JP6919895B2 - 動釣合い試験機 - Google Patents

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Description

この発明は、動釣合い試験機に関する。
動釣合い試験機では、固定された被試験体を所定速度で回転させることによって、被試験体の不釣合いが測定される。従来の被試験体には、被試験体における他の部分に対して相対的に動く可動部分が存在しないことが一般的なので、被試験体におけるいずれかの箇所を動釣合い試験機に固定すれば、被試験体の不釣合いを正確に測定することができる。
ベース部品と、ベース部品の軸中心線まわりの周方向に並んで配置され、ベース部品によって遊びを持って保持された複数の錘部材とを有する新たな被試験体が想定される。各錘部材は、軸中心線を基準とした径方向および周方向のそれぞれへ向けてベース部品に対して相対移動したり自身の姿勢を変えたりすることができる。このような被試験体の一例として、振り子付きのトルクコンバーターやデュアルマスフライホイール等といったエンジン用部品が挙げられる。
このような被試験体は、実際には軸中心線が水平に延びた状態で軸中心線まわりに回転するように使用され、その際、各錘部材とベース部品との間には潤滑油が介在する。しかし、被試験体は、動釣合い試験機では、軸中心線が垂直に延びて潤滑油が存在しない状態でセットされるので、各錘部材が自重によってベース部品に上側から接触する。この状態で不釣合い測定のために被試験体を回転させると、各錘部材は、遠心力が作用しても、ベース部品との間の摩擦によってベース部品に固着してベース部品の一部となることにより、実使用時のように自由に移動することができない。このような状態では、各錘部材の固着が影響することにより、被試験体の不釣合いを正確に測定することが困難である。
この発明は、かかる問題を解決するためになされたもので、ベース部品とベース部品によって遊びを持って保持された複数の錘部材とを有する被試験体の不釣合いを正確に測定できる動釣合い試験機を提供することを目的とする。
本発明は、ベース部品(3)と、前記ベース部品の軸中心線(J)まわりの周方向(S)に並んで配置され、前記ベース部品によって遊びを持って保持された複数の錘部材(4)とを有する被試験体(2)のための動釣合い試験機(1)であって、軸中心線が垂直に延びた状態における前記ベース部品が固定され、垂直軸線まわりに回転可能なスピンドル(12)と、前記スピンドルを振動可能に支持する支持部(11)と、前記スピンドルを回転させるモータ(13)と、前記スピンドルが定常回転している状態において、周期的なトルク変動が前記スピンドルに生じるように前記モータを制御する制御部(14)とを含み、前記スピンドルが定常回転して前記トルク変動が生じている状態において、被試験体の不釣り合いの測定処理が実行される、動釣合い試験機である。なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素などを表す。以下、この項において同じ。
この構成によれば、動釣合い試験機では、支持部によって振動可能に支持されたスピンドルに、被試験体において軸中心線が垂直に延びた状態におけるベース部品が固定される。この状態のスピンドルがモータによって垂直軸線まわりに定常回転されているときにおいて、被試験体の軸中心線に関する質量の不均一分布によって生じた振動から、被試験体の不釣り合いが測定される。
動釣合い試験機の制御部は、スピンドルが定常回転している状態において、周期的なトルク変動がスピンドルに生じるようにモータを制御する。そのため、動釣合い試験機では、スピンドルが定常回転してトルク変動が生じている状態において、被試験体の不釣り合いの測定処理が実行される。測定処理中では、スピンドルに生じたトルク変動によって各錘部材が振動することにより、各錘部材がベース部品から離れやすくなり、各錘部材とベース部品との間の摩擦が低減される。この状態では、各錘部材は、ベース部品に固着してベース部品の一部となることなく、実使用時と同様に自由に移動できる。そのため、測定処理では、各錘部材の固着による影響が少ない状態で、被試験体の不釣合いを測定できる。その結果、ベース部品とベース部品によって遊びを持って保持された複数の錘部材とを有する被試験体の不釣合いを正確に測定できる。
また、本発明は、被試験体が、エンジンに組み付けられるものであり、前記測定処理中に定常回転している前記スピンドルの目標回転数をAとし、前記トルク変動の目標周波数をBとし、被試験体が組み付けられるエンジンの気筒数をCとしたときに、AとBとCとの関係が以下の式を満足することを特徴とする。
