以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1及び図2は、実施形態に係る浴槽を模式的に表す斜視図である。
図1及び図2に表したように、浴槽10は、浴槽本体12を備える。浴槽本体12は、底面部14と、側面部16と、を有する。側面部16は、底面部14を囲み、底面部14より上方に向かって延びる。側面部16は、より詳しくは、底面部14の外縁を囲む。これにより、浴槽10では、底面部14と側面部16とで囲まれた浴槽本体12の内部の空間SP内に湯水を溜めることができ、浴槽本体12内で入浴を行うことができる。
側面部16は、第1内側面21と、第2内側面22と、を有する。第1内側面21は、入浴者の背中を支持する背もたれ部30を有する。第2内側面22は、第1内側面21と相対する位置に配置されている。すなわち、第2内側面22は、背もたれ部30に背中を当接させた入浴者の脚側の内側面である。入浴者は、背もたれ部30に背中を当接させた状態で、入浴を行うことができる。
ここで、本願明細書においては、背もたれ部30に背中を当接させた入浴者からみて上方を「上方」とし、下方を「下方」とし、前方を「前方」とし、後方を「後方」とし、右側を「右側方」とし、左側を「左側方」とする。
背もたれ部30は、例えば、水平方向に対して45°以下の傾斜角度を有する。これにより、浴槽10では、仰向けになるように上体を倒して入浴することができる。以下、本願明細書においては、仰向けになるように上体を倒して入浴する状態を「寝浴」と称す。浴槽10は、寝浴を可能とする浴槽に限ることなく、浴槽本体12内に座るような姿勢で入浴する浴槽でもよい。
浴槽本体12を上方から見た形状は、前後方向に長い楕円形状である。浴槽本体12を上方から見た形状は、楕円形状に限ることなく、長方形状、正方形状、又は円形状などでもよい。浴槽本体12の形状は、寝浴を可能とする任意の形状でよい。
浴槽10は、造作風呂などに用いられる単体浴槽でもよいし、ユニットバス(システムバス)に用いられる浴槽でもよい。浴槽10の設置方法は、据え置き型、埋め込み型、半埋め込み型などの任意の設置方法でよい。
底面部14は、第1底面41と、第2底面42と、支持部44と、を有する。第1底面41は、第1内側面21と第2内側面22との間に設けられている。第2底面42は、第1底面41と第2内側面22との間に設けられている。支持部44は、第1底面41と第2底面42との間に設けられている。
第1底面41は、寝浴状態の入浴者の臀部を載置するための面である。支持部44は、背もたれ部30及び第1底面41よりも背もたれ部30に背中を当接させた使用者の前方に設けられ、寝浴姿勢にある入浴者の臀部が前方へ移動することを抑制するために第1底面41よりも上方へ突出して形成されている。すなわち、支持部44は、寝浴姿勢にある入浴者の臀部を支持する。第2底面42は、支持部44よりも前方に設けられ、入浴者の脚を載置するために第1底面41よりも高い位置に設けられた載置部である。
このように、第2底面42を第1底面41よりも高い位置に設け、入浴者の脚の位置を臀部の位置よりも高くする。これにより、人間の筋骨格系の構造上最も身体にかかる負担が少ない姿勢(以下、「中立姿勢」と称す)に、寝浴状態の入浴者の姿勢を近づけることができる。寝浴状態の入浴者を脱力させ、リラクゼーション効果をより高めることができる。
浴槽本体12は、枕部50と、排水口51と、オーバーフロー口52と、噴射口53、54と、吸込み口55と、をさらに有する。
枕部50は、所定の範囲に亘って上下方向及び前後方向に移動可能に側面部16の背もたれ部30に設けられている。枕部50は、上方側に顔を向けた状態の入浴者の後頭部を載置可能な頭部載置面50aを有する。浴槽10では、背もたれ部30の傾斜に沿って枕部50を上下及び前後に移動させることにより、入浴者の身長などに合わせて頭部載置面50aの位置を調整することができる。枕部50の頭部載置面50aよりも下方の部分は、凸曲面状に湾曲している(図7参照)。この頭部載置面50aの下方の曲面部分は、入浴者の首の付け根にフィットし易い曲面形状に形成される。これにより、入浴者の頭部をより適切に支持し易くすることができる。
枕部50は、吐水口50bを有する。吐水口50bは、頭部載置面50aよりも下方に設けられている。吐水口50bは、頭部載置面50aに後頭部を載置した状態の入浴者の首部に向けて湯水を吐水する。これにより、例えば、寝浴状態の入浴者の首部を温めることができる。また、吐水口50bから吐水された湯水の一部は、入浴者の首部に当たるとともに、入浴者の肩や胸にも当たる。これにより、例えば、寝浴状態の入浴者の上半身をより温め易くすることができる。
吐水口50bは、左右方向に長いスリット状に形成されている。吐水口50bは、左右方向に延びた帯状の水流を吐水する。吐水口50bの左右方向の長さは、例えば、20cm〜30cm程度である。吐水口50bの左右方向の長さは、例えば、人間の首の平均的な幅よりも長い。これにより、寝浴状態の入浴者の首部に適切に湯水を当てることができるとともに、入浴者の肩や胸などにも湯水を当て易くすることができる。
排水口51は、底面部14の第1底面41に設けられている。すなわち、排水口51は、浴槽本体12の内部の空間SPにおいて最も低い位置に設けられる。排水口51には、例えば、排水口51を開閉する排水栓が設けられる。排水栓で排水口51を塞ぐことにより、浴槽本体12内に湯水を溜めることができる。そして、排水口51を開くことにより、浴槽本体12内に溜まった湯水を外部に排出することができる。
オーバーフロー口52は、第2内側面22の上部に設けられている。オーバーフロー口52の位置は、第2内側面22に限ることなく、側面部16の任意の位置でよい。オーバーフロー口52は、オーバーフロー管路60(図6参照)に連通し、浴槽本体12内(空間SP内)の湯水の水位が、オーバーフロー口52の高さに達した際に、湯水をオーバーフロー管路60に流す。オーバーフロー管路60は、オーバーフロー口52から流れ込んだ湯水を外部の排水管などに流す。これにより、浴槽本体12の外側に湯水が溢れてしまうことを抑制することができる。
このように、オーバーフロー口52の下端は、底面部14と側面部16とで囲まれた空間内に溜められる湯水の溢れ水位を規定する規定部として機能する。規定部は、オーバーフロー口52の下端に限ることなく、例えば、浴槽本体12のリム(浴槽本体12の上端)などでもよい。
噴射口53は、背もたれ部30の下部に設けられている。噴射口53は、寝浴状態の入浴者の腰などに向けて湯水を噴射する。これにより、入浴者の腰などに刺激を与え、リラクゼーション効果をより高めることができる。この例において、噴射口53は、入浴者の抗重力筋である脊柱起立筋の位置を狙って湯水を噴射する。また、この例において、浴槽本体12は、左右に並ぶ2つの噴射口53を有する。噴射口53の数は、2つに限ることなく、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
噴射口54は、第2底面42に設けられている。この例において、浴槽本体12は、左右に2つ、前後に3つ並ぶ、合計6つの噴射口54を有している。各噴射口54は、前方に向かうにつれ広がるような、ハの字状になるように配置されている。各噴射口54は、寝浴状態の入浴者の脚などに向けて気泡を噴射する。これにより、入浴者の脚などに刺激を与え、リラクゼーション効果をより高めることができる。噴射口54の数は、6つに限ることなく、任意の数でよい。
吸込み口55は、第2内側面22においてオーバーフロー口52よりも下方に設けられている。吸込み口55の位置は、オーバーフロー口52よりも下方の任意の位置でよい。吸込み口55は、浴槽本体12内に溜められた湯水の吸込みを行う。浴槽10は、吸込み口55から浴槽本体12内に溜められた湯水を吸込み、吸い込んだ湯水を枕部50の吐水口50bから吐水するとともに、噴射口53から噴射する。すなわち、浴槽10は、浴槽本体12内の湯水を循環させることにより、吐水口50bからの湯水の吐水、及び噴射口53からの湯水の噴射を行う。
図3は、実施形態に係る浴槽の一部を模式的に表す平面図である。
図4は、実施形態に係る浴槽の一部を模式的に表す断面図である。
図4は、図3のA1−A2線断面に相当する。
図3及び図4に表したように、第1内側面21は、右側肩当て部31、左側肩当て部32、右側手当て部33、左側手当て部34、右側溝部35、及び左側溝部36をさらに有する。
右側肩当て部31及び左側肩当て部32は、背もたれ部30の上部の左右両側に設けられている。右側肩当て部31及び左側肩当て部32は、寝浴状態の入浴者の肩を支持する。右側肩当て部31及び左側肩当て部32は、例えば、背もたれ部30と一体に形成される。従って、右側肩当て部31及び左側肩当て部32は、背もたれ部30と面一である。右側肩当て部31及び左側肩当て部32は、左右方向において背もたれ部30と面一である。ここで、「面一」とは、例えば、左右方向及び上下方向と平行な平面における断面において、2つの面の最も高い点と最も低い点との高さの差が、10mm以下の状態である。右側肩当て部31及び左側肩当て部32は、背もたれ部30よりも前方へ突出していてもよい。右側肩当て部31及び左側肩当て部32は、寝浴状態の入浴者の肩を支持可能な任意の形状でよい。
右側手当て部33及び左側手当て部34は、背もたれ部30の下部の左右両側に設けられている。右側手当て部33及び左側手当て部34は、寝浴状態の入浴者の手を載置可能とする。
図4に表したように、左側手当て部34は、前方に向かって下方に傾斜している。右側手当て部33の形状は、左側手当て部34の形状と左右対称な形状である。従って、右側手当て部33も左側手当て部34と同様に、前方に向かって下方に傾斜している。
