以下に、実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
(第1の実施形態)
第1の実施形態によると、電極が提供される。この電極は、一般式LixMyO2(0≦x≦1.33、0.5≦y≦1、MはNi、Co及びMnから選択される少なくとも1つの元素を含む)で表される活物質と、バインダとを含む。バインダは、窒素原子を含むモノマーを含む重合体を含む。水銀圧入法によって得られる電極の細孔径分布において、細孔メディアン径をD[μm]で表し、細孔比表面積をS[m2/g]で表した場合に、下記式(1)を満たす。
S/D≧35 …(1)
従来、リチウムイオン非水電解質電池の電解質として、例えばカーボネート系の有機溶媒が使用されている。電極は、このような有機溶媒を含んだ電解質に曝されるため、電極が含む結着剤は、電解質に対して膨潤し難いことが望ましい。結着剤が膨潤すると、出力特性が低下するだけでなく、サイクル寿命特性も低下する。例えば、結着剤として使用されているポリフッ化ビニリデン(PVdF)は、カーボネート系の電解質に曝されると膨潤しやすい。とりわけ、80℃以上の高温環境下では、結着剤はより膨潤し易くなる。
結着剤に望まれる特性は、電解質に対する耐膨潤性が高いことだけではない。結着剤は、活物質粒子の表面を適度に被覆することが可能なものであることが望ましい。結着剤が活物質粒子の表面を被覆することにより、活物質と電解質との副反応を抑制することができる。しかしながら、活物質粒子の表面が結着剤により過度に被覆されると、電極の内部抵抗が増大するため好ましくない。
本発明者らは、一般式LixMyO2(0≦x≦1.33、0.5≦y≦1、MはNi、Co及びMnから選択される少なくとも1つの元素を含む)で表される活物質と、バインダとを含む電極において、バインダが、窒素原子を含むモノマーを含む重合体を含み、この電極について水銀圧入法により得られる細孔径分布において、細孔メディアン径(d50)をD[μm]で表し、細孔比表面積をS[m2/g]で表した場合に、S/D≧35を満たす電極は、高出力であり且つ高温耐久性に優れることを見出した。
窒素原子を含むモノマーを含む重合体を含むバインダは、分子内の極性が大きいため、一般式LixMyO2(0≦x≦1.33、0.5≦y≦1、MはNi、Co及びMnから選択される少なくとも1つの元素を含む)で表される活物質粒子の表面を被覆しやすい。つまり、このような組み合わせによると、活物質と電解質との副反応を抑制することができる。
また、窒素原子を含むモノマーを含む重合体を含むバインダは、高温環境下においても電解質に対して膨潤し難い。それ故、高温環境において繰り返し充放電を行った場合に容量が低下しにくい。つまり、実施形態に係る電極はサイクル寿命特性に優れる。
更に、実施形態に係る電極は、水銀圧入法によって得られる電極の細孔径分布において、細孔メディアン径(d50)をD[μm]で表し、細孔比表面積をS[m2/g]で表した場合に、下記式(1)を満たす。
S/D≧35 …(1)
電極が上記式(1)を満たしていると、細孔比表面積Sが十分に大きいことから活物質と電解質との反応面積が大きい。また、細孔メディアン径Dが十分に小さいことから、活物質間の電子導電パスが十分に形成されている。加えて、バインダが、窒素原子を含むモノマーを含む重合体を含んでいるため、高出力であり且つ高温耐久性に優れる電極を提供することができる。S/Dが35未満であると、細孔比表面積Sが小さいために、活物質と電解質との間の反応面積が減少して出力特性が劣る傾向にある。或いは、細孔メディアン径Dが大きいために、活物質間の電子導電パスが分断されている箇所が増えて出力特性が劣る傾向にある。なお、S/Dの次元は[m/g]である。S/Dは35以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましい。一つの態様によると、S/Dは100以下であってもよく、200以下であってもよい。
実施形態に係るバインダは、上述したように高温環境下においても電解質を含みにくく、膨潤しにくい。それ故、充放電サイクルを繰り返した後でもS/Dの値が変化しにくい。これに対し、例えばPVdFなどの電解質に対して膨潤しやすいバインダを使用した場合、充放電サイクルを繰り返すことによりS/Dの値が変化する傾向にある。
細孔比表面積S[m2/g]は、電極に対して水銀圧入法を実施し、各細孔を円筒形であると仮定した場合に算出される値である。水銀圧入法の測定方法については後述するが、細孔比表面積を算出する際は電極が含む集電体の重量を考慮に入れない。細孔比表面積Sは、3.5m2/g〜15m2/gの範囲内にあることが好ましく、3.5m2/g〜8.0m2/gの範囲内にあることがより好ましい。細孔比表面積Sが過度に小さいと、活物質と電解質との間の反応面積が減少して出力特性が劣る可能性がある。細孔比表面積Sが過度に大きいと、活物質表面における電解質との副反応が増大し、電池の寿命特性が低下する可能性がある。
細孔メディアン径D(d50)は、電極に対して水銀圧入法を実施して得られる細孔径分布から求めることができる。細孔メディアン径Dは、0.05μm〜0.2μmの範囲内にあることが好ましく、0.06μm〜0.15μmの範囲内にあることがより好ましい。細孔メディアン径Dが過度に小さいと、活物質含有層中のイオン伝導性が低下する可能性がある。細孔メディアン径Dが過度に大きいと、活物質間の電子導電パスが分断されている箇所が増えて出力特性が低下する可能性がある。
細孔メディアン径D及び細孔比表面積Sは、後述する水銀圧入法により得られる電極の細孔径分布において、0.003μm〜0.5μmの範囲内に存在する細孔径について測定される値であることが好ましい。つまり、水銀圧入法により得られる電極の細孔径分布において、0.003μm〜0.5μmの範囲内に存在する細孔径から測定された細孔メディアン径D及び細孔比表面積Sが、S/D≧35を満たすことが好ましく、S/D≧50を満たすことがより好ましい。0.003μm〜0.5μmの範囲内の大きさを有する細孔のみを考慮することにより、想定していない要因により形成された非常に大きな細孔の影響を排除することができる。なお、0.003μmという下限値は、水銀圧入法の測定限界よりも小さな細孔を排除するために設定している。
以下、実施形態に係る電極について詳細に説明する。実施形態に係る電極は、例えば、二次電池用電極として使用することができる。実施形態に係る電極は、例えば二次電池用の正極及び/又は負極として使用することができる。
実施形態に係る電極は、集電体と活物質含有層とを含むことができる。活物質含有層は、集電体の片面又は両面に形成され得る。活物質含有層は、一般式LixMyO2(0≦x≦1.33、0.5≦y≦1、MはNi、Co及びMnから選択される少なくとも1つの元素を含む)で表される活物質と、窒素原子を含むモノマーを含む重合体を含むバインダとを含む。活物質含有層は、複数の細孔を含んでいる。複数の細孔は、例えば、活物質粒子及びバインダの間に形成され得る。複数の細孔は、活物質粒子内に存在する細孔を含み得る。活物質含有層は、導電剤を含んでいてもよい。なお、以下では、一般式LixMyO2(0≦x≦1.33、0.5≦y≦1、MはNi、Co及びMnから選択される少なくとも1つの元素を含む)で表される活物質を、「一般式LixMyO2で表される活物質」と表記することがある。
活物質含有層は、一般式LixMyO2で表される酸化物から選択される少なくとも1種を活物質として含む。一般式LixMyO2で表される酸化物の例は、二酸化マンガン(MnO2)、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4又はLixMnO2;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnzO2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)を含む。
活物質含有層は、これら酸化物以外の活物質を更に含んでいてもよい。他の活物質としては、例えば、酸化鉄、酸化銅、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLixFePO4;0<x≦1、LixFe1-yMnyPO4;0<x≦1、0<y<1、LixCoPO4;0<x≦1)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)及びバナジウム酸化物(例えばV2O5)などを挙げることができる。
活物質含有層は、一般式LixMyO2で表される酸化物の中でも、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4又はLixMnO2;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnzO2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。このような酸化物を含むことにより高出力且つ寿命特性に優れた二次電池を作製することができる。
活物質含有層が含む全活物質の重量に占める、一般式LixMyO2で表される活物質の重量の割合は、例えば50重量%〜100重量%の範囲内にあり、好ましくは80重量%〜100重量%の範囲内にある。
一般式LixMyO2で表される活物質は、例えば粒子形状を有しており、一次粒子及び/又は二次粒子を含んでいる。実施形態に係る電極がS/D≧35を満たしている限り、一般式LixMyO2で表される活物質は一次粒子として存在していてもよく、二次粒子として存在していてもよい。
一般式LixMyO2で表される活物質粒子の平均粒子径は、例えば0.1μm〜50μmの範囲内にあり、好ましくは3μm〜15μmの範囲内にある。一般式LixMyO2で表される活物質粒子の平均粒子径が上記範囲内にあると、高出力且つ寿命特性に優れた二次電池を作製することができる。
