JP6923215B2 - 抗htlv−1剤、htlv−1関連脊髄症(ham/tsp)治療薬 - Google Patents
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Description
(1−1)二本鎖RNA
ABL1遺伝子の翻訳を抑制するために、RNA干渉(RNA interference)を利用することが可能である。具体的には、標的とするABL1遺伝子の塩基配列に相補的な二本鎖RNAを細胞内に導入するとABL1遺伝子のmRNAが分解されて、結果としてその細胞での遺伝子発現が特異的に抑制されることとなる。この手法は、哺乳動物細胞などにおいても確認されている(Hannon,GJ., Nature (2002) 418,244-251 (review);特表2002−516062号公報;特表平8−506734号公報)。ABL1遺伝子に対する二本鎖RNA(dsRNA)分子の設計及び作製、その投与方法などの詳細については定法を参照することができる。
また、ABL1遺伝子の翻訳を抑制する手段としては、いわゆるアンチセンス核酸を用いる方法が挙げられる。すなわち、ABL1遺伝子のmRNAに対するアンチセンスRNAを転写するDNAを、プラスミドとして導入するか又は被験者のゲノムに組み込み、当該アンチセンスRNAを過剰発現させることで、ABL1遺伝子のmRNAの翻訳が抑制される。アンチセンスRNAに関する技術は、例えば哺乳動物を宿主とした場合でも知られている(Han et al.(1991) Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 88,4313-4317; Hackett et al.(2000) Plant Physiol., 124,1079-86)。
ABL1遺伝子の転写を抑制する物質としては、対象となる被験者における当該遺伝子の転写プロモーター領域を転写抑制型プロモーターと置換するために用いることが可能な発現ベクターが挙げられる。また、ABL1遺伝子の転写を抑制する手段としては、当該遺伝子の転写に関わる領域に転写抑制活性のある塩基配列を挿入するための発現ベクターを用いてもよい。上記のような発現ベクターの設計及び調製は当業者には周知である。
当該チロシンキナーゼに対する抗体は、チロシンキナーゼと特異的に結合することにより、該チロシンキナーゼのキナーゼ活性を抑制することができる。チロシンキナーゼに対する抗体は、当技術分野で公知の抗体作製方法によって作製することができる。簡単に説明すると、チロシンキナーゼの全長タンパク質又はその部分ペプチドを用いて免疫原を調製し、免疫原を適当な動物(マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、トリなど)に適当な回数で投与することにより、該動物においてチロシンキナーゼに対する抗体を誘起することができる。免疫した動物から抗血清を採取することによりポリクローナル抗体を得ることができる。また免疫した動物の脾細胞又は抗体産生細胞を不死化細胞(ミエローマ細胞など)と融合してハイブリドーマを作製し、目的の抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングし、該ハイブリドーマから抗体を採取することによってモノクローナル抗体を得ることができる。その他、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体フラグメントなども用いることができ、それらは全て当技術分野で公知の方法に従って作製することができる。
〔実施例1〕
後述する実験例1に示したように、HTLV-1関連脊髄症(HTLV-1-associated myelopathy: HAM)患者由来のCD4+T細胞を用いたマイクロアレイ解析及びパスウェイ解析により、HAM患者由来のCD4+T細胞では、有意に発現亢進している遺伝子を含むパスウェイとして、ABL1遺伝子を含むパスウェイを同定した。そこで、本実施例では、ABL1遺伝子がコードするチロシンキナーゼの阻害剤であるイマチニブ(グリベック)及びニロチニブ(タシグナ)を使用し、これら薬剤のHAM患者由来CD4+T細胞に対する影響を検討した。
[1]CellTiter-Fluor Cell Viability Assay(G6080, Promega社製)を用いたヒトPBMCの細胞濃度測定(アッセイ感度決定)(Technical Bulletin (#TB371). CellTiter-Fluor Cell Viability Assay. Instructions for use of Products G6080, G6081 and G6082 (Promega).本キットは、生細胞プロテアーゼの基質である細胞膜透過性の蛍光ペプチド glycylphenylalanyl-aminofluoro coumarin (GF-AFC, Ex400/Em505nm) を用いて生細胞数に比例する生細胞プロテアーゼによるGF-AFC基質の開裂による蛍光を定量するキットである。)
