JP6924057B2 - トマト果実の生産方法および鮮度保持方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、トマトの栽培中に遠赤外光や赤色光を照射することで、トマト果実中のアミノ酸、カリウム、カロテノイド、アスコルビン酸およびビタミンB6を増加させる技術が開示されている。
また、特許文献2に開示された技術は、果菜類の収率を向上させることはできるが、果菜類に含まれる有用成分の増加を図るものではない。
[1] トマトに対し、暗黒条件下において480〜560nmの波長領域内で設定された波長を含む光量子束密度1μmol/m2/s以上の緑色光を、トマト果実の収穫前4週間以上の期間に略毎日3時間以上照射することで、トマト果実の単位質量あたりのプロリンの含量を増加させることを特徴とするトマト果実の生産方法。
上記[1]に記載のトマト果実の生産方法によれば、トマトの栽培に際して、慣行的な栽培法に加えて上記特定条件の緑色光を照射するだけで、トマト果実中のプロリンの含量を増加させることができるため、トマト果実の収穫後の鮮度保持期間を延長することができる。例えば、収穫後のトマト果実について長期間にわたってヘタの萎れを防止し、果実部(トマト果実のヘタ以外の部分)の適度の硬さと果実部表面の光沢を維持することができ、みずみずしさが感じられる外観を保つことができる。
例えば、トマト果実は、一般に収穫後1日経過するだけでヘタが萎れ始めるが、かかるトマト果実の生産方法によれば、常温において収穫後2週間以上もヘタの萎れを防止することが可能であるため、トマト果実の鮮度を保持して商品価値を維持することができる。
また、かかるトマト果実の生産方法によれば、トマト果実の単位質量あたりのリコピンの含量を増加させることができるので、トマト果実を赤色が強く美しいものにすることができる。
また、本発明において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
なお、暗黒の状態は、完全に暗黒である必要はなく、作業者が簡易的な作業を行うことができる程度の可視光が残存していても差し支えない。
また、かかるトマト果実の生産方法によれば、トマト果実の単位質量あたりのリコピンの含量を増加させることができ、トマト果実を赤色が強く美しいものにすることができる。リコピンは赤色を呈するカロテノイドであり、リコピン含量が多いほどトマト果実の赤色が増す傾向がある。
トマトの栽培時に緑色光を照射する場合において、照射期間および1日あたりの照射時間が、トマト果実の単位質量あたりの遊離アミノ酸およびリコピンの含量に及ぼす影響を調べた。
トマトを、京都市内の温室で緑色光照射区および無照射区の2つの試験区において栽培した。
両試験区において、トマトとして大玉品種の「りんか409」(株式会社サカタのタネ:商標登録)を使用し、太陽光を使用した慣行的なハウス内での養液栽培を行った。
緑色光照射区における照射は、表1に示す測定A、Bのトマト果実の収穫日前の各所定期間において毎日夜間に約3時間行った。緑色光照射区における光源として波長523nmの発光ダイオードを用いた。照射強度は、トマトの植物体の少なくとも一部分の表面位置において光量子束密度5μmol/m2/s以上の値となるように設定した。なお、照射強度の測定は、光量子束密度計(デルタオーム社製,型番DO9721)により行った。
表1に示す測定A、Bの収穫日毎に、緑色光照射区および無照射区のトマト果実を収穫し、測定A、Bの各種測定日において果実部に含まれる18種類の遊離アミノ酸(アルギニン,リジン,ヒスチジン,フェニルアラニン,チロシン,ロイシン,イソロイシン,メチオニン,バリン,アラニン,グリシン,プロリン,グルタミン酸,セリン,スレオニン,アスパラギン酸,トリプトファン,シスチン)の含量を測定した。遊離アミノ酸の含量の測定は、一般財団法人日本食品分析センターにおいて下記の方法により行った。