活物質含有層が含むバインダ(結着剤)は、分散された活物質の間隙を埋め、また、活物質と集電体を結着させるために配合される。バインダは、窒素原子を含むモノマーを含む重合体を含む。バインダは、窒素原子を含むモノマーを含む重合体のみからなっていてもよい。本明細書において、「重合体」は1種類のモノマーからなる重合体の概念と、複数種類のモノマーを含む共重合体の概念とを包含している。バインダが共重合体を含む場合は、例えば、この共重合体を構成するモノマー成分のうちの少なくとも1つが窒素原子を含んでいる。共重合体を構成するモノマー成分のうちの全てが窒素原子を含んでいることが好ましい。窒素原子を含むモノマーを含む重合体は、分子内の極性が大きいため、活物質粒子との相互作用が大きい。その結果、このような重合体は活物質粒子の表面を被覆し易いため、活物質粒子と電解質との副反応が低減する傾向にある。
バインダが含む重合体は、窒素原子を含むモノマーのみからなっていてもよい。しかしながら、バインダが含む重合体は共重合体であることが好ましい。当該重合体が共重合体である場合、この共重合体は、窒素原子を含むモノマーの他に、例えば(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、シアン化ビニル単量体、カルボキシル単量体等を含み得る。この場合、活物質含有層の柔軟性が向上する。バインダが含む共重合体は、窒素原子を含むモノマーを50mol%〜95mol%の割合で含むことが好ましい。共重合成分に占める、窒素原子を含むモノマーの割合が過度に低いと、二次電池を高温環境下で動作、或いは保存した際に、結着剤の結着性が低下する可能性があるため好ましくない。
窒素原子を含むモノマーの例は、アクリロニトリル及びイミド化合物を含む。重合体は、二次電池を高温環境下で動作、或いは保存した際の結着性低下を抑制する観点から、モノマー成分としてアクリロニトリルを含むことが好ましい。
バインダが含む重合体は、ポリアクリロニトリル系共重合体であることが好ましい。ポリアクリロニトリル系共重合体は、後述する電解質に対して膨潤しにくいため、高温環境で充放電を繰り返しても電極構造が変化しにくいという利点がある。ポリアクリロニトリル共重合体は、モノマーとしてのアクリロニトリルに加えて、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、シアン化ビニル単量体、カルボキシル単量体等を含み得る。
バインダの重量に占める、窒素原子を含むモノマーを含む重合体の重量の割合は、60重量%以上であることが好ましい。この割合が60重量%未満であると、高温耐久性に劣る傾向がある。これは、バインダの重量に対して、窒素原子を含むモノマーを含む重合体とは異なる種類のバインダの含有量が多く、そのようなバインダは高温環境で膨潤しやすいためと考えられる。バインダの重量に占める、窒素原子を含むモノマーを含む重合体の重量の割合は、70重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることが更に好ましい。この割合は100重量%であることが最も好ましい。
バインダの重量に占めるポリアクリロニトリル系共重合体の重量の割合は、例えば50重量%以上であり、この割合が高いほど好ましい。この割合が50重量%未満であると、高温環境でバインダが膨潤しやすくなる可能性がある。バインダが膨潤すると、結着性が低下することにより出力特性及び寿命特性が低下する可能性がある。
バインダは、窒素原子を含むモノマーを含む重合体の他に、リン酸基を有するメタクリレートを含む共重合体、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、ポリアクリル酸化合物、カルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩からなる少なくとも1つを含んでいてもよい。
これらの中でも、バインダは、リン酸基を有するメタクリレートを含む共重合体を更に含むことが好ましい。バインダがリン酸基を有するメタクリレートを含む共重合体を含んでいると、活物質含有層内の活物質粒子及び導電剤の結着性、並びに、活物質含有層と集電体との結着性をより高めることができる。リン酸基を有するメタクリレートを含む共重合体の例として、リン酸基を有するメタクリレートとアクリロニトリルとの共重合体が挙げられる。
導電剤は、集電性能を高め、且つ、活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために配合され得る。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノファイバー及びカーボンナノチューブのような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。あるいは、導電剤を用いる代わりに、活物質粒子の表面に、炭素コートや電子導電性無機材料コートを施してもよい。
活物質含有層において、活物質及びバインダは、それぞれ、80質量%以上95質量%以下、及び2質量%以上17質量%以下の割合で配合することが好ましい。
バインダの量を2質量%以上にすることにより、十分な電極強度が得られる。バインダは、絶縁体としても機能し得る。そのため、バインダの量を17質量%以下にすると、電極に含まれる絶縁体の量が減るため、内部抵抗を減少できる。
導電剤を加える場合には、活物質含有層において、導電剤を3質量%以上18質量%以下の割合で配合するのが好ましい。導電剤の量を3質量%以上にすることにより、上述した効果を発揮することができる。また、導電剤の量を18質量%以下にすることにより、電解質と接触する導電剤の割合を低くすることができる。この割合が低いと、高温保存下において、電解質の分解を低減することができる。
集電体は、アルミニウム箔、又は、Mg、Ti、Zn、Ni、Cr、Mn、Fe、Cu及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。二次電池の充放電に伴う活物質の膨張と収縮を考慮すると、表面を荒く加工した電解箔の集電体を用いることがより望ましい。
アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。アルミニウム箔の純度は99質量%以上であることが好ましい。アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔に含まれる鉄、銅、ニッケル、及びクロムなどの遷移金属の含有量は、1質量%以下であることが好ましい。
また、集電体は、その表面に活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、集電タブとして働くことができる。
実施形態に係る電極の密度(集電体を含まず)は、例えば2.5g/cc〜3.8g/ccの範囲内にあり、好ましくは2.8g/cc〜3.6g/ccの範囲内にある。電極の密度がこの範囲内にあると、エネルギー密度と電解質の保持性とに優れているため好ましい。
<水銀圧入法>
電極に対して実施する水銀圧入法について説明する。これにより、電極が含む活物質含有層の細孔径分布図が得られ、細孔比表面積及び細孔メディアン径を求めることができる。集電体は、水銀圧入法で検出可能な細孔を含んでいない。それ故、電極についての細孔径分布の測定結果を、活物質含有層についての細孔径分布の測定結果と見なすことができる。
測定対象である電極を得るために、電池をアルゴンガスが充填されたグローブボックスに入れ、この中で電池を解体する。解体した電池から、測定対象としての電極を取り出す。取り出した電極をエチルメチルカーボネート溶媒で洗浄し、乾燥させる。
次に、乾燥後の電極から、約50mm×50mmサイズの試料(集電体を含む)を複数枚切り出す。切り出した複数枚の試料の合計重量は、集電体を含んで1g程度となるようにする。これらを測定セルに入れ、初期圧5kPa(約0.7psia、細孔径約250μm相当)及び終止圧約6万psia(細孔径約0.003μm相当)の条件で測定を行う。この測定により活物質含有層の細孔径分布図が得られ、細孔比表面積及び細孔メディアン径を求めることができる。細孔比表面積を算出する際は、測定セルに入れた試料としての電極の重量から、集電体の重量を差し引く。例えば、集電体としてアルミニウム箔を使用している場合、アルミニウムの比重2.7g/ccを考慮して集電体の重量を算出し、試料の重量から集電体の重量を差し引く。
水銀圧入法の測定装置としては、例えば、島津オートポア9520形を用いることができる。水銀圧入法により得られた細孔径分布から、細孔体積と、細孔メディアン径(d50)及びモード径とを求めることができる。
水銀圧入法の解析原理はWashburnの式(A)に基づく。
D=−4γcosθ/P (A)式
ここで、Pは加える圧力、Dは細孔直径、γは水銀の表面張力(480dyne・cm-1)、θは水銀と細孔壁面の接触角で140°である。γ、θは定数であるからWashburnの式より、加えた圧力Pと細孔径Dとの関係が求められ、そのときの水銀侵入容積を測定することにより、細孔径とその容積分布を導くことができる。
<窒素原子の有無の同定>
グロー放電発光分光分析(Glow discharge optical emission spectrometry: GD-OES)により、バインダが、窒素原子を含むモノマーを含む重合体を含むことを確認できる。
まず、測定対象の電池を、アルゴンガスが充填されたグローブボックスに入れ、この中で電池を解体する。解体した電池から、測定対象となる電極を取り出す。取り出した電極をエチルメチルカーボネート溶媒で洗浄し、乾燥させる。乾燥後の電極表面に対してグロー放電発光分光分析を行うことにより、N元素の有無を同定することができる。
更に、以下の手順で赤外吸収分光法(Infrared absorption spectroscopy: IR)を行うことにより、バインダが含む重合体の種類を同定することができる。
まず、測定対象の電池を、アルゴンガスが充填されたグローブボックスに入れ、この中で電池を解体する。解体した電池から、測定対象となる電極を取り出す。取り出した電極をエチルメチルカーボネート溶媒で洗浄し、乾燥させる。
次に、活物質含有層から結着剤を抽出するために、ジメチルホルムアミドで活物質含有層中に含まれている結着剤を溶解させる。抽出後の溶液に、活物質含有層中に含まれている活物質及び/又は導電剤が混入した場合は、例えば、ろ過によりこれらを除去する。結着剤を溶解した溶液からジメチルホルムアミドを蒸発させることにより、結着剤を得ることができる。抽出した結着剤に対して、IR分光法による測定を行う。このIR分光法測定により、活物質含有層に含まれている結着剤のポリマーの同定を行うことができる。
