第1の発明の食器洗い機は、前面に前面開口部を有する筐体と、前記筐体内に出し入れ可能に設けられ食器を収容する食器かごと、前記前面開口部を覆う扉体と、前記扉体を前後に移動可能な状態で前記筐体に支持する支持機構と、前記扉体を少なくとも前方向または後方向に移動させる駆動装置と、少なくとも前記扉体に加えられた振動を検知する加速度センサと、制御部と、を備え、前記駆動装置は駆動部を有し、前記制御部は、前記加速度センサから所定の信号を受けたときに前記駆動部を駆動するように構成された食器洗い機であって、前記加速度センサは、前後方向X軸、左右方向Y軸、上下方向Z軸、の3軸方向の実質的な加速度を検知するように配設され、前記制御部は、前記X軸の加速度が第1の閾値以上、かつ前記Y軸の加速度が第2の閾値以下のときに、前記駆動部を駆動し、前記駆動部の駆動中に前記3軸方向いずれかの方向で、所定の閾値以上の加速度または加速度の変化を検知した場合に駆動を停止するように構成されたものである。
この構成によって、制御部は、少なくとも、加速度Xが第1の閾値A未満、または、加速度Xが第1の閾値A以上であっても加速度Yが第2の閾値B以上または加速度Zが第3の閾値C以上であれば正面からの振動ではないと判断する。これによって、使用者の意思で正面から扉体をノックされたとして判断される。すなわち、使用者の意思に基づかない誤動作が防止される。
第2の発明は、特に第1の発明において、
前記制御部は、前記加速度センサにより前記扉体等の移動部の加速度を監視し、前記駆動部の駆動中に前記加速度または前記加速度の変化を検知し、移動中の前記移動部が何かに接触したり、何らかの負荷が掛けられたりしたことが想定されるとき、前記駆動部を停止するように構成されたものである。この構成によって、扉体等の移動部が障害物に接触した場合に限らず、使用者が扉体を意図的にノックしたり、子供が不用意に横方向または上下方向から接触したりした場合でも、制御部は、直ちに駆動を停止することができる。また、駆動部の過熱などの不具合に限らず、移動部に接触した障害物または人に対して不具合の発生が防止される。
第3の発明は、特に第1の発明において、
前記制御部は、前記加速度センサにより前記Z軸方向の加速度と重力加速度とのずれを検知することにより、食器洗い機設置における傾きを検知するように構成されたものである。この構成によって、水準器が不要となり、設置の作業性が向上する。また、食器洗い機が設置された場所において、設置面が経年変化で傾きが生じた場合、制御部はそれを検知し、使用者に報知したり、運転を停止したりすることができる。
第4の発明は、特に第3の発明において、
前記制御部は、前記加速度センサにより検知した食器洗い機設置における傾きが所定値以上のとき、前記駆動部を駆動しないように構成されたものである。この構成によって、食器洗い機は、傾きを修正されながら使用され、使用される長期間にわたって傾きによる不具合を発生させることがない。
第5の発明は、特に第3の発明において、
前記制御部は、前記加速度センサにより検知した食器洗い機設置における傾き状況から、駆動部を制御して前記扉体の移動速度を変更するように構成されたものである。この構成によって、洗浄運転に支障がない程度の傾きで設置されている場合には、扉体の移動速度を遅くして安全性を向上させることができる。
第6の発明は、特に第5の発明において、
前記制御部は、前記加速度センサにより検知した食器洗い機設置における前後の傾きが所定値未満のとき、前記扉体が通常より遅く移動するように前記駆動部を駆動するものである。この構成によって、洗浄運転に支障がない程度の傾きで設置されている場合には、扉体の移動速度を遅くして安全性を向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1および図2は、本発明の実施の形態1における洗浄槽が引き出し式の食器洗い機の
側面縦断面図である。図1は、洗浄槽が筐体内に収納された状態が示される。図2は、洗浄槽が筐体内から全開まで引き出された状態が示される。図1に示されるように、食器洗い機はシステムキッチンKに収容されている。筐体31は、前面全体が開口された前面開口部32を有する。洗浄槽33は、筐体31内に前後方向に移動自在に設けられ、前面開口部32から出し入れ可能に設けられている。本実施の形態において、前方向は洗浄槽33が引き出される方向であり、後方向は洗浄槽33が収納される方向である。
スライドレール34が、筐体31の両側側面の内側に略水平方向に架設されている。洗浄槽33は、スライドレール34に支持され、スライドレール34に沿って移動する。洗浄槽33は、上面全体が開口された上面開口部35を有し、被洗浄物である食器36が収容される。
上面開口部35を閉塞するための内蓋37と、内蓋37を支持する平行リンク機構38とが、筐体31内の上部に設けられている。平行リンク機構38は、左右一対で前後に二組で、内蓋37を上下に動作させるように構成されている。シール部39が、内蓋37の下面外周に設けられている。シール部39は、内蓋37が降下したときに上面開口部35をシールする。平行リンク機構38は、洗浄槽33が筐体31から引き出されるとき内蓋37を持ち上げる。これによって、シール部39が洗浄槽33の移動に干渉することがない。
洗浄槽33は、前部に扉体40が設けられている。扉体40は、洗浄槽33の前面に設けられた操作パネル41および操作パネル41に取り付けられた化粧板42を含む。化粧板42は、洗浄槽33が筐体31内に収納された時に前面開口部32全体を覆う。化粧板42は、システムキッチンKの引き出し等の扉である化粧板と同じ材質、同じ色である。さらに、化粧板42には使用者が洗浄槽33を引き出すときの手掛け部となるハンドル43が取り付けられる。ハンドル43は、システムキッチンKと同じものが取り付けられ、システムキッチンK全体が統一された意匠となるように構成されている。なお、システムキッチンKによっては、前面にハンドル43を有さない化粧板42だけで構成された意匠を備えたものも存在する。この構成においては、扉体40が駆動装置で引き出され、化粧板42の上部または側部がハンドル43として機能する。本実施の形態においては、これらを区別するものではない。
なお、本実施の形態において、扉体40を前後に移動可能な状態で筐体31に支持する支持機構Sは、洗浄槽33およびスライドレール34が例示される。
制御部44が、操作パネル41の裏面に設けられている。制御部44は、食器洗い機のすべての動作を制御し、洗浄運転を実行する。洗浄運転には、洗い工程、すすぎ工程、および、乾燥工程が含まれる。洗い工程は、洗剤を用いるなどして食器36の汚れを除去する工程である。すすぎ工程は、洗剤を除去する工程である。乾燥工程は、きれいに洗浄された食器36を乾燥させる工程である。