右側溝部35及び左側溝部36は、背もたれ部30の上下方向における中央部の左右両側に設けられている。右側溝部35及び左側溝部36は、背もたれ部30に背中を当接させた入浴者の後方側へ背もたれ部30よりも凹んでいる。右側溝部35及び左側溝部36は、例えば、背もたれ部30の表面と直交する方向において、背もたれ部30よりも凹んでいる。換言すれば、右側溝部35及び左側溝部36は、背もたれ部30よりも背面側に凹んでいる。
これにより、右側溝部35及び左側溝部36は、入浴者が手で右側手当て部33及び左側手当て部34を押圧して上体を起こす際に、入浴者の肘が背もたれ部30よりも背面側に位置することを可能とする。換言すれば、右側溝部35及び左側溝部36は、入浴者が手で右側手当て部33及び左側手当て部34を押圧して上体を起こす際に、入浴者の肘を収納可能とする。
図4に表したように、左側溝部36の下部は、前方に向かって下方へ傾斜し、左側手当て部34と連続する。すなわち、左側手当て部34及び左側溝部36は、前方に向かって連続的に下方へ傾斜する傾斜面を形成する。右側溝部35の形状は、左側溝部36の形状と左右対称な形状である。右側溝部35の下部は、左側溝部36と同様に、前方に向かって下方へ傾斜し、右側手当て部33と連続する。
右側溝部35の下部及び左側溝部36の下部の水平方向に対する傾斜角度は、右側手当て部33及び左側手当て部34の水平方向に対する傾斜角度よりも大きい。右側手当て部33、左側手当て部34、右側溝部35、及び左側溝部36は、例えば、背面側に凹んだ凹曲面状である。従って、右側溝部35の傾斜角度は、右側手当て部33の傾斜角度よりも大きい。左側溝部36の傾斜角度は、左側手当て部34の傾斜角度よりも大きい。
右側手当て部33及び左側手当て部34の水平方向に対する傾斜角度は、例えば、10°以上である。右側溝部35の下部及び左側溝部36の下部の水平方向に対する傾斜角度は、例えば、10°以上である。右側手当て部33、左側手当て部34、右側溝部35、及び左側溝部36は、曲面状に限ることなく、直線的な傾斜面状でもよい。
右側溝部35及び左側溝部36の背もたれ部30からの深さDNは、例えば、2cm以上20cm以下である。これにより、上体を起こす際に、入浴者の肘を適切に収納することができるとともに、右側溝部35及び左側溝部36が過度に深くなって、右側溝部35及び左側溝部36の部分に手や肘を付きにくくなってしまうことを抑制することができる。例えば、入浴者の上体をより起こし易くさせることができる。
図4に表したように、第1底面41は、前後方向において実質的に水平である。第1底面41は、換言すれば、背もたれ部30と支持部44との間に設けられ、支持部44の下端に繋がり、前後方向において水平な水平部である。ここで、「水平」とは、例えば、面内の最も高い点と最も低い点とを結ぶ線分の角度が、10°以下の状態である。
支持部44は、前方に向かって上方に傾斜している。支持部44の水平方向に対する傾斜角度は、同じ高さにおける背もたれ部30の水平方向に対する傾斜角度よりも大きい。前述のように、背もたれ部30の水平方向に対する傾斜角度は、45°以下である。これに対して、支持部44の水平方向に対する傾斜角度は、例えば、45°よりも大きく90°よりも小さい。
背もたれ部30の下端30aは、水平部である第1底面41と繋がっている。背もたれ部30の水平方向に対する傾斜角度は、支持部44の上端44aと同じ高さの位置30bから第1底面41(下端30a)までの全体に亘って、同じ高さにおける支持部44の水平方向に対する傾斜角度よりも小さい。
この例において、第1底面41は、左右方向においても水平である(図3参照)。第1底面41は、実質的に水平面である。第1底面41の両側部の前後方向の長さL2は、第1底面41の中央部の前後方向の長さL1よりも長い。第1底面41は、例えば、排水口51に向かって下降傾斜する数度程度の傾斜を有していてもよい。第1底面41は、いわゆる排水勾配を有していてもよい。
また、この例では、入浴者の脚を載置するための載置部である第2底面42も、実質的に水平である。第2底面42は、前後方向及び左右方向において実質的に水平な水平面である。底面部14において、支持部44より前方側は、全体に亘って水平である。
図5は、実施形態に係る浴槽の一部を拡大して模式的に表す断面図である。
図5に表したように、背もたれ部30は、第1領域R1と、第2領域R2と、を有する。第2領域R2は、第1領域R1の上方に連続して設けられる。また、背もたれ部30は、屈曲線FLを有する。屈曲線FLは、第1領域R1と第2領域R2との境界部分に設けられている。第2領域R2は、第1領域R1に対して屈曲している。屈曲線FLは、背もたれ部30において傾斜角度が変化するように屈曲した部分であり、左右方向に線状に延びる。屈曲線FLは、例えば、支持部44の上端44aよりも高い位置に設けられる。ここで、「屈曲」とは、例えば、傾斜角度の異なる2つ面が、半径2cm以下の丸み又は面取りを介して接続されている状態である。
第2領域R2の水平方向に対する傾斜角度θ2は、第1領域R1の水平方向に対する傾斜角度θ1よりも大きい。第1領域R1の傾斜角度θ1は、例えば、10°以上45°以下である。第2領域R2の傾斜角度θ2は、例えば、傾斜角度θ1の角度に5°以上30°以下の角度を加えた角度である。
第1領域R1及び第2領域R2は、傾斜面状でもよいし、曲面状でもよい。また、背もたれ部30は、必ずしも屈曲していなくてもよい。背もたれ部30は、例えば、下方に凹む凹曲面状でもよい。これにより、屈曲させた場合と同様に、背もたれ部30の上方の部分の傾斜角度を、背もたれ部30の下方の部分の傾斜角度よりも大きくすることができる。背もたれ部30は、下方の部分と上方の部分とで傾斜角度の異なる任意の形状でよい。例えば、前後方向及び上下方向と平行な断面において、第1領域R1の下端と上端とを結ぶ線分の水平方向に対する傾斜角度が、第2領域R2の下端と上端とを結ぶ線分の水平方向に対する傾斜角度と異なっていればよい。
背もたれ部30は、急傾斜部38を有する。急傾斜部38は、背もたれ部30の下部中央と第1底面41との間に設けられる。急傾斜部38の水平方向に対する傾斜角度は、背もたれ部30の下部中央の水平方向に対する傾斜角度よりも大きい。第1領域R1の傾斜角度θ1は、例えば、第1領域R1において急傾斜部38よりも上方の部分の傾斜角度である。
枕部50は、第2領域R2に設けられている。枕部50は、第2領域R2内の所定の範囲MA1内において上下及び前後に移動する。換言すれば、枕部50は、所定の範囲MA1内において背もたれ部30の傾斜方向に移動する。図5では、枕部50が、最高位置にある状態を表している。枕部50が、背もたれ部30に沿って移動する距離MLは、例えば、155mm以上である。
屈曲線FLは、最低位置にした枕部50の下端よりも所定間隔DTを空けて下方に設けられている。所定間隔DTは、例えば、100mm以上である。所定間隔DTは、より詳しくは、背もたれ部30に沿う長さにおいて100mm以上である。所定間隔DTは、より好ましくは、背もたれ部30に沿う長さにおいて140mm以上200mm以下である。
また、図5に表したように、第2領域R2の傾斜角度を第1領域R1の傾斜角度よりも大きくすることにより、第1領域R1によって入浴者に寝浴感を与えつつ、第2領域R2によって入浴者の背中(背骨)を曲げさせることができる。これにより、背中が曲がった状態において無意識下で入浴者に働く「背中をまっすぐにしようとする背中のバネ力F」を利用して、入浴者は、背もたれ部30及び支持部44に身体を押し付ける力を得ることができる。
支持部44は、寝浴状態の入浴者の臀部を支持し、入浴者の身体が背もたれ部30の傾斜に沿って滑り落ちる方向と逆向きの力f1を入浴者の身体(臀部)に付与する。また、枕部50は、寝浴状態の入浴者の後頭部の下部BBH(頭部と首との付け根部分)を支持し、入浴者の身体が背もたれ部30の傾斜に沿って滑り落ちる方向と逆向きの力f2を入浴者の身体(頭部)に付与する。すなわち、枕部50には、滑り落ちる方向に対し、後頭部の下部BBHが引っ掛かる。
このように、支持部44で入浴者の臀部を支持しつつ、入浴者の背中を適切に曲げさせ、入浴者に無意識下に働く背中のバネ力Fを利用して、入浴者を背もたれ部30に押し付ける。これにより、入浴者を適切に脱力させることができ、よりリラックス状態で寝浴を行わせることができる。また、枕部50に入浴者の後頭部の下部BBHを引っ掛けさせることにより、入浴者をより脱力させ、さらにリラックスさせた状態で寝浴を行わせることができる。
枕部50の形状は、少なくとも入浴者の後頭部の下部BBHを載置可能(支持可能)な任意の形状でよい。頭部載置面50aは、上方側に顔を向けた状態の入浴者の後頭部の下部BBHを載置可能な任意の形状の面でよい。例えば、入浴者の後頭部の下部BBHが枕部50に載置された状態において、入浴者の後頭点MBP(後頭部の中の最も後ろ側へ出っ張った部分)は、背もたれ部30に当接していてもよい。
屈曲線FLは、なるべく入浴者の腰に近い位置で入浴者の背中を曲げさせる位置に配置することが好ましい。これにより、例えば、入浴者の胸に近い位置で入浴者の背中を曲げさせる場合と比べて、背中の曲げにともなう息苦しさなどを入浴者に感じさせてしまうことを抑制することができる。よりリラックスさせて入浴者に寝浴を行わせることができる。
図6は、実施形態に係る浴槽の一部を模式的に表す断面図である。
図6は、図3のB1−B2線断面に相当する。
図6に表したように、浴槽本体12内の水の溢れ水位OFLを規定する規定部であるオーバーフロー口52の下端は、枕部50を最低位置に配置した状態の頭部載置面50aの位置H1から120mm高い位置H2よりも下方に設けられている。位置H1は、より詳しくは、枕部50を最低位置に配置した状態の頭部載置面50aの下端の位置である。
