以下、本発明における芝状態測定装置の好ましい実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態で提案する芝状態測定装置100の全体概要を示したものである。同図において、芝状態測定装置100は、芝目の状態と芝生面の状態(これらを纏めて、「芝状態」という)を測定する自動走行が可能な主測定器10と、主測定器10の測定範囲を確定する手動走行が可能な補助測定器12と、を主な構成要素とする。これらの主測定器10と補助測定器12は何れも、ゴルフコースの中で特にターゲットとなるカップ(図示せず)が設置され、最も芝が短く刈られた区域となるグリーンGや、グリーンGの周辺に設けられ、グリーンGと他の領域とを区切るカラーCなどの走行面に載せて使用される。但し、手動にてグリーンGを一周して補助測定器12を動かした後は、補助測定器12を移動周回させた特定の範囲内、すなわちグリーンG内でのみ、主測定器10が自動走行して、グリーンGの各地点での芝状態を測定する構成となっている。
図2や図3にも示すように、主測定器10は、扁平円盤状の本体21に移動手段22や芝目状態検出手段23を備えた外観構成となっている。移動手段22は、本体21の底面側に何れも回転自在な左駆動輪24と、右駆動輪25と、脚輪26とを備えて構成される。これらの駆動輪24,25と脚輪26は、何れも本体21に連結して芝生面上に載置され、本体21の支持体になる。また、主測定器10をグリーンG内で自在に走行可能とするために、左駆動輪24および右駆動輪25をそれぞれ前方または後方に駆動させる指令信号を、後述する自走制御手段28(図4を参照)から移動手段22に供給する。例えば、両方の駆動輪24,25を前方向に係合させるような指令信号が自走制御手段28から送出されると、主測定器10は前進動作する。別の場合では、左駆動輪24を前方向に駆動させる一方で、右駆動輪25を後方向へ駆動させるような指令信号が自走制御手段28から送出されると、主測定器10を上から見たときに、主測定器10は時計回りに旋回動作する。したがって、駆動輪24,25は、本体21を含めた主測定器10を、グリーンG内の芝生面上に移動走行させるための駆動車輪に相当する。
芝目状態検出手段23は、本体21の底面から突出して設けられた検知体31を有する。検知体31は、その駆動源となる電動モータ32(図4を参照)に減速機構(図示せず)を介して連結され、本体21の底面から垂直方向に延びる減速機構の回転軸33に固着された円筒状の基部34と、この基部34から本体21の周縁を越えて水平方向に延びたブラシ部35と、を主な構成要素とし、電動モータ32への通電により、検知体31が回転軸33を中心として決められた方向に回転する構成となっている。また、ここでは多数の芝草で形成される芝生面の上に主測定器10の駆動輪24,25と脚輪26を載せたときに、1本の回転するブラシ部35が芝草に当接して抵抗(荷重)を受けやすくするように、ブラシ部35を立板状若しくは棒状に形成し、ブラシ部35の延びる方向に沿って、ブラシ部35の先端に剛毛を設けている。芝目状態検出手段23は上記検知体31の他に、検知体31が芝草から受ける抵抗値を検出し、その結果を電気的な信号に変換して出力する信号変換部を有するが、本実施形態では、後述する電動モータ32の電流を検出する電流検出部37(図4を参照)が、芝目状態検出手段23の信号変換部としての機能を担う。
補助測定器12は、手動の走行体となる車輪41付きの手押し車42に、その手押し車42の位置を検出する測位装置43を組み込んで構成される。測位装置43は、例えば4機以上のGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からの信号を受信し、その信号から補助測定器12の現在の位置を示す位置情報を取得するGNSS受信装置で構成される。好ましいGNSS受信装置は、主に補助測定器12の測位のために使用する測位情報(例えばL1信号、L2信号、L5信号などの測位信号)に加えて、当該測位情報に含まれる誤差を補強するために使用する測位補強情報(例えばL6信号などの測位補助信号)を受信する機能を有する。現状ではGNSS衛星の中で、準天頂衛星(Quasi-Zenith Satellites)となる「みちびき」からのL6信号を測位装置43が受信することで、補助測定器12の位置情報をセンチメートル単位の精度で管理できる。
