以下、図面を参照しながら本発明の一実施の形態について説明する。
なお、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」、「層」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「シート」はフィルムや板や層とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。また、本明細書において「シート面(板面、フィルム面)」とは、対象となるシート状の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材の平面方向(面方向)と一致する面のことを指す。さらに、本明細書において、シート状の部材の法線方向とは、対象となるシート状の部材のシート面への法線方向のことを指す。
図1〜図4を参照しつつ、まず、本発明の一実施の形態に係る光学構造体100を備える表示装置10の基本的な構成を説明する。図1は、光学構造体100を備える表示装置10の概略的な断面図であり、図2は、表示装置10における光の挙動を説明するための表示装置10の概略的な断面図である。図3は、光学構造体100の拡大断面図であり、図4は、光学構造体100の高屈折率層と低屈折率層との間の界面に形成される凹凸形状の拡大図である。なお、上記の各断面図においては、説明の便宜上、ハッチングが省略されている場合がある。また、図1〜図4は、後述する第1方向d1と、表示装置10における液晶パネル15及び光学構造体100のシート状の基材101の共通の法線方向と、を含む面における断面図を示している。なお、本実施の形態では、第1方向d1は、表示装置10において後述するようにエッジライト型となる面光源装置20の光源24が導光板30に光を出射する方向である。
(表示装置)
まず、表示装置10の全体の構成について説明する。図1に示すように、本実施の形態に係る表示装置10は、液晶パネル15と、液晶パネル15の裏面15Bに対面して配置されて液晶パネル15を裏面15B側から面状に照らす面光源装置20と、液晶パネル15の表示面15A上に配置されるシート状の光学構造体100と、を備えている。液晶パネル15は、静止画像又は動画像である像を表示する表示面15Aと、表示面15Aに対向して配置された裏面15Bと、を有している。表示装置10では、液晶パネル15が面光源装置20からの光の透過または遮断を、画素を形成する領域(サブピクセル)毎に制御するシャッターとして機能し、液晶パネル15の駆動により表示面15Aに像が表示されるようになっている。
図示された液晶パネル15は、出光側に配置された上偏光板13と、入光側に配置された下偏光板14と、上偏光板13と下偏光板14との間に配置された液晶層12と、を有している。偏光板14,13は、入射した光を直交する二つの偏光成分(例えばP波およびS波)に分解し、一方の方向(透過軸と平行な方向)に振動する直線偏光成分(例えば、P波)を透過させ、前記一方の方向に直交する他方の方向(吸収軸と平行な方向)に振動する直線偏光成分(例えば、S波)を吸収する機能を有している。
液晶層12では、一つの画素を形成する領域毎に、電圧印加がなされ得るようになっており、電圧印加の有無によって液晶層12中の液晶分子の配向方向が変化するようになっている。一例として、入光側に配置された下偏光板14を透過した特定方向の偏光成分は、電圧が印加されていない液晶層12を通過する際にその偏光方向を90°回転させ、その一方で、電圧が印加された液晶層12を通過する際にその偏光方向を維持する。この場合、液晶層12への電圧印加の有無によって、下偏光板14を透過した特定方向に振動する偏光成分が、下偏光板14の出光側に配置された上偏光板13をさらに透過するか、あるいは、上偏光板13で吸収されて遮断されるか、を制御することができる。このようにして液晶パネル15では、面光源装置20からの光の透過または遮断を、画素を形成する領域毎に制御し得るようになっている。
本実施の形態においては、液晶パネル15が、一例としてVA(Vertical Alignment)型液晶パネルとなっている。したがって、液晶パネル15は、液晶層12内の液晶分子に対する電圧がオフまたは最小値のときに前記液晶分子が表示面15Aの法線方向に沿って配向して面光源装置20からの光が遮断される状態となり、前記液晶分子に対する電圧を徐々に増加させて前記液晶分子を表示面15Aに沿う側に次第に傾斜させることにより、面光源装置20からの光の透過率を徐々に増加させる構成を有する。
なお、液晶パネル15は、VA型に限られるものでなく、TN(Twisted Nematic)型液晶パネルであってもよいし、IPS(In−Plane Switching)型液晶パネルであってもよい。液晶パネル15の詳細については、種々の公知文献(例えば、「フラットパネルディスプレイ大辞典(内田龍男、内池平樹監修)」2001年工業調査会発行)に記載されており、ここではこれ以上の詳細な説明を省略する。
次に面光源装置20について説明する。面光源装置20は、面状に光を発光する発光面21を有しており、本実施の形態では、液晶パネル15を裏面15B側から照明する装置として用いられている。図1に示すように、面光源装置20は、一例としてエッジライト型の面光源装置として構成され、導光板30と、導光板30の一方の側(図1に於いては左側)の側方に配置された光源24と、導光板30にそれぞれ対面するようにして配置された光学シート(プリズムシート)60および反射シート28と、を有している。図示された例では、光学シート60が、液晶パネル15に直面して配置されている。そして光学シート60の出光面61によって、面光源装置20の発光面21が画成されている。
図示の例では、導光板30の出光面31が、液晶パネル15の表示面15Aおよび面光源装置20の発光面21と同様に、平面視形状(上方から見下ろして見た形状)が四角形形状に形成されている。この結果、導光板30は、全体的に、一対の主面(出光面31および裏面32)を有する相対的に厚み方向の辺が他の辺よりも小さい直方体状の部材として構成されており、一対の主面間に画成される側面は四つの面を含んでいる。同様に、光学シート60および反射シート28は、全体的に、相対的に厚み方向の辺が他の辺よりも小さい直方体状の部材として構成されている。
