JP6921743B2 - 安定化かつ自律性抗体vhドメイン - Google Patents

安定化かつ自律性抗体vhドメイン Download PDF

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Description

本発明は、概して、単一ドメイン抗体に関する。より詳細には、本発明は、抗体VHドメインをベースに構築された安定化かつ自律性単一ドメイン抗体に関する。
製薬業界は、およそ6000億米ドルの市場であり、そのうちの1000億米ドルは、今までに認可された約200種類の生物製剤によるものである。抗体をベースに作られる製品が、この生物製剤市場の約40%であり、モノクローナル抗体のリツキサン(非ホプスキンスリンパ腫の治療用)、ハーセプチン(乳癌)、およびアバスチン(様々な癌)などの幾つかのブロックバスターが、毎年約100億米ドルの売上高である(非特許文献1)。それらの用途は、広範囲の疾患を含むようにだけではなく、最も効果的な方法でこれらを標的にする様々な形態を含むように、引き続き広がっている。依然として全長IgGが標準であるが、抗体フラグメント、抗体−薬物結合体、および二重特異的抗体が、抗体を用いた治療の最先端を発展させる最も期待される取組みに含まれている(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4)。大部分が依然として未達成のままである1つの分野は、抗体による細胞内標的の標的化であるが、幾つかの成功が報告されている(非特許文献5)。
VHドメインは、ヒト免疫グロブリン重鎖の可変ドメインである。これらは、バインダーの作製および薬学的応用の可能性を有する。小型サイズのVHドメインは、高い腫瘍浸潤、血流からの速やかなクリアランスを可能にし、これらVHドメインを、いわゆる隠れたエピトープを標的とする優れた候補にする(非特許文献6;非特許文献7)。隠れたエピトープとはすなわち、インタクト抗体にとってアクセスしにくいウィルス表面の抗原に存在する狭い腔である。しかしながら、これらの骨格(scaffold)の開発は、インタクト抗体中に存在する軽鎖との相互作用の安定化が損なわれることを主な原因とする不十分な安定性によって妨げられてきた(非特許文献6;非特許文献7)。
VHドメインを安定化する以前の試みは、幾つかの成功をもたらした。ウィンター G(Winter G.)およびその同僚は、熱に強くかつin vitroで可逆的な折りたたみを示すVHドメインを同定する方法を開発した(非特許文献8)。この方法を使用して、ウィンター G(Winter G.)およびその同僚は、βラタクタマーゼに結合したドメイン抗体を同定した(非特許文献9)。ディミトロフ D.S.(Dimitrov D.S.)およびその同僚は、良好な安定性を有する自律性VHドメインを偶然に同定した。この骨格を使用して、ディミトロフ D.S.(Dimitrov D.S.)およびその同僚は、ドナー由来のヒトCDRのグラフトに基づくファージディスプレイライブラリーを作製し、牛痘タンパク質B5R、IGF−1、およびIGF−2に対するバインダーを同定することを可能にした(非特許文献10;非特許文献11)。サイデュ S.S.(Sidhu S.S.)およびその同僚は、4D5抗体(トランスツズマブ)VHドメインの安定化を試み、自律性の折りたたみおよび安定性を可能にする変異を同定した。この骨格を使用して合成ファージディスプレイライブラリーを作製した場合、VEGFに対するバインダーを同定することができる。しかしながら、この分子は特殊な方法で標的に結合した。すなわち、その結合の大部分は、CDR−H1、−H2、および−H3からなる通常の抗体結合部位ではなく、CDR−H3および先の軽鎖相互作用表面によってもたらされた(非特許文献6;非特許文献12)。
さらに、自律性で安定なVHドメインの作製の進歩にもかかわらず、細胞内用途に使用することができる安定でジスルフィドを含まないVHドメインの作製には成功していない
ウォルシュ(Walsh)著、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nat Biotechnol)、2010年、第28巻、p.917〜924 バイルン(Byrne)ら著、トレンズ・イン・バイオテクノロジー(Trends Biotechnol)、2013年、第31巻、p.621〜632 ゾロット(Zolot)ら著、ネイチャー・レヴュー・ドラッグ・ディスカバリー(Nat Rev Drug Discov)、2013年、第12巻、p.259〜260 ネルソン(Nelson)著、mAbs、2010年、第2巻、p.77〜83 ホン(Hong)およびゼン(Zeng)著、フェブス・レター(FEBS Lett)、2014年、第588巻、p.350〜355 バーテレミ(Barthelemy)ら著、生化学学会誌(J Biol Chem)、2008年、第283巻、p.3639〜3654 ホリンガー(Holliger)およびハドソン(Hudson)著、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nat Biotechnol)、2005年、第23巻、p.1126〜1136 ジェスパース(Jespers)ら著、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nat Biotechnol)、2004年、第22巻、p.1161〜1165 クリスト(Christ)ら著、プロテイン・エンジニアリング・デザイン・アンド・セレクション:PEDS(Protein Eng Des Sel:PEDS)、2007年、第20巻、p.413〜416 チェン(Chen)ら著、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J Mol Biol)、2008年、第382巻、p.779〜789 チェン(Chen)ら著、モレキュラー・イミュノロジー(Mol Immunol)、2010年、第47巻、p.912〜921 マー(Ma)ら著、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J Mol Biol)、2013年、第425巻、p.2247〜2259
したがって、既存の手法の欠点を克服する安定化された抗体に対する当技術分野のニーズは依然として存在する。
本発明の発明者らは、前記ニーズを本発明の単一ドメイン抗体の提供によって満たし得ることを発見した。
第1の態様において、本発明は単一ドメイン抗体に関し、その抗体は、ヒト生殖細胞系VHドメインまたはVHドメインファミリー共通配列に対して少なくとも1つの修飾を含む免疫グロブリンVHドメインであり、この修飾はH35D、A78V、S93V、S93G、およびW103Rからなる群から選択され、位置の付番はカバット(Kabat)付番方式に従う。
様々な実施形態において、この抗体は、ヒト生殖細胞系VHドメインまたはVHドメインファミリー共通配列に対して少なくとも1つの追加の修飾をさらに含み、その修飾は、
C22SおよびC92Tの少なくとも一方が存在するという条件でC22S、A24I、A24L、およびC92Tからなる群から選択され、位置の付番はカバット付番方式に従う。
様々な実施形態において、この抗体は、4D5抗体骨格(scaffold)またはヒト生殖細胞系VH3ドメインをベースにしている。
様々な実施形態において、この抗体は、アミノ酸配列EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGF−(Xaa)−WVRQAPGKGLEWVA−(Xaa)−ADSVKGRFTISADTSKNT−Xaa−YLQMNSLRAEDTAVYYC−Xaa−(Xaa)−Y−Xaa−GQGTLVTVSS(配列番号1)を有し、その抗体が、H35D、A78V、S93V、S93G、およびW103Rからなる群から選択される少なくとも1つの修飾を含むか、またはアミノ酸配列EVQLVESGGGLVQPGGSLRLS−Xaa−A−Xaa−SGF−(Xaa)−WVRQAPGKGLEWVA−(Xaa)−ADSVKGRFTISADTSKNT−Xaa−YLQMNSLRAEDTAVYY−Xaa−Xaa−(Xaa)−Y−Xaa−GQGTLVTVSS(配列番号2)を有し、その抗体が、H35D、A78V、S93V、S93G、およびW103Rからなる群から選択される少なくとも1つの修飾と、C22SおよびC92Tの少なくとも一方が存在するという条件でC22S、A24I、A24L、およびC92Tからなる群から選択される少なくとも1つの修飾とを含み、式中、n、p、およびqのそれぞれは、独立して0または1〜30の整数であり、位置の付番はカバット付番方式に従う。
様々な実施形態において、その抗体は、1個の分子内ジスルフィドを有するか、または分子内ジスルフィドを有さない。
第2の態様において、本発明は、単一ドメイン抗体を含むマルチモジュール型抗体分子を対象とし、その分子は、単一、二重、もしくは多重特異性であり、かつ/または一価、二価、もしくは多価である。
第3の態様において、本発明は、単一ドメイン抗体またはマルチモジュール型抗体分子と、治療薬、検出マーカ、任意の他のペイロード分子、またはそれらの組合せとを含む、抗体結合体を包含する。
第4の態様において、本発明は、本発明の単一ドメイン抗体またはマルチモジュール型抗体分子のライブラリーを提供する。各抗体は、Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−T−Xaa−I−D(配列番号3)のアミノ酸配列を有するCDR−H1と、R−I−Xaa−P−Xaa−Xaa−G−Xaa−T−Xaa−Y(配列番号4)のアミノ酸配列を有するCDR−H2と、R−(Xaa)−Xaa−Xaa−D(配列番号5)(式中、nは6〜20の整数である)のアミノ酸配列を有するCDR−H3とを含む。
第5の態様において、本発明は、抗原に結合する抗体分子を選択する方法を提供し、前記方法は、a.本発明のライブラリーを準備するステップと、b.このライブラリー中の1または複数の抗体分子が抗原と結合するように、ライブラリーを抗原と接触させるステップと、c.抗原と結合する抗体分子をコードする核酸を選択するステップとを含む。
第6の態様において、本発明は、本発明の抗体をコードする核酸を提供する。
様々な実施形態において、この核酸分子はベクター中に含まれる。
第7の態様において、本発明は、本発明の単一ドメイン抗体、マルチモジュール型抗体分子、抗体結合体、または核酸分子と、薬学的に許容できる担体とを含む、医薬組成物を提供する。
第8の態様において、本発明は、本発明の抗体結合体を対象の細胞、腫瘍、組織、または器官に送達するための方法であって、前記対象に抗体結合体の有効量を投与するステップを含み、それに含まれる抗体はその細胞、腫瘍、組織、または器官の抗原に特異的である、方法を提供する。
第9の態様において、本発明は、対象における障害または疾患を診断するための方法であって、前記対象に本発明の抗体結合体またはその医薬組成物の有効量を投与するステップを含み、抗体は検出マーカと連結しており、対象は哺乳動物、好ましくはヒトである、方法を提供する。
第10の態様において、本発明は、対象における障害または疾患を治療するための方法であって、前記対象に本発明の抗体、マルチモジュール型抗体分子、抗体結合体、核酸分子、または医薬組成物の有効量を投与するステップを含み、対象は哺乳動物、好ましくはヒトである、方法を提供する。
第11の態様において、本発明は、本発明の核酸分子またはベクターを含む、宿主細胞を提供する。
第12の態様において、本発明は、本発明の単一ドメイン抗体またはマルチモジュール型抗体分子を産生する方法であって、単一ドメイン抗体またはマルチモジュール型抗体分子をコードする核酸を、その核酸の発現を可能にする条件下で発現させるステップを含む、方法を提供する。
様々な実施形態において、その単一ドメイン抗体またはマルチモジュール型抗体分子は、宿主細胞または無細胞系中で発現される。
最後の態様において、本発明は、本発明の単一ドメイン抗体、マルチモジュール型抗体分子、抗体結合体、核酸分子、または医薬組成物の、障害または疾患を診断または治療するための方法における使用に関する。
本発明は、非限定的な実施例および添付図面と一緒に考察された場合、この詳細な説明に関してより良く理解される。