制御部44は、プリント基板(図示せず)を有する。プリント基板上には、加速度センサ45が設けられている。加速度センサ45は、3軸方向(X軸:前後方向、Y軸:左右方向、Z軸:上下方向)の実質的な加速度の大きさを検知する。加速度センサ45は、扉体40および洗浄槽33などが前後方向に移動する動きによる加速度、および、扉体40に加えられた振動による加速度など、食器洗い機において発生するいろいろな加速度の方向と大きさを検知する。したがって、プリント基板は、加速度センサ45が加速度を確実に検知できるように、向きおよび強度的に問題なく取り付けられていることが望ましい。そして、制御部44は、加速度センサ45が加速度の方向と大きさを検知して出力する信号、および洗浄槽33の状態などによって、食器洗い機の動作を制御する。
なお、各方向の実質的な加速度とは、加速度センサ45がプリント基板に取り付けられ、プリント基板が3軸方向に合わせて所定位置に固定されたとして(所定角度をつけて固定されるのであれば、所定角度だけ補正されることを含む)、相応の取り付け角度誤差および設置の傾斜角度程度は許容されるものである。ただし、垂直方向および水平方向については重力とのずれを検知することにより補正することができる。また、後述するが、制御部44は、この重力とZ軸方向の加速度とのずれを検知することにより、水準器として応用できる。
本実施の形態においては、使用者が扉体40および洗浄槽33などに振動を加えて食器洗い機を操作することが可能である。この振動を加える方法は、扉をノックするように手でコンコンと叩くようにしてもよい。また、指先でタップするように叩いてもよい。また、手に持っているもので軽く叩いてもよい。また、手が濡れていたり、何かを持っていたりして手を使えないときには、肘または膝などで突くようにしてもよい。要するに、所定の振動が加速度センサ45に伝わるように振動が加えられればよく、特に限定されるものではない。多くの場合、音が発生する方法で扉体40に振動が加えられることになる。本実施の形態においては、扉体40をノックして振動を与えるものとして説明する。
洗浄槽33を少なくとも前方向または後方向に移動させる駆動装置51が設けられている。制御部44は、加速度センサ45などのセンサ、または操作部46などから所定の信号を受けたときに駆動部を駆動するように構成されている。駆動装置51(詳細は後述される)は、駆動部として駆動モータ52を有している。なお、駆動モータ52を駆動させるための信号を出力するセンサは、加速度センサ45に限られるものではなく、扉体40な等に加えられた振動を検知するセンサであればよい。また、静電センサなど、使用者が扉体40等に触れたことを検知するセンサでもよい。
最も基本的な制御の1つを例示する。食器洗い機は、洗浄槽33が収納されて運転停止状態のとき、使用者が扉体40を正面から2回叩くと洗浄槽33が自動的に前方向に引き出される。すなわち、制御部44が、加速度センサ45が引き出し操作と同じ前後方向に加えられた振動を検知して出力した所定の信号を検知することにより、使用者によって扉体40が叩かれたと判断する。そして、制御部44は、駆動モータ52を駆動するように制御し、扉体40および洗浄槽33などの移動部を前方向に移動させる。
なお、移動部は、駆動部で駆動されて移動する部分全体を含むものであり、食器洗い機の形態により異なる。例えば、本実施の形態1では洗浄槽33は移動部に含まれるが、実施の形態2の洗浄槽は筐体に含まれて移動せず、移動部には含まれない。
操作部46が、洗浄槽33の上面開口部35の前側に設けられている。操作部46は、化粧板42より内側に位置し、洗浄槽33が筐体31内に収納された時には筐体31内に隠蔽される。操作部46は、操作ボタン(図示せず)およびLEDなどの表示部(図示せず)が設けられ、使用者が操作ボタンで洗浄運転の各工程の制御を設定したり、設定された内容をLEDで表示したりすることができるように構成されている。
食器かご47と洗浄ノズル48とヒータ49とが洗浄槽33の内部に設けられている。洗浄ポンプ50が洗浄槽33の外側に設けられている。食器かご47の下方に洗浄ノズル48が回転自在に設けられている。ヒータ49は、洗浄槽33の底部に配置され、洗い工程およびすすぎ工程において、洗浄槽33内に溜められた洗浄水を加熱する。また、ヒータ49は、乾燥工程において、洗浄槽33内の空気を加熱する。洗浄ポンプ50は、洗浄水を循環させ、洗浄ノズル48から食器36に洗浄水を噴射する。
洗浄槽33は、駆動装置51で出し入れできるように構成されている。本実施の形態1においては、ラック&ピニオン式で構成され、前方向および後方向に駆動可能な駆動装置51について説明する。また、実施の形態2においては、ローラ式で構成された駆動装置について説明する。なお、駆動装置51の構成はこれらの方式に限られるものではなく、ベルトをプーリーで巻き取る方式、ベルトコンベア方式などでもよい。駆動部は、駆動モータに限られるものではない。また、駆動方向は、前方向だけ、または、後方向だけでもよい。
駆動装置51は、駆動部である駆動モータ52と、駆動モータ52で駆動されるピニオンギア53と、ピニオンギア53と噛み合うラックギア54とを含む。歯車の歯が一直線に形成されたラックギア54は、洗浄槽33の側面外側の下部に固定されている。ラックギア54は、少なくとも、洗浄槽33が引き出されるストローク以上の長さに構成されている。ラックギア54と噛み合うピニオンギア53は、駆動モータ52で駆動されるように取り付けられている。駆動モータ52は、減速機構(図示せず)を備え、筐体31の内部でピニオンギア53が前面開口部32の近くになる位置で固定されている。なお、図1において、ラックギア54は、歯を下向きに形成されてピニオンギア53と噛み合うように構成されているが、これに限られるものではなく、歯を上向きに形成して構成されたり、横向きに形成して構成されたりしてもよい。
この構成によって、駆動モータ52の回転運動が直線運動に変換され、洗浄槽33は、上面開口部35が実質的に全開になるまで移動できる。そして、洗浄槽33は、引き出し方向に移動するにしたがって前下がりになるが、前部に設けられたピニオンギア53近傍が支点となるので、ラックギア54とピニオンギア53との噛み合わせが外れる可能性が低い。このため、噛み合わせが外れないようにするための構成が設けられるとしても、簡単な構成でよい。なお、噛み合わせが外れないようにする構成としては、洗浄槽33の傾きに合わせてピニオンギア53を含む駆動モータ52が傾くようにする構成、または、ピニオンギア53がラックギア54に押し付けられるようにする構成、などが可能である。