測位装置43は、例えばグリーンGとカラーCとの境界に沿って、測定者Pが手押し車42を手動で走行させている間に、所定のタイミングで補助測定器12の位置情報を取得する機能を有する。このタイミングは、測定者Pが後述する操作ボタン(図示せず)を押すことで決めてもよいし、測位装置43に組み込まれた計時タイマで自動的に決めてもよい。グリーンGの周縁を一回りして手押し車42が元の位置に戻った時に、それまで所定のタイミングで取得した補助測定器12の位置情報の一群が、主測定器10による自動測定範囲の位置(この場合はグリーンG内)を確定する自動測定範囲情報として測位装置43から送出される。
図4は、主測定器10の電気的構成を示し、ここに示す全ての構成は本体21に設けられる。制御手段51は、周知のCPU(中央演算装置)、計時カウンタ、記録媒体となるメモリ、および入出力装置などを備えたマイクロコンピュータで構成され、その入力ポートには既に説明した電流検出部37の他に、測定開始指示部52と、測定入力部53と、測位装置54と、方向検出部55がそれぞれ接続される。また、制御手段51の出力ポートには、既に説明した移動手段22と、電動モータ32の他に、測定出力部57がそれぞれ接続される。制御手段51は、メモリに予め記録されたプログラムを読み取ることで、すでに説明した自走制御手段28の他に、芝目測定手段58と、芝生面測定手段59として機能する構成となっている。
測定開始指示部52は、主測定部10による測定の開始を制御手段51に指示するものである。例として測定開始指示部52は、本体21の上面に設けられた操作ボタンとすることができる(図1および図2を参照)。この場合、測定開始指示部52を押動操作すると、測定開始の指示信号が制御手段51に送出される。代わりに測定開始指示部52は、主測定部10とは別体の遠隔操作体(図示せず)からの操作信号を受ける受信部とすることができる。この場合、測定開始指示部52が無線や有線で操作信号を受信すると、その操作信号が測定開始の指示信号として制御手段51に送出される。
測定入力部53は、補助測定器12で測定された測位装置43からの自動測定範囲情報を取り込む機能を有する。例として測定入力部53は、測位装置43からの自動測定範囲情報を無線や有線で受ける受信部とすることができる。この場合、測位装置43からの自動測定範囲情報を直接受信してもよいし、インターネット上に設置されたサーバ(図示せず)を介して受信してもよい。代わりに測定入力部53は、二次元コードなどで符号化された測位装置43からの自動測定範囲情報を、スキャナなどで光学的に読み取る読み取り装置とすることができる。
測位装置54は、本体21ひいては主測定器10の位置を検出して、その結果となる主測定器10の位置情報を制御手段51に信号出力するものである。ここでは、主測定器10の緯度と経度だけでなく、主測定器10の高度を含む三次元の位置情報を制御手段51に提供できるように、前述の測位装置43と同様に、4機以上のGNSS衛星からの信号をアンテナ54Aで受信し、その信号から主測定器10の現在の位置を示す位置情報を取得するGNSS受信装置で測位装置54を構成するのが好ましい。GNSS受信装置は、主測定器10の測位のために使用する測位情報に加えて、当該測位情報に含まれる誤差を補強するために使用する測位補強情報(例えばL6信号などの測位補助信号)を受信する機能を有し、「みちびき」からのL6信号を測位装置54が受信することで、主測定器10の位置情報をセンチメートル単位の精度で管理できる。