改良型VH−NTU(+)ドメインの配列(A)、VH−NTU(−)ドメインの配列(B)、およびジェネンテック(Genentech)のVH 1B1(GNE;C)との比較を示す。4D5 VHドメインの元の配列が示され、好ましい安定化変異が野生型アミノ酸の下方に示される(それらは囲いで強調されている)。位置の付番は、カバット付番方式に従う。白色の囲いは、タンパク質の安定性を向上させるために変異される位置であり、灰色の囲いは、そのタンパク質のジスルフィドを含まないバージョンを作製するために変異される位置であり、また下線部は、任意の所与の標的と結合するVHドメインのバリアントを作製するために任意の配列で置き換えることができるCDRの位置である。 発現および安定性について比較した骨格VH−NTU(−)の配列(A)およびジェネンテック(Genentech)のVH骨格1B1の配列(B)を示す。4D5 VHドメインの元の配列が示され、好ましい安定化変異が野生型アミノ酸の下方に示される(それらは囲いで強調されている)。位置の付番は、カバット付番方式に従う。CDR−H3は、多様な標的に対する異なるバインダーを作製する場合、このCDR中の予想される変動を補償するために95〜100a位をフレキシブル配列SSSで置き換えた。白色の囲いは、タンパク質の安定性を向上させるために変異される位置であり、灰色の囲いは、そのタンパク質のジスルフィドを含まないバージョンを作製するために変異される位置であり、また下線部は、任意の所与の標的と結合するVHドメインのバリアントを作製するために任意の配列で置き換えることができるCDRの位置である。淡い灰色の配列は、発現および検出にとって必要な追加の配列である。 ウェスタンブロットによるGNEおよびVH−NTU(−)の可溶性発現レベルの比較を示す。GNEの可溶性画分の未希釈試料が、VH−NTU(−)の可溶性画分の1:2段階希釈物と比較される。 GNEおよびVH−NTUについて得られる融解温度を示す。Tの決定は3回行われた。平均Tおよび標準偏差がプロットされている。 VHライブラリー1およびVHライブラリー2の設計を示す。(A)CDR−H1、−H2、および−H3中の変異した位置。CDR−H3において[Xaa]7〜12は、ライブラリー1について頻度「Xaa」で導入された残基の数(7〜12個の残基)を表し、一方、「Xaa」6〜20は、ライブラリー2について頻度「Xaa」で導入された残基の数(6〜20個の残基)を表すことに注目されたい。これらのライブラリーにおいて、「Xaa」は、縮重コドンxyzによってコードされ、x=0.2G+0.2A+0.5T+0.1Cであり、y=0.4A+0.2T+0.4Cであり、またz=0.1G+0.9Cである。(B)「Xaa」として示される位置に対して設計され、得られた変異の頻度。「X」はアンバーコドンを表す。 Grb2(表面プラズモン共鳴法によって測定される反応速度)、SHEP1(表面プラズモン共鳴法によって測定される反応速度)、DHFR−TS(表面プラズモン共鳴法によって測定される反応速度)、Her3(生物層干渉分光法によって測定される反応速度)、およびEIF4c(生物層干渉分光法によって測定される反応速度)に対して得られたVH−NTU(−)ドメインの親和性測定値を示す。得られた親和性(KD)をグラフ中に示す。抗Grb2 VHは、Grb2が固定化され、625nMから出発する段階的1:2希釈における抗Grb2 VHである。抗SHEP1 VHは、SHEP1が固定化され、250nMから出発する段階的1:2希釈における抗SHEP1 VHである。抗DHFR−TS VHは、DHFR−TSが固定化され、125nMから出発する段階的1:2希釈における抗DHFR−TS VHである。抗Her3 VHは、VHが固定化され、200nMから出発する段階的1:2希釈におけるHer3である。抗EIF4e VHは、EIF4eが固定化され、125nMから出発する段階的1:2希釈における抗EIF4e VHである。 対照VH−EGFP(上部)および抗Grb2 VH−EGFP(下部)を発現させる細胞の蛍光像を示す。
下記の詳細な説明は、実例により、本発明を実施することができる具体的細部および実施形態に言及する。これらの実施形態は、当業者による本発明の実施を可能にするのに十分な細部が記述される。他の実施形態も利用することができ、本発明の範囲から逸脱することなく構造上および論理上の変更を行うこともできる。これらの様々な実施形態は、必ずしも相互に排他的ではなく、したがって幾つかの実施形態を1つまたは複数の他の実施形態と組合せて新しい実施形態を形成することができる。
別段の規定がない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的および科学的用語は、当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。不一致の場合、定義を含めて本明細書が優先される。
本発明の目的は、安定化かつ自律性単一ドメイン抗体を提供することである。
この目的に対して本発明の発明者らは、指向性進化の手法と組合せて、タンパク質の溶解度(コロニーフィルタブロット法、すなわちCoFiを使用する)、耐凝集性、および熱安定性(ホットコロニーフィルタブロット法、すなわちHot−CoFiによる)を進化させることにより、本発明者らによって開発された抗体VHドメインをベースに単一ドメイン抗体を作製した(アシアル(Asial)ら著、ネイチャー・コミュニケーション
ズ(Nat Commun)、2013年、第4巻、p.2901;コーンビック(Cornvik)ら著、ネイチャー・メソッド(Nat Methods)、2005年、第2巻、p.507〜509)。
第1の態様において、本発明は単一ドメイン抗体に関し、この抗体は、ヒト生殖細胞系VHドメインまたはVHドメインファミリー共通配列に対して少なくとも1つの修飾を含む免疫グロブリン重鎖可変(VH)ドメインであり、その修飾はH35D(35位でHis→Asp)、A78V(78位でAla→Val)、S93V(93位でSer→Val)、S93G(93位でSer→Gly)、およびW103R(103の位置でTrp→Arg)からなる群から選択され、位置の付番はカバット付番方式に従う。
冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、本明細書中ではこの冠詞の文法的目的語の1個または2個以上(すなわち少なくとも1個)を指すために使用される。一例として「要素」とは、少なくとも1個の要素を意味し、2個以上の要素を含むこともできる。
本明細書中で使用される用語「抗体」は、非共有結合により、可逆的にかつ特異的に対応する抗原に結合することができるタンパク質性分子を指す。抗体の典型的な例は、免疫グロブリンおよびその結合特異性を依然として保持しているその誘導体または機能的フラグメントである。
当技術分野で確立されている「免疫グロブリン」は、一般には、ジスルフィド結合によって結合した少なくとも2個の重(H:heavy)鎖および2個の軽(L:light)鎖を含む糖タンパク質またはその抗原結合部分を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書中ではVHとして省略される)および重鎖定常領域(CH)を有する。用語「可変」とは、免疫グロブリン配列の可変性を示すとともに特定の抗体の特異性および結合親和性の決定に関与する免疫グロブリンドメインの部分(すなわち「可変ドメイン」)を指す。可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって均等に分布しておらず、重鎖および軽鎖可変領域のそれぞれのサブドメインに集中している。これらのサブドメインは、「超可変領域」または「相補性決定領域」(CDR:complementarity determing region)と呼ばれる。可変ドメインのより保存されている(すなわち非超可変)部分は、「フレームワーク」領域(FR:framework)と呼ばれる。天然に産生される重鎖および軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、大部分がβサンドイッチ形状を採用している4個のFR領域を含んでおり、これらは3個の超可変領域によって連結されている。3個の超可変領域は、βシート構造を連結し、また幾つかのケースではβシート構造の一部を形成する、ループを形成する。各鎖中の超可変領域は、FRによって直近にまとまっており、その他の鎖由来の超可変領域と共に抗原結合部位の形成に寄与する。一般に天然に産生される免疫グロブリンは6個のCDR、すなわちVH中に3個(CDR−H1、CDR−H2、CDR−H3)およびVL中に3個(CDR−L1、CDR−L2、およびCDR−L3)を含む。抗体のVHドメインは、4個のフレームワーク領域、FR1、FR2、FR3、およびFR4を含み、FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4の構造でCDRが散在している。天然に産生する免疫グロブリンでは、CDR−H3およびCDR−L3は、6個のCDRのうちで最も大きい多様性を示し、特にCDR−H3は、免疫グロブリンに精密な特異性を与える独自の役割を果たすと考えられる。
抗体の構造および機能を研究している研究者らは、任意の特定のVHまたはVL領域のアミノ酸配列内に存在する重鎖および軽鎖CDRを同定するための様々なスキーマを開発した。これらのスキーマの多くは、可変重および軽領域の周囲のフレームワークと関係のある不変またはほとんど不変のパターンによりCDRを同定する。次いでCDRは、VH
およびVL領域の環境内のそれらの構成残基の位置に対応する数値範囲を使用して境界を定められる。CDR、特に第3のCDRは長さが変わる可能性があるため、これらの方式は構成残基の境界を定めるために文字を使用することもある。このような最初の方式の1つは、カバット付番システムとして知られ、これはその当時知られていたVHおよびVL配列を整列させることに基づき、そのより高度に保存されているフレームワーク領域の環境内の可変CDRのサブ配列の位置を決定する。カバット付番方式は、例えば「治療用抗体のハンドブック(Handbook of Therapeutic Antibodies)」、2007年、ステファン・デュベル(Stefan Dubel)編、ワイリー−VCH出版有限株式合資会社(Wiley−VCH Verlag GmbH&Co.KgaA)、ワインハイム(Weinheim)により詳細に記載されており、これは参照により本明細書中に援用される。
配列表(下記参照)を除き、本発明の特許請求の範囲においておよび詳細な説明の全体を通じて採用される位置の付番は、カバット方式による付番であることに留意されたい。
本出願は、「単一ドメイン抗体」、すなわち他の可変領域またはドメインとは無関係に抗原またはエピトープに特異的に結合する単一タンパク質ドメインを含む抗体フラグメントに関する。単一ドメイン抗体は、一般には抗体の最小の機能的結合単位であり、抗体の重(VH)または軽(VL)鎖の可変領域に該当する。単一ドメイン抗体は、約13kDaの分子量または全長抗体の10分の一未満のサイズを有する。本発明による抗体は、VHドメインをベースにしている単一ドメイン抗体であり、そのアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系VHドメインまたはVHドメインファミリー共通配列に一致する。
用語「生殖細胞系抗体」とは、体細胞超変異の不在下でゲノムDNA配列によってコードされる抗体と高いアミノ酸配列相同性を有する抗体を指す。生殖細胞系抗体は、一般に、その可変領域において、最も近い生殖細胞系遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と比較して少なくとも60%、好ましくは60%〜100%の範囲にある、またはより好ましくは、75%〜99%の配列相同性のアミノ酸配列相同性を示す。このような抗体は、非生殖細胞系抗体の特徴を示す体細胞超変異の経験が最小限であるか、または全くない。
本明細書中で開示されるアミノ酸配列に対する「配列同一性パーセント(%)」は、最大パーセントの配列同一性を達成すべく配列を整列させるとともに必要に応じてギャップを導入した後の参照配列、すなわち本開示の抗体分子中のアミノ酸配列、と対として同一の候補配列中のアミノ酸残基の割合として定義され、配列同一性の一部としての任意の保存的置換を考慮に入れない。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のアライメントは、当技術分野における技能の範囲内にある様々な方法で、例えばブラスト(BLAST)、アライン(ALIGN)、またはメグアライン(Megalign)(ディーエヌエースター(DNASTAR))ソフトウェアなどの公表されているコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者は、比較される完全長の配列全体にわたって最大アライメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含めた、アライメントを測定するための適切なパラメータを決めることができる。
これら抗体配列は、配列相同性に基づく分類法(トムリンソン(Tomlinson)ら著、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J Mol Biol)、1992年、第227巻(3)、p.776〜798;ウィリアムズ(Williams)およびウィンター(Winter)著、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・イミュノロジー(Eur J Immunol)、1993年、第23巻(7)、p.1456〜1461;コックス(Cox)ら著、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・イミュノロジー(Eur J Immunol)、1994年、第24巻(4)、p.827〜36)に従って別個のファミリーに分類される。本明細書中で使用される用語「VHドメインファミリー