また、駆動モータに設けられる減速機構は、使用者が手動で容易に洗浄槽33を出し入れできるようにギア比などが構成される。なお、減速機構を含めて駆動モータ52からラックまでの駆動装置51に、使用者が手動で出し入れする場合に駆動モータ52の負荷を軽減するクラッチ機構(図示せず)または滑り機構(図示せず)が設けられてもよい。これにより、使用者はより小さな力で洗浄槽33を出し入れすることができる。また、洗浄槽33が引き出されるときに障害物に衝突したとしても、洗浄槽33は容易に停止して障害物に大きな力は加わらない。また、駆動モータ52もロックまで至らずに過大な電流は発生しない。なお、洗浄槽33が手動で動かされるとき、駆動モータ52の抵抗を低減するために、後述するように、駆動モータ52のモータ回路が遮断されてもよい。
制御部44は、洗浄槽33を引き出す方向に移動させる場合、上面開口部35が実質的に全開になるように駆動モータ52を制御する。本実施の形態において、実質的に全開というのは、洗浄槽33が最も引き出されて上面開口部35が最も解放された状態であるとともに、上面開口部35が半分以上解放された状態を含む。要するに、使用者が食器36を出し入れすることが可能な程度でまで引き出される。このために、制御部44は、駆動モータ52を時間で制御する。すなわち、制御部44は、駆動モータ52を設定された所定時間T1だけ駆動して停止する。
この構成によって、使用者は洗浄槽33を引き出すために労力を必要としない。そして、食器洗い機は、前面を覆う扉体40に操作部46またはハンドル43がない場合でも食器36の収容が容易にできる位置まで駆動装置51により洗浄槽33を引き出すことができ、使い勝手が向上する。また、システムキッチンKの多様化するデザインに適応するこ
とができる。
この所定時間T1は、制御内容に応じて設定され、洗浄槽33の移動距離と移動速度および移動速度に達するまでの駆動モータ52のトルクの大きさなどに応じて調整される。使用者は、全開までの設定時間が長すぎると、移動速度が遅いという不満を感じる。しかし、移動速度が速いほど安全性が低下する恐れがある。これらのことから、本実施の形態において、洗浄槽33の標準的な移動速度は150mm/秒〜250mm/秒に設定される。また、使用者の感覚としては、移動速度は170mm/秒〜230mm/秒に設定されることがより好ましい。これにより、使用者は洗浄槽33の動きに不満を感じることがなく、安全性も保たれる。なお、標準的な移動速度とは、動き始めと停止前の変速状態を除く一定速の状態である。なお、一定速が存在しない場合には、最高速度として設定されることが好ましい。
さらに、自動で移動する洗浄槽33が引き出されるときに前方に人がいる場合、および、収納されるときに人の手や指が挟まれる場合、に対する安全性の面では、洗浄槽33の重量と移動速度とによる運動エネルギーを考慮されることが有効である。運動エネルギーWは、W=(1/2)mv2で示される。本実施の形態において、これらの場合でも不具合が発生しないように、運動エネルギーWは0.5J以下となるように設定される。これは、食器36などが収容された洗浄槽33の最大重量が16kgで、移動速度が250mm/秒として規定される。なお、食器36などの移動物体の最大重量が増加した場合、運動エネルギーWが0.5J以下となるように移動速度を低下させることが好ましい。これにより、万一、洗浄槽33が移動中に人に当ったり、収納されるときに人の手や指が挟まれたりすることがあったとしても、その衝撃は緩和される。
本実施の形態において、具体的には、動き始めの加速期間を含めて約2秒間の駆動で上面開口部35が50%まで引き出される。そして、所定時間T1として約3.5秒間の駆動で洗浄槽33が最も引き出されるように設定されている。このように、駆動モータ52が設定時間により駆動されるように構成されると、設定された時間に応じて洗浄槽33が引き出されるときに任意の位置で停止させることができる。すなわち、設定時間が使用者の使用実態に合わせて調整される。これによって、食器洗い機が、食器洗い機の正面近くに障害物が存在するような狭いところに設置される場合など、洗浄槽33のすべてを引き出すことができない場合でも、設定時間の調整により引き出し量が設定され、設置することが可能になる。
制御部44は、駆動モータ52を複数段階の電圧で駆動してもよい。例えば、動き始めの加速期間に標準より高い電圧を印加し、停止直前に標準より低い電圧を印加して駆動モータ52を駆動する。これにより、駆動モータ52は動き始めにトルクが大きくなり加速期間を短縮できる。また、動きが停止する時には、収容された食器36にショックが加わることなく、食器36同士が触れ合うことによる騒音や破損が防止される。また、洗浄槽33に溜められた水が跳ね飛んで、洗浄槽33から水が飛び出したり、洗浄後に乾燥された食器36が濡れたりすることが防止される。すなわち、動き始めと動きが停止する時に関わらず、より短時間で滑らかに移動速度が変化するように駆動されることが好ましい。複数段階の電圧とは、電圧が線形的または滑らかに変化する状態も含む。
制御部44は、万一、洗浄槽33が移動しているときに障害物などで動きを阻害され、所定の位置までの途中で止められたとき、所定時間T1が経過すると駆動モータ52の駆動を停止し、通電を停止する。これによって、駆動モータ52がロック状態になるのは短時間で、いつまでもロック状態になることはなく、駆動モータ52に無理な負荷がかかることがない。また、洗浄槽33が衝突した障害物または人に対しても短時間の衝突であり、不具合の発生が防止される。
また、制御部44は、洗浄槽33が所定の位置に到達するまでの途中で、扉体40などを含む移動部のどこかが障害物などの何かに接触したり、何らかの負荷が掛けられたりしたことが想定されるとき、直ちに駆動モータ52の駆動を停止してもよい。障害物または人などに接触したことを想定する方法としては、例えば、制御部44は、加速度センサ45により、駆動モータ52の駆動中に扉体40の移動方向の振動を含め、いずれかの方向で所定の閾値以上の加速度または加速度の変化を検知した場合に駆動を停止する。この構成であれば、扉体40等の移動部が障害物に接触した場合に限らず、使用者が扉体40を意図的にノックしたり、子供が不用意に横方向または上下方向から接触したりした場合でも、制御部44は、直ちに駆動を停止することができる。また、移動部に接触した障害物または人に対して不具合の発生が防止される。
また、何らかの負荷が掛けられたことを検知する方法としては、例えば、制御部44は、加速度センサ45により全方向の加速度を監視し、駆動されている扉体40が減速または停止に至るような加速度の変化を検知した場合に駆動モータ52の駆動を停止する。または、制御部44は、駆動モータ52の駆動中に電流を監視し、扉体40が減速または停止に至るときの電流の増加を検知した場合、または、所定値以上の電流が、例えば0.5秒以上流れてモータロックを検知した場合、に駆動を停止してもよい。これらの方法は、特に限定されることなく実施が可能であり、また、組み合わせての実施が可能である。いずれの方法であっても、阻害されてから駆動が停止されるまでの時間が短縮され、駆動モータ52の過熱などの不具合に限らず、障害物においても不具合の発生が防止される。