(1−1)細胞の洗浄:比較的新鮮な陰性対照者(negative controls: NC)由来末梢血単核球(peripheral blood mononuclear cells: PBMC)検体(液体窒素中凍結保存細胞1×107個)を37℃湯浴で溶解しPBS10mLを入れた15mLチューブに移し、300×g、10分間遠沈し洗浄した。上清を捨て、ペレットのみとしたチューブの底部を金網上で擦過し、PBS10mLを入れて同様にもう1回洗浄した。そして、PBS 1mLで懸濁して氷上に置いた。
Relative Live cell signal (RLU)=[生細胞シグナル−死細胞シグナル]/(No cell control signalの平均)
Viability S:N = [未処理サンプルの平均-処理サンプルの平均] /(H-1〜H-3までの標準偏差)
本項では、ABL1阻害薬:イマチニブ(Imatinib、グリベックTM)及びニロチニブ(Nilotinib)を用いてHAM患者由来PBMCを処理することで細胞死がNC由来PBMCよりも優先的に起こるかどうかを検討した。なお、本項においてイマチニブ及びニロチニブは、イマチニブの添付文書にあるCmax濃度をもとに高濃度(5μM)で検討することにした。
[検体]
HAM患者、陰性対照(NC)由来のPBMCを各6例、5×106個の液体窒素中凍結保存PBMCを準備した。
37℃湯浴で融解したPBMCを、PBS10mLを入れた15mLチューブに移し、300×g、10分間遠沈し洗浄した。上清を捨て、ペレットのみとしたチューブの底部を金網上で擦過し、PBS10mLを入れて同様に更に1回洗浄した。
ABL1阻害薬:イマチニブ及びニロチニブによる細胞死誘導効果を、CellTiter-Fluor Cell Viability Assay(G6080, Promega社製)を用いた細胞濃度測定によって検証した。
対比するため、HAM由来CD4+T細胞、NC由来CD4+T細胞、非CD4-PBMCのin vitro培養時の細胞濃度の経時的変化を確認した。具体的にはHAM3例及びNC2例についてPBMCをCD4+T細胞、非CD4-PBMCに分離した後、各細胞を約8×104個としてRPMI1640培地2mL中(薬剤無し)で6ウェルプレートを用いて経時的に観察した。
ABL1阻害薬(イマチニブ5μM又はニロチニブ5μM)24時間処理による細胞生存率に対する効果を図2に示した。図2のAはCD4+T細胞におけるイマチニブ5μM、24時間処理による細胞生存率に対する効果を示している。図2のBはCD4+T細胞におけるニロチニブ5μM、24時間処理による細胞生存率に対する効果を示している。図2のCは非CD4-PBMCにおけるイマチニブ5μM、24時間処理による細胞生存率に対する効果を示している。図2のDは非CD4-PBMCにおけるニロチニブ5μM、24時間処理による細胞生存率に対する効果を示している。
以上から、イマチニブ及びニロチニブとも、HAM患者由来のCD4+T細胞を優先的に殺す効果を有することが明らかになった。HTLV-1感染CD4+T細胞を含むHAM患者のCD4+T細胞に対するABL1阻害薬の優先的殺傷効果は今までに報告はなく、世界初の知見である。詳細を後述するアレイデータからHAM治療標的としてのABL1遺伝子を抽出したが、この結論の正しさを裏付ける結果を示唆している。
本実験例1では、HTLV-1関連脊髄症患者由来のCD4+T細胞を用いたマイクロアレイ解析及びパスウェイ解析により、HTLV-1関連脊髄症患者由来のCD4+T細胞において、有意に発現亢進している遺伝子を含むパスウェイを同定した。本実験の解析方法のフローチャートを図4に示した。
WHO診断基準により臨床診断したHTLV-1関連脊髄症患者4例、無症候性HTLV-Iキャリア(AC)4例及びHTLV-1陰性健康者対照(NC)4例を無作為に選んだ(表2)。なお、倫理面へ配慮し、採血及び検体保存は十分な説明と文書での同意を得て行った。本研究では患者と検体は非連結匿名化し、鹿児島大学倫理委員会の承諾を得て取得した検体を用いた。
約2×107個のPBMCを含む凍結検体を用い、CD4+T細胞を回収、さらにtotalRNA抽出、cDNAの合成、Cy3標識cRNAの合成と標識(Cy3-CTP,633nm励起)、Cy3標識cRNA精製、DNAマイクロアレイ(1-color Whole Human Genome44k×4plex DNA microarray, 41,000 genes (Agilent Technologies)) を用い、ハイブリダイズと洗浄を行った。その後、Agilent Microarray scannerで画像取得後、Feature Extraction Software Ver.10.5で蛍光シグナル強度を数値化したRaw dataを取得した。さらにGeneSpring GX softwareで数値データ対数変換、正規化した。
(1)パスウェイ解析による有意差発現遺伝子、有意なパスウェイの抽出
(1−1)有意差発現遺伝子の基準(3群間One-way ANOVA)
NCに比べ2 fold change(up/down)以上の変動がありかつ3群間One-way ANOVA(一元配置分散分析)でp<0.01を満たす遺伝子を有意差発現遺伝子として絞り込んだ。有意差発現遺伝子をHAMのみ、ACのみ、HAM及びAC両方でそれぞれ探索した。