世界的に見て身長が比較的低いアジア人女性の成人の後頭部(後頭点MBP)から口までの長さHLの5%tile値は、約195mmである。長さHLは、より詳しくは、前額面(人体を腹側と背側に分割する平面)に垂直な方向における後頭点MBPから口までの長さである。換言すれば、直立して正面を向いた状態の人間の後頭点MBPから口までの前後方向(水平方向)の長さである。寝浴の傾きや顎を引いた状態を考慮すると、頭部載置面50aから口元までの高さ方向の長さは、約120mmよりも小さくなることはない。従って、オーバーフロー口52は、枕部50を最低位置に配置した状態の頭部載置面50aの位置H1から120mm高い位置H2よりも下方に設ける。これにより、比較的小柄な体格の入浴者が枕部50の高さを最低位置にして浴槽本体12内に湯水を追加する場合などにも、浴槽本体12内の湯水の水位が入浴者の口元を超え、入浴者に不快感を与えてしまうことを抑制することができる。
オーバーフロー口52の下端(規定部)は、例えば、位置H1と位置H2との間に溢れ水位OFLを設定することが好ましい。これにより、例えば、比較的身長の高い入浴者が枕部50の高さを最高位置にして寝浴を行う場合などに、入浴者の肩や胸が水面から上方に出過ぎてしまうことを抑制することができる。従って、様々な体格の入浴者に対して快適に寝浴を行わせることができる。
図6に表したように、浴槽10は、オーバーフロー管路60と、ポンプ62と、循環配管64、66と、をさらに備える。
オーバーフロー管路60は、オーバーフロー口52に接続されている。また、オーバーフロー管路60は、排水口51の下方に接続される排水管68に接続可能である。オーバーフロー管路60は、オーバーフロー口52から流れ込んだ湯水を排水管68に流す。
ポンプ62は、循環配管64を介して吸込み口55に接続されるとともに、循環配管66を介して枕部50及び噴射口53に接続される。ポンプ62は、吸込み口55から吸い込んだ湯水を枕部50及び噴射口53に供給する。これにより、ポンプ62の駆動に応じて、枕部50の吐水口50bから湯水が吐水されるとともに、噴射口53から湯水が噴射される。ポンプ62は、換言すれば、浴槽本体12の空間SP内の湯水を循環させるためのポンプである。循環配管64、66は、ポンプ62に接続され、循環させる湯水を通す。
ポンプ62は、例えば、第2底面42の下方の空間に設けられる。このように、第2底面42の下方という背もたれ部30から離れた位置にポンプ62を配置することにより、入浴者にポンプ62の動作音を聞こえ難くし、ポンプ62の動作音によるリラックス効果の低下を抑制することができる。また、第2底面42の下方の空間にポンプ62を配置することにより、浴槽本体12内の前後左右の長さを小さくする必要がなく、浴槽本体12内の広さを確保することもできる。
この例では、1つのポンプ62の駆動によって枕部50の吐水口50b及び噴射口53のそれぞれから湯水が吐出されるようにしている。例えば、吐水口50bと噴射口53との分岐部分に三方弁などを設けることにより、吐水口50b及び噴射口53の一方のみに選択的に湯水を供給できるようにしてもよい。あるいは、吐水口50b及び噴射口53のそれぞれに個別にポンプを設けることにより、吐水口50b及び噴射口53の一方のみから湯水が吐出されるようにしてもよい。
図7は、実施形態に係る浴槽の枕部の部分を拡大して模式的に表す断面図である。
図7に表したように、浴槽10は、支持部80と、軸部82と、吐水部84と、をさらに備える。浴槽10は、例えば、上下方向及び前後方向に並べて配置された2つの支持部80を有する。支持部80は、浴槽本体12の背もたれ部30に設けられている。支持部80は、背もたれ部30において、オーバーフロー口52によって規定される溢れ水位OFLよりも上方に配置される。
図8(a)〜図8(c)は、実施形態に係る浴槽の枕部の部分を拡大して模式的に表す断面図である。
図8(a)は、図7のC1−C2線断面に相当する。
図8(b)は、図8(a)のD1−D2線断面に相当する。
図8(a)及び図8(b)に表したように、支持部80は、突出部80aと、被収納部80bと、ネジ80cと、を有する。突出部80aは、背もたれ部30から突出する。突出部80aは、例えば、背もたれ部30に対して垂直な方向に突出する。突出部80aは、略円筒状である。突出部80aは、ネジ80cを介して浴槽本体12に取り付けられる。すなわち、支持部80は、浴槽本体12にネジ止めされる。支持部80の取付方法は、上記に限ることなく、浴槽本体12に取り付け可能な任意の方法でよい。突出部80aの形状は、円筒状に限ることなく、任意の形状でよい。
被収納部80bは、浴槽本体12と所定の間隔を空けて突出部80aの上部に取り付けられている。被収納部80bは、突出部80aの先端側から少なくとも左右方向に突出する。被収納部80bを上方から見た形状は、例えば、円形状である。従って、この例では、被収納部80bが、突出部80aの先端側から左右方向及び前後方向に突出する。被収納部80bの形状は、突出部80aの先端側から少なくとも左右方向に突出する任意の形状でよい。
被収納部80bの左右の端部は、弾性を有している。被収納部80bには、例えば、ゴムなどの弾性材料が用いられる。この場合には、被収納部80bの略全体が、弾性を有する。
軸部82は、上下方向及び前後方向に延び、上下方向及び前後方向の一部の範囲のみを支持部80に上下方向に移動可能に支持されることにより、上下方向及び前後方向の所定の範囲MA2(図9参照)に亘って背もたれ部30に沿って移動する。すなわち、軸部82は、背もたれ部30の傾斜方向に移動する。
軸部82は、筒部82aと、開口部82bと、を有する。筒部82aは、突出部80aの少なくとも一部を収納可能にできるよう、筒状に設けられる。筒部82aは、支持部80の被収納部80bを収納可能な筒状である。被収納部80bは、換言すれば、突出部80aにおける筒部82aに収納される部分である。筒部82aは、例えば、四角筒状である。筒部82aの形状は、被収納部80bの形状などに対応した任意の形状でよい。
開口部82bは、筒部82aの背もたれ部30側に設けられる。開口部82bは、上下方向及び前後方向に延びる。開口部82bは、換言すれば、筒部82aを下方に開口させる。開口部82bは、筒部82aが被収納部80bを収納した状態で、突出部80aを挿通可能とする。これにより、開口部82bは、筒部82aを背もたれ部30に沿って上下方向及び前後方向に移動可能とする。
開口部82bの横幅(左右方向の幅)は、突出部80aの横幅よりも大きく、被収納部80bの横幅よりも小さい。これにより、被収納部80bが筒部82aに収納可能になるとともに、突出部80aが開口部82bに挿通可能となる。筒部82a内に収納された被収納部80bは、左右方向において筒部82aと係合する。これにより、軸部82の左右方向への移動が規制される。また、筒部82aの一部は、被収納部80bと背もたれ部30との間に入り込む。これにより、軸部82の背もたれ部30に対して垂直な方向への移動が規制される。すなわち、背もたれ部30に対して垂直な方向において、軸部82が支持部80から抜けてしまうことが抑制される。従って、軸部82は、上下方向及び前後方向(背もたれ部30の傾斜方向)のみに移動可能となる。
筒部82a(軸部82)の左右の内側面S1、S2は、平面状に形成されている。支持部80は、被収納部80bの左右の端部E1、E2で、筒部82aの平面状に形成された左右の内側面S1、S2を押圧することにより、軸部82を上下方向及び前後方向に摺動可能に支持する。筒部82aの左右の内側面S1、S2の幅は、被収納部80bの左右の端部E1、E2の幅(被収納部80bの径)よりも僅かに狭い。筒部82aは、内部の空間に被収納部80bを収納し、被収納部80bを僅かに弾性変形させる。これにより、被収納部80bの左右の端部E1、E2で、筒部82aの左右の内側面S1、S2を押圧することが可能となる。
被収納部80bの背もたれ部30に対して垂直な方向の長さL11は、筒部82aの内部の背もたれ部30に対して垂直な方向の長さL12よりも短い。これにより、軸部82は、筒部82a内に被収納部80bを収納した状態において、長さL11と長さL12との差分の分だけ、背もたれ部30に対して垂直な方向に移動することができる。すなわち、支持部80は、上下方向及び前後方向に移動可能に軸部82を支持するとともに、背もたれ部30に対して垂直な方向にも移動可能に軸部82を支持する。
この例では、2つの支持部80が、前後方向に並べて設けられている。支持部80の数は、1つでもよいし、3つ以上でもよい。支持部80の数は、軸部82を移動可能に支持することができる任意の数でよい。支持部80の形状及び軸部82の形状は、上記に限ることなく、軸部82を移動させることができる任意の形状でよい。例えば、図8(c)に表したように、軸部82の左右の外側面S3、S4を平面状に形成し、平面状に形成された左右の外側面S3、S4を押圧することにより、軸部82を摺動可能に支持してもよい。すなわち、軸部82を挟んで摺動可能に支持してもよい。この場合、1つの支持部80で軸部82を挟んでもよいし、図8(c)に表したように、一対の支持部80で軸部82を挟んでもよい。
図9(a)及び図9(b)は、実施形態に係る浴槽の枕部の部分を拡大して模式的に表す断面図である。
図7、図9(a)及び図9(b)に表したように、枕部50は、軸部82に取り付けられる。これにより、枕部50は、図9(a)に表した最高位置と、図9(b)に表した最低位置と、の間で、背もたれ部30の傾斜に沿って前後方向及び上下方向に移動する。また、枕部50及び軸部82は、各被収納部80bと軸部82との間に生じる摩擦力により、最高位置と最低位置との間の任意の位置に止めることができる。