なお、これらのように、加速度または電流を検知することで扉体40を確実に停止させるほか、先に記載されたクラッチ機構または滑り機構でも扉体40の動きを直ちに停止させることができる。これらの構成は、扉体40または駆動モータ52に所定以上の負荷がかかった場合に扉体40を停止させる方法として有用である。
さらに、制御部44は、洗浄槽33が所定の位置に達するまでの途中で止められて駆動モータ52の駆動を停止したとき、モータ回路を遮断してもよい。使用者は、洗浄槽33が途中で停止すると、洗浄槽33が停止した位置から手動で前方向または後方向に動かそうとする。このとき、駆動モータ52は強制的に空転させられて逆起電力を発生する。しかし、駆動モータ52の回路が遮断されていれば、逆起電力により制御部44のプリント基板44aに異常な電流が流れるような負荷がかかることがない。また、電流が流れないので発電することはなく、手動での操作力が大きくなることはない。制御部44は、扉体40が閉じられるなど、所定の信号を検知した上で、駆動モータ52を駆動させる信号を受けたときに遮断されたモータ回路を復帰させる。
以上のように構成された食器洗い機について、以下その動作、作用を説明する。
使用者は、洗浄槽33内に食器36を収容するために洗浄槽33を引き出す。このとき、ハンドル43に手を掛けて引き出すことも可能である。しかし、扉体40を、例えば2回ノックすることにより駆動モータ52を駆動させて洗浄槽33を引き出すことが可能である。すなわち、扉体40が叩かれたことにより振動が発生する。その振動は、化粧板42から操作パネル41に伝わり、操作パネル41に固定された制御部44に伝わる。そして、制御部44のプリント基板44aに伝わった振動を、加速度センサ45が加速度として検知する。
使用者が、扉体40を2回ノックすると、制御部44は、加速度センサ45の出力信号から加速度の方向と大きさを検知する。このとき、制御部44は、3軸方向(X軸、Y軸、Z軸)それぞれの加速度の大きさについて、例えば、X軸の加速度Xが第1の閾値A以
上、かつY軸の加速度Yが第2の閾値B以下、かつZ軸の加速度Zが第3の閾値C以下の場合のみ、駆動モータ52を駆動する。すなわち、制御部44は、少なくとも、加速度Xが第1の閾値A未満、または、加速度Xが第1の閾値A以上であっても加速度Yが第2の閾値B以上または加速度Zが第3の閾値C以上であれば正面からの振動ではないと判断する。これによって、使用者の意思で正面から扉体40をノックされたとして判断される。すなわち、使用者の意思に基づかない誤動作が防止される。
そして、本実施の形態においては、使用者によって洗浄槽33を引き出すための動作が加えられたことを判定すると、まず、0.4秒後にブザーを鳴らし、使用者に扉体40が移動を開始することを報知する。そして、判定して0.6秒後に駆動モータ52を所定の方向に駆動する。駆動モータ52は、回転軸に設けられたピニオンギア53によって洗浄槽33下部に設けられたラックギア54を前方に移動させる。これによって、洗浄槽33がスライドレール34を介して筐体31の前面開口部32から前方向に移動し、引き出される。
そして、駆動モータ52が約4秒間駆動されると、洗浄槽33が最も引き出されるように調整されている。これにより、洗浄槽33は、上面開口部35が実質的に全開する位置まで出て停止する。使用者は、この状態で上面開口部35から食器36を食器かご47に容易に収容できる。また、使用者は、上面開口部35の前側に設けられた電源スイッチ(図示せず)をオンにし、操作部46を操作して洗浄運転を設定する。なお、制御部44は、電源スイッチに関係なく常時通電され、使用者によるノックを検知できるように待機している。
使用者は、食器36の収容と洗浄運転の設定を完了すると、扉体40を、例えば1回だけノックする。制御部44は、洗浄槽33が引き出された状態で1回のノックを検知すると、まずブザーで報知する。そして、制御部44は、駆動モータ52を駆動し、洗浄槽33を後方向に移動させる。これにより、洗浄槽33は筐体31内に収納され、扉体40は閉じられる。制御部44は、収納の駆動における収納完了の判断において、収納までの時間制御、収納位置検知、洗浄槽33が収納されて停止するときの加速度検知、駆動モータ52のロック電流検知などを行うことにより可能である。制御部44は、洗浄槽33が収納されると設定された洗浄運転を実行する。
なお、洗浄槽33の収納方法として、使用者が、扉体40の前面を手動で押しながら洗浄槽33を筐体31の中へ収納することも可能である。また、スタートスイッチ(図示せず)が設けられ、使用者が、設定完了後に1回ノックすることに代えて、スタートスイッチを押すと、洗浄槽33が収納され、洗浄運転が開始されるようにしてもよい。さらに、スタートスイッチについては、使用者による運転設定の完了の合図とし、駆動装置51または手動により洗浄槽33収納されたときに、スタートスイッチが押されていなければ洗浄運転を開始しないようにしてもよい。これにより、使用者が洗浄槽33に時間をおいて少しずつ食器を収容することが可能になる。
使用者は、所定の洗浄運転が終了すると、食器36を取り出すために洗浄槽33を引き出す。このときも、食器36を収納するときと同じように、扉体40を2回ノックすると、ブザーの報知に続いて洗浄槽33が所定の位置まで引き出される。使用者は、食器36を取り出した後、扉体40を再度、1回だけノックする。制御部44は、洗浄槽33が引き出された状態で、操作部46による運転設定がない状態、または、スタートスイッチが押されていない状態で1回のノックを検知すると、駆動モータ52を後方向に駆動して洗浄槽33を収納するだけで、洗浄運転は行わない。以上で、使用者の動作を含む食器洗いの一連の動作は完了する。
なお、食器洗い機が洗浄運転を行っているときに、扉体40の化粧板42やハンドル43に使用者などが意図することなく接触する可能性がある。このような場合、制御部44が検知して洗浄槽33を引き出すことは不都合である。したがって、制御部44は、食器洗い機の運転中には、停止時と同じ2回程度のノックでは駆動しないように構成されていてもよい。この場合、例えば、3回のノックを検知した場合に運転を一時停止して洗浄槽33を引き出すように構成されるなど、使用者の意図的な動作を検知するように設定されるのが好ましい。これにより、制御部44は、使用者が意図しない制御を行うことを防止できるとともに、いわゆるチャイルドロックのような機能を有することができ、安全性が向上する。