共通配列」とは、少なくとも70%の配列相同性を共有するVHドメイン配列を整列させ、グループ化することによって取り出される共通配列を指す。様々なVHドメインファミリーの共通配列が当技術分野でよく知られており、例えばカバット,E.A.(Kabat,E.A.)ら著、1991年、「免疫学的に関心のあるタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」、第5版、アメリカ合衆国保健福祉省、NIH出版番号91−3242中に見出すことができる。
一例として、4D5フレームワークは、ヒト共通配列由来の人工フレームワークであり、本質的に生殖細胞系配列IGVH 3−66およびIGVK 1−39(IMGT命名法)に一致し(カータ(Carter)ら著、米国科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci U S A)、1992年、第89巻(10)、p.4285〜9)、当初は抗c−erbB2(p185HER2−ECD)mAb 4D5のヒト化のために使用された。
とりわけ本発明の単一ドメイン抗体は、ヒト生殖細胞系VHドメインまたはVHドメインファミリー共通配列に対して少なくとも1つの修飾を含み、その修飾がH35D、A78V、S93V、S93G、およびW103Rからなる群から選択され、位置の付番はカバット付番方式に従う。これらの修飾は、本発明者らによる広範な実験により同定されており、タンパク質の安定性を向上させるために導入される。4D5抗体骨格では、VHドメインの78、93、および103位がフレームワーク領域内にあるのに対し、35位はCDR−H1内にある。このCDR配列は、任意の所与の標的と結合するVHドメインバリアントを作製するために任意のアミノ酸残基で置き換えることができるが、本発明者らが、CDR−H1内の35位でのAsp残基の使用により4D5骨格の安定性を向上させることを見出したことに注目されたい。これは、可変ドメイン中の少数の残基も保存されるという最近の発見(スー(Hsu)ら著、ストラクチャー(Structure)、2014年1月7日、第22巻(1)、p.22〜34)と一致する。
様々な実施形態において抗体は、ヒト生殖細胞系VHドメインまたはVHドメインファミリー共通配列に対して少なくとも1つの追加の修飾をさらに含み、その修飾は、C22SおよびC92Tの少なくとも一方が存在するという条件でC22S(22位でのCys→Ser)、A24I(24位でのAla→Ile)、A24L(24位でのAla→Leu)、およびC92T(92位でのCys→Thr)からなる群から選択され、位置の付番はカバット付番方式に従う。これらの修飾は、タンパク質のジスルフィドを含まないバージョンを作製するために導入される。
ジスルフィド架橋の除去は、そのVHドメインを大腸菌(E.coli)の細胞質中で組み換え技術により可溶型で発現させる可能性を与えるために有利である。大部分の治療用抗体は、それらがジスルフィド架橋の形成および翻訳後修飾を必要とするため、現在は哺乳動物の細胞系中で分泌型で発現させている(ウォルシュ(Walsh)著、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nat Biotechnol)、2010年、第28巻、p.917〜924)。幾種類かの抗体フラグメントは細菌中で産生することができるが、それらは一般には不溶型で産生され、後にin−vitroでリフォールドされることになる(フアン(Huang)ら著、ジャーナル・オブ・インダストリアル・マイクロバイオロジー・アンド・バイオテクノロジー(J Ind Microbiol Biotechnol)、2012年、第39巻、p.383〜399)。これは、開発時間を遅らせる面倒な工程である。大腸菌(E.coli)のペリプラズム中での産生が可能なこともあるが、発現条件の有効な最適化が必要であり、かつ収率が一般に低い(フアン(Huang)ら著、ジャーナル・オブ・インダストリアル・マイクロバイオロジー・アンド・バイオテクノロジー(J Ind Microbiol Biotechnol)、20
12年、第39巻、p.383〜399;クオン(Kwong)およびレーダ(Rader)著、「タンパク質科学カレント・プロトコル/編集委員会(Curr Protoc
Protein Sci/editorial board)」、ジョン E.コリガン(John E.Coligan)...[ら]、2009年、第6章、ユニット6 10)。VHドメインは、折りたたみ、結合、または安定性のための翻訳後修飾を必要とせず、したがってジスルフィドを含まないVHを高収率で、細菌中で、かつ可溶な折りたたみ型で発現させることができる。哺乳動物細胞と比べて細菌細胞の増殖速度が速いこと、培養条件が単純なこと、およびそれらの分子を可溶型で産生することによって得ることができる合理化された精製工程は、他の免疫グロブリン形態と比べてそれらの分子を産生し精製するために必要とされる時間およびコストを低減する。
様々な実施形態において、この抗体は、4D5抗体骨格またはヒト生殖細胞系VH3ドメインをベースにしている。VH3生殖細胞系は、刊行物、すなわちトムリンソン(Tomlinson)ら著、JMB、1992年、第227巻、p.776〜798、およびマツダ(Matsuda)ら著、ネイチャー・ジェネティクス(Nat Genet)、1993年、第3巻(1)、p.88〜94で明確に定義されており、これらは参照により本明細書中で援用される。
上記修飾のすべてが広範な実験を通じて4D5骨格の配列の環境内で得られたことに注目されたい。しかしながら、当業者は、これらの修飾が4D5 VHドメインと顕著な相同性を共有する他のVHドメイン、具体的にはVH3生殖細胞系のVHドメインに移転可能であることを容易に理解するであろう。
これらの修飾を別のVHドメインに移転することができるかどうかを決定するために、それら2つの配列間の均等なまたは一致する相手方の残基が、一般にはその2つのVHドメイン配列間の配列相同性または構造的相同性に基づいて決められる。相同性を確立するために、第1のVHドメイン、すなわち4D5抗体のVHドメインのアミノ酸配列が、第2のVHドメインの配列と直接比較される。それらの配列を整列させた後、当技術分野でよく知られている相同性アライメントプログラムのうちの1つまたは複数、例えばCLUSTALWを使用して(例えば種間の保存残基を使用して)、アライメントを維持するために必要な挿入または欠失を考慮して(すなわち不定の欠失および挿入による保存残基の排除を回避して)、第1のVHドメインの一次配列中の特定のアミノ酸残基と均等なまたは一致する残基が定められる。好ましくは、保存残基のアライメントは、それらの残基の少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、さらに一層好ましくは少なくとも98%、さらに一層好ましくは少なくとも99%、また最も好ましくは100%を保存するべきである。均等なまたは一致する相手方の残基は、第1および第2のVHドメイン間の構造的相同性、すなわちその構造が決定されているVHドメインの三次構造のレベルでの構造的相同性を決定することによって定めることもできる。この場合、均等なまたは一致する残基は、第1のVHドメインまたは前駆物質の特定のアミノ酸残基の主鎖原子のうちの2つ以上の原子座標(NオンN(N on N)、CAオンCA(CA on CA)、CオンC(C
on C)、およびOオンO(O on O))が、アライメント後に0.13nm以内、好ましくは0.1nm以内であるものと定められる。タンパク質の非水素タンパク質原子の原子座標の最大の重なりを与えるように最良のモデルが向きを定められるとともに位置決めされた後に、アライメントが達成される。均等なまたは一致する残基がどのように決定されるかに関係なく、また置換変異が導入される第1のVHドメインの同一性に関係なく、伝えることが意図されることは、本発明によるVHドメインポリペプチドが、第1のVHドメインと顕著な配列相同性または構造的相同性を有する任意の第2のVHドメ
インに構築し得ることである。
様々な実施形態において、この抗体は4D5骨格をベースにしており、アミノ酸配列EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGF−(Xaa)−WVRQAPGKGLEWVA−(Xaa)−ADSVKGRFTISADTSKNT−Xaa−YLQMNSLRAEDTAVYYC−Xaa−(Xaa)−Y−Xaa−GQGTLVTVSS(配列番号1)を有し、その抗体が、H35D、A78V、S93V、S93G、およびW103Rからなる群から選択される少なくとも1つの修飾を含み(式中、n、p、およびqのそれぞれは、独立して0または1〜30の整数である)、位置の付番はカバット付番方式に従う。この抗体は、分子内ジスルフィド架橋を有する。それは、高濃度においてさえ高い安定性および低い凝集性向を有する。
本明細書中で規定されるn、p、およびqのそれぞれは、独立して0または1〜30の整数であり、CDR内の残基のそれぞれは、任意のアミノ酸残基であり得、または存在しなくてもよい。しかしながら、幾つかの実施形態において、独立した折りたたみ分子、例えばアミノ酸100〜200個の完全な追加のドメインもCDR−H3にグラフトすることができる。これは、CDRが様々な長さを有し得ることを意味する。しかしながら、位置番号の記号表示のためにカバット付番方式を使用することは、CDRの長さの変動がVHドメイン位置、とりわけフレームワーク位置の付番に影響を与えないことを保証する。
様々な実施形態において、この抗体は、4D5骨格をベースにしており、アミノ酸配列EVQLVESGGGLVQPGGSLRLS−Xaa−A−Xaa−SGF−(Xaa)−WVRQAPGKGLEWVA−(Xaa)−ADSVKGRFTISADTSKNT−Xaa−YLQMNSLRAEDTAVYY−Xaa−Xaa−(Xaa)−Y−Xaa−GQGTLVTVSS(配列番号2)を有し、その抗体が、H35D、A78V、S93V、S93G、およびW103Rからなる群から選択される少なくとも1つの修飾と、C22SおよびC92Tの少なくとも一方が存在するという条件でC22S、A24I、A24L、およびC92Tからなる群から選択される少なくとも1つの修飾とを含み(式中、n、p、およびqのそれぞれは、独立して0または1〜30の整数である)、位置の付番はカバット付番方式に従う。この抗体は、上記バージョンの分子内ジスルフィド架橋に関与するシステインを置き換えることができる変異を発見したことによって得られた。
これは、初めて報告されたジスルフィド架橋のない安定な骨格のVHであり、細胞内分子の標的化にとって独特の利点を提供する。別の利点は、この骨格を細菌の細胞質中で可溶型で発現させる可能性であり、これは収率を増し、生産および精製の時間を減らし、したがって生産コストを低減する。また、その表面に1個または数個のシステインをさらに導入することもでき、毒性ペイロード、蛍光団、放射性同位元素などの化学架橋のためのアンカーポイントとして使用することができる。
本発明の単一ドメイン抗体は、分子内ジスルフィド架橋を有しても有さなくても、4D5骨格をベースにしてもしなくても、より高い熱安定性およびより高い耐凝集性を目的に設計される。
第2の態様において、本発明は、この単一ドメイン抗体を含むマルチモジュール型抗体分子を対象とし、この分子は、単一、二重、もしくは多重特異性であり、かつ/または一価、二価、もしくは多価である。
用語「特異性」とは、特定の抗体が結合することができる異なる種類のエピトープの数を指す。抗体が1種類のエピトープのみと結合する場合、その抗体は単一特異性である。
抗体が様々な種類のエピトープと結合する場合、その抗体は多重特異性である。例えば、二重特異性マルチモジュール型抗体は、異なる2種類のエピトープの認識を可能にする。エピトープは、所与の抗体が結合する抗原上の部位である。
用語「結合価」とは、抗体が特定のエピトープに対して有する抗原結合部位の数を指す。例えば一価抗体は、特定のエピトープに対して1個の結合部位を有する。
本発明による単一ドメイン抗体は、自律性結合分子である。したがって、それは独立した結合分子として振る舞う。例えば、ペプチドリンカーを介する遺伝子融合によるこのような幾つかの抗体の集合体は、多重特異性かつ多価結合性分子の作製を可能にする。例えば、異なる標的と結合する2種類の単一ドメイン抗体のペプチドリンカーを介する融合は、二重特異性分子を生成し、異なる標的と結合するこのような3種類の単一ドメイン抗体の融合は、三重特異性分子を生成するなどである。多価分子は、単一の標的と結合する全く同じ単一ドメイン抗体を融合することにより生成され得る。
新しい機能を加えるために他のモジュールを融合することもできる。例えばFc抗体フラグメントの添加は、血中での長い半減期と抗体のエフェクター機能(例えば補体活性化)とを有する分子の作製を可能にすることになる。このFc融合は、本発明の単一特異性の単一ドメイン抗体上で、また幾種類かの単一ドメイン抗体の融合から作製された多重特異性または多価の分子上で生じさせることができる。別の例として、このような単一ドメイン抗体を標準的なIgGと融合して、そのIgGに1つまたは幾つかの結合機能を加えることができる。
マルチモジュール型分子の作製のための手法は、平均的な当業者の知識の範囲内にある。
第3の態様において、本発明は、単一ドメイン抗体またはマルチモジュール型抗体分子と、治療薬、検出マーカ、任意の他のペイロード分子、またはそれらの組合せとを含む、抗体結合体を包含する。
