JP6924057B2 - トマト果実の生産方法および鮮度保持方法 - Google Patents

トマト果実の生産方法および鮮度保持方法 Download PDF

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Description

本発明は、果実中のプロリンなどの特定成分の含量を増加させるトマト果実の生産方法と鮮度保持方法に関する。
近年、トマト等の果菜類に対し特定波長の光を照射して育成することで、果実中の各種有用成分の含量を増やし、また、果実肥大等を促進することによって、果実の付加価値を向上させる試みがなされている。
例えば、特許文献1には、トマトの栽培中に遠赤外光や赤色光を照射することで、トマト果実中のアミノ酸、カリウム、カロテノイド、アスコルビン酸およびビタミンB6を増加させる技術が開示されている。
また、特許文献2には、トマト等の果菜類の栽培中に緑色光を照射することで、果菜類の着果および果実肥大を促進させる技術が開示されている。
しかし、特許文献1に開示された技術において遠赤外光を照射する場合には、トマトの温度や作業者の体温を上昇させてしまうなどの悪影響が生ずる虞がある。
また、特許文献2に開示された技術は、果菜類の収率を向上させることはできるが、果菜類に含まれる有用成分の増加を図るものではない。
特開2012−70727号公報 特許5364163号公報
そこで、本発明は、トマト果実中のプロリンなどの特定成分の増加を図ることによって、トマト果実の収穫後の鮮度保持期間を延長することができ、さらに、美味しく外観を美しくすることができるトマト果実の生産方法と鮮度保持方法を提供することを課題とする。
上記課題は以下の手段により解決された。
[1] トマトに対し、暗黒条件下において480〜560nmの波長領域内で設定された波長を含む光量子束密度1μmol/m/s以上の緑色光を、トマト果実の収穫前4週間以上の期間に略毎日3時間以上照射することで、トマト果実の単位質量あたりのプロリンの含量を増加させることを特徴とするトマト果実の生産方法。
[2] トマトに対し、暗黒条件下において480〜560nmの波長領域内で設定された波長を含む光量子束密度5〜100μmol/m/sの緑色光を、トマト果実の収穫前4〜19週間の期間に略毎日5〜8時間照射することで、トマト果実の単位質量あたりのプロリンの含量を増加させることを特徴とするトマト果実の生産方法。
[3] さらに、トマト果実の単位質量あたりのグルタミン酸、アスパラギン酸およびリコピンからなる群から選択される一種以上の成分の含量を増加させることを特徴とする上記[1]または[2]に記載のトマト果実の生産方法。
[4] トマトに対し、暗黒条件下において480〜560nmの波長領域内で設定された波長を含む光量子束密度1μmol/m/s以上の緑色光を、トマト果実の収穫前4週間以上の期間に略毎日3時間以上照射することを特徴とするトマト果実の鮮度保持方法。
[5] トマトに対し、暗黒条件下において480〜560nmの波長領域内で設定された波長を含む光量子束密度5〜100μmol/m/sの緑色光を、トマト果実の収穫前4〜19週間の期間に略毎日5〜8時間照射することを特徴とするトマト果実の鮮度保持方法。
本発明における上記[1]に記載のトマト果実の生産方法によれば、トマトの栽培中に、暗黒条件下において480〜560nmの波長領域内で設定された波長を含む光量子束密度1μmol/m/s以上の緑色光を、トマト果実の収穫前4週間以上の期間に略毎日3時間以上照射することで、トマト果実の単位質量あたりのプロリンの含量を増加させることができる。
プロリンは、一般に植物体の耐乾燥性、浸透圧耐性(耐塩性)および保湿性に関与し、植物のストレス耐性を高める機能を有するアミノ酸として知られている。
上記[1]に記載のトマト果実の生産方法によれば、トマトの栽培に際して、慣行的な栽培法に加えて上記特定条件の緑色光を照射するだけで、トマト果実中のプロリンの含量を増加させることができるため、トマト果実の収穫後の鮮度保持期間を延長することができる。例えば、収穫後のトマト果実について長期間にわたってヘタの萎れを防止し、果実部(トマト果実のヘタ以外の部分)の適度の硬さと果実部表面の光沢を維持することができ、みずみずしさが感じられる外観を保つことができる。
また、本発明における上記[2]に記載のトマト果実の生産方法によれば、収穫後のトマト果実を、20℃のいわゆる常温の環境において2週間以上にわたって鮮度を保持したまま貯蔵することができる。