HAM、AC、NCにおける遺伝子発現パターンとHAM病態における細胞性遺伝子の意義の対応を検討すると図5のようになる。図5における1)は、3群(HAM・AC・NC) × 2群(発現亢進/低下)分割Venn図は、NC(陰性対照)の遺伝子発現強度を基準とするため、実際は2×2で4群に大別される。HAMup、HAMdown、ACup、ACdownはそれぞれ順にHAMで高発現の遺伝子、HAMで低発現の遺伝子、ACで高発現の遺伝子、ACで低発現の遺伝子の集合を示す。添字のup(高発現)、down(低発現)で示す集合を図4のVenn図では下線付き、下線無しで示している。なお、アレイデータをクラスタリング(クラスター解析)しHeatmapを作成した。
さらに、ウイルス感染のような3群間比較による発現変動遺伝子をVenn図で表示するために新規に考案した3群(HAM・AC・NC)×2 群(高/低発現)分割Venn図をさらに作成した。
パスウェイ解析のワークフローを図12に示した。有意差発現遺伝子をパスウェイ解析ソフトウェアExPlainと文献情報からキュレーター(curator)により整備されたパスウェイデータベースTRANSPATH(いずれもBIOBASE GmbH社製)を用いて少なくとも2つ以上の遺伝子が含まれる(#Hits in groupが2個以上)パスウェイを有意(P<0.05)とした。
(2−1)転写因子結合サイト検索
転写因子結合サイト(エレメント)のデータベースTRANSPROを用い、有意差変動遺伝子のプロモーターウインドウ(-1000〜+100)を比較・検索し、重み付きのコンセンサス配列を算出し、上流の転写因子を予想した。変化のある遺伝子群(Yes-set):fold change ≧2.0とし、変化のない遺伝子群(No-set):fold change <1.1であり、かつHAM、AC及びNC群で共通して変動がない遺伝子群を探索するため、変動係数(Coefficient of variation (C.V.)、標準偏差を算術平均で割り(下記式)、相対的なばらつきを表す単位の無い数)が下位300個の遺伝子を採用した。
Yes-setで発現/制御応答を含むエッジを最大6つまで遡るキーノードをFDR(False Discovery Rate) <0.05で検索した。
2つ以上のキーノードを持つ(#Hits in groupが2個以上)パスウェイをTRANSPATHデータベースから抽出した(p<0.05)。
(3−1)有意差発現変動遺伝子
HAMのみ、ACのみ、HAM及びAC両方で、特異的な有意差発現変動遺伝子をそれぞれ181個(うち高発現遺伝子177;低発現遺伝子4)、65個(うち高発現遺伝子19;低発現遺伝子46)及び56個(うち高発現遺伝子56;低発現遺伝子0)見出した。
HAMでは有意な(p<0.05)パスウェイは12個みられたが、TGF-β/SMADに関与する1つを除いた11個すべてCaspaseによるアポトーシス制御に関与するものであった。これら11個の経路すべてに同一遺伝子であるABL1(ABL proto-oncogene 1, non-receptor tyrosine kinase, Gene ID:25) が関与していた(図13)。なお、図13において、項目「Pathway ID of TRANSPATH database」は、文献報告の存在するものを人手による判断(curate)を経て作成されたシグナル伝達経路(パスウェイ)のデータベースであるTRANSPATHデータベース(BIOBASE GmbH社製)のIDである。図13において、分子名の略語は以下を意味している。
ABL-1a: c-abl oncogene 1, non-receptor tyrosine kinase isoform a;
ABL-1b: isoform b;
TOPBP1: DNA topoisomerase II binding protein 1;
RAD52:DNA repair protein RAD52 homolog (S. cerevisiae) ;
p73α: tumor protein p73 isoformα;
Ubc9: UBE21 (ubiquitin-conjugating enzyme E2I) ;
Ran: GTP-binding Ran (ras-related nuclear protein);
Smurf-1: E3 ubiquitin-protein ligase SMURF1;
cIAP-2: BIRC3 (a member of IAP family that inhibit apoptosis by binding TRAF1 and 2)
(3−3−1)転写因子結合サイト検索
HAM特異的遺伝子プロモーター領域、AC特異的遺伝子プロモーター領域からコンセンサス配列を作成し、転写因子結合サイトのデータベースと照合したところ、HAMでは56個、ACでは21個の転写因子が変動発現遺伝子上流に予想された。HTLV-1との関連をデータベースで検索すると、HAMではHTLV-1との関連が既知のもの(C/EBP,ATF2(CREB2),GATA1,3など)を除くとほとんど関連が知られていない転写因子であり、HAM及びACに共通したものが散見された(詳細は省略)。
HAM特異的遺伝子群から予想したキーノード解析では、CREBのリン酸化キナーゼのひとつCaMKII、アポトーシス関連遺伝子(Fas,Daxx)、TGF-βR、Jak1・2、p38MAPK、HTLV-1との関連が知られているアダプター分子Crk、またインスリン受容体(InsR)など23個が抽出された。