例えば、赤外吸収スペクトルにおいて、2200cm-1付近にニトリル結合由来のピークが確認できる場合、結着剤がポリアクリロニトリル又はポリアクリロニトリル系共重合体を含有していると判断することができる。赤外吸収スペクトルにおいて、1200cm-1付近に炭素−フッ素結合由来のピークが確認できる場合、結着剤がポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含有していると判断することができる。
また、上記IR分光法により得られる赤外吸収スペクトルにおいて、検出されたピーク強度比から結着剤が含む各成分の定量を行うことができる。
<活物質粒子の平均粒子径測定>
活物質粒子の平均粒子径は、以下の手順でレーザー回折法を行うことにより測定することができる。
測定装置としては、例えば、レーザー回折式分布測定装置(島津SALD−300)を用いる。活物質が電池に組み込まれている場合、以下のようにして取り出すことができる。まず、電池を放電状態にする。例えば、電池を25℃環境において0.1C電流で定格終止電圧まで放電させることで、電池を放電状態にすることができる。次に、放電状態の電池を解体し、電極(例えば正極)を取り出す。取り出した電極を例えばメチルエチルカーボネートで洗浄する。
次に、電極から活物質を抽出して、測定試料とする。抽出処理は、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などで洗浄して結着剤成分を除去した後、適切な目開きのメッシュで導電剤を除去する。これらの成分が僅かに残存する場合は、大気中での加熱処理(例えば、250℃で30分など)によって除去すれば良い。
その後、ビーカーに試料を約0.1gと界面活性剤と1〜2mLの蒸留水とを添加して十分に攪拌し、攪拌水槽に注入して、ここで試料溶液を調製する。この試料溶液を用いて、2秒間隔で64回光度分布を測定し、粒度分布データを解析する。
<電極の製造方法>
集電体の片面又は両面上に活物質含有層を形成する際に、実施形態に係るバインダを含むスラリーを含む溶媒を急激に気化させると、バインダのマイグレーションが生じやすい。マイグレーションとは、スラリーを集電体に塗布した後の溶媒乾燥時に、バインダが集電体とは反対方向に移動する現象である。マイグレーションが生じると、同時にバインダが凝集して電極内の細孔に充填される。その結果、マイグレーションを生じていない場合と比較して、細孔メディアン径Dが若干低下し、細孔比表面積Sが大きく減少する。細孔メディアン径Dの低下率に対して細孔比表面積Sの低下率が大きいため、マイグレーションが生じた場合は比S/Dが低下する。
マイグレーションが生じにくい条件で電極を製造することにより、細孔メディアン径Dを小さくすることができ、また、細孔比表面積Sを高めることができるため、比S/Dを高めることができる。電極作製時にマイグレーションを生じにくくするためには、塗布したスラリーを段階的に乾燥する工程を含むことが有効である。段階的な乾燥工程は、例えば、比較的低い温度で実施する予備乾燥工程と、比較的高い温度で実施する本乾燥工程との2段階の工程を含む。予備乾燥工程は、本乾燥工程よりも低い温度で実施する乾燥工程である。
なお、マイグレーションは、比重が低いバインダを使用した場合に生じやすい。例えば、ポリアクリロニトリル系共重合体を含むバインダを使用した場合には、マイグレーションが生じやすい。
そこで、実施形態に係る電極は、例えば以下のように製造する。
まず、活物質、導電剤及びバインダを溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを、集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、塗布したスラリーを80℃〜100℃の温度で予備乾燥させる。予備乾燥は、例えば1秒〜60秒に亘って行う。その後、更に130℃以上の温度で本乾燥させる。本乾燥は、例えば5秒〜300秒に亘って行う。こうして、活物質含有層と集電体との積層体を得る。その後、この積層体にプレスを施す。このようにして、電極を作製する。
比S/Dは、使用する活物質の平均粒子径、予備乾燥の有無、電極のプレス圧、及び導電剤量などを適宜設定することにより、調節することができる。
例えば、活物質の平均粒子径を大きくすると、細孔比表面積Sは大きくなり、細孔メディアン径Dは小さくなるため比S/Dは大きくなる傾向にある。また、例えば、予備乾燥を行うと、これを行わなかった場合と比較して比S/Dが大きくなる傾向にある。
また、例えば、導電剤量を多くすると、細孔比表面積Sが大きくなるため、比S/Dは大きくなる傾向にある。
第1の実施形態によると、電極が提供される。この電極は、一般式LixMyO2(0≦x≦1.33、0.5≦y≦1、MはNi、Co及びMnから選択される少なくとも1つの元素を含む)で表される活物質と、バインダとを含む。バインダは、窒素原子を含むモノマーを含む重合体を含む。水銀圧入法によって得られる電極の細孔径分布において、細孔メディアン径をD[μm]で表し、細孔比表面積をS[m2/g]で表した場合に、下記式(1)を満たす。
S/D≧35 …(1)
それ故、実施形態によると、高出力であり且つ高温耐久性に優れる電極を提供することができる。
(第2の実施形態)
実施形態に係る二次電池は、正極と、負極と、電解質とを具備する。この二次電池は、正極として、第1の実施形態に係る電極を含む。二次電池は、正極と負極との間に配されたセパレータを更に具備することもできる。正極、負極及びセパレータは、電極群を構成することができる。電解質は、電極群に保持され得る。
二次電池は、電極群及び電解質を収容する外装部材を更に具備することができる。
二次電池は、負極に電気的に接続された負極端子及び正極に電気的に接続された正極端子を更に具備することができる。
二次電池は、例えばリチウムイオン二次電池であり得る。また、二次電池は、非水電解質を含んだ非水電解質二次電池を含む。
以下、正極、負極、電解質、セパレータ、外装部材、負極端子及び正極端子について詳細に説明する。
(1)正極
正極は、正極集電体と、正極活物質含有層とを含むことができる。正極集電体及び正極活物質含有層は、それぞれ第1の実施形態に係る電極が含むことのできる集電体及び活物質含有層であり得る。
第1の実施形態に係る電極が、本実施形態に係る正極として機能し得る。
(2)負極
負極は、負極集電体と、負極活物質含有層とを含むことができる。負極活物質含有層は、負極集電体の片面又は両面に形成され得る。負極活物質含有層は、負極活物質と、任意に導電剤及び結着剤を含むことができる。
負極活物質としては、例えば、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウム(例えばLi2+yTi3O7、0≦y≦3)、スピネル構造を有するチタン酸リチウム(例えば、Li4+xTi5O12、0≦x≦3)、単斜晶型二酸化チタン(TiO2)、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、ホランダイト型チタン複合酸化物、斜方晶型チタン含有複合酸化物、及び単斜晶型ニオブチタン複合酸化物が挙げられる。
上記斜方晶型チタン含有複合酸化物の例として、Li2+aM(I)2-bTi6-cM(II)dO14+σで表される化合物が挙げられる。ここで、M(I)は、Sr,Ba,Ca,Mg,Na,Cs,Rb及びKからなる群より選択される少なくとも1つでる。M(II)はZr,Sn,V,Nb,Ta,Mo,W,Y,Fe,Co,Cr,Mn,Ni,及びAlからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦a≦6、0≦b<2、0≦c<6、0≦d<6、−0.5≦σ≦0.5である。斜方晶型チタン含有複合酸化物の具体例として、Li2+aNa2Ti6O14(0≦a≦6)が挙げられる。
上記単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の例として、LixTi1-yM1yNb2-zM2zO7+δで表される化合物が挙げられる。ここで、M1は、Zr,Si,及びSnからなる群より選択される少なくとも1つである。M2は、V,Ta,及びBiからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<2、−0.3≦δ≦0.3である。単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の具体例として、LixNb2TiO7(0≦x≦5)が挙げられる。
単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の他の例として、Ti1-yM3y+zNb2-zO7-δで表される化合物が挙げられる。ここで、M3は、Mg,Fe,Ni,Co,W,Ta,及びMoより選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦y<1、0≦z≦2、−0.3≦δ≦0.3である。
導電剤は、集電性能を高め、且つ、活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。あるいは、導電剤を用いる代わりに、活物質粒子の表面に、炭素コートや電子導電性無機材料コートを施してもよい。
結着剤は、分散された活物質の間隙を埋め、また、活物質と負極集電体を結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジェンゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシルメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
負極活物質含有層中の負極活物質、導電剤及び結着剤の配合割合は、負極の用途に応じて適宜変更することができる。例えば、負極活物質、導電剤及び結着剤を、それぞれ、70質量%以上96質量%以下、2質量%以上28質量%以下及び2質量%以上28質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤の量を2質量%以上とすることにより、負極活物質含有層の集電性能を向上させることができる。また、結着剤の量を2質量%以上とすることにより、負極活物質含有層と集電体との結着性が十分となり、優れたサイクル性能を期待できる。一方、導電剤及び結着剤はそれぞれ28質量%以下にすることが高容量化を図る上で好ましい。
