JP6927521B2 - 顔料水分散体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、顔料水分散体の製造方法、及び該顔料水分散体を含む水系インクに関する。
商品包装印刷や広告等に用いられる商業用ラベル印刷等の分野では、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、NY(ナイロン)等の樹脂製印刷媒体に対し、環境負荷の低減、省エネルギー、安全性等の観点から、水系インクを用いる印刷方法として、インクジェット印刷方式やフレキソ印刷方式の活用が求められている。特に、インクジェット印刷方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を印刷媒体に直接吐出し、付着させて、文字や画像が記録された印刷物を得る印刷方式である。インクジェット印刷方式は、フルカラー化が容易で、かつ安価であり、被印刷物に対して非接触、という数多くの利点があるため普及が著しい。そのため、樹脂製印刷媒体に対しても、インクジェット印刷方式の活用が試みられている。しかしながら、樹脂製印刷媒体は非吸水性であるため、従来のインクジェット印刷用インクでは該印刷媒体への密着性が十分でなく、密着性を改善する試みがなされてきた。
例えば、特許文献1には、記録媒体に印字した際に耐擦過性等を有する印字物を得ることができる、インクジェット記録用水系インクに用いられる着色微粒子分散体の製造方法として、顔料と、重合性モノマーと、界面活性剤と、重合開始剤と、水とを含む分散体を乳化重合する着色微粒子分散体の製造方法であって、該顔料が、キナクリドン骨格を有する顔料であり、該界面活性剤が、アニオン性又は非イオン性の界面活性剤であり、該重合開始剤が、アニオン性又は非イオン性のアゾ系化合物である、着色微粒子分散体の製造方法が記載されている。
特許文献2には、カルボジイミド化合物にポリアクリル側鎖が導入され、且つ顔料を分散した状態で、良好な分散安定性等を実現するカルボジイミド系化合物を利用したインクジェット用インク等として、酸基非含有(メタ)アクリル系単量体の少なくとも1種を含む酸基非含有ラジカル重合性不飽和単量体を酸基含有連鎖移動剤の存在下で重合して分子の片末端に酸基を含有するポリアクリル化合物を得て、該ポリアクリル化合物の分子の片末端にある酸基と、特定のカルボジイミド当量のカルボジイミド化合物のカルボジイミド基とを反応させることにより、ポリアクリル鎖を導入されたカルボジイミド系化合物が記載されている。
非特許文献1には、酸化チタンをマクロ−RAFT共重合体で水中に分散させた後、モノマーと重合開始剤とを添加し、モノマーを重合させて酸化チタンをカプセル化する技術が記載されている。
特開2016−27151号公報 特開2006−225431号公報
Hawkett他、Langmuir 2008, 24, 2140-2150、「Pigment Encapsulation by Emulsion Polymerization Using Macro-RAFT Copolymers(マクロ−RAFT共重合体を用いた乳化重合による顔料カプセル化)」
しかしながら、特許文献1及び2の方法では、非吸水性印刷媒体に対する密着性、耐折り曲げ性が十分でないことが分かった。また、非特許文献1の技術では、顔料表面の露出が多く、耐光性が十分でない。そのため、非吸水性印刷媒体に対する密着性、耐折り曲げ性、及び耐光性の更なる向上が求められている。
本発明は、水系インクに含有させることにより、非吸水性印刷媒体に印刷した際においても、印刷物の密着性、耐折り曲げ性、及び耐光性に優れる顔料水分散体の製造方法及び該顔料水分散体を含む水系インクを提供することを課題とする。
なお、本明細書において、「印刷」とは、文字や画像を記録する印刷、印字を含む概念であり、「印刷物」とは、文字や画像が記録された印刷物、印字物を含む概念である。また、「非吸水性」とは、低吸水性、非吸水性を含む概念であり、印刷媒体と純水との接触時間100m秒における該印刷媒体の吸水量が0g/m以上10g/m以下であることを意味する。該吸水量は、自動走査吸液計(例えば、熊谷理機工業株式会社製 KM500win)を用いて、23℃、相対湿度50%の条件下で、純水の接触時間100m秒における転移量として測定される。さらに、「水系」とは、インクに含有される媒体中で、水が最大割合を占めていることを意味する。
本発明者らは、特定の連鎖移動剤を用いて得られるオリゴマー分散剤で顔料を分散させた後、シード重合により生成するポリマーで顔料を被覆することにより、前記課題を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明は、次の[1]及び[2]を提供する。
[1]下記工程1〜3を有する、顔料水分散体の製造方法。
工程1:ラジカル重合性モノマー(a)と、ラジカル重合開始剤(a)と、不可逆的連鎖移動剤とを混合して重合し、オリゴマー分散剤を得る工程
工程2:顔料と、工程1で得られたオリゴマー分散剤と、水とを混合して、顔料水分散液を得る工程
工程3:工程2で得られた顔料水分散液と、ラジカル重合性モノマー(b)とを混合してシード重合し、前記顔料を被覆して、顔料水分散体を得る工程
[2]前記[1]に記載の製造方法で得られる顔料水分散体を含む、水系インク。
本発明によれば、水系インクに含有させることにより、非吸水性印刷媒体に印刷した際においても、印刷物の密着性、耐折り曲げ性、及び耐光性に優れる顔料水分散体の製造方法及び該顔料水分散体を含む水系インクを提供することができる。
[顔料水分散体の製造方法]
本発明は、下記工程1〜3を有する、顔料水分散体の製造方法である。
工程1:ラジカル重合性モノマー(a)と、ラジカル重合開始剤(a)と、不可逆的連鎖移動剤とを混合して重合し、オリゴマー分散剤を得る工程
工程2:顔料と、工程1で得られたオリゴマー分散剤(以下、「オリゴマー分散剤」又は「オリゴマー成分」ともいう)と、水とを混合して、顔料水分散液を得る工程
工程3:工程2で得られた顔料水分散液と、ラジカル重合性モノマー(b)とを混合してシード重合し、前記顔料を被覆して、顔料水分散体を得る工程
なお、本発明において「不可逆的連鎖移動剤」とは「可逆的付加開裂連鎖移動(Reversible Addition Fragmentation Chain Transfer)を起こさない連鎖移動剤」を意味する。
また、本発明において「オリゴマー」とは、数平均分子量が300以上6,000以下で、かつ重量平均分子量が700以上20,000以下であるポリマーを意味する。なお、数平均分子量及び重量平均分子量の測定は、実施例に記載のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定される。
更に、顔料水分散体における「被覆」とは、本発明の効果を奏する限り、必ずしも顔料粒子の表面全てがポリマーで被覆されていなくてもよいが、密着性、耐折り曲げ性、及び耐光性を向上させる観点から、顔料粒子の表面全てが被覆されていることが好ましい。
本発明に係る顔料水分散体は、顔料と、ラジカル重合性モノマー(a)由来の構成単位を含むオリゴマー成分及びラジカル重合性モノマー(b)由来の構成単位を含むポリマー成分と、を含有する顔料微粒子が水を主媒体とする中に分散しているものである。
顔料微粒子の形態は、ポリマー粒子に顔料が内包された(いわゆるカプセル型)粒子形態、ポリマー粒子中に顔料が均一に分散された粒子形態等が含まれる。これらの中でも、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、ポリマー粒子に顔料が内包された(いわゆるカプセル型)粒子形態が好ましい。
本発明の製造方法で得られる顔料水分散体は、水系インク(以下、単に「インク」ともいう)に含有させることにより、非吸水性印刷媒体に印刷した際においても、印刷物の密着性、耐折り曲げ性、及び耐光性に優れるという効果を奏する。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
まず、本発明の工程1で得られるオリゴマー分散剤は、不可逆的連鎖移動剤を用いて重合され、分子量が低く分子量分布が比較的広くなる。そのため、顔料に対する分散能に優れ、後続の工程3におけるシード重合に用いられるラジカル重合性モノマーの吸収性にも優れる。そして、工程2により、低分子量で分子量分布の広いオリゴマー分散剤が顔料の表面に吸着した後、工程3により顔料表面上のオリゴマー分散剤が母体となってラジカル重合性モノマーを吸収してシード重合が進行し、比較的分子量の高いポリマーが生成し、該ポリマーで顔料が被覆されると推察される。
印刷物の耐折り曲げ時には、接着強度の低い顔料−ポリマー界面の破壊が通常起こる。本発明では顔料近傍のオリゴマー成分は低分子量かつ分子量分布が比較的広いため、大きな変形にも追従し顔料はオリゴマー成分との密着性を保持する。そのため、耐折り曲げ性が大幅に改善する。
更に、工程1で得られるオリゴマー成分が、工程3で得られる高分子量のポリマー成分を可塑化することで、該ポリマー成分も印刷媒体の表面形態に追従して変形することにより、印刷物の密着性が向上すると考えられる。
更に、本発明では、顔料微粒子は顔料粒子の表面がポリマーで被覆された形態を有しているため、顔料はポリマーとの密着性を保持し、顔料表面の露出が抑制されている。そのため、光による顔料分解をポリマーが抑制し、耐光性も向上すると考えられる。
<工程1>
工程1は、ラジカル重合性モノマー(a)と、ラジカル重合開始剤(a)と、不可逆的連鎖移動剤とを混合して重合し、オリゴマー分散剤を得る工程である。これにより、分子量が低く分子量分布が比較的広いオリゴマー分散剤が得られる。
〔ラジカル重合性モノマー(a)〕