キーノード分子を含む有意なパスウェイがHAMでは66個、ACでは65個抽出された。HAMではインスリン受容体からリン酸化シグナルに関するパスウェイ、Jak-STAT系、p38MAPKのパスウェイが、ACではインスリン受容体からリン酸化シグナルに関するパスウェイの他、Jak3、Tyk2、SHP-1、SHP-2、CAS、CrkLなど比較的細胞膜近くの分子に関するパスウェイが有意だった(詳細は省略)。
Tattermusch S, Skinner JA, Bangham CR. et al. PLoS Pathog. 2012 Jan;8(1):e1002480. Systems biology approaches reveal a specific interferon-inducible signature in HTLV-1 associated myelopathy(以下、参考文献)には、HAMにおけるアレイデータが報告されている。参考文献によれば、HAMでは末梢血白血球でIFN誘導性遺伝子(STAT1及び2、TAP1、CXCL10(IP-10)、IFI35など)の過剰発現が特徴であり単球、好中球でも同様と報告されている。また、参考文献では、パスウェイ解析の事実上の標準的ソフトウェアであるIngenuity(Ingenuity Systems社製)を用いているが、これでは上流解析はできない。本実験例で使用したExplain(TRANSPATH, TRANSFACデータベース含む)は上流解析が可能である(Kel A., Voss N., Wingender E., et al. BMC Bioinformatics. 2006, 7(Suppl 2):S13. Beyond microarrays: Finding key transcription factors controlling signal transduction pathways)。また、本実験例では、末梢白血球全体でなくHTLV-1の主な感染源であるCD4+T細胞を濃縮し検討するなど方法が異なり、その結果、結論も違いがみられた。
HAM末梢血CD4+T細胞を用いたアレイデータを用いて抽出したHAM病態特異的責任遺伝子、またHAM病態特異的パスウェイから、HAM治療の有望な標的としてABL1チロシンキナーゼを同定した。
本実施例では、生細胞のみにおけるHTLV-1プロウイルス量(PVL)を定量できる新規定量法 PMA(propidium monoazide)-HTLV-1 viability PCRを開発し、この手法を用いることでABL1阻害薬が生細胞中HTLV-1プロウイルス量減少効果を有するか検討した。通常のPVL測定法では、死細胞と生細胞のPVLをそれぞれ区別して測定することができず、両者について一括してPVLを測定することとなる。
(1−1)実験の準備
(1−1−1)対象・細胞
液体窒素中冷凍保存されているHAM由来16例のPBMCを用いた。
PMA処理の方法は、詳細を後述するPMA-HTLV-1 viability PCRと同様である。PMAストック液(20mM、-20℃遮光冷凍保存)を最終濃度50μMとなるように細胞サンプルに添加し、室温、5分間、暗所で(アルミホイルで包んで)チューブをインキュベートした(時々チューブを混合するため指ではじく)。
イマチニブ及びニロチニブの製品添付文書にあるABL1 50%阻害濃度(IC50)、体内動態検討データでのCmax濃度のデータと分子量から、IC50としてイマチニブ600nM、ニロチニブ30nM、Cmaxとしてイマチニブ5μM、ニロチニブ3μMを検討した。
(1−2−1)細胞検体の洗浄と細胞濃度カウント
凍結PBMC検体を37℃湯浴で融解した後、PBSで2回、300×gで洗浄し、ペレットをPBS 1mL中に懸濁し氷上に置いた。Trypan Blue排除法とヘモサイトメーターで細胞濃度をカウントした。
5×105〜1×106個程度の細胞をエッペンドルフチューブに2本取り分け、溶液量をPBSを適宜加え、容量200μLとした。一方はPMA処理・光クロスリンキングを行い、もう一方はこの処理を行わず、両者ともDNeasy Blood & Tissue Kit (QIAGEN)でDNAを抽出した。
各細胞検体の細胞懸濁液の残った液に細胞培地RPMI1640(Fetal calf serum 10%、Penicillin-streptomycn 1%添加したもの)を約7.5mL加え合計8.0mL+αとしておき、ポリスチレン製6ウェルプレートに1細胞検体当たり4ウェルを使って約2000μLプレーティングした。1細胞検体当たりウェル内最終濃度がイマチニブ 600nM或いは5μM、ニロチニブ30nM或いは3μMとなるように添加した。
薬物を添加したらシェーカーで軽く振盪してから37℃、5%CO2インキュベーター内でインキュベート開始した。
T=6hで各ウェルの細胞懸濁液を半分程度ハーベストし、エッペンドルフチューブに取り、3,500rpm×10分間で遠沈し、上清を捨て、ペレットをPBS1mLで再懸濁させ、もう1回3,500rpm×10分間で遠沈し、上清を捨てて洗浄した。PBSを加え200μLの容量とし、全部の検体をPMA処理及び光クロスリンキングを行った後、再度PBSで洗浄し、DNeasy Blood & Tissue Kit (QIAGEN)でDNAを抽出した。
上記(1−2−5)で説明したT=6hのときと同様に行い、DNAサンプル名は、Sample No-Imatinib600nM-12hなどと命名した。