負極集電体は、活物質にリチウム(Li)が挿入及び脱離される電位、例えば、1.0V(vs.Li/Li+)よりも貴である電位において、電気化学的に安定である材料が用いられる。例えば、集電体は、銅、ニッケル、ステンレス又はアルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金から作られることが好ましい。集電体の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましい。このような厚さを有する集電体は、電極の強度と軽量化のバランスをとることができる。
また、負極集電体は、その表面に負極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、負極集電タブとして働くことができる。
負極活物質含有層の密度(集電体を含まず)は、1.8g/cm3以上2.8g/cm3以下であることが好ましい。負極活物質含有層の密度がこの範囲内にある負極は、エネルギー密度と電解質の保持性とに優れている。負極活物質含有層の密度は、2.1g/cm3以上2.6g/cm3以下であることがより好ましい。
負極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、負極活物質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを、負極集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、塗布したスラリーを乾燥させて、負極活物質含有層と負極集電体との積層体を得る。その後、この積層体にプレスを施す。このようにして、負極を作製する。
或いは、負極は、次の方法により作製してもよい。まず、負極活物質、導電剤及び結着剤を混合して、混合物を得る。次いで、この混合物をペレット状に成形する。次いで、これらのペレットを負極集電体上に配置することにより、負極を得ることができる。
(3)電解質
電解質としては、例えば液状非水電解質又はゲル状非水電解質を用いることができる。液状非水電解質は、溶質としての電解質塩を有機溶媒に溶解することにより調製される。電解質塩の濃度は、0.5 mol/L以上2.5 mol/L以下であることが好ましい。
電解質塩の例には、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、及びビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)のようなリチウム塩、及び、これらの混合物が含まれる。電解質塩は、高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF6が最も好ましい。
有機溶媒の例には、プロピレンカーボネート(propylene carbonate;PC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate;EC)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate;VC)のような環状カーボネート;ジエチルカーボネート(diethyl carbonate;DEC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate;DMC)、メチルエチルカーボネート(methyl ethyl carbonate;MEC)のような鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2-methyl tetrahydrofuran;2MeTHF)、ジオキソラン(dioxolane;DOX)のような環状エーテル;ジメトキシエタン(dimethoxy ethane;DME)、ジエトキシエタン(diethoxy ethane;DEE)のような鎖状エーテル;γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone;GBL)、アセトニトリル(acetonitrile;AN)、及びスルホラン(sulfolane;SL)が含まれる。これらの有機溶媒は、単独で、又は混合溶媒として用いることができる。
好ましい有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、及びメチルエチルカーボネート(MEC)のうち2種以上を混合した混合溶媒、及び、γ‐ブチロラクトン(GBL)を含む混合溶媒である。このような混合溶媒を用いることによって、低温特性の優れた二次電池を得ることができる。
ゲル状非水電解質は、液状非水電解質と高分子材料とを複合化することにより調製される。高分子材料の例には、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile;PAN)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide;PEO)、又はこれらの混合物が含まれる。
或いは、非水電解質としては、液状非水電解質及びゲル状非水電解質の他に、リチウムイオンを含有した常温溶融塩(イオン性融体)、高分子固体電解質、及び無機固体電解質等を用いてもよい。
常温溶融塩(イオン性融体)は、有機物カチオンとアニオンとの組合せからなる有機塩の内、常温(15℃以上25℃以下)で液体として存在し得る化合物を指す。常温溶融塩には、単体で液体として存在する常温溶融塩、電解質塩と混合させることで液体となる常温溶融塩、有機溶媒に溶解させることで液体となる常温溶融塩、又はこれらの混合物が含まれる。一般に、二次電池に用いられる常温溶融塩の融点は、25℃以下である。また、有機物カチオンは、一般に4級アンモニウム骨格を有する。
高分子固体電解質は、電解質塩を高分子材料に溶解し、固体化することによって調製される。
無機固体電解質は、Liイオン伝導性を有する固体物質である。
(4)セパレータ
セパレータは、例えば、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、セルロース、若しくはポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)を含む多孔質フィルム、又は合成樹脂製不織布から形成される。安全性の観点からは、ポリエチレン又はポリプロピレンから形成された多孔質フィルムを用いることが好ましい。これらの多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能なためである。
(5)外装部材
外装部材としては、例えば、ラミネートフィルムからなる容器、又は金属製容器を用いることができる。
ラミネートフィルムの厚さは、例えば、0.5mm以下であり、好ましくは、0.2mm以下である。
ラミネートフィルムとしては、複数の樹脂層とこれらの樹脂層間に介在した金属層とを含む多層フィルムが用いられる。樹脂層は、例えば、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ナイロン、及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)等の高分子材料を含んでいる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔からなることが好ましい。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより、外装部材の形状に成形され得る。
金属製容器の壁の厚さは、例えば、1mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、更に好ましくは、0.2mm以下である。
金属製容器は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、及びケイ素等の元素を含むことが好ましい。アルミニウム合金は、鉄、銅、ニッケル、及びクロム等の遷移金属を含む場合、その含有量は100質量ppm以下であることが好ましい。
外装部材の形状は、特に限定されない。外装部材の形状は、例えば、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、又はボタン型等であってもよい。外装部材は、電池寸法や電池の用途に応じて適宜選択することができる。
(6)負極端子
負極端子は、例えば、リチウムに対する電位が1V〜3V(vs Li/Li+)の範囲内にある電気的安定性と導電性とを備える材料から形成することができる。具体的には、負極端子の材料としては、銅、ニッケル、ステンレス若しくはアルミニウム、又は、Mg,Ti,Zn,Mn,Fe,Cu,及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。負極端子の材料としては、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることが好ましい。負極端子は、負極集電体との接触抵抗を低減するために、負極集電体と同様の材料からなることが好ましい。
(7)正極端子
正極端子は、リチウムの酸化還元電位に対し3V以上4.5V以下の電位範囲(vs.Li/Li+)において電気的に安定であり、且つ導電性を有する材料から形成することができる。正極端子の材料としては、アルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。正極端子は、正極集電体との接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料から形成されることが好ましい。
次に、実施形態に係る二次電池について、図面を参照しながらより具体的に説明する。
図1は、実施形態に係る二次電池の一例を概略的に示す断面図である。図2は、図1に示す二次電池のA部を拡大した断面図である。