図1および図2に示すように、導光板30は、液晶パネル15側の一方の主面によって構成された上述した出光面31と、出光面31に対向するもう一方の主面からなる裏面32と、出光面31および裏面32の間を延びる側面と、を有し、側面のうちの第1方向d1に対向する二つの面のうちの一方の側面が、入光面33をなしている。そして図1および図2に示すように、入光面33に対面して光源24が設けられている。入光面33から導光板30内に入射した光は、図2に示すように、第1方向(導光方向)d1に沿って入光面33に対向する反対面34に向けて、概ね第1方向(導光方向)d1に沿って導光板30内を導光されるようになる。ここで、本実施の形態に係る表示装置10は、第1方向d1が水平方向すなわち左右方向に沿うように配置されることを想定されたものであり、この場合、光源24からの光は左右方向に導光されることになる。しかしながら、このような配置は特に限られるものではなく、表示装置は他の態様で配置されてもよい。また、本実施の形態では、面光源装置20がエッジライト型であるが、面光源装置20は、直下型や裏面照射型などの他の形式であってもよい。
導光板30についてさらに詳述すると、本実施の形態では、導光板30の裏面32が凹凸面として形成されている。具体的な構成として、図2に示すように、裏面32が、傾斜面37と、導光板30の法線方向に延びる段差面38と、導光板30の板面方向に延びる接続面39と、を有している。導光板30内での導光は、導光板30の一対の主面31,32での全反射作用によってなされる。その一方で、傾斜面37は、入光面33側から反対面34側へ向かうにつれて出光面31に接近するよう、導光板30の板面に対して傾斜している。したがって、傾斜面37で反射した光については、一対の主面31,32に入射する際の入射角度は小さくなる。そして傾斜面37で反射することにより、一対の主面31,32への入射角度が全反射臨界角度未満になると、図2のL1に示すように、光は、導光板30から出射するようになる。すなわち、傾斜面37は、導光板30から光を取り出すための要素として機能する。なお、導光板30は、本実施の形態における態様に限られるものではなく、例えばドットパターン方式等の他の態様であってもよい。
また光源24は、例えば、線状の冷陰極管等の蛍光灯や、点状のLED(発光ダイオード)や白熱電球等の種々の態様で構成され得る。本実施の形態における光源24は、入光面33の長手方向に沿って並べて配置された多数の点状発光体25、具体的には、多数の発光ダイオード(LED)によって、構成されている。
また反射シート28は、導光板30の裏面32に対面するようにして配置される部材であって、導光板30の裏面32から漏れ出した光を反射して、再び導光板30内に入射させるための部材である。反射シート28は、白色の散乱反射シート、金属等の高い反射率を有する材料からなるシート、高い反射率を有する材料からなる薄膜(例えば金属薄膜や誘電体多層膜)を表面層として含んだシート等から、構成され得る。反射シート28での反射は、正反射(鏡面反射)でもよく、拡散反射でもよい。反射シート28での反射が拡散反射の場合には、当該拡散反射は、等方性拡散反射であってもよいし、異方性拡散反射であってもよい。
また光学シート60は、透過光の進行方向を変化させる機能を有した部材である。図2に示すように、本例に係る光学シート60は、板状に形成された本体部65と、本体部65の入光側面67上に形成された複数の単位プリズム(単位形状要素、単位光学要素、単位レンズ)70と、を有している。本体部65は、一対の平行な主面を有する平板状の部材として構成されている。図示の例においては、単位プリズム70が本体部65の入光側面67上に並べて配置されており、各単位プリズム70は柱状に形成され、その配列方向と交差する方向に延びている。なお、本実施の形態では、一つの光学シート60が導光板30上に設けられるが、導光板30上には、複数の光学シートが設けられもよい。この場合、各光学シートのプリズムの溝の向きは、互いに異なっていてもよい。
以上のような面光源装置20は、光学シート60を備えることにより、導光板30からの光を所望の進行方向や偏光状態に変換して液晶パネル15に入射させるようになっている。そして液晶パネル15に入射した光は、上述したように、電圧印加に応じて液晶層12において透過または遮断を画素の形成領域毎に制御され、これにより、液晶パネル15の表示面15Aに像が表示されることになる。
(光学構造体)
次に図2〜図4を参照しつつ光学構造体100について詳しく説明する。図2および図3に示すように、本実施の形態に係る光学構造体100は、出光面101Aと出光面101Aに対向して配置された裏面101Bとを有するシート状の基材101と、基材101の裏面101B上に設けられ、基材101に沿って延びるフィルム状の高屈折率層102と、高屈折率層102の基材101側とは反対側の面上に設けられて基材101に沿って延び、且つ屈折率が高屈折率層102よりも低いフィルム状の低屈折率層103と、基材101の出光面101A上に設けられた反射防止層104と、を備えている。
基材101は、樹脂やガラス等からなる光透過性を有する透明基材であり、その材質としては、例えば、ポリオリフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアミド、ガラスなどが挙げられる。光学構造体100は、低屈折率層103が表示装置10の表示面15A側に向けられるように配置され、図示の例では、低屈折率層103が表示装置10、すなわち表示面15Aに直接的に接している。また反射防止層104は、光学構造体100へ入射する外光の表面反射を抑制するために設けられている。これにより、外光の表面反射によって表示装置10に表示される像の視認性が損なわれることを防止できる。