トマト果実(n=3)から6gの試料採取し、10%スルホサリチル酸溶液25mlを添加した後、20分間の振とう抽出を行った。これに3mol/l水酸化ナトリウム溶液を加えpH2.2にpH調整し、クエン酸ナトリウム緩衝液(pH2.2)を用いて50mlに定容してろ過を行った。これらを適宜希釈し試験溶液とし、アミノ酸自動分析法により遊離アミノ酸含有量の測定を行った。
また、測定B(10月24日収穫分)の緑緑色光照射区のトマト果実では、無照射区のトマト果実に比べて、果実部中のプロリンの含量が80%増加し、グルタミン酸の含量が約21%増加し、アスパラギン酸の含量が約20%増加したことが分かる。
上記測定AおよびBの緑色光照射区および無照射区のトマト果実について、果実部に含まれるリコピンの含量を測定した。測定は一般財団法人日本食品分析センターにおいて下記の方法により行った。測定の結果を表3に示す。
果実(n=3)にピロガロールおよび水を加え均一に粉砕し調整した後、これらから2〜4g試料採取し、ピロガロール2g、HAET混液[ヘキサン、アセトン、エタノール及びトルエンの混液(10:7:6:7)]40ml、エタノール20mlを加え15分間振とうした。これらをエタノールで100mlに定容し、10分間の超音波処理を行い、アセトンで希釈調整し、高速液体クロマトグラフ法(紫外可視吸光光度計)によりリコピン含有量を測定した。
上記試験1とは異なる品種のトマトについて、栽培時に緑色光を照射する場合に、照射期間および1日あたりの照射時間が、トマト果実の単位質量あたりのプロリン、グルタミン酸、アスパラギン酸およびリコピンの含量に及ぼす影響を調べた。
トマトを、徳島県内の温室で緑色光照射区および無照射区の2つの試験区において栽培した。
両試験区において、トマトとして上記試験1とは異なる品種の中玉品種(ミディ系品種)の「シンディースイート」(株式会社サカタのタネ:登録商標)を使用し、太陽光を使用した慣行的なハウス内で養液栽培を行った。
緑色光照射区における照射は、表4に示す測定1〜6のトマト果実の各収穫日前の各所定期間において毎日夜間に各所定時間行った。緑色光照射区における光源は波長523nmの発光ダイオードを用い、照射強度は、トマトの植物体の少なくとも一部分の表面位置において光量子束密度5μmol/m2/s以上の値となるように設定した。なお、照射強度の測定は、上記試験1と同型の光量子束密度計により行った。
表2に示す測定1〜6の収穫日毎に、緑色光照射区および無照射区のトマト果実を収穫し、翌日に果実部に含まれる遊離アミノ酸のプロリン、グルタミン酸、アスパラギン酸の含量を測定した。測定は、一般財団法人日本食品分析センターにて上記試験1と同じ方法により行った。
測定結果は、表5(プロリン)、表6(グルタミン酸)、表7(アスパラギン酸)に示すとおりである。
表4に示す測定1〜6の収穫日毎に、緑色光照射区および無照射区のトマト果実を収穫し、翌日に果実部に含まれるリコピンの含量を測定した。測定は、一般財団法人日本食品分析センターにて上記試験1と同じ方法により行った。
測定結果は、表8に示すとおりである。
表4に示す測定5の収穫日(2016年5月23日)に収穫した緑色光照射区および無照射区のトマト果実について、収穫日の翌日に、果実部の外観観察による赤色の美しさの評価と、試食による食味の評価を行った。
評価方法は、よく訓練されたパネラー9名が7段階の点数(−3点:非常に悪い,−2点:悪い,−1点:やや悪い,0点:ふつう,1点:やや良い,2点:良い,3点:非常に良い)で評価する評点法とし、かかる9名が示した点数の平均値をもって評価結果とした。
評価結果は表9に示すとおりである。
表4に示す測定6の収穫日(2016年6月27日)に収穫した緑色光照射区および無照射区のトマト果実について、収穫日の翌日に外観観察による評価を行った。
緑色光照射区のトマト果実では、全ての果実についてヘタの萎れは見られなかったが、無照射区のトマト果実では、22個(約73%)の果実のヘタが萎れていた。これより、緑色光を照射していないトマト果実のヘタは、収穫後1日経過するだけで萎れ始めるが、緑色光を収穫前に19週間にわたって1日あたり5時間照射して栽培したトマト果実のヘタは、収穫後1日経過しても萎れが抑制されていることが分かる。