図1及び図2に示す二次電池100は、図1に示す袋状外装部材2と、図1及び図2に示す電極群1と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、袋状外装部材2内に収納されている。電解質(図示しない)は、電極群1に保持されている。
袋状外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
図1に示すように、電極群1は、扁平状の捲回型電極群である。扁平状で捲回型である電極群1は、図2に示すように、負極3と、セパレータ4と、正極5とを含む。セパレータ4は、負極3と正極5との間に介在している。
負極3は、負極集電体3aと負極活物質含有層3bとを含む。負極3のうち、捲回型の電極群1の最外殻に位置する部分は、図2に示すように負極集電体3aの内面側のみに負極活物質含有層3bが形成されている。負極3におけるその他の部分では、負極集電体3aの両面に負極活物質含有層3bが形成されている。
正極5は、正極集電体5aと、その両面に形成された正極活物質含有層5bとを含んでいる。
図1に示すように、負極端子6及び正極端子7は、捲回型の電極群1の外周端近傍に位置している。この負極端子6は、負極集電体3aの最外殻に位置する部分に接続されている。また、正極端子7は、正極集電体5aの最外殻に位置する部分に接続されている。これらの負極端子6及び正極端子7は、袋状外装部材2の開口部から外部に延出されている。袋状外装部材2の内面には、熱可塑性樹脂層が設置されており、これが熱融着されていることにより、開口部が閉じられている。
第3の実施形態に係る二次電池は、図1及び図2に示す構成の二次電池に限らず、例えば図3及び図4に示す構成の電池であってもよい。
図3は、第3の実施形態に係る二次電池の他の例を模式的に示す部分切欠斜視図である。図4は、図3に示す二次電池のB部を拡大した断面図である。
図3及び図4に示す二次電池100は、図3及び図4に示す電極群1と、図3に示す外装部材2と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、外装部材2内に収納されている。電解質は、電極群1に保持されている。
外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
電極群1は、図4に示すように、積層型の電極群である。積層型の電極群1は、負極3と正極5とをその間にセパレータ4を介在させながら交互に積層した構造を有している。
電極群1は、複数の負極3を含んでいる。複数の負極3は、それぞれが、負極集電体3aと、負極集電体3aの両面に担持された負極活物質含有層3bとを備えている。また、電極群1は、複数の正極5を含んでいる。複数の正極5は、それぞれが、正極集電体5aと、正極集電体5aの両面に担持された正極活物質含有層5bとを備えている。
各負極3の負極集電体3aは、その一辺において、いずれの表面にも負極活物質含有層3bが担持されていない部分3cを含む。この部分3cは、負極集電タブとして働く。図4に示すように、負極集電タブとして働く部分3cは、正極5と重なっていない。また、複数の負極集電タブ(部分3c)は、帯状の負極端子6に電気的に接続されている。帯状の負極端子6の先端は、外装部材2の外部に引き出されている。
また、図示しないが、各正極5の正極集電体5aは、その一辺において、いずれの表面にも正極活物質含有層5bが担持されていない部分を含む。この部分は、正極集電タブとして働く。正極集電タブは、負極集電タブ(部分3c)と同様に、負極3と重なっていない。また、正極集電タブは、負極集電タブ(部分3c)に対し電極群1の反対側に位置する。正極集電タブは、帯状の正極端子7に電気的に接続されている。帯状の正極端子7の先端は、負極端子6とは反対側に位置し、外装部材2の外部に引き出されている。
実施形態に係る二次電池は、組電池を構成していてもよい。組電池は、実施形態に係る二次電池を複数個具備している。
実施形態に係る組電池において、各単電池は、電気的に直列若しくは並列に接続して配置してもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて配置してもよい。
実施形態に係る組電池の一例について、図面を参照しながら説明する。
図5は、実施形態に係る組電池の一例を概略的に示す斜視図である。図5に示す組電池200は、5つの単電池100a〜100eと、4つのバスバー21と、正極側リード22と、負極側リード23とを具備している。5つの単電池100a〜100eのそれぞれは、実施形態に係る二次電池である。
バスバー21は、例えば、1つの単電池100aの負極端子6と、この単電池100aの隣に位置する単電池100bの正極端子7とを接続している。このようにして、5つの単電池100は、4つのバスバー21により直列に接続されている。すなわち、図5の組電池200は、5直列の組電池である。
図5に示すように、5つの単電池100a〜100eのうち、左端に位置する単電池100aの正極端子7は、外部接続用の正極側リード22に接続されている。また、5つの単電池100a〜100eうち、右端に位置する単電池100eの負極端子6は、外部接続用の負極側リード23に接続されている。
第2の実施形態に係る二次電池は、第1の実施形態に係る電極を備えている。それ故、実施形態に係る二次電池は、高出力であり且つ高温耐久性に優れる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態によると、電池パックが提供される。この電池パックは、第2の実施形態に係る二次電池を具備している。この電池パックは、第2の実施形態に係る二次電池を1つ具備していてもよく、複数個の二次電池で構成された組電池を具備していてもよい。
実施形態に係る電池パックは、保護回路を更に具備することができる。保護回路は、二次電池の充放電を制御する機能を有する。或いは、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用してもよい。
また、実施形態に係る電池パックは、通電用の外部端子を更に具備することもできる。通電用の外部端子は、外部に二次電池からの電流を出力するため、及び/又は二次電池に外部からの電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車などの動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子を通して電池パックに供給される。
次に、実施形態に係る電池パックの一例について、図面を参照しながら説明する。
図6は、実施形態に係る電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図である。図7は、図6に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図である。
図6及び図7に示す電池パック300は、収容容器31と、蓋32と、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35と、図示しない絶縁板とを備えている。
図6に示す収容容器31は、長方形の底面を有する有底角型容器である。収容容器31は、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35とを収容可能に構成されている。蓋32は、矩形型の形状を有する。蓋32は、収容容器31を覆うことにより、組電池200等を収容する。収容容器31及び蓋32には、図示していないが、外部機器等へと接続するための開口部又は接続端子等が設けられている。
組電池200は、複数の単電池100と、正極側リード22と、負極側リード23と、粘着テープ24とを備えている。
単電池100は、図1及び図2に示す構造を有している。複数の単電池100の少なくとも1つは、第2の実施形態に係る二次電池である。複数の単電池100は、外部に延出した負極端子6及び正極端子7が同じ向きになるように揃えて積層されている。複数の単電池100の各々は、図7に示すように電気的に直列に接続されている。複数の単電池100は、電気的に並列に接続されていてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されていてもよい。複数の単電池100を並列接続すると、直列接続した場合と比較して、電池容量が増大する。
粘着テープ24は、複数の単電池100を締結している。粘着テープ24の代わりに、熱収縮テープを用いて複数の単電池100を固定してもよい。この場合、組電池200の両側面に保護シート33を配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて複数の単電池100を結束させる。
正極側リード22の一端は、単電池100の積層体において、最下層に位置する単電池100の正極端子7に接続されている。負極側リード23の一端は、単電池100の積層体において、最上層に位置する単電池100の負極端子6に接続されている。
プリント配線基板34は、収容容器31の内側面のうち、一方の短辺方向の面に沿って設置されている。プリント配線基板34は、正極側コネクタ341と、負極側コネクタ342と、サーミスタ343と、保護回路344と、配線345及び346と、通電用の外部端子347と、プラス側配線348aと、マイナス側配線348bとを備えている。プリント配線基板34の一方の主面は、組電池200において負極端子6及び正極端子7が延出する面と向き合っている。プリント配線基板34と組電池200との間には、図示しない絶縁板が介在している。
正極側コネクタ341には、貫通孔が設けられている。この貫通孔に、正極側リード22の他端が挿入されることにより、正極側コネクタ341と正極側リード22とは電気的に接続される。負極側コネクタ342には、貫通孔が設けられている。この貫通孔に、負極側リード23の他端が挿入されることにより、負極側コネクタ342と負極側リード23とは電気的に接続される。
サーミスタ343は、プリント配線基板34の一方の主面に固定されている。サーミスタ343は、単電池100の各々の温度を検出し、その検出信号を保護回路344に送信する。
通電用の外部端子347は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。通電用の外部端子347は、電池パック300の外部に存在する機器と電気的に接続されている。