このように、洗浄槽33の状態とノックの組み合わせにより、制御を割り当てることが可能である。制御部44がノックを検知することについては、回数だけでなく、強度を検知することも組み合わせの種類を工夫するためには有効である。また、これらの加速度センサ45の検知と制御動作の組み合わせ、および洗浄槽33停止の所定位置などの設定など、使用者が操作部46などから設定できるとともに、表示部で確認できるとよい。すなわち、少なくとも、制御部44が駆動モータ52を駆動するために使用者が扉体40に加える振動の設定、または、駆動モータ52の動作の設定、を使用者が操作部46により設定できるとともに、その設定値を操作部46に設けられた表示部により確認できるとよい。これによって、使用者はノックの回数等を自由に設定できるとともに、その設定を確認でき、使い勝手が向上する。
以上の通り、洗浄槽33の状態とノックの回数の組み合わせにより制御部44が任意の制御を行う構成は、以下のように例示される。
a)洗浄運転停止時、洗浄槽33が収容された状態で使用者が扉体40を2回ノックする。このとき、制御部44は洗浄槽33を引き出す方向に移動させる。(運転準備)
b)洗浄槽33が引き出された状態で洗浄運転が設定されていないときに、使用者が扉体40を1回ノックする。このとき、制御部44は洗浄槽33を収納するだけで洗浄運転を開始しない。(運転準備または運転終了)
c)洗浄槽33が引き出された状態で洗浄運転が設定されたときに、使用者が扉体40を2回ノックする。このとき、制御部44は洗浄槽33を収納するだけで洗浄運転を開始しない。(運転準備)
d)洗浄槽33が引き出された状態で洗浄運転が設定されたときに、使用者が扉体40を1回ノックする。このとき、制御部44は洗浄槽33を収納して設定された洗浄運転を開始する。(運転開始)
e)洗浄運転中、洗浄槽33が収容された状態で使用者が扉体40を3回ノックする。このとき、制御部44は洗浄運転を一時停止し、洗浄槽33を引き出す方向に移動させる。(運転一時停止)
bおよびcのように、洗浄槽33が収納されるだけで洗浄運転が開始されなければ、使用者は、食器36を収容している途中で洗浄準備を中断し、食器洗い機から離れることができる。また、bについては、使用者が洗浄運転を開始するdのつもりの場合、使用者は洗浄運転の設定をまだしていないことに気付くことができる。
なお、上記の制御の割り当てにおいて、必要に応じてスタートスイッチなども利用するなどして、すべての動作を同じ回数のノックで対応するようにしてもよい。この場合、使用者が動作ごとのノック回数を覚える必要がないという点で、使い勝手が向上する。
また、扉体40にハンドル43が設けられている場合、使用者が駆動装置51を利用しない場合の設定として、制御部44は、駆動モータ52の駆動をキャンセルできるように構成されていてもよい。
以上のように構成された食器洗い機において、以下の作用および効果が得られる。
少なくとも扉体40に加えられた振動を検知する加速度センサ45を備え、制御部44は、設定された時間だけ駆動モータ52を駆動して洗浄槽33を引き出す前方向に移動させるように構成されている。これによって、食器洗い機の前面を覆う扉体40に操作部46またはハンドル43がない場合でも洗浄槽33を所定の位置まで引き出すことができ、食器洗い機はシステムキッチンKの多様化するデザインに適応することができる。また、設定時間が使用者の使用実態に合わせて調整されることにより、洗浄槽33は任意の位置で停止するように制御される。
制御部44は、扉体40に加えられた所定の振動を検知した加速度センサ45の信号を受けたときに駆動モータ52を駆動するように構成されている。これによって、使用者が扉体40をノックした振動を検知して、運転のタイミングおよび洗浄槽33の状態に応じて、洗浄槽33を駆動モータ52により前方向に移動させたり、後方向に移動させたりすることができる。
制御部44は、洗浄槽33の上面開口部35が実質的に全開となる位置まで駆動モータ52を駆動するように構成されている。これによって、使用者は洗浄槽33を引き出すために手動による労力を必要とせず、食器36を出し入れすることができる。
制御部44は、洗浄槽33が停止したことにより発生した加速度を検知した加速度センサ45の信号を受けたときに駆動モータ52を停止するように構成されている。これによって、扉体40または洗浄槽33などが障害物に衝突して停止した場合でも、障害物に不具合が発生することが防止される。また、引き出しの所定位置に係止部が設けられることにより、制御部44は、所定位置で洗浄槽33を停止させることができる。
制御部44は、洗浄槽が停止しているとき、モータ回路を遮断するように構成されている。これによって、使用者が手動で洗浄槽33を移動させることにより駆動モータ52が空転させられて逆起電力を発生しても、逆起電力は遮断されて制御部44のプリント基板44aに異常な電流が流れることがない。また、手動で開閉動作をする際に駆動モータの逆起電力による電気的負荷が発生せずに開閉動作に負荷がかからないため、使用者は手動でも容易に洗浄槽33の出し入れ動作を行うことができる。
駆動装置51は、駆動モータ52と、駆動モータ52で駆動されるピニオンギア53と、ピニオンギア53と噛み合うラックギア54とを有し、駆動モータ52はピニオンギア53が前面開口部32近傍に位置するように筐体31の内側に固定され、ラックギア54は洗浄槽33の外側に固定されて構成されている。これによって、洗浄槽33が引き出し方向に移動して前下がりとなっても、前部に設けられたピニオンギア53近傍が支点となるので、ラックギア54とピニオンギア53との噛み合わせが外れる可能性が低く、噛み合わせが外れないようにするための構成は簡単な構成でよい。
以上開示されたように、制御部44は、駆動装置51を制御し、使用者の意思に沿って洗浄槽33を安全に移動させる。使用者にとっては、洗浄槽33を手動で移動させる労力が軽減され、使い勝手が向上する。また、操作部46はすべて筐体31内に隠蔽され、システムキッチンKの多様化するデザインに適応することができる。そして、システムキッチンKは意匠が統一され、デザイン性が向上する。
そして、使用者の不注意などにより洗浄槽33の正面に障害物が存在していたとしても、制御部44は、振動の発生または加速度の変化などを検知して、駆動モータ52の駆動
を停止する。これにより、障害物および食器洗い機に大きな不具合は発生せず、安全性が保たれる。
(実施の形態2)
図3および図4は、本発明の実施の形態2における洗浄槽が引き出し式の食器洗い機の側面縦断面図である。図3は、洗浄槽が筐体内に収納された状態が示される。図4は、洗浄槽が筐体内から全開まで引き出された状態が示される。なお、本実施の形態において、実施の形態1との相違は駆動装置である。これ以外の構成は実施の形態1と同様であり、実施の形態1を援用する。