本発明で用いるラジカル重合性モノマー(a)は、ラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する基であり、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロペニル基、ビニリデン基、及びビニレン基から選ばれる1種以上を有するモノマーが挙げられる。ラジカル重合性モノマー(a)は、オリゴマー分散剤の分散性の観点、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、親水性モノマー(a−1)(以下、単に「モノマー(a−1)」ともいう)を含むことが好ましい。モノマー(a−1)としては、イオン性官能基を有するモノマー、イオン性官能基を有しない非イオン性親水性モノマーが挙げられ、好ましくはイオン性官能基を有するモノマーである。
本発明において「親水性」とは、モノマーの25℃におけるイオン交換水100gへの溶解可能な量が10g以上であることをいい、該溶解量は好ましくは50g以上であることをいう。イオン性官能基モノマーの場合における「親水性」とは、イオン性官能基を中和した状態での25℃におけるイオン交換水100gへの溶解量が前記範囲であることをいう。
イオン性官能基を有するモノマーとしては、カチオン性基を有するモノマー、アニオン性基を有するモノマーが挙げられ、オリゴマー分散剤の分散性の観点から、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、アニオン性基を有するモノマーが好ましい。該アニオン性基としては、カルボキシ基(−COOM1)、スルホン酸基(−SO31)、リン酸基(−OPO31 2)等の解離して水素イオンが放出されることにより酸性を呈する基、又はそれらの解離したイオン形(−COO-、−SO3 -、−OPO3 2-、−OPO3 -1)等が挙げられる。上記化学式中、M1は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを示す。
カルボキシ基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。
スルホン酸基を有するモノマーとしては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
リン酸基を有するモノマーとしては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。
これらの中でも、好ましくはカルボキシ基を有するモノマーであり、より好ましくは、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸及び2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸から選ばれる少なくとも1種であり、更に好ましくは(メタ)アクリル酸である。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種を意味し、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート及びメタクリレートから選ばれる少なくとも1種である。以下における「(メタ)」も同義である。
非イオン性親水性モノマーとしては、耐折曲げ性を向上させる観点から、好ましくは2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール(n=2〜30、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。以下同じ)(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコール(n=1〜30)(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;フェノキシ(エチレングリコール/プロピレングリコール共重合)(n=1〜30、その中のエチレングリコール:n=1〜29)(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートである。
商業的に入手しうる非イオン性親水性モノマーの具体例としては、NKエステルM−20G、同40G、同90G、同230G等(以上、新中村化学工業株式会社の商品名)、ブレンマーPE−90、同200、同350等、ブレンマーPME−100、同200、同400等、ブレンマーPP−500、同800、同1000等、ブレンマーAP−150、同400、同550等、ブレンマー50PEP−300、ブレンマー50POEP−800B、ブレンマー43PAPE−600B等(以上、日油株式会社の商品名)が挙げられる。
ラジカル重合性モノマー(a)は、オリゴマー分散剤の分散性の観点、並びに、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、更に疎水性モノマー(a−2)(以下、単に「モノマー(a−2)」ともいう)を含むことが好ましい。
本発明において「疎水性」とは、モノマーの25℃におけるイオン交換水100gへの溶解可能な量が10g未満であることをいう。疎水性モノマーの25℃におけるイオン交換水100gへの溶解量は、オリゴマー分散剤の顔料への吸着性の観点から、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下である。
モノマー(a−2)は、その構造中に疎水性基とラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する基とを有するものである。疎水性基としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、及び芳香族炭化水素基から選ばれる1種以上が挙げられ、好ましくは脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基から選ばれる1種以上である。ラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する基としては、前述のモノマー(a−1)と同様のものが挙げられ、好ましくはビニル基である。
モノマー(a−2)は、好ましくは脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート及び芳香族基含有モノマーから選ばれる少なくとも1種である。
脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレートは、好ましくは炭素数1以上10以下の脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有するものであり、より好ましくは炭素数1以上10以下のアルキル基を有するものであり、更に好ましくは炭素数1以上8以下のアルキル基を有するものである。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレート;イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、オリゴマー分散剤の分散性の観点から、好ましくはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上であり、より好ましくはメチル(メタ)アクリレートである。
芳香族基含有モノマーは、好ましくはヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい炭素数6以上22以下の芳香族基を有するビニルモノマーであり、より好ましくはスチレン系モノマー及び芳香族基含有(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上である。
スチレン系モノマーとしては、スチレン、2−メチルスチレン等が挙げられ、芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはスチレン及びベンジル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上であり、より好ましくはスチレンである。
ラジカル重合性モノマー(a)総量中、モノマー(a−1)及び(a−2)の合計含有量は、オリゴマー分散剤の分散性の観点、並びに、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量以上、更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは100質量%、すなわちモノマー(a−1)及び(a−2)のみからなることが好ましい。
モノマー(a−1)の含有量は、オリゴマー分散剤の分散性の観点、並びに、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、ラジカル重合性モノマー(a)総量中、好ましくは15質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは45質量%以上、より更に好ましくは50質量%以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下、より更に好ましくは70質量%以下、より更に好ましくは65質量%以下、より更に好ましくは60質量%以下である。
モノマー(a−2)の含有量は、オリゴマー分散剤の分散性の観点、並びに、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、ラジカル重合性モノマー(a)総量中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上、より更に好ましくは30質量%以上、より更に好ましくは35質量%以上、より更に好ましくは40質量%以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは85質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは55質量%以下、より更に好ましくは50質量%以下である。
〔ラジカル重合開始剤(a)〕