方向検出部55は、検知体31の特にブラシ部35の例えば基端から先端を向いている方向、すなわち方位角を検出して、その結果となる方位データを信号出力するものである。例として方向検出部55は、計測部と地磁気センサとを組み合わせた構成とすることができる。この場合、前述の電動モータ32をステッピングモータで構成し、電動モータ32を動作させるのに芝目状態検出手段23に供給されるパルス駆動信号のカウント数を、方向検出部55の計測部で計測することで、本体21に対してブラシ部35がどの方向に向いているのか、すなわち本体21に対するブラシ部35の向いている角度を特定する。また、本体21に搭載された地磁気センサからの検出出力により、基準の方位(例えば磁北)に対して本体21がどの方向に向いているのか、すなわち基準方位に対する本体21の向いている角度を特定する。これらの特定結果を受けて、方向検出部55は基準方位に対するブラシ部35の方位角を、前述の方位データとして算出できる。
代わりに方向検出部55は、ブラシ部35の基準位置検出センサと、前述の地磁気センサとを組み合わせた構成としてもよい。基準位置検出センサは、例えば投光部と受光部とを組みわせた非接触式の光電センサとし、検知体31の回転に伴いブラシ部35が基準位置を通過する毎に、投光部からの光がブラシ部35に反射して受光部に到達するように、或いは投光部からの光がブラシ部35で遮られて受光部に到達しないように配置する。この例では、電動モータ32は上述のようなステッピングモータに限定されない。本体21に対してブラシ部35が基準位置となる決められた方向に向いているのを基準位置検出センサで検出すると、地磁気センサは基準方位に対する本体21の向いている角度を検出特定する。これにより方向検出部55は、ブラシ部35が基準位置にあるときに、それが基準方位に対してどの方向を向いているのか、すなわち基準方位に対するブラシ部35の方位角を、前述の方位データとして算出できる。
その他、方向検出部55は種々の構成とすることができるが、何れにせよ主測定器10の測定中に、基準方位に対するブラシ部35の方位角を検出して、その結果となる方位データを制御手段51に信号出力できればよい。
電流検出部37は、電動モータ32に電流を流して検知体31を回転させているときに、その電流値を検出して制御手段51に信号出力するものである。本実施形態では、主測定器10を芝生面の上に載せて電動モータ32に電流を流すと、検知体31のブラシ部35が芝草を撫でるように回転して、芝草からの抵抗を受ける。この抵抗の大きさ(抵抗値)と相関関係がある電動モータ32の電流値を、電流検出部37で検出して信号出力する構成となっている。
測定出力部57は、芝目測定手段58で測定された芝目の状態を示す情報や、芝生面測定手段59で測定された芝生面の状態を示す情報を、制御手段51の外部に芝状態の測定結果情報として出力するものである。例として測定出力部57は、こうした測定結果情報を無線や有線で送信する送信部とすることができる。送信部に表示部を接続すれば、測定結果情報を目視で確認することができ、送信部に報知部を接続すれば、測定結果情報を音で確認することができる。また、インターネット上に設置されたサーバなどに、測定結果情報をその都度転送出力して蓄積することで、プレイヤーの保有する携帯端末(図示せず)などから当該サーバにアクセスして、いつでも必要な測定結果情報を取得できる。代わりに測定出力部57は、測定結果情報を蓄積保存する記録媒体(図示せず)の接続アダプタとすることができる。
次に、制御手段51のソフトウェア構成について説明する。自走制御手段28は、測定開始指示部52からの指示信号を受けると、測定入力部53から送出される自動測定範囲情報と、測位装置54からの検出信号となる主測定器10の位置情報を取り込んで、主測定器10の本体21が自動測定範囲情報で定義された特定の範囲内、すなわちグリーンG内を偏りなく均一に自動走行するように、移動手段22の駆動車輪となる左駆動輪24と右駆動輪25をそれぞれ制御するものである。特に本実施形態の自走制御手段28は、測定入力部53から取得した自動測定範囲情報に基づき、グリーンG内における主測定器10の望ましい移動軌跡を設定し、その移動軌跡に沿って主測定器10が自動走行するように、主測定器10の位置情報を所定のタイミング毎に絶えず取り込みながら、左駆動輪24と右駆動輪25の動作を制御する。そして、主測定器10が設定した望ましい移動軌跡を走行し終えたら、そこで主測定器10の自動走行を終了させて、芝目測定手段58や芝生面測定手段59に測定終了を指示する構成となっている。
