JP6307782B2 - マスセンタリングマシン - Google Patents
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Description
非対称回転体の場合には、たとえば直列3気筒エンジン用のクランクシャフトの姿勢制御において、3つあるクランクピンのうち軸方向一端に位置する#1ピンを最下位に位置決めした状態で、ジャーナルを支持した軸受を移動させる。軸受を垂直移動させる場合には特に問題はないが、軸受を水平移動させると、クランクシャフトが#1ピンを基準に若干回転するように位置ずれするので、質量中心を測定したときにおけるクランクシャフトと補償おもりとの間の角度関係がずれてしまい、回転体の不釣合いに誤差が生じる。
この発明は、かかる問題を解決するためになされたもので、非対称回転体に対する正確なセンタ穴加工を可能にするマスセンタリングマシンを提供することを目的とする。
この構成によれば、質量中心が測定された回転体が非対称回転体である場合において、センタ穴加工の前段階として姿勢制御するために支持部を移動させる際の移動量が、支持部の水平移動に起因する回転体の回転によって生じる偶不釣合いのずれ(偶不釣合いを打ち消すための補償おもりに対する回転角度)に応じて補正される。そのため、回転体を正確に姿勢制御できるので、姿勢制御後の非対称回転体に対して正確なセンタ穴加工が可能になる。
図1は、この発明の一実施形態に係るマスセンタリングマシン1の模式的な正面図である。マスセンタリングマシン1は、センタ穴加工すべき回転体26の質量中心を測定する測定ステーション10と、回転体26の測定された質量中心にセンタ穴加工(マスセンタ加工)を行うための加工ステーション(図示せず)とを含む。ここでの回転体26は、エンジン用のクランクシャフトである。
左架台14および右架台15の各モータ20が同期回転されると、左架台14の把持円盤25および右架台15の把持円盤25が、回転体26の両端部を把持した状態で一体回転する。このとき、回転体26の回転軸心と質量中心とにずれがある場合は、そのずれ量に比例した不釣合いが生じて振動枠13が振動し、その振動は、図示しない振動検出器によって検出される。マスセンタリングマシン1においてCPU等によって構成された制御部50(補正手段)が、振動検出器の検出結果に基いて、回転体26の不釣合いや、質量中心や、回転体26の回転軸心と質量中心とのずれ量等を演算によって測定する。ここでの測定を、以下では「質量中心測定」と呼ぶことにする。
補償おもりは、把持円盤25の外周部に取り付けられた第1おもり31と、スピンドル側プーリ23に取り付けられた第2おもり32とで構成される。第1おもり31と第2おもり32とは、把持円盤25およびスピンドル24の回転軸心Aを中心とする周方向における角度位置が180°異なった位置、すなわち回転軸心Aに対して逆方向の角度位置にそれぞれ固定されている。
クランクシャフト26の偶不釣合いUCと、第1おもり31および第2おもり32による偶不釣合いUC1とは、ベクトル量に換算して、UC+UC1=0いう関係になる。この関係が成立した状態で把持円盤25を回転させることにより、偶不釣合いUCが打ち消された状態のクランクシャフト26の質量中心測定を実施できる。
図3は、クランクシャフト26と、マスセンタリングマシン1の加工ステーションにおいてクランクシャフト26を支持する支持部K27とを抜き出して描いた図である。クランクシャフト26は、その両端部として同軸状に配置される一対のジャーナル40と、これらのジャーナル40間に配置される3つのクランクピン41とを含む。一対のジャーナル40のうち、左側のジャーナル40は、エンジン内で駆動力を伝達するフロント側の第1ジャーナル40Aであり、右側のジャーナル40は、エンジン内においてフランジに近いリア側の第2ジャーナル40Bである。3つのクランクピン41を、第1ジャーナル40Aに近い順に、#1ピン41A、#2ピン41B、#3ピン41Cと呼ぶ。