本発明で用いるラジカル重合開始剤(a)(以下、単に「開始剤(a)」ともいう)としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(V−40)等のアゾニトリル化合物、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン](VA−061)等のアゾアミジン化合物、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](VA−086)、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)(VAm−110)等のアゾアミド化合物、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ基を含むアゾ重合開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素等の無機過酸化物;t−ブチルパーオキシネオへプタノエート、t−ヘキシルパーオキシネオへプタノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキシド等の有機過酸化物;有機過酸化物に亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸等の還元剤を組み合わせたレドックス系の重合開始剤等が挙げられる。
開始剤(a)は、オリゴマー分散剤の高分子量化を抑制し、密着性を向上させる観点から、好ましくはアゾ重合開始剤であり、より好ましくは油溶性アゾ重合開始剤であり、更に好ましくはアゾニトリル化合物であり、より更に好ましくは2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65)、及び1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(V−40)から選ばれる少なくとも1種である。
開始剤(a)の10時間半減期温度は、副反応を抑制し、分子量分布を調整する観点、並びに、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは50℃以上であり、そして、適度な温度で反応を制御する観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは80℃以下、より更に好ましくは70℃以下、より更に好ましくは60℃以下である。
なお、これらの重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
〔不可逆的連鎖移動剤〕
不可逆的連鎖移動剤は、前述のとおり、「可逆的付加開裂連鎖移動(Reversible Addition Fragmentation Chain Transfer)を起こさない連鎖移動剤」を意味し、RAFT剤に含まれるトリチオカーボネート構造(−S−C(=S)−S−)、ジチオカルバメート構造(−N−C(=S)−S−)又はジチオベンゾネート構造を有しない連鎖移動剤である。本発明では、不可逆的連鎖移動剤を用いてオリゴマー分散剤が得られるため、分子量が低く分子量分布が比較的広くなる。そのため、顔料に対する分散能に優れ、後続の工程3におけるシード重合に用いられるラジカル重合性モノマーの吸収性にも優れ、密着性、耐折曲げ性、及び耐侯性を向上することができる。
不可逆的連鎖移動剤は、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、好ましくは親水性の連鎖移動剤であり、より好ましくは、チオール基又はハロアルキル基を含む。
チオール基を含むチオール系連鎖移動剤(以下、単に「チオール系連鎖移動剤」ともいう)としては、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール等のヒドロキシ基含有メルカプタン類;メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸等のカルボキシ基含有メルカプタン類;2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基含有メルカプタン類;2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン;ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール等のアルキルメルカプタン;シクロヘキサンチオール;チオフェノール;メチル−3−メルカプトプロピオネート、2−エチルヘキシル−3−メルカプトプロピオネート、n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート等のメルカプトプロピオネート類等が挙げられる。
ハロアルキル基を含む連鎖移動剤としては、四塩化炭素、四臭化炭素、塩化メチレン、トリブロモエタン、ブロモトリクロロエタン等が挙げられる。
これらの中でも、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、好ましくはチオール系連鎖移動剤であり、オリゴマー分散剤の分散性の観点から、より好ましくは、更に酸性基を含むチオール系連鎖移動剤である。酸性基としては、カルボキシ基(−COOM2)、スルホン酸基(−SO32)等の、解離して水素イオンが放出されることにより酸性を呈する基、又はそれらの解離したイオン形(−COO-、−SO3 -)等が挙げられる。上記化学式中、M2は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを示す。
酸性基を含むチオール系連鎖移動剤としては、好ましくはカルボキシ基含有メルカプタン及びスルホン酸基含有メルカプタンから選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはカルボキシ基含有メルカプタンであり、更に好ましくは3−メルカプトプロピオン酸である。
ラジカル重合性モノマー(a)の量は、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、工程1の重合反応の全系に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、そして、好ましくは70質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
開始剤(a)の量は、ラジカル重合性モノマー(a)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上であり、そして、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下、より更に好ましくは3質量部以下である。
工程1において、不可逆的連鎖移動剤のモル数の総和に対するラジカル重合性モノマー(a)のモル数の総和のモル比〔ラジカル重合性モノマー(a)/不可逆的連鎖移動剤〕は、オリゴマー分散剤の分子量を調整し、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、好ましくは3以上、より好ましく5以上、更に好ましくは10以上、より更に好ましくは13以上であり、そして、好ましくは40以下、より好ましくは35以下、更に好ましくは30以下、より更に好ましくは25以下、より更に好ましくは20以下、より更に好ましくは18以下ある。
工程1において、不可逆的連鎖移動剤のモル数の総和に対する開始剤(a)のモル数の総和のモル比〔ラジカル重合開始剤(a)/不可逆的連鎖移動剤〕は、オリゴマー分散剤の分子量を調整し、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.07以上であり、そして、好ましくは1以下、より好ましくは0.7以下、更に好ましくは0.5以下、より更に好ましくは0.3以下、より更に好ましくは0.1以下である。
工程1における重合方法は、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法を用いることができる。これらの中でも、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒に特に制限はないが、極性有機溶媒が好ましい。極性有機溶媒が水混和性を有する場合には、水と混合して用いることもできる。極性有機溶媒としては、炭素数1以上3以下の脂肪族アルコール、炭素数3以上5以下のケトン類、エーテル類、エステル類等が挙げられる。これらの中でも、脂肪族アルコール、ケトン類、又はこれらと水との混合溶媒が好ましく、メチルエチルケトン又はそれと水との混合溶媒が好ましい。
また、ラジカル重合性モノマー(a)として2種以上のモノマーを用いる場合には、連鎖の様式に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト等のいずれの重合様式でもよい。
好ましい重合条件は、開始剤(a)、ラジカル重合性モノマー(a)、溶媒の種類等によって異なるが、重合温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは95℃以下、より好ましくは80℃以下である。重合時間は、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上であり、そして、好ましくは20時間以下、より好ましくは10時間以下である。また、重合雰囲気は、好ましくは窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気である。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したオリゴマー分散剤を単離することができる。