DNA濃度はND-1000 (Thermo Fisher Scientific社製) により測定し、リアルタイムPCRをTriplicateで行うのに十分な量(10ng/μL×Triplicate以上)を調製した。使用するまで-20℃に凍結保存した。
TaqMan Universal Master Mix II (#4440044, Thermo Fisher Scientific社製)のプロトコール(合計25μLのPCRの系)に従い、20μM Forward Primer、Reverse Primer、8μM TaqMan Probe、2×Universal Master Mix II、D2Wを混合し、MicroAmp Fast 96-well Reaction Plate (0.1mL) (REF 4346907, Applied Biosystems社製)、MicroAmp Optical Adhesive Film (P/N 4311971, Applied Biosystems社製) を用いてTriplicateの各ウェルに25μLずつピペッティングした。
ABL1阻害薬処理によるCτ 延長効果の指標
各薬物及び濃度でまとめ、上記指標を時系列(T=0h、6h及び12h)、薬物毎の濃度間、濃度(IC50及びCmax)毎の薬物間などで対応のあるt検定(Paired t-test)で検定を行った。すべてサンプルはN=16で検討した。
(2−1)PMA-HTLV-1 viability PCRによるABL1阻害薬のアッセイの結果
ABL1阻害薬処理によるCτ延長効果の指標ΔCτDrug及び生細胞中pXコピー減少率(pX decrease rate)(%)を算出し、算出結果を表3にまとめた。
(2−2−1)時系列での検討(図14)
結果を図14に示した。図14においては、T=0hとの差を*P<0.05, **P<0.01で有意; T=12hについては6hとの差も† P<0.05, ‡P<0.01で有意として示した。有意であることを示す*, **, †, ‡の記号に続く番号はそれぞれ以下に示す危険率である:1) 7.88E-05; 2) 2.01E-07; 3) 2.56E-12 ; 4) 6.30E-10 ; 5) 1.71E-10 ; 6) 0.0027 ; 7) 0.0014 ; 8) 0.85; 9) 8.17E-15; 10) 0.0071; 11) 0.0014; 12) 0.069。記号が前にない番号は有意ではない(N=16, Paired t-test)。
イマチニブを使用したときの結果を図15に示した。図15に示すように、イマチニブ600nM vs 5μMでは有意差はみられないもののT=6hでもT=12hでも低濃度(600nM)の方が高濃度(5μM)よりもCτ延長効果がやや大きい傾向がみられた。
IC50同士(イマチニブ600nM vs ニロチニブ30nM)で比較した結果を図17に示す。図17に示すように、T=6hでもT=12hでもイマチニブ600nMよりもニロチニブ30nMの方がCτ延長効果が危険率1%以下で有意に大きかった。
(2−3−1)時系列での検討(図19)
結果を図19に示した。図19においては、T=0hとの差を*P<0.05, **P<0.01で有意; T=12hについては6hとの差も† P<0.05, ‡P<0.01で有意として示した。有意であることを示す*, **, †, ‡の記号に続く番号はそれぞれ以下に示す危険率である: 1) 1.97E-07; 2) 1.71E-10; 3) 0.0027; 4) 2.01E-07; 5) 0.0014; 6) 0.846; 7) 2.56E-12; 8) 8.17E-15; 9) 0.0071; 10) 6.30E-10; 11) 0.0014; 12) 0.069。記号が前にない番号は有意ではない(N=16, Paired t-test)。
イマチニブを使用したときの結果を図20に示した。図20に示すように、イマチニブ600nM vs 5μMにおいて、T=6hでは有意差はみられないものの低濃度(600nM)の方が高濃度(5μM)よりも生細胞中pXコピー数減少率がやや大きい傾向がみられた。T=12hでは有意に低濃度(600nM)の方が高濃度(5μM)よりも生細胞中pXコピー数減少率が大きかった。
IC50同士(イマチニブ600nM vs ニロチニブ30nM)で比較した結果を図22に示す。図22に示すように、T=6hでもT=12hでもイマチニブ600nMよりもニロチニブ30nMの方が生細胞中pXコピー数減少率が危険率1%以下で有意に大きかった。
上記(2)で示したように、PMA-HTLV-1 viability PCRによるABL1阻害薬のアッセイにより、Cτ延長効果の指標であるΔCτDrug及び生細胞中pXコピー減少率(pX decrease rate)(%)ともに、薬物未処理に比べてABL1阻害薬で処理すると、生細胞中のHTLV-1プロウイルス量が減少することを明らかにすることができた。
本実験例2では、生細胞中のみでのPVL新規定量法 PMA-HTLV-1 viability PCR を説明する。