なお、このような反射防止層104は設けられていなくてもよい。
図3に示すように、本実施の形態では、高屈折率層102が、基材101側とは反対側の面に複数のレンズ部110を有し、レンズ部110は、高屈折率層102の法線方向に沿って低屈折率層103側に凸となるように形成されている。すなわち、高屈折率層102は、基材101側を向く表面および当該表面に対向して配置され低屈折率層103側を向く裏面を有するフィルム状の層本体102Aと、層本体102Aの裏面上に並べて配置された複数のレンズ部110と、を一体に有している。これに対し、低屈折率層103は、レンズ部110を覆い且つ複数のレンズ部110の間まで充填されるように、高屈折率層102に積層されている。これにより本実施の形態では、高屈折率層102と低屈折率層103との界面が凹凸形状120をなすことになる。
凹凸形状120は、一つの凹部121と凸部122とで1周期の形状をなし、この1周期の形状を繰り返し形成することにより構成されている。なお、凹部121の底部と凸部122の頂部との中点を通る面方向に延びる基準線SLに対し高屈折率層102側に凹んだ部分が凹部121に対応し、基準線SLに対し低屈折率層103側に凸となる部分が凸部122に対応している。凹部121および凸部122はそれぞれ、第1方向d1に配列され、第1方向d1と非平行、例えば直交する方向に線状に延び、本例の凹部121および凸部122のそれぞれは、第1方向d1と直交する方向に線状に延びている。
ここで、本実施の形態の凹部121と凸部122のそれぞれは、図3に示すように、高屈折率層102および低屈折率層103の面方向に沿って延びる平坦部121A,122Aを有し、詳しくは、凹部121の底部が平坦部121Aとなっており、凸部122の頂部が平坦部122Aとなっている。また凹部121の平坦部121Aと凸部122の平坦部122Aとの間に延びる凹凸形状120の側面120Sは、低屈折率層103側に凸となる曲面となっている。側面120Sは、これが接続する平坦部121Aの端点から法線方向に沿って延ばした直線を面方向に越えないように形成されている。これにより、側面120Sをなすレンズ部110を有する高屈折率層102を型抜きすることが可能となる。なお、本実施の形態では側面120Sが曲面となっているが、側面120Sは、低屈折率層103側に凸となる折れ面(多角形状)となっていてもよい。以上のような凹凸形状120は、表示面15Aから出射される像を表示するための光に対して全反射や屈折、および透過等の光学的作用を及ぼすことにより、表示面15A上に表示される像の表示品質を向上させるために設けられている。
また本実施の形態においては、高屈折率層102の屈折率と低屈折率層103の屈折率との差が、0.05以上0.25以下の範囲となるように、高屈折率層102および低屈折率層103が選択されている。また高屈折率層102は、表示装置10の正面側に向けられるように配置され、低屈折率層103は、液晶パネル15の表示面15A側に向けられるように配置される。そして図示の例においては、低屈折率層103が粘着層となっており、図2に示すように、光学構造体100は低屈折率層103によって液晶パネル15の表示面15Aに接合されている。これら高屈折率層102および低屈折率層103も光透過性を有する部材であり、その材質は特に限られるものではない。
図4は、凹凸形状120を示す拡大図である。以下では、図4を参照しつつ凹凸形状120についてより詳しく説明する。図4において、符号θ1は、凹凸形状120の側面120Sが高屈折率層102および低屈折率層103の法線方向となす最小角度を示し、符号θ2は、凹凸形状120の側面120Sが高屈折率層102および低屈折率層103の法線方向となす最大角度を示している。詳しくは、最小角度θ1は、側面120Sの凹部121側の端点を通る接線が高屈折率層102および低屈折率層103の界面の法線方向となす角度であり、最大角度θ2は、側面120Sの凸部122側の端点を通る接線が高屈折率層102および低屈折率層103の界面の法線方向となす角度である。なお、側面120Sが折れ面である場合、最小角度θ1は、側面120Sにおける凹部121側の端点を含む要素面を通る直線が高屈折率層102および低屈折率層103の界面の法線方向となす角度となり、最大角度θ2は、側面120Sにおける凸部122側の端点を含む要素面を通る直線が高屈折率層102および低屈折率層103の界面の法線方向となす角度となる。また符号θ0は、凹凸形状の側面120Sの両端点を結んだ直線と、高屈折率層102および低屈折率層103の法線方向と、により規定される側面120Sの「平均斜面角度」を示している。また符号Pは、凹凸形状120における一つの凹部121と凸部122との1周期の間隔であるピッチを示している。また符号Hは、凹部121から凸部122までの法線方向に沿った凹凸形状120の高さを示し、符号Lは、側面120Sの両端点間の面方向における距離を示している。
最大角度θ2と最小角度θ1との差によって、「斜面角度範囲α」が規定され、この斜面角度範囲αが大きい程、側面120Sは、曲率が大きいことになる。本件発明者は、鋭意研究の結果、この斜面角度範囲αが3度以上60度以下となることが好ましいことを知見した。また本件発明者は、上述の「平均斜面角度θ0」が9度以上18度以下となることが好ましいことも知見した。さらに本件発明者は、凹凸形状120の凹部121および凸部122の1周期分の長さに対する平坦部121A,122Aの合計の長さの割合β、すなわち図4を参照し、β=(a+b)/Pが、0.60以上0.90以下となることが特に好ましいことも知見した。なお、上記aは、凸部122の平坦部122Aの幅(長さ)であり、上記bは、凹部121の平坦部121Aの幅(長さ)である。また本件発明者は、斜面角度範囲αは、割合βによって特に好ましい範囲が変動することも知見している。例えば、後述するように、割合βが0.80である場合には、斜面角度範囲αが9度以上16度以下であることが特に好ましいことを知見しているが、割合βが変わると、このような特に好ましい斜面角度範囲αの範囲が変化する。