支持部80による軸部82の摺動可能な支持は、摩擦力を利用した構成に限らない。例えば、支持部80の構成は、ラッチ機構やギア機構などを用いて軸部82と係合し、力を加えて係合状態(係合する位置)を変化させながら軸部82を摺動させることにより、最高位置と最低位置との間の任意の位置に軸部82を止める構成などでもよい。このように、支持部80は、係合取り付けによって軸部82を摺動可能に支持するものなどでもよい。
吐水部84は、入浴者の首部に吐水を行う。吐水部84は、枕部50の頭部載置面50aよりも下方に設けられる。吐水部84は、軸部82に取り付けられる。これにより、吐水部84は、枕部50の移動に追従する。吐水部84は、背もたれ部30の傾斜方向に移動する。すなわち、吐水部84は、背もたれ部30に沿って所定の範囲MA3に亘って上下に移動可能に設けられている。吐水部84は、循環配管66に接続される。また、吐水部84は、枕部50の吐水口50bに近接して配置される。これにより、吐水部84は、循環配管66から供給された湯水を枕部50の吐水口50bから吐出する。
枕部50は、中空のドーム状であり、軸部82に取り付けられた状態において、各支持部80、軸部82、及び吐水部84を覆い隠す。枕部50は、各支持部80、軸部82、及び吐水部84を覆った状態で、軸部82とともに背もたれ部30に沿って所定の範囲MA1に亘って上下方向及び前後方向に移動する。
枕部50は、例えば、前後方向、左右方向、及び上方向(背もたれ部30に対して垂直な方向)において、各支持部80、軸部82、及び吐水部84を覆う。すなわち、枕部50は、各支持部80、軸部82、及び吐水部84が入浴者などに視認されてしまうことを抑制する。これにより、浴槽10の美観を向上させることができる。
図10は、実施形態に係る浴槽の一部を模式的に表す斜視図である。
図10では、枕部50、軸部82、及び吐水部84を斜め下方から見た状態を模式的に表している。
図10に表したように、中空状の枕部50の内部には、枕部50を軸部82に着脱可能に取り付けるための一対の取付部材50c、50dが設けられている。
取付部材50c、50dは、上下方向(前後方向)に並べて設けられている。取付部材50cは、枕部50内の上端側(後端側)に設けられている。取付部材50dは、枕部50内の下端側(前端側)に設けられている。取付部材50c、50dは、クリップ状に形成されている。取付部材50c、50dは、軸部82の両側面を挟むことにより、軸部82に対する枕部50の左右方向への動きを規制する。そして、取付部材50c、50dは、取付部材50cと取付部材50dとの間に軸部82の下端(前端)と上端(後端)とを挟むことにより、軸部82に対する枕部50の上下方向(前後方向)への動きを規制する。軸部82は、換言すれば、枕部50の裏面側に設けられ、枕部の上端と下端との間の範囲内で上下方向に延びる細長状である。
このように、取付部材50c、50dで軸部82を挟むことにより、軸部82に対する枕部50の前後左右への動きが規制され、枕部50が軸部82に取り付けられる。枕部50の軸部82への取付方法は、上記に限ることなく、軸部82に着脱可能に取り付けることができる任意の取付方法でよい。
吐水部84は、左右方向に延びた細長状である。吐水部84の左右方向の長さは、枕部50の吐水口50bの左右方向の長さに対応している。吐水部84は、吐水口50bを介して左右方向に延びた帯状の水流を吐水する。
図11(a)及び図11(b)は、実施形態に係る浴槽の一部を模式的に表す斜視図である。
図11(a)及び図11(b)では、枕部50を軸部82から取り外した状態を表している。また、図11(a)は、軸部82を最高位置にした状態を表し、図11(b)は、軸部82を最低位置にした状態を表している。
図11(a)及び図11(b)に表したように、浴槽10は、一対の給水部86、88と、一対の供給配管90、92と、をさらに備える。各給水部86、88は、背もたれ部30に設けられている。各給水部86、88は、軸部82を挟むように左右方向に並べて配置されている。各給水部86、88は、枕部50の移動範囲の全ての範囲において、枕部50に覆われる位置に設けられる。
各給水部86、88は、浴槽本体12を貫通するように設けられ、浴槽本体12の裏面側において循環配管66と接続される(図7、図9参照)。従って、図11(a)及び図11(b)において仮想線VL1で表したように、吐水部84を上下に移動させた場合にも、給水部86の位置は、変化しない。同様に、仮想線VL2で表したように、吐水部84を上下に移動させた場合にも、給水部88の位置は、変化しない。循環配管66は、途中で二股に別れ、各給水部86、88と接続される。循環配管66は、ポンプ62から供給された湯水を、各給水部86、88のそれぞれに供給する。
各供給配管90、92は、吐水部84と各給水部86、88とを接続し、各給水部86、88から供給される湯水を吐水部84に供給する。各供給配管90、92は、吐水部84の移動に応じて形状が変化する可撓性を有する。これにより、吐水部84を上下に移動可能とした場合にも、吐水部84に適切に湯水を供給することができる。各供給配管90、92には、例えば、ゴムチューブや金属製のフレキシブルホースなどが用いられる。
吐水部84は、左右方向に延びた横長状であり、左右方向の両端に各供給配管90、92との接続部84a、84bを有する。接続部84aは、吐水部84の一端から右方向に延びている。接続部84bは、吐水部84の他端から左方向に延びている。このように、各接続部84a、84bは、吐水部84の左右方向の両端から左右方向に延びる。
供給配管90は、給水部86と接続部84aとを接続する。供給配管92は、給水部88と接続部84bとを接続する。これにより、循環配管66から供給された湯水が、給水部86、88及び供給配管90、92を介して吐水部84に供給される。
接続部84a、84bは、必ずしも吐水部84の両端に設ける必要はなく、吐水部84の左右方向の少なくとも一端に設けられていればよい。吐水部84が1つの接続部のみを有する場合、給水部及び供給配管も1つでよい。
枕部50は、背もたれ部30の前方側に設けられ、吐水部84が所定の範囲MA3内のどの高さにあっても、各供給配管90、92に前方からの荷重が作用しないように、供給配管90、92を覆う。すなわち、この例では、枕部50が、供給配管90、92を覆うカバーとしても機能する。従って、この例では、カバーである枕部50が、吐水部84の移動に追従して上下に移動する。
供給配管90、92を覆うカバーは、枕部50とは別に設けてもよい。カバーは、必ずしも入浴者の頭部を支持する枕としての機能を有していなくてもよい。また、カバーは、必ずしも吐水部84の移動に追従しなくてもよい。カバーは、吐水部84が所定の範囲MA3内のどの高さにあっても、各供給配管90、92に前方からの荷重が作用しないように、供給配管90、92を覆うことができる任意の構成でよい。
図12は、実施形態に係る浴槽の吐水部を模式的に表す斜視図である。
図13は、実施形態に係る浴槽の吐水部を模式的に表す断面図である。
図12及び図13に表したように、吐水部84は、筐体部100と、整流板102と、通水経路形成部材104と、パッキン106と、蓋部108と、を有する。
筐体部100は、上方を開口させた略矩形の箱状である。接続部84a、84bは、筐体部100の両端に設けられている。接続部84a、84bから供給された湯水は、筐体部100内に溜められる。
蓋部108は、筐体部100の上方に取り付けられ、筐体部100の上方の開口を塞ぐ。また、蓋部108は、筐体部100の上方前方に隙間を形成する。これにより、筐体部100及び蓋部108は、左右方向に延びたスリット状の吐水口84cを吐水部84の前方に形成する。接続部84a、84bから供給された湯水は、吐水口84cから前方に向かって吐出される。
吐水口84cは、左右方向に延びた幅広な吐水を行う。ここで、「幅広な吐水」とは、例えば、吐水口84cから吐水される水流の左右方向の長さが、吐水口84cから吐水される水流の上下方向の長さよりも長い吐水形態である。換言すれば、吐水口84cの左右方向の長さが、吐水口84cの上下方向の長さよりも長い吐水形態である。吐水口84cの左右方向の長さは、例えば、吐水口84cの上下方向の長さの2倍以上である。吐水口84cの左右方向の長さは、例えば、20cm〜30cm程度である。吐水口84cの左右方向の長さは、例えば、人間の首の平均的な幅よりも長い。これにより、入浴者の首や肩などに適切に湯水を当てることができる。
パッキン106は、筐体部100と蓋部108との間に設けられる。パッキン106は、ゴムなどの弾性材料からなり、筐体部100と蓋部108との間から吐水口84c以外の方向に水が漏れ出てしまうことを抑制する。
左右方向に長い筐体部100に対して、左右両側から湯水を供給することにより、吐水口84cから吐出される水に、左右方向において偏りが生じてしまうことを抑制することができる。例えば、筐体部100から上方に溢れる水に、左右方向において偏りが生じてしまうことを抑制することができる。従って、きれいな帯状の水流を吐水口84cから吐水することができる。
整流板102は、左右方向に並ぶ複数の開口102aを有する。整流板102は、筐体部100内の上部に設けられる。整流板102は、筐体部100内に溜まった湯水を各開口102aに通すことにより、左右方向において筐体部100から均等に水が溢れるように、水の流れを整流する。これにより、吐水口84cから吐出される水に、左右方向において偏りが生じてしまうことを、より抑制することができる。