工程1で得られたオリゴマー分散剤の数平均分子量(Mn)は、オリゴマー分散剤の分散性の観点、並びに、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、300以上であり、好ましくは400以上、より好ましくは500以上であり、そして、6,000以下であり、好ましくは5,000以下、より好ましくは4,000以下、更に好ましくは3,000以下、より更に好ましくは2,000以下、より更に好ましくは1,000以下である。
工程1で得られたオリゴマー分散剤の重量平均分子量(Mw)は、オリゴマー分散剤の分散性の観点、並びに、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、700以上であり、好ましくは1,000以上、より好ましくは1,300以上、更に好ましくは1,500以上であり、そして、20,000以下であり、好ましくは15,000以下、より好ましくは12,000以下、更に好ましくは10,000以下、より更に好ましくは8,000以下、より更に好ましくは5,000以下、より更に好ましくは3,000以下、より更に好ましくは2,000以下である。
工程1で得られたオリゴマー分散剤の分子量分布(Mw/Mn)は、オリゴマー分散剤の分散性の観点、並びに、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、好ましくは2以上、より好ましくは2.3以上、更に好ましくは2.5以上であり、そして、好ましくは6以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは4以下、より更に好ましくは3以下である。
なお、重量平均分子量、数平均分子量及び分子量分布の測定は、実施例に記載のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により行うことができる。
<工程2>
工程2は、顔料と、工程1で得られたオリゴマー分散剤と、水とを混合して、顔料水分散液を得る工程である。これにより、顔料を均一に分散させることができる。
顔料水分散液を得る方法に特に制限はないが、効率的に顔料水分散液を得る観点から、顔料、オリゴマー分散剤、及び水系媒体を含有する顔料混合物(以下、単に「顔料混合物」ともいう)を分散処理する方法が好ましい。
〔顔料〕
本発明に用いる顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよく、レーキ顔料、蛍光顔料を用いることもできる。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
無機顔料の具体例としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、ベンガラ、酸化クロム等の金属酸化物、真珠光沢顔料等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
有機顔料の具体例としては、アゾレーキ顔料、不溶性モノアゾ顔料、不溶性ジスアゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料類;フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ベンツイミダゾロン顔料、スレン顔料等の多環式顔料類等が挙げられる。
色相は特に限定されず、ホワイト、ブラック、グレー等の無彩色顔料;イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、レッド、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。
好ましい有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー、C.I.ピグメント・レッド、C.I.ピグメント・オレンジ、C.I.ピグメント・バイオレット、C.I.ピグメント・ブルー、及びC.I.ピグメント・グリーンから選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。
体質顔料としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
なお、これらの顔料は1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
顔料としては、これらの中でも、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、好ましくは無機顔料を含み、より好ましくは金属酸化物を含み、更に好ましくは酸化チタンを含み、より更に好ましくは酸化チタンである。
酸化チタンの粒子形状は、粒状、針状等があり、特に制限されないが、その平均一次粒子径は、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、好ましくは40nm以上、より好ましくは100nm以上、更に好ましくは150nm以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは400nm以下、より好ましくは350nm以下、更に好ましくは300nm以下、より更に好ましくは250nm以下である。
なお、酸化チタンの平均一次粒子径は、一次粒子の長径の算術平均であり、実施例に記載の方法により測定される。
酸化チタンの結晶構造には、ルチル型(正方晶)、アナターゼ型(正方晶)、ブルッカイト型(斜方晶)があるが、結晶の安定性及び入手性の観点から、ルチル型酸化チタンを用いることが好ましい。
酸化チタンは気相法又は液相法で製造することができるが、結晶性の高いものを得られ易いことから、気相法で製造された酸化チタンがより好ましい。
酸化チタンは、未処理のものを用いることもできるが、良好な分散性を得る観点から、表面処理されたものが好ましい。酸化チタンの表面処理としてはアルミナ(Al)、酸化亜鉛等の無機物による表面処理や、チタンカップリング剤、シランカップリング剤、シリコーンオイル等の有機物による表面処理等が挙げられる。
ルチル型酸化チタンの市販品例としては、石原産業株式会社製の商品名:タイペークR、CR、PFシリーズ、堺化学工業株式会社製の商品名:Rシリーズ、テイカ株式会社製の商品名:JR、MTシリーズ、チタン工業株式会社製の商品名:KURONOS KRシリーズ、huntsmann社製の商品名:TRシリーズ等が挙げられる。
(水系媒体)
前記水系媒体は、水を主成分とする媒体をいう。前記水系媒体には、顔料粒子への濡れ性、オリゴマー分散剤の溶解性、及びオリゴマー分散剤の顔料粒子への吸着性の観点から、更に有機溶媒を添加してもよい。該有機溶媒としては、炭素数1以上4以下の脂肪族アルコール、炭素数3以上8以下のケトン類、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中でも、オリゴマー分散剤の溶解性、及びオリゴマー分散剤の顔料粒子への吸着性の観点から、炭素数4以上6以下のケトンが好ましく、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンがより好ましく、メチルエチルケトンが更に好ましい。オリゴマー分散剤を溶液重合法で合成した場合には、重合で用いた溶媒をそのまま用いてもよい。
前記水系媒体中の水の含有量は、環境性の観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上である。
有機溶媒を添加した場合には、工程3を行う前に、公知の方法で有機溶媒を除去することが好ましい。得られた顔料水分散液中の有機溶媒は実質的に除去されていることが好ましいが、本発明の効果を損なわない限り、残存していてもよい。残留有機溶媒の量は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である。
また必要に応じて、有機溶媒を留去する前に分散液を加熱撹拌処理することもできる。
(中和剤)
ラジカル重合性モノマー(a)としてイオン性官能基を含むモノマーを用いる場合には、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、更に中和剤を添加し、混合して、イオン性官能基の少なくとも一部を中和することが好ましい。中和剤としては、アルカリ金属水酸化物や有機アミン等の塩基性化合物が挙げられる。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等が挙げられ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
有機アミンとしては、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはアルカリ金属水酸化物であり、より好ましくは水酸化ナトリウムである。また、オリゴマー分散剤を予め中和しておいてもよい。
オリゴマー分散剤の中和度は、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、好ましくは10モル%以上、より好ましくは15モル%以上、更に好ましくは20モル%以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは100モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは50モル%以下である。
ここで中和度とは、中和剤のモル当量数を中和前のオリゴマー分散剤のイオン性官能基のモル当量数で除した値、即ち「中和剤のモル当量数/オリゴマー分散剤のイオン性官能基のモル当量数」の値である。本来、中和度は100モル%を超えることはないが、本発明では中和剤のモル当量数から計算するため、中和剤を過剰に用いた場合は100モル%を超える。
(分散処理)
顔料混合物の分散処理は、特に制限はなく、剪断応力を加える分散だけで顔料粒子の平均粒径を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、好ましくは顔料混合物を予備分散させた後、更に剪断応力を加えて本分散を行い、顔料粒子の平均粒径を所望の粒径とするよう制御することが好ましい。