保護回路344は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。保護回路344は、プラス側配線348aを介して通電用の外部端子347と接続されている。保護回路344は、マイナス側配線348bを介して通電用の外部端子347と接続されている。また、保護回路344は、配線345を介して正極側コネクタ341に電気的に接続されている。保護回路344は、配線346を介して負極側コネクタ342に電気的に接続されている。更に、保護回路344は、複数の単電池100の各々と配線35を介して電気的に接続されている。
保護シート33は、収容容器31の長辺方向の両方の内側面と、組電池200を介してプリント配線基板34と向き合う短辺方向の内側面とに配置されている。保護シート33は、例えば、樹脂又はゴムからなる。
保護回路344は、複数の単電池100の充放電を制御する。また、保護回路344は、サーミスタ343から送信される検出信号、又は、個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号に基づいて、保護回路344と通電用の外部端子347との電気的な接続を遮断する。
サーミスタ343から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の温度が所定の温度以上であることを検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の過充電、過放電及び過電流を検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100について過充電等を検出する場合、電池電圧を検出してもよく、正極電位又は負極電位を検出してもよい。後者の場合、参照極として用いるリチウム電極を個々の単電池100に挿入する。
なお、保護回路344としては、電池パック300を電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を用いてもよい。
また、この電池パック300は、上述したように通電用の外部端子347を備えている。したがって、この電池パック300は、通電用の外部端子347を介して、組電池200からの電流を外部機器に出力するとともに、外部機器からの電流を、組電池200に入力することができる。言い換えると、電池パック300を電源として使用する際には、組電池200からの電流が、通電用の外部端子347を通して外部機器に供給される。また、電池パック300を充電する際には、外部機器からの充電電流が、通電用の外部端子347を通して電池パック300に供給される。この電池パック300を車載用電池として用いた場合、外部機器からの充電電流として、車両の動力の回生エネルギーを用いることができる。
なお、電池パック300は、複数の組電池200を備えていてもよい。この場合、複数の組電池200は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。また、プリント配線基板34及び配線35は省略してもよい。この場合、正極側リード22及び負極側リード23を通電用の外部端子として用いてもよい。
このような電池パックは、例えば、大電流を取り出したときにサイクル性能が優れていることが要求される用途に用いられる。この電池パックは、具体的には、例えば、電子機器の電源、定置用電池、各種車両の車載用電池として用いられる。電子機器としては、例えば、デジタルカメラを挙げることができる。この電池パックは、車載用電池として特に好適に用いられる。
第3の実施形態に係る電池パックは、第2の実施形態に係る二次電池を備えている。それ故、この電池パックは、高出力であり且つ高温耐久性に優れる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態によると、車両が提供される。この車両は、第3の実施形態に係る電池パックを搭載している。
実施形態に係る車両において、電池パックは、例えば、車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。車両は、この車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含んでいてもよい。
車両の例としては、例えば、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、及び、アシスト自転車及び鉄道用車両が挙げられる。
車両における電池パックの搭載位置は、特に限定されない。例えば、電池パックを自動車に搭載する場合、電池パックは、車両のエンジンルーム、車体後方又は座席の下に搭載することができる。
車両は、複数の電池パックを搭載してもよい。この場合、電池パックは、電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。
実施形態に係る車両の一例について、図面を参照しながら説明する。
図8は、実施形態に係る車両の一例を概略的に示す断面図である。
図8に示す車両400は、車両本体40と、第3の実施形態に係る電池パック300とを含んでいる。図8に示す例では、車両400は、四輪の自動車である。
この車両400は、複数の電池パック300を搭載してもよい。この場合、電池パック300は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。
図8では、電池パック300が車両本体40の前方に位置するエンジンルーム内に搭載されている例を図示している。上述したとおり、電池パック300は、例えば、車両本体40の後方又は座席の下に搭載してもよい。この電池パック300は、車両400の電源として用いることができる。また、この電池パック300は、車両400の動力の回生エネルギーを回収することができる。
次に、図9を参照しながら、実施形態に係る車両の実施態様について説明する。
図9は、実施形態に係る車両の一例を概略的に示した図である。図9に示す車両400は、電気自動車である。
図9に示す車両400は、車両本体40と、車両用電源41と、車両用電源41の上位制御手段である車両ECU(ECU:Electric Control Unit;電気制御装置)42と、外部端子(外部電源に接続するための端子)43と、インバータ44と、駆動モータ45とを備えている。
車両400は、車両用電源41を、例えばエンジンルーム、自動車の車体後方又は座席の下に搭載している。なお、図9に示す車両400では、車両用電源41の搭載箇所については概略的に示している。
車両用電源41は、複数(例えば3つ)の電池パック300a、300b及び300cと、電池管理装置(BMU:Battery Management Unit)411と、通信バス412とを備えている。
3つの電池パック300a、300b及び300cは、電気的に直列に接続されている。電池パック300aは、組電池200aと組電池監視装置301a(例えば、VTM:Voltage Temperature Monitoring)とを備えている。電池パック300bは、組電池200bと組電池監視装置301bとを備えている。電池パック300cは、組電池200cと組電池監視装置301cとを備えている。電池パック300a、300b、及び300cは、それぞれ独立して取り外すことが可能であり、別の電池パック300と交換することができる。
組電池200a〜200cのそれぞれは、直列に接続された複数の単電池を備えている。複数の単電池の少なくとも1つは、第1の実施形態に係る二次電池である。組電池200a〜200cは、それぞれ、正極端子413及び負極端子414を通じて充放電を行う。
電池管理装置411は、車両用電源41の保全に関する情報を集めるために、組電池監視装置301a〜301cとの間で通信を行い、車両用電源41に含まれる組電池200a〜200cに含まれる単電池100の電圧、及び温度などに関する情報を収集する。
電池管理装置411と組電池監視装置301a〜301cとの間には、通信バス412が接続されている。通信バス412は、1組の通信線を複数のノード(電池管理装置と1つ以上の組電池監視装置と)で共有するように構成されている。通信バス412は、例えばCAN(Control Area Network)規格に基づいて構成された通信バスである。
組電池監視装置301a〜301cは、電池管理装置411からの通信による指令に基づいて、組電池200a〜200cを構成する個々の単電池の電圧及び温度を計測する。ただし、温度は1つの組電池につき数箇所だけで測定することができ、全ての単電池の温度を測定しなくてもよい。
車両用電源41は、正極端子413と負極端子414との接続を入り切りするための電磁接触器(例えば図9に示すスイッチ装置415)を有することもできる。スイッチ装置415は、組電池200a〜200cへの充電が行われるときにオンするプリチャージスイッチ(図示せず)、及び、電池出力が負荷へ供給されるときにオンするメインスイッチ(図示せず)を含んでいる。プリチャージスイッチおよびメインスイッチは、スイッチ素子の近傍に配置されたコイルに供給される信号によりオン又はオフされるリレー回路(図示せず)を備えている。
インバータ44は、入力された直流電圧を、モータ駆動用の3相の交流(AC)の高電圧に変換する。インバータ44の3相の出力端子は、駆動モータ45の各3相の入力端子に接続されている。インバータ44は、電池管理装置411、あるいは車両全体の動作を制御するための車両ECU42からの制御信号に基づいて、出力電圧を制御する。
駆動モータ45は、インバータ44から供給される電力により回転する。この回転は、例えば差動ギアユニットを介して車軸および駆動輪Wに伝達される。
また、図示はしていないが、車両400は、回生ブレーキ機構を備えている。回生ブレーキ機構は、車両400を制動した際に駆動モータ45を回転させ、運動エネルギーを電気エネルギーとしての回生エネルギーに変換する。回生ブレーキ機構で回収した回生エネルギーは、インバータ44に入力され、直流電流に変換される。直流電流は、例えば、車両用電源41が備える電池パックに入力される。