芝目測定手段58は、自走制御手段28により主測定器10の本体21を芝生面上で移動させているときに、特定の範囲となるグリーンG内の望ましい移動軌跡に沿った各測定点で、電動モータ32の電流値を示す電流検出部37からの検出信号と、測位装置54からの検出信号となる主測定器10の位置情報と、方向検出部55からの方位データをそれぞれ取り込んで、グリーンG内の各測定点の全体で、芝生面を形成する芝草がどの方向にどの程度傾いているのかを、芝目の状態として測定するものである。測定した芝目の状態を示す情報は、主測定器10の自動走行が終了した後に、芝目測定手段58から測定出力部57に出力される。
芝生面測定手段59は、自走制御手段28により主測定器10の本体21を芝生面上で移動させているときに、特定の範囲となるグリーンG内の望ましい移動軌跡に沿った各測定点で、測位装置54からの検出信号となる主測定器10の位置情報を取り込んで、グリーンG内の各測定点の全てとなる全体で、芝生面がどの方向にどの程度傾いているのかを、芝生面の状態として測定するものである。測定した芝生面の状態を示す情報は、主測定器10の自動走行が終了した後に、芝生面測定手段59から測定出力部57に適宜出力される。
図5は、補助測定器12の電気的構成を示したもので、ここに示す全ての構成は手押し車42に設けられる。前述のように測位装置43は、4機以上のGNSS衛星からの信号をアンテナ43Aで受信し、その信号から補助測定器12の現在の位置を示す位置情報を取得するもので、その入力側には測定開始/停止指示部61が接続され、出力側には測定出力部62が接続される。
測定開始/終了指示部61は、補助測定部12による測定の開始と終了を測位装置43に指示するものである。例として測定開始/終了指示部61は、手押し車42に設けられた操作ボタンとすることができる。この場合、測定開始/終了指示部61を押動操作すると、測定開始の指示信号が測位装置43に送出され、測定開始/終了指示部61を再び押動操作すると、測定終了の指示信号が測位装置43に送出される。代わりに測定開始/終了指示部61は、補助測定部12とは別体の遠隔操作体(図示せず)からの操作信号を受ける受信部とすることができる。この場合、測定開始/終了指示部61が無線や有線で操作信号を受信すると、その操作信号が測定開始や測定終了の指示信号として測位装置43に送出される。
測位装置43は、測定開始/終了指示部61からの測定開始の指示信号を受けて、補助測定器12の位置情報の取得を開始し、測定開始/終了指示部61からの測定終了の指示信号を受けて、補助測定器12の位置情報の取得を終了する。測定中は所定のタイミングで補助測定器12の位置情報を取得し、測定が終了すると、それまで取得した補助測定器12の位置情報の一群が、主測定器10の自動測定範囲情報として、測位装置43から測定出力部62に送出される。
測定出力部62は、前述の自動測定範囲情報を主測定器10の測定入力部53に出力するもので、測定入力部53が自動測定範囲情報を取得できれば、どのような形態であってもかまわない。例として測定出力部62は、測位装置43からの自動測定範囲情報を無線や有線で送信する送信部とすることができる。この場合、測位装置43からの自動測定範囲情報を測定入力部53に直接送信してもよいし、前述のサーバを介して測定入力部53に送信してもよい。代わりに測定出力部62は、自動測定範囲情報を二次元コードなどで符号化して印刷出力するプリンタとすることができる。この場合、符号化された識別体を測定入力部53となる読み取り装置が光学的に読み取ることで、測定入力部53に自動測定範囲情報が取り込まれる。