例えば、トマト果実は、一般に収穫後1日経過するだけでヘタが萎れ始めるが、かかるトマト果実の生産方法によれば、常温において収穫後2週間以上もヘタの萎れを防止することが可能であるため、トマト果実の鮮度を保持して商品価値を維持することができる。
さらに、本発明における上記[3]に記載のトマト果実の生産方法によれば、トマト果実の単位質量あたりのグルタミン酸やアスパラギン酸の含量を増加させることができるので、トマト果実をうま味が強く美味しいものにすることができる。
また、かかるトマト果実の生産方法によれば、トマト果実の単位質量あたりのリコピンの含量を増加させることができるので、トマト果実を赤色が強く美しいものにすることができる。
また、本発明における上記[4]に記載のトマト果実の鮮度保持方法によれば、トマトの栽培に際して、慣行的な栽培法に加えて上記特定条件の緑色光を照射するだけで、トマト果実の収穫後の鮮度保持期間を延長することができる。例えば、収穫後のトマト果実について長期間にわたってヘタの萎れを防止し、果実部の適度の硬さと果実部表面の光沢を維持することができ、みずみずしさが感じられる外観を保つことができる。
さらに、本発明における上記[5]に記載のトマト果実の鮮度保持方法によれば、収穫後のトマト果実を、20℃のいわゆる常温の環境において2週間以上にわたって鮮度を保持したまま貯蔵することができるため、トマト果実の商品価値を長期間維持することができる。
本発明のトマト果実の生産方法および鮮度保持方法の実施形態を説明する。なお、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
また、本発明において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本発明のトマト果実の生産方法および鮮度保持方法は、本発明者らが、トマトに特定条件の緑色光を照射して栽培することで、トマト果実中の各種アミノ酸やその他の有用成分を増加させることができ、特にプロリンを特異的に増加させることができることを発見したことにより完成したものである。
本発明においてトマトに対し照射する緑色光は、480〜560nmの波長領域内で任意に設定された波長を含む緑色光であって、その照射強度は光量子束密度1μmol/m/s以上であり、より好ましくは光量子束密度5〜100μmol/m/sである。かかる緑色光のトマトへの照射部位としては、トマトの植物体の全体であることが好ましいが、一部分でも差し支えない。上記緑色光の照射強度は、トマトの植物体の少なくとも一部分の表面位置において上記光量子束密度の範囲内の値を示す必要がある。
光源は、上記の緑色光を照射できるものであれば、特に限定されず、例えば、緑色LED(発光ダイオード)、緑色蛍光灯、緑色冷陰極管、緑色アーク灯、緑色ネオン管、緑色エレクトロイルミネッセンス(EL)等を採用することができ、さらに、太陽光、白色蛍光灯、白色灯等の光を緑色のフィルターを通過させて緑色光に変換したものをトマトに照射してもよい。また、固定式の光源のみならず、移動式の光源によって複数のトマトを順次に照射していく方法など、トマトの栽培形態や栽培場所に応じて適宜選択することができる。
本発明におけるトマトへの緑色光の照射期間と時間は、トマト果実の収穫前4週間以上の期間に略毎日3時間以上照射する必要があり、トマト果実の収穫前4〜19週間の期間に略毎日5〜8時間照射することがより好ましい。かかる緑色光の照射は毎日行うことが基本であるが、無照射状態が数日間存在しても差し障りない。また、連続照射でもよいし、点滅を繰り返すような照射であってもよい。
また、トマトへの緑色光の照射は、暗黒条件下において行う必要がある。暗黒の状態は、例えば、太陽光を用いる路地栽培の場合は日没後であればよく、ハウス栽培の場合は日没後、あるいは日中であっても、ハウス全体を黒色のシートで覆うなどして暗黒の状態を作出すればよい。また、屋内で行う水耕栽培の場合には、栽培室内を消灯すればよい。
なお、暗黒の状態は、完全に暗黒である必要はなく、作業者が簡易的な作業を行うことができる程度の可視光が残存していても差し支えない。
本発明のトマト果実の生産方法は、上記の緑色光照射を行う以外は、慣行的なトマトの栽培方法と同様の方法で実施でき、例えば、肥料及び水の供給、太陽光または人工光による生育のための光照射、温度・湿度管理等は、慣行的な方法を適用すればよい。また、本発明は、路地栽培、ハウス栽培または水耕栽培等の何れにも適応できる。