車両用電源41の負極端子414には、接続ラインL1の一方の端子が、電池管理装置411内の電流検出部(図示せず)を介して接続されている。接続ラインL1の他方の端子は、インバータ44の負極入力端子に接続されている。
車両用電源41の正極端子413には、接続ラインL2の一方の端子が、スイッチ装置415を介して接続されている。接続ラインL2の他方の端子は、インバータ44の正極入力端子に接続されている。
外部端子43は、電池管理装置411に接続されている。外部端子43は、例えば、外部電源に接続することができる。
車両ECU42は、運転者などの操作入力に応答して他の装置とともに電池管理装置411を協調制御して、車両全体の管理を行なう。電池管理装置411と車両ECU42との間では、通信線により、車両用電源41の残容量など、車両用電源41の保全に関するデータ転送が行われる。
第4の実施形態に係る車両は、第3の実施形態に係る電池パックを具備している。それ故、本実施形態によれば、優れた高温耐久性、高い出力及び長寿命を達成できる電池パックを搭載した車両を提供することができる。
[実施例]
以下に実施例を説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明は以下に記載される実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
以下の手順で実施例1に係る非水電解質電池を作製した。
<正極の作製>
正極活物質として、平均粒子径が5μmのリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi0.34Co0.33Mn0.33O2)を用いた。導電剤としてアセチレンブラックを3重量%、グラファイト3重量%を用いた。結着剤としてポリアクリロニトリル共重合体(PAN共重合体)を3重量%、及び、アクリロニトリルとリン酸基含有メタクリレートとの共重合体(P−PAN)を1重量%用いた。なお、ポリアクリロニトリル共重合体は、モノマー成分としてアクリロニトリルを50mol%以上含んでいた。上記正極活物質、導電剤及び結着剤にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を加えて混合しスラリーを調製した。このスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に塗布して積層体を得た。この積層体を80℃で10秒に亘り予備乾燥した後、130℃で120秒に亘り本乾燥し、プレスすることにより正極を得た。正極密度は3.2g/ccであった。
<負極の作製>
負極活物質として、平均粒子径が1μmのスピネル型構造を有するチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)を90重量%用いた。導電剤としてグラファイトを7重量%、結着剤としてアクリルバインダを3重量%用いた。これらと、NMPとを混合しスラリーを調製した。このスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔からなる負極集電体の両面に塗布して積層体を得た。この積層体を130℃で乾燥し、プレスすることにより負極を得た。負極密度は2.25g/ccであった。
<電極群の作製>
セパレータとして、厚さ25μmのセルロース製の不織布を用いた。正極、セパレータ、負極及びセパレータをこの順で積層して積層体を得た。次いで、この積層体を渦巻き状に捲回した。これを80℃で加熱プレスして偏平状の電極群を作製した。ナイロン層/アルミニウム層/ポリエチレン層の3層構造を有しており、厚さが0.1mmであるラミネートフィルムからなるパック(外装部材)に電極群を収納した。これを真空中、80℃で16時間に亘り乾燥した。
<液状非水電解質の調製>
プロピレンカーボネート(PC)及びジエチルカーボネート(DEC)を1:2の体積比で混合した混合溶媒に、電解質塩としてLiPF6を1mol/L溶解し非水電解液を調製した。電極群を収納したラミネートフィルムのパック内に非水電解液を注入した後、パックをヒートシールにより完全密閉した。こうして非水電解質電池を得た。
<細孔径分布の測定>
第1の実施形態に記載した水銀圧入法による細孔径分布の測定方法に従って、正極の細孔径分布を測定した。また、正極(正極活物質含有層)の細孔比表面積S及び細孔メディアン径Dを測定した。装置としては、島津オートポアIV 9520を使用した。得られた細孔分布図を図10に示す。図10では、後述する実施例3、実施例6及び比較例1の結果も示している。実施例1に係る正極(正極活物質含有層)の細孔比表面積Sは4.9m2/gであり、細孔メディアン径Dは0.14μmであった。実施例3に係る正極(正極活物質含有層)の細孔比表面積Sは4.24m2/gであり、細孔メディアン径Dは0.078μmであった。実施例6に係る正極(正極活物質含有層)の細孔比表面積Sは7.75m2/gであり、細孔メディアン径Dは0.053μmであった。比較例1に係る正極(正極活物質含有層)の細孔比表面積Sは3.57m2/gであり、細孔メディアン径Dは0.21μmであった。
<80℃サイクル寿命評価>
80℃の高温環境下で、製造した非水電解質電池を5A(5C)の定電流で2.7V電圧まで充電した後、1.8Vまで5A(5C)で放電するサイクルを繰り返し、初期容量に対して80%容量に達した時点でのサイクル数をサイクル寿命(回)とした。
<25℃出力密度測定>
25℃環境下で、製造した非水電解質電池を1A(1C)の定電流で、充電深度50%まで充電した後、1.5Vまで定電力放電を行い、10秒間の放電が可能な最大電力値を求めた。出力密度は最大電力値を非水電解質電池重量で除することで算出した。
以上の結果を下記表1にまとめる。表1には、後述する実施例2〜12及び比較例1〜7の結果も示している。また、下記表2には、後述する実施例13〜17及び比較例8〜12及び14〜17の結果を示している。
下記表3には、後述する実施例19〜22の結果を示している。
(実施例2〜4)
正極密度が表1に示す値となるようにプレス荷重を変更したことを除いて、実施例1に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を作製し、評価した。
(実施例5〜9)
正極活物質として、表1に示す平均粒子径を有するものを使用し、正極密度が表1に示す値となるようにプレス荷重を変更したことを除いて、実施例1に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を作製し、評価した。
(比較例1)
正極密度が3g/ccとなるようにプレス荷重を変更したことを除いて、実施例1に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を作製し、評価した。
(比較例2)
正極製造時に、80℃での予備乾燥を行わず、130℃での本乾燥のみを行った。このことを除いて実施例1に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を作製し、評価した。
(比較例3及び4)
正極の結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を4重量%用いて、正極密度が表1に示す値となるようにプレス荷重を変更したことを除いて、比較例2に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を作製し、評価した。
(実施例10)
正極活物質として平均粒子径が5μmのリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2)を用いて、正極密度が3.35g/ccとなるようにプレス荷重を変更したことを除いて、実施例1に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を作製し、評価した。
(実施例11)
正極活物質として平均粒子径が5μmのリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)を用いて、正極密度が3.35g/ccとなるようにプレス荷重を変更したことを除いて、実施例1に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を作製し、評価した。
(実施例12)
正極活物質として平均粒子径が5μmのリチウムマンガン複合酸化物(LiMn2O4)を用いて、正極密度が3g/ccとなるようにプレス荷重を変更したことを除いて、実施例1に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を作製し、評価した。
(比較例5)
正極製造時に、80℃での予備乾燥を行わず、130℃での本乾燥のみを行った。このことを除いて実施例10に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を作製し、評価した。
(比較例6)
正極製造時に、80℃での予備乾燥を行わず、130℃での本乾燥のみを行った。このことを除いて実施例11に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を作製し、評価した。
(比較例7)
正極製造時に、80℃での予備乾燥を行わず、130℃での本乾燥のみを行った。このことを除いて実施例12に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を作製し、評価した。
(実施例13)
正極の結着剤として、ポリアクリロニトリル共重合体を1.5重量%、及び、アクリロニトリルとリン酸基含有メタクリレートとの共重合体を0.5重量%用いて、正極密度が3.2g/ccとなるようにプレス荷重を変更したことを除いて、実施例1に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を作製し、評価した。
(実施例14)
正極の結着剤として、ポリアクリロニトリル共重合体を7.5重量%、及び、アクリロニトリルとリン酸基含有メタクリレートとの共重合体を2.5重量%用いて、正極密度が3.5g/ccとなるようにプレス荷重を変更したことを除いて、実施例1に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を作製し、評価した。