予備分散においては、アンカー翼、ディスパー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置、超音波ホモジナイザー等の超音波分散機等が挙げられる。中でも超音波分散機が好ましい。
本分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ニーダー等の混練機、マイクロフルイダイザー等の高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機が挙げられる。これらの中では、顔料を小粒子径化する観点から、メディア式分散機を用いることが好ましい。
メディア式分散機を用いる場合、メディアの材質は、ジルコニア、チタニア等のセラミックス、ポリエチレン、ナイロン等の高分子材料、金属等が好ましく、摩耗性の観点からジルコニアが好ましい。また、メディアの直径は、顔料を十分に微細化する観点から、好ましくは0.003mm以上、より好ましくは0.01mm以上、更に好ましくは0.03mm以上であり、そして、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.3mm以下、更に好ましくは0.1mm以下である。
分散時間は、顔料を十分に微細化する観点から、好ましくは0.3時間以上、より好ましくは1時間以上であり、そして、顔料水分散液の製造効率の観点から、好ましくは200時間以下、より好ましくは50時間以下である。
得られた顔料水分散液は、顔料にオリゴマー分散剤が吸着した粒子を含有し、該粒子は水系媒体中に分散された状態で存在している。
顔料水分散液の不揮発成分濃度(固形分濃度)は、顔料水分散液の分散安定性の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。
なお、顔料水分散液の固形分濃度は、実施例に記載の方法により測定される。
顔料分散液中の顔料の含有量は、顔料水分散液の分散安定性の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
顔料水分散液中のオリゴマー分散剤に対する顔料の質量比(顔料/オリゴマー分散剤)は、顔料表面へのオリゴマー分散剤の吸着を高め、顔料を均一に分散させる観点から、好ましくは70/30以上、より好ましくは75/25以上、更に好ましくは80/20以上、より更に好ましくは85/15以上であり、そして、好ましくは99/1以下、より好ましくは97/3以下、更に好ましくは95/5以下、より更に好ましくは93/7以下である。
<工程3>
工程3は、工程2で得られた顔料水分散液と、ラジカル重合性モノマー(b)とを混合してシード重合し、前記顔料を被覆して、顔料水分散体を得る工程である。
工程3におけるシード重合法は、工程2で得られた顔料にオリゴマー分散剤が吸着した粒子をシードとして、ラジカル重合性モノマー(b)を添加、混合し、該シードにラジカル重合性モノマー(b)が吸収され、シード内でラジカル重合する方法である。
〔ラジカル重合性モノマー(b)〕
ラジカル重合性モノマー(b)は、顔料水分散体の分散安定性の観点、並びに、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、好ましくは疎水性モノマー(b−1)を含み、より好ましくは脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート及び芳香族基含有モノマーから選ばれる1種以上を含む。脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート及び芳香族基含有モノマーの具体例としては、前述のラジカル重合性モノマー(a)と同様のものが挙げられる。それらの中でも、顔料水分散体の分散安定性の観点、並びに、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、好ましくは脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレートであり、より好ましくは炭素数1以上8以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレートであり、更に好ましくは炭素数1以上6以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレートである。
ラジカル重合性モノマー(b)は、前記のモノマーの1種を単独で又は2種以上を用いることができる。
ラジカル重合性モノマー(b)は、疎水性モノマー(b−1)以外に、カルボン酸モノマー、スルホン酸モノマー、リン酸モノマー等のアニオン性基を有するモノマー、又はカチオン性基を有するモノマーを含むこともできる。これらの中でも、好ましくはアニオン性基を有するモノマーであり、より好ましくはカルボン酸モノマーであり、更に好ましくは(メタ)アクリル酸である。
また、必要に応じて更に、前記ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、前記アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ(エチレングリコール/プロピレングリコール共重合)(n=1〜30、その中のエチレングリコール:n=1〜29)(メタ)アクリレート等を用いることもできる。
疎水性モノマー(b−1)以外の他のモノマーの含有量は、顔料水分散体の分散安定性の観点、並びに、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、ラジカル重合性モノマー(b)総量中、好ましく20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
ラジカル重合性モノマー(b)の添加方法に特に制限はなく、モノマー滴下法、モノマー一括仕込み法、プレエマルション法等の公知の方法で行うことができる。これらの中でも、モノマー滴下法が好ましい。ラジカル重合性モノマー(b)の滴下は、重合制御の観点から、連続滴下が好ましく、その滴下速度は、ラジカル重合体モノマー(b)の全量を滴下する時間として、好ましくは3時間以上、より好ましくは12時間以上であり、そして、好ましくは48時間以下、より好ましくは24時間以下である。
〔ラジカル重合開始剤(b)〕
工程3において、ラジカル重合開始剤(b)(以下、単に「開始剤(b)」ともいう)を用いることが好ましい。開始剤(b)は、通常の乳化重合に用いられるものであればいずれも使用できるが、水溶性の重合開始剤が好ましい。具体的には、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素等の無機過酸化物;t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド等のアゾ重合開始剤;レドックス系重合開始剤等が挙げられる。これらの中でも、ラジカル重合性モノマー(b)の重合を促進し、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、アゾ重合開始剤が好ましい。
アゾ重合開始剤としては、アニオン性のアゾ重合開始剤、非イオン性のアゾ重合開始剤が挙げられる。アニオン性のアゾ重合開始剤としては、例えば、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン‐1‐カルボン酸)等の炭素数8以上16以下のアゾビスカルボン酸、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、4,4’−アゾビス(2−シアノペンタン酸)等の炭素数8以上16以下のアゾビスシアノカルボン酸、及びこれらの塩等のカルボキシ基含有アゾ化合物が挙げられる。
非イオン性のアゾ重合開始剤としては、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−[1,1’−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド〕、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−[1,1’−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド〕、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等のヒドロキシ基含有アゾアミド化合物等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはアニオン性のアゾ重合開始剤であり、より好ましくはカルボキシ基含有アゾ化合物であり、更に好ましくは炭素数10以上14以下のアゾビスシアノカルボン酸及びその塩から選ばれる少なくとも1種であり、より更に好ましくは4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)及びその塩から選ばれる少なくとも1種である。
工程3においては、本発明の効果を阻害しない範囲で、連鎖移動剤を用いてもよい。例えば、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン等のメルカプタン類;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソブチルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲン類;ジペンテン、インデン、1、4−シクロヘキサジエン、ジヒドロフラン、キサンテン等が挙げられる。
工程3においては、重合安定性を高めるために、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、乳化重合用のアニオン性又は非イオン性等の公知の界面活性剤を用いることができる。