凹凸形状120においては、上述の三種の寸法条件を同時に充足するように形成されることで、表示装置10の正面視での表示品質を良好に保ちつつ、視野角内における色変化を極めて効果的に抑制することができるようになる。しかしながら、上述の寸法条件の一部のみが充足された場合であっても、凹凸形状120は、視野角内における色変化を効果的に抑制することができる。
次に、上述した斜面角度範囲α、平均斜面角度θ0及び割合βの特に好ましい範囲を具体的に導いた例について説明する。
(凹凸形状の側面の斜面角度範囲(曲率)と色変化との関係)
まず、一例として、割合βが0.80であるときに斜面角度範囲αが9度以上16度以下となることが特に好ましい範囲となることについて説明する。図5には、互いに曲率が異なる複数(三つ)の凹凸形状120の側面120Sが示され、図中の右側に示された凹凸形状120であるほど、側面120Sの斜面角度範囲αが大きくなっている、すなわち曲率も大きくなっている。側面120Sの曲率が異なる場合には、図6における光の軌跡LTに示すように、凸部122の平坦部122Aから進入して側面120Sで全反射する光の挙動が変化するようになる。図6において、図中の左側に図示された側面120Sでは、斜面角度範囲αが0度となっており、曲率半径が無限大(Inf)となっている。この斜面角度範囲αが0度となる側面120Sは、「曲面」の概念に含まれるものではないが、説明の便宜のために図示している。また図中の中央に図示された側面120Sでは、斜面角度範囲αが12度となっており、曲率半径は55μmとなっている。また図中の右側に図示された側面120Sでは、斜面角度範囲αが22度となっており、曲率半径は31μmとなっている。なお図5および図6においては、異なる凹凸形状120の間で、側面120Sの両端点間の面方向における距離Lが一定の値に固定され、且つ側面120Sの両端点間を直線で結んだ距離である斜面長さも一定の値に固定されている。また、凸部122の平坦部122Aの幅aも一定の値に固定されている。
そして図7Aおよび図7Bには、図6に示された三つの凹凸形状120(α=0度、12度、22度)に対応する光学構造体100についての視野角内の色変化を評価したグラフが示されている。詳しくは、図7Aおよび図7Bは、凹凸形状120の凹部121および凸部122の1周期分の長さに対する平坦部121A,122Aの合計長さの割合βが、0.80である場合の、上述の各凹凸形状120に対応する光学構造体100の色変化を評価するグラフである。このうち、図7Aは、横軸が光学構造体100から出射される光の視野角中の角度を示し、縦軸が色変化Δu’v’を示したグラフであり、表示装置10の本体(液晶パネル15側)から入射して上述の諸条件の光学構造体100から出射される光の視野角内の色変化が示されている。なお、横軸に示される角度が0度(deg)である場合は、法線方向に沿って視認されたことを意味し、例えば30度は、法線方向に対して30度傾斜した方向に沿って視認されたことを意味する。また色変化Δu’v’は色の差を示し、均等色空間におけるu’とv’とで規定される色から計算される。ある視野角中の角度θにおけるΔu’v’の値は、次の式(1)で表わされる。
式(1)における均等色空間の色座標であるu’とv’は、それぞれ次の式(2−1),(2−2)で表わされる。
ここで、上記の各式において、xとyは、CIE1931色空間(CIE xyY色空間)で規定される色座標である。
また図7Bは、横軸が斜面角度範囲αの値を示し、縦軸が色変化スコアを示したグラフであり、表示装置10の本体(液晶パネル15側)から入射して上述の諸条件の光学構造体100から出射される光の色変化スコアが示されている。ここで、色変化スコアは、その値が小さい程、光学構造体100が無い場合に対して色変化が視野角0〜60度の全範囲において大幅に且つ効果的に抑制されていることを示す指標である。色変化スコアは、以下の式(3)で算出される。式(3)における、θは、視野角内の角度を示し、Filmは、光学構造体100が表示装置10に設けられている場合を意味し、NonFilmは、光学構造体100が表示装置10に設けられていない場合を意味する。なお、色変化スコアは、色変化の程度を評価するために本件発明者によって独自に作成された指標である。この色変化スコアは、色変化Δu’v’を特定可能であれば、本実施の形態に係る光学構造体100と同様の部材の色変化の評価において用いることができる。
なお、図7A,Bに示す色変化の評価、後述する図8A,Bに示す輝度の評価及び図9A,Bに示すコントラストの評価においては、光学構造体100を設ける表示装置の本体として、ソニー社製のマルチドメイン型VA型液晶表示装置を用いた。そして、この表示装置の本体において光学構造体100無しで、パターンジェネレータによってブルーの画像を表示した際の色変化等と、この表示装置の本体に光学構造体100を設けて上記と同様の画像を表示した際の色変化等と、を、トプコン社製の「分光放射計 SR−2」を用いて評価した。なお、後述する図11A〜図13Bに示す評価及び図13A〜図16Bに示す評価も、上述と同様の条件で行った。
上述のように作成された図7Aのグラフを見ると、斜面角度範囲αが0度、12度、22度となる側面120Sを有する凹凸形状120が形成された光学構造体100を表示装置10に設けた場合には、光学構造体100が表示装置10に設けられていない場合に比較して、視野角内の色変化が抑制されていることが分かる。一方で、このうち、斜面角度範囲αが0度である場合には、視野角内の30〜45度の範囲で色変化のグラフが視野角内において滑らかに遷移しているとは言えない状態となっている。このような傾向から、斜面角度範囲αが小さすぎる場合には、拡散効果が弱く色変化の抑制効果が小さくなり得るという知見を本件発明者は見出した。なお図6において、斜面角度範囲αが0度となっている側面120Sでは、全反射した光が一定の角度の方向に出射されている。斜面角度範囲αが小さすぎる場合には、このように光が拡散する角度が小さくなる現象により、拡散効果が弱く色変化の抑制効果が小さくなる傾向になるものと考えられる。