まず、基礎となるPMA viavility PCRの概略を説明する。PMA(propidium monoazide)とは、膜非透過性、核酸(DNA/RNA)結合性蛍光色素で、azide基に光反応性がある。PMA Viability PCRとは2006年に環境学的検体、食品などの検体における微生物が生きているかどうかを判定する目的でNockerらにより考案された(Nocker A. et al. J Microbiol Methods 2006. 67: 310-320)。
Cτwith PMA:同一細胞サンプルのPMA処理後DNAのPCRで測定したCτ値
本実験例では、生細胞中のみでのPVL新規定量法(PMA-HTLV-1 viability PCRと呼称する)を提案する。PMA viavility PCRのプロトコールと計算理論を拡張した後にPMA-HTLV-1 viability PCRを導入する。
(1−1)PMA viability PCRのプロトコールの拡張
PMA viability PCRのプロトコールでは、通常のリアルタイムPCR絶対法と異なり、標的核酸の標準品希釈系列を用いた標準曲線を作成しない。本実験例では、ここで標的核酸の標準品とその希釈系列、標的核酸に対するプライマーセット及びTaqManプローブを用いてリアルタイムPCR絶対法に準じたプロトコールを行う場合を考える。
リアルタイムPCRでは一般に増幅産物を意味する蛍光強度は最初の1〜最大10サイクルまではノイズレベルでサンプルブランクとみなし、それらの標準偏差(Standard deviation:SD) を算出し、10SDを閾値(Threshold)とする。閾値を初めて最初に上回るサイクル数をCycle threshold (Cτ)値とする。リアルタイムPCRのプロトコールでアプライするDNA量は一定量であるが、その中の標的初期鋳型DNA量がPCR開始時に多いとCτ値は小さく、標的初期鋳型DNA量が少ないとCτ値は大きくなる。
Nocker AらによるPMA viability PCRの原著 (Nocker A. et al. J Microbiol Methods 2006. 67: 310-320) ではPMAのPCR阻害効果を検討するための指標として、PMA未処理検体のCτから同一検体のPMA処理検体のCτを差し引いた値(負になる)をΔCτとして下向きのグラフに表示して用いている。
図24のΔCτは、PMA VIABILITY PCRに加えてさらに同時に標的核酸配列の標準品とそれに対するTAQMANプローブを用いた絶対法で標準曲線(検量線回帰式)を得たとする。この標準曲線を用いてY軸(Cτ)上に図25のようにΔCτをプロットできる。
Iw/o PMA:PMA処理(-)検体でPCRによりCτw/o PMA値だった時の初期鋳型量(コピー数)(log表示)
Iwith PMA:PMA処理(+)検体でPCRによりCτwith PMA値だった時の初期鋳型量(コピー数)(log表示)
とするとき、ΔCτと同様に負の値として初期鋳型量(コピー数)減少分:ΔI=Iw/o PMA−Iwith PMAを新たに定義し図示できる。
通常のTaqMan法によるPVL測定法(Nagai M. J Neurovirol. 1998 Dec;4(6):586-93.)は、生細胞、死細胞を含むPBMCからDNA抽出キットにより精製したDNAを鋳型に、標的遺伝子pX、内部対照遺伝子β-actinに対するTaqManプローブ、プライマーセットによりリアルタイムPCRを行う。この方法では生細胞、死細胞由来のHTLV-1プロウイルス量(PVL)は原理的に区別できない。
PMA Viavility PCRを細菌その他の微生物ではなく、哺乳類であるヒト細胞に応用し、ヒトゲノムDNAに組み込まれたHTLV-1ウイルスpX領域を標的遺伝子(核酸)としてプライマーセット、TaqManプローブ、pX標準品希釈系列を用いたスタンダードをConventionalなHTLV-1 PVL定量法と同様に用い、PMA処理、DNA抽出、Cτ値測定およびΔCτ値算出といったステップを含む方法をPMA-HTLV-1 viability PCR と呼称することにする。
PMA-HTLV-1 viability PCRは、PMA viability PCRをHTLV-1 pXに対して測定するものなので、増幅回数(サイクル数)−増幅産物量(実数)プロット、Cτ−遺伝子相対発現コピー数(log表示)プロット(図24及び図25)はそのまま使用できる。
次に、PMA-HTLV-1 viability PCRを用いて、HTLV-1感染細胞を標的として殺傷する薬物(ずなわち、実施例2で使用したようなABL1阻害薬)をアッセイする場合を考える。
(3−1−1)PMA処理によるCτ値延長ΔCτPMA、薬物処理によるCτ値延長ΔCτDrug
候補薬物処理(Drug処理)で標的細胞が死ぬと、その後にPMA処理し、標的細胞の特異的核酸(遺伝子)を増幅するPCRは阻害されCτ値(CτD+ P+)は候補薬物処理なしの時(CτD- P+)よりも大きくなる。前述したPMA処理によるCτ値延長ΔCτをΔCτPMAとし、候補薬物処理によるCτ値延長をΔCτDrugとして新たに定義する。すなわち、
ΔCτPMA=CτD- P-−CτD- P+ (Nocker A. 原著の式に相当する)
ΔCτDrug=CτD- P+−CτD+ P+
CτD- P-:Drug処理(-)、PMA処理(-)のDNAを用いたときのCτ値であり、薬物未処理検体の生細胞及び死細胞由来DNA量を反映する。
CτD- P+:Drug処理(-)、PMA処理(+)のDNAを用いたときのCτ値であり、薬物未処理検体の生細胞由来DNA量を反映する。