工程3において、シード重合の分散媒として水を用いることが好ましい。
分散媒全体における水の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは75質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上である。
顔料の分散性を向上させる観点から、水の他に任意の有機溶媒を加えることもできる。
用いることのできる有機溶媒としては、炭素数1以上6以下のアルコール類、ケトン類の他、エーテル類、アミド類、芳香族炭化水素類、炭素数5以上10以下の脂肪族炭化水素類等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは炭素原子数1以上5以下の酸素原子を有する極性溶媒である。具体的にはメタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトンが挙げられ、メチルエチルケトンが好ましい。
水と、これらの有機溶媒の比率に特に制限はないが、顔料の分散性を向上させる観点から、有機溶媒と水の質量比(有機溶媒/水)は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.08以上、更に好ましくは0.10以上、より更に好ましくは0.12以上であり、そして、好ましくは0.40以下、より好ましくは0.35以下、更に好ましくは0.30以下、より更に好ましくは0.25以下である。
シード重合の重合温度は、重合開始剤の分解温度により適宜調整されるが、反応性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、得られるポリマーの分子量分布の観点から、好ましくは90℃以下、より好ましくは85℃以下である。
重合時間は、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上であり、そして、好ましくは10時間以下、より好ましくは5時間以下である。
重合雰囲気は、反応性の観点から、窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
ラジカル重合性モノマー(b)の量は、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、工程3の重合反応の全系に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
顔料に対するラジカル重合性モノマー(b)の質量比〔ラジカル重合性モノマー(b)/顔料〕は、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、シード重合時において、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは1.0以上であり、そして、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.7以下、更に好ましくは1.5以下である。
オリゴマー分散剤に対するラジカル重合性モノマー(b)の質量比〔ラジカル重合性モノマー(b)/オリゴマー分散剤〕は、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、シード重合時において、好ましくは1以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上であり、そして、好ましくは50以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは20以下である。
開始剤(b)の量は、ラジカル重合性モノマー(b)100質量部に対して、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、より更に好ましくは0.5質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。
本発明においては、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、得られたポリマーを更に架橋処理することもできる。架橋剤としては、分子中に2以上のエポキシ基等の反応性官能基を有する化合物、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等が好ましい。
本発明の顔料水分散体の不揮発成分濃度(固形分濃度)は、顔料水分散体の分散安定性の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。
なお、顔料水分散体の固形分濃度は、実施例に記載の方法により測定される。
本発明に係る顔料水分散体において、顔料とポリマーの質量比(顔料/ポリマー)は、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、好ましくは15/85以上、より好ましくは20/80以上、更に好ましくは25/75以上、より更に好ましくは30/70以上であり、そして、好ましくは80/20以下、より好ましくは70/30以下、更に好ましくは60/40以下、より更に好ましくは50/50以下である。ここでポリマーの質量は、工程2で用いたオリゴマー分散剤及び工程3でシード重合して得られるポリマーの合計量となる。
前記質量比(顔料/ポリマー)の算出は、顔料とポリマーの質量を製造時の原料の仕込み量や、熱重量測定(TG)等から求めることができる。
本発明に係る顔料水分散体における顔料微粒子のポリマーによる被覆状態の確認は、該水分散体を電子顕微鏡観察することにより行うことができる。
ポリマーによる顔料の被覆の程度を表すポリマー被覆率は、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは97%以上、より更に好ましくは99%以上であり、そして100%以下である。被覆率が100%の場合は、原料の顔料がポリマーで完全に被覆されたことを表し、0%の場合は被覆されていないことを表す。
被覆率は、例えば顔料が酸化チタンの場合には、原料顔料である酸化チタンと顔料微粒子のX線光電子分光分析法(XPS)による粒子表面のチタン、アルミニウム、亜鉛の原子分率の総和(以下、「チタン等原子分率」ともいう)を測定し、下記式(1)により算出することができる。
ポリマー被覆率(%)={1−(顔料微粒子の表面チタン原子分率)/(酸化チタンの表面チタン原子分率)}×100 (1)
黒色顔料及び有彩色顔料を用いる場合は、顔料水分散体中の顔料微粒子の平均粒径は、濃縮時のインク粘度の上昇を抑え、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは30nm以上、更に好ましくは40nm以上、より更に好ましくは50nm以上、より更に好ましくは60nm以上、より更に好ましくは75nm以上、より更に好ましくは80nm以上、より更に好ましくは100nm以上、より更に好ましくは150nm以上、より更に好ましくは200nm以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは600nm以下、より好ましくは500nm以下、更に好ましくは400nm以下、より更に好ましくは300nm以下である。
白色顔料を用いる場合は、顔料水分散体中の顔料微粒子の平均粒径は、隠蔽性の観点、並びに、濃縮時のインク粘度の上昇を抑え、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、好ましくは100nm以上、より好ましくは150nm以上、更に好ましくは200nm以上であり、そして、好ましくは600nm以下、より好ましくは500nm以下、更に好ましくは400nm以下、より更に好ましくは300nm以下である。
なお、顔料微粒子の平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
また、顔料水分散体中の顔料微粒子は、該粒子の膨潤や収縮、該粒子間の凝集が生じないことが好ましく、後述する水系インク中の顔料微粒子の平均粒径は、顔料水分散体中の平均粒径と同じであることが好ましい。水系インク中の顔料微粒子の好ましい平均粒径の態様は、顔料水分散体中の平均粒径の好ましい態様と同じである。水系インク中の顔料微粒子の平均粒径も、実施例に記載の顔料水分散体中の顔料微粒子の平均粒径と同様の方法により測定される。
[水系インク]
本発明のインクは、前記顔料水分散体を含み、該顔料水分散体をそのまま、あるいは更に水を添加、混合することにより得ることができる。また、インクには、必要に応じて、通常用いられる有機溶媒、界面活性剤、湿潤剤、浸透剤、粘度調整剤、消泡剤、防黴剤、防錆剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤を添加することができる。
本発明のインクは、有機溶媒を含有することが好ましい。
有機溶媒としては、多価アルコール、多価アルコールアルキルエーテル、多価アルコールアリールエーテル、環状カーボネート、含窒素複素環化合物、アミド、アミン、含硫黄化合物等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは多価アルコール及び多価アルコールアルキルエーテルから選ばれる1種以上であり、より好ましくはジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、グリセリン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルから選ばれる1種以上である。
本発明のインクは、更に界面活性剤を含有することが好ましい。
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは非イオン性界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種である。