本明細書中で使用される用語「治療薬」とは、対象において治療効果を生じることができる任意の薬剤を指し、本明細書中で使用される用語「検出マーカ」とは、対象において任意の手段によって検出可能な診断シグナルを生じることができる任意の薬剤を指す。
本発明の治療薬または検出マーカは、本発明の実施に適した望ましい特性を有するタンパク質、核酸分子、化合物、小分子、有機化合物、無機化合物、または任意の他の分子であり得る。
幾つかの実施形態において、本発明による検出マーカは、造影剤であり得る。造影剤は、細胞、組織、またはバイオフィルムを画像化するのに役立つことが当業者に知られている任意の薬剤、好ましくは医療用造影剤であり得る。医療用造影剤の例には、これらに限定されないが磁気共鳴イメージング(MRI:magnetic resonance imaging)剤、核磁気共鳴イメージング(NMR:nuclear magnetic resonance imaging)剤、陽電子放射断層撮影(PET:positron emission tomography)剤、X線造影剤、光学剤、超音波造影剤、および中性子捕捉療法剤が挙げられる。
幾つかの実施形態において、この検出マーカは、蛍光化合物、例えばフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、5−ジメチルアミン−1−ナプタレンスルホニルクロリド、フィコエリスリンなど、または検出可能な酵素、例えばアルカリ性ホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼなどであり得る。この抗体が検出可能な酵素と結合する場合、それは、この酵素が検出可能な反応生成物
を生成するのに使用する追加の試薬を加えることによって検出される。この抗体は、ビオチンで誘導体化し、アビジンまたはストレプトアビジン結合を直接測定することにより検出することもできる。
本明細書中で使用される「任意の他のペイロード分子」とは、本発明の抗体と直接または間接的に結合することができる任意の分子を指す。一例として、血清中の抗体結合体の半減期は複数の要因に左右されるが、抗体フラグメントが小さいほど、血液循環から迅速に除去される傾向がある。したがって、例えば単一ドメイン抗体および小型のペプチド毒素を含むより小形の構築物は、血清の半減期を増大させるポリペプチドと有利に連結する。例えば、それらはHSAと連結することができる。例えば、そうした構築物は、細胞と結合したときにHSAから放出されてHSAなく取り込まれるように、明確な半減期を有するHSAとの結合は不安定であることが好ましい。有用なアプローチは、リガンドもHSAに結合し、血液循環中でそれを維持するような、多重特異的リガンド構築物を使用することである。
幾つかの実施形態において、その治療薬または検出マーカは、共有結合相互作用、静電相互作用、または疎水的相互作用により、この抗体と直接または間接的に連結することができる。
薬物または他の小分子配合薬を抗体フラグメントに付着させる方法はよく知られている。当技術分野では様々なペプチド結合化学が確立されており、それには二官能性化学リンカー、例えばN−スクシンイミジル(4−イオドアセチル)−アミノベンゾアート、スルホスクシンイミジル(4−イオドアセチル)−アミノベンゾアート、4−スクシンイミジル−オキシカルボニル−[α]−(2−ピリジルジチオ)トルエン、スルホスクシンイミジル−6−[[α]−メチル−[α]−(ピリジルジチオール)−トルアミド]−ヘキサノアート、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロプリオナート、スクシンイミジル−6−[3(−(2−ピリジルジチオ)−プロプリオンアミド]ヘキサノアート、スルホスクシンイミジル−6−[3(−(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド)]ヘキサノアート、3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオニルヒドラジド、エルマン試薬、ジクロロトリアジン酸、S−(2−チオピリジル)−L−システインなどが挙げられる。さらなる二官能性結合分子は、米国特許第5,349,066号明細書、同第5,618,528号明細書、同第4,569,789号明細書、同第4,952,394号明細書、および同第5,137,877号明細書、ならびにコルソン(Corson)ら著、ACSケミカルバイオロジー(ACS Chem Biol)、2008年、第3巻(11)、p.677〜692中で開示されている。
幾つかの実施形態において、この抗体は、ペイロードの放出のための開裂可能なリンカーを含む。こうした形状は、抗体結合体が意図された作用部位に到着した時に、抗体分子によって課される立体障害などの妨害を免れることによって、あるペイロード分子が適切に機能するために必要であり得る。一実施形態では、そのリンカーは、ヒドラゾン結合などの酸不安定性リンカーであり得る。酸不安定性リンカーの他の例には、cis−アコニット酸、cis−カルボン酸アルカトリエン、ポリ無水マレイン酸を使用することによって形成されるリンカー、ならびに米国特許第5,563,250号明細書および同第5,505,931号明細書に記載されているリンカーなどの他の酸不安定性リンカーが挙げられる。一実施形態では、そのリンカーは光解離性リンカーである。光解離性リンカーの例には、米国特許第5,767,288号明細書および同第4,469,774号明細書(これらのそれぞれは、その全体が参照により援用される)に記載されているリンカーが挙げられる。
抗体を含めたポリペプチド薬剤およびポリペプチドリガンドは、一方(または両方)の
ポリペプチド上の官能基または反応性基により結合することができる。それらは一般に、そのポリペプチドポリマー中に見出される特定のアミノ酸の側鎖から形成される。そのような反応性基は、システイン側鎖、リシン側鎖、またはN末端アミン基もしくは任意の他の適切な反応性基であり得る。反応性基は、その付着されるリガンドと共有結合を形成することができる。官能基は、その官能基を形成する天然または非天然のいずれかのアミノ酸内の原子の特定のグループである。
天然アミノ酸の好適な官能基は、システインのチオール基、リシンのアミノ基、アスパラギン酸またはグルタミン酸のカルボキシル基、アルギニンのグアニジニウム基、チロシンのフェノール基、またはセリンのヒドロキシル基である。非天然アミノ酸は、アジド基、ケト−カルボニル基、アルキン基、ビニル基、またはハロゲン化アリール基を含めた広範囲の官能基を提供することができる。そのポリペプチドの末端のアミノおよびカルボキシル基は、所望のリガンドと共有結合を形成するための官能基として機能することもできる。チオールを介する結合に代わるものを使用して、共有結合相互作用によりリガンドをポリペプチドに付着させることもできる。これらの方法は、相補的官能基を有する小分子と組合せて必須の化学官能基を有する非天然アミノ酸を有するポリペプチドを産生することにより、または、選択/単離段階後のその分子の作製時において化学的にもしくは組み換えにより合成されたポリペプチド中にその非天然アミノ酸を組み込むことにより、チオールを介する方法の代わりに(またはそれと組合せて)使用することができる。
抗体を薬物および他の化合物と結合する手法は、カータ(Carter)およびセンター(Senter)著、キャンサー・ジャーナル(Cancer J)、2008年、第14巻(3)、p.154〜69、ならびにダクリー(Ducry)およびスタンプ(Stump)著、バイオコンジュゲート・ケミストリー(Bioconjug Chem)、2010年、第21巻(1)、p.5〜13にも記載されている。
第4の態様において、本発明は、本発明の単一ドメイン抗体またはマルチモジュール型抗体分子のライブラリーを提供し、各抗体は、Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−T−Xaa−I−D(配列番号3)のアミノ酸配列を有するCDR−H1と、R−I−Xaa−P−Xaa−Xaa−G−Xaa−T−Xaa−Y(配列番号4)のアミノ酸配列を有するCDR−H2と、R−(Xaa)−Xaa−Xaa−D(配列番号5)(式中、nは6〜20の整数である)のアミノ酸配列を有するCDR−H3とを含む。
本発明によるこのライブラリーは、本明細書中で述べるCDRと一緒に、本発明の単一ドメイン抗体またはマルチモジュール型抗体分子をベースに設計される。このライブラリー中に含まれる各単一ドメイン抗体は、4D5骨格または別のVHドメインをベースにしており、分子内ジスルフィド架橋があってもなくてもよい。実例として本明細書の実施例4は、本発明のジスルフィドを含まない単一ドメイン抗体のライブラリーについて記述する。
本発明のライブラリーは、当技術分野の様々な確立されている標準的な方法を使用して作製することができる。好ましい例として、ペリプラズムシグナル配列と、続いてファージ遺伝子III(pIIIをコードする)または遺伝子VIII(pVIIIをコードする)に融合したVHドメインとを含有(5’から3’まで)するファージミドベクターを使用することができる。所望のランダム化CDR配列を含有するオリゴヌクレオチドが設計され、適切に設計された制限部位を使用するクローン化により、PCRによる部位特異的変異導入により、またはクンケル法による変異導入により、ベクター中に組み込まれる(クンケル(Kunkel)著、米国科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci U S A)、1985年、第82巻(2)、p.488〜92)。このDNAライブラリーは、ヘルパーファージに感染することができるTG1またはXL1−b
lue MRF’などの大腸菌(E.coli)細胞株に形質転換される。このヘルパーファージは、ファージゲノムを含有しており、表面に提示される抗体を含有しその対応するDNAを核に詰め込んだファージ粒子の産生を可能にする。
これらに限定されないが、本発明の第5の態様において、下記に述べるものを含めて様々なライブラリー形態が知られており、それらは本発明の範囲内にある。
様々な実施形態において、ライブラリーは、ファージディスプレイライブラリーである。
第5の態様において、本発明は、抗原に結合する抗体分子を選択する方法を提供し、前記方法は、a.本発明のライブラリーを準備するステップと、b.このライブラリー中の1または複数の抗体分子が抗原と結合するように、ライブラリーを抗原と接触させるステップと、c.抗原に結合する抗体分子をコードする核酸を選択するステップとを含む。
この選択のステップは、抗原と結合している抗体分子の単離を含むことができ、例えば、この抗原は、回収し得ることにより抗体も回収し得る磁気ビーズまたは他の分子に付着させることができる。この抗体分子は、そのコード核酸と結び付けられることができ、例えば、それはこの核酸を含有する粒子または複製可能な遺伝子パッケージの一部であり得る。別法では、この選択のステップは、例えば下記に述べる反復コロニーフィルタスクリーニングの手法により、抗体分子を発現させる細菌を単離することを含むことができる。次いで、必要に応じて、この抗原に結合する抗体分子をコードする核酸を単離することができる。
様々なライブラリー形態および好適なスクリーニング法が知られている。
抗体分子のライブラリーは、細菌、例えば大腸菌(E.coli)のライブラリーであり得る。したがって、この抗体分子は、細菌中で発現させることができる。それは、このライブラリーの抗体分子をコードする核酸分子を含有する細菌を準備し、それらが抗体分子を発現するように細菌を培養することによって達成することができる。抗体分子のライブラリーをコードする核酸分子は、細菌がそのような核酸を含有する本発明の一態様である。この細菌は、グリセロールストックとして好都合に貯蔵することができる。
抗体分子は、細菌から分泌することができる。これは、反復コロニーフィルタスクリーニング(ICFS:iterative colony filter screening)の手法、すなわち数億個の抗体発現細菌コロニーをスクリーニングすることができる2フィルタサンドイッチアッセイの使用を可能にする(ジョバンノーニ(Giovannoni)ら著、ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic Acids Res)、2001年、第1巻、29(5)、E27)。IGFSでは、関心のある抗原でコーティングされた第2のフィルタと接触している多孔質マスターフィルタ上で、ライブラリーを発現する細菌細胞(一般には大腸菌(E.coli))を成長させる。抗体分子は細菌によって分泌され、第2のフィルタ上に拡散し、こうして抗原と接触する。第2のフィルタ上に結合する抗原の検出は、関心のある結合特異性を発現させるものを含む複数の細菌細胞の回収を可能にする。続いて、これらの細菌を特定の抗体分子の単離のための2回目のスクリーニングにかけることができる。これらのステップの繰返しは、選択された抗体分子の集団から不純物を除く。この方法を使用して、様々なアミノ酸配列の複数の特異的に結合する抗体を回収することができる。