そして、クランクシャフト26は、センタ穴加工のために、測定ステーション10から加工ステーション(図示せず)に受け渡される。加工ステーションにおいて支持部27に相当する構成を支持部K27という。加工ステーションは、クランクシャフト26の姿勢制御のために各支持部K27を移動させるアクチュエータ等の移動手段(図示せず)と、姿勢制御が完了したクランクシャフト26にセンタ穴加工する加工手段としての工具43(図3参照)とを含む。
ここで、マスセンタリングマシン1では、直交する2つの機械座標軸VmおよびHmを実際の座標軸としており(図4参照)、これらの座標軸VmおよびHmは、垂直座標軸Vおよび水平座標軸Hのそれぞれに対して45°傾斜している。機械座標軸VmおよびHmを基準とした場合において、支持部K27が移動した場合における各ジャーナル40の水平方向の移動量Hnは、以下の式(1)で表される。なお、移動量Hnのnは、第1ジャーナル40Aを示す「1」または第2ジャーナル40Bを示す「2」である。
式(1)より求められた第1ジャーナル40Aの水平方向の移動量H1および第2ジャーナル40Bの水平方向の移動量H2から、各支持部K27の水平移動に起因するクランクシャフト26全体の水平方向の移動量Hが求められる。移動量Hにおける移動量H1および移動量H2のそれぞれの影響度合いは、クランクシャフト26の軸方向における各支持部K27(ジャーナル40との接触部)から#1ピン41Aの中心までの距離に反比例する。そのため、軸方向における第1ジャーナル40Aの支持部K27から#1ピン41Aの中心までの距離を距離aとし、軸方向における第2ジャーナル40Bの支持部K27から第1ジャーナル40Aの支持部K27までの距離を距離cとすると、これらのa、c、H1およびH2から、以下の式(2)によってHが求められる。
クランクシャフト26のハーフストローク(ジャーナル40とクランクピン41との軸間距離)をsとすると、移動量Hの水平移動に応じて回転したときのクランクシャフト26の回転角度θ(図4参照)は、以下の式(3)によって求められる。
θ=sin−1(H/s) …式(3)
図4を参照して、3つのクランクピン41が120°間隔で配置されたクランクシャフト26の回転方向には、エンジンの設定によって、時計回りと反時計回りとがある。クランクシャフト26の偶不釣合いUcは、図4に示す時計回りの場合には30°および210°の方向に存在し、反時計回りの場合には330°および150°の方向に存在する。質量中心測定の際に用いられる補償おもりは、時計回りの場合には、210°および30°の方向(角度位置)に取り付けられ、反時計回りの場合には、150°および330°の方向に取り付けられる。
ΔU=Uc・sinθ …式(4)
質量中心測定後のクランクシャフト26を受け取って実際のマスセンタリングを行う加工ステーション(図示せず)内での姿勢制御の際に、クランクシャフト26では回転角度θの回転が発生する。そのため、質量中心測定の際、制御部50が、前述した支持部K27の移動量の計測値に従って水平移動した場合におけるクランクシャフト26の移動量Hから発生するクランクシャフト26の回転角度θを算出する。そして、制御部50は、回転角度θに相当する誤差ΔUを支持部K27の移動量の計測値からベクトル的に差し引いて得られた値を、加工ステーションでの実際の姿勢制御における支持部K27の補正移動量とする。つまり、制御部50は、姿勢制御のための支持部K27の移動量を、回転角度θの回転によって生じる偶不釣合いUcのずれに応じて補正する。
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
また、マスセンタリングマシン1は、前述した制御部50を、測定ステーション10および加工ステーション(図示せず)のどちらに備えてもよい。
26 回転体
50 制御部
K27 支持部
UC 偶不釣合い
Claims (1)
- センタ穴加工すべき回転体を支持する支持部と、
前記回転体が偶不釣合いを有する非対称回転体である場合に、質量中心が測定された前記回転体をセンタ穴加工の前段階として姿勢制御するために前記支持部を移動させる際の移動量を、前記支持部の水平移動に起因する前記回転体の回転によって生じる前記偶不釣合いのずれに応じて補正する補正手段とを含むことを特徴とする、マスセンタリングマシン。
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