本発明のインク中における各成分の含有量及びインク物性は、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、以下のとおりである。
水系インク中の顔料の含有量は、印字濃度の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、更に好ましくは2質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
水系インク中の顔料とポリマーの質量比(顔料/ポリマー)は、好ましくは15/85以上、より好ましくは20/80以上、更に好ましくは25/75以上、より更に好ましくは30/70以上であり、そして、好ましくは80/20以下、より好ましくは70/30以下、更に好ましくは60/40以下、より更に好ましくは50/50以下である。ここでポリマーの質量は、工程2で用いたオリゴマー分散剤及び工程3でシード重合により生成されるポリマーの合計量となる。
水系インク中の有機溶媒の含有量は、保存安定性の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
水系インク中の水の含有量は、環境負荷低減の観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、そして、保存安定性の観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
(水系インク物性)
20℃における水系インクのpHは、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、好ましくは5.5以上、より好ましくは6.0以上、更に好ましくは6.5以上であり、そして、部材耐性、皮膚刺激性の観点から、好ましくは11.0以下、より好ましくは10.0以下、更に好ましくは9.5以下、より更に好ましくは9.0以下である。
なお、20℃における水系インクのpHは、実施例に記載の方法により測定される。
20℃における水系インクの粘度は、密着性、耐折曲げ性及び耐光性を向上させる観点から、好ましくは2.0mPa・s以上、より好ましくは3.0mPa・s以上、更に好ましくは3.5mPa・s以上、より更に好ましくは4.0mPa・s以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは12mPa・s以下、より好ましくは9.0mPa・s以下、更に好ましくは7.0mPa・s以下である。
(インクジェット印刷方法)
本発明のインクは、フレキソ印刷用、グラビア印刷用、又はインクジェット印刷用の水系インクとして用いることができ、インクジェット印刷においても密着性、耐折曲げ性及び耐光性に優れることから、インクジェット印刷用の水系インクとして用いることが好ましい。普通紙、上質紙等の吸水性印刷媒体やインクジェット専用紙等の印刷媒体に印刷するインクジェット印刷方法に用いることができるが、密着性、耐折曲げ性及び耐光性に優れることから、アート紙、コート紙等の低吸水性印刷媒体や合成樹脂フィルム等の非吸水性印刷媒体に印刷するインクジェット印刷方法にも好適に用いることができる。
印刷媒体としては、密着性、耐折曲げ性及び耐光性の向上の観点から、好ましくは合成樹脂フィルムである。合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ナイロンフィルム等が挙げられる。これらのフィルムは、必要に応じてコロナ処理等の表面処理を行っていてもよい。
一般的に入手できる合成樹脂フィルムとしては、例えば、ルミラーT60(東レ株式会社製、ポリエチレンテレフタレート)、PVC80B P(リンテック株式会社製、塩化ビニル)、カイナスKEE70CA(リンテック株式会社製、ポリエチレン)、ユポSG90 PAT1(リンテック株式会社製、ポリプロピレン)、ボニールRX(興人フィルム&ケミカルズ株式会社製、ナイロン)等が挙げられる。
前記インクジェット印刷方法においては、インク液滴を印刷媒体上に吐出して印刷した後、印刷媒体上に着弾したインク液滴を乾燥する工程を有することが好ましい。
乾燥工程においては、印字品質の向上の観点から、印刷媒体表面温度は、好ましくは25℃以上、より好ましくは30℃以上であり、そして、熱による印刷媒体の変形抑制とエネルギー低減の観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは50℃以下である。
以下の実施例、参考例及び比較例において、「%」は特記しない限り「質量%」である。
(1)オリゴマー分散剤の数平均分子量、重量平均分子量及び分子量分布の測定
N,N−ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲルクロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8320GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSKgel SuperAWM−H、TSKgel SuperAW3000、TSKgel guardcolumn SuperAW−H)、流速:0.5mL/min〕により、標準物質として分子量既知の単分散ポリスチレンキット〔PStQuick B(F−550、F−80、F−10、F−1、A−1000)、PStQuick C(F−288、F−40、F−4、A−5000、A−500)、東ソー株式会社製〕を用いて測定した。
なお、参考例2では、オリゴマー分散剤A1とオリゴマー分散剤A2を質量比(1/1)で混合したものを用いて測定を行った。
(2)酸化チタンの平均一次粒子径の測定
酸化チタンの平均一次粒子径は、透過電子顕微鏡「JEM−2100」(日本電子株式会社製)を用いて、画像解析で500個の酸化チタン一次粒子を無作為に抽出してその粒子径を測定し、その平均を算出して算術平均粒子径とした。なお、酸化チタンに長径と短径がある場合は、長径を用いて算出した。
(3)顔料水分散液及び顔料水分散体の固形分濃度の測定
赤外線水分計「FD−230」(株式会社ケツト科学研究所製)を用いて、測定試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分/変動幅0.05%)の条件にて乾燥させた後、測定試料の水分(%)を測定し、下記式により固形分濃度を算出した。
固形分濃度(%)=100−(測定試料の水分(%))
(4)顔料水分散体の平均粒径
株式会社堀場製作所製、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−920」を用いて、測定用セルに蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で体積中位粒径(D50)を測定した。
(5)水系インクの粘度の測定
E型粘度計「TV−25」(東機産業株式会社製、標準コーンロータ1°34’×R24使用、回転数50rpm)を用いて、20℃にて粘度を測定した。
(6)水系インクのpHの測定
pH電極「6337−10D」(株式会社堀場製作所製)を使用した卓上型pH計「F−71」(株式会社堀場製作所製)を用いて、20℃における水系インクのpHを測定した。
実施例1
(1)顔料水分散体1の製造
(工程1)
温度計、還流装置を具備した200mL四つ口丸底フラスコに、メチルエチルケトン100g、モノマー(a−1)としてアクリル酸(和光純薬工業株式会社製)33.9g、モノマー(a−2)としてスチレン(和光純薬工業株式会社製)26g、不可逆的連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸(和光純薬工業株式会社製、)5.4g、開始剤(a)として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製、商品名:V-65)1.0gを入れ、マグネチックスターラーで10分間混合して、混合物を得た。該混合物を窒素で10分間バブリングした後、水浴にて77℃に加温し、5時間撹拌し、重合反応を完結させた。その後、該反応液を1Lのn−ヘキサン中に投入し、再沈殿させた。その後、80℃、8kPaで、8時間乾燥させ、数平均分子量600、重量平均分子量1,700のオリゴマー分散剤A1を収率99%で得た。
(工程2)
200mLガラスビーカーにイオン交換水90g、工程1で得られたオリゴマー分散剤A1を2g、水酸化ナトリウム0.22g(オリゴマー分散剤A1の中和度:30モル%に相当)、顔料として酸化チタン(テイカ株式会社製、商品名:JR−405、ルチル型、アルミナ(Al)処理、平均一次粒子径210nm)22gをいれ、マグネチックスターラーで撹拌しながら超音波分散機(株式会社日本精機製作所製、型式:US−3001)で20分間分散した。その後、ビーズミル型分散機(寿工業株式会社製、ウルトラ・アペックス・ミル、型式:UAM−05、メディア粒子:ジルコニアビーズ、粒径:50μm)を用いて20℃で8時間混合分散後、200メッシュ金網でジルコニアビーズを取り除き、イオン交換水で濃度調整を行い、顔料水分散液1(固形分濃度20%)を得た。
(工程3)
次いでセプタムシール及び三方コックを具備した100mLの2口なす型フラスコに、工程2で得られた顔料水分散液1を60g、及び開始剤(b)として4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(和光純薬工業株式会社製、商品名:V−501、水溶性アゾ重合開始剤)を0.10g入れ、窒素で10分間バブリングした。次いでメチルメタクリレート14gを入れた20mLのハミルトンガスタイトシリンジをマイクロシリンジポンプMSP−3D(アズワン株式会社製)にセットした。前記なす型フラスコを70℃の水浴につけ、ラジカル重合性モノマー(b)としてメチルメタクリレートを1.0mL/hの速度で反応液に滴下した。滴下終了後、80℃で2時間重合反応させた。その後、回転式蒸留装置「ロータリーエバポレーターN−1000S」(東京理化器械株式会社製)を用いて、回転数50rpm、温浴を60℃に調整し、圧力0.07MPaで固形分濃度40%になるまで濃縮し、顔料水分散体1〔固形分濃度:40%、質量比(顔料/ポリマー)=42/58〕を得た。