別法では、ライブラリーの抗体分子は、分泌されるのではなく粒子または分子複合体上に提示させることもできる。好適な複製可能な遺伝子パッケージには、酵母菌、細菌またはバクテリオファージ(例えばT7)粒子、ウィルス、細胞、または共有結合、リボソーム、もしくは他のin vitroディスプレイ系が挙げられ、それぞれの粒子または分
子複合体は、その上に提示される抗体VH可変ドメインをコードする核酸を含有する。
細胞またはタンパク質混合物を使用する選択は、文献(リュー(Liu)ら著、キャンサー・リサーチ(Cancer Res)、2004年、第64巻、p.704〜710;ムツベリア(Mutuberria)ら著、ジャーナル・オブ・イムノロジカル・メソッド(J Immunol Methods)、2004年、第287巻、p.31〜47;ルビンスタイン(Rubinstein)ら著、アナリティカル・バイオケミストリー(Anal Biochem)、2003年、第314巻、p.294〜300)でも文書化されており、それらの手法は本発明に応用することができる。
ファージディスプレイは、所望の特異性の抗体分子の選択のための確立された手法であり、抗体分子のライブラリーは、繊維状バクテリオファージ上に提示される(マークス(Marks)ら著、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J Mol Biol)、1991年、第222巻、p.581〜597;ウィンター(Winter)ら著、アニュアル・レビュー・オブ・イムノロジー(Annu Rev Immunol)、1994年、第12巻、p.433〜455)。繊維状バクテリオファージは、細菌に感染するウィルスであり、したがって、そのファージライブラリーは細菌ライブラリー中で維持することができる。その抗体分子は、ペプチドをコードする合成DNAをそれぞれファージの遺伝子IIIまたは遺伝子VIII中に挿入することによって、そのファージの内部被膜タンパク質pIIIまたは主要被膜タンパク質pVIIIと融合させることができる。pIIIの3個の(場合によっては5個の)コピーがファージ粒子の頂部に位置していると考えられ、ファージ1個当たりpVIIIの約2500個のコピーが存在すると考えられる。pIIIは、ファージのその細菌のF繊毛との付着および感染に関与しており、pVIIIは、一本鎖ファージDNAのコーティングに関与している。pIIIタンパク質は、3個のドメインN1、N2、およびCTを有する。融合をpIIIのN末端に対して行うこともでき、またN末端ドメインN1およびN2を除去し、融合をC末端のCTドメインに対して行うこともできる。単一ドメイン抗体をコードする遺伝子を遺伝子IIIに挿入することができ、それはpIIIのN末端と融合し、かつファージに組み込まれた抗体分子の発現を引き起こし、ファージが抗原に結合することを可能にする。
本明細書中で述べる核酸分子は、繊維状バクテリオファージの被膜タンパク質、例えばpIIIまたはpVIIIと融合した抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含むことができる。このような核酸分子を使用して、細菌に感染するファージ上に提示される抗体分子のライブラリーを発現させるか、細菌から分泌される可溶性抗体を得ることができる。抗体分子の遺伝子と被膜タンパク質の遺伝子との間にアンバー終止コドンを挿入することにより、ファージを大腸菌(E.coli)のアンバーサプレッサー細胞株中で成長させる場合、そのアンバーコドンはアミノ酸として読み出され、また被膜タンパク質と融合した抗体はファージの表面に提示される。ファージを非サプレッサー細胞株中で成長させる場合、そのアンバーコドンは終止コドンとして読み出され、可溶性タンパク質が細菌から分泌される。
抗原に結合し得るとともにバクテリオファージもしくは他のライブラリー粒子または分子複合体上に提示される抗体分子の選択の後、前記選択された抗体分子を提示するそのファージもしくは他のライブラリー粒子または分子複合体から核酸分子を取り出すことができる。このような核酸は、前記選択された抗体分子を提示するバクテリオファージもしくは他の粒子または分子複合体から取り出された核酸の配列を有する核酸から発現させることによる後続の単一ドメイン抗体の産生において使用することができる。
したがって、選択後、抗原に結合する抗体分子をコードする核酸を発現させて抗体分子を産生することができる。
1または複数の抗体がライブラリーから選択されると、その抗体分子の意図される目的に従ってそれらの特性を決定するために、抗体分子を様々なアッセイにおいてさらに特徴付けることができる。アッセイには、関心のある1または複数の抗原に結合するための抗体分子の親和性の決定、他の抗原との交差反応性の決定、抗原のいずれの領域が抗体分子と結合するかを決定するためのエピトープマッピング、免疫組織化学、および他のin vitroまたはin vivo試験を挙げることができる。
必要な場合、同定された抗体は、特定の用途に使用するための特性の改良に向けて、当技術分野で確立している手法を使用してさらに成熟または最適化することができる。また、抗体分子は、別の形態になるように操作するか、または追加の特徴を含有するように操作することもできる。
第6の態様において、本発明は、本発明の抗体をコードする核酸を提供する。
本発明による抗体の1または複数の鎖をコードする核酸分子は、一本鎖、二本鎖、またはその組合せなどの任意のあり得る形状の任意の核酸であり得る。核酸には、例えばDNA分子、RNA分子、ヌクレオチド構造類似体を使用して、または核酸化学を使用して作製されるDNAまたはRNAの構造類似体、架橋型核酸分子(LNA:locked acid molecule)、およびタンパク質の核酸分子(PNA:protein nucleic acid)が挙げられる。DNAまたはRNAは、ゲノムまたは合成由来のものであり得、また一本または二本鎖であり得る。このような核酸は、例えばmRNA、cRNA、合成RNA、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA、DNAおよびRNAの共重合体、オリゴヌクレオチドなどであり得る。それぞれの核酸分子はさらに、非天然ヌクレオチド構造類似体を含有することも、親和性タグまたは標識と結合させることもできる。用語「ベクター」とは、それが結合している別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。一実施形態では、ベクターは、「プラスミド」であり、これは追加のDNAセグメントをライゲートすることができる環状二本鎖DNAループを指す。別の実施形態では、ベクターは、追加のDNAセグメントをそのウィルスのゲノム中にライゲートすることができるウィルスベクターである。本明細書中で開示されるベクターは、それらが導入される宿主細胞中で自律的に複製することができ(例えば、細菌の複製起源を有する細菌ベクターおよびエピソーム性哺乳動物ベクター)、または、宿主細胞中への導入時に宿主細胞のゲノム中に組み込むことができ、それによって宿主のゲノムと共に複製することもできる(例えば非エピソーム性哺乳動物ベクター)。
様々な実施形態において、本発明による単一ドメイン抗体またはマルチモジュール型抗体分子をコードする核酸配列は、プラスミドなどのベクター中に取り込まれる。
第7の態様において、本発明は、本発明の単一ドメイン抗体、マルチモジュール型抗体分子、抗体結合体、または核酸分子と、薬学的に許容できる担体とを含む、医薬組成物を提供する。
用語「薬学的に許容できる」は、本明細書中では、信頼できる医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、もしくは他の問題または合併症がなくヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに適しており、妥当な効果/リスク比に見合う材料、組成物、または剤形を指すために採用される。
本明細書中で使用される用語「薬学的に許容できる担体」とは、1つの器官または体の部分から別の器官または体の部分への主題の抽出物の運搬または移送に関与する液体または固体フィラー、希釈剤、賦形剤、または溶媒カプセル化剤などの薬学的に許容できる材料、組成物、またはビヒクルを意味する。各担体は、製剤のその他の成分と共存可能であり、かつ患者に有害でないという意味で「許容可能」でなければならない。薬学的に許容できる担体として機能することができる材料の幾つかの例には、ラクトース、グルコース
、およびスクロースなどの糖と、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプンと、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体と、粉末状トラガカントと、麦芽と、ゼラチンと、タルクと、カカオバターおよび座薬用ワックスなどの医薬品添加剤と、ラッカセイ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびダイズ油などの油と、プロピレングリコールなどのグリコールと、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなどの多価アルコールと、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステルと、寒天と、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤と、アルギン酸と、滅菌蒸留水と、発熱性物質を含まない水と、等張食塩水と、リンゲル液と、エチルアルコールと、pH緩衝液と、ポリエステル、ポリカーボネート、またはポリ無水物と、医薬製剤中で使用される他の非毒性の共存可能な物質とが挙げられる。医薬製剤を調製するための一般的な担体および在来の方法を開示している「レミントン:薬学の科学と実践(Remington:The Science and
Practice of Pharmacy)」、第19版(ペンシルバニア州イーストン(Easton,Pa.):マック・パブリッシング社(Mack Publishing Co.)、1995年)を参照されたい。
当業者は、適切な配合が、特定の用途のために選択される投与経路によって決まり、また対象に本発明の単一ドメイン抗体、マルチモジュール型抗体分子、抗体結合体、または核酸分子を投与する適切な経路および方式が、ケースバイケースで決められるべきであることも理解するであろう。
本発明の単一ドメイン抗体、マルチモジュール型抗体分子、抗体結合体、または核酸分子は、タンパク質性または核酸系の薬物による治療に効果的な任意の腸管外または非腸管外(経腸)経路により投与することができる。腸管外施用方法には、例えば注射液、注入液、またはチンキ剤の形態での、例えば皮内、皮下、筋内、気管内、鼻腔内、硝子体内、または静脈内への注射および注入の手法と、例えばエアゾール混合剤、スプレー剤、または散剤の形態でのエアゾールの設置および吸入とが挙げられる。例えば、エアゾール(これは鼻腔内投与に使用することもできる)の吸入または気管内設置のいずれかによる経肺薬物送達に関する総覧は、例えばパットン(Patton)ら著、アメリカン・ソラシック・ソサエティ紀要(Proc Amer Thoracic Soc)、2004年、第1巻、p.338〜344によって得られる。非腸管外送達方式は、例えば丸剤、錠剤、カプセル剤、液剤、もしくは懸濁剤の形態での、例えば経口によるもの、または例えば座剤の形態での経直腸によるものである。本発明の抗体分子は、通常の非毒性の薬学的に許容できる所望の賦形剤または担体と、添加剤と、ビヒクルとを含有する製剤の状態で全身的または局所的に投与することができる。
本発明の一実施形態では、医薬品は、哺乳動物、具体的にはヒトに腸管外投与される。対応する投与方法には、これらに限定されないが、例えば注射液、注入液、またはチンキ剤の形態での、例えば皮内、皮下、筋内、気管内、または静脈内への注射および注入の手法と、例えばエアゾール混合剤、スプレー剤、または散剤の形態でのエアゾールの設置および吸入とが挙げられる。静脈内および皮下への注入および/または注射の併用は、比較的短い血清半減期を有する化合物の場合に最も好都合であることがある。この医薬組成物は、水溶液、水中油型乳剤、または油中水型乳剤であり得る。
メイダン VM(Meidan VM)およびミチニアク BB(Michniak BB)著、アメリカン・ジャーナル・オブ・セラピューティクス(Am J Ther)、2004年、第11巻(4)、p.312〜316に記載されているような経皮による送達技術、例えばイオントフォレーシス、ソノフォレーシス、またはマイクロニードル増強送達も、本明細書中で述べた本発明の単一ドメイン抗体、マルチモジュール型抗体分子
、抗体結合体、または核酸分子の経皮による送達に使用することができる。非腸管外送達方式は、例えば丸剤、錠剤、カプセル剤、液剤、もしくは懸濁剤の形態での、例えば経口によるもの、または例えば座剤の形態での経直腸によるものである。本発明の抗体分子は、多様な通常の非毒性の薬学的に許容できる賦形剤または担体と、添加剤と、ビヒクルとを含有する製剤の状態で全身的または局所的に投与することができる。