(比較例8)
正極製造時に、80℃での予備乾燥を行わず、130℃での本乾燥のみを行った。このことを除いて実施例13に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を作製し、評価した。
(比較例9)
正極製造時に、80℃での予備乾燥を行わず、130℃での本乾燥のみを行った。このことを除いて実施例14に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を作製し、評価した。
(実施例15)
正極の結着剤として、ポリアクリロニトリル共重合体を4重量%使用し、正極密度が3.35g/ccとなるようにプレス荷重を変更したことを除いて、実施例1に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を作製し、評価した。
(比較例10)
正極製造時に、80℃での予備乾燥を行わず、130℃での本乾燥のみを行った。このことを除いて実施例15に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を作製し、評価した。
(実施例16)
正極の結着剤として、ポリアクリロニトリル重合体を4重量%使用し、正極密度が3.35g/ccとなるようにプレス荷重を変更したことを除いて、実施例1に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を作製し、評価した。
(比較例11)
正極製造時に、80℃での予備乾燥を行わず、130℃での本乾燥のみを行った。このことを除いて実施例16に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を作製し、評価した。
(実施例17)
正極の結着剤として、ポリアクリロニトリル共重合体(PAN共重合体)を2.25重量%、アクリロニトリルとリン酸基含有メタクリレートとの共重合体(P−PAN)を0.75重量%、及び、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を1重量%使用し、正極密度が3.35g/ccとなるようにプレス荷重を変更したことを除いて、実施例1に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を作製し、評価した。PAN共重合体及びP−PANと、PVdFとの重量比は75:25であった。
(比較例12)
正極の結着剤として、ポリアクリロニトリル共重合体(PAN共重合体)を2.25重量%、アクリロニトリルとリン酸基含有メタクリレートとの共重合体(P−PAN)を0.75重量%、及び、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を1重量%使用し、正極密度が3.35g/ccとなるようにプレス荷重を変更し、予備乾燥を行わなかったことを除いて、実施例1に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を作製し、評価した。PAN共重合体及びP−PANと、PVdFとの重量比は75:25であった。
(比較例14)
正極製造時に、130℃での本乾燥を行う前に、80℃での予備乾燥を行った。このことを除いて比較例3に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を作製し、評価した。
(比較例15)
正極の結着剤として、ポリアクリロニトリル共重合体(PAN共重合体)を15重量%、及び、アクリロニトリルとリン酸基含有メタクリレートとの共重合体(P−PAN)を5重量%使用し、正極密度が3.5g/ccとなるようにプレス荷重を変更したことを除いて、実施例1に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を作製し、評価した。
(比較例16)
正極活物質として平均粒子径が3μmのLiFePO4を使用し、正極密度が2.8g/ccとなるようにプレス荷重を変更したことを除いて、比較例2に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を作製し、評価した。
(比較例17)
正極製造時に、130℃での本乾燥を行う前に、80℃での予備乾燥を行った。このことを除いて比較例16に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を作製し、評価した。
(実施例19)
正極の結着剤として、ポリアクリロニトリル共重合体(PAN共重合体)を1.65重量%、アクリロニトリルとリン酸基含有メタクリレートとの共重合体(P−PAN)を0.55重量%、及び、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を1.8重量%使用したことを除いて、実施例1に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を作製し、評価した。PAN共重合体及びP−PANと、PVdFとの重量比は55:45であった。
(実施例20)
正極の結着剤として、ポリアクリロニトリル共重合体(PAN共重合体)を2.4重量%、アクリロニトリルとリン酸基含有メタクリレートとの共重合体(P−PAN)を1.8重量%、及び、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を1.6重量%使用したことを除いて、実施例1に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を作製し、評価した。PAN共重合体及びP−PANと、PVdFとの重量比は60:40であった。
(実施例21)
正極の結着剤として、ポリアクリロニトリル共重合体(PAN共重合体)を2.6重量%、アクリロニトリルとリン酸基含有メタクリレートとの共重合体(P−PAN)を1.95重量%、及び、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を0.65重量%使用したことを除いて、実施例1に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を作製し、評価した。PAN共重合体及びP−PANと、PVdFとの重量比は65:35であった。
(実施例22)
正極の結着剤として、ポリアクリロニトリル共重合体(PAN共重合体)を2.8重量%、アクリロニトリルとリン酸基含有メタクリレートとの共重合体(P−PAN)を2.1重量%、及び、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を0.7重量%使用したことを除いて、実施例1に記載したのと同様の方法で非水電解質電池を作製し、評価した。PAN共重合体及びP−PANと、PVdFとの重量比は70:30であった。
実施例と比較例との対比から、一般式LixMyO2(0≦x≦1.33、0.5≦y≦1、MはNi、Co及びMnから選択される少なくとも1つの元素を含む)で表される活物質と、窒素原子を含むモノマーを含む重合体を含むバインダとを含む正極であり、且つ、水銀圧入法によって得られる細孔径分布において、細孔メディアン径をD[μm]で表し、細孔比表面積をS[m2/g]で表した場合に、S/D≧35を満たす正極を備えた二次電池は、高温耐久性、出力特性及び寿命特性に優れていることが分かる。
例えば、S/Dが50以上である実施例3及び5は、S/Dが35以上50未満である実施例1及び2と比較して80℃サイクル寿命及び25℃出力密度に優れる。S/Dが35未満である比較例1及び2は、実施例1〜9と比較して80℃サイクル寿命及び25℃出力密度に劣る。
例えば、細孔メディアン径Dが0.05μm〜0.2μmの範囲内にある実施例3及び5は、この範囲外にある実施例4と比較して80℃サイクル寿命及び25℃出力密度に優れる。
例えば、細孔比表面積Sが3.5m2/g〜15m2/gの範囲内にある実施例8は、この範囲外にある実施例9と比較して80℃サイクル寿命に優れる。
実施例10〜12及び比較例5〜7から明らかなように、正極活物質の種類を変更しても、S/D≧35を満たしていれば高温耐久性、出力特性及び寿命特性に優れていることが分かる。
実施例13及び14並びに比較例8及び9から明らかなように、活物質含有層中のバインダ量を増減させても、S/D≧35を満たしていれば高温耐久性、出力特性及び寿命特性に優れていることが分かる。
実施例15及び16に示しているように、バインダが、リン酸基を有するメタクリレートを含む共重合体を含んでいない場合であっても、高温耐久性、出力特性及び寿命特性に優れていることが分かる。
実施例17及び19〜22に示しているように、バインダが、窒素原子を含むモノマーを含む重合体のみならず、PVdFなどのバインダを含んでいる場合でも、S/D≧35を満たしていれば高温耐久性、出力特性及び寿命特性に優れていることが分かる。
実施例17及び19〜22の中でも、S/D≧35であり、且つバインダの重量に占める上記重合体の重量の割合が60重量%以上である実施例17及び20〜22は、特に、高温耐久性(80℃サイクル寿命)が優れていることが分かる。これら実施例は、PVdFのような、電解質に対して膨潤し易いバインダの含有量が少ない方が、高温耐久性に優れる傾向があることを示している。
比較例16及び17に示しているように、正極活物質としてオリビン構造を有するリチウムリン酸化物を使用した場合は、S/D≧35を満たすことによる電池性能の向上が顕著ではない。
以上に説明した少なくとも一つの実施形態及び実施例に係る電極は、一般式LixMyO2(0≦x≦1.33、0.5≦y≦1、MはNi、Co及びMnから選択される少なくとも1つの元素を含む)で表される活物質と、バインダとを含む。バインダは、窒素原子を含むモノマーを含む重合体を含む。水銀圧入法によって得られる電極の細孔径分布において、細孔メディアン径をD[μm]で表し、細孔比表面積をS[m2/g]で表した場合に、下記式(1)を満たす。
S/D≧35 …(1)
それ故、高出力であり且つ高温耐久性に優れる電極を提供することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。