通水経路形成部材104は、筐体部100内において整流板102と蓋部108との間に設けられる。通水経路形成部材104は、整流板102の各開口102aを通過した水の上方への流れを遮る。通水経路形成部材104は、整流板102の各開口102aを通過した水が、一度後方へ向かい、通水経路形成部材104の端部で折り返して前方に向かうことにより、吐水口84cに流れる通水経路を形成する。
上記のような通水経路を形成することにより、整流板102の各開口102aを通過した水が、上方に向かって直接的に吐水口84cに流れる構成と比べて、吐水口84cから吐出される水に、左右方向において偏りが生じてしまうことを、より抑制することができる。吐水口84cから吐水される水流を、よりきれいな帯状にすることができる。
図14は、実施形態に係る浴槽の吐水部を模式的に表す正面図である。
図14に表したように、吐水口84cの両端部の上下方向の幅W2は、吐水口84cの中央部の上下方向の幅W1よりも広い。これにより、吐水部84は、吐水口84cの両端部から吐水される湯水の流量を、吐水口84cの中央部から吐水される湯水の流量よりも多くする。これにより、吐水口84cから吐出された帯状の水流が、下方に流れるに従って中央に集まってきてしまうことを抑制することができる。従って、吐水口84cから吐水される水流を、よりきれいな帯状にすることができる。
図15は、実施形態に係る浴槽の使用状態の一例を模式的に表す斜視図である。
図15に表したように、枕部50の吐水口50bを介して吐水される吐水部84の帯状の湯水は、入浴者の首部に当たる。また、吐水部84から吐水される帯状の湯水の一部は、入浴者の首部を介して入浴者の胸に流れるとともに、入浴者の身体及び背もたれ部30を介して入浴者の肩にも流れる。
これにより、例えば、身長の高い入浴者が枕部50を最高位置にして寝浴を行い、肩や胸などが水面よりも上方に出てしまう場合などにも、入浴者の上半身を適切に温めることができる。
図16は、実施形態に係る浴槽を模式的に表す底面図である。
なお、図16では、便宜的に浴槽本体12の一部を切断した状態で図示している。
図16に表したように、浴槽10は、排出管120(排出部)と、開閉弁122と、ポンプ124と、給気管126と、分配管128と、ホース130と、をさらに備える。
排出管120、開閉弁122、ポンプ124、給気管126、分配管128、及びホース130は、浴槽本体12の底面部14よりも下方の空間に設けられる。換言すれば、排出管120、開閉弁122、ポンプ124、給気管126、分配管128、及びホース130は、底面部14に裏面側に設けられる。これらの各部は、底面部14及び側面部16によって上方を覆われるとともに、浴槽本体12の一部によって側方を覆われる。これにより、これらの各部が入浴者などに視認されてしまうことを抑制することができる。
排出管120は、循環配管66を介してポンプ62と接続されている。排出管120は、例えば、ポンプ62に対して着脱可能に接続される。排出管120は、浴槽本体12内の湯水の排出の際などに、ポンプ62内の残水を外部に排出するための配管である。排出管120は、排水口51の下方に接続される排水管68に接続可能である。すなわち、排出管120は、ポンプ62内の残水を排水管68に排出する。ポンプ62内の残水を外部に排出する構成は、ポンプ62に接続される排出管120に限らない。ポンプ62内の残水を外部に排出する排出部は、ポンプ62内の残水を外部に排出可能な任意の構成でよい。排出部は、ポンプ62自体に設けられていてもよい。また、排出管120(循環配管66)などの排出部は、ポンプ62の下端側に接続される。あるいは、排出部は、ポンプ62の下端側に設けられる。これにより、ポンプ62内の残水を適切に外部に排出することができる。
開閉弁122は、排出管120に設けられている。開閉弁122は、排出管120を開閉する。より詳しくは、開閉弁122は、排出管120において開閉弁122よりも下流側への湯水の流れを許容する開状態と、排出管120において開閉弁122よりも下流側への湯水の流れを実質的に遮断する閉状態と、を切り替える。開閉弁122を開状態とすることにより、ポンプ62内の残水を排水管68に排出することができる。そして、開閉弁122を閉状態とすることにより、ポンプ62から噴射口53や吐水部84に供給する湯水が、排水管68に流れてしまうことを抑制することができる。
開閉弁122は、例えば、電気的な信号に基づいて開状態と閉状態とを自動的に切り替える電磁弁である。開閉弁122は、電磁弁に限ることなく、開状態と閉状態とを手動で切り替える弁でもよい。
ポンプ124は、給気管126に接続されている。ポンプ124は、周囲の空気を吸引し、吸引した空気を給気管126に供給する。給気管126は、分配管128に接続されている。給気管126は、ポンプ124から送られた空気を、分配管128に供給する。
分配管128は、ホース130に接続されている。浴槽10は、各噴射口54に対応した複数のホース130を有する。この例において、浴槽10は、6つの噴射口54に対応した6本のホース130を有する。分配管128は、各ホース130に接続されている。分配管128は、給気管126から送られた空気を各ホース130に分配する。
各ホース130の一端は、分配管128に接続されている。各ホース130の他端は、裏面側から各噴射口54に接続されている。各ホース130は、例えば、可撓性を有する管路であり、分配管128から送られた空気を各噴射口54に供給する。
これにより、浴槽本体12内に湯水を溜めた状態でポンプ124を駆動することにより、給気管126、分配管128、及び各ホース130を介して各噴射口54に空気が供給され、各噴射口54から浴槽本体12内の湯水に気泡が噴射される。
図17は、実施形態に係る浴槽を模式的に表す断面図である。
図17に表したように、ポンプ62及びポンプ124は、第2底面42の下方の空間に配置されている。ポンプ62の下部、及びポンプ124の下部は、第1底面41よりも下方に配置されている。
分配管128は、溢れ水位OFLよりも上方に配置される。換言すれば、分配管128は、オーバーフロー口52の下端よりも上方に配置される。これにより、例えば、噴射口54からホース130内に湯水が浸入してしまった場合などに、浸入した湯水がポンプ124に到達してしまうことを抑制することができる。すなわち、ポンプ124内に湯水が浸入して、ポンプ124が動作不良を起こしてしまうことを抑制することができる。
図18(a)及び図18(b)は、実施形態に係る浴槽を模式的に表す説明図である。 図18(a)及び図18(b)に表したように、浴槽10は、第1水位検知部131と、第2水位検知部132と、制御部134と、をさらに備える。
第1水位検知部131及び第2水位検知部132は、浴槽本体12の空間SP内の水位WLを検知する。第1水位検知部131は、例えば、空間SP内の水位WLが第1水位WL1以上か否かを検知する。第1水位WL1は、例えば、オーバーフロー口52と吸込み口55との間に設定される。すなわち、第1水位検知部131は、空間SP内の水位WLが吸込み口55よりも上方にあるか否かを検知する。
第2水位検知部132は、例えば、空間SP内の水位WLが第1水位WL1よりも低い第2水位WL2以上か否かを検知する。第2水位WL2は、例えば、排水口51の1cm〜10cm程度上方に設定される。すなわち、第2水位検知部132は、空間SP内の湯水の排水を検知する。
第1水位検知部131及び第2水位検知部132は、浴槽本体12の裏面側に配置されている。第1水位検知部131及び第2水位検知部132には、例えば、静電容量の変化によって水位を検知する静電容量式のセンサが用いられる。これにより、例えば、第1水位検知部131及び第2水位検知部132を浴槽本体12の裏面側に配置することができる。例えば、浴槽10のデザイン性の低下を招くことなく、空間SP内の水位WLを適切に検知することができる。第1水位検知部131及び第2水位検知部132は、静電容量式のセンサに限ることなく、空間SP内の水位を検知できる任意のセンサでよい。
制御部134は、第1水位検知部131及び第2水位検知部132と接続されるとともに、ポンプ62及び開閉弁122と接続されている。制御部134は、第1水位検知部131及び第2水位検知部132の検知結果に基づいて、ポンプ62及び開閉弁122の動作を制御する。
制御部134は、操作部136と接続されている。また、図示は省略するが、制御部134は、ポンプ124と接続されている。操作部136は、例えば、浴槽本体12や浴室の壁面などに取り付けて使用される。操作部136は、スイッチやセンサなどを有し、入浴者などの操作に応じて、制御部134に種々の操作指示を入力可能である。操作部136は、いわゆるリモコンである。制御部134と操作部136との間の電気的な通信は、有線でもよいし、無線を介して行ってもよい。
制御部134は、操作部136から入力された操作指示に応じて、ポンプ62及びポンプ124の駆動及び駆動の停止を制御する。これにより、入浴者などによる操作部136の操作に応じて、噴射口53及び吐水部84からの湯水の吐水及び止水が切り替えられるとともに、及び各噴射口54からの気泡の噴射及び噴射の停止が切り替えられる。
制御部134は、操作部136からポンプ62の駆動を指示された際に、第1水位検知部131の検知結果を参照する。制御部134は、空間SP内の水位WLが第1水位WL1以上であることを第1水位検知部131が検知している場合に、操作部136からの操作指示に応じてポンプ62を駆動する。一方、制御部134は、空間SP内の水位WLが第1水位WL1未満であることを第1水位検知部131が検知している場合、ポンプ62を駆動しないようにする。すなわち、制御部134は、空間SP内の水位WLが吸込み口55以上である場合にのみ、ポンプ62の駆動を許容し、空間SP内の湯水を循環させる。そして、制御部134は、空間SP内の水位WLが第1水位WL1未満である場合には、ポンプ62の駆動を禁止する。