施用される本発明の単一ドメイン抗体、マルチモジュール型抗体分子、抗体結合体、または核酸分子の用量は、所望の予防効果または治療応答を達成するために広範囲に変えることができる。例えば、それは選ばれた標的に対する抗体分子の親和性に、また抗体分子とリガンドとの複合体のin vivoでの半減期によって決まることになる。さらに最適な用量は、抗体分子またはその結合体の生体内分布、投与方式、治療される疾患/障害の重症度、および患者の病状によって決まることになる。例えば、局所塗布用の軟膏に使用される場合、高濃度の抗体分子を使用することができる。しかしながら、必要に応じて、抗体分子はまた徐放性製剤、例えばリポソーム分散液、またはポリアクティブ(PolyActive)(商標)またはオクトデックス(OctoDEX)(商標)(ボス(Bos)ら著、「ビジネス・ブリーフィーング(Business Briefing)」、ファーマテック(Pharmatech)、2003年、p.1〜6参照)のようなヒドロゲルから作られたポリマーミクロスフィアの状態で得ることもできる。他の入手可能な徐放性製剤は、例えばPLGAから作られたポリマー(PRファーマスーティカルズ(PR pharmaceuticals))、PLA−PEGから作られたヒドロゲル(メディンセル(Medincell))、およびPEAから作られたポリマー(メディバス(Medivas))である。
したがって、本発明の単一ドメイン抗体、マルチモジュール型抗体分子、抗体結合体、または核酸分子は、薬学的に許容できる成分および確立された調製方法(ジェンナロ,A.L.(Gennaro,A.L.)およびジェンナロ,A.R.(Gennaro,A.R.)著、2000年、「レミントン:薬学の科学と実践(Remington:The Science and Practice of Pharmacy)」、第20版(リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス(Lippincott Williams&Wilkins)、ペンシルバニア州フィラデルフィア(Phiradelphia,PA))を使用して組成物に製剤化することができる。医薬組成物を調製するために薬学的に不活性な無機または有機賦形剤を使用することができる。例えば丸剤、散剤、ゼラチンカプセル剤、または坐剤を調製するためにラクトース、タルク、ステアリン酸およびその塩、脂肪、ワックス、固体または液体多価アルコール、天然または硬化油を使用することができる。液剤、懸濁剤、乳剤、エアゾール混合剤、または、使用前に液剤もしくはエアゾール混合剤に再構成するための散剤の製造用の好適な賦形剤には、水、アルコール、グリセロール、多価アルコール、およびこれらの適切な混合物、および植物油が挙げられる。
これらの製剤は、細菌保留フィルタによる濾過を含めた多くの手段により、または使用の直前に滅菌水もしくは他の滅菌媒体中に溶解もしくは分散することができる無菌固体組成物の形態の滅菌剤を組み込むことにより滅菌することができる。
第8の態様において、本発明は、第3の態様による抗体結合体を対象の細胞、腫瘍、組織、または器官に送達するための方法であって、前記対象に本発明の抗体結合体の有効量を投与するステップを含み、それに含まれる抗体は、細胞、腫瘍、組織、または器官の抗原に特異的である、方法を提供する。
本発明の抗体結合体の「有効量」という用語は、所望の効果をもたらすためのその結合体の非毒性であるが十分な量を意味する。
第9の態様において、本発明は、対象における障害または疾患を診断するための方法であって、前記対象に本発明の抗体結合体の有効量に投与するステップを含み、抗体は検出マーカと結合しており、対象は哺乳動物、好ましくはヒトである、方法を提供する。
用語「疾患」または「障害」は、本明細書中では区別なく使用され、機能の遂行を遮断または乱す、または罹患者にもしくは罹患者と接している人々に不快感、機能不全、苦痛、またはさらには死などの症状を引き起こす体または幾つかの器官の状態の変化を指す。疾患または障害はまた、不調、慢性的病的状態、軽い病的状態、疾病、障害、悪心、不健康、病訴、相互素因、または詐病と関係する可能性もある。
幾つかの実施形態において、本発明の抗体は、従来の抗体と比べてそれらの血漿半減期が短いために分子画像化の用途にとって有利であり、画像化にとって必要なより速いコントラストノイズ比を達成する。
第10の態様において、本発明は、対象における障害または疾患を治療するための方法であって、前記対象に本発明の単一ドメイン抗体、マルチモジュール型抗体分子、抗体結合体、核酸分子、またはその医薬組成物の有効量を投与するステップを含み、対象は哺乳動物、好ましくはヒトである、方法を提供する。
本明細書中で使用される用語「治療する」および「治療」とは、症状の重症度または頻度の軽減、症状または根本原因の除去、症状または根本原因の発生の予防、および損傷の改善または矯正を指す。例えば、本発明の抗癌剤の投与による患者の治療は、癌が進行しやすい(例えば、遺伝的素因、環境因子などの結果としてのより高いリスクの)患者における、または癌再発のリスクのある癌生存者における化学的予防と、障害もしくは疾患の退行を阻止するまたは引き起こすことによる二様の癌患者の治療とを含む。
本発明による抗体分子は、任意の所望の標的エピトープ/抗原に向けることができる。選択される標的エピトープ/抗原に応じて、この抗体は、ある障害または疾患の治療に適している可能性があり、ケースバイケースで決められるべきである。
IgG形態のモノクローナル抗体およびFabは、(現在の技術では)治療用途のための細胞外分子の標的化のみを可能にするが、そのジスルフィドを含まないバージョン中の単一ドメイン抗体は、細胞内標的を標的にすることを可能にする。細胞内の還元環境は、ジスルフィド架橋の解離およびそれに続くIgGおよびFabの凝集を引き起こす。本発明の骨格の単一ドメイン抗体は、ジスルフィド架橋の不在下で安定であるように進化してきたため、細胞内でその安定性は損なわれない。したがって、本明細書中で述べる単一ドメイン抗体を使用して細胞内分子を標的にすることも、細胞内に毒性ペイロードを送達することもできる。その最も近い競合相手は、ジェネンテック(Genentech)の安定性VHドメイン1B1(GNE、図1C)であり、それは依然としてジスルフィド架橋を含有しており、ジスルフィドが除去された場合、本発明の骨格よりもかなり不安定であり、これは、その分子を細胞内用途と相容れなくする。
加えて、本発明の抗体のサイズが小さいことは、眼科の治療などのニッチの治療用途の利点を提供する(例えば滲出型加齢黄斑変性、この場合、薬物は眼中に注入され、より小さいサイズはより多量の分子を体積当たりで詰め込むことを可能にする)、肺への送達(より小さいサイズは薬物の肺へのより深い浸潤を可能にする)、および固形腫瘍の治療(より小さいサイズは迅速な組織浸潤を可能にする)。より小さいサイズは、薬物の投与の頻度の減少につながる可能性がある。
本発明の抗体をコードする核酸分子を使用する遺伝子治療も本発明の範囲内にあること
を理解されたい。そうした方法により、関心のある1または複数の遺伝子が細胞中に挿入されるように、その細胞を組換え改変することができる。関心のある1または複数の遺伝子とは例えば、単一ドメイン抗体またはマルチモジュール型抗体分子(特に、ウィルスまたは他の病原体などの微生物に対して有効な抗体)についてコードする遺伝子であり、他の病原体には、細菌、真菌、および寄生虫などの呼吸器官の微生物が含まれる。このような方法はまた、他の抗体、特に様々な種類の眼の疾患の治療に役立つ抗体の送達によって他の疾患に対しても役立つ。次いで、このような細胞、例えば筋および呼吸器の細胞を、レシピエント患者の所与の器官の組織に挿入することができ、ここで、それらの細胞は外来性DNAを発現させ、血流または局所組織に送達するために、その抗体タンパク質を合成して細胞を取り巻く腔内に分泌し、これは、その抗体がその臨床効果を実現する箇所によって決まる。このような投与の手段は、商業コストの問題なく、かつ大量の抗体を生産し次いで使用するまで保管しなければならないという問題なく、挿入された遺伝子操作細胞が、恒常的なレベル、場合によりさらに誘発性のレベルの抗体タンパク質を産生することを可能にする。加えて、この細胞は、必要に応じて様々な量の抗体タンパク質を産生する点で患者のニーズに対応するように操作することができる。
幾つかの実施形態において、本発明の抗体は、分泌型で使用することができる一方で、本発明のこのジスルフィドを含まない抗体は、細胞内で発現させて治療目的のために関心のある生化学過程を調節することもできる。
第11の態様において、本発明は、本発明の核酸分子またはベクターを含む、宿主細胞を提供する。
用語「宿主細胞」とは、発現ベクターが導入されている細胞を指す。宿主細胞には、細菌、微生物、植物または動物の細胞、好ましくは大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア酵母(Pichia pastoris)、CHO(チャイニーズハムスターの卵巣系)、またはNSO細胞が挙げられる。
第12の態様において、本発明は、単一ドメイン抗体またはマルチモジュール型抗体分子を産生する方法であって、本発明の単一ドメイン抗体またはマルチモジュール型抗体分子をコードする核酸を、その核酸の発現を可能にする条件下で発現させるステップを含む、方法を提供する。
様々な実施形態において、本発明の単一ドメイン抗体またはマルチモジュール型抗体分子は、宿主細胞または無細胞系中で発現される。
本発明の抗体分子は、任意の既知の確立された発現系および組換え細胞培養技術を使用して、例えば細菌宿主(原核生物系)または酵母菌、真菌、昆虫細胞、もしくは哺乳動物細胞などの真核生物系中で発現させることによって産生することができる。本発明の抗体分子は、ヤギ、植物、またはゼノマウス(XENOMOUSE)トランスジェニックマウスなどのトランスジェニック生物中で、またはヒト免疫グロブリン遺伝子座の大きいフラグメントを有し、かつマウス抗体の産生に欠損のある改変マウス細胞株中で産生することができる。抗体は化学合成によって生産することもできる。
本発明の抗体分子の組換え生産の場合、一般にその抗体をコードするポリヌクレオチドを単離し、さらなるクローニング(増幅)または発現のためのプラスミドなどの複製可能なベクター中に挿入する。好適な発現系の実例は、グルタミン酸シンテターゼ系(例えば、ロンザ・バイオロジーズ(Lonza Biologies)によって販売されている)であり、この宿主細胞は、例えばCHOまたはNSOである。この抗体をコードするポリヌクレオチドは、通常の手順を使用して容易に単離され、配列決定される。使用することができるベクターには、プラスミド、ウィルス、ファージ、トランスポゾン、微小染色
体(このプラスミドは典型的な実施の形態である)が挙げられる。一般には、このようなベクターはさらに、シグナル配列、複製開始点、1または複数のマーカ遺伝子、エンハンサー要素、プロモータ、および発現を容易にするように単一ドメイン抗体ポリヌクレオチドに操作可能に結合した転写終結配列を含む。
組み換え技術を使用する場合、その抗体分子は細胞内で産生させることも、ペリプラズム中で産生させることも、直接的に培地中に分泌させることもできる。抗体が細胞内で産生される場合、第1のステップとして、宿主細胞または溶解フラグメントのいずれかの粒子状デブリが、例えば遠心分離または限外濾過によって除去される。カータ(Carter)ら著、バイオ/テクノロジー(Bio/Technology)、1992年、第10巻、p.163〜167は、大腸菌(E coli)のペリプラズムへ分泌される抗体を単離するための手順について記述している。ポリペプチドは、可溶性の折りたたまれた状態で直接的に得るか、封入体の形態で回収し、続いてin vitroで再生することができる。分子内ジスルフィド架橋を有する抗体の場合、さらなる選択肢は、酸化性細胞内環境を有する特定の宿主細胞株を使用し、こうして細胞質ゾル中でのジスルフィド結合の形成を可能にすることができる(ベンチュリ M.(Venturi M.)、セイファート C.(Seifert C.)、およびフンテ C.(Hunte C.)、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J Mol Biol)、2002年、第315巻、p.1〜8)。
細胞によって産生された抗体分子は、任意の通常の精製技術、例えばヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析、およびアフィニティークロマトグラフィを使用して精製することができ、アフィニティークロマトグラフィは1つの好ましい精製手法である。本発明の特定の抗体分子に対して使用される精製法の選択肢は、平均的な当業者の知識の範囲内にある。
最後の態様において、本発明は、本発明の単一ドメイン抗体、マルチモジュール型抗体分子、抗体結合体、核酸分子、または医薬組成物の、障害または疾患を診断または治療するための方法における使用に関する。
本発明は、下記の実施例によってさらに例示される。しかしながら、本発明は、これらの例示された実施形態に限定されないことを理解されたい。
(実施例)
方法