本発明のトマト果実の生産方法によれば、トマト果実の単位質量あたりのプロリン、グルタミン酸、アスパラギン酸などのアミノ酸の含量を増加させることができるが、とりわけプロリンの含量を大幅に増加させることができる。プロリンは、一般に植物体の耐乾燥性、浸透圧耐性(耐塩性)および保湿性を高める機能を有すると言われており、本発明においては、収穫後のトマト果実の鮮度保持期間の延長効果に関与していると考えられる。
本発明によるトマト果実の鮮度保持期間の延長効果としては、例えば、収穫後のトマト果実について、20℃において2週間以上にわたってヘタの萎れを抑制し、果実部の適度の硬さと果実部表面の光沢を維持することができ、みずみずしさが感じられる外観を保つことができるといった顕著な効果が認められる。
特に、トマト果実のヘタは、一般に収穫後1日経過するだけで萎れ始め、外観上の鮮度感が急速に失われるが、本発明によれば、常温において収穫後2週間以上もヘタの萎れを抑制することが可能である。トマト果実のヘタが萎れていると、たとえ果実部が良好な状態であっても、果実が全体としてみずみずしさを失った印象となるため商品価値は著しく低下する。したがって、本発明のヘタの萎れを抑制できるという効果は、トマト果実の商品価値を長期間維持するために極めて重要である。
また、本発明のトマト果実の生産方法によれば、上記のとおり、トマト果実の単位質量あたりのグルタミン酸やアスパラギン酸の含量を増加させることができるので、トマト果実をうま味が強く美味しいものにすることができる。
また、かかるトマト果実の生産方法によれば、トマト果実の単位質量あたりのリコピンの含量を増加させることができ、トマト果実を赤色が強く美しいものにすることができる。リコピンは赤色を呈するカロテノイドであり、リコピン含量が多いほどトマト果実の赤色が増す傾向がある。
[試験1]
トマトの栽培時に緑色光を照射する場合において、照射期間および1日あたりの照射時間が、トマト果実の単位質量あたりの遊離アミノ酸およびリコピンの含量に及ぼす影響を調べた。
(1)トマトの栽培
トマトを、京都市内の温室で緑色光照射区および無照射区の2つの試験区において栽培した。
両試験区において、トマトとして大玉品種の「りんか409」(株式会社サカタのタネ:商標登録)を使用し、太陽光を使用した慣行的なハウス内での養液栽培を行った。
緑色光照射区における照射は、表1に示す測定A、Bのトマト果実の収穫日前の各所定期間において毎日夜間に約3時間行った。緑色光照射区における光源として波長523nmの発光ダイオードを用いた。照射強度は、トマトの植物体の少なくとも一部分の表面位置において光量子束密度5μmol/m/s以上の値となるように設定した。なお、照射強度の測定は、光量子束密度計(デルタオーム社製,型番DO9721)により行った。
Figure 0006924057
(2)遊離アミノ酸の含量の測定
表1に示す測定A、Bの収穫日毎に、緑色光照射区および無照射区のトマト果実を収穫し、測定A、Bの各種測定日において果実部に含まれる18種類の遊離アミノ酸(アルギニン,リジン,ヒスチジン,フェニルアラニン,チロシン,ロイシン,イソロイシン,メチオニン,バリン,アラニン,グリシン,プロリン,グルタミン酸,セリン,スレオニン,アスパラギン酸,トリプトファン,シスチン)の含量を測定した。遊離アミノ酸の含量の測定は、一般財団法人日本食品分析センターにおいて下記の方法により行った。
<遊離アミノ酸の含量の測定方法>
トマト果実(n=3)から6gの試料採取し、10%スルホサリチル酸溶液25mlを添加した後、20分間の振とう抽出を行った。これに3mol/l水酸化ナトリウム溶液を加えpH2.2にpH調整し、クエン酸ナトリウム緩衝液(pH2.2)を用いて50mlに定容してろ過を行った。これらを適宜希釈し試験溶液とし、アミノ酸自動分析法により遊離アミノ酸含有量の測定を行った。
かかる遊離アミノ酸含量の測定の結果、プロリン、グルタミン酸、アスパラギン酸およびフェニルアラニンについて、緑色光照射による含量の増加が確認された。測定結果のうち、プロリン、グルタミン酸およびアスパラギン酸について表2に示す。
Figure 0006924057
表2から、測定A(10月6日収穫分)の緑色光照射区のトマト果実では、無照射区のトマト果実に比べて、果実部中のプロリンの含量が100%増加し、グルタミン酸の含量が約13%増加し、アスパラギン酸の含量が約16%増加したことが分かる。