制御部134は、第2水位検知部132の検知結果に基づいて開閉弁122の開閉を制御する。制御部134は、空間SP内の水位WLが第2水位WL2以下となった場合に、開閉弁122を開く。また、制御部134は、開閉弁122を開いた後、所定時間経過した後に開閉弁122を閉じる。制御部134は、例えば、空間SP内の水位WLが第2水位WL2以上となった場合に、開閉弁122を閉じてもよい。
図18(a)に表したように、空間SP内の水位WLが第1水位WL1以上であり、ポンプ62を駆動して空間SP内の湯水を循環させる場合には、開閉弁122が閉じている。これにより、空間SP内の湯水を循環させる際に、空間SP内の湯水が排出管120を介して排水管68に漏れ出てしまうことを抑制することができる。
前述のように、ポンプ62の下部は、第1底面41よりも下方に配置されている。従って、排出管120及び開閉弁122を有しない場合、空間SP内の湯水を排水口51から排水した後にも、ポンプ62の内部や循環配管64、66の内部に湯水が残ってしまう可能性ある。
このため、制御部134は、空間SP内の水位WLが第2水位WL2以下となった場合に、開閉弁122を開く。これにより、図18(b)に表したように、空間SP内の湯水の排水の際に、ポンプ62内や循環配管64、66内の残水を排出管120を介して排水管68に排水することができる。
排出管120の出口(ポンプ62と反対側の端部)は、ポンプ62よりも下方に配置されることが好ましい。換言すれば、排出管120は、ポンプ62よりも下方において排水管68に接続されることが好ましい。これにより、ポンプ62内や循環配管64、66内の残水を、より確実に排水することができる。
また、ポンプ62には、例えば、渦巻きポンプやプロペラポンプなど、駆動していない状態において吸水側と吐水側とが連通したポンプが用いられる。これにより、開閉弁122を開くことにより、ポンプ62内や循環配管64、66内の残水を排水することができる。
図19は、実施形態に係る浴槽の制御部の動作の一例を模式的に表すフローチャートである。
図19は、制御部134による開閉弁122の制御の一例を表している。
空間SP内の水位WLが第2水位WL2以上である場合、開閉弁122は、閉状態になっている。すなわち、浴槽本体12内に湯水が溜められている場合、開閉弁122は、閉状態になっている。
制御部134は、第2水位検知部132の検知結果を基に、空間SP内の水位WLが第2水位WL2以下か否かを判定する(図19のステップS01)。制御部134は、空間SP内の水位WLが第2水位WL2よりも高い場合(第2水位検知部132が湯水を検知している場合)、開閉弁122の閉状態を維持する。
制御部134は、空間SP内の水位WLが第2水位WL2以下であると判定した場合、所定時間が経過したか否かを判定する(図19のステップS02)。所定時間は、例えば、1分である。所定時間は、例えば、水面が第2水位WL2付近にあって、第2水位検知部132の検知状態と非検知状態とが短時間で交互に切り替わってしまうことを抑制可能な任意の時間でよい。
制御部134は、所定時間が経過したと判定した場合、開閉弁122を閉状態から開状態に切り替える(図19のステップS03)。これにより、空間SP内の湯水の排水とともに、ポンプ62内や循環配管64、66内の残水が、排出管120を介して排水管68に排水される。
制御部134は、開閉弁122を閉状態から開状態に切り替えた後、所定時間が経過したか否かを判定する(図19のステップS04)。所定時間は、例えば、1分である。所定時間は、例えば、ポンプ62内や循環配管64、66内の残水を適切に排水可能な任意の時間でよい。
制御部134は、所定時間の経過の後、開閉弁122を再び開状態から閉状態に切り替える(図19のステップS05)。これにより、開閉弁122の閉め忘れを抑制することができる。例えば、次に浴槽本体12内に湯水を溜める際に、排出管120を介して湯水が排水管68に流れ、無駄に湯水を消費してしまうことを抑制することができる。
制御部134は、ステップS04の処理において所定時間が経過していないと判定した場合、続いて、第2水位検知部132の検知結果を基に、空間SP内の水位WLが第2水位WL2以下か否かを判定する(図19のステップS06)。
制御部134は、空間SP内の水位WLが第2水位WL2以下である場合、上記のように、所定時間の経過の後に、開閉弁122を閉状態に切り替える。一方、制御部134は、空間SP内の水位WLが第2水位WL2よりも高いと判定した場合、所定時間の経過を待たずに即座に開閉弁122を閉状態に切り替える(図19のステップS07)。
制御部134は、開閉弁122を開状態から閉状態に切り替えた後、ステップS01の処理に戻り、以下、上記の各処理を繰り返し実行する。このように、制御部134は、開閉弁122を開状態にした場合、所定時間の経過もしくは第2水位WL2の検知に応答して開閉弁122を閉状態に切り替える。従って、次回の水溜めの際などには、開閉弁122が閉状態になっている。
図20(a)〜図20(l)は、実施形態に係る浴槽の出浴の手順の一例を模式的に表す説明図である。
図20(a)〜図20(l)は、図4に表した状態と実質的に同じである。従って、図20(a)〜図20(l)では、便宜的に、詳細な符号の記載を省略している。
図20(a)に表したように、背もたれ部30に背中を当接させ、支持部44に臀部を支持させ、第2底面42に脚を載置して寝浴を行った状態から出浴する場合には、まず、図20(b)に表したように、両手を右側手当て部33及び左側手当て部34に当てる。
次に、図20(c)〜図20(e)に表したように、両手で右側手当て部33及び左側手当て部34を押圧しながら上体を起こす。この際、浴槽10では、右側溝部35及び左側溝部36に両肘を収納することにより、両腋の開きを抑えつつ、肘を背面側に向けて屈曲させた状態で右側手当て部33及び左側手当て部34を手で押圧することができ、この押圧による力によって、入浴者は上体を容易に起こすことができる。
次に、図20(f)に表したように、臀部を水平な第1底面41に沿って支持部44から背当て部30に向けて後方にスライド移動させる。次に、図20(g)に表したように、片脚又は両脚を支持部44に載せる。次に、図20(h)に表したように、支持部44に載せた脚と右側手当て部33及び左側手当て部34に当てた両手とに力を加えることにより、臀部をさらに後方にスライド移動させ、臀部を背もたれ部30の下部(第1領域R1)に載せる。
次に、図20(i)及び図20(j)に表したように、両脚を片脚ずつ水平な第1底面41の上に載せる。すなわち、第1底面41の上にしゃがんだ体勢となる。そして、図20(k)及び図20(l)に表したように、両脚に力を加えることにより、第1底面41の上に立ち上がり、浴槽10から出浴する。
また、浴槽10への入出浴の際には、第1底面41よりも高く、かつ水平な第2底面42に脚を載せることができる。これにより、浴槽本体12を跨ぎ易くすることができ、浴槽10に対して、より入出浴し易くすることができる。
図21は、参考の浴槽の一部を模式的に表す平面図である。
図21では、背もたれ部に右側溝部35及び左側溝部36などが設けられておらず、背もたれ部を一様な傾斜面とした参考の浴槽BTを表している。このような浴槽BTでは、寝浴の状態から背もたれ部に手を押し当てて上体を起こす場合に、図21に表したように、肘が背もたれ部と干渉しないように腋を大きく開く必要がある。しかしながら、腋を大きく開くと手に大きな力をかけ難くなるため、上体を起こすことが難しい場合がある。
人間の筋骨格系の構造上、両手を対象に押し当てて力を付与させる際には、両腋を閉じた状態で行うことが、力を付与しやすいことから好ましい。また、人間の筋骨格系の構造上、両腕の力を最大限発揮させるためには、肘を屈曲させた状態で両手を対象に押し当てて力を付与させることが好ましい。
本実施形態に係る浴槽10では、右側溝部35及び左側溝部36を設けたことにより、両腋の開きを極力抑えつつ、肘を背面側に向けて屈曲させた状態で右側手当て部及び左側手当て部を手で押圧することができる(図3、図20(c)参照)。そして、この押圧による力によって、入浴者は上体を容易に起こすことができる。また、寝浴状態において入浴者の手が配設されるであろう右側手当て部33及び左側手当て部34をそのまま押圧して上体を起こすことになる。したがって、浴槽10のリムを把持して上体を起こす場合と比べ、右側手当て部33及び左側手当て部34という入浴者の身体に近い位置に、起き上がりのための押圧する力の力点が設けられることで、より少ない押圧力で、入浴者に上体を起こさせることができる。
リムなどを把持する上体起こしの方式と異なり、湯水が溜まる浴槽本体12内の右側手当て部33及び左側手当て部34を手で押圧して上体を起こす方式とした場合、上体を起こすために右側手当て部33及び左側手当て部34を押圧した際に、手が滑ってしまったり、手が滑らないようにバランスを取るための力を不要に腕にかける必要が発生したりする可能性が生じる。
これに対して、浴槽10では、上体を起こすために必要な、前方斜め上方へ向かう力に対して、略垂直な面となるように、右側手当て部33及び左側手当て部34が下方へ傾斜していることから、上体を起こすために右側手当て部33及び左側手当て部34を押圧した際に、右側手当て部33及び左側手当て部34の面に沿った力が掛かり難くなり、手が滑ってしまったり、手が滑らないようにバランスを取るための力を不要に腕にかける必要がなく、入浴者は上体をより容易に起こすことができる。