安定性向上用ライブラリーの作製。ランダム変異誘発ライブラリーが、ジーンモルフIIミュータゲネシスキット(Genemorph II Mutagenesis Kit)(ストラタジーン(Stratagene))を使用するエラープローンPCRによって作製された。クローン化された野生型遺伝子(最初のライブラリーの場合)または改良されたバリアント(後続のライブラリーの場合)が鋳型として使用され、反応は製造業者のプロトコルに従って行われた。使用されたプライマーは、変異されるべきオープンリーディングフレーム(ORF:open reading frame)に隣接する配列にアニールした。平均50ngのインサート鋳型が、リン酸化プライマーによる30サイクルのPCR反応で使用され、最終のプラスミドライブラリーにおいて遺伝子当たり平均約2〜3個のアミノ酸変異を生じた。このエラープローンPCR産物はゲル精製された(キアゲン(Quiagen)ゲル精製キット)。
プラスミドライブラリーは、本明細書で述べる最適化プロトコルを使用してホールプラスミドのメガプライマーPCR(MEGAWHOP)反応(ミヤザキ(Miyazaki)著、メソッド・イン・モレキュラー・バイオロジー(Methods Mol Biol)、2003年、第231巻、p.23)によって作製された。典型的には、KODエ
クストリーム(KOD Xtreme)ポリメラーゼ(メルク(Merck))を用いたPCR反応において、野生型(WT:wild−type)遺伝子を含有する1〜10ngのプラスミドが、鋳型として使用され、かつ精製されたepPCRインサートのインサート長の1bp当たり約1ngのインサート(例えば、500bpのインサートに対して500ng)をメガプライマーとして使用して、増幅された。緩衝組成物は、1mM NAD+および40UのTaqDNAリガーゼを添加し、0.5UのKODエクストリーム(KOD Xtreme)ポリメラーゼを使用する、製造業者によって推奨された標準的なものであった。PCR条件は、94℃で2分、(98℃で10秒、65℃で30秒、68℃で6分)で30サイクル、4℃での保留であった。PCR後、そのPCR反応物に20UのDpnI(NEB)が加えられ、37℃で3時間インキュベートされた。
VH36のジスルフィドを含まないバージョンの同定を可能にするライブラリーを作製するために、最初に、stIIシグナル配列を部位特異的変異誘発によって除去し、クローンVH36iを作製する。次に、残基位置C22、A24、およびC96がランダム化された部位特異的変異誘発ライブラリーが、MEGAWHOPによって作製された。リン酸化された順方向(5’−GGCTCACTTCCGTTTGTCCNNKGCANNKTCTGGCTTCAACATTAAAGAC−3’)および逆方向(5’−CCTCCCCAGCGGCCMNNATAATAGACGGCAGTG−3’)プライマーを使用するPCRが、鋳型としてのVH36iと、KODホットスタート(KOD HotStart)ポリメラーゼ(メルク(Merck))とを使用して製造業者のプロトコルに従って行われた。このPCR産物はゲル精製され、MEGAWHOP反応がこれまでと同様に行われ、その後にDpnI処理が行われた。DH10B細胞は、DpnI処理し、精製されたMEGAWWHOP産物で電気穿孔され、約10個のユニークメンバーのライブラリーを生じた。
溶解性および安定性のスクリーニング。ロゼッタ2(Rosetta2)細胞が、変異誘発ライブラリーで形質転換され、50μg/mLのカナマイシンおよび34μg/mLのクロラムフェニコールを補った24.5cm直径平方のLB寒天プレート上に塗布された。これらはマスタープレートとみなされる。コロニーはデュラポア(Durapore)の0.45μmフィルタ膜(ミリポア(Millipore))に移され、抗生物質および30μMイソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)を補ったLB寒天プレート上に(コロニーを上に向けて)置かれた。タンパク質の発現のために誘発が室温(RT:room temperature)で一晩行われた。
タンパク質の産生後、誘発プレートは、所望の温度(溶解性のスクリーニングについてはRT、または安定性のスクリーニングについてはより高い温度)下に30分間置かれた。このデュラポア(Durapore)膜は、CoFi溶解バッファー[20mMトリス(pH8.0)、100mM NaCl、0.2mg/mLのリゾチーム、11.2U/mLのベンゾナーゼエンドヌクレアーゼ(メルク(Merck))、およびEDTAを含まない1:1000希釈のプロテアーゼインヒビターカクテルセットIII(Protease Inhibitor Cocktail Set III)(メルク(Merck))]に浸漬したワットマン(Whatman)紙と、ニトロセルロース膜(ミリポア(Millipore))とからなる溶解サンドイッチに移され、このスクリーニング温度でもう一度30分間インキュベートされた。
細胞溶解液はさらに、それぞれ−80℃およびRTでの3回の凍結−解凍サイクル(それぞれ30分)によって改良された。デュラポア(Durapore)膜およびワットマン(Whatman)紙が廃棄され、ニトロセルロース膜が、ブロッキングバッファー[TBS−Tバッファー(20mMトリス(pH7.5)、500mM NaCl、0.05%(vol/vol)トゥイーン20)、および1%ウシ血清アルブミン(BSA)]
中でRTにおいて1時間インキュベートされた。
ブロッキング後、ニトロセルロース膜は、70回転/分(rpm)で振とうしながらTBS−T中でRTにおいて3回、10分間洗浄された。可溶性タンパク質の存在は、その膜を1:5,000希釈のヒスプローブ−HRP(HisProbe−HRP)(サーモ・サイエンティフィック(Thermo Scientific))を含有するTBS−T中でインキュベートすることにより、または1%BSAを含むTBS−T中で1:10,000希釈のプロテインA−HRPプローブ(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies))と共に30rpmで振とうしながらRTにおいて1時間インキュベートすることによって検出された。先に述べられたのと同様に行われる3回の洗浄のステップが続いた。
ニトロセルロース膜は、CCDカメラ(富士フイルムLAS−4000)を使用するスーパーシグナルウェストデュラケミルミネセンスキット(Super Signal West Dura chemiluminescence kit)(サーモ・サイエンティフィック(Thermo Scientific))を使用して現像された。
実施例1:指向性進化およびHot−CoFiによる安定なVHドメインの作製
4D5 VHドメインが、本発明者らの安定化のための元となる(parental)骨格として選択された。その理由は、その元となるIgGトラスツズマブが、好ましい免疫原性プロフィールを有する承認されたFDA薬物であり、かつその安定性が広範囲に研究されているためである(バーセレミー(Barthelemy)ら著、生化学学会誌(J Biol Chem)、2008年、第283巻、p.3639〜3654)。4D5 VHのオープンリーディングフレーム(ORF)のランダム変異誘発ライブラリーが作られ、およそ40,000個のクローンがホットコロニーフィルトレーション(Hot−CoFi)によって80℃においてスクリーニングされ、22種類のユニーク陽性クローンの同定につながった。
これらのバリアントが集められ、新しいランダム変異誘発ライブラリーのための鋳型として使用された。スクリーニングの第2ラウンドは90℃で行われ、これは31種類の追加のユニーク陽性クローンの同定につながり、それらがさらに特徴付けされた。これらのクローンの生物物理学的特徴付けは、改変バージョンにおいて細胞凝集の温度(Tcagg)を決定することによって行われた(アシアル(Asial)ら著、ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature communications)、2013年、第4巻、p.2901)。この場合、熱応力は、PCR装置中で全長タンパク質ライゼートに対して40℃から95℃までの勾配を使用して行われ、続いて凝集塊を除去するために遠心分離され濾過された。次いでその可溶性画分をニトロセルロース膜上に点在させ、成長させた。WTの推定されるTcaggが約50℃であるのに対し、最良の変異細胞株VH36は約73℃のTcaggを有する。これは、WTに比べて23℃の凝集温度の向上に相当する。
この作業によって同定された最良の2種の変異細胞株VH33およびVH36は、それぞれ変異R50S、A78V、S93G、A100bP、およびH35D、S93G、A100bP、W103Rを含有する。興味深いことに、R50およびH35Rの変異は、選択されたすべてのクローンにおいて相互に排他的である。
実施例2:VH分子内ジスルフィド結合の除去のためのさらなる進化
VH36が、ジスルフィドを含まないバージョンの進化のための熱安定性開始鋳型として選択された。VH36をペリプラズムの方へ向けるシグナルペプチドsrIIが除去され、鋳型VH36iを作り、これは大腸菌(E.coli)の細胞質中に凝集した。NN
Kコドンを使用して3つの位置、C22、A24、およびC92が、クンケル法による変異誘発によってすべての20種類のアミノ酸に関してランダム化された。このライブラリーからのおよそ約20,000個のクローンをCoFiブロットによってスクリーニングし、そのニトロセルロース膜をプロテインA−HRPプローブによって成長させて可溶性の折りたたまれたVH36iバリアントを同定した。5種類の異なるバリアントが同定され、VH36i.1が最も安定であり、T=58℃であった。このクローンは、変異C22S、A24C、およびC96Tを含有する。
VH36i.1がバインダーの作製に役立つために、その安定性がそのCDR、特にCDR−H3に左右されるべきでない。さらに変異A100bPは、CDR−H3中で下向きのキンクを発生させ、それはCDR−H3の柔軟性、したがってCDR−H3の可塑性を減少させる。この理由でCDR−H3を除去し、位置W95からP100bまでを配列SSSAによって置き換え、構築物VH37iを作る。VH37iは安定性が低く、T=46℃である。VH37iをさらに安定化するために新しいランダム変異誘発ライブラリーをCoFiによってスクリーニングし、プロテインA−HRPプローブによって成長させた。これはRTでのスクリーニングのステップおよび50℃での陽性のより厳密な確証を伴う。4種類の安定化されたクローンが同定され、VH37i.1およびVH37i.2が、T=約56℃の安定性を有する最も安定なものであった。VH37i.1は、コア領域変異A78Vを含有し、一方、VH37i.2は、CDR−H3に近い所に位置する変異G93Vを含有する。これら両方のクローン由来の変異を組合せて、T=約57℃の安定性を有する最終クローンVH38iを作製した。このバリアントは、その分子の唯一のシステインである位置C24、すなわち元の野生型のAlaに対する幾種類かの置換と、Ile、Val、Try、Ser、およびTrpへの変異とを受け入れる。C24IおよびC24Lは、T=約58℃を有する最も安定なバリアントである。この研究を通じて得られたすべての知識の組合せは、ジスルフィド架橋の存在または不在下でのVHドメインのより高い安定性を可能にする変異の同定につながった。これらの好ましい変異は、図1Aおよび1B中で強調されており、本発明の最終的な骨格、すなわちそれぞれVH−NTU(+)およびVH−NTU(−)に対応する。
実施例3:ジスルフィド架橋の不在下での発現および安定性についてのVH−NTU(−)とジェネンテック(Genentech)とのVH 1B1の比較
ジスルフィド架橋の不在下での安定性についてVH骨格の挙動をジェネンテック(Genentech)のVH骨格1B1と比較するために、大腸菌(E.coli)の細胞質中で発現することができる2種類のタンパク質構築物が作製された(図2)。
ジェネンテック(Genentech)の骨格(GNE)と、アミノ酸配列EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSSAISGFNIKDTYIDWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTVYLQMNSLRAEDTAVYYTGRSSSAMDYRGQGTLVTVSS(配列番号6)を有する骨格VH−NTU(−)とが、pET系発現ベクター中にクローン化され、それらプラスミドがロゼッタ2(Rosetta2)発現細胞株に形質転換された。発現は、800mLのTB培地中で18℃において一晩行われた。本明細書中で述べるVH−NTU(−)抗体は、4D5VHドメインをベースにしており、そのCDR−H3は、多様な標的に対して異なるバインダーを作製する場合にこのCDR中の予想される変動を補償するために95〜100a位でフレキシブル配列SSSに置き換えられた。
GNEおよびVH−NTU(−)について得られた細胞ペレットは、それぞれ18gおよび20gであった。これらは30mLの溶解バッファー中に再懸濁され、超音波処理によって溶解された。
ライゼートは、4℃において35,000gで15分間遠心分離され、上清(可溶性画分)が保管された。GNEおよびVH−NTU(−)の可溶性画分からのアリコートが、SDS−PAGEゲル上に載せられた。電気泳動後、それらのタンパク質をニトロセルロース膜上に移し、抗myc抗体でプローブして、GNEおよびVH−NTU(−)の可溶性発現の相対的レベルを比較した。