次に、上記構成の芝状態測定装置100について、その作用を詳しく説明する。本実施形態では、ゴルフ場に敷設されたゴルフコースのグリーンG内について、芝状態を広範囲に測定する手順を説明するが、ゴルフ場以外の芝生を敷設したあらゆる場所に、同様の手順で芝状態を測定できる。
芝状態の測定に際しては、予め補助測定器12による自動測定範囲の確定が行われる。これは先ず、測定対象となるグリーンGの周縁に補助測定器12の手押し車42を置き、測定開始/終了指示部61により測定開始を指示した後に、グリーンGの周縁に沿って手押し車42を手動で走行させる。このとき測位装置43は、測定開始/終了指示部61からの測定開始の指示信号を受けて、所定のタイミングで補助測定器12の緯度と経度の位置情報を順に取得して行く。
グリーンGの周縁を一回りして、手押し車42が測定開始を指示した元の位置に戻ったら、測定開始/終了指示部61により測定終了を指示する。測位装置43は測定開始/終了指示部61からの測定終了の指示信号を受けて、補助測定器12の位置情報の取得を終了し、それまで取得した補助測定器12の位置情報の一群を、主測定器10の自動測定範囲を確定する自動測定範囲情報として測定出力部62に送出する。この自動測定範囲情報は、適切な手段で補助測定器12の測定出力部62から主測定器10の測定入力部53に取り込まれる。
こうして、補助測定器12によるグリーンG周辺の測位が終了すると、次に主測定器10を自動走行させてグリーンG内の芝状態の測定が行われる。
具体的には、主測定器10の移動手段22となる駆動輪24,25と脚輪26を、グリーンG内の芝生面上に載せ、測定開始指示部52により測定開始を指示する。自走制御手段28は、測定開始指示部52からの指示信号を受けて、測位装置54から取り込んだ位置情報に基づき、主測定器10の測定開始時における緯度と経度の位置を特定し、その位置が測定入力部53から取得した自動測定範囲情報に基づく特定の範囲、すなわちグリーンG内にあるか否かを判断する。その結果、主測定器10の測定開始時の位置がグリーンG内にあると判断されれば、主測定器10による芝状態の測定を開始する一方で、主測定器10の測定開始時の位置がグリーンG内にはないと判断されれば、例えば音や表示でその旨を報知し、主測定器10をグリーンG内に置いて芝状態の測定が開始できるように促す。
主測定器10が芝状態の測定を開始すると、自走制御手段28は測定入力部53から取得した自動測定範囲情報に基づき、グリーンG内における主測定器10の望ましい移動軌跡を設定する。そして、設定した移動軌跡に沿って主測定器10が自動走行できるように、測位装置54からの主測定器10の位置情報を所定のタイミング毎に絶えず取り込みながら、駆動車輪となる左駆動輪24と右駆動輪25の動作を制御する。これにより主測定器10は、芝状態の測定中にグリーンG内を満遍なく均一に自動走行する。
主測定器10がグリーンG内の芝生面上で移動軌跡に沿って自動走行し始めると、芝目測定手段58は検知体31を回転させるために、電動モータ32を通電する駆動信号を芝目状態検出手段23に送出し、設定した移動軌跡に沿った各測定点で、電動モータ32の電流値を示す電流検出部37からの検出信号と、測位装置54からの検出信号となる主測定器10の位置情報をそれぞれ取り込んで、芝生面を形成する芝草がどの方向にどの程度傾いているのかを、芝目の状態として個々に測定する。
ここで、芝目測定手段58が芝目の状態をどのように測定するのかを、図6および図7で説明する。図6は、検知体31の回転時にブラシ部35が受ける抵抗の大きさを模式的に示している。図中、符号Sは芝生面を形成する多数の芝(芝草)であり、例としてそれぞれの芝Sの向きは矢印で示した上方向であるとする。このような芝Sの傾いた向きを有する芝生面の上を、移動軌跡Qに沿って主測定器10が移動するとき、減速機構の回転軸33を中心として、検知体31のブラシ部35を符号Rで示した反時計回りに一回転させる。説明の都合上、図で示したブラシ部35の位置を基準位置とし、基準位置でのブラシ部35の基端から先端に向かう方向の回転角度を0°とする。ブラシ部35が基準位置から一回転して元の基準位置に戻ると、ブラシ部35の回転角度は360°(=0°)となる。