また、測定B(10月24日収穫分)の緑緑色光照射区のトマト果実では、無照射区のトマト果実に比べて、果実部中のプロリンの含量が80%増加し、グルタミン酸の含量が約21%増加し、アスパラギン酸の含量が約20%増加したことが分かる。
(3)リコピンの含量の測定
上記測定AおよびBの緑色光照射区および無照射区のトマト果実について、果実部に含まれるリコピンの含量を測定した。測定は一般財団法人日本食品分析センターにおいて下記の方法により行った。測定の結果を表3に示す。
<リコピンの含量の測定方法>
果実(n=3)にピロガロールおよび水を加え均一に粉砕し調整した後、これらから2〜4g試料採取し、ピロガロール2g、HAET混液[ヘキサン、アセトン、エタノール及びトルエンの混液(10:7:6:7)]40ml、エタノール20mlを加え15分間振とうした。これらをエタノールで100mlに定容し、10分間の超音波処理を行い、アセトンで希釈調整し、高速液体クロマトグラフ法(紫外可視吸光光度計)によりリコピン含有量を測定した。
Figure 0006924057
表3から、緑色光照射区のトマト果実は、無照射区のトマト果実に比べてリコピンの含量が測定Aのトマト果実では約22%、測定Bのトマト果実では約13%増加していることが分かる。
[試験2]
上記試験1とは異なる品種のトマトについて、栽培時に緑色光を照射する場合に、照射期間および1日あたりの照射時間が、トマト果実の単位質量あたりのプロリン、グルタミン酸、アスパラギン酸およびリコピンの含量に及ぼす影響を調べた。
(1)トマトの栽培
トマトを、徳島県内の温室で緑色光照射区および無照射区の2つの試験区において栽培した。
両試験区において、トマトとして上記試験1とは異なる品種の中玉品種(ミディ系品種)の「シンディースイート」(株式会社サカタのタネ:登録商標)を使用し、太陽光を使用した慣行的なハウス内で養液栽培を行った。
緑色光照射区における照射は、表4に示す測定1〜6のトマト果実の各収穫日前の各所定期間において毎日夜間に各所定時間行った。緑色光照射区における光源は波長523nmの発光ダイオードを用い、照射強度は、トマトの植物体の少なくとも一部分の表面位置において光量子束密度5μmol/m/s以上の値となるように設定した。なお、照射強度の測定は、上記試験1と同型の光量子束密度計により行った。
Figure 0006924057
(2)遊離アミノ酸の含量の測定
表2に示す測定1〜6の収穫日毎に、緑色光照射区および無照射区のトマト果実を収穫し、翌日に果実部に含まれる遊離アミノ酸のプロリン、グルタミン酸、アスパラギン酸の含量を測定した。測定は、一般財団法人日本食品分析センターにて上記試験1と同じ方法により行った。
測定結果は、表5(プロリン)、表6(グルタミン酸)、表7(アスパラギン酸)に示すとおりである。
Figure 0006924057
表5から、緑色光を収穫日前4週間以上にわたって1日あたり3時間以上照射すれば、果実中にプロリンを生成させることができ(測定3〜6)、収穫日前4週間以上にわたって1日あたり5時間照射すれば、無照射の場合と比較して、果実中のプロリンを大きく増加させることができることが分かる(測定4〜6)。
Figure 0006924057
表6から、緑色光を1日あたり2時間照射する場合は収穫日前15週間にわたって照射することで、無照射の場合と比較して、果実中のグルタミン酸を増加させることができ(測定2)、1日あたり3時間以上照射する場合は収穫日前4週間以上にわたって照射することで、無照射の場合に比較して、果実中のグルタミン酸を増加させることができることが分かる。
Figure 0006924057
表7から、緑色光を1日あたり2時間照射する場合は収穫日前8週間にわたって照射することで、無照射の場合と比較して、果実中のアスパラギン酸を増加させることができ(測定1)、1日あたり3時間以上照射する場合は収穫日前4週間以上にわたって照射することで、無照射の場合に比較して、果実中のアスパラギン酸を増加させることができることが分かる。
(3)リコピンの含量の測定
表4に示す測定1〜6の収穫日毎に、緑色光照射区および無照射区のトマト果実を収穫し、翌日に果実部に含まれるリコピンの含量を測定した。測定は、一般財団法人日本食品分析センターにて上記試験1と同じ方法により行った。
測定結果は、表8に示すとおりである。
Figure 0006924057