また斜面角度範囲αが22度である場合には、他のものよりも、視野角内の30〜45度の範囲で色変化の抑制効果が弱くなっていることが分かる。このような傾向から、斜面角度範囲αが大きすぎる場合には、拡散効果が弱く色変化の抑制効果が小さくなり得るという知見を本件発明者は見出した。図6において、斜面角度範囲αが22度となっている側面120Sでは、臨界角以上の角度で光が側面120Sに当たっており、屈折して光が抜けている。このような現象により、斜面角度範囲αが大きすぎる場合には、拡散効果が弱く色変化の抑制効果が小さくなる傾向になるものと考えられる。
一方で、図7Bにおける色変化スコアは、上述の式(3)によって算出されることにより、その値が小さい程、光学構造体100が無い場合に対して色変化が大幅に且つ視野角内において滑らかに色変化が抑制されていることを示す指標となっている。ここで、図7Bを見ると、斜面角度範囲αが9度以上16度以下の範囲で、色変化スコアが顕著に抑制されている傾向があることが分かる。なお、斜面角度範囲αが7度以上20度以下の範囲も色変化スコアがその外側の範囲に対して下降する傾向があるため、色変化の抑制の点で好ましい範囲と言えるが、斜面角度範囲αが9度以上16度以下の範囲では、色変化スコアの値が相対的に特に小さくなっているため、特に好ましい範囲と言える。この点及び上述した色変化の変化に関する各知見に着目すると、側面120Sの斜面角度範囲αが9度以上16度以下である範囲では、視野角内の色変化のばらつきが顕著に抑制されていると評価できる。なお、図7Bにおいては、図7Aで例示した斜面角度範囲αとは異なる角度の光学構造体100における色変化スコアも示されている。
以上により、本件発明者は、一例として、凹凸形状120の1周期に対する平坦部121A,122Aの割合βが0.80である場合においては斜面角度範囲αの好ましい範囲が、7度以上20度以下、特に好ましい範囲が9度以上16度以下となることを見出した。そして実際上、この範囲であると、この範囲から外れる場合に比較して、視野角内の色変化のばらつきを効果的に抑制することができたことを確認している。なお、図7Bのグラフにおいては、斜面角度範囲αが9度の位置を上回ると色スコアが急峻に下降し、斜面角度範囲αが16度の位置を下回ると色変化スコアが急峻に下降して16度の位置であると色変化スコアの値が、それよりも大きい場合に比べて相対的に十分に小さくなっており、各位置において臨界性を見出すことができる。上述の斜面角度範囲αの好ましい範囲においては、このような色変化スコアが急峻に下降していると評価できる点が下限値および上限値として規定されている。なお斜面角度範囲αは、9度以上16度以下であることが好ましいが、10度以上15度以下であることが更に好ましい。
また本件発明者は、割合βの値を0.80よりプラス側に変化させると、図7Bに示されるような色変化スコアが急峻に下降する範囲は、図7Bにおいて、斜面角度範囲αのプラス方向に変位しつつ横軸で広がる傾向があり、割合βを0.80に対してマイナス側に変化させると、図7Bに示されるような色変化スコアが急峻に下降する斜面角度範囲αの範囲は、図7Bにおいて、マイナス方向に変位する傾向があることを知見している。したがって、上述のように割合βが0.80である場合には、斜面角度範囲αの特に好ましい範囲が9度以上16度以下となるが、割合βが変わると、このような好ましい範囲は、変化することになる。
また図8Aは、表示装置10の本体(液晶パネル15側)から入射して光学構造体100から出射される光の視野角内の波長450nmにおける放射輝度を示すグラフであり、横軸が視野角中の角度を示し、縦軸が放射輝度を示している。図8Bは、表示装置10の本体(液晶パネル15側)から入射して上述の諸条件の光学構造体100から出射される光の放射輝度の低下の程度を示すグラフであり、横軸が斜面角度範囲αの値を示し、縦軸が放射輝度低下率(図中では、「輝度低下率」と表記)を示している。放射輝度低下率は、その値が小さい程、光学構造体100が無い場合に対して放射輝度の低下の程度が小さいことを示す指標である。
また図9Aは、表示装置10の本体(液晶パネル15側)から入射して光学構造体100から出射される光の視野角内のコントラストを示すグラフであり、横軸が視野角中の角度を示し、縦軸がコントラストを示している。図9Bは、表示装置10の本体(液晶パネル15側)から入射して上述の諸条件の光学構造体100から出射される光のコントラストの低下の程度を示すグラフであり、横軸が斜面角度範囲αの値を示し、縦軸がコントラスト低下率を示している。コントラスト低下率は、その値が小さい程、光学構造体100が無い場合に対してコントラストの低下の程度が小さいことを示す指標である。
上述した斜面角度範囲αが9度以上16度以下である範囲では、光学構造体100が無い場合に対して輝度およびコントラストの低下が過剰ではないと評価できる。よって、この範囲である場合には、表示装置10の正面視での表示品質を良好に保ちつつ、視野角内の色変化を効果的に抑制できている。この点からも、斜面角度範囲αは、9度以上16度以下であることが好ましいと言える。なお、このような数値範囲は特に好ましい範囲の例に過ぎず、本発明は、ここで例示した数値範囲と異なる場合であっても有用な効果を得ることができるものである。
(凹凸形状の側面の平均斜面角度と色変化との関係)
次に凹凸形状120の側面120Sの平均斜面角度θ0が9度以上18度以下であることを好ましいとした理由について説明する。図10には、互いに平均斜面角度θ0が異なる複数(三つ)の凹凸形状120の側面120Sが示され、図中の右側に傾くほど、平均斜面角度θ0が大きいことを意味する。なお、図10に示される各側面120Sは、互いに同じ曲率を設定されている(すなわちαは一定)。そして図11Aおよび図11Bには、平均斜面角度θ0=6.0度、8.5度、11度、15.0度、17.5度、20度となる凹凸形状120に対応する光学構造体100についての視野角内の色変化を評価したグラフが示されている。より詳しくは、図11Aおよび図11Bは、凹凸形状120の凹部121および凸部122の1周期分の長さに対する平坦部121A,122Aの合計長さの割合βが、0.80である場合の、上述の各凹凸形状120に対応する光学構造体100の色変化を評価するグラフである。