図7は、検知体31を一回転させたときに、ブラシ部35の回転角度と電動モータ32の電流値との関係を示したものである。電動モータ32に電流を流して検知体31を回転させているときに、検知体31のブラシ部35が芝Sから受ける力である抵抗は、電流検出部37で検出される電動モータ32の電流値と相関関係がある。ブラシ部35が受ける抵抗が大きくなると、電動モータ32の電流値は大きくなり、ブラシ部35が受ける抵抗が小さくなると、電動モータ32の電流値は小さくなる。
芝Sの傾いた向きとブラシ部35の移動する方向が一致するとき、つまりブラシ部35が基準位置にあって、ブラシ部35の回転角度が0°若しくは360°であるとき、ブラシ部35が芝Sから受ける抵抗は最小となって、電動モータ32の電流値は検知体31を一回転させる中で最小の値Iminとなる。一方、芝Sの傾いた向きとブラシ部35の移動する方向が正反対となるとき、つまりブラシ部35の回転角度が180°であるとき、ブラシ部35が芝Sから受ける抵抗は最大となって、電動モータ32の電流値は検知体31を一回転させる中で最大の値Imaxとなる。検知体31を回転させることにより、電流モータ32の電流値は、最小値Iminと最大値Imaxとの間を略正弦波状に変動する。
このように、芝生Sの傾いた向きと同じ方向にブラシ部35が移動する順目を測定中には、ブラシ部35が芝Sから受ける抵抗が小さくなり、芝生Sの傾いた向きと逆の方向にブラシ部35が移動する逆目を測定中には、ブラシ部35が芝Sから受ける抵抗が大きくなる。したがって芝目測定手段58は、ブラシ部35を基準位置から一回転させたときに、電流検出手段37からの検出信号に基づき、ブラシ部35がどの回転角度を向いたら、電動モータ32の電流値が最小値Iminと最大値Imaxになるのかを測定することで、芝目の向き、すなわち芝Sがどの方向に順目(または逆目)であるのかを判断できる。
また、芝Sの傾きの度合いは、電動モータ32の電流値の最小値Iminと最大値Imaxとの差と相関関係がある。芝Sの傾きの度合いが小さく、芝Sが直立した状態である程、その差は小さくなり、芝Sの傾きの度合いが大きく、芝Sが直立した状態である程、その差は大きくなる。したがって芝目測定手段58は、ブラシ部35を基準位置から一回転させたときに、電流検出手段37からの検出信号に基づき、電動モータ32の電流値の最小値Iminと最大値Imaxとの差を測定することで、芝目の傾斜の度合い、すなわち芝Sがどの程度傾いているのかを判断できる。
なお、芝目測定手段58が検知体31を回転させて、芝目の状態を測定している間は、測定の精度を高めるために、本体21を一時的に停止させるように、自走制御手段28が移動手段22を制御するのが好ましい。また、本体21を走行させながら芝目測定手段58が芝目の状態を測定する場合には、本体21の移動速度と移動方向を加味して、芝目の向きや芝目の傾斜の度合いを判断すればよい。芝目測定手段58は、設定した移動軌跡Qに沿った各測定点で、電流検出部37からの検出信号に加えて、測位装置54からの主測定器10の位置情報をその都度取り込むことで、グリーンG内のどの地点で、芝目の状態がどのようになっているのかを個々に測定できる。
ところで、グリーンG内の全ての測定点において、電動モータ32の電流値と、主測定器10の位置情報だけで、芝目測定手段58が芝目の向きを正しく測定できるのは、基準の方位(例えば磁北)に対して本体21が常に同じ方向を向いている場合に限られる。各測定点で本体21が基準の方位に対して違う方向に向いていると、ブラシ部35の基準位置でブラシ部35の基端から先端を向いている方向が、その都度異なってしまい、グリーンG内全体での芝目の向きも、各測定点で異なる方向を基準として測定されてしまうからである。