表8から、緑色光を1日あたり2時間照射する場合は収穫日前8週間にわたって照射することで、無照射の場合と比較して、果実中のリコピンを増加させることができ(測定1)、1日あたり3時間以上照射する場合は収穫日前4週間以上にわたって照射することで、無照射の場合に比較して、果実中のリコピンを増加させることができることが分かる。
[試験3]
表4に示す測定5の収穫日(2016年5月23日)に収穫した緑色光照射区および無照射区のトマト果実について、収穫日の翌日に、果実部の外観観察による赤色の美しさの評価と、試食による食味の評価を行った。
評価方法は、よく訓練されたパネラー9名が7段階の点数(−3点:非常に悪い,−2点:悪い,−1点:やや悪い,0点:ふつう,1点:やや良い,2点:良い,3点:非常に良い)で評価する評点法とし、かかる9名が示した点数の平均値をもって評価結果とした。
評価結果は表9に示すとおりである。
Figure 0006924057
表9から、緑色光を収穫前に14週間にわたって1日あたり5時間照射して栽培したトマト果実の果実部は、外観(赤色の美しさ)および食味(味,香り,食感)において、無照射で栽培したトマト果実と比較して、明らかに優れていることが分かる。
[試験4]
表4に示す測定6の収穫日(2016年6月27日)に収穫した緑色光照射区および無照射区のトマト果実について、収穫日の翌日に外観観察による評価を行った。
緑色光照射区および無照射区のトマト果実の収穫直後に、各々30個ずつ樹脂フィルムで密封包装し、約20℃の室内で保管した。翌日、樹脂フィルムを開封してトマト果実の外観を観察した。
緑色光照射区のトマト果実では、全ての果実についてヘタの萎れは見られなかったが、無照射区のトマト果実では、22個(約73%)の果実のヘタが萎れていた。これより、緑色光を照射していないトマト果実のヘタは、収穫後1日経過するだけで萎れ始めるが、緑色光を収穫前に19週間にわたって1日あたり5時間照射して栽培したトマト果実のヘタは、収穫後1日経過しても萎れが抑制されていることが分かる。
[試験5]
表4に示す測定6の収穫日(2016年6月27日)に収穫した緑色光照射区および無照射区のトマト果実を、相対湿度(RH)50%で10℃、20℃および30℃の各温度環境に設定された3つの試験区において貯蔵し、果実の外観、水分減少量、果実部の光沢、硬度の経時変化を調べた。
なお、以下、緑色光照射区のトマト果実を「照射区サンプル」と称し、無照射区のトマト果実を「無照射区サンプル」と称する。
(1)外観の経時変化
10℃区に14日間貯蔵した照射区サンプルはヘタの萎れが抑制されていたが、無照射区サンプルはヘタが萎れていた。果実部については両サンプルに顕著な差異は認められなかった。
20℃区に14日間貯蔵した照射区サンプルは、ヘタの萎れが抑制され、果実部の水分減少も抑制されてみずみずしい外観を維持していたが、無照射区サンプルは、ヘタが萎れ、果実部の水分減少による収縮と軟化が認められ、果皮にはシワが生じていた。
また、30℃区に6日間貯蔵した照射区サンプルおよび無照射区サンプルについても、上記の20℃区に14日間貯蔵した照射区サンプルおよび無照射区サンプルと同様の状態であった。
これより、緑色光を収穫前に19週間にわたって1日あたり5時間照射して栽培したトマト果実は、20℃で14日以上、30℃で6日間以上にわたって鮮度保持が可能であることが分かる。
(2)水分減少量の経時変化
照射区サンプルおよび無照射区サンプルの両サンプルについて、貯蔵前の質量と貯蔵後の質量との差をもって蒸散による水分減少量とすることとし、10℃区および20℃区に6日間および14日間貯蔵した両サンプルと、30℃区に6日間貯蔵した両サンプルについて、蒸散による水分減少量を測定した。
測定結果は、表10に示すとおりである。
Figure 0006924057
表10から、貯蔵温度が高くなるほどトマト果実の水分減少量が多くなることが分かる。また、各照射区サンプルでは、各無照射区サンプルと比較して水分減少量が概ね半減していることから、緑色光を収穫前に19週間にわたって1日あたり5時間照射して栽培したトマト果実は、緑色光を照射していないトマト果実と比較して、蒸散による水分の減少が抑制されていることが分かる。
次に、30℃区に6日間貯蔵した照射区サンプルおよび無照射区サンプルについて、ヘタの水分減少量を測定し、さらに果実部の水分減少量を測定した。
測定結果は、表11に示すとおりである。
Figure 0006924057