図3および図4に示されるように、洗浄槽33は、ローラ圧接式の駆動装置55で出し入れできるように構成されている。駆動装置55は、駆動モータ56と、駆動モータ56で駆動されるローラ57と、ローラ57が圧接される圧接レール58とを含む。圧接レール58は、洗浄槽33の側面外側の下部に固定されている。圧接レール58は、少なくとも、洗浄槽33が引き出されるストローク以上の長さに構成されている。圧接レール58に圧接されるローラ57は、駆動モータ56で駆動されるように取り付けられている。駆動モータ56は、減速機構を備え、筐体31の内部でローラ57が前面開口部32の近くに位置するように固定されている。なお、図3において、ローラ57は圧接レール58に対して下側から圧接されているが、これに限られるものではなく、上側から圧接されたり、横方向から圧接されたりしてもよい。また、圧接レール58は、洗浄槽33の側面または底面そのものでもよい。
この構成によって、駆動モータ56の回転運動が直線運動に変換され、洗浄槽33は、上面開口部35が実質的に全開になるまで移動できる。そして、駆動モータ56が設定時間により駆動されるように構成されると、設定された時間に応じて洗浄槽33が引き出されるときに任意の位置で停止させることができる。また、ローラ57と圧接レール58との組み合わせであれば、組み立て時において、ラック&ピニオン式のようにギアの噛み合わせを気にする必要がなく、組み立てが容易になる。使用者は洗浄槽33を引き出すために労力を必要としない。そして、食器洗い機は、食器36の収容が容易にできる位置まで駆動装置55により洗浄槽33を引き出すことができ、使い勝手が向上する。また、システムキッチンKの多様化するデザインに適応することができる。
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3における食器洗い機の側面縦断面図である。なお、本実施の形態において、実施の形態1との相違点は扉体の操作部である。これ以外の構成は実施の形態1と同様であり、実施の形態1を援用する。
図5に示されるように、扉体40は、化粧板42の上部に操作部46bを備えている。操作部46bには、少なくとも洗浄槽33を移動させる駆動部である駆動モータ52の運転スイッチ(図示せず)が設けられている。この運転スイッチは、前後方向のいずれに動作させるか区別ができるように設けられている。
制御部44は、洗浄槽33を前方向に移動させる場合、上面開口部35が実質的に全開になるように駆動モータ52を制御する。本実施の形態において、実質的に全開というのは、洗浄槽33が最も引き出されて上面開口部35が最も解放された状態であるとともに、上面開口部35が半分以上解放された状態を含む。要するに、使用者が食器36を出し入れすることが可能な程度でまで引き出される。このために、制御部44は、駆動モータ52を時間で制御する。すなわち、制御部44は、駆動モータ52を設定された所定時間T1だけ駆動して停止する。
この構成によって、使用者は洗浄槽33を引き出したり、収納したりするために労力を必要としない。そして、食器洗い機は、食器36の収容が容易にできる位置まで駆動装置51により洗浄槽33を引き出すことができ、使い勝手が向上する。また、システムキッチンKの多様化するデザインに適応することができる。
(実施の形態4)
図6は、本発明の実施の形態4における他の引き出し式の食器洗い機の側面縦断面図である。図7は、本実施の形態における食器洗い機の正面縦断面図である。図8は、図7のスライドレール部分の要部拡大図である。
本実施の形態において、実施の形態1との相違点は、食器洗い機の洗浄槽の構成と、扉体の支持機構の構成である。実施の形態1では、洗浄槽が引き出し式で筐体から出し入れされる構成であるが、本実施の形態では、洗浄槽は筐体の内部で固定して構成される。この違いにより、扉体が支持される支持機構は、実施の形態1では、扉体が取り付けられる洗浄槽と洗浄槽を移動させるスライドレールとが含まれたが、本実施の形態では、扉体が取り付けられる支持部材とスライドレールとが含まれる。これ以外の本発明に関わる構成は実施の形態1と同様であり、実施の形態1を援用する。
図6および図7に示されるように、筐体71は、前面全体が開口された前面開口部72を有する。前面開口部72が設けられた筐体71の内部に洗浄槽73が形成されている。前面開口部72を覆う扉体74が設けられている。洗浄槽73と扉体74とで形成された洗浄空間75内に、食器76が載置される下食器かご77および上食器かご78が前後に移動可能な状態で設けられている。これらの食器かご77、78は、扉体74に係止されていれば扉体74と一緒に移動し、係止が解除されていれば個別に移動することが可能である。
扉体74の上面には、操作部79が設けられ、使用者が操作部79のボタンを押すことにより電源入、切の切り替え、スタート、一時停止、洗浄および乾燥コースの切り替えができる。また、扉体74を移動させるために、制御部(図示せず)を操作するスイッチが設けられてもよい。制御部は、操作部79の下方に設けられている。
扉体74は、支持機構80により前後に移動可能な状態で筐体71に支持されている。支持機構80は、支持部材81とスライドレール82を含む。スライドレール82は、洗浄槽73の外側下部で筐体71の左右両側の内側面に取り付けられている。図8に示されるように、スライドレール82は、固定レール82aと、固定レール82aにスライド自在に装着された第1の可動レール82bと、第1の可動レール82bにスライド自在に装着された第2の可動レール82cとを含んで構成されている。
金属板で形成された支持部材81は、前端部81aが扉体74の内側下部に固定されている。また、支持部材81は第2の可動レール82c上で固定されている。扉体74が前方に移動するとき、支持部材81および第2の可動レール82cは扉体74を略垂直に支えつつ、第1の可動レール82bと合わせて前方に移動する。これによって、スライドレール82が伸長する。
扉体74を少なくとも前方向または後方向に移動させる駆動装置83が設けられている。制御部は、加速度センサ45などのセンサ、または操作スイッチなどから所定の信号を受けたときに駆動部を駆動するように構成されている。駆動装置83は、駆動部として駆動モータ84を有している。
本実施の形態においては、ラック&ピニオン式で構成された駆動装置83について説明
する。駆動装置83は、駆動部である駆動モータ84と、駆動モータ84で駆動されるピニオンギア85と、ピニオンギア85と噛み合うラックギア86とを含む。歯車の歯が一直線に形成されたラックギア86は、支持部材81の近傍に固定されている。ラックギア86は、少なくとも、扉体74が移動するストローク以上の長さに構成されている。ラックギア86と噛み合うピニオンギア85は、駆動モータ84で駆動されるように取り付けられている。駆動モータ84は、減速機構(図示せず)を備え、筐体71の内部でピニオンギア85が前面開口部72の近くになる位置で固定されている。この構成によって、駆動モータ84の回転運動が直線運動に変換され、扉体74は、前方向または後方向に移動される。その他の詳細な制御については、実施の形態1と同様であり、説明は省略される。