図11Aは、横軸が光学構造体100から出射される光の視野角中の角度を示し、縦軸が色変化Δu’v’を示したグラフであり、表示装置10の本体(液晶パネル15側)から入射して上述の諸条件の光学構造体100から出射される光の視野角内の色変化が示されている。なお、各条件の光学構造体100では、側面120Sの曲率が互いに同一に設定されている。また図11Bは、横軸が平均斜面角度θ0の値を示し、縦軸が色変化スコアを示したグラフであり、表示装置10の本体(液晶パネル15側)から入射して上述の諸条件の光学構造体100から出射される光の色変化スコアが示されている。色変化スコアは、上述した式(3)によって算出される。
上述のように作成された図11Aを見ると、平均斜面角度θ0が11度、15度、17.5度、20度となる側面120Sを有する凹凸形状120が形成された光学構造体100を表示装置10に設けた場合には、光学構造体100が表示装置10に設けられていない場合に比較して、視野角内の色変化が抑制されていることが分かる。一方で、平均斜面角度θ0が6度および8.5度となる側面120Sを有する凹凸形状120が形成された光学構造体100を表示装置10に設けた場合には、視野角内の15〜25度の範囲で色変化が、光学構造体100が設けられていない場合よりも大きくなっており、これらは好ましくないことが分かる。このような傾向から、平均斜面角度θ0が小さすぎる場合には、側面120Sで全反射する光の量が減ることで、拡散効果が弱く色変化の抑制効果が小さくなり得るという知見を本件発明者は見出した。
一方で、図11Bを見ると、平均斜面角度θ0が9度以上18度以下の範囲で、色変化スコアが好適に抑制されていることが分かる。この点および上述した色変化の変化に関する知見に着目すると、側面120Sの平均斜面角度θ0が9度以上18度以下である範囲では、視野角内の色変化のばらつきが好適に抑制されていると評価できる。
以上により、本件発明者は、平均斜面角度θ0の好ましい範囲を9度以上18度以下と規定している。そして実際上、この範囲であると、この範囲から外れる場合に比較して、視野角内の色変化のばらつきを効果的に抑制することができたことを確認している。なお、平均斜面角度θ0は、9度以上18度以下であることが好ましいが、10度以上17.5度以下であることが更に好ましい。より好ましくは、平均斜面角度θ0は、11度以上15度以下である。また、図11Bに示される色変化のグラフは、凹凸形状120の凹部121および凸部122の1周期分の長さに対する平坦部121A,122Aの合計長さの割合βの値によって変化するが、割合βの値によらず、平均斜面角度θ0が9度以上18度以下である場合には、良好な色変化の抑制効果を得ることができることを、本件発明者は見出している。
また図12Aは、表示装置10の本体(液晶パネル15側)から入射して光学構造体100から出射される光の視野角内の波長450nmにおける放射輝度を示すグラフであり、横軸が視野角中の角度を示し、縦軸が放射輝度を示している。図12Bは、表示装置10の本体(液晶パネル15側)から入射して上述の諸条件の光学構造体100から出射される光の放射輝度の低下の程度を示すグラフであり、横軸が平均斜面角度θ0の値を示し、縦軸が放射輝度低下率(図中では、「輝度低下率」と表記)を示している。放射輝度低下率は、その値が小さい程、光学構造体100が無い場合に対して放射輝度の低下の程度が小さいことを示す指標である。
また図13Aは、表示装置10の本体(液晶パネル15側)から入射して光学構造体100から出射される光の視野角内のコントラストを示すグラフであり、横軸が視野角中の角度を示し、縦軸がコントラストを示している。図13Bは、表示装置10の本体(液晶パネル15側)から入射して上述の諸条件の光学構造体100から出射される光のコントラストの低下の程度を示すグラフであり、横軸が平均斜面角度θ0の値を示し、縦軸がコントラスト低下率を示している。コントラスト低下率は、その値が小さい程、光学構造体100が無い場合に対してコントラストの低下の程度が小さいことを示す指標である。
図12A〜図13Bの結果から、平均斜面角度θ0が9度以上18度以下では、輝度及びコントラストと、色変化とがトレードオフの関係となることが知見された。
(凹凸形状の平坦部の割合と色変化との関係)
次に凹凸形状120の凹部121および凸部122の1周期分の長さに対する、平坦部121Aと122Aの幅の合計値の割合βが、一例として斜面角度範囲αが12度であるときに、0.74以上0.83以下であることを特に好ましいとしたことについて説明する。上述したように、本件発明者は、鋭意の研究の結果、光学構造体100においては、割合βが0.60以上0.90以下となる範囲が特に好ましいことを知見したが、以下においては、斜面角度範囲αが12度であるときに、割合βが0.74以上0.83以下であることが特に好ましい範囲となることを、実験乃至シミュレーションから導いたことを一例として説明する。図14Aおよび図14Bに示したグラフは、斜面角度範囲αが12度である場合のグラフであり、割合β=0.90、0.80、0.75、0.63となる凹凸形状120に対応する光学構造体100についての視野角内の色変化を評価したグラフが示されている。図14Aは、横軸が光学構造体100から出射される光の視野角中の角度を示し、縦軸が色変化Δu’v’を示したグラフであり、表示装置10の本体(液晶パネル15側)から入射して上述の諸条件の光学構造体100から出射される光の視野角内の色変化が示されている。また図14Bは、横軸が割合βの値を示し、縦軸が色変化スコアを示したグラフであり、表示装置10の本体(液晶パネル15側)から入射して上述の諸条件の光学構造体100から出射される光の色変化スコアが示されている。色変化スコアは、上述した式(3)によって算出される。