融解温度(T)は、示差走査蛍光分析(エリクソン(Ericsson)ら著、アナリティカル・バイオケミストリー(Anal Biochem)、2006年、第357巻、p.289〜298)によって決定された(図4)。GNEおよびVH−NTU(−)は、それぞれ融解温度T=40.6℃およびT=56.1℃を有する。したがって、骨格VH−NTU(−)は、ジスルフィド架橋の不在下のジェネンテック(Genentech)の骨格よりも16℃安定である。
データは、骨格VH−NTU(−)が、ジスルフィド架橋の不在下のジェネンテック(Genentech)の1B1よりも優れていることを示す。VH−NTU(−)については、大腸菌(E.coli)中でのその可溶性発現収率が128倍であり、また安定性は16℃優れている。これらの利点は、本発明の骨格を、細胞内標的に対して抗体を生成させるための理想的な選択肢にする。これは、治療だけでなく研究および画像化の目的のために細胞内分子を標的にする明白な用途を有する。このより高い発現収率は、生産および精製工程を単純化し、かつ速めることができる。
実施例4:骨格VH−NTUを使用した多様な標的に対するバインダーの作製
本発明者らの骨格の有用性を立証するために、図2Aに記載されている配列がファージディスプレイ抗体のライブラリーを作製するための鋳型として使用された。このライブラリー1は、3種類のCDR、すなわちH1、H2、およびH3すべてに変異を含有し、TyrおよびSerに偏ったアミノ酸組成を有する(図5)。
ライブラリー1を使用して、3種類の多様な標的、すなわちヒト増殖因子受容体結合タンパク質2(Grb2)、ヒトSH2ドメイン含有タンパク質3C(SHEP1)、および熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)の二官能性ジヒドロ葉酸還元酵素−チミジル酸合成酵素(DHFR−TS)に対するバインダーが同定された。得られた親和性は180nM〜17nMの範囲にある(図6)。
第2世代のライブラリー(ライブラリー2)は、以前の設計に改良(CDR−H3についてより広範囲の長さ、CDR−H1では好ましい残基T32、また同じCDR−H1中の残基I29およびCDR−H3中の残基M100cを置換するための疎水性残基)を加えて作製された(図5)。真核細胞翻訳開始因子4E(EIF4E)および受容体チロシン−タンパク質キナーゼerbB−3(Her3)に対するバインダーが、このライブラリーから同定された。ライブラリー2を使用して得られる親和性は48nM〜8nMの範囲にある(図6)。
実施例5:ヒト癌細胞中でのバインダーの発現
これらのVHドメインがヒト細胞内で安定であることを実証するために、このVHを高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP:enhanced green fluorescent protein)に融合させた融合構築物が作製された。これはVHが可溶型で産生された場合に緑色蛍光発光の読出しを与える。図7は、抗Grb2 VH−EGFPまたは対照のVH−EGFPのいずれかをトランスフェクトされたヒト乳癌細胞MCF−7の結果を示す。トランスフェクトされた細胞からの蛍光シグナルは、これらVHが細胞内で発現し、ヒト細胞中で安定性を維持し得ることを裏付けている(これは、大腸菌(E.coli)の細胞質中での発現について実施例3で述べたように本発明のVH−NTU
とジェネンテック(Genentech)のGNEとの比較の間にすでに証明されている)。
本明細書において、本発明を広範かつ一般的に述べてきた。この一般的な開示の範囲内にある、より狭い種および亜属の系列のそれぞれも本発明の一部を形成する。それには、削除される材料が本明細書中に具体的に列挙されているかどうかに関係なく、その属から任意の対象物を排除する条件または否定的限定付きで本発明のこの一般的記述が含まれる。他の実施形態は、以降の特許請求の範囲内にある。加えて、本発明の特徴および態様がマーカッシュ群によって記述される場合、当業者は、それにより、そのマーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたは亜属のメンバーに関しても本発明が記述されることを認識する。
当業者は、本発明が、その目的を遂行するように、かつ言及された目的および利点と、それに内在するものとを得るように良好に適合されることを容易に理解するであろう。さらに本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、本明細書中で開示された本発明に対する様々な置換形態および修正形態がなされ得ることは、当業者に容易に明らかになる。本明細書に記載される組成物、方法、手順、処理、分子、および特定の化合物は、好ましい実施形態を現在代表するものであり、具体例であり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の趣旨の範囲内に包含され、また別添の特許請求の範囲によって規定されるその中の変更形態および他の使用が当業者に想到される。本明細書中の以前に公開された文献の列挙または考察は、必ずしもその文献が従来技術の一部であるか、または普通の一般的な知識であるという承認と受け取られるべきではない。
本明細書中で例示的に記述される本発明は、本明細書中で具体的に開示されていない任意の1つまたは複数の要素、1つまたは複数の制限が存在しなくても適切に実施することができる。したがって、例えば用語「含む」、「包含する」、「含有する」などは、拡張的に限定なしに読まれるものとする。したがって、単語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」などの変化形は、指定された整数または整数群を含むことを意味し、任意の他の整数または整数群を排除することを意味しないことが理解される。加えて、本明細書中で使用される用語および表現は、説明の用語として使用されており、限定の用語としてではない。また、示されかつ記述された特徴の任意の均等物またはその部分を排除するそのような用語または表現の使用には何らの意図もないが、様々な修正形態が特許請求される本発明の範囲内にあり得ることが分かる。したがって、本発明は、例示的な実施形態および任意選択的な特徴によって具体的に開示されているが、その中で具現化され、本明細書中で開示されている修正形態および変形形態は当業者が依拠し得ること、およびそのような修正形態および変形形態は本発明の範囲内にあると考えられることを理解されたい。
本明細書中で引用されるすべての文献および特許文献の内容は、それらの全体が参照により援用される。

Claims (19)

  1. ヒト生殖細胞系VHドメインまたはVHドメインファミリー共通配列に対して、(i)H35D,S93G,およびW103R;または(ii)H35D,A78V,S93G/V,およびW103Rの修飾を含む免疫グロブリンVHドメインであり、位置の付番がカバット付番方式に従う、単一ドメイン抗体。
  2. 前記ヒト生殖細胞系VHドメインまたは前記VHドメインファミリー共通配列に対して少なくとも1つの追加の修飾をさらに含み、前記修飾が、C22SおよびC92Tの少なくとも一方が存在するという条件でC22S、A24I、A24L、およびC92Tからなる群から選択され、位置の付番がカバット付番方式に従う、請求項1に記載の抗体。
  3. 4D5抗体骨格またはヒト生殖細胞系VH3ドメインをベースにしている、請求項1または2に記載の抗体。
  4. a.アミノ酸配列EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGF−(Xaa)−WVRQAPGKGLEWVA−(Xaa)−ADSVKGRFTISADTSKNT−Xaa−YLQMNSLRAEDTAVYYC−Xaa−(Xaa)−Y−Xaa−GQGTLVTVSS(配列番号1)を有し、(i)H35D,S93G,およびW103R;または(ii)H35D,A78V,S93G/V,およびW103Rの修飾を含むか、または
    b.アミノ酸配列EVQLVESGGGLVQPGGSLRLS−Xaa−A−Xaa−SGF−(Xaa)−WVRQAPGKGLEWVA−(Xaa)−ADSVKGRFTISADTSKNT−Xaa−YLQMNSLRAEDTAVYY−Xaa−Xaa−(Xaa)−Y−Xaa−GQGTLVTVSS(配列番号2)を有し、(i)H35D,S93G,およびW103R;または(ii)H35D,A78V,S93G/V,およびW103Rの修飾と、C22SおよびC92Tの少なくとも一方が存在するという条件でC22S、A24I、A24L、およびC92Tからなる群から選択される少なくとも1つの修飾とを含み、
    式中、n、p、およびqのそれぞれが、独立して0または1〜30の整数であり、位置の付番がカバット付番方式に従う、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗体。
  5. a.に記載の前記抗体が分子内ジスルフィド架橋を有し、かつb.に記載の前記抗体が分子内ジスルフィド架橋を有さない、請求項4に記載の抗体。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の単一ドメイン抗体を含むマルチモジュール型抗体であって、単一、二重、もしくは多重特異性であり、または一価、二価、もしくは多価であり、または、前記の両方である、マルチモジュール型抗体。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の単一ドメイン抗体または請求項6に記載のマルチモジュール型抗体と、治療薬、検出マーカ、任意の他のペイロード分子、またはそれらの組合せとを含む、抗体結合体。
  8. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の単一ドメイン抗体または請求項6に記載のマルチモジュール型抗体のライブラリーであって、各抗体が、Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−T−Xaa−I−D(配列番号3)のアミノ酸配列を有するCDR−H1と、R−I−Xaa−P−Xaa−Xaa−G−Xaa−T−Xaa−Y(配列番号4)のアミノ酸配列を有するCDR−H2と、R−(Xaa)−Xaa−Xaa−D(配列番号5)(式中、nは6〜20の整数である)のアミノ酸配列を有するCDR−H3とを含む、ライブラリー。
  9. ファージディスプレイライブラリーである、請求項8に記載のライブラリー。
  10. 抗原に結合する抗体を選択する方法であって、
    a.請求項8または9に記載のライブラリーを準備するステップと、
    b.前記ライブラリー中の1または複数の抗体が前記抗原と結合するように、前記ライブラリーを前記抗原と接触させるステップと、
    c.前記抗原と結合する前記抗体を選択するステップと
    を含む、方法。
  11. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の抗体をコードする核酸分子。
  12. ベクター中に含まれる、請求項11に記載の核酸分子。
  13. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の単一ドメイン抗体、請求項6に記載のマルチモジュール型抗体、請求項7に記載の抗体結合体、または請求項11もしくは12に記載の核酸分子と、薬学的に許容できる担体とを含む、医薬組成物。
  14. 対象における障害または疾患を診断するための、請求項7に記載の抗体結合体であって、前記抗体結合体の有効量が前記対象に投与されるものであり、前記抗体が検出マーカと連結しており、前記対象が哺乳動物である、抗体結合体。
  15. 対象における障害または疾患を治療するための、請求項1〜5のいずれか一項に記載の単一ドメイン抗体、請求項6に記載のマルチモジュール型抗体、請求項7に記載の抗体結合体、請求項11もしくは12に記載の核酸分子、または請求項13に記載の医薬組成物であって、前記単一ドメイン抗体、前記マルチモジュール型抗体、前記抗体結合体、前記核酸分子、または前記医薬組成物の有効量が前記対象に投与されるものであり、前記対象が哺乳動物である、単一ドメイン抗体、マルチモジュール型抗体、抗体結合体、核酸分子、または医薬組成物。
  16. 請求項11に記載の核酸分子または請求項12に記載のベクターを含む、宿主細胞。
  17. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の単一ドメイン抗体または請求項6に記載のマルチモジュール型抗体を産生する方法であって、前記単一ドメイン抗体または前記マルチモジュール型抗体をコードする核酸を、前記核酸の発現を可能にする条件下で発現させるステップを含む、方法。
  18. 前記単一ドメイン抗体または前記マルチモジュール型抗体が宿主細胞または無細胞系中で発現される、請求項17に記載の方法。
  19. 障害または疾患の診断または治療で使用するための、請求項1〜5のいずれか一項に記載の単一ドメイン抗体、請求項6に記載のマルチモジュール型抗体、請求項7に記載の抗体結合体、請求項11もしくは12に記載の核酸分子、または請求項13に記載の医薬組成物。
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