(その他の実施態様)
以上、4つの実施の形態の構成について開示されたが、駆動装置を含めた各種構成について、他の実施態様が示される。
洗浄槽33が引き出されるときに所定位置で停止する方法について、実施の形態1で開示された駆動モータ52が時間で制御される方法に代えて、例示される。
1.図8に示されるように、洗浄槽33の所定位置を検知する位置検知部59が前面開口部32の近傍に設けられ、制御部44は、移動中に発生する位置検知部59からの信号により駆動モータの駆動を停止するように構成されてもよい。位置検知部59は、マイクロスイッチでもよい。これに限られず、光電スイッチでもよい。また、光電センサなどにより洗浄槽33の移動距離を測定して位置を検知するものでもよい。駆動部がステッピングモータで構成されても移動距離が検知される。
2.図9に示されるように、洗浄槽33が所定位置で停止させられるように構成された係止部60が設けられてもよい。係止部60は、例えば、筐体31の前面開口部32の近傍に設けられた第1の突起部60aと、スライドレール34または洗浄槽33の後部に設けられた第2の突起部60bとが、洗浄槽33が引き出された所定位置でぶつかるように構成されたものである。制御部44は、係止部60によって洗浄槽33が停止したことにより発生する駆動モータ52、56のロック電流を検知することにより駆動モータ52、56の駆動を停止するように構成されてもよい。
3.図9に示されるように、洗浄槽33が所定位置で停止させられるように構成された係止部60が設けられてもよい。係止部60は、例えば、筐体31の前面開口部32の近傍に設けられた第1の突起部60aと、スライドレール34または洗浄槽33の後部に設けられた第2の突起部60bとが、洗浄槽33が引き出された所定位置でぶつかるように構成されたものである。制御部44は、係止部60によって洗浄槽33が停止したことにより発生する加速度を検知した加速度センサ45の信号を受けたときに駆動モータ52、56を停止するように構成されてもよい。
これらの構成によれば、実施の形態1で示された設定時間のように、設定時間と引き出し量との関係を見極める必要はなく、停止位置は物理的に設定される。このとき、位置検知部59または第1の突起部60aが前後にスライドして任意の位置に固定可能に構成されていれば、洗浄槽33は任意の所定位置に確実に停止する。なお、2.で発生するロック電流は短時間であり、駆動モータ52、56に無理な負荷がかかることはない。また、2.と3.で示された係止部60は、クッション性を有することが好ましい。これにより、洗浄槽33が滑らかに停止して収容された食器36にショックが伝わらず、食器36同士が接触する騒音や食器36の破損が防止される。また、洗浄槽33に溜められた水が跳ね飛んで、洗浄槽33から水が飛び出したり、洗浄後に乾燥された食器36が濡れたりす
ることが防止される。
駆動装置51、55において、駆動モータ52、56は洗浄槽33の後部に固定され、ラックギア54、圧接レール58は筐体31の内側に固定されて構成されてもよい。家具や冷蔵庫の引き出しに駆動装置が設けられる場合、駆動部の電源は筐体側に設けられることが都合よく、一般的である。しかしながら、洗浄槽33が引き出し式の食器洗い機は、洗浄槽33にヒータ49および洗浄ポンプ50などの電源が必要であり、元々電源線が配設されている。このため、この構成によれば、制御部44から駆動モータ52、56までの信号線および電源線の配設において、筐体31側に引き回すことなく洗浄槽33の側面だけで済むため、設計および組み立てが容易になり、メンテナンスの作業性が向上する。
駆動装置51において、ラックギア54は、歯を上下両方に形成され、2つのピニオンギア53により上下で挟まれるように構成されてもよい。また、ラックギア54は、歯を上下方向のいずれかに形成され、歯を形成されない側にはローラが設けられて上下で挟まれるように構成されてもよい。これらの構成によれば、ラックギア54とピニオンギア53とが確実に噛み合い、簡単には外れない。
障害物により途中で停止した洗浄槽33を引き続き移動させる場合、使用者が手動で移動させるのではなく、駆動装置51、55で移動させてもよい。このとき、停止位置から引き出すのか収納するのかを区別される必要がある。この方法として、使用者が化粧板42を叩く回数により区別され、加速度センサ45が検知するようにしてもよい。また、操作部46に移動方向を明示したスイッチが設けられ、使用者が操作するようにされてもよい。この構成によれば、駆動装置51、55が活用され、使用者が手動で移動させる労力が低減される。
さらに、駆動装置51、55の制御について例示される。
制御部44は、使用者による駆動モータ52、56を駆動させる信号を検知してから、所定時間T2(例えば、0.4秒〜1秒)後に駆動を開始してもよい。この構成により、洗い工程で洗浄ノズルから洗浄水が噴射されていた場合、洗浄ポンプの停止を待つことができ、洗浄水が洗浄槽から飛び出すことを防止できる。また、駆動させる信号を連続して検知して駆動を繰り返す場合、一時的な駆動モータ52、56の停止を確保して大きな起動電流が連続しないようにでき、駆動モータ52、56の過度な温度上昇を防止できる。
また、扉体40が駆動されて移動することが報知されれば、安全性が向上する。特に、所定時間T2の間で、扉体40が移動を開始する前に報知を開始することが好ましい。扉体40が駆動される前に移動することが報知されれば、安全性をより向上させることができる。
扉体40が閉じられたことを検知するドア閉検知センサ(図示しないが、例えば、図6に示される位置検知部59で代用可能)が設けられ、制御部44は、ドア閉検知センサによる扉体40が閉じられた信号を検知してから所定時間T3(例えば、0.5秒)の間、加速度センサ45からの信号を検知しない、または、信号を検知しても駆動を保留する、ようにしてもよい。扉体40が閉じられたときのショックにより食器などを含めて筐体全体が振動する。この構成により、閉じられたときの振動を誤って検知することを防止できる。また、一時的な駆動モータ52、56の停止を確保でき、駆動モータ52、56の過度な温度上昇を防止できる。
また、このように、ドア閉検知センサによる扉体40が閉じられた信号を検知したときに報知し、扉体40が確実に閉じられたことを使用者に知らせてもよい。さらに、閉じら
れた信号を検知した所定時間T3後に報知し、扉体40を引き出すためのノックを受け付けることができるようになったことを使用者に知らせてもよい。この構成により、使用者は、扉体40が確実に閉じられ、それ以降の洗浄運転が正常に行われることを確認できる。