表11から、緑色光を収穫前に19週間にわたって1日あたり5時間照射して栽培したトマト果実は、緑色光を照射していないトマト果実と比較して、ヘタおよび果実部のいずれにおいても蒸散による水分の減少が抑制されていることが分かる。特にヘタでは、照射区サンプルの水分減少量(0.03g)が無照射サンプル(0.15g)の5分の1に止まっており、水分減少の抑制効果が極めて高いことが分かる。
(3)果実部の硬度の経時変化
照射区サンプルおよび無照射区サンプルについて、収穫日の翌日に貯蔵前の果実部の硬度を、果実硬度計(株式会社藤原製作所製,型式KM−1 円錐型針部)を用いて測定したところ、照射区サンプルの硬度は0.56kgであり、無照射区サンプルの硬度は0.58kgであった。
次に、10℃区および20℃区に6日間および14日間貯蔵した照射区サンプルおよび無照射区サンプルと、30℃区に6日間貯蔵した両サンプルについて、果実部の硬度を上記の硬度計を用いて測定した。測定結果は、表12に示すとおりである。
なお、表12に示す各サンプルの硬度値の下の括弧内は、貯蔵前の照射区サンプルまたは無照射区サンプルの硬度と、表12に示す各サンプルとの硬度の差であり、硬度の低下量に該当する。
Figure 0006924057
表12から、10℃区、20℃区および30℃区の全ての試験区において、照射区サンプルの果実硬度が無照射区サンプルの果実硬度よりも高く、また、全ての試験区において照射区サンプルは、貯蔵前の照射区サンプルと比べて硬度の低下量が小さく、果実部の張りのある外観が維持されてみずみずしさが保たれていることが分かる。
(4)果実部の光沢の経時変化
照射区サンプルおよび無照射区サンプルについて、収穫日の翌日に貯蔵前の果実部表面の光沢を、グロス値として分光測色計(コニカミノルタ株式会社製,型式CM−700d)を用いて測定したところ、照射区サンプルのグロス値は20.78であり、無照射区サンプルのグロス値は16.00であった。
次に、20℃区の14日貯蔵後の無照射区サンプルおよび照射区サンプルの果実部表面のグロス値を上記の分光測色計を用いて測定した。測定結果は、表13に示すとおりである。
なお、表13に示す各サンプルのグロス値の下の括弧内は、貯蔵前の照射区サンプルまたは無照射区サンプルのグロス値と、表13に示す各サンプルとのグロス値の差であり、グロス値の低下量に該当する。
Figure 0006924057
表13から、20℃区において、照射区サンプルの果実部表面のグロス値が無照射区サンプルのグロス値よりも高く、また、照射区サンプルは、貯蔵前の照射区サンプルと比べてグロス値の低下量が小さく、果実部表面の光沢が維持されてみずみずしさが保たれていることが分かる。
本発明のトマト果実の生産方法および鮮度保持方法は、トマト果実中の特定成分の増加を図ることによって、トマト果実の付加価値を高める場合に利用されるものである。

Claims (5)

  1. トマトに対し、暗黒条件下において480〜560nmの波長領域内で設定された波長を含む光量子束密度1μmol/m/s以上の緑色光を、トマト果実の収穫前4週間以上の期間に略毎日3時間以上照射することで、トマト果実の単位質量あたりのプロリンの含量を増加させることを特徴とするトマト果実の生産方法。
  2. トマトに対し、暗黒条件下において480〜560nmの波長領域内で設定された波長を含む光量子束密度5〜100μmol/m/sの緑色光を、トマト果実の収穫前4〜19週間の期間に略毎日5〜8時間照射することで、トマト果実の単位質量あたりのプロリンの含量を増加させることを特徴とするトマト果実の生産方法。
  3. さらに、トマト果実の単位質量あたりのグルタミン酸、アスパラギン酸およびリコピンからなる群から選択される一種以上の成分の含量を増加させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトマト果実の生産方法。
  4. トマトに対し、暗黒条件下において480〜560nmの波長領域内で設定された波長を含む光量子束密度1μmol/m/s以上の緑色光を、トマト果実の収穫前4週間以上の期間に略毎日3時間以上照射することを特徴とするトマト果実の鮮度保持方法。
  5. トマトに対し、暗黒条件下において480〜560nmの波長領域内で設定された波長を含む光量子束密度5〜100μmol/m/sの緑色光を、トマト果実の収穫前4〜19週間の期間に略毎日5〜8時間照射することを特徴とするトマト果実の鮮度保持方法。
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