そこで本実施形態の芝目測定手段58は、設定された移動軌跡Qの各測定点において、電動モータ32の電流値を示す電流検出部37からの検出信号と、測位装置54からの検出信号となる主測定器10の位置情報だけでなく、基準の方位に対するブラシ部35の基準位置での方位角を示す方向検出部55からの方位データを取り込むことにより、どの測定点であっても方向検出部55からの方位データを加味して、基準の方位に対して芝Sがどの方向に順目(または逆目)であるのかを判断する。これにより、各測定点で基準の方位に対して本体21が違う方向に向いていても、グリーンG内の全ての測定点で、基準の方位に対する芝目の向きを正しく測定できる。
こうした芝目測定手段58による測定とは別に、主測定器10がグリーンG内の芝生面上で移動軌跡に沿って自動走行し始めると、芝生面測定手段59は移動軌跡に沿った各測定点で、測位装置54からの検出信号となる主測定器10の位置情報を取り込んで、グリーンG内の各測定点で、芝生面がどの方向にどの程度傾いているのかを、芝生面の状態として測定する。この場合、測位装置54は、GNSS衛星からの信号に含まれる測位情報をアンテナ54Aで受信することで、各測定点における主測定器10の緯度,経度,高度を含む三次元位置をその都度検出できる。芝生面測定手段59は測位装置54からの検出結果となる主測定器10の三次元位置の位置情報を受けて、1つの測定点における高度と、その周辺の測定点における高度との比較から、グリーンG内における芝生面の状態、すなわち芝生面がどの方向にどの程度傾いているのかを測定点ごとに測定する。
そして自動制御手段28は、主測定器10がグリーンG内の芝生面上で設定した移動軌跡の全測定点を移動し終えたら、そこで主測定器10の自動走行を終了させて、芝目測定手段58や芝生面測定手段59に測定の終了を指示する。これを受けて芝目測定手段58は、グリーンG内の各測定点全体の芝目の状態を示す情報を測定出力部57に出力し、また芝生面測定手段59も、グリーンG内の各測定点全体の芝生面の状態を示す情報を測定出力部57に出力することで、これらの芝状態の測定結果情報を、主測定器10の外部に出力することができる。
上述した芝状態を測定する一連の手順では、次のような変形例を採用してもよい。
補助測定器12は、主測定器10と一体にしたものでもよい。この場合、主測定器10がグリーンGの周縁を自走で一回りできるように、本体21に撮影部を含む画像処理装置を組み込む。画像処理装置は、撮影部で撮影した画像から、グリーンGとカラーCとの境界を識別し、その境界に沿って本体21が自動走行するように自動制御手段28が移動手段22を制御する。このとき、主測定器10の測位装置54が、所定のタイミングで主測定器10の位置情報を順に取得し、主測定器10が元の位置に戻ったら、それまで取得した主測定器10の位置情報の一群を、前述の自動測定範囲情報として測定入力部53に送出すれば、主測定器10の自動測定範囲を自動で確定することが可能になる。
図3に示す自走制御手段28や、測定出力部57や、芝目測定手段58や、芝生面測定手段59を主測定器10の本体21に設ける代わりに、インターネット上に設置されたサーバなどに設けてもよい。この場合、制御手段51にはサーバとの双方向の通信を可能にする通信手段(送受信部)が設けられる。また、測定出力部57をサーバに設けた場合、アクセス許可を受けたスートフォンやタブレットなどの端末機器(図示せず)に、一乃至複数の主測定器10からサーバに集約された芝状態の測定結果を、音や表示で通知する構成としてもよい。
芝目測定手段58は、1つの測定点について検知体31を1回だけ回転させてもよいし、検知体31を複数回回転させてもよい。前者の場合は測定時間の短縮化を図ることができ、後者の場合は電動モータ32の電流値を複数回分取り込むことで、より正確な芝目の状態の測定が可能となる。