また、浴槽10では、右側溝部35の下部が、前方に向かって下方へ傾斜し、左側溝部36の下部が、前方に向かって下方へ傾斜している。これにより、右側手当て部33及び左側手当て部34を押圧して上体を起こす際に、上体の起き上がりの角度に応じて右側溝部35及び左側溝部36を押圧することも可能となり、入浴者に上体をより起こし易くさせることができる。
また、浴槽10では、右側溝部35の下部及び左側溝部36の下部の水平方向に対する傾斜角度が、右側手当て部33及び左側手当て部34の水平方向に対する傾斜角度よりも大きい。これにより、上体の起き上がりの角度に合わせ、力を加える方向に対して略垂直な面となるように、右側溝部35及び左側溝部36の傾斜角度を、右側手当て部33及び左側手当て部34の傾斜角度よりも大きくすることにより、さらに入浴者に上体を起こし易くさせることができる。
また、浴槽10では、右側肩当て部31及び左側肩当て部32が、背もたれ部30と面一又は前方へ突出しているである。これにより、肘を入れるための右側溝部35及び左側溝部36を設けた場合にも、寝浴状態において、入浴者の肩が背もたれ部30よりも背面側に沈み込んでしまうことを抑制することができる。これにより、より脱力した状態で快適に入浴させることができる。
上記実施形態では、背もたれ部30の左右両側に右側肩当て部31及び左側肩当て部32を設けている。肩当て部は、背もたれ部30の左側又は右側の一方のみに設けてもよい。上記実施形態では、背もたれ部30の左右両側に右側手当て部33及び左側手当て部34を設けている。手当て部は、背もたれ部30の左側又は右側の一方のみに設けてもよい。上記実施形態では、背もたれ部30の左右両側に 右側溝部35及び左側溝部36を設けている。溝部は、背もたれ部30の左側又は右側の一方のみに設けてもよい。
図20に関して説明したように、入浴者が寝浴状態から立ち上がる際には、支持部44に当接されている臀部を水平な第1底面41上で背もたれ部30の方向にスライド移動させる(図20(f)参照)。その後、脚を引き寄せて支持部44に脚裏を載せる(図20(g)参照)。そして、その状態から脚を引き伸ばす力を加えることで、臀部を背もたれ部30に載せ、背もたれ部30の傾斜に沿って上昇させる(図20(h)参照)。
浴槽10では、支持部44の傾斜角度を、同じ高さにおける背もたれ部30の傾斜角度よりも大きくしている。これにより、支持部44に脚裏を載せた状態から膝を伸ばす力を加えた際に、臀部が背もたれ部30の傾斜に沿って上昇する前に、脚裏が支持部44の傾斜に沿って上昇してしまうことを抑制することができる。これにより、最終的に脚裏の最下端(例えば、かかと)より臀部を高い位置に移動させることができ(図20(i)参照)、浴槽本体12内において立ち上がり易い体勢とすることができる。従って、脚を臀部よりも高い位置に配置した状態での寝浴を可能にしつつ、寝浴の状態から容易に立ち上がり動作を行うことができる。
また、浴槽10では、背もたれ部30の下端30aが、第1底面41と繋がっている。そして、背もたれ部30の傾斜角度は、支持部44の上端44aと同じ高さの位置から第1底面41まで、同じ高さにおける支持部44の傾斜角度よりも小さい。これにより、支持部44に当接されている臀部を水平な第1底面41上で背もたれ部30の方向にスライド移動させ、脚を引き寄せて支持部44に脚裏を載せた状態から、そのまま臀部を第1底面41から背もたれ部30の傾斜に沿って上昇させることができる。従って、より容易に立ち上がり動作を行うことができる。
支持部44の傾斜角度を、同じ高さにおける背もたれ部30の傾斜角度よりも大きくしたことにより、臀部を背もたれ部30の傾斜に沿って上昇させることができる一方で、湯水が溜まる浴槽本体12内に設けられた背もたれ部30は、滑り易いため、支持部44に脚裏を載せた状態から膝を伸ばす力を大きく加えた際には、臀部が背もたれ部30の傾斜に沿って急に上昇してしまい、膝が伸びきってしまう恐れがある。膝が伸びきった状態において、脚裏を浴槽内の立ち易い部位に移動させた際に、脚裏が滑ってしまうと、転倒を防ぐために脚を再度浴槽本体12内の別の立ち易い部位に出すことが難しくなり、転倒してしまう可能性が生じる。
浴槽10では、背もたれ部30が、第1領域R1と第2領域R2との境界部分に設けられた屈曲線FLを有し、第2領域R2の傾斜角度が、第1領域R1の傾斜角度よりも大きい。これにより、臀部が背もたれ部30の傾斜に沿って上昇した際に、臀部が屈曲線FLに当接する。これにより、臀部の急な上昇を屈曲線FLによって止め易くすることができる。すなわち、臀部が屈曲線FLに当接して、膝が伸びきらない中腰状態となる位置で、臀部の上昇を止め易くなる。中腰状態では、膝が伸びきっていないため、脚裏が滑ってしまった際にも、転倒を防ぐために脚裏を浴槽本体12内の立ち易い部位に移動させる動作を行い易くすることができ、より安全に立ち上がり動作を行うことができる。
また、浴槽10では、屈曲線FLが、支持部44の上端44aよりも高い位置に設けられている。これにより、臀部の上昇を止める位置が、支持部44の上端44aよりも高い位置となるため、脚裏全体より臀部を高い位置に移動させることができ、浴槽本体12内における立ち上がり動作をより行い易い体勢とすることができる。従って、より容易かつ安全に立ち上がり動作を行うことができる。
また、浴槽10では、底面部14において、支持部44より前方側が、全体に亘って水平である。これにより、入浴者は、浴槽本体12内に入るために浴槽本体12を跨いだ際に、支持部44より前方側の水平な底面部14(第2底面42)の上に立つことができる。これにより、浴槽本体12に対して出入りし易くすることができ、浴槽本体12への出入りの際の入浴者の転倒を抑制することができる。
また、浴槽10では、背もたれ部30の下部中央に、急傾斜部38が設けられている。第1底面41の前後方向の長さが短過ぎると、臀部を背もたれ部30の方向にスライド移動させる移動量が短くなり、脚裏を支持部44に載せ難くなってしまう。一方、第1底面41の前後方向の長さを長くするために、支持部44をより前方側へ遠くに設けてしまうと、寝浴の状態で支持部44に臀部を当接させにくくなり、臀部を支持部44に当接させた状態で寝浴し難くなってしまう。これに対して、浴槽10では、背もたれ部30と第1底面41との間に、背もたれ部30よりも水平方向に対する傾斜角度が大きい急傾斜部38が設けられている。このため、寝浴の状態にあまり寄与しないデッドスペースとなる背もたれ部30の下部が急傾斜部38によって短くなることにより、寝浴感を損なうことを抑制しつつも、第1底面41の距離を長くできる。従って、臀部を支持部44に当接させた状態での寝浴における寝浴感が損なわれることを抑制しつつも、立ち上がりの動作をし易くすることができる。
また、浴槽10では、第1底面41が、左右方向においても水平であり、第1底面41の両側部の前後方向の長さは、第1底面41の中央部の前後方向の長さよりも長い。これにより、浴槽本体12への出入りの際に、第1底面41の側部に脚を載せることができ、より浴槽本体12に出入りし易くすることができる。その上で、第1底面41の中央部の前後方向の長さが、両側部の前後方向の長さよりも短いため、背もたれ部30と支持部44との距離が長くなってしまうことを抑制できる。従って、臀部を支持部44に当接させた状態での寝浴における寝浴感が損なわれることを抑制しつつも、立ち上がりの動作をし易くすることができる。
また、浴槽10では、浴槽本体12の空間SP内の水の溢れ水位を規定する規定部であるオーバーフロー口52の下端が、枕部50を最低位置に配置した状態の頭部載置面50aの位置H1から120mm高い位置H2よりも下方に設けられている。
出願人は、寝浴の体勢と人間の頭部構造との関係性について鋭意検討を行った結果、世界的に見て身長が比較的低いアジア人女性の成人の後頭部(後頭点MBP)から口までの長さの5%tile値は、約195mmであり、寝浴の傾きや顎を引いた状態を考慮すると、頭部載置面50aから口元までの高さ方向の長さは、約120mmよりも小さくなることはないという新たな知見を得た。後頭点MBPから口までの長さは、より詳しくは、前額面(人体を腹側と背側に分割する平面)に垂直な方向における後頭点MBPから口までの長さである。換言すれば、直立して正面を向いた状態の人間の後頭点MBPから口までの前後方向(水平方向)の長さである。従って、上記のようにオーバーフロー口52を設定することにより、比較的小柄な体格の入浴者が枕部50の高さを最低位置にして浴槽本体12内に湯水を追加する場合などにも、浴槽本体12内の湯水の水位が入浴者の口元を超え、入浴者に不快感を与えてしまうことを抑制することができる。
寝浴状態を維持するためには、支持部44によって入浴者の臀部を支持することが好ましいが、入浴者の身体は、水面下において浴槽本体12内に溜まった湯水によって浮力が発生してしまうため、臀部を支持部44でしっかり支えることは、容易ではない。また、浮力によって体が浮いてしまうと、入浴者は無意識のうちに身体のバランスを取ろうと筋肉に力を加えてしまうため、脱力しきれず、十分なリラクゼーション効果を得ることができない可能性がある。
これに対して、浴槽10では、背もたれ部30に第1領域R1と第2領域R2とを設けたことにより、第1領域R1によって入浴者に寝浴感を与えつつ、第1領域R1よりも傾斜角度の大きい第2領域R2によって入浴者の背中を曲げさせることができる。これにより、背中が曲がった状態において無意識下で入浴者に働く「背中をまっすぐにしようとする背中のバネ力F」を利用して、入浴者は、浴槽本体12の背もたれ部30及び支持部44に身体を押し付ける力を得ることができる。また、上下に移動可能な枕部50を第2領域R2に設けているので、枕部50が最低位置にある場合でも、第2領域R2によって寝浴状態における入浴者の背中を曲げさせることができ、入浴者は、浴槽本体12の背もたれ部30及び支持部44に身体を押し付ける力を得ることができる。以上のことから、枕部50の上下によって、入浴者が自身の身長に合った枕部50の位置で寝浴することができつつも、身体に負担をかけずに浴槽本体12の背もたれ部30及び支持部44に身体を押し付ける力を得ることができ、脱力した状態で入浴することができる。
