まれるシリコーン化合物の影響分として0.04ppmを引いた数値である。
B:粘着剤層に含まれるシリコーン化合物量(ppm)=(w×s)/e×t×1000000
w:粘着剤の全質量(g)
s:粘着剤に含まれるシリコーン化合物の割合(質量%)
e:酢酸エチル質量;80g
t:シリコーン化合物中のSi原子量(ICP−AES実測値であり、SH−3773M(側鎖ポリエーテル変性シリコーン化合物(東レ・ダウコーニング(株)製))のSi原子量は0.20であり、SF−8427(両末端ポリエーテル変性シリコーン化合物(東レ・ダウコーニング(株)製)))のSi原子量は0.45であり、SF−8400(末端がアセチル基であるポリエーテル変性シリコーン化合物(東レ・ダウコーニング(株)製)))のSi原子量は0.31である。)
A:0.24−0.04=0.20
B:(w×s)/e×t×1000000=3.67
w:0.51g
s:0.30/(100+0.80+0.25+0.38+0.13+3.0)
=0.002869
e:80g
t:0.20
なお、有効成分の全質量は、樹脂(A)の含有量100、(メタ)アクリル系オリゴマーの含有量0.80、帯電防止剤(D)の含有量0.25、特定シリコーン化合物(C)の含有量0.38、プレ反応における未反応の重合性官能基含有化合物の含有量0.13及び架橋剤(B)の含有量3.0の和である。
シリコーン反応率が高ければ、粘着剤組成物の耐汚染性は優れる。評価が「A」以上であれば、耐汚染性に優れると判断した。
AA:90%以上である。
A:60%〜90%未満である。
B:40%〜60%未満である。
C:40%未満である。
上記で作製した試験用保護フィルムの表面抵抗値を表面抵抗測定装置((株)アドバンテスト製:R12704 RESISTIVITY CHAMBER)を用いて、23℃、50%RH、印加電圧100Vの条件下で測定し、下記評価基準に従って評価した。結果は表3に示す。
表面抵抗値が小さいほど帯電防止性に優れる。なお、評価が「C」以上であれば帯電防止性があると評価した。
A:表面抵抗値が1.0×1011Ω/□未満であり、帯電防止性が非常に優れている。
B:表面抵抗値が1.0×1011Ω/□以上5.0×1011Ω/□未満であり、帯電防止性が優れている。
C:表面抵抗値が5.0×1011Ω/□以上1.0×1012Ω/□未満であり、帯電防止性がある。
D:表面抵抗値が1.0×1012Ω/□以上であり、帯電防止性に劣っている。
製造例1において、表1に示すモノマー組成に変更し、適宜開始剤量などを調整したこと以外は、製造例1と同様にして、粘着剤組成物を調製した。調製した粘着剤組成物を用いて、実施例1と同様にして保護フィルムを作製し、実施例1と同様にして各評価を行った。結果を表3に示す。
比較例3では、SH−3773M(ポリエーテル変性シリコーン化合物、東レ・ダウコーニング(株)製)と、MOI(2−イソシアナトエチルメタクリレート、商品名:カレンズMOI(登録商標)、昭和電工(株)製)と、をプレ反応させずに、製造例1で調製した樹脂(A)と、架橋剤(B)、帯電防止剤(D)、光重合開始剤(E)及びその他の成分と、ともに、表1に記載の配合比率で混合し、粘着剤組成物溶液を調製した。調製した粘着剤組成物を用いて、実施例1と同様にして保護フィルムを作製し、実施例1と同様にして各評価を行った。結果を表3に示す。
・IRG819:アシルホスフィンオキサイド化合物(化学名:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、BASFジャパン(株)製)
・N−3300:イソシアネート化合物(化学名:イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート、商品名:スミジュールN−3300、住化コベストロウレタン(株)製、固形分100質量%)
・IPDI:イソシアネート化合物(化学名:イソホロンジイソシアネート、商品名:デスモジュールI、住化コベストロウレタン(株)製)
・TETRAD−X:エポキシ系架橋剤(化学名:N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、三菱瓦斯化学(株)製)
・LiTFS:リチウム塩(化学名:Li(CF3SO3)、森田化学工業(株)製)
・MP−402:イオン性化合物(化学名:トリメチルドデシルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、第一工業製薬(株)製)
・TMP−A:トリメチロールプロパントリアクリレート(商品名:ライトアクリレートTMP−A、共栄社化学(株)製)
・#335HP:テトラエチレングリコールジアクリレート(商品名:ビスコート#335HP、大阪有機工業(株)製)
・SH−3773M:特定アルキレンオキシド構造含有シリコーン化合物(側鎖ポリエーテル変性シリコーン化合物、東レ・ダウコーニング(株)製)
・DOBDL:架橋触媒(化学名:ジオクチル錫ジラウレート、商品名:OT−1、ADEKA(株)製、アセチルアセトンにより適宜希釈して使用)
・MOI:2−イソシアナトエチルメタクリレート(商品名:カレンズMOI(登録商標)、昭和電工(株)製)
特に、実施例1、11、12、16及び21は、耐汚染性及び帯電防止性に極めて優れていた。
特定シリコーン化合物(C)を含まない比較例6及び、分子内に反応性基及びアルキレンオキシド構造を有しないシリコーン化合物を含む比較例7は、帯電防止剤(D)を粘着剤層の表面付近に局在させることができないため、帯電防止性に劣っていた。
Claims (7)
- カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位を有する(メタ)アクリル系樹脂(A)と、
架橋剤(B)と
分子内に重合性官能基及びアルキレンオキシド構造を有するシリコーン化合物(C)と、
帯電防止剤(D)と、
光重合開始剤(E)と、
を含み、
前記カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位の含有率が、前記樹脂(A)の全構成単位に対して、0.3質量%〜3質量%である、
保護フィルム用粘着剤組成物。 - 前記シリコーン化合物(C)の含有量は、前記樹脂(A)100質量部に対して0.1質量部〜2.5質量部である、請求項1に記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
- 前記帯電防止剤(D)は、アルカリ金属塩又は有機塩である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
- 更に、多官能(メタ)アクリルモノマー(F)を含む、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
- 光学部材に用いられる、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
- 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の保護フィルム用粘着剤組成物の硬化物である粘着剤層と、基材と、を有する保護フィルム。
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