図14Aを見ると、平坦部の割合βが0.63、0.75、0.80、0,90となる側面120Sを有する凹凸形状120が形成された光学構造体100を表示装置10に設けた場合には、光学構造体100が表示装置10に設けられていない場合に比較して、視野角内の色変化が抑制されていることが分かる。しかしながら、割合βが0.90となる側面120Sを有する凹凸形状120では、光学構造体100が表示装置10に設けられていない場合に比較して、色変化の程度が小さいことが分かる。このような傾向から、割合βが大きすぎる場合には、側面120Sによる拡散効果が弱く色変化の抑制効果が小さくなり得るという知見を本件発明者は得た。
一方で、図14Bを見ると、平坦部の割合βが0.63、0.75、0.80、0.90となる場合においては、視野角内の色変化が抑制されていることが分かるが、割合βが0.90となる場合には、色変化スコアが比較的高い、すなわち色変化が比較的大きいと評価できる。また割合βが0.63となる場合には、色変化スコアが低いものの、すなわち色変化が小さいと評価できるものの、これよりも大きい値に対しての連続性が無く、安定的な色変化の抑制効果を得られるとは言い難い状態となっている。なお、図14Bにおいては、図14Aで例示した平坦部の割合βとは異なる割合βの光学構造体100における色変化スコアも示されている。以上の点に着目し、本件発明者は、斜面角度範囲αが12度であるときに、割合βが0.70以上0.86以下である範囲では、安定した状態で視野角内の色変化のばらつきが抑制されているものと評価した。また、この評価では、グラフを考慮すると、割合βが0.74以上0.83以下であることが特に好ましいものと考えられる。
また図15Aは、表示装置10の本体(液晶パネル15側)から入射して光学構造体100から出射される光の視野角内の波長450nmにおける放射輝度を示すグラフであり、横軸が視野角中の角度を示し、縦軸が放射輝度を示している。図15Bは、表示装置10の本体(液晶パネル15側)から入射して上述の諸条件の光学構造体100から出射される光の放射輝度の低下の程度を示すグラフであり、横軸が割合βの値を示し、縦軸が放射輝度低下率(図中では、「輝度低下率」と表記)を示している。放射輝度低下率は、その値が小さい程、光学構造体100が無い場合に対して放射輝度の低下の程度が小さいことを示す指標である。
また図16Aは、表示装置10の本体(液晶パネル15側)から入射して光学構造体100から出射される光の視野角内のコントラストを示すグラフであり、横軸が視野角中の角度を示し、縦軸がコントラストを示している。図16Bは、表示装置10の本体(液晶パネル15側)から入射して上述の諸条件の光学構造体100から出射される光のコントラストの低下の程度を示すグラフであり、横軸が割合βの値を示し、縦軸がコントラスト低下率を示している。コントラスト低下率は、その値が小さい程、光学構造体100が無い場合に対してコントラストの低下の程度が小さいことを示す指標である。
上述した割合βが0.74以上0.83以下である範囲では、光学構造体100が無い場合に対して輝度およびコントラストの低下が過剰ではないと評価できる。よって、この範囲である場合には、表示装置10の正面視での表示品質を損なうことなく、視野角内の色変化を効果的に抑制できている。この点からも、割合βは、0.74以上0.83以下であることが好ましいと言える。
また、以上に説明したように、斜面角度範囲αが12度であるときには、割合βが、0.74以上0.83以下となることが特に好ましい範囲となる。一方で、上述の「凹凸形状の側面の斜面角度範囲(曲率)と色変化との関係」で説明したように、割合βが0.80であるときには、斜面角度範囲αが9度以上16度となることが特に好ましい範囲となる。そして、本件発明者は、これらの結果を鋭意検討した結果、斜面角度範囲αの好ましい値は、割合βの値に応じて変化する以下の関係から決定され得ることに至った。
斜面角度範囲αは、好ましくは83.33β−59.67度以上かつ80β−44度以下であり、より好ましく66.67β−37.33度以上かつ100β−71度以下である。ただし、αは0より大きく、βは1未満である。なお、上記の式から、βは、0.55以上1.00未満であることが好ましく、αは、0より大きく36度未満であることが好ましいといえる。
このような条件に従って光学構造体100を作製すれば、表示装置10の正面視での表示品質を良好に保ちつつ、視野角内の色変化のばらつきを簡易的に且つ効果的に抑制することができる光学構造体100を得ることができる。
また本実施の形態に係る表示装置10の構成においては、面光源装置20からの光が光学構造体100の裏面に入射する。この際、面光源装置20からの光の放射角度の範囲が0度以上90度以下であっても、光学構造体100の内部における光線の角度範囲は、面光源装置20からの光の放射角度の範囲よりも狭くなる。これは、光が光学構造体100の入射する際に屈折が生じるからである。ここで、面光源装置20や光学構造体100の屈折率にもよるが、本実施の形態に係る表示装置10の構成においては、面光源装置20からの光の放射角度の範囲が0度以上90度以下である場合に、光学構造体100の内部における光線の角度範囲は、概ね0度以上60度以下となり得ることが想定される。具体的には、高屈折率層102の屈折率が1.15以上の場合、光学構造体100の内部における光線の角度範囲は、概ね0度以上60度以下となり得る。また、高屈折率層102の屈折率が1.29の場合には、光学構造体100の内部における光線の角度範囲を、0度以上51度以下にまで抑えることができる。さらに、より製造し易くなる範囲として、高屈折率層102の屈折率が1.6以上である場合、光学構造体100の内部における光線の角度範囲は、概ね0度以上40度以下にまで抑えることができる。