その他、本実施形態で図示したものはあくまでも想定のため、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
以上のように、本実施形態の芝状態測定装置100は、本体21と、本体21を芝生面上に移動走行させるための駆動車輪を有する移動手段22と、芝生面を形成する芝草すなわち芝Sに当接可能な回転する検知体31を有し、検知体31を回転させたときに、検知体31が芝Sから受ける抵抗値を検出して、その結果を信号出力する第1検出手段となる芝目状態検出手段23と、本体21に設けられ、本体21の位置を検出して、その結果を信号出力する第2検出手段としての測位装置54と、測位装置54からの検出信号を取り込んで、本体21が特定の範囲となる例えばグリーンG内を自動走行するように移動手段22を制御する自走制御手段28と、自走制御手段28により本体21をグリーンG内の芝生面上で移動させているときに、そのグリーンG内の各地点で、芝目状態検出手段23からの検出信号と、測位装置54からの検出信号をそれぞれ取り込んで、グリーンG内の全体で芝Sがどの方向にどの程度傾いているのかを測定する芝目測定手段58と、を備えた主測定器10を有して構成される。
この場合、自走制御手段28により本体21を芝生面上でグリーンG内に満遍なく自動走行させるだけで、芝目測定手段58がグリーンG内の全体で、芝Sける芝目の状態を、より簡単で短時間に測定することが可能になる。
また、本実施形態の芝状態測定装置100は、本体21の特に三次元位置を検出するように測位装置54を構成し、自走制御手段28により本体21を芝生面上で移動させているときに、グリーンG内の各地点で、測位装置54からの検出信号を取り込んで、グリーンG内の全体で芝生面がどの方向にどの程度傾いているのかを測定する芝生面測定手段69をさらに備えている。
この場合、自走制御手段28により本体21を芝生面上でグリーンG内に満遍なく自動走行させているときに、芝目測定手段58がグリーンG内の全体で、芝目の状態を測定するのに加えて、芝生面測定手段59がグリーンG内の全体で、芝生面がどの方向にどの程度傾いているのかというアンジュレーションを測定する。これにより、グリーンG内における芝目の状態だけでなく、グリーンG内における芝生面の状態をも、より簡単で短時間に測定することが可能になる。
また、本実施形態の芝状態測定装置100は、検知体21の駆動源となる電動モータ32と、芝目状態検出手段23となる電流検出手段37と、をさらに備え、電動モータ32により検知体31を回転させたときに、検知体31が芝Sから受ける抵抗値を、電動モータ32に流れる電流値として検出し、その結果を信号出力するように電流検出手段37を構成している。
この場合、検知体21が芝草から受ける抵抗値をセンサなどで直接検出しなくても、本来は検知体21を回転させるための電動モータに流れる電流を検出すれば、これを芝目状態検出手段23からの検出信号として利用することができ、芝目状態検出手段23の構成を簡素化できる。
また、本実施形態の芝状態測定装置100は、第3検出手段となる測位装置43を組み込んだ走行体としての補助測定器12の手押し車42をさらに備え、グリーンG内の芝生面を含むグリーンGやカラーCの走行面に、補助測定器12の手押し車42を周回移動させたときに、手押し車42の位置を検出する測位装置43からの検出信号が、グリーンGを確定する位置情報として、自走制御手段28に取り込まれる構成となっている。
この場合、本体21を芝生面上に移動走行させる前に、芝生面を含む走行面に手押し車42を周回移動させるだけで、自走制御手段28は測位装置43からの検出信号を、特定の範囲であるグリーンGを確定する位置情報として利用することができ、手押し車42を周回移動させたグリーンG内で、自走制御手段28により本体21を確実に満遍なく自動走行させることが可能になる。
以上、本発明の好ましい一実施形態について説明したが、本発明は当該実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更実施が可能である。