CτD+ P+:Drug処理(+)、PMA処理(+)のDNAを用いたときのCτ値であり、薬物処理検体の生細胞由来DNA量を反映する。
PMA viability PCRに加えて同時に標的核酸配列の標準品とそれに対するTaqManプローブを用いた絶対法でpXの標準曲線(検量線回帰式)を得たとする。この標準曲線を用いてY軸(Cτ)上に図のようにΔCτをプロットできる。
同様にCτ−遺伝子相対発現コピー数(log表示)プロット上ではPCRにアプライした初期鋳型コピー数の減少を前に定義したΔIをΔIPMAとし、候補薬剤処理(Drug処理)による減少をΔIDrugとして新たに定義する。すなわち、
ΔIPMA=ID- P-−ID- P+
ΔIDrug=ID- P+−ID+ P+
ID- P-:Drug処理なし、PMA処理なしのDNAを用いたときの初期鋳型コピー数であり、薬物未処理検体中の生細胞及び死細胞由来DNA中初期鋳型コピー数である。
ID- P+:Drug処理なし、PMA処理ありのDNAを用いたときの初期鋳型コピー数であり、薬物未処理検体中の生細胞由来DNA中初期鋳型コピー数である。
ID+ P+:Drug処理あり、PMA処理ありのDNAを用いたときの初期鋳型コピー数であり、薬物処理検体中の生細胞由来DNA中初期鋳型コピー数である。
PMA-HTLV-1 viability PCRによるHTLV-1感染細胞傷害性薬物のアッセイでは、候補薬物処理(Drug処理)により減少した生細胞中の標的核酸(ここではHTLV-1 pX遺伝子すなわちウイルス量)コピー数の減少率(%)を元来あった生細胞のみにおける初期鋳型コピー数ID- P+に対する比率として、生細胞中標的遺伝子コピー数減少率(Target gene decrease rate in live cells) (%)を定義し計算できる。これによりアッセイしたい薬物の標的核酸(ここではHTLV-1ウイルス量)減少効果の指標となり効果が判定できる。
本実施例1では、ABL1阻害薬(イマチニブ、ニロチニブ)がHAM由来のCD4+T細胞に対して特異的に殺傷する結果を示した。本実施例では、ABL1阻害薬(イマチニブ及びニロチニブ)が無症候性キャリア(AC)由来のCD4+T細胞に対しても特異的な殺傷効果を持つか検証した。
本実施例では、検体として、無症候性HTLV-Iキャリア(AC)、陰性対照(NC)由来のPBMCを各4例、5×106個の液体窒素凍結保存PBMCを準備した。そして、実施例1に記載した〔細胞の準備〕と同じ方法により細胞を処理し、実施例1に記載した〔薬剤処理〕と同様な方法により薬剤処理を行った。但し、本実施例では、AC検体#1由来CD4+T細胞についてA行1〜3列に薬剤未処理ウェル懸濁液、A行4〜6列にイマチニブ5μM処理ウェル懸濁液、A行7〜9列にニロチニブ5μM処理ウェル懸濁液をそれぞれ25μLずつ3つ組で入れた。同様に、AC検体#2由来CD4+T細胞についてB行1〜9列に、AC検体#3由来CD4+T細胞についてC行1〜9列、AC検体#4由来CD4+T細胞についてD行1〜9列に入れた。また、NC検体#1由来CD4+T細胞について同様にE行1〜9列に、NC検体#2由来CD4+T細胞についてF行1〜9列に、NC検体#3由来CD4+T細胞について同様にG行1〜9列に、NC由来#4由来CD4+T細胞をH行1〜9列に入れた。
薬剤未処理ウェルの細胞濃度を100とし、イマチニブ5μM処理ウェル、ニロチニブ5μM処理ウェルのそれぞれの相対濃度(%)を算出した。結果を表4に示した。なお、表4に示した数値は、生細胞濃度(cells/mL)の薬剤未処理に対する相対%を示している(相対%±標準誤差)。
関連のあるt検定で統計解析すると、AC検体由来CD4+T細胞をイマチニブ5μM処理、ニロチニブ5μM処理すると、NCに比べて有意に細胞濃度を減少させる(それぞれP=0.011;P=0.007)ことがわかった。このような効果は非CD4-PBMC細胞ではみられず、ABL1阻害薬のHTLV-1感染細胞特異的な細胞死誘導効果であることが示唆された。
本実施例2では、死細胞を除き、生細胞のみのHTLV-1プロウイルスを定量する技術を適用して、ABL1阻害薬(イマチニブ、ニロチニブ)がHAM由来のCD4+T細胞の生細胞におけるプロウイルス量を減少させる効果を持つことが実証された。本実施例では、同ABL1阻害薬が無症候性キャリア(AC)由来のCD4+T細胞に対しても、同様にプロウイルス量減少効果を持つか検証した。
(4−1−1)対象・細胞
液体窒素中冷凍保存されているAC由来14例の各例1×107個のPBMCを用いた。
液体窒素中冷凍保存されている検体を37℃湯浴で融解後、約10mLのPBSで300×g、10分間遠沈にて2回洗浄し、PBS中1mL中に再懸濁し、細胞濃度をトリパンブルー排除法でカウントした。そして、各検体について約10万個のPBMCとなるように2組に取り分けた。これらのうち一方はPMA処理しないもの、他方はPMA処理するものとした。各々Sample No-Drug-P-及びSample No-Drug-P+と命名しておく。