また、浴槽10では、最低位置にした枕部50の下端よりも所定間隔DTを空けて下方に屈曲線FLを設けているので、枕部50が最低位置にある場合でも、より確実に第2領域R2によって寝浴状態における入浴者の背中を曲げさせることができ、入浴者は、浴槽本体12の背もたれ部30及び支持部44に身体を押し付ける力を得ることができる。
また、所定間隔DTは、100mm以上である。これにより、入浴者が自身の身長に合った枕部50の位置で寝浴することができつつ、より確実に身体に負担をかけずに浴槽本体12の背もたれ部30及び支持部44に身体を押し付ける力を得ることができ、脱力した状態で入浴することができる。
また、出願人は、寝浴の体勢と身体の保温効果との関係性について鋭意検討を行った結果、寝浴の体勢において肩や胸などが水面よりも上方に出てしまった場合、肩や胸に湯を当てて温めるよりも、首に湯を当てて温めた方が、入浴中及び入浴後の保温効果が高いという新たな知見を得た。
浴槽10では、入浴者の首部に吐水を行う吐水部84を設け、吐水部84が枕部50の移動に追従するようにしている。これにより、身長の高い入浴者の肩や胸などが水面よりも上方に出てしまった場合であっても、上半身に感じる寒気を抑制することができる。また、吐水部84から湯水を吐水して入浴者の首部や胸などを温めることにより、例えば、首まで浸かる入浴形態と比べて、入浴者の心臓にかかる負担(水圧)を抑制しつつ、入浴者の上半身を適切に温めることができる。
浴槽10では、吐水部84が所定の範囲MA3内のどの高さにあっても、枕部50が供給配管90、92に前方からの荷重が作用しないように、供給配管90、92を覆う。これにより、例えば、入浴者の体の一部(頭、背中、腕など)で供給配管90、92に前方から荷重を加えてしまい、可撓性を有する供給配管90、92が潰れて閉塞されてしまうことを抑制することができる。従って、滞りなく吐水を継続させることができる。
浴槽10では、入浴者の脚を載置するための第2底面42を設けることにより、背もたれ部30となる第1内側面21を認識し易くさせることができる。また、第2底面42を設けることにより、入浴時に腰などに負担をかかり難くすることができ、入浴によるリラックス効果をより高めることができる。さらに、第2底面42の下方という背もたれ部30から離れた位置にポンプ62、124を配置することにより、入浴者にポンプ62、124の動作音を聞こえ難くし、ポンプ62、124の動作音によるリラックス効果の低下を抑制することができる。また、第2底面42の下方の空間にポンプ62、124を配置することにより、浴槽本体12内の前後左右の長さを小さくする必要がなく、浴槽本体12内の広さを確保することもできる。さらには、第2底面42の下方の空間にポンプ62、124を配置することにより、底面部14の下方の空間にポンプ62、124を配置する場合でも、浴槽本体12の底面部14全体の高さを高くする必要を抑えることができるため、側面部16の上端の高さが大幅に高くなって浴槽本体12の跨ぎ高さが高くなってしまうことを抑制することができる。すなわち、浴槽本体12を跨ぎ易くし、浴槽本体12への出入りをし易くすることができる。
また、浴槽10では、ポンプ62の下部及びポンプ124の下部を、第1底面41よりも下方に配置している。これにより、第2底面42の高さが過度に高くなってしまうことを抑制することができ、第1底面41に対する第2底面42の高さを適切に設定することができる。入浴時に腰などにかかる負担を、より抑制することができ、入浴によるリラックス効果をより高めることができる。
また、浴槽10では、湯水を循環させるためのポンプ62の下部を第1底面41よりも下方に配置した場合でも、開閉弁122を開くことにより、ポンプ62内に残る湯水を外部に排出することができる。例えば、ポンプ62内に残った湯水において、菌などが増えてしまうことを抑制することができる。また、開閉弁122を閉じることにより、循環時に湯水が外部に排出されてしまうことを抑制することもできる。
また、浴槽10では、排出管120が、排水口51の下方に接続される排水管68に接続可能である。これにより、排出管120から排出された水が、建築躯体などに流れ出てしまうことを抑制することができる。
また、浴槽10では、制御部134が、空間SP内の水位WLが第2水位WL2以下となった場合に、開閉弁122を開く。これにより、浴槽本体12内の湯水の排水時に自動的に開閉弁122を開き、ポンプ62内の残水も排出することができる。従って、使用者などに開閉弁122を開閉する手間などをかけさせてしまうことを省くことができるとともに、ポンプ62内の残水を排出し忘れてしまうことを抑制することもできる。
また、浴槽10では、制御部134が、開閉弁122を開いた後、所定時間経過した後に開閉弁122を閉じる。これにより、開閉弁122を自動的に閉じることができ、使用者などに手間を掛けさせることなく、開閉弁122の閉じ忘れを抑制することができる。
図22は、実施形態に係る浴槽の変形例を模式的に表す平面図である。
なお、上記実施形態と機能・構成上実質的に同じものについては、同符号を付し、詳細な説明を省略する。
図22に表したように、浴槽10aでは、右側肩当て部31及び左側肩当て部32が、背もたれ部30の上部の左右両側において、背もたれ部30よりも側方に設けられている。また、上記実施形態の浴槽10では、右側溝部35及び左側溝部36が、背もたれ部30、右側肩当て部31、及び左側肩当て部32のそれぞれの側方に設けられている。これに対して、浴槽10aでは、右側溝部35が、背もたれ部30の側方において、右側肩当て部31と右側手当て部33との間に設けられ、左側溝部36が、背もたれ部30の側方において、左側肩当て部32と左側手当て部34との間に設けられている。
このように、右側肩当て部31及び左側肩当て部32は、必ずしも背もたれ部30と一体に形成しなくてもよい。例えば、浴槽本体12の左右方向の幅が比較的狭く、背もたれ部30の幅を広くできない場合などには、図22に表した浴槽10aのように、右側肩当て部31及び左側肩当て部32を背もたれ部30の側方に設けてもよい。
右側肩当て部31及び左側肩当て部32を背もたれ部30の側方に設けた場合にも、右側肩当て部31及び左側肩当て部32は、背もたれ部30と面一又は前方へ突出していることが好ましい。これにより、上述のように、寝浴状態において、入浴者の肩が背もたれ部30よりも背面側に沈み込んでしまうことを抑制することができ、より脱力した状態で快適に入浴させることができる。
図23は、実施形態に係る浴槽の変形例を模式的に表す断面図である。
図23に表したように、浴槽10bでは、背もたれ部30が、段部39を有する。段部39は、背もたれ部30の下部に設けられる。このため、浴槽10bでは、背もたれ部30のうちの前方に向かって連続的に下降傾斜する部分の下端30aが、第1底面41よりも上方に位置する。
このように、背もたれ部30の下端30aは、必ずしも第1底面41と繋がっていなくてもよい。背もたれ部30は、同じ高さにおける支持部44よりも傾斜角度の大きい部分を有していてもよい。
但し、背もたれ部30のうちの前方に向かって連続的に下降傾斜する部分の下端30aは、支持部44の上端44aよりも下方に位置することが好ましい。これにより、上述のように、支持部44に当接されている臀部を水平な第1底面41上で背もたれ部30の方向にスライド移動させ、臀部を背もたれ部30の傾斜に沿って上昇させ易くすることができる。入浴者に立ち上がりの動作をさせ易くすることができる。
図24は、実施形態に係る浴槽の変形例を模式的に表す断面図である。
図24は、浴槽本体12の第1底面41の部分を左右方向及び上下方向に平行な断面で切断し、前方側から見た状態を模式的に表している。
図24に表したように、浴槽10cでは、第1底面41が、左右方向の中央部を左右方向の両端部よりも下方に凹ませた凹曲面状である。このように、第1底面41は、少なくとも前後方向において水平であればよく、左右方向においては、必ずしも水平でなくてもよい。
例えば、図24に表したように、第1底面41を凹曲面状にする。すなわち、第1底面41を入浴者の臀部にフィットし易い曲面状にする。これにより、例えば、支持部44に当接されている臀部を前後方向に水平な第1底面41上で背もたれ部30の方向にスライド移動させる際に、第1底面41の左右方向の曲面によって入浴者の臀部を適切に背もたれ部30に案内することができる。例えば、入浴者の臀部が、右側溝部35や左側溝部36などに、ずり落ちてしまうことを抑制することができる。従って、入浴者に立ち上がりの動作をさせ易くすることができる。
一方、図3などに表したように、第1底面41を水平面状とした場合には、例えば、出浴の際などに第1底面41の上に立ち易くすることができる。例えば、入浴者の転倒などをより確実に抑制し、安全性をより向上させることができる。また、浴槽本体12内の水を抜く際に、第1底面41に水が残ってしまうことなどを抑制し、排水性を向上させることもできる。
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、浴槽10などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。