制御部44は、扉体40が閉じられる後方向に駆動モータ52、56を駆動し、駆動モータ52、56が停止したことを検知したにもかかわらず、ドア閉検知センサの信号が検知されないときには、異常発生を報知してもよい。これによって、使用者に、扉体40が完全に閉じていないことを知らせることができる。
さらに、使用者が閉じるように操作しても、この報知が所定回数(例えば、5回)繰り返されたときには、異常発生として報知するとともに、それ以上の駆動を停止してもよい。この構成により、駆動モータ52、56のロック電流が繰り返されないようにでき、駆動モータ52、56の過度な温度上昇を防止できる。また、扉体40が障害物等で閉じないのか、駆動モータ52、56またはドア閉検知センサが故障したのか、などの異常発生を見極める必要があることを使用者に知らせることができる。そして、扉体40が閉じていないままで洗浄運転が行われることを防止できる。
制御部44は、ドア閉検知センサによる扉体40が閉じられた信号を検知した状態で、扉体40が開けられる前方向に駆動モータ52、56を駆動してから所定時間T4(例えば、2.5秒)の間、ドア閉検知センサの信号が検知されたままの場合、異常発生を報知してもよい。この構成によって、扉体40が動いていないと判断して使用者に扉体40の異常を知らせることができる。
さらに、使用者がノックをしても扉体40が開かず、この報知が所定回数(例えば、5回)繰り返されたときには、異常発生として報知するとともに、それ以上の駆動を停止してもよい。この構成により、駆動モータ52、56のロック電流が繰り返されないようにでき、駆動モータ52、56の過度な温度上昇を防止できる。また、扉体40が障害物等で動かないのか、駆動モータ52、56またはドア閉検知センサが故障したのか、などの異常発生を見極める必要があることを使用者に知らせることができる。
次に、加速度センサ45が、その他の制御に応用されることについて例示される。
加速度センサ45は、食器洗い機の設置における傾きを検知するように構成されてもよい。食器洗い機は水を使用するため、傾いていると水漏れなどの不具合が発生する恐れがある。したがって、設置において水平状態であることを確認される必要がある。すなわち、制御部44は、重力とZ軸方向の加速度とのずれを検知することにより、水準器として応用できる。制御部44は、加速度センサ45で食器洗い機の傾きを検知できることにより、水準器が不要となり、設置の作業性が向上する。また、食器洗い機が設置された場所において、設置面が経年変化で傾きが生じた場合、制御部44はそれを検知し、使用者に報知したり、運転を停止したりすることができる。これにより、食器洗い機は、傾きを修正されながら使用され、使用される長期間にわたって傾きによる不具合を発生させることがない。
また、制御部44は、加速度センサ45により検知した設置の傾き状況から、駆動モータ52、56を制御して扉体40の移動速度を変更してもよい。具体的には、前方または後方に所定値未満で傾いているときには、通常よりも移動速度を遅くする。設置された傾きが大きい場合、水漏れの恐れがあるとともに、駆動装置51にも想定以上の負荷がかかる恐れがある。この構成により、洗浄運転に支障がない程度の傾きで設置されている場合には、扉体40の移動速度を遅くして安全性を向上させることができる。
さらに、制御部44は、加速度センサ45により検知した傾きが所定値以上のときには駆動できないように制御してもよい。この構成により、水漏れまたは駆動装置への想定以上の負荷がかかるという問題が発生する以前に運転が規制されることによって、安全性を向上させることができる。
加速度センサ45は、洗浄運転において、洗浄水が洗浄槽33の内壁に衝突する振動を検知してもよい。これにより、制御部44は、加速度センサ45が検知した振動による加速度の方向や大きさから、洗浄ポンプ50が正常に動作しているか、洗浄ノズル48が正常に回転しているか、複数の洗浄ノズル48のいずれから噴射されているか、食器36がどれくらい収容されているか、などを判定することができる。
制御部44は、駆動モータ52、56を駆動する信号を出力したときに、加速度センサ45から所定の出力がないときは、駆動モータ52、56または加速度センサ45などの故障と判断して、異常報知してもよい。これにより、制御部44は、駆動装置系統の異常を使用者に知らせることができる。
制御部44は、加速度センサ45の異常を検知したとき、洗浄槽33を引き出してもよい。これにより、ノックを検知できずに洗浄槽33が引き出されなくなる不具合が回避され、制御部44は、加速度センサ45の異常を使用者に知らせることができる。
駆動装置51が動作するときに報知したり、異常の発生などを報知したりする報知部は、操作部46に設けられている。具体的には、報知部は、音声やブザーなどの合成音で聴覚的に報知するとよく、使用者が近くにいれば容易に気付かせることができる。
なお、音で報知される場合、制御部44は、ノックなどによる振動を検知してから所定時間T5後に報知を開始するとよい。この所定時間T5は、0.1秒〜0.6秒が望ましい。なぜならば、0.1秒未満であると、使用者はノックの動作をすることに意識が回っている上に、ノックなどのように音が発生すると、その音と報知音の最初の部分とが重なって聞こえてしまい、聞き取り難いためである。また、0.6秒を超えると使用者に間延びした印象を与えてしまうためである。したがって、報知音がノックなどによる振動を検知してから所定時間T5後に開始されると、使用者は、自分でノックした音に邪魔されることなく報知音を聞き取りやすくなる。
また、報知部は、エラーコードの表示や、LEDなどのランプの点滅または複数のランプの点灯の組み合わせなどでもよい。さらに、加速度センサ45に限らず異常発生時に洗浄槽33が自動的に引き出される構成でもよい。これによって、使用者に異常発生を視覚的に気付かせることができる。特に、操作部46が筐体31内に隠蔽された構成においては洗浄槽33が引き出されることは好ましく、使用者は、操作部46に表示されたエラーコードまたはLEDの表示を容易に確認することができる。このとき、洗浄槽33は操作部46が視認できる程度に引き出されればよい。
食器洗い機は、操作信号を送信するリモコン(図示せず)を備えていてもよい。制御部44は、リモコンからの各種操作信号を受信し、それに応じた制御を行う。制御部44は、洗浄槽33を引き出したり、収納したりすることについても、リモコンから所定の信号を検知し、駆動モータ52、56を駆動させて洗浄槽33を移動させる。これにより、使用者は、食器洗い機から離れたところから、食器洗い機を操作することが可能である。
以上のとおり開示された実施の形態について、それぞれ組み合わせることが可能な構成は、特に限定なく組み合わされることが可能である。