(2)水系インク1の製造
ガラス製容器に、顔料水分散体1を8g、及びイオン交換水を13g入れ、マグネチックスターラーで10分間撹拌した。次いで、マグネチックスターラーで撹拌を継続しながら、プロピレングリコール12g、サーフィノール104PG−50(エアープロダクツジャパン社製、アセチレン系非イオン性界面活性剤、プロピレングリコール溶液、有効分50%)0.2gを入れ、更にマグネチックスターラーで1時間撹拌した。その後、5μmのディスポーザルメンブレンフィルター(ザルトリウス社製、ミニザルト)を用いてろ過を行い、水系インク1を得た。該インク1のpHは8.2であった。該インク1を下記の方法で印刷し、印刷物の評価を行った。
参考例
表1−1に従い、実施例1の工程1と同様に行い、オリゴマー分散剤A2を得た。オリゴマー分散剤A2の物性値を表1−1に示す。
次いで、実施例1の工程2においてオリゴマー分散剤A1の代わりに、オリゴマー分散剤A1とオリゴマー分散剤A2をそれぞれ1gずつ用いた以外は実施例1の工程2及び工程3と同様に行い、顔料水分散体2及び水系インク2を得た。
実施例3、7〜16、参考例4〜6及び比較例1〜3
表1−1〜1−3に従い、実施例1の工程1と同様に行い、オリゴマー分散剤A3〜A16及び分散剤C1〜C3を得た。オリゴマー分散剤A3〜A16及び分散剤C1〜C3の物性値を表1−1〜1−3に示す。
次いで、実施例1の工程2においてオリゴマー分散剤A1の代わりに、実施例3、7〜16、参考例4〜6では表2に示すオリゴマー分散剤A3〜A16を、比較例1〜3では表2に示す分散剤C1〜C3を用いた以外は、実施例1の工程2及び工程3と同様に行い、顔料水分散体3〜16及びC1〜C3、及び水系インク3〜16及びC1〜C3を得た。
実施例17
実施例1の工程2において、顔料として酸化チタンJR−405の代わりに、シアン顔料(C.I.ピグメント・ブルー15:3、大日精化工業株式会社製)を用いた以外は実施例1と同様に行った。
なお、表1−1〜1−3及び表2の各表記は以下のとおりである。
〔モノマー(a−1)〕
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
PEGMA:ポリエチレングリコールメタクリレート(数平均分子量:360)
〔モノマー(a−2)〕
St:スチレン
MMA:メチルメタクリレート
〔ラジカル重合開始剤(a)〕
V−65:2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)
V−70:2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)
V−40:1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)
〔不可逆的連鎖移動剤〕
3MP:3−メルカプトプロピオン酸
〔可逆的連鎖移動剤〕
RAFT:2-{[(ブチルスルファニル)カルボノチオイル]スルファニル}プロパン酸
〔その他〕
CTA:不可逆的連鎖移動剤又は可逆的連鎖移動剤
Figure 0006927521

Figure 0006927521
Figure 0006927521
<水系インクの評価>
(印刷方法、インクジェット記録方式)
温度25±1℃、相対湿度30±5%の環境で、インクジェットヘッド(京セラ株式会社製KJ4B−QA06NTB−STDV、ピエゾ式、ノズル数2656個)を装備した印刷評価装置(株式会社トライテック製)に、表2に示す水系インクを充填した。
ヘッド電圧26V、周波数20kHz、吐出液適量18pl、ヘッド温度32℃、解像度600dpi、吐出前フラッシング回数200発、負圧−4.0kPaを設定し、印刷媒体の長手方向と搬送方向が同じになる向きに、印刷媒体を搬送台に減圧で固定した。前記印刷評価装置に印刷命令を転送し、Duty100%の画像を印刷した。
なお、印刷媒体として、ポリエステルフィルム(東レ株式会社製、ルミラーT60#50、厚み50um)を用い、印字終了後、定温乾燥機(ヤマト科学株式会社製 DVS602)にて40℃で20分間加熱乾燥を行い、評価用印刷物を得た。
(密着性)
前記評価用印刷物の非印刷面に両面テープ(スリーエムジャパン株式会社製、スコッチ(R)強力両面テープ、PSD−30)を張り、ステンレス板(株式会社アズワン社製、SUS304、300mm×300mm)に50g/cmで強く張り付けた。次いで印刷面にカッターナイフを用いて素地に達する2mm間隔の縦横11本の切込みを入れて100個の碁盤目を作り、碁盤目部分に粘着テープ(ニチバン社製、品番:CT−12M)を50g/cmで強く圧着させ、テープの端を45°の角度で一気に引き剥がし、印刷面の剥がれなかったマス目の数を計測した。結果を表2に示す。
(耐折り曲げ性)
前記評価用印刷物を、50g/cmで30秒間内側に折り曲げ、再度開き、破損した画像を柔らかい布でふき取った後の、画像欠損の幅(mm)の最大値を印刷物の耐折り曲げ性の指標とした。画像欠損の幅の最大値が小さいほど、印刷物の耐折り曲げ性が良好である。結果を表2に示す。
(耐光性)
前記評価用印刷物をサンシャインウェザーメーター「WEL−SUN−DC−B」(スガ試験機株式会社製、光源:カーボンアーク灯、照射時間48時間)に入れ、耐光性試験を行ない、色相変化量によって耐光性を評価した。
色相変化量は、光学濃度計(グレタグマクベス社製)を用い印刷物の光学反射濃度を測定し、照射前後におけるL***を色彩色差計(グレタグマクベス社製)で測定し、下記式により、色相変化量ΔEを算出して耐光性を評価した。色相変化量が小さい値ほど、耐光性が良好である。結果を表2に示す。
色相変化量ΔE=[(L* 1−L* 22+(a* 1−a* 22+(b* 1−b* 221/2
(照射前のL***値:L* 1、a* 1、b* 1
(照射後のL***値:L* 2、a* 2、b* 2
Figure 0006927521

なお、表2中の注釈は以下のとおりである。
*1:実施例1の工程2において、オリゴマー分散剤A1とオリゴマー分散剤A2を質量比(1/1)で混合したものを用いた。
*2:開始剤(a)の10時間半減期温度(℃)である。
また、前述のとおり、実施例17以外の実施例、参考例及び比較例は顔料として酸化チタンを用い、実施例17はシアン顔料を用いたものである。
表2より、実施例1、3、7〜17、参考例2、4〜6の水系インクは、比較例1〜3に比べて、密着性、耐折り曲げ性及び耐光性のいずれにも優れていた。
比較例1は、工程1で開始剤(a)を用いずに熱によるラジカル重合であったため、分散剤の収率が低く、分散剤の数平均分子量及び重量平均分子量が高い。そのため、実施例1、3、7〜17、参考例2、4〜6と比べて密着性、耐折り曲げ性及び耐光性のいずれにも劣る。
比較例2は、連鎖移動剤を用いていないため、分散剤の数平均分子量及び重量平均分子量が高く、実施例1、3、7〜17、参考例2、4〜6と比べて密着性、耐折り曲げ性及び耐光性のいずれにも劣る。
比較例3は、連鎖移動剤としてRAFT剤を用いているため、分散剤の分子量分布が狭く、実施例1、3、7〜17、参考例2、4〜6と比べて密着性、耐折り曲げ性及び耐光性のいずれにも劣る。
本発明の製造方法により得られる顔料水分散体は、水系インクに含有させることにより、非吸水性印刷媒体に印刷した際においても、印刷物の密着性、耐折り曲げ性、及び耐光性に優れる。

Claims (8)

  1. 料水分散体の製造方法であって、
    工程1:ラジカル重合性モノマー(a)と、ラジカル重合開始剤(a)と、不可逆的連鎖移動剤とを混合して重合し、オリゴマー分散剤を得る工程、
    工程2:顔料と、工程1で得られたオリゴマー分散剤と、水とを混合して、顔料水分散液を得る工程、及び
    工程3:工程2で得られた顔料水分散液と、ラジカル重合性モノマー(b)とを混合してシード重合し、前記顔料を被覆して、顔料水分散体を得る工程を有し、
    前記不可逆的連鎖移動剤が、酸性基を含むチオール系連鎖移動剤であり、
    前記工程1で得られたオリゴマー分散剤のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した分子量分布(Mw/Mn)が2以上5以下である、顔料水分散体の製造方法。
  2. 前記不可逆的連鎖移動剤が、カルボキシ基含有メルカプタンである、請求項1に記載の顔料水分散体の製造方法。
  3. 前記工程1で得られたオリゴマー分散剤の重量平均分子量(Mw)が、700以上20,000以下である、請求項1又は2に記載の顔料水分散体の製造方法。
  4. 前記ラジカル重合開始剤(a)が、アゾ基を含むアゾ重合開始剤である、請求項1〜のいずれかに記載の顔料水分散体の製造方法。
  5. 工程1において、前記不可逆的連鎖移動剤のモル数の総和に対する前記ラジカル重合性モノマー(a)のモル数の総和のモル比〔ラジカル重合性モノマー(a)/不可逆的連鎖移動剤〕が5以上30以下である、請求項1〜のいずれかに記載の顔料水分散体の製造方法。
  6. 工程1において、前記不可逆的連鎖移動剤のモル数の総和に対する前記ラジカル重合開始剤(a)のモル数の総和のモル比〔ラジカル重合開始剤(a)/不可逆的連鎖移動剤〕が0.05以上0.5以下である、請求項1〜のいずれかに記載の顔料水分散体の製造方法。
  7. 前記顔料が酸化チタンを含む、請求項1〜のいずれかに記載の顔料水分散体の製造方法。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載の製造方法で得られる顔料水分散体に有機溶媒を添加する、水系インクの製造方法
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