C/2=B/A
この構成によれば、測定処理では、以上の式に沿って設定された目標回転数および目標周波数に基いてスピンドルが定常回転してトルク変動が生じることにより、各錘部材を効果的に振動させて、各錘部材の自由な移動を促進できる。そのため、被試験体の不釣合いをより正確に測定できる。
図1は、被試験体の平面図である。 図2は、図1のA−A矢視断面図である。 図3は、この発明の一実施形態に係る動釣合い試験機の正面図である。 図4は、準備処理および測定処理における動釣合い試験機のスピンドルの回転数の経時変化を示すグラフである。 図5は、測定処理中にスピンドルに与えられるトルクの経時変化を示すグラフである。
以下では、この発明の実施形態について詳細に説明をする。図1は、この発明の一実施形態に係る動釣合い試験機1(図3参照)での不釣合い測定の対象となる被試験体2の平面図である。被試験体2は、振り子付きのトルクコンバーターやデュアルマスフライホイール等といった部品であって、内燃式のエンジン(図示せず)に組み付けられる。被試験体2は、例えば円盤状のベース部品3と、ベース部品3の軸中心線Jまわりの周方向Sに並んで配置された複数(例えば6つ)の錘部材4とを有する。ベース部品3の中心部には、基準内径部としての貫通穴3Aが形成され、ベース部品3の外周部には、周方向Sに延びてベース部品3を貫通したガイド溝3Bが、周方向Sに並んで複数(例えば1つの錘部材4に対して2つずつ)形成されている。
図1のA−A矢視断面図である図2も参照して、各錘部材4は、ベース部品3においていずれかのガイド溝3Bが形成された部分を挟むように配置された一対の錘板5と、一対の錘板5同士を連結する例えば2つのピン状の結合部6とを含む。各錘部材4において、各結合部6は、ベース部品3において周方向Sで同じ位置にあるガイド溝3Bに対して遊びを持って1つずつ挿通されている。これにより、各錘部材4は、ベース部品3によって遊びを持って保持されている。
エンジンに組み付けられた実使用時の被試験体2は、軸中心線Jが水平に延びた状態で軸中心線Jまわりに回転するので、その際、各錘部材4は、軸中心線Jを基準とした径方向Rおよび周方向Sのそれぞれへ向けてベース部品3に対して相対移動したり自身の姿勢を変えたりすることによって、仮想の可動支点を中心とした振り子運動をする。
図3の正面図を参照して、動釣合い試験機1は、床面Yに固定される本体フレーム10と、支持部11と、スピンドル12と、モータ13と、制御部14とを含む。本体フレーム10は、床面Yから立ち上がっていて、その上端部には、水平部10Aが設けられている。支持部11は、例えば平板状に形成され、本体フレーム10の水平部10Aに真上から固定される。支持部11を本体フレーム10の一部とみなしてもよい。スピンドル12は、垂直軸線を有する円柱状に形成されていて、支持部11を上下に貫通している。スピンドル12は、支持部11に設けられたバネ状の弾性支持部15によって振動可能に支持される。モータ13は、スピンドル12に直結されてもよいし、ベルト等を介してスピンドル12に連結されてもよく、ダイレクトドライブやベルトドライブ等によって、スピンドル12を垂直軸線まわりに回転させる。制御部14は、マイクロコンピューター等によって構成されており、モータ13への印加電圧を制御することによって、モータ13の動作を制御する。
動釣合い試験機1において被試験体2の不釣り合いを測定する場合には、被試験体2が、スピンドル12の上端部にセットされる。スピンドル12の上端部には、例えばベース部品3の貫通穴3A(図1参照)において被試験体2をクランプするための保持部12Aが設けられている。被試験体2では、ベース部品3が、その軸中心線Jが垂直に延びてスピンドル12の垂直軸線と一致した状態で、保持部12Aによってスピンドル12に固定される。このとき、被試験体2では、各錘部材4における一対の錘板5がベース部品3を上下から挟んだ状態にあり、上側の錘板5がベース部品3の上面に接触している。
次に、垂直軸線まわりの一方向へのスピンドル12の回転が開始される。スピンドル12の回転数の経時変化を示すグラフである図4を参照して、制御部14は、準備処理として、スピンドル12の回転数が所定の目標回転数まで上昇するようにモータ13を制御する。準備処理の後に続く測定処理では、制御部14は、スピンドル12が目標回転数で定常回転し、その状態のスピンドル12に周期的なトルク変動が生じるようにモータ13を制御する。周期的なトルク変動とは、図5で示すように、モータ13からスピンドル12に伝達されるトルクが、正弦波の波形に沿って、交互にプラスの値およびマイナスの値になるように変動することである。図5では、例えば±約10N・mの範囲におさまる約50Hzのトルク変動がスピンドル12に生じている。