表4に示す測定6の収穫日(2016年6月27日)に収穫した緑色光照射区および無照射区のトマト果実を、相対湿度(RH)50%で10℃、20℃および30℃の各温度環境に設定された3つの試験区において貯蔵し、果実の外観、水分減少量、果実部の光沢、硬度の経時変化を調べた。
なお、以下、緑色光照射区のトマト果実を「照射区サンプル」と称し、無照射区のトマト果実を「無照射区サンプル」と称する。
10℃区に14日間貯蔵した照射区サンプルはヘタの萎れが抑制されていたが、無照射区サンプルはヘタが萎れていた。果実部については両サンプルに顕著な差異は認められなかった。
また、30℃区に6日間貯蔵した照射区サンプルおよび無照射区サンプルについても、上記の20℃区に14日間貯蔵した照射区サンプルおよび無照射区サンプルと同様の状態であった。
これより、緑色光を収穫前に19週間にわたって1日あたり5時間照射して栽培したトマト果実は、20℃で14日以上、30℃で6日間以上にわたって鮮度保持が可能であることが分かる。
照射区サンプルおよび無照射区サンプルの両サンプルについて、貯蔵前の質量と貯蔵後の質量との差をもって蒸散による水分減少量とすることとし、10℃区および20℃区に6日間および14日間貯蔵した両サンプルと、30℃区に6日間貯蔵した両サンプルについて、蒸散による水分減少量を測定した。
測定結果は、表10に示すとおりである。
測定結果は、表11に示すとおりである。
照射区サンプルおよび無照射区サンプルについて、収穫日の翌日に貯蔵前の果実部の硬度を、果実硬度計(株式会社藤原製作所製,型式KM−1 円錐型針部)を用いて測定したところ、照射区サンプルの硬度は0.56kgであり、無照射区サンプルの硬度は0.58kgであった。
なお、表12に示す各サンプルの硬度値の下の括弧内は、貯蔵前の照射区サンプルまたは無照射区サンプルの硬度と、表12に示す各サンプルとの硬度の差であり、硬度の低下量に該当する。
照射区サンプルおよび無照射区サンプルについて、収穫日の翌日に貯蔵前の果実部表面の光沢を、グロス値として分光測色計(コニカミノルタ株式会社製,型式CM−700d)を用いて測定したところ、照射区サンプルのグロス値は20.78であり、無照射区サンプルのグロス値は16.00であった。
なお、表13に示す各サンプルのグロス値の下の括弧内は、貯蔵前の照射区サンプルまたは無照射区サンプルのグロス値と、表13に示す各サンプルとのグロス値の差であり、グロス値の低下量に該当する。
Claims (5)
- トマトに対し、暗黒条件下において480〜560nmの波長領域内で設定された波長を含む光量子束密度1μmol/m2/s以上の緑色光を、トマト果実の収穫前4週間以上の期間に略毎日3時間以上照射することで、トマト果実の単位質量あたりのプロリンの含量を増加させることを特徴とするトマト果実の生産方法。
- トマトに対し、暗黒条件下において480〜560nmの波長領域内で設定された波長を含む光量子束密度5〜100μmol/m2/sの緑色光を、トマト果実の収穫前4〜19週間の期間に略毎日5〜8時間照射することで、トマト果実の単位質量あたりのプロリンの含量を増加させることを特徴とするトマト果実の生産方法。
- さらに、トマト果実の単位質量あたりのグルタミン酸、アスパラギン酸およびリコピンからなる群から選択される一種以上の成分の含量を増加させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトマト果実の生産方法。
- トマトに対し、暗黒条件下において480〜560nmの波長領域内で設定された波長を含む光量子束密度1μmol/m2/s以上の緑色光を、トマト果実の収穫前4週間以上の期間に略毎日3時間以上照射することを特徴とするトマト果実の鮮度保持方法。
- トマトに対し、暗黒条件下において480〜560nmの波長領域内で設定された波長を含む光量子束密度5〜100μmol/m2/sの緑色光を、トマト果実の収穫前4〜19週間の期間に略毎日5〜8時間照射することを特徴とするトマト果実の鮮度保持方法。
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