ここで、光学構造体100の内部における光線の角度範囲における最大の角度の光よりも大きい角度の光は、凹凸形状120の側面120Sで光学的作用を及ぼす必要がない。この点を考えると、想定される光学構造体100の内部における光線の角度範囲の最大の角度を考慮し、斜面角度範囲αは、0度より大きく60度以下でもよく、高屈折率層102の屈折率の値によっては、0度より大きく40度以下でもよい。なお、斜面角度範囲αが3度以上である場合には、色変化の抑制効果が目視でも認識できる程度となることを本件発明者は確認している。この点から、斜面角度範囲αは、3度以上60度以下であることが好ましく、高屈折率層102の屈折率の値によっては、3度以上40度以下であることがより好ましい。なお、本発明でいう高屈折率層とは、その屈折率が低屈折率層よりも高いという意味で高屈折率層と称される。
(表示装置における光の挙動)
次に本実施の形態の表示装置10における光の挙動を再度図2等を参照しつつ説明する。本実施の形態の表示装置10において像を表示する場合には、まず光源24から光が照射される。これにより入光面33から導光板30内に入射した光が、図2に示すように、第1方向d1に沿って入光面33に対向する反対面34に向けて、概ね第1方向d1に沿って導光板30内を導光される。導光された光は、導光板30の主面31,32の間で全反射を繰り返し、主面31への入射角度が全反射臨界角度未満になると、図2のL1に示すように、導光板30から光が出射される。導光板30から出射された光は、光学シート60を通過する際に単位プリズム70によって、所望の進行方向や偏光状態に変換されて液晶パネル15に入射する。次いで液晶パネル15に入射した光は、電圧印加に応じて液晶層12において透過または遮断を画素の形成領域毎に制御され、これにより液晶パネル15の表示面15Aに像が表示されることになる。
そして本実施の形態においては、液晶パネル15の表示面15Aから出射された光が、光学構造体100に入射する。このとき、液晶パネル15側から光学構造体100に入射する光は、凹凸形状120によって透過および全反射による光学的作用を付与される。すなわち、この際に、凹凸形状120における低屈折率層103側に凸となる曲面状の側面120Sによって、視野角の高角側を進行する光が全反射されて低角側を含む方向に広範囲に拡散されるとともに、凹凸形状120の平坦部121A,122Aによって、光学構造体100に垂直入射する光は正面方向へ進み、拡散は抑制される。これにより、視野角内における色変化が抑制されるとともに、正面視での輝度やコントラストの低下は抑制されるようになる。
これにより、本実施の形態によれば、表示装置10の正面視での表示品質を良好に保ちつつ、視野角内の色変化のばらつきを簡易的に抑制することができる。また本実施の形態では、例えば、凹凸形状120の側面120Sが高屈折率層102および低屈折率層103の法線方向となす最大角度と最小角度との差(斜面角度範囲α)を、上述の割合βが0.80である場合に、9度以上16度以下とすることで、視野角内の色変化のばらつきを効果的に抑制することができ、輝度とコントラストの過剰な低下を抑制することができる。また凹凸形状120の側面120Sの両端点を結んだ直線と、高屈折率層102および低屈折率層103の法線方向と、により規定される側面120Sの平均斜面角度θ0を、9度以上18度以下とすることで、視野角内の色変化のばらつきを効果的に抑制することができる。なお、このような数値範囲は好ましい範囲の例に過ぎず、本発明は、ここで例示した数値範囲と異なる場合であっても有用な効果を得ることができるものである。
また、上述のように凹凸形状120の平坦部121A,122Aは、光学構造体100に垂直入射する光を正面方向へ透過させる機能を有する。これにより、本実施の形態では、出射される光の拡散が抑制され、正面視での輝度やコントラストの低下を抑制することができる。一方で、凹凸形状120が平坦部121A、122Aを有することは、製造上のメリットが大きい。具体的には、凹凸形状120の側面120Sの形状を固定した条件で、平坦部121Aの長さと平坦部122Aの長さとの割合をある程度任意に変更した場合であっても、光学特性はほとんど変更しない。そのため、設計段階において、凹凸形状120の凹部121および凸部122の1周期に対する平坦部121A,122Aの割合βを所望の値に固定して、平坦部121Aの長さと平坦部122Aの長さとの割合はある程度任意に変更することにより、所望の光学特性を有する光学構造体100を、所望の製造プロセスで製造することが可能となる。具体的には、凹部121の平坦部121Aの割合を大きくとれば、低屈折率層103の充填が容易になる。凸部122の平坦部122Aの割合を大きくとれば、高屈折率層102の型抜きが容易になるとともに、高屈折率層102への賦形時に空気が混入する問題を抑えられる。平坦部121Aと平坦部122Aとの比率が、例えば7:4である場合には、このような製造上のメリットが得られることが分かった。なお、平坦部121Aと平坦部122Aとの比率は、極端な割合にしなければ、光学特性はほとんど変化しない。例えば斜面角度範囲α=12、割合β=0.80、の平均斜面角度θ0=11のとき、平坦部121A:平坦部122A=7:3〜3:10の間で、平坦部の割合を変化させても、光学特性はほとんど変化しなかった。
また型抜きの容易化を考慮すると、割合βは大きい程、型抜きが容易になる。このような製造上のメリットを考慮した場合には、割合βは、0.50以上1.00未満であることが好ましく、色変化の抑制効果を確保し易くすることを考慮すると、0.60以上0.90未満であることがより好ましい。
以上、本発明の実施の形態およびその変形例を説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限られるものではなく、これら実施の形態およびその変形例に対してはさらに変更を加えることが可能である。例えば、上述の実施の形態では、面光源装置20がエッジライト型である例が示されたが、面光源装置20は、直下型であってもよい。