測定処理中に定常回転しているスピンドル12の目標回転数をA(単位はHz)とし、前記トルク変動の目標周波数をB(単位はHz)とし、被試験体2が実使用時に組み付けられるエンジン(図示せず)の気筒数をCとしたときに、AとBとCとの関係が以下の式(1)を満足するように、目標回転数Aおよび目標周波数Bが設定される。
C/2=B/A・・・式(1)
測定処理中では、スピンドル12の実際の回転数が目標回転数Aに維持され、かつ、一定の目標周波数Bのトルク変動がスピンドル12に生じるように、制御部14がモータ13を制御する。動釣合い試験機1は、スピンドル12の実際の回転数やスピンドル12への入力トルクを検知して制御部14に入力するセンサ等の検知部(図示せず)を備えている。なお、測定処理中に定常回転しているスピンドル12の実際の回転数は、目標回転数Aに一致することが望ましいが、許容誤差の範囲内において目標回転数Aからずれたり変動したりしていてもよい。スピンドル12に伝達される入力トルクの実際の周波数と目標周波数Bとの関係についても同様である。
測定処理中では、被試験体2と一体回転中のスピンドル12の振動が、例えば本体フレーム10に固定された振動検出器(図示せず)によって検出され、制御部14は、この振動に基いて被試験体2の不釣り合いを測定する。測定処理が完了すると、モータ13の回転が停止した後に、スピンドル12の保持部12Aによるクランプが解除されて、被試験体2がスピンドル12から取り外される。
以上のように、動釣合い試験機1では、スピンドル12が定常回転してトルク変動が生じている状態において、被試験体2の不釣り合いの測定処理が実行される。測定処理中では、スピンドル12に生じたトルク変動によって各錘部材4が振動することにより、各錘部材4がベース部品3から離れやすくなり、各錘部材4とベース部品3との間の摩擦が低減される。この状態では、各錘部材4は、ベース部品3に固着してベース部品3の一部となることなく、実使用時と同様に自由に移動できる。そのため、測定処理では、各錘部材4の固着による影響が少ない状態で、被試験体2の不釣合いを測定できる。その結果、ベース部品3とベース部品3によって遊びを持って保持された複数の錘部材4とを有する被試験体2の不釣合いを正確に測定できる。
特に、測定処理では、式(1)に沿って設定された目標回転数Aおよび目標周波数Bに基いてスピンドル12が定常回転してトルク変動が生じることにより、各錘部材4を効果的に振動させて、各錘部材4の自由な移動を促進できる。そのため、被試験体2の不釣合いをより正確に測定できる。
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
例えば、測定処理中だけでなく、前述した準備処理中においても、制御部14は、周期的なトルク変動がスピンドル12に生じるようにモータ13を制御してもよい。その際のトルク変動の目標周波数は、測定処理用の目標周波数Bであってもよいし、上昇中のスピンドル12の回転数を式(1)のAに代入して得られる目標周波数Bであってもよい。
1 動釣合い試験機
2 被試験体
3 ベース部品
4 錘部品
11 支持部
12 スピンドル
13 モータ
14 制御部
A 目標回転数
B 目標周波数
C 気筒数
J 軸中心線
S 周方向

Claims (2)

  1. ベース部品と、前記ベース部品の軸中心線まわりの周方向に並んで配置され、前記ベース部品によって遊びを持って保持された複数の錘部材とを有する被試験体のための動釣合い試験機であって、
    軸中心線が垂直に延びた状態における前記ベース部品が固定され、垂直軸線まわりに回転可能なスピンドルと、
    前記スピンドルを振動可能に支持する支持部と、
    前記スピンドルを回転させるモータと、
    前記スピンドルが定常回転している状態において、周期的なトルク変動が前記スピンドルに生じるように前記モータを制御する制御部とを含み、
    前記スピンドルが定常回転して前記トルク変動が生じている状態において、被試験体の不釣り合いの測定処理が実行される、動釣合い試験機。
  2. 被試験体は、エンジンに組み付けられるものであり、
    前記測定処理中に定常回転している前記スピンドルの目標回転数をAとし、前記トルク変動の目標周波数をBとし、被試験体が組み付けられるエンジンの気筒数をCとしたときに、AとBとCとの関係が以下の式を満足する、請求項1に記載の動釣合い試験機。
    C/2=B/A
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