上記(4−1−2)にて2組の検体を取り分けた後の残りの細胞懸濁液に、約7mL+αの容量のRPMI1640(10% ウシ胎児血清、1% Penicilin、Streptomycin添加)を加え、ボルテックスしたのち、6-well平底ポリスチレンプレートに約2mL分注し、実施例1の濃度と同様に、イマチニブ600nM(IC50)、同5μM(Cmax)、ニロチニブ30nM(IC50)、同3μM(Cmax)となるようにイマチニブ或いはニロチニブを加えた。短時間シェーカーで混合した後、5%CO2インキュベーター内で培養した。
実施例2に記載した方法により、T=6h以降は全検体をPMA処理及びクロスリンキングし、その後ゲノムDNAを抽出した。
実施例2に記載した方法によりPMA処理、DNA抽出を行った。これにより、供試したAC1検体につきゲノムDNAが10サンプル、すなわち14検体から140サンプル調製された。
本実施例において、DNA濃度測定、Working solutionの調製、リアルタイムPCR法及びPMA-HTLV-1 viability PCRの指標の計算方法については、実施例2に記載した方法を適用した。
各薬物及び濃度でまとめ、上記指標を時系列(T=0h、6h及び12h)、薬物毎の濃度間、濃度(IC50及びCrnax)毎の薬物間などで対応のあるt検定(Paired t-test)で検定を行った。すべてサンプルはN=14で検討した。
PMA-HTLV-1 viability PCRによるABL1阻害薬のアッセイの結果として、ABL1阻害薬処理による生細胞中pXコピー減少率(pXdecrease rate(%))を算出し、結果を表5にまとめた。
以下、ΔCτDrugによる検討、生細胞中pXコピー数減少率(%)による検討は、同等なので、簡単のため後者の生細胞中pXコピー数減少率(%)のみ用いて考察した。統計学的検討は時系列での比較はPaired t-test、濃度間及び薬剤間比較はMann-Whitney U testを用い、†:P<0.05、*:P<0.01で有意を示した。
結果を図29に示した。図29においてAはイマチニブ(600nM、5μM)、Bはニロチニブ(30nM、3μM)について経時的変化を検討した結果を示している。図29に示すように、イマチニブ及びニロチニブとも、T=0hと6h及び12hとの間でいずれも危険率1%未満で有意差を認めた。イマチニブ600nM(IC50)では6hと12hとの間でも危険率1%未満で有意差を認めた。イマチニブの効果による生細胞中ウイルス減少効果の出現が6h時点でやや低いためと考えられるが、この現象がAC由来検体に特異的かどうかは更なる解析が必要である。なお、AC由来検体であっても12h後には十分な効果が出現している。
同一薬剤及び同時点で濃度による効果の差があるかどうかを検討した。結果を図30に示した。図30はイマチニブを600nMと5μMで使用したときの結果である。図30に示したように、イマチニブの600nMと5μMの間では6hの時点において危険率1%未満で有意差を認め、5μMで使用した場合の方が600nMで使用した場合と比べて、生細胞中ウイルス減少率が高かった。たたし、図30に示したように、12hの時点では濃度間の有意差なかった。データを示さないが、ニロチニブでは濃度間の差は6h及び12hともなかった。
結果を図31に示した。図31においてAはIC50濃度でのイマチニブ(600nM)及びニロチニブ(30nM)間を比較した結果を示し、BはCmax濃度でのイマチニブ(5μM)及びニロチニブ(3μM)間を比較した結果を示している。図31に示すように、イマチニブ600nM及びニロチニブ30nMは、6hの時点では危険率1%未満で有意差がみられ、12hの時点でもP値0.059といずれの時点でも、イマチニブと比べてABL特異性がより高いニロチニブを使用したほうが生細胞中ウイルス減少率が高かった。この傾向はHAM由来CD4+T細胞を使用した場合と同様であった。なお、Cmax濃度での両者はBに示したように有意差はなかった。
実施例2で行ったHAM由来CD4+T細胞-PBMCに対するPMA-HTLV-1 Viability PCRによるABL1阻害薬のアッセイの結果と、本実施例で行ったAC由来CD4+T細胞-PBMCに対する同アッセイの結果とを比較した結果を図32に示した。図32に示すグラフにおいて、6h及び12hの各区には、左から順にイマチニブ600nMの結果、イマチニブ5μMの結果、ニロチニブ30nMの結果及びニロチニブ3μMの結果を棒グラフとして示している。
しかし6hと12hとで有意に低下するなど観察した12h後まで有意な減少が継続した。ACでは12h後は未処理時(T=0h)とは有意差があり6hとは有意差がなかったが、減少傾向は継続し、ニロチニブ30nMで最大71.38%とHAMに匹敵する減少率がみられた。
〔ヒトにおける投与例〕
HTLV-1感染動物モデルは、成人T細胞白血病(ATL)様動物腫瘍モデルに比べて、これまでのところ良いモデルが樹立されていない。HAM動物モデルはさらに困難な状況である。したがって、in vivoの系において、ABL1阻害薬によるHAM改善効果や抗ウイルス効果を検証することが困難である。
Claims (2)
- イマチニブ、ニロチニブ及びダサチニブからなる群から選ばれる少なくとも1つの物質を有効成分とするHTLV-1関連脊髄症(HAM/TSP)における運動機能障害の改善薬。
- イマチニブ、ニロチニブ及びダサチニブからなる群から選ばれる少なくとも1つの物質を有効成分とする抗HTLV-1剤。
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